説明

情報検出装置

【課題】組成状態情報を多数の組成状態情報から検出するのにかかる時間を従来のものより短縮することができる情報検出装置を提供する。
【解決手段】紙の紙紋をそれぞれ表す複数の組成状態情報より目的の組成状態情報を検出する情報検出装置1において、複数の組成状態情報の線形和を算出する線形和算出部6と、目的の組成状態情報と線形和との相関値を算出する相関値算出部8と、相関値に基づいて複数の組成状態情報のなかに目的の組成状態情報が含まれているか否かを判断する検出判断部9と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報検出装置に関し、特に、物体の表面の組成状態をそれぞれ表す複数の組成状態情報より目的の組成状態情報を検出する情報検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙は、木材パルプを原料とした細かい繊維が絡み合って作られている。この繊維の組成状態はランダムであるため、全く同じ繊維の組成状態をもつ紙が存在する可能性は非常に低い。この紙がもつ繊維の組成状態は、人間の「指紋」のように全ての紙1枚1枚を識別するために用いることができる。このような紙がもつ繊維の組成状態を以下「紙紋」という。
【0003】
紙紋を読み取る技術としては、スポット状のレーザ光を紙の表面に照射すると共に紙を40mm掃引して、散乱する光を4つの近接するフォトダイオードで検出しながら紙紋を読み取ることによって、この紙が真の紙か否かを判定する真偽判定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この従来の真偽判定装置は、4つのフォトダイオードで検出して得られた光の強弱を表す波形データを取り込むものであり、波形データで表現される波形は、その紙特有の散乱光の波形となる。
【0005】
従来の真偽判定装置で取り込まれた同一の紙の波形データで表現される波形は、類似するので、それぞれの波形データ同士で相関をとると鋭いピーク(他の値と突出した値)が検出される。一方、従来の真偽判定装置で取り込まれた異なる紙の波形データで表現される波形は、類似しないため、それぞれの波形データで相関をとってもピークは検出されない。
【0006】
また、このようにして得られる紙の紙紋をその紙に対する機器の操作と関連付けて追跡サーバに記憶しておき、紙が使用される際に、その紙の紙紋と追跡サーバに記憶した紙紋と照合することにより紙を一意に識別することによって、紙とその紙に与えられた操作を追跡することもできる。
【特許文献1】国際公開第2005/088533号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の技術は、ある紙の紙紋のような組成状態を表す組成状態情報を多数の組成状態情報から検出する場合には、各組成状態情報間の相関を用いた照合を行うため、この照合に要する計算量が非常に多くなり、検出時間がかかるといった課題があった。
【0008】
本発明は、従来の課題を解決するためになされたもので、組成状態情報を多数の組成状態情報から検出するのにかかる時間を従来のものより短縮することができる情報検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の情報検出装置は、物体の表面の組成状態をそれぞれ表す複数の組成状態情報より目的の組成状態情報を検出する情報検出装置において、前記複数の組成状態情報の線形和を算出する線形和算出部と、前記目的の組成状態情報と前記線形和との相関値を算出する相関値算出部と、前記相関値に基づいて前記複数の組成状態情報のなかに前記目的の組成状態情報が含まれているか否かを判断する検出判断部と、を備えた構成を有している。
【0010】
この構成により、本発明の情報検出装置は、目的の組成状態情報と複数の組成状態情報の線形和との1組の相関をとることによって、目的の組成状態情報を複数の組成状態情報から検出するため、組成状態情報を多数の組成状態情報から検出するのにかかる時間を従来のものより短縮することができる。
【0011】
なお、前記線形和算出部が、前記検出判断部によって前記目的の組成状態情報が含まれていると判断された複数の組成状態情報を第1群および第2群に分割した各群に含まれる組成状態情報の各線形和を算出し、前記相関値算出部が、前記目的の組成状態情報と、前記線形和算出部によって算出された前記第1群に含まれる組成状態情報の線形和との相関値、および、前記目的の組成状態情報と、前記線形和算出部によって算出された前記第2群に含まれる組成状態情報の線形和との相関値を算出し、前記検出判断部が、前記各相関値に基づいて前記各群に含まれる組成状態情報のなかに前記目的の組成状態情報が含まれているか否かを判断し、前記検出判断部が、前記複数の組成状態情報のなかから前記目的の組成状態情報を特定するまで、前記相関値算出部が、前記目的の組成状態情報と、前記検出判断部によって前記目的の組成状態情報が含まれていると判断された群に含まれる組成状態情報を第1群および第2群にさらに分割した各群に含まれる組成状態情報の各線形和との各相関値を算出して行くようにしてもよい。
【0012】
この構成により、本発明の情報検出装置は、検出対象の組成状態情報の数をNとした場合に、目的の組成状態情報と複数の組成状態情報の各線形和との約2logN組の相関をとることによって、目的の組成状態情報を複数の組成状態情報から特定するため、組成状態情報を多数の組成状態情報から特定するのにかかる時間を従来のものより短縮することができる。
【0013】
また、本発明の情報検出装置は、前記線形和算出部によって予め算出された線形和を記憶する線形和記憶部を備え、前記相関値算出部が、前記目的の組成状態情報と前記線形和記憶部に記憶された線形和との相関値を算出するようにしてもよい。
【0014】
この構成により、本発明の情報検出装置は、複数の組成状態情報の線形和を予め算出しておくため、組成状態情報を多数の組成状態情報から検出するのにかかる時間をさらに短縮することができる。
【0015】
また、前記物体が紙であり、前記組成状態情報が、前記紙を組成する繊維の絡み具合に応じて異なる情報であってもよい。
【0016】
これにより、本発明の情報検出装置は、検出目的の紙を組成する繊維の絡み具合を表す組成状態情報と複数の組成状態情報の線形和との1組の相関をとることによって、目的の組成状態情報を複数の組成状態情報から検出するため、組成状態情報を多数の組成状態情報から検出するのにかかる時間を従来のものより短縮することができる。
【0017】
また、本発明の情報検出装置は、前記物体に対して相対的に移動しながら該物体の表面にレーザ光を照射するレーザ光照射部と、前記レーザ光照射部と共に該物体に対して相対的に移動しながら該物体の表面で前記レーザ光が散乱された散乱光を受光する受光部とを備え、前記組成状態情報が、前記受光部によって受光された散乱光の強度を表すようにしてもよい。
【0018】
この構成により、本発明の情報検出装置は、物体の表面の組成状態を表す組成状態情報を読み込むことができる。
【0019】
また、本発明の情報検出装置は、前記物体が紙であり、前記レーザ光照射部が、前記紙を組成する繊維の絡み具合に応じて前記組成状態情報が変化する程度の波長のレーザ光を照射するようにしてもよい。
【0020】
この構成により、本発明の情報検出装置は、紙を組成する繊維の絡み具合に応じた組成状態情報を読み込むことができる。
【0021】
また、前記レーザ光照射部が、レーザダイオードによって構成され、前記受光部が、フォトダイオードによって構成されていてもよい。
【0022】
また、従来の課題を解決するために、本発明は、前述した情報検出装置に加えて、当該情報検出装置の機能を実現する情報検出方法、コンピュータを当該情報検出装置として機能させるための情報検出プログラムおよびこの情報検出プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、組成状態情報を多数の組成状態情報から検出するのにかかる時間を従来のものより短縮することができる情報検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、本発明に係る情報検出装置には、紙やプラスチック等の様々な物体を適用することができるが、以下に説明する本発明の実施の形態においては、本発明に係る情報検出装置に適用する物体を紙とした例について説明する。
【0025】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態の情報検出装置を図1に示す。
【0026】
図1に示すように、情報検出装置1は、キーボードやポインティングデバイス等よりなる入力部2と、紙を組成する繊維の絡み具合による紙紋を表す組成状態情報を読み込む組成状態情報読込部3と、組成状態情報読込部3によって読み込まれた組成状態情報の出力先を制御する出力先制御部4と、組成状態情報を格納する組成状態情報格納部5と、組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報の線形和を算出する線形和算出部6と、線形和算出部6によって算出された線形和を記憶する線形和記憶部7と、検出目的の組成状態情報と線形和記憶部7に記憶された線形和との相関値を算出する相関値算出部8と、相関値算出部8によって算出された相関値に基づいて組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報のなかに検出目的の組成状態情報が含まれているか否かを判断する検出判断部9と、検出判断部9による判断結果を表示する液晶ディスプレイ等よりなる表示部10とを備えている。
【0027】
ここで、組成状態情報格納部5および線形和記憶部7は、ハードディスク等の不揮発性の記憶媒体によって構成されている。また、出力先制御部4、線形和算出部6、相関値算出部8および検出判断部9は、後述する情報検出装置1の各動作が記述されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサによって構成されている。
【0028】
図2(a)に示すように、組成状態情報読込部3は、図示しない掃引機構によって40mmに渡って掃引されている紙11の表面にレーザ光を照射するレーザダイオード(以下、単に「LD」と記載する。)12と、LD12によって照射されたレーザ光の紙11の表面における照射形状を変化させるシリンドリカルレンズ13a、13bと、紙11の表面でレーザ光が散乱された散乱光を受光するフォトダイオード(以下、単に「PD」と記載する。)14a乃至14dとを有している。
【0029】
LD12は、紙11の紙紋に応じて組成状態情報が変化する程度の波長、例えば、635nmのレーザ光を照射するようになっている。シリンドリカルレンズ13a、13bは、紙11の表面におけるレーザ光の照射形状を図2(b)に示すように、例えば、長さ7mmの線状に変化させるようになっている。
【0030】
各PD14a乃至14dは、紙11の表面におけるレーザ光の照射面の中心を受光軸が通るよう、互いに異なる位置でLD12に対して固定に設けられている。
【0031】
なお、組成状態情報読込部3には、紙11を掃引する掃引機構を設けるのに変えて、LD12および各PD14a乃至14dを一体に紙11に対して移動させるようにしてもよい。
【0032】
図3に示すように、PD14aには、PD14aによって光電変換された電気信号を増幅するPDアンプ20と、PDアンプ20によって増幅された電気信号の低周波成分を抑制するハイパスフィルタ(以下、単に「HPF」と記載する。)21と、低周波成分が抑制された電気信号を増幅するアンプ22と、アンプ22によって増幅された電気信号をデジタル信号に変換するアナログデジタルコンバータ(以下、単に「A/D」と記載する。)23とが設けられている。
【0033】
また、各PD14b乃至14dにも、PDアンプ20、HPF21、アンプ22およびA/D23がそれぞれ同様に設けられているが、図示を省略する。なお、本実施の形態においては、HPF21として遮断周波数が20Hzのものを用い、アンプ22として利得が20のものを用いた。このように、A/D23によって変換されたデジタル信号は、紙11の組成状態情報を表し、出力先制御部4に出力される。
【0034】
なお、本発明を理解しやすくするために、以下では、PD14aからのチャンネルを用い、他のPD14b乃至14dからのチャンネルを未使用とした場合について説明する。
【0035】
図1において、出力先制御部4は、登録状態と検出状態との何れかの状態をとり、これらの状態は、入力部2を介した入力に応じて切り替わる。
【0036】
登録状態において、出力先制御部4は、組成状態情報読込部3によって読み込まれた組成状態情報を組成状態情報格納部5に格納するようになっている。一方、検出状態において、出力先制御部4は、組成状態情報読込部3によって読み込まれた組成状態情報を相関値算出部8に出力するようになっている。
【0037】
線形和算出部6は、組成状態情報格納部5に組成状態情報が追加される等して組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報が更新されたときに、更新後の組成状態情報の線形和を算出し、算出した線形和を線形和記憶部7に記憶するようになっている。
【0038】
相関値算出部8は、線形和記憶部7に記憶された線形和に対して、出力先制御部4から出力された組成状態情報をシフトさせながら線形和との相関値を算出して行き、算出した相関値よりなる相関関数を導きだすようになっている。
【0039】
ここで、組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報のなかに組成状態情報読込部3によって読み込まれた組成状態情報が含まれている場合に、相関値算出部8によって導き出される相関関数を図4に示す。
【0040】
図4(a)は、組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報の数が1の場合、図4(b)は、組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報の数が5の場合、図4(c)は、組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報の数が10の場合の相関関数をそれぞれ表している。
【0041】
このように、組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報のなかに組成状態情報読込部3によって読み込まれた組成状態情報が含まれている場合には、組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報の数が多くなったとしても、相関関数にピークが見られる。
【0042】
図1において、検出判断部9は、相関値算出部8によって導き出された相関関数に基づいて、組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報のなかに組成状態情報読込部3によって読み込まれた組成状態情報が含まれているか否かを判断するようになっている。
【0043】
例えば、検出判断部9は、相関関数がとる最大値を特定し、この最大値と他の相関値との振幅比を算出し、算出した振幅比が予め定められた閾値以上である場合、すなわち相関関数にピークがあると判断される場合には、組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報のなかに組成状態情報読込部3によって読み込まれた組成状態情報が含まれていると判断し、相関関数にピークがないと判断される場合には、組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報のなかに組成状態情報読込部3によって読み込まれた組成状態情報が含まれていないと判断するようになっている。
【0044】
また、検出判断部9は、組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報のなかに組成状態情報読込部3によって読み込まれた組成状態情報が含まれているか否かの判断の結果を表示部10に表示させるようになっている。
【0045】
以上のように構成された情報検出装置1について図5および図6を用いてその動作を説明する。図5は、出力先制御部4が登録状態にある場合の、情報検出装置1の登録動作を示している。
【0046】
まず、組成状態情報読込部3によって紙の紙紋を表す組成状態情報が読み込まれると(S1)、この組成状態情報が組成状態情報格納部5に格納される(S2)。次に、組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報の線形和が線形和算出部6によって算出され(S3)、算出された線形和が線形和記憶部7に記憶される(S4)。
【0047】
図6は、出力先制御部4が検出状態にある場合の、情報検出装置1の検出動作を示している。
【0048】
まず、組成状態情報読込部3によって紙の紙紋を表す組成状態情報が読み込まれると(S11)、この組成状態情報と線形和記憶部7に記憶された線形和との相関値が相関値算出部8によって算出され、相関関数が導き出される(S12)。
【0049】
次に、相関値算出部8によって導き出された相関関数にピークがあるか否かが検出判断部9によって判断される(S13)。相関関数にピークがあると判断された場合には、組成状態情報読込部3によって読み込まれた組成状態情報が組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報のなかに含まれている、すなわち、組成状態情報読込部3によって組成状態情報が読み込まれた紙が登録済みである旨のメッセージが検出判断部9によって表示部10に表示される(S14)。
【0050】
一方、相関関数にピークがないと判断された場合には、組成状態情報読込部3によって組成状態情報が読み込まれた紙が未登録である旨のメッセージが検出判断部9によって表示部10に表示される(S15)。
【0051】
このように、本発明の第1の実施の形態の情報検出装置1は、組成状態情報読込部3によって読み込まれた組成状態情報と線形和記憶部7に記憶された線形和との1組の相関をとることによって、組成状態情報読込部3によって読み込まれた組成状態情報を組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報のなかから検出するため、組成状態情報を多数の組成状態情報から検出するのにかかる時間を従来のものより短縮することができる。
【0052】
なお、情報検出装置1は、図7に示すように、入力部2、組成状態情報読込部3、表示部10およびネットワークインタフェイス30を有する少なくとも1つの端末装置31とネットワーク32を介して通信するためのネットワークインタフェイス33を入力部2、組成状態情報読込部3および表示部10に代えて備え、端末装置31から組成状態情報を受けて、この組成状態情報の登録または検出を行うようにしてもよい。
【0053】
また、本実施の形態においては、PD14aからのチャンネルを用い、他のPD14b乃至14dからのチャンネルを未使用とした場合について説明したが、線形和算出部6による線形和の算出、相関値算出部8により相関値の算出、検出判断部9による判断をチャンネル毎に行うようにしてもよい。
【0054】
この場合には、例えば、検出判断部9は、2以上のチャンネルで、組成状態情報読込部3によって読み込まれた組成状態情報が組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報のなかに含まれていると判断した場合には、組成状態情報読込部3によって組成状態情報が読み込まれた紙が登録済みである旨のメッセージを表示部10に表示させ、1以下のチャンネルで、組成状態情報読込部3によって読み込まれた組成状態情報が組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報のなかに含まれていると判断した場合には、組成状態情報読込部3によって組成状態情報が読み込まれた紙が未登録である旨のメッセージを表示部10に表示させるようにしてもよい。
【0055】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態の情報検出装置を図8に示す。なお、本発明の第2の実施の形態の情報検出装置51の各構成において、本発明の第1の実施の形態の情報検出装置1の各構成と同一なものには、同一な符号を付して説明を省略する。
【0056】
図8に示すように、情報検出装置51は、入力部2と、組成状態情報読込部3と、出力先制御部4と、組成状態情報格納部5と、組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報の線形和を算出する線形和算出部56と、線形和算出部56によって算出された線形和を記憶する線形和記憶部57と、検出目的の組成状態情報と線形和記憶部57に記憶された線形和との相関値を算出する相関値算出部58と、相関値算出部58によって算出された相関値に基づいて組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報のなかに検出目的の組成状態情報が含まれているか否かを判断する検出判断部59と、表示部10とを備えている。
【0057】
ここで、線形和記憶部57は、組成状態情報格納部5と共に不揮発性の記憶媒体によって構成され、線形和算出部56、相関値算出部58および検出判断部59は、出力先制御部4と共にプロセッサによって構成される。
【0058】
線形和算出部56は、組成状態情報格納部5に組成状態情報が追加される等して組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報が更新されたときに、図9に示すように、組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報をそれぞれ外部ノードとした全二分木のデータ構造を有するデータ(以下、単に「二分木データ」という。)を生成し、生成した二分木データの各内部ノードとして各子の線形和を算出し、算出した線形和を反映した二分木データを線形和記憶部57に記憶するようになっている。
【0059】
相関値算出部58は、線形和記憶部57に記憶された二分木データが表す全二分木のルートにあたる線形和に対して、出力先制御部4から出力された組成状態情報をシフトさせながら当該線形和との相関値を算出して行き、算出した相関値よりなる相関関数を導き出すようになっている。
【0060】
検出判断部59は、相関値算出部58によって導き出された相関関数に基づいて、ルートにあたる線形和の算出元となった組成状態情報のなかに組成状態情報読込部3によって読み込まれた組成状態情報が含まれているか否かを判断するようになっている。
【0061】
ここで、検出判断部59が、ルートにあたる線形和の算出元となった組成状態情報のなかに組成状態情報読込部3によって読み込まれた組成状態情報が含まれていると判断した場合には、相関値算出部58は、出力先制御部4から出力された組成状態情報と、ルートの子にあたる各線形和との各相関関数を導き出し、検出判断部59は、各線形和の算出元となった組成状態情報のなかに組成状態情報読込部3によって読み込まれた組成状態情報が含まれているか否かを判断するようになっている。
【0062】
このように、相関値算出部58は、線形和の算出元となった組成状態情報のなかに組成状態情報読込部3によって読み込まれた組成状態情報が含まれていると判断されたノードを外部ノードに向けて探索して行くようになっている。
【0063】
検出判断部59は、最終的に、出力先制御部4から出力された組成状態情報と、線形和記憶部57に記憶された二分木データの外部ノードにあたる組成状態情報とが同じものであると判断した場合には、この特定した組成状態情報に関する情報を表示部10に表示させるようになっている。
【0064】
ここで、組成状態情報に関する情報とは、例えば、組成状態情報の登録日時や組成状態情報を登録したときに入力部2を介して入力された組成状態情報の識別情報等のように組成状態情報の属性に関する情報のことをいう。
【0065】
以上のように構成された情報検出装置51について図10乃至図12を用いてその動作を説明する。図10は、出力先制御部4が登録状態にある場合の、情報検出装置51の登録動作を示している。
【0066】
まず、組成状態情報読込部3によって紙の紙紋を表す組成状態情報が読み込まれると(S21)、この組成状態情報が組成状態情報格納部5に格納される(S22)。次に、組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報をそれぞれ外部ノードとした全二分木のデータ構造を有する二分木データが線形和算出部56によって生成される(S23)。
【0067】
次に、二分木データの各内部ノードとして、各子の線形和が線形和算出部56によって算出され(S24)、各内部ノードが算出された二分木データが線形和記憶部57に記憶される(S25)。
【0068】
図11および図12は、出力先制御部4が検出状態にある場合の情報検出装置51の検出動作を示している。
【0069】
まず、組成状態情報読込部3によって紙の紙紋を表す組成状態情報が読み込まれると(S31)、情報検出装置51の検出動作は、線形和記憶部57に記憶された二分木データのルートを対象とした後述するノード検出動作に移る(S32)。
【0070】
図12に示すように、ノード検出動作では、まず対象のノードにあたる線形和または組成状態情報と、組成状態情報読込部3によって読み込まれた組成状態情報との相関値が相関値算出部58によって算出され、相関関数が導き出される(S41)。
【0071】
次に、相関値算出部58によって導き出された相関関数にピークがあるか否かが検出判断部59によって判断される(S42)。ここで、相関関数にピークがないと判断された場合には、ノード検出動作は、このノード検出動作に移る前の動作に戻る。
【0072】
一方、相関関数にピークがあると判断された場合には、対象のノードが外部ノードであるか否かが検出判断部59によって判断される(S43)。ここで、対象のノードが外部ノードであると判断された場合には、この外部ノードにあたる組成状態情報に関する情報が検出判断部59によって表示部10に表示され(S44)、情報検出装置51の検出動作は、終了する。
【0073】
一方、対象のノードが外部ノードでないと判断された場合には、ノード検出動作は、対象ノードの各子を対象としたノード検出動作に移る(S45〜S47)。
【0074】
図11において、情報検出装置51の検出動作が終了することなく、ルートを対象としたノード検出動作が終了すると、組成状態情報読込部3によって組成状態情報が読み込まれた紙が未登録である旨のメッセージが検出判断部59によって表示部10に表示され(S33)、情報検出装置51の検出動作は、終了する。
【0075】
このように、組成状態情報読込部3によって読み込まれた組成状態情報を組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報のなかから特定するために、情報検出装置51は、組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報の数をNとした場合に、組成状態情報読込部3によって読み込まれた組成状態情報と線形和記憶部57に記憶された線形和との約2logN組の相関をとるようになっている。
【0076】
例えば、情報検出装置51によれば、組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報の数が128の場合には、相関をとる必要がある組の数が約19分の1で済み、組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報の数が1024の場合には、相関をとる必要がある組の数が約51分の1で済む。
【0077】
したがって、本発明の第2の実施の形態の情報検出装置51は、組成状態情報を多数の組成状態情報から特定するのにかかる時間を従来のものより短縮することができる。
【0078】
なお、情報検出装置51は、本発明の第1の実施の形態の情報検出装置1と同様に、少なくとも1つの端末装置とネットワークを介して通信するためのネットワークインタフェイスを入力部2、組成状態情報読込部3および表示部10に代えて備え、端末装置から組成状態情報を受けて、この組成状態情報の登録または検出を行うようにしてもよい。
【0079】
また、本実施の形態においては、PD14aからのチャンネルを用い、他のPD14b乃至14dからのチャンネルを未使用とした場合について説明したが、本発明の第1の実施の形態の情報検出装置1と同様に、線形和算出部56による線形和の算出、相関値算出部58により相関値の算出、検出判断部59による判断をチャンネル毎に行い、検出判断部59が各チャンネルの判断結果に応じて、組成状態情報読込部3によって読み込まれた組成状態情報を組成状態情報格納部5に格納された組成状態情報のなかから特定して行くようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施の形態における情報検出装置のブロック図
【図2】本発明の第1の実施の形態における情報検出装置を構成する組成状態情報読込部の断面図
【図3】本発明の第1の実施の形態における情報検出装置を構成する組成状態情報読込部のブロック図
【図4】本発明の第1の実施の形態における情報検出装置を構成する相関値算出部によって導き出される相関関数を示すグラフ
【図5】本発明の第1の実施の形態における情報検出装置の登録動作を示すフローチャート
【図6】本発明の第1の実施の形態における情報検出装置の検出動作を示すフローチャート
【図7】本発明の第1の実施の形態における情報検出装置の他の態様を示すブロック図
【図8】本発明の第2の実施の形態における情報検出装置のブロック図
【図9】本発明の第2の実施の形態における情報検出装置を構成する線形和算出部によって生成される二分木データのデータ構造を示す概念図
【図10】本発明の第2の実施の形態における情報検出装置の登録動作を示すフローチャート
【図11】本発明の第2の実施の形態における情報検出装置の検出動作を示すフローチャート
【図12】図11に続くフローチャート
【符号の説明】
【0081】
1、51 情報検出装置
2 入力部
3 組成状態情報読込部
4 出力先制御部
5 組成状態情報格納部
6、56 線形和算出部
7、57 線形和記憶部
8、58 相関値算出部
9、59 検出判断部
10 表示部
11 紙
12 LD(レーザダイオード)
13a、13b シリンドリカルレンズ
14a、14b、14c、14d PD(フォトダイオード)
20 PDアンプ
21 HPF
22 アンプ
23 A/D
30、33 ネットワークインタフェイス
31 端末装置
32 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の表面の組成状態をそれぞれ表す複数の組成状態情報より目的の組成状態情報を検出する情報検出装置において、
前記複数の組成状態情報の線形和を算出する線形和算出部と、
前記目的の組成状態情報と前記線形和との相関値を算出する相関値算出部と、
前記相関値に基づいて前記複数の組成状態情報のなかに前記目的の組成状態情報が含まれているか否かを判断する検出判断部と、を備えたことを特徴とする情報検出装置。
【請求項2】
前記線形和算出部が、前記検出判断部によって前記目的の組成状態情報が含まれていると判断された複数の組成状態情報を第1群および第2群に分割した各群に含まれる組成状態情報の各線形和を算出し、
前記相関値算出部が、前記目的の組成状態情報と、前記線形和算出部によって算出された前記第1群に含まれる組成状態情報の線形和との相関値、および、前記目的の組成状態情報と、前記線形和算出部によって算出された前記第2群に含まれる組成状態情報の線形和との相関値を算出し、
前記検出判断部が、前記各相関値に基づいて前記各群に含まれる組成状態情報のなかに前記目的の組成状態情報が含まれているか否かを判断し、
前記検出判断部が、前記複数の組成状態情報のなかから前記目的の組成状態情報を特定するまで、前記相関値算出部が、前記目的の組成状態情報と、前記検出判断部によって前記目的の組成状態情報が含まれていると判断された群に含まれる組成状態情報を第1群および第2群にさらに分割した各群に含まれる組成状態情報の各線形和との各相関値を算出して行くことを特徴とする請求項1に記載の情報検出装置。
【請求項3】
前記線形和算出部によって予め算出された線形和を記憶する線形和記憶部を備え、
前記相関値算出部が、前記目的の組成状態情報と前記線形和記憶部に記憶された線形和との相関値を算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の情報検出装置。
【請求項4】
前記物体が紙であり、
前記組成状態情報が、前記紙を組成する繊維の絡み具合に応じて異なる情報であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の情報検出装置。
【請求項5】
前記物体に対して相対的に移動しながら該物体の表面にレーザ光を照射するレーザ光照射部と、
前記レーザ光照射部と共に該物体に対して相対的に移動しながら該物体の表面で前記レーザ光が散乱された散乱光を受光する受光部とを備え、
前記組成状態情報が、前記受光部によって受光された散乱光の強度を表すことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の情報検出装置。
【請求項6】
前記物体が紙であり、
前記レーザ光照射部が、前記紙を組成する繊維の絡み具合に応じて前記組成状態情報が変化する程度の波長のレーザ光を照射することを特徴とする請求項5に記載の情報検出装置。
【請求項7】
前記レーザ光照射部が、レーザダイオードによって構成され、
前記受光部が、フォトダイオードによって構成されることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の情報検出装置。
【請求項8】
物体の表面の組成状態をそれぞれ表す複数の組成状態情報より目的の組成状態情報を検出する情報検出方法において、
前記複数の組成状態情報の線形和を算出する線形和算出ステップと、
前記目的の組成状態情報と前記線形和との相関値を算出する相関値算出ステップと、
前記相関値に基づいて前記複数の組成状態情報のなかに前記目的の組成状態情報が含まれているか否かを判断する検出判断ステップと、を有することを特徴とする情報検出方法。
【請求項9】
物体の表面の組成状態をそれぞれ表す複数の組成状態情報より目的の組成状態情報をコンピュータに検出させるための情報検出プログラムにおいて、
前記複数の組成状態情報の線形和を算出する線形和算出ステップと、
前記目的の組成状態情報と前記線形和との相関値を算出する相関値算出ステップと、
前記相関値に基づいて前記複数の組成状態情報のなかに前記目的の組成状態情報が含まれているか否かを判断する検出判断ステップと、を前記コンピュータに実行させるための情報検出プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載の情報検出プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−82765(P2008−82765A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260904(P2006−260904)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】