成膜方法、エレクトロルミネッセンス素子の製造方法、レーザ発光素子の製造方法、エレクトロルミネッセンス素子及びレーザ発光素子
【課題】波長純度の高い紫外光を得ることのできるEL素子及びレーザ発光素子を提供する。
【解決手段】ポリシラン又はオリゴシラン等、Si,Ge,Sn,Pbから選ばれた同種又は異種の元素が直接連結したポリマー又はオリゴマーからなる薄膜を発光層13として透明電極12と上部電極14の間に配置してEL素子10を構成する。発光層としてポリ−ジ−n−ヘキシルポリシリレン(PDHS)を用いた場合、両電極12,14間に直流電圧を印加することで約370nmに鋭いピークを有するELスペクトルが得られる。
【解決手段】ポリシラン又はオリゴシラン等、Si,Ge,Sn,Pbから選ばれた同種又は異種の元素が直接連結したポリマー又はオリゴマーからなる薄膜を発光層13として透明電極12と上部電極14の間に配置してEL素子10を構成する。発光層としてポリ−ジ−n−ヘキシルポリシリレン(PDHS)を用いた場合、両電極12,14間に直流電圧を印加することで約370nmに鋭いピークを有するELスペクトルが得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外領域で発光することのできるエレクトロルミネッセンス素子及びレーザ発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス(以下、ELと記す)は、蛍光体に強い電場を加えたときに生じるルミネッセンスであり、発光ダイオードのような電流注入型のELと電圧励起型のELがある。電圧励起型のELパネルには、蛍光体の微粉末を合成樹脂又は低融点ガラス粉末中に分散させたものを透明電極と背面電極の間に挟んだ分散型粉末ELパネルと、真空蒸着やスパッタ法で形成した薄膜状の蛍光体発光層を誘電体絶縁層で完全に封じて透明電極と背面電極の間に配置した二重絶縁膜ELパネルが知られている。電圧励起型のEL素子の発光色は蛍光物質によって変化し、硫化亜鉛にマンガンを重量比で0.3〜0.5%添加した蛍光物質(ZnS:Mn)によって黄橙色、SrS:Ceによって青色、CaS:Ce又はCaS:Erによって緑色、CaS:Euによって赤色の発光を得ることができる。その他にもZnS:TmF3によって青色、ZnS:TbF3によって緑色、ZnS:SmF3によって橙赤色の発光が得られている。
【0003】
また近年、有機薄膜によって形成したホール輸送層と発光層の2層構造を有する注入型EL素子が注目されている。図11は、この2層型EL素子の断面構造を示すもので、ガラス基板91上に形成した透明電極(ITO)92の上にホール輸送層93と発光層94を積層し、その上に上部電極95を形成したものである。ホール輸送層93には芳香族ジアミン誘導体又はポリメチルフェニルシランが用いられ、発光層94には発光性金属錯体である8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3)が用いられている。上部電極95はMnとAgを積層した電極である。ホール輸送層93はホールを輸送する役割と電子をブロックする役割を果たし、電子がホールと再結合することなく電極に移動することを妨げる。
【0004】
図11に示したEL素子を、ITOを正極として順バイアスに連続直流モードで作動すると、明るい緑色の発光が観察される。図12は、このEL素子の発光スペクトルとAlq3の発光スペクトルを示すもので、実線はEL素子の発光スペクトルを破線はAlq3の発光スペクトルを示す。ELスペクトルはAlq3の発光スペクトルと一致し、ELがAlq3のものであることを示している〔Polymer Preprints, Japan, 40(3), 1071(1991); Applied Physics Letter,59(21), 2760〕。
【0005】
また、「ポリマー・プレプリント」〔Polymer Preprints, Japan, 44(3), 325(1995)〕には、酸素架橋構造を有するポリシランが電界発光することについて記載されている。この報告によると、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)をITO基板上に塗布し、加熱により架橋させた後、Alを蒸着したITO/架橋PMPS/Al構造の単層EL素子が、発光エネルギー中心1.8eVで電界発光する。なお、酸素架橋構造を有しない通常のポリシランは電界発光しないと述べられている。
【0006】
【非特許文献1】Polymer Preprints, Japan, 40(3), 1071(1991); Applied Physics Letter,59(21), 2760
【非特許文献2】Polymer Preprints, Japan, 44(3), 325(1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光線によって記録媒体に記録を行う光記録においては、記録波長が短いほど記録密度を上げることができるため、紫外領域で発光する小型の光源を利用できれば有利である。また、多くの蛍光色素は紫外線を吸収して蛍光を発するので、紫外線面光源を実現できれば、その上に蛍光色素を配置することでディスプレイパネルを構成することができる。なお、紫外線を利用する光学系において、紫外線光源の発光波長純度が高ければ、光学系に用いられる回折格子やミラーの設計が簡単になる。このように、取り扱いの簡単な紫外線光源に対する潜在需要は高い。
【0008】
ところが前述のように、可視領域に発光スペクトルを有するEL素子は従来から知られていたが、紫外領域で発光するEL素子は知られていない。また、従来のEL素子は、図12に典型的に示されているように、ブロードな発光スペクトルを有する。
本発明は、波長純度の高い紫外光を得ることのできるEL素子を提供することを目的とする。
また、本発明は、紫外領域を含む領域で発光可能な固体レーザ発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては、EL素子又はレーザ発光素子の発光層としてSi,Ge,Sn,Pbから選ばれた同種又は異種の元素が直接連結したポリマー又はオリゴマーからなる薄膜を用いることによって前記目的を達成する。効率よく発光させるためには、前記ポリマー又はオリゴマーは主鎖骨格の原子数が6以上であることが必要である。
【0010】
すなわち、本発明のエレクトロルミネッセンス素子又はレーザ発光素子は、Si,Ge,Sn,Pbから選ばれた同種又は異種の元素が直接連結したポリマー又はオリゴマーからなる薄膜を少なくとも一方が透明電極である2枚の電極の間に配置した構造を有することを特徴とする。ただし、レーザ発光素子の場合には必ずしも一方の電極を透明電極とする必要はない。
【0011】
Si,Ge,Sn,Pbから選ばれた同種又は異種の元素が直接連結したポリマー又はオリゴマーとしては、下記の〔化1〕に示されるように、Si,Ge,Sn,Pbから選ばれた同種の元素が直接連結したポリマー又はオリゴマー、あるいは下記〔化2〕に示されるように、異種の元素が直接連結したポリマー又はオリゴマーを挙げることができる。
【0012】
【化1】
【0013】
ここで、MはSi,Ge,Sn又はPbを表す。R1及びR2は前記元素の置換基を表し、同一のものであっても異なっていてもよい。R1及びR2の例としては、アルキル基、アリール基、フェノキシ基、アルコキシル基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、アルコール性ヒドロキシ基等を挙げることができるが、特にこられのものに限定されるわけではない。
【0014】
【化2】
【0015】
ここで、M1及びM2は、Si,Ge,Sn又はPbを表す。また、R3,R4,R5,R6は前記元素の置換基を表し、同一のものであっても異なっていてもよい。R3,R4,R5,R6の例としては、アルキル基、アリール基、フェノキシ基、アルコキシル基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、アルコール性ヒドロキシ基等を挙げることができるが、特にこられのものに限定されるわけではない。
【0016】
4種の14族元素Si,Ge,Sn,Pbからなるポリマーは基本的に同様な物理的性質を有するので、これらが交換されたポリマー又はオリゴマーを用いても、同じように紫外領域に発光スペクトルを有するEL素子やレーザ発光素子を得ることができる。また、この種のEL素子は発光帯が極めて狭いので、14族元素の種類あるいは元素の配列のシーケンスを変えることにより、発光波長の異なるEL素子やレーザ発光素子を製造することができる。
【0017】
Si,Ge,Sn,Pbから選ばれた同種又は異種の元素が直接連結したポリマー又はオリゴマーの光電子物性は主鎖の構造に強く依存することが知られており、主鎖骨格は置換基によってある程度制御が可能である。したがって、置換基を選択することによってEL素子やレーザ発光素子としての性能を変化させることができる。このような観点から、発光層として例えば次の〔化3〕や〔化4〕に示すように構造制御、すなわち発光状態に適するように主鎖骨格を配座制御したポリマー又はオリゴマーからなる薄膜を用いることもできる。〔化3〕のポリマー又はオリゴマーは立体的に螺旋を描き、室温においても比較的配座が固定されやすい。〔化4〕のポリマー又はオリゴマーは、上記〔化1〕において隣接するR1同士及び/又はR2同士が共同してアルキル基を構成する場合に相当し、同様に室温においても比較的配座が固定されやすい特徴を有する。また、ポリマー又はオリゴマーの機械的強度を大きくするため、アルキル鎖等の補強置換基とところどころで架橋した構造のものとしてもよい。
【0018】
【化3】
【0019】
ここで、MはSi,Ge,Sn又はPbを表し、R*は光学活性置換基を表す。光学活性置換基の例としては、2−メチルブチル基を挙げることができる。また、R7は前記元素の置換基を表し、同一のものであっても異なっていてもよい。R7の例としては、アルキル基、アリール基、フェノキシ基、アルコキシル基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、アルコール性ヒドロキシ基等を挙げることができるが、特にこられのものに限定されるわけではない。
【0020】
【化4】
【0021】
ここで、MはSi,Ge,Sn又はPbを表し、R8,R9は前記元素の置換基を表し、同一のものであっても異なっていてもよい。R8,R9の例としては、アルキル基、アリール基、フェノキシ基、アルコキシル基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、アルコール性ヒドロキシ基等を挙げることができるが特にこられのものに限定されるわけではない。 また、次の〔化5〕に示されるように、1つの置換基のみを有する同種の14族元素が直接連結したポリマー又はオリゴマーを用いることもできる。
【0022】
【化5】
【0023】
ここで、MはSi,Ge,Sn又はPbを表す。また、Rは前記元素の置換基を表し、同一のものであっても異なっていてもよい。Rの例としては、アルキル基、アリール基、フェノキシ基、アルコキシル基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、アルコール性ヒドロキシ基等を挙げることができるが特にこられのものに限定されるわけではない。
発光層の成膜方法としては、スピンコート、真空蒸着、光CVD、熱CVD、MBE(分子ビームエピタクシー)等の既知の方法を利用することができる。CVD法によって発光層を石英ガラス基板上に直接成膜する場合には、表面をシラン処理した石英ガラス基板を用いるのが有利である。
【0024】
本発明で発光層として用いるポリマー又はオリゴマーは主骨格を構成するSi,Ge,Sn及び/又はPbの原子数により発光波長を制御することが可能である。一般に、ポリマー又はオリゴマーの鎖長が長くなるにつれて発光ピーク波長は長波長側にシフトする。 従来のEL素子に用いられているポリシラン層は単なるホール輸送層としての機能を果たすものである。これに対して本発明はポリシランそのものの発光を利用するものであり、これまで未開発であった紫外領域の発光素子を提供することができる。
【0025】
本発明に係る成膜方法は、Si,Ge,Sn及びPbから選ばれた同種又は異種の元素の複数の原子が直接連結し、前記複数の原子の各々の上に2つの置換基を有するポリマー又はオリゴマーからなる薄膜をCVD法により形成するステップを含むことを特徴とする。
【0026】
上記の成膜方法において、前記2つの置換基は、2つのアルキル基であることが好ましい。
【0027】
本発明に係る他の成膜方法は、重合活性な反応中間体を発生させることによりSi,Ge,Sn及びPbから選ばれた同種又は異種の元素の複数の原子が直接連結し、前記複数の原子の各々の上に2つの置換基を有するポリマー又はオリゴマーからなる薄膜を形成することを特徴とする。
【0028】
本発明に係る他の成膜方法は、光又は熱によって重合活性なシリレンを発生させ、前記シリレンを重合することによりポリシランを成膜することを特徴とする。
【0029】
上記成膜方法において、ポリシランは、シリレンのケイ素−水素結合に対する複数の挿入反応を繰り返すことにより形成される。
【0030】
上記成膜方法において、薄膜が形成される基板をあらかじめ表面処理するステップをさらに含むのが好ましい。
【0031】
上記成膜方法において、ポリシランが形成される基板にケイ素−水素結合を形成するステップをさらに含むのが好ましい。
上記成膜方法において前記薄膜は配向制御されているのが好ましい。
【0032】
本発明に係る他の成膜方法は、真空蒸着法によりポリシラン又はケイ素オリゴマーを形成することを特徴とする。
【0033】
上記成膜方法において、ポリシラン又はケイ素オリゴマーは主鎖骨格は配座制御されているのが好ましい。
【0034】
本発明に係るエレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、上記成膜方法を用いることにより発光層を形成することを特徴とする。
【0035】
また、本発明に係るレーザ発光素子の製造方法は、上記成膜方法を用いることにより発光層を形成することを特徴とする。
【0036】
上記エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、発光層は紫外領域の発光を示すことを特徴とする。
【0037】
本発明によるエレクトロルミネッセンス素子は、Si,Ge,Sn及びPbから選ばれた同種又は異種の元素の複数の原子が直接連結し、前記複数の原子を含む主鎖骨格が配座制御されたポリマー又はオリゴマーからなる薄膜を備える。
【0038】
本発明によるレーザ発光素子は、Si,Ge,Sn及びPbから選ばれた同種又は異種の元素の複数の原子が直接連結し、前記複数の原子を含む主鎖骨格が配座制御されたポリマー又はオリゴマーからなる薄膜を備える。
【0039】
上記エレクトロルミネッセンス素子において、前記主鎖は螺旋構造を有しているのが好ましい。
【0040】
上記レーザ発光素子において、前記主鎖は螺旋構造を有しているのが好ましい。
【0041】
上記エレクトロルミネッセンス素子において、前記複数の原子の少なくとも一つの原子は、置換基を備え、前記置換基は架橋構造を有しているのが好ましい。
【0042】
上記レーザ発光素子において、前記複数の原子の少なくとも一つの原子は、置換基を備え、前記置換基は架橋構造を有しているのが好ましい。
上記エレクトロルミネッセンス素子において、前記薄膜は発光層である。
【0043】
上記エレクトロルミネッセンス素子において、前記薄膜は電圧を印加することにより紫外の発光を示す。
【0044】
上記レーザ発光素子において、前記薄膜は電圧を印加することにより発光する発光層として機能する。
【発明の効果】
【0045】
本発明によると、紫外領域に波長純度の高い発光スペクトルを示すEL素子を得ることができる。また、極めて簡単な固体構造で紫外領域に発振線を有するレーザ発光素子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明の実施の形態を説明する。ここでは、Si元素が直接連結したポリマー又はオリゴマーを例にとって説明する。
図1に断面構造を略示するような、ポリ−ジ−n−ヘキシルポリシリレン(PDHS:−SiRR’−;R=R’=C6H13)を発光層とするEL素子を作製した。素子の作製は次の方法で行った。
【0047】
硫酸処理したのち脱気したn−オクタン50mlにナトリウム4.5gを溶解し、18−クラウン−6エーテルを0.5g添加してn−オクタン溶液を調製した。この溶液に、原料のジヘキシルジクロロシラン10gのn−オクタン溶液を50ml滴下し、100℃で終夜撹拌した。反応の副生成物である塩化ナトリウムを濾過して除去した後、濾液を水で洗浄し、塩化カルシウムで乾燥する。その後、溶媒を溜去してワックス状の粗ポリマー(ポリ−ジ−n−ヘキシルポリシリレン)を得た。この粗ポリマーをトルエンに溶解し、エタノールにより再沈殿を行った。再沈殿により得られたポリマーを70℃、10-5Torrの雰囲気下で一晩真空乾燥してポリ−ジ−n−ヘキシルポリシリレン(PDHS:−SiRR’−;R=R’=C6H13)を得た。得られたPDHSの分子量をゲルパーミエーション液体クロマトグラフによって測定したところ、ポリスチレン標準でおよそ30万であった。
【0048】
以上の操作によって得られたPDHSをトルエンに溶解し、透明電極12としてITO膜をコートした石英ガラス基板11上にスピンコートしてPDHSの薄膜を形成し、発光層13とした。形成されたPDHSの膜厚は0.1〜1μmであった。更にその上に上部電極14としてアルミニウムを50〜100nmの厚さに蒸着してEL素子10を作製した。上部電極の材料としてはアルミニウムの他に、マグネシウム又はカルシウムを用いることもできる。作製したEL素子10を液体窒素で77Kに冷却し、図2に示すように直流電源21に接続した。EL素子10から発光された光線を集光レンズ24で集光し、分光器25に導入して分光したのち検出器26で検出し、発光スペクトルを測定したところ、紫外部に鋭い電界発光が観測された。
【0049】
図3に、測定された発光スペクトルを示す。図3から明らかなように、発光スペクトルは、波長約370nm(エネルギー約3.32eV)付近にPDHSの励起子構造を直接反映した極めて強いピークを示している。ピーク幅は約20nmであった。温度を室温にした以外、他の条件は同一にしてEL素子10の発光スペクトルを測定したところ、ブロードなスペクトルが観察された。これは、室温ではポリシランが様々な配座をとっているためと推定される。
【0050】
鎖長の異なるオリゴシラン、ポリシランを調製し、上記と同様の方法でその薄膜を発光層としたEL素子を作製し、各EL素子を77Kに冷却して同様の測定を行った。ケイ素原子の数が5以下のオリゴシランは発光が極めて微弱であり、発光スペクトルを測定することができなかった。ケイ素原子の数が6のオリゴシランでは波長280nm付近に発光が観測され、鎖長を長くするに従って発光のピーク波長は長波長側にシフトした。ポリシランでは、鎖長を長くすることにより発光のピーク波長を380〜400nmにシフトさせることができた。発光ピーク波長がシフトした場合においても、ピーク幅約20nm程の鋭い発光スペクトルが観測された。
【0051】
図4は、図2の測定系において直流電源21によるEL素子10への印加電圧を変化させて測定した、種々の電圧におけるEL発光強度及びEL素子に流れる電流の変化を示す図である。黒丸はEL発光強度、白丸はEL素子に流れる電流を表す。ここでは、発光層としてのポリシラン薄膜をスピンコート法によって形成したが、発光層は真空蒸着法、光CVD法又は熱CVD法によっても成膜することができる。
【0052】
図5は、真空蒸着法で成膜する方法を示す略図である。ベルジャー50の下部にはヒーター51上に試料皿52が配置されている。試料皿52の上方には、ITO等の透明電極がコートされた石英ガラス基板53を、透明電極側を下方に向けて配置する。石英ガラス基板53は液体窒素容器54から伸びるコールドフィンガー55によって背面側から冷却されている。試料として例えば下記〔化6〕に示すポリシランを試料皿52に入れ、ベルジャー50内を10-6Torr程度の真空度に真空排気し、試料皿の下のヒーター51に通電して試料を100℃から120℃程度に加熱する。試料が蒸発して石英ガラス基板53の透明電極上に薄膜が形成されたら真空を解除し、ベルジャー50から基板53を取り出す。その後、薄膜上にアルミニウム等を蒸着することによって上部電極を形成してEL素子を作製する。〔化6〕中、Meはメチル基を表す。
【0053】
【化6】
【0054】
また、ポリシラン発光層の成膜は光CVD又は熱CVDによって行うこともできる。この場合は、図6に略示するように、トリシラン誘導体又はメトキシジシラン誘導体を原料として光又は熱によって重合活性な反応中間体シリレンを生成し、ITO等の透明電極をコートした基板上でシリレンの重合を行って透明電極上にポリシラン薄膜を形成する。その後、上部電極を蒸着してEL素子を作製する。図6中、Meはメチル基を表し、Rはアルキル基やアリール基等の置換基を表す。
【0055】
CVD法でポリシランを成膜するとき、次のようにして表面処理を施した石英ガラス基板を用いることもできる。まず石英ガラス基板をアセトン中に浸漬して超音波洗浄した後、硝酸水溶液中に浸漬して超音波洗浄する。さらに、洗浄した基板を飽和重曹水溶液中に浸漬して超音波洗浄する。続いて、5%トリエトキシシランのエタノール溶液中で基板を60分間煮沸する。その後、基板をオーブンに入れ120℃で乾燥する。このような処理を行った基板に前述の光CVD又は熱CVDの方法でポリシランの薄膜を形成する。
【0056】
石英ガラス基板にこのような表面処理を施すことによりポリシランの重合度を増し、かつ配向性を揃えることができる。これは、図7(a)に示すように、洗浄した石英ガラス基板をトリエトキシシラン溶液で煮沸することによって石英ガラス基板70の表面にトリエトキシシランが結合し、図7(b)に示すように、そのSi−Hにシリレンが挿入される。さらに、図7(c)に示すように、シリレンのSi−Hに対する挿入が多数繰り返されるというような機構で反応が進行するためである。なお、図7中、Rはアルキル基やアリール基等の置換基を表す。
【0057】
表面処理を施した石英ガラス基板80上に発光層81として直接ポリシランの薄膜を形成したあと、図8に示すようにポリシラン薄膜上に2つのアルミニウム電極82,83を間隙をあけて蒸着形成し、さらに保護膜84を形成することでEL素子を得ることができる。
【0058】
次に、石英ガラス基板上に形成したポリ−ジ−n−ヘキシルポリシリレン(PDHS)の薄膜に色素レーザの2倍波である波長310nm、パルス幅3psのパルスレーザを照射し、PDHSから発せられる蛍光スペクトルを測定した。図9に、時間分解蛍光スペクトルをパルスレーザ照射直後から5nsまで積算して得られた蛍光スペクトルを示す。この蛍光スペクトルは波長372nmと376nmに2つのピークを有する。矢印Aのピークは通常の蛍光を示す。矢印Bのピークは波長310nmの連続光による励起では観察されないピークである。このようにパルスレーザによる高密度光励起によって特定のフォノンサイドバンドが成長するということはPDHSがレーザ発振する可能性を示すものである。したがって、本発明のEL素子は電気的に高密度パルス励起を行うことでレーザ発振する可能性がある。
【0059】
ここでは、EL素子の発光層としてSi元素が直接連結したポリマー又はオリゴマーの薄膜を採用した例について説明した。しかし、本発明のEL素子に使用できる発光層はSi元素が直接連結したポリマー又はオリゴマーの薄膜に限られるものではなく、〔化1〕〜〔化5〕によって説明したように、Si,Ge,Sn,Pbから選ばれた同種又は異種の元素が直接連結したポリマー又はオリゴマーからなる薄膜であれば同様に使用でき、かつ同様の効果を奏することができるものである。
【0060】
次に、本発明によるレーザ発光素子についてその一例を説明する。
図1に断面構造を略示するような、ポリジメチルシリレン(PDMS:−SiRR’−;R=R’=CH3 )を発光層とするレーザ発光素子を作製した。素子の作製は次の方法で行った。硫酸処理したのち脱気したn−オクタン50mlにナトリウム4.5gを溶解した。これに原料ジメチルジクロロシラン10g(n−オクタン溶液)を50ml滴下し、100℃で終夜撹拌した。反応終了後、エタノールを加え、さらに水を加える。エーテルで抽出し、溶媒をとばすとポリジメチルシリレンが得られる。
【0061】
こうして得られたポリジメチルシリレン及びITO電極12をコーティングした石英ガラス基板11を、図5に示した真空蒸着装置中に設置し、10-5Torrでポリジメチルシリレンを200℃程度に加熱し、石英ガラス基板11にコーティングされたITO電極12上に蒸着膜を形成し、発光層13とした。形成されたPDMS蒸着膜の膜厚はおよそ100nmであった。この蒸着膜は、光吸収測定の際の偏光特性から、高度に配向制御された膜であることが確認された。蒸着膜の上に更に上部電極14としてアルミニウムを50〜100nmの厚さに蒸着してレーザ発光素子10を作製した。
【0062】
作製されたレーザ発光素子を図2に示すように直流電源21に接続し、室温で約50Vの電圧を印加して発光させた。素子から発生された光線を分光器に導入して発光スペクトルを測定したところ、多数の鋭いピークが観察された。
図10に、測定された発光スペクトルを示す。図10から明らかなように、通常の発光とは異なり、レーザ発振に基づく鋭いピークのプログレッションが観察された。発振波長は分子の構造によって変えることができる。ここではPDMS蒸着膜によるレーザ発振について説明したが、他のオリゴシランやポリシランでも分子の配向を揃えることによりレーザ発振が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明のEL素子の断面構造を示す模式図。
【図2】発光スペクトル測定系の説明図。
【図3】本発明のEL素子の発光スペクトルを示す図。
【図4】EL素子への印加電圧と、発光強度及びEL素子に流れる電流の変化を示す図。
【図5】図5は、真空蒸着法による成膜の説明図。
【図6】光CVD又は熱CVDによる成膜の説明図。
【図7】基板表面処理の効果を説明する図。
【図8】本発明によるEL素子の他の例の断面図。
【図9】PDHSの時間分解蛍光スペクトルを示す図。
【図10】本発明のレーザ発光素子の発光スペクトルを示す図。
【図11】従来の2層型EL素子の断面構造を示す模式図。
【図12】従来のEL素子の発光スペクトルとAlq3の発光スペクトルを示す図。
【符号の説明】
【0064】
10…EL素子、11…石英ガラス基板、12…透明電極、13…発光層、14…上部電極、21…直流電源、23…電流計、24…集光レンズ、25…分光器、26…検出器、50…ベルジャー、51…ヒーター、52…試料皿、53…石英ガラス基板、54…液体窒素容器、55…コールドフィンガー、70…石英ガラス基板、80…石英ガラス基板、81…発光層、82,83…電極、84…保護層、91…ガラス基板、92…透明電極、93…ホール輸送層、94…発光層、95…上部電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外領域で発光することのできるエレクトロルミネッセンス素子及びレーザ発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス(以下、ELと記す)は、蛍光体に強い電場を加えたときに生じるルミネッセンスであり、発光ダイオードのような電流注入型のELと電圧励起型のELがある。電圧励起型のELパネルには、蛍光体の微粉末を合成樹脂又は低融点ガラス粉末中に分散させたものを透明電極と背面電極の間に挟んだ分散型粉末ELパネルと、真空蒸着やスパッタ法で形成した薄膜状の蛍光体発光層を誘電体絶縁層で完全に封じて透明電極と背面電極の間に配置した二重絶縁膜ELパネルが知られている。電圧励起型のEL素子の発光色は蛍光物質によって変化し、硫化亜鉛にマンガンを重量比で0.3〜0.5%添加した蛍光物質(ZnS:Mn)によって黄橙色、SrS:Ceによって青色、CaS:Ce又はCaS:Erによって緑色、CaS:Euによって赤色の発光を得ることができる。その他にもZnS:TmF3によって青色、ZnS:TbF3によって緑色、ZnS:SmF3によって橙赤色の発光が得られている。
【0003】
また近年、有機薄膜によって形成したホール輸送層と発光層の2層構造を有する注入型EL素子が注目されている。図11は、この2層型EL素子の断面構造を示すもので、ガラス基板91上に形成した透明電極(ITO)92の上にホール輸送層93と発光層94を積層し、その上に上部電極95を形成したものである。ホール輸送層93には芳香族ジアミン誘導体又はポリメチルフェニルシランが用いられ、発光層94には発光性金属錯体である8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3)が用いられている。上部電極95はMnとAgを積層した電極である。ホール輸送層93はホールを輸送する役割と電子をブロックする役割を果たし、電子がホールと再結合することなく電極に移動することを妨げる。
【0004】
図11に示したEL素子を、ITOを正極として順バイアスに連続直流モードで作動すると、明るい緑色の発光が観察される。図12は、このEL素子の発光スペクトルとAlq3の発光スペクトルを示すもので、実線はEL素子の発光スペクトルを破線はAlq3の発光スペクトルを示す。ELスペクトルはAlq3の発光スペクトルと一致し、ELがAlq3のものであることを示している〔Polymer Preprints, Japan, 40(3), 1071(1991); Applied Physics Letter,59(21), 2760〕。
【0005】
また、「ポリマー・プレプリント」〔Polymer Preprints, Japan, 44(3), 325(1995)〕には、酸素架橋構造を有するポリシランが電界発光することについて記載されている。この報告によると、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)をITO基板上に塗布し、加熱により架橋させた後、Alを蒸着したITO/架橋PMPS/Al構造の単層EL素子が、発光エネルギー中心1.8eVで電界発光する。なお、酸素架橋構造を有しない通常のポリシランは電界発光しないと述べられている。
【0006】
【非特許文献1】Polymer Preprints, Japan, 40(3), 1071(1991); Applied Physics Letter,59(21), 2760
【非特許文献2】Polymer Preprints, Japan, 44(3), 325(1995)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光線によって記録媒体に記録を行う光記録においては、記録波長が短いほど記録密度を上げることができるため、紫外領域で発光する小型の光源を利用できれば有利である。また、多くの蛍光色素は紫外線を吸収して蛍光を発するので、紫外線面光源を実現できれば、その上に蛍光色素を配置することでディスプレイパネルを構成することができる。なお、紫外線を利用する光学系において、紫外線光源の発光波長純度が高ければ、光学系に用いられる回折格子やミラーの設計が簡単になる。このように、取り扱いの簡単な紫外線光源に対する潜在需要は高い。
【0008】
ところが前述のように、可視領域に発光スペクトルを有するEL素子は従来から知られていたが、紫外領域で発光するEL素子は知られていない。また、従来のEL素子は、図12に典型的に示されているように、ブロードな発光スペクトルを有する。
本発明は、波長純度の高い紫外光を得ることのできるEL素子を提供することを目的とする。
また、本発明は、紫外領域を含む領域で発光可能な固体レーザ発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては、EL素子又はレーザ発光素子の発光層としてSi,Ge,Sn,Pbから選ばれた同種又は異種の元素が直接連結したポリマー又はオリゴマーからなる薄膜を用いることによって前記目的を達成する。効率よく発光させるためには、前記ポリマー又はオリゴマーは主鎖骨格の原子数が6以上であることが必要である。
【0010】
すなわち、本発明のエレクトロルミネッセンス素子又はレーザ発光素子は、Si,Ge,Sn,Pbから選ばれた同種又は異種の元素が直接連結したポリマー又はオリゴマーからなる薄膜を少なくとも一方が透明電極である2枚の電極の間に配置した構造を有することを特徴とする。ただし、レーザ発光素子の場合には必ずしも一方の電極を透明電極とする必要はない。
【0011】
Si,Ge,Sn,Pbから選ばれた同種又は異種の元素が直接連結したポリマー又はオリゴマーとしては、下記の〔化1〕に示されるように、Si,Ge,Sn,Pbから選ばれた同種の元素が直接連結したポリマー又はオリゴマー、あるいは下記〔化2〕に示されるように、異種の元素が直接連結したポリマー又はオリゴマーを挙げることができる。
【0012】
【化1】
【0013】
ここで、MはSi,Ge,Sn又はPbを表す。R1及びR2は前記元素の置換基を表し、同一のものであっても異なっていてもよい。R1及びR2の例としては、アルキル基、アリール基、フェノキシ基、アルコキシル基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、アルコール性ヒドロキシ基等を挙げることができるが、特にこられのものに限定されるわけではない。
【0014】
【化2】
【0015】
ここで、M1及びM2は、Si,Ge,Sn又はPbを表す。また、R3,R4,R5,R6は前記元素の置換基を表し、同一のものであっても異なっていてもよい。R3,R4,R5,R6の例としては、アルキル基、アリール基、フェノキシ基、アルコキシル基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、アルコール性ヒドロキシ基等を挙げることができるが、特にこられのものに限定されるわけではない。
【0016】
4種の14族元素Si,Ge,Sn,Pbからなるポリマーは基本的に同様な物理的性質を有するので、これらが交換されたポリマー又はオリゴマーを用いても、同じように紫外領域に発光スペクトルを有するEL素子やレーザ発光素子を得ることができる。また、この種のEL素子は発光帯が極めて狭いので、14族元素の種類あるいは元素の配列のシーケンスを変えることにより、発光波長の異なるEL素子やレーザ発光素子を製造することができる。
【0017】
Si,Ge,Sn,Pbから選ばれた同種又は異種の元素が直接連結したポリマー又はオリゴマーの光電子物性は主鎖の構造に強く依存することが知られており、主鎖骨格は置換基によってある程度制御が可能である。したがって、置換基を選択することによってEL素子やレーザ発光素子としての性能を変化させることができる。このような観点から、発光層として例えば次の〔化3〕や〔化4〕に示すように構造制御、すなわち発光状態に適するように主鎖骨格を配座制御したポリマー又はオリゴマーからなる薄膜を用いることもできる。〔化3〕のポリマー又はオリゴマーは立体的に螺旋を描き、室温においても比較的配座が固定されやすい。〔化4〕のポリマー又はオリゴマーは、上記〔化1〕において隣接するR1同士及び/又はR2同士が共同してアルキル基を構成する場合に相当し、同様に室温においても比較的配座が固定されやすい特徴を有する。また、ポリマー又はオリゴマーの機械的強度を大きくするため、アルキル鎖等の補強置換基とところどころで架橋した構造のものとしてもよい。
【0018】
【化3】
【0019】
ここで、MはSi,Ge,Sn又はPbを表し、R*は光学活性置換基を表す。光学活性置換基の例としては、2−メチルブチル基を挙げることができる。また、R7は前記元素の置換基を表し、同一のものであっても異なっていてもよい。R7の例としては、アルキル基、アリール基、フェノキシ基、アルコキシル基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、アルコール性ヒドロキシ基等を挙げることができるが、特にこられのものに限定されるわけではない。
【0020】
【化4】
【0021】
ここで、MはSi,Ge,Sn又はPbを表し、R8,R9は前記元素の置換基を表し、同一のものであっても異なっていてもよい。R8,R9の例としては、アルキル基、アリール基、フェノキシ基、アルコキシル基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、アルコール性ヒドロキシ基等を挙げることができるが特にこられのものに限定されるわけではない。 また、次の〔化5〕に示されるように、1つの置換基のみを有する同種の14族元素が直接連結したポリマー又はオリゴマーを用いることもできる。
【0022】
【化5】
【0023】
ここで、MはSi,Ge,Sn又はPbを表す。また、Rは前記元素の置換基を表し、同一のものであっても異なっていてもよい。Rの例としては、アルキル基、アリール基、フェノキシ基、アルコキシル基、アルキルアミノ基、アルキルチオ基、アルコール性ヒドロキシ基等を挙げることができるが特にこられのものに限定されるわけではない。
発光層の成膜方法としては、スピンコート、真空蒸着、光CVD、熱CVD、MBE(分子ビームエピタクシー)等の既知の方法を利用することができる。CVD法によって発光層を石英ガラス基板上に直接成膜する場合には、表面をシラン処理した石英ガラス基板を用いるのが有利である。
【0024】
本発明で発光層として用いるポリマー又はオリゴマーは主骨格を構成するSi,Ge,Sn及び/又はPbの原子数により発光波長を制御することが可能である。一般に、ポリマー又はオリゴマーの鎖長が長くなるにつれて発光ピーク波長は長波長側にシフトする。 従来のEL素子に用いられているポリシラン層は単なるホール輸送層としての機能を果たすものである。これに対して本発明はポリシランそのものの発光を利用するものであり、これまで未開発であった紫外領域の発光素子を提供することができる。
【0025】
本発明に係る成膜方法は、Si,Ge,Sn及びPbから選ばれた同種又は異種の元素の複数の原子が直接連結し、前記複数の原子の各々の上に2つの置換基を有するポリマー又はオリゴマーからなる薄膜をCVD法により形成するステップを含むことを特徴とする。
【0026】
上記の成膜方法において、前記2つの置換基は、2つのアルキル基であることが好ましい。
【0027】
本発明に係る他の成膜方法は、重合活性な反応中間体を発生させることによりSi,Ge,Sn及びPbから選ばれた同種又は異種の元素の複数の原子が直接連結し、前記複数の原子の各々の上に2つの置換基を有するポリマー又はオリゴマーからなる薄膜を形成することを特徴とする。
【0028】
本発明に係る他の成膜方法は、光又は熱によって重合活性なシリレンを発生させ、前記シリレンを重合することによりポリシランを成膜することを特徴とする。
【0029】
上記成膜方法において、ポリシランは、シリレンのケイ素−水素結合に対する複数の挿入反応を繰り返すことにより形成される。
【0030】
上記成膜方法において、薄膜が形成される基板をあらかじめ表面処理するステップをさらに含むのが好ましい。
【0031】
上記成膜方法において、ポリシランが形成される基板にケイ素−水素結合を形成するステップをさらに含むのが好ましい。
上記成膜方法において前記薄膜は配向制御されているのが好ましい。
【0032】
本発明に係る他の成膜方法は、真空蒸着法によりポリシラン又はケイ素オリゴマーを形成することを特徴とする。
【0033】
上記成膜方法において、ポリシラン又はケイ素オリゴマーは主鎖骨格は配座制御されているのが好ましい。
【0034】
本発明に係るエレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、上記成膜方法を用いることにより発光層を形成することを特徴とする。
【0035】
また、本発明に係るレーザ発光素子の製造方法は、上記成膜方法を用いることにより発光層を形成することを特徴とする。
【0036】
上記エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、発光層は紫外領域の発光を示すことを特徴とする。
【0037】
本発明によるエレクトロルミネッセンス素子は、Si,Ge,Sn及びPbから選ばれた同種又は異種の元素の複数の原子が直接連結し、前記複数の原子を含む主鎖骨格が配座制御されたポリマー又はオリゴマーからなる薄膜を備える。
【0038】
本発明によるレーザ発光素子は、Si,Ge,Sn及びPbから選ばれた同種又は異種の元素の複数の原子が直接連結し、前記複数の原子を含む主鎖骨格が配座制御されたポリマー又はオリゴマーからなる薄膜を備える。
【0039】
上記エレクトロルミネッセンス素子において、前記主鎖は螺旋構造を有しているのが好ましい。
【0040】
上記レーザ発光素子において、前記主鎖は螺旋構造を有しているのが好ましい。
【0041】
上記エレクトロルミネッセンス素子において、前記複数の原子の少なくとも一つの原子は、置換基を備え、前記置換基は架橋構造を有しているのが好ましい。
【0042】
上記レーザ発光素子において、前記複数の原子の少なくとも一つの原子は、置換基を備え、前記置換基は架橋構造を有しているのが好ましい。
上記エレクトロルミネッセンス素子において、前記薄膜は発光層である。
【0043】
上記エレクトロルミネッセンス素子において、前記薄膜は電圧を印加することにより紫外の発光を示す。
【0044】
上記レーザ発光素子において、前記薄膜は電圧を印加することにより発光する発光層として機能する。
【発明の効果】
【0045】
本発明によると、紫外領域に波長純度の高い発光スペクトルを示すEL素子を得ることができる。また、極めて簡単な固体構造で紫外領域に発振線を有するレーザ発光素子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明の実施の形態を説明する。ここでは、Si元素が直接連結したポリマー又はオリゴマーを例にとって説明する。
図1に断面構造を略示するような、ポリ−ジ−n−ヘキシルポリシリレン(PDHS:−SiRR’−;R=R’=C6H13)を発光層とするEL素子を作製した。素子の作製は次の方法で行った。
【0047】
硫酸処理したのち脱気したn−オクタン50mlにナトリウム4.5gを溶解し、18−クラウン−6エーテルを0.5g添加してn−オクタン溶液を調製した。この溶液に、原料のジヘキシルジクロロシラン10gのn−オクタン溶液を50ml滴下し、100℃で終夜撹拌した。反応の副生成物である塩化ナトリウムを濾過して除去した後、濾液を水で洗浄し、塩化カルシウムで乾燥する。その後、溶媒を溜去してワックス状の粗ポリマー(ポリ−ジ−n−ヘキシルポリシリレン)を得た。この粗ポリマーをトルエンに溶解し、エタノールにより再沈殿を行った。再沈殿により得られたポリマーを70℃、10-5Torrの雰囲気下で一晩真空乾燥してポリ−ジ−n−ヘキシルポリシリレン(PDHS:−SiRR’−;R=R’=C6H13)を得た。得られたPDHSの分子量をゲルパーミエーション液体クロマトグラフによって測定したところ、ポリスチレン標準でおよそ30万であった。
【0048】
以上の操作によって得られたPDHSをトルエンに溶解し、透明電極12としてITO膜をコートした石英ガラス基板11上にスピンコートしてPDHSの薄膜を形成し、発光層13とした。形成されたPDHSの膜厚は0.1〜1μmであった。更にその上に上部電極14としてアルミニウムを50〜100nmの厚さに蒸着してEL素子10を作製した。上部電極の材料としてはアルミニウムの他に、マグネシウム又はカルシウムを用いることもできる。作製したEL素子10を液体窒素で77Kに冷却し、図2に示すように直流電源21に接続した。EL素子10から発光された光線を集光レンズ24で集光し、分光器25に導入して分光したのち検出器26で検出し、発光スペクトルを測定したところ、紫外部に鋭い電界発光が観測された。
【0049】
図3に、測定された発光スペクトルを示す。図3から明らかなように、発光スペクトルは、波長約370nm(エネルギー約3.32eV)付近にPDHSの励起子構造を直接反映した極めて強いピークを示している。ピーク幅は約20nmであった。温度を室温にした以外、他の条件は同一にしてEL素子10の発光スペクトルを測定したところ、ブロードなスペクトルが観察された。これは、室温ではポリシランが様々な配座をとっているためと推定される。
【0050】
鎖長の異なるオリゴシラン、ポリシランを調製し、上記と同様の方法でその薄膜を発光層としたEL素子を作製し、各EL素子を77Kに冷却して同様の測定を行った。ケイ素原子の数が5以下のオリゴシランは発光が極めて微弱であり、発光スペクトルを測定することができなかった。ケイ素原子の数が6のオリゴシランでは波長280nm付近に発光が観測され、鎖長を長くするに従って発光のピーク波長は長波長側にシフトした。ポリシランでは、鎖長を長くすることにより発光のピーク波長を380〜400nmにシフトさせることができた。発光ピーク波長がシフトした場合においても、ピーク幅約20nm程の鋭い発光スペクトルが観測された。
【0051】
図4は、図2の測定系において直流電源21によるEL素子10への印加電圧を変化させて測定した、種々の電圧におけるEL発光強度及びEL素子に流れる電流の変化を示す図である。黒丸はEL発光強度、白丸はEL素子に流れる電流を表す。ここでは、発光層としてのポリシラン薄膜をスピンコート法によって形成したが、発光層は真空蒸着法、光CVD法又は熱CVD法によっても成膜することができる。
【0052】
図5は、真空蒸着法で成膜する方法を示す略図である。ベルジャー50の下部にはヒーター51上に試料皿52が配置されている。試料皿52の上方には、ITO等の透明電極がコートされた石英ガラス基板53を、透明電極側を下方に向けて配置する。石英ガラス基板53は液体窒素容器54から伸びるコールドフィンガー55によって背面側から冷却されている。試料として例えば下記〔化6〕に示すポリシランを試料皿52に入れ、ベルジャー50内を10-6Torr程度の真空度に真空排気し、試料皿の下のヒーター51に通電して試料を100℃から120℃程度に加熱する。試料が蒸発して石英ガラス基板53の透明電極上に薄膜が形成されたら真空を解除し、ベルジャー50から基板53を取り出す。その後、薄膜上にアルミニウム等を蒸着することによって上部電極を形成してEL素子を作製する。〔化6〕中、Meはメチル基を表す。
【0053】
【化6】
【0054】
また、ポリシラン発光層の成膜は光CVD又は熱CVDによって行うこともできる。この場合は、図6に略示するように、トリシラン誘導体又はメトキシジシラン誘導体を原料として光又は熱によって重合活性な反応中間体シリレンを生成し、ITO等の透明電極をコートした基板上でシリレンの重合を行って透明電極上にポリシラン薄膜を形成する。その後、上部電極を蒸着してEL素子を作製する。図6中、Meはメチル基を表し、Rはアルキル基やアリール基等の置換基を表す。
【0055】
CVD法でポリシランを成膜するとき、次のようにして表面処理を施した石英ガラス基板を用いることもできる。まず石英ガラス基板をアセトン中に浸漬して超音波洗浄した後、硝酸水溶液中に浸漬して超音波洗浄する。さらに、洗浄した基板を飽和重曹水溶液中に浸漬して超音波洗浄する。続いて、5%トリエトキシシランのエタノール溶液中で基板を60分間煮沸する。その後、基板をオーブンに入れ120℃で乾燥する。このような処理を行った基板に前述の光CVD又は熱CVDの方法でポリシランの薄膜を形成する。
【0056】
石英ガラス基板にこのような表面処理を施すことによりポリシランの重合度を増し、かつ配向性を揃えることができる。これは、図7(a)に示すように、洗浄した石英ガラス基板をトリエトキシシラン溶液で煮沸することによって石英ガラス基板70の表面にトリエトキシシランが結合し、図7(b)に示すように、そのSi−Hにシリレンが挿入される。さらに、図7(c)に示すように、シリレンのSi−Hに対する挿入が多数繰り返されるというような機構で反応が進行するためである。なお、図7中、Rはアルキル基やアリール基等の置換基を表す。
【0057】
表面処理を施した石英ガラス基板80上に発光層81として直接ポリシランの薄膜を形成したあと、図8に示すようにポリシラン薄膜上に2つのアルミニウム電極82,83を間隙をあけて蒸着形成し、さらに保護膜84を形成することでEL素子を得ることができる。
【0058】
次に、石英ガラス基板上に形成したポリ−ジ−n−ヘキシルポリシリレン(PDHS)の薄膜に色素レーザの2倍波である波長310nm、パルス幅3psのパルスレーザを照射し、PDHSから発せられる蛍光スペクトルを測定した。図9に、時間分解蛍光スペクトルをパルスレーザ照射直後から5nsまで積算して得られた蛍光スペクトルを示す。この蛍光スペクトルは波長372nmと376nmに2つのピークを有する。矢印Aのピークは通常の蛍光を示す。矢印Bのピークは波長310nmの連続光による励起では観察されないピークである。このようにパルスレーザによる高密度光励起によって特定のフォノンサイドバンドが成長するということはPDHSがレーザ発振する可能性を示すものである。したがって、本発明のEL素子は電気的に高密度パルス励起を行うことでレーザ発振する可能性がある。
【0059】
ここでは、EL素子の発光層としてSi元素が直接連結したポリマー又はオリゴマーの薄膜を採用した例について説明した。しかし、本発明のEL素子に使用できる発光層はSi元素が直接連結したポリマー又はオリゴマーの薄膜に限られるものではなく、〔化1〕〜〔化5〕によって説明したように、Si,Ge,Sn,Pbから選ばれた同種又は異種の元素が直接連結したポリマー又はオリゴマーからなる薄膜であれば同様に使用でき、かつ同様の効果を奏することができるものである。
【0060】
次に、本発明によるレーザ発光素子についてその一例を説明する。
図1に断面構造を略示するような、ポリジメチルシリレン(PDMS:−SiRR’−;R=R’=CH3 )を発光層とするレーザ発光素子を作製した。素子の作製は次の方法で行った。硫酸処理したのち脱気したn−オクタン50mlにナトリウム4.5gを溶解した。これに原料ジメチルジクロロシラン10g(n−オクタン溶液)を50ml滴下し、100℃で終夜撹拌した。反応終了後、エタノールを加え、さらに水を加える。エーテルで抽出し、溶媒をとばすとポリジメチルシリレンが得られる。
【0061】
こうして得られたポリジメチルシリレン及びITO電極12をコーティングした石英ガラス基板11を、図5に示した真空蒸着装置中に設置し、10-5Torrでポリジメチルシリレンを200℃程度に加熱し、石英ガラス基板11にコーティングされたITO電極12上に蒸着膜を形成し、発光層13とした。形成されたPDMS蒸着膜の膜厚はおよそ100nmであった。この蒸着膜は、光吸収測定の際の偏光特性から、高度に配向制御された膜であることが確認された。蒸着膜の上に更に上部電極14としてアルミニウムを50〜100nmの厚さに蒸着してレーザ発光素子10を作製した。
【0062】
作製されたレーザ発光素子を図2に示すように直流電源21に接続し、室温で約50Vの電圧を印加して発光させた。素子から発生された光線を分光器に導入して発光スペクトルを測定したところ、多数の鋭いピークが観察された。
図10に、測定された発光スペクトルを示す。図10から明らかなように、通常の発光とは異なり、レーザ発振に基づく鋭いピークのプログレッションが観察された。発振波長は分子の構造によって変えることができる。ここではPDMS蒸着膜によるレーザ発振について説明したが、他のオリゴシランやポリシランでも分子の配向を揃えることによりレーザ発振が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明のEL素子の断面構造を示す模式図。
【図2】発光スペクトル測定系の説明図。
【図3】本発明のEL素子の発光スペクトルを示す図。
【図4】EL素子への印加電圧と、発光強度及びEL素子に流れる電流の変化を示す図。
【図5】図5は、真空蒸着法による成膜の説明図。
【図6】光CVD又は熱CVDによる成膜の説明図。
【図7】基板表面処理の効果を説明する図。
【図8】本発明によるEL素子の他の例の断面図。
【図9】PDHSの時間分解蛍光スペクトルを示す図。
【図10】本発明のレーザ発光素子の発光スペクトルを示す図。
【図11】従来の2層型EL素子の断面構造を示す模式図。
【図12】従来のEL素子の発光スペクトルとAlq3の発光スペクトルを示す図。
【符号の説明】
【0064】
10…EL素子、11…石英ガラス基板、12…透明電極、13…発光層、14…上部電極、21…直流電源、23…電流計、24…集光レンズ、25…分光器、26…検出器、50…ベルジャー、51…ヒーター、52…試料皿、53…石英ガラス基板、54…液体窒素容器、55…コールドフィンガー、70…石英ガラス基板、80…石英ガラス基板、81…発光層、82,83…電極、84…保護層、91…ガラス基板、92…透明電極、93…ホール輸送層、94…発光層、95…上部電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si,Ge,Sn及びPbから選ばれた同種又は異種の元素の複数の原子が直接連結し、前記複数の原子の各々の上に2つの置換基を有するポリマー又はオリゴマーからなる薄膜をCVD法により形成するステップを含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜方法において、前記2つの置換基は、2つのアルキル基であることを特徴とする成膜方法。
【請求項3】
重合活性な反応中間体を発生させることによりSi,Ge,Sn及びPbから選ばれた同種又は異種の元素の複数の原子が直接連結し、前記複数の原子の各々の上に2つの置換基を有するポリマー又はオリゴマーからなる薄膜を形成することを特徴とする成膜方法。
【請求項4】
光又は熱によって重合活性なシリレンを発生させ、前記シリレンを重合することによりポリシランを成膜することを特徴とする成膜方法。
【請求項5】
請求項4に記載の成膜方法において、前記ポリシランは、前記シリレンのケイ素−水素結合に対する複数の挿入反応を繰り返すことにより形成されることを特徴とする成膜方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の成膜方法において、前記薄膜が形成される基板をあらかじめ表面処理するステップをさらに含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の成膜方法において、前記ポリシランが形成される基板にケイ素−水素結合を形成するステップをさらに含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項8】
真空蒸着法によりポリシラン又はケイ素オリゴマーを形成することを特徴とする成膜方法。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の成膜方法において前記薄膜は配向制御されていることを特徴とする成膜方法。
【請求項10】
請求項8に記載の成膜方法において、前記ポリシラン又は前記ケイ素オリゴマーは主鎖骨格は配座制御されていることを特徴とする成膜方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の成膜方法を用いることにより発光層を形成することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の成膜方法を用いることにより発光層を形成することを特徴とするレーザ発光素子の製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記発光層は紫外領域の発光を示すことを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項14】
Si,Ge,Sn及びPbから選ばれた同種又は異種の元素の複数の原子が直接連結し、前記複数の原子を含む主鎖骨格が配座制御されたポリマー又はオリゴマーからなる薄膜を備えたエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項15】
Si,Ge,Sn及びPbから選ばれた同種又は異種の元素の複数の原子が直接連結し、前記複数の原子を含む主鎖骨格が配座制御されたポリマー又はオリゴマーからなる薄膜を備えたレーザ発光素子。
【請求項16】
請求項14に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、前記主鎖は螺旋構造を有していることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項17】
請求項15に記載のレーザ発光素子において、前記主鎖は螺旋構造を有していることを特徴とするレーザ発光素子。
【請求項18】
請求項14又は16に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、前記複数の原子の少なくとも一つの原子は、置換基を備え、前記置換基は架橋構造を有していることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項19】
請求項15又は17に記載のレーザ発光素子において、前記複数の原子の少なくとも一つの原子は、置換基を備え、前記置換基は架橋構造を有していることを特徴とするレーザ発光素子。
【請求項20】
請求項14、16又は18に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、前記薄膜は発光層であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項21】
請求項14、16、18又は20に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、前記薄膜は電圧を印加することにより紫外領域の発光を示すことを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項22】
請求項15、17又は19に記載のレーザ発光素子において、前記薄膜は電圧を印加することにより発光する発光層として機能することを特徴とするレーザ発光素子。
【請求項1】
Si,Ge,Sn及びPbから選ばれた同種又は異種の元素の複数の原子が直接連結し、前記複数の原子の各々の上に2つの置換基を有するポリマー又はオリゴマーからなる薄膜をCVD法により形成するステップを含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜方法において、前記2つの置換基は、2つのアルキル基であることを特徴とする成膜方法。
【請求項3】
重合活性な反応中間体を発生させることによりSi,Ge,Sn及びPbから選ばれた同種又は異種の元素の複数の原子が直接連結し、前記複数の原子の各々の上に2つの置換基を有するポリマー又はオリゴマーからなる薄膜を形成することを特徴とする成膜方法。
【請求項4】
光又は熱によって重合活性なシリレンを発生させ、前記シリレンを重合することによりポリシランを成膜することを特徴とする成膜方法。
【請求項5】
請求項4に記載の成膜方法において、前記ポリシランは、前記シリレンのケイ素−水素結合に対する複数の挿入反応を繰り返すことにより形成されることを特徴とする成膜方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の成膜方法において、前記薄膜が形成される基板をあらかじめ表面処理するステップをさらに含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の成膜方法において、前記ポリシランが形成される基板にケイ素−水素結合を形成するステップをさらに含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項8】
真空蒸着法によりポリシラン又はケイ素オリゴマーを形成することを特徴とする成膜方法。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の成膜方法において前記薄膜は配向制御されていることを特徴とする成膜方法。
【請求項10】
請求項8に記載の成膜方法において、前記ポリシラン又は前記ケイ素オリゴマーは主鎖骨格は配座制御されていることを特徴とする成膜方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の成膜方法を用いることにより発光層を形成することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の成膜方法を用いることにより発光層を形成することを特徴とするレーザ発光素子の製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、前記発光層は紫外領域の発光を示すことを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項14】
Si,Ge,Sn及びPbから選ばれた同種又は異種の元素の複数の原子が直接連結し、前記複数の原子を含む主鎖骨格が配座制御されたポリマー又はオリゴマーからなる薄膜を備えたエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項15】
Si,Ge,Sn及びPbから選ばれた同種又は異種の元素の複数の原子が直接連結し、前記複数の原子を含む主鎖骨格が配座制御されたポリマー又はオリゴマーからなる薄膜を備えたレーザ発光素子。
【請求項16】
請求項14に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、前記主鎖は螺旋構造を有していることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項17】
請求項15に記載のレーザ発光素子において、前記主鎖は螺旋構造を有していることを特徴とするレーザ発光素子。
【請求項18】
請求項14又は16に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、前記複数の原子の少なくとも一つの原子は、置換基を備え、前記置換基は架橋構造を有していることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項19】
請求項15又は17に記載のレーザ発光素子において、前記複数の原子の少なくとも一つの原子は、置換基を備え、前記置換基は架橋構造を有していることを特徴とするレーザ発光素子。
【請求項20】
請求項14、16又は18に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、前記薄膜は発光層であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項21】
請求項14、16、18又は20に記載のエレクトロルミネッセンス素子において、前記薄膜は電圧を印加することにより紫外領域の発光を示すことを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
【請求項22】
請求項15、17又は19に記載のレーザ発光素子において、前記薄膜は電圧を印加することにより発光する発光層として機能することを特徴とするレーザ発光素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−138018(P2006−138018A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329027(P2005−329027)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【分割の表示】特願平8−262051の分割
【原出願日】平成8年10月2日(1996.10.2)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【分割の表示】特願平8−262051の分割
【原出願日】平成8年10月2日(1996.10.2)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】
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