説明

情報案内装置

【課題】アンテナ受信感度に応じた経路探索を行う情報案内装置を提供する。
【解決手段】放送塔から発信される放送電波を受信する放送受信部と該放送塔の受信可能エリアを取得する受信可能エリア取得部を有する情報案内装置であって、経路探索条件を入力するための経路探索条件入力部と、GPS信号から情報案内装置の現在位置を算出し、現在位置から経路探索条件に含まれる目的地に至る経路において利用する放送塔を特定する放送塔特定部と、受信可能エリアを記憶する受信可能エリア記憶部と、受信可能エリア記憶部から特定された各放送塔についての受信可能エリアを取り出し、放送受信部の現在の受信条件に基づいて、各受信可能エリア内の段階的に異なる領域の少なくとも1つの領域を選択し、選択した各領域と経路探索条件とから、放送電波を受信可能な経路を算出する経路算出部とを備えることを特徴とする情報案内装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報案内装置に関し、より詳しくは、アンテナの受信感度に応じた受信可能エリアを使用する情報案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の情報案内装置では、放送塔から発信される電波の受信状態に基づく受信可能エリアが電波の強度や遮蔽物の有無等に応じてあらかじめ定義されており、この受信可能エリアと、目的地までの距離、所望の目的地到着時刻、道路種別や料金、渋滞情報等の情報を用いて、デジタル放送等の各種放送を途切れることなく視聴しながら目的地に到着することができる経路候補を検索する。
【0003】
図1には、従来の情報案内装置10の構成を示すブロック図を示す。放送塔から発信される電波はTVアンテナ1によって受信される。TVアンテナ1としては、フィルムアンテナ、ガラスアンテナ、ロッドアンテナ、ダイポールアンテナ、八木・宇田アンテナ、パラボラアンテナ、ループアンテナ、誘電体アンテナ等の任意のアンテナが用いられている。デジタル放送では、画像や音声等のアナログ情報がデジタル信号に変換されて符号化により圧縮された後、圧縮された複数の情報が多重化によって組み合わされる。また、シンボル間の干渉の影響を抑えるための一定時間のガードインターバルが挿入され、さらに誤り訂正符号化により伝送中の誤りを訂正するための符号が付加され、デジタル変調されて放送塔から発信される。TVアンテナ1で受信された電波は、放送受信部2に送られ、物理チャンネルが選択されて増幅される。そして、デジタル変換およびOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)復調を経て画像信号に変換された後、アナログ信号が生成されて表示部5に表示される。制御部3は、放送受信部2、表示部5、経路探索部7のシステム制御を行う。
【0004】
また、情報案内装置10には、道路交通情報通信システム(VICS)の電波を受信するためのVICSアンテナ6が設けられている。VICSアンテナ6を介して受信したVICS信号は、経路探索部7に送られる。VICS信号には、渋滞情報や所要時間情報、事故、工事、災害、気象条件等による規制情報、駐車場の位置と満車・空車情報等、車両の周辺の道路交通情報が含まれている。さらに、情報案内装置10のGPSアンテナ8は、GPS衛星からの電波を受信する。GPS衛星から送信されるGPS信号をトラッキングしてGPSデータを取得することにより、GPS衛星と車両との擬似距離を計測し、同時に計測した複数のGPS衛星に関する疑似距離をもとに幾何学的に測位演算を実行してGPS衛星との幾何学的位置を求め、車両の現在位置を検出する。
【0005】
なお、情報案内装置における各放送塔からの電波の受信可能エリアに関するデータは、受信可能エリアデータベースとして、あらかじめ情報案内装置内に格納されている。図2に、受信可能エリアデータベースに保存されている受信可能エリアの情報を座標に表した図を示す。受信エリアの中心が放送塔の位置になる。図に示すように、座標上の各地点での受信状態は、放送塔の発振する電波の強度や、ビルなどの建造物や山、丘陵などによる電波の遮蔽または反射の影響によって変化するため、受信可能エリアは種々の形状になる。
【0006】
制御部3は、経路探索における出発地や目的地に関する情報、所望の視聴番組、目的地到着時刻等の情報のユーザからの入力を入力部9を介して受け入れる。そして、放送受信部2、経路探索部7、入力部9から得た情報、また受信可能エリアの情報に基づき、視聴を希望する番組の放送が途切れることなく目的地に到着できる最適な経路を算出し、該当する経路を表示部5に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−101408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記従来技術の受信可能エリアには、情報案内装置におけるアンテナ合成機能、アンテナ取付位置等、受信感度に影響する情報が考慮されていない。したがって、情報案内装置の性能やアンテナのダイバーシティ数によっては、上記のように算出された経路の中にデジタル放送等を視聴できない状態が発生してしまう経路が存在する可能性がある。また、視聴を希望する放送の電波を受信することが可能なダイバーシティ数が不明であるため、常にすべてのアンテナに通電を行わなければならない。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、現在視聴している番組や視聴を希望する番組を安定した受信感度で視聴しながら移動することができるように、受信条件ごとに異なる領域を有する受信可能エリアを提供して、より信頼性の高い情報案内装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態の情報案内装置によれば、放送塔から発信される放送電波を受信する放送受信部と該放送塔の受信可能エリアを取得する受信可能エリア取得部を有する情報案内装置であって、経路探索条件を入力するための経路探索条件入力部と、GPS信号から情報案内装置の現在位置を算出し、該現在位置から経路探索条件に含まれる目的地に至る経路において利用する放送塔を特定する放送塔特定部と、受信可能エリアを記憶する受信可能エリア記憶部と、受信可能エリア記憶部から放送塔特定部により特定された各放送塔についての受信可能エリアを取り出し、放送受信部の現在の受信条件に基づいて、取り出した各受信可能エリア内の段階的に異なる領域の少なくとも1つの領域を選択し、選択した各領域と経路探索条件とから、放送電波を受信可能な経路を算出する経路算出部とを備えることを特徴とする。したがって、現在使用している情報案内装置の放送受信部の受信状況を反映した、より適確な経路探索を行うことができる。
【0011】
本発明の別の実施形態の情報案内装置によれば、放送塔から発信される放送電波を受信する放送受信部と該放送塔の受信可能エリアを取得する受信可能エリア取得部を有する情報案内装置であって、経路探索条件を入力するための経路探索条件入力部と、GPS信号から情報案内装置の現在位置を算出し、該現在位置から経路探索条件に含まれる目的地に至る経路において利用する放送塔を特定する放送塔特定部と、受信可能エリアを記憶する受信可能エリア記憶部と、受信可能エリア記憶部から放送塔特定部により特定された各放送塔についての受信可能エリアを取り出し、取り出した各受信可能エリアに基づいて段階的に異なる領域が設定されている受信可能エリアを算出する受信可能エリア算出部と、放送受信部の現在の受信条件に基づいて、受信可能エリア算出部により算出された各受信可能エリア内の段階的に異なる領域の少なくとも1つの領域を選択し、選択した各領域と経路探索条件とから、放送電波を受信可能な経路を算出する経路算出部とを備えることを特徴とする。したがって、情報案内装置に格納する受信可能エリアのデータ量を削減することもできる。
【0012】
好ましくは、経路算出部は、さらにVICS信号に含まれる交通情報を用いて経路を算出する。また、受信条件には、放送受信部のアンテナ数、アンテナ利得、およびダイバーシティ数が含まれる。さらに好ましくは、経路算出部により算出した経路を表示するための表示部をさらに備える。
【0013】
本発明のさらに別の実施形態の情報案内装置によれば、放送塔から発信される放送電波を受信する放送受信部と該放送塔の受信可能エリアを取得する受信可能エリア取得部を有する情報案内装置であって、現在放送を受信している放送塔を特定する放送塔特定部と、受信可能エリアを記憶する受信可能エリア記憶部と、受信可能エリア記憶部から放送塔特定部により特定された放送塔についての受信可能エリアを取り出し、放送受信部の現在の受信条件に基づいて、取り出した受信可能エリア内の段階的に異なる領域ごとに、通電する放送受信部のアンテナの数を変更するアンテナ通電変更部とを備える。したがって、放送受信部の受信状況に応じて最適なアンテナへの通電の行うことで省電力化を達成しながら情報案内を行うことができる。
【0014】
本発明のさらに別の実施形態の情報案内装置によれば、放送塔から発信される放送電波を受信する放送受信部と該放送塔の受信可能エリアを取得する受信可能エリア取得部を有する情報案内装置であって、現在放送を受信している放送塔を特定する放送塔特定部と、受信可能エリアを記憶する受信可能エリア記憶部と、受信可能エリア記憶部から放送塔特定部により特定された放送塔についての受信可能エリアを取り出し、取り出した受信可能エリアに基づいて、段階的に異なる領域が設定されている受信可能エリアを算出する受信可能エリア算出部と、放送受信部の現在の受信条件に基づいて、受信可能エリア算出部により算出された受信可能エリア内の段階的に異なる領域ごとに、通電する放送受信部のアンテナの数を変更するアンテナ通電変更部とを備える。好ましくは、受信条件には、放送受信部のアンテナ数、アンテナ利得、およびダイバーシティ数が含まれる。
【0015】
本発明のさらに別の実施形態の情報案内装置によれば、放送塔から発信される放送電波を受信する放送受信部を有する情報案内装置であって、経路探索条件を入力するための経路探索条件入力部と、GPS信号から情報案内装置の現在位置を算出する現在位置算出部と、現在位置および経路探索条件を外部サーバに送信する情報送信部と、現在位置から経路探索条件に含まれる目的地に至る経路において利用する各放送塔についての受信可能エリア内の段階的に異なる領域の少なくとも1つの領域と該経路探索条件とから外部サーバによって算出された放送電波を受信可能な経路を、該外部サーバから受信する情報受信部と、受信した経路を表示する表示部とを備える。したがって、本発明の情報案内装置を移動体通信用端末に適用して、より正確な経路探索を行うこともできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の情報案内装置によれば、放送受信部の受信状況に応じて異なる領域が設定された受信可能エリアを用いることができる。したがって、情報案内装置の放送受信において、ダイバーシティ数が変化しても放送を継続して受信することが可能な経路を探索することができる。また、受信感度がより良好になる領域に移動した際に通電するアンテナ数を減らす等、受信可能エリア内の別の領域に移る際にアンテナへの通電を変更することで情報案内装置の省電力化を達成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来の情報案内装置の構成の概略を示すブロック図である。
【図2】従来の情報案内装置に使用される受信可能エリアを示す概略図である。
【図3】本発明の一実施形態における情報案内装置の放送受信部の構成の概略を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態における情報案内装置に使用される受信可能エリアを示す概略図である。
【図5】本発明の一実施形態における情報案内装置の構成の概略を示すブロック図である。
【図6】本発明の一実施形態における情報案内装置の経路探索部の構成の概略を示すブロック図である。
【図7】本発明の別の実施形態における情報案内装置の構成の概略を示すブロック図である。
【図8】本発明の別の実施形態における情報案内装置のアンテナ変更部の構成の概略を示すブロック図である。
【図9】本発明の別の実施形態においてアンテナの通電を変更する処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態における情報案内装置について説明する。図3は、情報案内装置における受信方式のブロック図を示す。図3に示す方式は最大比合成ダイバーシティ方式と呼ばれ、地上デジタル放送受信機に使用される。放送塔から発信された電波は、アンテナ21a〜21dにより受信され、それぞれのチューナ回路22a〜22dに送られる。チューナ回路22a〜22dは、いずれも図示しない入力同調回路、混合回路、局部発振回路、出力フィルタを有している。入力同調回路は、受信する各チャンネルに対応した信号の周波数に同調可能な単同調回路で構成され、その同調周波数は、周波数の低いチャンネルから高いチャンネルまでを選択できるように可変となっている。この入力同調回路によって選択された受信信号は、減衰することなく混合回路に入力される。混合回路に入力された受信信号は、局部発振回路からの局部発振信号と混合されることによって中間周波信号に周波数変換される。中間周波信号の周波数は、アナログ方式のテレビジョンの中間周波数と同じである。したがって、局部発振回路からの局部発振信号の周波数も一義的に決定されることになり、局部発振信号の周波数は受信信号の周波数に対して常に中間周波信号の周波数だけ高くなっている。混合回路からの中間周波信号は、出力フィルタを介して重み付け合成回路23に出力される。出力フィルタは、略6MHzの通過帯域を有するバンドパスフィルタで構成され、隣接するチャンネルの信号を除去する。
【0019】
重み付け合成回路23では、各アンテナで受信した電波の強度に応じて順位付けをして各チューナ回路からの信号を重み付けを行って合成し、OFDM復調回路24に送る。最大比合成ダイバーシティ方式では、直交周波数分割多重方式(OFDM)と呼ばれるマルチキャリア(多重搬送波)伝送が採用され、各キャリアがOFDMシンボルのシンボル区間内で相互に直交するように、各キャリアの周波数が設定されている。シリアルで送られてきた情報を情報伝送レートより遅いシンボル周期毎にパラレル変換して出力し、パラレル変換された複数のデータを各キャリアに割り当ててキャリアごとに変調を行う。そして、それら複数キャリアについて逆高速フーリエ変換(IFFT)を行うことで周波数軸での各キャリアの直交性を保持したまま時間軸の信号に変換して、MPEG−2復号化回路25に送信する。MPEG−2復号化回路25に送られた信号は誤り訂正処理が施されて復号されて放送データとして出力される。なお、車両に搭載されているアンテナ数、現在使用しているダイバーシティ数、アンテナの受信感度等の情報はOFDM復調回路24における復調後の信号から抽出することができる。抽出した情報は、経路探索部17に送られる。
【0020】
次に、情報案内装置の受信可能エリアについて説明する。本実施形態においては、放送塔の受信可能エリアは、アンテナ利得とダイバーシティ数に応じて受信強度が変化する。また、アンテナ利得とダイバーシティ数が同じでも、都市の市街地であるか郊外であるかによって受信強度は異なる。ここで、シミュレーションによる受信可能エリアのデータを表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
表1に示すように、伝送距離特性は都市部におけるマルチパス特性をモデル化している。サービスエリアは放送塔からの距離を示す。なお、車両の移動速度は約40km/hを想定している。また、各数値は、アンテナ設置高、電波環境、地理環境、車種等の受信条件によって変わる。表1では、3系統ダイバーシティにおけるシミュレーションデータは記載されていないが、1,2,4系統のダイバーシティのデータからフィッティング関数を求めることで、3系統ダイバーシティのデータを推定することができる。
【0023】
表1のデータに基づいて、電波の遮蔽または反射の影響を加味して作成した受信可能エリアの概略図を図4に示す。図2と同様、受信可能エリアの中心が放送塔の位置になる。図4に示す受信可能エリアは、アンテナ利得が−5dBiのアンテナを搭載して市街地を走行した場合のエリアである。境界線31の内側の領域が4系統ダイバーシティにおける受信可能エリアになる。同様に、境界線32,33,34の内側の領域が、それぞれ3系統、2系統、1系統のダイバーシティにおける受信可能エリアになる。表1に示す4系統のダイバーシティのデータから、41km以内の範囲が受信可能エリアと推定される。本実施形態では、アンテナの受信感度が変化する要因として、電波環境、地理環境、車種、ダイバーシティ数、アンテナ数、アンテナの種類(すなわちアンテナ利得)、アンテナ取付位置、放送電波の種類(ワンセグ/フルセグ)を考慮して、受信可能エリアを作成することとする。そして、これらの要因の影響を表1のデータに加味して計算することにより、境界線31が得られる。同様にして、1,2系統のダイバーシティにおける受信可能エリアの境界線33,34も得られる。3系統のダイバーシティにおける受信可能エリアの境界線32は、表1において、1系統異なるとサービスエリアが概ね10km異なることから推定して求める。図に示すように、このようにして得られた受信可能エリアは境界を表す座標群によって規定される。
【0024】
本実施形態では、図4に示す受信可能エリアを種々の受信条件を考慮して多数作成して記憶しておくデータベースを構築し、情報案内装置内の受信可能エリア記憶部に格納する。ここでは、ダイバーシティ数、アンテナ数、アンテナの種類、アンテナ取付位置、放送電波の種類を受信条件とし、これらの受信条件に応じた各放送塔の受信可能エリアを算出し、各受信可能エリアを1ファイルとしてデータベースに格納する。なお、本発明における課題を解決する上では、上記要因に限らず、例えば、車両の車高や移動速度等の要因をさらに考慮してもよいし、要因の組み合わせも任意に決定することができる。各受信可能エリアのファイル名は、エリア算出に用いた各受信条件を2ビットで表し、各条件をドットで区切ることにより設定する。ここで、ダイバーシティ数については、ワンセグ用ユニットを00、ダイバーシティなしを01、2系統のダイバーシティを10、4系統のダイバーシティを11、アンテナ数については、1,2,3,4本をそれぞれ00,01,10,11、アンテナの種類については、フィルムアンテナを00,ロッドアンテナを01、ガラスアンテナを10、その他のアンテナを11、アンテナの取付位置については、フロントを00、リアを01、フロントおよびリアを10、その他を11、放送電波の種類については、フルセグを00、ワンセグを01、その他を10および11に割り当てるとする。例えば、フィルムアンテナをフロントおよびリアに合計4本搭載し、ワンセグ放送受信を2系統のダイバーシティで行いながら走行している場合、使用する受信可能エリアのファイル名は”10.11.00.10.01”になる。なお、各受信条件をさらに細分化して3ビット以上のビット数で区切ったファイル名を用いてもよい。
【0025】
したがって、情報案内装置では、受信可能エリア記憶部に格納された受信可能エリアデータベースから、目的地到着までに利用する各放送塔について上記ファイル名に該当するファイルを取り出し、ファイルに保存されている受信可能エリアを用いて、諸条件に応じた経路探索を実行することができる。このため、アンテナを4本装備していながらダイバーシティ数が2である場合、従来では、アンテナが4本あるためにダイバーシティ数を4とした場合の受信可能エリアを用いて経路探索を行っていたため、最適と推定された経路を走行しても2系統のダイバーシティでは放送を受信できない状況が発生する可能性があったが、本発明では、車両の受信感度をより適確に反映した受信可能エリアを用いて経路探索を行うことができ、経路走行中に放送を受信できない状況を回避することができる。
【0026】
図5は、本実施形態における情報案内装置100の構成の概略を示すブロック図である。経路探索部17以外の構成要素は従来と同じであるため、説明を省略する。経路探索部17内の各構成要素の概略を図6に示す。GPS信号取得部41はGPSアンテナ8からGPS信号を、VICS信号取得部46はVICSアンテナ6からVICS信号を、入力条件取得部47は入力部9から経路探索条件を、車両信号取得部48は車両情報記憶部(図示せず)から車両信号をそれぞれ取得する。経路算出部45は、GPS信号取得部41からGPS信号を受信し、情報案内装置100の現在位置を算出する。また、経路算出部45は、入力条件取得部47から経路探索条件を受信し、現在地から目的地までの経路において利用する放送塔を特定する。受信可能エリア取得部42は、外部サーバから送信される各放送塔の受信可能エリアを取得する。取得した受信可能エリアは、受信可能エリア記憶部43に記憶される。経路算出部45は、特定した放送塔に基づいて、受信可能エリア記憶部43から該当する放送塔の受信可能エリアを取り出す。さらに経路算出部45は、放送受信部2の現在の受信条件、VICS信号取得部46から受信したVICS信号に含まれる交通情報、車両信号取得部48から受信した車両信号に含まれる車種や車高等の情報に基づいて、取り出した受信可能エリア内に設定されている図4に示すような受信領域のうち1つの領域を選択し、選択した受信領域と経路探索条件とから、所望の番組放送を受信しながら目的地に到着できる経路を算出する。算出された経路は、経路探索結果として表示部5に表示される。
【0027】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、受信可能エリア内の複数の受信領域を、基準となる1つの受信領域から算出する。この場合、アンテナの性能を適確に受信領域に反映させる要因として、アンテナ数、ダイバーシティ数、アンテナ利得を採用する。そして、各放送塔について、これらの要因に基づいて1つの受信領域が設定された受信可能エリアを基準の受信可能エリアとしてファイルを作成し、受信可能エリア記憶部43に記憶しておく。また、各要因の変化に応じて受信領域を算出するための所定のフィッティング関数をあらかじめ求めておく。この関数は受信可能エリア算出部44が保持している。受信可能エリア算出部44は、目的地までの経路において利用する各放送塔についての基準の受信可能エリアが記憶されたファイルのデータにフィッティング関数を適用して、現在の受信状況に適合する受信領域を算出する。そして、経路算出部45は、算出した受信領域を用いて第1の実施形態と同様の経路探索を行うことができる。なお、フィッティング関数は、各要件に固有の関数としてもよいし、各関数を合成したものを用いてもよい。また、受信領域を規定する要因は、上記の要因に限らず、第1の実施形態と同様に種々の要因や組み合わせを採用してもよい。
【0028】
例えば、各放送塔について、4系統のダイバーシティで受信する場合の受信可能エリアを基準の受信可能エリアとする。すなわち、市街地用と郊外地用の各アンテナ利得(−15,−10,−5,0,5dBi)に対する4系統のダイバーシティに対応する計10個の受信可能エリアを1つの放送塔の基準の受信可能エリアとする。ここで、アンテナ利得が−5dBiであるフィルムアンテナを3本搭載し、2系統のダイバーシティで受信しながら市街地を走行しているとする。ここでは、受信条件を変えずに特定の目的地までの経路探索を行う場合を考える。情報案内装置は、まず現在放送を受信している放送塔における、アンテナ利得が−5dBiで市街地用の基準の受信可能エリアのファイルを取得する。この基準の受信可能エリアは、図4の境界線31で規定される受信可能エリアに相当する。次に、上述のようにあらかじめ求められているフィッティング関数を用いて、3系統のダイバーシティにおける受信可能エリアを算出する。この受信可能エリアは、図4の境界線32で規定される受信可能エリアに相当する。そして、算出された受信可能エリア内において最適経路を探索する。なお、経路探索において経路の途中で利用する放送塔が切り替わる場合は、放送塔ごとに基準の受信可能エリアのファイルを取り出し、各ファイルを用いて経路探索を行うことで、長距離の経路探索も行うことができる。
【0029】
第2の実施形態においては、基準となる受信可能エリアのファイルのみ用意しておけば、他の受信条件に対する受信領域が設定された受信可能エリアはフィッティング関数を適用するだけで算出できるため、第1の実施形態に比べてデータベースのサイズを小さくすることができる。
【0030】
第1および第2の実施形態においては、フロントとリアの両方にアンテナを設置した場合のアンテナの各組み合わせ(例えば、アンテナを4本搭載する場合は、フロントに1本リアに3本、フロントとリアに2本ずつ、あるいはフロントに3本リアに1本)に応じて、フロント側とリア側のそれぞれのアンテナ受信条件に対応する受信可能エリアのファイルを用いて、フロント側とリア側のいずれか一方のアンテナのみで受信する場合の経路探索を行うことができる。したがって、本発明の情報案内装置では、フロント側のアンテナとリア側のアンテナで別々のチャンネルの放送を受信する場合でも適切な経路探索を行うことができる。
【0031】
次に、本発明における第3の実施形態について説明する。図7に、本実施形態における情報案内装置200の構成の概略を示すブロック図を示す。アンテナ変更部18以外の構成要素は第1および第2の実施形態と同じであるため、説明を省略する。図8には、アンテナ変更部18内の各構成要素の概略を示す。アンテナ通電変更部55以外の構成要素は第1および第2の実施形態における構成要素と概要が同じであるため説明を省略する。アンテナ通電変更部55は、現在放送を受信している放送塔を特定し、受信可能エリア記憶部43から該当する放送塔についての受信可能エリアを取り出し、受信可能エリア内に設定された受信領域に応じて、通電するTVアンテナ1の本数を変更する。なお、第2の実施形態と同様に、受信可能エリア算出部44において基準となる受信可能エリアから各受信領域を算出することもできる。
【0032】
したがって、本実施形態では、ダイバーシティ数ごとの受信可能エリアを把握することができるため、現在地点における受信中の放送に対して必要最低限のダイバーシティ数がわかる。したがって、受信に不要なアンテナへの通電を遮断したり、受信可能エリアの境界通過時に通電するアンテナ数を増減させたりすることで、情報案内装置全体において安定した放送受信を行いながら省電力化を実現することができるという効果も得られる。
【0033】
図9に、アンテナ数を変更する際のフローチャートを示す。まず、現在地点におけるダイバシティ数ごとの受信可能エリアのデータを取得したかどうかを判定する(S101)。必要な受信可能エリアのデータを取得したら、現在視聴している放送を受信できる最小のダイバーシティ数dを決定する(S102)。次に、放送受信部の現在のダイバーシティ数Dをdと比較し、D=dであるかどうかを判定する(S103)。D=dであれば、ダイバーシティ数を変更する必要はないので、処理を終了する。D=dでない場合は、まずD>dであるかどうかを判定する(S104)。D>dであれば、ダイバーシティ数を減らしても放送を受信できるため、いずれか1つのアンテナへの通電を遮断して現在のダイバーシティ数を1つ減らして受信する(S105)。そして、S104とS105を繰り返すことにより、現在のダイバーシティ数を必要最小限のダイバーシティ数まで減らすことができる。一方、視聴を希望する放送を受信するのにダイバーシティ数が不足している場合は、S104からS106に進み、D<dの判定の後、S107で現在のダイバーシティ数を1つ増やす。S106とS107を繰り返すことにより、現在のダイバーシティ数を受信に必要なダイバーシティ数まで増やすことができる。以上の処理により、アンテナの通電を変更して現在のダイバーシティ数と必要最小限のダイバーシティ数とが同数になったら、処理を終了する。
【0034】
以上の説明では、本発明の情報案内装置を車載アンテナに適用する場合を想定しているが、携帯電話等の移動体通信用端末にも適用することができる。さらに、携帯電話等の端末を利用した経路案内サービスにおいては、経路案内の機能に必要となる地図データは端末内の記憶装置には保存されていない。そこで、受信可能エリアデータベースを外部サーバに格納する。移動体通信用端末側の経路案内アプリケーションから、出発地、目的地、出発日時、到着日時等の経路探索条件や、アンテナの受信状況に関する情報を外部サーバに送る。外部サーバは、移動体通信用端末から受信した情報や現在の交通情報を基に、現在地から目的地に至るまでに利用する放送塔に関する受信可能エリアを取得し、取得した受信可能エリアに基づいて経路探索を行い、探索結果を経路案内アプリケーションに送信する。これにより、移動体通信用端末においても、現在の放送受信状況を反映したより適確な受信可能エリアを利用した経路探索を実現することができる。
【0035】
以上が、本発明の実施形態に関する説明である。上記の説明では、フィッティング関数を用いて受信可能エリアを算出しているが、種々の条件に応じた多数の実測値をあらかじめ収集しておき、現在の使用条件に最も近い条件の実測値を採用して受信可能エリアを算出する等、関数を用いないで受信可能エリアを生成する構成を用いてもよい。また、基準の受信可能エリアを4系統のダイバーシティを基に作成しているが、他の系統のダイバーシティを基にして当該系統以外のダイバーシティに対応する受信可能エリアを減算または加算を行って作成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 TVアンテナ
2 放送受信部
3 制御部
5 表示部
6 VICSアンテナ
8 GPSアンテナ
7,17 経路探索部
9 入力部
18 アンテナ変更部
41 GPS信号取得部
42 受信可能エリア取得部
43 受信可能エリア記憶部
44 受信可能エリア算出部
45 経路算出部
46 VICS信号取得部
47 入力条件取得部
48 車両信号取得部
55 アンテナ通電変更部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送塔から発信される放送電波を受信する放送受信部と該放送塔の受信可能エリアを取得する受信可能エリア取得部を有する情報案内装置であって、
経路探索条件を入力するための経路探索条件入力部と、
GPS信号から前記情報案内装置の現在位置を算出し、該現在位置から前記経路探索条件に含まれる目的地に至る経路において利用する放送塔を特定する放送塔特定部と、
前記受信可能エリアを記憶する受信可能エリア記憶部と、
前記受信可能エリア記憶部から前記放送塔特定部により特定された各放送塔についての受信可能エリアを取り出し、前記放送受信部の現在の受信条件に基づいて、取り出した各受信可能エリア内の段階的に異なる領域の少なくとも1つの領域を選択し、選択した各領域と前記経路探索条件とから、前記放送電波を受信可能な経路を算出する経路算出部と、
を備えることを特徴とする情報案内装置。
【請求項2】
放送塔から発信される放送電波を受信する放送受信部と該放送塔の受信可能エリアを取得する受信可能エリア取得部を有する情報案内装置であって、
経路探索条件を入力するための経路探索条件入力部と、
GPS信号から前記情報案内装置の現在位置を算出し、該現在位置から前記経路探索条件に含まれる目的地に至る経路において利用する放送塔を特定する放送塔特定部と、
前記受信可能エリアを記憶する受信可能エリア記憶部と、
前記受信可能エリア記憶部から前記放送塔特定部により特定された各放送塔についての受信可能エリアを取り出し、取り出した各受信可能エリアに基づいて段階的に異なる領域が設定されている受信可能エリアを算出する受信可能エリア算出部と、
前記放送受信部の現在の受信条件に基づいて、前記受信可能エリア算出部により算出された各受信可能エリア内の段階的に異なる領域の少なくとも1つの領域を選択し、選択した各領域と前記経路探索条件とから、前記放送電波を受信可能な経路を算出する経路算出部と、
を備えることを特徴とする情報案内装置。
【請求項3】
前記経路算出部は、さらにVICS信号に含まれる交通情報を用いて前記経路を算出する、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の情報案内装置。
【請求項4】
前記受信条件には、前記放送受信部のアンテナ数、アンテナ利得、およびダイバーシティ数が含まれる、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の情報案内装置。
【請求項5】
前記経路算出部により算出した経路を表示するための表示部をさらに備える、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の情報案内装置。
【請求項6】
放送塔から発信される放送電波を受信する放送受信部と該放送塔の受信可能エリアを取得する受信可能エリア取得部を有する情報案内装置であって、
現在放送を受信している放送塔を特定する放送塔特定部と、
前記受信可能エリアを記憶する受信可能エリア記憶部と、
前記受信可能エリア記憶部から前記放送塔特定部により特定された放送塔についての受信可能エリアを取り出し、前記放送受信部の現在の受信条件に基づいて、取り出した受信可能エリア内の段階的に異なる領域ごとに、通電する前記放送受信部のアンテナの数を変更するアンテナ通電変更部と、
を備えることを特徴とする情報案内装置。
【請求項7】
放送塔から発信される放送電波を受信する放送受信部と該放送塔の受信可能エリアを取得する受信可能エリア取得部を有する情報案内装置であって、
現在放送を受信している放送塔を特定する放送塔特定部と、
前記受信可能エリアを記憶する受信可能エリア記憶部と、
前記受信可能エリア記憶部から前記放送塔特定部により特定された放送塔についての受信可能エリアを取り出し、取り出した受信可能エリアに基づいて、段階的に異なる領域が設定されている受信可能エリアを算出する受信可能エリア算出部と、
前記放送受信部の現在の受信条件に基づいて、前記受信可能エリア算出部により算出された受信可能エリア内の段階的に異なる領域ごとに、通電する前記放送受信部のアンテナの数を変更するアンテナ通電変更部と、
を備えることを特徴とする情報案内装置。
【請求項8】
前記受信条件には、前記放送受信部のアンテナ数、アンテナ利得、およびダイバーシティ数が含まれる、ことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の情報案内装置。
【請求項9】
放送塔から発信される放送電波を受信する放送受信部を有する情報案内装置であって、
経路探索条件を入力するための経路探索条件入力部と、
GPS信号から前記情報案内装置の現在位置を算出する現在位置算出部と、
前記現在位置および前記経路探索条件を外部サーバに送信する情報送信部と、
前記現在位置から前記経路探索条件に含まれる目的地に至る経路において利用する各放送塔についての受信可能エリア内の段階的に異なる領域の少なくとも1つの領域と該経路探索条件とから前記外部サーバによって算出された前記放送電波を受信可能な経路を、該外部サーバから受信する情報受信部と、
受信した前記経路を表示する表示部と、
を備えることを特徴とする情報案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−33386(P2011−33386A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177666(P2009−177666)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】