説明

小型電気機器

【課題】モータの起動時のうなり音を回避し、使用者に不快感を与えることなく使用できる小型電気機器を提供することを課題とする。
【解決手段】DCモータ11の起動時に、DCモータ11の回転数が安定した安定動作時のスイッチングパルス幅と同等のスイッチングパルス幅でスイッチング素子13をスイッチング制御し、DCモータ11が安定動作しているときと同等の駆動電圧をDCモータ11に供給してDCモータ11を起動するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次電池もしくは二次電池を電源とし、電池に接続されたスイッチング素子を介して駆動電圧が供給されて駆動されるDCモータを備えた小型電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては、例えば以下に示す文献に記載されたものが知られている(特許文献1参照)。この文献には、電気かみそりに備えられたモータの通電回路中にスイッチング部を介装し、スイッチング部におけるオン/オフの割合、すなわちスイッチング信号のデューティ比を無段階に変更可能とし、モータに印加される平均電圧を連続的に変更できるようにした技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平4−27511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術においては、電池の出力電圧よりも低い一定の電圧でモータを駆動させるときに、起動時と起動後の安定動作時とのスイッチング信号のデューティ比が異なっていた。このような場合には、起動から安定動作に移行する際にモータに供給される駆動電圧が異なることになる。駆動電圧が異なると、その電位差がモータの回転数差となり、その回転数差がモータの動作音となって現れ、所謂うなり音が発生し、使用者に違和感を与えるおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、モータの起動時のうなり音を回避し、使用者に不快感を与えることなく使用できる小型電気機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る小型電気機器は、電池と、電池の最大出力電圧以下で予め任意に設定される一定の駆動電圧で駆動されるDCモータと、予め設定されたスイッチングパルス幅(オン時間)でスイッチング制御されて、電池から前記DCモータへ駆動電圧を供給するスイッチング素子と、電池の電圧を検出し、検出した電圧に対応して予め設定されたスイッチングパルス幅でスイッチング素子をスイッチング制御し、スイッチング素子を介して電池からDCモータに駆動電圧を供給制御するコントロールユニットとを有し、コントロールユニットは、DCモータの起動時に、DCモータの回転数が安定した安定動作時のスイッチングパルス幅と同等のスイッチングパルス幅でスイッチング素子をスイッチング制御し、DCモータが安定動作しているときと同等の駆動電圧をDCモータに供給してDCモータを起動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る小型電気機器は、起動時に安定動作時と同等のスイッチングパルス幅でスイッチング素子をスイッチング制御して、安定動作時と同等の駆動電圧でDCモータを起動している。これにより、DCモータの起動時にうなり音が発生することは回避され、使用者に不快感を与えることなく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態1に係る小型電気機器の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る電池電圧(VB)とスイッチングパルス幅(τ)との関係を示すテーブルデータである。
【図3】本発明の実施形態2に係る、電池電圧(VB)とスイッチングパルス幅(τ)との関係を示す図である。
【図4】本発明の実施形態例3に係る、DCモータの駆動電圧(VM)に対する電池電圧(VB)とスイッチングパルス幅(τ)との関係を示す図である。
【図5】本発明の実施形態3に係る、DCモータの駆動電圧と図4の縦軸のスイッチングパルス幅の切片との関係を示す図である。
【図6】本発明の実施形態3に係る、スイッチングパルス幅を算出する算出式で用いられる駆動電圧(VM)をコントロールユニットに入力する入力例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明を実施するための実施形態を説明する。
【0010】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1に係る小型電気機器の構成を示す図である。図1に示す実施形態1の小型電気機器は、DCモータ11、電池12、スイッチング素子13、コントロールユニット14を備えて構成されている。本発明の小型電気機器は、例えば電気かみそり、電動バリカン、脱毛器、電動歯ブラシなどに適用することができる。
【0011】
DCモータ11は、電池12の電池電圧(VB)よりも低い一定の駆動電圧で駆動される。DCモータ11は、起動時と、起動後に回転数が安定した安定動作時との駆動電圧が同等となるように駆動制御される。ここで、駆動電圧は、本発明の小型電気機器が適用される各機器によって異なる。例えば電気かみそりに適用した場合には、剃り味や電池12が最大電圧を出力できる状態で使用可能な時間などによって予め任意に設定されるものである。
【0012】
電池12は、一次電池もしくは二次電池で構成されている。電池12が二次電池で構成されている場合には、例えばACアダプターを介して商用電源から充電できるように構成されている。
【0013】
スイッチング素子13は、例えばPチャネルのFET(電界効果トランジスタ)で構成され、ドレイン端子がDCモータ11に接続され、ソース端子が電池12に接続され、DCモータ11と電池12との間に接続されている。スイッチング素子13は、電池電圧(VB)に対応して予め設定されたデューティ比のスイッチング信号によりスイッチング制御される。
【0014】
スイッチング素子13を構成するFETは、そのゲート端子がトランジスタ15のコレクタ端子に接続されている。トランジスタ15は、そのベース端子が抵抗を介してコントロールユニット14に接続され、エミッタ端子が接地され、コントロールユニット14から与えられるパルス信号によりオン/オフ制御される。スイッチング素子13を構成するFETは、トランジスタ15のオン/オフに応じてオン/オフしてスイッチング制御される。
【0015】
コントロールユニット14は、本小型電気機器の動作を制御する制御中枢として機能し、プログラムに基づいて各種動作処理を制御するコンピュータに必要な、CPUや記憶装置等のハードウェア資源を備えた例えばマイクロコンピュータ等により実現される。したがって、コントロールユニット14を構成するマイクロコンピュータのCPUで処理プログラムが実行されることによって、DCモータ11を駆動するための各種機能が実現される。
【0016】
コントロールユニット14は、電池電圧(VB)を入力し、この電池電圧(VB)にしたがってスイッチング素子13をスイッチング制御する際のデューティ比を設定する。このデューティ比は、例えば図2に示すテーブルデータとして予め用意されてコントロールユニット14の記憶装置に記憶されている。
【0017】
図2(a)は一定の駆動電圧で安定動作しているときの電池電圧(VB)と、スイッチング信号の1周期Tに対するハイレベルの期間(τ)(スイッチング素子13がオンするスイッチングパルス幅)との関係を示す図であり、同図(b)はスイッチング信号の1周期Tとハイレベルの期間(τ)を示す波形図である。図2(a)において、スイッチング信号のデューティ比として、電池12の最大出力電圧を例えば4.2Vとすると、4.2V以下で0.1V刻みの電池電圧(VB)に対して、1周期Tに対するハイレベルの期間(τ)(スイッチング素子13がオンするスイッチングパルス幅)が設定されている。例えば電池電圧(VB)が3.6V程度の場合には、1周期T(=256)に対してτ=154となるようにデューティ比D=τ/T=154/256が設定されている。コントロールユニット14は、このようにして設定されたデューティ比のスイッチング信号でスイッチング素子13がスイッチング制御されるように、トランジスタ15をオン/オフ制御する。
【0018】
このような構成の小型電気機器において、スイッチング素子13をスイッチング制御する際のスイッチング信号のデューティ比は、電池電圧(VB)に応じて一通りに設定されている。したがって、DCモータ11は、起動時から回転数が安定する安定動作時に至るまで、予め設定されたデューティ比のスイッチング信号によりオン/オフ制御されたスイッチング素子13を介して供給される一定の駆動電圧によって駆動される。すなわち、DCモータ11は、起動時から回転数が安定する安定動作時に至るまで、同じ一定の駆動電圧で駆動されることになる。したがって、DCモータ11は、起動時から安定動作時に移行する際に駆動電圧差は発生しない。これにより、DCモータ11の回転数差はなくなるので、回転数差に起因する動作音の差もなくなる。この結果、うなり音を回避することが可能となり、使用者に不快感を与えることなく使用することができる。
【0019】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について説明する。
【0020】
先の実施形態1では、スイッチング素子13をスイッチング制御する際のデューティ比をテーブルデータから求めているのに対して、この実施形態2の特徴とするところは、テーブルデータに代えて算出式により算出するようにしたことであり、他は先の実施形態1と同様である。
【0021】
図3は電池電圧(VB)(横軸)と、DCモータ11の駆動電圧(VM)が3.6V程度となるスイッチングパルス幅(τ)(縦軸)との関係を示す図である。図3において、電池電圧(VB)が3.7V、3.8V、3.8V、4.0V、4.1V、4.2Vの各電圧に対して、図示するようにスイッチングパルス幅(τ)が実測されている。このような実測結果から、電池電圧(VB)とスイッチングパルス幅(τ)とは、概ね線形に変化することがわかり、次式(1)に示すように一次式で表すことができる。
【0022】
(数1)
スイッチングパルス幅(τ:VB=3.6V)
=−90.286×VB(電池12の電圧)+491.63 …(1)
コントロールユニット14は、上式(1)を算出手段として備え、コントロールユニット14に入力された電池電圧(VB)を代入することで、スイッチングパルス幅(τ)を算出する。上記算出式(1)は、DCモータ11の駆動電圧(VM)が3.6V程度に対応したものであるが、このような算出式は、上述したように任意に設定される駆動電圧(VM)に対応して予め用意されて、記憶装置などに記憶される。
【0023】
このように、テーブルデータに代えて算出式によりスイッチングパルス幅(τ)を算出して設定することで、テーブルデータを参照するのに比べてデータ量を格段に削減することが可能となり、記憶装置などが小型となり、機器全体を小型化することが可能となる。
【0024】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3について説明する。
【0025】
先の実施形態2では、電池電圧(VB)を変数とする算出式によりスイッチングパルス幅(τ)を算出している。このとき用いる算出式は、図5に示すようにDCモータ11の駆動電圧(VM)によって異なる。
【0026】
図4は先の図3と同様に電池電圧(VB)(横軸)とスイッチングパルス幅(τ)(縦軸)との関係を示す図であり、駆動電圧(VM)=3.3V、3.4V、3.45V、3.5Vのぞれぞれに対するスイッチングパルス幅(τ)の違いを示している。図4において、上記それぞれの駆動電圧(VM)に対して、スイッチングパルス幅(τ)は、次式(2)〜(5)に示すように一次式で表される。
【0027】
(数2)
スイッチングパルス幅(τ:VM=3.3)
=−70.119×VB+388.83 …(2)
(数3)
スイッチングパルス幅(τ:VM=3.4)
=−70×VB+393.86 …(3)
(数4)
スイッチングパルス幅(τ:VM=3.45
=−69.143×VB+393.11 …(4)
(数5)
スイッチングパルス幅(τ:VM=3.5)
=−70.571×VB+401.02 …(5)
上式(2)〜(5)において、スイッチングパルス幅(τ)は、駆動電圧(VM)によって傾きは概ね同様となるが、定数項(縦軸の切片)は異なっている。
【0028】
そこで、定数項(縦軸の切片)と駆動電圧(VM)との関係をみてみると、図5に示すようになる。図5は駆動電圧(VM)(横軸)と上記定数項(図4の縦軸の切片)との関係を示す図である。図6からわかるように、駆動電圧(VM)と定数項(図4の縦軸の切片)とは、概ね線形に変化しており、両者は次式(6)に示すように一次式で表すことができる。
【0029】
(数6)
定数項=53.143×VM+214.4 …(6)
したがって、スイッチングパルス幅(τ)は、上式(6)を用いて、電池電圧(VB)ならびに駆動電圧(VM)を変数とする算出式として、次式(7)で示すように表される。
【0030】
スイッチングパルス幅(τ)
=−70×(VBmax×VB(D)/VBmax(D) )+{54×((VM(D)/1 024)×5.6)+212} …(7)
ここで、VBmaxは、電池12の最大出力電圧であり、VB(D)は起動前にコントロールユニット14が検出して読み込んだアナログ値の電池電圧(VB)をA/D変換して得られたデジタル値である。VBmax(D)は、電池12の最大出力電圧(アナログ値)をA/D変換して得られたデジタル値であり、小型電気機器で使用する電池12に応じて予めコントロールユニット14に書き込まれて記憶されているものである。
【0031】
VM(D)は、上述したように任意に設定される駆動電圧のデジタル値である。この駆動電圧は、例えば適用する機器の種類や仕様に応じて外部からコントロールユニット14に書き込まれて設定される。この場合に、例えば図6に示すように、駆動電圧(VM)を外部からDCモータ11の両端に印加し、印加された駆動電圧がコントロールユニット14に入力されてA/D変換され、デジタル値(VM(D))として書き込まれて設定される。もしくは、コントロールユニット14の所定の入力端子からアナログ値の駆動電圧(VM)を入力してA/D変換しデジタル値(VM(D))として書き込んで設定してもよい。
【0032】
コントロールユニット14は、上記算出式(7)を算出手段として備え、コントロールユニット14に入力された電池電圧(VB)ならびに駆動電圧(VM)のデジタル値を代入することで、スイッチングパルス幅(τ)を算出する。
【0033】
このように、駆動電圧(VM)を考慮した算出式によりスイッチングパルス幅(τ)を算出して設定することで、先の実施例2に比べてスイッチングパルス幅(τ)を算出する算出式を削減することが可能となる。これにより、算出式を記憶する記憶装置などが小型となり、機器全体を小型化することが可能となる。
【符号の説明】
【0034】
11…DCモータ
12…電池
13…スイッチング素子
14…コントロールユニット
15…トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池と、
前記電池の最大出力電圧以下で予め任意に設定される一定の駆動電圧で駆動されるDCモータと、
予め設定されたスイッチングパルス幅(オン時間)でスイッチング制御されて、前記電池から前記DCモータへ駆動電圧を供給するスイッチング素子と、
前記電池の電圧を検出し、検出した電圧に対応して予め設定されたスイッチングパルス幅で前記スイッチング素子をスイッチング制御し、前記スイッチング素子を介して前記電池から前記DCモータに駆動電圧を供給制御するコントロールユニットとを有し、
前記コントロールユニットは、前記DCモータの起動時に、前記DCモータの回転数が安定した安定動作時のスイッチングパルス幅と同等のスイッチングパルス幅で前記スイッチング素子をスイッチング制御し、前記DCモータが安定動作しているときと同等の駆動電圧を前記DCモータに供給して前記DCモータを起動させる
ことを特徴とする小型電気機器。
【請求項2】
前記コントロールユニットは、前記電池の出力電圧とスイッチングパルス幅との対応関係を示すテーブルデータを備え、前記テーブルデータを参照してスイッチングパルス幅を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の小型電気機器。
【請求項3】
前記コントロールユニットは、前記電池の出力電圧を変数とする算出式によりスイッチングパルス幅を算出する算出手段
を有することを特徴とする請求項1に記載の小型電気機器。
【請求項4】
前記コントロールユニットは、前記電池の出力電圧ならびに前記DCモータの駆動電圧を変数とする算出式によりスイッチングパルス幅を算出する算出手段
を有することを特徴とする請求項1に記載の小型電気機器。
【請求項5】
前記コントロールユニットは、アナログ値として予め入力された前記電池の出力電圧ならびに前記DCモータの駆動電圧をデジタル値にA/D変換し、
前記算出手段は、A/D変換によって得られたデジタル値の前記電池の出力電圧ならびに前記DCモータの駆動電圧を算出式に代入してスイッチングパルス幅を算出する
ことを特徴とする請求項4に記載の小型電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−23846(P2012−23846A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159439(P2010−159439)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】