説明

平面度測定方法

【課題】測定対象物の表面の平面度を精度良く求めることができる平面度測定方法を提供する。
【解決手段】平面度測定方法は、レーザ変位計を含むレーザ測定装置が、レーザ光を走査しながら、複数の位置における前記測定対象物の表面と測定基準面とする液面との間の、前記レーザ光の照射方向における距離の情報を測定して取り込む。この後、前記レーザ変位計が測定した複数の位置における前記距離の情報と、前記レーザ変位計が走査した前記複数の位置の位置情報をコンピュータが取り込む。前記コンピュータは、測定した前記位置それぞれにおける前記位置情報と前記距離の情報を座標として表した測定データを、座標空間上の点で表したとき、前記点すべてが2つの平行平面の間に挟まれ、かつ前記2つの平行平面の間の距離が最小となる目標平行平面を、前記2つの平行平面の傾きを変えながら探索することにより、前記平面度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の表面の平面度を測定する平面度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ(以下、「FPD」という。)に用いるガラス基板には、厚さが例えば0.5〜0.7mmと薄いガラス板が用いられている。このFPD用ガラス基板は、例えば第1世代では300×400mmのサイズであるが、第10世代では2850×3050mmのサイズになっている。
【0003】
このような第8世代以降の大きなサイズのFPD用ガラス基板を製造するには、オーバーフローダウンドロー法が最もよく使用される。オーバーフローダウンドロー法は、成形炉において溶融ガラスを成形体の上部から溢れさせることにより成形体の下方において板状ガラスを成形する工程と、板状ガラスを徐冷炉において徐冷する工程とを含む。徐冷炉は、対になったローラ間に板状ガラスを引き込むことにより所望の厚さに引き伸ばした後、板状ガラスの内部歪や熱収縮を低減するように、板状ガラスを徐冷する。この後、板状ガラスは、所定の寸法に切断されてガラス板とされて他のガラス板上に積層されて保管される。あるいはガラス板は次工程に搬送される。オーバーフローダウンドロー法については、例えば、下記特許文献1に記載されている。
【0004】
このようなダウンドロー法に用いる成形体は精度良く作製され、成形体の表面は平面度が高いことが望まれている。これは、成形体の表面では、溶融ガラスが流れるため、板状ガラスが目標厚さになるように精度良く、しかも、場所によって厚さのばらつきがないように成形し、ひいてはガラス基板の厚さムラが生じないようにするためである。
【0005】
一方、測定の基準となる基準平面として液面を利用しつつ、測定精度の向上はもちろん、測定の操作性の向上およびを測定対象の制限の少ない実用的な平面度測定装置が知られている(特許文献2)。
上記平面度測定装置は、被測定面に沿って移動自在な平面度測定装置本体と、該平面度測定装置本体から独立して準理想平面となる基準液面を形成する液槽とを設け、前記平面度測定装置本体に、被測定面を機械的に倣う倣い手段および基準液面に対する上下動を計測する光式変位センサを上下動自在に装着し、基準液面と被測定面の差を測定することにより被測定面の平面度を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−196879号公報
【特許文献2】特開2008−224322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記平面度測定装置は被測定面を機械的に倣う倣い手段を用いて計測を行うので、精度の高い測定結果を得ることができない場合がある。また、上記平面度測定装置では、測定精度を高めるために倣い手段である測定輪の接触点の位置と、液面上の測定点とを垂直軸に対して一致させることが必要である。しかし、成形体のように測定対象物の被測定面が傾斜している場合、測定輪の接触点は、傾斜した被測定面において、液面上の測定点を通過する垂直軸上に位置しないため、精度高く測定することができない場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、従来技術とは異なる方式を用いて、測定対象物の表面の平面度を精度良く求めることができる平面度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、測定対象物の表面の平面度を測定する平面度測定方法である。
当該方法は、
レーザ変位計を含むレーザ測定装置が、レーザ光を走査しながら、複数の位置における前記測定対象物の表面と測定基準面とする液面との間の、前記レーザ光の照射方向における距離の情報を測定して取り込むステップと、
前記レーザ変位計が測定した複数の位置における前記距離の情報と、前記レーザ変位計が走査した前記複数の位置の位置情報をコンピュータが取り込み、前記コンピュータが、測定した前記位置それぞれにおける前記位置情報と前記距離の情報を座標として表した測定データを、座標空間上の点で表したとき、前記点すべてが2つの平行平面の間に挟まれ、かつ前記2つの平行平面の間の距離が最小となる目標平行平面を、前記2つの平行平面の傾きを変えながら探索することにより、前記平面度を算出するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0010】
上記形態の平面度測定方法では、測定対象物の表面の平面度を精度良く求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の平面度測定方法を実施するシステムの概要を説明ずる図である。
【図2】図1に示すシステムで用いるレーザフォーカス方式のレーザ変位計の構成を説明する図である。
【図3】図1に示すシステムで用いるデータ処理装置の構成を示す図である。
【図4】(a)〜(c)は、本実施形態の平面度測定方法において行われる平行平面間距離の算出及び平面度の求め方を説明する図である。
【図5】本実施形態の平面度測定方法の一例のフローを示す図である。
【図6】(a)は、本実施形態に用いる成形体の外観斜視図であり、(b)は、溶融ガラスから板状ガラスを成形するときの成形体を流れる溶融ガラスの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態の平面度測定方法について説明する。
図1は、本実施形態の平面度測定方法を実施するシステム10の概要を説明ずる図である。
システム10は、レーザ測定装置12と、データ処理装置14と、水槽16と、を主に有する。測定対象物である後述する板状ガラスを成形する成形体18は水等の透明性を有する液体が収納された水槽16に沈められ液中に置かれる。本実施形態では、測定対象物として成形体18が用いられるが、ガラス板を用いることもできる。また、成形体18およびガラス板以外の対象物を測定対象物に用いることもできる。
【0013】
レーザ測定装置12は、成形体18の表面と、測定基準面とする液面との間の距離の測定を行う。例えば、レーザ測定装置12は、レーザフォーカス方式の2つのレーザ変位計を用いて、成形体18の表面と液面の距離を別々に測定する。図2は、レーザフォーカス方式のレーザ変位計の構成を説明する図である。レーザフォーカス方式は、レーザ光源12a、ハーフミラー12b、コリメートレンズ12c、フォーカスレンズ12d、ピンホール12e、及び受光素子12fを備える。レーザ光源12aから出射されたレーザ光Lは、ハーフミラー12bを透過して、コリメートレンズ12cで平行光にされた後、フォーカスレンズ12dで光束が絞られて、測定対象物の表面に照射される。測定対象物の表面で反射された反射光は、フォーカスレンズ12d、コリメートレンズ12cを通り、ハーフミラー12bで反射された後、ピンホール12eを通過する。しかし、測定対象物の表面においてレーザ光がフォーカスされたときのみしか、ピンホール12eを通過して受光素子12fに受光されない。したがって、受光素子12fで最大の受光信号を得られるまで、フォーカスレンズ12dの位置を変化させる。これより、受光信号が最大となるときのフォーカスレンズ12dの位置から、フォーカスレンズ12dの位置と測定対象物の表面との間の距離が得られるので、この距離を用いて、レーザ光源12aから測定対象物の表面までの距離を測定することができる。レーザフォーカス方式は、例えば以下のアドレスに開示されているように、周知の方式である。
1317345340658_0.html
(2011年9月14日検索)
本実施形態ではレーザフォーカス方式のレーザ変位計を用いるが、この他に、周知の三角測距方式のレーザ変位計を用いることもできる。三角測距方式のレーザ変位計は、例えば、以下のアドレスに開示されている。
1317345340658_1.html
(2011年9月14日検索)
本実施形態では、2つのレーザ変位計を用いるが、成形体18の表面と、測定基準面とする液面との間の距離の測定を1つのレーザ変位計を用いて測定できるのであれば、1つのレーザ変位計を用いることもできる。
【0014】
レーザ測定装置12は、測定対象物である成形体18の表面と、測定基準面とする液面16aとの間の距離の測定を行う。具体的には、レーザ測定装置12は、レーザ変位計のレーザ光Lを、成形体18と液面16aに対して相対的に走査(スキャン)しながら、複数の測定位置において、成形体18の表面と測定基準面とする液面16aとの間の距離を測定する。相対的に走査とは、レーザ光Lが、成形体18と液面16aに対して移動すればよく、成形体18と液面16aを固定した状態でレーザ光Lが移動してもよいし、レーザ光Lを固定した状態で、成形体18と液面16aが移動してもよい。しかし、液面16aが波うたないようにする点で、成形体18と液面16aを固定した状態でレーザ光Lが移動する走査が好ましい。走査は、図1に示すように液面16aのX方向とY方向にレーザ光Lを移動させながら成形体18の表面を2次元的に走査することが、後述する平面度を精度良く取得する点で好ましい。レーザ測定装置12は、測定した全ての位置におけるレーザ光Lの走査位置の情報、具体的には、液面16a上のX方向の位置座標であるX座標、液面16a上のY方向の位置座標であるY座標の位置情報と、測定により得られたレーザ光Lの照射方向における距離の情報(成形体18の表面と液面との間の距離の情報)とをデータ処理装置14に供給する。すなわち、レーザ測定装置12は、レーザ変位計が測定した距離の情報と、レーザ変位計が走査した測定位置の位置情報をデータ処理装置14に供給する。
【0015】
データ処理装置14は、データ処理装置14内のメモリに記録されたソフトウェアを読み取ることによりコンピュータ上に形成されるソフトウェアモジュールによって構成される。
図3は、データ処理装置14の構成を示す図である。データ処理装置14は、CPU14a、メモリ14b、及び入出力部14cを有するコンピュータである。コンピュータの入出力部14cは、レーザ測定装置12と接続されるとともに、プリンタやディスプレイ等の出力装置15と接続されている。
メモリ14cには、本実施形態で行う後述するデータ処理を実行するプログラムが記録されており、このプログラムをコンピュータが呼び出して実行することにより、処理コントロール部14d、データ選択部14e、平面算出部14f、距離算出部14g、及び平面度算出部14hが形成される。すなわち、処理コントロール部14d、データ選択部14e、平面算出部14f、距離算出部14g、及び平面度算出部14hは、コンピュータの実行により機能するソフトウェアモジュールである。従って、これらの部分の計算は、実質的にはCPU14aが担当する。また、メモリ14bは、レーザ測定装置12から供給された距離の情報と測定位置の位置情報を測定データとして記録する。
【0016】
処理コントロール部14dは、後述する平面度の算出に伴う各処理を指示、制御する部分である。処理コントロール部14dは、例えば、3点を表す3つの座標データの組の選択が所定の条件を満たすか否かを判定し、上記判定結果が肯定になるまで、後述する平行平面間距離の算出を繰り返し行うように各部分に指示を出し動作を制御する。
データ選択部14eは、3つの座標データの組を選択する。この3つの座標データは、後述するように、平面を算出するために用いる。選択される座標データは、図1に示すX方向のX座標、Y方向のY座標と、レーザ変位計のレーザ光の照射方向であるZ方向のZ座標を含むXYZ座標空間における座標データである。3つの座標データの選択の方法は、特に制限されず、例えば、XYZ座標空間上の3つの座標データの組を全くランダムに選択する方法、あるいは測定データの中から3つのデータの組の座標データを選択する方法であってもよい。また、後述する2つの平行な平面の傾きが予め設定された傾きであり、後述するように選択が繰り返されるたびに、傾きの角度が一定角度ずつ変化するような3つの座標データの組の選択であってもよい。
平面算出部14fは、選択された3つの座標データから、平面を求める。この平面は、3つの座標データの値が座標値として表される座標空間上の3点としたとき、この3点を用いて定まる平面である。
【0017】
距離算出部14gは、平面算出部14fで定まる平面を異なる方向に平行移動することにより2つの平行な平面P1,P2を作り、この2つの平行な平面P1,P2が、測定データの値によってXYZ座標空間上で表される点を全て挟む最も短い距離を算出する。この距離を平行平面間距離と呼ぶ。距離算出部14gは、算出した平行平面間距離をメモリ14bに記録するとともに、今回算出した平行平面間距離を、既に算出して平行平面間距離の最小の距離としてメモリ14bに記録した平面度候補と比較する。距離算出部14gは、今回算出した平行平面間距離が平面度候補に比べて小さい場合、この平行平面間距離を平面度候補として更新してメモリ14bに記録する。メモリ14bに記録した平面度候補が、今回算出した平行平面間距離以下である場合、平面度候補はそのまま維持される。こうして、距離算出部14gは、平面度候補を設定する。
なお、距離算出部14gがはじめて平行平面間距離を算出する場合、メモリ14bには、平面度候補は記録されていないので、はじめて算出した平行平面間距離が平面度候補として設定され、メモリ14bに記録される。
【0018】
図4(a)〜(c)は、平行平面間距離の算出及び平面度の算出を説明する図である。例えば、測定データの位置情報と測定した位置における距離の情報をX座標、Y座標及びZ座標として含む測定データを、X座標、Y座標及びZ座標を各座標軸とする3次元座標空間上の点で表す。このとき上記座標空間上の点によって図4(a)に示すようななだらかな凹凸を有する面P0が形成された場合、この面P0の凹凸を全て挟むような2つの平行な平面P1,P2のうち、平行な平面間の距離が最も短くなるように平行な平面を定める。図4(b)に示す例は、距離算出部14gが、平面間距離の最も短い距離として平行平面間距離D1を算出する様子を示している。しかし、図4(b)の例では、平面P1,P2の向きが面P0の傾斜に沿うような平面でないため、平行平面間距離D1が平面度とはならない。
このような平行平面間距離の算出は、データ選択部14eで新たな3つの座標データの組が選択される度に行われる。
【0019】
平面度算出部14hは、処理コントロール部14dの指示に基づいて、メモリ14bに記憶されている平面度候補を平面度として求める。処理コントロール部14dの指示は、3点を表す3つの座標データの組の選択が所定の条件を満たすとき、平面度算出部14hに送られる。所定の条件とは、例えば、上述したように、全くランダムな3つの座標データの組を選択する方法を用いる場合、選択の総回数が予め設定された回数、例えば100万回を越えるか否かをいう。また、測定データの中から3つの座標データの組を選択する方法を用いる場合、例えば、全測定データから3つのデータの組み合わせを全て選択したか否かをいう。また、2つの平行な平面P1,P2の傾きが予め設定された傾きであり、選択が繰り返されるたびに、傾きの角度が一定角度ずつ変化するように3つのデータの組を選択する方法を用いる場合、2つの平行な平面P1,P2の傾きが予め設定された全範囲、例えば−180度〜+180度の全範囲を変化したか否かをいう。
図4(c)に示すように、最小距離Dminは、面P0の傾斜に沿うような傾きを持った2つの平行な平面P1,P2間の平面間距離である。このような2つの平行平面が目標平行平面である。したがって、平面度算出部14hは、平行平面間距離の中で、最小となる距離Dminを成形体18の測定対象面の平面度として算出する。
【0020】
このように、本実施形態のシステム10では、XYZ座標空間上で上記測定データを点で表したとき、この点すべてが2つの平行平面の間に挟まれ、かつこの2つの平行な平面の間の平面間距離が最小となる目標平行平面を、2つの平行な平面の傾きを変えながら探索することにより、平面度を算出する。このため、本実施形態は、精度の高い平面度をデータ処理によって算出することができる。
測定対象物である成形体18は、水等の透明性を有する液体の中に置かれ、液面は液体の液面である。したがって、本実施形態のシステム10では、液面は水平面となるので、水平面を基準にした測定を用いて精度の高い平面度を算出することができる。
【0021】
本実施形態では、成形体18は、透明性を有する液体、例えば水等の中に置かれ、液面は上記液体の液面である。しかし、成形体18は、透明性を有する液体の中に置かれなくてもよい。例えば、透明性を有する液体を収納した透明性を有する容器を、レーザ変位計と成形体18との間に配置し、上記容器内の液体の液面までの距離をレーザ光及び反射光で測定するとともに、上記容器及び液体を透過するレーザ光及び反射光を用いて成形体18の表面までの距離を測定することにより、液面と成形体18の表面との間の距離を測定することもできる。
【0022】
図5は、本実施形態の平面度測定方法のフローを示す図である。
まず、レーザ測定装置12は、レーザ変位計が成形体18の表面に照射するレーザ光Lを走査しながら、複数の位置における成形体18の表面と測定基準面とする液面との間の距離の情報を測定する。(ステップS10)。測定により得られた位置情報と距離の情報は、データ処理装置14に供給される。
【0023】
データ処理装置14は、入出力部14cを介して供給された位置情報と距離の情報を測定データとしてメモリ14bに取り込んで記録する。これにより、コンピュータによる測定データの取り込みが行われる(ステップS20)。
【0024】
次に、データ選択部14eは、3つの座標データの組を選択する(ステップS30)。3つの座標データの組の選択方法は特に制限されないが、少なくとも同じ組を選択しないように組が選択される。選択方法は、XYZ座標空間上の3つの座標データの組を全くランダムに選択する方法、あるいは測定データの中から3つのデータの組の座標データを選択する方法であってもよい。また、2つの平行な平面の傾きが予め設定された傾きであり、選択が繰り返されるたびに、傾きの角度が一定角度ずつ変化するような3つの座標データの組の選択方法である。
【0025】
次に、平面算出部14fは、選択された3つの座標データを用いて2つの平行な平面P1,P2を求める(ステップS40)。具体的には、平面算出部14fは、選択された3つの座標データの値が座標値として表されるXYZ座標空間上の3点によって作られる平面を定め、この平面を、平面に垂直な異なる2方向に移動して、お互いに平行な平面P1,P2を求める。
【0026】
次に、距離算出部14gは、平面P1,P2間の距離を縮め、全測定データのそれぞれの値が座標値として表されるXYZ座標空間上の点により表される点が全て平面P1,P2間に挟まれる最も短い距離である平行平面間距離を算出する(ステップS50)。この平行平面間距離が例えば、図2(b)における平行平面間距離D1となる。算出された平行平面間距離は、メモリ14bに記録される。
さらに、距離算出部14gは、算出した平行平面間距離を、以前算出して平行平面間距離の最小値としてメモリ14bに記録した平面度候補との比較を行う。距離算出部14gは、今回算出した平行平面間距離が平面度候補に比べて小さい場合、この平行平面間距離を平面度候補として更新しメモリ14bに記録する。メモリ14bに記録した平面度候補が、今回算出した平行平面間距離以下である場合、平面度候補は、そのまま維持される。こうして、距離算出部14gは、平面度候補を設定する(ステップS55)。なお、距離算出部14gがはじめて平行平面間距離を算出する場合、メモリ14bには、平面度候補は記録されていないので、はじめて算出した平行平面間距離が平面度候補として設定され、メモリ14bに記録される。
【0027】
次に、処理コントロール部14dは、3点の座標データの組の選択が所定の条件を満たすか否かを判定する(ステップS60)。所定の条件とは、例えば、上述したように、全くランダムな3つの座標データの組を選択する方法を用いる場合、選択の総回数が予め設定された回数、例えば100万回を越えるか否かをいう。また、測定データの中から3つの座標データの組を選択する方法を用いる場合、例えば、全測定データから3つのデータの組み合わせを全て選択したか否かをいう。また、2つの平行な平面P1,P2の傾きが予め設定された傾きであり、選択が繰り返されるたびに、傾きの角度が一定角度ずつ変化するように3つのデータの組を選択する方法を用いる場合、2つの平行な平面P1,P2の傾きが予め設定された全範囲、例えば−180度〜+180度の全範囲を変化したか否かをいう。
上記判定の結果が否定である場合(NOである場合)、処理コントロール部14dは、ステップS30に戻って、データ選択部14eが先に選択した座標データの組と異なる座標データの組を新たに選択するように指示する。
【0028】
上記判定の結果が肯定である場合(YESである場合)、平面度算出部14hが平面度を求めるように、処理コントロール部14dは指示をする。これにより、平面度算出部14hは、距離算出部14gで設定されメモリ14bに記録されている平面度候補を呼び出して、平面度として求める(ステップS70)。求めた平面度は、出力装置15に送られ、平面度が画面表示され、あるいはプリント出力される。
【0029】
このように、コンピュータで形成されるデータ処理装置14は、3つの座標データの組の選択が所定の条件を満たすまで繰り返し行い、この選択を行う度に、選択された3つの座標データから2つの平行な平面P1,P2を求めることにより平行平面間距離Dk(k=1〜Nの整数)を求め、3つの座標データの選択が所定条件を満たすとき、求められた平行平面間距離Dkのうち最小の距離Dminを平面度として求める。
本実施形態では、距離算出部14gは、平行平面間距離を算出する度に、平面度候補を設定する。しかし、距離算出部14gは平行平面間距離を算出する度に、平面度候補を設定しなくてもよい。この場合、ステップS60における判定が肯定であるとき、平面度算出部14hは、平行平面間距離を算出するたびにメモリ14bに記録した複数の平行平面間距離の中から最小の距離を求め、この最小の距離を平面度として求めることもできる。
【0030】
本実施形態で用いる測定対象物の表面は、溶融ガラスからダウンドロー法により板状ガラスを成形する成形体18の表面であり、成形体18の表面は、ダウンドロー法において溶融ガラスが流れる面である。成形体18の溶融ガラスが流れる表面は、ガラス板の凹凸を形成しないように高い平面度を有することが望ましい。この点で、本実施形態のシステム10において、成形体18を測定対象物にすることは有効である。しかし、測定対象物は、これ以外の対象物であってもよい。例えば、測定対象物の表面は、ガラス板の表面であってもよい。
【0031】
(成形体)
図6(a)は、成形体18の外観斜視図である。図6(b)は、溶融ガラスMGから板状ガラスGを成形するときの成形体18を流れる溶融ガラスの状態を示す図である。
成形体18は、A方向に長尺状に細長く、断面が五角形の楔形形状を成している。成形体18は、供給溝18a、上面18b、側面18c、下部傾斜面18d、及び、最下端稜線18eを備える。成形体18の供給溝18aには、溶融ガラスMGが流れるので、溶融ガラスMGが上方から下方斜めに流れるように、傾斜溝18aが傾斜する。このため、成形体18は、A方向に進むほど、最下端稜線18eと上面18bとの間の距離は短くなっている。すなわち、最下端稜線18eを水平面上に置いたとき、上面18bは、A方向に向かって下方に傾斜している。
【0032】
成形体18の上部には、溶融ガラスが流れる供給溝18aが設けられ、供給溝18aの溝深さはA方向に行くほど浅くなって、最終的に供給溝18aはなくなっている。したがって、このような供給溝18aを流れる溶融ガラスMGは、図6(b)に示すように、溝の途中で供給溝18aから供給溝18aの両側に設けられた上面18b、18bに二手にわかれて溢れ出す。上面18b、18bから溢れ出した溶融ガラスは、側面18c、18cを経て下部傾斜面18d、18dを流れ、最下端稜線18eに至る。
最下端稜線18eにおいて、二手に分かれて流れた溶融ガラスMGが合流して1つの板状ガラスが成形される。このとき、搬送ローラ20により板状ガラスGの幅方向の両端部が引っ張られ、かつ、搬送ローラ20により冷却される。これにより、板状ガラスGは一定の厚さ一定の幅を有するガラスとして図示されない徐冷炉に搬送される。徐冷炉において、歪みや反り等の変形が生じないように調整された雰囲気温度と搬送速度の条件の下、板状ガラスGは徐冷される。この後、図示されない切断装置で板状ガラスGは一定の長さに切断され、さらに、切断された板状ガラスGが所定のサイズのガラス板になるように採断されてガラス板が成形される。
【0033】
このように、成形体18は、板状ガラスを溶融ガラスMGから成形するので、成形体18の溶融ガラスが流れる上面18b、側面18c、下部傾斜面18dにおける平面度が目標どおり精度よく製作されていることが、板状ガラスGの厚さ、さらにはガラス板の厚さをムラ無く一定にする上で重要である。このため、成形体18の上面18b、側面18c、下部傾斜面18dの平面度を測定することは重要である。特に、成形体18の上面18bはA方向に向かって下方に傾斜しているので、傾斜した状態でも平面度が正確に測定できることが必要である。本実施形態のシステム10では、測定対象物の表面が傾斜していても精度の高い平面度を算出することができるので、成形体18の上面18bの平面度を測定する上で、システム10で行う平面度測定方法は有用である。また、下降傾斜面18dも水平面に平行に置くことは難しく、傾斜した測定面となるので、システム10で行う平面度測定方法は有用である。
【0034】
以上、本発明の平面度測定方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0035】
10 システム
12 レーザ測定装置
12a レーザ光源
12b ハーフミラー
12c コリメートレンズ
12d フォーカスレンズ
12e ピンホール
12f 受光素子
14 データ処理装置
14a CPU
14b メモリ
14c 入出力部
14d 処理コントロール部
14e データ選択部
14f 平面算出部
14g 距離算出部
14h 平面度算出部
15 出力装置
16 水槽
16a 液面
18 成形体
18a 供給溝
18b 上面
18c 側面
18d 下部傾斜面
18e 最下端稜線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の表面の平面度を測定する平面度測定方法であって、
レーザ変位計を含むレーザ測定装置が、レーザ光を走査しながら、複数の位置における前記測定対象物の表面と測定基準面とする液面との間の、前記レーザ光の照射方向における距離の情報を測定して取り込むステップと、
前記レーザ変位計が測定した複数の位置における前記距離の情報と、前記レーザ変位計が走査した前記複数の位置の位置情報をコンピュータが取り込み、前記コンピュータが、測定した前記位置それぞれにおける前記位置情報と前記距離の情報を座標として表した測定データを、座標空間上の点で表したとき、前記点すべてが2つの平行平面の間に挟まれ、かつ、該2つの平行平面の間の距離が最小となる目標平行平面を、前記2つの平行平面の傾きを変えながら探索することにより、前記平面度を算出するステップと、を有することを特徴とする平面度測定方法。
【請求項2】
前記測定対象物は、透明性を有する液体の中に置かれ、前記液面は前記液体の液面である、請求項1に記載の平面度測定方法。
【請求項3】
前記コンピュータは、前記2つの平行平面の傾きを変えることにより前記2つの平行平面の間の距離が最小となる最小距離を、前記平面度として求める、請求項1または2に記載の平面度測定方法。
【請求項4】
前記コンピュータは、前記複数の測定データの中から3つのデータの選択を行なう処理を、前記測定データの中から選択される3つのデータの組み合わせが全て選択されるまで繰り返し行い、前記選択を行う度に、選択された前記3つのデータから前記2つの平行平面を求めることにより前記2つの平行平面間の距離が最も短くなる距離を平行平面間距離として求め、前記3つのデータの組み合わせを全て選択したとき、求められた前記平行平面間距離のうち最小の距離を前記平面度として求める、請求項1〜3のいずれか1項に記載の平面度測定方法。
【請求項5】
前記測定対象物は、溶融ガラスからダウンドロー法により板状ガラスを成形する成形体であり、前記成形体の表面は、ダウンドロー法において溶融ガラスが流れる面である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の平面度測定方法。
【請求項6】
前記測定対象物の表面は、ガラス板の表面である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の平面度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−76623(P2013−76623A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216303(P2011−216303)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(598055910)AvanStrate株式会社 (81)
【Fターム(参考)】