説明

成膜方法及び太陽電池の製造方法

【課題】基板の表面にテクスチャが形成される場合でも、透明導電膜など、当該表面に形成される膜厚をより均一にすることができる成膜方法、及び太陽電池の製造方法を提供する。
【解決手段】幾何学的な凹凸が形成された基板200に蒸着源20から供給される蒸着材料25を蒸着させ、基板200の表面に透明導導電膜を形成する。蒸着源20の直上寄りに位置する基板200の端部200aと蒸着材料供給部21との距離d1、及び基板200の端部200bと蒸着材料供給部21との距離d2が略同一となるように、基板200を傾斜させた状態に位置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の凸部による幾何学的な凹凸が形成された基板に蒸着源から供給される蒸着材料を蒸着させることによって当該基板の表面に膜を形成する成膜方法、及び太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、クリーンで無尽蔵に供給される太陽光エネルギーを直接電気エネルギーに変換することができるため、新しいエネルギー源として期待されている。太陽電池は、一般的に、多結晶シリコンや単結晶シリコンなどの結晶半導体、非晶質半導体、または化合物半導体で構成される。また、太陽電池が発電した電気を効率よく取り出すため、光入射面または反対側(光透過側)の面に、透明導電膜が形成されていることが多い。
【0003】
透明導電膜の形成には、いわゆるPhysical Vapor Deposition(PVD)方式の成膜装置(スパッタリング装置など)が広く用いられている。PVD方式の成膜装置では、蒸着材料を供給する蒸着源と基板との距離によって、基板の表面に形成される膜厚が異なり得る。具体的には、蒸着源の上方を基板が順次通過する際に基板の表面に蒸着材料が堆積するが、蒸着源の直上に位置する部分の膜厚は、蒸着源の直上から外れた斜め上方に位置する部分の膜厚よりも厚くなり易い。形成される膜厚の不均一が発生すると、太陽電池の特性(抵抗値など)が低下する要因となる。
【0004】
そこで、蒸着源の直上から外れた斜め上方に位置する部分、具体的には基板の外側端に蒸着源を接近させることによって、膜厚の不均一を解消する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−129436号公報(第4頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、膜厚の不均一を解消する従来の方法には、次のような問題があった。すなわち、基板の表面に幾何学的な凹凸、いわゆるテクスチャが形成されている場合、透明導電膜の膜厚がさらに不均一になり易い問題があった。
【0007】
具体的には、基板の表面にピラミッド状などの複数の凸部による凹凸が形成されていると、蒸着源を側方から視た場合において、蒸着源の蒸着材料供給部から延びる直線との角度が大きくなる面(対向面)と、当該直線との角度が小さくなる面(非対向面)とが存在する。非対向面の当該角度は、対向面の当該角度(例えば、約90度)と比較して当該角度が著しく低い(例えば、0度未満)と蒸着材料が蒸着し難く、非対向面の膜厚は、対向面の膜厚よりも薄くなる。抵抗値は、透明導電膜の膜厚に反比例するため、非対向面が基板全体の抵抗値を上昇させ、太陽電池の特性が低下する。
【0008】
そこで、本発明は、基板の表面にテクスチャが形成される場合でも、透明導電膜など、当該表面に形成される膜厚をより均一にすることができる成膜方法、及び太陽電池の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明の特徴は、複数の凸部(凸部210)による幾何学的な凹凸が形成された基板(基板200)に蒸着源(蒸着源20)から供給される蒸着材料(蒸着材料25)を蒸着させ、前記蒸着源の何れかの側方視において、前記凹凸が、前記蒸着源の蒸着材料供給部(蒸着材料供給部21)から延びる直線である供給直線(直線L2)との前記蒸着源側の角度(角度α1)が所定角度になる対向面(対向面210a)と、前記供給直線との前記蒸着源側の角度(角度α2)が前記所定角度よりも小さい角度になる非対向面(非対向面210b)とを含み、前記基板の表面に膜(透明導電膜220)を形成する成膜方法であって、前記側方視において、前記供給直線が前記非対向面を介して前記基板内に入射するように前記基板を位置させる位置決めステップと、前記位置決めステップにおいて位置決めされた前記基板に対して、前記蒸着源から前記蒸着材料を供給し、前記蒸着材料を前記基板の表面に蒸着させる蒸着ステップとを備えることを要旨とする。
【0010】
また、前記位置決めステップでは、前記側方視において、前記蒸着源の直上寄りに位置する前記基板の一端部(端部200a)と前記蒸着材料供給部との第1距離(距離d1)、及び前記基板の他端部(端部200b)と、前記蒸着材料供給部との第2距離(距離d2)が略同一となるように、前記基板を傾斜させた状態に位置させてもよい。
【0011】
また、前記位置決めステップにおいて位置決めされた前記基板を搬送し、前記蒸着材料を供給している前記蒸着源の上方を通過させる基板搬送ステップをさらに備え、前記位置決めステップでは、搬送方向(方向DR1)下流側から前記蒸着源を視た場合において、前記第1距離と前記第2距離とが略同一になるように前記基板を位置させてもよい。
【0012】
また、前記位置決めステップでは、前記側方視において、前記蒸着材料供給部を通過し、鉛直方向(方向DR2)に沿った中心線(中心線CL)を基準として区分された一方の領域(領域A1)、及び前記中心線を基準として区分された他方の領域(領域A2)のそれぞれに前記基板を位置させてもよい。
【0013】
さらに、前記位置決めステップでは、前記一方の領域に位置する前記基板を保持する第1保持部(トレイ111)と、前記他方の領域に位置する前記基板を保持する第2保持部(トレイ112)と、前記側方視において、前記第1保持部に保持された前記基板の外側端(端部200b)と、前記中心線に直交する直交線(直交線L1)とが成す角度(角度θ1)、及び前記第2保持部に保持された前記基板の外側端(端部200b)と、前記直交線とが成す角度(角度θ2)を変更可能に、前記第1保持部の内側部分(内側部分111in)と前記第2保持部の内側部分(内側部分112in)とを連結する連結部(連結部130)とを含む基板保持機構(基板搬送部100)を用いて前記基板の位置を決定してもよい。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、蒸着源から供給される蒸着材料を幾何学的な凹凸が複数形成された基板に蒸着させ、前記側方視において、前記凹凸が、前記蒸着源の蒸着材料供給部から延びる直線である供給直線との前記蒸着源側の角度が所定角度になる対向面と、前記供給直線との前記蒸着源側の角度が前記所定角度よりも小さい角度になる非対向面とを含む太陽電池の製造方法であって、前記蒸着源の側方視において、前記供給直線が前記非対向面を介して前記基板内に入射するように前記基板を位置させる位置決めステップと、前記位置決めステップにおいて位置決めされた前記基板に対して、前記蒸着源から前記蒸着材料を供給し、前記蒸着材料を前記基板の表面に蒸着させ、前記基板の表面に膜を形成する成膜ステップとを備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の特徴によれば、基板の表面にテクスチャが形成される場合でも、透明導電膜など、当該表面に形成される膜厚をより均一にすることができる成膜方法、及び太陽電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る成膜方法の実施に用いられる成膜装置10の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る太陽電池300の断面構造の模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係るチャンバ40内における基板搬送部100と蒸着源20との位置関係を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る凸部210が形成された基板200の表面と蒸着源20との位置関係を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る成膜装置10を用いた太陽電池300の製造フローを示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る透明導電膜220のシート抵抗と、基板搬送部100のトレイ111(トレイ112)の角度θ1(角度θ2)との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の実施形態に係る本発明の変更例に係る基板搬送部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0018】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0019】
(1)成膜装置の概略構成
図1は、本発明の実施形態に係る成膜方法の実施に用いられる成膜装置10の概略構成図である。図1に示すように、成膜装置10は、蒸着材料25を基板200に蒸着させることによって、基板200の表面に透明導電膜220(図1において不図示、図2参照)を形成する。具体的には、成膜装置10は、PVDにより蒸着材料25を基板200の表面に堆積させることによって、透明導電膜220を形成する。
【0020】
基板200は、太陽電池300(図2参照)の製造に用いられる。基板200の表面には、幾何学的な複数の凸部210(図1において不図示、図4参照)、いわゆるテクスチャが形成されている。
【0021】
成膜装置10は、いわゆるインライン式の装置であり、蒸着源20、ガイドレール30、チャンバ40及び基板搬送部100を備える。
【0022】
蒸着源20は、チャンバ40内部に設けられ、蒸着材料25をチャンバ40内に提供する。具体的には、蒸着材料25は、蒸着源20の上部に設けられた蒸着材料供給部21から連続的に提供される。
【0023】
一対のガイドレール30は、チャンバ40内を貫通するように配置される。チャンバ40には、基板搬送部100の形状に沿った細い入口30inと出口30outとが形成されている。ガイドレール30は、入口30inからチャンバ40内部に入り、出口30outからチャンバ40外に出るように配置されている。
【0024】
基板搬送部100は、一対のガイドレール30上を方向DR1に向かって走行し、基板200をチャンバ40内に搬送する。基板搬送部100は、トレイ111、トレイ112、車輪120及び連結部130を有する。なお、基板搬送部100は、図示しない駆動部を有する。
【0025】
トレイ111及びトレイ112には、基板200が装着される。車輪120は、トレイ111及びトレイ112に取り付けられ、一対のガイドレール30を転動する。連結部130は、トレイ111とトレイ112とを回動可能に連結するヒンジ状の機構である。
【0026】
また、一対のガイドレール30は、チャンバ40内においてレール幅が狭くなっているため、一対のガイドレール30上を走行する基板搬送部100は、連結部130を基点として折れ曲がる。この結果、図1に示すように、基板搬送部100は、当該レール幅の狭い部分において、連結部130を頂点とした山状に変化する。
【0027】
一方、入口30in及び出口30outの位置ではレール幅が広いため、基板搬送部100は、山状ではなく平板状に保持される。つまり、基板搬送部100が入口30in及び出口30outを通過する際には、基板搬送部100が平板状に保持され、入口30in及び出口30outの開口面積が小さくなるように配慮されている。
【0028】
(2)太陽電池の構造
図2は、本実施形態に係る太陽電池300の断面構造の一例を示す模式図である。図2に示すように、太陽電池300は、基板200と透明導電膜220とによって構成される。なお、太陽電池300は、透明導電膜220の表面及びn型半導体基板211の表面に図示しない電極を備える。
【0029】
基板200は、n型半導体基板211、i型半導体層212及びp型半導体層213によって構成される。n型半導体基板211は、n型単結晶シリコンなどによって形成される。i型半導体層212は、i型非晶質シリコンなどによって形成される。p型半導体層213は、p型非晶質シリコンなどによって構成される。
【0030】
透明導電膜220は、酸化インジウム錫(ITO)などの透光性導電酸化物によって構成される。なお、上述したように、基板200(n型半導体基板211)の表面には、複数の凸部210(図4参照)による幾何学的な凹凸、具体的には、ピラミッド(四角錐)状の凹凸が形成されている。
【0031】
(3)基板搬送部100と蒸着源20との位置関係
図3は、チャンバ40内における基板搬送部100と蒸着源20との位置関係を示す。図3は、蒸着源20の側方視、具体的には、基板200の搬送方向下流側(図1の矢印AR1)から基板搬送部100及び蒸着源20の側方を視た図である。
【0032】
図3に示すように、車輪120を有する基板搬送部100は、チャンバ40内、具体的には蒸着源20の上方を一対のガイドレール30に沿って通過する際、搬送方向下流側から蒸着源20を視た場合において、連結部130を頂点とした山状に変化する。
【0033】
トレイ111は、蒸着材料供給部21を通過し、鉛直方向(方向DR2)に沿った中心線CLを基準として区分された領域A1に位置する基板200を保持する。同様に、トレイ112は、中心線CLを基準として区分された他方の領域A2に位置する基板200を保持する。すなわち、本実施形態では、中心線CLを基準した領域A1及び領域A2のそれぞれに基板200を位置させる。本実施形態において、トレイ111は第1保持部を構成し、トレイ112は第2保持部を構成する。
【0034】
連結部130は、トレイ111の内側部分111inとトレイ112の内側部分112inとを回動可能に連結する。具体的には、連結部130は、トレイ111に保持された基板200の外側端である端部200bと、中心線CLに直交する直交線L1が成す角度θ1、及びトレイ112に保持された基板200の端部200bと直交線L1とが成す角度θ2を変更可能に、内側部分111inと内側部分112inとを連結する。
【0035】
このように、本実施形態では、トレイ111、トレイ112及び連結部130を含む基板搬送部100を用いて、蒸着源20に対する基板200の位置(角度)を決定する。本実施形態において、基板搬送部100は、基板保持機構を構成する。
【0036】
より具体的には、基板搬送部100は、基板200の搬送方向下流側から蒸着源20を視た場合において、蒸着源20の直上寄りに位置する基板200の端部200a(一端部)と蒸着材料供給部21との距離d1(第1距離)、及び基板200の端部200b(他端部)と蒸着材料供給部21との距離d2(第2距離)が略同一となるように、基板200を傾斜させた状態に位置させる。距離d1と距離d2とは、必ずしも完全に同一でなくてもよく、蒸着源20から供給される蒸着材料25が基板200の表面になるべく均一に堆積するように配慮して、距離d1と距離d2とを決定すればよい。
【0037】
また、本実施形態では、基板200の一辺の長さaは、90〜140mmである。このような基板200に対して、距離d1及び距離d2は、450〜600mmに設定される。また、角度θ1及び角度θ2は、2.5〜12.5°に設定される。
【0038】
(4)基板200の表面と蒸着源20との位置関係
図4(a)及び(b)は、凸部210が形成された基板200の表面と蒸着源20との位置関係を示す。具体的には、図4(a)は、上述した基板搬送部100を用いて基板200を傾けた場合における位置関係を示す。一方、図4(b)は、基板200を傾けずに水平した場合における位置関係を示す。
【0039】
図4(a)及び(b)に示すように、基板200の表面には、複数の凸部210が形成されている。凸部210のそれぞれは、対向面210aと非対向面210bとを含む。対向面210aは、蒸着材料供給部21から延びる直線である直線L2(供給直線)との蒸着源20側の角度α1が所定角度になる面である。非対向面210bは、対向面210aの反対側に位置し、直線L2との蒸着源20側の角度α2が角度α1よりも小さい角度になる面である。
【0040】
つまり、対向面210aは、非対向面210bよりも蒸着材料供給部21から延びる直線L2に対して向かい合うように位置する。非対向面210bは、対向面210aよりも直線L2に対して傾斜するように位置する。
【0041】
本実施形態では、図4(a)に示すように、基板200を傾けて位置させる。具体的には、蒸着源20の側方視において、直線L2が非対向面210bを介して基板200内に入射するように基板200を位置させる。つまり、図4(a)において、直線L2が基板200の表面側から入射し、角度α2が0°以上になるように基板200を位置させる。
【0042】
一方、図4(b)に示すように、基板200を傾けずに水平に位置させると、非対向面210bでは、直線L2が非対向面210bとなる角度は角度α3のようになり、基板200の表面側から入射し得ない。このため、対向面210aと比較すると、非対向面210bに蒸着材料25が堆積し難く、透明導電膜220の膜厚が不均一になり易い。
【0043】
(5)成膜装置10を用いた太陽電池の製造方法
図5は、成膜装置10を用いた太陽電池300の製造フローを示す。図5に示すように、ステップS10において、トレイ111及びトレイ112に基板200がセットされる。具体的には、トレイ111及びトレイ112に形成された開口部(不図示)に基板200を装着し、基板200を当該トレイによって保持させる。
【0044】
ステップS20において、トレイ111及びトレイ112にセットされた基板200がチャンバ40内に搬送される。具体的には、基板搬送部100が一対のガイドレール30上を走行し、基板200がチャンバ40内に搬送される。
【0045】
ステップS30において、蒸着源20に対する基板200の角度(位置)がセットされる。具体的には、一対のガイドレール30上を走行する基板搬送部100が、連結部130を基点として折れ曲がり、基板200が傾斜した状態で保持される。本実施形態では、ステップS30は、位置決めステップを構成する。
【0046】
ステップS30の動作によって、距離d1及び距離d2(図2参照)が略同一となるように、基板200が傾斜させられた状態となる。
【0047】
ステップS40において、基板搬送部100は、位置決めされた基板200を搬送し、蒸着源20の上方を所定速度で通過する。本実施形態において、ステップS40は、基板搬送ステップを構成する。
【0048】
ステップS50において、蒸着源20から供給される蒸着材料25を基板200に蒸着させる。具体的には、基板搬送部100が、蒸着材料25が順次供給されているチャンバ40内において、蒸着源20の上方を所定速度で通過することによって、蒸着材料25が基板200に堆積し、透明導電膜220が形成される。本実施形態において、ステップS50は、蒸着ステップを構成する。
【0049】
ステップS60において、蒸着源20に対する基板200の角度(位置)がリセットされる。具体的には、基板搬送部100が、連結部130を基点として折れ曲がった状態から平板状に復帰する。
【0050】
ステップS70において、基板200がチャンバ40外に搬送される。具体的には、基板搬送部100が一対のガイドレール30上を走行し、基板200がチャンバ40外に搬送される。
【0051】
チャンバ40外に搬送された基板200には、フィンガー電極などが形成され、太陽電池300が製造される。
【0052】
(6)実施例
次に、上述した成膜装置10を用いて製造した基板200の実施例について説明する。実施例に係る基板200は、図2に示した構造を有する。実施例では、約1Ω・cmの抵抗率と、約300μmの厚みとを有するn型半導体基板211(n型単結晶シリコン基板)を用いた。このn型単結晶シリコン基板に対して表面洗浄とテクスチャリング処理を行い、基板表面に数μmから数十μmの高さを有するピラミッド状の凸部を複数設け、凹凸を形成した。
【0053】
このようなn型半導体基板211の片面に、約5nmの実質的に真性なi型非晶質シリコン層で構成されるi型半導体層212と、約5nmのp型非晶質シリコン層で構成されるp型半導体層213とをプラズマCVDにより形成した。表1は、プラズマの形成条件などを示す。
【0054】
【表1】

【0055】
次いで、Ar、O雰囲気下において、基板搬送部100を用いて基板200を傾斜させた状態でITOをp型半導体層213の表面に蒸着させ、室温で透明導電膜220を形成した。実施例では、基板搬送部100のトレイ111(トレイ112)の角度θ1(角度θ2)を変化させて複数の基板200を製作した。なお、基板200のサイズ(長さa)や、基板200と蒸着源20との位置関係(距離d1及び距離d2)は、上述した範囲内とした。
【0056】
図6は、透明導電膜220のシート抵抗と、基板搬送部100のトレイ111(トレイ112)の角度θ1(角度θ2)との関係を示すグラフである。図6に示すように、角度θ1を2.5〜12.5°の範囲内の場合、透明導電膜220のシート抵抗が、角度θ1を0°(水平)や15.0°とした場合よりも10%以上小さくなっている。
【0057】
つまり、上述した基板200のサイズ(長さa)や、基板200と蒸着源20との位置関係(距離d1及び距離d2)である場合、角度θ1(角度θ2)は、2.5〜12.5°に設定する必要がある。
【0058】
(7)作用・効果
以上説明した成膜方法によれば、基板搬送部100が、直線L2が非対向面210bを介して基板200内に入射するように基板200を位置させる。つまり、図4(a)に示したように、直線L2が基板200の表面側から入射し、角度α2が0°以上になるように基板200を位置させる。具体的には、距離d1及び距離d2(図2参照)が略同一となるように、基板200を傾斜させた状態に位置させる。
【0059】
このため、対向面210aと非対向面210bとに堆積する蒸着材料25の量の差異が縮小される。つまり、基板200の表面に形成される透明導電膜220の膜厚が均一となる。
【0060】
すなわち、このような成膜方法によれば、基板200の表面にテクスチャが形成される場合でも、透明導電膜220など、当該表面に形成される膜厚をより均一にすることができる。
【0061】
また、上述した実施形態では、図2に示したように、中心線CLを基準として区分された領域A1及び領域A2のそれぞれに基板200を位置させる。また、このような配置を実現するため、トレイ111とトレイ112とを回動可能に連結する連結部130を有する基板搬送部100が用いられる。このため、基板200への蒸着材料25の蒸着前及び蒸着後においては、基板搬送部100を平板状とすることによって、基板200を水平に保持できるため、他の工程には何ら影響を及ぼさないようにすることができる。つまり、成膜装置10を用いても基板200の生産性には何ら悪影響を及ぼすことなく、透明導電膜220の膜厚の均一化を図り得る。
【0062】
(8)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0063】
例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。図7(a)及び(b)は、本発明の変更例に係る基板搬送部を示す。図7(a)に示す基板搬送部100Aは、上述した基板搬送部100と比較すると、連結部130が省略されている。つまり、基板200の傾斜角度が固定となるが、基板搬送部100Aを用いた場合でも透明導電膜220の膜厚の均一化を図り得る。
【0064】
図7(b)に示す基板搬送部100Bは、基板搬送部100と比較すると、領域A1側にのみ設けられる。基板搬送部100Bでは、一度に取り扱うことができる基板200の数は制限されるものの、基板搬送部100Bを用いた場合でも透明導電膜220の膜厚の均一化を図り得る。
【0065】
また、基板搬送部100Aや基板搬送部100Bは、必ずしも車輪120を有していなくても構わない。また、一対のガイドレール30の必ずしも必要でない。つまり、基板200を傾斜させ、傾斜させた基板200を蒸着源20の上方において保持できればよく、必ずしもインライン式の成膜装置である必要はない。
【0066】
さらに、本発明は、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、分子線エピタキシー法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などのPVD法を用いた膜の形成に適用可能である。
【0067】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められる。
【符号の説明】
【0068】
10…成膜装置、20…蒸着源、21…蒸着材料供給部、25…蒸着材料、30…ガイドレール、30in…入口、30out…出口、40…チャンバ、100,100A,100B…基板搬送部、111,112…トレイ、111in,112in…内側部分、120…車輪、130…連結部、200…基板、200a,200b…端部、210…凸部、210a…対向面、210b…非対向面、211…n型半導体基板、212…i型半導体層、213…p型半導体層、220…透明導電膜、300…太陽電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の凸部による幾何学的な凹凸が形成された基板に蒸着源から供給される蒸着材料を蒸着させ、
前記蒸着源の何れかの側方視において、前記凹凸が、前記蒸着源の蒸着材料供給部から延びる直線である供給直線との前記蒸着源側の角度が所定角度になる対向面と、前記供給直線との前記蒸着源側の角度が前記所定角度よりも小さい角度になる非対向面とを含み、
前記基板の表面に膜を形成する成膜方法であって、
前記側方視において、前記供給直線が前記非対向面を介して前記基板内に入射するように前記基板を位置させる位置決めステップと、
前記位置決めステップにおいて位置決めされた前記基板に対して、前記蒸着源から前記蒸着材料を供給し、前記蒸着材料を前記基板の表面に蒸着させる蒸着ステップと
を備える成膜方法。
【請求項2】
前記位置決めステップでは、前記側方視において、前記蒸着源の直上寄りに位置する前記基板の一端部と前記蒸着材料供給部との第1距離、及び前記基板の他端部と前記蒸着材料供給部との第2距離が略同一となるように、前記基板を傾斜させた状態に位置させる請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記位置決めステップにおいて位置決めされた前記基板を搬送し、前記蒸着材料を供給している前記蒸着源の上方を通過させる基板搬送ステップをさらに備え、
前記位置決めステップでは、搬送方向下流側から前記蒸着源を視た場合において、前記第1距離と前記第2距離とが略同一になるように前記基板を位置させる請求項2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記位置決めステップでは、前記側方視において、前記蒸着材料供給部を通過し、鉛直方向に沿った中心線を基準として区分された一方の領域、及び前記中心線を基準として区分された他方の領域のそれぞれに前記基板を位置させる請求項1乃至3の何れか一項に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記位置決めステップでは、
前記一方の領域に位置する前記基板を保持する第1保持部と、
前記他方の領域に位置する前記基板を保持する第2保持部と、
前記側方視において、前記第1保持部に保持された前記基板の外側端と前記中心線に直交する直交線とが成す角度、及び前記第2保持部に保持された前記基板の外側端と前記直交線とが成す角度を変更可能に、前記第1保持部の内側部分と前記第2保持部の内側部分とを連結する連結部と
を含む基板保持機構を用いて前記基板の位置を決定する請求項4に記載の成膜方法。
【請求項6】
複数の凸部による幾何学的な凹凸が形成された基板に蒸着源から供給される蒸着材料を蒸着させ、
前記蒸着源の何れかの側方視において、前記凹凸が、前記蒸着源の蒸着材料供給部から延びる直線である供給直線との前記蒸着源側の角度が所定角度になる対向面と、前記供給直線との前記蒸着源側の角度が前記所定角度よりも小さい角度になる非対向面とを含む太陽電池の製造方法であって、
前記側方視において、前記供給直線が前記非対向面を介して前記基板内に入射するように前記基板を位置させる位置決めステップと、
前記位置決めステップにおいて位置決めされた前記基板に対して、前記蒸着源から前記蒸着材料を供給し、前記蒸着材料を前記基板の表面に蒸着させ、前記基板の表面に膜を形成する蒸着ステップと
を備える太陽電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−117013(P2011−117013A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272976(P2009−272976)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】