説明

導電性ローラの製造方法、および導電性ローラ塗装装置、ならびに、この製造方法によって形成された導電性ローラ

【課題】 乾燥工程をなくしもしくは簡素化するため、無溶剤もしくは少量の溶剤の塗料をスプレーして導電性ローラの表面層を形成することのできる、導電性ローラの製造方法、および導電性ローラ塗装装置、ならびに、この製造方法によって形成された導電性ローラを提供する。
【解決手段】 この発明の導電性ローラの製造方法においては、塗料をスプレーして表面層を形成し、塗料のスプレーに先立って、塗料の粘度が1〜1000mPa・Sとなるよう、塗料を昇温することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ等の電子写真装置や静電記録装置などの画像形成装置に用いられる導電性ローラの製造方法、および、この方法によって形成された導電性ローラに関し、特に、塗料を塗布して表面層を効率よく高精度に形成することができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の電子写真装置や静電記録装置などの画像形成装置に装着され、感光ドラムの表面を帯電させる帯電ローラや、感光ドラム表面にトナーを移載する現像ローラ等の導電性ローラは、長さ方向両端部を軸支され、円柱状の基体部の半径方向外側に最外層となる薄膜の表面層が設けられる。
【0003】
従来、このような導電性ローラの表面層を形成する方法として、ディッピング塗装やロールコータ塗装による方法の他、スプレー塗装によって塗膜を形成してこれを表面層とする方法も提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平9−179378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このスプレー塗装による方法は、導電性ローラを回転させながら、導電性ローラ長さ方向にスプレーガンを変位させ、その基体部の外側に塗料をスプレーして表面層を形成するものであり、他の方法に対比して、薄膜の層を高精度に形成することができ、また、大量の塗料を貯蔵する槽もしくは塗料タンクを必要とせず、そのため大ロットの生産を余儀なくされることもなく、他品種少量の生産形態に適するという特長をもっている。
【0005】
しかしながら、この方法を用いて導電性ローラの表面層を形成しようとする場合、塗料を霧化するために塗料の粘度を下げておく必要があり、そのため、塗料として、通常、表面層形成材料を溶剤で希釈して低粘度化したものが用いられる。そして、表面層形成材料の粘度が高ければ高いほど溶剤の量を増やすことが行われている。一方、このように溶剤で希釈した塗料は、これを塗布したあと、溶剤を気化させるための乾燥工程を必要とし、このための乾燥ライン、このラインを設置するスペース、さらには、乾燥のための熱源が必要となり、特に、大量の溶剤で希釈された塗料を用いた場合には、そのためのコストとスペースとが膨大なものとなってしまうという問題があった。さらに、乾燥工程の長大化は、乾燥途中での塗膜の流動による表面層の厚さの不均一化をもたらすという問題もあった。
【0006】
本発明は、このような問題点を鑑みてなされてものであり、乾燥工程をなくしもしくは簡素化するため、無溶剤もしくは少量の溶剤の塗料をスプレーして導電性ローラの表面層を形成することのできる、導電性ローラの製造方法、および導電性ローラ塗装装置、ならびに、この製造方法によって形成された導電性ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1>は、長さ方向両端部で軸支される軸部の外側に設けられた円柱状の基体部の周面に塗料をスプレーして表面層を形成する導電性ローラの製造方法において、塗料のスプレーに先立って、塗料の粘度が1〜1000mPa・Sとなるよう、塗料を昇温することを特徴とする導電性ローラの製造方法である。
【0008】
<2>は、<1>において、塗料として、紫外線硬化型樹脂もしくは電子線硬化型樹脂を含有するものを用いる導電性ローラの製造方法である。
【0009】
<3>は、<1>もしくは<2>において、前記基体部を軸部の周りに回転させた状態で、塗料をスプレーするスプレーガンおよび前記基体部の少なくとも一方を、他方に対して基体部長さ方向に相対変位させながら、塗料をスプレーする導電性ローラの製造方法である。
【0010】
<4>は、長さ方向両端部で軸支される軸部の外側に設けられた円柱状の基体部の周面に塗料をスプレーして表面層を形成する導電性ローラの製造方法に用いられる導電性ローラの塗装装置であって、
前記塗料をスプレーするスプレーガン、塗料を収容する塗料タンク、および、塗料を塗料タンクからスプレーガンまで輸送する塗料供給配管を具えるとともに、塗料タンクに収容された塗料を昇温するタンク加熱装置と、塗料供給配管を通過する塗料を昇温する管路加熱装置との少なくとも一方を設けてなる導電性ローラ塗装装置である。
【0011】
<5>は、<4>において、塗料タンクから塗料供給配管を経て供給された塗料を、スプレーガンをバイパスして塗料タンクに戻す塗料戻り配管を設けてなる導電性ローラ塗装装置である。
【0012】
<6>は、長さ方向両端部で軸支される軸部と、軸部の周囲に配設された基体部と、基体部の周面を被覆する表面層とからなり、この表面層は、<1>〜<3>のいずれかの導電性ローラの製造方法によって形成されてなる導電性ローラである。
【発明の効果】
【0013】
<1>の発明によれば、塗料のスプレーに先立って、塗料の粘度が1〜1000mPa・Sとなるよう、塗料を昇温するので、無溶剤もしくは少量の溶剤の塗料であっても、塗料を良好な状態で霧化することができ、その結果、乾燥ラインを簡素化し、あるいは、これをなくして、これにかかっていたコストとスペースとを節約することができ、あわせて、乾燥工程中での塗料の流動による表面層厚さの不均一化の問題を解消することができる。
【0014】
塗料の粘度が、1mPa・S未満の場合、塗料霧化における塗料粒子が細かくなりすぎて、塗着効率が悪化し、一方、これが、1000mPa・Sを超えると、塗料の霧化しにくくなり、塗膜の均一性が悪化してしまう。
【0015】
<2>の発明によれば、塗料として、紫外線硬化型樹脂もしくは電子線硬化型樹脂を含有するものを用いるので、基体部が空隙セルを分散させた発泡体よりなるものである場合、表面層を塗布した塗料を電子線硬化もしくは紫外線硬化により瞬時に硬化させて、基体部表面に露出した空隙セルを表面層で埋めることなく表面層を滑らかな形成することができ、一方、基体部が空隙セルのない非発泡体よりなるものである場合にも、塗料を瞬時に硬化させることにより、塗装後の塗料の流動をなくし塗膜厚さが変化するのを防止することができる。
【0016】
<3>の発明によれば、前記基体部を軸部の周りに回転させた状態で、塗料をスプレーするスプレーガンおよび前記基体部の少なくとも一方を、他方に対して基体部長さ方向に相対変位させながら、塗料をスプレーするので、基体部周面を導電性ローラの長さ方向にそって螺旋状に表面層を連続して形成してゆくことができ、塗料を無駄に消費されることがなく、しかも滑らかで均一な厚さの塗膜を形成することができる。
【0017】
<4>の発明によれば、タンク加熱装置、および、管路加熱装置の一方もしくは両方が設けられているので、塗料を効率よく昇温することができる。
【0018】
<5>の発明によれば、塗料タンクから塗料供給配管を経て供給された塗料を、スプレーガンをバイパスして塗料タンクに戻す塗料戻り配管を設けられているので、塗料を使用していない間でも、塗料タンクおよび塗料供給配管経路内の塗料を昇温した状態にしておくことができ、スプレー開始直後においても塗料を良好な霧化状態にすることができる。
【0019】
<6>の発明によれば、長さ方向両端で軸支される軸部と、軸部の周囲に配設され前記基体部と、基体部を覆う前記表面層とからなり、この表面層は、上述の方法によって形成されているので、前述のとおり、乾燥工程を簡素化することによる低コスト化と省スペース化を実現し、あわせて、乾燥工程での膜厚変化を防止し、均一性の高い表面層を形成することができ、たとえば、導電性ローラが、現像ローラ、もしくは帯電ローラである場合には、これに、均一な現像性能、あるいは帯電性能を担持させて、画像形成装置の高画質化に資することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。図1は、本発明に係る導電性ローラを示す断面図であり、図1(a)はその第一態様を示し、導電性ローラ1は、長さ方向両端で軸支される軸部2と、軸部2の周囲に配設された基体部3と、基体部3の周面を被覆する表面層4とからなり、軸部2は、鉄やステンレス等の金属、あるいは、プラスチックよりなり、基体部3から長さ方向外側に突出して設けられ、突出した部分が、画像形成装置のローラ軸支手段に軸支されるよう構成される。
【0021】
図1(b)は、導電性ローラの第二態様を示す断面図であり、導電性ローラ1Aは、軸部2A、基体部3、および表面層4よりなり、軸部2の代わりに軸部2Aを用いた点が第一態様と異なり、軸部2Aは、鉄やステンレス等の金属、あるいは、プラスチックよりなる中空のパイプで構成され、基体部3を同じ外径にしたままでその断面積の小さくする場合、このような中空の軸部2Aを好適に用いて、導電性ローラを軽量なものにすることができる。
【0022】
また、軸部2Aを基体部3の長さ方向外側に突出させて、軸部2と同様にその半径方向外側が支持されるよう構成することもできるが、図1(b)に示すように、パイプの半径方向内側の面が軸支されるようにしてもよく、この場合、軸部2Aを基体部3の長さ方向外側に突出させる必要はない。
【0023】
基体部3としては、エラストマー単体又はそれを発泡させた発泡体に導電剤を添加して導電性を付与したものが用いられる。ここで使用し得るエラストマーには、特に制限はなく、ニトリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム等が例示され、これらを単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。本発明においては、これらのうち、エチレン−プロピレンゴム、ブタジエンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴムが好ましく用いられる。また、これらと他のゴム材料との混合物もまた好ましく用いられる。特に、本発明においては、ウレタン結合を有する樹脂が好ましく用いられる。
【0024】
また、これらエラストマーを、発泡剤を用いて化学的に発泡させ、あるいは、ポリウレタンフォームのように空気を機械的に巻き込んで発泡させた発泡体としたものも用いることができる。本発明では、軸部2と基体部3との一体化を行うための成形工程において、いわゆるRIM成形法を用いてもよい。即ち、基体部3の原料成分を構成する2種のモノマー成分を筒状型内に混合射出して、重合反応させて、軸部2と基体部3とを一体化する。この方法においては、原料の注入から脱型までの成形工程を所要時間60秒程度で行うことができ、生産コストを大幅に削減することができる。
【0025】
基体部3に添加される導電剤としては、種々のものを用いることができる。カーボン系導電剤は少量の添加で高い導電性を得ることができ、カーボン系導電剤としては、ケッチェンブラックやアセチレンブラックを用いるのが好ましいが、SAF,ISAF,HAF,FEF,GPF,SRF,FT,MT等のゴム用カーボンブラック、酸化カーボンブラック等のインク用カーボンブラック,熱分解カーボンブラック、グラファイト等も用いることができる。
【0026】
イオン導電剤としては、テトラエチルアンモニウム,テトラブチルアンモニウム,ラウリルトリメチルアンモニウム等のドデシルトリメチルアンモニウム,ヘキサデシルトリメチルアンモニウム,ステアリルトリメチルアンミニウム等のオクタデシルトリメチルアンモニウム,ベンジルトリメチルアンモニウム,変性脂肪族ジメチルエチルアンモニウム等のアンモニウムの過塩素酸塩,塩素酸塩,塩酸塩,臭素酸塩,ヨウ素酸塩,ホウフッ化水素酸塩,硫酸塩,アルキル硫酸塩,カルボン酸塩,スルホン酸塩などの有機イオン導電剤;リチウム,ナトリウム,カルシウム,マグネシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の過塩素酸塩,塩素酸塩,塩酸塩,臭素酸塩,ヨウ素酸塩,ホウフッ化水素酸塩,トリフルオロメチル硫酸塩,スルホン酸塩などの無機イオン導電剤を例示することができる。
【0027】
カーボン系以外の電子導電剤も用いることができ、このような電子導電剤としては、ITO、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物の微粒子;、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属の酸化物;導電性酸化チタンウイスカー、導電性チタン酸バリウムウイスカーのような透明なウイスカー;などを例示することができる。
【0028】
導電剤として、2種類以上のものを混合して用いてもよく、この場合、印加される電圧の変動や環境の変化に対しても安定して導電性を発現することができる。混合例としては、カーボン系導電剤に、カーボン系以外の電子導電剤やイオン導電剤を混合したものをあげることができる。
【0029】
また、表面層4は、例えば、導電性ローラ1を帯電ローラとするような場合には、ナイロン、ポリエステル、ウレタン変性アクリル樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、フッ素樹脂等、目的に応じて適宜な樹脂で形成することができるが、特に帯電ローラの表面平滑性や感光体等との低密着性などの観点からフッ素樹脂が好ましく用いられる。
【0030】
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド、クロロトリフルオロエチレン−ビニルエーテル系共重合体、テトラフルオロエチレン−ビニリデンフルオライド系共重合体、クロロトリフルオロエチレン−ビニルエステル系共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド系共重合体等が挙げられ、特にこれらの微粒子を水中に分散させたディスパージョンタイプの水系フッ素樹脂が好ましく用いられ、更に好ましくはポリテトラフルオロエチレンの微粒子を水中に分散させたディスパージョンタイプの水系フッ素樹脂が用いられる。また、用いられるフッ素樹脂微粒子の粒径は、特に制限されるものではないが、5μm以下、特に、0.05〜1μmであることが好ましい。
【0031】
また、これらフッ素樹脂に、フッ素樹脂の効果を損なわない範囲で、その他の樹脂を混合して表面層4を形成することもできる。この場合、フッ素樹脂と混合されるその他の樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニリデン系共重合体、アクリル−ウレタン共重合体などが挙げられ、これらの1種または2種以上を上記フッ素樹脂と混合して表面層4を形成することができる。これらの樹脂のうちでも、フッ素樹脂の塗膜化および抵抗均一性の観点からポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニリデン系共重合体が好ましく、特にポリビニルアセタール樹脂が好ましく用いられる。
【0032】
また、かかる表面層4において、その平滑性を確保したい場合には、水系樹脂が好ましく用いられる。水系樹脂としては、溶媒が水であれば、水溶性タイプ、エマルジョンタイプ、サスペンジョンタイプ等のいずれのタイプでもよいが、特にカルボキシル基、水酸基、アミノ基等の活性水素を持つアクリル系の温水可溶性樹脂が好ましい。アクリル樹脂は、従来、帯電ローラ用樹脂として一般的に用いられてきたウレタンやナイロン等に比べてかなり誘電率が小さいために静電容量も小さくなり、交流電圧印加による帯電ローラ/被帯電体間の電気的引力・反発力が低減化され、帯電音を低減化することができることから、特に好ましく用いられる。
【0033】
更に、この表面層4には、必要に応じて増粘剤、チクソトロピー性付与剤、構造粘性付与剤等の適宜な添加剤を必要に応じて適量添加することができ、この場合添加剤は無機系、有機系のいずれであってもよい。
【0034】
また、導電性ローラ1を現像ローラとするような場合には、表面層4を構成する樹脂として、架橋性樹脂が好適に用いられる。架橋性樹脂とは、熱,触媒,空気(酸素),湿気(水),電子線などにより自己架橋する樹脂あるいは架橋剤や他の架橋性樹脂との反応により架橋する樹脂をいう。このような架橋性樹脂の例としては、水酸基,カルボキシル基,酸無水物基,アミノ基,イミノ基,イソシアネート基,メチロール基,アルコキシメチル基,アルデヒド基,メルカプト基,エポキシ基,不飽和基等の反応基を持つフッ素樹脂,ポリアミド樹脂,アクリルウレタン樹脂,アルキッド樹脂,フェノール樹脂,メラミン樹脂,シリコーン樹脂,ウレタン樹脂,ポリエステル樹脂,ポリビニルアセタール樹脂,エポキシ樹脂,ポリエーテル樹脂,アミノ樹脂,アクリル樹脂,尿素樹脂等及びこれらの混合物を挙げることができる。これらの中で、フッ素樹脂,ポリアミド樹脂,アクリルウレタン樹脂,アルキッド樹脂,フェノール樹脂,メラミン樹脂,シリコーン樹脂,ウレタン樹脂,ポリエステル樹脂,ポリビニルアセタール樹脂,エポキシ樹脂,及びそれらの混合物が好ましく、特にアルキッド樹脂,フェノール樹脂,メラミン樹脂及びそれらの混合物が、現像剤の帯電能、現像剤に対する非汚染性、他の部材との摩擦力低減、画像形成体に対する非汚染性などの点から好適である。
【0035】
上記架橋性樹脂には、必要に応じて触媒、架橋剤が用いられるが、触媒としては、例えば過酸化物やアゾ化合物などのラジカル触媒,酸触媒,塩基性触媒などが挙げられる。また、架橋剤は水酸基,カルボキシル基,酸無水物基,アミノ基,イミノ基,イソシアネート基,メチロール基,アルコキシメチル基,アルデヒド基,メルカプト基,エポキシ基,不飽和基等の反応基を1分子中に2個以上もつ化合物、例えば、ポリオール化合物,ポリイソシアナート化合物,ポリアルデヒド化合物,ポリアミン化合物,ポリエポキシ化合物等が挙げられる。この架橋性樹脂には、さらなる現像剤への帯電能の向上、他の部材との摩擦力低減、導電性付与などの目的で、所望により、荷電制御剤,滑剤,導電剤,その他の樹脂など、種々の添加剤を含有させることができる。
【0036】
上述の樹脂のうち、表面層4を塗布したあと乾燥工程が要らないという点において、電子線硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂を含有するものが好ましく、これらの樹脂は、電子線を照射し、もしくは、紫外線重合開始剤の存在下で紫外線を照射することにより硬化させることができる。さらに、これらの樹脂よりなる塗料を用いた場合には、塗装完了後、これに紫外線もしくは電子線を照射することで瞬時に表面層を固化させることができ、流動状態下で同じ姿勢で放置される場合に対比して、表面層の膜厚変化を抑えることができる。
【0037】
電子線硬化型樹脂もしくは紫外線硬化型樹脂としてはポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0038】
さらに、これらの樹脂に特定の官能基を導入した変性樹脂を用いることもできる。また、樹脂層4の力学的強度、耐環境特性を改善するため、架橋構造を有するものを導入することが好ましい。
【0039】
上記の電子線硬化型樹脂もしくは紫外線硬化型樹脂のうち、特に、(メタ)アクリレートオリゴマーを含む(メタ)アクリレート系紫外線硬化型樹脂より形成された組成物が好適である。
【0040】
このような(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマー、エーテル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エステル系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート系(メタ)アクリレートオリゴマー等、また、フッ素系、シリコーン系の(メタ)アクリルオリゴマーなどを挙げることができる。
【0041】
上記(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、多価アルコールとε−カプロラクトンの付加物等の化合物と、(メタ)アクリル酸との反応により、あるいはポリイソシアネート化合物及び水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物をウレタン化することにより合成することができる。
【0042】
ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリオール、イソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とをウレタン化することによって得ることができる。
【0043】
エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマーの例としては、グリシジル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物であればいずれでもよいが、中でもベンゼン環、ナフタレン環、スピロ環、ジシクロペンタジエン、トリシクロデカン等の環状構造を有し、かつグリシジル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸の反応生成物が好ましい。
【0044】
更に、エーテル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エステル系(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリカーボネート系(メタ)アクリレートオリゴマーは、各々に対するポリオール(ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオール)と(メタ)アクリル酸との反応によって得ることができる。
【0045】
電子線硬化型もしくは紫外線硬化型の樹脂組成物には、必要に応じて粘度調整のために重合性二重結合を有する反応性希釈剤を配合する。このような反応性希釈剤としては、アミノ酸や水酸基を含む化合物に(メタ)アクリル酸がエステル化反応及びアミド化反応で結合した構造の、例えば、単官能、2官能または多官能の重合性化合物等を使用することができる。これらの希釈剤は、(メタ)アクリレートオリゴマー100重量部当たり、通常10〜200重量部用いることが好ましい。
【0046】
表面層4を構成する樹脂には、その導電性を制御する目的で導電剤が配合され、この導電材としては、先に述べたような、基材部3に含有させる導電剤と同じものを用いることができる。
【0047】
次に、基体部3の外側に、塗料を塗布して、上述のような表面層4を形成する方法について、図2を参照して説明する。図2(a)は、塗料をスプレーして表面層4を形成する塗装装置を示す平面図、図2(b)は、図2(a)のb−b矢視に対応する断面を示す断面図であり、塗装装置10は、長さ方向両端をそれぞれ支持部材23によって軸支された導電性ローラ1を回転させるローラ回転駆動手段24と、導電性ローラ1に塗料をスプレーするスプレーガン11と、導電性ローラ1の回転と同期してスプレーガン11を導電性ローラ1長さ方向に変位させるガン横行装置20と、スプレーガン11に塗料を供給する塗料供給装置30とよりなり、ローラ回転駆動手段24は、例えば、減速機付サーボモータで構成することができ、また、ガン横行装置20は、図示のように、スプレーガン11を取り付ける取り付けブロック15と、ブロック15を、ボールねじ12を介して横行させる減速機付サーボモータ14と、ブロック15の直線走行をガイドするリニアガイド13とを具えて構成することができる。なお、図中、25は、ローラ回転駆動手段24、支持部材23、ガン横行装置20を共通に支持するコモンベースであり、26は、塗装スペースを他の部分から隔離して塗着されなかった塗料が拡散しないようにするための塗装ブースである。
【0048】
なお、導電性ローラ1は、片方の支持部材23に対して、それぞれ、図示しない手段によって着脱可能に構成されていて、表面層4の形成された導電性ローラ1を支持部材23から取り出すとともに、表面層4が未形成の導電性ローラ1を支持部材23に装着することができる。
【0049】
図3は、塗料供給装置30の構成例を示す配管系統図であり、塗料供給装置30は、塗料を収容する塗料タンク31、塗料タンク31から塗料を吸引してスプレーガン11に圧送する塗料ポンプ32、および、塗料を塗料タンク31からスプレーガン11まで導く塗料供給配管34を具え、また、スプレーガン11において、塗料を霧化するための霧化エア供給配管42が設けられる。
【0050】
また、塗料供給配管34の途中には、塗料の圧力を調整する塗料圧調整弁45が、霧化エア配管42の途中には、霧化エアの圧力を調整するエア圧調整弁43が、それぞれ配設され、例えば、導電性ローラ1の種類に応じてスプレー条件を手動もしくは自動で変更できるよう構成されている。
【0051】
本発明は、塗料をスプレーガン11からスプレーするのに先立って、塗料を昇温しておく点に特徴があり、そのため、塗装装置10は、塗料タンク31内の塗料を所定の温度にまで昇温したあとその温度に保持するタンク加熱装置33と、塗料供給配管34を通過する塗料を所定温度まで加熱する管路加熱装置36とを具えるともに、塗料がスプレーガン11からスプレーされていない時でも、塗料が塗料供給配管34に停滞して冷却されないよう、塗料を循環させておくための塗料戻り配管35が設けられる。
【0052】
このことに合わせて、流路切替弁41が設けられ、スプレーガン11から塗料を導電性ローラ基体部3にスプレーするときは、スプレーガン11側への出口を開放し、スプレーをしないときには、塗料戻り配管35への出口を開放して塗料を循環できるよう構成されている。さらい、好ましくは、塗料タンク31には、塗料の温度を一層均一にするための攪拌器43が設けられる。
【0053】
なお、スプレーガン11は変位しながら塗料をスプレーするので、塗料供給配管34および塗料戻り配管35とスプレーガン11との接続は、フレキシブルホース37a、37bを介するよう構成されている。
【0054】
ここで、タンク加熱装置33は、例えば、タンク胴体の内側もしくは外側を一周するよう取り付けられた温調ジャケットで構成することができ、この温調ジャケットは、内部にスチームや温水を通過させることにより、もしくは電熱ヒータを用いることによりこれをその熱源とすることができる。また、管路加熱装置36についても、塗料供給配管34の半径方向外側を取囲む同様の温調ジャケットで構成することができる。また、塗料供給配管34や塗料戻り配管3は、塗料温度の一層の安定化と、エネルギーの節約のため、できるだけ広い範囲を保温するのが好ましい。
【0055】
このような加熱装置を用いて昇温したときの、霧化直前の塗料の温度としては、好ましくは30〜100℃、より好ましくは、40〜70℃とするのがよい。30℃は、塗料の粘度を低く保つのに必要な最低限の温度であり、また、100℃以下としたのは、これを超えると、塗料成分の気化やゲル化が生じ安定的な塗工が難しくなってしまうからである。
【0056】
なお、上記の例においては、タンク加熱装置33と、管路加熱装置36との両方を設けたが、塗料の種類や塗装条件に応じていずれか一方だけとすることもできる。また、塗着効率を向上させるため、導電性ローラ1の基体部4周面と、スプレーガン11との間に高電圧を印加して静電力の助けを借りる静電塗装方式によって、塗料をスプレーすることもできる。
【0057】
図3に示した形態は、霧化エアを用いて塗料を霧化する方式であり、スプレーガン11としてはエア霧化方式対応のものが用いられ、この場合、霧化直前における塗料圧力を100〜1000kPa、霧化エアの圧力を50〜1000kPaとするのが好ましく、このことにより、良好な霧化状態を得ることができる。
【0058】
また、霧化エアによらないエアレス方式によっても塗料を霧化することができ、塗料の圧力を極めて高くし、スプレーガンのノズルにおける塗料の流速を所定の値以上とすることにより霧化するものであり、この場合の配管系統図を、図4に示す。図4を図3と対比して分かるように、エアレス方式の場合の機器の構成としては、図3に示したものと異なる部分は、霧化エア配管42がない点、およびスプレーガンとして、エアレス方式のスプレーガン11Aを用いる点だけであり、したがって詳細の説明は省略する。エアレス方式の場合、塗料を高圧にすることによって霧化するのでその圧力は、0.5〜10MPaとするのが好ましい。
【0059】
以上のように構成された塗装装置10を用いて、導電性ローラ1の基体部3を塗装して表面層4を形成するには、基体部2を支持部材23に装着したあと、ローラ回転駆動手段24をなすモータを駆動して基体部3を矢印Aの向きに回転させながら、減速機付サーボモータ14を駆動して、スプレーガン11を矢印Bの向きに、基体部3の回転と同期させて移動させ、このとき、基体部3が1周回転する間に、スプレーガン11を、基体部3の幅よりも短く、かつ、塗料の広がり幅よりも狭いピッチだけ移動させることにより、基体部3の一方の端から他方の端に向かって、図2(a)に示すような螺旋状の、連続して延びる塗膜で、表面層4を形成することができる。
【0060】
このあと、このようにして表面層4が形成された導電性ローラ1を支持部材23から取り出し、図示しない、乾燥工程において、もしくは紫外線硬化装置あるいは電子線硬化装置を用いて表面層4を硬化させ、導電性ローラ1の製造を完了する。
【実施例】
【0061】
塗布装置1を用い、塗料の種類、スプレー時の塗料温度条件を変化させ、それぞれの条件で塗料をスプレーして表面層4を形成する実験を行い、塗工の可否を調べるともに、形成された塗膜の表面粗さ、塗膜厚さを測定した。そして、この結果を表1にまとめた。表1中の塗料A、および塗料Bについては、これらの配合を、表2に示した。これらの塗料は、いずれも紫外線硬化型の塗料である。なお、表2中の、溶媒量(*)は、塗料全量に対する溶媒の質量割合を%で表したものである。
【0062】
また、上記の実験に用いる塗料について、温度を変化させたときの粘度を測定し、塗料粘度の温度依存性カーブを求め、測定したスプレー時の塗料温度と、この塗料粘度の温度依存性カーブとから、スプレー時の塗料粘度を推定し、これも「粘度」として表1に示した。
【0063】
表1において、「塗工可否」は、塗料を安定してスプレーできたものを「○」、塗料のスプレーは可能だがスプレーが不安定なものを「△」、そして、塗料の霧化が不可能なものを「×」で表し、さらに、「合否判定」は、塗工可否が「○」で、かつ、塗膜の表面粗さRaが2.0μm以下のものを「合格」、それ以外のものを「不合格」として表した。
【0064】
表1中の、「塗料温度」は、スプレーガンの塗料経路内に熱電対の接点を配置して熱電対で検出したその点でのスプレー時温度を表したものである。
【0065】
また、前記温度依存性カーブを求める際の測定器は、ThermoHaake社製のレオメータ(型式:ReoStress300+TC81)を用いて行った。この測定は、コーンとプレートとの間に測定液を挟みコーンを一定の周波数で回転往復運動させたときのコーンに作用するトルクより粘度を求めたものであるが、この測定に用いたコーンの型番はc20/1(同社製、直径20mm、プレートに対するコーンの錐面傾斜角度1度)であり、コーンの回転往復運動の周波数は1Hzであった。
【0066】
試作した導電性ローラは、現像ローラであり、そのサイズは、外形18mm、軸部の直径8mm、基体部の長さ250mmであった。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
表1から明らかなように、実施例の導電性ローラは、比較例のものに対していずれも、霧化の状態が良好で、塗膜の表面性状に優れ、また、膜厚も、より均一に保たれていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る現像ローラは、普通紙複写機、普通紙ファクシミリ機、レーザビームプリンタ、カラーレーザビームプリンタ、トナージェットプリンタなどの画像形成装置に帯電ローラ,現像ローラ,転写ローラ,給紙ローラ、トナー供給ローラ等として装着して好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る導電性ローラを示す断面図である。
【図2】導電性ローラの表面層を形成する塗装装置を示す平面図および断面図である。
【図3】塗装装置の塗料供給装置を示す配管系統図である。
【図4】塗料供給装置の他の実施態様を示す配管系統図である。
【符号の説明】
【0072】
1、1A 導電性ローラ
2、2A 軸部
3、3A 基体部
4、4A 表面層
10 塗装装置
11、11A スプレーガン
12 ボールねじ
13 リニアガイド
14 減速機付サーボモータ
15 取り付けブロック
20 ガン横行装置
23 支持部材
24 ローラ回転駆動手段
25 コモンベース
26 塗装ブース
30 塗料供給装置
31 塗料タンク
32 塗料ポンプ
33 タンク加熱装置
34 塗料供給配管
35 塗料戻り配管
36 管路加熱装置
37a、36b フレキシブルホース
41 流路切替弁
42 霧化エア供給配管
43 エア圧調整弁
45 塗料圧調整弁
48 攪拌器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向両端部で軸支される軸部の外側に設けられた円柱状の基体部の周面に塗料をスプレーして表面層を形成する導電性ローラの製造方法において、
塗料のスプレーに先立って、塗料の粘度が1〜1000mPa・Sとなるよう、塗料を昇温することを特徴とする導電性ローラの製造方法。
【請求項2】
塗料として、紫外線硬化型樹脂もしくは電子線硬化型樹脂を含有するものを用いる請求項1に記載の導電性ローラの製造方法。
【請求項3】
前記基体部を軸部の周りに回転させた状態で、塗料をスプレーするスプレーガンおよび前記基体部の少なくとも一方を、他方に対して基体部長さ方向に相対変位させながら、塗料をスプレーする請求項1もしくは2に記載の導電性ローラの製造方法。
【請求項4】
長さ方向両端部で軸支される軸部の外側に設けられた円柱状の基体部の周面に塗料をスプレーして表面層を形成する導電性ローラの製造方法に用いられる導電性ローラの塗装装置であって、
前記塗料をスプレーするスプレーガン、塗料を収容する塗料タンク、および、塗料を塗料タンクからスプレーガンまで輸送する塗料供給配管を具えるとともに、塗料タンクに収容された塗料を昇温するタンク加熱装置と、塗料供給配管を通過する塗料を昇温する管路加熱装置との少なくとも一方を設けてなる導電性ローラ塗装装置。
【請求項5】
塗料タンクから塗料供給配管を経て供給された塗料を、スプレーガンをバイパスして塗料タンクに戻す塗料戻り配管を設けてなる請求項4に記載の導電性ローラ塗装装置。
【請求項6】
長さ方向両端部で軸支される軸部と、軸部の周囲に配設された基体部と、基体部の周面を被覆する表面層とからなり、この表面層は、請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ローラの製造方法によって形成されてなる導電性ローラ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−267551(P2006−267551A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85644(P2005−85644)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】