説明

形状測定装置、形状測定制御プログラム及び形状測定方法

【課題】テーブル等の移動に伴う誤差を排除することができ、被測定物の形状を高精度に測定可能な手段を提供する。
【解決手段】形状測定装置LMSは、被測定物Wと第1、第2プローブ光とを相体移動させるワーク移動ユニット10及びミラーユニット30と、被測定物Wの測定面に照射位置が所定間隔離れた第1,第2プローブ光を照射するとともに、反射光の位置に応じた第1,第2受光信号を出力する光学入ニット20と、これらの作動を制御する制御ユニット50とを備える。制御ユニット50は、測定面の測定部位を測定ラインに沿って前記所定間隔と同程度離間した位置に順次移動させ、各測定部位ごとに第1、第2プローブ光の照射位置の傾斜角度を算出させ、算出された複数の測定部位の傾斜角度情報に基づいて測定ラインに沿った測定面の形状を導出するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の形状を光学的に測定する形状測定装置、形状測定制御プログラム及び形状測定方法に関する。例えば、カメラや半導体製造装置、望遠鏡等に用いられるレンズ、ミラー等の光学素子の形状を精密に測定可能なものであり、特に非球面形状の測定に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
被測定物の形状を測定する形状測定装置として、触針式のタッチプローブを利用した三次元測定装置が従来から広く用いられてきた。この手法では、触針を被測定物の測定面に接触させて高さ位置を計測し、これを測定面について多数の測定部位について多点計測し、測定点をカーブフィット等により演算処理して形状を測定するように構成されていた。触針の先端部には摩耗による測定誤差を排除するため、例えば工業用ルビーやセラミックなどの比較的硬質なスタイラスチップが取り付けられている。そのため、レンズ、ミラー等の光学素子の形状を測定する場合に、測定面に接触痕が残るおそれがあるという課題があった。
【0003】
そこで、触針式のタッチプローブに代えてレーザ測長器の測定ヘッドを搭載し、被測定物の測定面に照射したプローブ光の戻り光を受光して測定ヘッドと測定面との間隔(測定面の高さ位置)を測長することにより、被測定物の形状を測定する非接触式の形状測定装置が提案されている(例えば特許文献1を参照)。このように、被測定物の形状を光学的に測定する非接触式の形状測定装置によれば上記接触痕の課題を解決することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−51624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来の非接触式の形状測定装置においては、被測定物と測定ヘッドとを相体移動させるテーブルや門型フレームの移動に伴う誤差を排除することが難しいという課題があった。例えば、多点計測する測定面上の測定部位を、第1測定部位、第2測定部位、第3測定部位…とした場合において、被測定物と測定ヘッドとを相体移動させて測定部位を第1測定部位→第2測定部位→第3測定部位…のように移動させたときに、第2測定部位において被測定物が相対的に微小角度チルトした場合や微小量シフトした場合、あるいはプローブ光に揺らぎ(例えば周波数変動)が生じたような場合に、従来の非接触式の形状測定装置においては何れも測定面の高さ位置の変化として測定され、別途これらの誤差を検出する検出手段を設けない限り、相対移動に伴う誤差を補正することが困難であった。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、被測定物と測定ヘッドとを相体移動させるテーブル等の移動に伴う誤差を排除することができ、被測定物の形状を高精度に測定可能な形状測定装置を提供することを目的とし、併せて、同様の効果を得ることができる形状測定制御プログラム、形状測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明を例示する第1の態様は形状測定装置である。この形状測定装置は、被測定物の形状を光学的に測定する形状測定装置であり、被測定物の測定面に照射位置が測定ラインに沿って所定間隔離れた第1プローブ光及び第2プローブ光を照射するプローブ光照射手段(例えば、実施形態における光源部21及びプローブ光生成部22)と、測定面で反射された第1、第2プローブ光の反射光を受光して受光位置に応じた第1受光信号、第2受光信号を出力する反射光受光手段(例えば、実施形態における受光部25)と、反射光受光手段から出力された第1、第2受光信号に基づいて測定面における第1、第2プローブ光の各照射位置の傾斜角度を算出する角度算出手段(例えば、実施形態における演算部53)と、被測定物と第1、第2プローブ光とを相体移動させて測定面における第1プローブ光及び第2プローブ光による傾斜角度の測定部位を移動させる照射位置移動手段(例えば、実施形態におけるワーク移動ユニット10、ミラーユニット30等)と、プローブ光照射手段、反射光受光手段、角度算出手段及び照射位置移動手段の作動を制御する制御手段(例えば、実施形態における制御ユニット50)とを備える。制御手段は、照射位置移動手段により測定部位を測定ラインに沿って前記所定間隔と同程度離間した位置に順次移動させ、各測定部位ごとに角度算出手段により第1、第2プローブ光の照射位置の傾斜角度を算出させ、算出された複数の測定部位の傾斜角度情報(複数の測定部位における各照射位置の傾斜角度の情報)に基づいて測定ラインに沿った測定面の形状を導出するように構成される。
【0008】
なお、前記制御手段は、第1の測定部位において算出された第1、第2プローブ光の照射位置の傾斜角度と、第1の測定部位に隣接する第2の測定部位において算出された第1、第2プローブ光の照射位置の傾斜角度とに基づいて第2または第1の測定部位における傾斜角度の誤差成分を算出し、当該誤差成分を補正して測定ラインに沿った測定面の形状を導出するように構成することができる。
【0009】
また、前記測定ラインに沿った測定面の基準形状を予め設定記憶する基準形状記憶手段(例えば、実施形態における記憶部52)と、基準形状記憶手段に設定記憶された基準形状を基準傾斜角度に変換する角度変換手段(例えば、実施形態における演算部53)とを有し、前記制御手段は、測定部位を測定ラインに沿って移動させ第1、第2プローブ光を測定面に照射する際に、角度変換手段により算出された基準傾斜角度に基づいて、当該測定部位に照射される第1プローブ光が測定面に垂直入射するように、照射位置移動手段の作動を制御するように構成することができる。
【0010】
また、前記プローブ光照射手段は、第1、第2プローブ光を出射する光学ユニットと、水平に延びる軸回りに揺動可能に設けられ光学ユニットから出射された第1、第2プローブ光を反射して被測定物の測定面に照射するミラーとを備えて構成し、前記照射位置移動手段は、被測定物が保持されるワークホルダと、ワークホルダを水平面内で直交する二軸方向に移動させるX−Yステージと、ワークホルダの上方に設けられたミラーを揺動させて光学ユニットから出射された第1、第2プローブ光をワークホルダに保持された被測定物の測定面上で測定ラインに沿って移動させる走査機構とを備えて構成し、前記測定部位を測定ラインに沿って順次移動させる作動が、走査機構によりミラーを揺動させることにより行われるように構成しても良い。また、前記照射位置移動手段にワークホルダを上下に移動させるZステージを有し、前記制御手段は、光学ユニットから出射され測定面に照射される第1、第2プローブ光の光路長が、各測定部位において略同一となるように照射位置移動手段の作動を制御するように構成しても良い。
【0011】
また、前記被測定物と前記測定ラインとを上下に延びる旋回軸回りに相対回動させる旋回機構(例えば、実施形態におけるθzステージ)を備え、ワークホルダに保持された被測定物を旋回軸回りに相対回動させることにより、被測定物における任意の旋回角度位置の測定ラインに沿った形状を導出可能に構成しても良い。この場合において、旋回機構によりワークホルダに保持された被測定物を旋回軸回りに所定の角度ピッチで相対回動させて複数の旋回角度位置の測定ラインに沿った形状を測定することにより、測定面の形状を導出するように構成することができる。
【0012】
本発明を例示する第2の態様は形状測定制御プログラムである。この形状測定制御プログラムは、以下のような形状測定装置において制御手段が実行する形状測定制御プログラムである。形状測定装置は、被測定物の測定面に照射位置が測定ラインに沿って所定間隔離れた第1プローブ光及び第2プローブ光を照射するプローブ光照射手段(例えば、実施形態における光源部21及びプローブ光生成部22)と、測定面で反射された第1、第2プローブ光の反射光を受光して受光位置に応じた第1受光信号、第2受光信号を出力する反射光受光手段(例えば、実施形態における受光部25)と、反射光受光手段から出力された第1、第2受光信号に基づいて測定面における第1、第2プローブ光の各照射位置の傾斜角度を算出する角度算出手段(例えば、実施形態における演算部53)と、被測定物と第1、第2プローブ光とを相体移動させて測定面における第1、第2プローブ光による傾斜角度の測定部位を移動させる照射位置移動手段(例えば、実施形態におけるワーク移動ユニット10、ミラーユニット30等)と、プローブ光照射手段、反射光受光手段、角度算出手段及び照射位置移動手段の作動を制御する制御手段(例えば、実施形態における制御ユニット50)とを備えて構成される。そして、第2の態様の形状測定制御プログラムは、照射位置移動手段により測定部位を測定ラインに沿って前記所定間隔と同程度離間した位置に順次移動させるステップと、各測定部位において反射光受光手段から出力される第1、第2受光信号を取得するステップと、取得された第1、第2受光信号から角度算出手段により第1、第2プローブ光の照射位置の傾斜角度を算出させるステップと、算出された複数の測定部位の傾斜角度情報(複数の測定部位における各照射位置の傾斜角度の情報)に基づいて測定ラインに沿った測定面の形状を導出するステップと、導出された測定ラインに沿った測定面の形状を出力するステップとを有して構成される。
【0013】
なお、前記複数の測定部位の傾斜角度情報に基づいて測定ラインに沿った測定面の形状を導出するステップは、第1の測定部位において算出された第1、第2プローブ光の照射位置の傾斜角度と、第1の測定部位に隣接する第2の測定部位において算出された第1、第2プローブ光の照射位置の傾斜角度とを取得するステップと、第1、第2の測定部位において第1、第2プローブ光の照射位置が重複する位置について算出された二つの傾斜角度に基づいて第2または第1の測定部位における傾斜角度の誤差成分を算出するステップと、算出された誤差成分に基づいて第2または第1の測定部位における第1、第2プローブ光の照射位置の傾斜角度の算出値を補正するステップとを有して構成することができる。
【0014】
また、前記形状測定装置に、前記測定ラインに沿った測定面の基準形状を予め設定記憶する基準形状記憶手段(例えば、実施形態における記憶部52)と、基準形状記憶部に設定記憶された基準形状を基準傾斜角度に変換する角度変換手段(例えば、実施形態における演算部53)とを有し、前記照射位置移動手段により測定部位を測定ラインに沿って前記所定間隔と同程度離間した位置に順次移動させるステップには、角度変換手段により算出された基準傾斜角度に基づいて、当該測定部位に照射される第1プローブ光が測定面に垂直入射するように、照射位置移動手段を作動させるステップを有して構成することができる。
【0015】
本発明を例示する第3の態様は形状測定方法である。この形状測定方法は被測定物の形状を光学的に測定する形状測定方法であり、プローブ光照射手段(例えば、実施形態における光源部21及びプローブ光生成部22)により、被測定物に測定ラインに沿って所定間隔離れた第1プローブ光及び第2プローブ光を照射し、反射光受光手段(例えば、実施形態における受光部25)により測定面で反射された第1、第2プローブ光の反射光を受光して、反射光受光手段から受光位置に応じて出力される第1受光信号、第2受光信号に基づいて角度算出手段(例えば、実施形態における演算部53)により測定面における第1、第2プローブ光の各照射位置の傾斜角度を算出し、照射位置移動手段(例えば、実施形態におけるワーク移動ユニット10、ミラーユニット30等)により被測定物と第1、第2プローブ光とを相体移動させて測定面における第1、第2プローブ光による傾斜角度の測定部位を測定ラインに沿って前記所定間隔と同程度離間した位置に順次移動させ、各測定部位において反射光受光手段及び角度算出手段により第1、第2プローブ光の各照射位置の傾斜角度を算出して、算出された複数の測定部位の傾斜角度情報(複数の測定部位における各照射位置の傾斜角度の情報)に基づいて測定ラインに沿った測定面の形状を導出するように構成される。
【0016】
なお、前記複数の測定部位の傾斜角度情報に基づいて測定ラインに沿った測定面の形状を導出する際に、第1の測定部位において算出された第1、第2プローブ光の照射位置の傾斜角度と、第1の測定部位に隣接する第2の測定部位において算出された第1、第2プローブ光の照射位置の傾斜角度とを取得し、第1、第2の測定部位において第1、第2プローブ光の照射位置が重複する位置について算出された二つの傾斜角度に基づいて第2または第1の測定部位における傾斜角度の誤差成分を算出し、算出された誤差成分に基づいて第2または第1の測定部位における第1、第2プローブ光の照射位置の傾斜角度の算出値を補正して測定ラインに沿った測定面の形状を導出するように構成することができる。
【0017】
また、前記照射位置移動手段により測定部位を測定ラインに沿って前記所定間隔と同程度離間した位置に順次移動させる際に、測定ラインに沿った前記測定面の基準形状を基準傾斜角度に変換し、変換された基準傾斜角度に基づいて、当該測定部位に照射される第1プローブ光が測定面に垂直入射するように、照射位置移動手段により被測定物を移動させるように構成することができる。
【0018】
なお、本明細書において前記所定間隔と同程度離間した位置は、第1、第2プローブ光を測定ラインに沿って所定間隔移動させたときに、移動前後の第1、第2プローブ光が重複する範囲内で、移動前後に測定される傾斜角が同一視し得る誤差範囲内の位置領域をいい、例えば第1、第2プローブ光の照射位置間隔をdとしたときに0.5d〜2d程度離間した位置(好ましくは0.8〜1.2d程度離間した位置)が該当する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の態様の形状測定装置においては、制御手段が、照射位置移動手段により測定部位を測定ラインに沿ってビーム間隔と同程度離間した位置に順次移動させ、各測定部位ごとに角度算出手段により第1、第2プローブ光の照射位置の傾斜角度を算出させ、算出された複数の測定部位の傾斜角度情報に基づいて測定ラインに沿った測定面の形状を導出するように構成される。すなわち、照射位置移動手段により測定ラインに沿って移動される測定部位の移動間隔は、第1、第2プローブ光の測定ラインに沿った照射位置の間隔と同程度であり、測定面上において測定部位が移動されるごとにほぼ同一位置の傾斜角度が第1プローブ光と第2プローブ光とにより順次重複して計測され、このような傾斜角度情報に基づいて測定ラインに沿った測定面の形状が導出される。
【0020】
このような態様の形状測定装置によれば、例えば、既述したように多点計測する測定面の測定ライン上の測定部位を、第1測定部位、第2測定部位、第3測定部位…とした場合において、プローブ光照射手段及び反射光受光手段等を有する測定ヘッドと被測定物とを相体移動させて測定部位を第1測定部位→第2測定部位→第3測定部位…のように移動させたときに、第2測定部位において被測定物が相対的に微小角度チルトしたか否か等を検知することができる。
【0021】
すなわち、第2測定部位における第1、第2プローブ光の照射位置の傾斜角度は、第1測定部位及び第3測定部位において第1、第2プローブ光により略同一照射位置の傾斜角度が計測されている。また、第2測定部位において被測定物が相対的に微小角度チルトしたような場合には、第2測定部位における第1、第2プローブ光の二つの照射位置の傾斜角度は同一方向に同一微小角度だけ変化する。そのため、複数の測定部位に関する傾斜角度情報に基づいて上記のような誤差成分を排除することができる。従って、第1の態様の形状測定装置によれば、簡明な構成で、被測定物と測定ヘッドとを相体移動させるテーブル等の移動に伴う誤差を排除することができ、被測定物の形状を高精度に測定可能な形状測定装置を提供することができる。
【0022】
本発明の第2の態様の形状測定制御プログラムにおいては、測定部位を測定ラインに沿ってビーム間隔と同程度離間した位置に順次移動させるステップと、各測定部位において第1、第2プローブ光の受光信号を取得するステップ、及び第1、第2プローブ光の照射位置の傾斜角度を算出させるステップと、算出された複数の測定部位の傾斜角度情報に基づいて測定ラインに沿った測定面の形状を導出するステップと、導出された測定ラインに沿った測定面の形状を出力するステップとを有して構成される。
【0023】
このような態様の形状測定制御プログラムによれば、第1の態様の形状測定装置について説明したのと同様に、複数の測定部位に関する傾斜角度情報に基づいて、プローブ光照射手段及び反射光受光手段等を有する測定ヘッドと被測定物とを相体移動させる際に生じ得る誤差成分を排除することができる。従って、第2の態様の形状測定制御プログラムによれば、簡明な制御構成で、被測定物と測定ヘッドとを相体移動させるテーブル等の移動に伴う誤差を排除することができ、被測定物の形状を高精度に測定可能な形状測定装置を提供することができる。
【0024】
本発明の第3の態様の形状測定方法においては、被測定物に所定間隔離れた第1プローブ光及び第2プローブ光を照射し、測定面で反射された第1、第2プローブ光の反射光を受光して受光位置に応じて出力される第1、第2受光信号に基づいて第1、第2プローブ光の各照射位置の傾斜角度を算出し、第1、第2プローブ光による傾斜角度の測定部位を測定ラインに沿って前記所定間隔と同程度離間した位置に順次移動させて各測定部位における第1、第2プローブ光の各照射位置の傾斜角度を算出して、複数の測定部位の傾斜角度情報に基づいて測定ラインに沿った測定面の形状を導出するように構成される。
【0025】
このような態様の形状測定方法によれば、以上説明した各態様と同様に、被測定物に対してプローブ光を相体移動させる際に生じ得る誤差成分を排除することができる。従って、本態様の形状測定方法によれば、簡便な構成で、被測定物とプローブ光とを相体移動させる際の移動に伴う誤差を排除することができ、被測定物の形状を高精度に測定可能な形状測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の態様を例示する形状測定装置の概要構成図である。
【図2】上記形状測定装置における制御系の概要ブロック図である。
【図3】プローブ光の移動パターンを例示する模式図である。
【図4】プローブ光の他の移動パターンを例示する模式図である。
【図5】光学ユニットの概要構成図である。
【図6】反射光分離素子の構成を例示する模式図であり、(a)は複屈折ハービング、(b)ウォラストンプリズムである。
【図7】測定面の形状と測定ラインの設定について説明するための説明図である。
【図8】測定面の形状と測定ラインの設定について説明するための他の説明図である。
【図9】測定面に照射される第1,第2プローブ光と測定ライン上の測定位置との関係を示す模式図である。
【図10】測定ライン上の各測定部位における基準傾斜角度、測定傾斜角度、誤差成分の総和、及び現実の傾斜角度との関係をまとめた図表である。
【図11】形状測定の制御プログラムのフローチャートである。
【図12】上記フローチャートにおけるステップS60の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。まず、形状測定装置の全体構成について図1及び図2を参照して概要説明する。図1は本発明の態様を例示する形状測定装置LMSの概要構成図、図2は形状測定装置LMSにおける制御系の概要ブロック図である。
【0028】
説明を明瞭化するため、相互に直行するx軸、y軸、z軸から成る座標系を規定し図1中に示す。ここで、x軸は紙面に沿って左右に延びる軸、y軸は紙面を表裏貫通して前後に延びる軸、z軸は紙面に沿って上下に延びる軸であり、x−y平面が水平面、z軸が鉛直軸に相当する。なお、説明の便宜上から、図1に示す姿勢をもってx軸に沿った方向を左右方向、y軸に沿った方向を前後方向、z軸に沿った方向を上下方向ということがあるが、x,y,z各軸の取り方は任意であり、位置や姿勢を規定するものではない。
【0029】
[形状測定装置の概要]
形状測定装置LMSは、大別的には、被測定物(ワーク)Wをx,y,zの各軸方向に移動させるワーク移動ユニット10と、形状測定用のプローブ光PL(第1プローブ光PL1,第2プローブ光PL2)を出射する光学ユニット20と、光学ユニット20から出射されたプローブ光PLを反射して被測定物に照射するミラーユニット30と、オペレータの操作に基づいてワーク移動ユニット10、光学ユニット20、ミラーユニット30等の各部の作動を制御する制御ユニット50などから構成される。
【0030】
ワーク移動ユニット10、光学ユニット20、及びミラーユニット30は、共通のベースフレーム81を基礎とし、温度及び湿度が所定値で一定となるように管理された環境チャンバ82内に設置される。
【0031】
ワーク移動ユニット10は、ベースフレーム81に精密除振装置83を介して支持された定盤85に設けられており、被測定物Wを保持するワークホルダ15、定盤85とワークホルダ15との間に設けられワークホルダ15を水平面内で各々x軸方向(左右方向)、y軸方向(前後方向)に移動させるxステージ11及びyステージ12などを主体として構成される。本構成形態においては、ワークホルダ15をz軸方向(上下方向)に移動させるzステージ13、及びワークホルダ15を上下鉛直に延びるθz軸(旋回軸)回りに回動させるθzステージ(旋回機構)14を備えた構成を示す。なお、θzステージは、ミラーユニット30を、後述するθy軸と直交する鉛直軸回りに回動させるように構成しても良い。
【0032】
ベースフレーム81には、ワーク移動ユニット10を左右に跨ぎ上部梁18bがワークホルダ15の上方を通る門型フレーム18が精密除振装置84を介して取り付けられている。門型フレーム18には、ワークホルダ15のx軸方向位置,y軸方向位置,z軸方向位置を検出するフィードバック制御用のxセンサ41,yセンサ42(図1において不図示),zセンサ43が設けられており、各センサにより検出されたワークホルダ15のx軸方向,y軸方向,z軸方向の位置検出信号が制御ユニット50に入力されている。
【0033】
また、θzステージ14には、ワークホルダ15の旋回角度位置を検出するθzセンサ44が設けられており、θzセンサ44により検出されたワークホルダ15の旋回角度の位置検出信号が制御ユニット50に入力されている。なお、xセンサ41,yセンサ42,zセンサ43は、例えば、測長干渉計やリニアスケール等を用いることができ、θzセンサ44は、スケールが曲面形状のリニアスケールやロータリエンコーダを用いることができる。
【0034】
光学ユニット20は、門型フレーム18の脚部18a上方に取り付けられており、光学ユニット20から出射されたプローブ光PL(PL1,PL2)が、門型フレームの上部梁18bに沿ってx軸方向に出射される。なお、光学ユニット20の詳細については後述する。
【0035】
ミラーユニット30は、ワークホルダ15の直上に位置する上部梁18bの中央部に取り付けられている。ミラーユニット30は、光学ユニット20から上部梁18bに沿ってx軸方向に出射されたプローブ光PLを反射してワークホルダ15に保持された被測定物Wに照射するミラー31と、このミラー31を前後水平に延びるθy軸(揺動軸)33回りに揺動させるθy駆動機構(θyステージという)35などを備えて構成される。θy軸はミラー31の反射面(より詳細には、プローブ光の入射位置)を通るように設定される。
【0036】
ミラーユニット30には、θyステージ35(ミラー31)の揺動角度位置を検出するθyセンサ45が取り付けられており、θyセンサ45により検出されたミラー31の揺動角度の位置検出信号が制御ユニット50に入力されている。θyセンサ45はスケールが曲面形状のリニアスケールやロータリエンコーダ等を用いることができる。
【0037】
制御ユニット50は、オペレータが作動操作を行う操作部51、被測定物の基準形状等を記憶する記憶部52、各種の演算処理を行う演算部53、演算部53から出力される指令信号に基づいてx,y,z,θz,θyの各ステージ11,12,13,14,35の作動を制御するステージ制御部54、演算部53から出力される指令信号に基づいて後述する光学ユニット20の作動を制御する計測制御部55、外部と信号の入出力を行うI/O部56などを備えて構成される。
【0038】
このように概要構成される形状測定装置LMSにおいては、光学ユニット20から出射されたプローブ光PLをミラー31を介して被測定物Wの測定面に照射し、測定面で反射された反射光を光学ユニット20内の受光素子で受光して受光位置を検出することにより、プローブ光PLが照射された照射位置の傾斜角度を求めることができる。そして、制御ユニット50により各ステージの作動を制御してプローブ光PLと被測定物Wとを相体移動させ、プローブ光PLの照射位置を順次移動させることにより測定面上の各部の傾斜角度を計測することができ、多点計測された傾斜角度のデータを積分処理やフィッティング処理等の手法により演算処理することで測定面の形状を導出することができる。
【0039】
図3及び図4に、プローブ光PLと被測定物Wとを相体移動させてプローブ光の照射位置を移動させる移動パターンを例示する。両図は、ワークホルダ15に保持された被測定物W(W1,W2)を上方から見た模式図であり、プローブ光PLが移動する測定面上の測定ライン(プローブ光の走査ライン)をL1〜L3で示している。
【0040】
図3は、矩形平板状の被測定物W1を計測する場合に好適な移動パターンの一例である。この例では、プローブ光PLが測定面の左上端のスタートポイントSPに照射された状態から、xステージ11を断続的または連続的に作動させてプローブ光PLを測定ラインL1に沿って移動させ、測定ラインL1上の各測定点で検出した傾斜角度から測定ラインL1に沿った測定面の形状を計測する。次に、yステージ12を作動させて被測定物Wを図3における上方に移動させた後、xステージ11を作動させてプローブ光を測定ラインL2に沿って移動させ、測定ラインL2上の各測定点で検出した傾斜角度から測定ラインL2に沿った測定面の形状を計測する。以下同様にyステージ12、xステージ11を作動させ測定ラインL3…に沿った測定面の形状を計測する。
【0041】
これにより、被測定物W1について測定面全体を平行なライン状に形状測定した測定データを得ることができる。また、上記測定後にθzステージ14により被測定物Wを所定角度(例えば90度)回動して当該旋回角度位置で保持し、再びxステージ11及びyステージ12の交互移動により測定ラインに沿った測定面の形状測定を行うことにより、測定面全体を格子状に形状測定した測定データを得ることもできる。
【0042】
図4は、円形平板状の被測定物W2を計測する場合に好適な移動パターンの一例である。本例においては、まず、x軸ステージ11を作動させて被測定物W2を移動させたとき、またはθyステージ35を作動させてプローブ光PLを移動させたときに、相体移動されるプローブ光PLが被測定物Wの円の中心を通るように、yステージ12により被測定物Wのy軸方向位置をアライメントしておく。
【0043】
そして、図4(a)に示すように、プローブ光PLが測定面の左端のスタートポイントSPに照射された状態から、xステージ11を断続的または連続的に作動させてプローブ光PLを測定ラインL1に沿って移動させ、測定ラインL1上の各測定点で検出した傾斜角度から測定ラインL1に沿った測定面の形状を計測する。次に、図4(b)に示すように、プθzステージ14により被測定物Wを所定角度(例えば2度)回動して当該旋回角度位置で保持し、再びxステージ11をプローブ光を測定ラインL2に沿って移動させ、測定ラインL2上の各測定点で検出した傾斜角度から測定ラインL2に沿った測定面の形状を計測する。以下同様にθzステージ14、xステージ11を作動させ測定ラインL3…に沿った測定面の形状を計測する。
【0044】
これにより、被測定物W2について測定面全体を放射状に形状測定した測定データを得ることができる。なお、被測定物W2についても、前述した被測定物W1と同様にライン状または格子状の移動パターンで測定面全体を形状測定することができ、被測定物W1について放射状の移動パターンで測定面全体を形状測定することもできる。
【0045】
[光学ユニットの構成]
次に、光学ユニット20について、図5を参照して説明する。光学ユニット20は、レーザ光を出射する光源部21、光源部21から出射されたレーザ光を所定のビーム間隔で平行に延びる複数のプローブ光にして出射するプローブ光生成部22、プローブ光生成部22から出射され被測定物Wの測定面Wsで反射された反射光を受光する受光部25などを主体として構成される。光学ユニット20は、原理的には、測定面Wsの傾斜角度を測定するオートコリメータ方式の角度測定装置に相当する。
【0046】
実施形態においては、光源部21により発生されたレーザ光LBを、プローブ光生成部22において二つに分割し及び結合して、所定間隔で平行に出射する第1プローブ光PL1及び第2プローブ光PL2を生成した構成を例示する。また、光学ユニット20に、プローブ光生成部22において生成された第1,第2プローブ光PL1,PL2の揺らぎを検出するプローブ光モニター部23を設けた構成を例示する。
【0047】
光源部21は、レーザ光LBを発生するレーザ光源211、プローブ光生成部22側からの戻り光を遮断するアイソレータ212、レーザ光源211により発生されたレーザ光LBのオン・オフを切り替えるシャッタ213などを備えて構成される。
【0048】
レーザ光源211は、所定波長で安定化されポインティングスタビリティが高いレーザ光を安定的に発生するレーザであり、例えば発振波長が可視領域のDFB(Distributed Feedback)半導体レーザやDBR(Distributed Bragg Reflector)半導体レーザ、あるいは周波数が安定化されたHe-Neレーザなどが好適に用いられる。レーザ光源211から出射されるレーザ光LBは、偏光面が紙面に45度の角度で交わる直線偏光、または円偏光で出力される。シャッタ213は、EOM(Electro Optic Modulator)やAOM(Acousto Optic Modulator)を利用した電子シャッタ、あるいは光路を機械的に遮断するメカニカルシャッタを用いて構成することができる。
【0049】
プローブ光生成部22は、レーザ光発生部21から出射されたレーザ光LBを二分割する偏向ビームスプリッタ221、及び結合する偏光ビームスプリッタ222、分割された各光路に設けられた1/2波長板223,224、シャッタ225,226、ミラー227,228などを備えて構成される。
【0050】
偏光ビームスプリッタ221は、レーザ光発生部21から出射されたレーザ光LBを、偏光面が紙面に平行なp偏光のレーザ光と紙面に垂直なs偏光のレーザ光とに分割する。例えば、偏光面が紙面に平行なp偏光のレーザ光を透過し、偏光面が紙面に垂直なs偏光のレーザ光とに分離する。p偏光のレーザ光及びs偏光のレーザ光は、各光路に設けられた1/2波長板223,224を透過することにより迷光が除去され偏光率が高い直線偏光のレーザ光となる。
【0051】
偏光ビームスプリッタ222は、p偏光のレーザ光とs偏光のレーザ光とを一体に結合し所定間隔で平行に出射する第1プローブ光PL1及び第2プローブ光PL2を生成する。例えば、p偏光のレーザ光を透過しs偏光のレーザ光を反射することにより、両偏光成分のレーザ光を一体に結合し、p偏光の第1プローブ光PL1とs偏光の第2プローブ光PL2を生成する。
【0052】
ここで、ミラー228には、このミラー228の位置及び角度を調整することにより、第1プローブ光PL1と第2プローブ光PL2との間隔を調整可能なミラー調整機構229が設けられている。ミラー調整機構229は、ミラー228の位置(図5において紙面に沿った左右または上下方向の位置)を調整する位置調整構造と、ミラー228の紙面に直行する軸回りの角度位置を調整する角度調整構造とにより構成される。
【0053】
このミラー調整機構229により、ミラー228の位置(例えば図5における左右方向の位置)を調整することにより、偏光ビームスプリッタ222に入射するs偏光のレーザ光の入射位置を左右に平行移動させて、第1プローブ光PL1と第2プローブ光PL2の間隔を調整することができる。また、ミラー調整機構229により、ミラー228の角度位置を調整することにより、偏光ビームスプリッタ222に入射するs偏光のレーザ光の入射角度を変化させて、第1プローブ光PL1と第2プローブ光PL2の平行度を調整することができる。そして、これらを組み合わせることにより、プローブ光生成部22から、p偏向の第1プローブ光PL1とs偏向の第2プローブ光PL2とを任意間隔で平行に出射させることができる。
【0054】
シャッタ225,226は、前述したシャッタ213と同様に、EOMやAOM等を用いて構成することができる。このシャッタ225,226を備えたことによりp偏光の第1プローブ光PL1とs偏光の第2プローブ光PL2とを選択的に切り替えてプローブ光生成部22から出射させることが可能になっている。
【0055】
プローブ光生成部22から出射された第1プローブ光PL1及び第2プローブ光PL2はビームスプリッタ251に入射し、一部がプローブ光モニター部23に導かれ、他が光学ユニット20から出射する。
【0056】
プローブ光モニター部23には、導入された第1,第2プローブ光PL1,PL2を二つに分割するビームスプリッタ231、各々第1プローブ光PL1と第2プローブ光PL2との間隔を検出する第1ビーム間隔センサ235及び第2ビーム間隔センサ236が設けられている。第1ビーム間隔センサ235はビームスプリッタ231に近接して設けられており、レーザ光源211からセンサまでの光路長が短い短光路でのビーム間隔(第1ビーム間隔)が検出される。一方、第2ビーム間隔センサ236はビームスプリッタ231から離間して設けられており、レーザ光源211からセンサまでの光路長が長い長光路でのビーム間隔(第2ビーム間隔)が検出される。
【0057】
このため、第1ビーム間隔センサ235及び第2ビーム間隔センサ236により検出される第1ビーム間隔及び第2ビーム間隔をモニターすることにより、第1,第2プローブ光PL1,PL2の変動(揺らぎ)状態を検知することができる。すなわち、第1,第2プローブ光PL1,PL2の照射位置が変化したときに、その位置変動が第1,第2プローブ光PL1,PL2の平行シフトなのか角度変化なのか、及びシフト量、角度変化量を検知することができ、これに基づいて補正を行うことが可能になっている。
【0058】
光学ユニット20から出射した第1プローブ光PL1及び第2プローブ光PL2は、図示省略する集光レンズ及びミラーユニットのミラー31を介して被測定物Wの測定面Wsに照射される。このとき、後に詳述するように、制御ユニット50によりx,y,z,θz,θyの各ステージ11,12,13,14,35の作動が制御され、測定面Wsの測定部位にかかわらず、光学ユニット20から出射された第1,第2プローブ光PL1,PL2が略一定の光路長で測定面Wsに垂直入射するように制御される。
【0059】
測定面Ws上における第1,第2プローブ光PL1,PL2の並ぶ方向、すなわち、第1プローブ光PL1のビーム中心と第2プローブ光PL2のビーム中心とを結ぶ線分が延びる方向は、これらのプローブ光が走査する測定ラインに沿うように設定される。本構成形態においては、測定ラインはx軸方向であり、光学ユニット20からz軸方向に並んで出射された第1,第2プローブ光PL1,PL2がミラー31により反射され、測定面Ws上においてx軸方向に並んで照射される。
【0060】
測定面Ws上における第1,第2プローブ光PL1,PL2のビーム間隔dは、測定面Wsの曲率や目標とする分解能等に応じて適宜に選択し、ミラー調整機構229により設定することができる。例えば、測定面Wsの曲率半径が10mよりも大きく、目標とする分解能がnmオーダのような場合には、測定面Ws上における第1,第2プローブ光PL1,PL2のビーム間隔d=10〜50μm程度が好適なビーム間隔として例示される。
【0061】
測定面Wsで正反射された第1プローブ光PL1の反射光(以下、「第1反射光」という)RL1、及び第2プローブ光PL2の反射光(以下、「第2反射光」という)RL2は、ミラー31を介して光学ユニット20に戻り、ビームスプリッタ251により反射されて受光部25に入射する。
【0062】
受光部25には、第1反射光RL1及び第2反射光RL2を受光し、第1反射光RL1の受光位置に応じた第1受光信号LS1、及び第2反射光RL2の受光位置に応じた第2受光信号LS2を出力する受光素子255が設けられている。受光素子255は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor Image Sensor)を用いて構成することができる。なお、受光素子255に入射した反射光RL(第1反射光RL1,第2反射光RL2)のビーム位置は、反射光RLの画像(画素信号)を公知の手法により処理することで求められる。
【0063】
本構成形態においては、ビームスプリッタ251と受光素子255との間に、第1反射光RL1と第2反射光RL2とが受光素子255で重複しないように、すなわち第1反射光RL1と第2反射光RL2とが独立した二つのビームとして入射するように、第1反射光RL1と第2反射光RL2とを分離する反射光分離素子253が設けられている。
【0064】
反射光分離素子253は、本構成例において、第1反射光RL1と第2反射光RL2の偏光特性の相違を利用して構成することができる。例えば図6(a)に示すように、入射光の偏光方向により屈折率が異なる複屈折材料を利用した複屈折ハービング253a、図6(b)に示すように、入射光の偏光方向により屈折率が異なる複屈折材料を組み合わせたウォラストンプリズム253b、図示省略するローションプリズムなどを用いて構成することができる。
【0065】
このように、第1反射光RL1と第2反射光RL2とを分離する反射光分離素子253をビームスプリッタ251と受光素子255との間に設けることにより、第1反射光RL1及び第2反射光RL2の位置検出精度を向上させることができる。すなわち、測定面Ws上における第1,第2プローブ光PL1,PL2のビーム間隔d(例えば30μm)が、各プローブ光のスポットサイズ(例えばφ2mm)と比較して小さく、そのままでは受光素子255において第1反射光RL1と第2反射光RL2とが重複した一つのダルマ状のビームになるような場合であっても、反射光分離素子253により各々独立した二つの円形のビームに分離することができ、第1,第2反射光RL1,RL2の位置検出精度を大幅に向上させることができる。なお、プローブ光生成部22に設けたシャッタ225,226により第1反射光RL1と第2反射光RL2とを時間的に分離してもよい。
【0066】
このようにして受光素子255により検出され、受光素子255から出力された第1受光信号LS1及び第2受光信号LS2は、所定光路長を伝播した第1反射光RL1及び第2反射光RL2の位置を表しており、これらの受光信号LS1,LS2に基づいて測定面Wsにおける第1,第2プローブ光PL1,PL2の照射位置の傾き角度を算出することができる。そして、測定面Wsにおいて第1,第2プローブ光PL1,PL2の照射位置を変化させて複数の測定部位において測定面の傾斜角度を測定し、測定された各測定部位の傾斜角度情報を積分処理及びフィッティング処理することにより測定面Wsの形状を導出することができる。
【0067】
なお、以上説明した実施形態では、光源部21により発生された一つのレーザ光LBを、プローブ光生成部22において二分割し結合して二つのプローブ光を生成した構成を例示したが、光学ユニット20から出射されるプローブ光の数が複数(n(nは2以上の自然数))であれば良い。例えば、光源部21により発生された一つのレーザ光LBをプローブ光生成部22において三以上に分割し結合してもよく、また光源部21から出射されるレーザ光LBを複数(例えば偏光状態が異なるn個のレーザ光、あるいは波長が異なるn個のレーザ光など)とし、プローブ光生成部22において結合するように構成しても良い。
【0068】
[制御ユニットの構成]
次に、制御ユニット50装置の構成について、図2を再度参照して、もう少し詳しく説明する。概要説明したように、制御ユニット50は、オペレータが作動操作を行う操作部51、被測定物Wの基準形状等を記憶する記憶部52、各種の演算処理を行う演算部53、演算部53から出力される指令信号に基づいてx,y,z,θz,θyの各ステージ11,12,13,14,35の作動を制御するステージ制御部54、演算部53から出力される指令信号に基づいて光学ユニット20の作動を制御する計測制御部55、外部と信号の入出力を行うI/O部56などを備えて構成される。
【0069】
操作部51には、種々の画像やアイコン類、測定結果などを表示する液晶表示パネル、数値や文字情報を入力するキーボード、アイコンの選択操作等を行うマウス、オンオフスイッチやロータリースイッチ等の各種スイッチ類、磁気記録媒体やUSBメモリー等に記録された測定面Wsの基準形状のデータや測定結果等を読み書き可能なリーダーライター等が設けられており、対話形式で測定面Wsのタイプ(例えば、平面、球面、非球面、シリンドリカル等)や測定パターン(ライン状、格子状、放射状等)に対応した形状測定が行えるようになっている。
【0070】
記憶部52は、ROMやRAM等の記憶素子が複数設けられて構成される。ROMには、形状測定装置LMSの各部の作動を制御する制御プログラム、被測定物Wのタイプや測定パターンに対応した測定プログラムなどが予め設定記憶されている。操作部51において被測定物Wのタイプや測定パターンが選択設定され、対応する測定プログラムが制御プログラムに組み込まれることにより、被測定物Wに好適な形状測定装置が構成される。
【0071】
RAMには、操作部51に設けられたリーダーライターまたはI/O部56を介して読み込まれた被測定物の測定面Wsの基準形状(設計値のベクターデータ)、測定プログラムに設定された測定ライン上の測定部位における各プローブ光照射位置の基準傾斜角度、測定プログラムの実行中に受光素子255から出力される各測定部位の第1受光信号LS1及び第2受光信号LS2、などが一時記憶される。
【0072】
演算部53は、CPUやシフトレジスター等により構成され、記憶部52に予め設定記憶された制御プログラム及び測定プログラムに基づいて各種の演算処理を行い、ステージ制御部54や計測制御部55等に指令信号を出力して、ワーク移動ユニット10、光学ユニット20、ミラーユニット30の作動を制御する。
【0073】
ステージ制御部54は、演算部53から出力される指令信号に基づいてワーク移動ユニット10のxステージ11、yステージ12、zステージ13、θzステージ14、ミラーユニット30のθyステージ35等に駆動信号を出力し、各ステージの作動を制御する。計測制御部55は、演算部53から出力される指令信号に基づいて光学ユニット20の光源部21(レーザ光源211、シャッタ213)、プローブ光生成部22(シャッタ225,226、ミラー調整機構229)、受光部25(受光素子255)等に測定制御信号を出力し測定面Wsの形状測定を制御する。
【0074】
演算部53は、x,y,z,θz,θyの各ステージ11,12,13,14,35について、測定面Wsの測定部位にかかわらず、光学ユニット20から出射された第1,第2プローブ光PL1,PL2が略一定の光路長で測定面Wsに垂直入射するように制御する。
【0075】
プローブ光の光路長一定かつ測定面への垂直入射を実現するため、具体的には制御プログラムに基づいて以下のような制御が実行される。演算部53は、記憶部52に設定記憶された測定面Ws全体の基準形状から、測定プログラムで設定された測定ラインに沿った測定面Wsの基準形状(断面形状)を算出する。次いで、測定プログラムにおいて測定ライン上に設定された測定点について、その測定点の傾斜角度を算出する。
【0076】
次に、算出された各測定点の傾斜角度から、その測定部位にプローブ光PLを垂直入射させるためのθzステージ14(被測定物W)及びθyステージ35(ミラー31)の角度位置、並びにミラー31〜測定点の距離を所定値とするためのxステージ11、yステージ12、zステージ13の座標位置を算出する。次いで、算出された各ステージの位置に基づいた駆動信号を生成し、x,y,z,θz,θyの各ステージ11,12,13,14,35に駆動信号を出力して、被測定物W及びミラー31を位置決めさせる。
【0077】
そして、位置決めされた被測定物Wに対し、計測制御部55から光学ユニット20のシャッタ211をオンにする計測制御信号を出力させて光学ユニット20から第1,2プローブ光PL1,PL2を出射させる。これにより、光学ユニット20から出射された第1,第2プローブ光PL1,PL2を略一定の光路長で測定面Wsに垂直入射させることができる。
【0078】
最も単純な例として、被測定物Wが矩形平板である場合、測定ラインは図3に示したように平行なライン状に初期設定され、被測定物Wが円形平板である場合、測定ラインは図4に示したように中心を通る放射状に初期設定される。これらの場合、測定面Wsが平面であることから、x軸に沿って測定ライン上に設定された各測定点の傾斜角度は何れも水平である。そこで、演算部53は、θyステージ35にミラー31の反射面がx−z平面内で45度下傾した揺動角度位置になる指令信号を出力してその角度位置で固定し、zステージ13に測定面Wsが所定の座標位置になる指令信号を出力してその高さ位置で固定する。以降は、xステージ11のみ所定間隔で移動させることにより、各測定部位において光学ユニット20から出射された第1,第2プローブ光PL1,PL2を一定の光路長で垂直入射させることができる。
【0079】
被測定物の測定面Wsが軸対称性を有する球面形状や非球面形状である場合、測定ラインは中心の対象軸を通る放射状に初期設定される。この場合において、図7に示すように、測定物の直径が比較的小径(ミラー31の揺動によるプローブ光の走査角度範囲内)であり、測定面Wsの曲率半径rが比較的小さい(例えば100〜500mm程度の)凹の球面形状であるような場合には、θyステージ35のみを作動させてx軸に沿った測定ライン上の各測定部位において光学ユニット20から出射された第1,第2プローブ光PL1,PL2を一定の光路長で略垂直入射させることができる。
【0080】
すなわち、ミラー31の反射面がx−z平面内で45度下傾した角度位置において第1,第2プローブ光PL1,PL2が測定面Wsの対象軸に沿って中心部に入射し、ミラー31と測定面Wsとの間隔が曲率半径rと一致するように測定面Wsの位置を初期設定することで、以降は、θyステージ35によりプローブ光を所定角度ピッチで揺動させるだけでx軸に沿った測定ライン上の各測定部位において第1,第2プローブ光PL1,PL2を一定の光路長で略垂直入射させることができる。
【0081】
一方、測定面Wsの曲率半径rが比較的大きい場合や凸面である場合、あるいは非球面であるような場合には、ミラー31の角度位置を調整するだけでは、測定ライン上の各測定部位において第1,第2プローブ光PL1,PL2を一定の光路長で垂直入射させることは困難である。
【0082】
例えば、被測定物の測定面Wsが非球面形状であり、図8(a)に示すように、軸心部の測定部位Pwaの曲率半径がr1、周縁部の測定部位Pwb及びPwcの曲率半径がr2であるような場合である。この場合、ミラー31の角度位置を調整するだけでは、測定部位Pwb及びPwcに第1,第2プローブ光PL1,PL2を垂直入射させることができず、また測定部位Pwaの傾斜角度を測定するときの光路長(具体的には、ミラー31の反射点P31と測定部位Pwaとの距離)と、測定部位Pwb及びPwcの傾斜角度を測定するときの光路長(同上、ミラー31の反射点P31と測定部位PwbまたはPwcとの距離)を、一定にすることができない。
【0083】
このような場合に、演算部53は、記憶部52に予め設定記憶された測定面Ws全体の基準形状を読み出して、測定ラインに沿った測定面の基準形状を算出し、測定ライン上に設定された測定部位Pwa,Pwb,Pwc…について、各測定点の傾斜角度を算出する。次いで、例えば、測定部位Pwaの傾斜角度を測定するときの光路長を基準とし、図8(b)に示すように、測定部位Pwbの傾斜角度を測定するときのプローブ光の入射角度(例えば、第1プローブ光の入射角度、あるいは後述するプローブ光軸の交差角)が測定面に垂直になり、かつ光路長が測定部位Pwaの傾斜角度を測定するときの光路長と同一になるように、θyステージ35の角度位置、xステージ11及びzステージ13の座標位置を算出する。
【0084】
そして、各測定部位に応じて算出されたステージ位置に基づいた駆動信号をx,z,θyステージ11,13,35に出力して被測定物W及びミラー31を移動及び位置決めさせることにより、光学ユニット20から出射された第1,第2プローブ光PL1,PL2を略一定の光路長で測定面Wsに垂直入射させることができる。測定面Wsの曲率半径rが比較的大きい場合や凸面である場合についても、同様の処理を行うことにより第1,第2プローブ光PL1,PL2を略一定の光路長で測定面Wsに垂直入射させることができる。
【0085】
なお、プローブ光を測定面Wsに垂直入射させる場合に、第1プローブ光PL1及び第2プローブ光PL2のいずれかを基準としてステージ位置を算出することができるほか、第1プローブ光PL1の光軸と第2プローブ光PL2の光軸の中間を通る仮想のプローブ光軸を規定し、このプローブ光軸が測定面Wsに垂直に交わるようにステージ位置を算出することができる。本構成形態の場合には、第1プローブ光と第2プローブ光とのビーム間隔は数十μm程度であり、何れを基準としても第1プローブ光及び第2プローブ光を実質的に一定の光路長で垂直入射させることができる。
【0086】
厳密には、前者の場合に第2プローブ光または第1プローブ光について、垂直入射から微小角度傾いた相対的な傾斜角度分が補正項として加味され、後者の場合には第1プローブ光及び第2プローブ光の両者について、プローブ光軸が交わる測定面の傾斜角に対する第1,第2プローブ光PL1,PL2の各照射位置の相対的な傾斜角度分が垂直入射補正項として加味される。
【0087】
[二つのプローブ光による傾斜角度測定]
上記のようにして一定の光路長で測定面Wsに垂直入射される第1,第2プローブ光PL1,PL2は、測定面上においてx軸方向に延びる測定ラインLに沿って所定間隔d離れて照射される。図9(a)は、測定面Wsに照射された第1,第2プローブ光PL1,PL2を模式的に示した平面図であり、二つのプローブ光が一組になってステージの駆動により一体的に移動する測定部位が形成される。図では便宜的に第1,第2プローブ光PL1,PL2を囲む楕円で測定部位を表している。
【0088】
形状測定装置LMSにおいては、図9(b)に示すように、x軸に沿った測定ラインL上に第1,第2プローブ光のビーム間隔と同程度の間隔(本実施形態においてはビーム間隔と同じ間隔d)で測定点1,2,3,4,5…が設定される。そして第1,第2プローブ光PL1,PL2からなる測定部位が移動ピッチdで順次I,II,III,IV…の位置に相対移動され、各測定部位において第1プローブ光PL1の照射位置の傾斜角度及び第2プローブ光PL2の照射位置の傾斜角度が測定される。
【0089】
具体的には、測定部位Iにおいて、プローブ光軸が測定面に垂直に交わり光路長が所定値になるように各ステージを移動させて位置決め保持し、測定点1に第1プローブ光PL1、測定点2に第2プローブPL2を照射して各測定点の傾斜角度を算出する。次に測定部位IIにおいて、プローブ光軸が測定面に垂直に交わり光路長が所定値になるように各ステージを移動させて位置決め保持し、測定点2に第1プローブ光PL1、測定点3に第2プローブ光PL2を照射して各測定点の傾斜角度を算出する。以降の測定部位III,IV…についても同様である。
【0090】
このとき、測定部位がIのときの第2プローブ光PL2の照射位置と、測定部位がIIのときの第1プローブ光PL1の照射位置とは、測定面上の同一測定位置2である。測定部位がIIのときの第2プローブ光PL2の照射位置と、測定部位がCのときの第1プローブ光PL1の照射位置、及び測定部位がIIIのときの第2プローブ光PL2の照射位置と、測定部位がIVのときの第1プローブ光PL1の照射位置等についても、測定面上の測定位置は各々3,4であり同一である。すなわち、形状測定装置LMSにおいては、測定部位の変化に伴い、第1プローブ光PL1と第2プローブ光PL2とにより同一測定位置の傾斜角度が重複して測定されるようになっている。
【0091】
ここで、これまでの説明から明らかなように、測定ラインLに沿って測定部位を移動させるということは、x,y,z,θz,θyステージ11,12,13,14,35の少なくともいずれかを駆動して、プローブ光PL(PL1,PL2)と被測定物Wとを相対移動させることを意味する。各ステージには除去困難な誤差成分が含まれており、測定部位の移動に伴って測定面に微細なシフトやチルトが発生する。この誤差成分は位置決め停止される測定部位I,II,III,IV…ごとに固有の値となる。
【0092】
いま、記憶部52に設定記憶された測定面Wsの基準形状(設計値)に基づいて演算部53により算出された測定点1,2,3,4…の理想的な傾斜角度をk1,k2,k3,k4…とし、被測定物Wにおける測定点1,2,3,4…の現実の傾斜角度をS1,S2,S3,S4…とする。
【0093】
また、各測定点1,2,3,4…について、受光素子255から出力された第1受光信号(第1プローブ光の反射光の受光位置に応じた信号)LS1に基づいて演算部53により算出された測定点1,2,3,4…の傾斜角度をD11,D21,D31,D41…とし、第2受光信号(第2プローブ光の反射光の受光位置に応じた信号)LS2に基づいて演算部53により算出された測定点1,2,3,4…の傾斜角度をD12,D22,D32,D42…とする。
【0094】
さらに、測定部位I,II,III,IV…における各ステージのチルト等及び測定に同期する誤差成分の総和をT1,T2,T3,T4…とする。
【0095】
このとき、測定部位をI,II,III,IV…nのように移動させて測定される傾斜角度は、図10に示す各式で表される。
【0096】
ここで、測定部位Iにおける各ステージのチルト等及び測定に同期する誤差成分の総和T1をゼロであると仮定する。そして、演算部53において図10に示される連立方程式を解き、各測定点の現実の傾斜角度S1,S2,S3,S4…を算出する。具体的には、以下のようにして測定点の傾斜角度S1,S2,S3,S4…を算出する。
【0097】
まず、誤差成分の総和T1=0とすることにより、測定部位Iにおける第1プローブ光PL1の照射位置(測定点1)と第2プローブ光PL2の照射位置(測定点2)の傾斜角度の式は、
1=D11−k1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
2=D22−k2・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
【0098】
測定部位IIにおける第1プローブ光PL1の照射位置(測定点2)と第2プローブ光PL2の照射位置(測定点3)の傾斜角度の式は、
2+T2=D21−k2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
3+T2=D32−k3 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4)
ここで、測定点2の現実の傾斜角度S2は(2)式により求められており既知である。そのため(3)式から測定部位IIにおける誤差成分の総和T2が下記(3)′式により求められ、求めたT2を(4)式に代入して
2=D21−k2−S2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)′
3=D32−k3−T2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4)′
【0099】
以下、同様にして誤差成分の総和T3,T4…が求められ、求めたT3,T4…を用いて各測定点の傾斜角度S4,S5…が順次算出される。これにより、測定部位Iにおける誤差成分の総和T1を基準として、各測定部位ごとにランダムに生じる固有の誤差成分の影響を排除して各測定点の現実の傾斜角度S1,S2,S3,S4…が求められる。そして、算出された各測定点の傾斜角度情報に基づいて、測定ラインLに沿った測定面Wsの形状が導出される。
【0100】
具体的には、算出された測定点1,2,3,4…の傾斜角度S1,S2,S3,S4…が、演算部53において測定点間の間隔dを用いて積分処理され(最も簡明な例として台形積分が挙げられる)、各測定点の傾斜角度が測定面Wsの形状に変換される。この際、測定部位ごとに断片化された形状の連続性を補償するため、演算部53においてスプライン補間等の関数を用いた積分誤差の低減が実行される。なお、微分Zernike関数を用いた関数フィッティングにより測定面Wsの形状に変換するように構成しても良い。微分Zernike関数を用いた関数フィッティング手法によれば、積分処理により生じる誤差を低減することができ、傾斜角度から測定面Wsの形状に変換する処理の精度を向上させることができる。
【0101】
なお、説明簡明化のため、測定部位Iにおける誤差成分の総和T1をゼロと仮定した場合を説明したが、測定部位Iにおける誤差成分の総和T1をゼロ以外の所定値とし、あるいは任意の測定部位における誤差成分の総和をゼロまたは所定値としても良い。
【0102】
このように、形状測定装置LMSでは、測定ライン上の各測定点の「傾斜角度」を測定し、測定された各測定点の傾斜角度を積分処理やフィッティング処理等することにより、測定ラインに沿った測定面Wsの形状を導出する。この構成により、測定面Wsに微小な高低差しかないような形状を高精度に測定することができる。
【0103】
すなわち、測定点の高さ(光学ユニットと測定点との間の距離)を測定するような構成の場合、仮に高さ測定の分解能が1nmであるとすると、測定可能な測定面Wsの形状は測定点の間隔dにかかわらず、高低差が1nm以上のものに限られる。一方、測定点の傾斜角度を測定する本構成によれば、光てこの原理により光路長に応じて分解能を向上可能であることに加えて、測定点の間隔dを変化させることにより分解能をさらに向上させることができる。
【0104】
例えば、間隔がd離れた二つの測定点の高低差が=1nmの場合において、d=1mmのときに検出される傾斜角度が1μradであったと仮定すると、d=0.1mmのときに検出される傾斜角度は10μrad、d=0.01mmのときに検出される傾斜角度は100μradとなる。逆説すれば、傾斜角度の分解能が1μradのシステムにおいて、測定点の間隔dを0.01mmとすることにより、測定点の高低差が=0.01nmの形状を測定可能ということである。
【0105】
また、形状測定装置LMSにおいては、第1、第2プローブ光PL1,PL2を測定面Wsに「垂直入射」させ、測定面Wsで反射された第1、第2反射光RL1,RL2が光学ユニット20の受光素子255に入射するように構成される。そのため、比較的小型の受光素子255を用いて高い角度分解能のシステムを構築することができる。また、ステージ等の振動の影響を受けにくいという効果を併せて得ることができる。
【0106】
また、形状測定装置LMSでは、測定面Wsに入射する第1、第2プローブ光PL1,PL2の光路長が一定となるように制御される。そのため、測定面Wsに入射する第1、第2プローブ光PL1,PL2、受光素子255に入射する第1、第2反射光RL1,RL2のビーム径がそれぞれ一定となり、安定的な形状測定が可能になっている。
【0107】
さらに、形状測定装置LMSにおいては、測定ライン方向(x軸方向)に間隔d離れた第1,第2プローブ光PL1,PL2が一体的に移動ピッチdで測定ライン上を相対移動するように構成される。すなわち、測定部位が測定ライン上を移動するたびに、各測定部位で第1,第2プローブ光PL1,PL2により同一測定点の傾斜角度が重複測定される。この構成により、ステージの移動〜位置決め停止に伴って生じる各測定部位に固有の誤差成分(チルトや同期誤差等)を確実に排除することができ、高精度の形状測定を実現することができる。
【0108】
[形状測定装置による形状測定の流れ]
次に、形状測定装置LMSによる形状測定の流れについて説明する。オペレータは、操作部51において被測定物Wのタイプや測定パターンを選択するとともに、測定面Wsの基準形状のデータを読み込んで記憶部52に記憶させる。次に、操作部51において「アライメント」を選択して実行し、ワークホルダ15に保持された被測定物のアライメントを行わせる。
【0109】
具体的には、演算部53は、操作部51において選択設定された被測定物Wのタイプ及び測定パターン、並びに記憶部52に記憶された測定面の基準形状に基づいて、測定面に沿って第1、第2プローブ光PL1,PL2を粗く走査させ、受光素子255で受光できることを確認するとともに、ワークホルダ15に保持された被測定物Wの位置を算出する。そして、算出された被測定物の位置に基づいてx,y,z,θzステージ11,12,13,14等を作動させ、例えば被測定物Wが軸対称性を有する非球面レンズ等の場合には、測定ラインが中心軸と交差するように被測定物Wの位置を調整する。そして、測定パターに応じた原点位置に被測定物Wを移動させてアライメント処理を完了する。
【0110】
アライメント処理が完了したのち、操作部51において「形状測定」が選択され、スタートされると、制御ユニット50は形状測定の制御プログラムに基づいてワーク移動ユニット10、光学ユニット20、ミラーユニット30の各部の作動を制御し、測定面Wsの形状測定を実行する。ここでは、[二つのプローブ光による傾斜角度測定]の項で説明した測定ラインに沿って形状測定を行う場合について、図11に示す形状測定の制御プログラムのフローチャートFを参照して説明する。
【0111】
ステップS10では、ステージ位置の算出処理が行われる。この処理により測定ラインがx軸に沿い、測定ライン上の測定部位(図9の測定部位Iとする)にプローブ光を一定光路長で垂直入射させるx,y,z,θz,θyの各ステージ11,12,13,14,35の位置が算出される。具体的には、演算部53が記憶部52に設定記憶された測定面Wsの基準形状を読み出し、x軸に沿った測定ライン上の各測定点について理想的な傾斜角度(「基準傾斜角度」という)k1,k2を算出して記憶部52のRAMに一時記憶する。次いでプローブ光の光路長が一定になり、かつ、測定しようとする測定点1,2において、例えば、前述したプローブ光軸が測定面Wsに垂直に交わる各ステージ位置を算出する。
【0112】
ステップS20では、ステップS10で算出されたステージ位置に基づき、ステージ移動処理が行われる。具体的には、演算部53がステップS10で算出したステージ位置に応じた指令信号をステージ制御部54に出力する。ステージ制御部54は指令信号に応じた駆動信号を各ステージに出力し、x,y,z,θz,θyの各ステージ11,12,13,14,35を駆動して被測定物Wとプローブ光とを相対移動させ、測定ライン上の測定部位Iに位置決めさせて、ステップS30に進む。
【0113】
ステップS30では、光学ユニット20による第1、第2受光信号の取得処理が行われる。このとき、計測制御部55から光学ユニット20に指令信号が出力されてシャッタ213が開となり、第1プローブ光PL1及び第2プローブ光PL2が測定部位Iの測定点1及び測定点2に照射される。これらの測定点で反射された第1反射光RL1及び第2反射光RL2は受光素子255に入射し、受光素子255から各測定点1,2の傾斜及び測定部位Iに固有の誤差成分の総和T1を含んだ第1受光信号LS1及び第2受光信号LS2が出力されて制御ユニット50に入力される。なお、第1、第2プローブ光PL1,PL2は、アライメント処理段階から測定面に常時照射されるように構成しても良い。
【0114】
ステップS40では、ステップS30で取得された第1、第2受光信号LS1,LS2に基づいて傾斜角度の算出処理が行われる。第1受光信号LS1及び第2受光信号LS2は、所定光路長を伝播した第1反射光RL1及び第2反射光RL2の位置を表し、第1、第2プローブ光を垂直入射させることにより、受光素子255における各反射光の基準受光位置からのずれ量は、各測定点の基準傾斜角度からのずれ量を表している。
【0115】
演算部53は、光学ユニット20の構成により定まる変換係数に基づき、第1、第2受光信号LS1,LS2から各測定点の傾斜角度を算出する。このとき、第1、第2プローブ光PL1,PL2の垂直入射からのずれ、すなわち既述した垂直入射補正項による補正が行われた傾斜角度が算出される。このようにして算出される測定点の傾斜角度は、[二つのプローブ光による傾斜角度測定]の項で説明した傾斜角度D11,D22に相当する。算出された傾斜角度(「測定傾斜角度」という)は、記憶部52のRAMに一時記憶され、ステップS50に進む。
【0116】
ステップS50では、測定ライン上に設定された全測定点について傾斜角度の測定が行われたか否かが判断される。例えば、測定プログラムにおいて測定ライン上に測定点がn点設定されている場合に、ステップS20によるステージの移動処理がn回実行されたか否か、あるいはステップS40による傾斜角度の算出処理がn回実行されたか否か等により判断される。そして測定ライン上に設定された全測定点について傾斜角度測定が行われていないと判断されるときは、ステップS10に戻って測定ライン上の次の測定点の傾斜角度測定が行われ、全測定点について傾斜角度測定が行われたと判断されるときにはステップS60に進む。
【0117】
ステップS60では、測定ラインに沿った測定面Wsの形状を導出する処理が行われる。ここまでのステップにより記憶部52のRAMには、測定ライン上の全測定点について、設計上の基準傾斜角度k1,k2,k3,k4…、第1、第2プローブ光による測定傾斜角度(D11,D22),(D21,D32),(D31,D42)…が記憶されている。演算部53は、これらの基準傾斜角度及び測定傾斜角度を読み出し、測定ライン上の測定点の角度分布から測定ラインに沿った測定面の形状を導出する。この測定ラインに沿った形状導出処理(ステップS60)の詳細を図12に示す。
【0118】
ステップS60の形状導出処理は、まず、ステップS61において、基準傾斜角度k1,k2,k3,k4…、及び測定傾斜角度(D11,D22),(D21,D32),(D31,D42)の読出し処理が行われる。続くステップS63では、演算部53において(1)(2)式の処理後、(3)′(4)′式の演算処理が順次行われ、測定部位II,III,IV…の誤差成分の総和T2,T3,T4…と、現実の各測定点の傾斜角度S1,S2,S3,S4…とが算出される。
【0119】
ステップS65では、算出された各測定点の傾斜角度S1,S2,S3,S4…に基づいて測定ラインに沿った測定面の形状の導出処理が行われる。具体的には、所定間隔d(例えばd=30μm)ごとに変化する離散的な傾斜角度データS1,S2,S3,S4…に対し、積分処理、微分Zernike関数を用いた関数フィッティング処理、スプライン補間処理等を行うことにより、傾斜角度が連続的(滑らか)に変化する測定面の形状導出が行われる。
【0120】
このようにして測定ラインに沿った測定面Wsの形状を導出する処理が完了すると、算出された測定ライン(第1測定ライン)の形状データが、第1測定ラインの設定位置とともに記憶部52のRAMに記録され、ステップS70(図11)に進む。
【0121】
ステップS70では、測定プログラムで設定された測定面Ws上の全測定ラインについて測定ラインに沿った形状が導出されたか否かが判断される。例えば、測定プログラムにおいて測定面上に測定ラインがm本設定されている場合に、ステップS60による測定ラインに沿った測定面の形状導出処理がm回実行されたか否か、あるいは記憶部52のRAMにm個の測定ラインに沿った測定面の形状データが記録されているか否か等により判断される。
【0122】
そして測定面に設定された全測定ラインについて、測定ラインに沿った形状が導出されていないと判断されるときは、ステップS75においてθzステージが旋回駆動されて被測定物が次の測定ラインの角度位置に位置決めされ、ステップS10に戻って次の測定ラインに沿った形状の導出処理が行われる。一方、全測定ラインについて測定ラインに沿った形状の導出処理が行われたと判断されるときにはステップS80に進む。
【0123】
ステップS80では、測定面Ws全体の形状の導出処理が行われる。具体的には、各測定ラインに沿って導出され、記憶部53に記録された放射状(平行ライン状、格子状等)の形状データに基づいて、測定面Ws全体の形状(例えば、三次元の非球面形状)が導出される。導出された測定面Ws全体の形状データは記憶部53のRAMに記録され、ステップS90に進む。
【0124】
ステップS90では、ステップS80で導出された測定面Wsの形状データが出力される。例えば、図示省略する画像処理部により画像処理された測定面Wsの三次元画像や解析画像等が操作部51の液晶表示パネルに表示され、あるいはI/O部56を介して外部(例えば測定面の形状データを印刷するプリンタやデータ処理する他のコンピュータ等)に出力される。
【0125】
オペレータは、操作部51により表示情報を選択的に切り替えることができ、測定面のWsの三次元画像や任意の測定ラインに沿った測定面の形状、各種の解析画像等を液晶表示パネルに表示させることができる。これにより、高精度に測定された測定面のWsの形状や、基準形状(設計値)と比較した誤差領域の位置、大きさ、範囲などを容易に把握することができる。
【0126】
以上説明したように、本発明の態様によれば、プローブ光と被測定物とを相体移動させるステージ等の移動に伴う誤差を排除することができ、被測定物の測定面の形状を高精度に測定可能な形状測定手段を提供することができる。そして、本発明を使用することにより初めて精度よい測定が可能になる被測定物の例として、プロジェクタの光学系に使用するレンズや、プリンタスキャナレンズ、リアプロジェクションテレビレンズ、集光型太陽光発電システムレンズ(CVP)、カメラレンズ、露光装置の光学系に使用されるレンズ、長尺ミラー、放射光用ミラー、高精度金型などが例示される。
【符号の説明】
【0127】
10 ワーク移動ユニット
11 xステージ
12 yステージ
13 zステージ
14 θzステージ
15 ワークホルダ
20 光学ユニット
21 光源部(211 レーザ光源)
22 プローブ光生成部
25 受光部(255 受光素子)
30 ミラーユニット
35 θyステージ
50 制御ユニット
52 記憶部
53 演算部
54 ステージ制御部
55 計測制御部
I,II,III,IV… 測定部位
d 測定面上における第1,第2プローブ光のビーム間隔
F 形状測定の制御プログラムのフローチャート
L(L1〜L3) 測定ライン
LMS 形状測定装置
LS1 第1受光信号
LS2 第2受光信号
PL1 第1プローブ光
PL2 第2プローブ光
W(W1,W2) 被測定物
Ws 測定面
S10 ステージ位置の算出処理を行うステップ
S20 ステージ移動処理を行うステップ
S30 第1、第2受光信号の取得処理を行うステップ
S40 傾斜角度の算出処理を行うステップ
S50 測定ライン上の全測定点完了か否かを判断するステップ
S60 測定ラインに沿った測定面の形状を導出処理するステップ
S61 基準傾斜角度及び測定傾斜角度の読出し処理を行うステップ
S63 各測定部位の誤差成分の総和と現実の各測定点の傾斜角度を算出するステップ
S65 測定ラインに沿った測定面の形状の導出処理を行うステップ
S70 測定面上の全測定ライン完了か否かを判断するステップ
S75 被測定物を次の測定ラインの角度位置に位置決めステップ
S80 測定面全体の形状の導出処理を行うステップ
S90 測定面の形状データを出力するステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の形状を光学的に測定する形状測定装置であって、
前記被測定物の測定面に照射位置が測定ラインに沿って所定間隔離れた第1プローブ光及び第2プローブ光を照射するプローブ光照射手段と、
前記測定面で反射された前記第1、第2プローブ光の反射光を受光して受光位置に応じた第1受光信号、第2受光信号を出力する反射光受光手段と、
前記反射光受光手段から出力された前記第1、第2受光信号に基づいて前記測定面における前記第1、第2プローブ光の各照射位置の傾斜角度を算出する角度算出手段と、
前記被測定物と前記第1、第2プローブ光とを相体移動させて前記測定面における前記第1、第2プローブ光による傾斜角度の測定部位を移動させる照射位置移動手段と、
前記プローブ光照射手段、前記反射光受光手段、前記角度算出手段及び前記照射位置移動手段の作動を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記照射位置移動手段により前記測定部位を前記測定ラインに沿って前記所定間隔と同程度離間した位置に順次移動させ、各測定部位ごとに前記角度算出手段により前記第1、第2プローブ光の照射位置の傾斜角度を算出させ、算出された複数の測定部位の傾斜角度情報に基づいて前記測定ラインに沿った前記測定面の形状を導出するように構成したことを特徴とする形状測定装置。
【請求項2】
前記制御手段は、第1の前記測定部位において算出された前記第1、第2プローブ光の照射位置の傾斜角度と、前記第1の測定部位に隣接する第2の前記測定部位において算出された前記第1、第2プローブ光の照射位置の傾斜角度とに基づいて前記第2または第1の測定部位における傾斜角度の誤差成分を算出し、当該誤差成分を補正して前記測定ラインに沿った前記測定面の形状を導出するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の形状測定装置。
【請求項3】
前記測定ラインに沿った前記測定面の基準形状を予め設定記憶する基準形状記憶手段と、前記基準形状記憶手段に設定記憶された前記基準形状を基準傾斜角度に変換する角度変換手段とを有し、
前記制御手段は、前記測定部位を前記測定ラインに沿って移動させ前記第1、第2プローブ光を前記測定面に照射する際に、前記角度変換手段により算出された前記基準傾斜角度に基づいて、当該測定部位に照射される前記第1プローブ光が前記測定面に垂直入射するように、前記照射位置移動手段の作動を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の形状測定装置。
【請求項4】
前記プローブ光照射手段は、
前記第1、第2プローブ光を出射する光学ユニットと、水平に延びる軸回りに揺動可能に設けられ前記光学ユニットから出射された前記第1、第2プローブ光を反射して前記被測定物の前記測定面に照射するミラーとを備え、
前記照射位置移動手段は、
前記被測定物が保持されるワークホルダと、前記ワークホルダを水平面内で直交する二軸方向に移動させるX−Yステージと、前記ワークホルダの上方に設けられた前記ミラーを揺動させて前記光学ユニットから出射された第1、第2プローブ光を前記ワークホルダに保持された前記被測定物の測定面上で前記測定ラインに沿って移動させる走査機構とを備え、
前記測定部位を前記測定ラインに沿って順次移動させる作動が、前記走査機構により前記ミラーを揺動させることにより行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の形状測定装置。
【請求項5】
前記照射位置移動手段に前記ワークホルダを上下に移動させるZステージを有し、
前記制御手段は、前記光学ユニットから出射され前記測定面に照射される前記第1、第2プローブ光の光路長が、各測定部位において略同一となるように前記照射位置移動手段の作動を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の形状測定装置。
【請求項6】
前記被測定物と前記測定ラインとを上下に延びる旋回軸回りに相対回動させる旋回機構を備え、前記ワークホルダに保持された前記被測定物を前記旋回軸回りに相対回動させることにより、前記被測定物における任意の旋回角度位置の測定ラインに沿った形状を導出可能に構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の形状測定装置。
【請求項7】
前記旋回機構により前記ワークホルダに保持された前記被測定物を前記旋回軸回りに所定の角度ピッチで相対回動させて複数の旋回角度位置の測定ラインに沿った形状を測定することにより、前記測定面の形状を導出するように構成したことを特徴とする請求項6に記載の形状測定装置。
【請求項8】
被測定物の測定面に照射位置が測定ラインに沿って所定間隔離れた第1プローブ光及び第2プローブ光を照射するプローブ光照射手段と、前記測定面で反射された前記第1、第2プローブ光の反射光を受光して受光位置に応じた第1受光信号、第2受光信号を出力する反射光受光手段と、前記反射光受光手段から出力された前記第1、第2受光信号に基づいて前記測定面における前記第1、第2プローブ光の各照射位置の傾斜角度を算出する角度算出手段と、前記被測定物と前記第1、第2プローブ光とを相体移動させて前記測定面における前記第1、第2プローブ光による傾斜角度の測定部位を移動させる照射位置移動手段と、前記プローブ光照射手段、前記反射光受光手段、前記角度算出手段及び前記照射位置移動手段の作動を制御する制御手段とを備えて構成される形状測定装置において前記制御手段が実行する形状測定制御プログラムであって、
前記照射位置移動手段により前記測定部位を前記測定ラインに沿って前記所定間隔と同程度離間した位置に順次移動させるステップと、
前記各測定部位において前記反射光受光手段から出力される前記第1、第2受光信号を取得するステップと、
取得された前記第1、第2受光信号から前記角度算出手段により前記第1、第2プローブ光の照射位置の傾斜角度を算出させるステップと、
算出された複数の測定部位の傾斜角度情報に基づいて前記測定ラインに沿った前記測定面の形状を導出するステップと、
導出された前記測定ラインに沿った前記測定面の形状を出力するステップとを有して構成されることを特徴とする形状測定制御プログラム。
【請求項9】
複数の測定部位の傾斜角度情報に基づいて前記測定ラインに沿った前記測定面の形状を導出するステップは、
第1の前記測定部位において算出された前記第1、第2プローブ光の照射位置の傾斜角度と、前記第1の測定部位に隣接する第2の前記測定部位において算出された前記第1、第2プローブ光の照射位置の傾斜角度とを取得するステップと、
前記第1、第2の測定部位において前記第1、第2プローブ光の照射位置が重複する位置について算出された二つの傾斜角度に基づいて前記第2または第1の測定部位における傾斜角度の誤差成分を算出するステップと、
算出された誤差成分に基づいて前記第2または前記第1の測定部位における前記第1、第2プローブ光の照射位置の傾斜角度の算出値を補正するステップとを有して構成されることを特徴とする請求項8に記載の形状測定制御プログラム。
【請求項10】
前記形状測定装置には、前記測定ラインに沿った前記測定面の基準形状を予め設定記憶する基準形状記憶手段と、前記基準形状記憶手段に設定記憶された前記基準形状を基準傾斜角度に変換する角度変換手段とを有し、
前記照射位置移動手段により前記測定部位を前記測定ラインに沿って前記所定間隔と同程度離間した位置に順次移動させるステップには、
前記角度変換手段により算出された前記基準傾斜角度に基づいて、当該測定部位に照射される前記第1プローブ光が前記測定面に垂直入射するように、前記照射位置移動手段を作動させるステップを有することを特徴とする請求項8または9に記載の形状測定制御プログラム。
【請求項11】
被測定物の形状を光学的に測定する形状測定方法であって、
プローブ光照射手段により、前記被測定物に測定ラインに沿って所定間隔離れた第1プローブ光及び第2プローブ光を照射し、
反射光受光手段により、前記測定面で反射された前記第1、第2プローブ光の反射光を受光して、前記反射光受光手段から受光位置に応じて出力される第1受光信号、第2受光信号に基づいて角度算出手段により前記測定面における前記第1、第2プローブ光の各照射位置の傾斜角度を算出し、
照射位置移動手段により、前記被測定物と前記第1、第2プローブ光とを相体移動させて前記測定面における前記第1、第2プローブ光による傾斜角度の測定部位を前記測定ラインに沿って前記所定間隔と同程度離間した位置に順次移動させ、
各測定部位において前記反射光受光手段及び前記角度算出手段により前記第1、第2プローブ光の各照射位置の傾斜角度を算出して、
算出された複数の測定部位の傾斜角度情報に基づいて前記測定ラインに沿った前記測定面の形状を導出することを特徴とする形状測定方法。
【請求項12】
前記複数の測定部位の傾斜角度情報に基づいて前記測定ラインに沿った前記測定面の形状を導出する際に、
第1の前記測定部位において算出された前記第1、第2プローブ光の照射位置の傾斜角度と、前記第1の測定部位に隣接する第2の前記測定部位において算出された前記第1、第2プローブ光の照射位置の傾斜角度とを取得し、
前記第1、第2の測定部位において前記第1、第2プローブ光の照射位置が重複する位置について算出された二つの傾斜角度に基づいて前記第2または第1の測定部位における傾斜角度の誤差成分を算出し、
算出された誤差成分に基づいて前記第2または前記第1の測定部位における前記第1、第2プローブ光の照射位置の傾斜角度の算出値を補正して前記測定ラインに沿った前記測定面の形状を導出することを特徴とする請求項11に記載の形状測定方法。
【請求項13】
前記照射位置移動手段により前記測定部位を前記測定ラインに沿って前記所定間隔と同程度離間した位置に順次移動させる際に、
前記測定ラインに沿った前記測定面の基準形状を基準傾斜角度に変換し、
前記基準傾斜角度に基づいて、当該測定部位に照射される前記第1プローブ光が前記測定面に垂直入射するように、前記照射位置移動手段により前記被測定物を移動させることを特徴とする請求項11または12に記載の形状測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−93225(P2012−93225A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240848(P2010−240848)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】