説明

微細加工用二軸延伸積層フィルム、およびその製造方法、成形加工シートおよびその成形方法

【課題】高アスペクト比のパターンを大面積で容易に成形でき、且つ機械的強度に優れた微細加工用二軸延伸積層フィルム、および製法、成形加工シート、並びに成形方法を提供する。
【解決手段】本微細加工用二軸延伸積層フィルムは、成形層と支持層を含む2層以上の積層フィルムであって、該積層フィルムの少なくとも一方の最外層に成形層が積層されており、かつ、成形層の面配向係数が0.00以上0.10以下であり、かつ、支持層の該面配向係数が0.10以上0.18未満の範囲である。また、該成形加工シートは、かかる微細加工用二軸延伸積層フィルムの表面に凹凸形状を賦形したものである。また、本微細加工用二軸延伸積層フィルムの製造方法は、二軸延伸後に成形層を構成する樹脂の融解吸熱ピーク温度Tm1以上で、かつ、支持層を構成する樹脂の融解吸熱ピーク温度Tm2未満の温度で熱処理することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細加工、特に高アスペクト比の構造体を大面積で成形でき、且つ機械的強度に優れるフィルム、およびその製造方法、並びに該フィルムに加工を施した成形加工シートおよびその成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光学分野において微細構造を高精度に形成する技術の重要性が高まってきている。
液晶ディスプレイに用いられるバックライト、例えば、画面の直下に蛍光管を配置した構造をもつ直下型バックライトでは、輝度および面内の均斉度を向上させることが必要である。このため、例えば表面に特定の微細パターンを形成することにより、蛍光管の像が透けて見える、いわゆる管むらを解消して均斉度を向上させ、かつ輝度を高めることができる安価で高性能な拡散シートの検討が進められている。
【0003】
この拡散シートの一つとして、表面に半円形状を形成したレンチキュラーレンズがあり、近年高機能化へ向けた開発が進んでいる。また、表面加工の代表的技術であるロールエンボス法については、より微細な寸法を高精度に作製できるようになってきた。
【0004】
しかしながら、レンチキュラーレンズは凹凸形状が高アスペクト比であるものの、薄膜化、凹凸形状の微細化が困難であり、液晶ディスプレイに搭載した場合、ディスプレイが厚くなり、また拡散性も不十分であるのが現状である。また、高アスペクト比のパターンを作製したロールでエンボスした場合、量産には適しているものの離型がしづらい、均一に微細パターンが成形されない、およびこれに起因して大面積での微細加工が困難などの問題があるのが現状である。
【0005】
そこで、近年、微細構造体を容易に成形する技術としてインプリントリソグラフィーがChouらによって提唱されている(非特許文献1参照)。インプリントリソグラフィーとは、樹脂をガラス転移温度Tg以上融点Tm未満に加熱して、そこに凹凸形状のパターンを有する金型を押し付けることで、金型のパターンを樹脂に転写する技術である。本技術は、ロールエンボスに比べ、量産性は劣るものの、微細形状を均一且つ高精度に成形できるという特徴を有する。
【0006】
これまでこの技術を用い、高アスペクト比のパターンを高精度で成形するための検討が種々行われている。例えば金型の表面処理剤の検討(特許文献1、2及び3参照)、金型の表面処理プロセスを成形プロセス中に取り込む検討(特許文献4参照)、溶媒可溶型表面処理剤によって処理し、溶媒中で表面処理剤を溶かしながら離型する検討(特許文献5)などが挙げられる。
【0007】
しかしながら、これらの方法は、主に金型の表面処理方法の改善によって離型性を向上させることや、金型の形状についてのみ記載されている。また微細な高アスペクト比パターン、かつ大面積成形についての記載は見当たらない。
【0008】
また、成形性と機械的強度を両立するため二軸に延伸されたポリエチレンテレフタレート(PET)上に溶融したポリブチレンテレフタレートを積層したエンボス加工性を有する積層フィルムの検討(特許文献6参照)が行われている。しかし、これらの方法では成形層が二軸に延伸されていないため平面性が悪く、微細加工における均一な成形が不可能であった。
【非特許文献1】チョウら(S.Y.Chou et al.),「アプライド・フィジックス・レター(Appl.Phys.Lett.)」,米国,アメリカ物理学会,1995年,第67巻,第21号,p.3314
【特許文献1】特開2002−283354号公報(第4−7頁)
【特許文献2】特開2002−270541号公報(第2−8頁)
【特許文献3】特開2003−077807号公報(第3−7頁)
【特許文献4】特開2003−109915号公報(第3−4頁)
【特許文献5】特開2003−332211号公報(第3−4頁)
【特許文献6】特開平9−300564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、高アスペクト比のパターンを大面積で容易に成形でき、且つ機械的強度に優れた微細加工用二軸延伸積層フィルム、成形加工シートおよび微細加工用二軸延伸積層フィルムの製造方法ならびに成形加工シートの成形方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムは、少なくとも成形層と支持層からなる二軸延伸積層フィルムであって、該フィルムは、少なくとも一方の表面に成形層が積層され、さらに、明細書で定義する、成形層の面配向係数fnが0.00以上0.10以下、かつ、支持層の面配向係数fnが0.10以上0.18未満の範囲を満たすことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムの成形層を構成する樹脂の示差走査熱量測定(DSC)から得られる融解吸熱ピーク温度(以下Tm1)が該支持層を構成する樹脂のTm2よりも低いことが重要である。
【0012】
また、本発明の成形加工シートは、かかる微細加工用二軸延伸積層フィルムが、その表面に凹凸形状の賦形を有することを特徴とするものである。
【0013】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムの製造方法は、少なくとも成形層と支持層からなる2層以上を積層した未延伸シートを、長手方向(縦方向)に延伸した後、幅方向(横方向)に延伸、もしくは幅方向(横方向)に延伸した後、長手方向(縦方向)に延伸する逐次二軸延伸法、もしくは同時二軸延伸法によって、フィルムに二軸配向性を付与する。かかる未延伸シートは少なくとも成形層が表層のどちらか積層されていれば、2層以上の積層構成によるA/B/Aの3層積層パターンや、A/B/A/B/Aといった5層積層パターンなどの多層に積層されたシートも好ましく用いられる。
次いで、二軸延伸した後に、成形層を構成する樹脂の融解吸熱ピーク温度(Tm1)以上で、かつ、支持層を構成する樹脂の融解吸熱ピーク温度(Tm2)未満の温度で熱処理することを特徴とするものである。かかる成形層を構成する樹脂としてはポリエステルを主成分とする熱可塑性樹脂であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムの成形方法は、前記細加工用二軸延伸微積層フィルムを、凸部の幅S’が0.01〜200μm、凸部の高さH’が0.02〜400μmの範囲であり、かつ該凹凸形状の凸部断面の高さH’と凸部断面の幅S’の比(以下、アスペクト比)が0.1〜20の範囲である凹凸形状を有する金型を用いて賦形することを特徴とするものである。
【0015】
また、かかる微細加工用二軸延伸積層フィルムの成形方法における好ましい態様は、該フィルムと、金型をプレス温度T1まで加熱して該金型を該フィルムの成形層側にプレスし、次いで該金型と該フィルムを冷却(冷却温度:T2)した後にプレスを開放し、該フィルムを離型温度まで冷却(離型温度:T3)して金型を離型することにより、金型形状を転写する成形方法であって、T1、T2およびT3が下記式(1)〜(4)を満たすことを特徴とするものである
(成形層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg)≦T1≦(成形層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg)+60℃ ・・・(1)
T2≦(成形層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg)+20℃ ・・・(2)
T2<T1 ・・・(3)
T3≦(成形層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg) ・・・(4)
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば成形性、機械的強度に優れた微細加工用二軸延伸積層フィルムが得られ、これを用いることにより微細な高アスペクト比パターンを大面積で形成することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明者らは、表面の成形性、および機械的強度が良好なフィルムについて鋭意検討し、成形層を支持層の表層に積層し、支持層と成形層の面配向係数をそれぞれ特定の範囲とすることにより上記課題を一挙に解決することを究明し、本発明に到達したものである。
【0018】
すなわち、本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムは、少なくとも成形層と支持層からなる二軸延伸積層フィルムであって、該フィルムは、少なくとも一方の表面に成形層が積層され、さらに、明細書で定義する、成形層の面配向係数fnが0.00以上0.10以下、かつ、支持層の面配向係数fnが0.10以上0.18未満の範囲を満たすことを特徴とする。
【0019】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムは成形層と支持層からなる少なくとも2層の積層フィルム(図1(a))であり、特に限定されるものではないが好ましい積層総数は2〜100である。少なくとも2層とするのは、高アスペクト比、大面積での成形のために少なくとも成形層を1層設け、これに少なくとも1層の支持層を積層することにより機械的強度を付与するためである。支持層のみの場合は、機械的強度はあるものの成形性が不良であり、成形層のみの場合は成形性が良好であるものの機械特性が不良となる。
【0020】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムは、フィルム表面への成形性の観点から少なくとも成形層を両最外層のどちらかに積層する。成形層を両最外層のどちらかに積層することにより、フィルム表面の成形性が良好となるためである。さらに成形層が支持層を中心として、両最外層に積層された場合、機械的強度を高い水準に保ったまま、両側に容易に加工が施せるだけではなく、加工前及び加工後のフィルムにおいて、経時でのフィルムカールが低減されるため好ましい構成である。すなわち、フィルムの中心からみて、表裏対称となるような積層構成が好ましく、例えば、図1(b)に示す支持層を中心として両最外層に同じ厚みの成形層を積層した三層積層フィルムが、好ましい構成例として挙げられる。
【0021】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムは、さらに支持体となる基材を積層した構成であっても良い。この場合の支持体となる基材とは、成形の際にその形状が変化しないシート状のもののことをいう。また、支持体を積層する場合は微細加工用二軸延伸積層フィルムの成形層が最表層となるように積層する。この支持体として用いる基材の例としては、ポリエステル樹脂、二軸延伸ポリエステルフィルム、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂等の有機フィルム基材又は板状基材や、ガラス、シリコン、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鋼、チタン等の無機基材などが適用可能である。例えば、前者の有機フィルム基材又は板状基材の場合、基材の光拡散性を向上させる目的で、内部に有機又は無機微粒子を含有させることも好ましい。
【0022】
また、微細加工用二軸延伸積層フィルムの製造方法としては、二つの異なる熱可塑性樹脂を二台の押出機に投入し、溶融して口金から冷却したキャストドラム上に共押出してシート状に加工する方法(共押出法)、単膜で作製したシートに被覆層原料を押出機に投入し溶融押出して口金から押出しながらラミネートする方法(溶融ラミネート法)、単膜で作製したシートをそれぞれ別々に作製し、加熱されたロール群などにより熱圧着する方法(熱ラミネート法)、その他、フィルム形成用材料を溶媒に溶解させ、その溶液をシート上に塗布し乾燥する方法(コーティング法)等が挙げられる。これらのうちでは、共押出してシート状に加工する共押出法が、一度の工程で精度良く積層製膜できる点において好ましい方法である。また、支持体と積層する場合にも上述の溶融ラミネート法、熱ラミネート法、コーティング法等を用いることができる。
【0023】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムは二軸に延伸されていることが必要である。延伸方法としては、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法など、一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と幅方向を同時に延伸する方法)、又はそれらを組み合わせた方法を用いることができるが、本発明ではこれら延伸方法に限定されるものではない。また、これら延伸方法によって微細加工用積層フィルムを二軸に延伸することで支持層は機械特性に優れ、また、成形層は平面性が向上し均一な成形が可能となる。すなわち、二軸延伸することにより機械的強度と均一で良好な成形性の両立が可能となる。
【0024】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムの成形層は、下記で定義する面配向係数が0.00以上〜0.10以下の範囲内にあることが必要である。好ましくは0.00以上0.06未満の範囲内である。
ここで、面配向係数とは、ナトリウムD線を光源として、アッベ屈折率計を用いて長手方向、幅方向、厚み方向の屈折率(Nx、Ny、Nz)を測定し、
・fn=(Nx+Ny)/2−Nz
より求めた値である。
【0025】
成形層の面配向係数を上述の特定範囲内とすることで、成形層を構成する樹脂が、配向が低くアモルファスの状態となり、微細な高アスペクト比パターン、大面積の成形が可能となる。面配向係数が0.10より大きくなると成形層を構成する樹脂は配向し、アモルファスの状態ではなくなり、弾性率が高くなるため上述の成形が不可能となる。また、成形層の面配向係数は本発明の効果を阻害しない範囲であれば、積層フィルムの延伸倍率、二軸延伸後の熱処理温度、熱処理時間によって調整可能である。例えば延伸倍率を低倍率に設定することや、熱処理時間を長時間化することによって成形層の面配向係数を低下させることが可能となる。
【0026】
また、本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムの支持層は、上記で定義した面配向係数が0.10以上〜0.18未満の範囲であることが必要である。支持層の面配向係数を、かかる特定の範囲内とすることにより、支持層を構成する樹脂は配向状態になり機械的強度を維持することが可能となるため、機械的強度に優れた微細加工用二軸延伸積層フィルムを得ることができる。かかる支持層の面配向係数が0.10未満であると、機械的強度が低下したり、支持層の配向ムラに起因する成形層の平面性悪化が起こる。また、かかる支持層の面配向係数が0.18を超えると、機械的強度が高くなりすぎ、二次加工をしたときに、ひび割れ等の不具合が発生する。
【0027】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムは、その成形層を構成する樹脂の、下記で定義するDSCから得られる融解吸熱ピーク温度Tm1が支持層のTm2よりも低温であることが好ましい。
【0028】
本発明においては、成形層と支持層のそれぞれを構成する樹脂の面配向係数を本発明の範囲とするための好ましい方法として、二軸延伸後に成形層を構成する樹脂の融解吸熱ピーク温度Tm1以上、支持層を構成する樹脂の融解吸熱ピーク温度Tm2未満の温度によって熱処理する方法があげられる。よって、これを満たすために成形層を構成する樹脂の融解吸熱ピーク温度Tm1が支持層を構成する樹脂の融解吸熱ピーク温度Tm2よりも低温であることが好ましい。好ましくは10℃以上低温であり、より好ましくは20℃以上低温である。成形層を構成する樹脂の融解吸熱ピーク温度Tm1と支持層を構成する樹脂の融解吸熱ピーク温度Tm2の温度差が10℃未満であると、支持層を構成する樹脂の融解吸熱ピーク温度Tm2付近で熱処理して製膜をする場合に、フィルムの急激な熱収縮により破れが多発し製膜性が低下するため好ましくない。
【0029】
ここで、融解吸熱ピーク温度Tmは下記手順にて求めた。DSCとして、セイコー電子工業株式会社製ロボットDSC「RDSC220」、データ解析装置として、同社製ディスクステーション「SSC/5200」を用い、アルミニウム製受皿に5mgの組成物またはフィルムサンプルを充填し、この試料を常温から20℃/分の昇温速度で300℃まで加熱して5分間溶融させ、この過程で観察される融解吸熱ピークの温度(Tm)を測定したものである。
【0030】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムを構成する成形層樹脂および支持層樹脂は、可塑剤や架橋剤などの導入によって、ガラス転移温度Tgおよび機械特性などの物性を調整することができる。可塑剤の場合、その種類、添加量によって制御することができる。すなわち可塑剤の量が多くなるほどガラス転移温度Tg、機械的強度は低下する。また架橋剤の場合、その添加量を多くしたり、架橋の進行度を高くしたりすると、ガラス転移温度Tg、機械的強度が向上する。これらを適宜添加することによって、ガラス転移温度Tgや機械的強度を調整することが可能となる。
【0031】
また、本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムを構成する成形層樹脂および支持層樹脂に、電磁波照射により硬化する成分などを添加しても構わない。この場合、後述するように、金型形状を転写して成形した成形加工シートに電磁波を照射して硬化させることで、成形加工シートの機械強度、熱的安定性をより向上させることができる。
【0032】
また、本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムを構成する成形層樹脂および支持層樹脂は、本発明の効果が失われない範囲内で、各種の添加剤を加えることができる。添加配合することができる添加剤の例としては、例えば、有機微粒子、無機微粒子、分散剤、染料、蛍光増白剤、酸化防止剤、耐候剤、帯電防止剤、重合禁止剤、離型剤、増粘剤、pH調整剤、造核剤および塩などが挙げられる。成形層樹脂に造核剤を添加した場合、成形層樹脂の結晶化速度が増加し、成形中に成形層樹脂の結晶化が進行することによって成形加工シートの耐熱性が向上するため好ましい。造核剤としては、例えば酢酸ナトリウムやモンタン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0033】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムは破断強度が100〜500MPaの範囲であることが好ましい。破断強度をこの範囲とすることによりハンドリング性が向上する。
【0034】
本発明では、微細加工用二軸延伸積層フィルムの下記で定義する全光線透過率が50%以上であることが好ましい。より好ましくは70%以上である。全光線透過率がこの範囲であると透明性の必要な用途への使用が容易となるため好ましい。
【0035】
ここで、全光線透過率は、スガ試験機(株)製、全自動直読ヘーズコンピューターHGM−2DPを用いて測定したものである。フィルムは50mm角に切り出し、成形層が片面積層の場合には光が支持層側から入射するようにセットした。
【0036】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムの成形層と支持層の積層比は、特に限定されないが、好ましくは成形層の厚み:支持層の厚み=1:0.05〜1:20、より好ましくは成形層の厚み:支持層の厚み=1:1〜1:10である。成形層と支持層の積層比をこの範囲とすることで、薄膜でも充分な厚みの成形層を有し、機械的強度を保ちながら、成形後の成形加工シート全体の反りが低減するため好ましい。
【0037】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムの成形層は、共重合が容易で種々の用途に応じた物性調整が可能であることや成形が容易であることなどの観点から、ポリエステルを主たる成分とする樹脂で構成されていることが好ましい。かかるポリエステルは、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸などの酸成分とジオール成分から構成されるものである。ここで、「主たる成分」とは、微細加工用二軸延伸積層フィルム成形層を構成するポリエステル樹脂が50重量%以上含まれていることである。
【0038】
かかる芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸および4,4'−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくは、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸である。脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0039】
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、スピログリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2'−ビス(4'−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができ、なかでも好ましくは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびジエチレングリコールであり、特に好ましくは、エチレングリコールである。これらのジオール成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。ここで本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムとしては、上述のポリエステルが50重量%以上から成ることが好ましい。
【0040】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルム成形層を構成するポリエステル樹脂は、上述にあげたジカルボン酸成分と、ジオール成分を適宜選択して、共重合させることにより得ることができる。ここで、本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルム成形層を構成するポリエステル樹脂は、酸成分として、ナフタレンジカルボン酸を5〜50モル%の範囲で共重合されていることが好ましい。より好ましくは、5〜30モル%の範囲で共重合されていることである。また、本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルム成形層を構成するポリエステル樹脂は、ジオール成分としてスピログリコールを5〜50モル%、またはフルオレン骨格を有するジオール成分が5〜60モル%の範囲で共重合されていることが好ましい。より好ましくはスピログリコールが20〜40モル%またはフルオレン骨格を有するジオール成分が20〜40モル%共重合されていることである。かかるナフタレンジカルボン酸、スピログリコールおよびフルオレン骨格を有するジオール成分を上記の範囲で共重合させることによって、樹脂の非晶部が増加してアモルファスとなり成形性が向上し、また成形層を構成するポリエステル樹脂が高Tg化して耐熱性が向上したり、高い透明性、および光学歪みを低減させる効果を奏するため好ましい。
【0041】
かかるフルオレン骨格を有するジオールの例として、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの他に、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−エチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−プロピルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジプロピルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジイソプロピルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−n−ブチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−ジ−n−ブチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジイソブチルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−(1−メチルプロピル)フェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−(1−メチルプロピル)フェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3−ベンジルフェニル)フルオレン、9,9’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジベンジルフェニル)フルオレン等が挙げられる。
【0042】
また、上述のフルオレン骨格を有するジオールのヒドロキシ末端にジオール類を負荷させたジヒドロキシ化合物も好ましく用いられる。用いられるグリコール類としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシルエトキシフェニル)プロパン等の脂肪族ジオール類、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノールなどの芳香族ジオール類などが挙げられる。これらのジオール類は、フルオレン骨格を有するジオールの二つのヒドロキシ末端にそれぞれ異なるジオールが付加されていてもよく、さらには、ジオール類が複数個連なっていてもよい。複数個連なっている場合、異なるジオールが混在しても良い。
【0043】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルム成形層を構成する樹脂の、明細書で定義する、DSCにより得られるガラス転移温度(以下Tg)が、80℃以上であることが好ましい。
【0044】
ここでガラス転移温度Tgは、下記手順にて求めた。DSCとして、セイコー電子工業株式会社製ロボットDSC「RDSC220」、データ解析装置として、同社製ディスクステーション「SSC/5200」を用い、アルミニウム製受皿に5mgの組成物またはフィルムサンプルを充填し、この試料を常温から20℃/分の昇温速度で300℃まで加熱して5分間溶融させ、次いで液体窒素で急冷した。この過程でガラス転移温度を測定したものである。
【0045】
かかるTgが80℃以上、より好ましくは85℃以上、さらに好ましくは100℃以上、最も好ましくは120〜150℃であると、成形後の成形加工シートが耐熱性に優れるため好ましい。かかるガラス転移温度Tgが80℃未満であると、成形加工シートの耐熱性が低くなり、耐熱性が要求される用途への使用が困難になる。
【0046】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムは、該フィルムの成形層に金型を押し当てて表面に金型形状を転写するためのフィルムであって、該成形層の積層厚みが金型形状の凹部高さH’の1〜4倍であることが好ましい。成形層の厚みがこの範囲であると変形抵抗が小さくなり、精度の高い成形が可能となるため好ましい。
【0047】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムの支持層は、樹脂組成がポリエステル系、オレフィン系およびアクリル系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂であることが好ましく、中でもポリエステルを主成分とする樹脂が最も好ましい。本発明でいうポリエステルは、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸などの酸成分とジオール成分から構成されるものである。芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸および4,4'−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくは、テレフタル酸、フタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸である。脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0048】
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2'−ビス(4'−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができ、なかでも好ましくは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびジエチレングリコール等を用いることができ、特に好ましくは、エチレングリコール等を用いることができる。これらのジオール成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0049】
本発明でいうオレフィンは、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0050】
また、本発明でいうアクリル系樹脂は、ポリメチルメタクリル酸などが挙げられる。
【0051】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルム支持層の厚みは、好ましくは1〜1000μm、より好ましくは50〜300μmであるのがよいが、本発明の効果が阻害されない範囲であればこれに限定されるものではない。
【0052】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムは、二軸延伸後に成形層を構成する樹脂の融解吸熱ピーク温度(Tm)以上、支持層を構成する樹脂の融解吸熱ピーク温度(Tm)未満の温度で熱処理を施すことが本発明の効果を発現させる上で重要である。かかる熱処理を施すことにより、成形層を構成する樹脂はアモルファスの状態となり、支持層を構成する樹脂は、融解することなく配向状態を維持し、機械的強度を向上させることが可能となるのである。すなわち、二軸延伸後の熱処理温度をこの範囲とすることで、共押出しによる一貫した製膜工程において成形性と機械的強度を両立させるフィルムを得ることが可能となるため好ましい。また、かかる熱処理温度は成形層を構成する樹脂の融解吸熱ピーク温度Tm1以上であればよいが、5℃以上高温であることが好ましく、より好ましくは10℃以上、特に好ましくは20℃以上高温である。かかる熱処理温度を成形層を構成する樹脂の融解吸熱ピーク温度Tm1より5℃以上高温化させることによって成形層を構成する樹脂の配向緩和が進行し、アモルファス部分が増加することによって成形性が向上するため好ましい。また、Tmが観察されない非晶性樹脂などは、成形性に寄与するアモルファスの増加、分子鎖の緊張状態緩和の観点から(Tg+100℃)〜(Tg+150℃)の温度で熱処理することが好ましい。
【0053】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムは、表面に凹凸形状を賦形した成形加工シートとすることができる。また、成形加工シートは、該凸部断面の幅Sが0.1〜200μmの範囲で形成されていることが好ましく、該凸部断面の高さHが0.2〜400μmの範囲で形成されていることが好ましい。微細加工用二軸延伸積層フィルムに任意の凹凸形状を賦形することによって、凹凸形状からの出射光を拡散、集光など変角作用を発現させることができる。また、上述の作用は該凹凸形状の凸部断面の高さHと幅Sの比(以下、アスペクト比)によって調整が可能である。ここで、かかるアスペクト比は0.1〜20の範囲であると樹脂の変形に必要な圧力が小さいため好ましい。
【0054】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムを用いてパターンを形成する方法の例を図2を用いて説明する。本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムと、転写すべきパターンを反転した凹凸を有する金型とを、該フィルムの成形層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg以上、Tg+60℃以下の温度範囲内に加熱し(図2(a))、本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムと金型凹凸面を接近させ(図2(b))、そのまま所定圧力でプレス、所定時間保持する(図2(c))。次にプレスした状態を保持したまま降温する。最後にプレス圧力を解放して金型1からシートを離型する(図2(d))。
【0055】
また、本発明の成形方法としては、図2に示したような平板をプレスする方法(平板プレス法)の他に、表面に凹凸を形成したロール状の金型を用いて、ロール状シートに成形し、ロール状の成形体を得るロールtoロールの連続成形であってもよい。平板プレス法の場合には、より微細で高アスペクト比のパターンを形成できる点において優れており、またロールtoロール連続成形の場合、生産性の点で平板プレス法より優れている。
【0056】
本発明の成形方法において、加熱温度、およびプレス温度T1は、成形層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg〜Tg+60℃の範囲内であることが好ましい。成形層を構成する樹脂のガラス転移温度Tgを越えていないと、成形層を構成する樹脂の軟化が十分に進行していないため、金型をプレスしたときの変形が起こりにくくなり、成形に必要な圧力が非常に高くなる。またこの範囲を上回ると、加熱温度、およびプレス温度T1が高くなりすぎて、エネルギー的に非効率であり、また、シートの加熱/冷却時の体積変動が金型と比べて一桁程度大きいため、シートが金型に噛み込んで離型できなくなったり、また離型できたとしてもパターンの精度が低下したり、部分的にパターンが欠けて欠点化してしまう等の理由により好ましくない。本発明の成形方法においては、加熱温度、およびプレス温度T1をこの範囲とすることで、良好な成形性と、離型性を両立することができる。
【0057】
本発明の成形方法において、プレス圧力は、成形層の面配向係数に依存するが0.5〜50MPaが好ましい。より好ましくは1〜30MPaである。この範囲に満たないと金型内への樹脂の充填が不十分となりパターン精度が低下する。またこの範囲を超えると、必要とする荷重が大きくなり、金型への負荷が大きく、くり返し使用耐久性が低下するため好ましくない。プレス圧力をこの範囲とすることで、良好な成形性および金型の耐久性を維持することができる。
【0058】
本発明の成形方法において、プレス圧力保持時間は、成形層の面配向係数に依存するが0秒〜10分の範囲が好ましい。この範囲を超えると、タクトタイムが長くなりすぎて生産性が上がらず、樹脂の熱分解などが起こり成形加工シートの機械的強度が低下する可能性があるため好ましくない。本発明の成形方法においては、保持時間をこの範囲とすることで良好な成形性と均一性が両立できる。
【0059】
また本発明の成形方法において、プレス圧力開放温度T2は、成形層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg+20℃以下の温度範囲内で、プレス温度T1より低いことが好ましい。この範囲を上回ると、圧力解放時の樹脂が軟化しており流動性が高く、パターンが変形を起こすなど成形精度が低下するため好ましくない。本発明の成形方法においては、プレス圧力開放温度T2をこの範囲とすることによって、良好な成形性と離型性とを両立することができる。
【0060】
また本発明の成形方法において、離型温度T3は、該Tg以下の温度範囲内であることが好ましい。より好ましくは20℃〜該Tgの温度範囲である。この範囲を上回ると、離型時の樹脂の流動性が高いため、パターンが変形して精度が低下したり、シート自体が変形したりするため好ましくない。本発明の成形方法においては、離型時の温度をこの範囲とすることによって、パターン精度をよく離型することが可能であり、シート自体の変形を抑制することができる。
【0061】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムを加工して得る成形加工シートは、金型をプレス温度T1まで加熱して該金型を該フィルムの成形層側にプレスし、次いで該金型と該フィルムを冷却(冷却温度:T2)した後にプレスを開放し、該フィルムを離型温度まで冷却(離型温度:T3)して金型を離型することにより、金型形状を転写する成形方法であって、T1、T2およびT3が下記式(1)〜(4)を満たす成形方法で成形される。
【0062】
(成形層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg)≦T1≦(成形層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg)+60℃ ・・・(1)
T2≦(成形層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg)+20℃ ・・・(2)
T2<T1 ・・・(3)
T3≦(成形層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg) ・・・(4)。
上記式を満たして成形することにより、前述の理由により成形性、面内均一性および離型性に優れる。
【0063】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルム成形層の成形に用いる金型の横断面図を、図3(a)〜(f)に例示する。ここで、凸部1の幅、凹部2の幅は、図3(a)の場合、それぞれ図3に示す通りt’、S’の長さでもって表される。なお、図3(b)等のようにその長さ単位が位置により異なる場合はその平均値でもって表す。また、凹凸のくり返し単位(ピッチ)は凸部の幅t’と凹部の幅S’の和で表され、金型の凹部のピッチ0.02〜200μmである。図7の横断面にて観察される凸部3の形状としては、矩形(図3(a))、台形(図3(b))、三角形(図3(c))、これらが変形したもの(図3(d)、(e)、(f))、およびこれらの混在したもの等が好ましく用いられるが、これら以外の形状も用いることができる。すなわち、横断面図において凸部1の側面が、ほぼシート面に対して垂直な図3(a)等の他にも、図3(b)〜(f)のような形態も含まれる。
【0064】
図4(a)〜(c)は、本発明の成形加工シートの成形方法における金型の一部分を模式的に示す斜視図である。凸部1の配列構造としては、例えば、図4(a)に示すように、凸部1がドット状にならんだ構造、図4(b)に示すように、凸部1が面方向にストライプ状に延びる構造、図4(c)に示すように凸部1が面方向に格子状に広がる構造等が用いられるが、これらに制限されるものではない。
【0065】
図5(a)〜(h)は、それぞれ、金型をその面と平行に切断した場合の断面における、凸部1と凹部2との配置を模式的に示す断面図である。図5(a)〜(h)のように凹部2の形状が、線状、略三角形、略四角形、略六角形、円、楕円等から選ばれる形状を有していてもよい。図5(a)〜(c)は凹部2がストライプ状である場合、図5(d)は凹部2の断面が円形状である場合、図5(e)は三角形状である場合、図5(f)〜(g)は四角形状である場合、図5(h)は六角形状である場合を、それぞれ例示するものである。この凹部2は、図示した場合のように整列していてもよく、またランダムに配列していたり、異なる形状が混在したりしていてもよい。また、図6(a)〜(d)のように、凸部1の形状が、略三角形、略四角形、略六角形、円、楕円等から選ばれる形状を有していてもよい。
【0066】
本発明における微細加工用二軸延伸積層フィルム成形層の成形に用いる金型の凹部2の幅S’は0.1〜200μm、高さH’は0.2〜400μmである。また、該凹部のアスペクト比H’/S’は0.1〜20の範囲であり、好ましくは1〜10である。
【0067】
ここで、凹部4の幅S’は、図3(a)や図4に図示したように、凹部の単位長さである。なお、図5のストライプ状パターンの場合は単位長さの短い方向で測定する。図5(d)〜(h)の場合は単位長さが最も短いところを幅S’とする。また、図6(a)の様に凹部4が円形の場合はその直径を、楕円の場合はその短径を、図6(b)〜(d)の様に三角形・四角形などの多角形の場合はその内接円の直径を、凹部2幅S’とすればよい。また、金型の厚み方向における凸部の高さH’は図7に示すように、凹部5の厚みを指す。
【0068】
また、この配列層は、この配列層内の金型面方向断面において、凸部1の面積と凹部2の面積比率は任意である。
【0069】
金型の材質としては、特に限定されるものではないが、少なくとも凹凸が形成された表面は、ステンレス鋼(SUS)、ニッケル(Ni)などの耐久性に富んだ金属材質が用いられることが好ましい。
【0070】
金型は上述の材質をそのまま用いても構わないが、離型性を向上させるため、金型の表面を表面処理剤で処理するのが好ましい。表面処理による金型の表層の接触角としては、好ましくは80°以上、より好ましくは100°以上である。
【0071】
表面処理の方法としては、表面処理剤を金型表面に化学結合を用いて固定する方法(化学吸着法)や、表面処理剤を金型表面に物理的に吸着させる方法(物理吸着法)等が挙げられる。この中で、表面処理効果のくり返し耐久性、および成形加工シートへの汚染防止の観点から化学吸着法により表面処理するのが好ましい。
【0072】
化学吸着法に用いられる表面処理剤の好ましい例としては、フッ素系シランカップリング剤が挙げられる。これを用いた表面処理方法としては、有機溶剤(アセトン、エタノール)中での超音波洗浄、硫酸等の酸、過酸化水素等の過酸化物の溶液中での煮沸洗浄、などの洗浄方法により金型の表面を洗浄した後、フッ素系シランカップリング剤で処理する。その処理方法の一例として、フッ素系シランカップリング剤をフッ素系溶剤に溶解させた溶液に金型を浸漬することが挙げられる。浸漬時には、溶液を加熱することも好ましく行われる。
【0073】
本発明の成形方法によって得られる成形加工シートとは、本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムに金型を用いて成形されたものであり、その横断面図は図8に例示するように、シート状の支持層11の上に、基部10、成形部9が形成されたものである。本発明の成形方法によって得られる成形加工シートの形状としては、好ましくは用いる金型と凹凸が反転したものであって、具体的な横断面図を図9(a)〜(f)に例示する。図9の横断面にて観察される凸部7の形状としては、矩形(図9(a))、台形(図8(b))、三角形(図9(c))、これらが変形したもの(図9(d)、(e)、(f))、およびこれらの混在したもの等が好ましく用いられるが、これら以外の形状も用いることができる。すなわち、横断面図において凸部7の側面が、ほぼシート面に対して垂直な図9(a)等の他にも、図9(b)〜(e)のような形態も含まれる。
【0074】
図10(a)〜(c)は、本発明の成形方法によって得られる成形加工シートの一部分を模式的に示す斜視図である。成形部10における凸部7の配列構造としては、例えば、図10(a)に示すように、凸部7がドット状にならんだ構造、図10(b)に示すように、凸部7が面方向にストライプ状に延びる構造、図10(c)に示すように凸部7が面方向に格子状に広がる構造等が用いられるが、これらに制限されるものではない。
【0075】
図11(a)〜(h)は、それぞれ、本発明の成形方法によって得られる成形加工シートの面と平行に切断した場合の断面における、凸部7と凹部8との配置を模式的に示す断面図である。図11(a)〜(h)のように凹部8の形状が、線状、略三角形、略四角形、略六角形、円、楕円等から選ばれる形状を有していてもよい。図11(a)〜(c)は凹部8がストライプ状である場合、図11(d)は凹部8の断面が円形状である場合、図11(e)は三角形状である場合、図11(f)〜(g)は四角形状である場合、図11(h)は六角形状である場合を、それぞれ例示するものである。この凹部8は、図示した場合のように整列していてもよく、またランダムに配列していたり、異なる形状が混在したりしていてもよい。また、図12(a)〜(d)のように、凸部7の形状が、略三角形、略四角形、略六角形、円、楕円等から選ばれる形状を有していてもよい。
【0076】
また、本発明の成形方法によって得られる成形加工シート凸部7の形状は、好ましくは幅Sが0.01〜200μm、高さHが0.01〜400μmである。また、凸部7のアスペクト比H/Sは0.1〜20であり、好ましくは1〜10である。
【0077】
ここで、凸部7の幅Sは、図9(a)や図10に図示したように、凸部の単位長さである。なお、図10のストライプ状パターンの場合は単位長さの短い方向で測定する。図11(d)〜(h)の場合は単位長さが最も短いところを幅Sとする。また、図12(a)の様に凸部7が円形の場合はその直径を、楕円の場合はその短径を、図12(b)〜(d)の様に三角形・四角形などの多角形の場合はその内接円の直径を、凸部7幅Sとすればよい。また、成形加工シートの厚み方向における凸部の高さHは図8に示すように、凸部9の厚みを指す。
【0078】
ここで、凸部7の幅、凹部8の幅は、図9(a)の場合、それぞれS、tの長さでもって表される。なお、図9(b)等のようにその長さ単位が位置により異なる場合はその平均値でもって表す。また、凹凸のくり返し単位(ピッチ)は凸部の幅Sと凹部の幅tの和で表され、成形加工シートの凸部のピッチは0.02〜200μmである。
【0079】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムを用いて作製された成形加工シートは、各種用途に使用することが可能であるが、用途の一例としては、バイオチップ、半導体集積材料、意匠部材、光回路、光コネクタ部材、およびディスプレイ用部材などの光学部材が挙げられる。
【0080】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムは、図13(a)に示すような成形層の表面に、さらに離型層を積層した構成が好ましい。微細加工用二軸延伸積層フィルムの最表面、即ち金型と接する面に離型層を予め設けることによって、金型表面に形成する離型コートの耐久性(繰り返し使用回数)を向上することができ、たとえ部分的に離型効果が失われた金型を用いた場合でも問題なく均一に離型することが可能となる。また、金型に全く離型処理を施さなくても、フィルム側に予め離型層を形成することで離型が可能となり、金型離型処理コストを削減することができるようになるため好ましい。また、金型から成形シートを離型する際の樹脂粘着による成形パターン崩れを防止できることや、より高温での離型が可能となり、サイクルタイムの短縮が可能となるため、成形精度、生産性の点においても好ましい。また、さらに成形加工シート表面の滑り性が向上することによって耐スクラッチ性が向上し、製造工程などで生じる欠点を低減させることも可能となるため好ましい。
【0081】
成形層が支持層を中心として、両最外層に積層された場合、図13(b)に示すように、どちらか片方の成形層表面に離型層を設けても良いし、図13(c)のように両最外層に離型層を設けても良い。
【0082】
離型層を構成する樹脂は、特に限定されないが、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、脂肪酸系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、メラミン系樹脂、を主成分として構成することが好ましく、これらのうちでは、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、脂肪酸系樹脂がより好ましい。また、離型層には、上述の樹脂以外にも、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂などが配合されてもよいし、各種の添加剤、例えば、帯電防止剤、界面活性剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、核剤、架橋剤などが配合されても良い。また、離型層の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.01〜5μmである。該離型層の厚みが0.01μm未満であると、上述の離型性向上効果が低下する場合がある。
【0083】
また、離型層の以下に定義する離型力は0〜1.0kg重の範囲であるのが好ましく、0〜0.1Kg重の範囲であることがより好ましい。ここで、離型力は下記手順にて求めた。まず、表面粗さ(以下Ra)が3nm、平行度が1μmのNi材質の金型(一辺40mmの立方体)を準備した。微細加工用二軸延伸積層フィルムと金型をプレス温度T4まで加熱(図14(a))した後、該金型を該フィルムの離型層側に3MPaにてプレス(図14(b))した。次いで該金型と該フィルムを冷却(冷却温度:T5)した後、プレスを開放した。接着した該金型と該フィルムをプッシュプルゲージへ設置する(図15)。離型温度まで冷却(離型温度:T6)して、金型からフィルムを10mm/秒の速度で金型中心まで離型したときの最大力を測定した。これを3回繰り返したときの値の平均値を離型力とした。ここで、T4、T5、T6は下記値とした。
・T4=(成形層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg)+40℃
・T5=(成形層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg)+20℃
・T6=(成形層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg)。
離型力が1.0kg重を超えると、金型からフィルムを離型するときに、フィルムと金型の粘着力が増加することによって、成形パターン崩れが発生する場合がある。
【0084】
離型層を形成する方法としては、特に限定されないが、各種の塗布方法、例えばインラインコーティング法、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法またはスプレーコート法を用いることができる。なかでもインラインコーティング法が、基材の製膜と同時にコーティングできるため、生産性、塗布均一性の観点から好ましく挙げられる。
【0085】
[特性の評価方法]
A.微細加工用二軸延伸積層フィルムの積層構成
フィルムの断面を切り出し、白金−パラジウムを蒸着した後、日立製作所(株)製走査型電子顕微鏡S−2100Aを用い500倍で写真を撮影し、断面観察を行い成形層と支持層の積層厚みの測定を行い、この結果から積層比を算出した。
【0086】
B.面配向係数fn
成形層/支持層にて構成される2層積層構成の場合は、アッベ屈折率計を用いて面配向係数を測定する層(以下、測定層とする)をガラス面に密着させ、次いでナトリウムD線を光源として、長手方向、幅方向、厚み方向の屈折率(Nx、Ny、Nz)を測定し、下記式より測定層の面配向係数fnを求めた。
・fn=(Nx+Ny)/2−Nz
また、成形層/支持層/成形層にて構成される3層積層構成の場合など、表層に表れていない測定層(この場合は支持層)を測定するときは、方法は特に限定されないが測定層が表に出てくるようにする。この場合は断面を切断し(成形層を切り離すように切断する)、これにより表層に現れた測定層の面配向係数fnを上記方法にて測定した。断面を切断する方法は特に限定されないが、ここではミクロトームを用いた。
【0087】
C.ガラス転移温度Tg
示差走査熱量測定(DSC)として、セイコー電子工業株式会社製ロボットDSC「RDSC220」を用い、データ解析装置として、同社製ディスクステーション「SSC/5200」を用いて、アルミニウム製受皿に5mgの組成物またはフィルムサンプルを充填する。この試料を常温から20℃/分の昇温速度で300℃まで加熱して5分間溶融させる。次いで液体窒素で急冷し、この過程でガラス転移温度を測定した。
【0088】
D.融解吸熱ピーク温度Tm
示差走査熱量測定(DSC)として、セイコー電子工業株式会社製ロボットDSC「RDSC220」を用い、データ解析装置として、同社製ディスクステーション「SSC/5200」を用いて、アルミニウム製受皿に5mgの組成物またはフィルムサンプルを充填する。この試料を常温から20℃/分の昇温速度で300℃まで加熱して5分間溶融させ、この過程で融点を測定した。
【0089】
E.破断強度
フィルム長手方向に、長さ200mm、幅10mmの短冊状のサンプルを切り出して用いた。JIS K−7127に規定された方法に従って、引っ張り試験機を用いて25℃、65%RHにて破断伸度を測定した。初期引っ張りチャック間距離は100mmとし、引っ張り速度は300m/分とした。測定はサンプルを変更して20回行いその破断強度の平均値(X)を求めた。
【0090】
F.全光線透過率
スガ試験(株)製、全自動直読ヘーズコンピューターHGM−2DPを用い、全光線透過率を測定した。フィルムは50mm各に切り出し、成形層が片面積層の場合には光が支持層側から入射、成形層/支持層/成形層の3層積層の場合は厚みの薄い成形層から入射、同じ厚みの場合は、両面から測定してその平均値から算出して求めた。
【0091】
G.成形加工シート、金型の断面構造
金型、成形加工シートの断面を切り出して白金−パラジウムを蒸着した後、日立製作所(株)製走査型電子顕微鏡S−2100Aを用い300倍で写真を撮影し、断面観察を行い、金型凹部の高さH’、及び幅S’、アスペクト比H’/S’、凹部の断面積A’、成形加工シート凸部の高さH、及び幅S、アスペクト比H/S、凸部の断面積Aを求めた。ここから成形性は次のように判定した。成形加工シート凹部の断面積Aと金型の凸部断面積A’からA/A’を求めて
0.90以上:○
0.90未満:×
とした。また、成形のときに発生した部分的な欠点や離型性悪化によるパターンの形状変化など、面積は同一であるが金型のパターン形状から成形後に得られた成形加工シートのパターン形状が著しく変化をした場合は成形性不良とみなした。また、金型の断面が切り出しにくい場合は、金型表面凹凸を再現できるようにレプリカを作成し、作成したレプリカ断面の凸部を金型凹部、レプリカ凹部を金型凸部として判定を行った。
【0092】
H.離型応力(離型力)
表面粗さ(以下Ra)が3nm、平行度が1μmのNi材質の金型(一辺40mmの立方体)を準備した。微細加工用二軸延伸積層フィルムと金型をプレス温度T4まで加熱(図14(a))した後、該金型を該フィルムの離型層側に3MPaにてプレス(図14(b))した。次いで該金型と該フィルムを冷却(冷却温度:T5)した後、プレスを開放した。接着した該金型と該フィルムをプッシュプルゲージへ設置する(図15)。所定離型温度まで冷却(離型温度:T7)して、金型からフィルムを10mm/秒の速度で金型中心まで離型したときの最大力を測定した。これを3回繰り返したときの値の平均値を離型応力とした(離型応力のうち、成形層を構成する樹脂のガラス転移温度Tgで離型したときの値を、本発明では離型力という)。ここで、T4、T5、T7は下記値とする。
・T4=(成形層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg)+40℃
・T5=(成形層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg)+20℃
・T7=(離型したときの温度)。
【0093】
I.離型性
微細加工用二軸延伸積層フィルム、及び金型(矩形ストライプパターン(ピッチ100μm、凸部幅S’100μm、高さH’150μm、アスペクト比1.5、図4、(b)参照))を120℃に加熱し、微細加工用二軸延伸積層フィルムの離型層側または離型層がない場合は成形層側と金型の凹凸面を接触させて5MPaでプレスし、そのまま60秒保持する。その後100℃に冷却後プレスを解放し、所定の温度に冷却して金型からフィルムを離型したとき、次のように、所定温度における離型性を判定した。
・金型とフィルムに粘着が起こり、これに起因した成形パターン崩れが発生する:×
・金型とフィルムに粘着が起こるが、成形パターン崩れは殆どない:△
・金型とフィルムに粘着がなく、成形パターン崩れが発生しない:○。
【実施例】
【0094】
以下、本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルム、成形加工シートについて実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0095】
(実施例1)
微細加工用二軸延伸積層フィルム成形層の樹脂として170℃で3時間乾燥したイソフタル酸17.5モル%共重合PET、支持層の樹脂として180℃で3時間乾燥したPETを用い、それぞれ別の押出機内280℃で溶融させ、溶融2層共押出口金から押し出された積層樹脂を25℃に保たれた冷却ドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化した。次いで、該キャストフィルムを長手方向にロール式延伸機にて90℃で3.3倍に延伸した後、テンターに導入し、110℃で3.2倍に横延伸後、225℃に制御された温度ゾーンで熱処理を施し、その後、幅方向に170℃で4%弛緩処理を行った後、室温まで冷却して巻取り、成形層の厚みが100μm、支持層の厚みが200μm、全体で300μmの微細加工用二軸延伸積層フィルムを得た。得られた微細加工用二軸延伸積層フィルムの融解吸熱ピーク温度Tm、積層比、面配向係数、全光線透過率、破断強度を測定した。結果を表1および2に示す。該フィルム支持層の面配向係数が0.167であったため破断強度は250MPaであり機械的強度に優れていることを確認した。
【0096】
得られた微細加工用二軸延伸積層フィルム、及び離型処理(金型表面を純水、アセトンの順で超音波洗浄後、濃硫酸:過酸化水素水=1:1中に浸漬し、80℃で15分加熱した。次いで、金型を溶液中から取り出し、純水で洗浄後、110℃の熱風オーブンで乾燥した。次に、乾燥した金型を電気炉内で1000℃、2時間加熱し、表面にSiOの熱酸化膜を形成した。続いて、該金型をダイキン株式会社製フッ素系シランカップリング剤 “オプツールDSX”のダイキン工業株式会社製“デムナムソルベント”0.2%溶液中に1分浸漬した。その後、溶液から金型を取り出し、自然乾燥後、70℃、湿度90%RH雰囲気中で1時間放置した。次いで、デムナムソルベントに10秒間浸漬した。)を施した金型(矩形ストライプパターン(ピッチ100μm、凸部幅S’100μm、高さH’150μm、アスペクト比1.5、図4、(b)参照))を120℃に加熱し、微細加工用二軸延伸積層フィルムの成形層側と金型の凹凸面を接触させて5MPaでプレスし、そのまま60秒保持した。その後100℃に冷却後プレスを解放し、50℃に冷却して金型から離型して成形加工シートを得た。得られた成形加工シートの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、成形層の面配向係数が0.046であったため金型の形状が十分に転写されており(A/A’=0.91)、幅S98μm、高さH139μmのストライプ矩形パターンを形成できていることを確認した。
【0097】
(実施例2)
熱処理温度を240℃とすること以外は実施例1と同様に微細加工用二軸延伸積層フィルムおよび成形加工シートを得た。得られた微細加工用二軸延伸積層フィルムの融解吸熱ピーク温度Tm、積層比、面配向係数、全光線透過率、破断強度を測定した。結果を表1および2に示す。該フィルム支持層の面配向係数は0.164となり、破断強度も180MPaと機械的強度に優れていることを確認した。また、実施例1よりも高温で熱処理することにより成形層樹脂のアモルファス部が増加し成形層の面配向係数が0.008となっていることを確認した。
【0098】
得られた成形加工シートの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、金型の形状が十分に転写されており(A/A’=0.96)、幅S98μm、高さH146μmのストライプ矩形パターンを形成できていることを確認した。
【0099】
(実施例3)
微細加工用二軸延伸積層フィルムの積層構成を、成形層/支持層/成形層の3層構成とし、成形層の1層当たりの厚みを100μm、支持層の厚みを200μm、全体厚みを400μmとすること以外は実施例2と同様にして微細加工用二軸延伸積層フィルムおよび成形加工シートを得た。得られた微細加工用二軸延伸積層フィルムの融解吸熱ピーク温度Tm、積層比、面配向係数、全光線透過率、破断強度を測定した。結果を表1および2に示す。該フィルム支持層の面配向係数は0.163となり、破断強度も210MPaと機械的強度に優れていることを確認した。また、成形層の面配向係数は0.005であった。
【0100】
得られた成形加工シートの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、金型の形状が十分に転写されており(A/A’=0.97)、幅S99μm、高さH147μmのストライプ矩形パターンを形成できていることを確認した。また、成形層が支持層を中心として、両最外層に積層されているため、加工前及び加工後のフィルムにおいて、カールが低減していることを確認した。
【0101】
(実施例4)
金型として矩形ストライプパターン(ピッチ50μm、凸部幅S’50μm、高さH’200μm、アスペクト比4.0、図4、(b)参照))を用いること以外は実施例2と同様にして微細加工用二軸延伸積層フィルムおよび成形加工シートを得た。得られた微細加工用二軸延伸積層フィルムの融解吸熱ピーク温度Tm、積層比、面配向係数、全光線透過率、破断強度を測定した。結果を表1および2に示す。該フィルム支持層の面配向係数は0.164となり、破断強度も220MPaと機械的強度に優れていることを確認した。また、成形層の面配向係数が0.004であった。
得られた成形加工シートの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、金型の形状が十分に転写されており(A/A’=0.96)、幅S50μm、高さH192μmのストライプ矩形パターンを形成できていることを確認した。
【0102】
(実施例5)
微細加工用二軸延伸積層フィルムの積層構成を、成形層/支持層/成形層の3層構成とし、成形層の1層当たりの厚みを40μm、支持層の厚みを160μm、全体厚みを240μmとし、成形層として、2,6−ナフタレンジカルボン酸12モル%共重合PETを用い、金型として正三角形ストライプパターン(ピッチ50μm、凸部幅S’50μm、高さH’25μm、アスペクト比0.5、図3(c)、図4(b)参照))を用いたこと以外は実施例2と同様にして微細加工用二軸延伸積層フィルムおよび成形加工シートを得た。得られた微細加工用二軸延伸積層フィルムの融解吸熱ピーク温度Tm、積層比、面配向係数、全光線透過率、破断強度を測定した。結果を表1および2に示す。該フィルム支持層の面配向係数は0.162となり、破断強度も225MPaと機械的強度に優れていることを確認した。
【0103】
得られた成形加工シートの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、金型の形状が十分に転写されており(A/A’=0.97)、幅S49.5μm、高さH24.5μmのストライプ正三角形パターンを形成できていることを確認した。
【0104】
(実施例6)
成形層樹脂としての重合時に酢酸ナトリウムを0.3重量%の割合で添加した2,6−ナフタレンジカルボン酸12モル%共重合PETを用いたこと以外は実施例5と同様にして微細加工用二軸延伸積層フィルムおよび成形加工シートを得た。得られた微細加工用二軸延伸積層フィルムの融解吸熱ピーク温度Tm、積層比、面配向係数、全光線透過率、破断強度を測定した。結果を表1および2に示す。該フィルム支持層の面配向係数は0.160となり、破断強度も205MPaと機械的強度に優れていることを確認した。
【0105】
得られた成形加工シートの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、金型の形状が十分に転写されており(A/A’=0.96)、幅S49.3μm、高さH24.2μmの正三角形ストライプパターンを形成できていることを確認した。また、成形層を構成する樹脂に造核剤として酢酸ナトリウムを重合添加したため、成形層樹脂の結晶性が高速化し、成形加工シート成形層の耐熱性が向上した。
【0106】
(実施例7)
成形層として、2,6−ナフタレンジカルボン酸15モル%共重合PETを用いたこと以外は実施例5と同様にして微細加工用二軸延伸積層フィルムおよび成形加工シートを得た。得られた微細加工用二軸延伸積層フィルムの融解吸熱ピーク温度Tm、積層比、面配向係数、全光線透過率、破断強度を測定した。結果を表1および2に示す。該フィルム支持層の面配向係数は0.162となり、破断強度も195MPaと機械的強度に優れていることを確認した。
【0107】
得られた成形加工シートの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、金型の形状が十分に転写されており(A/A’=0.98)、幅S49.7μm、高さH24.6μmの正三角形ストライプパターンを形成できていることを確認した。
【0108】
(実施例8)
成形層として、スピログリコール45mol%共重合PET、支持層としてポリエチレン−2,6−ナフタレートを用い、長手方向にロール式延伸機にて125℃で3.3倍に延伸した後、テンターに導入し、140℃で3.2倍に横延伸後に240℃に制御された温度ゾーンで熱処理を施したこと以外は実施例2と同様にして微細加工用二軸延伸積層フィルムおよび成形加工シートを得た。得られた微細加工用二軸延伸積層フィルムの融解吸熱ピーク温度Tm、積層比、面配向係数、全光線透過率、破断強度を測定した。結果を表1および2に示す。該フィルム支持層の面配向係数は0.164となり、破断強度も235MPaと機械的強度に優れていることを確認した。また、成形層を構成する樹脂がスピログリコール45mol%共重合PETを用いたことによって樹脂のアモルファス部が増加し、成形層の面配向係数が0.005であった。
【0109】
得られた成形加工シートの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、金型の形状が十分に転写されており(A/A’=0.98)、幅S99μm、高さH148μmのストライプ矩形パターンを形成できていることを確認した。
【0110】
(実施例9)
成形層として、スピログリコール10mol%共重合PETを用い、長手方向にロール式延伸機にて95℃で3.3倍に延伸した後、テンターに導入し、115℃で3.2倍に横延伸したこと以外は実施例8と同様にして微細加工用二軸延伸積層フィルムおよび成形加工シートを得た。得られた微細加工用二軸延伸積層フィルムの融解吸熱ピーク温度Tm、積層比、面配向係数、全光線透過率、破断強度を測定した。結果を表1および2に示す。該フィルム支持層の面配向係数が0.165であったため破断強度は215MPaであり機械的強度に優れていることを確認した。また、成形層を構成する樹脂がスピログリコール10mol%共重合PETを用いたことによって樹脂のアモルファス部が増加し、成形層の面配向係数が0.008であった。
【0111】
得られた成形加工シートの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、金型の形状が十分に転写されており(A/A’=0.98)、幅S98μm、高さH150μmのストライプ矩形パターンを形成できていることを確認した。
【0112】
(実施例10)
支持層樹脂としてPENを用い、成形層樹脂のジオール成分として、9,9’−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)フルオレン30mol%共重合PETを用い、長手方向にロール式延伸機にて130℃で3.3倍に延伸した後、テンターに導入し、150℃で3.2倍に横延伸したこと以外は実施例2と同様にして微細加工用二軸延伸積層フィルムおよび成形加工シートを得た。得られた微細加工用二軸延伸積層フィルムの融解吸熱ピーク温度Tm、積層比、面配向係数、全光線透過率、破断強度を測定した。結果を表1および2に示す。該フィルム支持層の面配向係数は0.164となり、破断強度も220MPaと機械的強度に優れていることを確認した。また、成形層を構成する樹脂が9,9’−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)フルオレン30mol%共重合PETを用いたことによって樹脂のアモルファス部が増加し、成形層の面配向係数が0.003であった。
【0113】
得られた成形加工シートの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、金型の形状が十分に転写されており(A/A’=0.99)、幅S99μm、高さH150μmのストライプ矩形パターンを形成できていることを確認した。
【0114】
(実施例11)
成形層の厚みを50μmとし、離型温度を下記温度にしたこと以外は実施例2と同様に微細加工用二軸延伸積層フィルムおよび成形加工シートを得た。得られた微細加工用二軸延伸積層フィルムの融解吸熱ピーク温度Tm、積層比、面配向係数、全光線透過率、破断強度、50℃、60℃、75℃における離型応力および離型性を測定した。結果を表1、表2および表3に示す。該フィルム支持層の面配向係数は0.161となり、破断強度も210MPaと機械的強度に優れていることを確認した。また、成形層の面配向係数が0.005となっていることを確認した。
【0115】
得られた成形加工シートの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、金型の形状が十分に転写されており(A/A’=0.97)、幅S98μm、高さH148μmのストライプ矩形パターンを形成できていることを確認した。また、離型温度75℃における離型応力は1.8kg重、60℃における離型応力は1.2kg重であり、離型時に金型とフィルムの粘着や、部分的に成形ムラがみられた。また、50℃にける離型性はそれぞれ0.8Kg重であり、離型時にかすかに剥離音が聞こえたものの、成形パターン崩れは発生しなかった。
【0116】
(実施例12)
キャストフィルムを長手方向にロール式延伸機にて90℃で3.3倍に延伸した一軸延伸フィルムに空気中でコロナ放電を施し、その成形層処理面に最表層となるよう離型層として米国AXEL社製“XTEND−W7283”を水で固形分濃度が2.5%となるように調整した塗剤をインラインコーティング法によって塗布したこと以外は実施例11と同様に微細加工用二軸延伸積層フィルムと成形加工シートを得た。結果を表1、表2および表3に示す。該フィルム支持層の面配向係数は0.163となり、破断強度も203MPaと機械的強度に優れていることを確認した。また、成形層の面配向係数が0.006となっていることを確認した。
【0117】
得られた成形加工シートの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、金型の形状が十分に転写されており(A/A’=0.98)、幅S99μm、高さH149μmのストライプ矩形パターンを形成できていることを確認した。また、離型温度60℃、50℃における離型応力はそれぞれ0.08kg重、0.05kg重であり、離型時に金型とフィルムの粘着がなく、成形パターン崩れは発生しなかった。また、離型温度75℃における離型応力も0.1kg重となり、離型時に金型とフィルムの粘着がなく、成形パターン崩れは発生しなかった。
【0118】
(実施例13)
離型層として、日信化学工業(株)社製“ビニブランFJ16”を水で固形分濃度が2.5%となるように調整した塗材を用いたこと以外は実施例11と同様に微細加工用二軸延伸積層フィルムおよび成形加工シートを得た。結果を表1、表2および表3に示す。該フィルム支持層の面配向係数は0.165となり、破断強度も191MPaと機械的強度に優れていることを確認した。また、成形層の面配向係数が0.008となっていることを確認した。
【0119】
得られた成形加工シートの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、金型の形状が十分に転写されており(A/A’=0.99)、幅S100μm、高さH149μmのストライプ矩形パターンを形成できていることを確認した。また、離型温度60℃、50℃における離型応力はそれぞれ0.06kg重、0.04kg重であり、離型時に金型とフィルムの粘着がなく、成形パターン崩れは発生しなかった。また、離型温度75℃における離型応力は0.08Kg重であり、離型時に金型とフィルムの粘着がなく、成形パターン崩れは発生しなかった。
【0120】
(実施例14)
キャストフィルムを長手方向にロール式延伸機にて90℃で3.3倍に延伸した一軸延伸フィルムに空気中でコロナ放電を施し、その成形層処理面に最表層となるよう離型層として信越化学工業(株)社製“KM3951”50.0重量部、信越化学工業(株)社製“CAT−PM−10A”が2.5重量部、水が347.5重量部となるように調整した塗剤をインラインコーティング法によって塗布したこと以外は実施例5と同様に微細加工用二軸延伸積層フィルムおよび成形加工シートを得た。結果を表1、表2および表3に示す。該フィルム支持層の面配向係数は0.165となり、破断強度も225MPaと機械的強度に優れていることを確認した。また、成形層の面配向係数が0.082となっていることを確認した。
【0121】
得られた成形加工シートの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、金型の形状が十分に転写されており(A/A’=0.96)、幅S49.4μm、高さH24.4μmの正三角形ストライプパターンを形成できていることを確認した。また、離型温度60℃、50℃における離型応力はそれぞれ0.02kg重、0.01kg重であり、離型時に金型とフィルムの粘着がなく、成形パターン崩れは発生しなかった。また、離型温度75℃における離型応力は0.06Kg重であり、離型時に金型とフィルムの粘着がなく、成形パターン崩れは発生しなかった。
【0122】
(比較例1)
成形層を積層しなかったこと以外は実施例1と同様にして微細加工用二軸延伸積層フィルムおよび成形加工シートを得た。得られた微細加工用二軸延伸積層フィルムの融点Tm、積層比、面配向係数、全光線透過率、破断強度を測定した。結果を表1および2に示す。該フィルム支持層を構成する樹脂の面配向係数が0.164となり、破断強度も240MPaと機械的強度に優れていることを確認した。しかし、得られた成形加工シートの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、面配向係数が0.164である配向状態の支持層へ成形を実施したことによって金型の形状が十分に転写されておらず(A/A’=0.35)、幅S99μm、高さH35μmのストライプ矩形パターンであり成形が不十分であった。
【0123】
(比較例2)
支持層を積層せずに、200℃に制御された温度ゾーンで熱処理したこと以外は実施例1と同様にして微細加工用二軸延伸積層フィルムおよび成形加工シートを得た。得られた微細加工用二軸延伸積層フィルムの融点Tm、積層比、面配向係数、全光線透過率、破断強度を測定した。結果を表1および2に示す。得られた成形加工シートの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、成形層の面配向係数が0.046であったため金型の形状が十分に転写されており(A/A’=0.98)、幅S99μm、高さH148μmのストライプ矩形パターンを形成されていることが確認されたが、配向状態によって機械的強度を維持する支持層がなく、成形層の面配向係数が0.003であるため機械的強度が68MPaと不十分であった。
【0124】
(比較例3)
熱処理を施さなかったこと以外は実施例1と同様にして微細加工用二軸延伸積層フィルムおよび成形加工シートを得た。得られた微細加工用二軸延伸積層フィルムの融点Tm、積層比、面配向係数、全光線透過率、破断強度を測定した。結果を表1および2に示す。該フィルム支持層の面配向係数が0.168であったため破断強度は240MPaであり機械的強度に優れていることを確認した。しかし、成形加工シートの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、熱処理を施していないため、成形層の面配向係数も0.103と高く、金型の形状が十分に転写されておらず(A/A’=0.64、幅S99μm、高さH97μmのストライプ矩形パターンであり成形が不十分であった。
【0125】
(比較例4)
成形層と支持層の積層構成を、支持層/成形層/支持層とする3層積層構成とし、成形層の厚みを200μm、支持層の1層当たりの厚みを100μmとすること以外は実施例2と同様にして微細加工用二軸延伸積層フィルムおよび成形加工シートを得た。得られた微細加工用二軸延伸積層フィルムの融点Tm、積層比、面配向係数、全光線透過率、破断強度を測定した。結果を表1および2に示す。該フィルム支持層の面配向係数が0.166であったため破断強度は240MPaであり機械的強度に優れていることを確認した。しかし、得られた成形加工シートの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、成形層が表面に無く、面配向係数が0.166である支持層への成形のため金型の形状が十分に転写されておらず(A/A’=0.77)、幅S99μm、高さH117μmのストライプ矩形パターンであり成形が不十分であった。
【0126】
(参考例1)
微細加工用二軸延伸積層フィルムの支持層側と金型の凹凸面を接触させたこと以外は実施例2と同様にして微細加工用二軸延伸積層フィルムおよび成形加工シートを得た。得られた微細加工用二軸延伸積層フィルムの積層比、面配向係数、ガラス転移温度Tg、融点Tmを測定した。結果を表1および2に示す。支持層の面配向係数が0.164となり、破断強度も215MPaと機械的強度に優れていることを確認した。また、該フィルム成形層の面配向係数は0.008であった。
【0127】
得られた成形加工シートの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、成形層の面配向係数は0.008であるものの、面配向係数が0.164である支持層へ成形を行ったため、金型の形状が十分に転写されておらず(A/A’=0.25)、幅S96μm、高さH24μmのストライプ矩形パターンであり成形が不十分であった。
【0128】
【表1】

【0129】
【表2】

【0130】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルム、ないし本発明の成形方法により得られる成形加工シートはバイオチップ、半導体集積材料、意匠部材、光回路、光コネクタ部材、およびディスプレイ用部材など各種分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】図1(a)および(b)は、本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムの構成を模式的に例示するものである。
【図2】図2(a)〜(d)は、本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムを用いた成形方法の工程を模式的に例示するものである。
【図3】図3(a)〜(f)は、いずれも本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルム成形層の成形に用いる金型を示す横断面図であり、横断面における凸部3の形状を模式的に例示するものである。
【図4】図4(a)〜(c)は、それぞれ本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルム成形層の成形に用いる金型の一部分を模式的に示す斜視図である。
【図5】図5(a)〜(h)は、いずれも本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルム成形層の成形に用いる金型の面と平行な断面における断面図であり、凸部3の形状を模式的に例示するものである。
【図6】図6(a)〜(d)いずれも本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルム成形層の成形に用いる金型の面と平行な断面における断面図であり、凸部3の形状を模式的に例示するものである。
【図7】図7は、本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルム成形層の成形に用いる金型断面図であり、凸部3、凹部4は模式的に例示したものである。ここでS’、t’それぞれ凹部、凸部の幅を示し、H’は凹部の高さを示す。
【図8】図8は、本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムに成形した成形加工シートの断面図であり、凸部7、凹部8は模式的に例示したものである。
【図9】図9(a)〜(c)は、それぞれ本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムに成形した成形加工シートの一部分を模式的に示す斜視図である。
【図10】図10(a)〜(c)は、それぞれ本発明の成形方法に用いる金型の一部分を模式的に示す斜視図である。
【図11】図11(a)〜(h)は、いずれも本発明の成形方法に用いる金型の面と平行な断面における断面図であり、凸部8の形状を模式的に例示するものである。
【図12】図12(a)〜(d)いずれも本発明の成形方法に用いる金型の面と平行な断面における断面図であり、凸部8の形状を模式的に例示するものである。
【図13】図13(a)および(b)は、本発明の微細加工用二軸延伸積層フィルムに離型層を形成した場合の構成を模式的に例示するものである。
【図14】図14(a)〜(b)は微細加工用二軸延伸積層フィルムの離型応力を測定する前に金型とフィルムを密着させた状態を模式的に例示するものである。
【図15】図15は微細加工用二軸延伸積層フィルムの離型応力を測定するときの状態を模式的に例示するものである。
【符号の説明】
【0133】
1 金型の凸部
2 金型の凹部
3 金型の凸部
4 金型の凹部
5 金型の凹部高さ
6 金型凹部高さを除く金型部分
7 成形加工シートの凸部
8 成形加工シートの凹部
9 成形加工シート凸部の高さ
10 成形加工シート基部
11 支持層
l 成形加工シート基部の高さ
S 成形加工シート凸部の幅
t 成形加工シート凹部の幅
H 成形加工シート凸部の高さ
K 支持層の高さ
S’ 金型凹部の幅
H’ 金型凹部の高さ
t’ 金型凸部の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも成形層と支持層からなる二軸延伸積層フィルムであって、該フィルムは、少なくとも一方の表面に成形層が積層され、さらに、明細書で定義する、成形層の面配向係数fnが0.00以上0.10以下、かつ、支持層の面配向係数fnが0.10以上0.18未満の範囲を満たすことを特徴とする微細加工用二軸延伸積層フィルム。
【請求項2】
前記成形層を構成する樹脂の、明細書で定義する示差走査熱量測定(以下DSC)により得られる融解吸熱ピーク温度Tm1が、前記支持層の融解吸熱ピーク温度Tm2よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の微細加工用二軸延伸積層フィルム。
【請求項3】
前記成形層を構成する樹脂の、明細書で定義する、DSCにより得られるガラス転移温度(以下Tg)が、80℃以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の微細加工用二軸延伸積層フィルム。
【請求項4】
前記成形層が、ポリエステルを主成分とする樹脂からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の微細加工用二軸延伸積層フィルム。
【請求項5】
前記成形層を構成する樹脂が、ナフタレンジカルボン酸を5〜50モル%の割合で共重合されてなるポリエステルを主成分とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の微細加工用二軸延伸積層フィルム。
【請求項6】
前記成形層を構成する樹脂が、スピログリコールを5〜50モル%、またはフルオレン骨格を有するジオール成分が5〜60モル%の割合で共重合されてなるポリエステルを主成分とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の微細加工用二軸延伸積層フィルム。
【請求項7】
前記支持層が、ポリエステルを主成分とする樹脂からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の微細加工用二軸延伸積層フィルム。
【請求項8】
破断強度が、100MPa〜500MPaの範囲を満たすことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の微細加工用二軸延伸積層フィルム。
【請求項9】
全光線透過率(以下Tt)が50〜95%である請求項1〜8のいずれかに記載の微細加工用二軸延伸積層フィルム。
【請求項10】
前記微細加工用二軸延伸積層フィルムは、該フィルムの成形層に金型を押し当てて表面に金型形状を転写するためのフィルムであって、該成形層の積層厚みが金型形状の凹部高さH’の1〜4倍であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の微細加工用二軸延伸積層フィルム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の微細加工用二軸延伸積層フィルムを製造する方法であって、二軸延伸後に成形層を構成する樹脂の融解吸熱ピーク温度Tm1以上、かつ、支持層を構成する樹脂の融解吸熱ピーク温度Tm2未満の温度で熱処理することを特徴とする微細加工用二軸延伸積層フィルムの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載の微細加工用二軸延伸積層フィルムの成形層に、凹凸形状を賦形した成形加工シート。
【請求項13】
前記凹凸形状の凸部断面の幅Sが0.1〜200μmであることを特徴とする請求項12に記載の成形加工シート。
【請求項14】
前記凹凸形状の凸部断面の高さHが0.2〜400μmであることを特徴とする請求項12または13に記載の成形加工シート。
【請求項15】
前記凹凸形状の凸部断面の高さHと幅Sの比(H/S)が0.1〜20の範囲であることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の成形加工シート。
【請求項16】
請求項1〜10のいずれかに記載の微細加工用二軸延伸積層フィルムと、金型をプレス温度T1まで加熱して該金型を該フィルムの成形層側にプレスし、次いで該金型と該フィルムを冷却(冷却温度:T2)した後にプレスを開放し、該フィルムを離型温度まで冷却(離型温度:T3)して金型を離型することにより、金型形状を転写する成形方法であって、T1、T2およびT3が下記式(1)〜(4)を満たすことを特徴とする成形加工シートの成形方法。
(成形層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg)≦T1≦(成形層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg)+60℃ ・・・(1)
T2≦(成形層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg)+20℃ ・・・(2)
T2<T1 ・・・(3)
T3≦(成形層を構成する樹脂のガラス転移温度Tg) ・・・(4)
【請求項17】
凹部の幅S’が0.01〜200μm、凹部の高さH’が0.02〜400μm、かつ凹部の高さH’と凹部の幅S’の比(H’/S’)が0.1〜20の範囲の凹凸形状を有する金型を用いることを特徴とする請求項16に記載の成形加工シートの成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−29099(P2009−29099A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260647(P2007−260647)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】