説明

屈曲振動片、振動子、発振器及び電子機器

【課題】Q値を向上させることができる屈曲振動片、この屈曲振動片を備えた振動子及びこの屈曲振動片を備えた発振器の提供。
【解決手段】水晶振動片1は、基部11と、基部11から延びる一対の振動腕12,13と、を備え、振動腕12,13は、互いに対向する両方の主面10a,10bに、振動腕12,13の長手方向に沿って形成された溝部18を有し、振動腕12,13の基部11との接続部に、平面視において、振動腕12,13から基部11に近づくに連れて、溝部18から外形までの間隔が広くなる傾斜部19が設けられ、溝部18は、傾斜部19にかかる底部18cの少なくとも一部に、溝部18の長手方向に沿った第1側面18aとの連結部18dから、底部18cを挟んで第1側面18aと対向する第2側面18bとの連結部18eまでの範囲で、励振電極20,21が形成されない無電極領域を有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈曲振動片、この屈曲振動片を備えた振動子、発振器及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屈曲振動片を小型化するとQ値(振動の状態を現す無次元数であって、この値が大きいほど振動が安定であることを意味する)が小さくなり、屈曲振動を阻害することが知られている。これは、熱の移動により温度平衡させるまでの緩和時間に反比例する緩和振動と、屈曲振動片の振動周波数とが、近づいて起こる熱弾性効果によるものである。つまり、屈曲振動片が屈曲振動することにより弾性変形が生じ、圧縮される面の温度は上昇し、伸張される面の温度は下降するため、屈曲振動片の内部に温度差が発生する。この温度差を熱伝導により温度平衡させるまでの緩和時間に反比例する緩和振動により、屈曲振動を阻害し、Q値を低下させる。
【0003】
このため、特許文献1は、屈曲振動片の屈曲振動部に溝または貫通孔を形成し、振動子の圧縮される面から伸張される面に発生する熱の移動を阻止して、熱弾性効果に起因するQ値変動の抑制を図っている。
また、特許文献2には、第1及び第2の平行な振動アーム(以下、振動腕という)が延びるベース(以下、基部という)と、各振動腕の自由端を形成するフリッパー形状をした拡大部分(以下、錘部という)と、各振動腕を振動させる励起電極(以下、励振電極という)と、各振動腕の正面と裏面の少なくとも一方に形成された溝(以下、溝部という)と、を有したピエゾ電子同調フォーク型共振器(以下、屈曲振動片という)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実全平2−32229号公報(第4頁第7行目〜第5頁第3行目)
【特許文献2】特開2009−27711号公報(図1、図1a)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているような溝部を有する屈曲振動片は、屈曲振動によって発生する熱が、溝部によって拡散(熱伝導)し難くなるように構成されていることから、熱弾性損失(屈曲振動する屈曲振動片の圧縮部と伸張部との間で発生する熱伝導により生じる振動エネルギーの損失)を抑制できるとされている。
【0006】
しかしながら上記のような溝部を有する屈曲振動片は、振動腕の基部との接続部に、振動腕の他の部分よりも、屈曲振動により生じる応力が大きい部分を有し、それゆえ温度の上昇および下降の温度差も大きい。
そして振動腕の基部との接続部に位置する溝部は、その表面における振動腕の幅方向の一方側から他方側に連続して励振電極が形成されている。よって、振動腕の基部との接続部における熱伝導が、接続部に位置する溝部に形成された熱伝導率の高い金属からなる励振電極によって促進されることから、熱弾性損失が増加し、Q値が低下してしまう虞があることを本発明の発明者は見出した。
【0007】
また、特許文献2の図1によれば、上記屈曲振動片は、振動腕と基部との間に、平面視において、振動腕から基部に近づくに連れて、溝部から外形までの間隔が広くなるように傾斜部(テーパー部分)が設けられている。
そして、特許文献2の図1及び図1aによれば、上記屈曲振動片は、溝部に形成された励振電極が、上記接続部にかかる範囲にまで延在しており、且つ溝部の内壁において、振動腕の幅方向の一方端側から他方端側に連続して形成されている。
【0008】
これにより、上記屈曲振動片は、振動腕の屈曲振動の励振に殆ど寄与しない傾斜部における熱伝導が、傾斜部にかかる溝部の底部に形成された熱伝導率の高い金属からなる励振電極によって促進されることから、熱弾性損失が増加し、Q値が低下してしまう虞があることを本発明の発明者は見出した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0010】
[適用例1]本適用例にかかる屈曲振動片は、基部と、前記基部から延び、屈曲振動する振動腕と、を備え、前記振動腕は、主面に、前記振動腕の長手方向に沿って形成された溝部を有し、前記溝部に励振電極が配置され、前記振動腕は、前記基部に隣接する接続部を有し、前記溝部の一部は、前記接続部に配置され、且つ、前記励振電極が形成されない無電極領域を有していることを特徴とする。
【0011】
これによれば、屈曲振動片は、溝部の一部が、接続部に配置され、且つ、その少なくとも一部に、励振電極が形成されない無電極領域を有している。
この結果、屈曲振動片は、振動腕の接続部に配置された溝部の無電極領域において、励振電極が形成されている場合と比較して熱伝導率が低くなることから、例えば、屈曲振動における圧縮部から伸張部への熱の移動が遅くなり、接続部の熱弾性損失を抑制することができる。
したがって、屈曲振動片は、振動腕の接続部に配置された溝部に電極が形成されている場合と比較して、Q値を向上させることができる。
【0012】
[適用例2]上記適用例にかかる屈曲振動片において、前記振動腕は、前記接続部において、前記振動腕の先端側から前記基部側に近づくに連れて、前記主面上における前記溝部から前記振動腕の外縁までの幅が広くなる形状を有することが好ましい。
【0013】
これによれば、屈曲振動片は、接続部において、振動腕の先端側から基部側に近づくに連れて、主面上における溝部から振動腕の外形までの間隔が広くなり、接続部に配置された溝部の少なくとも一部に、励振電極が形成されない無電極領域を有している。
この結果、屈曲振動片は、上述した理由により、接続部の熱弾性損失を抑制でき、Q値を向上させることができる。
【0014】
[適用例3]上記適用例にかかる屈曲振動片において、前記励振電極は、第1励振電極部及び第2励振電極部を有し、前記溝部の前記一部は、その内壁における前記振動腕の幅方向の一方側に前記第1励振電極部が配置され、他方側に前記第2励振電極部が配置され、前記無電極領域は、前記第1励振電極部と前記第2励振電極部との間に配置されていることが好ましい。
【0015】
これによれば、屈曲振動片は、溝部の一部の、その内壁における振動腕の幅方向の一方側に第1励振電極部が配置され、他方側に第2励振電極部が配置されることから、接続部に配置された溝部に励振電極を形成しない場合と比較して、CI(クリスタルインピーダンス)値(発振のしやすさの目安となる値で、低いほど発振しやすい)を低くすることが可能となる。
【0016】
[適用例4]上記適用例にかかる屈曲振動片において、前記溝部は、前記振動腕の前記長手方向に沿った第1側面と、前記振動腕の前記長手方向に沿った第2側面と、前記第1側面と前記第2側面とを接続し、前記溝部の底を形成する底部と、を有し、前記底部の一部は、前記接続部に配置され、且つ、その少なくとも一部に前記無電極領域を有し、前記溝部は、平面視において、前記第1側面及び前記第2側面の全域に前記励振電極を有することが好ましい。
【0017】
これによれば、屈曲振動片は、溝部における第1側面及び第2側面の全域に励振電極を有することから、後述する溝部における第1側面及び第2側面の一部に励振電極を有する場合と比較して、CI値を低くすることが可能となる。
したがって、屈曲振動片は、溝部における第1側面及び第2側面の一部に励振電極を有する場合と比較して、Q値を向上させることができる。
【0018】
[適用例5]上記適用例1または適用例2にかかる屈曲振動片において、前記溝部は、前記振動腕の前記長手方向に沿った第1側面と、前記振動腕の前記長手方向に沿った第2側面と、前記第1側面と前記第2側面とを接続し、前記溝部の底を形成する底部と、を有し、前記底部の一部は、前記接続部に配置され、且つ、その少なくとも一部に前記無電極領域を有し、前記溝部は、平面視において、前記第1側面の一部及び前記第2側面の一部に前記励振電極を有することが好ましい。
【0019】
これによれば、屈曲振動片は、溝部における第1側面及び第2側面の一部に励振電極を有することから、上述した第1側面及び第2側面の全域に励振電極を有する場合と比較して、負荷容量感度(負荷容量の変化に対する周波数の変化の程度を表し、低いほど周波数の変動が少ない)を低くすることが可能となる。
したがって、屈曲振動片は、溝部における第1側面及び第2側面の全域に励振電極を有する場合と比較して、例えば、浮遊容量などに起因する周波数の変動を抑制することができる。
【0020】
[適用例6]上記適用例にかかる屈曲振動片において、前記接続部に配置された前記底部は、前記基部側から前記振動腕の前記先端側に向かうに連れて、前記溝部が深くなる斜面を有し、前記斜面に前記無電極領域を有していることが好ましい。
【0021】
これによれば、屈曲振動片は、溝部の底部が、基部側から振動腕の先端側に向かうに連れて、溝部が深くなるように傾斜している斜面を有し、この斜面に無電極領域を有していることから、例えば、無電極領域形成時の電極保護膜(レジスト)のフォトリソグラフィーにおける、非露光部分(第1側面及び第2側面など)への、光の反射による露光用光の照射を回避できる。
【0022】
[適用例7]上記適用例にかかる屈曲振動片において、前記振動腕は、前記基部側に位置する腕部と、前記腕部より前記先端側に位置する錘部と、を有することが好ましい。
【0023】
これによれば、屈曲振動片は、振動腕が基部側に位置する腕部と、腕部より先端側に位置する錘部と、を有することから、錘部の慣性質量の増加によるQ値の向上効果によって、例えば、Q値を維持しながら振動腕を短くすることができる。
したがって、屈曲振動片は、Q値を維持しながら、さらなる小型化を図ることが可能となる。
一方、屈曲振動片は、錘部を有すると、例えば、屈曲振動における接続部での歪みが、錘部がない場合と比較して大きくなる(発生する熱量が大きくなる)。
しかしながら、屈曲振動片は、傾斜部にかかる溝部の底部の無電極領域において、電極が形成されている場合と比較して熱伝導率が低くなることから、圧縮部から伸張部への熱の移動が遅くなり、錘部を有している場合に、より効果的に接続部の熱弾性損失を抑制することができる。
【0024】
[適用例8]上記適用例にかかる屈曲振動片において、前記振動腕を複数本備え、前記複数本の振動腕と、前記基部とを含んで音叉を構成することが好ましい。
【0025】
これによれば、屈曲振動片は、複数本の振動腕と、基部とを含んで音叉を構成することから、上記適用例1ないし適用例7のいずれか一例の効果を奏する音叉型屈曲振動片を提供できる。
【0026】
[適用例9]本適用例にかかる振動子は、適用例1ないし適用例8のいずれか一例に記載の屈曲振動片と、前記屈曲振動片を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする。
【0027】
これによれば、振動子は、適用例1ないし適用例8のいずれか一例に記載の振動片を備えたことから、上記適用例1ないし適用例8のいずれか一例の効果を奏する振動子を提供できる。
【0028】
[適用例10]本適用例にかかる発振器は、適用例1ないし適用例8のいずれか一例に記載の屈曲振動片と、前記屈曲振動片を発振させる回路を有する回路素子と、を備えたことを特徴とする。
【0029】
これによれば、発振器は、適用例1ないし適用例8のいずれか一例に記載の屈曲振動片を備えたことから、上記適用例1ないし適用例8のいずれか一例の効果を奏する発振器を提供できる。
【0030】
[適用例11]本適用例にかかる電子機器は、適用例1ないし適用例8のいずれか一例に記載の屈曲振動片を備えたことを特徴とする。
【0031】
これによれば、電子機器は、適用例1ないし適用例8のいずれか一例に記載の屈曲振動片を備えたことから、上記適用例1ないし適用例8のいずれか一例の効果を奏する電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1実施形態の屈曲振動片の概略構成を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)、(c)は(a)の断面図。
【図2】屈曲振動片の緩和周波数とQ値の極小値との関係を示す図。
【図3】変形例1の屈曲振動片の概略構成を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の断面図。
【図4】変形例2の屈曲振動片の概略構成を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の断面図。
【図5】変形例3の屈曲振動片の要部模式断面図。
【図6】第2実施形態の振動子の概略構成を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の断面図。
【図7】第3実施形態の発振器の概略構成を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の断面図。
【図8】第4実施形態の電子機器を示す模式斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。
【0034】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の屈曲振動片の概略構成を示す模式図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は、図1(a)のA−A線での断面図、図1(c)は、図1(a)のB−B線での断面図である。
なお、図1(a)では、便宜的に電極部分にハッチング、アミがけを施してあると共に、煩雑にならないように電極部分を簡略化及び一部省略してある。また、図1(c)では、構成要素の一部(支持部)の断面を省略してある。
【0035】
図1に示すように、屈曲振動片としての水晶振動片1は、水晶の原石などから所定の角度で切り出されたウエハー状の水晶基板を基材とし、外形形状がフォトリソグラフィー技術を用いたウェットエッチングなどによって形成されている。
【0036】
水晶振動片1は、基部11と、基部11から延びる、互いに略平行な一対の振動腕12,13と、振動腕12,13の延びる方向に対して交差する方向(紙面左右方向)すなわち振動腕12,13の幅方向に、基部11を両側から切り欠いた一対の切り欠き部14と、基部11から紙面左右方向に突出し、振動腕12,13側に略直角に折れ曲がり、振動腕12,13に沿って延びる一対の支持部15とを備えている。
【0037】
一対の振動腕12,13は、基部11側に位置する腕部16と、腕部16より先端側に位置し、腕部16より幅が広い錘部17と、を有している。
そして、一対の振動腕12,13は、互いに対向する両方の主面10a,10bに、振動腕12,13の長手方向に沿って形成されると共に、一対の振動腕12,13の並ぶ方向(紙面左右方向)に沿って切断した振動腕12,13の断面形状が、略H字状となる溝部18を有している。
【0038】
水晶振動片1は、振動腕12,13の、基部11に隣接する接続部に、平面視において、振動腕12,13から基部11に近づくに連れて、溝部18から外形までの間隔が広くなる傾斜部19が設けられている。
水晶振動片1は、一対の振動腕12,13の溝部18、一方の主面10a、他方の主面10b及び一対の振動腕12,13の互いに対向する側面12a,12b,13a,13bなどに励振電極20,21が形成(配置)されている。
【0039】
ここで、溝部18に形成されている励振電極20,21について説明する。
図1(b)に示すように、溝部18は、底部18cと、底部18cに対し振動腕12,13の幅方向の一方側に位置し振動腕12,13の長手方向に沿った第1側面18aと、底部18cに対し振動腕12,13の幅方向の他方側に位置し振動腕12,13の長手方向に沿った第2側面18bと、を有している。
そして、腕部16における溝部18の励振電極20,21は、溝部18の長手方向に沿った第1側面18aと、底部18cと、底部18cを挟んで第1側面18aと対向する第2側面18bと、に連続して形成されている。
【0040】
一方、図1(c)に示すように、底部18cのうち、傾斜部19に位置する底部18cの少なくとも一部(ここでは、傾斜部19に位置する底部18cのすべてで、上記適用例に記載された「溝部の一部」に相当)には、第1側面18aとの連結部18dから第2側面18bとの連結部18eまでの範囲で、励振電極20,21が形成されない無電極領域が設けられている(図1(a)において、符号18cが引き出されている白抜きの部分)。
そして、傾斜部19に位置する第1側面18aには、励振電極20,21の一部である第1励振電極部20a,21aが形成(配置)され、傾斜部19に位置する第2側面18bには、励振電極20,21の一部である第2励振電極部20b,21bが形成(配置)されている。
なお、水晶振動片1は、溝部18の第1側面18a及び第2側面18bの全域に励振電極20,21を有している。
【0041】
図1に示すように、水晶振動片1は、基部11と、一対の振動腕12,13とを含んで音叉を構成することで、音叉型屈曲振動片としての音叉型水晶振動片となっており、支持部15の所定の位置でパッケージなどの外部部材に固定されるようになっている。
そして、水晶振動片1は、一対の振動腕12,13に形成された励振電極20,21に、外部から駆動信号が印加されることにより、一対の振動腕12,13が、所定の周波数(例えば、32.768kHz)で矢印C方向及び矢印D方向に交互に屈曲振動(共振)する。
【0042】
ここで、一対の振動腕12,13に形成されている励振電極20,21について詳述する。
一対の振動腕12,13には、外部から印加される駆動信号の印加電位の極性が、互いに異なる励振電極20と励振電極21とが形成されている。
このことから、励振電極20と励振電極21とは、短絡しないように互いに間隔を空けて形成されている。
【0043】
図1(b)、図1(c)に示すように、振動腕12の溝部18には、励振電極20が形成され、振動腕12の両側面12a,12bには、励振電極21が形成されている。
なお、振動腕12の両側面12a,12bの励振電極21は、錘部17に形成された接続電極22(図1(a)参照)を介して互いに接続されている。
一方、振動腕13の溝部18には、励振電極21が形成され、振動腕13の両側面13a,13bには、励振電極20が形成されている。
なお、振動腕13の両側面13a,13bの励振電極20は、錘部17に形成された接続電極23(図1(a)参照)を介して互いに接続されている。
【0044】
また、振動腕12の溝部18の一方の主面10a側の励振電極20と他方の主面10b側の励振電極20とは、振動腕13の両側面13a,13bに形成された励振電極20を介して接続されている。
一方、振動腕13の溝部18の一方の主面10a側の励振電極21と他方の主面10b側の励振電極21とは、振動腕12の両側面12a,12bに形成された励振電極21を介して接続されている。
【0045】
図1(a)に示すように、励振電極20,21は、基部11を介して支持部15まで引き出され、引き出された部分が、パッケージなどの外部部材に固定される際に用いられるマウント電極20c,21cとなっている。なお、マウント電極20c,21cは、一方の主面10a及び他方の主面10bの両方に形成されている。
【0046】
ここで、励振電極20,21の形成方法の概略について説明する。
励振電極20,21は、Ni、Cr、Au、Ag、Al、Cuなどの電極材料が、蒸着、スパッタなどの方法で水晶振動片1の略全面に成膜され、成膜された電極材料を覆うように感光性のレジストが塗布され、レジストがフォトリソグラフィー技術などを用いて所望の電極パターン形状に応じて露光、パターニングされた後、電極材料の露出した不要部分がエッチングで除去されることにより、所望の電極パターン形状に形成される。
【0047】
なお、水晶の熱伝導率は、約6.2〜約10.4W/(m・K)であり、励振電極20,21の電極材料としての、例えば、Auの熱伝導率は、約315W/(m・K)であって、Auの方が桁違いに高い。これは、他の電極材料(Ni、Crなど)についてもいえることである。
【0048】
次に、熱弾性損失と緩和周波数について説明する。
簡略化のため、1本の振動腕12を用いて説明する。水晶振動片1が振動状態にあり、振動腕12がその幅方向の一方側に振れている間は、振動腕12の幅方向の一方側に引張り応力が作用し、他方側に圧縮応力が作用する。一般的に、振動腕12の、基部11に隣接する接続部に作用する引張り応力および圧縮応力は、振動腕12の先端側に作用する各応力より大きい。
この際、圧縮応力が作用する領域では、温度が上昇し、引張り応力が作用する領域では、温度が下降する。
水晶振動片1は、屈曲振動する振動腕12の圧縮応力を受ける圧縮部と引張り応力を受ける伸張部との間で、温度の平衡化のために発生する熱の移動(熱伝導)により、振動エネルギーの損失が生じる。
このような熱伝導により生じるQ値の低下は、熱弾性損失と呼ばれている。
【0049】
一般的に温度差を原因として生じる固体の内部摩擦の場合によく知られた歪みと応力の関係式から、熱弾性損失は、屈曲振動モードの振動片において、周波数が変化したときに、緩和周波数fm=1/2πτ(ここで、πは円周率、τは緩和時間)でQ値が極小となる、と説明されている。
このQ値と周波数との関係を一般的に表すと、屈曲振動片の緩和周波数とQ値の極小値との関係を示す図2の曲線Fのようになる。同図において、Q値が極小Q0となる周波数が熱緩和周波数f0(=1/2πτ)である。
またf/f0=1を境にして周波数が高い領域(1<f/f0)が断熱的領域となり、周波数が低い領域(f/f0<1)が等温的領域となる。
【0050】
水晶振動片1の振動腕12,13に溝部18を形成すると、圧縮部と伸張部との間の熱伝導経路が溝部によって途中で狭められるため、水晶振動片1は、圧縮部と伸張部とで温度が平衡状態になるまでの緩和時間τが長くなる。
これにより、水晶振動片1は、図2に示す断熱的領域では、溝部18を形成することで、曲線F自体の形状は変化せずに熱緩和周波数f0の低下に伴って、曲線Fが曲線F1の位置まで周波数の低下方向にシフトしたことになる。なお、曲線F1は、溝部18に電極(励振電極20,21)が一切形成されていない状態を示している。
この結果、水晶振動片1は、矢印aに示すようにQ値が高くなる。
【0051】
ところが、水晶振動片1は、溝部18に励振電極20,21を形成することにより曲線Fが曲線F2の位置までシフトし、矢印bに示すようにQ値が低下してしまう。
この原因としては、励振電極20,21が熱伝導経路を形成することが考えられる。
すなわち、電極材料のように導電性を有する材料は、上述したように、水晶振動片1の基材としての圧電体である水晶より熱伝導率が大きい。このような導電性を有する材料では、金属のフォノンのほかに電子が熱エネルギーを運搬する。
つまり、水晶振動片1は、熱伝導が水晶に加えて、溝部18に形成された励振電極20,21を介しても行なわれるため、緩和時間τが短くなり、熱緩和周波数f0の上昇に伴って、曲線Fが曲線F2の位置まで周波数の上昇方向にシフトしたと考えられる。
【0052】
第1実施形態の水晶振動片1は、熱弾性損失が断熱的領域、すなわち振動体の機械的な共振周波数frを振動体単体での熱緩和周波数f0で除した値fr/f0が、1<fr/f0の関係を満たす高周波数の領域を対象としている。ここで振動体単体とは、励振電極20,21などの金属膜などを一切配置していない振動体である。例えば振動体の材料として水晶を用いる場合には、水晶以外の材料が一切配置されていない状態の振動体をいう。
【0053】
なお一般的に、熱緩和振動数fmは、下式で求まることが知られている。
fm=πk/(2ρCp2)・・・(1)
ここで、πは円周率、kは振動腕の振動方向の熱伝導率、ρは振動腕の質量密度、Cpは振動腕の熱容量、aは振動腕の振動方向の幅である。
式(1)の熱伝導率k、質量密度ρ、熱容量Cpに振動腕の材料そのものの定数を入力した場合、求まる熱緩和振動数fmは振動腕に溝部を設けていない場合の緩和振動数となる。
【0054】
上述したように、第1実施形態の水晶振動片1は、溝部18の傾斜部19にかかる底部18cの少なくとも一部に、第1側面18aとの連結部18dから第2側面18bとの連結部18eまでの範囲で、励振電極20,21が形成されない無電極領域を有している。
この結果、断熱的領域で動作する水晶振動片1は、傾斜部19にかかる溝部18の底部18cの無電極領域において、励振電極20,21が形成されている場合と比較して熱伝導率が低くなることから、屈曲振動における圧縮部(例えば、第1側面18a側)から伸張部(例えば、第2側面18b側)への熱の移動が遅くなり、傾斜部19の熱弾性損失を抑制することができる。
【0055】
したがって、水晶振動片1は、傾斜部19にかかる溝部18の底部18cに励振電極20,21が形成されている場合と比較して、Q値を向上させることができる。
なお、水晶振動片1は、この効果をより確実に奏するために、図1(a)に示すように、溝部18の傾斜部19にかかる底部18cのすべての範囲を無電極領域にすることが好ましい。
【0056】
また、水晶振動片1は、溝部18における第1側面18a及び第2側面18bの全域に励振電極20,21を有することから、後述する溝部18における第1側面18a及び第2側面18bの一部に励振電極20,21を有する場合と比較して、CI値を低くすることが可能となる。
したがって、水晶振動片1は、溝部18における第1側面18a及び第2側面18bの一部に励振電極20,21を有する場合と比較して、Q値を向上させることができる。
【0057】
また、水晶振動片1は、振動腕12,13が基部11側に位置する腕部16と、腕部16より先端側に位置し腕部16より幅が広い錘部17と、を有することから、錘部17の慣性質量の増加によるQ値の向上効果によって、例えば、Q値を維持しながら振動腕12,13を短くすることができる。
したがって、水晶振動片1は、Q値を維持しながら、さらなる小型化を図ることが可能となる。
【0058】
一方、水晶振動片1は、錘部17を有すると、屈曲振動における傾斜部19での歪みが、錘部17がない場合と比較して大きくなる(発生する熱量が大きくなる)。
しかしながら、水晶振動片1は、傾斜部19にかかる溝部18の底部18cの無電極領域において、励振電極20,21が形成されている場合と比較して熱伝導率が低くなることから、圧縮部から伸張部への熱の移動が遅くなり、錘部17を有する構成において、より効果的に傾斜部19の熱弾性損失を抑制することができる。
【0059】
また、水晶振動片1は、一対(2本)の振動腕12,13と、基部11とを含んで音叉を構成することから、上述した効果を奏する音叉型水晶振動片を提供できる。
【0060】
ここで、第1実施形態の変形例について説明する。
(変形例1)
図3は、変形例1の屈曲振動片の概略構成を示す模式図であり、図3(a)は平面図、図3(b)は、図3(a)のE−E線での断面図である。なお、第1実施形態との共通部分については、同一符号を付して詳細な説明を省略し、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0061】
図3に示すように、変形例1の屈曲振動片としての水晶振動片2は、溝部18の第1側面18a及び第2側面18bの傾斜部19にかかる範囲L1に、励振電極20,21が形成されていない。
換言すれば、水晶振動片2は、溝部18の第1側面18a及び第2側面18bの一部に励振電極20,21を有している。
【0062】
これによれば、水晶振動片2は、溝部18における第1側面18a及び第2側面18bの一部に励振電極20,21を有することから、上述した第1側面18a及び第2側面18bの全域に励振電極20,21を有する場合と比較して、溝部18の第1側面18a及び第2側面18bにおける励振電極20,21の面積が小さくなる。
このことから、水晶振動片2は、主にモーショナルキャパシタンスが減少することから、負荷容量感度を低くすることが可能となる。
したがって、水晶振動片2は、溝部18における第1側面18a及び第2側面18bの全域に励振電極20,21を有する場合と比較して、例えば、浮遊容量などに起因する周波数の変動を抑制することができる。
【0063】
(変形例2)
図4は、変形例2の屈曲振動片の概略構成を示す模式図であり、図4(a)は平面図、図4(b)は、図4(a)のF−F線での断面図である。なお、第1実施形態との共通部分については、同一符号を付して詳細な説明を省略し、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0064】
図4に示すように、変形例2の屈曲振動片としての水晶振動片3は、変形例1で述べた溝部18の第1側面18a及び第2側面18bの傾斜部19にかかる範囲L1に加えて、溝部18の錘部17側の一部の範囲L2における第1側面18a、第2側面18b及び底部18cに励振電極20,21が形成されていない。
【0065】
これによれば、水晶振動片3は、第1実施形態及び変形例1と比較して、溝部18の第1側面18a及び第2側面18bにおける励振電極20,21の面積が更に小さくなる。
このことから、水晶振動片3は、モーショナルキャパシタンスが更に減少することから、負荷容量感度を更に低くすることが可能となる。
したがって、水晶振動片3は、第1実施形態及び変形例1と比較して、例えば、浮遊容量などに起因する周波数の変動を更に抑制することができる。
【0066】
加えて、水晶振動片3は、溝部18の錘部17側の一部の範囲L2における底部18cに励振電極20,21が形成されていないことから、範囲L2での屈曲振動における圧縮部(例えば、第1側面18a側)から伸張部(例えば、第2側面18b側)への熱の移動が遅くなり、熱弾性損失を抑制することができる。
したがって、水晶振動片3は、第1実施形態及び変形例1と比較して、Q値を更に向上させることができる。
【0067】
(変形例3)
図5は、変形例3の屈曲振動片の要部模式断面図である。
図5は、変形例3の屈曲振動片としての水晶振動片4の溝部18の基部11側における要部を、振動腕12,13の延びる方向に沿って切断した断面図である。
なお、図5に示す溝部18以外の水晶振動片4の構成は、第1実施形態及び各変形例のいずれかと同様である。
【0068】
図5に示すように、水晶振動片4の溝部18の傾斜部19にかかる底部18cは、例えば、ウェットエッチングにより溝部18を形成した場合、基部11側から振動腕12,13の先端側に向かうに連れて、溝部18が深くなるように傾斜している斜面18fを有している。
そして、水晶振動片4の溝部18の傾斜部19にかかる底部18cは、斜面18fに無電極領域を有している。
なお、この斜面18fは、振動腕12,13の延びる方向に対して交差する方向に切断したときに、第1側面18a側及び第2側面18b側のいずれの側へも傾斜していないものとする。
【0069】
これによれば、水晶振動片4は、溝部18の傾斜部19にかかる底部18cが、基部11側から振動腕12,13の先端側に向かうに連れて、溝部18が深くなるように傾斜している斜面18fを有し、斜面18fに無電極領域を有していることから、励振電極20,21の電極パターン形成時におけるレジストのフォトリソグラフィーを用いたパターニングの際の、非露光部分(第1側面18a及び第2側面18bなど)への、光の反射による露光用光の照射を回避できる。
【0070】
詳述すると、溝部18の上方から斜面18fに向けて照射された露光用光Oは、底部18cの斜面18fで反射される際に、基部11側から振動腕12,13の先端側に向かうに連れて溝部18が深くなるような斜面18fの傾斜によって、振動腕12,13の延びる方向に沿って振動腕12,13の先端側に、入射角に応じた角度で反射される。
この結果、水晶振動片4は、励振電極20,21の電極パターン形成時におけるレジストのフォトリソグラフィーを用いたパターニングの際の、非露光部分(第1側面18a及び第2側面18bなど)への、光の反射による露光用光Oの照射を回避できることとなる。
【0071】
なお、底部18cの斜面18fは、図5における紙面左右方向の両端部の位置が傾斜部19の両端部の位置と一致している必要はない。例えば、底部18cの斜面18fは、振動腕12,13の先端側(紙面左側)の端部が、傾斜部19を越えていてもよく、傾斜部19内に収まっていてもよい。
【0072】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態として、上記で説明した水晶振動片を備えた振動子について説明する。
図6は、第2実施形態の振動子の概略構成を示す模式図であり、図6(a)は平面図、図6(b)は、図6(a)のG−G線での断面図である。なお、煩雑さを避けるために、水晶振動片の電極類は省略してある。
【0073】
図6に示すように、振動子としての水晶振動子5は、第1実施形態の水晶振動片1と、水晶振動片1を収容するパッケージ80と、を備えている。
パッケージ80は、パッケージベース81、シームリング82、蓋体85などから構成されている。
パッケージベース81は、水晶振動片1を収容できるように凹部が形成され、その凹部に水晶振動片1の図示しないマウント電極20c,21c(図1参照)と接続される接続パッド88が設けられている。
接続パッド88は、パッケージベース81内の配線に接続され、パッケージベース81の外周部に設けられた外部接続端子83と導通可能に構成されている。
【0074】
パッケージベース81の凹部の周囲には、シームリング82が設けられている。さらに、パッケージベース81の底部には、貫通穴86が設けられている。
水晶振動片1は、パッケージベース81の接続パッド88に導電性接着剤84を介して接着固定されている。そして、パッケージ80は、パッケージベース81の凹部を覆う蓋体85とシームリング82とがシーム溶接されている。
パッケージベース81の貫通穴86には、金属材料などからなる封止材87が充填されている。この封止材87は、減圧雰囲気内で溶融後固化され、パッケージベース81内が減圧状態を保持できるように、貫通穴86を気密に封止している。
水晶振動子5は、外部接続端子83を介した外部からの駆動信号により水晶振動片1が励振され、所定の周波数(例えば、32.768kHz)で発振(共振)する。
【0075】
上述したように、水晶振動子5は、水晶振動片1を備えていることから、第1実施形態と同様の効果(Q値の向上など)を奏する水晶振動子を提供することができる。
なお、水晶振動子5は、水晶振動片1に代えて水晶振動片2,3,4のいずれかを用いても、水晶振動片2,3,4に応じた効果を奏することができる。
【0076】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態として、上記で説明した水晶振動片を備えた発振器について説明する。
図7は、第3実施形態の発振器の概略構成を示す模式図であり、図7(a)は平面図、図7(b)は図7(a)のH−H線での断面図である。なお、煩雑さを避けるために、水晶振動片の電極類は省略してある。
【0077】
発振器としての水晶発振器6は、上記水晶振動子5の構成に回路素子をさらに備えた構成となっている。なお、水晶振動子5との共通部分については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図7に示すように、水晶発振器6は、第1実施形態の水晶振動片1と、水晶振動片1を発振させる発振回路を有する回路素子としてのICチップ91と、水晶振動片1及びICチップ91を収容するパッケージ80と、を備えている。
ICチップ91は、パッケージベース81の底部に固着され、Au、Alなどの金属ワイヤー92により他の配線と接続されている。
水晶発振器6は、ICチップ91の発振回路からの駆動信号により水晶振動片1が励振され、所定の周波数(例えば、32.768kHz)で発振(共振)する。
【0078】
上述したように、水晶発振器6は、水晶振動片1を備えていることから、第1実施形態と同様の効果(Q値の向上など)を奏する水晶発振器を提供することができる。
なお、水晶発振器6は、水晶振動片1に代えて水晶振動片2,3,4のいずれかを用いても、水晶振動片2,3,4に応じた効果を奏することができる。
【0079】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態として、上記で説明した水晶振動片を備えた電子機器について説明する。
図8は、第4実施形態の電子機器を示す模式斜視図である。
図8に示すように、電子機器としての携帯電話700は、上述した水晶振動片(1など)を備えた水晶振動子5や水晶発振器6を、例えば、タイミングデバイスとして備え、更に液晶表示装置701、複数の操作ボタン702、受話口703、及び送話口704を備えて構成されている。
【0080】
上述した水晶振動子5や水晶発振器6は、上記携帯電話に限らず、電子ブック、パーソナルコンピューター、テレビ、デジタルスチールカメラ、ビデオカメラ、ビデオレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器などのタイミングデバイスとして好適に用いることができ、いずれの場合にも上記各実施形態および各変形例で説明した効果を奏することで、これら電子機器の動作特性の向上などに貢献することができる。
【0081】
なお、上記各実施形態及び各変形例において、水晶振動片1,2,3,4の支持部15、錘部17は、なくてもよい。
また、上記各実施形態及び各変形例において、水晶振動片1,2,3,4の錘部17は、一対の振動腕12,13の腕部16より先端側において、腕部16より幅を広げる構造としたが、これに限定するものではなく、他の構造を有する錘部17も適用できる。
例えば、一対の振動腕12,13の腕部16より先端側において、腕部16より厚みを厚くした構造の錘部や、腕部16より先端側において、水晶振動片1,2,3,4を構成する基材より質量密度の高い材料からなる部材(例えばAuやCuなどの金属からなる部材)を固定若しくは埋設した構造の錘部も適用できる。
また、支持部15は、一対に限定するものではなく、一方だけでもよい。
【0082】
また、上記各実施形態及び各変形例において、溝部18は、底部18c、第1側面18a、および第2側面18bを有し、所謂H字型の断面形状を有しているが、これに限定するものではなく、例えば底部がなく、第1側面と第2側面とが鋭角をなすように接続された所謂V字型の断面形状を有する溝部であってもよい。
なお、上記各実施形態及び各変形例では、溝部18を振動腕12,13の両方の主面10a,10bに設けたが、これに限定するものではなく、いずれか一方の主面(10aまたは10b)のみでもよい。
また、上記各実施形態及び各変形例では、振動腕12,13の数を一対(2本)としたが、これに限定するものではなく、1本、または3本以上でもよい。
【0083】
なお、上記各実施形態及び各変形例では、振動片を水晶としたが、これに限定するものではなく、例えば、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、四ホウ酸リチウム(Li247)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)などの圧電体、または酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)などの圧電体を被膜として備えたシリコンなどであってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1,2,3,4…屈曲振動片としての水晶振動片、5…振動子としての水晶振動子、6…発振器としての水晶発振器、10a…一方の主面、10b…他方の主面、11…基部、12…振動腕、12a,12b…側面、13…振動腕、13a,13b…側面、14…切り欠き部、15…支持部、16…腕部、17…錘部、18…溝部、18a…第1側面、18b…第2側面、18c…底部、18d,18e…連結部、18f…斜面、19…傾斜部、20,21…電極としての励振電極、20a,21a…第1励振電極部、20b,21b…第2励振電極部、20c,21c…マウント電極、22,23…接続電極、80…パッケージ、81…パッケージベース、82…シームリング、83…外部接続端子、84…導電性接着剤、85…蓋体、86…貫通穴、87…封止材、88…接続パッド、91…回路素子としてのICチップ、92…金属ワイヤー、700…電子機器としての携帯電話、701…液晶表示装置、702…操作ボタン、703…受話口、704…送話口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
前記基部から延び、屈曲振動する振動腕と、
を備え、
前記振動腕は、主面に、前記振動腕の長手方向に沿って形成された溝部を有し、
前記溝部に励振電極が配置され、
前記振動腕は、前記基部に隣接する接続部を有し、
前記溝部の一部は、前記接続部に配置され、且つ、前記励振電極が形成されない無電極領域を有していることを特徴とする屈曲振動片。
【請求項2】
請求項1に記載の屈曲振動片において、
前記振動腕は、前記接続部において、前記振動腕の先端側から前記基部側に近づくに連れて、前記主面上における前記溝部から前記振動腕の外縁までの幅が広くなる形状を有することを特徴とする屈曲振動片。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の屈曲振動片において、
前記励振電極は、第1励振電極部及び第2励振電極部を有し、
前記溝部の前記一部は、その内壁における前記振動腕の幅方向の一方側に前記第1励振電極部が配置され、他方側に前記第2励振電極部が配置され、
前記無電極領域は、前記第1励振電極部と前記第2励振電極部との間に配置されていることを特徴とする屈曲振動片。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の屈曲振動片において、
前記溝部は、
前記振動腕の前記長手方向に沿った第1側面と、
前記振動腕の前記長手方向に沿った第2側面と、
前記第1側面と前記第2側面とを接続し、前記溝部の底を形成する底部と、
を有し、
前記底部の一部は、前記接続部に配置され、且つ、その少なくとも一部に前記無電極領域を有し、
前記溝部は、平面視において、前記第1側面及び前記第2側面の全域に前記励振電極を有することを特徴とする屈曲振動片。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の屈曲振動片において、
前記溝部は、
前記振動腕の前記長手方向に沿った第1側面と、
前記振動腕の前記長手方向に沿った第2側面と、
前記第1側面と前記第2側面とを接続し、前記溝部の底を形成する底部と、
を有し、
前記底部の一部は、前記接続部に配置され、且つ、その少なくとも一部に前記無電極領域を有し、
前記溝部は、平面視において、前記第1側面の一部及び前記第2側面の一部に前記励振電極を有することを特徴とする屈曲振動片。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の屈曲振動片において、
前記接続部に配置された前記底部は、前記基部側から前記振動腕の前記先端側に向かうに連れて、前記溝部が深くなる斜面を有し、
前記斜面に前記無電極領域を有していることを特徴とする屈曲振動片。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の屈曲振動片において、
前記振動腕は、前記基部側に位置する腕部と、前記腕部より前記先端側に位置する錘部と、を有することを特徴とする屈曲振動片。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の屈曲振動片において、前記振動腕を複数本備え、前記複数本の振動腕と、前記基部とを含んで音叉を構成することを特徴とする屈曲振動片。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の屈曲振動片と、
前記屈曲振動片を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする振動子。
【請求項10】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の屈曲振動片と、
前記屈曲振動片を発振させる回路を有する回路素子と、
を備えたことを特徴とする発振器。
【請求項11】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の屈曲振動片を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−19440(P2012−19440A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156576(P2010−156576)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】