情報記憶素子、及び、情報記憶素子における情報書込み・読出し方法
【課題】安定した磁壁の移動を可能とし、確実に情報の書き込み、保持、読み出しを行い得る磁壁移動型の磁気メモリから成る情報記憶素子を提供する。
【解決手段】情報記憶素子100は、帯状の強磁性材料層111を備えており、強磁性材料層の一端及び他端には第1電極121、第2電極122が設けられており、第1電極121と第2電極122との間に電流を流すことで電流誘起磁壁移動が生じ、強磁性材料層111において、磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれ、若しくは、磁化状態が情報として読み出され、各磁化領域における磁化方向は、強磁性材料層111の厚さ方向に平行であり、情報の書込み若しくは情報の読出し時、強磁性材料層111の他端から一端に亙り単調に低下する温度分布を強磁性材料層111に生じさせる。
【解決手段】情報記憶素子100は、帯状の強磁性材料層111を備えており、強磁性材料層の一端及び他端には第1電極121、第2電極122が設けられており、第1電極121と第2電極122との間に電流を流すことで電流誘起磁壁移動が生じ、強磁性材料層111において、磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれ、若しくは、磁化状態が情報として読み出され、各磁化領域における磁化方向は、強磁性材料層111の厚さ方向に平行であり、情報の書込み若しくは情報の読出し時、強磁性材料層111の他端から一端に亙り単調に低下する温度分布を強磁性材料層111に生じさせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記憶素子、及び、情報記憶素子における情報書込み・読出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等の情報機器においては、現在、外部記憶装置として、ハードディスクドライブが広く用いられている。しかしながら、ハードディスクドライブは回転機構を伴うため、小型化や省電力化が難しい。そこで、小型機器用の外部記憶装置として、フラッシュメモリを用いたシリコンディスクドライブ(SSD)が用いられ始めているが、価格が高く、記憶容量も十分ではない。それ故、大記憶容量で、不揮発性、且つ、高速の情報書込み・読出しが可能な記憶装置が強く望まれている。
【0003】
このような記憶装置の1形態として、情報を磁性体の磁化状態として記録する磁気メモリの発展型である電流誘起磁壁移動型の磁気メモリが考案されている(例えば、特開2005−123617や特開2006−237183参照)。この電流誘起磁壁移動型の磁気メモリにあっては、帯状の強磁性材料層を複数の磁化領域(磁区)に分割して、強磁性材料層に電流を流すことで、磁化領域の境界である磁壁を移動させながら、強磁性材料層の磁化領域に情報を書き込み、また、情報の読み出しを行う。
【0004】
【特許文献1】特開2005−123617
【特許文献2】特開2006−237183
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような電流誘起磁壁移動型の磁気メモリには、情報の保持、安定した磁壁の移動に未だ問題がある。磁壁を移動させ易くするためには、強磁性材料層の厚さを薄くしたり、強磁性材料層に軟磁性材料を用いることが考えられるが、このような解決手段は、情報を安定に保持することと反する。また、強磁性材料層内において磁壁が長い距離を移動したとき、磁壁間の距離が変化して情報誤りを起こし易くなる虞がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、安定した磁壁の移動を可能とし、確実に情報の書き込み、保持、読み出しを行い得る磁壁移動型の磁気メモリから成る情報記憶素子、及び、係る情報記憶素子における情報書込み・読出し方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る情報記憶素子、また、上記の目的を達成するための本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る情報書込み・読出し方法における情報記憶素子は、
帯状の強磁性材料層(強磁性記録層)を備えており、
強磁性材料層の一端には第1電極が設けられており、強磁性材料層の他端には第2電極が設けられており、
第1電極と第2電極との間に電流を流すことで電流誘起磁壁移動が生じ、
強磁性材料層において、磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれ、若しくは、磁化状態が情報として読み出され、
各磁化領域における磁化方向は、強磁性材料層の厚さ方向に平行である。
【0008】
そして、本発明の第1の態様に係る情報記憶素子にあっては、情報の書込み若しくは情報の読出し時、強磁性材料層の他端から一端に亙り単調に低下する温度分布を、強磁性材料層に生じさせる。
【0009】
また、本発明の第2の態様に係る情報記憶素子にあっては、強磁性材料層の他端から一端に亙り、強磁性材料層における垂直磁気異方性が単調に増加している。
【0010】
更には、本発明の第1の態様に係る情報記憶素子における情報書込み・読出し方法(以下、『本発明の第1の態様に係る情報書込み・読出し方法』と呼ぶ)にあっては、情報の書込み若しくは情報の読出し時、強磁性材料層の他端から一端に亙り、強磁性材料層に単調に低下する温度分布を生じさせることで、強磁性材料層における磁壁の位置を制御する。
【0011】
また、本発明の第2の態様に係る情報記憶素子における情報書込み・読出し方法(以下、『本発明の第2の態様に係る情報書込み・読出し方法』と呼ぶ)にあっては、
情報記憶素子は、強磁性材料層の他端から一端に亙り、強磁性材料層における垂直磁気異方性が単調に増加しており、
情報の書込み若しくは情報の読出し時、強磁性材料層の温度を上昇させて強磁性材料層における磁壁の位置を制御する。
【0012】
本発明の第1の態様若しくは第2の態様に係る情報書込み・読出し方法、あるいは、本発明の第1の態様若しくは第2の態様に係る情報記憶素子にあっては、磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれる。係る情報の書込み形態として、第3電極の構成、構造にも依るが、GMR(Giant MagnetoResistance,巨大磁気抵抗)効果あるいはTMR(Tunnel MagnetoResistance)効果に基づき、電流によるスピン注入磁化反転によって情報が書き込まれる形態を挙げることができる。あるいは又、電流によって形成された磁界に基づき情報が書き込まれる形態を挙げることができる。また、磁化状態が情報として読み出されるが、係る情報の読出し形態として、強磁性材料層における電気抵抗値の高低を検出する形態を挙げることができるし、あるいは又、強磁性材料層における磁界の方向を検出する形態を挙げることができる。
【発明の効果】
【0013】
一般に、磁化領域における磁化方向が強磁性材料層の厚さ方向に平行である場合、即ち、磁化領域が所謂垂直磁化されている場合、強磁性材料層の温度が上昇し、垂直磁気異方性が減少(低下)すると、磁壁は移動し易くなる。これとは逆に、強磁性材料層の温度が下降し、垂直磁気異方性が増加(上昇)すると、磁壁は移動し難くなる。
【0014】
本発明の第1の態様に係る情報記憶素子あるいは情報書込み・読出し方法にあっては、情報の書込み若しくは情報の読出し時、強磁性材料層の他端から一端に亙り単調に低下する温度分布を強磁性材料層に生じさせる。尚、強磁性材料層の温度がT0゜C未満のとき、磁壁は移動し難く、強磁性材料層の温度がT0゜C以上のとき、磁壁は移動し易いとする。ここで、強磁性材料層の他端から距離L1の地点における強磁性材料層の温度がT0になったとする。この状態で強磁性材料層に情報を書き込むと、書き込まれた情報である上向きの磁化状態あるいは下向きの磁化状態は、第1電極から第2電極へと電流を流すことで生じるスピントルクに起因した電流誘起磁壁移動によって、強磁性材料層の一端に向かって移動する。そして、距離L1の地点を越えたとき、上向きの磁化状態あるいは下向きの磁化状態の移動(磁壁の移動)が停止し、係る距離L1の地点を越えた領域において情報としての磁化状態が固定される。次いで、強磁性材料層の他端から一端に亙り単調に低下する温度分布を変化させた結果、強磁性材料層の他端から距離L2(<L1)の地点における強磁性材料層の温度がT0になったとする。この状態で強磁性材料層に情報を書き込むと、距離L2の地点を越えたとき、情報としての磁化状態の移動(磁壁の移動)が停止し、係る距離L2の地点を越えた領域において情報としての磁化状態が固定される。こうして、強磁性材料層における所望の位置(領域)に確実に情報としての磁化状態を書き込み、固定することができる。
【0015】
情報の読出し時、強磁性材料層の他端から距離L2の地点における強磁性材料層の温度がT0になったとする。第2電極から第1電極へと電流を流すことで生じる電流誘起磁壁移動によって、情報としての磁化状態は、強磁性材料層の他端に向かって移動する。但し、距離L2を越える領域に位置する磁化状態は移動することができない。こうして、強磁性材料層の他端から距離L2を越えない領域における情報を読み出すことができる。次いで、強磁性材料層の他端から一端に亙り単調に低下する温度分布を変化させた結果、強磁性材料層の他端から距離L1(>L2)の地点における強磁性材料層の温度がT0になったとする。この状態にあっては、情報としての磁化状態は、強磁性材料層の他端に向かって移動する。但し、距離L1を越える領域に位置する磁化状態は移動することができない。こうして、強磁性材料層における所望の位置(領域)における情報としての磁化状態を確実に読み出すことができる。尚、情報の読出し時、記憶された情報は破壊されるので、情報の読出しが完了した後、情報を書き込んでおくか、他の情報記憶素子に情報を移しておく必要がある。また、情報書込み・読出し方法は、所謂シーケンシャル方式である。
【0016】
本発明の第2の態様に係る情報記憶素子あるいは情報書込み・読出し方法にあっては、情報の書込み若しくは情報の読出し時、強磁性材料層の温度を上昇させる。ここで、強磁性材料層の他端から距離L1の地点における強磁性材料層の垂直磁気異方性の値をMA1とし、距離L2(<L1)の地点における強磁性材料層の垂直磁気異方性の値をMA2(<MA1)とする。また、垂直磁気異方性の値MA1にあっては、強磁性材料層の温度がT1゜C以上のとき、磁壁は移動し易いとする。また、垂直磁気異方性の値MA2にあっては、強磁性材料層の温度がT2゜C(<T1)以上のとき、磁壁は移動し易いとする。
【0017】
情報の書込み時、強磁性材料層の温度をT1゜Cとする。この状態で強磁性材料層に情報を書き込むと、情報としての磁化状態は、第1電極から第2電極へと電流を流すことで生じる電流誘起磁壁移動によって、強磁性材料層の一端に向かって移動する。そして、距離L1の地点を越えたとき、情報としての磁化状態の移動(磁壁の移動)が停止し、係る距離L1の地点を越えた領域において情報としての磁化状態が固定される。次いで、強磁性材料層の温度を低下させてT2゜Cとする。この状態で強磁性材料層に情報を書き込むと、情報としての磁化状態は、距離L2の地点を越えたとき、移動が停止し、係る距離L2の地点を越えた領域において情報としての磁化状態が固定される。こうして、強磁性材料層における所望の位置(領域)に確実に情報としての磁化状態を書き込み、固定することができる。
【0018】
情報の読出し時、強磁性材料層の温度をT2とする。第2電極から第1電極へと電流を流すことで生じる電流誘起磁壁移動によって、情報としての磁化状態は、強磁性材料層の他端に向かって移動する。但し、距離L2を越える領域に位置する磁化状態は移動することができない。こうして、強磁性材料層の他端から距離L2を越えない領域における情報を読み出すことができる。次いで、強磁性材料層の温度をT1に上昇させる。この状態にあっては、情報としての磁化状態は、強磁性材料層の他端に向かって移動する。但し、距離L1を越える領域に位置する磁化状態は移動することができない。こうして、強磁性材料層における所望の位置(領域)における情報としての磁化状態を確実に読み出すことができる。尚、情報の読出し時、記憶された情報は破壊されるので、情報の読出しが完了した後、情報を書き込んでおくか、他の情報記憶素子に情報を移しておく必要がある。また、情報書込み・読出し方法は、所謂シーケンシャル方式である。
【0019】
そして、以上の結果として、強磁性材料層内において磁壁が長い距離を移動したときでも、情報誤りを起こし易くなるといった問題の発生を確実に回避することができる。それ故、本発明によれば、安定して情報を保持しながら、確実に情報の書込み、記録、読出しを行うことができ、1つの連続した磁性体素子に多数の情報が記録可能となり、小型、軽量、且つ、安価な情報記憶装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明する。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明の情報記憶素子、及び、情報記憶素子における情報書込み・読出し方法、全般に関する説明
2.実施例1(本発明の第1の態様に係る情報記憶素子及び本発明の第1の態様に係る情報記憶素子における情報書込み・読出し方法:第1の構成)
3.実施例2(実施例1の変形例)
4.実施例3(実施例1の変形例:第2の構成)
5.実施例4(実施例1の変形例:第3の構成)
6.実施例5(本発明の第2の態様に係る情報記憶素子及び本発明の第2の態様に係る情報記憶素子における情報書込み・読出し方法)
【0021】
本発明の第1の態様に係る情報記憶素子あるいは情報書込み・読出し方法、本発明の第2の態様に係る情報記憶素子あるいは情報書込み・読出し方法においては、
強磁性材料層の一部に接して設けられた第3電極を更に備えており、
第3電極は、強磁性材料層の一部に接した非磁性体膜、及び、その上に形成された磁化参照層(固着層、磁化固定層とも呼ばれる)から構成されており、
第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれる形態とすることができる。そして、この場合、第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域における電気抵抗値が情報として第3電極から読み出される構成とすることができる。尚、第2電極と第3電極とを、強磁性材料層を挟んで第2電極と第3電極とが対向した状態に配置してもよいし、第2電極と第3電極とを、強磁性材料層の同じ側に配置してもよいし、第2電極と第3電極とを、強磁性材料層の異なる側に配置してもよい。また、強磁性材料層の他端から一端に亙り単調に低下する温度分布として、第3電極に近い強磁性材料層の領域ほど、温度上昇が大きい温度分布とすることができる。
【0022】
あるいは又、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る情報書込み・読出し方法にあっては、強磁性材料層の一部に隣接して磁界検出手段が更に設けられており、各磁化領域において生成した磁場を情報として磁界検出手段によって読み出す形態とすることができる。磁界検出手段として、具体的には、磁界を検出するコイルあるいは配線を挙げることができる。各磁化領域において生成した磁場の方向を、情報として、磁界検出手段であるコイルや配線によって読み出せばよい。尚、情報の読出し方法として、その他、光磁気効果(カー効果)を用いる方法を採用してもよい。
【0023】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明の第1の態様に係る情報記憶素子あるいは情報書込み・読出し方法にあっては、強磁性材料層の軸線方向と直交する仮想平面で強磁性材料層を切断したときの強磁性材料層の断面積が、強磁性材料層の軸線方向に沿って変化しており、以て、情報の書込み若しくは情報の読出し時、第1電極と第2電極との間に電流を流すことで、強磁性材料層に温度分布を生じさせる構成とすることができる。尚、このような構成を、便宜上、『第1の構成』と呼ぶ。あるいは又、強磁性材料層の比抵抗値が強磁性材料層の軸線方向に沿って変化しており、以て、情報の書込み若しくは情報の読出し時、第1電極と第2電極との間に電流を流すことで、強磁性材料層に温度分布を生じさせる構成とすることができる。尚、このような構成を、便宜上、『第2の構成』と呼ぶ。あるいは又、強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層の温度を変化させる温度制御手段が、強磁性材料層近傍に配置されており、以て、情報の書込み若しくは情報の読出し時、温度制御手段によって強磁性材料層に温度分布を生じさせる構成とすることができる。尚、このような構成を、便宜上、『第3の構成』と呼ぶ。
【0024】
強磁性材料層の断面積の強磁性材料層の軸線方向に沿った変化(具体的には、強磁性材料層の他端から一端に向かって、漸次、連続的に若しくは階段状に断面積が増加する変化)は、強磁性材料層の幅の設定、あるいは又、強磁性材料層の厚さの設定、あるいは又、強磁性材料層の幅及び厚さの設定によって得ることができる。強磁性材料層の軸線方向に沿った断面積の変化量は、情報記憶素子に要求される仕様に応じて、適宜、決定すればよい。また、比抵抗値は、例えば、強磁性材料層の所望の部分あるいは領域に窒素イオンや酸素イオンを注入することで変化させることができる。強磁性材料層の軸線方向に沿った比抵抗値の変化(具体的には、強磁性材料層の他端から一端に向かって、漸次、連続的に若しくは階段状に比抵抗値が減少する変化)は、情報記憶素子に要求される仕様に応じて、適宜、決定すればよい。
【0025】
温度制御手段として、強磁性材料層を加熱するためのヒータを挙げることができ、係るヒータを強磁性材料層の近傍に配置すればよい。ヒータは、例えば、パターニングされた高抵抗体層から構成することができる。高抵抗体層を構成する材料として、例えば、シリコンカーバイド(SiC)やSiCNといったカーボン系抵抗体材料、SiN系材料、アモルファスシリコン等の半導体抵抗体材料、酸化ルテニウム(RuO2)、酸化タンタル、窒化タンタル、酸化クロム、酸化チタン等の高融点金属酸化物や高融点金属窒化物を例示することができる。また、温度制御手段として、強磁性材料層を加熱するためのレーザを挙げることもできる。あるいは又、強磁性材料層の周囲の熱伝導を変化させてもよい。即ち、強磁性材料層を取り囲む領域の熱伝導率を変化させてもよい。具体的には、例えば、一種のヒートシンクを設ければよく、このような形態にあっては、係るヒートシンクが温度制御手段に相当する。
【0026】
一方、本発明の第2の態様に係る情報記憶素子あるいは情報書込み・読出し方法における上記の好ましい形態にあっては、第3電極に近い強磁性材料層の領域ほど、垂直磁気異方性が小さい構成とすることができる。
【0027】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様に係る情報記憶素子あるいは情報書込み・読出し方法にあっては、第1電極と第2電極との間に電流を流すことで生成したジュール熱によって、強磁性材料層に温度分布を生じさせる形態とすることができ、この場合、第1電極と第2電極との間に流す電流の値を、階段状に、若しくは、連続的に変化させる構成とすることができる。
【0028】
一方、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明の第2の態様に係る情報記憶素子あるいは情報書込み・読出し方法にあっても、第1電極と第2電極との間に電流を流すことで生成したジュール熱によって、強磁性材料層の温度を上昇させる形態とすることができる。
【0029】
本発明の第1の態様に係る情報記憶素子あるいは情報書込み・読出し方法において、記憶する情報のビット数をNとしたとき、異なる温度分布をN回、生じさせればよい。また、本発明の第2の態様に係る情報記憶素子あるいは情報書込み・読出し方法において、記憶する情報のビット数をNとしたとき、異なる温度上昇をN回、生じさせればよい。温度分布や温度上昇は、情報記憶素子に要求される仕様に応じて、適宜、決定すればよい。
【0030】
強磁性材料層の平面形状は帯状(ストライプ状)であればよく、直線状であってもよいし、曲がっていてもよいし、「U」字状等の立体形状とすることもできるし、「Y」字状等に分岐した形状とすることもできる。
【0031】
強磁性材料層(強磁性記録層)を構成する材料として、磁壁を少ない電流で動かすためにスピントルク効率のよい材料が好ましく、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)といった強磁性材料の合金(例えば、Co−Fe、Co−Fe−Ni、Ni−Fe等)にガドリニウム(Gd)が添加された合金を挙げることができる。更には、垂直磁気異方性を一層増加させるために、係る合金にテルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)等の重希土類を添加してもよいし、これらを含む合金を積層してもよい。強磁性材料層の結晶性は、本質的に任意であり、多結晶であってもよいし、単結晶であってもよいし、非晶質であってもよい。また、強磁性材料層は、単層構成とすることもできるし、上述したとおり複数の異なる強磁性材料層を積層した積層構成とすることもできるし、強磁性材料層と非磁性材料層を積層した積層構成とすることもできる。
【0032】
強磁性材料層は、例えば、スパッタリング法、イオンビーム堆積法、真空蒸着法に例示される物理的気相成長法(PVD法)、ALD(Atomic Layer Deposition)法に代表される化学的気相成長法(CVD法)にて形成することができる。強磁性材料層のパターニングは、反応性イオンエッチング法(RIE法)やイオンミーリング法(イオンビームエッチング法)にて行うことができる。
【0033】
本発明の第2の態様に係る情報記憶素子あるいは情報書込み・読出し方法において、強磁性材料層の他端から一端に亙り、強磁性材料層における垂直磁気異方性を単調に増加させるための方法として、強磁性材料層にイオン注入等を施すことで組成分布を形成する方法や、レーザ等を用いた局所加熱法によって強磁性材料層の結晶性に分布を形成する方法を挙げることができる。
【0034】
第1電極や第2電極は、Cu、Au、Pt、Ti等の単層構造から成り、あるいは又、CrやTi等から成る下地層と、その上に形成されたCu層、Au層、Pt層等の積層構造を有していてもよい。更には、W、Ru、Ta等の単層あるいはCu、Cr、Ti等との積層構造から構成することもできる。これらの電極は、例えば、スパッタリング法に例示されるPVD法にて形成することができる。
【0035】
第3電極と強磁性材料層とによって、TMR効果あるいはGMR効果を有する一種の情報記録構造体が構成される。ここで、磁化参照層、非磁性体膜及び強磁性材料層によって構成されるTMR効果を有する情報記録構造体とは、磁化参照層と強磁性材料層との間に、トンネル絶縁膜として機能する非磁性体膜が挟まれた構造を指す。ここで、第3電極を構成する磁化参照層を構成する材料として、上述した強磁性材料層を構成する材料を挙げることができるし、積層フェリ構造[反強磁性的結合を有する積層構造であり、合成反強磁性結合(SAF:Synthetic Antiferromagnet)とも呼ばれる]を有する構成とすることができるし、静磁結合構造を有する構成とすることができる。積層フェリ構造とは、例えば、磁性材料層/ルテニウム(Ru)層/磁性材料層の3層構造(具体的には、例えば、CoFe/Ru/CoFeの3層構造、CoFeB/Ru/CoFeBの3層構造)を有し、ルテニウム層の厚さによって、2つの磁性材料層の層間交換結合が、反強磁性的あるいは強磁性的になる構造を指し、例えば、 S. S. Parkin et. al, Physical Review Letters, 7 May, pp 2304-2307 (1990) に報告されている。尚、2つの磁性材料層の層間交換結合が反強磁性的になる構造を、積層フェリ構造と呼ぶ。また、2つの磁性材料層において、磁性材料層の端面からの漏洩磁界によって反強磁性的結合が得られる構造を、静磁結合構造と呼ぶ。第3電極を構成する非磁性体膜を構成する材料として、マグネシウム酸化物(MgO)、マグネシウム窒化物、アルミニウム酸化物(AlOX)、アルミニウム窒化物(AlN)、シリコン酸化物、シリコン窒化物、TiO2あるいはCr2O3、Ge、NiO、CdOX、HfO2、Ta2O5、BN、ZnS等の絶縁材料を挙げることができる。一方、GMR効果を有する情報記録構造体を構成する非磁性体膜を構成する材料として、Cu、Ru、Cr、Au、Ag、Pt、Ta等、あるいは、これらの合金といった導電性材料を挙げることができるし、導電性が高ければ(抵抗率が数百μΩ・cm以下)、任意の非金属材料としてもよいが、強磁性材料層や磁化参照層と界面反応を起こし難い材料を、適宜、選択することが望ましい。
【0036】
絶縁材料から成る非磁性体膜は、例えば、スパッタリング法にて形成された金属膜を酸化若しくは窒化することにより得ることができる。より具体的には、非磁性体膜を構成する絶縁材料としてアルミニウム酸化物(AlOX)、マグネシウム酸化物(MgO)を用いる場合、例えば、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムやマグネシウムを大気中で酸化する方法、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムやマグネシウムをプラズマ酸化する方法、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムやマグネシウムをIPCプラズマで酸化する方法、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムやマグネシウムを酸素中で自然酸化する方法、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムやマグネシウムを酸素ラジカルで酸化する方法、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムやマグネシウムを酸素中で自然酸化させるときに紫外線を照射する方法、アルミニウムやマグネシウムを反応性スパッタリング法にて成膜する方法、アルミニウム酸化物(AlOX)やマグネシウム酸化物(MgO)をスパッタリング法にて成膜する方法を例示することができる。
【実施例1】
【0037】
実施例1は、本発明の第1の態様に係る情報記憶素子、及び、本発明の第1の態様に係る情報記憶素子における情報書込み・読出し方法に関し、具体的には、第1の構成に関する。
【0038】
模式的な部分的平面図を図1の(A)に示し、図1の(A)の矢印B−Bに沿った模式的な一部断面図を図1の(B)に示すように、実施例1の情報記憶素子100は、帯状の強磁性材料層(強磁性記録層)111を備えている。また、強磁性材料層111の一端には第1電極121が設けられており、強磁性材料層111の他端には第2電極122が設けられている。そして、実施例1の情報記憶素子100にあっては、第1電極121と第2電極122との間に電流を流すことで電流誘起磁壁移動が生じる。ここで、第1電極121と第2電極122との間に流す電流を、『磁壁駆動電流』と呼ぶ。強磁性材料層111において、磁化領域112に磁化状態が情報として書き込まれ、若しくは、磁化状態が情報として読み出される。更には、各磁化領域112における磁化方向は、強磁性材料層の厚さ方向に平行である。参照番号113は、磁化領域112と磁化領域112の境界(界面)である磁壁を示す。図1の(A)にあっては、層間絶縁層114の図示を省略している。また、参照番号124は、層間絶縁層114上に形成され、第3電極123に接続された配線を指す。図1の(A)及び(B)に示した情報記憶素子100にあっては、強磁性材料層111の下に第1電極121、第2電極122を設け、強磁性材料層111の上に第3電極123を設けたが、これとは逆に、強磁性材料層111の上に第1電極121、第2電極122を設け、強磁性材料層111の下に第3電極123を設けてもよい。
【0039】
実施例1の情報記憶素子100は、強磁性材料層111の一部に接して設けられた第3電極123を更に備えている。第3電極123は、強磁性材料層111を挟んで、第2電極122と対向して配置されている。ここで、第3電極123は、強磁性材料層111の一部に接した非磁性体膜123A、及び、その上に形成された磁化参照層123Bから構成されている。磁化参照層123Bは、磁化領域112に記録する磁化の方向を決めるための基準磁化層として機能する。そして、第2電極121と第3電極123との間に電流を流すことで、各磁化領域112に磁化状態が情報として書き込まれる。また、第2電極121と第3電極123との間に電流を流すことで、各磁化領域112における電気抵抗値(電気抵抗値の高低)が情報として第3電極123から読み出される。第3電極123と強磁性材料層111とによって、TMR効果を有する一種の情報記録構造体が構成され、電流によるスピン注入磁化反転によって磁化領域112が形成され、磁壁113が生じ、強磁性材料層111に情報が書き込まれる。即ち、強磁性材料層111においては、電流の流れる方向により、その磁化の方向が、磁化参照層123Bに対して平行又は反平行に変えられる。
【0040】
そして、実施例1にあっては、情報の書込み若しくは情報の読出し時、強磁性材料層111の他端から一端に亙り単調に低下する温度分布を、強磁性材料層111に生じさせる。そして、これによって、強磁性材料層111における磁壁113の位置を制御する。具体的には、強磁性材料層111の軸線方向と直交する仮想平面で強磁性材料層111を切断したときの強磁性材料層111の断面積が、強磁性材料層111の軸線方向に沿って変化している。より具体的には、強磁性材料層111の他端から一端に向かって、漸次、連続的に断面積が増加する変化する。即ち、強磁性材料層111の断面積は、第1電極121に近づくほど、大きな値となる。そして、これによって、情報の書込み若しくは情報の読出し時、第1電極121と第2電極122との間に電流を流すことで、強磁性材料層111に温度分布を生じさせることができる。具体的には、第1電極121に近づくほど、強磁性材料層111の温度が低い状態を形成することができる。
【0041】
実施例1において、帯状の強磁性材料層111は、Taから成る下地層(厚さ:2nm)、TbCo合金層(厚さ:2nm)、GdFeCo合金層(厚さ:8nm)及びCoFeCrB合金層(厚さ:2nm)の積層構造から成る。強磁性材料層111の幅は、第2電極122から第1電極121に向かって0.10μmから0.15μmへと、漸次、変化する。尚、第1電極121と第2電極122との間の距離は1.3μmである。また、第1電極121と第2電極122の間の強磁性材料層111の電気抵抗値は820Ωである。図5に、CoFeCrB合金層とGdFeCo合金層の積層構造体における垂直磁気異方性の温度変化を示す。垂直磁気異方性は150゜Cまで低下し、それ以上の温度ではほぼ一定となる。第3電極123を構成する非磁性体膜123Aは、厚さ0.8nmのMgOから成り、磁化参照層123Bは、CoFeB合金層(厚さ:1nm)とTbCo合金層(厚さ:20nm)の積層膜から成る。第1電極121及び第2電極122はチタン層から構成されており、例えば、第1電極121は駆動電源(図示せず)に接続され、第2電極122は接地されている。尚、第3電極123と強磁性材料層111とによって、GMR効果を有する一種の情報記録構造体を構成してもよく、この場合には、非磁性体膜123Aを、例えば、Cuから構成すればよい。
【0042】
以下、実施例1の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法を、情報記憶素子100の概念図である図2の(A)〜(E)、図3の(A)〜(E)、図4の(A)〜(E)を参照して説明する。実施例1の情報書込み・読出し方法は、所謂シーケンシャル方式である。
【0043】
図2〜図4、後述する図11〜図13において、強磁性材料層111内部に描いた矢印は、磁化の方向を示し、便宜上、上向きの矢印を情報「0」とし、下向きの矢印を情報「1」とする。また、第3電極123に描いた矢印は、磁化参照層123Bにおける磁化の方向を示す。そして、第3電極123から第2電極122に電流を流すことで、情報「0」(上向きの矢印)が、第3電極123に対向する強磁性材料層111の部分に書き込まれる。一方、第2電極122から第3電極123に電流を流すことで、情報「1」(下向きの矢印)が、第3電極123に対向する強磁性材料層111の部分に書き込まれる。尚、強磁性材料層の温度がT0゜C未満のとき、磁壁は移動し難く、強磁性材料層の温度がT0゜C以上のとき、磁壁は移動し易いとする。
【0044】
先ず、図2の(A)に示す状態において、第1ビットとして、強磁性材料層111に情報「0」を書き込むことを想定する。尚、図2の(A)あるいは後述する図11の(A)にあっては、強磁性材料層111,511に以前の情報が残されている場合があるが、係る情報の図示は省略している。また、強磁性材料層111,511の磁化の方向の初期化は、外部から磁場を強磁性材料層111,511に加えることで行うことができる。
【0045】
そして、この場合、図2の(B)に示すように、第3電極123に電圧+VWを印加して、第3電極123から第2電極122へと電流を流す。これによって、情報「0」(上向きの矢印)が、第3電極123に対向する強磁性材料層111の部分に書き込まれる。
【0046】
そして、これと同時、あるいは、この直後に、図2の(C)に示すように、第1電極121に電圧+Vm1を印加し、第1電極121から第2電極122へと磁壁駆動電流を流す。これによって、強磁性材料層111の内部にジュール熱が生成し、生成したジュール熱によって、強磁性材料層111には、第2電極側が高く、第1電極側が低い温度分布が生じる(図2の(D)参照)。尚、第2電極122から距離L1における強磁性材料層111の部分がT0となるような温度分布を生じさせる。しかも、第1電極121から第2電極122へと磁壁駆動電流を流すことによって、電流誘起磁壁移動が生じる。即ち、磁化状態が左から右に移動(伝搬)していく。つまり、磁壁が右に移動していく。そして、磁壁が距離L1の地点を越えると、磁壁の移動は停止する。その後、第1電極121、第3電極123への電圧の印加を中断する(図2の(E)参照)。こうして、第2電極122から距離L1を越えた強磁性材料層111の領域に情報「0」が書き込まれる。
【0047】
次に、強磁性材料層111に情報「1」を書き込むことを想定する。この場合、図3の(A)に示すように、第3電極123に電圧−VWを印加して、第2電極122から第3電極123へと電流を流す。これによって、情報「1」(下向きの矢印)が、第3電極123に対向する強磁性材料層111の部分に書き込まれる。
【0048】
そして、これと同時、あるいは、この直後に、図3の(B)に示すように、第1電極121に電圧+Vm2(<+Vm1)を印加し、第1電極121から第2電極122へと磁壁駆動電流を流す。これによって、前述したと同様に、生成したジュール熱によって、強磁性材料層111には、第2電極側が高く、第1電極側が低い温度分布が生じる。但し、第2電極122から距離L2(<L1)における強磁性材料層111の部分がT0となるような温度分布を生じさせる(図3の(C)参照)。しかも、電流誘起磁壁移動が生じる。即ち、磁化状態が左から右に移動(伝搬)していく(図3の(B)参照)。つまり、磁壁が右に移動していく。そして、磁壁が距離L2の地点を越えると、磁壁の移動は停止する(図3の(D)参照)。その後、第1電極121、第3電極123への電圧の印加を中断する(図3の(E)参照)。こうして、第2電極122から距離L2を越えた強磁性材料層111の領域に情報「1」が書き込まれる。即ち、この状態にあっては、強磁性材料層111には、2つの情報(0,1)が書き込まれている。
【0049】
次に、強磁性材料層111に情報「0」を書き込むことを想定する。この場合、図4の(A)に示すように、第3電極123に電圧+VWを印加して、第2電極122から第3電極123へと電流を流す。これによって、情報「0」(上向きの矢印)が、第3電極123に対向する強磁性材料層111の部分に書き込まれる。
【0050】
そして、これと同時、あるいは、この直後に、図4の(B)に示すように、第1電極121に電圧+Vm3(<+Vm2)を印加し、第1電極121から第2電極122へと磁壁駆動電流を流す。これによって、前述したと同様に、生成したジュール熱によって、強磁性材料層111には、第2電極側が高く、第1電極側が低い温度分布が生じる。但し、第2電極122から距離L3(<L2)における強磁性材料層111の部分がT0となるような温度分布を生じさせる(図4の(C)参照)。しかも、電流誘起磁壁移動が生じる。即ち、磁化状態が左から右に移動(伝搬)していく(図4の(B)参照)。つまり、磁壁が右に移動していく。そして、磁壁が距離L3の地点を越えると、磁壁の移動は停止する(図4の(D)参照)。その後、第1電極121、第3電極123への電圧の印加を中断する(図4の(E)参照)。こうして、第2電極122から距離L3を越えた強磁性材料層111の領域に情報「0」が書き込まれる。即ち、この状態にあっては、強磁性材料層111には、3つの情報(0,1,0)が書き込まれている。
【0051】
尚、第1電極121から第2電極122へと磁壁駆動電流を流すことで磁壁113を移動させながら、磁壁駆動電流の値を制御することで、強磁性材料層111に情報を、順次、書き込んでもよい。
【0052】
そして、このような操作を、逐次、合計N回、繰り返すことで、Nビットの情報を書き込むことができる。
【0053】
強磁性材料層111に書き込まれた情報を読み出す場合には、第2電極122から第1電極121へと磁壁駆動電流を流す。これによってジュール熱が生成し、強磁性材料層111に温度分布が生じる。尚、強磁性材料層の他端から距離L3の地点における強磁性材料層の温度がT0となるように磁壁駆動電流を流す。併せて、磁壁113が強磁性材料層111の他端に向かって移動する。但し、距離L3を越える領域に位置する磁化状態は移動することができない。そして、第3電極123から第2電極122に電流を流し、磁化領域112の電気抵抗値の高低を調べることで、書き込まれた情報が「0」であるか「1」であるかを判別することができる。ここで、強磁性材料層111と磁化参照層123Bの磁化方向が等しい場合、低抵抗となり、強磁性材料層111と磁化参照層123Bの磁化方向が反平行の場合、高抵抗となる。こうして、強磁性材料層の他端から距離L3を越えない領域における情報を読み出すことができる。次いで、第2電極122から第1電極121へと流す磁壁駆動電流の値を増加させる。その結果、強磁性材料層の他端から距離L2(>L3)の地点における強磁性材料層の温度がT0になったとする。この状態にあっては、情報としての磁化状態は、強磁性材料層の他端に向かって移動する。但し、距離L2を越える領域に位置する磁化状態は移動することができない。更に、第2電極122から第1電極121へと流す磁壁駆動電流の値を増加させる。その結果、強磁性材料層の他端から距離L1(>L2)の地点における強磁性材料層の温度がT0になったとする。この状態にあっては、情報としての磁化状態は、強磁性材料層の他端に向かって移動する。但し、距離L1を越える領域に位置する磁化状態は移動することができない。こうして、強磁性材料層における所望の位置(領域)における情報としての磁化状態を確実に読み出すことができる。
【0054】
実施例1の情報記憶素子の第1電極121に、図6に示す電圧+Vmを印加した。尚、電圧+Vmを、3.0ボルトから1.0ボルトまで、時間の経過と共に減少させた。また、第3電極123に、図6に示す電圧+VW(=1.0ボルト)及び−VW(=−1.0ボルト)を交互に印加した。こうして、情報記憶素子の強磁性材料層111に情報を書き込んだ。次いで、情報記憶素子の強磁性材料層111に書き込まれた情報を読み出した。具体的には、第1電極121に電圧−Vmを印加した。尚、電圧−Vmを、−1.0ボルトから−3.0ボルトまで、時間の経過と共に変化させた。そして、第3電極123に0.1ミリアンペアの一定電流を流したときの第3電極123からの電圧出力変化を再生信号電圧として測定した。その結果を図7に示す。尚、情報読出し時の再生信号電圧を第1電極123に印加した電圧の絶対値に対して示し、情報書込み時に第3電極123に印加した電圧を合わせて示す。第1電極123に1.5ボルト乃至2.2ボルトを印加したとき、情報の書込み、読出しが行われていることが確認できた。従って、第1電極123に印加する電圧や強磁性材料層111の大きさ等を最適化することで、より多くの情報を強磁性材料層に記憶させることが可能であり、高密度記録を実現できることが判る。
【0055】
以下、基板等の模式的な一部断面図である図8の(A)〜(C)を参照して、実施例1の情報記憶素子100の製造方法の概要を説明する。
【0056】
[工程−100]
先ず、シリコン半導体基板から成る基板110に第1電極121及び第2電極122を形成する。第1電極121及び第2電極122を基板110上に形成してもよいが、磁壁113の移動を妨げないように、基板110と第1電極121、第2電極122との段差は少ない方がよく、そのためには、基板110に埋め込まれた第1電極121、第2電極122を形成することが望ましい。具体的には、基板110にリソグラフィ技術及びエッチング技術に基づき溝部を形成する。そして、全面に、スパッタリング法に基づきTi層を形成する。次いで、基板110の表面のTi層を例えばCMP法で除去することで、第1電極121及び第2電極122を溝部内に残す。こうして、図8の(A)に示すように、基板110に第1電極121及び第2電極122を形成することができる。第1電極121は、基板110に設けられた配線(図示せず)を介して駆動電源(図示せず)に接続されている。また、第2電極122は、基板110に設けられた配線(図示せず)を介して接地されている。
【0057】
[工程−110]
次いで、全面に、スパッタリング法に基づき強磁性材料層を形成した後、強磁性材料層をパターニングすることで、帯状の強磁性材料層111を得る(図8の(B)参照)。強磁性材料層111のパターニングは、イオンミーリング法や反応性エッチング法等に基づき行うことができるし、リフトオフ法を採用してもよい。
【0058】
[工程−120]
その後、第3電極123を形成する。具体的には、全面に、スパッタリング法及び酸化法に基づき非磁性体膜123Aを形成し、更に、スパッタリング法に基づき磁化参照層123Bを形成した後、イオンミーリング法や反応性エッチング法等に基づき非磁性体膜123A及び磁化参照層123Bのパターニングを行う(図8の(C)参照)。
【0059】
[工程−130]
次いで、全面に絶縁材料から成る層間絶縁層114を、例えば、CVD法に基づき形成する。その後、第3電極123の上方の層間絶縁層114の部分に開口部を形成し、開口部内を含む層間絶縁層114上に配線124を形成する。こうして、図1の(A)及び(B)に示した実施例1の情報記憶素子100を完成させることができる。尚、層間絶縁層を構成する材料として、SiO2、NSG(ノンドープ・シリケート・ガラス)、BPSG(ホウ素・リン・シリケート・ガラス)、PSG、BSG、AsSG、SbSG、SOG(スピンオングラス)等のSiOX系材料(シリコン系酸化膜を構成する材料)、SiN、SiON、SiOC、SiOF、SiCN、低誘電率絶縁材料(例えば、フルオロカーボン、シクロパーフルオロカーボンポリマー、ベンゾシクロブテン、環状フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、アモルファス・テトラフルオロエチレン、フッ化アリールエーテル、フッ化ポリイミド、アモルファスカーボン、有機SOG、パリレン、フッ化フラーレン)、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、Silk(The Dow Chemical Co. の商標であり、塗布型低誘電率層間絶縁膜材料)、Flare(Honeywell Electronic Materials Co. の商標であり、ポリアリルエーテル(PAE)系材料)を例示することができる。
【0060】
実施例1の情報記憶素子100にあっては、強磁性材料層111内において磁壁113が長い距離を移動したときでも、情報誤りを起こし易くなるといった問題の発生を確実に回避することができる。それ故、安定して情報を保持しながら、確実に情報の書込み、記録、読出しを行うことができ、1つの連続した磁性体素子に多数の情報が記録可能となり、小型、軽量、且つ、安価な情報記憶装置を実現することができる。
【実施例2】
【0061】
実施例2は、実施例1の変形である。実施例2の情報記憶素子200の模式的な部分的平面図を図9の(A)及び(B)に示す。図9の(A)に示した情報記憶素子200にあっては、3つの情報記憶素子200の第2電極222が共通化されている。一方、図9の(B)に示した情報記憶素子200にあっては、3つの情報記憶素子200の第1電極221が共通化されている。これらの点を除き、実施例2の情報記憶素子200の構成、構造は、実施例1の情報記憶素子100の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。ここで、実施例2の情報記憶素子200、あるいは、後述する各実施例の情報記憶素子を構成する構成要素の参照番号における下2桁の数字と、実施例1の情報記憶素子100を構成する構成要素の参照番号における下2桁の数字が同じである構成要素は、同じ構成要素である。
【実施例3】
【0062】
実施例3も、実施例1の変形であるが、第2の構成に関する。即ち、実施例3の情報記憶素子にあっては、強磁性材料層(強磁性記録層)の比抵抗値が強磁性材料層の軸線方向に沿って変化している。具体的には、強磁性材料層の比抵抗値は、強磁性材料層の他端から一端に向かって、漸次、階段状に減少している。そして、その結果、情報の書込み若しくは情報の読出し時、第1電極と第2電極との間に電流を流すことで、強磁性材料層に温度分布を生じさせることができる。尚、比抵抗値は、例えば、強磁性材料層の所望の部分あるいは領域に窒素イオンや酸素イオンを注入することで変化させればよい。この点を除き、実施例3の情報記憶素子の構成、構造は、実施例1の情報記憶素子100の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0063】
実施例3にあっても、第1電極から第2電極へと磁壁駆動電流を流すと、あるいは又、第2電極から第1電極へと磁壁駆動電流を流すと、強磁性材料層の内部にジュール熱が生成し、生成したジュール熱によって、強磁性材料層には、第2電極側が高く、第1電極側が低い温度分布が生じる。実施例3の情報記憶素子における情報の書込み、読出しの方法は、実質的に、実施例1の情報記憶素子における情報の書込み、読出しの方法と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0064】
尚、実施例3において、実施例1において説明したと同様に、強磁性材料層の断面積を変化させてもよい。また、実施例2において説明した情報記憶素子の構成を実施例3の情報記憶素子に適用することもできる。
【実施例4】
【0065】
実施例4も、実施例1の変形であるが、第3の構成に関する。即ち、実施例4の情報記憶素子400にあっては、模式的な一部断面図を図10に示すが、強磁性材料層411の軸線方向に沿って強磁性材料層411の温度を変化させる温度制御手段440が、強磁性材料層411の近傍に配置されている。このように、温度制御手段440を設けることで、情報の書込み若しくは情報の読出し時、温度制御手段440によって強磁性材料層(強磁性記録層)411に温度分布を生じさせる。
【0066】
図10に模式的な一部断面図を示すように、実施例4において、温度制御手段440は、強磁性材料層411を取り囲む領域の熱伝導率を変化させるための、一種のヒートシンクから成る。具体的には、強磁性材料層411の上に層間絶縁層414が設けられている。そして、強磁性材料層411の一部の上方の層間絶縁層414の部分には凹部が設けられており、凹部を含む層間絶縁層414の上には、強磁性材料層411と平行に、帯状に銅(Cu)層から成る温度制御手段440が形成されている。強磁性材料層411から温度制御手段440の底面までの距離は、強磁性材料層411の他端から一端に向かって、漸次、連続的に短くなっている。尚、漸次、階段状に短くなっていてもよい。このように、強磁性材料層411の軸線方向に沿って強磁性材料層411の温度を変化させるが、温度の異なる強磁性材料層411の領域は、強磁性材料層411に記憶すべき情報の数(ビット数)の群に分けられている。この点を除き、実施例4の情報記憶素子の構成、構造は、実施例1の情報記憶素子100の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。温度制御手段440として、一種のヒートシンクを設ける代わりに、ヒータを設けてもよいし、レーザを用いて強磁性材料層411を加熱してもよい。
【0067】
実施例4にあっても、第1電極421から第2電極422へと磁壁駆動電流を流すと、あるいは又、第2電極422から第1電極421へと磁壁駆動電流を流すと、強磁性材料層411の内部にジュール熱が生成し、生成したジュール熱によって、強磁性材料層411には、第2電極側が高く、第1電極側が低い温度分布が生じる。実施例4の情報記憶素子における情報の書込み、読出しの方法は、実質的に、実施例1の情報記憶素子における情報の書込み、読出しの方法と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0068】
尚、実施例4においても、実施例1において説明したと同様に、強磁性材料層の断面積を変化させてもよい。また、実施例2において説明した情報記憶素子の構成を実施例4の情報記憶素子に適用することもできる。更には、実施例3において説明した情報記憶素子の構成を実施例4の情報記憶素子に適用することもできるし、実施例1及び実施例3において説明した情報記憶素子の構成を組み合わせて実施例4の情報記憶素子に適用することもできる。
【実施例5】
【0069】
実施例5は、本発明の第2の態様に係る情報記憶素子、及び、本発明の第2の態様に係る情報記憶素子における情報書込み・読出し方法に関する。
【0070】
実施例5の情報記憶素子500にあっては、強磁性材料層(強磁性記録層)511の他端から一端に亙り、強磁性材料層511における垂直磁気異方性が単調に増加している。そして、第3電極523に近い強磁性材料層511の領域ほど、垂直磁気異方性が小さい。また、実施例5の情報書込み・読出し方法にあっては、情報の書込み若しくは情報の読出し時、強磁性材料層511の温度を上昇させて強磁性材料層511における磁壁の位置を制御する。実施例5にあっては、第1電極521と第2電極522との間に電流を流すことで生成したジュール熱によって、強磁性材料層511の温度を上昇させる。そして、実施例5にあっては、第1電極521と第2電極522との間に流す電流の値を階段状に変化させる。
【0071】
ここで、強磁性材料層511の他端から一端に亙り、強磁性材料層511における垂直磁気異方性を単調に増加させるためには、強磁性材料層511に、例えば、垂直磁気異方性を増加させるTbイオン、垂直磁気異方性を減少させる酸素イオン、窒素イオンといった各種のイオンをイオン注入することで組成分布を形成すればよい。イオンの組成を傾斜的に注入する方法として、情報記憶素子の片端にフォトレジスト等で遮蔽壁のようなパターンを作製し、このパターンを遮蔽物として斜め方向からイオンを注入する方法を例示することができ、これによって、組成分布を形成可能である。あるいは又、レーザ等を用いた局所加熱法によって強磁性材料層511の結晶性に分布を形成してもよい。強磁性材料層511は、TbGdFeCoに上記方法により酸素イオンを斜め方向から注入し酸素組成を分布させ、垂直磁気異方性を傾斜させた材料から成る。
【0072】
以上の点を除き、実施例5の情報記憶素子500の構成、構造は、実施例1の情報記憶素子100の構成、構造と実質的に同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0073】
以下、実施例5の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法を、情報記憶素子500の概念図である図11の(A)〜(E)、図12の(A)〜(E)、図13の(A)〜(E)を参照して説明する。実施例5の情報書込み・読出し方法も、所謂シーケンシャル方式である。
【0074】
尚、強磁性材料層511の他端から距離L1の地点における強磁性材料層511の垂直磁気異方性の値をMA1とし、距離L2(<L1)の地点における強磁性材料層511の垂直磁気異方性の値をMA2(<MA1)とし、距離L3(<L2)の地点における強磁性材料層511の垂直磁気異方性の値をMA3(<MA2)とする。また、垂直磁気異方性の値MA1にあっては、強磁性材料層511の温度がT1゜C以上のとき、磁壁は移動し易いとする。また、垂直磁気異方性の値MA2にあっては、強磁性材料層511の温度がT2゜C(<T1)以上のとき、磁壁は移動し易いとする。更には、垂直磁気異方性の値MA3にあっては、強磁性材料層511の温度がT3゜C(<T2)以上のとき、磁壁は移動し易いとする。
【0075】
先ず、図11の(A)に示す状態において、第1ビットとして、強磁性材料層511に情報「0」を書き込むことを想定する。この場合、図11の(B)に示すように、第3電極523に電圧+VWを印加して、第3電極523から第2電極522へと電流を流す。これによって、情報「0」(上向きの矢印)が、第3電極523に対向する強磁性材料層511の部分に書き込まれる。
【0076】
そして、これと同時、あるいは、この直後に、図11の(C)に示すように、第1電極521に電圧+Vm1を印加し、第1電極521から第2電極522へと磁壁駆動電流を流す。これによって、強磁性材料層511の内部にジュール熱が生成し、生成したジュール熱によって、強磁性材料層511の温度がT1に上昇する(図11の(D)参照)。しかも、第1電極521から第2電極522へと磁壁駆動電流を流すことによって、電流誘起磁壁移動が生じる。即ち、磁化状態が左から右に移動(伝搬)していく。つまり、磁壁が右に移動していく。そして、磁壁が距離L1の地点を越えると、磁壁の移動は停止する(図11の(C)参照)。その後、第1電極521、第3電極523への電圧の印加を中断する(図11の(E)参照)。こうして、第2電極522から距離L1を越えた強磁性材料層511の領域に情報「0」が書き込まれる。
【0077】
次に、強磁性材料層511に情報「1」を書き込むことを想定する。この場合、図12の(A)に示すように、第3電極523に電圧−VWを印加して、第2電極522から第3電極523へと電流を流す。これによって、情報「1」(下向きの矢印)が、第3電極523に対向する強磁性材料層511の部分に書き込まれる。
【0078】
そして、これと同時、あるいは、この直後に、図12の(B)に示すように、第1電極521に電圧+Vm2(<+Vm1)を印加し、第1電極521から第2電極522へと磁壁駆動電流を流す。これによって、前述したと同様に、生成したジュール熱によって、強磁性材料層511の温度がT2となる(図12の(C)参照)。しかも、電流誘起磁壁移動が生じる。即ち、磁化状態が左から右に移動(伝搬)していく(図12の(B)参照)。つまり、磁壁が右に移動していく。そして、磁壁が距離L2の地点を越えると、磁壁の移動は停止する(図12の(D)参照)。その後、第1電極521、第3電極523への電圧の印加を中断する(図12の(E)参照)。こうして、第2電極522から距離L2を越えた強磁性材料層511の領域に情報「1」が書き込まれる。即ち、この状態にあっては、強磁性材料層511には、2つの情報(0,1)が書き込まれている。
【0079】
次に、強磁性材料層511に情報「0」を書き込むことを想定する。この場合、図13の(A)に示すように、第3電極523に電圧+VWを印加して、第2電極522から第3電極523へと電流を流す。これによって、情報「0」(上向きの矢印)が、第3電極523に対向する強磁性材料層511の部分に書き込まれる。
【0080】
そして、これと同時、あるいは、この直後に、図13の(B)に示すように、第1電極521に電圧+Vm3(<+Vm2)を印加し、第1電極521から第2電極522へと磁壁駆動電流を流す。これによって、前述したと同様に、生成したジュール熱によって、強磁性材料層511の温度がT3となる(図13の(C)参照)。しかも、電流誘起磁壁移動が生じる。即ち、磁化状態が左から右に移動(伝搬)していく(図13の(B)参照)。つまり、磁壁が右に移動していく。そして、磁壁が距離L3の地点を越えると、磁壁の移動は停止する(図13の(D)参照)。その後、第1電極521、第3電極523への電圧の印加を中断する(図13の(E)参照)。こうして、第2電極522から距離L3を越えた強磁性材料層511の領域に情報「0」が書き込まれる。即ち、この状態にあっては、強磁性材料層511には、3つの情報(0,1,0)が書き込まれている。
【0081】
尚、第1電極521から第2電極522へと磁壁駆動電流を流すことで磁壁513を移動させながら、磁壁駆動電流の値を制御することで、強磁性材料層511に情報を、順次、書き込んでもよい。
【0082】
そして、このような操作を、逐次、合計N回、繰り返すことで、Nビットの情報を書き込むことができる。
【0083】
強磁性材料層511に書き込まれた情報を読み出す場合には、第2電極522から第1電極521へと磁壁駆動電流を流す。これによってジュール熱が生成し、強磁性材料層511の温度がT3へと上昇する。併せて、磁壁513が強磁性材料層511の他端に向かって移動する。但し、距離L3を越える領域に位置する磁化状態は移動することができない。そして、第3電極523から第2電極522に電流を流し、磁化領域512の電気抵抗値の高低を調べることで、書き込まれた情報が「0」であるか「1」であるかを判別することができる。ここで、強磁性材料層511と磁化参照層523Bの磁化方向が等しい場合、低抵抗となり、強磁性材料層511と磁化参照層523Bの磁化方向が反平行の場合、高抵抗となる。こうして、強磁性材料層511の他端から距離L3を越えない領域における情報を読み出すことができる。次いで、第2電極522から第1電極521へと流す磁壁駆動電流の値を増加させる。その結果、強磁性材料層511の温度がT2になったとする。この状態にあっては、情報としての磁化状態は、強磁性材料層511の他端に向かって移動する。但し、距離L2を越える領域に位置する磁化状態は移動することができない。こうして、強磁性材料層511における所望の位置(領域)における情報としての磁化状態を確実に読み出すことができる。更に、第2電極522から第1電極521へと流す磁壁駆動電流の値を増加させる。その結果、強磁性材料層511の温度がT1になったとする。この状態にあっては、情報としての磁化状態は、強磁性材料層511の他端に向かって移動する。但し、距離L1を越える領域に位置する磁化状態は移動することができない。こうして、強磁性材料層511における所望の位置(領域)における情報としての磁化状態を確実に読み出すことができる。
【0084】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが,本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において説明した情報記憶素子の構成や構造、構成材料、製造方法等は例示であり、適宜、変更することができる。強磁性材料層(強磁性記録層)からの情報の読出しとして、代替的に、強磁性材料層における磁界の方向を検出することで情報が読み出される形態とすることもできる。ここで、この場合には、例えば、磁界検出手段として、具体的には、コイルや配線を挙げることができる。
【0085】
実施例1の情報記憶素子の変形例を図14に模式的な一部断面図を示すように、情報記憶素子600における帯状の強磁性材料層(強磁性記録層)611を、例えば、「U」字状の立体形状とすることもできる。係る情報記憶素子600は、例えば、以下の方法で製造することができる。即ち、シリコン半導体基板から成る基板610に、磁化参照層623B及び非磁性体膜623Aの積層構造を有する第3電極623を形成した後、基板610上に、層間絶縁層615を形成する。次いで、第3電極623の上方の層間絶縁層615に開口部を形成し、係る開口部内に強磁性材料層611を形成し、強磁性材料層611を絶縁膜616で被覆する。その後、開口部の底部に位置する絶縁膜616の部分、層間絶縁層615の頂面上の絶縁膜616の一部分を除去する。そして、開口部内を第2電極622で埋め込み、更には、層間絶縁層615の頂面上に露出した強磁性材料層611上に第1電極621を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1の(A)及び(B)は、実施例1の情報記憶素子の模式的な部分的平面図及び模式的な一部断面図である。
【図2】図2の(A)〜(E)は、実施例1の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法を説明するための情報記憶素子の概念図、及び、強磁性材料層の温度分布を模式的に示す図である。
【図3】図3の(A)〜(E)は、図2の(E)に引き続き、実施例1の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法を説明するための情報記憶素子の概念図、及び、強磁性材料層の温度分布を模式的に示す図である。
【図4】図4の(A)〜(E)は、図3の(E)に引き続き、実施例1の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法を説明するための情報記憶素子の概念図、及び、強磁性材料層の温度分布を模式的に示す図である。
【図5】図5は、CoFeCrB合金層とGdFeCo合金層の積層構造体における垂直磁気異方性の温度変化を示すグラフである。
【図6】図6は、実施例1の情報記憶素子の第1電極及び第3電極に印加する電圧のパターンを示すグラフである。
【図7】図7は、実施例1の情報記憶素子の第3電極からの電圧出力変化を再生信号電圧として測定した結果を示すグラフである。
【図8】図8の(A)〜(C)は、実施例1の情報記憶素子の製造方法を説明するための基板等の模式的な一部断面図である。
【図9】図9の(A)及び(B)は、実施例2の情報記憶素子の模式的な部分的平面図である。
【図10】図10は、実施例4の情報記憶素子の模式的な一部断面図である。
【図11】図11の(A)〜(E)は、実施例5の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法を説明するための情報記憶素子の概念図、及び、強磁性材料層の温度分布を模式的に示す図である。
【図12】図12の(A)〜(E)は、図11の(E)に引き続き、実施例5の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法を説明するための情報記憶素子の概念図、及び、強磁性材料層の温度分布を模式的に示す図である。
【図13】図13の(A)〜(E)は、図12の(E)に引き続き、実施例5の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法を説明するための情報記憶素子の概念図、及び、強磁性材料層の温度分布を模式的に示す図である。
【図14】図14は、実施例1の情報記憶素子の変形例の模式的な一部断面図である。
【符号の説明】
【0087】
100,200,400,500,600・・・情報記憶素子、110,210,610・・・基板、111,211,411,511,611・・・強磁性材料層(強磁性記録層)、112,512・・・磁化領域、113,513・・・磁壁、114,414,615・・・層間絶縁層、121,221,421,521,621・・・第1電極、122,222,422,522,622・・・第2電極、123,223,423,523,623・・・第3電極、123A,223A,423A,523A,623A・・・非磁性体膜、123B,223B,423B,523B,623B・・・磁化参照層、124・・・配線、440・・・温度制御手段、616・・・絶縁膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記憶素子、及び、情報記憶素子における情報書込み・読出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等の情報機器においては、現在、外部記憶装置として、ハードディスクドライブが広く用いられている。しかしながら、ハードディスクドライブは回転機構を伴うため、小型化や省電力化が難しい。そこで、小型機器用の外部記憶装置として、フラッシュメモリを用いたシリコンディスクドライブ(SSD)が用いられ始めているが、価格が高く、記憶容量も十分ではない。それ故、大記憶容量で、不揮発性、且つ、高速の情報書込み・読出しが可能な記憶装置が強く望まれている。
【0003】
このような記憶装置の1形態として、情報を磁性体の磁化状態として記録する磁気メモリの発展型である電流誘起磁壁移動型の磁気メモリが考案されている(例えば、特開2005−123617や特開2006−237183参照)。この電流誘起磁壁移動型の磁気メモリにあっては、帯状の強磁性材料層を複数の磁化領域(磁区)に分割して、強磁性材料層に電流を流すことで、磁化領域の境界である磁壁を移動させながら、強磁性材料層の磁化領域に情報を書き込み、また、情報の読み出しを行う。
【0004】
【特許文献1】特開2005−123617
【特許文献2】特開2006−237183
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような電流誘起磁壁移動型の磁気メモリには、情報の保持、安定した磁壁の移動に未だ問題がある。磁壁を移動させ易くするためには、強磁性材料層の厚さを薄くしたり、強磁性材料層に軟磁性材料を用いることが考えられるが、このような解決手段は、情報を安定に保持することと反する。また、強磁性材料層内において磁壁が長い距離を移動したとき、磁壁間の距離が変化して情報誤りを起こし易くなる虞がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、安定した磁壁の移動を可能とし、確実に情報の書き込み、保持、読み出しを行い得る磁壁移動型の磁気メモリから成る情報記憶素子、及び、係る情報記憶素子における情報書込み・読出し方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る情報記憶素子、また、上記の目的を達成するための本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る情報書込み・読出し方法における情報記憶素子は、
帯状の強磁性材料層(強磁性記録層)を備えており、
強磁性材料層の一端には第1電極が設けられており、強磁性材料層の他端には第2電極が設けられており、
第1電極と第2電極との間に電流を流すことで電流誘起磁壁移動が生じ、
強磁性材料層において、磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれ、若しくは、磁化状態が情報として読み出され、
各磁化領域における磁化方向は、強磁性材料層の厚さ方向に平行である。
【0008】
そして、本発明の第1の態様に係る情報記憶素子にあっては、情報の書込み若しくは情報の読出し時、強磁性材料層の他端から一端に亙り単調に低下する温度分布を、強磁性材料層に生じさせる。
【0009】
また、本発明の第2の態様に係る情報記憶素子にあっては、強磁性材料層の他端から一端に亙り、強磁性材料層における垂直磁気異方性が単調に増加している。
【0010】
更には、本発明の第1の態様に係る情報記憶素子における情報書込み・読出し方法(以下、『本発明の第1の態様に係る情報書込み・読出し方法』と呼ぶ)にあっては、情報の書込み若しくは情報の読出し時、強磁性材料層の他端から一端に亙り、強磁性材料層に単調に低下する温度分布を生じさせることで、強磁性材料層における磁壁の位置を制御する。
【0011】
また、本発明の第2の態様に係る情報記憶素子における情報書込み・読出し方法(以下、『本発明の第2の態様に係る情報書込み・読出し方法』と呼ぶ)にあっては、
情報記憶素子は、強磁性材料層の他端から一端に亙り、強磁性材料層における垂直磁気異方性が単調に増加しており、
情報の書込み若しくは情報の読出し時、強磁性材料層の温度を上昇させて強磁性材料層における磁壁の位置を制御する。
【0012】
本発明の第1の態様若しくは第2の態様に係る情報書込み・読出し方法、あるいは、本発明の第1の態様若しくは第2の態様に係る情報記憶素子にあっては、磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれる。係る情報の書込み形態として、第3電極の構成、構造にも依るが、GMR(Giant MagnetoResistance,巨大磁気抵抗)効果あるいはTMR(Tunnel MagnetoResistance)効果に基づき、電流によるスピン注入磁化反転によって情報が書き込まれる形態を挙げることができる。あるいは又、電流によって形成された磁界に基づき情報が書き込まれる形態を挙げることができる。また、磁化状態が情報として読み出されるが、係る情報の読出し形態として、強磁性材料層における電気抵抗値の高低を検出する形態を挙げることができるし、あるいは又、強磁性材料層における磁界の方向を検出する形態を挙げることができる。
【発明の効果】
【0013】
一般に、磁化領域における磁化方向が強磁性材料層の厚さ方向に平行である場合、即ち、磁化領域が所謂垂直磁化されている場合、強磁性材料層の温度が上昇し、垂直磁気異方性が減少(低下)すると、磁壁は移動し易くなる。これとは逆に、強磁性材料層の温度が下降し、垂直磁気異方性が増加(上昇)すると、磁壁は移動し難くなる。
【0014】
本発明の第1の態様に係る情報記憶素子あるいは情報書込み・読出し方法にあっては、情報の書込み若しくは情報の読出し時、強磁性材料層の他端から一端に亙り単調に低下する温度分布を強磁性材料層に生じさせる。尚、強磁性材料層の温度がT0゜C未満のとき、磁壁は移動し難く、強磁性材料層の温度がT0゜C以上のとき、磁壁は移動し易いとする。ここで、強磁性材料層の他端から距離L1の地点における強磁性材料層の温度がT0になったとする。この状態で強磁性材料層に情報を書き込むと、書き込まれた情報である上向きの磁化状態あるいは下向きの磁化状態は、第1電極から第2電極へと電流を流すことで生じるスピントルクに起因した電流誘起磁壁移動によって、強磁性材料層の一端に向かって移動する。そして、距離L1の地点を越えたとき、上向きの磁化状態あるいは下向きの磁化状態の移動(磁壁の移動)が停止し、係る距離L1の地点を越えた領域において情報としての磁化状態が固定される。次いで、強磁性材料層の他端から一端に亙り単調に低下する温度分布を変化させた結果、強磁性材料層の他端から距離L2(<L1)の地点における強磁性材料層の温度がT0になったとする。この状態で強磁性材料層に情報を書き込むと、距離L2の地点を越えたとき、情報としての磁化状態の移動(磁壁の移動)が停止し、係る距離L2の地点を越えた領域において情報としての磁化状態が固定される。こうして、強磁性材料層における所望の位置(領域)に確実に情報としての磁化状態を書き込み、固定することができる。
【0015】
情報の読出し時、強磁性材料層の他端から距離L2の地点における強磁性材料層の温度がT0になったとする。第2電極から第1電極へと電流を流すことで生じる電流誘起磁壁移動によって、情報としての磁化状態は、強磁性材料層の他端に向かって移動する。但し、距離L2を越える領域に位置する磁化状態は移動することができない。こうして、強磁性材料層の他端から距離L2を越えない領域における情報を読み出すことができる。次いで、強磁性材料層の他端から一端に亙り単調に低下する温度分布を変化させた結果、強磁性材料層の他端から距離L1(>L2)の地点における強磁性材料層の温度がT0になったとする。この状態にあっては、情報としての磁化状態は、強磁性材料層の他端に向かって移動する。但し、距離L1を越える領域に位置する磁化状態は移動することができない。こうして、強磁性材料層における所望の位置(領域)における情報としての磁化状態を確実に読み出すことができる。尚、情報の読出し時、記憶された情報は破壊されるので、情報の読出しが完了した後、情報を書き込んでおくか、他の情報記憶素子に情報を移しておく必要がある。また、情報書込み・読出し方法は、所謂シーケンシャル方式である。
【0016】
本発明の第2の態様に係る情報記憶素子あるいは情報書込み・読出し方法にあっては、情報の書込み若しくは情報の読出し時、強磁性材料層の温度を上昇させる。ここで、強磁性材料層の他端から距離L1の地点における強磁性材料層の垂直磁気異方性の値をMA1とし、距離L2(<L1)の地点における強磁性材料層の垂直磁気異方性の値をMA2(<MA1)とする。また、垂直磁気異方性の値MA1にあっては、強磁性材料層の温度がT1゜C以上のとき、磁壁は移動し易いとする。また、垂直磁気異方性の値MA2にあっては、強磁性材料層の温度がT2゜C(<T1)以上のとき、磁壁は移動し易いとする。
【0017】
情報の書込み時、強磁性材料層の温度をT1゜Cとする。この状態で強磁性材料層に情報を書き込むと、情報としての磁化状態は、第1電極から第2電極へと電流を流すことで生じる電流誘起磁壁移動によって、強磁性材料層の一端に向かって移動する。そして、距離L1の地点を越えたとき、情報としての磁化状態の移動(磁壁の移動)が停止し、係る距離L1の地点を越えた領域において情報としての磁化状態が固定される。次いで、強磁性材料層の温度を低下させてT2゜Cとする。この状態で強磁性材料層に情報を書き込むと、情報としての磁化状態は、距離L2の地点を越えたとき、移動が停止し、係る距離L2の地点を越えた領域において情報としての磁化状態が固定される。こうして、強磁性材料層における所望の位置(領域)に確実に情報としての磁化状態を書き込み、固定することができる。
【0018】
情報の読出し時、強磁性材料層の温度をT2とする。第2電極から第1電極へと電流を流すことで生じる電流誘起磁壁移動によって、情報としての磁化状態は、強磁性材料層の他端に向かって移動する。但し、距離L2を越える領域に位置する磁化状態は移動することができない。こうして、強磁性材料層の他端から距離L2を越えない領域における情報を読み出すことができる。次いで、強磁性材料層の温度をT1に上昇させる。この状態にあっては、情報としての磁化状態は、強磁性材料層の他端に向かって移動する。但し、距離L1を越える領域に位置する磁化状態は移動することができない。こうして、強磁性材料層における所望の位置(領域)における情報としての磁化状態を確実に読み出すことができる。尚、情報の読出し時、記憶された情報は破壊されるので、情報の読出しが完了した後、情報を書き込んでおくか、他の情報記憶素子に情報を移しておく必要がある。また、情報書込み・読出し方法は、所謂シーケンシャル方式である。
【0019】
そして、以上の結果として、強磁性材料層内において磁壁が長い距離を移動したときでも、情報誤りを起こし易くなるといった問題の発生を確実に回避することができる。それ故、本発明によれば、安定して情報を保持しながら、確実に情報の書込み、記録、読出しを行うことができ、1つの連続した磁性体素子に多数の情報が記録可能となり、小型、軽量、且つ、安価な情報記憶装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明する。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明の情報記憶素子、及び、情報記憶素子における情報書込み・読出し方法、全般に関する説明
2.実施例1(本発明の第1の態様に係る情報記憶素子及び本発明の第1の態様に係る情報記憶素子における情報書込み・読出し方法:第1の構成)
3.実施例2(実施例1の変形例)
4.実施例3(実施例1の変形例:第2の構成)
5.実施例4(実施例1の変形例:第3の構成)
6.実施例5(本発明の第2の態様に係る情報記憶素子及び本発明の第2の態様に係る情報記憶素子における情報書込み・読出し方法)
【0021】
本発明の第1の態様に係る情報記憶素子あるいは情報書込み・読出し方法、本発明の第2の態様に係る情報記憶素子あるいは情報書込み・読出し方法においては、
強磁性材料層の一部に接して設けられた第3電極を更に備えており、
第3電極は、強磁性材料層の一部に接した非磁性体膜、及び、その上に形成された磁化参照層(固着層、磁化固定層とも呼ばれる)から構成されており、
第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれる形態とすることができる。そして、この場合、第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域における電気抵抗値が情報として第3電極から読み出される構成とすることができる。尚、第2電極と第3電極とを、強磁性材料層を挟んで第2電極と第3電極とが対向した状態に配置してもよいし、第2電極と第3電極とを、強磁性材料層の同じ側に配置してもよいし、第2電極と第3電極とを、強磁性材料層の異なる側に配置してもよい。また、強磁性材料層の他端から一端に亙り単調に低下する温度分布として、第3電極に近い強磁性材料層の領域ほど、温度上昇が大きい温度分布とすることができる。
【0022】
あるいは又、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る情報書込み・読出し方法にあっては、強磁性材料層の一部に隣接して磁界検出手段が更に設けられており、各磁化領域において生成した磁場を情報として磁界検出手段によって読み出す形態とすることができる。磁界検出手段として、具体的には、磁界を検出するコイルあるいは配線を挙げることができる。各磁化領域において生成した磁場の方向を、情報として、磁界検出手段であるコイルや配線によって読み出せばよい。尚、情報の読出し方法として、その他、光磁気効果(カー効果)を用いる方法を採用してもよい。
【0023】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明の第1の態様に係る情報記憶素子あるいは情報書込み・読出し方法にあっては、強磁性材料層の軸線方向と直交する仮想平面で強磁性材料層を切断したときの強磁性材料層の断面積が、強磁性材料層の軸線方向に沿って変化しており、以て、情報の書込み若しくは情報の読出し時、第1電極と第2電極との間に電流を流すことで、強磁性材料層に温度分布を生じさせる構成とすることができる。尚、このような構成を、便宜上、『第1の構成』と呼ぶ。あるいは又、強磁性材料層の比抵抗値が強磁性材料層の軸線方向に沿って変化しており、以て、情報の書込み若しくは情報の読出し時、第1電極と第2電極との間に電流を流すことで、強磁性材料層に温度分布を生じさせる構成とすることができる。尚、このような構成を、便宜上、『第2の構成』と呼ぶ。あるいは又、強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層の温度を変化させる温度制御手段が、強磁性材料層近傍に配置されており、以て、情報の書込み若しくは情報の読出し時、温度制御手段によって強磁性材料層に温度分布を生じさせる構成とすることができる。尚、このような構成を、便宜上、『第3の構成』と呼ぶ。
【0024】
強磁性材料層の断面積の強磁性材料層の軸線方向に沿った変化(具体的には、強磁性材料層の他端から一端に向かって、漸次、連続的に若しくは階段状に断面積が増加する変化)は、強磁性材料層の幅の設定、あるいは又、強磁性材料層の厚さの設定、あるいは又、強磁性材料層の幅及び厚さの設定によって得ることができる。強磁性材料層の軸線方向に沿った断面積の変化量は、情報記憶素子に要求される仕様に応じて、適宜、決定すればよい。また、比抵抗値は、例えば、強磁性材料層の所望の部分あるいは領域に窒素イオンや酸素イオンを注入することで変化させることができる。強磁性材料層の軸線方向に沿った比抵抗値の変化(具体的には、強磁性材料層の他端から一端に向かって、漸次、連続的に若しくは階段状に比抵抗値が減少する変化)は、情報記憶素子に要求される仕様に応じて、適宜、決定すればよい。
【0025】
温度制御手段として、強磁性材料層を加熱するためのヒータを挙げることができ、係るヒータを強磁性材料層の近傍に配置すればよい。ヒータは、例えば、パターニングされた高抵抗体層から構成することができる。高抵抗体層を構成する材料として、例えば、シリコンカーバイド(SiC)やSiCNといったカーボン系抵抗体材料、SiN系材料、アモルファスシリコン等の半導体抵抗体材料、酸化ルテニウム(RuO2)、酸化タンタル、窒化タンタル、酸化クロム、酸化チタン等の高融点金属酸化物や高融点金属窒化物を例示することができる。また、温度制御手段として、強磁性材料層を加熱するためのレーザを挙げることもできる。あるいは又、強磁性材料層の周囲の熱伝導を変化させてもよい。即ち、強磁性材料層を取り囲む領域の熱伝導率を変化させてもよい。具体的には、例えば、一種のヒートシンクを設ければよく、このような形態にあっては、係るヒートシンクが温度制御手段に相当する。
【0026】
一方、本発明の第2の態様に係る情報記憶素子あるいは情報書込み・読出し方法における上記の好ましい形態にあっては、第3電極に近い強磁性材料層の領域ほど、垂直磁気異方性が小さい構成とすることができる。
【0027】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様に係る情報記憶素子あるいは情報書込み・読出し方法にあっては、第1電極と第2電極との間に電流を流すことで生成したジュール熱によって、強磁性材料層に温度分布を生じさせる形態とすることができ、この場合、第1電極と第2電極との間に流す電流の値を、階段状に、若しくは、連続的に変化させる構成とすることができる。
【0028】
一方、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明の第2の態様に係る情報記憶素子あるいは情報書込み・読出し方法にあっても、第1電極と第2電極との間に電流を流すことで生成したジュール熱によって、強磁性材料層の温度を上昇させる形態とすることができる。
【0029】
本発明の第1の態様に係る情報記憶素子あるいは情報書込み・読出し方法において、記憶する情報のビット数をNとしたとき、異なる温度分布をN回、生じさせればよい。また、本発明の第2の態様に係る情報記憶素子あるいは情報書込み・読出し方法において、記憶する情報のビット数をNとしたとき、異なる温度上昇をN回、生じさせればよい。温度分布や温度上昇は、情報記憶素子に要求される仕様に応じて、適宜、決定すればよい。
【0030】
強磁性材料層の平面形状は帯状(ストライプ状)であればよく、直線状であってもよいし、曲がっていてもよいし、「U」字状等の立体形状とすることもできるし、「Y」字状等に分岐した形状とすることもできる。
【0031】
強磁性材料層(強磁性記録層)を構成する材料として、磁壁を少ない電流で動かすためにスピントルク効率のよい材料が好ましく、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)といった強磁性材料の合金(例えば、Co−Fe、Co−Fe−Ni、Ni−Fe等)にガドリニウム(Gd)が添加された合金を挙げることができる。更には、垂直磁気異方性を一層増加させるために、係る合金にテルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)等の重希土類を添加してもよいし、これらを含む合金を積層してもよい。強磁性材料層の結晶性は、本質的に任意であり、多結晶であってもよいし、単結晶であってもよいし、非晶質であってもよい。また、強磁性材料層は、単層構成とすることもできるし、上述したとおり複数の異なる強磁性材料層を積層した積層構成とすることもできるし、強磁性材料層と非磁性材料層を積層した積層構成とすることもできる。
【0032】
強磁性材料層は、例えば、スパッタリング法、イオンビーム堆積法、真空蒸着法に例示される物理的気相成長法(PVD法)、ALD(Atomic Layer Deposition)法に代表される化学的気相成長法(CVD法)にて形成することができる。強磁性材料層のパターニングは、反応性イオンエッチング法(RIE法)やイオンミーリング法(イオンビームエッチング法)にて行うことができる。
【0033】
本発明の第2の態様に係る情報記憶素子あるいは情報書込み・読出し方法において、強磁性材料層の他端から一端に亙り、強磁性材料層における垂直磁気異方性を単調に増加させるための方法として、強磁性材料層にイオン注入等を施すことで組成分布を形成する方法や、レーザ等を用いた局所加熱法によって強磁性材料層の結晶性に分布を形成する方法を挙げることができる。
【0034】
第1電極や第2電極は、Cu、Au、Pt、Ti等の単層構造から成り、あるいは又、CrやTi等から成る下地層と、その上に形成されたCu層、Au層、Pt層等の積層構造を有していてもよい。更には、W、Ru、Ta等の単層あるいはCu、Cr、Ti等との積層構造から構成することもできる。これらの電極は、例えば、スパッタリング法に例示されるPVD法にて形成することができる。
【0035】
第3電極と強磁性材料層とによって、TMR効果あるいはGMR効果を有する一種の情報記録構造体が構成される。ここで、磁化参照層、非磁性体膜及び強磁性材料層によって構成されるTMR効果を有する情報記録構造体とは、磁化参照層と強磁性材料層との間に、トンネル絶縁膜として機能する非磁性体膜が挟まれた構造を指す。ここで、第3電極を構成する磁化参照層を構成する材料として、上述した強磁性材料層を構成する材料を挙げることができるし、積層フェリ構造[反強磁性的結合を有する積層構造であり、合成反強磁性結合(SAF:Synthetic Antiferromagnet)とも呼ばれる]を有する構成とすることができるし、静磁結合構造を有する構成とすることができる。積層フェリ構造とは、例えば、磁性材料層/ルテニウム(Ru)層/磁性材料層の3層構造(具体的には、例えば、CoFe/Ru/CoFeの3層構造、CoFeB/Ru/CoFeBの3層構造)を有し、ルテニウム層の厚さによって、2つの磁性材料層の層間交換結合が、反強磁性的あるいは強磁性的になる構造を指し、例えば、 S. S. Parkin et. al, Physical Review Letters, 7 May, pp 2304-2307 (1990) に報告されている。尚、2つの磁性材料層の層間交換結合が反強磁性的になる構造を、積層フェリ構造と呼ぶ。また、2つの磁性材料層において、磁性材料層の端面からの漏洩磁界によって反強磁性的結合が得られる構造を、静磁結合構造と呼ぶ。第3電極を構成する非磁性体膜を構成する材料として、マグネシウム酸化物(MgO)、マグネシウム窒化物、アルミニウム酸化物(AlOX)、アルミニウム窒化物(AlN)、シリコン酸化物、シリコン窒化物、TiO2あるいはCr2O3、Ge、NiO、CdOX、HfO2、Ta2O5、BN、ZnS等の絶縁材料を挙げることができる。一方、GMR効果を有する情報記録構造体を構成する非磁性体膜を構成する材料として、Cu、Ru、Cr、Au、Ag、Pt、Ta等、あるいは、これらの合金といった導電性材料を挙げることができるし、導電性が高ければ(抵抗率が数百μΩ・cm以下)、任意の非金属材料としてもよいが、強磁性材料層や磁化参照層と界面反応を起こし難い材料を、適宜、選択することが望ましい。
【0036】
絶縁材料から成る非磁性体膜は、例えば、スパッタリング法にて形成された金属膜を酸化若しくは窒化することにより得ることができる。より具体的には、非磁性体膜を構成する絶縁材料としてアルミニウム酸化物(AlOX)、マグネシウム酸化物(MgO)を用いる場合、例えば、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムやマグネシウムを大気中で酸化する方法、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムやマグネシウムをプラズマ酸化する方法、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムやマグネシウムをIPCプラズマで酸化する方法、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムやマグネシウムを酸素中で自然酸化する方法、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムやマグネシウムを酸素ラジカルで酸化する方法、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムやマグネシウムを酸素中で自然酸化させるときに紫外線を照射する方法、アルミニウムやマグネシウムを反応性スパッタリング法にて成膜する方法、アルミニウム酸化物(AlOX)やマグネシウム酸化物(MgO)をスパッタリング法にて成膜する方法を例示することができる。
【実施例1】
【0037】
実施例1は、本発明の第1の態様に係る情報記憶素子、及び、本発明の第1の態様に係る情報記憶素子における情報書込み・読出し方法に関し、具体的には、第1の構成に関する。
【0038】
模式的な部分的平面図を図1の(A)に示し、図1の(A)の矢印B−Bに沿った模式的な一部断面図を図1の(B)に示すように、実施例1の情報記憶素子100は、帯状の強磁性材料層(強磁性記録層)111を備えている。また、強磁性材料層111の一端には第1電極121が設けられており、強磁性材料層111の他端には第2電極122が設けられている。そして、実施例1の情報記憶素子100にあっては、第1電極121と第2電極122との間に電流を流すことで電流誘起磁壁移動が生じる。ここで、第1電極121と第2電極122との間に流す電流を、『磁壁駆動電流』と呼ぶ。強磁性材料層111において、磁化領域112に磁化状態が情報として書き込まれ、若しくは、磁化状態が情報として読み出される。更には、各磁化領域112における磁化方向は、強磁性材料層の厚さ方向に平行である。参照番号113は、磁化領域112と磁化領域112の境界(界面)である磁壁を示す。図1の(A)にあっては、層間絶縁層114の図示を省略している。また、参照番号124は、層間絶縁層114上に形成され、第3電極123に接続された配線を指す。図1の(A)及び(B)に示した情報記憶素子100にあっては、強磁性材料層111の下に第1電極121、第2電極122を設け、強磁性材料層111の上に第3電極123を設けたが、これとは逆に、強磁性材料層111の上に第1電極121、第2電極122を設け、強磁性材料層111の下に第3電極123を設けてもよい。
【0039】
実施例1の情報記憶素子100は、強磁性材料層111の一部に接して設けられた第3電極123を更に備えている。第3電極123は、強磁性材料層111を挟んで、第2電極122と対向して配置されている。ここで、第3電極123は、強磁性材料層111の一部に接した非磁性体膜123A、及び、その上に形成された磁化参照層123Bから構成されている。磁化参照層123Bは、磁化領域112に記録する磁化の方向を決めるための基準磁化層として機能する。そして、第2電極121と第3電極123との間に電流を流すことで、各磁化領域112に磁化状態が情報として書き込まれる。また、第2電極121と第3電極123との間に電流を流すことで、各磁化領域112における電気抵抗値(電気抵抗値の高低)が情報として第3電極123から読み出される。第3電極123と強磁性材料層111とによって、TMR効果を有する一種の情報記録構造体が構成され、電流によるスピン注入磁化反転によって磁化領域112が形成され、磁壁113が生じ、強磁性材料層111に情報が書き込まれる。即ち、強磁性材料層111においては、電流の流れる方向により、その磁化の方向が、磁化参照層123Bに対して平行又は反平行に変えられる。
【0040】
そして、実施例1にあっては、情報の書込み若しくは情報の読出し時、強磁性材料層111の他端から一端に亙り単調に低下する温度分布を、強磁性材料層111に生じさせる。そして、これによって、強磁性材料層111における磁壁113の位置を制御する。具体的には、強磁性材料層111の軸線方向と直交する仮想平面で強磁性材料層111を切断したときの強磁性材料層111の断面積が、強磁性材料層111の軸線方向に沿って変化している。より具体的には、強磁性材料層111の他端から一端に向かって、漸次、連続的に断面積が増加する変化する。即ち、強磁性材料層111の断面積は、第1電極121に近づくほど、大きな値となる。そして、これによって、情報の書込み若しくは情報の読出し時、第1電極121と第2電極122との間に電流を流すことで、強磁性材料層111に温度分布を生じさせることができる。具体的には、第1電極121に近づくほど、強磁性材料層111の温度が低い状態を形成することができる。
【0041】
実施例1において、帯状の強磁性材料層111は、Taから成る下地層(厚さ:2nm)、TbCo合金層(厚さ:2nm)、GdFeCo合金層(厚さ:8nm)及びCoFeCrB合金層(厚さ:2nm)の積層構造から成る。強磁性材料層111の幅は、第2電極122から第1電極121に向かって0.10μmから0.15μmへと、漸次、変化する。尚、第1電極121と第2電極122との間の距離は1.3μmである。また、第1電極121と第2電極122の間の強磁性材料層111の電気抵抗値は820Ωである。図5に、CoFeCrB合金層とGdFeCo合金層の積層構造体における垂直磁気異方性の温度変化を示す。垂直磁気異方性は150゜Cまで低下し、それ以上の温度ではほぼ一定となる。第3電極123を構成する非磁性体膜123Aは、厚さ0.8nmのMgOから成り、磁化参照層123Bは、CoFeB合金層(厚さ:1nm)とTbCo合金層(厚さ:20nm)の積層膜から成る。第1電極121及び第2電極122はチタン層から構成されており、例えば、第1電極121は駆動電源(図示せず)に接続され、第2電極122は接地されている。尚、第3電極123と強磁性材料層111とによって、GMR効果を有する一種の情報記録構造体を構成してもよく、この場合には、非磁性体膜123Aを、例えば、Cuから構成すればよい。
【0042】
以下、実施例1の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法を、情報記憶素子100の概念図である図2の(A)〜(E)、図3の(A)〜(E)、図4の(A)〜(E)を参照して説明する。実施例1の情報書込み・読出し方法は、所謂シーケンシャル方式である。
【0043】
図2〜図4、後述する図11〜図13において、強磁性材料層111内部に描いた矢印は、磁化の方向を示し、便宜上、上向きの矢印を情報「0」とし、下向きの矢印を情報「1」とする。また、第3電極123に描いた矢印は、磁化参照層123Bにおける磁化の方向を示す。そして、第3電極123から第2電極122に電流を流すことで、情報「0」(上向きの矢印)が、第3電極123に対向する強磁性材料層111の部分に書き込まれる。一方、第2電極122から第3電極123に電流を流すことで、情報「1」(下向きの矢印)が、第3電極123に対向する強磁性材料層111の部分に書き込まれる。尚、強磁性材料層の温度がT0゜C未満のとき、磁壁は移動し難く、強磁性材料層の温度がT0゜C以上のとき、磁壁は移動し易いとする。
【0044】
先ず、図2の(A)に示す状態において、第1ビットとして、強磁性材料層111に情報「0」を書き込むことを想定する。尚、図2の(A)あるいは後述する図11の(A)にあっては、強磁性材料層111,511に以前の情報が残されている場合があるが、係る情報の図示は省略している。また、強磁性材料層111,511の磁化の方向の初期化は、外部から磁場を強磁性材料層111,511に加えることで行うことができる。
【0045】
そして、この場合、図2の(B)に示すように、第3電極123に電圧+VWを印加して、第3電極123から第2電極122へと電流を流す。これによって、情報「0」(上向きの矢印)が、第3電極123に対向する強磁性材料層111の部分に書き込まれる。
【0046】
そして、これと同時、あるいは、この直後に、図2の(C)に示すように、第1電極121に電圧+Vm1を印加し、第1電極121から第2電極122へと磁壁駆動電流を流す。これによって、強磁性材料層111の内部にジュール熱が生成し、生成したジュール熱によって、強磁性材料層111には、第2電極側が高く、第1電極側が低い温度分布が生じる(図2の(D)参照)。尚、第2電極122から距離L1における強磁性材料層111の部分がT0となるような温度分布を生じさせる。しかも、第1電極121から第2電極122へと磁壁駆動電流を流すことによって、電流誘起磁壁移動が生じる。即ち、磁化状態が左から右に移動(伝搬)していく。つまり、磁壁が右に移動していく。そして、磁壁が距離L1の地点を越えると、磁壁の移動は停止する。その後、第1電極121、第3電極123への電圧の印加を中断する(図2の(E)参照)。こうして、第2電極122から距離L1を越えた強磁性材料層111の領域に情報「0」が書き込まれる。
【0047】
次に、強磁性材料層111に情報「1」を書き込むことを想定する。この場合、図3の(A)に示すように、第3電極123に電圧−VWを印加して、第2電極122から第3電極123へと電流を流す。これによって、情報「1」(下向きの矢印)が、第3電極123に対向する強磁性材料層111の部分に書き込まれる。
【0048】
そして、これと同時、あるいは、この直後に、図3の(B)に示すように、第1電極121に電圧+Vm2(<+Vm1)を印加し、第1電極121から第2電極122へと磁壁駆動電流を流す。これによって、前述したと同様に、生成したジュール熱によって、強磁性材料層111には、第2電極側が高く、第1電極側が低い温度分布が生じる。但し、第2電極122から距離L2(<L1)における強磁性材料層111の部分がT0となるような温度分布を生じさせる(図3の(C)参照)。しかも、電流誘起磁壁移動が生じる。即ち、磁化状態が左から右に移動(伝搬)していく(図3の(B)参照)。つまり、磁壁が右に移動していく。そして、磁壁が距離L2の地点を越えると、磁壁の移動は停止する(図3の(D)参照)。その後、第1電極121、第3電極123への電圧の印加を中断する(図3の(E)参照)。こうして、第2電極122から距離L2を越えた強磁性材料層111の領域に情報「1」が書き込まれる。即ち、この状態にあっては、強磁性材料層111には、2つの情報(0,1)が書き込まれている。
【0049】
次に、強磁性材料層111に情報「0」を書き込むことを想定する。この場合、図4の(A)に示すように、第3電極123に電圧+VWを印加して、第2電極122から第3電極123へと電流を流す。これによって、情報「0」(上向きの矢印)が、第3電極123に対向する強磁性材料層111の部分に書き込まれる。
【0050】
そして、これと同時、あるいは、この直後に、図4の(B)に示すように、第1電極121に電圧+Vm3(<+Vm2)を印加し、第1電極121から第2電極122へと磁壁駆動電流を流す。これによって、前述したと同様に、生成したジュール熱によって、強磁性材料層111には、第2電極側が高く、第1電極側が低い温度分布が生じる。但し、第2電極122から距離L3(<L2)における強磁性材料層111の部分がT0となるような温度分布を生じさせる(図4の(C)参照)。しかも、電流誘起磁壁移動が生じる。即ち、磁化状態が左から右に移動(伝搬)していく(図4の(B)参照)。つまり、磁壁が右に移動していく。そして、磁壁が距離L3の地点を越えると、磁壁の移動は停止する(図4の(D)参照)。その後、第1電極121、第3電極123への電圧の印加を中断する(図4の(E)参照)。こうして、第2電極122から距離L3を越えた強磁性材料層111の領域に情報「0」が書き込まれる。即ち、この状態にあっては、強磁性材料層111には、3つの情報(0,1,0)が書き込まれている。
【0051】
尚、第1電極121から第2電極122へと磁壁駆動電流を流すことで磁壁113を移動させながら、磁壁駆動電流の値を制御することで、強磁性材料層111に情報を、順次、書き込んでもよい。
【0052】
そして、このような操作を、逐次、合計N回、繰り返すことで、Nビットの情報を書き込むことができる。
【0053】
強磁性材料層111に書き込まれた情報を読み出す場合には、第2電極122から第1電極121へと磁壁駆動電流を流す。これによってジュール熱が生成し、強磁性材料層111に温度分布が生じる。尚、強磁性材料層の他端から距離L3の地点における強磁性材料層の温度がT0となるように磁壁駆動電流を流す。併せて、磁壁113が強磁性材料層111の他端に向かって移動する。但し、距離L3を越える領域に位置する磁化状態は移動することができない。そして、第3電極123から第2電極122に電流を流し、磁化領域112の電気抵抗値の高低を調べることで、書き込まれた情報が「0」であるか「1」であるかを判別することができる。ここで、強磁性材料層111と磁化参照層123Bの磁化方向が等しい場合、低抵抗となり、強磁性材料層111と磁化参照層123Bの磁化方向が反平行の場合、高抵抗となる。こうして、強磁性材料層の他端から距離L3を越えない領域における情報を読み出すことができる。次いで、第2電極122から第1電極121へと流す磁壁駆動電流の値を増加させる。その結果、強磁性材料層の他端から距離L2(>L3)の地点における強磁性材料層の温度がT0になったとする。この状態にあっては、情報としての磁化状態は、強磁性材料層の他端に向かって移動する。但し、距離L2を越える領域に位置する磁化状態は移動することができない。更に、第2電極122から第1電極121へと流す磁壁駆動電流の値を増加させる。その結果、強磁性材料層の他端から距離L1(>L2)の地点における強磁性材料層の温度がT0になったとする。この状態にあっては、情報としての磁化状態は、強磁性材料層の他端に向かって移動する。但し、距離L1を越える領域に位置する磁化状態は移動することができない。こうして、強磁性材料層における所望の位置(領域)における情報としての磁化状態を確実に読み出すことができる。
【0054】
実施例1の情報記憶素子の第1電極121に、図6に示す電圧+Vmを印加した。尚、電圧+Vmを、3.0ボルトから1.0ボルトまで、時間の経過と共に減少させた。また、第3電極123に、図6に示す電圧+VW(=1.0ボルト)及び−VW(=−1.0ボルト)を交互に印加した。こうして、情報記憶素子の強磁性材料層111に情報を書き込んだ。次いで、情報記憶素子の強磁性材料層111に書き込まれた情報を読み出した。具体的には、第1電極121に電圧−Vmを印加した。尚、電圧−Vmを、−1.0ボルトから−3.0ボルトまで、時間の経過と共に変化させた。そして、第3電極123に0.1ミリアンペアの一定電流を流したときの第3電極123からの電圧出力変化を再生信号電圧として測定した。その結果を図7に示す。尚、情報読出し時の再生信号電圧を第1電極123に印加した電圧の絶対値に対して示し、情報書込み時に第3電極123に印加した電圧を合わせて示す。第1電極123に1.5ボルト乃至2.2ボルトを印加したとき、情報の書込み、読出しが行われていることが確認できた。従って、第1電極123に印加する電圧や強磁性材料層111の大きさ等を最適化することで、より多くの情報を強磁性材料層に記憶させることが可能であり、高密度記録を実現できることが判る。
【0055】
以下、基板等の模式的な一部断面図である図8の(A)〜(C)を参照して、実施例1の情報記憶素子100の製造方法の概要を説明する。
【0056】
[工程−100]
先ず、シリコン半導体基板から成る基板110に第1電極121及び第2電極122を形成する。第1電極121及び第2電極122を基板110上に形成してもよいが、磁壁113の移動を妨げないように、基板110と第1電極121、第2電極122との段差は少ない方がよく、そのためには、基板110に埋め込まれた第1電極121、第2電極122を形成することが望ましい。具体的には、基板110にリソグラフィ技術及びエッチング技術に基づき溝部を形成する。そして、全面に、スパッタリング法に基づきTi層を形成する。次いで、基板110の表面のTi層を例えばCMP法で除去することで、第1電極121及び第2電極122を溝部内に残す。こうして、図8の(A)に示すように、基板110に第1電極121及び第2電極122を形成することができる。第1電極121は、基板110に設けられた配線(図示せず)を介して駆動電源(図示せず)に接続されている。また、第2電極122は、基板110に設けられた配線(図示せず)を介して接地されている。
【0057】
[工程−110]
次いで、全面に、スパッタリング法に基づき強磁性材料層を形成した後、強磁性材料層をパターニングすることで、帯状の強磁性材料層111を得る(図8の(B)参照)。強磁性材料層111のパターニングは、イオンミーリング法や反応性エッチング法等に基づき行うことができるし、リフトオフ法を採用してもよい。
【0058】
[工程−120]
その後、第3電極123を形成する。具体的には、全面に、スパッタリング法及び酸化法に基づき非磁性体膜123Aを形成し、更に、スパッタリング法に基づき磁化参照層123Bを形成した後、イオンミーリング法や反応性エッチング法等に基づき非磁性体膜123A及び磁化参照層123Bのパターニングを行う(図8の(C)参照)。
【0059】
[工程−130]
次いで、全面に絶縁材料から成る層間絶縁層114を、例えば、CVD法に基づき形成する。その後、第3電極123の上方の層間絶縁層114の部分に開口部を形成し、開口部内を含む層間絶縁層114上に配線124を形成する。こうして、図1の(A)及び(B)に示した実施例1の情報記憶素子100を完成させることができる。尚、層間絶縁層を構成する材料として、SiO2、NSG(ノンドープ・シリケート・ガラス)、BPSG(ホウ素・リン・シリケート・ガラス)、PSG、BSG、AsSG、SbSG、SOG(スピンオングラス)等のSiOX系材料(シリコン系酸化膜を構成する材料)、SiN、SiON、SiOC、SiOF、SiCN、低誘電率絶縁材料(例えば、フルオロカーボン、シクロパーフルオロカーボンポリマー、ベンゾシクロブテン、環状フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、アモルファス・テトラフルオロエチレン、フッ化アリールエーテル、フッ化ポリイミド、アモルファスカーボン、有機SOG、パリレン、フッ化フラーレン)、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、Silk(The Dow Chemical Co. の商標であり、塗布型低誘電率層間絶縁膜材料)、Flare(Honeywell Electronic Materials Co. の商標であり、ポリアリルエーテル(PAE)系材料)を例示することができる。
【0060】
実施例1の情報記憶素子100にあっては、強磁性材料層111内において磁壁113が長い距離を移動したときでも、情報誤りを起こし易くなるといった問題の発生を確実に回避することができる。それ故、安定して情報を保持しながら、確実に情報の書込み、記録、読出しを行うことができ、1つの連続した磁性体素子に多数の情報が記録可能となり、小型、軽量、且つ、安価な情報記憶装置を実現することができる。
【実施例2】
【0061】
実施例2は、実施例1の変形である。実施例2の情報記憶素子200の模式的な部分的平面図を図9の(A)及び(B)に示す。図9の(A)に示した情報記憶素子200にあっては、3つの情報記憶素子200の第2電極222が共通化されている。一方、図9の(B)に示した情報記憶素子200にあっては、3つの情報記憶素子200の第1電極221が共通化されている。これらの点を除き、実施例2の情報記憶素子200の構成、構造は、実施例1の情報記憶素子100の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。ここで、実施例2の情報記憶素子200、あるいは、後述する各実施例の情報記憶素子を構成する構成要素の参照番号における下2桁の数字と、実施例1の情報記憶素子100を構成する構成要素の参照番号における下2桁の数字が同じである構成要素は、同じ構成要素である。
【実施例3】
【0062】
実施例3も、実施例1の変形であるが、第2の構成に関する。即ち、実施例3の情報記憶素子にあっては、強磁性材料層(強磁性記録層)の比抵抗値が強磁性材料層の軸線方向に沿って変化している。具体的には、強磁性材料層の比抵抗値は、強磁性材料層の他端から一端に向かって、漸次、階段状に減少している。そして、その結果、情報の書込み若しくは情報の読出し時、第1電極と第2電極との間に電流を流すことで、強磁性材料層に温度分布を生じさせることができる。尚、比抵抗値は、例えば、強磁性材料層の所望の部分あるいは領域に窒素イオンや酸素イオンを注入することで変化させればよい。この点を除き、実施例3の情報記憶素子の構成、構造は、実施例1の情報記憶素子100の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0063】
実施例3にあっても、第1電極から第2電極へと磁壁駆動電流を流すと、あるいは又、第2電極から第1電極へと磁壁駆動電流を流すと、強磁性材料層の内部にジュール熱が生成し、生成したジュール熱によって、強磁性材料層には、第2電極側が高く、第1電極側が低い温度分布が生じる。実施例3の情報記憶素子における情報の書込み、読出しの方法は、実質的に、実施例1の情報記憶素子における情報の書込み、読出しの方法と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0064】
尚、実施例3において、実施例1において説明したと同様に、強磁性材料層の断面積を変化させてもよい。また、実施例2において説明した情報記憶素子の構成を実施例3の情報記憶素子に適用することもできる。
【実施例4】
【0065】
実施例4も、実施例1の変形であるが、第3の構成に関する。即ち、実施例4の情報記憶素子400にあっては、模式的な一部断面図を図10に示すが、強磁性材料層411の軸線方向に沿って強磁性材料層411の温度を変化させる温度制御手段440が、強磁性材料層411の近傍に配置されている。このように、温度制御手段440を設けることで、情報の書込み若しくは情報の読出し時、温度制御手段440によって強磁性材料層(強磁性記録層)411に温度分布を生じさせる。
【0066】
図10に模式的な一部断面図を示すように、実施例4において、温度制御手段440は、強磁性材料層411を取り囲む領域の熱伝導率を変化させるための、一種のヒートシンクから成る。具体的には、強磁性材料層411の上に層間絶縁層414が設けられている。そして、強磁性材料層411の一部の上方の層間絶縁層414の部分には凹部が設けられており、凹部を含む層間絶縁層414の上には、強磁性材料層411と平行に、帯状に銅(Cu)層から成る温度制御手段440が形成されている。強磁性材料層411から温度制御手段440の底面までの距離は、強磁性材料層411の他端から一端に向かって、漸次、連続的に短くなっている。尚、漸次、階段状に短くなっていてもよい。このように、強磁性材料層411の軸線方向に沿って強磁性材料層411の温度を変化させるが、温度の異なる強磁性材料層411の領域は、強磁性材料層411に記憶すべき情報の数(ビット数)の群に分けられている。この点を除き、実施例4の情報記憶素子の構成、構造は、実施例1の情報記憶素子100の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。温度制御手段440として、一種のヒートシンクを設ける代わりに、ヒータを設けてもよいし、レーザを用いて強磁性材料層411を加熱してもよい。
【0067】
実施例4にあっても、第1電極421から第2電極422へと磁壁駆動電流を流すと、あるいは又、第2電極422から第1電極421へと磁壁駆動電流を流すと、強磁性材料層411の内部にジュール熱が生成し、生成したジュール熱によって、強磁性材料層411には、第2電極側が高く、第1電極側が低い温度分布が生じる。実施例4の情報記憶素子における情報の書込み、読出しの方法は、実質的に、実施例1の情報記憶素子における情報の書込み、読出しの方法と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0068】
尚、実施例4においても、実施例1において説明したと同様に、強磁性材料層の断面積を変化させてもよい。また、実施例2において説明した情報記憶素子の構成を実施例4の情報記憶素子に適用することもできる。更には、実施例3において説明した情報記憶素子の構成を実施例4の情報記憶素子に適用することもできるし、実施例1及び実施例3において説明した情報記憶素子の構成を組み合わせて実施例4の情報記憶素子に適用することもできる。
【実施例5】
【0069】
実施例5は、本発明の第2の態様に係る情報記憶素子、及び、本発明の第2の態様に係る情報記憶素子における情報書込み・読出し方法に関する。
【0070】
実施例5の情報記憶素子500にあっては、強磁性材料層(強磁性記録層)511の他端から一端に亙り、強磁性材料層511における垂直磁気異方性が単調に増加している。そして、第3電極523に近い強磁性材料層511の領域ほど、垂直磁気異方性が小さい。また、実施例5の情報書込み・読出し方法にあっては、情報の書込み若しくは情報の読出し時、強磁性材料層511の温度を上昇させて強磁性材料層511における磁壁の位置を制御する。実施例5にあっては、第1電極521と第2電極522との間に電流を流すことで生成したジュール熱によって、強磁性材料層511の温度を上昇させる。そして、実施例5にあっては、第1電極521と第2電極522との間に流す電流の値を階段状に変化させる。
【0071】
ここで、強磁性材料層511の他端から一端に亙り、強磁性材料層511における垂直磁気異方性を単調に増加させるためには、強磁性材料層511に、例えば、垂直磁気異方性を増加させるTbイオン、垂直磁気異方性を減少させる酸素イオン、窒素イオンといった各種のイオンをイオン注入することで組成分布を形成すればよい。イオンの組成を傾斜的に注入する方法として、情報記憶素子の片端にフォトレジスト等で遮蔽壁のようなパターンを作製し、このパターンを遮蔽物として斜め方向からイオンを注入する方法を例示することができ、これによって、組成分布を形成可能である。あるいは又、レーザ等を用いた局所加熱法によって強磁性材料層511の結晶性に分布を形成してもよい。強磁性材料層511は、TbGdFeCoに上記方法により酸素イオンを斜め方向から注入し酸素組成を分布させ、垂直磁気異方性を傾斜させた材料から成る。
【0072】
以上の点を除き、実施例5の情報記憶素子500の構成、構造は、実施例1の情報記憶素子100の構成、構造と実質的に同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0073】
以下、実施例5の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法を、情報記憶素子500の概念図である図11の(A)〜(E)、図12の(A)〜(E)、図13の(A)〜(E)を参照して説明する。実施例5の情報書込み・読出し方法も、所謂シーケンシャル方式である。
【0074】
尚、強磁性材料層511の他端から距離L1の地点における強磁性材料層511の垂直磁気異方性の値をMA1とし、距離L2(<L1)の地点における強磁性材料層511の垂直磁気異方性の値をMA2(<MA1)とし、距離L3(<L2)の地点における強磁性材料層511の垂直磁気異方性の値をMA3(<MA2)とする。また、垂直磁気異方性の値MA1にあっては、強磁性材料層511の温度がT1゜C以上のとき、磁壁は移動し易いとする。また、垂直磁気異方性の値MA2にあっては、強磁性材料層511の温度がT2゜C(<T1)以上のとき、磁壁は移動し易いとする。更には、垂直磁気異方性の値MA3にあっては、強磁性材料層511の温度がT3゜C(<T2)以上のとき、磁壁は移動し易いとする。
【0075】
先ず、図11の(A)に示す状態において、第1ビットとして、強磁性材料層511に情報「0」を書き込むことを想定する。この場合、図11の(B)に示すように、第3電極523に電圧+VWを印加して、第3電極523から第2電極522へと電流を流す。これによって、情報「0」(上向きの矢印)が、第3電極523に対向する強磁性材料層511の部分に書き込まれる。
【0076】
そして、これと同時、あるいは、この直後に、図11の(C)に示すように、第1電極521に電圧+Vm1を印加し、第1電極521から第2電極522へと磁壁駆動電流を流す。これによって、強磁性材料層511の内部にジュール熱が生成し、生成したジュール熱によって、強磁性材料層511の温度がT1に上昇する(図11の(D)参照)。しかも、第1電極521から第2電極522へと磁壁駆動電流を流すことによって、電流誘起磁壁移動が生じる。即ち、磁化状態が左から右に移動(伝搬)していく。つまり、磁壁が右に移動していく。そして、磁壁が距離L1の地点を越えると、磁壁の移動は停止する(図11の(C)参照)。その後、第1電極521、第3電極523への電圧の印加を中断する(図11の(E)参照)。こうして、第2電極522から距離L1を越えた強磁性材料層511の領域に情報「0」が書き込まれる。
【0077】
次に、強磁性材料層511に情報「1」を書き込むことを想定する。この場合、図12の(A)に示すように、第3電極523に電圧−VWを印加して、第2電極522から第3電極523へと電流を流す。これによって、情報「1」(下向きの矢印)が、第3電極523に対向する強磁性材料層511の部分に書き込まれる。
【0078】
そして、これと同時、あるいは、この直後に、図12の(B)に示すように、第1電極521に電圧+Vm2(<+Vm1)を印加し、第1電極521から第2電極522へと磁壁駆動電流を流す。これによって、前述したと同様に、生成したジュール熱によって、強磁性材料層511の温度がT2となる(図12の(C)参照)。しかも、電流誘起磁壁移動が生じる。即ち、磁化状態が左から右に移動(伝搬)していく(図12の(B)参照)。つまり、磁壁が右に移動していく。そして、磁壁が距離L2の地点を越えると、磁壁の移動は停止する(図12の(D)参照)。その後、第1電極521、第3電極523への電圧の印加を中断する(図12の(E)参照)。こうして、第2電極522から距離L2を越えた強磁性材料層511の領域に情報「1」が書き込まれる。即ち、この状態にあっては、強磁性材料層511には、2つの情報(0,1)が書き込まれている。
【0079】
次に、強磁性材料層511に情報「0」を書き込むことを想定する。この場合、図13の(A)に示すように、第3電極523に電圧+VWを印加して、第2電極522から第3電極523へと電流を流す。これによって、情報「0」(上向きの矢印)が、第3電極523に対向する強磁性材料層511の部分に書き込まれる。
【0080】
そして、これと同時、あるいは、この直後に、図13の(B)に示すように、第1電極521に電圧+Vm3(<+Vm2)を印加し、第1電極521から第2電極522へと磁壁駆動電流を流す。これによって、前述したと同様に、生成したジュール熱によって、強磁性材料層511の温度がT3となる(図13の(C)参照)。しかも、電流誘起磁壁移動が生じる。即ち、磁化状態が左から右に移動(伝搬)していく(図13の(B)参照)。つまり、磁壁が右に移動していく。そして、磁壁が距離L3の地点を越えると、磁壁の移動は停止する(図13の(D)参照)。その後、第1電極521、第3電極523への電圧の印加を中断する(図13の(E)参照)。こうして、第2電極522から距離L3を越えた強磁性材料層511の領域に情報「0」が書き込まれる。即ち、この状態にあっては、強磁性材料層511には、3つの情報(0,1,0)が書き込まれている。
【0081】
尚、第1電極521から第2電極522へと磁壁駆動電流を流すことで磁壁513を移動させながら、磁壁駆動電流の値を制御することで、強磁性材料層511に情報を、順次、書き込んでもよい。
【0082】
そして、このような操作を、逐次、合計N回、繰り返すことで、Nビットの情報を書き込むことができる。
【0083】
強磁性材料層511に書き込まれた情報を読み出す場合には、第2電極522から第1電極521へと磁壁駆動電流を流す。これによってジュール熱が生成し、強磁性材料層511の温度がT3へと上昇する。併せて、磁壁513が強磁性材料層511の他端に向かって移動する。但し、距離L3を越える領域に位置する磁化状態は移動することができない。そして、第3電極523から第2電極522に電流を流し、磁化領域512の電気抵抗値の高低を調べることで、書き込まれた情報が「0」であるか「1」であるかを判別することができる。ここで、強磁性材料層511と磁化参照層523Bの磁化方向が等しい場合、低抵抗となり、強磁性材料層511と磁化参照層523Bの磁化方向が反平行の場合、高抵抗となる。こうして、強磁性材料層511の他端から距離L3を越えない領域における情報を読み出すことができる。次いで、第2電極522から第1電極521へと流す磁壁駆動電流の値を増加させる。その結果、強磁性材料層511の温度がT2になったとする。この状態にあっては、情報としての磁化状態は、強磁性材料層511の他端に向かって移動する。但し、距離L2を越える領域に位置する磁化状態は移動することができない。こうして、強磁性材料層511における所望の位置(領域)における情報としての磁化状態を確実に読み出すことができる。更に、第2電極522から第1電極521へと流す磁壁駆動電流の値を増加させる。その結果、強磁性材料層511の温度がT1になったとする。この状態にあっては、情報としての磁化状態は、強磁性材料層511の他端に向かって移動する。但し、距離L1を越える領域に位置する磁化状態は移動することができない。こうして、強磁性材料層511における所望の位置(領域)における情報としての磁化状態を確実に読み出すことができる。
【0084】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが,本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において説明した情報記憶素子の構成や構造、構成材料、製造方法等は例示であり、適宜、変更することができる。強磁性材料層(強磁性記録層)からの情報の読出しとして、代替的に、強磁性材料層における磁界の方向を検出することで情報が読み出される形態とすることもできる。ここで、この場合には、例えば、磁界検出手段として、具体的には、コイルや配線を挙げることができる。
【0085】
実施例1の情報記憶素子の変形例を図14に模式的な一部断面図を示すように、情報記憶素子600における帯状の強磁性材料層(強磁性記録層)611を、例えば、「U」字状の立体形状とすることもできる。係る情報記憶素子600は、例えば、以下の方法で製造することができる。即ち、シリコン半導体基板から成る基板610に、磁化参照層623B及び非磁性体膜623Aの積層構造を有する第3電極623を形成した後、基板610上に、層間絶縁層615を形成する。次いで、第3電極623の上方の層間絶縁層615に開口部を形成し、係る開口部内に強磁性材料層611を形成し、強磁性材料層611を絶縁膜616で被覆する。その後、開口部の底部に位置する絶縁膜616の部分、層間絶縁層615の頂面上の絶縁膜616の一部分を除去する。そして、開口部内を第2電極622で埋め込み、更には、層間絶縁層615の頂面上に露出した強磁性材料層611上に第1電極621を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1の(A)及び(B)は、実施例1の情報記憶素子の模式的な部分的平面図及び模式的な一部断面図である。
【図2】図2の(A)〜(E)は、実施例1の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法を説明するための情報記憶素子の概念図、及び、強磁性材料層の温度分布を模式的に示す図である。
【図3】図3の(A)〜(E)は、図2の(E)に引き続き、実施例1の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法を説明するための情報記憶素子の概念図、及び、強磁性材料層の温度分布を模式的に示す図である。
【図4】図4の(A)〜(E)は、図3の(E)に引き続き、実施例1の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法を説明するための情報記憶素子の概念図、及び、強磁性材料層の温度分布を模式的に示す図である。
【図5】図5は、CoFeCrB合金層とGdFeCo合金層の積層構造体における垂直磁気異方性の温度変化を示すグラフである。
【図6】図6は、実施例1の情報記憶素子の第1電極及び第3電極に印加する電圧のパターンを示すグラフである。
【図7】図7は、実施例1の情報記憶素子の第3電極からの電圧出力変化を再生信号電圧として測定した結果を示すグラフである。
【図8】図8の(A)〜(C)は、実施例1の情報記憶素子の製造方法を説明するための基板等の模式的な一部断面図である。
【図9】図9の(A)及び(B)は、実施例2の情報記憶素子の模式的な部分的平面図である。
【図10】図10は、実施例4の情報記憶素子の模式的な一部断面図である。
【図11】図11の(A)〜(E)は、実施例5の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法を説明するための情報記憶素子の概念図、及び、強磁性材料層の温度分布を模式的に示す図である。
【図12】図12の(A)〜(E)は、図11の(E)に引き続き、実施例5の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法を説明するための情報記憶素子の概念図、及び、強磁性材料層の温度分布を模式的に示す図である。
【図13】図13の(A)〜(E)は、図12の(E)に引き続き、実施例5の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法を説明するための情報記憶素子の概念図、及び、強磁性材料層の温度分布を模式的に示す図である。
【図14】図14は、実施例1の情報記憶素子の変形例の模式的な一部断面図である。
【符号の説明】
【0087】
100,200,400,500,600・・・情報記憶素子、110,210,610・・・基板、111,211,411,511,611・・・強磁性材料層(強磁性記録層)、112,512・・・磁化領域、113,513・・・磁壁、114,414,615・・・層間絶縁層、121,221,421,521,621・・・第1電極、122,222,422,522,622・・・第2電極、123,223,423,523,623・・・第3電極、123A,223A,423A,523A,623A・・・非磁性体膜、123B,223B,423B,523B,623B・・・磁化参照層、124・・・配線、440・・・温度制御手段、616・・・絶縁膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の強磁性材料層を備えており、
強磁性材料層の一端には第1電極が設けられており、強磁性材料層の他端には第2電極が設けられており、
第1電極と第2電極との間に電流を流すことで電流誘起磁壁移動が生じ、
強磁性材料層において、磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれ、若しくは、磁化状態が情報として読み出され、
各磁化領域における磁化方向は、強磁性材料層の厚さ方向に平行であり、
情報の書込み若しくは情報の読出し時、強磁性材料層の他端から一端に亙り単調に低下する温度分布を、強磁性材料層に生じさせる情報記憶素子。
【請求項2】
強磁性材料層の一部に接して設けられた第3電極を更に備えており、
第3電極は、強磁性材料層の一部に接した非磁性体膜、及び、その上に形成された磁化参照層から構成されており、
第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれる請求項1に記載の情報記憶素子。
【請求項3】
第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域における電気抵抗値が情報として第3電極から読み出される請求項2に記載の情報記憶素子。
【請求項4】
強磁性材料層の他端から一端に亙り単調に低下する温度分布においては、第3電極に近い強磁性材料層の領域ほど、温度上昇が大きい請求項2に記載の情報記憶素子。
【請求項5】
強磁性材料層の軸線方向と直交する仮想平面で強磁性材料層を切断したときの強磁性材料層の断面積が、強磁性材料層の軸線方向に沿って変化しており、以て、情報の書込み若しくは情報の読出し時、第1電極と第2電極との間に電流を流すことで、強磁性材料層に温度分布を生じさせる請求項1に記載の情報記憶素子。
【請求項6】
強磁性材料層の比抵抗値が強磁性材料層の軸線方向に沿って変化しており、以て、情報の書込み若しくは情報の読出し時、第1電極と第2電極との間に電流を流すことで、強磁性材料層に温度分布を生じさせる請求項1に記載の情報記憶素子。
【請求項7】
強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層の温度を変化させる温度制御手段が、強磁性材料層近傍に配置されており、以て、情報の書込み若しくは情報の読出し時、温度制御手段によって強磁性材料層に温度分布を生じさせる請求項1に記載の情報記憶素子。
【請求項8】
帯状の強磁性材料層を備えており、
強磁性材料層の一端には第1電極が設けられており、強磁性材料層の他端には第2電極が設けられており、
第1電極と第2電極との間に電流を流すことで電流誘起磁壁移動が生じ、
強磁性材料層において、磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれ、若しくは、磁化状態が情報として読み出され、
各磁化領域における磁化方向は、強磁性材料層の厚さ方向に平行であり、
強磁性材料層の他端から一端に亙り、強磁性材料層における垂直磁気異方性が単調に増加している情報記憶素子。
【請求項9】
強磁性材料層の一部に接して設けられた第3電極を更に備えており、
第3電極は、強磁性材料層の一部に接した非磁性体膜、及び、その上に形成された磁化参照層から構成されており、
第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれる請求項8に記載の情報記憶素子。
【請求項10】
第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域における電気抵抗値が情報として第3電極から読み出される請求項9に記載の情報記憶素子。
【請求項11】
第3電極に近い強磁性材料層の領域ほど、垂直磁気異方性が小さい請求項9に記載の情報記憶素子。
【請求項12】
帯状の強磁性材料層を備えており、
強磁性材料層の一端には第1電極が設けられており、強磁性材料層の他端には第2電極が設けられており、
第1電極と第2電極との間に電流を流すことで電流誘起磁壁移動が生じ、
強磁性材料層において、磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれ、若しくは、磁化状態が情報として読み出され、
各磁化領域における磁化方向は、強磁性材料層の厚さ方向に平行である情報記憶素子における情報書込み・読出し方法であって、
情報の書込み若しくは情報の読出し時、強磁性材料層の他端から一端に亙り、強磁性材料層に単調に低下する温度分布を生じさせることで、強磁性材料層における磁壁の位置を制御する、情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項13】
第1電極と第2電極との間に電流を流すことで生成したジュール熱によって、強磁性材料層に温度分布を生じさせる請求項12に記載の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項14】
第1電極と第2電極との間に流す電流の値を、階段状に、若しくは、連続的に変化させる請求項13に記載の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項15】
帯状の強磁性材料層を備えており、
強磁性材料層の一端には第1電極が設けられており、強磁性材料層の他端には第2電極が設けられており、
第1電極と第2電極との間に電流を流すことで電流誘起磁壁移動が生じ、
強磁性材料層において、磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれ、若しくは、磁化状態が情報として読み出され、
各磁化領域における磁化方向は、強磁性材料層の厚さ方向に平行であり、
強磁性材料層の他端から一端に亙り、強磁性材料層における垂直磁気異方性が単調に増加している情報記憶素子における情報書込み・読出し方法であって、
情報の書込み若しくは情報の読出し時、強磁性材料層の温度を上昇させて強磁性材料層における磁壁の位置を制御する、情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項16】
第1電極と第2電極との間に電流を流すことで生成したジュール熱によって、強磁性材料層の温度を上昇させる請求項15に記載の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項1】
帯状の強磁性材料層を備えており、
強磁性材料層の一端には第1電極が設けられており、強磁性材料層の他端には第2電極が設けられており、
第1電極と第2電極との間に電流を流すことで電流誘起磁壁移動が生じ、
強磁性材料層において、磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれ、若しくは、磁化状態が情報として読み出され、
各磁化領域における磁化方向は、強磁性材料層の厚さ方向に平行であり、
情報の書込み若しくは情報の読出し時、強磁性材料層の他端から一端に亙り単調に低下する温度分布を、強磁性材料層に生じさせる情報記憶素子。
【請求項2】
強磁性材料層の一部に接して設けられた第3電極を更に備えており、
第3電極は、強磁性材料層の一部に接した非磁性体膜、及び、その上に形成された磁化参照層から構成されており、
第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれる請求項1に記載の情報記憶素子。
【請求項3】
第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域における電気抵抗値が情報として第3電極から読み出される請求項2に記載の情報記憶素子。
【請求項4】
強磁性材料層の他端から一端に亙り単調に低下する温度分布においては、第3電極に近い強磁性材料層の領域ほど、温度上昇が大きい請求項2に記載の情報記憶素子。
【請求項5】
強磁性材料層の軸線方向と直交する仮想平面で強磁性材料層を切断したときの強磁性材料層の断面積が、強磁性材料層の軸線方向に沿って変化しており、以て、情報の書込み若しくは情報の読出し時、第1電極と第2電極との間に電流を流すことで、強磁性材料層に温度分布を生じさせる請求項1に記載の情報記憶素子。
【請求項6】
強磁性材料層の比抵抗値が強磁性材料層の軸線方向に沿って変化しており、以て、情報の書込み若しくは情報の読出し時、第1電極と第2電極との間に電流を流すことで、強磁性材料層に温度分布を生じさせる請求項1に記載の情報記憶素子。
【請求項7】
強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層の温度を変化させる温度制御手段が、強磁性材料層近傍に配置されており、以て、情報の書込み若しくは情報の読出し時、温度制御手段によって強磁性材料層に温度分布を生じさせる請求項1に記載の情報記憶素子。
【請求項8】
帯状の強磁性材料層を備えており、
強磁性材料層の一端には第1電極が設けられており、強磁性材料層の他端には第2電極が設けられており、
第1電極と第2電極との間に電流を流すことで電流誘起磁壁移動が生じ、
強磁性材料層において、磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれ、若しくは、磁化状態が情報として読み出され、
各磁化領域における磁化方向は、強磁性材料層の厚さ方向に平行であり、
強磁性材料層の他端から一端に亙り、強磁性材料層における垂直磁気異方性が単調に増加している情報記憶素子。
【請求項9】
強磁性材料層の一部に接して設けられた第3電極を更に備えており、
第3電極は、強磁性材料層の一部に接した非磁性体膜、及び、その上に形成された磁化参照層から構成されており、
第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれる請求項8に記載の情報記憶素子。
【請求項10】
第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域における電気抵抗値が情報として第3電極から読み出される請求項9に記載の情報記憶素子。
【請求項11】
第3電極に近い強磁性材料層の領域ほど、垂直磁気異方性が小さい請求項9に記載の情報記憶素子。
【請求項12】
帯状の強磁性材料層を備えており、
強磁性材料層の一端には第1電極が設けられており、強磁性材料層の他端には第2電極が設けられており、
第1電極と第2電極との間に電流を流すことで電流誘起磁壁移動が生じ、
強磁性材料層において、磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれ、若しくは、磁化状態が情報として読み出され、
各磁化領域における磁化方向は、強磁性材料層の厚さ方向に平行である情報記憶素子における情報書込み・読出し方法であって、
情報の書込み若しくは情報の読出し時、強磁性材料層の他端から一端に亙り、強磁性材料層に単調に低下する温度分布を生じさせることで、強磁性材料層における磁壁の位置を制御する、情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項13】
第1電極と第2電極との間に電流を流すことで生成したジュール熱によって、強磁性材料層に温度分布を生じさせる請求項12に記載の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項14】
第1電極と第2電極との間に流す電流の値を、階段状に、若しくは、連続的に変化させる請求項13に記載の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項15】
帯状の強磁性材料層を備えており、
強磁性材料層の一端には第1電極が設けられており、強磁性材料層の他端には第2電極が設けられており、
第1電極と第2電極との間に電流を流すことで電流誘起磁壁移動が生じ、
強磁性材料層において、磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれ、若しくは、磁化状態が情報として読み出され、
各磁化領域における磁化方向は、強磁性材料層の厚さ方向に平行であり、
強磁性材料層の他端から一端に亙り、強磁性材料層における垂直磁気異方性が単調に増加している情報記憶素子における情報書込み・読出し方法であって、
情報の書込み若しくは情報の読出し時、強磁性材料層の温度を上昇させて強磁性材料層における磁壁の位置を制御する、情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項16】
第1電極と第2電極との間に電流を流すことで生成したジュール熱によって、強磁性材料層の温度を上昇させる請求項15に記載の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−98245(P2010−98245A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269926(P2008−269926)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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