説明

干渉縞による形状・段差測定方法

【課題】波長走査の前後に基準面を機械駆動する機構を付加することにより、被測定体の表面に半波長以上の高さの段差が存在しても、不確定さなしに二次元表面形状を決定可能とする。
【解決手段】出力光の波長λを時間的に変化させ得るレーザ光源1と、レーザ光源1からの光束を平行光束とした後、基準板4の基準面4’上、被測定面7上および既知の段差Hのゲージブロック8の上面9上に導くコリメータレンズ3と、基準板4の基準面4’を光束に平行に波長の数分の一ずつ平行移動させる駆動機構5と、基準面4’、被測定面7およびゲージブロック8からの光束の光干渉により得られた干渉縞情報を撮像するCCDカメラ12とを備えた干渉計装置を用いて干渉縞による形状・段差を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長可変レーザを観察用光源とする0渉計装置を利用し、被測定体の表面形状を観察光の作る干渉縞の位相情報として得る干渉縞による形状・段差測定方法に関し、特に、波長走査の前後に基準面を機械駆動する機構を付加することにより、被測定体の表面に半波長以上の高さの段差が存在しても、不確定さなしに二次元表面形状を決定する干渉縞による形状・段差測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、精密な光学鏡面やレンズ形状を測定する光学測定装置として、例えば、フィゾー型干渉計装置が知られている。このようなフィゾー型干渉計装置では、被測定面に基準面を接近させ、ヘリウムネオンレーザー光源等単色の平面光波で両者を照明し、基準面を駆動機構により動かしながら、両面からの反射光により生成される干渉縞を、CCDカメラ等の撮像装置で撮像し、得られた干渉縞画像を解析して上記被検面表面の形状(位相変化)を観察測定する。
【0003】
測定分解能として、照明光波長の1/600以上、約1nmという高分解能がすでに得られているが、干渉縞位相は半波長を周期とする周期関数であるために、その部分で干渉縞に半波長の整数倍の不連続な飛びを生じ、段差の高さを正しく検出することができなかった。
【0004】
このような手段の変形として特許文献1及び非特許文献1、2に示されているように、参照面を機械駆動する代わりに、照明光波長を走査して干渉縞画像を取り込む方法が知られているが、これらはすべて、なめらかな被測定面の形状および試料の厚さの不均一を検出するものであり、前述のフィゾー型干渉計装置と同様に、被測定面に半波長以上の段差が存在する場合は、干渉縞に半波長の整数倍の不連続な飛びを生じるため、表面形状や厚さ不均一を正しく検出することはできなかった。
【0005】
これを回避するために、波長が段差高さよりも長くなるように炭酸ガスレーザー光源を用いたフィゾー干渉計や二波長光源を用いた合成波長干渉計が試みられているが、いずれも用いる波長が可視光に比べてかなり大きくなるため、分解能も上記のヘリウムネオンレーザーの場合の1nmに比較して、10倍以上低下する欠点があった。
【0006】
一方、市販されているゼーマンレーザー測長器や光音響光学素子を用いて、マイケルソン干渉計の構成をとる干渉測長器は、非特許文献3に示すヘテロダイン干渉法を原理とするが、分解能は1nm以上を達成することも可能である反面、上記フィゾー干渉計と同様に半波長以上の段差を正しく検出できない問題がある。
【0007】
また、干渉縞から被検面表面の段差を測定する手段として、光源に波長可変レーザを用いて波長走査するFM測長法が知られている。FM測長法は、非特許文献4、5、6に示されているように、マイケルソン型干渉計を用いて物体の一点に照射し反射した物体光と参照面で反射した参照光を干渉させ、波長走査を行い干渉縞の変調周波数を周波数カウンターで精密に測定することにより、上記周波数から物体までの距離を算出する方法である。
【0008】
しかしながら、この方法では、周波数測定の精度を上げるために波長走査幅を大きく設定する必要がある。波長走査幅100nmのとき高さ分解能3μmが得られている。
【0009】
さらに、非特許文献7に示すように、フォトダイオードや水銀ランプの白色光を光源とするマイケルソン干渉計を構成し、参照面を光軸方向に機械的に駆動し、干渉縞が出現する参照面位置から物体表面の段差高を検出する低コヒーレンス干渉計(あるいは光コヒーレンストモグラフィー干渉計)が知られている。
【0010】
この低コヒーレンス干渉計は、段差を含む形状を光学的に測定する代表的方法としてすでに利用されているが、参照面の移動距離を段差高さより長くとる必要があり、測定できる口径が数mm程度の小さい試料しか測定できず、半導体ウェーハ等の大口径の物体を測定することが困難で問題があった。
【0011】
また、参照面が波長の1/6(ないし1/8)移動する毎に干渉縞を記録する必要があるため、多数の画像記録を必要とし、測定時間が非常に長くなるという問題があった。たとえば1mmの段差測定では、今回の方法の210枚に比較して、最低5000枚の画像を記録する必要がある。
【0012】
さらに、参照鏡面を精密に機械移動する必要から、口径が数mm以下に限定されていた。また、白色光を光源とするために、光軸方向の高さ測定分解能が0.1μm以下であり、ナノメートルの分解能が必要な半導体の微細加工物等では、分解能不足であった。
【特許文献1】Zygoの1984 11/5の特許
【非特許文献1】K.Okada, H. Sakuta, T. Ose, and J. Tsujiuchi, “Separate measurements of surfaceshapes and refractive index inhomogeneity of an optical element usingtunable-source phase shifting interferometry,” Appl. Opt. 29,3280-3285 (1990).
【非特許文献2】US5488477-A“Measuring surface topography of transparent object with approximately parallelsurfaces e.g. lens - calculating profile from two phase maps based onphase-shifting interferometry corresp. to forward and reversed orientation tolens in interferometer cavity, De Groot P, Zygo corp.
【非特許文献3】中島、「ヘテロダイン干渉法」、光学9,266-274 (1980).
【非特許文献4】A.Yamamotoand I.Yamaguchi, “Profilometry of sloped plane surfaces by wavelength scanninginterferometry,” Optical Review 9, 112-121 (2002).
【非特許文献5】郭志徹、「波長走査干渉計における信号処理」精密工学会誌69, 831-835 (2003).
【非特許文献6】小林、「半導体レーザーによる干渉測長技術」光学17, 279-284 (1988).
【非特許文献7】丹野、「光コヒーレンス断層画像化法と生体映像への応用」光学28, 116-125 (1999).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記従来の問題を解決することを目的とするものであり、次のような性能を有する干渉縞による形状・段差測定方法を実現するものである。
(1)測定口径として、従来のフィゾー干渉計で実現されている300mm以下を可能とする。
(2)半導体ウェーハ1枚を同時に測定する事ができ、しかも測定分解能として、従来の段差を測定できないフィゾー干渉計と同様な1nm以上を達成することが可能である。
(3)必要な画像数が、従来の約1/25程度にに減少させて、測定時間の大幅な短縮を可能とし、生産現場の生産性の向上に寄与する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記課題を解決するために、出力光の波長λを時間的に変化させ得るレーザ光源と、該レーザ光源からの光束を平行光束とした後基準面上、被測定面上および既知の段差Hのゲージブロック面上に導く光学系と、前記基準面を光束に平行に波長の数分の一ずつ平行移動させる駆動系と、前記基準面、前記被測定面および前記ゲージブロック上からの光束の光干渉により得られた干渉縞情報を撮像する撮像手段とを備えた干渉計装置を用いた干渉縞による形状・段差測定方法であって、出力光の波長をλに固定したまま前記撮像手段により干渉縞画像I1(x, y)を撮像し、前記基準面を前記駆動系により八分の一波長λ/8ずつ後退させる毎に、前記撮像手段により干渉縞画像I2(x, y)〜I5(x, y)を撮像し、該基準面を静止させた後、前記出力光の波長をλから略Δλ/M(Mは取り込む画像の枚数)ずつ変化させる毎に、前記撮像手段により干渉縞画像I6(x, y)〜IM+5(x, y)を撮像し、さらに前記出力光の波長をλ+Δλに固定したまま、該基準面を前記駆動系により八分の一波長(λ+Δλ)/8ずつ後退させる毎に、前記撮像手段により干渉縞画像IM+6(x, y)〜IM+9(x, y)を撮像し、該撮像して得られた該被測定面の干渉縞画像情報Ij(x, y)に対して、下記の数式(1)および数式(2)に基づく演算処理を施して得られる干渉縞位相をδ(x, y)、δ2(x, y)とし、また下記の数式(3)に基づく離散的フーリエ変換処理を施して得られる干渉縞周波数の近似値を与える整数(Fkを最大にする整数k)をr(x, y)とし、該ゲージブロックの段差Hを与える上面および下面の各一点の座標をそれぞれ(xT, yT)、(xB, yB)とするとき、下記の数式(4)により該被測定面中心位置(x0, y0)から測った測定面各位置(x, y)の高さL1(x, y)を求める、ことを特徴とする干渉縞による形状・段差測定方法。
【0015】
【数1】

【0016】
【数2】

【0017】
【数3】

【0018】
【数4】

【0019】
前記の数式(4)により求める高さL1(x, y)は、前記被測定面中心位置(x0, y0)から測った測定面各位置(x, y)の高さ近似値であり、
波長λにおける空気の屈折率をn1とするとき、前記高さ近似値L1(x, y)を下記の数式(5)の右辺に代入して計算される整数値m(x, y)から、下記の数式(6)により該被測定面各位置(x, y)における高さのより正確な値L2(x, y)を決定することを特徴とする干渉縞による形状・段差測定方法としてもよい。
【0020】
【数5】

【0021】
【数6】

【0022】
本発明は上記課題を解決するために、出力光の波長λを時間的に変化させ得るレーザ光源と、該レーザ光源からの光束を平行光束とした後基準面上、被測定面上および波長計に導く光学系と、前記基準面を光束に平行に波長の数分の一ずつ平行移動させる駆動系と、前記基準面、前記被測定面および前記波長計からの光束の光干渉により得られた干渉縞情報を撮像する撮像手段とを備えた干渉計装置を用いた干渉縞による形状・段差測定方法であって、前記波長計により波長走査幅Δλを測定し、出力光の波長をλに固定したまま前記撮像手段により干渉縞画像I1(x, y)を撮像し、該基準面を前記駆動系により八分の一波長λ/8ずつ後退させる毎に、前記撮像手段により干渉縞画像I2(x, y)〜I5(x, y)を撮像し、該基準面を静止させた後、前記出力光の波長をλから略Δλ/M(Mは取り込む画像の枚数)ずつ変化させる毎に、前記撮像手段により干渉縞画像I6(x, y)〜IM+5(x, y)を撮像し、さらに前記出力光の波長をλ+Δλに固定したまま、該基準面を前記駆動系により八分の一波長(λ+Δλ)/8ずつ後退させる毎に、前記撮像手段により干渉縞画像IM+6(x, y)〜IM+9(x, y)を撮像し、該撮像して得られた該被測定面の干渉縞画像情報Ij(x, y)に対して、数式(1)および数式(2)に基づく演算処理を施して得られる干渉縞位相をδ(x, y)、δ2(x, y)とし、また数式(3)に基づく離散的フーリエ変換処理を施して得られる干渉縞周波数の近似値を与える整数(Fkを最大にする整数k)をr(x, y)とするとき、下記の数式(7)により該被測定面中心位置(x0, y0)から測った該被測定面各位置(x, y)の高さ近似値L1(x, y)を求めることを特徴とする干渉縞による形状・段差測定方法を提供する。
【0023】
【数7】

【0024】
前記干渉計装置としてフィゾー型を使用してもよい。
【0025】
前記干渉計装置としてミラウ型を使用し、基準面を平行移動させるかわりに、干渉計の対物レンズ下端の半透鏡を駆動してもよい。
【0026】
前記干渉計装置としてミラウ型を使用し、基準面を平行移動させるかわりに、干渉計の対物レンズ下端の半透鏡を駆動する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る干渉縞による形状・段差測定方法は、波長走査の前後に機械駆動による位相シフト位相検出機構を導入する位相シフト干渉計を構成することにより、次のような顕著な効果が生じる。
(1)波長走査幅を最小化することが可能となり、従来の波長走査だけによる段差測定の分解能1μmを上回る分解能を達成することが可能である。
【0028】
(2)必要な干渉縞画像数を最小化するために波長走査の前後にピエゾ駆動による位相シフト位相検出を導入し、波長走査非線形の影響を取り除くために高さ標準として供給されるゲージブロックとの直接比較で段差高さを検出することにより、二次元の物体表面を同時に、また従来のフィゾー干渉計の分解能1nmを損なうことなく、半波長を超える段差高さを正しく検出することが可能となる。
【0029】
(3)従来の段差測定法である低コヒーレンス干渉計や光コヒーレンストモグラフィー干渉計と比較すると、取得すべき必要な画像数を従来法の約1/25にまで低減し、測定時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0030】
例えば、高さL =1mmの段差を測定する場合について、従来法と必要な画像数を比較してみる。波長λ=633 nm、走査幅Δλ=10nmと仮定すると、波長走査時の干渉縞の周期的な変化数r(x, y)は、約50である。これを検出するために必要な画像数は、本方法の場合200である。機械駆動時の記録画像9と併せて、約209画像が必要となる。
【0031】
従来の低コヒーレンス干渉計では、測定時に機械駆動により基準面を1mm移動するが、その間、1/4波長移動する毎に画像を記録する必要があり、必要な画像数は約6300画像となる。以上のことから、低コヒーレンス干渉計と比較して、同じ段差高さの形状測定に必要な画像数は、本方法の採用により従来法より大幅に低減する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明に係る干渉縞による形状・段差測定方法の実施形態について実施例に基づき図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0033】
図1は、本発明に係る干渉縞による形状・段差測定方法の実施例1を説明する図であり、この実施例1では、干渉縞解析方法を実施するためのフィゾー型干渉計装置を利用する。
【0034】
図1において、1は出力光の波長λを可変とし得るレーザダイオード等の単色波長可変レーザ光源、2は顕微鏡対物レンズ、3はコリメータレンズ、4は基準面4’を規定する基準板、5は基準面4’を光軸に平行に移動するピエゾ素子等の駆動機構、6は被測定物体、7は被測定面、8は高さHが既知であるゲージブロック、9はゲージブロック上面、10はゲージブロック下面、11は空間フィルター、12は干渉縞を記録するCCDカメラ、13ピンホール、14は反射鏡14である。
【0035】
このフィゾー型干渉計装置は、ダイオードレーザ光源1、コリメータレンズ3、基準板4、空間フィルター11、及びCCDカメラ12を備えている。ダイオードレーザ光源1から出射されたレーザ光束を、コリメータレンズ3から平行光束として出射させる、顕微鏡対物レンズ2、ピンホール13及び反射鏡14がさらに配置されている。
【0036】
ダイオードレーザ光源1は、出力光の波長λを時間的に変化させ得るレーザ光束を出射することができる。このレーザ光束は、顕微鏡対物レンズ2とピンホールにより集光・拡散したのちコリメータレンズ3によって平行光束とし、基準板の基準面4、被測定物体6の被測定面、および高さHが既知であるゲージブロック8へ導かれる。
【0037】
基準板4の基準面4’で反射された光束、被測定面およびゲージブロック表面9,10で反射された光束は互いに干渉しつつ光路を逆行し、空間フィルター11でノイズ光と分離された後、CCDカメラ12の撮像面上に被測定面およびゲージブロック表面の位相情報を有する干渉縞を形成する。
【0038】
基準面4’は、基準板4に付設したピエゾ素子等の駆動系5により光束に平行に波長の数分の一ずつ平行移動する。ここで得られた干渉縞画像情報はパソコン等の演算装置において所定の演算処理が施され、有効かつ高精度な干渉縞解析がなされる。
【0039】
以上の構成から成る実施例1の干渉縞による形状・段差測定方法を、さらにその測定プロセスの順により順次、説明する。
【0040】
出力光の波長をλに固定したままCCDカメラ12により干渉縞画像I1(x, y)を撮像し、基準面4’を駆動系5により八分の一波長λ/8ずつ後退させる毎に、CCDカメラ12により干渉縞画像I2(x, y)〜I5(x, y)を撮像する。
【0041】
次に、基準面4’を静止させた後、光源1の波長をλから略Δλ/M(Mは取り込む画像の枚数)ずつ変化させる毎に、CCDカメラ12により干渉縞画像I6(x, y)〜IM+5(x, y)を撮像する。
【0042】
さらに、光源1の波長をλ+Δλに固定したまま、基準面4’を駆動系5により八分の一波長(λ+Δλ)/8ずつ後退させる毎に、CCDカメラ12により干渉縞画像IM+6(x, y)〜IM+9(x, y)を撮像し、該撮像して得られた該被測定面の干渉縞画像情報Ij(x, y)に対して、次の数式(1)に基づく演算処理を施して干渉縞位相δ(x, y)を得る。
【0043】
【数1】

【0044】
さらに、数式(2)に基づく演算処理を施して干渉縞位相δ2(x, y)を得る。
【0045】
【数2】

【0046】
また干渉縞画像に数式(3)に基づく離散的フーリエ変換処理を施して、干渉縞周波数の近似値を与える整数値(Fkを最大にする整数k)r(x, y)を得る。
【0047】
【数3】

【0048】
ゲージブロック8の段差Hを与える上面および下面の各一点9および10の座標をそれぞれ(xT, yT)、(xB, yB)とするとき、数式(4)により、被測定面中心位置7(x0, y0)から測った測定面各位置(x, y)の高さ近似値L1(x, y)を得る。
【0049】
【数4】

【0050】
さらに、波長λにおける空気の屈折率をnとするとき、前記高さ近似値L1(x, y)を数式(5)の右辺に代入して計算される整数値m(x, y)から、数式(6)により該被測定面各位置(x, y)における高さのより正確な値L2(x, y)を決定する。
【0051】
【数5】

【0052】
【数6】

【0053】
また、高さ近似値L1(x, y)は、数式(4)の替わりにブロックゲージを用いないで数式(7)により求めることもできる。
【0054】
【数7】

【実施例2】
【0055】
図2は、本発明に係る干渉縞による形状・段差測定方法の実施例2を説明する図であり、この実施例2では、干渉縞解析方法を実施するためのミラウ型干渉計装置を利用する。
【0056】
図2において、1は出力光の波長λを可変とし得るレーザダイオード等の単色波長可変レーザ光源、2は顕微鏡対物レンズ、3はコリメータレンズ、4はミラウ干渉計の半透鏡15を備え、基準面4’を規定する基準板、5は基準面4’を光軸に平行に移動するピエゾ素子等の駆動機構、6は被測定物体、7は被測定面、11は空間フィルター、12は干渉縞を記録するCCDカメラ、13はピンホール、14は反射鏡である。
【0057】
このミラウ型干渉計装置では、出力光の波長λを時間的に変化させ得るダイオードレーザ光源1から出射されたレーザ光束を、顕微鏡対物レンズ2とピンホール13により集光・拡散したのちコリメータレンズ3によって収束光束とし、干渉計の半透鏡15と基準板4の基準面4’、被測定物体6の被測定面7へ導く。
【0058】
基準面4’で反射された光束、被測定面7で反射された光束は互いに干渉しつつ光路を逆行し、空間フィルター11でノイズ光と分離された後、CCDカメラ12の撮像面上に被測定面の位相情報を有する干渉縞を形成する。
【0059】
基準面4’は、基準板4に付設されたピエゾ素子等の駆動系5により光束に平行に波長の数分の一ずつ平行移動する。ここで得られた干渉縞画像情報はパソコンの演算装置において所定の演算処理が施され、有効かつ高精度な干渉縞解析がなされる。
【0060】
以上の構成から成る実施例2の干渉縞による形状・段差測定方法を、さらにその測定プロセスの順により順次、説明する。
【0061】
出力光の波長をλに固定したままCCDカメラ12により干渉縞画像I1(x, y)を撮像し、基準面4を駆動系5により八分の一波長λ/8ずつ後退させる毎に、CCDカメラ12により干渉縞画像I2(x, y)〜I5(x, y)を撮像する。
【0062】
基準面4を静止させた後、光源1の波長をλから略Δλ/M(Mは取り込む画像の枚数)ずつ変化させる毎に、CCDカメラ12により干渉縞画像I6(x, y)〜IM+5(x, y)を撮像する。
【0063】
さらに、光源1の波長をλ+Δλに固定したまま、基準面4を駆動系5により八分の一波長(λ+Δλ)/8ずつ後退させる毎に、CCDカメラ12により干渉縞画像IM+6(x, y)〜IM+9(x, y)を撮像する。
【0064】
このように撮像して得られた該被測定面の干渉縞画像情報Ij(x, y)に対して、数式(8)に基づく演算処理を施して干渉縞位相δ(x, y)を得る。
【0065】
【数8】

【0066】
また、数式(9)に基づく演算処理を施して干渉縞位相δ2(x, y)を得る。
【0067】
【数9】

【0068】
また干渉縞画像に数式(10)に基づく離散的フーリエ変換処理を施して、干渉縞周波数の近似値を与える整数値(Fkを最大にする整数k)r(x, y)を得る。
【0069】
【数10】

【0070】
波長λおよびλ+Δλでの空気の屈折率をそれぞれn、nとするとき、数式(11)により、被測定面中心位置7(x0, y0)から測った測定面各位置(x, y)の高さ近似値L1(x, y)を得る。
【0071】
【数11】

【0072】
さらに、波長λにおける空気の屈折率をn1とするとき、前記高さ近似値L1(x, y)を数式(12)を右辺に代入して計算される整数値m(x, y)から、数式(13)により該被測定面各位置(x, y)における高さのより正確な値L2(x, y)を決定する。
【0073】
【数12】

【0074】
【数13】

【0075】
以上、本発明に係る形状・段差測定方法の実施の形態を実施例1、2を挙げて説明したが、本発明の実施例は上記実施例1、2に限定されることはなく、特許請求の範囲の技術的範囲内でいろいろな態様があることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上の構成から成る本発明は、フィゾー干渉計やミラウ干渉計の測定可能範囲を飛躍的に広めることができ、光学素子製作や半導体製作のために表面形状を精密に測定することが可能となり、例えば、光学レンズや光学鏡面等の作成時における加工形状の測定、精密機械部品の表面形状計測、半導体ウェーハ表面の段差を含む形状の測定に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る干渉縞による形状・段差測定方法の実施例1を説明する図である。
【図2】本発明に係る干渉縞による形状・段差測定方法の実施例2を説明する図である。
【符号の説明】
【0078】
1 出力光
2 顕微鏡対物レンズ
3 コリメータレンズ
4 基準板
4’ 基準面
5 ピエゾ素子等の駆動機構
6 被測定物体
7 被測定面
8 ゲージブロック
9 ゲージブロック上面
10 ゲージブロック下面
11 空間フィルター
12 CCDカメラ
13 ピンホール
14 反射鏡
15 半透鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力光の波長λを時間的に変化させ得るレーザ光源と、
該レーザ光源からの光束を平行光束とした後基準面上、被測定面上および既知の段差Hのゲージブロック面上に導く光学系と、
前記基準面を光束に平行に波長の数分の一ずつ平行移動させる駆動系と、
前記基準面、前記被測定面および前記ゲージブロック上からの光束の光干渉により得られた干渉縞情報を撮像する撮像手段とを備えた干渉計装置を用いた干渉縞による形状・段差測定方法であって、
出力光の波長をλに固定したまま前記撮像手段により干渉縞画像I1(x, y)を撮像し、前記基準面を前記駆動系により八分の一波長λ/8ずつ後退させる毎に、前記撮像手段により干渉縞画像I2(x, y)〜I5(x, y)を撮像し、
該基準面を静止させた後、前記出力光の波長をλから略Δλ/M(Mは取り込む画像の枚数)ずつ変化させる毎に、前記撮像手段により干渉縞画像I6(x, y)〜IM+5(x, y)を撮像し、
さらに前記出力光の波長をλ+Δλに固定したまま、該基準面を前記駆動系により八分の一波長(λ+Δλ)/8ずつ後退させる毎に、前記撮像手段により干渉縞画像IM+6(x, y)〜IM+9(x, y)を撮像し、
該撮像して得られた該被測定面の干渉縞画像情報Ij(x, y)に対して、下記の数式(1)および数式(2)に基づく演算処理を施して得られる干渉縞位相を
δ(x, y)、δ2(x, y)とし、
また下記の数式(3)に基づく離散的フーリエ変換処理を施して得られる干渉縞周波数の近似値を与える整数(Fkを最大にする整数k)をr(x, y)とし、
該ゲージブロックの段差Hを与える上面および下面の各一点の座標をそれぞれ(xT, yT)、(xB, yB)とするとき、下記の数式(4)により該被測定面中心位置(x0, y0)から測った測定面各位置(x, y)の高さL1(x, y)を求める、
ことを特徴とする干渉縞による形状・段差測定方法。
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【請求項2】
前記の数式(4)により求める高さL1(x, y)は、前記被測定面中心位置(x0, y0)から測った測定面各位置(x, y)の高さ近似値であり、
波長λにおける空気の屈折率をn1とするとき、前記高さ近似値L1(x, y)を下記の数式(5)の右辺に代入して計算される整数値m(x, y)から、下記の数式(6)により該被測定面各位置(x, y)における高さのより正確な値L2(x, y)を決定することを特徴とする請求項1記載の干渉縞による形状・段差測定方法。
【数5】

【数6】

【請求項3】
出力光の波長λを時間的に変化させ得るレーザ光源と、
該レーザ光源からの光束を平行光束とした後基準面上、被測定面上および波長計に導く光学系と、
前記基準面を光束に平行に波長の数分の一ずつ平行移動させる駆動系と、
前記基準面、前記被測定面および前記波長計からの光束の光干渉により得られた干渉縞情報を撮像する撮像手段とを備えた干渉計装置を用いた干渉縞による形状・段差測定方法であって、
前記波長計により波長走査幅Δλを測定し、
出力光の波長をλに固定したまま前記撮像手段により干渉縞画像I1(x, y)を撮像し、該基準面を前記駆動系により八分の一波長λ/8ずつ後退させる毎に、前記撮像手段により干渉縞画像I2(x, y)〜I5(x, y)を撮像し、
該基準面を静止させた後、前記出力光の波長をλから略Δλ/M(Mは取り込む画像の枚数)ずつ変化させる毎に、前記撮像手段により干渉縞画像I6(x, y)〜IM+5(x, y)を撮像し、
さらに前記出力光の波長をλ+Δλに固定したまま、該基準面を前記駆動系により八分の一波長(λ+Δλ)/8ずつ後退させる毎に、前記撮像手段により干渉縞画像IM+6(x, y)〜IM+9(x, y)を撮像し、
該撮像して得られた該被測定面の干渉縞画像情報Ij(x, y)に対して、数式(1)および数式(2)に基づく演算処理を施して得られる干渉縞位相をδ(x, y)、δ2(x, y)とし、
また数式(3)に基づく離散的フーリエ変換処理を施して得られる干渉縞周波数の近似値を与える整数(Fkを最大にする整数k)をr(x, y)とし、波長λおよびλ+Δλでの空気の屈折率をそれぞれn1、n2とするとき、
下記の数式(7)により該被測定面中心位置(x0, y0)から測った該被測定面各位置(x, y)の高さ近似値L1(x, y)を求めることを特徴とする干渉縞による形状・段差測定方法。
【数7】

【請求項4】
前記干渉計装置がフィゾー型であることを特徴とする請求項1、2あるいは3記載の干渉縞による形状・段差測定方法。
【請求項5】
前記干渉計装置がミラウ型であり、基準面を平行移動させるかわりに、干渉計の対物レンズ下端の半透鏡を駆動することを特徴とする請求項3記載の干渉縞による形状・段差測定方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−266841(P2006−266841A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84716(P2005−84716)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】