説明

情報通信システム及び車載情報通信装置

【課題】ローカルスポット通信網の状態等を容易に認識可能にする。
【解決手段】車載情報通信装置は、GPS受信部4、広域通信装置5及びローカルスポット通信装置6を有している。車載情報通信装置は、ローカルスポット通信網に関するデータを保持したデータベース10を有しており、車両がローカルスポット通信網の通信エリア近傍に到達すると、通信エリアを示す表示を、表示画面上に表示する。ローカルスポット通信網に関する情報は、ローカルスポット統括部から広域通信装置5を介して受信することができ、通信エリアの情報を更新して実際的な表示を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両をエリア内に移動させることで情報の取得を可能にする情報通信システム及び車載情報通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線技術の発展に伴い、携帯電話等の広域通信を可能にする通信システムだけでなく、ブルートゥース(bluetooth)やETC等で採用されているDSRC(デリケーテッド・ショートレンジ・コミュニケーション)等の比較的狭い範囲のローカルスポット通信を可能にする通信システムも急速に普及している。また、このようなローカルスポット通信を行うための通信機能を搭載した自動車も開発されている。
【0003】
ローカルスポット通信装置を車載した自動車を、ローカルスポットの通信可能エリアに移動させることにより、自動車とローカルスポットの基地局との間で情報の授受が可能である。例えば、ローカルスポット局であるディーラーの敷地内に、自動車を移動させることにより、自動的にその自動車の各種情報をディーラー側の情報処理装置において取得したり、逆に、ディーラー側の各種データベース内の情報を自動車に転送したりすることも可能である。
【0004】
更に、駐車場を有する店舗や公共機関等をローカルスポットとすることにより、自動車を利用中において有効に情報を取得することが可能となることが考えられる。
【特許文献1】特開2002−291048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、限られたローカルスポット以外について、ユーザが自動車の運転中に車載情報通信装置と通信可能なローカルスポットを知ることは困難である。例え、予めローカルスポットを記載したリストを所有していたとしても、自車の現在位置がリスト中のいずれのローカルスポットの通信可能エリアに位置するかを調べることは困難である。しかも、車載通信システムの場合には、車載アンテナの位置や、車両の向き等によっては、ローカルスポットの通信可能エリア内でも通信できないことがあり、更に、車載情報通信装置の故障或いはローカルスポットの通信装置の故障等が発生することも考えられ、通信可能なローカルスポットの範囲を知ることは、極めて困難である。
【0006】
なお、特許文献1には、携帯電話機の通信可能エリア及びそこまでの経路を表示させる技術が開示されているが、この提案ではローカルスポットの通信可能エリアを知ることはできない。
【0007】
本発明は、ローカルスポットの通信可能エリアの表示及びローカルスポットの通信可能エリアの情報の更新を可能とすることにより、通信可能なローカルスポットの利用を車載通情報信装置において促進させることができる情報通信システム及び車載情報通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車載情報通信装置は、ローカルスポットに関する情報及び地図データが記憶されたデータベースと、自車の位置を検出する位置検出手段と、前記データベースから読出した前記地図データ及び前記位置検出手段が検出した自車の位置の情報に基づいて、地図上に自車の位置を示す表示を表示させる第1の表示手段と、前記第1の表示手段による地図上に、前記ローカルスポットの通信可能エリアを示す表示を表示させる第2の表示手段とを具備したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る情報通信システムは、ローカルスポット基地局によって提供されるローカルスポット通信網に関する情報を保持するローカルスポット統括手段と、車両に搭載され、前記ローカルスポット通信網に対する通信及び広域通信網を介した前記ローカルスポット統括手段との間の通信が可能な車載情報通信装置とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ローカルスポットの通信可能エリアの表示及びローカルスポットの通信可能エリアの情報の更新を可能とすることにより、通信可能なローカルスポットの利用を車載情報通信装置において促進させることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態に係る情報通信システムに採用される車載情報通信装置を示すブロック図である。
【0012】
本実施の形態は自動車に搭載したカーナビゲーション装置によりローカルスポットの通信可能エリアを提示可能にした例である。
【0013】
図1において、車載情報通信装置は、車両に搭載されるものであり、GPS受信部4、広域通信装置5及びローカルスポット通信装置6を有する。GPS受信部4は、図示しないGPS衛星からアンテナ1を介して位置検出信号を受信する。GPS受信部4は受信した位置検出信号を位置検出部7に出力する。位置検出部7は、GPS受信部4からの位置検出信号が与えられ、自車の正確な位置を求めることができるようになっている。位置検出部7の検出結果は制御回路9に与えられる。GPS受信部4、位置検出部7及び制御回路9によって位置検出手段が構成される。
【0014】
なお、GPS受信部4、位置検出部7及び制御回路9、並びに後述するデータベース10及び表示部11は、既存のカーナビゲーションシステムを利用して構成することが可能である。制御回路9には、GPS受信機5により得られる現在位置情報に加えて、図示しない車速センサ、方位センサ等からの信号も与えられるようになっており、自車の走行状態を把握し、経路案内のデータとして利用することができるようになっている。
【0015】
データベース10は、CD−ROM、DVD又はハードディスク等によって構成することができ、地図データや種々の情報を記憶する。制御回路9は、位置検出部7からの現在位置情報及び各種センサからの情報に基づいて、地図上に自車の位置を示すマークを表示する経路案内の表示データを生成する。第1の表示手段としての制御回路9は、表示部11に経路案内の表示を表示させることができるようになっている。
【0016】
本実施の形態においては、車載情報通信装置は、広域通信装置5及びローカルスポット通信装置6を有する。広域通信装置5は、アンテナ2を介して広域通信網BR(図2参照)との間で信号を送受信することができるようになっている。例えば、広域通信網BRとしては、携帯電話網、PHS電話網等或いは広域無線LAN等が考えられる。なお、本実施の形態においては、広域通信装置5は比較的広い範囲の広域通信網BRとの間で確実に信号を授受する必要があり、携帯電話網を利用することが望ましい。
【0017】
ローカルスポット通信装置6は、アンテナ3を介して1つ以上のローカルスポット通信網L1,L2,…(図2参照)との間で信号を送受信することができるようになっている。例えば、ローカルスポット通信網L1,L2,…としては、近距離無線通信が可能なブルートゥース通信網、DSRC通信網等がある。
【0018】
通信処理部8は、広域通信装置5及びローカルスポット通信装置6からの受信信号に所定の信号処理を施した後制御回路9に出力すると共に、制御回路9からの送信信号に所定の信号処理を施して、広域通信装置5及びローカルスポット通信装置6に出力するようになっている。
【0019】
図2は車載情報通信装置を搭載した自動車とローカルスポットとを含む情報通信システム全体の構成を示す説明図である。
【0020】
ローカルスポット通信網L1,L2,…(以下、代表してL)は、自動車を停車可能な(例えば駐車場)公共の施設や店舗、或いは自動車のディーラー等の近傍の空間に構築される。この空間内に自動車T1,T2,…を停車させることで、ローカルスポット通信装置6によって、ローカルスポット通信網Lを介した近距離無線通信が可能である。ローカルスポット通信網L1,L2,…は、夫々ローカルスポット基地局ST1,ST2,…(以下、代表してST)によって通信が管理されており、各自動車T1,T2,…のローカルスポット通信装置6は、自車が属するローカルスポット通信網L1,L2,…を管理する基地局ST1,ST2,…とのみ通信することができるようになっている。
【0021】
広域通信網BRは、例えば、携帯電話網であれば、極めて広範囲に設定される。広域通信網基地局BAは、広域通信網BRを管理するようになっており、広域通信網に接続する端末相互間での通信を許可するようになっている。図2の例では、広域通信網基地局BAによって、各自動車T1,T2,…内の広域通信装置5及びローカルスポット基地局ST1,ST2,…内の図示しない広域通信装置、並びに後述するローカルスポット統括部LM相互間での通信を可能にする。
【0022】
ローカルスポット統括部LMは、各ローカルスポット通信網L1,L2,…に関する情報(以下、ローカルスポットデータという)をデータベースとして保持する。また、ローカルスポット統括部LMは、逐次ローカルスポット通信網L1,L2,…を管理する各基地局ST1,ST2,…との間で通信を行って、保持しているデータベース(以下、ローカルスポットデータベースという)を更新するようになっている。なお、例えば、ローカルスポットデータは、ローカルスポット通信網の位置情報、故障等による通信不能の情報等を含む。
【0023】
ローカルスポット統括部LMは、各自動車の広域通信装置5から、各自動車が現在属しているローカルスポット通信網に関する問い合わせが発せられた場合には、対象のローカルスポットについてのローカルスポットデータを各自動車に送信することができるようになっている。
【0024】
制御回路9は、通信処理部8を制御することによって、ローカルスポット通信装置5とローカルスポット基地局STとの間での通信を確立させることができる。また、制御回路9は、通信処理部8を制御することによって、広域通信装置5と広域通信網BRを介した他の広域通信装置との間での通信を確立させることができる。
【0025】
データベース10は、上述したように、地図データを保持すると共に、各ローカルスポット通信網L1,L2,…についてのローカルスポットデータをデータベースとして保持するようになっている。制御回路9は、ローカルスポット統括部LMからローカルスポットデータが広域通信網BRを介して与えられると、受信したローカルスポットデータによって、データベース10を更新するようになっている。表示部11は、第2の表示手段としての制御回路9に制御されて、地図上にローカルスポット通信網の通信可能エリア(以下、通信エリアという)を示す表示を表示させることができるようになっている。
【0026】
なお、広域通信装置5及びローカルスポット通信装置6は、夫々複数種類の通信方式に対応していてもよい。
【0027】
次に、このように構成された実施の形態の動作について図3乃至図5を参照して説明する。図3はローカルスポット通信網の通信可能エリア(通信エリア)の表示を行うための表示処理を示すフローチャートである。また、図4及び図5は通信エリア表示の表示例を示す説明図である。
【0028】
いま、ローカルスポット通信網をA市役所が提供するものとし、図1の車載情報通信装置を搭載した自動車T11がA市役所の近傍に位置するものとする。図4はこの場合における表示部11の通信エリア表示を示している。
【0029】
制御回路9は、通信エリア表示を表示させるために図3の処理を実行する。即ち、ステップS1において、制御回路9は、位置検出部7を制御して現在位置を示す位置データを取得する。位置検出部7は、GPS受信部4の受信信号によって検出した位置データを制御回路9に出力する。
【0030】
次に、制御回路9は、ステップS2において、データベース10にアクセスして地図データを取得する。この場合には、制御回路9は現在位置周辺の地図データを取得する。次に、制御回路9は、ステップS3において、データベース10から現在位置近傍のローカルスポット通信網の情報を取得する。
【0031】
制御回路9は、現在位置の位置データ、地図データ及びローカルスポットデータに基づいて、通信エリア表示を行うための表示データを生成する(ステップS4)。ステップS5において、制御回路9は、表示データを表示部11に与えて、通信エリア表示を表示させる。
【0032】
図4は通信エリア表示の一例を示している。図4においては、自車T11は、A市役所に面した通りの、A市役所近傍に位置することが分かる。そして、A市役所は2つの通信エリアを提供しており、図4では各通信エリアを網線又は斜線領域にて示している。なお、これらの通信エリアA11,A12は、夫々通信方式が異なり、例えば、通信エリアA11(図4の通信a)はブルートゥース通信網によるものであり,通信エリアA12(図4の通信b)はDSRC通信網によるものである。
【0033】
図5は自動車T11が通信エリアA11内に停車した場合の、通信エリア表示を示している。A市役所が図2のローカルスポット基地局STとして正常に機能している場合には、通信エリアA11,A12内に自動車を停車させることで、A市役所との間で情報の授受が可能であるものと考えられる。
【0034】
このように、本実施の形態においては、自車の現在位置近傍のローカルスポット通信網の通信可能エリアを地図上に表示させることができ、ユーザは通信エリア表示を見ながら自動車を移動させることにより、ローカルスポット通信網を介した通信を行うことができる。
【0035】
ところで、ローカルスポット通信網においては、比較的微弱の近距離無線通信を採用していることから、通信エリアは種々の条件の影響を受ける。更には、データベース10に記憶されているローカルスポット通信網の通信エリアの情報に誤りがある場合もあり、種々の条件で通信エリアが変動して、データベース10に記憶されて情報と相違することがある。更に、車載されている車載情報通信装置の故障、或いはローカルスポット通信網を提供する基地局の故障等によって通信不能となることもある。
【0036】
そこで、本実施の形態においては、通信不能となった理由を判定して、ユーザに提示するようになっている。図6はこの場合の診断処理フローを示すフローチャートであり、図7乃至図9は診断結果表示の表示例を示す説明図である。
【0037】
制御回路9は、図6のステップS11において、位置データを取得する。次に、制御回路9は、ステップS12において、ローカルスポットデータを取得する。制御回路9は、次のステップS13において、ローカルスポット通信網の位置、即ちデータベース10に保持されているローカルスポットデータに基づく通信エリアと自車の現在位置とを比較する。自車の現在位置が通信エリア内でない場合にはステップS11〜S13の処理を繰返す。
【0038】
いま、図7に示すように、自動車T11’がローカルスポット通信網の通信エリア内に停車するものとする。制御回路9は、自車の現在位置が通信エリア内にあるものと判断し、次のステップS14において、ローカルスポット通信網による通信を開始する。
【0039】
即ち、制御回路9は通信処理部8を制御し、ローカルスポット通信装置6から、ローカルスポット基地局であるA市役所内の図示しないローカルスポット通信装置に対して通信要求を送信させる。ローカルスポット通信網を提供するローカルスポット通信装置は、自動車からの通信に対して応答するように構成されており、通信要求に対して、対応する自動車内のローカルスポット通信装置6に所定の応答信号を送信する。
【0040】
なお、通信の形態は自動車からの通信に応答するのみでなく、ローカルスポット側が常時通信エリア内の自動車の存在を検出し、ローカルスポット側から通信を開始させる形態とすることも可能である。
【0041】
この応答信号は、自動車T11’内のローカルスポット通信装置6において受信され、通信処理部8を介して制御回路9に供給される。これにより、制御回路9は通信が確立したものと判断する。即ち、制御回路9は、ステップS16からステップS17に移行して、ローカルスポット通信網内での通信が正常に行われるものと判定する。
【0042】
ここで、ローカルスポット通信網を提供するA市役所の通信装置の故障等によって、自動車T11’がローカルスポット通信網による通信を確立することができないものとする。この場合には、処理がステップS16からステップS18に移行する。即ち、制御回路9は、車載情報通信装置又はローカルスポット通信網を提供するローカルスポット基地局側が故障であるものと判断する。
【0043】
この場合には、制御回路9は、例えば、図7に示す診断表示を表示することができる。図7の例では「システムは稼働していますが通信できません。駐車場所を変更してください」というメッセージを表示させている。
【0044】
制御回路9は、次のステップS19において、自己診断を開始する。車両内には、種々の自己診断システムが搭載されており、ローカルスポット通信装置6、通信処理部8又はデータベース10等の故障を検出することができる。制御回路9は、故障診断によって、これらの機器が故障していないものと判断した場合には(ステップS20)、ローカルスポット基地局側の故障によりローカルスポット通信網との間で通信することができなかったものと判定する(ステップS22)。
【0045】
この場合には、ステップS23において、広域通信網を利用してローカルスポットの故障を通知すると共に、例えば図8に示す診断表示を表示する(ステップS24)。図8では、ローカルスポット基地局に不具合が生じていることを示すために、通信エリアA11の領域に×印を表示すると共に、「通信システムが停止しています ご迷惑をおかけいたします」というメッセージ表示を表示させる。
【0046】
一方、制御回路9は、故障診断によって、機器が故障していることを検出した場合には(ステップS20)、車載情報通信装置側の故障によりローカルスポット通信網との間で通信することができなかったものと判定する。この場合には、ステップS24において、例えば図9に示す診断表示を表示する。図9では、メッセージ表示を表示することなく、通信エリアA11の領域に×印を表示している。
【0047】
更に、本実施の形態においては、広域通信網を利用することで、ローカルスポット基地局の不具合の情報を積極的に取得することも可能である。
【0048】
図10はこの動作を説明するためのフローチャートである。図10において図6と同一の手順には同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
上述したように、各ローカルスポット通信網を統括するローカルスポット統括部LMは、逐次、各ローカルスポット基地局との間で通信を行って、ローカルスポットに関する情報を取得している(ステップS35)。そして、ローカルスポット統括部LMは、ステップS36において取得したデータに基づいてローカルスポットデータベースを構築する。なお、ローカルスポット統括部LMは、適宜のタイミングでローカルスポットデータベースを更新する。
【0050】
車載情報通信装置の制御回路9は、ステップS16において、自車の位置が通信エリア内であるにも拘わらずローカルスポット基地局との間で通信を確立することができない場合には、広域通信網を利用して、ローカルスポット統括部LMに対して、属するローカルスポット通信網の状態について問い合わせを行う。
【0051】
即ち、制御回路9は、ステップS31において、通信処理部8を制御して、広域通信装置5から状態問い合わせのためのデータを送信させる。
【0052】
この問い合わせは、広域通信網BRを介してローカルスポット統括部LMに供給される。ローカルスポット統括部LMは、事前に作成しているローカルスポットデータベースに基づいて対象ローカルスポット通信網の情報を作成する(ステップS38)。ローカルスポット統括部LMは、次のステップS39において、問い合わせを行った自動車の広域通信装置5に対して回答を送信する。なお、ローカルスポット統括部LMは、ローカルスポットに関する問い合わせが発生すると、対象のローカルスポット基地局に対して問い合わせを行って、最新の情報を取得した後、取得した情報を問い合わせを行った自動車の広域通信装置5に対して送信するようにしてもよい。
【0053】
制御回路9は、回答を受信すると(ステップS32)、ローカルスポット統括部LMからの情報に基づいて、対象のローカルスポット基地局が故障しているか否かを判断する(ステップS33)。制御回路9は、通信不良の原因に応じた診断表示を表示させる(ステップS34)。
【0054】
ところで、上述したように、ローカルスポット通信網においては、アンテナの向き等によって受信レベルが著しく相違することがある。そこで、本実施の形態においては、受信に最適なアンテナの向き、即ち、推奨する停車時の自動車の向きをユーザに提示するようになっている。
【0055】
制御回路9は、現在位置のローカルスポット通信網の状態についての情報をデータベース10から読出す。制御回路9は読出した情報に基づいて、対象の通信エリア内で、十分な受信レベル又は最大の受信レベルを得るための車両の向きを算出する。制御回路9は求めた車両の向きを示す表示データを作成して、表示部11に出力する。
【0056】
図11及び図12はこの場合の表示例を示す説明図である。図11においては、通信エリアA11,A12について、十分な受信レベル又は最大の受信レベルを得るための車両の向きを、塗り潰しによって示している。塗り潰した2等辺三角形の頂点が車両の前方に対応する。図12は自動車T11が通信エリアA11内に停車した状態を示す(符号T11’)。
【0057】
また、上述したように、自動車のアンテナや受信機の性能によって、或いはGPSの精度の問題等によって、通信エリア内であっても、ローカルスポット通信網を利用した通信が不能の場合がある。そこで、自車の実際の通信状態に応じて、ローカルスポット通信網の通信エリアの情報を変更することもできるようになっている。
【0058】
図13はこの場合の動作フローを示すフローチャートである。図13において図6と同一の手順には同一符号を付して説明を省略する。
【0059】
制御回路9は、自動車の現在位置の位置データ、ローカルスポットデータを取得し、自車とローカルスポットとの位置関係を把握する。自車が対象ローカルスポットの通信エリアを含むその周辺に位置すると、制御回路9は、ステップS15においてローカルスポット通信装置6による通信を開始させる。制御回路9は、ステップS16において通信が可能か否かを判断する。
【0060】
本実施の形態においては、現在位置においてローカルスポット通信網による通信が可能な場合には処理をステップS41に移行し、不能の場合には処理をステップS43に移行する。例えば、ローカルスポット通信網による通信が可能であると判定した場合には、制御回路9は、ステップS41において現在位置が通信可能エリア内にあるか否かを判定する。自車の現在位置が通信エリア内にある場合には、データベース10に格納されている通信エリアの情報が正しいと考えられる。
【0061】
一方、自車の現在位置が通信エリア内にない場合には、データベース10に格納されている情報に基づく通信エリアよりも広い範囲で通信が可能であることが考えられる。そこで、制御回路9は、通信エリアに現在位置を含めるように通信エリアの情報を変更して、データベース10を更新する(ステップS42)。
【0062】
また、制御回路9は、ステップS16において、ローカルスポット通信網による通信が不能であると判定した場合には、ステップS43において現在位置が通信可能エリア内にあるか否かを判定する。自車の現在位置が通信エリア外にある場合には、データベース10に格納されている通信エリアの情報が正しいと考えられる。
【0063】
一方、自車の現在位置が通信エリア内にある場合には、データベース10に格納されている情報に基づく通信エリアよりも通信可能な範囲は狭いことが考えられる。そこで、制御回路9は、通信エリアから現在位置を除くように通信エリアの情報を変更して、データベース10を更新する。制御回路9は、更新されたデータベースに基づいて表示データを生成し(ステップS45)、表示部11に表示させる(ステップS46)。
【0064】
図14は図12の表示状態において、図13のステップS44の処理が実行された場合の表示例を示している。図14においては、通信エリアA11内に駐車した車両T11’の位置が、通信エリアから除かれたことを示している。また、図14の例では、制御回路9によって、「システム稼働中ですが通信できませんのでエリアを変更します 駐車場所を変更してください」というメッセージが表示されている。
【0065】
これにより、以後、当該自動車については、A市役所が提供するローカルスポット通信網の通信エリアとして、図14に示す通信エリアが表示される。
【0066】
また、車種やアンテナ性能等に応じて、通信エリアの表示を変更することによって、ローカルスポット通信網に対する通信状態を一層容易に把握することができる。
【0067】
図15はこのための動作フローを示すフローチャートである。
【0068】
車両の向きや車両の形態によって、通信性能が著しく変化することが考えられる。例えば、セダン、ワゴン、トラック、…等の種類によって、アンテナ設置場所、受信方向等が制限を受けることが考えられる。
【0069】
図16はこのような車両の種類による通信への影響を説明するための説明図である。
【0070】
図16(a)の車両21はセダンを示している。車両21については、アンテナ22は、例えば、車両の前方側に配設される。セダンは運転席の前方及び後部座席の後方にはガラスが嵌込まれており、アンテナ22は車両21の前方からの電波及び後方からの電波の双方とも受信可能である。なお、図16の例では、アンテナ22を前方側に配置しているので、車両前方から電波が到来する方が後方から到来する場合よりも受信性能に優れている。
【0071】
図16(b)の車両25はトラックを示している。車両25については、例えば、車両25前方のインストゥルメントパネル上にアンテナ26が配設される。トラックの場合には、後方には金属製の荷台を有しており、車両25の後方から到来する電波は著しく減衰してアンテナ26に入射される。従って、トラックの車両25では、アンテナ26は車両前方からの電波しか受信することができないと考えられる。
【0072】
本実施の形態においては、車両の向き毎に受信電界レベルを段階的に設定し、各受信電界レベルに応じて、通信エリアの表示を変更するようになっている。例えば、受信電界レベルが小さいほど、通信エリアの表示を小さくする。
【0073】
下記表1,表2は、夫々セダンとトラックについての受信レベルマップを示している。受信レベルマップは、車両の向きと受信電界レベルと表示(表示サイズ)との関係を示すものであり、例えば、各車両のデータベース10に記憶させる。なお、各自動車は、自車の種類に応じた受信レベルマップのみを保持すればよい。
【0074】
[表1]
セダン用受信レベルマップ
路側アンテナに対しての車の向き
0度 受信レベル5(表示サイズ100%)
45度 受信レベル4(表示サイズ 80%)
90度 受信レベル3(表示サイズ 60%)
135度 受信レベル2(表示サイズ 40%)
180度 受信レベル1(表示サイズ 20%)
[表2]
トラック用受信レベルマップ
路側アンテナに対しての車の向き
0度 受信レベル5(表示サイズ100%)
45度 受信レベル4(表示サイズ 80%)
90度 受信レベル3(表示サイズ 60%)
135度 受信レベル0(受信不能表示)
180度 受信レベル0(受信不能表示)
制御回路9は、図15のステップS51において、車両の向きを検出する。この検出には、例えばGPSを利用する。制御回路9は、次のステップS52において、受信電界レベルを決定する。この場合には、上記表1,表2等の受信レベルマップを参照する。なお、表1,表2の受信レベルマップは、統計的に求めた情報に基づいて、事前にデータベース10に登録しておいてもよく、また、実際に受信した結果をデータベース10に記憶させるようにしてもよい。
【0075】
制御回路9は、ステップS53において、自車の向きに応じて決定された受信電界レベルに応じて、通信エリアの表示状態、例えば表示形状を変更する。例えば、表1の場合には、表示サイズを受信レベル1〜5に応じて変更する。制御回路9は、変更した表示形状で、表示部11の画面上への表示を行う。
【0076】
図17はこの表示の一例を示す説明図である。
【0077】
図17の例は、図11の状態から、車両T11を通信エリアA11内に推奨されている向きとは180度異なる向きに停車させた例を示している(符号T11’)。また、図17の例では、制御回路9は、「システム稼働中ですが通信できません。車両の向きを変えてください」というメッセージを表示させている。ユーザは、図17の表示によって、ローカルスポット通信網の通信エリアの実際の範囲を認識すると共に、現在の車両の向きでは受信電界レベルが低いことを認識することができる。
【0078】
このように、本実施の形態においては、自動車がローカルスポット通信網の通信エリアの近傍に到達しただけで、公衆通信網等の広域通信網を利用することなく、ローカルスポット通信網の状態、その通信エリアや通信に適した車両の位置及び向き等の情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の一実施の形態に係る情報通信システムに採用される車載情報通信装置を示すブロック図。
【図2】車載情報通信装置を搭載した自動車とローカルスポットとを含む情報通信システム全体の構成を示す説明図。
【図3】ローカルスポット通信網の通信可能エリアの表示を行うための表示処理を示すフローチャート。
【図4】通信エリア表示の表示例を示す説明図。
【図5】通信エリア表示の表示例を示す説明図。
【図6】診断処理フローを示すフローチャート。
【図7】診断結果表示の表示例を示す説明図。
【図8】診断結果表示の表示例を示す説明図。
【図9】診断結果表示の表示例を示す説明図。
【図10】ローカルスポット基地局の不具合の情報を積極的に取得する場合の動作を説明するためのフローチャート。
【図11】推奨する車両の向きを表示する場合の表示例を示す説明図。
【図12】自動車T11が通信エリアA11内に停車した状態を示す説明図。
【図13】情報修正処理の動作フローを示すフローチャート。
【図14】情報修正処理に伴う表示の変更を説明するための表示例を示す説明図。
【図15】情報修正処理の動作フローを示すフローチャート。
【図16】車両の種類による通信への影響を説明するための説明図。
【図17】車両の向きに応じた表示状態の変更を説明するための説明図。
【符号の説明】
【0080】
1〜3…アンテナ、4…GPS受信部、5…広域通信装置、6…ローカルスポット通信装置、7…位置検出部、8…通信処理部、9…制御回路、10…データベース、11…表示部。
【0081】
代理人 弁理士 伊 藤 進

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローカルスポットに関する情報及び地図データが記憶されたデータベースと、
自車の位置を検出する位置検出手段と、
前記データベースから読出した前記地図データ及び前記位置検出手段が検出した自車の位置の情報に基づいて、地図上に自車の位置を示す表示を表示させる第1の表示手段と、
前記第1の表示手段による地図上に、前記ローカルスポットの通信可能エリアを示す表示を表示させる第2の表示手段とを具備したことを特徴とする車載情報通信装置。
【請求項2】
前記ローカルスポットの基地局との間で通信を行うローカルスポット通信手段と、
前記ローカルスポット通信手段の故障を診断する診断手段とを更に具備し、
前記第2の表示手段は、前記通信可能エリア内において前記ローカルスポット通信手段による通信が不能で、且つ、前記診断手段によって前記ローカルスポット通信手段が故障していないと診断された場合には、前記ローカルスポットの基地局に障害が発生しているものと判断して、その旨の表示を表示させることを特徴とする請求項1に記載の車載情報通信装置。
【請求項3】
ローカルスポット基地局によって提供されるローカルスポット通信網に関する情報を保持するローカルスポット統括手段と、
車両に搭載され、前記ローカルスポット通信網に対する通信及び広域通信網を介した前記ローカルスポット統括手段との間の通信が可能な車載情報通信装置とを具備したことを特徴とする情報通信システム。
【請求項4】
前記車載情報通信装置は、
ローカルスポットに関する情報及び地図データが記憶されたデータベースと、
自車の位置を検出する位置検出手段と、
前記データベースから読出した前記地図データ及び前記位置検出手段が検出した自車の位置の情報に基づいて、地図上に自車の位置を示す表示を表示させる第1の表示手段と、
前記第1の表示手段による地図上に、前記ローカルスポットの通信可能エリアを示す表示を表示させる第2の表示手段とを具備し、
前記データベースは、前記ローカルスポット統括手段から前記広域通信網を介して提供される前記ローカルスポットに関する情報によって更新されることを特徴とする請求項2に記載の情報通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−157304(P2006−157304A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343020(P2004−343020)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】