説明

復帰促進式クロス連結型ショックアブソーバシステムを備えた車輌

【課題】クロス連結型ショックアブソーバシステムを備えた車輌に於いて、車輌のワーピング時にシリンダ−ピストン装置のシリンダとピストンの間のクリアランスを経て油圧室間に作動油の移動が生じた場合にも、ワーピングが収まったときにはシリンダ−ピストン装置のフリーピストンに中央位置からの偏倚が残らないようにする。
【解決手段】シリンダ−ピストン装置にフリーピストンを段付きシリンダに対し中央位置へ付勢するばねを設け、更には一対の前輪または後輪または両方の左右のショックアブソーバを選択的に連通させる連通弁を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車輌の車輪懸架装置に組み込まれたショックアブソーバに係り、特に4室のフリーピストン式シリンダ−ピストン装置を備え、一対の後輪のショックアブソーバが一対の前輪のショックアブソーバに対しクロスした関係にてシリンダ−ピストン装置に連結されているクロス連結型のショックアブソーバシステムに関する改良に係わる。
【背景技術】
【0002】
左右一対の前輪および左右一対の後輪を有する4輪自動車等の車輌に於いて、各輪をそれぞれがショックアブソーバを組み込んだ車輪懸架装置により車体に懸架することは、この技術の分野に於いては周知である。また、そのような4つのショックアブソーバに段付シリンダとフリーピストンを備えたシリンダ−ピストン装置を組み合わせ、一対の前輪に対する左右のショックアブソーバの作動油圧をフリーピストンの両側に作用させて互いに対向させ、これに重ねて同じフリーピストンの両側に一対の後輪に対する左右のショックアブソーバの作動油圧を作用させて互いに対向させること、或は一対の前輪に対する左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と一対の後輪に対する左右のショックアブソーバのうちの同じ一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する同じ他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差とをフリーピストンにより対向させること(即ち、上記のクロス連結型のショックアブソーバシステムを構成すること)、或は4つのショックアブソーバの作動油圧の対向状態を、平行連通状態と交叉連通状態の間に切り換わる切換弁により、車輌の運転状態に応じて上記2つのモードの間で切り換えることが、下記の特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2004-322755
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のクロス連結型のショックアブソーバシステムは、図8に例示する如く構成されている。図8に於いて、10fl,10fr,10rl,10rrはそれぞれ四輪車の左前輪、右前輪、左後輪、右後輪であり、各車輪はそれぞれサスペンションアーム12fl,12fr,12rl,12rrにより車体14に対し上下に変位可能に懸架されており、それぞれショックアブソーバ16fl,16fr,16rl,16rrによりその車体に対する上下の変位が緩衝されるようになっている。尚、図には示されていないが、この技術の分野に於いては周知の通り、サスペンションアーム12fl,12fr,12rl,12rrには、ショックアブソーバ16fl,16fr,16rl,16rrに並列に配置されたサスペンションスプリングも作用しており、各車輪はサスペンションスプリングとショックアブソーバの並列組合せにより車体に対し懸架されている。
【0004】
ショックアブソーバ16fl,16fr,16rl,16rrにはそれぞれ油路18fl,18fr,18rl,18rrが接続されており、これらの油路にはそれぞれ蓄圧室20fl,20fr,20rl,20rr、絞り弁22fl,22fr,22rl,22rrが接続されている。
【0005】
シリンダ−ピストン装置24は、中央の大径シリンダ部26とその両端に接続された一対の小径シリンダ部28l、28rとを有する段付きシリンダ30と、段付きシリンダの大径シリンダ部26に摺動する中央の大径ピストン部32とその両側に連結されて段付きシリンダの一対の小径シリンダ部28l、28rに摺動する一対の小径ピストン部34l、34rとを有するフリーピストン36とを備えている。
【0006】
ショックアブソーバ16flの作動油圧は油路18flを経てシリンダ−ピストン装置24の油圧室38flに導入され、ショックアブソーバ16frの作動油圧は油路18frを経てシリンダ−ピストン装置24の油圧室38frに導入され、ショックアブソーバ16rlの作動油圧は油路18rlを経てシリンダ−ピストン装置24の油圧室38rlに導入され、ショックアブソーバ16rrの作動油圧は油路18rrを経てシリンダ−ピストン装置24の油圧室38rrに導入されている。
【0007】
図8より明らかな通り、左右の前輪に対するショックアブソーバの作動油圧はフリーピストンに対し左右の対応する端面に付与されており、左右の後輪に対するショックアブソーバの作動油圧はフリーピストンに対し左右逆に対応する端面に付与されており、従って、車輌が左旋回走行することにより車体が遠心力により右方へ傾動し、右前輪のショックアブソーバの作動油圧が左前輪のショックアブソーバの作動油圧より上昇してフリーピストンを図にて左方へ付勢するときには、右後輪のショックアブソーバの作動油圧が左後輪のショックアブソーバの作動油圧より上昇してフリーピストンを図にて右方へ付勢する。
【0008】
そのような車輌の左旋回時の車体の右方へのロール傾斜に伴いフリーピストンに作用する力の状態の一例が、図9の(A)に示されている。この場合、シリンダ室38fr内に於ける油圧によりフリーピストンに作用する図にて左向きの力と、シリンダ室38fl内に於ける油圧によりフリーピストンに作用する図にて右向きの力とを比較すれば、2つの矢印の長さの対比により示されている如く図にて左向きの力の方が図にて右向きの力より大きいことにより、これら2つの力の合力によりフリーピストンは図にて左方へ付勢される。同様に、シリンダ室38rr内に於ける油圧によりフリーピストンに作用する図にて右向きの力と、シリンダ室38rl内に於ける油圧によりフリーピストンに作用する図にて左向きの力とを比較すれば、2つの矢印の長さの対比により示されている如く図にて右向きの力の方が図にて左向きの力より大きいことにより、これら2つの力の合力によりフリーピストンは図にて右方へ付勢される。
【0009】
このように、車体のロール傾斜により左右の前輪のショックアブソーバ油圧の間に生ずる差と、左右の後輪のショックアブソーバ油圧の間に生ずる差とは、フリーピストンに対し互いに対向して作用するので、車輌の旋回時に車体が多少前のめりになったり後のめりになったりすることによって、左右の前輪のショックアブソーバ油圧の間に生ずる差と、左右の後輪のショックアブソーバ油圧の間に生ずる差との間に偏差が生じても、フリーピストンの中央位置からの変位は程々の程度にとどまる。また、車体のピッチングによっては、左右の前輪のショックアブソーバ油圧の間および左右の後輪のショックアブソーバ油圧の間には、何らの差が生じないので、フリーピストンには何ら変位は生じない。
【0010】
これに対し、車輌のオフロード走行中に起こり得るように、一対の前輪と一対の後輪との間でバウンドとリバウンドとが互いに逆となり、車体が前部と後部の間で捩じられるワーピングが生じると、事情は異なる。即ち、今、一対の前輪間では右輪が左輪に対しバウンドし、一対の後輪間では左輪が右輪に対しバウンドしたとすると、図9の(B)に示す通り、シリンダ室38fr内に於ける油圧によりフリーピストンに作用する図にて左向きの力と、シリンダ室38fl内に於ける油圧によりフリーピストンに作用する図にて右向きの力とを比較すれば、2つの矢印の長さの対比により示されている如く図にて左向きの力の方が図にて右向きの力より大きいことにより、これら2つの力の合力によりフリーピストンは図にて左方へ付勢される。また、このときシリンダ室38rr内に於ける油圧によりフリーピストンに作用する図にて左向きの力と、シリンダ室38rl内に於ける油圧によりフリーピストンに作用する図にて右向きの力とを比較すれば、2つの矢印の長さの対比により示されている如く図にて左向きの力の方が図にて右向きの力より大きいことにより、ここでもこれら2つの力の合力によりフリーピストンは図にて左方へ付勢される。従って、この場合には、フリーピストンは左方への終端まで変位する恐れがある。同様の理由により、ワーピングがこれと逆のときには、フリーピストンは図にて右方への終端まで変位する恐れがある。
【0011】
このようにフリーピストンがシリンダに対し何れか一方の側にいっぱいに変位し、そこに留まった状態で更にそれに油圧が作用すると、作動油はピストンとシリンダの間のクリアランスを横切って左右のシリンダ室間にて移動し、左右一対のショックアブソーバに対する作動油の量に不均衡が生ずる。このようなピストンとシリンダの間のクリアランスを横切る作動油の流れは、特に、図9の(B)に40l、40rにて例示されている如く、フリーピストンがシリンダの一端部に密着して当接すると、その間に作動油が侵入できなくなり、ピストンの復帰運動が生じなくなることを防ぐべく、ピストンの端壁とシリンダの端壁の間の密着がリングのようなものによって阻止されるようになっている場合に一層生じやすい。
【0012】
本発明は、上記の問題に着目し、一対の前輪と一対の後輪との間でバウンドとリバウンドとが互いに逆となる車輌のワーピングが生じた場合にも、該ワーピングが収まったときには、クロス連結型ショックアブソーバシステムに於けるシリンダピストン装置のフリーピストンに中央位置からの偏倚が残らないようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するものとして、本発明は、左右一対の前輪および左右一対の後輪の各々に対するショックアブソーバと、中央の大径シリンダ部とその両端に接続された一対の小径シリンダ部とを有する段付きシリンダと前記段付きシリンダの前記大径シリンダ部に摺動する中央の大径ピストン部とその両側に連結されて前記段付きシリンダの前記一対の小径シリンダ部に摺動する一対の小径ピストン部と有するフリーピストンとを備えたシリンダ−ピストン装置とを有し、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差とが前記シリンダ−ピストン装置に於いて前記フリーピストンを介して対向されているクロス連結型ショックアブソーバシステムを有する車輌にして、前記シリンダ−ピストン装置には前記フリーピストンを前記段付きシリンダに対し中央位置へ付勢するばねが設けられていることを特徴とする車輌を提案するものである。
【0014】
前記ばねは、前記段付きシリンダの両端の各々と前記フリーピストンの前記一対の小径ピストン部の各々との間に作用する一対の圧縮コイルばね、または前記段付きシリンダの前記大径シリンダ部の両端と前記一対の小径シリンダ部との境の段部の各々と前記フリーピストンの前記大径ピストン部との間に作用する一対の圧縮コイルばねであってよい。
【0015】
この場合、更に、前記シリンダ−ピストン装置をバイパスして前記一対の前輪の左右のショックアブソーバを選択的に連通させる連通弁を備えた油路が設けられていてよく、また前記シリンダ−ピストン装置をバイパスして前記一対の後輪の左右のショックアブソーバを選択的に連通させる連通弁を備えた油路が設けられていてよい。
【0016】
前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の正負が互いに反対となった後、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の正負が互いに同一となったとき、前記連通弁が開かれるようになっていてよい。
【0017】
この場合、前記連通弁が開かれるのは、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の間の差の絶対値が所定の第一の値以下になったときとされるようになっていてよい。
【0018】
更にまた、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の間の差の絶対値が前記第一の値より小さい所定の第二の値以下になったとき、前記連通弁が閉じられるようになっていてよい。
【0019】
前記連通弁が開かれるのは、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の正負が互いに反対で前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の絶対値と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の絶対値が各々所定値以上となった後、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の正負が互いに同一となったときであってよい。
【0020】
或はまた、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の正負が互いに反対となったとき、前記連通弁が開かれるようになっていてよい。
【0021】
この場合、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の絶対値と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の絶対値の間の差の絶対値が所定値以下になったとき、前記連通弁が閉じられるようになっていてよい。
【0022】
またこの場合にも、前記連通弁が開かれるのは、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の正負が互いに反対で前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の絶対値と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の絶対値が各々所定値以上となった後であってよい。
【0023】
或はまた、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する他方の側のショックアブソーバの作動変位の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動変位の差の正負が互いに反対となった後、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する他方の側のショックアブソーバの作動変位の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動変位の差の正負が互いに同一となったとき、前記連通弁が開かれるようになっていてよい。
【0024】
この場合、前記連通弁が開かれるのは、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する他方の側のショックアブソーバの作動変位の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動変位の差の間の差の絶対値が所定の第一の値以下になったときとされるようになっていてよい。
【0025】
前記の開かれた連通弁はそれが開かれたときから所定の時間が経過したとき閉じられるようになっていてよい。
【0026】
この場合にも、前記連通弁が開かれるのは、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する他方の側のショックアブソーバの作動偏倚の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動変位の差の正負が互いに反対で前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する他方の側のショックアブソーバの作動変位の差の絶対値と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動変位の差の絶対値が各々所定値以上となった後、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する他方の側のショックアブソーバの作動変位の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動変位の差の正負が互いに同一となったときであってよい。
【0027】
更にまた、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する他方の側のショックアブソーバの作動変位の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動変位の差の正負が互いに反対となったとき、前記連通弁が開かれるようになっていてよい。
【0028】
また前記の開かれた連通弁はそれが開かれたときから所定の時間が経過したとき閉じられるようになっていてよい。
【0029】
前記連通弁が開かれるのは、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する他方の側のショックアブソーバの作動変位の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動変位の差の正負が互いに反対で前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する他方の側のショックアブソーバの作動変位の差の絶対値と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動変位の差の絶対値が各々所定値以上となった後であってよい。
【0030】
また、いずれの場合にも、前記シリンダ−ピストン装置をバイパスして前記一対の前輪または後輪の左右のショックアブソーバを選択的に連通させる連通弁は該左右のショックアブソーバの作動油圧の間の差が所定値以下のとき開かれるようになっていてよい。
【発明の効果】
【0031】
上記の如く、左右一対の前輪および左右一対の後輪の各々に対するショックアブソーバと、中央の大径シリンダ部とその両端に接続された一対の小径シリンダ部とを有する段付きシリンダと前記段付きシリンダの前記大径シリンダ部に摺動する中央の大径ピストン部とその両側に連結されて前記段付きシリンダの前記一対の小径シリンダ部に摺動する一対の小径ピストン部と有するフリーピストンとを備えたシリンダ−ピストン装置とを有し、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差とが前記シリンダ−ピストン装置に於いて前記フリーピストンを介して対向されているクロス連結型ショックアブソーバシステムを有する車輌に於いて、前記シリンダ−ピストン装置には前記フリーピストンを前記段付きシリンダに対し中央位置へ付勢するばねが設けられていれば、一対の前輪と一対の後輪との間でバウンドとリバウンドとが互いに逆となる車輌のワーピングが生じたとき、ピストンとシリンダの間のクリアランスを横切って左右のシリンダ室間に作動油の移動が生じても、車輌のワーピングが収まったところで、ばねの作用によりフリーピストンをシリンダに対する中央位置へ向けて付勢し、ピストンとシリンダの間のクリアランスを横切って左右のシリンダ室間に移動した作動油を同クリアランスを経て元に戻しつつ、フリーピストンをシリンダに対する中央位置へ戻すことができる。
【0032】
前記ばねが段付きシリンダの両端の各々とフリーピストンの一対の小径ピストン部の各々との間に作用する一対の圧縮コイルばね、或は段付きシリンダの大径シリンダ部の両端と一対の小径シリンダ部との境の段部の各々とフリーピストンの大径ピストン部との間に作用する一対の圧縮コイルばねとされれば、段付きシリンダまたはフリーピストンの何れか一方または両方の軸線方向寸法を、圧縮コイルばねの圧縮時の最小軸線方向寸法を考慮して、従来の設計より幾分長くするだけの設計変更により、本発明を実施することができる。
【0033】
シリンダ−ピストン装置をバイパスして一対の前輪の左右のショックアブソーバを選択的に連通させる連通弁を備えた油路、またはシリンダ−ピストン装置をバイパスして一対の後輪の左右のショックアブソーバを選択的に連通させる連通弁を備えた油路が設けられていれば、ばねによりフリーピストンを段付きシリンダに対する中央位置へ押し戻すとき、かかる連通弁を開くことにより、車輌のワーピング中にピストンとシリンダの間のクリアランスを横切って左右のシリンダ室間に移動した作動油を容易に元に戻すことができる。
【0034】
この場合に、一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の正負が互いに反対となった後、一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の正負が互いに同一となったとき、連通弁が開かれるようになっていれば、かかる連通弁により、クロス連結型ショックアブソーバシステムの正規の作動に何らの影響を及ぼすことなく、車輌のワーピング中にピストンとシリンダの間のクリアランスを横切って左右のシリンダ室間に移動した作動油を元に戻し、フリーピストンをシリンダに対する中央位置へ確実に戻すことができる。
【0035】
この場合に、連通弁が開かれるのは、一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の間の差の絶対値が所定の第一の値以下になったときとされるようになっていれば、車輌がワープ状態からワープのない状態に復するとき、それに伴う作動油の流れによってフリーピストンがシリンダに対し中央位置へ向けて押し戻される正規の作動を妨げることなく、車輌のワープ状態がほぼ消滅したところで、ワーピング中にピストンとシリンダの間のクリアランスを横切って左右のシリンダ室間に移動した作動油のみを元に戻すようにすることができる。
【0036】
また一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の間の差の絶対値が前記第一の値より小さい所定の第二の値以下になったとき、連通弁が閉じられるようになっていれば、車輌のワープ状態が完全に消滅したところで、連通弁が閉じ、クロス連結型ショックアブソーバシステムがワープ発生前の正規の作動状態に復帰される。
【0037】
上記の如く連通弁が開かれるのは、一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の正負が互いに反対で一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の絶対値と一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の絶対値が各々所定値以上となった後、一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の正負が互いに同一となったときとされれば、或る所定の度合を越えてワープが進行したとき、連通弁を開くようにすることができる。
【0038】
一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の正負が互いに反対となったとき、連通弁が開かれるようになっていれば、車輌がワープ状態になったときには早々に連通弁を開き、フリーピストンを横切る作動油の漏洩移動が生ずることを予防することができる。
【0039】
この場合にも、一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の絶対値と一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の絶対値の間の差の絶対値が所定値以下になったとき、連通弁が閉じられるようになっていれば、車輌のワープ状態が略消滅したところで、連通弁が閉じ、クロス連結型ショックアブソーバシステムがワープ発生前の正規の作動状態に復帰される。
【0040】
またこの場合にも、連通弁が開かれるのは、一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の正負が互いに反対で一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の絶対値と一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の絶対値が各々所定値以上となった後であるようにされれば、或る所定の度合を越えてワープが進行したとき、連通弁を開くようにすることができる。
【0041】
また、一対の前輪或いは後輪の左右のショックアブソーバの間の作動油圧の差は、一対の前輪或いは後輪の左右のショックアブソーバの間の作動変位の差に対応することから、上記の如き一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の間の正負の関係および両差の間の差の絶対値或いは両差の各々の絶対値の間の差の絶対値の大きさに基づく連通弁の開閉は、ショックアブソーバの作動油圧に代えて、ショックアブソーバの作動変位をパラメータとしても制御可能である。ただ、左右のショックアブソーバの作動油圧の差の変化と左右のショックアブソーバのストロークの差の変化との間には時間差が生ずるので、左右のショックアブソーバのストロークの差の変化に基づいて連通弁が開かれたときには、それが開かれたときから所定の時間が経過したとき連通弁が閉じられるようになっているのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
図1は、本発明による復帰促進式クロス連結型ショックアブソーバシステムを備えた車輌の、本発明に係る要部、即ち、クロス連結型ショックアブソーバシステムの構成を示す概略図である。
【0043】
図1に於いて、10fl,10fr,10rl,10rrはそれぞれ四輪車の左前輪、右前輪、左後輪、右後輪であり、各車輪はそれぞれサスペンションアーム12fl,12fr,12rl,12rrにより車体14に対し上下に変位可能に懸架されており、それぞれショックアブソーバ16fl,16fr,16rl,16rrによりその車体に対する上下の変位が緩衝されるようになっている。また、この技術の分野に於いては周知の通り、図には示されていないが、サスペンションアーム12fl,12fr,12rl,12rrには、ショックアブソーバ16fl,16fr,16rl,16rrに並列に配置されたサスペンションスプリングも作用しており、各車輪はサスペンションスプリングとショックアブソーバの並列組合せにより車体に対し懸架されている。
【0044】
ショックアブソーバ16fl,16fr,16rl,16rrにはそれぞれ油路18fl,18fr,18rl,18rrが接続されており、これらの油路にはそれぞれ蓄圧室20fl,20fr,20rl,20rr、絞り弁22fl,22fr,22rl,22rrが接続されている。
【0045】
シリンダ−ピストン装置24は、中央の大径シリンダ部26とその両端に接続された一対の小径シリンダ部28l、28rとを有する段付きシリンダ30と、段付きシリンダの大径シリンダ部26に摺動する中央の大径ピストン部32とその両側に連結されて段付きシリンダの一対の小径シリンダ部28l、28rに摺動する一対の小径ピストン部34l、34rと有するフリーピストン36とを備えている。
【0046】
ショックアブソーバ16flの作動油圧は油路18flを経てシリンダ−ピストン装置24の油圧室38flに導入され、ショックアブソーバ16frの作動油圧は油路18frを経てシリンダ−ピストン装置24の油圧室38frに導入され、ショックアブソーバ16rlの作動油圧は油路18rlを経てシリンダ−ピストン装置24の油圧室38rlに導入され、ショックアブソーバ16rrの作動油圧は油路18rrを経てシリンダ−ピストン装置24の油圧室38rrに導入されている。
【0047】
油圧室38fl内には、シリンダ30の小径シリンダ部28lの端壁とフリーピストン36の小径ピストン部34lの間に介装された圧縮コイルばね42lが設けられており、同様に、油圧室38fr内には、シリンダ30の小径シリンダ部28rの端壁とフリーピストン36の小径ピストン部34rの間に介装された圧縮コイルばね42rが設けられている。段付きシリンダ30はその軸線方向の中央横断面の左右に対称をなすよう形成されており、フリーピストン36はその中央の大径ピストン部32の軸線方向の中央横断面の左右に対称をなすよう形成されており、また圧縮コイルばね42lと42rとは同一の設計のものとされている。従って、フリーピストン36は、一対のばね42lおよび42rにより、段付きシリンダ30に対し軸線方向の中央位置へ向けて弾力的に付勢されている。
【0048】
かかる圧縮コイルばね42lおよび42rが設けられていることにより、段付きシリンダの大径シリンダ部26とそれに摺動するフリーピストンの大径ピストン部32との間、および段付きシリンダの小径シリンダ部28l、28rとそれに摺動するフリーピストンの小径ピストン部34l、34rとの間には、幾分かのクリアランスがあることから、上記の通り車輌が前後輪間にてワープされたとき、シリンダ室38rrとシリンダ室38flの間、シリンダ室38rrとシリンダ室38rlの間、またはシリンダ室38rlとシリンダ室38frの間に上記のクリアランスを通って作動油の移動が生じても、同クリアランスが作動油の流れ対し呈する流れ抵抗の大きさに対し圧縮コイルばね42l、42rのばね力が適当な大きさに設計されていれば、時間が経つに連れて同クリアランスを通ってシリンダ室間に於ける作動油の移動を徐々に元に戻し、段付きシリンダに対しフリーピストンを中央位置に復帰させることができる。
【0049】
更にこの点に関し、図1に示す実施の形態の於いては、上記のクリアランスを通る作動油の流れ対しクリアランスが呈する流れ抵抗に対し圧縮コイルばね42l、42rのばね力が小さくされても、フリーピストンを段付きシリンダに対し好ましい時間内に中央位置へ確実に復帰させることができるよう、シリンダ−ピストン装置をバイパスして一対の前輪の左右のショックアブソーバおよび一対の後輪の左右のショックアブソーバを選択的に連通させる連通弁44fおよび44rを備えた油路46fおよび46rが設けられている。尚、図示の実施の形態では、一対の前輪の左右のショックアブソーバおよび一対の後輪の左右のショックアブソーバの両方に対し連通弁が設けられているが、一対の前輪の左右のショックアブソーバの間または一対の後輪の左右のショックアブソーバの間の何れか一方にのみ連通弁が設けられてもそれなりの効果は得られる。
【0050】
車輌にはマイクロコンピュータによる電子制御装置(ECU)48が設けられており、連通弁46fおよび46rの開閉はかかる電子制御装置により制御されるようになっていてよい。電子制御装置48には、油路18fl,18fr,18rl,18rrに接続された油圧センサ50fl,50fr,50rl,50rrより油圧室38fl,38fr,38rl,38rr内の油圧を示す信号が供給されるほか、操舵角センサ52より操舵角を示す信号、図には示されていない車速センサ、横加速度センサ、ヨーレートセンサ等より車速、横加速度、ヨーレート等を示す信号が供給され、電子制御装置48はこれらの信号より得られる情報に基づいて絞り弁22fl,22fr,22rl,22rrを制御すると共に、連通弁46fおよび46rの開閉を本発明に従って以下に例示する要領にて制御する。
【0051】
尚、図1に示す如く段付きシリンダ30の両端の各々とフリーピストン36の一対の小径ピストン部34lおよび34rの各々との間に作用する一対の圧縮コイルばね42lおよび42rに代えて、図2に示す如く段付きシリンダの大径シリンダ部26の両端と一対の小径シリンダ部28l、28rとの境の段部の各々とフリーピストンの大径ピストン部32との間に作用する一対の圧縮コイルばね54lおよび54rが設けられてもよい。
【0052】
図3は、本発明に従って連通弁44fおよび44rの開閉が制御される要領の一例を示すフローチャートである。かかるフローチャートに沿った制御は、車輌の運転の開始とともに開始され、車輌の運転中数10〜数100ミリセカンドの周期にて繰り返されてよい。尚、本発明による連通弁44fおよび44rの開閉制御は、上記の通りクロス連結型ショックアブソーバシステムに内在する対ワープ作動特性上の問題点を解決するものであり、操舵角或いは車輌に作用している横加速度が所定の下限値以下であるとき、或は一対の前輪または後輪の左右のショックアブソーバの作動油圧の差が所定値以下あるようなときには、連通弁44fおよび44rは開かれるようになっていてよい。
【0053】
制御が開始されると、油圧センサ50fl,50fr,50rl,50rrにより検出された油圧室38fl,38fr,38rl,38rr内の油圧Pfl,Pfr,Prl,Prrに基づいて、ステップ10にて、一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差がPfrとPflの差ΔPfとして算出され、更にステップ20にて、一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差がPrrとPrlの差ΔPrとして算出される。
【0054】
次いで、制御はステップの30へ進み、フラグFaが1であるか否かが判断される。フラグFaは制御が後述のステップ70に至ったとき1にセットされるものであり、それまでは制御の開始時に0にリセットされた状態にある。従って、それ迄ステップ30の答はノー(N)であり、制御はステップ40へ進む。
【0055】
ステップ40に於いては、上に算出されたΔPfとΔPrの積が負であるか否かが判断される。これは、一対の前輪間に於けるバウンド或はリバウンドと一対の後輪間に於けるバウンド或はリバウンドとが互いに逆であるか否か、即ち、車輌が前輪部と後輪部の間で逆方向に捩じられたワープ状態にあるか否かを検出するものである。答がノーである間、制御はステップ50〜70をパイパスしてリターンするが、答がイエス(Y)になると、制御はステップ50へ進み、ΔPfの絶対値が或る所定の下限値δPf以上であるか否かが判断される。δPfは、ΔPfの絶対値がこれ以下のような小さい値であるときには、本発明による以下に記載する制御を行うには及ばないような一対の前輪間に於けるバウンドとリバウンドの差に当たる値である。答がノーである間、制御はステップ60および70をパイパスしてリターンするが、答がイエスであれば、制御はステップ60へ進み、ΔPrの絶対値が或る所定の下限値δPr以上であるか否かが判断される。δPrもまた、ΔPrの絶対値がこれ以下のような小さい値であるときには、本発明による以下に記載する制御を行うには及ばないような一対の後輪間に於けるバウンドとリバウンドの差に当たる値である。答がノーである間、制御はステップ70をパイパスしてリターンするが、答がイエスであれば、制御はステップ70へ進フラグFaが1にセットされる。フラグFaが1にセットされると、それ以後制御はステップ30よりステップ80へ進むようになる。
【0056】
ステップ80に於いては、フラグFbが1であるか否かが判断される。フラグFbは制御が後述のステップ100に至ったとき1にセットされるものであり、それまでは制御の開始時に0にリセットされた状態にある。従って、それ迄ステップ80の答はノーであり、制御はステップ90へ進む。
【0057】
ステップ90に於いては、ΔPfとΔPrの積が正であるか否かが判断される。これは、一度、一対の前輪間に於けるバウンド/リバウンドと一対の後輪間に於けるバウンド/リバウンドとが所定の偏差以上で互いに逆になる車輌のワーピングが生じた後、該ワーピングが解消したか否かを検出するものである。答が制御はノーである間、制御はステップ100をパイパスしてリターンするが、答がイエスになると、制御はステップ100へ進み、フラグFbが1にセットされる。フラグFbが1にセットされると、それ以後制御はステップ80よりステップ110へ進むようになる。
【0058】
ステップ110に於いては、フラグFcが1であるか否かが判断される。フラグFcは制御が後述のステップ140に至ったとき1にセットされるものであり、それまでは制御の開始時に0にリセットされた状態にある。従って、それ迄ステップ110の答はノーであり、制御はステップ120へ進む。
【0059】
ステップ120に於いては、ΔPfとΔPrの差の絶対値がある所定の比較的小さい第一の値δPs以下であるか否かが判断される。これは、上に生じた車輛のワープ状態が解消し、フリーピストンが段付きシリンダに対しその中央位置にある程度近づいた位置まで戻ったか否かを検出するものである。答がノーである間、制御はステップ130および140をパイパスしてリターンするが、答がイエスになると、制御はステップ130へ進み、連通弁44fおよび44rが開かれ、次いで、制御はステップ140へ進み、フラグFcが1にセットされる。フラグFcが1にセットされると、連通弁44fおよび44rを開いた状態を維持したまま、それ以後制御はステップ110よりステップ150へ進むようになる。
【0060】
ステップ150に於いては、ΔPfとΔPrの差の絶対値が上記の第一の値δPsより小さい或る所定の第二の値δPe以下であるか否かが判断される。これは、一対の前輪のショックアブソーバ間の作動油圧および一対の後輪のショックアブソーバ間の作動油圧がそれぞれ互いに略平衡し、連通弁44fおよび44rが開かれた状態でフリーピストンが段付きシリンダに対しその中央位置に復帰したか否かを検出するものである。答がノーである間、制御はステップ160およびステップ170をパイパスしてリターンするが、答がイエスになると、制御はステップ160へ進み、連通弁44fおよび44rが閉じられ、次いで、制御はステップ170へ進み、フラグFa,Fb,Fcが0にセットされる。
【0061】
これにて1回のワープに対する連通弁44fおよび44rに対する制御は終了し、クロス連結型ショックアブソーバシステムは連通弁44fおよび44rが閉じられた状態で作動する正規の作動状態に復帰される。
【0062】
以上の図3のフローチャートに示す如き制御は図4のフローチャートに示す如く簡略化されてもよい。図4のフローチャートに於いては、図3のフローチャートに於けるステップに対応するステップは図3に於けると同じステップ番号にて示されている。この場合、ステップ30の答がイエスになると、制御はステップ110へ進み、フラグFcが1であるか否かが判断される。フラグFcは当初0にリセットされているので、ステップ110の答はノーであり、制御はステップ130へ進み、直ちに連通弁44fおよび44rが開かれ、次いで、制御はステップ140へ進み、フラグFcが1にセットされる。そして、以後、制御はステップ110からステップ150へ進み、ΔPfとΔPrの差の絶対値が上記の第一の値δPsより小さい或る所定の第二の値δPe以下であるか否かが判断される。但し、この場合、ΔPfとΔPrの符号は互いに反対であるので、ΔPfとΔPrの差の絶対値はΔPf+ΔPの絶対値として算出される。答がノーである間、制御はステップ160およびステップ170をパイパスしてリターンし、答がイエスになると、制御はステップ160へ進み、連通弁44fおよび44rが閉じられ、次いで、ステップ170にてフラグFa,Fcが0にセットされる。
【0063】
図1のクロス連結型ショックアブソーバシステムに於いては、油圧室38fl,38fr,38rl,38rr内の油圧が油圧センサ50fl,50fr,50rl,50rrにより検出されることにより一対の前輪および一対の後輪の左右のショックアブソーバの間の作動の間の関係が認識されるようになっているが、これに代えて、図5に示す如く、一対の前輪および一対の後輪の左右のショックアブソーバの作動変位をストロークセンサ56fl,56fr,56rl,56rrにて検出することにより、一対の前輪および一対の後輪の左右のショックアブソーバの間の作動の相対関係を認識するよう構成されてもよい。図5は、そのような本発明による復帰促進式クロス連結型ショックアブソーバシステムを備えた車輌の他の一つの実施の形態を示す図1と同様の概略図である。図5に於いては、図1に示した部分に対応する部分は図1に於けると同じ符号により示されている。
【0064】
このように油圧センサ50fl,50fr,50rl,50rrに代えてストロークセンサ56fl,56fr,56rl,56rrを用いた場合には、各ストロークセンサにより検出された各ショックアブソーバのストロークをSfl,Sfr,Srl,Srrとすれば、図3のフローチャートに示す制御に対応する制御は図6に示す如くされてよい。
【0065】
即ち、図3のステップ10および20に対応する図6のステップ210および220に於いては、ΔPf=Pfr−PflおよびΔPr=Prr−Prlに代えてΔSf=Sfr−SflおよびΔSr=Srr−Srlを算出し、以下、圧力“P”に代えて、ストローク“S”を用いることにより、上に図3について説明した制御と実質的に同じ制御によって、車輌のワープ時にシリンダの油圧室間に於ける作動油の移動を伴って段付きシリンダに対しその中央位置から偏倚したフリーピストンを、ワープ解消後に段付きシリンダに対しその中央位置へ確実に復帰させることができる。図6のフローチャートに於いては、図3のフローチャートに対応するステップは、図3のフローチャートに於けるステップ番号に200を加えたステップ番号にて示し、かかる対応からその制御が明らかな図6の各ステップについての重複的説明は、明細書の冗長化を避けるため省略する。
【0066】
但し、各ショックアブソーバのストロークに基づく制御に於いては、油圧回路中に蓄圧室20fl〜20rrが設けられていることにより、Pfl〜Prrの変化とSfl〜Srrの変化との間には時間差が生ずるので、図3のステップ120に対応してステップ320にてΔSfとΔSrの差の絶対値がδSs以下になった時点で連通弁44fおよび44rを開いたとき、図3のステップ150に対応してステップ350にてΔSfとΔSrの差の絶対値がδSe以下になった時点で連通弁44fおよび44rを閉じたのでは、連通弁44f,44rの開弁期間に不足をきたす恐れがある。
【0067】
そこで、図6のフローチャートによる制御に於いては、ステップ320の答がイエスとなって連通弁44f,44rが開かれたときには、その時点でタイマとセットし、それより所定の時間が経過を待ち、ステップ350にて該所定時間が経過したことを判断して連通弁44f,44rが閉じられるようになっている。
【0068】
図7は、図4のフローチャートによる制御に於ける油圧センサ50fl,50fr,50rl,50rrに代えてストロークセンサ56fl,56fr,56rl,56rrを用いた場合の制御を示すフローチャートである。図7に於いても、図4に示すステップに対応するステップは図4に於けるステップ番号に200を加えたステップ番号にて示し、かかる対応からその制御が明らかな図7の各ステップについての重複的説明は明細書の冗長化を避けるため省略する。
【0069】
以上に於いては本発明をいくつかの実施の形態について詳細に説明したが、これらの実施の形態について本発明の範囲内にて種々の変更が可能であることは当業者にとって明らかであろう。例えば、フリーピストンが中立位置に復帰しない状況としては、前述の例の外に、モーグル路(例えば、左前輪と右後輪の位置が右前輪と左後輪の位置に比べて高くなるような路面)に於いて、車高調整を行った後、平坦な直進路を走行するような場合に起こり得る。即ち、モーグル路に於いて、車体と路面が所定値以上接近しないように(サスペンションがバウンドストッパ等に当たらないように)車体と路面が接近している車輪のアブソーバに作動油を供給し、車高調整が行われるが、このとき左右輪の何れか一方の油圧系統のみ作動油が増加することとなる。この状態で直進路を走行すると、左右油圧系統の作動油量の差からフリーピストンが中立位置に復帰しにくい状態となる。以上のように車高調整を行った後、前述の実施例のように直進路を走行していることが判定されたとき、左右の油圧系統を連通させ、作動油量を均等にし、フリーピストンを中立位置に復帰させることも可能である。この場合、ステップ10およびステップ20の前に、車高調整実施の有無を確認し、車高調整を実施した場合のみステップ10およびステップ20へ進むようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明による復帰促進式クロス連結型ショックアブソーバシステムを備えた車輌の本発明に係る要部の構成を示す概略図。
【図2】図1に於けるシリンダ−ピストン装置に代わるシリンダ−ピストン装置の他の一つの実施の形態を示す概略図。
【図3】図1に示すクロス連結型ショックアブソーバシステムに於ける連通弁44fおよび44rが本発明に従って開閉が制御される要領の一例を示すフローチャート。
【図4】図1に示すクロス連結型ショックアブソーバシステムに於ける連通弁44fおよび44rが本発明に従って開閉が制御される要領の他の一例を示すフローチャート。
【図5】本発明による復帰促進式クロス連結型ショックアブソーバシステムを備えた車輌の他の一つの実施の形態の本発明に係る要部の構成を示す概略図。
【図6】図5に示すクロス連結型ショックアブソーバシステムに於ける連通弁44fおよび44rが本発明に従って開閉が制御される要領の一例を示すフローチャート。
【図7】図5に示すクロス連結型ショックアブソーバシステムに於ける連通弁44fおよび44rが本発明に従って開閉が制御される要領の他の一例を示すフローチャート。
【図8】従来のクロス連結型のショックアブソーバシステムを備えた車輌の一例の本発明に関連する要部の構成を示す概略図。
【図9】図8に於けるシリンダ−ピストン装置の作動を車輌のロール時(図A)と車輌のワープ時(図B)について示す概略図。
【符号の説明】
【0071】
10fl,10fr,10rl,10rr…左前輪、右前輪、左後輪、右後輪、12fl,12fr,12rl,12rr…サスペンションアーム、14…車体、16fl,16fr,16rl,16rr…ショックアブソーバ、18fl,18fr,18rl,18rr…油路、20fl,20fr,20rl,20rr…蓄圧室、22fl,22fr,22rl,22rr…絞り弁、24…シリンダ−ピストン装置、26…大径シリンダ部、28l、28r…小径シリンダ部、30…段付きシリンダ、32…大径ピストン部、34l、34r…小径ピストン部、36…フリーピストン、38fl,38fr,38fl,38rr…油圧室、40l、40r…リング、42l,42r…圧縮コイルばね、44f,44r…連通弁、46f,46r…油路、48…電子制御装置(ECU)、50fl,50fr,50rl,50rr…油圧センサ、52…操舵角センサ、54l,54r…圧縮コイルばね、56fl,56fr,56rl,56rr…ストロークセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の前輪および左右一対の後輪の各々に対するショックアブソーバと、中央の大径シリンダ部とその両端に接続された一対の小径シリンダ部とを有する段付きシリンダと前記段付きシリンダの前記大径シリンダ部に摺動する中央の大径ピストン部とその両側に連結されて前記段付きシリンダの前記一対の小径シリンダ部に摺動する一対の小径ピストン部と有するフリーピストンとを備えたシリンダ−ピストン装置とを有し、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差とが前記シリンダ−ピストン装置に於いて前記フリーピストンを介して対向されているクロス連結型ショックアブソーバシステムを有する車輌にして、前記シリンダ−ピストン装置には前記フリーピストンを前記段付きシリンダに対し中央位置へ付勢するばねが設けられていることを特徴とする車輌。
【請求項2】
前記ばねは前記段付きシリンダの両端の各々と前記フリーピストンの前記一対の小径ピストン部の各々との間に作用する一対の圧縮コイルばねであることを特徴とする請求項1に記載の車輌。
【請求項3】
前記ばねは前記段付きシリンダの前記大径シリンダ部の両端と前記一対の小径シリンダ部との境の段部の各々と前記フリーピストンの前記大径ピストン部との間に作用する一対の圧縮コイルばねであることを特徴とする請求項1に記載の車輌。
【請求項4】
前記シリンダ−ピストン装置をバイパスして前記一対の前輪の左右のショックアブソーバを選択的に連通させる連通弁を備えた油路が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車輌。
【請求項5】
前記シリンダ−ピストン装置をバイパスして前記一対の後輪の左右のショックアブソーバを選択的に連通させる連通弁を備えた油路が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車輌。
【請求項6】
前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の正負が互いに反対となった後、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の正負が互いに同一となったとき、前記連通弁が開かれるようになっていることを特徴とする請求項4または5に記載の車輌。
【請求項7】
前記連通弁が開かれるのは、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の間の差の絶対値が所定の第一の値以下になったときとされるようになっていることを特徴とする請求項6に記載の車輌。
【請求項8】
前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の間の差の絶対値が前記第一の値より小さい所定の第二の値以下になったとき、前記連通弁が閉じられるようになっていることを特徴とする請求項7に記載の車輌。
【請求項9】
前記連通弁が開かれるのは、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の正負が互いに反対で前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の絶対値と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の絶対値が各々所定値以上となった後、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の正負が互いに同一となったときであることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の車輌。
【請求項10】
前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の正負が互いに反対となったとき、前記連通弁が開かれるようになっていることを特徴とする請求項4または5に記載の車輌。
【請求項11】
前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の絶対値と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の絶対値の間の差の絶対値が所定値以下になったとき、前記連通弁が閉じられるようになっていることを特徴とする請求項10に記載の車輌。
【請求項12】
前記連通弁が開かれるのは、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の正負が互いに反対で前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の絶対値と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動油圧に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動油圧の差の絶対値が各々所定値以上となった後であることを特徴とする請求項10または11に記載の車輌。
【請求項13】
前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する他方の側のショックアブソーバの作動変位の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動変位の差の正負が互いに反対となった後、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する他方の側のショックアブソーバの作動変位の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動変位の差の正負が互いに同一となったとき、前記連通弁が開かれるようになっていることを特徴とする請求項4または5に記載の車輌。
【請求項14】
前記連通弁が開かれるのは、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する他方の側のショックアブソーバの作動変位の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動変位の差の間の差の絶対値が所定の第一の値以下になったときとされるようになっていることを特徴とする請求項13に記載の車輌。
【請求項15】
前記の開かれた連通弁はそれが開かれたときから所定の時間が経過したとき閉じられるようになっていることを特徴とする請求項14に記載の車輌。
【請求項16】
前記連通弁が開かれるのは、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する他方の側のショックアブソーバの作動偏倚の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動変位の差の正負が互いに反対で前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する他方の側のショックアブソーバの作動変位の差の絶対値と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動変位の差の絶対値が各々所定値以上となった後、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する他方の側のショックアブソーバの作動変位の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動変位の差の正負が互いに同一となったときであることを特徴とする請求項13〜15のいずれかに記載の車輌。
【請求項17】
前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する他方の側のショックアブソーバの作動変位の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動変位の差の正負が互いに反対となったとき、前記連通弁が開かれるようになっていることを特徴とする請求項4または5に記載の車輌。
【請求項18】
前記の開かれた連通弁はそれが開かれたときから所定の時間が経過したとき閉じられるようになっていることを特徴とする請求項17に記載の車輌。
【請求項19】
前記連通弁が開かれるのは、前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する他方の側のショックアブソーバの作動変位の差と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動変位の差の正負が互いに反対で前記一対の前輪の左右のショックアブソーバのうちの一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する他方の側のショックアブソーバの作動変位の差の絶対値と前記一対の後輪の左右のショックアブソーバのうちの前記一方の側のショックアブソーバの作動変位に対する前記他方の側のショックアブソーバの作動変位の差の絶対値が各々所定値以上となった後であることを特徴とする請求項17または18に記載の車輌。
【請求項20】
前記シリンダ−ピストン装置をバイパスして前記一対の前輪の左右のショックアブソーバを選択的に連通させる連通弁は該左右のショックアブソーバの作動油圧の間の差が所定値以下のとき開かれるようになっていることを特徴とする請求項4〜19のいずれかに記載の車輌。
【請求項21】
前記シリンダ−ピストン装置をバイパスして前記一対の後輪の左右のショックアブソーバを選択的に連通させる連通弁は該左右のショックアブソーバの作動油圧の間の差が所定値以下のとき開かれるようになっていることを特徴とする請求項5〜20のいずれかに記載の車輌。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−237882(P2007−237882A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62107(P2006−62107)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】