説明

形状検査装置および形状検査方法

【課題】検査環境による検査対象物の形状の良否判定の精度が検査環境によって低下することを防止する。
【解決手段】形状検査装置は、検査対象物を照明するための検査光源と、撮像手段と、前記検査光源を点灯した状態において前記検査対象物の反射光を受光することによって前記撮像手段が出力する画像データである検査データを取得する検査データ取得手段と、前記検査光源を消灯した状態において前記検査対象物の反射光を受光することによって前記撮像手段が出力する画像データであるオフセットデータを取得するオフセットデータ取得手段と、前記検査データと前記オフセットデータの差分を示す差分データを取得する差分データ取得手段と、前記差分データに基づいて前記検査対象物の形状の良否を判定する良否判定手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の形状の良否を判定する形状検査装置および形状検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品の配線パターンやバンプや半田やリード等の検査対象物の反射光の画像データをイメージセンサを備えたカメラなどから取得し、そのように取得した画像データに基づいて検査対象物の形状の良否を判定する形状検査装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この方法では、反射光の光量に基づいて検査対象物の形状の良否が判定される。
【特許文献1】特開平10−190213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、形状検査装置が設置される空間の照明光は形状検査装置の内部にも入射し得る。例えば、検査対象物を収容した状態で検査光を照射するためのチャンバには、チャンバに検査対象物を出し入れするための開口が必要であるために、その開口から検査装置の外部の照明光が検査装置の内部に入射し得る。
従来の方法では、検査対象物に一定の検査光が照射されることが前提となっているために、形状検査装置が発する検査光以外の光によって検査対象物が照明されると、一定の検査光のみで検査対象物が照明された場合に比べて検査対象物の反射光の光量が増大するために、検査対象物の形状の良否が誤判定されることがあるという問題がある。
また、カメラの出力には熱ドリフトがあるため、熱ドリフトによっても検査対象物の形状の良否が誤判定されることがあるという問題がある。
本発明は、このような問題を解決するために創作されたものであって、検査対象物の形状の良否判定の精度が検査環境によって低下することを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(1)上記目的を達成するための形状検査装置は、検査対象物を照明するための検査光源と、撮像手段と、前記検査光源を点灯した状態において前記検査対象物の反射光を受光することによって前記撮像手段が出力する画像データである検査データを取得する検査データ取得手段と、前記検査光源を消灯した状態において前記検査対象物の反射光を受光することによって前記撮像手段が出力する画像データであるオフセットデータを取得するオフセットデータ取得手段と、前記検査データと前記オフセットデータの差分を示す差分データを取得する差分データ取得手段と、前記差分データに基づいて前記検査対象物の形状の良否を判定する良否判定手段と、を備える。
【0005】
検査光源以外の光源から放射される光が検査対象物を照射する環境においては、検査データは、検査光源と検査光源以外の光源とによって照明された検査対象物の反射光の画像を表す。この環境では、検査光源を消灯した状態において検査対象物の反射光を受光することによって撮像手段が出力する画像データであるオフセットデータを取得する場合、検査データとオフセットデータとの差分を求めることによって、検査光源以外の光源から放射される光に対応する成分が打ち消される。したがって、検査光源を消灯した状態において検査対象物の反射光を受光することによって撮像手段が出力する画像データであるオフセットデータを取得することにより、検査光源から放射される光以外の光によって検査対象物の形状の良否判定の精度が低下することを防止でき、検査光源以外の光源から放射される光の影響を受けずに高精度に検査対象物の形状の良否を判定できるのである。また、検査データとオフセットデータとにはそれぞれ撮像手段の熱ドリフトに対応する成分が含まれることになるが、検査データとオフセットデータとの差分を求めることによって熱ドリフトに対応する成分が打ち消されるため、差分データには熱ドリフトに対応する成分は含まれない。したがって、差分データに基づいて検査対象物の形状の良否を判定することによって、撮像手段の熱ドリフトのために検査対象物の形状の良否判定の精度が低下することを防止でき、撮像手段の熱ドリフトの影響にかかわらず高精度に検査対象物の形状の良否を判定できる。
【0006】
(2)上記(1)に記述した、物としての発明は、方法の発明としても成立する。すなわち、上記目的を達成するための形状検査方法は、検査対象物を照明するための検査光源を点灯した状態において前記検査対象物の反射光を受光することによって撮像手段が出力する画像データである検査データを取得する工程と、前記検査光源を消灯した状態において前記検査対象物の反射光を受光することによって前記撮像手段が出力する画像データであるオフセットデータを取得する工程と、前記検査データと前記オフセットデータの差分を示す差分データを取得する工程と、前記差分データに基づいて前記検査対象物の形状の良否を判定する工程と、を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。尚、各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
(1)形状検査装置の構成
図1は、本発明の一実施形態としての形状検査装置10の構成を示している。形状検査装置10は、検査ユニット1と制御ユニット2とから構成されている。
検査ユニット1は、チャンバ15と、カメラ11と、リングライト12と、ステージ13と、搬送機構14と、カメラ11を駆動するとともに制御ユニット2に画像データを出力するカメラ駆動部111と、リングライト12を駆動する光源駆動部123と、ステージ13を駆動するステージ駆動部131と、搬送機構14を駆動する搬送機構駆動部141とを備えている。
【0008】
チャンバ15には搬入口152と搬出口153と図示しない目視用の窓とが形成されている。窓はチャンバ15の内部を目視するための開口部を透明な板によって閉塞したものである。
搬送機構14は、搬入口152からチャンバ15内のステージ13上に検査対象の基板30を搬入し、チャンバ15に形成されている搬出口153から検査が終了した基板30を搬出する機構である。搬送機構駆動部141は、搬送機構14を駆動するためのアクチュエータ、駆動回路、インターフェース回路などから構成される。
【0009】
ステージ13は、検査対象の基板30が載置される台座を水平方向に移動する機構を備える所謂XYステージであってチャンバ15の内部に設けられている。ステージ駆動部131は、ステージ13を水平方向に移動させるためのアクチュエータ、駆動回路、インターフェース回路などから構成される。
カメラ11は、図示しないレンズなどの光学系とイメージセンサなどの光電変換素子とを備え、ステージ13の上面の一部が撮像エリアになるようにチャンバ15の内部に設けられている。イメージセンサは、二次元配列された複数の光センサと、CCDなどで構成される電荷転送部とを備えている。カメラ駆動部111は光電変換素子と電荷転送部とを駆動する駆動回路、光電変換素子の出力をデジタル化して出力するインターフェース回路などから構成される。カメラ11およびカメラ駆動部111はイメージセンサが受光した光の光量を示す画像データを出力する撮像手段として機能する。
【0010】
リングライト12は、カメラ11の撮像エリアの中心を囲むようにそれぞれ環状に設けられている上段リングライト121と下段リングライト122とから構成され、チャンバ15の内部に設けられている。上段リングライト121は下段リングライト122の上方の内側に位置する。上段リングライト121、下段リングライト122はいずれも、図3に示すように環状の保持部125に検査光源としての複数のLED124が全周にわたって配列されている照明装置である。1つの保持部125に配列されるLED124は、ステージ13の表面にあるカメラ11の撮像エリアを照射するように取り付けられている。光源駆動部123は、LED124の駆動回路、インターフェース回路などから構成され、上段リングライト121のLED124と下段リングライト122のLED124とを独立して点灯し消灯する。
【0011】
図2は制御ユニット2の構成を示すブロック図である。制御ユニット2は、バスで相互に接続された演算部20と記憶媒体21と入力部22と出力部23とインターフェース24とを備えているコンピュータである。
インターフェース24は検査ユニット1のカメラ駆動部111、光源駆動部123、ステージ駆動部131、搬送機構駆動部141とに接続されている。制御ユニット2と検査ユニット1との間のデータ転送はインターフェース24によって制御される。
【0012】
記憶媒体21には形状検査プログラム211が記憶されている。形状検査プログラム211が演算部20によって実行されると、検査対象データ212、検査条件データ213、検査データ214、オフセットデータ215、差分データ216、判定基準データ217などの各種のデータが記憶媒体21のワークエリアに格納される。検査対象データ212は、検査対象物の位置を示す座標データなどで構成される。検査条件データ213は、カメラ11の光学倍率の制御データなどで構成される。
【0013】
演算部20はCPUとして構成されており、形状検査プログラム211を実行することによって、搬送制御部201、ステージ制御部202、検査データ取得部203、オフセットデータ取得部204、差分データ取得部205、良否判定部206などの形状検査プログラム211のモジュール群が持つ機能を実現する。
入力部22は、キーボードやマウスなどの入力装置から構成され、形状検査プログラム211の実行操作や検査結果の表示操作などの各種の操作を行うためのものである。
【0014】
出力部23は、液晶ディスプレイなどの表示装置やプリンタなどの印刷装置から構成され、検査対象物や検査結果の画面表示や印刷を行う。
搬送制御部201は、搬送機構駆動部141を制御することによって搬送機構14を駆動し、所定のタイミングで基板30をステージ13上に搬入し搬出するためのプログラムモジュールである。
【0015】
ステージ制御部202は、検査対象データ212に基づいてステージ駆動部131を制御することによってステージ13を水平方向に駆動し、基板30の検査対象物であるバンプ31をカメラ11の撮像エリアの中心に移動させるためのプログラムモジュールである。実際には、BGA(Ball Grid Array)を構成する複数のバンプ31を検査対象物として同時に検査可能であるが、本明細書では撮像エリアにおさまる検査対象物は1つのバンプ31であるものとして説明を簡略化する。
【0016】
検査データ取得部203は、検査条件データ213に基づいてカメラ駆動部111と光源駆動部123とを制御することによってカメラ11とリングライト12とを駆動し、カメラ11のイメージセンサの検査エリアに対応するエリアが受光した光の光量を示す画像データである検査データ214を取得するためのプログラムモジュールである。すなわち検査データ取得部203は、上段リングライト121を点灯し下段リングライト122を消灯した状態においてカメラ駆動部111を介してカメラ11から画像データを取得し、取得した画像データの一部を検査データ214として記憶媒体21に格納し、また、下段リングライト122を点灯し上段リングライト121を消灯した状態においてカメラ駆動部111を介してカメラ11から画像データを取得し、取得した画像データの一部をもう一つの検査データ214として記憶媒体21に格納する。
【0017】
オフセットデータ取得部204は、検査条件データ213に基づいてカメラ駆動部111と光源駆動部123とを制御することによってカメラ11とリングライト12とを駆動し、カメラ11のイメージセンサの検査エリアに対応するエリアが受光した光の光量を示す画像データであるオフセットデータ215を取得するためのプログラムモジュールである。すなわち検査データ取得部203は、上段リングライト121および下段リングライト122を消灯した状態においてカメラ駆動部111を介してカメラ11から画像データを取得し、取得した画像データの一部をオフセットデータ215として記憶媒体21に格納する。
【0018】
差分データ取得部205は、上段リングライト121を点灯し下段リングライト122を消灯した状態において検査データ取得部203が取得した検査データ214からオフセットデータ215を差し引いた結果を差分データ216として記憶媒体21に格納するとともに、下段リングライト122を点灯し上段リングライト121を消灯した状態において検査データ取得部203が取得したもう一つの検査データ214からオフセットデータ215を差し引いた結果を別の差分データ216として記憶媒体21に格納するためのプログラムモジュールである。
良否判定部206は、差分データ取得部205が求めた2つの差分データ216の比の値を求め、その比の値と、予め決められたバンプ31の表面の傾斜角に対応する比の値の閾値を示す判定基準データ217とを比較することによって、バンプ31の形状の良否を判定するためのプログラムモジュールである。
【0019】
(2)形状検査処理
次に、以上の構成において形状検査装置10が実行する形状検査処理を説明する。形状検査装置10によって形状検査プログラム211が実行されているとき、搬送制御部201とステージ制御部202と検査データ取得部203とオフセットデータ取得部204と差分データ取得部205と良否判定部206とは図4に示す処理を実行する。
【0020】
まず搬送制御部201は、搬送機構駆動部141を制御することによって搬送機構14を駆動し、所定のタイミングで基板30をステージ13上に搬入する(ステップS10)。
次にステージ制御部202は、検査対象データ212に基づいてステージ駆動部131を制御することによってステージ13を水平方向に駆動し、基板30の検査対象物であるバンプ31をカメラ11の撮像エリアの中心に移動させる(ステップS11)。
【0021】
次にオフセットデータ取得部204は、検査条件データ213に基づいて上段リングライト121および下段リングライト122を消灯した状態においてカメラ11によってバンプ31を撮像させる(ステップS12)。すなわち、オフセットデータ取得部204は、光源駆動部123を制御することによって上段リングライト121および下段リングライト122の全てのLED124を消灯させるとともに、カメラ駆動部111を制御することによってカメラ11にバンプ31を撮像させる。その結果、バンプ31の反射光を受光したカメラ11とカメラ駆動部111とによってバンプ31の反射光の像を表す画像データが生成される。このとき、上段リングライト121および下段リングライト122が点灯していない状態でバンプ31の反射光の像が撮像されるため、生成される画像データは、目視用の窓と搬入口152と搬出口153とを通じてチャンバ15の内部に入射する光によって照明されたバンプ31の反射光の像を表すデータになる。またこの画像データが示す各画素の輝度値は、この画像データが生成された時点におけるカメラ11の温度特性の影響を受けている。すなわちステップS12にて生成される画像データには、この画像データが生成された時点におけるカメラ11の熱ドリフトに対応する成分が含まれている。
【0022】
次にオフセットデータ取得部204は、ステップS12にて生成された画像データの検査エリアに対応する画素のエリアをオフセットデータ215として記憶媒体21に格納する(ステップS13)。
次に検査データ取得部203は、検査条件データ213に基づいてカメラ駆動部111と光源駆動部123とを制御することによって、上段リングライト121を点灯した状態においてカメラ11にバンプ31を撮像させる(ステップS14)。すなわち、検査データ取得部203は、光源駆動部123を制御することによって上段リングライト121の全てのLED124を点灯させるとともに、カメラ駆動部111を制御することによってカメラ11にバンプ31を撮像させる。その結果、バンプ31の反射光を受光したカメラ11とカメラ駆動部111とによってバンプ31の反射光の像を表す画像データが生成される。このとき、上段リングライト121が点灯した状態でバンプ31の反射光の像が撮像されるため、生成される画像データは、上段リングライト121が放射する光と、目視用の窓と搬入口152と搬出口153とを通じてチャンバ15の内部に入射する光とによって照明されたバンプ31の反射光の像を表すデータになる。またこの画像データが示す各画素の輝度値は、この画像データが生成された時点におけるカメラ11の温度特性の影響を受けている。すなわちステップS14にて生成される画像データには、この画像データが生成された時点におけるカメラ11の熱ドリフトに対応する成分が含まれている。
【0023】
次に検査データ取得部203は、ステップS14にて生成された画像データの検査エリアに対応する画素のエリアを第一の検査データ214として記憶媒体21に格納する(ステップS15)。オフセットデータ215として記憶媒体21に格納される画像データが生成される時点と第一の検査データ214として記憶媒体21に格納される画像データが生成される時点とにおいてカメラ11の熱ドリフトは実質的に変化しないと考えられるため、第一の検査データ214には、オフセットデータ215に含まれるカメラ11の熱ドリフトに対応する成分と等しい成分が含まれる。また、オフセットデータ215として記憶媒体21に格納される画像データが生成される時点と第一の検査データ214として記憶媒体21に格納される画像データが生成される時点とにおいて、目視用の窓と搬入口152と搬出口153とを通じてチャンバ15の内部に入射する光は実質的に変化しないと考えられる。またカメラ11とバンプ31との位置関係も変化しないため、第一の検査データ214には、オフセットデータ215に含まれるところの目視用の窓と搬入口152と搬出口153とを通じてチャンバ15の内部に入射する光に対応する成分と等しい成分が含まれる。
【0024】
次に検査データ取得部203は、検査条件データ213に基づいてカメラ駆動部111と光源駆動部123とを制御することによって、下段リングライト122の全てのLED124を点灯した状態においてカメラ11にバンプ31を撮像させる(ステップS16)。
次に検査データ取得部203は、ステップS16にて生成された画像データの検査エリアに対応する画素のエリアを第二の検査データ214として記憶媒体21に格納する(ステップS17)。オフセットデータ215と第一の検査データ214との関係について述べた事項は、オフセットデータ215と第二の検査データ214との関係においても同様である。すなわち、第二の検査データ214には、オフセットデータ215に含まれるカメラ11の熱ドリフトに対応する成分と等しい成分が含まれる。また、第二の検査データ214には、オフセットデータ215に含まれるところの目視用の窓と搬入口152と搬出口153とを通じてチャンバ15の内部に入射する光に対応する成分と等しい成分が含まれる。
【0025】
次に差分データ取得部205は、上段リングライト121を点灯し下段リングライト122を消灯した状態で生成された画像データである第一の検査データ214からオフセットデータ215を差し引いた第一の差分データ216と、下段リングライト122を点灯し上段リングライト121を消灯した状態で生成された画像データである第二の検査データ214からオフセットデータ215を差し引いた第二の差分データ216とを取得する(ステップS18)。第一の検査データ214からオフセットデータ215を差し引くことにより、目視用の窓と搬入口152と搬出口153とを通じてチャンバ15の内部に入射する光に対応する成分と、カメラ11の熱ドリフトに対応する成分とがともに打ち消される。したがって、第一の差分データ216には、目視用の窓と搬入口152と搬出口153とを通じてチャンバ15の内部に入射する光に対応する成分も、カメラ11の熱ドリフトに対応する成分も含まれず、上段リングライト121のLED124から放射される光に対応する成分のみが含まれることになる。同様に、第二の差分データ216には、目視用の窓と搬入口152と搬出口153とを通じてチャンバ15の内部に入射する光に対応する成分も、カメラ11の熱ドリフトに対応する成分も含まれず、下段リングライト122のLED124から放射される光に対応する成分のみが含まれることになる。
【0026】
次に良否判定部206は、第一の差分データ216が示す受光量と第二の差分データ216が示す受光量との比の値を求め、その比の値と判定基準データ217とを比較することによってバンプ31の形状の良否を判定する。この判定処理について具体例を挙げて説明すると次の通りである。検査対象物であるバンプ31は図5に示すようにほぼ円錐台形であるとする。バンプ31の表面の傾斜角を予め決められた検査エリアについて判定することによってバンプ31の形状の良否を判定することができる。上段リングライト121から検査エリア内のバンプ31の表面に入射する光の入射角と下段リングライト122からバンプ31の表面の同じエリアに入射する光の入射角とは異なる。バンプ31の表面は乱反射面としての形状を備えている。このため、カメラ11に向かう反射光の光量はバンプ31の表面の傾斜角とバンプ31を照射する光のバンプ31への入射角とに相関する。したがって、上段リングライト121を点灯した状態に対応する第一の差分データ216と下段リングライト122を点灯した状態に対応する第二の差分データ216との比の値と、予め決められている比の値の閾値を示す判定基準データ217とを比較することによって、バンプ31の表面の検査エリアにおける傾斜角を判定することができる。
【0027】
例えば、図5に示すようにバンプ31の正常な形状が傾斜面である検査エリアに上段リングライト121の光と下段リングライト122の光とが照射されるとすると、カメラ11が検査エリアから受光する光の光量は、上段リングライト121の反射光よりも下段リングライト122の反射光の方が多くなる。図5では、上段リングライト121のカメラ11に向かう検査エリアの反射光の光量をベクトルXで示し、下段リングライト122のカメラ11に向かう検査エリアの反射光の光量をベクトルYで示している。上段リングライト121と下段リングライト122と検査エリアとがこのような関係にあるとき、検査エリアにおいてバンプ31の表面の傾斜角θがある閾値よりも小さい場合、カメラ11が検査エリアから受光する光の光量は、下段リングライト122の反射光よりも上段リングライト121の反射光の方が多くなる。したがって、バンプ31の表面の傾斜角θの閾値に対応する判定基準データ217と、上段リングライト121を点灯した状態に対応する第一の差分データ216と下段リングライト122を点灯した状態に対応する第二の差分データ216との比の値とを比較することによって、バンプ31の表面の検査エリアにおける傾斜角を判定することができる。
【0028】
このようにして傾斜角を判定する方法において、図6Aに示すようにチャンバ15の外部の光が目視用の窓からバンプ31を照射するとする。この場合、上段リングライト121が点灯し下段リングライト122が消灯している状態でカメラ11とカメラ駆動部111によって生成される画像データの各画素の輝度値は、図6Bに実線で示すような値を示す。すなわち、チャンバ15の外部の光とカメラ11の熱ドリフトに対応する成分(この成分はハッチングで示す領域に対応する。)が画像データに含まれ、チャンバ15の外部の光の成分は、検査エリアLに対応する画素のエリアにおいて大きくなり、検査エリアRに対応する画素のエリアおいて小さくなる。また、下段リングライト122が点灯し上段リングライト121が消灯している状態でカメラ11およびカメラ駆動部111によって生成される画像データの各画素の輝度値は、図6Cに実線で示すような値を示す。すなわち、上段リングライト121が点灯し下段リングライト122が消灯している状態と同一の、チャンバ15の外部の光とカメラ11の熱ドリフトに対応する成分(この成分はハッチングで示す領域に対応する。)が画像データに含まれる。
【0029】
図7Aでは、上段リングライト121が点灯し下段リングライト122が消灯している状態でカメラ11およびカメラ駆動部111によって生成される画像データの各画素の輝度値が破線で示され、下段リングライト122が点灯し上段リングライト121が消灯している状態で出力される画像データの各画素の輝度値が実線で示されている。仮にオフセットデータを用いずに2つの検査データの比の値を検査エリアLと検査エリアRとについてそれぞれ求めるとすれば、バンプ31の表面の傾斜角は検査エリアLと検査エリアRとにおいて等しいにもかかわらず、その比の値は著しく異なるため、少なくともいずれか一方の検査エリアにおいて良否が誤判定される。
【0030】
図7Bでは、上段リングライト121が点灯し下段リングライト122が消灯している状態に対応する差分データ216の各画素の輝度値はL、Rで示す範囲の破線で示され、下段リングライト122が点灯し上段リングライト121が消灯している状態に対応する差分データ216の各画素の輝度値はL、Rで示す範囲の実線で示されている。2つの差分データ216はチャンバ15の外部の光とカメラ11の熱ドリフトに対応する成分を含まないため、検査エリアL、Rに対応する画素のエリアにおける輝度値は検査エリアL、Rにおけるバンプ31の傾斜角に忠実に対応する。したがって、検査データ214とオフセットデータ215の差分を示す2つの差分データ216の比に基づいてバンプ31の形状の良否を判定することにより、判定精度が向上するのである。
【0031】
次に検査対象の基板30に設けられている検査対象物である全てのバンプ31について形状の検査が終了したかが検査対象データ212に基づいて判定される(ステップS20)。
ステップS20にて検査対象の基板30に設けられている検査対象物である全てのバンプ31について形状の検査が終了したと判定される場合、搬送制御部201は搬送機構駆動部141を制御することによって搬送機構14を駆動し、ステージ13上から基板30をチャンバ15の外に搬出する(ステップS21)。
ステップS20にて検査対象の基板30に設けられている検査対象物である全てのバンプ31について形状の検査が終了していないと判定される場合、ステップS11から上述の処理が繰り返される。
【0032】
以上説明したように、形状検査装置10は、目視用の窓と搬入口152と搬出口153とを通じてチャンバ15の内部に入射する光に対応する成分を含まない差分データに基づいて検査対象物であるバンプ31の形状の良否を判定するため、チャンバ15の外部の光源から放射される光によってバンプ31の形状の良否判定の精度が低下することを防止でき、チャンバ15の外部の光源の光の影響を受けずに高精度にバンプ31の形状の良否を判定することができる。特に、チャンバ15に窓を設ける場合には、チャンバ15の外部の光源の光がチャンバ15の内部に入射しやすくなるが、本実施形態の形状検査装置10によると、チャンバ15の内部に入射する光によって形状の判定精度が低下することがないため、チャンバ15の窓を大きく設計したり、窓を設ける位置を自由に設計することが可能である。また、形状検査装置10は、カメラ11の熱ドリフトの成分を含まない差分データに基づいて検査対象物であるバンプ31の形状の良否を判定するため、カメラ11の熱ドリフトのためにバンプ31の形状の良否判定の精度が低下することを防止でき、カメラ11の熱ドリフトにかかわらず高精度にバンプ31の形状の良否を判定することができる。
【0033】
(3)他の実施形態
尚、本発明の技術的範囲は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
すなわち、検査光源は、検査対象物を照明するための光源であればよく、検査対象物で反射される光を放射する光源として、LEDの他、蛍光管などを検査光源として用いることができる。またLED等の発光体と導光体とを組み合わせたものを光源としてもよい。例えばLEDと円弧状の導光体とを組み合わせたリングライトを光源として用いてもよい。さらに、光源の個数や配置に制限はなく、例えば、リングライトを1段または3段以上に設けてもよい。撮像手段は、検査対象物の反射光の像を撮像できる物であればよく、一般にはエリアイメージセンサ等の光電変換素子が用いられる。
【0034】
検査データは、検査光源を点灯した状態において検査対象物の反射光を受光することによって撮像手段が出力する画像データであればよく、アナログであるかデジタルであるかを含めて、画素数やデータ形式に制限はないし、撮像手段が出力する画像データの一部または全部を検査データとして用いることができる。検査データ取得手段は、このような検査データを取得できる物であればよく、一般にはコンピュータプログラムとそれを実行するコンピュータとによって実現される。
【0035】
オフセットデータは、検査光源を消灯した状態において検査対象物の反射光を受光することによって撮像手段が出力する画像データであればよく、検査データと対応する限りにおいて画素数やデータ形式に制限はないし、撮像手段が出力する画像データの一部または全部をオフセットデータとして用いることができる。オフセットデータ取得手段は、このようなオフセットデータを取得できる物であればよく、一般にはコンピュータプログラムとそれを実行するコンピュータとによって実現される。
【0036】
オフセットデータと検査データを取得するタイミングは、撮像手段の熱ドリフトの変化の早さに応じて決めればよい。変化が早い場合や撮像間隔が長い場合にはオフセットデータと検査データとを交互に取得することが好ましく、熱ドリフトの変化が遅い場合や撮像間隔が短い場合には1つのオフセットデータに対して複数の検査データを取得することが好ましい。
【0037】
差分データは、検査データとオフセットデータの差分を示すデータであればよく、差分の表現形態に制限はなく、実数表現であってもよいし、二値化されたデータであってもよい。差分データ取得手段は、このような差分データを取得できる物であればよく、一般にはコンピュータプログラムとそれを実行するコンピュータとによって実現される。
良否判定手段は、差分データに基づいて検査対象物の形状の良否を判定するものであればよく、どのようなアルゴリズムで判定する物であってもよい。例えば、1つの検査光源によって照射される検査対象物の反射光の光量と閾値とを単純に比較することによって形状の良否が判定されてもよい。
検査対象物は基板上のバンプに限らず、部品実装前の配線パターンや、クリーム半田の検査に本発明を適用してもよいし、基板に実装された部品の実装状態、例えば表面実装された部品の半田付け状態や、部品のずれ・欠落などの実装状態の検査に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態にかかる模式図。
【図2】本発明の実施形態にかかるブロック図。
【図3】本発明の実施形態にかかる平面図。
【図4】本発明の実施形態にかかるフローチャート。
【図5】本発明の実施形態にかかる光路図。
【図6】図6Aは本発明の実施形態にかかる説明図である。図6Bおよび図6Cは本発明の実施形態にかかるグラフである。
【図7】図7Aは本発明の比較例にかかるグラフである。図7Bは本発明の実施形態にかかるグラフである。
【符号の説明】
【0039】
1:検査ユニット、2:制御ユニット、10:形状検査装置、11:カメラ、12:リングライト、13:ステージ、14:搬送機構、15:チャンバ、20:演算部、21:記憶媒体、22:入力部、23:出力部、24:インターフェース、30:基板、31:バンプ、111:カメラ駆動部、121:上段リングライト、122:下段リングライト、123:光源駆動部、125:保持部、131:ステージ駆動部、141:搬送機構駆動部、152:搬入口、153:搬出口、201:搬送制御部、202:ステージ制御部、203:検査データ取得部、204:オフセットデータ取得部、205:差分データ取得部、206:良否判定部、211:形状検査プログラム、212:検査対象データ、213:検査条件データ、214:検査データ、215:オフセットデータ、216:差分データ、217:判定基準データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物を照明するための検査光源と、
撮像手段と、
前記検査光源を点灯した状態において前記検査対象物の反射光を受光することによって前記撮像手段が出力する画像データである検査データを取得する検査データ取得手段と、
前記検査光源を消灯した状態において前記検査対象物の反射光を受光することによって前記撮像手段が出力する画像データであるオフセットデータを取得するオフセットデータ取得手段と、
前記検査データと前記オフセットデータの差分を示す差分データを取得する差分データ取得手段と、
前記差分データに基づいて前記検査対象物の形状の良否を判定する良否判定手段と、
を備える形状検査装置。
【請求項2】
検査対象物を照明するための検査光源を点灯した状態において前記検査対象物の反射光を受光することによって撮像手段が出力する画像データである検査データを取得する工程と、
前記検査光源を消灯した状態において前記検査対象物の反射光を受光することによって前記撮像手段が出力する画像データであるオフセットデータを取得する工程と、
前記検査データと前記オフセットデータの差分を示す差分データを取得する工程と、
前記差分データに基づいて前記検査対象物の形状の良否を判定する工程と、
を含む形状検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−275487(P2008−275487A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−120358(P2007−120358)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000243881)名古屋電機工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】