成膜装置、成膜方法及び記憶媒体
【課題】真空容器内のテーブル上の基板載置領域に基板を載置して、少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給し、かつこの供給サイクルを複数回実行することにより反応生成物の層を積層して薄膜を形成するにあたり、基板を加熱する加熱手段の消費エネルギーを小さく抑えること。
【解決手段】回転テーブル2を回転させてウエハW上にBTBASガスを吸着させ、次いでウエハWの表面にO3ガスを供給してウエハWの表面に吸着したBTBASガスを酸化させてシリコン酸化膜を成膜するにあたって、ウエハWを加熱してシリコン酸化膜を生成させるための加熱手段として、回転テーブル2の内周側から外周側に亘って帯状にレーザ光を照射するレーザ照射部201を用いる。
【解決手段】回転テーブル2を回転させてウエハW上にBTBASガスを吸着させ、次いでウエハWの表面にO3ガスを供給してウエハWの表面に吸着したBTBASガスを酸化させてシリコン酸化膜を成膜するにあたって、ウエハWを加熱してシリコン酸化膜を生成させるための加熱手段として、回転テーブル2の内周側から外周側に亘って帯状にレーザ光を照射するレーザ照射部201を用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーブル上の基板と反応ガス供給手段とを相対的に公転させ、少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給して成膜処理を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスの一つである、真空雰囲気下で反応ガスにより基板に成膜する手法を実施する装置として、複数の半導体ウエハ等の基板を載置台に載置して、反応ガス供給手段に対して基板を相対的に公転させながら成膜処理を行う成膜装置が知られている。特許文献1〜3には、この種のいわばミニバッチ方式の成膜装置が記載されており、このような成膜装置は、例えば反応ガス供給手段から基板に対して複数種類の反応ガスを供給すると共に、これらの複数種類の反応ガスが夫々供給される領域同士の間に例えば物理的な隔壁を設けたり、あるいは不活性ガスをエアカーテンとして吹き出したりすることにより、これら複数の反応ガス同士が互いに混じり合わないようにして成膜処理を行うように構成されている。そして、この成膜装置を用いて、第1の反応ガス及び第2の反応ガスを交互に基板に供給して原子層あるいは分子層を積層していく例えばALD(Atomic Layer Deposition)やMLD(Molecular Layer Deposition)などを行っている。
【0003】
この成膜装置では、載置台に載置された複数枚の基板を加熱するにあたり、例えば載置台全体を加熱することによって上記複数の基板を一度に加熱するようにしている。そのため、大型で高出力のヒーターが必要になるので、装置の消費エネルギーが大きくなってしまう。また、ヒーターが大型化すると、ヒーターからの輻射熱などによって真空容器内の雰囲気や装置全体が高温となるので、真空容器や装置全体を冷却するための冷却機構が必要になり、装置構造が複雑化してしまう。
【0004】
更に、上記のALD(MLD)法により薄膜の成膜を行うと、成膜温度が低いため、例えば反応ガスに含まれている有機物や水分などの不純物が薄膜中に取り込まれてしまう場合がある。このような不純物を膜中から外部へと排出して緻密で不純物の少ない薄膜を形成するためには、基板に対して例えば数百℃程度で加熱するアニール処理(熱処理)などの後処理を行う必要があるが、薄膜を積層した後にこの後処理を行うと、工程が増えるためコストの増加に繋がってしまう。
例えば特許文献1及び特許文献4には、ウエハを加熱する方法としてレーザ光を用いる技術が記載されているが、具体的な装置構成については触れられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許公報7,153,542号:図8(a)、図8(b)
【特許文献2】特許3144664号公報:図1、図2、請求項1
【特許文献3】米国特許公報6,634,314号
【特許文献4】特開2006−229075号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、テーブル上の基板と反応ガス供給手段とを相対的に公転させ、少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給して成膜処理を行うにあたり、反応生成物を生成させるための消費エネルギーを小さく抑えることのできる成膜装置、成膜方法及び記憶媒体を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記の成膜処理を行うにあたり、基板上の薄膜の改質を行うことのできる成膜装置、成膜方法及び記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の成膜装置は、
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置において、
前記真空容器内に設けられ、基板を載置するための基板載置領域を有するテーブルと、
このテーブル上の前記基板に第1の反応ガスを供給するための第1の反応ガス供給手段と、
前記テーブル上の前記基板に第2の反応ガスを供給するための第2の反応ガス供給手段と、
前記基板載置領域に対向するようにかつ前記基板載置領域上の基板における前記テーブルの中心側の端部と前記テーブルの外周側の端部との間に亘って帯状にレーザ光を照射するように設けられ、前記基板上にて第1の反応ガスの成分と第2の反応ガスの成分とを反応させて反応生成物を生成させるためのレーザ照射部と、
前記第1の反応ガス供給手段、前記第2の反応ガス供給手段及び前記レーザ照射部と前記テーブルとを相対的に回転させるための回転機構と、
前記真空容器内を排気するための真空排気手段と、を備え、
前記第1の反応ガス供給手段、前記第2の反応ガス供給手段及び前記レーザ照射部は、前記相対的な回転時に前記第1の反応ガスが供給される第1の処理領域、前記第2の反応ガスが供給される第2の処理領域及び前記レーザ光が照射される照射領域の順に基板が位置するように配置されていることを特徴とする。
【0008】
前記レーザ照射部は、前記基板上に反応生成物を生成させることに加えて、当該反応生成物の改質を行うためのものであることが好ましい。
前記レーザ照射部は、第1の反応ガスの成分と第2の反応ガスの成分とを反応させる代わりに、前記基板上の前記反応生成物を改質するためのものであっても良い。
前記第1の処理領域と前記第2の処理領域との雰囲気を分離するために、前記テーブルの相対的回転方向においてこれら処理領域の間に各々設けられ、分離ガス供給手段から分離ガスが供給される分離領域を備え、
前記照射領域は、前記第2の処理領域と、当該第2の処理領域の前記相対的回転方向下流側に位置する分離領域と、の間に配置されていることが好ましい。
【0009】
本発明の成膜方法は、
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜方法において、
真空容器内に設けられたテーブルの基板載置領域に基板を載置する工程と、
前記真空容器内を真空排気する工程と、
第1の反応ガス供給手段、第2の反応ガス供給手段及びレーザ照射部と前記テーブルとを相対的に回転させる工程と、
前記テーブル上の基板に前記第1の反応ガス供給手段から第1の反応ガスを供給する工程と、
前記テーブル上の基板に前記第2の反応ガス供給手段から第2の反応ガスを供給する工程と、
次いで、前記レーザ照射部から、前記基板における前記テーブルの中心側の端部と前記テーブルの外周側の端部との間に亘って帯状にレーザ光を照射することにより、前記基板上にて第1の反応ガスの成分と第2の反応ガスの成分とを反応させて反応生成物を生成させる工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
前記反応生成物を生成させる工程は、反応生成物の生成に加えて、当該反応生成物の改質を行う工程であることが好ましい。
前記反応生成物を生成させる工程は、第1の反応ガスの成分と第2の反応ガスの成分とを反応させて反応生成物を生成させる代わりに、前記基板上の前記反応生成物を改質する工程であっても良い。
前記基板を載置する工程の後に、前記第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と前記第2の反応ガスが供給される第2の処理領域との雰囲気を分離するために、前記テーブルの相対的回転方向においてこれら処理領域の間に各々設けられた分離領域に対して分離ガス供給手段から分離ガスを供給する工程を行うことが好ましい。
【0011】
本発明の記憶媒体は、
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、上記いずれか一つに記載の成膜方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、テーブル上の基板と反応ガス供給手段とを相対的に公転させ、少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給して成膜処理を行うにあたり、テーブル上の基板載置領域に対向するようにかつ前記基板載置領域上の基板における前記テーブルの中心側の端部と前記テーブルの外周側の端部との間に亘って帯状にレーザ光を照射して基板上に反応生成物を生成させるためのレーザ照射部を設けて、このレーザ照射部をテーブル上の基板に対して反応ガス供給手段と共に相対的に公転できるように構成している。そのため、基板の表面がレーザ照射部の下方領域において速やかに加熱されるので、反応生成物を生成させるための消費エネルギーを小さく抑えることができる。また、このレーザ照射部により、反応生成物の生成に代えて、あるいは反応生成物の生成と共に、基板上に生成した反応生成物の改質を行うことによって、緻密で且つ不純物が少ない薄膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る成膜装置の縦断面を示す図3のI−I’線縦断面図である。
【図2】上記の成膜装置の内部の概略構成を示す斜視図である。
【図3】上記の成膜装置の横断平面図である。
【図4】上記の成膜装置における処理領域及び分離領域を示す縦断面図である。
【図5】本発明のレーザ照射部の一例を示す成膜装置の縦断面図である。
【図6】上記の成膜装置において照射されるレーザ光の照射エネルギー密度とウエハの温度との関係の一例を示す特性図である。
【図7】上記のレーザ照射部によりレーザ光が照射される照射領域を模式的に示す平面図である。
【図8】分離ガスあるいはパージガスの流れる様子を示す説明図である。
【図9】本発明において反応生成物が生成する様子を模式的に示す模式図である。
【図10】第1の反応ガス及び第2の反応ガスが分離ガスにより分離されて排気される様子を示す説明図である。
【図11】本発明の他の実施の形態に係る成膜装置を示す縦断面図である。
【図12】分離領域に用いられる凸状部の寸法例を説明するための説明図である。
【図13】本発明の他の実施の形態に係る成膜装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態である成膜装置は、図1(図3のI−I’線に沿った断面図)〜図3に示すように平面形状が概ね円形である扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、当該真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。真空容器1は天板11が容器本体12から分離できるように構成されている。天板11は、内部の減圧状態により容器本体12の上端面に設けられたシール部材例えばOリング13を介して容器本体12側に引きつけられていて気密状態を維持しているが、天板11を容器本体12から分離するときには図示しない駆動機構により上方に持ち上げられる。
【0015】
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定され、このコア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は真空容器1の底面部14を貫通し、その下端が当該回転軸22を鉛直軸回りにこの例では時計方向に回転させる駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分が真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気と外部雰囲気との気密状態が維持されている。
【0016】
回転テーブル2の表面部には、図2及び図3に示すように回転方向(周方向)に沿って複数枚例えば5枚の基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)Wを載置するための円形状の凹部24が設けられている。なお図3には便宜上1個の凹部24だけにウエハWを描いてある。ここで図4は、回転テーブル2を同心円に沿って切断しかつ横に展開して示す展開図であり、凹部24は、図4(a)に示すようにその直径がウエハWの直径よりも僅かに例えば4mm大きく、またその深さはウエハWの厚みと同等の大きさに設定されている。従ってウエハWを凹部24に落とし込むと、ウエハWの表面と回転テーブル2の表面(ウエハWが載置されない領域)とが揃うことになる。ウエハWの表面と回転テーブル2の表面との間の高さの差が大きいとその段差部分で圧力変動が生じることから、ウエハWの表面と回転テーブル2の表面との高さを揃えることが、膜厚の面内均一性を揃える観点から好ましい。ウエハWの表面と回転テーブル2の表面との高さを揃えるとは、同じ高さであるかあるいは両面の差が5mm以内であることをいうが、加工精度などに応じてできるだけ両面の高さの差をゼロに近づけることが好ましい。凹部24の底面には、ウエハWの裏面を支えて当該ウエハWを昇降させるための例えば後述する3本の昇降ピンが貫通する貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0017】
凹部24はウエハWを位置決めして回転テーブル2の回転に伴う遠心力により飛び出さないようにするためのものであり、本発明の基板載置領域に相当する部位であるが、基板載置領域(ウエハ載置領域)は、凹部に限らず例えば回転テーブル2の表面にウエハWの周縁をガイドするガイド部材をウエハWの周方向に沿って複数並べた構成であってもよく、あるいは回転テーブル2側に静電チャックなどのチャック機構を持たせてウエハWを吸着する場合には、その吸着によりウエハWが載置される領域が基板載置領域となる。
【0018】
図2及び図3に示すように、回転テーブル2における凹部24の通過領域と各々対向する位置には、各々例えば石英からなる第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32と、2本の分離ガスノズル41、42と、が真空容器1の周方向(回転テーブル2の回転方向)に互いに間隔をおいてガス供給部として放射状に配置されている。この例では、後述の搬送口15から見て時計回り(回転テーブル2の回転方向)に分離ガスノズル41、第1の反応ガスノズル31、分離ガスノズル42及び第2の反応ガスノズル32がこの順番で配列されており、これらのノズル31、32、41、42は、例えば真空容器1の外周壁から回転テーブル2の回転中心に向かってウエハWに対向して水平に伸びるようにライン状に取り付けられている。各ノズル31、32、41、42の基端部であるガス導入ポート31a、32a、41a、42aは、真空容器1の外周壁を貫通している。これら反応ガスノズル31、32は、夫々第1の反応ガス供給手段、第2の反応ガス供給手段をなし、分離ガスノズル41、42は、分離ガス供給手段をなしている。この第2の反応ガスノズル32と、回転テーブル2の回転方向において第2の反応ガスノズル32の下流側の分離ガスノズル41(詳しくは分離ガスノズル41が設けられた後述の分離領域Dにおける回転テーブル2の回転方向上流縁)との間には、天板11の上方に設けられた後述のレーザ照射部201からウエハWに対してレーザ光が照射される照射領域P3が形成されているが、これらのレーザ照射部201や照射領域P3については後で詳述する。
【0019】
反応ガスノズル31、32及び分離ガスノズル41、42は図示の例では、真空容器1の周壁部から真空容器1内に導入されているが、後述する環状の突出部5から導入してもよい。この場合、突出部5の外周面と天板11の外表面とに開口するL字型の導管を設け、真空容器1内でL字型の導管の一方の開口に反応ガスノズル31(反応ガスノズル32、分離ガスノズル41、42)を接続し、真空容器1の外部でL字型の導管の他方の開口にガス導入ポート31a(32a、41a、42a)を接続する構成を採用することができる。
【0020】
第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32は、夫々図示しない流量調整バルブなどを介して、夫々第1の反応ガスであるBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン、SiH2(NH−C(CH3)3)2)ガスのガス供給源及び第2の反応ガスであるO3(オゾン)ガスのガス供給源(いずれも図示せず)に接続されており、分離ガスノズル41、42はいずれも流量調整バルブなどを介して分離ガスであるN2ガス(窒素ガス)のガス供給源(図示せず)に接続されている。
【0021】
第1の反応ガスノズル31、32には、下方側に反応ガスを吐出するための例えば口径が0.5mmのガス吐出孔33が真下を向いてノズルの長さ方向に亘って例えば10mmの間隔をおいて等間隔に配列されている。また分離ガスノズル41、42には、下方側に分離ガスを吐出するための例えば口径が0.5mmのガス吐出孔40が真下を向いて長さ方向に例えば10mm程度の間隔をおいて穿設されている。各反応ガスノズル31、32のガス吐出孔33とウエハWとの間の距離は例えば1〜4mm好ましくは2mmであり、分離ガスノズル41、42のガス吐出孔40とウエハWとの間の距離は例えば1〜4mm好ましくは3mmである。反応ガスノズル31、32の下方領域は、夫々BTBASガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1及びO3ガスをウエハWに吸着させるための第2の処理領域P2となる。
【0022】
分離ガスノズル41、42は、前記第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離するための分離領域Dを形成するためのものであり、この分離領域Dにおける真空容器1の天板11には図2〜図4に示すように、回転テーブル2の回転中心を中心としかつ真空容器1の内周壁の近傍に沿って描かれる円を周方向に分割してなる、平面形状が扇型で下方に突出した凸状部4が設けられている。分離ガスノズル41、42は、この凸状部4における前記円の周方向中央にて当該円の半径方向に伸びるように形成された溝部43内に収められている。即ち分離ガスノズル41、42の中心軸から凸状部4である扇型の両縁(回転方向上流側の縁及び下流側の縁)までの距離は同じ長さに設定されている。
【0023】
なお、溝部43は、本実施形態では凸状部4を二等分するように形成されているが、他の実施形態においては、例えば溝部43から見て凸状部4における回転テーブル2の回転方向上流側が前記回転方向下流側よりも広くなるように溝部43を形成してもよい。
【0024】
従って分離ガスノズル41、42における前記周方向両側には、前記凸状部4の下面である例えば平坦な低い天井面44(第1の天井面)が存在し、この天井面44の前記周方向両側には、当該天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)が存在することになる。この凸状部4の役割は、回転テーブル2との間への第1の反応ガス及び第2の反応ガスの侵入を阻止してこれら反応ガスの混合を阻止するための狭隘な空間である分離空間を形成することにある。
【0025】
即ち、分離ガスノズル41を例にとると、回転テーブル2の回転方向上流側からO3ガスが侵入することを阻止し、また回転方向下流側からBTBASガスが侵入することを阻止する。「ガスの侵入を阻止する」とは、分離ガスノズル41から吐出した分離ガスであるN2ガスが第1の天井面44と回転テーブル2の表面との間に拡散して、この例では当該第1の天井面44に隣接する第2の天井面45の下方側空間に吹き出し、これにより当該隣接空間からのガスが侵入できなくなることを意味する。そして「ガスが侵入できなくなる」とは、隣接空間から凸状部4の下方側空間に全く入り込むことができない場合のみを意味するのではなく、多少侵入はするが、両側から夫々侵入したO3ガス及びBTBASガスが凸状部4内で交じり合わない状態が確保される場合も意味し、このような作用が得られる限り、分離領域Dの役割である第1の処理領域P1の雰囲気と第2の処理領域P2の雰囲気との分離作用が発揮できる。従って狭隘な空間における狭隘の程度は、狭隘な空間(凸状部4の下方空間)と当該空間に隣接した領域(この例では第2の天井面45の下方空間)との圧力差が「ガスが侵入できなくなる」作用を確保できる程度の大きさになるように設定され、その具体的な寸法は凸状部4の面積などにより異なるといえる。またウエハWに吸着したガスについては当然に分離領域D内を通過することができ、ガスの侵入阻止は、気相中のガスを意味している。
【0026】
続いて、上記のレーザ照射部201について説明する。このレーザ照射部201は、回転テーブル2上のウエハWに対してレーザ光を照射することにより、ウエハWの表面を瞬時に加熱するためのものであり、図2及び図3に示すように、第2の反応ガスノズル32と、回転テーブル2の回転方向において第2の反応ガスノズル32の下流側の分離領域Dと、の間の天板11上において回転テーブル2と平行になるように設置されている。また、レーザ照射部201は、図5に示すように、真空容器1の外縁側から真空容器1の中心部(回転テーブル2の回転中心)側に向かって水平方向(横方向)に上記のレーザ光を照射する光源202と、この光源202から照射されるレーザ光の光路をウエハWの直径方向に亘って、即ち凹部24における回転テーブル2の中心側の端部と外周側の端部とに亘って帯状(ライン状)に拡大すると共に、当該レーザ光の光路を下方側に向けて屈曲させるための光学部材203と、を備えている。尚、既述の図2では、上記のレーザ照射部201と第2の反応ガスノズル32及び分離領域Dとの位置関係を示すために、天板11を取り外してレーザ照射部201を描画しており、また図1及び図2では、レーザ照射部201を簡略化して描画している。
【0027】
光源202は、既述の図3に示した電源204から供給される例えば17J/cm2〜100J/cm2の照射エネルギー密度により、紫外領域から赤外領域の波長のレーザ光この例では例えば半導体(波長:808nm)のレーザ光をウエハWに照射して、ウエハWの表面を瞬時に例えば200℃〜1200℃に加熱できるように構成されている。
この光源202から照射されるレーザ光の照射エネルギー密度について説明すると、レーザ照射エネルギー密度[J/cm2]は、電力密度[W/cm2]と照射時間[sec]との積で表される。電力密度は、レーザ光の電力をP[W]、レーザ光の照射エリア(後述の照射領域P3)の面積をS[cm2]とすると、P/Sとなる。また、照射時間は、照射エリアの弧の長さと回転テーブル2の周速度(回転テーブル2の回転数に比例する値)とで表され、当該弧の長さをl[cm]、回転テーブル2の半径をr(cm)、回転テーブル2の回転数をN[rpm]とすると、60l/(2πrN)となる。従って、上記の照射エネルギー密度は、実際にはレシピや装置の寸法を考慮に入れて設定されることになる。また、この照射エネルギー密度は、図6に示すように、例えばウエハW表面の測定結果により、ウエハWの温度に対してほぼリニアな比例関係となっていると予測されるため、既述の範囲に設定されている。
【0028】
上記の光学部材203は、例えばかまぼこ状に一面側が凸に膨らむ形状あるいは一面側が長さ方向に亘って短辺方向において円弧状に窪んだ形状のシリンドリカルレンズや、レーザ光の光路を平行に(コリメント)するレンズなどが組み合わされており、図7に示すように、凹部24における回転テーブル2の回転中心側の内縁と回転テーブル2の外周側の外縁との間に亘って帯状(矩形状)にレーザ光の光路(照射領域P3)を引き延ばすことができるように構成されている。この時、回転テーブル2の内周側から外周側に向かう程回転テーブル2の周速度が速くなるので、ウエハWに対するレーザ光の照射時間が回転テーブル2の内周側から外周側に亘って揃うように、照射領域P3の幅寸法tは、回転テーブル2の内周側から外周側に向かう程拡径して例えば台形状に形成されている。具体的には、凹部24における回転テーブル2の内周側の幅寸法tは100mm、回転テーブル2の外周側の幅寸法tは300mmに設定されている。尚、図7では、上記の照射領域P3について斜線を付してある。また、この図7においては、回転テーブル2以外の部材については描画を省略している。
【0029】
レーザ照射部201の下方における天板11には、図3〜図5に示すように、レーザ照射部201から照射されるレーザ光が回転テーブル2の内周側から外周側に亘って真空容器1内に到達するように、例えば上端側が下端側よりも大きく開口する矩形の開口部205が形成されている。また、天板11には、この開口部205を塞ぐように、例えば石英からなる透明窓206が気密に設けられている。この図5中207は、透明窓206の周囲における下端面と天板11との間に設けられたシール部材である。尚、図1及び図4等では模式的に示しているが、これらの開口部205及び透明窓206は、上記の幅寸法tのレーザ光が回転テーブル2の中心側から外周側に亘って天板11を介して当該回転テーブル2上に到達するように、回転テーブル2の回転方向において寸法tと同程度の寸法となるように形成されている。
【0030】
この例では直径300mmのウエハWを被処理基板としており、この場合既述の凸状部4は、回転テーブル2の回転中心から140mm外周側に離れた部位(後述の突出部5との境界部位)においては、周方向の長さ(回転テーブル2と同心円の円弧の長さ)が例えば146mmであり、ウエハWの載置領域(凹部24)の最も外側部位においては、周方向の長さが例えば502mmである。なお、当該外側部位において分離ガスノズル41(42)の両脇から夫々左右に位置する凸状部4の周方向の長さでみれば、この長さは246mmである。
【0031】
また図4(a)に示すように凸状部4の下面即ち天井面44における回転テーブル2の表面までの高さhは、例えば0.5mmから10mmであってもよく、約4mmであると好適である。この場合、回転テーブル2の回転数は例えば1rpm〜500rpmに設定されている。そのため分離領域Dの分離機能を確保するためには、回転テーブル2の回転数の使用範囲などに応じて、凸状部4の大きさや凸状部4の下面(第1の天井面44)と回転テーブル2の表面との高さhを例えば実験などに基づいて設定することになる。なお分離ガスとしては、窒素(N2)ガスに限られずアルゴン(Ar)ガスなどの不活性ガスなどを用いることができるが、このようなガスに限らず水素(H2)ガスなどであってもよく、成膜処理に影響を与えないガスであれば、ガスの種類に関しては特に限定されるものではない。
【0032】
一方、天板11の下面には、図4及び図8に示すように回転テーブル2におけるコア部21よりも外周側の部位と対向するようにかつ当該コア部21の外周に沿って突出部5が設けられている。この突出部5は凸状部4における前記回転中心側の部位と連続して形成されており、その下面が凸状部4の下面(天井面44)と同じ高さに形成されている。図2及び図3は、前記天井面45よりも低くかつ分離ガスノズル41、42よりも高い位置にて天板11を水平に切断して示している。なお突出部5と凸状部4とは、必ずしも一体であることに限られるものではなく、別体であってもよい。
【0033】
凸状部4及び分離ガスノズル41(42)の組み合わせ構造の作り方については、凸状部4をなす1枚の扇型プレートの中央に溝部43を形成してこの溝部43内に分離ガスノズル41(42)を配置する構造に限らず、2枚の扇型プレートを用い、分離ガスノズル41(42)の両側位置にて天板本体の下面にボルト締めなどにより固定する構成などであってもよい。
【0034】
真空容器1の天板11の下面、つまり回転テーブル2のウエハ載置領域(凹部24)から見た天井面は既述のように第1の天井面44とこの天井面44よりも高い第2の天井面45とが周方向に存在するが、図1では、高い天井面45が設けられている領域についての縦断面を示している。扇型の凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)は図2に示されているように回転テーブル2の外端面に対向するようにL字型に屈曲して屈曲部46を形成している。扇型の凸状部4は天板11側に設けられていて、容器本体12から取り外せるようになっていることから、前記屈曲部46の外周面と容器本体12との間には僅かに隙間がある。この屈曲部46も凸状部4と同様に両側から反応ガスが侵入することを防止して、両反応ガスの混合を防止する目的で設けられており、屈曲部46の内周面と回転テーブル2の外端面との隙間、及び屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間は、例えば回転テーブル2の表面に対する天井面44の高さhと同様の寸法に設定されている。この例においては、回転テーブル2の表面側領域からは、屈曲部46の内周面が真空容器1の内周壁を構成していると見ることができる。
【0035】
容器本体12の内周壁は、分離領域Dにおいては前記屈曲部46の外周面と接近して垂直面に形成されているが、分離領域D以外の部位においては、図1に示すように例えば回転テーブル2の外端面と対向する部位から底面部14に亘って縦断面形状が矩形に切り欠かれて外方側に窪んだ構造になっている。この窪んだ部分における既述の第1の処理領域P1及び第2の処理領域P2に連通する領域を夫々第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2と呼ぶことにすると、これらの第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2の底部には図1及び図3に示すように例えば夫々排気口61、62が形成されている。図1に示すようにこれら排気口61、62は各々排気管63を介して真空排気手段である例えば共通の真空ポンプ64に接続されている。なお図1中、65は圧力調整手段であり、各々の排気管63毎に設けられている。
【0036】
排気口61、62は、分離領域Dの分離作用が確実に働くように、図3に示すように平面で見たときに前記分離領域Dの前記回転方向両側に設けられている。詳しく言えば、回転テーブル2の回転中心から見て第1の処理領域P1とこの第1の処理領域P1に対して例えば回転方向下流側に隣接する分離領域Dとの間に第1の排気口61が形成され、回転テーブル2の回転中心から見て第2の処理領域P2とこの第2の処理領域P2に対して例えば回転方向下流側に隣接する分離領域Dとの間に第2の排気口62が形成されている。この排気口61はBTBASガスの排気を専用に行うように、また排気口62はO3ガスの排気を専用に行うようにその位置が設定されている。この例では一方の排気口61は、第1の反応ガスノズル31とこの反応ガスノズル31に対して前記回転方向下流側に隣接する分離領域Dの第1の反応ガスノズル31側の縁の延長線との間に設けられ、また他方の排気口62は、第2の反応ガスノズル32とこの反応ガスノズル32に対して前記回転方向下流側に隣接する分離領域Dの第2の反応ガスノズル32側の縁の延長線との間に設けられている。即ち、第1の排気口61は、図3中に一点鎖線で示した回転テーブル2の中心と第1の処理領域P1とを通る直線L1と、回転テーブル2の中心と前記第1の処理領域P1の下流側に隣接する分離領域Dの上流側の縁を通る直線L2との間に設けられ、第2の排気口62は、この図3に二点鎖線で示した回転テーブル2の中心と第2の処理領域P2とを通る直線L3と、回転テーブル2の中心と前記第2の処理領域P2の下流側に隣接する分離領域Dの上流側の縁を通る直線L4との間に位置している。
【0037】
排気口の設置数は2個に限られるものではなく、例えば3個以上であってもよい。また、この例では排気口61、62は回転テーブル2よりも低い位置に設けることで真空容器1の内周壁と回転テーブル2の周縁との間の隙間から排気するようにしているが、真空容器1の底面部に設けることに限られず、真空容器1の側壁に設けてもよい。更に、排気口61、62は、真空容器1の側壁に設ける場合には、回転テーブル2よりも高い位置に設けるようにしてもよい。このように排気口61、62を設けることにより回転テーブル2上のガスは、回転テーブル2の外側に向けて流れるため、回転テーブル2に対向する天井面から排気する場合に比べてパーティクルの巻上げが抑えられるという観点において有利である。
【0038】
前記回転テーブル2の周縁付近の下方側には、回転テーブル2の上方空間から排気領域Eに至るまでの雰囲気と回転テーブル2の下方領域の雰囲気とを区画するために、回転テーブル2の周縁部に沿って周方向に亘ってカバー部材71が設けられている。このカバー部材71は上縁が外側に屈曲されてフランジ形状に形成され、その屈曲面と回転テーブル2の下面との間の隙間を小さくして、カバー部材71内に外方からガスが侵入することを抑えている。
【0039】
回転テーブル2の下方領域における回転中心寄りの部位における底面部14は、回転テーブル2の下面の中心部付近、コア部21に接近してその間は狭い空間になっており、また当該底面部14を貫通する回転軸22の貫通穴についてもその内周面と回転軸22との隙間が狭くなっていて、これら狭い空間は前記ケース体20内に連通している。そして前記ケース体20にはパージガスであるN2ガスを前記狭い空間内に供給してパージするためのパージガス供給管72が設けられている。また真空容器1の底面部14には、回転テーブル2の下方側位置にて周方向の複数部位に、この回転テーブル2の下方領域をパージするためのパージガス供給管73が設けられている。
【0040】
このようにパージガス供給管72、73を設けることにより図8にパージガスの流れを矢印で示すように、ケース体20内から回転テーブル2の下方領域に至るまでの空間がN2ガスでパージされ、このパージガスが回転テーブル2とカバー部材71との間の隙間から排気領域Eを介して排気口61、62に排気される。これによって既述の第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との一方から回転テーブル2の下方を介して他方側にBTBASガスあるいはO3ガスが回り込むことが防止されるため、このパージガスは分離ガスの役割も果たしている。
【0041】
また真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されていて、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるN2ガスを供給するように構成されている。この空間52に供給された分離ガスは、図8に示すように前記突出部5と回転テーブル2との狭い隙間50を介して回転テーブル2のウエハ載置領域側の表面に沿って周縁に向けて吐出されることになる。この突出部5で囲まれる空間には分離ガスが満たされているので、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間で回転テーブル2の中心部を介して反応ガス(BTBASガス及びO3ガス)が混合することを防止している。即ち、この成膜装置は、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との雰囲気を分離するために回転テーブル2の回転中心部と天板11とにより区画され、分離ガスがパージされると共に当該回転テーブル2の表面に分離ガスを吐出する吐出口が前記回転方向に沿って形成された中心部領域Cを備えているということができる。なおここでいう吐出口は前記突出部5と回転テーブル2との狭い隙間50に相当する。
【0042】
更に真空容器1の側壁には図2、図3に示すように外部の搬送アーム10と回転テーブル2との間で基板であるウエハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されており、この搬送口15は図示しないゲートバルブにより開閉されるようになっている。また回転テーブル2におけるウエハ載置領域である凹部24はこの搬送口15に臨む位置にて搬送アーム10との間でウエハWの受け渡しが行われることから、回転テーブル2の下方側において当該受け渡し位置に対応する部位に、凹部24を貫通してウエハWを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン及びその昇降機構(いずれも図示せず)が設けられている。
【0043】
また、この成膜装置には、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100が設けられており、この制御部100のメモリ内には後述の成膜処理及び改質処理を行うためのプログラムが格納されている。このプログラムは後述の装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体から制御部100内にインストールされる。
【0044】
次に、上述の実施の形態の作用について説明する。先ず、図示しないゲートバルブを開き、外部から搬送アーム10により搬送口15を介してウエハWを回転テーブル2の凹部24内に受け渡す。この受け渡しは、凹部24が搬送口15に臨む位置に停止したときに凹部24の底面の貫通孔を介して真空容器の底部側から不図示の昇降ピンが昇降することにより行われる。このようなウエハWの受け渡しを回転テーブル2を間欠的に回転させて行い、回転テーブル2の5つの凹部24内に夫々ウエハWを載置する。続いてゲートバルブを閉じ、真空ポンプ64により真空容器1内を引き切りの状態にした後、圧力調整手段65により真空容器1内を予め設定した処理圧力に調整すると共に、回転テーブル2を時計回りに回転させる。そして、反応ガスノズル31、32から夫々BTBASガス及びO3ガスを吐出すると共に、電源204からレーザ照射部201に対して例えば67J/cm2のエネルギー密度で、ウエハWの表面が瞬時に例えば800℃となるようにレーザ照射部201から回転テーブル2に向けてレーザ光を照射する。また、分離ガスノズル41、42から分離ガスであるN2ガスを所定の流量で吐出し、分離カス供給管51及びパージガス供給管72、72からもN2ガスを所定の流量で吐出する。
【0045】
回転テーブル2の回転によりウエハWが第1の処理領域P1に到達すると、ウエハWの表面にはBTBASガスが吸着する。次いで、第2の処理領域P2では、ウエハWの表面にO3ガスが接触する。このO3ガスは、排気口62からの排気により、あるいは回転テーブル2の回転に連れられて、ウエハWと共に下流側に通流していく。そして、ウエハWとO3ガスとが照射領域P3に到達すると、ウエハWの表面が瞬時に例えば800℃に加熱されるので、図9に示すように、O3ガスとウエハW上に吸着したBTBASガスとが反応して、つまりBTBASガスが酸化されてシリコン酸化膜の分子層が1層あるいは複数層形成される。
【0046】
この時、レーザ光による加熱方法に代えて、例えばヒーターなどにより従来のALD法におけるウエハWの加熱温度例えば350℃程度にウエハWを加熱した場合には、例えばBTBASの残留基などが残り、膜中に例えば水分(OH基)や有機物などの不純物が含まれてしまう場合がある。しかし、レーザ光を用いてウエハWの表面を瞬時に上記のように高い温度に加熱することによって、シリコン酸化膜の生成と共に、当該シリコン酸化膜から上記の不純物が放出されたり、シリコン酸化膜内の元素が再配列されてシリコン酸化膜の緻密化(高密度化)が図られたりすることになる。いわば、レーザ光により、成膜処理と共にシリコン酸化膜の改質処理が行われていることになる。従って、このシリコン酸化膜は、従来のALD法によって成膜した場合よりも、緻密化してウェットエッチングに対する耐性が向上することになる。尚、シリコン酸化膜と共に生成した副生成物は、N2ガスやO3ガスと共に排気口62に向かって排気されていく。
こうしてウエハWが帯状に形成された照射領域P3を通過することにより、面内に亘ってシリコン酸化膜の成膜処理と改質処理とが行われることになる。そして、回転テーブル2の回転によりBTBASガスの吸着と、BTBASガスの酸化と、成膜処理及び改質処理と、が行われてシリコン酸化膜が順次積層されていき、ウエハWの面内に亘って、更には膜厚方向において、緻密で且つウェットエッチングに対する耐性が高い薄膜が形成されることになる。
【0047】
この時、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間においてN2ガスを供給し、また中心部領域Cにおいても分離ガスであるN2ガスを供給しているので、図10に示すようにBTBASガスとO3ガスとが混合しないように各ガスが排気されることとなる。また、分離領域Dにおいては、屈曲部46と回転テーブル2の外端面との間の隙間が既述のように狭くなっているので、BTBASガスとO3ガスとは、回転テーブル2の外側を介しても混合しない。従って、第1の処理領域P1の雰囲気と第2の処理領域P2の雰囲気とが完全に分離され、BTBASガスは排気口61に、またO3ガスは排気口62に夫々排気される。この結果、BTBASガスとO3ガスとが雰囲気中においてもウエハW上においても混じり合うことがない。
【0048】
また、この例では反応ガスノズル31、32が配置されている第2の天井面45の下方側の空間に沿った容器本体12の内周壁においては、既述のように内周壁が切り欠かれて広くなっており、この広い空間の下方に排気口61、62が位置しているので、第1の天井面44の下方側の狭隘な空間及び前記中心部領域Cの各圧力よりも第2の天井面45の下方側の空間の圧力の方が低くなる。
なお、回転テーブル2の下方側をN2ガスによりパージしているため、排気領域Eに流入したガスが回転テーブル2の下方側を潜り抜けて、例えばBTBASガスがO3ガスの供給領域に流れ込むといったおそれは全くない。
【0049】
ここで処理パラメータの一例について記載しておくと、回転テーブル2の回転数は、300mm径のウエハWを被処理基板とする場合例えば1rpm〜500rpm、プロセス圧力は例えば1067Pa(8Torr)、BTBASガス及びO3ガスの流量は例えば夫々100sccm及び10000sccm、分離ガスノズル41、42からのN2ガスの流量は例えば20000sccm、真空容器1の中心部の分離ガス供給管51からのN2ガスの流量は例えば5000sccmである。また1枚のウエハWに対する反応ガス供給のサイクル数、即ちウエハWが処理領域P1、P2及び照射領域P3の各々を通過する回数は目標膜厚に応じて変わるが、例えば1000回である。
【0050】
上述の実施の形態によれば、回転テーブル2を回転させてウエハW上にBTBASガスを吸着させ、次いでウエハWの表面にO3ガスを供給してウエハWの表面に吸着したBTBASガスを酸化させてシリコン酸化膜を成膜するにあたって、ウエハWを加熱してシリコン酸化膜(反応生成物)を生成させるための加熱手段として、回転テーブル2の内周側から外周側に亘って帯状にレーザ光を照射するレーザ照射部201を用いている。そのため、ウエハWの表面を瞬時に加熱することができるので、例えばヒーターなどにより回転テーブル2上のウエハW全体を加熱する場合に比べて、反応生成物を生成させるための消費エネルギーを小さく抑えることができる。そのため、加熱手段(ヒーター)からの輻射熱を抑えることができるので、真空容器1内や装置全体を冷却する冷却機構を省略あるいは簡略化することができる。この時、レーザ光の光路(照射領域P3)が帯状に形成されているが、回転テーブル2の回転によりウエハWが当該領域P3を通過してウエハWの全面に亘ってレーザ光を照射することができるので、例えばウエハWの表面全体に一度に面状のレーザ光を照射する場合よりも消費エネルギーを抑えることができる。また、レーザ光によりウエハWの表層(表面)が瞬時に高温に加熱されるので、成膜処理と共に改質処理が行われるため、緻密で不純物の少なく、更にはウェットエッチングに対する耐性が大きい薄膜を得ることができる。また、レーザ照射部201によりウエハWの表層を瞬時に加熱していることから、例えばアニール処理によりウエハW全体を加熱して改質処理を行う場合に比べて、ウエハWに対する熱的なダメージを小さく抑えることができる。
【0051】
また、レーザ光により成膜処理と共に改質処理を行っていることから、真空容器1の内部において成膜サイクルを行う度に改質処理を行っていることになり、回転テーブル2の周方向においてウエハWが各処理領域P1、P2を通過する経路の途中において成膜処理に干渉しないように改質処理を行っているので、例えば薄膜の成膜が完了した後で改質処理を行うよりも短時間で改質処理を行うことができる。
更に、例えばウエハWの表面にパターンが形成されている場合には、ウエハWを加熱するための加熱手段としてレーザ光を用いることにより、パターン内部までレーザ光を到達させて面内に亘って均質な成膜処理及び改質処理を行うことができる。
【0052】
更にまた、本実施の形態に係わる成膜装置は、回転テーブル2の回転方向に複数のウエハWを配置し、回転テーブル2を回転させて第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを順番に通過させていわゆるALD(あるいはMLD)を行うようにしているため、高いスループットで成膜処理を行うことができる。そして前記回転方向において第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間に低い天井面を備えた分離領域Dを設けると共に回転テーブル2の回転中心部と真空容器1とにより区画した中心部領域Cから回転テーブル2の周縁に向けて分離ガスを吐出し、前記分離領域Dの両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域Cから吐出する分離ガスと共に前記反応ガスが回転テーブル2の周縁と真空容器の内周壁との隙間を介して排気されるため、両反応ガスの混合を防止することができ、この結果良好な成膜処理を行うことができるし、回転テーブル2上において反応生成物が生じることが全くないか極力抑えられ、パーティクルの発生が抑えられる。なお本発明は、回転テーブル2に1個のウエハWを載置する場合にも適用できる。
【0053】
上記の反応生成物を成膜するための処理ガスとしては、第1の反応ガスとして、DCS[ジクロロシラン]、HCD[ヘキサクロロジシラン]、TMA[トリメチルアルミニウム]、3DMAS[トリスジメチルアミノシラン]、TEMAZ[テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム]、TEMHF[テトラキスエチルメチルアミノハフニウム]、Sr(THD)2[ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト]、Ti(MPD)(THD)[チタニウムメチルペンタンジオナトビステトラメチルヘプタンジオナト]、モノアミノシランなどを採用し、これらの原料ガスを酸化する酸化ガスである第2の反応ガスとして水蒸気などを採用しても良い。また、例えばSiを含む第1の反応ガス(例えばジクロロシランガス)とNを含む第2の反応ガス(例えばアンモニアガス)とを用いてSiN膜を成膜するプロセスに本発明を適用しても良い。
【0054】
上記の実施の形態では、1つのレーザ照射部201により成膜処理と改質処理とを行うようにしたが、例えばこのレーザ照射部201を回転テーブル2の回転方向に沿って複数例えば2つ並べて配置しても良い。この場合には、夫々のレーザ照射部201の光源202(レーザ光の照射波長)を変えても良い。具体的には、複数のレーザ照射部201のうち、例えば回転テーブル2の回転方向上流側(搬送口15側)における一のレーザ照射部201については成膜処理だけを行うために、赤外領域例えば半導体レーザーのレーザ光を照射できるように構成し、当該一のレーザ照射部201の下流側(第1の反応ガスノズル31側)における他のレーザ照射部201については改質処理だけを行うために、あるいは成膜処理と共に改質処理を行うために、紫外領域例えばエキシマレーザーのレーザ光を照射できるように構成しても良い。即ち、300℃〜500℃で成膜したSiO2膜(シリコン酸化膜)は、OH基を多く含んでいる場合があり、このOH基は膜質劣化の一つの要因である。このO−H結合の結合解離エネルギーは424〜493kJ/mol(4.4〜5.1eV)であり、その結合解離エネルギーは240〜280nmの紫外光のエネルギーに相当する。従って、この紫外領域のレーザ光をウエハWに照射することにより、膜中のOH基を低減あるいは除去できる。この場合には、上記一(赤外領域)のレーザ照射部201に対して既述の実施の形態におけるエネルギー密度よりも小さいエネルギー密度例えば30J/cm2で成膜処理を行い、他(紫外領域)のレーザ照射部201では波長が例えば248nmのKrFレーザ光を照射して改質処理を行う。つまり、複数のレーザ照射部201において、レーザ光の光源202とレーザ照射部201のエネルギー密度とを夫々調整することにより、成膜処理と改質処理とが個別に行われることになる。この場合においても、上記の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0055】
更に、成膜時の酸素源として供給するO3ガスは、その熱分解によって活性酸素(O[3P])を発生させ、この活性酸素がBTBASガスの酸化種となっている。ここで、O3ガスの供給と同時に紫外レーザー例えば波長が248nmのKrFレーザ光を照射することで、O[3P]と比べてはるかに反応速度が高くなる活性酸素(O[1D])を発生させることができる。そのため、紫外レーザ光を用いることにより、SiO2膜の生成(BTBASの酸化)を速やかに行うことができる。従って、よりエネルギーの高い短波長のレーザ光例えばXe2エキシマレーザー(波長:172nm)を照射することにより、O3ガスではなくO2ガスから活性酸素(O[3P]、O[1D])を直接発生させることができるので、O3ガスの供給装置(オゾナイザー)が不要になり、装置コストを低減することができる。この時、紫外領域のレーザ光に代えて、エキシマランプを設けても良い。
【0056】
また、上記の実施の形態では、レーザ照射部201により成膜処理と改質処理とを行うようにしたが、例えばレーザ照射部201に上記のように赤外領域の光源202を設けると共に、回転テーブル2の回転方向においてレーザ照射部201の下流側の分離領域Dとの間にプラズマユニットを設けて、照射領域P3において例えば38J/cm2のエネルギー密度でウエハWを例えば450℃に瞬時に加熱して成膜処理だけを行い、次いでプラズマユニットにおいて改質処理を行っても良い。また、薄膜を成膜した後に別途外部のアニール装置においてアニール処理(改質処理)を行う場合には、同様にレーザ照射部201において成膜処理だけを行うようにしても良い。このような場合においても、回転テーブル2上の5枚のウエハWを加熱するヒーターを設ける場合に比べて、装置の消費エネルギーを小さく抑えることができる。
【0057】
更に、回転テーブル2上のウエハW全体を加熱するヒーターを設けて、このヒーターにより成膜処理を行うようにしても良い。そのような例について図11を参照して説明すると、回転テーブル2と真空容器1の底面部14との間の空間には、加熱手段であるヒータユニット7が周方向に亘って設けられており、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハWをプロセスレシピで決められた温度、例えば450℃に加熱するように構成されている。また、この例では、光源202(レーザ光の波長)及びレーザ照射部201のエネルギー密度としては、成膜処理と改質処理とを行う場合と夫々同様に設定されることになる。
【0058】
この場合には、第2の処理領域P2にてO3ガスによりウエハWの表面に吸着したBTBASガスが酸化されてシリコン酸化膜が生成する。そして、このシリコン酸化膜中に不純物が含まれている場合には、照射領域P3において膜中から不純物が排出されて改質処理が行われることになる。この場合においても、ヒータユニット7だけを用いて成膜処理と改質処理とを行う場合よりも、消費エネルギーを抑えることができる。つまり、レーザ照射部201により成膜処理と改質処理との少なくとも一方を行うようにすれば良い。また、ヒータユニット7及びレーザ照射部201により成膜処理だけを行うようにしても良い。
【0059】
また、上記の例では、レーザ照射部201として1つの光源202から照射されるレーザ光を光学部材203を用いて帯状に台形状に延伸させたが、回転テーブル2の中心側から外周側に向かって広がる扇形状となるように照射領域P3を形成しても良いし、ライン状または面状(例えばウエハWと同径の円)に形成しても良い。また、複数の光源202と光学部材203とを回転テーブル2の内周側から外周側に並べても良いし、更には1つの光源202を用いると共に、照射領域P3の下方位置にてウエハWを停止させ、図示しないミラーを用いてレーザ光を回転テーブル2の内周側から外周側に亘って走査し、次いで僅かにウエハWを移動させて再度レーザ光を走査して、順次ウエハWの移動とレーザ光の走査とを繰り返して面内に亘ってレーザ光を照射するようにしても良い。更に、波長の異なる複数の光源202を配置しておき、例えば成膜する膜種などに応じてレーザ光の波長(励起材料)を変えるようにしても良い。このレーザ照射部201の設置位置としては、既述のように第2の反応ガスノズル32と、回転テーブル2の回転方向において第2の反応ガスノズル32の下流側の分離領域Dの回転方向上流側の縁と、の間であれば良いが、例えば第2の反応ガスノズル32の上方位置に配置しても良い。
【0060】
そして、前記分離ガス供給ノズル41(42)の両側に各々位置する狭隘な空間を形成する前記第1の天井面44は、図12(a)、図12(b)に前記分離ガス供給ノズル41を代表して示すように例えば300mm径のウエハWを被処理基板とする場合、ウエハWの中心WOが通過する部位において回転テーブル2の回転方向に沿った幅寸法Lが50mm以上であることが好ましい。凸状部4の両側から当該凸状部4の下方(狭隘な空間)に反応ガスが侵入することを有効に阻止するためには、前記幅寸法Lが短い場合にはそれに応じて第1の天井面44と回転テーブル2との間の距離も小さくする必要がある。更に第1の天井面44と回転テーブル2との間の距離をある寸法に設定したとすると、回転テーブル2の回転中心から離れる程、回転テーブル2の速度が速くなってくるので、反応ガスの侵入阻止効果を得るために要求される幅寸法Lは回転中心から離れる程長くなってくる。このような観点から考察すると、ウエハWの中心WOが通過する部位における前記幅寸法Lが50mmよりも小さいと、第1の天井面44と回転テーブル2との距離をかなり小さくする必要があるため、回転テーブル2を回転したときに回転テーブル2あるいはウエハWと天井面44との衝突を防止するために、回転テーブル2の振れを極力抑える工夫が要求される。更にまた回転テーブル2の回転数が高い程、凸状部4の上流側から当該凸状部4の下方側に反応ガスが侵入しやすくなるので、前記幅寸法Lを50mmよりも小さくすると、回転テーブル2の回転数を低くしなければならず、スループットの点で得策ではない。従って幅寸法Lが50mm以上であることが好ましいが、50mm以下であっても本発明の効果が得られないというものではない。即ち、前記幅寸法LがウエハWの直径の1/10〜1/1であることが好ましく、約1/6以上であることがより好ましい。なお、図12(a)においては図示の便宜上、凹部24の記載を省略してある。
【0061】
また本発明は、分離ガスノズル41(42)の両側に狭隘な空間を形成するために低い天井面(第1の天井面)44を設けることが必要であるが、反応ガスノズル31、32の両側にも同様の低い天井面を設け、これら天井面を連続させる構成、つまり分離ガスノズル41(42)、反応ガスノズル31(32)が設けられる箇所以外は、回転テーブル2に対向する領域全面に凸状部4を設ける構成としても同様の効果が得られる。この構成は別の見方をすれば、分離ガスノズル41(42)の両側の第1の天井面44が反応ガスノズル31、32にまで広がった例である。この場合には、分離ガスノズル41(42)の両側に分離ガスが拡散し、反応ガスノズル31、32の両側に反応ガスが拡散し、両ガスが凸状部4の下方側(狭隘な空間)にて合流するが、これらのガスは排気口61(62)から排気されることになる。
【0062】
以上の実施の形態では、回転テーブル2の回転軸22が真空容器1の中心部に位置し、回転テーブル2の中心部と真空容器1の上面部との間の空間に分離ガスをパージしているが、本発明は図13に示すように構成してもよい。図13の成膜装置においては、真空容器1の中央領域の底面部14が下方側に突出していて駆動部の収容空間80を形成していると共に、真空容器1の中央領域の上面に凹部80aが形成され、真空容器1の中心部において収容空間80の底部と真空容器1の前記凹部80aの上面との間に支柱81を介在させて、第1の反応ガスノズル31からのBTBASガスと第2の反応ガスノズル32からのO3ガスとが前記中心部を介して混ざり合うことを防止している。
【0063】
回転テーブル2を回転させる機構については、支柱81を囲むように回転スリーブ82を設けてこの回転スリーブ82に沿ってリング状の回転テーブル2を設けている。そして前記収容空間80にモーター83により駆動される駆動ギヤ部84を設け、この駆動ギヤ部84により、回転スリーブ82の下部の外周に形成されたギヤ部85を介して当該回転スリーブ82を回転させるようにしている。86、87及び88は軸受け部である。また前記収容空間80の底部にパージガス供給管74を接続すると共に、前記凹部80aの側面と回転スリーブ82の上端部との間の空間にパージガスを供給するためのパージガス供給管75を真空容器1の上部に接続している。図13では、前記凹部80aの側面と回転スリーブ82の上端部との間の空間にパージガスを供給するための開口部は左右2箇所に記載してあるが、回転スリーブ82の近傍領域を介してBTBASガスとO3ガスとが混じり合わないようにするために、開口部(パージガス供給口)の配列数を設計することが好ましい。
【0064】
図13の実施の形態では、回転テーブル2側から見ると、前記凹部80aの側面と回転スリーブ82の上端部との間の空間は分離ガス吐出孔に相当し、そしてこの分離ガス吐出孔、回転スリーブ82及び支柱81により、真空容器1の中心部に位置する中心部領域が構成される。
【0065】
更にまた、実施の形態に係わる各種の反応ガスノズルを適用可能な成膜装置は、図1、図2等に示した回転テーブル型の成膜装置に限定されるものではない。例えば回転テーブル2に替えてベルトコンベア上にウエハWを載置し、互いに区画された処理室内にウエハWを搬送して成膜処理を行うタイプの成膜装置に本発明の各反応ガスノズルを適用してもよいし、また固定された載置台上にウエハWを1枚ずつ載置して成膜を行う枚葉式の成膜装置に適用してもよい。更に、各反応ガスノズル31、32及びレーザ照射部201に対して回転テーブル2を回転させるようにしたが、回転テーブル2に対して反応ガスノズル31、32及びレーザ照射部201を回転させるように、つまり反応ガスノズル31、32及びレーザ照射部201と回転テーブル2とを相対的に回転させるようにしても良い。この場合には、反応ガスノズル31、32及びレーザ照射部201の回転方向が相対的回転方向上流側となる。
【符号の説明】
【0066】
W ウエハ
1 真空容器
2 回転テーブル
31 第1の反応ガスノズル
32 第2の反応ガスノズル
41、42 分離ガスノズル
61、62 排気口
P1 第1の処理領域
P2 第2の処理領域
P3 照射領域
201 レーザ照射部
202 光源
203 光学部材
204 電源
206 透明窓
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーブル上の基板と反応ガス供給手段とを相対的に公転させ、少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給して成膜処理を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスの一つである、真空雰囲気下で反応ガスにより基板に成膜する手法を実施する装置として、複数の半導体ウエハ等の基板を載置台に載置して、反応ガス供給手段に対して基板を相対的に公転させながら成膜処理を行う成膜装置が知られている。特許文献1〜3には、この種のいわばミニバッチ方式の成膜装置が記載されており、このような成膜装置は、例えば反応ガス供給手段から基板に対して複数種類の反応ガスを供給すると共に、これらの複数種類の反応ガスが夫々供給される領域同士の間に例えば物理的な隔壁を設けたり、あるいは不活性ガスをエアカーテンとして吹き出したりすることにより、これら複数の反応ガス同士が互いに混じり合わないようにして成膜処理を行うように構成されている。そして、この成膜装置を用いて、第1の反応ガス及び第2の反応ガスを交互に基板に供給して原子層あるいは分子層を積層していく例えばALD(Atomic Layer Deposition)やMLD(Molecular Layer Deposition)などを行っている。
【0003】
この成膜装置では、載置台に載置された複数枚の基板を加熱するにあたり、例えば載置台全体を加熱することによって上記複数の基板を一度に加熱するようにしている。そのため、大型で高出力のヒーターが必要になるので、装置の消費エネルギーが大きくなってしまう。また、ヒーターが大型化すると、ヒーターからの輻射熱などによって真空容器内の雰囲気や装置全体が高温となるので、真空容器や装置全体を冷却するための冷却機構が必要になり、装置構造が複雑化してしまう。
【0004】
更に、上記のALD(MLD)法により薄膜の成膜を行うと、成膜温度が低いため、例えば反応ガスに含まれている有機物や水分などの不純物が薄膜中に取り込まれてしまう場合がある。このような不純物を膜中から外部へと排出して緻密で不純物の少ない薄膜を形成するためには、基板に対して例えば数百℃程度で加熱するアニール処理(熱処理)などの後処理を行う必要があるが、薄膜を積層した後にこの後処理を行うと、工程が増えるためコストの増加に繋がってしまう。
例えば特許文献1及び特許文献4には、ウエハを加熱する方法としてレーザ光を用いる技術が記載されているが、具体的な装置構成については触れられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許公報7,153,542号:図8(a)、図8(b)
【特許文献2】特許3144664号公報:図1、図2、請求項1
【特許文献3】米国特許公報6,634,314号
【特許文献4】特開2006−229075号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、テーブル上の基板と反応ガス供給手段とを相対的に公転させ、少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給して成膜処理を行うにあたり、反応生成物を生成させるための消費エネルギーを小さく抑えることのできる成膜装置、成膜方法及び記憶媒体を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記の成膜処理を行うにあたり、基板上の薄膜の改質を行うことのできる成膜装置、成膜方法及び記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の成膜装置は、
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置において、
前記真空容器内に設けられ、基板を載置するための基板載置領域を有するテーブルと、
このテーブル上の前記基板に第1の反応ガスを供給するための第1の反応ガス供給手段と、
前記テーブル上の前記基板に第2の反応ガスを供給するための第2の反応ガス供給手段と、
前記基板載置領域に対向するようにかつ前記基板載置領域上の基板における前記テーブルの中心側の端部と前記テーブルの外周側の端部との間に亘って帯状にレーザ光を照射するように設けられ、前記基板上にて第1の反応ガスの成分と第2の反応ガスの成分とを反応させて反応生成物を生成させるためのレーザ照射部と、
前記第1の反応ガス供給手段、前記第2の反応ガス供給手段及び前記レーザ照射部と前記テーブルとを相対的に回転させるための回転機構と、
前記真空容器内を排気するための真空排気手段と、を備え、
前記第1の反応ガス供給手段、前記第2の反応ガス供給手段及び前記レーザ照射部は、前記相対的な回転時に前記第1の反応ガスが供給される第1の処理領域、前記第2の反応ガスが供給される第2の処理領域及び前記レーザ光が照射される照射領域の順に基板が位置するように配置されていることを特徴とする。
【0008】
前記レーザ照射部は、前記基板上に反応生成物を生成させることに加えて、当該反応生成物の改質を行うためのものであることが好ましい。
前記レーザ照射部は、第1の反応ガスの成分と第2の反応ガスの成分とを反応させる代わりに、前記基板上の前記反応生成物を改質するためのものであっても良い。
前記第1の処理領域と前記第2の処理領域との雰囲気を分離するために、前記テーブルの相対的回転方向においてこれら処理領域の間に各々設けられ、分離ガス供給手段から分離ガスが供給される分離領域を備え、
前記照射領域は、前記第2の処理領域と、当該第2の処理領域の前記相対的回転方向下流側に位置する分離領域と、の間に配置されていることが好ましい。
【0009】
本発明の成膜方法は、
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜方法において、
真空容器内に設けられたテーブルの基板載置領域に基板を載置する工程と、
前記真空容器内を真空排気する工程と、
第1の反応ガス供給手段、第2の反応ガス供給手段及びレーザ照射部と前記テーブルとを相対的に回転させる工程と、
前記テーブル上の基板に前記第1の反応ガス供給手段から第1の反応ガスを供給する工程と、
前記テーブル上の基板に前記第2の反応ガス供給手段から第2の反応ガスを供給する工程と、
次いで、前記レーザ照射部から、前記基板における前記テーブルの中心側の端部と前記テーブルの外周側の端部との間に亘って帯状にレーザ光を照射することにより、前記基板上にて第1の反応ガスの成分と第2の反応ガスの成分とを反応させて反応生成物を生成させる工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
前記反応生成物を生成させる工程は、反応生成物の生成に加えて、当該反応生成物の改質を行う工程であることが好ましい。
前記反応生成物を生成させる工程は、第1の反応ガスの成分と第2の反応ガスの成分とを反応させて反応生成物を生成させる代わりに、前記基板上の前記反応生成物を改質する工程であっても良い。
前記基板を載置する工程の後に、前記第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と前記第2の反応ガスが供給される第2の処理領域との雰囲気を分離するために、前記テーブルの相対的回転方向においてこれら処理領域の間に各々設けられた分離領域に対して分離ガス供給手段から分離ガスを供給する工程を行うことが好ましい。
【0011】
本発明の記憶媒体は、
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、上記いずれか一つに記載の成膜方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、テーブル上の基板と反応ガス供給手段とを相対的に公転させ、少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板に供給して成膜処理を行うにあたり、テーブル上の基板載置領域に対向するようにかつ前記基板載置領域上の基板における前記テーブルの中心側の端部と前記テーブルの外周側の端部との間に亘って帯状にレーザ光を照射して基板上に反応生成物を生成させるためのレーザ照射部を設けて、このレーザ照射部をテーブル上の基板に対して反応ガス供給手段と共に相対的に公転できるように構成している。そのため、基板の表面がレーザ照射部の下方領域において速やかに加熱されるので、反応生成物を生成させるための消費エネルギーを小さく抑えることができる。また、このレーザ照射部により、反応生成物の生成に代えて、あるいは反応生成物の生成と共に、基板上に生成した反応生成物の改質を行うことによって、緻密で且つ不純物が少ない薄膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る成膜装置の縦断面を示す図3のI−I’線縦断面図である。
【図2】上記の成膜装置の内部の概略構成を示す斜視図である。
【図3】上記の成膜装置の横断平面図である。
【図4】上記の成膜装置における処理領域及び分離領域を示す縦断面図である。
【図5】本発明のレーザ照射部の一例を示す成膜装置の縦断面図である。
【図6】上記の成膜装置において照射されるレーザ光の照射エネルギー密度とウエハの温度との関係の一例を示す特性図である。
【図7】上記のレーザ照射部によりレーザ光が照射される照射領域を模式的に示す平面図である。
【図8】分離ガスあるいはパージガスの流れる様子を示す説明図である。
【図9】本発明において反応生成物が生成する様子を模式的に示す模式図である。
【図10】第1の反応ガス及び第2の反応ガスが分離ガスにより分離されて排気される様子を示す説明図である。
【図11】本発明の他の実施の形態に係る成膜装置を示す縦断面図である。
【図12】分離領域に用いられる凸状部の寸法例を説明するための説明図である。
【図13】本発明の他の実施の形態に係る成膜装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態である成膜装置は、図1(図3のI−I’線に沿った断面図)〜図3に示すように平面形状が概ね円形である扁平な真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、当該真空容器1の中心に回転中心を有する回転テーブル2と、を備えている。真空容器1は天板11が容器本体12から分離できるように構成されている。天板11は、内部の減圧状態により容器本体12の上端面に設けられたシール部材例えばOリング13を介して容器本体12側に引きつけられていて気密状態を維持しているが、天板11を容器本体12から分離するときには図示しない駆動機構により上方に持ち上げられる。
【0015】
回転テーブル2は、中心部にて円筒形状のコア部21に固定され、このコア部21は、鉛直方向に伸びる回転軸22の上端に固定されている。回転軸22は真空容器1の底面部14を貫通し、その下端が当該回転軸22を鉛直軸回りにこの例では時計方向に回転させる駆動部23に取り付けられている。回転軸22及び駆動部23は、上面が開口した筒状のケース体20内に収納されている。このケース体20はその上面に設けられたフランジ部分が真空容器1の底面部14の下面に気密に取り付けられており、ケース体20の内部雰囲気と外部雰囲気との気密状態が維持されている。
【0016】
回転テーブル2の表面部には、図2及び図3に示すように回転方向(周方向)に沿って複数枚例えば5枚の基板である半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)Wを載置するための円形状の凹部24が設けられている。なお図3には便宜上1個の凹部24だけにウエハWを描いてある。ここで図4は、回転テーブル2を同心円に沿って切断しかつ横に展開して示す展開図であり、凹部24は、図4(a)に示すようにその直径がウエハWの直径よりも僅かに例えば4mm大きく、またその深さはウエハWの厚みと同等の大きさに設定されている。従ってウエハWを凹部24に落とし込むと、ウエハWの表面と回転テーブル2の表面(ウエハWが載置されない領域)とが揃うことになる。ウエハWの表面と回転テーブル2の表面との間の高さの差が大きいとその段差部分で圧力変動が生じることから、ウエハWの表面と回転テーブル2の表面との高さを揃えることが、膜厚の面内均一性を揃える観点から好ましい。ウエハWの表面と回転テーブル2の表面との高さを揃えるとは、同じ高さであるかあるいは両面の差が5mm以内であることをいうが、加工精度などに応じてできるだけ両面の高さの差をゼロに近づけることが好ましい。凹部24の底面には、ウエハWの裏面を支えて当該ウエハWを昇降させるための例えば後述する3本の昇降ピンが貫通する貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0017】
凹部24はウエハWを位置決めして回転テーブル2の回転に伴う遠心力により飛び出さないようにするためのものであり、本発明の基板載置領域に相当する部位であるが、基板載置領域(ウエハ載置領域)は、凹部に限らず例えば回転テーブル2の表面にウエハWの周縁をガイドするガイド部材をウエハWの周方向に沿って複数並べた構成であってもよく、あるいは回転テーブル2側に静電チャックなどのチャック機構を持たせてウエハWを吸着する場合には、その吸着によりウエハWが載置される領域が基板載置領域となる。
【0018】
図2及び図3に示すように、回転テーブル2における凹部24の通過領域と各々対向する位置には、各々例えば石英からなる第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32と、2本の分離ガスノズル41、42と、が真空容器1の周方向(回転テーブル2の回転方向)に互いに間隔をおいてガス供給部として放射状に配置されている。この例では、後述の搬送口15から見て時計回り(回転テーブル2の回転方向)に分離ガスノズル41、第1の反応ガスノズル31、分離ガスノズル42及び第2の反応ガスノズル32がこの順番で配列されており、これらのノズル31、32、41、42は、例えば真空容器1の外周壁から回転テーブル2の回転中心に向かってウエハWに対向して水平に伸びるようにライン状に取り付けられている。各ノズル31、32、41、42の基端部であるガス導入ポート31a、32a、41a、42aは、真空容器1の外周壁を貫通している。これら反応ガスノズル31、32は、夫々第1の反応ガス供給手段、第2の反応ガス供給手段をなし、分離ガスノズル41、42は、分離ガス供給手段をなしている。この第2の反応ガスノズル32と、回転テーブル2の回転方向において第2の反応ガスノズル32の下流側の分離ガスノズル41(詳しくは分離ガスノズル41が設けられた後述の分離領域Dにおける回転テーブル2の回転方向上流縁)との間には、天板11の上方に設けられた後述のレーザ照射部201からウエハWに対してレーザ光が照射される照射領域P3が形成されているが、これらのレーザ照射部201や照射領域P3については後で詳述する。
【0019】
反応ガスノズル31、32及び分離ガスノズル41、42は図示の例では、真空容器1の周壁部から真空容器1内に導入されているが、後述する環状の突出部5から導入してもよい。この場合、突出部5の外周面と天板11の外表面とに開口するL字型の導管を設け、真空容器1内でL字型の導管の一方の開口に反応ガスノズル31(反応ガスノズル32、分離ガスノズル41、42)を接続し、真空容器1の外部でL字型の導管の他方の開口にガス導入ポート31a(32a、41a、42a)を接続する構成を採用することができる。
【0020】
第1の反応ガスノズル31及び第2の反応ガスノズル32は、夫々図示しない流量調整バルブなどを介して、夫々第1の反応ガスであるBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン、SiH2(NH−C(CH3)3)2)ガスのガス供給源及び第2の反応ガスであるO3(オゾン)ガスのガス供給源(いずれも図示せず)に接続されており、分離ガスノズル41、42はいずれも流量調整バルブなどを介して分離ガスであるN2ガス(窒素ガス)のガス供給源(図示せず)に接続されている。
【0021】
第1の反応ガスノズル31、32には、下方側に反応ガスを吐出するための例えば口径が0.5mmのガス吐出孔33が真下を向いてノズルの長さ方向に亘って例えば10mmの間隔をおいて等間隔に配列されている。また分離ガスノズル41、42には、下方側に分離ガスを吐出するための例えば口径が0.5mmのガス吐出孔40が真下を向いて長さ方向に例えば10mm程度の間隔をおいて穿設されている。各反応ガスノズル31、32のガス吐出孔33とウエハWとの間の距離は例えば1〜4mm好ましくは2mmであり、分離ガスノズル41、42のガス吐出孔40とウエハWとの間の距離は例えば1〜4mm好ましくは3mmである。反応ガスノズル31、32の下方領域は、夫々BTBASガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1及びO3ガスをウエハWに吸着させるための第2の処理領域P2となる。
【0022】
分離ガスノズル41、42は、前記第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離するための分離領域Dを形成するためのものであり、この分離領域Dにおける真空容器1の天板11には図2〜図4に示すように、回転テーブル2の回転中心を中心としかつ真空容器1の内周壁の近傍に沿って描かれる円を周方向に分割してなる、平面形状が扇型で下方に突出した凸状部4が設けられている。分離ガスノズル41、42は、この凸状部4における前記円の周方向中央にて当該円の半径方向に伸びるように形成された溝部43内に収められている。即ち分離ガスノズル41、42の中心軸から凸状部4である扇型の両縁(回転方向上流側の縁及び下流側の縁)までの距離は同じ長さに設定されている。
【0023】
なお、溝部43は、本実施形態では凸状部4を二等分するように形成されているが、他の実施形態においては、例えば溝部43から見て凸状部4における回転テーブル2の回転方向上流側が前記回転方向下流側よりも広くなるように溝部43を形成してもよい。
【0024】
従って分離ガスノズル41、42における前記周方向両側には、前記凸状部4の下面である例えば平坦な低い天井面44(第1の天井面)が存在し、この天井面44の前記周方向両側には、当該天井面44よりも高い天井面45(第2の天井面)が存在することになる。この凸状部4の役割は、回転テーブル2との間への第1の反応ガス及び第2の反応ガスの侵入を阻止してこれら反応ガスの混合を阻止するための狭隘な空間である分離空間を形成することにある。
【0025】
即ち、分離ガスノズル41を例にとると、回転テーブル2の回転方向上流側からO3ガスが侵入することを阻止し、また回転方向下流側からBTBASガスが侵入することを阻止する。「ガスの侵入を阻止する」とは、分離ガスノズル41から吐出した分離ガスであるN2ガスが第1の天井面44と回転テーブル2の表面との間に拡散して、この例では当該第1の天井面44に隣接する第2の天井面45の下方側空間に吹き出し、これにより当該隣接空間からのガスが侵入できなくなることを意味する。そして「ガスが侵入できなくなる」とは、隣接空間から凸状部4の下方側空間に全く入り込むことができない場合のみを意味するのではなく、多少侵入はするが、両側から夫々侵入したO3ガス及びBTBASガスが凸状部4内で交じり合わない状態が確保される場合も意味し、このような作用が得られる限り、分離領域Dの役割である第1の処理領域P1の雰囲気と第2の処理領域P2の雰囲気との分離作用が発揮できる。従って狭隘な空間における狭隘の程度は、狭隘な空間(凸状部4の下方空間)と当該空間に隣接した領域(この例では第2の天井面45の下方空間)との圧力差が「ガスが侵入できなくなる」作用を確保できる程度の大きさになるように設定され、その具体的な寸法は凸状部4の面積などにより異なるといえる。またウエハWに吸着したガスについては当然に分離領域D内を通過することができ、ガスの侵入阻止は、気相中のガスを意味している。
【0026】
続いて、上記のレーザ照射部201について説明する。このレーザ照射部201は、回転テーブル2上のウエハWに対してレーザ光を照射することにより、ウエハWの表面を瞬時に加熱するためのものであり、図2及び図3に示すように、第2の反応ガスノズル32と、回転テーブル2の回転方向において第2の反応ガスノズル32の下流側の分離領域Dと、の間の天板11上において回転テーブル2と平行になるように設置されている。また、レーザ照射部201は、図5に示すように、真空容器1の外縁側から真空容器1の中心部(回転テーブル2の回転中心)側に向かって水平方向(横方向)に上記のレーザ光を照射する光源202と、この光源202から照射されるレーザ光の光路をウエハWの直径方向に亘って、即ち凹部24における回転テーブル2の中心側の端部と外周側の端部とに亘って帯状(ライン状)に拡大すると共に、当該レーザ光の光路を下方側に向けて屈曲させるための光学部材203と、を備えている。尚、既述の図2では、上記のレーザ照射部201と第2の反応ガスノズル32及び分離領域Dとの位置関係を示すために、天板11を取り外してレーザ照射部201を描画しており、また図1及び図2では、レーザ照射部201を簡略化して描画している。
【0027】
光源202は、既述の図3に示した電源204から供給される例えば17J/cm2〜100J/cm2の照射エネルギー密度により、紫外領域から赤外領域の波長のレーザ光この例では例えば半導体(波長:808nm)のレーザ光をウエハWに照射して、ウエハWの表面を瞬時に例えば200℃〜1200℃に加熱できるように構成されている。
この光源202から照射されるレーザ光の照射エネルギー密度について説明すると、レーザ照射エネルギー密度[J/cm2]は、電力密度[W/cm2]と照射時間[sec]との積で表される。電力密度は、レーザ光の電力をP[W]、レーザ光の照射エリア(後述の照射領域P3)の面積をS[cm2]とすると、P/Sとなる。また、照射時間は、照射エリアの弧の長さと回転テーブル2の周速度(回転テーブル2の回転数に比例する値)とで表され、当該弧の長さをl[cm]、回転テーブル2の半径をr(cm)、回転テーブル2の回転数をN[rpm]とすると、60l/(2πrN)となる。従って、上記の照射エネルギー密度は、実際にはレシピや装置の寸法を考慮に入れて設定されることになる。また、この照射エネルギー密度は、図6に示すように、例えばウエハW表面の測定結果により、ウエハWの温度に対してほぼリニアな比例関係となっていると予測されるため、既述の範囲に設定されている。
【0028】
上記の光学部材203は、例えばかまぼこ状に一面側が凸に膨らむ形状あるいは一面側が長さ方向に亘って短辺方向において円弧状に窪んだ形状のシリンドリカルレンズや、レーザ光の光路を平行に(コリメント)するレンズなどが組み合わされており、図7に示すように、凹部24における回転テーブル2の回転中心側の内縁と回転テーブル2の外周側の外縁との間に亘って帯状(矩形状)にレーザ光の光路(照射領域P3)を引き延ばすことができるように構成されている。この時、回転テーブル2の内周側から外周側に向かう程回転テーブル2の周速度が速くなるので、ウエハWに対するレーザ光の照射時間が回転テーブル2の内周側から外周側に亘って揃うように、照射領域P3の幅寸法tは、回転テーブル2の内周側から外周側に向かう程拡径して例えば台形状に形成されている。具体的には、凹部24における回転テーブル2の内周側の幅寸法tは100mm、回転テーブル2の外周側の幅寸法tは300mmに設定されている。尚、図7では、上記の照射領域P3について斜線を付してある。また、この図7においては、回転テーブル2以外の部材については描画を省略している。
【0029】
レーザ照射部201の下方における天板11には、図3〜図5に示すように、レーザ照射部201から照射されるレーザ光が回転テーブル2の内周側から外周側に亘って真空容器1内に到達するように、例えば上端側が下端側よりも大きく開口する矩形の開口部205が形成されている。また、天板11には、この開口部205を塞ぐように、例えば石英からなる透明窓206が気密に設けられている。この図5中207は、透明窓206の周囲における下端面と天板11との間に設けられたシール部材である。尚、図1及び図4等では模式的に示しているが、これらの開口部205及び透明窓206は、上記の幅寸法tのレーザ光が回転テーブル2の中心側から外周側に亘って天板11を介して当該回転テーブル2上に到達するように、回転テーブル2の回転方向において寸法tと同程度の寸法となるように形成されている。
【0030】
この例では直径300mmのウエハWを被処理基板としており、この場合既述の凸状部4は、回転テーブル2の回転中心から140mm外周側に離れた部位(後述の突出部5との境界部位)においては、周方向の長さ(回転テーブル2と同心円の円弧の長さ)が例えば146mmであり、ウエハWの載置領域(凹部24)の最も外側部位においては、周方向の長さが例えば502mmである。なお、当該外側部位において分離ガスノズル41(42)の両脇から夫々左右に位置する凸状部4の周方向の長さでみれば、この長さは246mmである。
【0031】
また図4(a)に示すように凸状部4の下面即ち天井面44における回転テーブル2の表面までの高さhは、例えば0.5mmから10mmであってもよく、約4mmであると好適である。この場合、回転テーブル2の回転数は例えば1rpm〜500rpmに設定されている。そのため分離領域Dの分離機能を確保するためには、回転テーブル2の回転数の使用範囲などに応じて、凸状部4の大きさや凸状部4の下面(第1の天井面44)と回転テーブル2の表面との高さhを例えば実験などに基づいて設定することになる。なお分離ガスとしては、窒素(N2)ガスに限られずアルゴン(Ar)ガスなどの不活性ガスなどを用いることができるが、このようなガスに限らず水素(H2)ガスなどであってもよく、成膜処理に影響を与えないガスであれば、ガスの種類に関しては特に限定されるものではない。
【0032】
一方、天板11の下面には、図4及び図8に示すように回転テーブル2におけるコア部21よりも外周側の部位と対向するようにかつ当該コア部21の外周に沿って突出部5が設けられている。この突出部5は凸状部4における前記回転中心側の部位と連続して形成されており、その下面が凸状部4の下面(天井面44)と同じ高さに形成されている。図2及び図3は、前記天井面45よりも低くかつ分離ガスノズル41、42よりも高い位置にて天板11を水平に切断して示している。なお突出部5と凸状部4とは、必ずしも一体であることに限られるものではなく、別体であってもよい。
【0033】
凸状部4及び分離ガスノズル41(42)の組み合わせ構造の作り方については、凸状部4をなす1枚の扇型プレートの中央に溝部43を形成してこの溝部43内に分離ガスノズル41(42)を配置する構造に限らず、2枚の扇型プレートを用い、分離ガスノズル41(42)の両側位置にて天板本体の下面にボルト締めなどにより固定する構成などであってもよい。
【0034】
真空容器1の天板11の下面、つまり回転テーブル2のウエハ載置領域(凹部24)から見た天井面は既述のように第1の天井面44とこの天井面44よりも高い第2の天井面45とが周方向に存在するが、図1では、高い天井面45が設けられている領域についての縦断面を示している。扇型の凸状部4の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)は図2に示されているように回転テーブル2の外端面に対向するようにL字型に屈曲して屈曲部46を形成している。扇型の凸状部4は天板11側に設けられていて、容器本体12から取り外せるようになっていることから、前記屈曲部46の外周面と容器本体12との間には僅かに隙間がある。この屈曲部46も凸状部4と同様に両側から反応ガスが侵入することを防止して、両反応ガスの混合を防止する目的で設けられており、屈曲部46の内周面と回転テーブル2の外端面との隙間、及び屈曲部46の外周面と容器本体12との隙間は、例えば回転テーブル2の表面に対する天井面44の高さhと同様の寸法に設定されている。この例においては、回転テーブル2の表面側領域からは、屈曲部46の内周面が真空容器1の内周壁を構成していると見ることができる。
【0035】
容器本体12の内周壁は、分離領域Dにおいては前記屈曲部46の外周面と接近して垂直面に形成されているが、分離領域D以外の部位においては、図1に示すように例えば回転テーブル2の外端面と対向する部位から底面部14に亘って縦断面形状が矩形に切り欠かれて外方側に窪んだ構造になっている。この窪んだ部分における既述の第1の処理領域P1及び第2の処理領域P2に連通する領域を夫々第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2と呼ぶことにすると、これらの第1の排気領域E1及び第2の排気領域E2の底部には図1及び図3に示すように例えば夫々排気口61、62が形成されている。図1に示すようにこれら排気口61、62は各々排気管63を介して真空排気手段である例えば共通の真空ポンプ64に接続されている。なお図1中、65は圧力調整手段であり、各々の排気管63毎に設けられている。
【0036】
排気口61、62は、分離領域Dの分離作用が確実に働くように、図3に示すように平面で見たときに前記分離領域Dの前記回転方向両側に設けられている。詳しく言えば、回転テーブル2の回転中心から見て第1の処理領域P1とこの第1の処理領域P1に対して例えば回転方向下流側に隣接する分離領域Dとの間に第1の排気口61が形成され、回転テーブル2の回転中心から見て第2の処理領域P2とこの第2の処理領域P2に対して例えば回転方向下流側に隣接する分離領域Dとの間に第2の排気口62が形成されている。この排気口61はBTBASガスの排気を専用に行うように、また排気口62はO3ガスの排気を専用に行うようにその位置が設定されている。この例では一方の排気口61は、第1の反応ガスノズル31とこの反応ガスノズル31に対して前記回転方向下流側に隣接する分離領域Dの第1の反応ガスノズル31側の縁の延長線との間に設けられ、また他方の排気口62は、第2の反応ガスノズル32とこの反応ガスノズル32に対して前記回転方向下流側に隣接する分離領域Dの第2の反応ガスノズル32側の縁の延長線との間に設けられている。即ち、第1の排気口61は、図3中に一点鎖線で示した回転テーブル2の中心と第1の処理領域P1とを通る直線L1と、回転テーブル2の中心と前記第1の処理領域P1の下流側に隣接する分離領域Dの上流側の縁を通る直線L2との間に設けられ、第2の排気口62は、この図3に二点鎖線で示した回転テーブル2の中心と第2の処理領域P2とを通る直線L3と、回転テーブル2の中心と前記第2の処理領域P2の下流側に隣接する分離領域Dの上流側の縁を通る直線L4との間に位置している。
【0037】
排気口の設置数は2個に限られるものではなく、例えば3個以上であってもよい。また、この例では排気口61、62は回転テーブル2よりも低い位置に設けることで真空容器1の内周壁と回転テーブル2の周縁との間の隙間から排気するようにしているが、真空容器1の底面部に設けることに限られず、真空容器1の側壁に設けてもよい。更に、排気口61、62は、真空容器1の側壁に設ける場合には、回転テーブル2よりも高い位置に設けるようにしてもよい。このように排気口61、62を設けることにより回転テーブル2上のガスは、回転テーブル2の外側に向けて流れるため、回転テーブル2に対向する天井面から排気する場合に比べてパーティクルの巻上げが抑えられるという観点において有利である。
【0038】
前記回転テーブル2の周縁付近の下方側には、回転テーブル2の上方空間から排気領域Eに至るまでの雰囲気と回転テーブル2の下方領域の雰囲気とを区画するために、回転テーブル2の周縁部に沿って周方向に亘ってカバー部材71が設けられている。このカバー部材71は上縁が外側に屈曲されてフランジ形状に形成され、その屈曲面と回転テーブル2の下面との間の隙間を小さくして、カバー部材71内に外方からガスが侵入することを抑えている。
【0039】
回転テーブル2の下方領域における回転中心寄りの部位における底面部14は、回転テーブル2の下面の中心部付近、コア部21に接近してその間は狭い空間になっており、また当該底面部14を貫通する回転軸22の貫通穴についてもその内周面と回転軸22との隙間が狭くなっていて、これら狭い空間は前記ケース体20内に連通している。そして前記ケース体20にはパージガスであるN2ガスを前記狭い空間内に供給してパージするためのパージガス供給管72が設けられている。また真空容器1の底面部14には、回転テーブル2の下方側位置にて周方向の複数部位に、この回転テーブル2の下方領域をパージするためのパージガス供給管73が設けられている。
【0040】
このようにパージガス供給管72、73を設けることにより図8にパージガスの流れを矢印で示すように、ケース体20内から回転テーブル2の下方領域に至るまでの空間がN2ガスでパージされ、このパージガスが回転テーブル2とカバー部材71との間の隙間から排気領域Eを介して排気口61、62に排気される。これによって既述の第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との一方から回転テーブル2の下方を介して他方側にBTBASガスあるいはO3ガスが回り込むことが防止されるため、このパージガスは分離ガスの役割も果たしている。
【0041】
また真空容器1の天板11の中心部には分離ガス供給管51が接続されていて、天板11とコア部21との間の空間52に分離ガスであるN2ガスを供給するように構成されている。この空間52に供給された分離ガスは、図8に示すように前記突出部5と回転テーブル2との狭い隙間50を介して回転テーブル2のウエハ載置領域側の表面に沿って周縁に向けて吐出されることになる。この突出部5で囲まれる空間には分離ガスが満たされているので、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間で回転テーブル2の中心部を介して反応ガス(BTBASガス及びO3ガス)が混合することを防止している。即ち、この成膜装置は、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との雰囲気を分離するために回転テーブル2の回転中心部と天板11とにより区画され、分離ガスがパージされると共に当該回転テーブル2の表面に分離ガスを吐出する吐出口が前記回転方向に沿って形成された中心部領域Cを備えているということができる。なおここでいう吐出口は前記突出部5と回転テーブル2との狭い隙間50に相当する。
【0042】
更に真空容器1の側壁には図2、図3に示すように外部の搬送アーム10と回転テーブル2との間で基板であるウエハWの受け渡しを行うための搬送口15が形成されており、この搬送口15は図示しないゲートバルブにより開閉されるようになっている。また回転テーブル2におけるウエハ載置領域である凹部24はこの搬送口15に臨む位置にて搬送アーム10との間でウエハWの受け渡しが行われることから、回転テーブル2の下方側において当該受け渡し位置に対応する部位に、凹部24を貫通してウエハWを裏面から持ち上げるための受け渡し用の昇降ピン及びその昇降機構(いずれも図示せず)が設けられている。
【0043】
また、この成膜装置には、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100が設けられており、この制御部100のメモリ内には後述の成膜処理及び改質処理を行うためのプログラムが格納されている。このプログラムは後述の装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体から制御部100内にインストールされる。
【0044】
次に、上述の実施の形態の作用について説明する。先ず、図示しないゲートバルブを開き、外部から搬送アーム10により搬送口15を介してウエハWを回転テーブル2の凹部24内に受け渡す。この受け渡しは、凹部24が搬送口15に臨む位置に停止したときに凹部24の底面の貫通孔を介して真空容器の底部側から不図示の昇降ピンが昇降することにより行われる。このようなウエハWの受け渡しを回転テーブル2を間欠的に回転させて行い、回転テーブル2の5つの凹部24内に夫々ウエハWを載置する。続いてゲートバルブを閉じ、真空ポンプ64により真空容器1内を引き切りの状態にした後、圧力調整手段65により真空容器1内を予め設定した処理圧力に調整すると共に、回転テーブル2を時計回りに回転させる。そして、反応ガスノズル31、32から夫々BTBASガス及びO3ガスを吐出すると共に、電源204からレーザ照射部201に対して例えば67J/cm2のエネルギー密度で、ウエハWの表面が瞬時に例えば800℃となるようにレーザ照射部201から回転テーブル2に向けてレーザ光を照射する。また、分離ガスノズル41、42から分離ガスであるN2ガスを所定の流量で吐出し、分離カス供給管51及びパージガス供給管72、72からもN2ガスを所定の流量で吐出する。
【0045】
回転テーブル2の回転によりウエハWが第1の処理領域P1に到達すると、ウエハWの表面にはBTBASガスが吸着する。次いで、第2の処理領域P2では、ウエハWの表面にO3ガスが接触する。このO3ガスは、排気口62からの排気により、あるいは回転テーブル2の回転に連れられて、ウエハWと共に下流側に通流していく。そして、ウエハWとO3ガスとが照射領域P3に到達すると、ウエハWの表面が瞬時に例えば800℃に加熱されるので、図9に示すように、O3ガスとウエハW上に吸着したBTBASガスとが反応して、つまりBTBASガスが酸化されてシリコン酸化膜の分子層が1層あるいは複数層形成される。
【0046】
この時、レーザ光による加熱方法に代えて、例えばヒーターなどにより従来のALD法におけるウエハWの加熱温度例えば350℃程度にウエハWを加熱した場合には、例えばBTBASの残留基などが残り、膜中に例えば水分(OH基)や有機物などの不純物が含まれてしまう場合がある。しかし、レーザ光を用いてウエハWの表面を瞬時に上記のように高い温度に加熱することによって、シリコン酸化膜の生成と共に、当該シリコン酸化膜から上記の不純物が放出されたり、シリコン酸化膜内の元素が再配列されてシリコン酸化膜の緻密化(高密度化)が図られたりすることになる。いわば、レーザ光により、成膜処理と共にシリコン酸化膜の改質処理が行われていることになる。従って、このシリコン酸化膜は、従来のALD法によって成膜した場合よりも、緻密化してウェットエッチングに対する耐性が向上することになる。尚、シリコン酸化膜と共に生成した副生成物は、N2ガスやO3ガスと共に排気口62に向かって排気されていく。
こうしてウエハWが帯状に形成された照射領域P3を通過することにより、面内に亘ってシリコン酸化膜の成膜処理と改質処理とが行われることになる。そして、回転テーブル2の回転によりBTBASガスの吸着と、BTBASガスの酸化と、成膜処理及び改質処理と、が行われてシリコン酸化膜が順次積層されていき、ウエハWの面内に亘って、更には膜厚方向において、緻密で且つウェットエッチングに対する耐性が高い薄膜が形成されることになる。
【0047】
この時、第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間においてN2ガスを供給し、また中心部領域Cにおいても分離ガスであるN2ガスを供給しているので、図10に示すようにBTBASガスとO3ガスとが混合しないように各ガスが排気されることとなる。また、分離領域Dにおいては、屈曲部46と回転テーブル2の外端面との間の隙間が既述のように狭くなっているので、BTBASガスとO3ガスとは、回転テーブル2の外側を介しても混合しない。従って、第1の処理領域P1の雰囲気と第2の処理領域P2の雰囲気とが完全に分離され、BTBASガスは排気口61に、またO3ガスは排気口62に夫々排気される。この結果、BTBASガスとO3ガスとが雰囲気中においてもウエハW上においても混じり合うことがない。
【0048】
また、この例では反応ガスノズル31、32が配置されている第2の天井面45の下方側の空間に沿った容器本体12の内周壁においては、既述のように内周壁が切り欠かれて広くなっており、この広い空間の下方に排気口61、62が位置しているので、第1の天井面44の下方側の狭隘な空間及び前記中心部領域Cの各圧力よりも第2の天井面45の下方側の空間の圧力の方が低くなる。
なお、回転テーブル2の下方側をN2ガスによりパージしているため、排気領域Eに流入したガスが回転テーブル2の下方側を潜り抜けて、例えばBTBASガスがO3ガスの供給領域に流れ込むといったおそれは全くない。
【0049】
ここで処理パラメータの一例について記載しておくと、回転テーブル2の回転数は、300mm径のウエハWを被処理基板とする場合例えば1rpm〜500rpm、プロセス圧力は例えば1067Pa(8Torr)、BTBASガス及びO3ガスの流量は例えば夫々100sccm及び10000sccm、分離ガスノズル41、42からのN2ガスの流量は例えば20000sccm、真空容器1の中心部の分離ガス供給管51からのN2ガスの流量は例えば5000sccmである。また1枚のウエハWに対する反応ガス供給のサイクル数、即ちウエハWが処理領域P1、P2及び照射領域P3の各々を通過する回数は目標膜厚に応じて変わるが、例えば1000回である。
【0050】
上述の実施の形態によれば、回転テーブル2を回転させてウエハW上にBTBASガスを吸着させ、次いでウエハWの表面にO3ガスを供給してウエハWの表面に吸着したBTBASガスを酸化させてシリコン酸化膜を成膜するにあたって、ウエハWを加熱してシリコン酸化膜(反応生成物)を生成させるための加熱手段として、回転テーブル2の内周側から外周側に亘って帯状にレーザ光を照射するレーザ照射部201を用いている。そのため、ウエハWの表面を瞬時に加熱することができるので、例えばヒーターなどにより回転テーブル2上のウエハW全体を加熱する場合に比べて、反応生成物を生成させるための消費エネルギーを小さく抑えることができる。そのため、加熱手段(ヒーター)からの輻射熱を抑えることができるので、真空容器1内や装置全体を冷却する冷却機構を省略あるいは簡略化することができる。この時、レーザ光の光路(照射領域P3)が帯状に形成されているが、回転テーブル2の回転によりウエハWが当該領域P3を通過してウエハWの全面に亘ってレーザ光を照射することができるので、例えばウエハWの表面全体に一度に面状のレーザ光を照射する場合よりも消費エネルギーを抑えることができる。また、レーザ光によりウエハWの表層(表面)が瞬時に高温に加熱されるので、成膜処理と共に改質処理が行われるため、緻密で不純物の少なく、更にはウェットエッチングに対する耐性が大きい薄膜を得ることができる。また、レーザ照射部201によりウエハWの表層を瞬時に加熱していることから、例えばアニール処理によりウエハW全体を加熱して改質処理を行う場合に比べて、ウエハWに対する熱的なダメージを小さく抑えることができる。
【0051】
また、レーザ光により成膜処理と共に改質処理を行っていることから、真空容器1の内部において成膜サイクルを行う度に改質処理を行っていることになり、回転テーブル2の周方向においてウエハWが各処理領域P1、P2を通過する経路の途中において成膜処理に干渉しないように改質処理を行っているので、例えば薄膜の成膜が完了した後で改質処理を行うよりも短時間で改質処理を行うことができる。
更に、例えばウエハWの表面にパターンが形成されている場合には、ウエハWを加熱するための加熱手段としてレーザ光を用いることにより、パターン内部までレーザ光を到達させて面内に亘って均質な成膜処理及び改質処理を行うことができる。
【0052】
更にまた、本実施の形態に係わる成膜装置は、回転テーブル2の回転方向に複数のウエハWを配置し、回転テーブル2を回転させて第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを順番に通過させていわゆるALD(あるいはMLD)を行うようにしているため、高いスループットで成膜処理を行うことができる。そして前記回転方向において第1の処理領域P1と第2の処理領域P2との間に低い天井面を備えた分離領域Dを設けると共に回転テーブル2の回転中心部と真空容器1とにより区画した中心部領域Cから回転テーブル2の周縁に向けて分離ガスを吐出し、前記分離領域Dの両側に拡散する分離ガス及び前記中心部領域Cから吐出する分離ガスと共に前記反応ガスが回転テーブル2の周縁と真空容器の内周壁との隙間を介して排気されるため、両反応ガスの混合を防止することができ、この結果良好な成膜処理を行うことができるし、回転テーブル2上において反応生成物が生じることが全くないか極力抑えられ、パーティクルの発生が抑えられる。なお本発明は、回転テーブル2に1個のウエハWを載置する場合にも適用できる。
【0053】
上記の反応生成物を成膜するための処理ガスとしては、第1の反応ガスとして、DCS[ジクロロシラン]、HCD[ヘキサクロロジシラン]、TMA[トリメチルアルミニウム]、3DMAS[トリスジメチルアミノシラン]、TEMAZ[テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム]、TEMHF[テトラキスエチルメチルアミノハフニウム]、Sr(THD)2[ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト]、Ti(MPD)(THD)[チタニウムメチルペンタンジオナトビステトラメチルヘプタンジオナト]、モノアミノシランなどを採用し、これらの原料ガスを酸化する酸化ガスである第2の反応ガスとして水蒸気などを採用しても良い。また、例えばSiを含む第1の反応ガス(例えばジクロロシランガス)とNを含む第2の反応ガス(例えばアンモニアガス)とを用いてSiN膜を成膜するプロセスに本発明を適用しても良い。
【0054】
上記の実施の形態では、1つのレーザ照射部201により成膜処理と改質処理とを行うようにしたが、例えばこのレーザ照射部201を回転テーブル2の回転方向に沿って複数例えば2つ並べて配置しても良い。この場合には、夫々のレーザ照射部201の光源202(レーザ光の照射波長)を変えても良い。具体的には、複数のレーザ照射部201のうち、例えば回転テーブル2の回転方向上流側(搬送口15側)における一のレーザ照射部201については成膜処理だけを行うために、赤外領域例えば半導体レーザーのレーザ光を照射できるように構成し、当該一のレーザ照射部201の下流側(第1の反応ガスノズル31側)における他のレーザ照射部201については改質処理だけを行うために、あるいは成膜処理と共に改質処理を行うために、紫外領域例えばエキシマレーザーのレーザ光を照射できるように構成しても良い。即ち、300℃〜500℃で成膜したSiO2膜(シリコン酸化膜)は、OH基を多く含んでいる場合があり、このOH基は膜質劣化の一つの要因である。このO−H結合の結合解離エネルギーは424〜493kJ/mol(4.4〜5.1eV)であり、その結合解離エネルギーは240〜280nmの紫外光のエネルギーに相当する。従って、この紫外領域のレーザ光をウエハWに照射することにより、膜中のOH基を低減あるいは除去できる。この場合には、上記一(赤外領域)のレーザ照射部201に対して既述の実施の形態におけるエネルギー密度よりも小さいエネルギー密度例えば30J/cm2で成膜処理を行い、他(紫外領域)のレーザ照射部201では波長が例えば248nmのKrFレーザ光を照射して改質処理を行う。つまり、複数のレーザ照射部201において、レーザ光の光源202とレーザ照射部201のエネルギー密度とを夫々調整することにより、成膜処理と改質処理とが個別に行われることになる。この場合においても、上記の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0055】
更に、成膜時の酸素源として供給するO3ガスは、その熱分解によって活性酸素(O[3P])を発生させ、この活性酸素がBTBASガスの酸化種となっている。ここで、O3ガスの供給と同時に紫外レーザー例えば波長が248nmのKrFレーザ光を照射することで、O[3P]と比べてはるかに反応速度が高くなる活性酸素(O[1D])を発生させることができる。そのため、紫外レーザ光を用いることにより、SiO2膜の生成(BTBASの酸化)を速やかに行うことができる。従って、よりエネルギーの高い短波長のレーザ光例えばXe2エキシマレーザー(波長:172nm)を照射することにより、O3ガスではなくO2ガスから活性酸素(O[3P]、O[1D])を直接発生させることができるので、O3ガスの供給装置(オゾナイザー)が不要になり、装置コストを低減することができる。この時、紫外領域のレーザ光に代えて、エキシマランプを設けても良い。
【0056】
また、上記の実施の形態では、レーザ照射部201により成膜処理と改質処理とを行うようにしたが、例えばレーザ照射部201に上記のように赤外領域の光源202を設けると共に、回転テーブル2の回転方向においてレーザ照射部201の下流側の分離領域Dとの間にプラズマユニットを設けて、照射領域P3において例えば38J/cm2のエネルギー密度でウエハWを例えば450℃に瞬時に加熱して成膜処理だけを行い、次いでプラズマユニットにおいて改質処理を行っても良い。また、薄膜を成膜した後に別途外部のアニール装置においてアニール処理(改質処理)を行う場合には、同様にレーザ照射部201において成膜処理だけを行うようにしても良い。このような場合においても、回転テーブル2上の5枚のウエハWを加熱するヒーターを設ける場合に比べて、装置の消費エネルギーを小さく抑えることができる。
【0057】
更に、回転テーブル2上のウエハW全体を加熱するヒーターを設けて、このヒーターにより成膜処理を行うようにしても良い。そのような例について図11を参照して説明すると、回転テーブル2と真空容器1の底面部14との間の空間には、加熱手段であるヒータユニット7が周方向に亘って設けられており、回転テーブル2を介して回転テーブル2上のウエハWをプロセスレシピで決められた温度、例えば450℃に加熱するように構成されている。また、この例では、光源202(レーザ光の波長)及びレーザ照射部201のエネルギー密度としては、成膜処理と改質処理とを行う場合と夫々同様に設定されることになる。
【0058】
この場合には、第2の処理領域P2にてO3ガスによりウエハWの表面に吸着したBTBASガスが酸化されてシリコン酸化膜が生成する。そして、このシリコン酸化膜中に不純物が含まれている場合には、照射領域P3において膜中から不純物が排出されて改質処理が行われることになる。この場合においても、ヒータユニット7だけを用いて成膜処理と改質処理とを行う場合よりも、消費エネルギーを抑えることができる。つまり、レーザ照射部201により成膜処理と改質処理との少なくとも一方を行うようにすれば良い。また、ヒータユニット7及びレーザ照射部201により成膜処理だけを行うようにしても良い。
【0059】
また、上記の例では、レーザ照射部201として1つの光源202から照射されるレーザ光を光学部材203を用いて帯状に台形状に延伸させたが、回転テーブル2の中心側から外周側に向かって広がる扇形状となるように照射領域P3を形成しても良いし、ライン状または面状(例えばウエハWと同径の円)に形成しても良い。また、複数の光源202と光学部材203とを回転テーブル2の内周側から外周側に並べても良いし、更には1つの光源202を用いると共に、照射領域P3の下方位置にてウエハWを停止させ、図示しないミラーを用いてレーザ光を回転テーブル2の内周側から外周側に亘って走査し、次いで僅かにウエハWを移動させて再度レーザ光を走査して、順次ウエハWの移動とレーザ光の走査とを繰り返して面内に亘ってレーザ光を照射するようにしても良い。更に、波長の異なる複数の光源202を配置しておき、例えば成膜する膜種などに応じてレーザ光の波長(励起材料)を変えるようにしても良い。このレーザ照射部201の設置位置としては、既述のように第2の反応ガスノズル32と、回転テーブル2の回転方向において第2の反応ガスノズル32の下流側の分離領域Dの回転方向上流側の縁と、の間であれば良いが、例えば第2の反応ガスノズル32の上方位置に配置しても良い。
【0060】
そして、前記分離ガス供給ノズル41(42)の両側に各々位置する狭隘な空間を形成する前記第1の天井面44は、図12(a)、図12(b)に前記分離ガス供給ノズル41を代表して示すように例えば300mm径のウエハWを被処理基板とする場合、ウエハWの中心WOが通過する部位において回転テーブル2の回転方向に沿った幅寸法Lが50mm以上であることが好ましい。凸状部4の両側から当該凸状部4の下方(狭隘な空間)に反応ガスが侵入することを有効に阻止するためには、前記幅寸法Lが短い場合にはそれに応じて第1の天井面44と回転テーブル2との間の距離も小さくする必要がある。更に第1の天井面44と回転テーブル2との間の距離をある寸法に設定したとすると、回転テーブル2の回転中心から離れる程、回転テーブル2の速度が速くなってくるので、反応ガスの侵入阻止効果を得るために要求される幅寸法Lは回転中心から離れる程長くなってくる。このような観点から考察すると、ウエハWの中心WOが通過する部位における前記幅寸法Lが50mmよりも小さいと、第1の天井面44と回転テーブル2との距離をかなり小さくする必要があるため、回転テーブル2を回転したときに回転テーブル2あるいはウエハWと天井面44との衝突を防止するために、回転テーブル2の振れを極力抑える工夫が要求される。更にまた回転テーブル2の回転数が高い程、凸状部4の上流側から当該凸状部4の下方側に反応ガスが侵入しやすくなるので、前記幅寸法Lを50mmよりも小さくすると、回転テーブル2の回転数を低くしなければならず、スループットの点で得策ではない。従って幅寸法Lが50mm以上であることが好ましいが、50mm以下であっても本発明の効果が得られないというものではない。即ち、前記幅寸法LがウエハWの直径の1/10〜1/1であることが好ましく、約1/6以上であることがより好ましい。なお、図12(a)においては図示の便宜上、凹部24の記載を省略してある。
【0061】
また本発明は、分離ガスノズル41(42)の両側に狭隘な空間を形成するために低い天井面(第1の天井面)44を設けることが必要であるが、反応ガスノズル31、32の両側にも同様の低い天井面を設け、これら天井面を連続させる構成、つまり分離ガスノズル41(42)、反応ガスノズル31(32)が設けられる箇所以外は、回転テーブル2に対向する領域全面に凸状部4を設ける構成としても同様の効果が得られる。この構成は別の見方をすれば、分離ガスノズル41(42)の両側の第1の天井面44が反応ガスノズル31、32にまで広がった例である。この場合には、分離ガスノズル41(42)の両側に分離ガスが拡散し、反応ガスノズル31、32の両側に反応ガスが拡散し、両ガスが凸状部4の下方側(狭隘な空間)にて合流するが、これらのガスは排気口61(62)から排気されることになる。
【0062】
以上の実施の形態では、回転テーブル2の回転軸22が真空容器1の中心部に位置し、回転テーブル2の中心部と真空容器1の上面部との間の空間に分離ガスをパージしているが、本発明は図13に示すように構成してもよい。図13の成膜装置においては、真空容器1の中央領域の底面部14が下方側に突出していて駆動部の収容空間80を形成していると共に、真空容器1の中央領域の上面に凹部80aが形成され、真空容器1の中心部において収容空間80の底部と真空容器1の前記凹部80aの上面との間に支柱81を介在させて、第1の反応ガスノズル31からのBTBASガスと第2の反応ガスノズル32からのO3ガスとが前記中心部を介して混ざり合うことを防止している。
【0063】
回転テーブル2を回転させる機構については、支柱81を囲むように回転スリーブ82を設けてこの回転スリーブ82に沿ってリング状の回転テーブル2を設けている。そして前記収容空間80にモーター83により駆動される駆動ギヤ部84を設け、この駆動ギヤ部84により、回転スリーブ82の下部の外周に形成されたギヤ部85を介して当該回転スリーブ82を回転させるようにしている。86、87及び88は軸受け部である。また前記収容空間80の底部にパージガス供給管74を接続すると共に、前記凹部80aの側面と回転スリーブ82の上端部との間の空間にパージガスを供給するためのパージガス供給管75を真空容器1の上部に接続している。図13では、前記凹部80aの側面と回転スリーブ82の上端部との間の空間にパージガスを供給するための開口部は左右2箇所に記載してあるが、回転スリーブ82の近傍領域を介してBTBASガスとO3ガスとが混じり合わないようにするために、開口部(パージガス供給口)の配列数を設計することが好ましい。
【0064】
図13の実施の形態では、回転テーブル2側から見ると、前記凹部80aの側面と回転スリーブ82の上端部との間の空間は分離ガス吐出孔に相当し、そしてこの分離ガス吐出孔、回転スリーブ82及び支柱81により、真空容器1の中心部に位置する中心部領域が構成される。
【0065】
更にまた、実施の形態に係わる各種の反応ガスノズルを適用可能な成膜装置は、図1、図2等に示した回転テーブル型の成膜装置に限定されるものではない。例えば回転テーブル2に替えてベルトコンベア上にウエハWを載置し、互いに区画された処理室内にウエハWを搬送して成膜処理を行うタイプの成膜装置に本発明の各反応ガスノズルを適用してもよいし、また固定された載置台上にウエハWを1枚ずつ載置して成膜を行う枚葉式の成膜装置に適用してもよい。更に、各反応ガスノズル31、32及びレーザ照射部201に対して回転テーブル2を回転させるようにしたが、回転テーブル2に対して反応ガスノズル31、32及びレーザ照射部201を回転させるように、つまり反応ガスノズル31、32及びレーザ照射部201と回転テーブル2とを相対的に回転させるようにしても良い。この場合には、反応ガスノズル31、32及びレーザ照射部201の回転方向が相対的回転方向上流側となる。
【符号の説明】
【0066】
W ウエハ
1 真空容器
2 回転テーブル
31 第1の反応ガスノズル
32 第2の反応ガスノズル
41、42 分離ガスノズル
61、62 排気口
P1 第1の処理領域
P2 第2の処理領域
P3 照射領域
201 レーザ照射部
202 光源
203 光学部材
204 電源
206 透明窓
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置において、
前記真空容器内に設けられ、基板を載置するための基板載置領域を有するテーブルと、
このテーブル上の前記基板に第1の反応ガスを供給するための第1の反応ガス供給手段と、
前記テーブル上の前記基板に第2の反応ガスを供給するための第2の反応ガス供給手段と、
前記基板載置領域に対向するようにかつ前記基板載置領域上の基板における前記テーブルの中心側の端部と前記テーブルの外周側の端部との間に亘って帯状にレーザ光を照射するように設けられ、前記基板上にて第1の反応ガスの成分と第2の反応ガスの成分とを反応させて反応生成物を生成させるためのレーザ照射部と、
前記第1の反応ガス供給手段、前記第2の反応ガス供給手段及び前記レーザ照射部と前記テーブルとを相対的に回転させるための回転機構と、
前記真空容器内を排気するための真空排気手段と、を備え、
前記第1の反応ガス供給手段、前記第2の反応ガス供給手段及び前記レーザ照射部は、前記相対的な回転時に前記第1の反応ガスが供給される第1の処理領域、前記第2の反応ガスが供給される第2の処理領域及び前記レーザ光が照射される照射領域の順に基板が位置するように配置されていることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記レーザ照射部は、前記基板上に反応生成物を生成させることに加えて、当該反応生成物の改質を行うためのものであることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記レーザ照射部は、第1の反応ガスの成分と第2の反応ガスの成分とを反応させる代わりに、前記基板上の前記反応生成物を改質するためのものであることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記第1の処理領域と前記第2の処理領域との雰囲気を分離するために、前記テーブルの相対的回転方向においてこれら処理領域の間に各々設けられ、分離ガス供給手段から分離ガスが供給される分離領域を備え、
前記照射領域は、前記第2の処理領域と、当該第2の処理領域の前記相対的回転方向下流側に位置する分離領域と、の間に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項5】
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜方法において、
真空容器内に設けられたテーブルの基板載置領域に基板を載置する工程と、
前記真空容器内を真空排気する工程と、
第1の反応ガス供給手段、第2の反応ガス供給手段及びレーザ照射部と前記テーブルとを相対的に回転させる工程と、
前記テーブル上の基板に前記第1の反応ガス供給手段から第1の反応ガスを供給する工程と、
前記テーブル上の基板に前記第2の反応ガス供給手段から第2の反応ガスを供給する工程と、
次いで、前記レーザ照射部から、前記基板における前記テーブルの中心側の端部と前記テーブルの外周側の端部との間に亘って帯状にレーザ光を照射することにより、前記基板上にて第1の反応ガスの成分と第2の反応ガスの成分とを反応させて反応生成物を生成させる工程と、を含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項6】
前記反応生成物を生成させる工程は、反応生成物の生成に加えて、当該反応生成物の改質を行う工程であることを特徴とする請求項5に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記反応生成物を生成させる工程は、第1の反応ガスの成分と第2の反応ガスの成分とを反応させて反応生成物を生成させる代わりに、前記基板上の前記反応生成物を改質する工程であることを特徴とする請求項5に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記基板を載置する工程の後に、前記第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と前記第2の反応ガスが供給される第2の処理領域との雰囲気を分離するために、前記テーブルの相対的回転方向においてこれら処理領域の間に各々設けられた分離領域に対して分離ガス供給手段から分離ガスを供給する工程を行うことを特徴とする請求項5ないし7のいずれか一つに記載の成膜方法。
【請求項9】
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、請求項5ないし8のいずれか一つに記載の成膜方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【請求項1】
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置において、
前記真空容器内に設けられ、基板を載置するための基板載置領域を有するテーブルと、
このテーブル上の前記基板に第1の反応ガスを供給するための第1の反応ガス供給手段と、
前記テーブル上の前記基板に第2の反応ガスを供給するための第2の反応ガス供給手段と、
前記基板載置領域に対向するようにかつ前記基板載置領域上の基板における前記テーブルの中心側の端部と前記テーブルの外周側の端部との間に亘って帯状にレーザ光を照射するように設けられ、前記基板上にて第1の反応ガスの成分と第2の反応ガスの成分とを反応させて反応生成物を生成させるためのレーザ照射部と、
前記第1の反応ガス供給手段、前記第2の反応ガス供給手段及び前記レーザ照射部と前記テーブルとを相対的に回転させるための回転機構と、
前記真空容器内を排気するための真空排気手段と、を備え、
前記第1の反応ガス供給手段、前記第2の反応ガス供給手段及び前記レーザ照射部は、前記相対的な回転時に前記第1の反応ガスが供給される第1の処理領域、前記第2の反応ガスが供給される第2の処理領域及び前記レーザ光が照射される照射領域の順に基板が位置するように配置されていることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記レーザ照射部は、前記基板上に反応生成物を生成させることに加えて、当該反応生成物の改質を行うためのものであることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記レーザ照射部は、第1の反応ガスの成分と第2の反応ガスの成分とを反応させる代わりに、前記基板上の前記反応生成物を改質するためのものであることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記第1の処理領域と前記第2の処理領域との雰囲気を分離するために、前記テーブルの相対的回転方向においてこれら処理領域の間に各々設けられ、分離ガス供給手段から分離ガスが供給される分離領域を備え、
前記照射領域は、前記第2の処理領域と、当該第2の処理領域の前記相対的回転方向下流側に位置する分離領域と、の間に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の成膜装置。
【請求項5】
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜方法において、
真空容器内に設けられたテーブルの基板載置領域に基板を載置する工程と、
前記真空容器内を真空排気する工程と、
第1の反応ガス供給手段、第2の反応ガス供給手段及びレーザ照射部と前記テーブルとを相対的に回転させる工程と、
前記テーブル上の基板に前記第1の反応ガス供給手段から第1の反応ガスを供給する工程と、
前記テーブル上の基板に前記第2の反応ガス供給手段から第2の反応ガスを供給する工程と、
次いで、前記レーザ照射部から、前記基板における前記テーブルの中心側の端部と前記テーブルの外周側の端部との間に亘って帯状にレーザ光を照射することにより、前記基板上にて第1の反応ガスの成分と第2の反応ガスの成分とを反応させて反応生成物を生成させる工程と、を含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項6】
前記反応生成物を生成させる工程は、反応生成物の生成に加えて、当該反応生成物の改質を行う工程であることを特徴とする請求項5に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記反応生成物を生成させる工程は、第1の反応ガスの成分と第2の反応ガスの成分とを反応させて反応生成物を生成させる代わりに、前記基板上の前記反応生成物を改質する工程であることを特徴とする請求項5に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記基板を載置する工程の後に、前記第1の反応ガスが供給される第1の処理領域と前記第2の反応ガスが供給される第2の処理領域との雰囲気を分離するために、前記テーブルの相対的回転方向においてこれら処理領域の間に各々設けられた分離領域に対して分離ガス供給手段から分離ガスを供給する工程を行うことを特徴とする請求項5ないし7のいずれか一つに記載の成膜方法。
【請求項9】
真空容器内にて互いに反応する少なくとも2種類の反応ガスを順番に基板の表面に供給しかつこの供給サイクルを実行することにより反応生成物の層を多数積層して薄膜を形成する成膜装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
前記コンピュータプログラムは、請求項5ないし8のいずれか一つに記載の成膜方法を実施するようにステップが組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−96986(P2011−96986A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252375(P2009−252375)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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