説明

感光性樹脂組成物、硬化膜の形成方法、硬化膜、有機EL表示装置、及び、液晶表示装置

【課題】硬化感度、透過率、ITOスパッタ適性、及び、コンタクトホールの形成性に優れた感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)カルボキシ基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位、又は、フェノール性水酸基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位(a1)と、架橋基を有するモノマー単位(a2)と、を含有する共重合体、(B)光酸発生剤、(C)式(c1)で表される部分構造を分子内に少なくとも2つ有し、分子量が600以上2,000以下である化合物、及び、(D)溶剤、を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、硬化膜の形成方法、硬化膜、有機EL表示装置、及び、液晶表示装置に関する。さらに詳しくは、液晶表示装置、有機EL表示装置、集積回路素子、固体撮像素子などの電子部品の平坦化膜、保護膜や層間絶縁膜の形成に好適な、ポジ型感光性樹脂組成物及びそれを用いた硬化膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子、有機ELなどの電子部品においては、一般に、電子部品表面の平坦性を付与するための平坦化膜、電子部品の劣化や損傷を防ぐための保護膜や絶縁性を保つための層間絶縁膜を形成する際に感光性樹脂組成物が使用される。例えば、TFT型液晶表示素子は、ガラス基板上に偏光板を設け、酸化インジウムスズ(ITO)等の透明導電回路層及び薄膜トランジスタ(TFT)を形成し、層間絶縁膜で被覆して背面板とする一方、ガラス基板上に偏光板を設け、必要に応じてブラックマトリックス層及びカラーフィルター層のパターンを形成し、さらに透明導電回路層、層間絶縁膜を順次形成して上面板とし、この背面板と上面板とをスペーサーを介して対向させて両板間に液晶を封入して製造されるが、この中で層間絶縁膜を形成する際に用いられる感光性樹脂組成物としては感度、透明性に優れていることが求められる。
【0003】
層間絶縁膜用の高感度の感光性樹脂組成物として、例えば、特許文献1、2には、アセタール構造、及び、エポキシ基又は架橋性基を含有する樹脂、酸発生剤を含有することを特徴とする化学増幅型の感放射線性樹脂組成物が提案されている。透明性に優れる感光性樹脂組成物として、例えば、特許文献3、4には酸化防止剤を添加することを特徴とする感光性樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−254623号公報
【特許文献2】特開2009−98616号公報
【特許文献3】特開2009−116223号公報
【特許文献4】特開2006−265322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、硬化感度、透過率、ITOスパッタ適性、及び、コンタクトホールの形成性に優れた感光性樹脂組成物を提供することである。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、前記感光性樹脂組成物を用いた硬化膜の形成方法、前記形成方法により形成された硬化膜、並びに、前記硬化膜を含む有機EL表示装置、及び、液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、以下の<1>、<10>、<12>、<14>又は<15>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<9>、<11>及び<13>とともに以下に記載する。
<1>(A)カルボキシ基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位、又は、フェノール性水酸基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位(a1)と、架橋基を有するモノマー単位(a2)と、を含有する共重合体、(B)光酸発生剤、(C)式(c1)で表される部分構造を分子内に少なくとも2つ有し、分子量が600以上2,000以下である化合物、及び、(D)溶剤、を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物、
【0007】
【化1】

(式(c1)中、R1及びR2はそれぞれ独立にメチル基又はtert−ブチル基を表し、R1及びR2の少なくとも1つはtert−ブチル基であり、R3は−O−又は−NH−を表す。)
【0008】
<2>化学増幅ポジ型感光性樹脂組成物である、<1>に記載の感光性樹脂組成物、
<3>前記(C)の化合物が、式(c1−1)、式(c1−2)及び式(c1−3)で表される化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物である、<1>又は<2>に記載の感光性樹脂組成物、
【0009】
【化2】

【0010】
<4>前記(C)の化合物が、式(c1−1)で表される化合物である、<1>〜<3>のいずれか一つに記載の感光性樹脂組成物、
【0011】
【化3】

【0012】
<5>前記(B)光酸発生剤が、式(b1)で表されるオキシムスルホネート残基を含む化合物である、<1>〜<4>のいずれか一つに記載の感光性樹脂組成物、
【0013】
【化4】

(式(b1)中、R5は、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。)
【0014】
<6>前記(B)光酸発生剤が、式(OS−3)、式(OS−4)又は式(OS−5)で表される化合物である、<1>〜<5>のいずれか一つに記載の感光性樹脂組成物、
【0015】
【化5】

(式(OS−3)〜式(OS−5)中、R1はアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子を表し、R6はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、スルホン酸基、アミノスルホニル基又はアルコキシスルホニル基を表し、XはO又はSを表し、nは1又は2を表し、mは0〜6の整数を表す。)
【0016】
<7>前記(B)光酸発生剤が、式(b2)で表される化合物である、<1>〜<5>のいずれか一つに記載の感光性樹脂組成物、
【0017】
【化6】

(式(b2)中、R5は、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、Xは、アルキル基、アルコキシ基、又は、ハロゲン原子を表し、mは、0〜3の整数を表し、mが2又は3であるとき、複数のXは同一でも異なっていてもよい。)
【0018】
<8>(E)架橋剤をさらに含有する、<1>〜<7>のいずれか一つに記載の感光性樹脂組成物、
<9>前記架橋基を有するモノマー単位(a2)が、3員環及び/又は4員環の環状エーテル残基、並びに、エチレン性不飽和基よりなる群から選ばれた少なくとも1つを含む、<1>〜<8>のいずれか一つに記載の感光性樹脂組成物、
<10>(1)<1>〜<9>のいずれか一つに記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布する塗布工程、(2)塗布された感光性樹脂組成物から溶剤を除去する溶剤除去工程、(3)活性放射線で露光する露光工程、(4)水性現像液で現像する現像工程、及び、(5)熱硬化するポストベーク工程、を含むことを特徴とする硬化膜の形成方法、
<11>前記現像工程後、ポストベーク工程前に、全面露光する工程を含む、<10>に記載の硬化膜の形成方法、
<12><10>又は<11>に記載の形成方法により形成された硬化膜、
<13>層間絶縁膜である、<12>に記載の硬化膜、
<14><12>又は<13>に記載の硬化膜を具備する、有機EL表示装置、
<15><12>又は<13>に記載の硬化膜を具備する、液晶表示装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、硬化感度、透過率、ITOスパッタ適性、及び、コンタクトホールの形成性に優れた感光性樹脂組成物を提供することができた。
また、本発明によれば、前記感光性樹脂組成物を用いた硬化膜の形成方法、前記形成方法により形成された硬化膜、並びに、前記硬化膜を含む有機EL表示装置、及び、液晶表示装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】有機EL表示装置の一例の構成概念図を示す。ボトムエミッション型の有機EL表示装置における基板の模式的断面図を示し、平坦化膜4を有している。
【図2】液晶表示装置の一例の構成概念図を示す。液晶表示装置におけるアクティブマトリックス基板の模式的断面図を示し、層間絶縁膜である硬化膜17を有している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(感光性樹脂組成物)
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシ基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位、又は、フェノール性水酸基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位(a1)と、架橋基を有するモノマー単位(a2)と、を含有する共重合体、(B)光酸発生剤、(C)式(c1)で表される部分構造を分子内に少なくとも2つ有し、分子量が600以上2,000以下である化合物、及び、(D)溶剤、を含有することを特徴とする。以下、これら(A)〜(D)で示される各成分をそれぞれ、「(A)成分」〜「(D)成分」ともいう。また、本明細書において、数値範囲を表す「A〜B」の記載は、特に断りのない限り、「A以上B以下」を表す。すなわち、端点であるA及びBを含む数値範囲を意味する。
【0022】
【化7】

((c1)中、R1及びR2はそれぞれ独立にメチル基又はtert−ブチル基を表し、R1及びR2の少なくとも1つはtert−ブチル基であり、R3は−O−又は−NH−を表す。)
【0023】
本発明の感光性樹脂組成物は、ポジ型感光性樹脂組成物である。また、本発明の感光性樹脂組成物は、化学増幅型のポジ型感光性樹脂組成物(化学増幅ポジ型感光性樹脂組成物)であることが好ましい。本発明の感光性樹脂組成物は、活性光線に感応する光酸発生剤として1,2−キノンジアジド化合物を含まない方が好ましい。1,2−キノンジアジド化合物は、逐次型光化学反応によりカルボキシ基を生成するが、その量子収率は必ず1以下である。これに対して本発明で使用する(B)光酸発生剤は、活性光線に感応して生成する酸が保護された酸性基の脱保護に対して触媒として作用するので、1個の光量子の作用で生成した酸が、多数の脱保護反応に寄与し、量子収率は1を超え、例えば、10の数乗のような大きい値となり、いわゆる化学増幅の結果として、高感度が得られる。また、本発明の感光性樹脂組成物は、耐溶剤性の観点から、後述する(E)架橋剤をさらに含有することが好ましい。
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
また、本発明に使用する共重合体が含有するモノマー単位を導入する方法は、重合法でもよく、高分子反応法でもよい。重合法では、所定の官能基を含有するモノマーを予め合成した後に、これらのモノマーを共重合する。高分子反応法では、重合反応を行った後に、得られた共重合体のモノマー単位に含まれる反応性基を利用して必要な官能基をモノマー単位中に導入する。ここで、官能基としては、フェノール性水酸基又はカルボキシ基を保護すると同時に強酸の存在下で分解しこれらを遊離するための保護基、エポキシ基又はオキセタニル基などの架橋基が例示できる。
前記モノマー単位(a1)や前記モノマー単位(a2)の前記(A)共重合体への導入は、重合法でも高分子反応法でもよく、これらの2方法を併用してもよい。
重合法では、例えば、フェノール性水酸基又はカルボキシ基が酸分解性基で保護された残基を有するエチレン性不飽和化合物とエポキシ基若しくはオキセタニル基を有するエチレン性不飽和化合物とを混合し、付加重合して、目的とする共重合体が得られる。
高分子反応法では、例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを共重合した共重合体にエピクロロヒドリンを反応させてエポキシ基を導入する方法が例示できる。このように、反応性基を有するエチレン性不飽和化合物を共重合した後に、側鎖に残る反応性基を活用して、高分子反応によって、フェノール性水酸基若しくはカルボキシ基が酸分解性基で保護された残基、及び/又は、架橋基のような官能基を側鎖に導入することができる。
【0025】
(A)共重合体
本発明の感光性樹脂組成物が含有する(A)共重合体は、
(a1)カルボキシ基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位、又は、フェノール性水酸基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位(以下、「モノマー単位(a1)」ともいう。)と、
(a2)架橋基を有するモノマー単位(a2)(以下、「モノマー単位(a2)」ともいう。)と、
を含有する共重合体である。
(A)成分は、前記モノマー単位(a1)及びモノマー単位(a2)以外にも、その他のモノマー単位(a3)を含有していてもよい。
【0026】
(A)共重合体はアルカリ不溶性であり、かつ、モノマー単位(a1)が有する酸分解性基が分解したときにアルカリ可溶性となる樹脂であることが好ましい。ここで、酸分解性基とは酸の存在下で分解することが可能な官能基を意味する。すなわち、カルボキシ基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位は、酸により保護基が分解することによって、カルボキシ基を生成可能であり、また、フェノール性水酸基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位は、酸により保護基が分解することによって、フェノール性水酸基を生成可能である。ここで、本発明において「アルカリ可溶性」とは、当該化合物(樹脂)の溶液を基板上に塗布し、90℃で2分間加熱することによって形成される当該化合物(樹脂)の塗膜(厚さ3μm)の、23℃における0.4%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対する溶解速度が、0.01μm/秒以上であることをいい、「アルカリ不溶性」とは、当該化合物(樹脂)の溶液を基板上に塗布し、90℃で2分間加熱することによって形成される当該化合物(樹脂)の塗膜(厚さ3μm)の、23℃における0.4%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対する溶解速度が、0.01μm/秒未満であることをいう。
前記(A)共重合体は、前記(A)共重合体全体をアルカリ不溶性に保つ限り、酸性基の導入を排除するものではなく、後述するカルボキシ基、カルボン酸無水物残基及び/又はフェノール性水酸基を有するその他のモノマー単位等を有していてもよい。
【0027】
(A)共重合体は、付加重合型の樹脂であることが好ましく、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルに由来するモノマー単位を含む重合体であることがより好ましい。なお、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルに由来するモノマー単位以外のモノマー単位、例えば、スチレンに由来するモノマー単位や、ビニル化合物に由来するモノマー単位等を有していてもよい。
前記(A)共重合体は、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルに由来するモノマー単位を、重合体における全モノマー単位に対し、50モル%以上含有することが好ましく、90モル%以上含有することがより好ましく、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルに由来するモノマー単位のみからなる重合体であることが特に好ましい。
なお、「(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルに由来するモノマー単位」を「アクリル系モノマー単位」ともいう。また、「(メタ)アクリル酸」は、「メタクリル酸及び/又はアクリル酸」を意味するものとする。
以下、モノマー単位(a1)、モノマー単位(a2)、それぞれについて説明する。
【0028】
(a1)カルボキシ基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位、又は、フェノール性水酸基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位
(A)成分は、カルボキシ基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位、又は、フェノール性水酸基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位を有する。(A)成分がモノマー単位(a1)を有することにより、極めて高感度な感光性樹脂組成物とすることができる。
【0029】
(a1−1)カルボキシ基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位
(a1−1−1)カルボキシ基を有するモノマー単位
カルボキシ基を有するモノマー単位としては、例えば、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和トリカルボン酸などの、分子中に少なくとも1個のカルボキシ基を有する不飽和カルボン酸等に由来するモノマー単位が挙げられる。
カルボキシ基を有するモノマー単位を得るために用いられる不飽和カルボン酸としては以下に挙げるようなものが用いられる。すなわち、不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−クロロアクリル酸、けい皮酸などが挙げられる。また、不飽和ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸などが挙げられる。また、カルボキシ基を有するモノマー単位を得るために用いられる不飽和多価カルボン酸は、その酸無水物であってもよい。具体的には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などが挙げられる。また、不飽和多価カルボン酸は、多価カルボン酸のモノ(2−メタクリロイロキシアルキル)エステルであってもよく、例えば、コハク酸モノ(2−アクリロイロキシエチル)、コハク酸モノ(2−メタクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2−アクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2−メタクリロイロキシエチル)などが挙げられる。
さらに、不飽和多価カルボン酸は、その両末端ジカルボキシポリマーのモノ(メタ)アクリレートであってもよく、例えば、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノメタクリレートなどが挙げられる。
また、不飽和カルボン酸としては、アクリル酸−2−カルボキシエチルエステル、メタクリル酸−2−カルボキシエチルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、4−カルボキシスチレン等も用いることができる。
中でも、現像性の観点から、カルボキシ基を有するモノマー単位を形成するためには、アクリル酸、メタクリル酸、又は不飽和多価カルボン酸の無水物等を用いることが好ましく、アクリル酸又はメタクリル酸を用いることがより好ましい。
カルボキシ基を有するモノマー単位(a1−1−1)は、1種単独で構成されていてもよいし、2種以上で構成されていてもよい。
【0030】
(a1−1−2)エチレン性不飽和基と酸無水物残基とを共に有するモノマー単位
エチレン性不飽和基と酸無水物残基とを共に有するモノマー単位(a1−2)は、エチレン性不飽和基を有するモノマー単位中に存在する水酸基と酸無水物とを反応させて得られたモノマーに由来する単位であることが好ましい。
酸無水物としては、公知のものが使用でき、具体的には、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水クロレンド酸等の二塩基酸無水物;無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物などの酸無水物が挙げられる。これらの中では、現像性の観点から、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、又は無水コハク酸、が好ましい。
酸無水物の水酸基に対する反応率は、現像性の観点から、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは30〜100モル%である。
【0031】
(a1−1−3)カルボキシ基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位
カルボキシ基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位とは、好ましくは前記(a1−1−1)、前記(a1−1−2)に記載のカルボキシ基が以下で詳細に説明する酸分解性基によって保護された残基を有するモノマー単位である。
酸分解性基としては、これまでKrF用ポジ型レジスト、ArF用ポジ型レジストにおける酸分解性基として公知のものを使用でき、特に限定されない。従来、酸分解性基としては、酸により比較的分解し易い基(例えば、テトラヒドロピラニル基等のアセタール系官能基)や酸により比較的分解し難い基(例えば、t−ブチルエステル基、t−ブチルカーボネート基等のt−ブチル系官能基)が知られている。
これらの酸分解性基の中でもカルボキシ基がアセタールで保護された残基、又は、カルボキシ基がケタールで保護された残基を有するモノマー単位であることが、レジストの基本物性、特に感度やパターン形状、コンタクトホールの形成性、感光性樹脂組成物の保存安定性の観点から好ましい。さらに酸分解性基の中でもカルボキシ基が下記式(a1−1)で表されるアセタール又はケタールで保護された残基であることが、感度の観点からより好ましい。なお、カルボキシ基が下記式(a1−1)で表されるアセタール又はケタールで保護された残基である場合、残基の全体としては、−(C=O)−O−CR12(OR3)の構造となっている。
【0032】
【化8】

(式(a1−1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、但し、R1とR2とが共に水素原子の場合を除く。R3は、アルキル基を表す。R1又はR2と、R3とが連結して環状エーテルを形成してもよい。)
【0033】
式(a1−1)中、R1〜R3は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、該アルキル基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。ここで、R1及びR2の双方が水素原子を表すことはなく、R1及びR2の少なくとも一方はアルキル基を表す。
【0034】
式(a1−1)において、R1、R2及びR3がアルキル基を表す場合、該アルキル基は直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。
直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数1〜12であることが好ましく、炭素数1〜6であることがより好ましく、炭素数1〜4であることがさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、テキシル基(2,3−ジメチル−2−ブチル基)、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基等を挙げることができる。
【0035】
環状アルキル基としては、炭素数3〜12であることが好ましく、炭素数4〜8であることがより好ましく、炭素数4〜6であることがさらに好ましい。環状アルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基等を挙げることができる。
【0036】
前記アルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基が例示できる。置換基としてハロゲン原子を有する場合、R1、R2、R3はハロアルキル基となり、置換基としてアリール基を有する場合、R1、R2、R3はアラルキル基となる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示され、これらの中でもフッ素原子又は塩素原子が好ましい。
また、前記アリール基としては、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、より好ましくは炭素数6〜12であり、具体的には、フェニル基、α−メチルフェニル基、ナフチル基等が例示でき、アリール基で置換されたアルキル基全体、すなわち、アラルキル基としては、ベンジル基、α−メチルベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が例示できる。
前記アルコキシ基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜4であり、メトキシ基又はエトキシ基がより好ましい。
また、アルキル基がシクロアルキル基である場合、該シクロアルキル基は置換基として炭素数1〜10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有していてもよく、アルキル基が直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である場合には、置換基として炭素数3〜12のシクロアルキル基を有していてもよい。
これらの置換基は、上記置換基でさらに置換されていてもよい。
【0037】
式(a1−1)において、R1、R2及びR3がアリール基を表す場合、該アリール基は炭素数6〜12であることが好ましく、炭素数6〜10であることがより好ましい。該アリール基は置換基を有していてもよく、該置換基としては炭素数1〜6のアルキル基が好ましく例示できる。アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、シリル基、クメニル基、1−ナフチル基等が例示できる。
【0038】
また、R1、R2及びR3は互いに結合して、それらが結合している炭素原子と一緒になって環を形成することができる。R1とR2、R1とR3又はR2とR3が結合した場合の環構造としては、例えばシクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、テトラヒドロフラニル基、アダマンチル基及びテトラヒドロピラニル基等を挙げることができる。
【0039】
なお、式(a1−1)において、R1及びR2のいずれか一方が、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0040】
式(a1−1)で表される残基を有するモノマー単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体は、市販のものを用いてもよいし、公知の方法で合成したものを用いることもできる。例えば、下記に示すように(メタ)アクリル酸を酸触媒の存在下でビニルエーテルと反応させることにより合成することができる。
【0041】
【化9】

【0042】
11は、水素原子又はアルキル基を表し、該アルキル基は、式(a1−1)において、R1〜R3として示したアルキル基と同様である。R11としては、水素原子又はメチル基が好ましい。
12及びR13は、−CH(R12)(R13)として、式(a1−1)におけるR2と同義であり、R14は式(a)におけるR1と同義であり、R15は式(a1−1)におけるR3と同義であり、また、これらは好ましい範囲も同様である。
上記の合成は(メタ)アクリル酸をその他のモノマーと予め共重合させておき、その後に酸触媒の存在下でビニルエーテルと反応させてもよい。
【0043】
カルボキシ基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位(a1−1)の好ましい具体例としては、下記のモノマー単位が例示できる。なお、Rは水素原子又はメチル基を表す。
【0044】
【化10】

【0045】
(a1−2)フェノール性水酸基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位
(a1−2−1)フェノール性水酸基を有するモノマー単位
フェノール性水酸基を有するモノマー単位としては、ヒドロキシスチレン系モノマー単位やノボラック系の樹脂におけるモノマー単位が挙げられるが、これらの中ではα−メチルヒドロキシスチレンに由来するモノマー単位が、透明性の観点から好ましい。フェノール性水酸基を有するモノマー単位の中でも、式(a1−2)で表されるモノマー単位が透明性、感度の観点から好ましい。
【0046】
【化11】

(式(a1−2)中、R20は水素原子又はメチル基を表し、R21は単結合又は連結基を表し、R22はハロゲン原子又はのアルキル基を表し、aは1〜5の整数を表し、bは0〜4の整数を表し、a+bは5以下である。なお、R22が2以上存在する場合、これらのR22は相互に異なっていてもよいし同じでもよい。)
【0047】
式(a1−2)中、R20は水素原子又はメチル基を表し、メチル基であることが好ましい。
また、R21は単結合又は二価の連結基を示す。単結合である場合には、感度を向上させることができ、さらに硬化膜の透明性を向上させることができるので好ましい。R21の二価の連結基としてはアルキレン基が例示でき、R21がアルキレン基である具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、tert−ブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。中でも、R21が単結合、メチレン基、エチレン基であることが好ましい。また、前記二価の連結基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基等が挙げられる。
また、aは1〜5の整数を表すが、本発明の効果の観点や、製造が容易であるという点から、aは1又は2であることが好ましく、aが1であることがより好ましい。
また、ベンゼン環における水酸基の結合位置は、R21と結合している炭素原子を基準(1位)としたとき、4位に結合していることが好ましい。
22はハロゲン原子又は炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基である。具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。中でも製造が容易であるという点から、塩素原子、臭素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
また、bは0又は1〜4の整数を表す。
【0048】
フェノール性水酸基を有するモノマー単位の中でも、上記式(a1−2)中、R21がアルキレン基でない場合には、式(a1−2’)で表されるモノマー単位が、透明性及び感度の観点から、さらに好ましい。R21の連結基としては、アルキレン基以外に、(共重合体の主鎖の側から)アルキレンオキシカルボニル基等が好ましく例示でき、この場合は、フェノール性水酸基を有するモノマー単位が下記の式(a1−2’)で表されることが好ましい。
【0049】
【化12】

(式(a1−2’)中、R30は、式(a1−2)におけるR20と同義であり、R32は式(a1−2)におけるR22と同義であり、a及びbは式(a1−2)におけるa及びbとそれぞれ同義である。また、好ましい範囲も同様である。)
【0050】
式(a1−2’)中、R33は、二価の連結基を表し、アルキレン基が好ましく例示できる。該アルキレン基は、直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよく、炭素数2〜6であることが好ましく、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、tert−ブチレン基、ペンチレン基、イソペンチレン基、ネオペンチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。また、二価の連結基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基等が挙げられる。これらの中でも、R33としては、エチレン基、プロピレン基、2−ヒドロキシプロピレン基であることが、感度の観点から好ましい。
【0051】
(a1−2−2)フェノール性水酸基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位
フェノール性水酸基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位は、(a1−2−1)フェノール性水酸基を有するモノマー単位のフェノール性水酸基が、以下で詳細に説明する酸分解性基によって保護された残基を有するモノマー単位である。酸分解性基としては、前述したように、公知のものを使用でき、特に限定されない。酸分解性基の中でもフェノール性水酸基がアセタールで保護された残基、又は、フェノール性水酸基がケタールで保護された残基を有するモノマー単位であることが、レジストの基本物性、特に感度やパターン形状、感光性樹脂組成物の保存安定性、コンタクトホールの形成性の観点から好ましい。さらに、酸分解性基の中でもフェノール性水酸基が式(a1−1)で表されるアセタール又はケタールで保護された残基であることが、感度の観点からより好ましい。なお、フェノール性水酸基が式(a1−1)で表されるアセタール又はケタールで保護された残基である場合、残基の全体としては、−Ar−O−CR12(OR3)の構造となっている。なお、Arはアリーレン基を表す。
【0052】
フェノール性水酸基のアセタールエステル構造の好ましい例は、R1=R2=R3=メチル基やR1=R2=メチル基でR3=ベンジル基の組み合わせが例示できる。
【0053】
また、フェノール性水酸基がアセタール又はケタールで保護された残基を有するモノマー単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体としては、例えば、ヒドロキシスチレンの1−アルコキシアルキル保護体、ヒドロキシスチレンのテトラヒドロピラニル保護体、α−メチル−ヒドロキシスチレンの1−アルコキシアルキル保護体、α−メチル−ヒドロキシスチレンのテトラヒドロピラニル保護体、4−ヒドロキシフェニルメタクリレートの1−アルコキシアルキル保護体、4−ヒドロキシフェニルメタクリレートのテトラヒドロピラニル保護体、4−ヒドロキシ安息香酸(1−メタクリロイルオキシメチル)エステルの1−アルコキシアルキル保護体、4−ヒドロキシ安息香酸(1−メタクリロイルオキシメチル)エステルのテトラヒドロピラニル保護体、4−ヒドロキシ安息香酸(2−メタクリロイルオキシエチル)エステルの1−アルコキシアルキル保護体、4−ヒドロキシ安息香酸(2−メタクリロイルオキシエチル)エステルのテトラヒドロピラニル保護体、4−ヒドロキシ安息香酸(3−メタクリロイルオキシプロピル)エステルの1−アルコキシアルキル保護体、4−ヒドロキシ安息香酸(3−メタクリロイルオキシプロピル)エステルのテトラヒドロピラニル保護体、4−ヒドロキシ安息香酸(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エステルの1−アルコキシアルキル保護体、4−ヒドロキシ安息香酸(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エステルのテトラヒドロピラニル保護体などが挙げられる。
これらの中で、4−ヒドロキシフェニルメタクリレートの1−アルコキシアルキル保護体、4−ヒドロキシフェニルメタクリレートのテトラヒドロピラニル保護体、4−ヒドロキシ安息香酸(1−メタクリロイルオキシメチル)エステルの1−アルコキシアルキル保護体、4−ヒドロキシ安息香酸(1−メタクリロイルオキシメチル)エステルのテトラヒドロピラニル保護体、4−ヒドロキシ安息香酸(2−メタクリロイルオキシエチル)エステルの1−アルコキシアルキル保護体、4−ヒドロキシ安息香酸(2−メタクリロイルオキシエチル)エステルのテトラヒドロピラニル保護体、4−ヒドロキシ安息香酸(3−メタクリロイルオキシプロピル)エステルの1−アルコキシアルキル保護体、4−−ヒドロキシ安息香酸(3−メタクリロイルオキシプロピル)エステルのテトラヒドロピラニル保護体、4−ヒドロキシ安息香酸(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エステルの1−アルコキシアルキル保護体、4−ヒドロキシ安息香酸(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エステルのテトラヒドロピラニル保護体が透明性の観点から好ましい。
【0054】
フェノール性水酸基のアセタール保護基及びケタール保護基の具体例としては、1−アルコキシアルキル基が挙げられ、例えば、1−エトキシエチル基、1−メトキシエチル基、1−n−ブトキシエチル基、1−イソブトキシエチル基、1−(2−クロロエトキシ)エチル基、1−(2−エチルヘキシルオキシ)エチル基、1−n−プロポキシエチル基、1−シクロヘキシルオキシエチル基、1−(2−シクロヘキシルエトキシ)エチル基、1−ベンジルオキシエチル基などを挙げることができ、これらは単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
モノマー単位(a1)を形成するために用いられるラジカル重合性単量体は、市販のものを用いてもよいし、公知の方法で合成したものを用いることもできる。例えば、フェノール性水酸基を有する化合物を酸触媒の存在下でビニルエーテルと反応させることにより合成することができる。上記の合成はフェノール性水酸基を有するモノマーをその他のモノマーと予め共重合させておき、その後に酸触媒の存在下でビニルエーテルと反応させてもよい。
【0056】
モノマー単位(a1−2)の好ましい具体例としては、下記のモノマー単位が例示できるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
【化13】

【0058】
(A)成分を構成するモノマー単位中、モノマー単位(a1)の含有率は、感度の観点から、(A)成分の共重合体を全体として、3〜70モル%が好ましく、5〜60モル%がより好ましく、10〜50モル%がさらに好ましい。
【0059】
カルボキシ基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位は、フェノール性水酸基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位に比べると、現像が速いという特徴がある。よって、速く現像したい場合にはカルボキシ基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位が好ましい。逆に現像を遅くしたい場合にはフェノール性水酸基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位を用いることが好ましい。
【0060】
(a2)架橋基を有するモノマー単位
(A)成分は、架橋基を有するモノマー単位(a2)を有する。前記架橋基は、加熱処理で硬化反応を起こす基であれば特に限定はされない。好ましい架橋基を有するモノマー単位の態様としては、3員環及び/又は4員環の環状エーテル残基、並びに、エチレン性不飽和基よりなる群から選ばれた少なくとも1つを含むモノマー単位が挙げられる。より詳細には、以下のものが挙げられる。
【0061】
(a2−1)3員環及び/又は4員環の環状エーテル残基を有するモノマー単位
前記(A)共重合体は、3員環及び/又は4員環の環状エーテル残基を有するモノマー単位(モノマー単位(a2−1))を含有することが好ましい。前記3員環の環状エーテル残基はエポキシ基とも呼ばれ、4員環の環状エーテル残基はオキセタニル基とも呼ばれる。前記エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有するモノマー単位(a2−1)としては、脂環エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有するモノマー単位であることが好ましく、オキセタニル基を有するモノマー単位であることがより好ましい。
エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有するモノマー単位は、1つのモノマー単位中にエポキシ基又はオキセタニル基を少なくとも1つ有していればよく、1つ以上のエポキシ基及び1つ以上オキセタニル基、2つ以上のエポキシ基、又は、2つ以上のオキセタニル基を有していてもよく、特に限定されないが、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を合計1〜3つ有することが好ましく、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を合計1又は2つ有することがより好ましく、エポキシ基又はオキセタニル基を1つ有することがさらに好ましい。
【0062】
エポキシ基を有するモノマー単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、特許第4168443号公報の段落0031〜0035に記載の脂環式エポキシ骨格を含有する化合物などが挙げられる。
オキセタニル基を有するモノマー単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体の具体例としては、例えば、特開2001−330953号公報の段落0011〜0016に記載のオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。
エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有するモノマー単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体の具体例としては、メタクリル酸エステル構造を含有するモノマー、アクリル酸エステル構造を含有するモノマーであることが好ましい。
【0063】
これらのモノマーの中で、さらに好ましいものとしては、特許第4168443号公報の段落0034〜0035に記載の脂環式エポキシ骨格を含有する化合物及び特開2001−330953号公報の段落0011〜0016に記載のオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、特に好ましいものとしては特開2001−330953号公報の段落0011〜0016に記載のオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである。これらの中でも好ましいものは、アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、アクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル、及び、メタクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチルであり、最も好ましいものはアクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル、及び、メタクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチルである。これらのモノマー単位は、1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0064】
モノマー単位(a2−1)が、下記式(a2−1−1)及び式(a2−1−2)よりなる群から選択された残基を有することが好ましい。
【0065】
【化14】

【0066】
モノマー単位(a2−1)が、上記式(a2−1−1)で表される3つの残基のいずれかを有するとは、式(a2−1−1)で表される構造から水素原子を1つ以上除いた基を有することを意味する。
モノマー単位(a2−1)は、3,4−エポキシシクロヘキシル基、2,3−エポキシシクロヘキシル基、2,3−エポキシシクロペンチル基を有することがさらに好ましい。
【0067】
【化15】

(式(a2−1−2)中、R1b及びR6bはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、R2b、R3b、R4b、R5b、R7b、R8b、R9b、R10bはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は、アリール基を表す。)
【0068】
式(a2−1−2)中、R1b及びR6bはそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表し、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基(以下、「低級アルキル基」ともいう。)であることがより好ましい。
2b、R3b、R4b、R5b、R7b、R8b、R9b、R10bはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又は、アリール基を表す。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が例示でき、フッ素原子及び塩素原子がより好ましく、フッ素原子がさらに好ましい。
アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、また、置換基を有していてもよい。直鎖状及び分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数1〜8であることが好ましく、炭素数1〜6であることがより好ましく、炭素数1〜4であることがさらに好ましい。環状アルキル基としては、炭素数3〜10であることが好ましく、炭素数4〜8であることがより好ましく、炭素数5〜7であることがさらに好ましい。なお、直鎖状及び分岐鎖状のアルキル基は、環状アルキル基で置換されていてもよく、環状アルキル基は直鎖状及び/又は分岐鎖状アルキル基で置換されていてもよい。
アリール基としては、炭素数6〜20のアリール基であることが好ましく、炭素数6〜10のアリール基であることがさらに好ましい。
前記アルキル基、アリール基は、さらに置換基を有していてもよく、アルキル基の有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アリール基、が例示でき、アリール基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基が例示できる。
これらの中でも、R2b、R3b、R4b、R5b、R7b、R8b、R9b、R10bはそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、又は、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基であることがより好ましい。
上記式(a2−1−2)で表される残基を有する基としては、(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル基が好ましく例示できる。
【0069】
モノマー単位(a2−1)の好ましい具体例としては、下記のモノマー単位が例示できる。なお、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
【0070】
【化16】

【0071】
本発明において、硬化感度の観点からは、3員環及び4員環の環状エーテル残基の中でも、オキセタニル基が好ましい。また、本発明において、透過率(透明性)の観点からは、脂環エポキシ基及びオキセタニル基が好ましい。以上より、本発明においては、3員環及び4員環の環状エーテル残基としては、脂環エポキシ基及びオキセタニル基が好ましく、オキセタニル基が特に好ましい。
【0072】
(a2−3)エチレン性不飽和基を有するモノマー単位
架橋基を有するモノマー単位(a2)の1つとして、エチレン性不飽和基を有するモノマー単位(a2−3)が挙げられる(以下、「モノマー単位(a2−3)」ともいう。)。前記エチレン性不飽和基を有するモノマー単位(a2−3)としては、側鎖にエチレン性不飽和基を有するモノマー単位が好ましく、末端にエチレン性不飽和基を有し、炭素数3〜16の側鎖を有するモノマー単位がより好ましく、式(a2−3−1)で表される側鎖を有するモノマー単位がさらに好ましい。
【0073】
【化17】

(式(a2−3−1)中、R1は炭素数1〜13の二価の連結基を表し、R3は水素原子又はメチル基を表す。)
【0074】
1は、炭素数1〜13の二価の連結基であって、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリーレン基又はこれらを組み合せた基を含み、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、ウレタン結合等の結合を含んでいてもよい。また、二価の連結基は、任意の位置にヒドロキシ基、カルボキシ基等の置換基を有していてもよい。R1の具体例としては、式(A−1)〜式(A−10)で表される二価の連結基が挙げられる。
【0075】
【化18】

【0076】
式(a2−3−1)で表される側鎖の中でも、脂肪族の側鎖が好ましい。式(a2−3−1)で表される連結基を有する側鎖の中でも、末端がアクリロイル基又はメタクリロイル基である側鎖がより好ましい。
【0077】
また、前記式(a2−3−1)で表される側鎖に含まれるエチレン性不飽和基は、前記(A)重合体150〜2,000gに対して1モル含まれることが好ましく、200〜1,300gに対して1モル含まれることがより好ましい。
【0078】
式(a2−3−1)で表される側鎖を有するモノマー単位(a2−3)を得る方法は、特に限定されないが、例えば、あらかじめラジカル重合等の重合方法によって、特定官能基を有する重合体を生成し、その特定官能基と反応する基及び末端にエチレン性不飽和基を有する化合物(以下、特定化合物と称する。)とを反応させることによってモノマー単位(a2−3)を有する共重合体とすることができる。
ここで、前記特定官能基としては、カルボキシ基、エポキシ基、ヒドロキシ基、活性水素を有するアミノ基、フェノール性水酸基、イソシアネート基等が挙げられる。特定官能基を有する重合体を合成するための特定官能基を有するモノマーについては後述する。
【0079】
前記特定官能基と前記特定化合物が有する特定官能基と反応する基との組み合わせとしては、カルボキシ基とエポキシ基との組み合わせ、カルボキシ基とオキセタニル基との組み合わせ、ヒドロキシ基とイソシアネート基との組み合わせ、フェノール性水酸基とエポキシ基との組み合わせ、カルボキシ基とイソシアネート基との組み合わせ、アミノ基とイソシアネート基との組み合わせ、ヒドロキシ基と酸クロリドとの組み合わせ等が挙げられる。
【0080】
また、前記特定化合物としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、イソシアナートエチルメタクリレート、イソシアナートエチルアクリレート、メタクリル酸クロリド、アクリル酸クロリド、メタクリル酸、アクリル酸等が挙げられる。
【0081】
好ましい特定官能基と特定化合物の組み合わせとしては、特定官能基であるカルボキシ基と特定化合物であるグリシジルメタクリレートとの組み合わせ、及び、特定官能基であるヒドロキシ基と特定化合物であるイソシアネートエチルメタクリレートとの組み合わせが挙げられる。
【0082】
本発明において、モノマー単位(a2−3)は、式(a2−3−2)で表されるモノマー単位であることが好ましい。
【0083】
【化19】

(式(a2−3−2)中、R1は、式(a2−3−1)におけるR1と同義であり好ましい範囲も同様である。R2、R3はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。)
【0084】
以下に、特定官能基を有する重合体を得るために必要な、特定官能基を有するモノマーの具体例を挙げるがこれらに限定されるものではない。
【0085】
カルボキシ基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、モノ(2−(アクリロイルオキシ)エチル)フタレート、モノ(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)フタレート、N−(カルボキシフェニル)マレイミド、N−(カルボキシフェニル)メタクリルアミド、N−(カルボキシフェニル)アクリルアミド等が挙げられる。
エポキシ基を有するモノマーとしては、例えば、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アリルグリシジルエーテル、3−エテニル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,7−オクタジエンモノエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート等が挙げられる。
ヒドロキシ基を有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、カプロラクトン2−(アクリロイルオキシ)エチルエステル、カプロラクトン2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテルメタクリレート、5−アクリロイルオキシ−6−ヒドロキシノルボルネン−2−カルボキシリック−6−ラクトン、5−メタクリロイルオキシ−6−ヒドロキシノルボルネン−2−カルボキシリック−6−ラクトン等が挙げられる。
【0086】
活性水素を有するアミノ基を有するモノマーとしては、2−アミノエチルアクリレート、2−アミノメチルメタクリレート等が挙げられる。
フェノール性水酸基を有するモノマーとしては、例えば、ヒドロキシスチレン、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)マレイミド等が挙げられる。
さらに、イソシアネート基を有するモノマーとしては、例えば、アクリロイルエチルイソシアネート、メタクリロイルエチルイソシアネート、m−テトラメチルキシレンイソシアネート、等が挙げられる。
【0087】
また、本発明においては、特定官能基を有する重合体を得る際に、前述の特定官能基を有するモノマーと(a1)カルボキシ基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位、又は、フェノール性水酸基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位となるモノマーとを併用する。さらに、後述の(a1)及び(a2)以外のその他のモノマー単位(a3)となるモノマーを併用することができる。
【0088】
本発明に用いる特定官能基を有する重合体を得る方法は特に限定されないが、例えば、特定官能基を有するモノマー、それ以外のモノマー及び所望により重合開始剤等を共存させた溶剤中において、50〜110℃の温度下で重合反応させることにより得られる。その際、用いられる溶剤は、特定官能基を有する重合体を構成するモノマー及び特定官能基を有する重合体を溶解するものであれば特に限定されない。具体例としては、後述する(D)溶剤に記載する溶剤が挙げられる。このようにして得られる特定官能基を有する重合体は、通常、溶剤に溶解した溶液の状態である。
【0089】
次いで、得られた特定官能基を有する重合体と特定化合物とを反応させて、側鎖の末端にエチレン性不飽和基を有するモノマー単位(a2−3)を得ることができる。その際、通常は、特定官能基を有する重合体の溶液を反応に供する。例えば、カルボキシ基を有するアクリル重合体の溶液に、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド等の触媒存在下、80℃〜150℃の温度でグリシジルメタクリレートを反応させることにより、モノマー単位(a2−3)を得ることができる。
【0090】
また、モノマー単位(a2−3)を形成するために、上述のような高分子反応を用いる他に、アリルメタクリレート、アリルアクリレート等をラジカル重合性単量体として用いてもよい。これらのモノマー単位は、単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0091】
(A)成分を構成するモノマー単位中、モノマー単位(a2)の含有量は、形成された膜の各種耐性と透明性の観点から、5〜60モル%が好ましく、10〜55モル%がより好ましく、20〜50モル%がさらに好ましい。上記の数値の範囲内であると、感光性樹脂組成物から得られる硬化膜の透明性及びITOスパッタ耐性が良好となる。
【0092】
(a3)その他のモノマー単位
本発明において、(A)成分は、前記モノマー単位(a1)及び(a2)を除く、その他のモノマー単位(a3)を有していてもよい。その他のモノマー単位(a3)となるモノマーとしては、例えば、スチレン類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、不飽和ジカルボン酸ジエステル、ビシクロ不飽和化合物類、マレイミド化合物類、不飽和芳香族化合物、共役ジエン系化合物、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物、その他の不飽和化合物を挙げることができる。
具体的には、スチレン、tert−ブトキシスチレン、メチルスチレン、ヒドロキシスチレン、α−メチルスチレン、アセトキシスチレン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、クロロスチレン、ビニル安息香酸メチル、ビニル安息香酸エチル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリルなどによる構成単位を挙げることができる。この他、特開2004−264623号公報の段落0021〜0024に記載の化合物を挙げることができる。中でも、(最終)加熱処理でモノマー単位(a2)や別添加の架橋剤と反応する基が生じる基が、膜強度の観点で好ましい。具体的には(メタ)アクリル酸第三級アルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸tert−ブチルがより好ましい。モノマー単位(a3)となるモノマーは、単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
また、(A)共重合体は、保護されていないカルボキシ基を有するモノマー単位、又は、保護されていないフェノール性水酸基を有するモノマー単位を1〜15モル%含有することが感度の点で好ましい。
【0093】
(A)共重合体の分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で、好ましくは1,000〜200,000、より好ましくは2,000〜50,000の範囲である。上記の数値の範囲内であると、感度とITO適性とが良好である。
【0094】
また、(A)成分の合成法についても、様々な方法が知られているが、一例を挙げると、少なくとも前記(a1)及び前記(a2)で表されるモノマー単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体を含むラジカル重合性単量体混合物を有機溶剤中、ラジカル重合開始剤を用いて重合することにより合成することができる。
【0095】
(B)光酸発生剤
本発明の感光性樹脂組成物は、(B)光酸発生剤を含有する。本発明で使用される光酸発生剤(「(B)成分」ともいう。)としては、波長300nm以上、好ましくは波長300〜450nmの活性光線に感応し、酸を発生する化合物が好ましいが、その化学構造に制限されるものではない。また、波長300nm以上の活性光線に直接感応しない光酸発生剤についても、増感剤と併用することによって波長300nm以上の活性光線に感応し、酸を発生する化合物であれば、増感剤と組み合わせて好ましく用いることができる。本発明で使用される光酸発生剤としては、pKaが4以下の酸を発生する光酸発生剤が好ましく、pKaが3以下の酸を発生する光酸発生剤がより好ましい。
【0096】
光酸発生剤の例として、トリクロロメチル−s−トリアジン類、スルホニウム塩やヨードニウム塩、第四級アンモニウム塩類、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、及び、オキシムスルホネート化合物などを挙げることができる。これらの中でも、絶縁性の観点から、オキシムスルホネート化合物を用いることが好ましい。これら光酸発生剤は、1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0097】
これらの具体例としては、以下が例示できる。
トリクロロメチル−s−トリアジン類として、2−(3−クロロフェニル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メチルチオフェニル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−β−スチリル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル]−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジンまたは2−(4−メトキシナフチル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン等;
【0098】
ジアリールヨードニウム塩類として、ジフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、フェニル,4−(2’−ヒドロキシ−1’−テトラデカオキシ)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−(2’−ヒドロキシ−1’−テトラデカオキシ)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモナート、フェニル,4−(2’−ヒドロキシ−1’−テトラデカオキシ)フェニルヨードニウム−p−トルエンスルホナート等;
【0099】
トリアリールスルホニウム塩類として、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナートまたは4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート等;
【0100】
第四級アンモニウム塩類として、テトラメチルアンモニウムブチルトリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、テトラメチルアンモニウムヘキシルトリス(p−クロロフェニル)ボレート、テトラメチルアンモニウムヘキシルトリス(3−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、ベンジルジメチルフェニルアンモニウムブチルトリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、ベンジルジメチルフェニルアンモニウムヘキシルトリス(p−クロロフェニル)ボレート、ベンジルジメチルフェニルアンモニウムヘキシルトリス(3−トリフルオロメチルフェニル)ボレート等;
【0101】
ジアゾメタン誘導体として、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(t−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン等;
イミドスルホネート誘導体として、トリフルオロメチルスルホニルオキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エンジカルボキシイミド、スクシンイミドトリフルオロメチルスルホネート、フタルイミドトリフルオロメチルスルホネート、N−ヒドロキシナフタルイミドメタンスルホネート、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドプロパンスルホネート等;
オキシムスルホネート化合物として、以下に示す化合物。
【0102】
オキシムスルホネート化合物、すなわち、オキシムスルホネート残基を有する化合物としては、式(b1)で表されるオキシムスルホネート残基を含有する化合物が好ましく例示できる。
【0103】
【化20】

(式(b1)中、R5は、アルキル基又はアリール基を表す。)
【0104】
いずれの基も置換されてもよく、R5におけるアルキル基は直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。許容される置換基は以下に説明する。
5のアルキル基としては、炭素数1〜10の、直鎖状又は分岐状アルキル基が好ましい。R5のアルキル基は、炭素数6〜11のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基、又は、シクロアルキル基(7,7−ジメチル−2−オキソノルボルニル基などの有橋式脂環基を含む、好ましくはビシクロアルキル基等)で置換されてもよい。
5のアリール基としては、炭素数6〜11のアリール基が好ましく、フェニル基又はナフチル基がより好ましい。R5のアリール基は、低級アルキル基、アルコキシ基あるいはハロゲン原子で置換されてもよい。
【0105】
前記式(b1)で表されるオキシムスルホネート残基を含有する化合物としては、式(OS−3)、式(OS−4)又は式(OS−5)で表されるオキシムスルホネート化合物であることが好ましい。
【0106】
【化21】

(式(OS−3)〜式(OS−5)中、R1はアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子を表し、R6はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、スルホン酸基、アミノスルホニル基又はアルコキシスルホニル基を表し、XはO又はSを表し、nは1又は2を表し、mは0〜6の整数を表す。)
【0107】
前記式(OS−3)〜(OS−5)中、R1におけるアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい。
前記式(OS−3)〜(OS−5)中、R1におけるアルキル基としては、置換基を有していてもよい総炭素数1〜30のアルキル基であることが好ましい。
1におけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノカルボニル基が挙げられる。
【0108】
1におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロヘキシル基、ベンジル基、フェノキシエチル基、メチルチオエチル基、フェニルチオエチル基、エトキシカルボニルエチル基、フェノキシカルボニルエチル基、ジメチルアミノカルボニルエチル基が挙げられる。
これらの中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロヘキシル基、ベンジル基が好ましい。
【0109】
また、前記式(OS−3)〜(OS−5)中、R1におけるアリール基としては、置換基を有してもよい総炭素数6〜30のアリール基が好ましい。
1におけるアリール基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノカルボニル基、スルホン酸基、アミノスルホニル基、アルコキシスルホニル基が挙げられる。
【0110】
1におけるアリール基としては、フェニル基、p−メチルフェニル基、p−クロロフェニル基、ペンタクロロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−フェノキシフェニル基、p−メチルチオフェニル基、p−フェニルチオフェニル基、p−エトキシカルボニルフェニル基、p−フェノキシカルボニルフェニル基、p−ジメチルアミノカルボニルフェニル基が挙げられる。
これらの中でも、フェニル基、p−メチルフェニル基、p−クロロフェニル基、ペンタクロロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−フェノキシフェニル基が好ましい。
【0111】
また、前記式(OS−3)〜(OS−5)中、R1におけるヘテロアリール基としては、置換基を有してもよい総炭素数4〜30のヘテロアリール基が好ましい。
1におけるヘテロアリール基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノカルボニル基、スルホン酸基、アミノスルホニル基、アルコキシスルホニル基が挙げられる。
【0112】
前記式(OS−3)〜(OS−5)中、R1におけるヘテロアリール基は、少なくとも1つの環が複素芳香環であればよく、例えば、複素芳香環とベンゼン環とが縮環していてもよい。
1におけるヘテロアリール基としては、置換基を有していてもよい、チオフェン環、ピロール環、チアゾール環、イミダゾール環、フラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾチアゾール環、及び、ベンゾイミダゾール環よりなる群から選ばれた環から1つの水素原子を除いた基が挙げられる。
【0113】
前記式(OS−3)〜(OS−5)中、R2は、水素原子、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましい。
前記式(OS−3)〜(OS−5)中、化合物中に2以上存在するR2のうち、1つ又は2つがアルキル基、アリール基又はハロゲン原子であることが好ましく、1つがアルキル基、アリール基又はハロゲン原子であることがより好ましく、1つがアルキル基であり、かつ残りが水素原子であることが特に好ましい。
前記式(OS−3)〜(OS−5)中、R2におけるアルキル基又はアリール基は、置換基を有していてもよい。
2におけるアルキル基又はアリール基が有していてもよい置換基としては、前記R1におけるアルキル基又はアリール基が有していてもよい置換基と同様の基が例示できる。
【0114】
2におけるアルキル基としては、置換基を有してもよい総炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましく、置換基を有してもよい総炭素数1〜6のアルキル基であることがより好ましい。
2におけるアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、アリル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、パーフルオロヘキシル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、メトキシメチル基、ベンジル基、フェノキシエチル基、メチルチオエチル基、フェニルチオエチル基、エトキシカルボニルエチル基、フェノキシカルボニルエチル基、ジメチルアミノカルボニルエチル基が挙げられる。
これらの中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、n−ヘキシル基、アリル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、メトキシメチル基、ベンジル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、n−ヘキシル基がより好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0115】
2におけるアリール基としては、置換基を有してもよい総炭素数6〜30のアリール基であることが好ましい。
2におけるアリール基として具体的には、フェニル基、p−メチルフェニル基、o−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−フェノキシフェニル基、p−メチルチオフェニル基、p−フェニルチオフェニル基、p−エトキシカルボニルフェニル基、p−フェノキシカルボニルフェニル基、p−ジメチルアミノカルボニルフェニル基が挙げられる。
これらの中でも、フェニル基、p−メチルフェニル基、o−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−フェノキシフェニル基が好ましい。
2におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
これらの中でも、塩素原子、臭素原子が好ましい。
【0116】
前記式(OS−3)〜(OS−5)中、XはO又はSを表し、Oであることが好ましい。
式(OS−3)〜(OS−5)において、Xを環員として含む環は、5員環又は6員環である。
前記式(OS−3)〜(OS−5)中、nは1又は2を表し、XがOである場合、nは1であることが好ましく、また、XがSである場合、nは2であることが好ましい。
【0117】
前記式(OS−3)〜(OS−5)中、R6におけるアルキル基及びアルキルオキシ基は、置換基を有していてもよい。
前記式(OS−3)〜(OS−5)中、R6におけるアルキル基としては、置換基を有していてもよい総炭素数1〜30のアルキル基であることが好ましい。
6におけるアルキル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノカルボニル基が挙げられる。
【0118】
6におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロヘキシル基、ベンジル基、フェノキシエチル基、メチルチオエチル基、フェニルチオエチル基、エトキシカルボニルエチル基、フェノキシカルボニルエチル基、ジメチルアミノカルボニルエチル基が挙げられる。
これらの中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロヘキシル基、ベンジル基が好ましい。
【0119】
前記式(OS−3)〜(OS−5)中、R6におけるアルキルオキシ基としては、置換基を有してもよい総炭素数1〜30のアルキルオキシ基であることが好ましい。
6におけるアルキルオキシ基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノカルボニル基が挙げられる。
【0120】
6におけるアルキルオキシ基としては、メチルオキシ基、エチルオキシ基、ブチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、フェノキシエチルオキシ基、トリクロロメチルオキシ基、エトキシエチルオキシ基、メチルチオエチルオキシ基、フェニルチオエチルオキシ基、エトキシカルボニルエチルオキシ基、フェノキシカルボニルエチルオキシ基、ジメチルアミノカルボニルエチルオキシ基が挙げられる。
これらの中でも、メチルオキシ基、エチルオキシ基、ブチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、フェノキシエチルオキシ基、トリクロロメチルオキシ基、又は、エトキシエチルオキシ基が好ましい。
前記式(OS−3)〜(OS−5)中、R6におけるアミノスルホニル基としては、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、メチルフェニルアミノスルホニル基、アミノスルホニル基が挙げられる。
前記式(OS−3)〜(OS−5)中、R6におけるアルコキシスルホニル基としては、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基、プロピルオキシスルホニル基、ブチルオキシスルホニル基が挙げられる。
【0121】
また、前記式(OS−3)〜(OS−5)中、mは0〜6の整数を表し、0〜2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが特に好ましい。
【0122】
また、前記式(b1)で表されるオキシムスルホネート残基を含有する化合物は、下記式(OS−6)〜(OS−11)のいずれかで表されるオキシムスルホネート化合物であることが特に好ましい。
【0123】
【化22】

(式(OS−6)〜(OS−11)中、R1はアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R7は、水素原子又は臭素原子を表し、R8は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、クロロメチル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基、メトキシメチル基、フェニル基又はクロロフェニル基を表し、R9は水素原子、ハロゲン原子、メチル基又はメトキシ基を表し、R10は水素原子又はメチル基を表す。)
【0124】
式(OS−6)〜(OS−11)におけるR1は、前記式(OS−3)〜(OS−5)におけるR1と同義であり、好ましい態様も同様である。
式(OS−6)におけるR7は、水素原子又は臭素原子を表し、水素原子であることが好ましい。
式(OS−6)〜(OS−11)におけるR8は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、クロロメチル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基、メトキシメチル基、フェニル基又はクロロフェニル基を表し、炭素数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基であることが好ましく、炭素数1〜8のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であることが更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
式(OS−8)及び式(OS−9)におけるR9は、水素原子、ハロゲン原子、メチル基又はメトキシ基を表し、水素原子であることが好ましい。
式(OS−8)〜(OS−11)におけるR10は、水素原子又はメチル基を表し、水素原子であることが好ましい。
また、前記オキシムスルホネート化合物において、オキシムの立体構造(E,Z)については、どちらか一方であっても、混合物であってもよい。
【0125】
前記式(OS−3)〜式(OS−5)で表されるオキシムスルホネート化合物の具体例としては、下記例示化合物が挙げられるが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0126】
【化23】

【0127】
【化24】

【0128】
【化25】

【0129】
【化26】

【0130】
【化27】

【0131】
【化28】

【0132】
【化29】

【0133】
式(b1)で表されるオキシムスルホネート残基を含有する上記化合物としては、式(OS−1)で表される化合物であることも好ましい。
【0134】
【化30】

(式(OS−1)中、R1は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホ基、シアノ基、アリール基、又は、ヘテロアリール基を表す。R2は、アルキル基、又は、アリール基を表す。)
【0135】
Xは−O−、−S−、−NH−、−NR5−、−CH2−、−CR6H−、又は、−CR67−を表し、R5〜R7はアルキル基、又は、アリール基を表す。
21〜R24は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アミド基、スルホ基、シアノ基、又は、アリール基を表す。R21〜R24のうち2つは、それぞれ互いに結合して環を形成してもよい。
21〜R24としては、水素原子、ハロゲン原子、及び、アルキル基が好ましく、また、R21〜R24のうち少なくとも2つが互いに結合してアリール基を形成する態様もまた、好ましく挙げられる。中でも、R21〜R24がいずれも水素原子である態様が感度の観点から好ましい。
既述の官能基は、いずれも、更に置換基を有していてもよい。
【0136】
前記式(OS−1)で表される化合物は、下記式(OS−2)で表される化合物であることがより好ましい。
【0137】
【化31】

【0138】
前記式(OS−2)中、R1、R2、R21〜R24は、それぞれ式(OS−1)におけるのと同義であり、好ましい例もまた同様である。
これらの中でも、式(OS−1)及び式(OS−2)におけるR1がシアノ基、又は、アリール基である態様がより好ましく、式(OS−2)で表され、R1がシアノ基、フェニル基又はナフチル基である態様が最も好ましい。
【0139】
また、前記オキシムスルホネート化合物において、オキシムやベンゾチアゾール環の立体構造(E,Z等)についてはそれぞれ、どちらか一方であっても、混合物であってもよい。
【0140】
以下に、本発明に好適に用いうる式(OS−1)で表される化合物の具体例(例示化合物b−1〜b−34)を示すが、本発明はこれに限定されない。なお、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Bnはベンジル基を表し、Phはフェニル基を表す。
【0141】
【化32】

【0142】
【化33】

【0143】
【化34】

【0144】
【化35】

【0145】
上記化合物の中でも、感度と安定性との両立の観点から、b−9、b−16、b−31、b−33が好ましい。
【0146】
式(b1)で表されるオキシムスルホネート残基を含有する上記化合物は、下記式(b2)で表されるオキシムスルホネート化合物であることがより好ましい。
【0147】
【化36】

(式(b2)中、R5は、アルキル基又はアリール基を表し、Xは、アルキル基、アルコキシ基、又は、ハロゲン原子を表し、mは、0〜3の整数を表し、mが2又は3であるとき、複数のXは同一でも異なっていてもよい。)
【0148】
Xとしてのアルキル基は、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルキル基が好ましい。
Xとしてのアルコキシ基は、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状アルコキシ基が好ましい。
Xとしてのハロゲン原子は、塩素原子又はフッ素原子が好ましい。
mは、0又は1が好ましい。
式(b2)中、mが1であり、Xがメチル基であり、Xの置換位置がオルト位であり、R5が炭素数1〜10の直鎖状アルキル基、7,7−ジメチル−2−オキソノルボルニルメチル基、又はp−トルイル基である化合物が特に好ましい。
【0149】
式(b1)で表されるオキシムスルホネート残基を含有する化合物は、式(b3)で表されるオキシムスルホネート化合物であることもより好ましい。
【0150】
【化37】

(式(b3)中、R5は式(b1)におけるR5と同義であり、X’は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基を表し、Lは0〜5の整数を表す。)
【0151】
式(b3)におけるR5としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−オクチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロ−n−プロピル基、パーフルオロ−n−ブチル基、p−トリル基、4−クロロフェニル基又はペンタフルオロフェニル基が好ましく、n−オクチル基が特に好ましい。
X’としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
Lとしては、0〜2が好ましく、0〜1が特に好ましい。
【0152】
式(b3)で表される化合物の具体例としては、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド、α−(n−プロピルスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド、α−(n−ブチルスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド、α−(4−トルエンスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド、α−〔(メチルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル〕アセトニトリル、α−〔(エチルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル〕アセトニトリル、α−〔(n−プロピルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル〕アセトニトリル、α−〔(n−ブチルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル〕アセトニトリル、α−〔(4−トルエンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル〕アセトニトリルを挙げることができる。
【0153】
好ましいオキシムスルホネート化合物の具体例としては、下記化合物(i)〜(viii)等が挙げられ、1種単独で使用したり、又は、2種類以上を併用することができる。化合物(i)〜(viii)は、市販品として、入手することができる。また、他の種類の(B)光酸発生剤と組み合わせて使用することもできる。
【0154】
【化38】

【0155】
本発明の感光性樹脂組成物において、(B)光酸発生剤は、(A)成分100重量部に対して、0.1〜10重量部使用することが好ましく、0.5〜10重量部使用することがより好ましい。
【0156】
(C)式(c1)で表される部分構造を分子内に少なくとも2つ有し、分子量が600以上2,000以下である化合物
本発明の感光性樹脂組成物には、(C)式(c1)で表される部分構造を分子内に少なくとも2つ有し、分子量が600以上2,000以下である化合物(以下、適宜、「(C)成分」、「特定フェノール系化合物(C)」ともいう。)を含有する。
【0157】
【化39】

(式(c1)中、R1及びR2はそれぞれ独立にメチル基又はtert−ブチル基を表し、R1及びR2の少なくとも1つはtert−ブチル基であり、R3は−O−又は−NH−を表す。)
【0158】
1及びR2はそれぞれ独立にメチル基又はtert−ブチル基を表し、R1及びR2の少なくとも1つはtert−ブチル基であるが、R1及びR2の双方がtert−ブチル基であることが好ましい。
また、R3は−O−又は−NH−を表し、−O−であることが好ましい。
【0159】
特定フェノール系化合物(C)を含有させることによって、ベーク工程時の着色が低減され、優れた透明性を有する層間絶縁膜(硬化膜)を得ることができる。さらに、特定フェノール系化合物(C)とアセタール構造を有する樹脂とを組み合わせて使用した場合のみ、層間絶縁膜のコンタクトホール径が、ベーク前後で変化しないという驚くべき効果を発現する。さらに、特定フェノール系化合物(C)とアクリル系樹脂とを組み合わせて使用した場合のみ、層間絶縁膜の比誘電率を低下させるという驚くべき効果を発現する。
【0160】
特定フェノール系化合物(C)は、分子内に前記式(c1)で表される部分構造を分子内に2つ以上有するが、この部分構造は、2つ以上6つ以下含むことが好ましく、さらに好ましくは、2つ以上4つ以下の範囲で含む化合物である。
このような化合物の例としては、テトラキス{メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン、テトラキス{メチレン−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート}メタン、3,9−ビス[2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニロキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス[2−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニロキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]、N,N’−オクタン−1,8−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]等が挙げられる。
【0161】
本発明に用いられる特定フェノール系化合物(C)の分子量は、600以上2,000以下であるが、分子量は700以上であることが好ましい。また、(A)成分の共重合体との相溶性の観点からは、上記の如き部分構造を有する繰り返し単位を含む重合体(高分子化合物)ではなく、単分子化合物であることが好ましい。
本発明に用いられる特定フェノール系化合物(C)は、R3が−O−である、エステル結合を含むことが、ベーク後の透明性の観点から好ましい。
特定フェノール系化合物の中でもベーク後の透明性の観点から、さらに好ましい特定フェノール系化合物としては、式(c1−1)、式(c1−2)及び式(c1−3)で表される化合物が挙げられ、最も好ましくは式(c1−1)で表される化合物である。
【0162】
【化40】

【0163】
特定フェノール系化合物(C)は、市販品としても入手可能であり、例えば、上記式(c1−1)で表される化合物としては、商品名イルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、アデカスタブAO−60((株)ADEKA製)等が、上記式(c1−2)で表される化合物の商品名としては、スミライザーGA−80(住友化学(株)製)、アデカスタブAO−80((株)ADEKA製)等が、上記式(c1−3)で表される化合物としては、商品名イルガノックス1098(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等が、それぞれ挙げられる。
【0164】
特定フェノール系化合物(C)は、本発明の感光性樹脂組成物に1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。特定フェノール系化合物(C)の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.1〜6重量%であることが好ましく、0.2〜5重量%であることがより好ましく、0.5〜4重量%が最適である。含有量を0.1%重量%以上6重量%以下とすることで、形成された膜の十分な透明性が得られ、かつ、パターン形成時の優れた感度が発現される。
【0165】
(D)溶剤
本発明の感光性樹脂組成物は、(D)溶剤を含有する。本発明の感光性樹脂組成物は、必須成分である上記(A)〜(D)成分、好ましい成分である後述の(E)成分、さらに後述の任意の成分を(D)溶剤に溶解した溶液として調製されることが好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物に使用される(D)溶剤としては、公知の溶剤を用いることができ、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールジアルキルエーテル類、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールジアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、エステル類、ケトン類、アミド類、ラクトン類等が例示できる。
【0166】
本発明の感光性樹脂組成物に使用される(D)溶剤としては、例えば、
(ア)エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;
(イ)エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル等のエチレングリコールジアルキルエーテル類;
(ウ)エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
(エ)プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;
(オ)プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;
【0167】
(カ)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
(キ)ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類;
(ク)ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
(ケ)ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のジプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;
(コ)ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルメチルエーテル等のジプロピレングリコールジアルキルエーテル類;
【0168】
(サ)ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
(シ)乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸イソプロピル、乳酸n−ブチル、乳酸イソブチル、乳酸n−アミル、乳酸イソアミル等の乳酸エステル類;
(ス)酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、酢酸イソアミル、酢酸n−ヘキシル、酢酸2−エチルヘキシル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n−ブチル、酪酸イソブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;
(セ)ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸エチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルブチレート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;
(ソ)メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;
【0169】
(タ)N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;
(チ)γ−ブチロラクトン等のラクトン類等を挙げることができる。
また、これらの溶剤にさらに必要に応じて、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナール、ベンジルアルコール、アニソール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の溶剤を添加することもできる。これら溶剤は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。本発明に用いることができる溶剤は、1種単独、又は、2種を併用することが好ましく、2種を併用することがより好ましく、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類とジエチレングリコールジアルキルエーテル類とを併用することがさらに好ましい。
【0170】
本発明の感光性樹脂組成物における(D)溶剤の含有量は、(A)成分100重量部当たり、50〜3,000重量部であることが好ましく、100〜2,000重量部であることがより好ましく、150〜1,500重量部であることがさらに好ましい。
【0171】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物には、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分以外に必要に応じて、(E)架橋剤、(F)密着改良剤、(G)塩基性化合物、(H)界面活性剤、(I)可塑剤、及び、(J)熱ラジカル発生剤、並びに、熱酸発生剤、紫外線吸収剤、増粘剤、及び、有機又は無機の沈殿防止剤などの公知の添加剤を加えることができる。
【0172】
(E)架橋剤
本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じ、(E)架橋剤を含有することが好ましい。(E)架橋剤としては、例えば、以下に述べる分子内に2個以上のエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物、アルコキシメチル基含有架橋剤、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を添加することができる。(E)架橋剤を添加することにより、硬化膜をより強固な膜とすることができる。架橋剤としては以下のものを添加することができる。
【0173】
<分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物>
分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等を挙げることができる。
これらは市販品として入手できる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、JER827、JER828、JER834、JER1001、JER1002、JER1003、JER1055、JER1007、JER1009、JER1010(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、EPICLON860、EPICLON1050、EPICLON1051、EPICLON1055(以上、DIC(株)製)等が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、JER806、JER807、JER4004、JER4005、JER4007、JER4010(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、EPICLON830、EPICLON835(以上、DIC(株)製)、LCE−21、RE−602S(以上、日本化薬(株)製)、等が、フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、JER152、JER154、JER157S65、JER157S70(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、EPICLON N−740、EPICLON N−740、EPICLON N−770、EPICLON N−775(以上、DIC(株)製)等が、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、EPICLON N−660、EPICLON N−665、EPICLON N−670、EPICLON N−673、EPICLON N−680、EPICLON N−690、EPICLON N−695(以上、DIC(株)製)、EOCN−1020(以上、日本化薬(株)製)等が、脂肪族エポキシ樹脂としては、ADEKA RESIN EP−4080S、同 EP−4085S、同 EP−4088S(以上、(株)ADEKA製)、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、EHPE3150、EPOLEAD PB 3600、同 PB 4700(以上、ダイセル化学工業(株)製)等が挙げられる。その他にも、ADEKA RESIN EP−4000S、同 EP−4003S、同 EP−4010S、同 EP−4011S(以上、(株)ADEKA製)、NC−2000、NC−3000、NC−7300、XD−1000、EPPN−501、EPPN−502(以上、(株)ADEKA製)等が挙げられる。これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの中で好ましいものとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。特にビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂が好ましい。
【0174】
<分子内に2個以上のオキセタニル基を有する化合物>
分子内に2個以上のオキセタニル基を有する化合物の具体例として、OXT−121、OXT−221、OX−SQ、PNOX(以上、東亞合成(株)製)を用いることができる。
【0175】
エポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物の感光性樹脂組成物への添加量は(A)成分の総量を100重量部としたとき、1〜50重量部が好ましく、3〜30重量部がより好ましい。
【0176】
<アルコキシメチル基含有架橋剤>
アルコキシメチル基含有架橋剤としては、アルコキシメチル化メラミン、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン、アルコキシメチル化グリコールウリル及びアルコキシメチル化尿素等が好ましい。これらは、それぞれメチロール化メラミン、メチロール化ベンゾグアナミン、メチロール化グリコールウリル、又は、メチロール化尿素のメチロール基をアルコキシメチル基に変換することにより得られる。このアルコキシメチル基の種類については特に限定されるものではなく、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基等を挙げることができるが、アウトガスの発生量の観点から、特にメトキシメチル基が好ましい。これらの架橋性化合物のうち、アルコキシメチル化メラミン、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン、アルコキシメチル化グリコールウリルが好ましい架橋性化合物として挙げられ、透明性の観点から、アルコキシメチル化グリコールウリルが特に好ましい。
これらアルコキシメチル基含有架橋剤は、市販品として入手可能であり、例えば、サイメル300、301、303、370、325、327、701、266、267、238、1141、272、202、1156、1158、1123、1170、1174、UFR65、300(以上、三井サイアナミッド(株)製)、ニカラックMX−750、−032、−706、−708、−40、−31、−270、−280、−290、ニカラックMS−11、ニカラックMW−30HM、−100LM、−390、(以上、(株)三和ケミカル製)などを好ましく使用することができる。
【0177】
本発明の感光性樹脂組成物にアルコキシメチル基含有架橋剤を用いる場合のアルコキシメチル基含有架橋剤の添加量は、(A)成分100重量部に対して、0.05〜50重量部であることが好ましく、0.5〜10重量部であることがより好ましい。この範囲で添加することにより、現像時の好ましいアルカリ溶解性と、硬化後の膜の優れた耐溶剤性が得られる。
【0178】
<少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物>
少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、単官能(メタ)アクリレート、2官能(メタ)アクリレート、3官能以上の(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート化合物を好適に用いることができる。
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレートなどが挙げられる。
2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレートなどが挙げられる。
3官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイロキシエチル)フォスフェート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
これらの少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0179】
本発明の感光性樹脂組成物における少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の使用割合は、(A)成分100重量部に対して、50重量部以下であることが好ましく、30重量部以下であることがより好ましい。このような割合で少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を含有させることにより、本発明の感光性樹脂組成物から得られる絶縁膜の耐熱性及び表面硬度等を向上させることができる。少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を加える場合には、(J)熱ラジカル発生剤を添加することが好ましい。
【0180】
(F)密着改良剤
本発明の感光性樹脂組成物は、(F)密着改良剤を含有してもよい。本発明の感光性樹脂組成物に用いることができる(F)密着改良剤は、基材となる無機物、例えば、シリコン、酸化シリコン、窒化シリコン等のシリコン化合物、金、銅、アルミニウム等の金属と絶縁膜との密着性を向上させる化合物である。具体的には、シランカップリング剤、チオール系化合物等が挙げられる。本発明で使用される(F)密着改良剤としてのシランカップリング剤は、界面の改質を目的とするものであり、特に限定することなく、公知のものを使用することができる。
好ましいシランカップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリアコキシシラン、γ−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、γ−クロロプロピルトリアルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシランが挙げられる。これらのうち、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシランやγ−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランがより好ましく、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシランがさらに好ましい。これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらは基板との密着性の向上に有効であるとともに、基板とのテーパー角の調整にも有効である。
本発明の感光性樹脂組成物における(F)密着改良剤の含有量は、(A)成分100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましい。
【0181】
(G)塩基性化合物
本発明の感光性樹脂組成物は、(G)塩基性化合物を含有してもよい。(G)塩基性化合物としては、化学増幅レジストで用いられるものの中から任意に選択して使用することができる。例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、第四級アンモニウムヒドロキシド、カルボン酸の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0182】
脂肪族アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミンなどが挙げられる。
芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、ベンジルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ジフェニルアミンなどが挙げられる。
複素環式アミンとしては、例えば、ピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2−フェニルピリジン、4−フェニルピリジン、N−メチル−4−フェニルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、ニコチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、キノリン、8−オキシキノリン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、4−メチルモルホリン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.3.0]−7−ウンデセンなどが挙げられる。
第四級アンモニウムヒドロキシドとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。
カルボン酸の第四級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラメチルアンモニウムベンゾエート、テトラ−n−ブチルアンモニウムアセテート、テトラ−n−ブチルアンモニウムベンゾエートなどが挙げられる。
本発明に用いることができる塩基性化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよいが、2種以上を併用することが好ましく、2種を併用することがより好ましく、複素環式アミンを2種併用することがさらに好ましい。
【0183】
本発明の感光性樹脂組成物における(G)塩基性化合物の含有量は、(A)成分100重量部に対して、0.001〜1重量部であることが好ましく、0.005〜0.2重量部であることがより好ましい。
【0184】
(H)界面活性剤
本発明の感光性樹脂組成物は、(H)界面活性剤を含有してもよい。(H)界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、又は、両性のいずれでも使用することができるが、好ましい界面活性剤はノニオン系界面活性剤である。
ノニオン系界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル類、ポリオキシエチレン高級アルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレングリコールの高級脂肪酸ジエステル類、シリコーン系、フッ素系界面活性剤を挙げることができる。また、以下商品名で、KP(信越化学工業(株)製)、ポリフロー(共栄社化学(株)製)、エフトップ(JEMCO社製)、メガファック(DIC(株)製)、フロラード(住友スリーエム(株)製)、アサヒガード、サーフロン(旭硝子(株)製)、PolyFox(OMNOVA社製)等の各シリーズを挙げることができる。
また、界面活性剤として、下記式(1)で表される構成単位A及び構成単位Bを含み、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とした場合のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が1,000以上10,000以下である共重合体を好ましい例として挙げることができる。
【0185】
【化41】

(式(1)中、R1及びR3はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素数1以上4以下の直鎖アルキレン基を表し、R4は水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、Lは炭素数3以上6以下のアルキレン基を表し、p及びqは重合比を表す重量百分率であり、pは10重量%以上80重量%以下の数値を表し、qは20重量%以上90重量%以下の数値を表し、rは1以上18以下の整数を表し、nは1以上10以下の整数を表す。)
【0186】
前記Lは、下記式(2)で表される分岐アルキレン基であることが好ましい。式(2)におけるR5は、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、相溶性と被塗布面に対する濡れ性の点で、炭素数1以上3以下のアルキル基が好ましく、炭素数2又は3のアルキル基がより好ましい。pとqとの和(p+q)は、p+q=100、すなわち、100重量%であることが好ましい。
【0187】
【化42】

【0188】
前記共重合体の重量平均分子量(Mw)は、1,500以上5,000以下がより好ましい。
【0189】
これらの界面活性剤は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
本発明の感光性樹脂組成物における(H)界面活性剤の添加量は、(A)成分100重量部に対して、10重量部以下であることが好ましく、0.01〜10重量部であることがより好ましく、0.01〜1重量部であることがさらに好ましい。
【0190】
(I)可塑剤
本発明の感光性樹脂組成物は、(I)可塑剤を含有してもよい。(I)可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジメチルグリセリンフタレート、酒石酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、トリアセチルグリセリンなどが挙げられる。
本発明の感光性樹脂組成物における(I)可塑剤の添加量は、(A)成分100重量部に対して、0.1〜30重量部であることが好ましく、1〜10重量部であることがより好ましい。
【0191】
(J)熱ラジカル発生剤
本発明の感光性樹脂組成物は、(J)熱ラジカル発生剤を含んでいてもよく、前述の少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物のようなエチレン性不飽和化合物を含有する場合、(J)熱ラジカル発生剤を含有することが好ましい。本発明における熱ラジカル発生剤としては、公知の熱ラジカル発生剤を用いることができる。
熱ラジカル発生剤は、熱のエネルギーによってラジカルを発生し、重合性化合物の重合反応を開始又は促進させる化合物である。熱ラジカル発生剤を添加することによって、得られた硬化膜がより強靭になり、耐熱性、耐溶剤性が向上する場合がある。
好ましい熱ラジカル発生剤としては、芳香族ケトン類、オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アゾ系化合物、ビベンジル化合物等が挙げられる。(J)熱ラジカル発生剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用することも可能である。
本発明の感光性樹脂組成物における(J)熱ラジカル発生剤の添加量は、膜物性向上の観点から、(A)重合体を100重量部としたとき、0.01〜50重量部が好ましく、0.1〜20重量部がより好ましく、0.5〜10重量部であることが最も好ましい。
【0192】
<増感剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、(B)光酸発生剤との組み合わせにおいて、その分解を促進させるために、増感剤を含有することが好ましい。増感剤は、活性光線又は放射線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感剤は、光酸発生剤と接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用が生じる。これにより光酸発生剤は化学変化を起こして分解し、酸を生成する。好ましい増感剤の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nmの波長域のいずれかに吸収波長を有する化合物を挙げることができる。
【0193】
多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、アントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン,3,7−ジメトキシアントラセン、9,10−ジプロピルオキシアントラセン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、キサントン類(例えば、キサントン、チオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、ローダシアニン類、オキソノール類、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アクリドン類(例えば、アクリドン、10−ブチル−2−クロロアクリドン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、スチリル類、ベーススチリル類(例えば、2−[2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル]ベンゾオキサゾール)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ4−メチルクマリン、7−ヒドロキシ4−メチルクマリン、2,3,6,7−テトラヒドロ−9−メチル−1H,5H,11H[1]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−ノン)。
これら増感剤の中でも、多核芳香族類、アクリドン類、スチリル類、ベーススチリル類、クマリン類が好ましく、多核芳香族類がより好ましい。多核芳香族類の中でもアントラセン誘導体が最も好ましい。
【0194】
(硬化膜の形成方法)
次に、本発明の硬化膜の形成方法を説明する。
本発明の硬化膜の形成方法は、以下の(1)〜(5)の工程を含むことを特徴とする。
(1)本発明の感光性樹脂組成物を基板上に塗布する塗布工程
(2)塗布された感光性樹脂組成物から溶剤を除去する溶剤除去工程
(3)活性光線により露光する露光工程
(4)水性現像液により現像する現像工程
(5)熱硬化するポストベーク工程
以下に各工程を順に説明する。
【0195】
(1)の塗布工程では、本発明の感光性樹脂組成物を基板上に塗布して溶剤を含む湿潤膜とする。
(2)の溶剤除去工程では、塗布された上記の膜から、減圧(バキューム)及び/又は加熱により、溶剤を除去して基板上に乾燥塗膜を形成させる。
【0196】
(3)の露光工程では、得られた塗膜に波長300nm以上450nm以下の活性光線を照射する。この工程では、(B)光酸発生剤が分解し酸が発生する。発生した酸の触媒作用により、(A)共重合体中に含まれる酸分解性基が加水分解されて、カルボキシ基又はフェノール性水酸基が生成する。
【0197】
酸触媒の生成した領域において、上記の加水分解反応を加速させるために、必要に応じて、露光後加熱処理:Post Exposure Bake(以下、「PEB」ともいう。)を行うことができる。PEBにより、酸分解性基からのカルボキシ基又はフェノール性水酸基の生成を促進させることができる。
【0198】
本発明における式(a1−1)で表されるモノマー単位中の酸分解性基は、酸分解の活性化エネルギーが低く、露光による酸発生剤由来の酸により容易に分解し、カルボキシ基又はフェノール性水酸基を生じるため、必ずしもPEBを行うことなく、現像によりポジ画像を形成することもできる。
なお、比較的低温でPEBを行うことにより、架橋反応を起こすことなく、酸分解性基の加水分解を促進することもできる。PEBを行う場合の温度は、30℃以上130℃以下であることが好ましく、40℃以上110℃以下がより好ましく、50℃以上80℃以下が特に好ましい。
【0199】
(4)の現像工程では、遊離したカルボキシ基又はフェノール性水酸基を有する共重合体をアルカリ性現像液を用いて現像する。アルカリ性現像液に溶解しやすいカルボキシ基又はフェノール性水酸基を有する樹脂組成物を含む露光部領域を除去することにより、ポジ画像が形成する。
(5)のポストベーク工程において、得られたポジ画像を加熱することにより、モノマー単位(a1)中の酸分解性基を熱分解しカルボキシ基又はフェノール性水酸基を生成させ、モノマー単位(a2)の架橋基と架橋させることにより、硬化膜を形成することができる。この加熱は、150℃以上の高温に加熱することが好ましく、180〜250℃に加熱することがより好ましく、200〜250℃に加熱することが特に好ましい。加熱時間は、加熱温度などにより適宜設定できるが、10〜90分の範囲内とすることが好ましい。
ポストベーク工程の前に活性光線、好ましくは紫外線を現像パターンに全面照射する工程を加えると、活性光線照射により発生する酸により架橋反応を促進することができる。
次に、本発明の感光性樹脂組成物を用いた硬化膜の形成方法を具体的に説明する。
【0200】
<感光性樹脂組成物の調製方法>
(A)〜(D)の必須成分を所定の割合でかつ任意の方法で混合し、撹拌溶解して感光性樹脂組成物を調製する。例えば、(A)〜(C)成分を、それぞれ予め(D)溶剤に溶解させた溶液とした後、これらを所定の割合で混合して樹脂組成物を調製することもできる。以上のように調製した組成物溶液は、孔径0.2μmのフィルター等を用いてろ過した後に、使用に供することもできる。
【0201】
<塗布工程及び溶剤除去工程>
感光性樹脂組成物を、所定の基板に塗布し、減圧及び/又は加熱(プリベーク)により溶剤を除去することにより、所望の乾燥塗膜を形成することができる。前記の基板としては、例えば液晶表示素子の製造においては、偏光板、さらに必要に応じてブラックマトリックス層、カラーフィルター層を設け、さらに透明導電回路層を設けたガラス板などが例示できる。基板への塗布方法は特に限定されず、例えば、スリットコート法、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法等の方法を用いることができる。中でもスリットコート法が大型基板に適するという観点で好ましい。大型基板で製造すると生産性が高く好ましい。ここで大型基板とは、各辺が1m以上の大きさの基板をいう。
【0202】
また、(2)溶剤除去工程の加熱条件は、未露光部における(A)成分中のモノマー単位(a1)において酸分解性基が分解して、(A)成分をアルカリ現像液に可溶性としない範囲であり、各成分の種類や配合比によっても異なるが、好ましくは80〜130℃で30〜120秒間程度である。
【0203】
<露光工程及び現像工程(パターン形成方法)>
露光工程では、塗膜を設けた基板に所定のパターンを有するマスクを介して、活性光線を照射する。露光工程の後、必要に応じて加熱処理(PEB)を行った後、現像工程では、アルカリ性現像液を用いて露光部領域を除去して画像パターンを形成する。
活性光線による露光には、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、LED光源、エキシマレーザー発生装置などを用いることができ、g線(436nm)、i線(365nm)、h線(405nm)などの波長300nm以上450nm以下の波長を有する活性光線が好ましく使用できる。また、必要に応じて長波長カットフィルター、短波長カットフィルター、バンドパスフィルターのような分光フィルターを通して照射光を調整することもできる。
【0204】
現像工程で使用する現像液には、塩基性化合物が含まれることが好ましい。塩基性化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物類;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩類;重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムなどのアルカリ金属重炭酸塩類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリンヒドロキシド等のアンモニウムヒドロキシド類;ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの水溶液を使用することができる。また、上記アルカリ類の水溶液にメタノールやエタノールなどの水溶性有機溶剤や界面活性剤を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。
【0205】
現像液のpHは、好ましくは10.0〜14.0である。
現像時間は、好ましくは30〜180秒間であり、また、現像の手法は液盛り法、ディップ法等の何れでもよい。現像後は、流水洗浄を30〜90秒間行い、所望のパターンを形成させることができる。
【0206】
<ポストベーク工程(架橋工程)>
現像により得られた未露光領域に対応するパターンについて、ホットプレートやオーブン等の加熱装置を用いて、所定の温度、例えば180〜250℃で所定の時間、例えばホットプレート上なら5〜60分間、オーブンならば30〜90分間、加熱処理をすることにより、(A)成分における酸分解性基を分解して、カルボキシ基又はフェノール性水酸基を発生させ、モノマー単位(a2)中の架橋性基と反応させて架橋させることにより、耐熱性、硬度等に優れた保護膜や層間絶縁膜を形成することができる。また、加熱処理を行う際は窒素雰囲気下で行うことにより透明性を向上させることもできる。
なお、加熱処理に先立ち、パターンを形成した基板に活性光線により再露光した後、ポストベークすること(再露光/ポストベーク)により未露光部分に存在する(B)成分から酸を発生させ、架橋工程を促進する触媒として機能させることが好ましい。
すなわち、本発明の硬化膜の形成方法は、現像工程とポストベーク工程の間に、活性光線により再露光する再露光工程を含むことが好ましい。再露光工程における露光は、前記露光工程と同様の手段により行えばよいが、前記再露光工程では、基板の本発明の感光性樹脂組成物により膜が形成された側に対し、全面露光を行うことが好ましい。
再露光工程の好ましい露光量としては、100〜1,000mJ/cm2である。
【0207】
本発明の感光性樹脂組成物により、絶縁性に優れ、高温でベークされた場合においても高い透明性を有する層間絶縁膜が得られる。本発明の感光性樹脂組成物を用いてなる層間絶縁膜は、高い透明性を有し、硬化膜物性に優れるため、有機EL表示装置や液晶表示装置の用途に有用である。
本発明の有機EL表示装置や液晶表示装置としては、前記本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成される平坦化膜や層間絶縁膜を有すること以外は特に制限されず、様々な構造をとる公知の各種有機EL表示装置や液晶表示装置を挙げることができる。
また、本発明の感光性樹脂組成物及び本発明の硬化膜は、前記用途に限定されず種々の用途に使用することができる。例えば、平坦化膜や層間絶縁膜以外にも、カラーフィルターの保護膜や、液晶表示装置における液晶層の厚みを一定に保持するためのスペーサーや固体撮像素子においてカラーフィルター上に設けられるマイクロレンズ等に好適に用いることができる。
【0208】
図1は、有機EL表示装置の一例の構成概念図を示す。ボトムエミッション型の有機EL表示装置における基板の模式的断面図を示し、平坦化膜4を有している。
ガラス基板6上にボトムゲート型のTFT1を形成し、このTFT1を覆う状態でSi34から成る絶縁膜3が形成されている。絶縁膜3に、ここでは図示を省略したコンタクトホールを形成した後、このコンタクトホールを介してTFT1に接続される配線2(高さ1.0μm)が絶縁膜3上に形成されている。配線2は、TFT1間又は、後の工程で形成される有機EL素子とTFT1とを接続するためのものである。
さらに、配線2の形成による凹凸を平坦化するために、配線2による凹凸を埋め込む状態で絶縁膜3上に平坦化層4が形成されている。
平坦化膜4上には、ボトムエミッション型の有機EL素子が形成されている。すなわち、平坦化膜4上に、ITOからなる第一電極5が、コンタクトホール7を介して配線2に接続させて形成されている。また、第一電極5は、有機EL素子の陽極に相当する。
第一電極5の周縁を覆う形状の絶縁膜8が形成されており、この絶縁膜8を設けることによって、第一電極5とこの後の工程で形成する第二電極との間のショートを防止することができる。
さらに、図1には図示していないが、所望のパターンマスクを介して、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層を順次蒸着して設け、次いで、基板上方の全面にAlから成る第二電極を形成し、封止用ガラス板と紫外線硬化型エポキシ樹脂を用いて貼り合わせることで封止し、各有機EL素子にこれを駆動するためのTFT1が接続されてなるアクティブマトリックス型の有機EL表示装置が得られる。
【0209】
図2は、アクティブマトリックス方式の液晶表示装置10の一例を示す概念的断面図である。このカラー液晶表示装置10は、背面にバックライトユニット12を有する液晶パネルであって、液晶パネルは、偏光フィルムが貼り付けられた2枚のガラス基板14,15の間に配置されたすべての画素に対応するTFT16の素子が配置されている。ガラス基板上に形成された各素子には、硬化膜17中に形成されたコンタクトホール18を通して、画素電極を形成するITO透明電極19が配線されている。ITO透明電極19の上には、液晶20の層とブラックマトリックスを配置したRGBカラーフィルター22が設けられている。
【実施例】
【0210】
次に実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0211】
〔合成例1:A−1の合成〕
メタクリル酸1−n−ブトキシエチル44.8g(0.24モル)、メタクリル酸ベンジル21.1g(0.12モル)、メタクリル酸30.9g(0.36モル)及びメチルイソブチルケトン300mlを500mlの3頚フラスコに仕込み、これにラジカル重合開始剤として、触媒量の2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸メチル)を添加し、窒素気流下、70℃で6時間重合させた。次にメタクリル酸グリシジル71g(0.5モル)、ジメチルベンジルアミン1g添加し、70℃で4時間撹拌した。反応液を冷却後、大量のヘプタンに注いでポリマーを析出させた。結晶を濾取した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解し、溶液中に含まれるヘプタン、メチルイソブチルケトンを減圧留去することにより、ポリマーA−1をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50重量%溶液として得た。
【0212】
【化43】

【0213】
〔合成例2:A−2の合成〕
メタクリル酸1−エトキシエチル47.5g(0.3モル)、メタクリル酸グリシジル25.6g(0.18モル)、メタクリル酸ベンジル21.2g(0.12モル)及びメチルイソブチルケトン300mlを500mlの3頚フラスコに仕込み、これにラジカル重合開始剤として触媒量の2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸メチル)を添加し、窒素気流下、70℃で6時間重合させた。反応液を冷却後、大量のヘプタンに注いでポリマーを析出させた。結晶を濾取した後、ジエチレングリコールジメチルエーテルに溶解し、溶液中に含まれるヘプタンとメチルイソブチルケトンを減圧留去することにより、ポリマーA−2(メタクリル酸1−エトキシエチル/メタクリル酸グリシジル/メタクリル酸ベンジル)をジエチレングリコールジメチルエーテル50重量%溶液として得た。
得られたポリマーのメタクリル酸1−エトキシエチル単位、メタクリル酸グリシジル単位及びメタクリル酸ベンジル単位の構成比率はNMR測定から約50:30:20であった。また、ポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約7,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.7であった。
【0214】
【化44】

【0215】
〔合成例3:A−3の合成〕
メタクリル酸1−ベンジルオキシエチル79.3g(0.36モル)、アクリル酸グリシジル23.1g(0.18モル)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル7.8g(0.06モル)及びメチルイソブチルケトン300mlを500mlの3頚フラスコに仕込み、これにラジカル重合開始剤として触媒量の2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸メチル)を添加し、窒素気流下、70℃で6時間重合させた。反応液を冷却後、大量のヘプタンに注いでポリマーを析出させた。結晶を濾取した後、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルに溶解し、溶液中に含まれるヘプタンとメチルイソブチルケトンを減圧留去することにより、ポリマーA−3(メタクリル酸1−ベンジルオキシエチル/アクリル酸グリシジル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)をジエチレングリコールエチルメチルエーテル50重量%溶液として得た。
得られたポリマーのメタクリル酸1−ベンジルオキシエチル単位、アクリル酸グリシジル単位及びメタクリル酸2−ヒドロキシエチル単位の構成比率はNMR測定から約60:30:10であった。また、ポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約10,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.8であった。
【0216】
【化45】

【0217】
〔合成例4:A−4の合成〕
アクリル酸1−エトキシエチル43.3g(0.3モル)、メタクリル酸グリシジル25.6g(0.18モル)、メタクリル酸ベンジル21.2g(0.12モル)及びメチルイソブチルケトン300mlを500mlの3頚フラスコに仕込み、これにラジカル重合開始剤として触媒量の2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸メチル)を添加し、窒素気流下、70℃で6時間重合させた。反応液を冷却後、大量のヘプタンに注いでポリマーを析出させた。結晶を濾取した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解し、溶液中に含まれるヘプタンとメチルイソブチルケトンを減圧留去することにより、ポリマーA−4(アクリル酸1−エトキシエチル/メタクリル酸グリシジル/メタクリル酸ベンジル)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート50重量%溶液として得た。
得られたポリマーのアクリル酸1−エトキシエチル単位とメタクリル酸グリシジル単位とメタクリル酸ベンジル単位の構成比率はNMR測定から約50:30:20であった。また、ポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約8,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.7であった。
【0218】
【化46】

【0219】
〔合成例5:A−5の合成〕
メタクリル酸1−シクロヘキシルオキシエチル76.4g(0.36モル)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(ダイセル化学工業(株)製サイクロマーM100)35.3g(0.18モル)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル7.8g(0.06モル)及びメチルイソブチルケトン300mlを500mlの3頚フラスコに仕込み、これにラジカル重合開始剤として触媒量の2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸メチル)を添加し、窒素気流下、70℃で6時間重合させた。反応液を冷却後、大量のヘプタンに注いでポリマーを析出させた。結晶を濾取した後、ジエチレングリコールジメチルエーテルに溶解し、溶液中に含まれるヘプタンとメチルイソブチルケトンを減圧留去することにより、ポリマーA−5(メタクリル酸1−シクロヘキシルオキシエチル/3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)をジエチレングリコールジメチルエーテル50重量%溶液として得た。
得られたポリマーのメタクリル酸1−シクロヘキシルオキシエチル単位、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート単位及びメタクリル酸2−ヒドロキシエチル単位の構成比率はNMR測定から約60:30:10であった。また、ポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約6,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.8であった。
【0220】
【化47】

【0221】
〔合成例6:A−6の合成〕
メタクリル酸2−テトラヒドロピラニル57.0g(0.36モル)、p−ビニルフェニルグリシジルエーテル31.7g(0.18モル)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル7.8g(0.06モル)及びメチルイソブチルケトン300mlを500mlの3頚フラスコに仕込み、これにラジカル重合開始剤として触媒量の2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸メチル)を添加し、窒素気流下、70℃で6時間重合させた。反応液を冷却後、大量のヘプタンに注いでポリマーを析出させた。結晶を濾取した後、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルに溶解し、溶液中に含まれるヘプタンとメチルイソブチルケトンを減圧留去することにより、ポリマーA−6(メタクリル酸2−テトラヒドロピラニル/p−ビニルフェニルグリシジルエーテル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)をジエチレングリコールエチルメチルエーテル50重量%溶液として得た。
得られたポリマーのメタクリル酸2−テトラヒドロピラニル単位、p−ビニルフェニルグリシジルエーテル単位及びメタクリル酸2−ヒドロキシエチル単位の構成比率はNMR測定から約60:30:10であった。また、ポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約7,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.8であった。
【0222】
【化48】

【0223】
〔合成例7:A−7の合成〕
メタクリル酸1−エトキシエチル38.0g(0.24モル)、メタクリル酸グリシジル21.3g(0.15モル)、メタクリル酸ベンジル26.4g(0.15モル)、メタクリル酸5.2g(0.06モル)及びメチルイソブチルケトン300mlを500mlの3頚フラスコに仕込み、これにラジカル重合開始剤として触媒量の2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸メチル)を添加し、窒素気流下、70℃で6時間重合させた。反応液を冷却後、大量のヘプタンに注いでポリマーを析出させた。結晶を濾取した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとジエチレングリコールエチルメチルエーテルの混合溶剤に溶解し、溶液中に含まれるヘプタンとメチルイソブチルケトンを減圧留去することにより、ポリマーA−7(メタクリル酸1−エトキシエチル/メタクリル酸グリシジル/メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとジエチレングリコールエチルメチルエーテルの混合溶剤の50重量%溶液として得た。
得られたポリマーのメタクリル酸1−エトキシエチル単位、メタクリル酸グリシジル単位、メタクリル酸ベンジル単位及びメタクリル酸の構成比率はNMR測定から約40:25:25:10であった。また、ポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約7,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.7であった。
【0224】
【化49】

【0225】
〔合成例8:A−8の合成〕
メタクリル酸1−エトキシエチル47.5g(0.3モル)、メタクリル酸(1−エチル−3−オキサシクロブチル)メチル33.2g(0.18モル)、メタクリル酸ベンジル21.2g(0.12モル)及びメチルイソブチルケトン300mlを500mlの3頚フラスコに仕込み、これにラジカル重合開始剤として触媒量の2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸メチル)を添加し、窒素気流下、70℃で6時間重合させた。反応液を冷却後、大量のヘプタンに注いでポリマーを析出させた。結晶を濾取した後、ジエチレングリコールジメチルエーテルに溶解し、溶液中に含まれるヘプタンとメチルイソブチルケトンを減圧留去することにより、ポリマーA−8(メタクリル酸1−エトキシエチル/メタクリル酸(1−エチル−3−オキサシクロブチル)メチル/メタクリル酸ベンジル)をジエチレングリコールジメチルエーテル50重量%溶液として得た。
得られたポリマーのメタクリル酸1−エトキシエチル単位、メタクリル酸(1−エチル−3−オキサシクロブチル)メチル単位及びメタクリル酸ベンジル単位の構成比率はNMR測定から約50:30:20であった。また、ポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約8,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.7であった。
【0226】
【化50】

【0227】
〔合成例9:A−9の合成〕
重合開始剤量を減量した以外はA−5と同様に合成した。
ポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約25,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.8であった。
【0228】
〔合成例10:A−10の合成〕
重合開始剤量を減量した以外はA−8と同様に合成した。
ポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約35,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.9であった。
【0229】
〔合成例11:A−11の合成〕
メタクリル酸1−エトキシエチル0.4モル、メタクリル酸グリシジル0.6モル、及びメチルイソブチルケトン300mlを500mlの3頚フラスコに仕込み、これにラジカル重合開始剤として触媒量の2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸メチル)を添加し、窒素気流下、70℃で6時間重合させた。
次にメタクリル酸グリシジル0.4モル、ジメチルベンジルアミン1g添加し、60℃で4時間撹拌した。反応液を冷却後、大量のヘプタンに注いでポリマーを析出させた。結晶を濾取した後、ジエチレングリコールジメチルエーテルに溶解し、溶液中に含まれるヘプタンとメチルイソブチルケトンを減圧留去することにより、ポリマーA−11をジエチレングリコールジメチルエーテル50重量%溶液として得た。ポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約8,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.8であった。
【0230】
【化51】

【0231】
〔合成例12:A−12の合成〕
メタクリル酸1−エトキシエチル47.5g(0.3モル)、メタクリル酸グリシジル25.6g(0.18モル)、メタクリル酸t−ブチル0.12モル及びメチルイソブチルケトン300mlを500mlの3頚フラスコに仕込み、これにラジカル重合開始剤として触媒量の2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸メチル)を添加し、窒素気流下、70℃で6時間重合させた。反応液を冷却後、大量のヘプタンに注いでポリマーを析出させた。結晶を濾取した後、ジエチレングリコールジメチルエーテルに溶解し、溶液中に含まれるヘプタンとメチルイソブチルケトンを減圧留去することにより、ポリマーA−12をジエチレングリコールジメチルエーテル50重量%溶液として得た。
ポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約7,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.7であった。
【0232】
【化52】

【0233】
〔フェノール1(4−ヒドロキシ安息香酸(2−メタクリロイルオキシエチル)エステル)の合成〕
4−ヒドロキシ安息香酸(2−ヒドロキシエチル)エステル21gのアセトニトリル100ml溶液に、撹拌下、N,N−ジメチルアセトアミド20mlを加え、さらにメタクリル酸クロリド20gを加えた。35℃で8時間、撹拌しながら反応させた後、反応混合物を氷水にあけ、析出した結晶を濾取し、酢酸エチル/n−ヘキサンから再結晶し、4−ヒドロキシ安息香酸(2−メタクリロイルオキシエチル)エステルを得た。
【0234】
〔フェノール2(4−ヒドロキシ安息香酸(3−メタクリロイルオキシプロピル)エステル)の合成〕
4−ヒドロキシ安息香酸(3−ヒドロキシプロピル)エステル23gのアセトニトリル100ml溶液に、撹拌下、N−メチルピロリドン20mlを加え、さらにメタクリル酸クロリド16gを加えた。35℃で8時間、撹拌しながら反応させた後、反応混合物を氷水にあけ、析出した結晶を濾取し、酢酸エチル/n−ヘキサンから再結晶し、4−ヒドロキシ安息香酸(3−メタクリロイルオキシプロピル)エステルを得た。
【0235】
〔フェノール3(4−ヒドロキシ安息香酸(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エステル)の合成〕
p−ヒドロキシ安息香酸100g、グリシジルメタクリレート100g、テトラブチルアンモニウムブロマイド9.7gをN−メチルピロリドン250ml溶液に加え、90℃で6時間、撹拌しながら反応させた後、反応混合物を水/酢酸エチル混合溶媒にあけ、析出した結晶を濾取し、酢酸エチル/n−ヘキサンから再結晶し、4−ヒドロキシ安息香酸(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)エステルを得た。
【0236】
〔保護フェノールの合成〕
フェノール1、2、3を酸触媒下、それぞれエチルビニルエーテルと反応させることで、フェノール性水酸基のエチルアセタール保護体(保護フェノール1、2、3)を得た。
【0237】
〔合成例13:A−13の合成〕
A−8の合成においてメタクリル酸1−エトキシエチルを保護フェノール1に変更した以外はA−8と同様に合成し、A−13を得た。ポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約8,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.7であった。
【0238】
〔合成例14:A−14の合成〕
A−8の合成においてメタクリル酸1−エトキシエチルを保護フェノール2に変更した以外はA−8と同様に合成し、A−14を得た。ポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約8,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.8であった。
【0239】
〔合成例15:A−15の合成〕
A−8の合成においてメタクリル酸1−エトキシエチルを保護フェノール3に変更した以外はA−8と同様に合成し、A−15を得た。ポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約8,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.8であった。
【0240】
〔合成例16:A−16の合成〕
A−9の合成においてメタクリル酸1−シクロヘキシルオキシエチルを保護フェノール3に変更し、開始剤量を更に減量した以外はA−8と同様に合成し、A−16を得た。ポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約45,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であった。
【0241】
〔合成例17:A−17の合成〕
3つ口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)12.4gを入れ、窒素雰囲気下において70℃に昇温した。その溶液にメタクリル酸(MAA)0.603g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)1.821g、メタクリル酸テトラヒドロフラン−2−イル(MATHF)4.373g、オキセタンメタクリレート(OXE−30、大阪有機化学工業(株)製)3.868g、V−65(重合開始剤、和光純薬工業(株)製)1.217g(モノマーに対して7mol%)をPGMEA12.4gに溶解させ、2時間かけて滴下した。滴下終了後4時間撹拌し、反応を終了させた。重量平均分子量は6,500であった。分子量分布(Mw/Mn)は1.7であった。
【0242】
【化53】

【0243】
〔合成例18:A−18の合成〕
3つ口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)32.75gを入れ、窒素雰囲気下において70℃に昇温した。その溶液にメタクリル酸(MAA)1.54g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)5.20g、メタクリル酸テトラヒドロフラン−2−イル(MATHF)12.80g、グリシジルメタクリレート(GMA)8.53g、V−65(重合開始剤、和光純薬工業(株)製)3.477g(モノマーに対して7mol%)をPGMEA(32.75g)に溶解させ、2時間かけて滴下した。滴下終了後4時間撹拌し、反応を終了させた。重量平均分子量は7,100であった。分子量分布(Mw/Mn)は1.4であった。
【0244】
【化54】

【0245】
なお、上記合成例A−17及びA−18において使用したMATHFは、以下のようにして合成した。
<MATHF(メタクリル酸テトラヒドロフラン−2−イル)の合成>
メタクリル酸(86g、1mol)を15℃に冷却しておき、カンファースルホン酸(4.6g,0.02mol)添加した。その溶液に、2,3−ジヒドロフラン(71g、1mol、1.0当量)を滴下した。1時間撹拌した後に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(500mL)を加え、酢酸エチル(500mL)で抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥後、不溶物を濾過後40℃以下で減圧濃縮し、残渣の黄色油状物を減圧蒸留して沸点(bp.)54〜56℃/3.5mmHg留分のメタクリル酸テトラヒドロフラン−2−イル(MATHF)125gを無色油状物として得た(収率80%)。
【0246】
〔合成例19:A−19の合成〕
A−17の合成においてMATHFをメタクリル酸1−エトキシエチルに変更した以外はA−17と同様に合成し、A−19を得た。ポリスチレンを標準としたGPC測定の結果、重量平均分子量は約8,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.8であった。
【0247】
【化55】

【0248】
〔合成例20:A−20の合成〕
A−17の合成において、モノマーとして更にスチレンを添加した以外は、A−20の合成と同様にして、A−20を合成した。
【0249】
【化56】

【0250】
〔合成例21:B10の合成〕
2−ナフトール(10g)、クロロベンゼン(30mL)の懸濁溶液に塩化アルミニウム(10.6g)、2−クロロプロピオニルクロリド(10.1g)を添加し、混合液を40℃に加熱して2時間反応させた。氷冷下、反応液に4NHCl水溶液(60mL)を滴下し、酢酸エチル(50mL)を添加して分液した。有機層に炭酸カリウム(19.2g)を加え、40℃で1時間反応させた後、2NHCl水溶液(60mL)を添加して分液し、有機層を濃縮後、結晶をジイソプロピルエーテル(10mL)でリスラリーし、ろ過、乾燥してケトン化合物(6.5g)を得た。
得られたケトン化合物(3.0g)、メタノール(30mL)の懸濁溶液に酢酸(7.3g)、50重量%ヒドロキシルアミン水溶液(8.0g)を添加し、加熱還流した。放冷後、水(50mL)を加え、析出した結晶をろ過、冷メタノール洗浄後、乾燥してオキシム化合物(2.4g)を得た。
得られたオキシム化合物(1.8g)をアセトン(20mL)に溶解させ、氷冷下トリエチルアミン(1.5g)、p−トルエンスルホニルクロリド(2.4g)を添加し、室温に昇温して1時間反応させた。反応液に水(50mL)を添加し、析出した結晶をろ過後、メタノール(20mL)でリスラリーし、ろ過、乾燥してB10(2.3g)を得た。
なお、B10の1H−NMRスペクトル(300MHz、CDCl3)は、δ=8.3(d,1H),8.0(d,2H),7.9(d,1H),7.8(d,1H),7.6(dd,1H),7.4(dd,1H)7.3(d,2H),7.1(d.1H),5.6(q,1H),2.4(s,3H),1.7(d,3H)であった。
【0251】
【化57】

【0252】
〔合成例22:B11の合成〕
1−1.合成中間体B11−Aの合成
2−アミノベンゼンチオール:31.3g(東京化成工業(株)製)をトルエン:100mL(和光純薬工業(株)製)に室温(25℃)下溶解させた。次に、フェニルアセチルクロリド:40.6g(東京化成工業(株)製)を滴下し、室温下1時間、次いで100℃で2時間撹拌し反応させた。得られた反応液に水500mLを入れ析出した塩を溶解させ、トルエン油分を抽出、抽出液をロータリエバポレーターで濃縮させ、合成中間体B11−Aを得た。
【0253】
1−2.B11の合成
前記のようにして得られた合成中間体B11−A 2.25gをテトラヒドロフラン:10mL(和光純薬工業(株)製)に混合させた後、氷浴につけ反応液を5℃以下に冷却した。次に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド:4.37g(25重量%メタノール溶液、Alfa Acer社製)を滴下し、氷浴下0.5時間撹拌し反応させた。さらに、亜硝酸イソペンチル:7.03gを内温20℃以下に保ちながら滴下し、滴下終了後に反応液を室温まで昇温後、一時間撹拌した。
ついで、反応液を5℃以下に冷却し後、p−トルエンスルホニルクロリド(1.9g)(東京化成工業(株)製)を投入し、10℃以下を保ちながら1時間撹拌した。その後水80mLを投入し、0℃で1時間撹拌した。得られた析出物を濾過した後、イソプロピルアルコール(IPA)60mLを投入し、50℃に加熱して1時間撹拌し、熱時濾過、乾燥させることで、(B11:前記構造)1.8gを得た。
得られたB11の1H−NMRスペクトル(300MHz、重DMSO((D3C)2S=O))は、δ=8.2〜8.17(m,1H),8.03〜8.00(m,1H),7.95〜7.9(m,2H),7.6〜7.45(m,9H),2.45(s,3H)であった。
上記の1H−NMR測定結果より、得られたB11は、1種単独の幾何異性体であることが推定される。
【0254】
【化58】

【0255】
(実施例1)
表1に示す成分を混合し、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとジエチレングリコールエチルメチルエーテルの1:1混合溶剤を添加して固形分濃度20重量%とし、0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターを用いてろ過して、ポジ型感光性樹脂組成物を調製した。
【0256】
<感度の評価>
シリコン酸化膜を有するシリコンウエハー上に本発明の感光性樹脂組成物をスリットコートした後、真空乾燥して膜厚3μmの塗膜を形成した。
次に、i線ステッパー(キヤノン(株)製FPA−3000i5+)を用いて、所定のマスクを介して露光した。アルカリ現像液(2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)で23℃で65秒間、液盛り現像した後、超純水で1分間リンスした。これらの操作により5μmのラインアンドスペースを1:1で解像する時の最適露光量を感度とした。生産性の観点から最適露光量は50mJ/cm2以下であることが好まし
く、20mJ/cm2以下であることがより好ましい。
【0257】
<現像時の残膜率の評価>
また、現像後の未露光部の膜厚を測定し、塗布後の膜厚に対する比率(現像後の未露光部膜厚÷塗布後の膜厚×100(%))を求めることにより、現像時の残膜率を評価した。いずれの実施例も99%以上の残膜率であり、きれいにパターンを形成できた。
【0258】
<コンタクトホールの形成性の評価>
上記と同様にしてシリコンウエハー上に膜厚3.0μmの塗膜を形成した。次に、i線ステッパー(キヤノン(株)製FPA−3000i5+)を用いて、所定のマスクを介して、コンタクトホールに相当する直径10μmの抜きパターンを有するパターンにて最適露光量露光した。
上記と同様に現像、リンスし、コンタクトホールパターンを形成した。ここで、形成されたコンタクトホールの下底の径を、電子顕微鏡により測定した。さらに、コンタクトホールが形成された現像後の塗膜に対し、超高圧水銀灯を用いて波長365nmにおいて500mJ/cm2の光を照射した後、オーブン中にて、220℃で60分間加熱した。ここで、コンタクトホールの下底の径を、上記と同様にして測定した。
本評価では、形成したコンタクトホール下底の径について、加熱前後に測定した2つの測定値の差が、0.5μm以下であったのを「○」、0.5μm以上であったものを「×」として評価した。加熱前後での径の差が小さいほど、コンタクトホール径の制御が容易になるため、好ましい。
【0259】
<透過率>
コンタクトホールの評価において、基板をガラスに変更し、パターン露光をせず、最終加熱処理を220℃で90分間に変更した以外は同様にして、ベタ硬化膜を得た。
この硬化膜の透過率を、分光光度計(U−3000:(株)日立製作所製)を用いて、波長400〜800nmで測定した。最低透過率を表1〜表5に示す。最低透過率は90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
【0260】
<ITOスパッタ適性>
透過率の評価と同様にして、最終加熱処理後の硬化膜を得た。この硬化膜上に、ITO透明電極をスパッタ(ULVAC社製、SIH−3030、スパッタ温度200℃)により形成した。スパッタ後の硬化膜の表面を光学顕微鏡(500倍)で観察し、以下の基準により評価した。
◎:硬化膜の表面に全くしわの発生なし
○:硬化膜の表面に僅かにしわが見える(許容範囲)
×:硬化膜の表面にしわの発生あり
ITO透明電極をスパッタにより形成した後に、硬化膜表面にしわが観測された場合、硬化膜の透過率低下を引き起こすため、好ましくない。
【0261】
(実施例2〜113、及び、比較例1〜22)
表1〜表5に示す実施例2〜113及び比較例1〜22の感光性樹脂組成物を、表1〜表5に示す組成で、実施例1と同様にして調製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表1〜表5に示した。
【0262】
【表1】

【0263】
【表2】

【0264】
【表3】

【0265】
【表4】

【0266】
【表5】

【0267】
表1〜表5中の略号は下記の通りである。
(B)成分
B1:IRGACURE PAG 103(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
B2:IRGACURE PAG 108(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
B3:CGI 1380(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
B4:IRGACURE PAG 121(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
B5:CGI 725(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
B6:4,7−ジ−n−ブトキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート
B7:α−〔(メチルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル〕アセトニトリル(PAI−1001、みどり化学(株)製)
B8:α−(4−トルエンスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド(特表2002−528451号公報の段落0108に記載の方法に従って合成)
B9:α−〔(4−トルエンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル〕アセトニトリル(PAI−101、みどり化学(株)製)
B10:前記において合成したオキシムスルホネート化合物
B11:前記において合成したオキシムスルホネート化合物
【0268】
【化59】

【0269】
(C)成分
AO60:アデカスタブ AO−60((株)ADEKA製)
AO70:アデカスタブ AO−70((株)ADEKA製)
AO80:アデカスタブ AO−80((株)ADEKA製)
AO30:アデカスタブ AO−30((株)ADEKA製、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタン)
AO330:アデカスタブ AO−330((株)ADEKA製、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン)
1098:イルガノックス1098(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
TP−D:スミライザーTP−D(住友化学(株)製、イオウ系酸化防止剤)
LA−62:アデカスタブLA−62((株)ADEKA製、アミン系酸化防止剤)
PEP−36:アデカスタブPEP−36((株)ADEKA製、リン系酸化防止剤)
(C)成分の分子量、エステル基又はアミド基の有無については、表6にまとめた。
【0270】
【化60】

【0271】
【表6】

【0272】
(塩基性化合物)
D1:4−ジメチルアミノピリジン
D2:1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン
(架橋剤)
MX−270:(株)三和ケミカル製ニカラックMX−270
JER157S70:ジャパンエポキシレジン(株)製JER157S70
【0273】
【化61】

【0274】
(密着剤)
KBM403:信越化学工業(株)製シランカップリング剤KBM403
【0275】
【化62】

【0276】
(界面活性剤)
F780F:DIC(株)製、フッ素系界面活性剤F780F
PF6320:PolyFox PF−6320(OMNOVA社製)
W−3:下記化合物
【0277】
【化63】

【0278】
・実施例と比較例との比較、特に比較例1〜10と実施例18、23〜29との比較:(C)成分として特定フェノール系化合物(C)を添加した場合のみ、透過率が飛躍的に向上した。この効果は特定のフェノール系化合物の分子量が大きいほど、添加量が多いほど顕著だった。
・実施例と比較例11〜14との比較:(a1)を含む場合が高感度だった。
・比較例10他:(a2)がないと、層間絶縁膜に必要な膜強度が得られなかった。
・実施例1〜3と実施例8〜10、実施例4〜6と実施例11、15、18との比較:式(b1)で表されるオキシムスルホネート残基を含む光酸発生剤が、オニウム塩系光酸発生剤よりも高感度であることがわかった。
・実施例1〜3と実施例4〜6、実施例8〜10と実施例11、15、18との比較:架橋剤が膜強度(ITOスパッタ適性)向上に有効であることがわかった。
・実施例1〜45と実施例46〜79との比較:実施例46〜79では、実施例1〜45に比べて(B)成分をB10に変更し、更に塩基性化合物を増量している。実施例46〜79は、実施例1〜45に比べて同等以上の感度であることから、式(OS−3)で表される化合物B10を用いると特に高感度化できることが分かる。
【0279】
(実施例a〜c及びl、並びに、比較例d〜k、m及びn)
<誘電率の測定>
基板をベアウエハ(N型低抵抗)(SUMCO社製)に変更した以外は、透過率の評価と同様にして最終加熱処理後の硬化膜を得た。この硬化膜について、CVmap92A(Four Dimensions Inc.社製)を用い、測定周波数1MHzで比誘電率を測定した。表7に示すように比誘電率の差を測定し、特定フェノール系化合物(C)による誘電率低減効果を確認した。
【0280】
【表7】

【0281】
(A)成分と特定フェノール系化合物(C)とを併用した場合にのみ比誘電率が低下した。この効果は添加量が多いほど、分子量が大きいほど顕著だった。
比較例h、比較例iでは、樹脂成分にモノマー単位(a1)がないため、特定フェノール系化合物(C)が含まれていても比誘電率が低下しなかった。
【0282】
(実施例114)
実施例74の感光性樹脂組成物を用い、上記実施例74と同様の評価を、超高圧水銀ランプに変えてUV−LED光源露光機を用いて実施した。結果、実施例74と同様の結果が得られた。
【0283】
(実施例115)
薄膜トランジスタ(TFT)を用いた有機EL表示装置を以下の方法で作製した(図1参照)。
ガラス基板6上にボトムゲート型のTFT1を形成し、このTFT1を覆う状態でSi34からなる絶縁膜3を形成した。次に、この絶縁膜3に、ここでは図示を省略したコンタクトホールを形成した後、このコンタクトホールを介してTFT1に接続される配線2(高さ1.0μm)を絶縁膜3上に形成した。この配線2は、TFT1間又は、後の工程で形成される有機EL素子とTFT1とを接続するためのものである。
【0284】
さらに、配線2の形成による凹凸を平坦化するために、配線2による凹凸を埋め込む状態で絶縁膜3上へ平坦化層4を形成した。絶縁膜3上への平坦化膜4の形成は、実施例18の感光性樹脂組成物を基板上にスピン塗布し、ホットプレート上でプリベーク(90℃×2分)した後、マスク上から高圧水銀灯を用いてi線(365nm)を45mJ/cm2(照度20mW/cm2)照射した後、アルカリ水溶液にて現像してパターンを形成し、230℃で60分間の加熱処理を行った。該感光性樹脂組成物を塗布する際の塗布性は良好で、露光、現像、焼成の後に得られた硬化膜には、しわやクラックの発生は認められなかった。さらに、配線2の平均段差は500nm、作製した平坦化膜4の膜厚は2,000nmであった。
【0285】
次に、得られた平坦化膜4上に、ボトムエミッション型の有機EL素子を形成した。まず、平坦化膜4上に、ITOからなる第一電極5を、コンタクトホール7を介して配線2に接続させて形成した。その後、レジストを塗布、プリベークし、所望のパターンのマスクを介して露光し、現像した。このレジストパターンをマスクとして、ITOエッチャント用いたウエットエッチングによりパターン加工を行った。その後、レジスト剥離液(モノエタノールアミンとジメチルスルホキシド(DMSO)との混合液)を用いて該レジストパターンを剥離した。こうして得られた第一電極5は、有機EL素子の陽極に相当する。
【0286】
次に、第一電極5の周縁を覆う形状の絶縁膜8を形成した。絶縁膜には、実施例7の感光性樹脂組成物を用い、前記と同様の方法で絶縁膜8を形成した。この絶縁膜を設けることによって、第一電極5とこの後の工程で形成する第二電極との間のショートを防止することができる。
【0287】
さらに、真空蒸着装置内で所望のパターンマスクを介して、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層を順次蒸着して設けた。次いで、基板上方の全面にAlからなる第二電極を形成した。得られた上記基板を蒸着機から取り出し、封止用ガラス板と紫外線硬化型エポキシ樹脂を用いて貼り合わせることで封止した。
【0288】
以上のようにして、各有機EL素子にこれを駆動するためのTFT1が接続してなるアクティブマトリックス型の有機EL表示装置が得られた。駆動回路を介して電圧を印加したところ、良好な表示特性を示し、信頼性の高い有機EL表示装置であることがわかった。
【0289】
(実施例116)
実施例115において、実施例7の感光性樹脂組成物を実施例74の感光性樹脂組成物に代えた以外は同様に有機EL装置を作製した。良好な表示特性を示し、信頼性の高い有機EL表示装置であることがわかった。
【0290】
(実施例117)
実施例115において、実施例7の感光性樹脂組成物を実施例108の感光性樹脂組成物に代えた以外は同様に有機EL装置を作製した。良好な表示特性を示し、信頼性の高い有機EL表示装置であることがわかった。
【0291】
(実施例118)
特許第3321003号公報の図1及び図2に記載のアクティブマトリクス型液晶表示装置において、層間絶縁膜として硬化膜17を以下のようにして形成し、実施例118の液晶表示装置を得た。
すなわち、実施例19の感光性樹脂組成物を用い、上記実施例115における有機EL表示装置の平坦化膜4の形成方法と同様の方法で、層間絶縁膜として硬化膜17を形成した。
【0292】
得られた液晶表示装置に対して、駆動電圧を印加したところ、良好な表示特性を示し、信頼性の高い液晶表示装置であることがわかった。
【0293】
(実施例119)
実施例118において、実施例19の感光性樹脂組成物を実施例74の感光性樹脂組成物に代えた以外は同様に液晶表示装置を作製した。良好な表示特性を示し、信頼性の高い液晶表示装置であることがわかった。
【0294】
(実施例120)
実施例118において、実施例19の感光性樹脂組成物を実施例108の感光性樹脂組成物に代えた以外は同様に液晶表示装置を作製した。良好な表示特性を示し、信頼性の高い液晶表示装置であることがわかった。
【符号の説明】
【0295】
1:TFT(薄膜トランジスタ)
2:配線
3:絶縁膜
4:平坦化膜
5:第一電極
6:ガラス基板
7:コンタクトホール
8:絶縁膜
10:液晶表示装置
12:バックライトユニット
14,15:ガラス基板
16:TFT
17:硬化膜
18:コンタクトホール
19:ITO透明電極
20:液晶
22:カラーフィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシ基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位、又は、フェノール性水酸基が酸分解性基で保護された残基を有するモノマー単位(a1)と、架橋基を有するモノマー単位(a2)と、を含有する共重合体、
(B)光酸発生剤、
(C)式(c1)で表される部分構造を分子内に少なくとも2つ有し、分子量が600以上2,000以下である化合物、及び、
(D)溶剤、を含有することを特徴とする
感光性樹脂組成物。
【化1】

(式(c1)中、R1及びR2はそれぞれ独立にメチル基又はtert−ブチル基を表し、R1及びR2の少なくとも1つはtert−ブチル基であり、R3は−O−又は−NH−
を表す。)
【請求項2】
化学増幅ポジ型感光性樹脂組成物である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)の化合物が、式(c1−1)、式(c1−2)及び式(c1−3)で表される化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物である、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【化2】

【請求項4】
前記(C)の化合物が、式(c1−1)で表される化合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【化3】

【請求項5】
前記(B)光酸発生剤が、式(b1)で表されるオキシムスルホネート残基を含む化合物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【化4】

(式(b1)中、R5は、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。)
【請求項6】
前記(B)光酸発生剤が、式(OS−3)、式(OS−4)又は式(OS−5)で表される化合物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【化5】

(式(OS−3)〜式(OS−5)中、R1はアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子を表し、R6はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、スルホン酸基、アミノスルホニル基又はアルコキシスルホニル基を表し、XはO又はSを表し、nは1又は2を表し、mは0〜6の整数を表す。)
【請求項7】
前記(B)光酸発生剤が、式(b2)で表される化合物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【化6】

(式(b2)中、R5は、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、Xは、アルキル基、アルコキシ基、又は、ハロゲン原子を表し、mは、0〜3の整数を表し、mが2又は3であるとき、複数のXは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項8】
(E)架橋剤をさらに含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記架橋基を有するモノマー単位(a2)が、3員環及び/又は4員環の環状エーテル残基、並びに、エチレン性不飽和基よりなる群から選ばれた少なくとも1つを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
(1)請求項1〜9のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布する塗布工程、
(2)塗布された感光性樹脂組成物から溶剤を除去する溶剤除去工程、
(3)活性放射線で露光する露光工程、
(4)水性現像液で現像する現像工程、及び、
(5)熱硬化するポストベーク工程、を含むことを特徴とする
硬化膜の形成方法。
【請求項11】
前記現像工程後、ポストベーク工程前に、全面露光する工程を含む、請求項10に記載の硬化膜の形成方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の形成方法により形成された硬化膜。
【請求項13】
層間絶縁膜である、請求項12に記載の硬化膜。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の硬化膜を具備する、有機EL表示装置。
【請求項15】
請求項12又は13に記載の硬化膜を具備する、液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−215580(P2011−215580A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213350(P2010−213350)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】