説明

振動吸収装置及びこれを備えた自走式作業機械

【課題】振幅を維持しつつ、大きな減衰効果を得ることができる振動吸収装置を提供すること。
【解決手段】旋回フレーム6に固定されたケーシング17と、ケーシング17に封入され、このケーシング17内を移動する部材に対してその移動速度が高いほど大きな抵抗力を与える粘性を有する高粘性液体20と、キャブ8に、キャブ8とともに変位するように固定される堅軸19と、堅軸19の少なくとも一部がケーシング17内の高粘性液体20内に浸漬されるように当該堅軸19とケーシング17とを連結する弾性部材18と、高粘性液体20内に浸漬され、堅軸19と連動して高粘性液体20中を移動するように当該堅軸19と連結される回動部材30と、ケーシング17に対する堅軸19の相対移動に伴い、その相対移動速度よりも高い速度で回動部材30の少なくとも一部が高粘性液体20内を移動するように回動部材30を堅軸19と連動させる増速機構とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1部材と、第2部材との間に設けられ、第1部材と第2部材との間で伝達する振動を吸収するための振動吸収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、上記振動吸収装置として、例えば、図5に示すような高粘性液体封入マウントが知られている。
【0003】
高粘性液体封入マウント101は、有底容器状のケーシング102と、このケーシング102の上部に設けられた筒状弾性体103と、この筒状弾性体103の内側に固定された堅軸104と、この堅軸104の下端に取り付けられた減衰板105と、前記ケーシング102に封入された高粘性液体106とを備えている。ケーシング102は、所定の取付部に固定されている一方、堅軸104は、前記取付部に取り付けられる取付対象物に固定されている。前記筒状弾性体103は、ケーシング102及び堅軸104の双方に固定され、振動が生じていない状態において前記堅軸104を所定の位置に保持するとともに、振動が生じたときに弾性変形してケーシング102と堅軸104との相対変位を許容するようになっている。
【0004】
前記高粘性液体封入マウント101においてケーシング102に振動が入力されると、筒状弾性体103が弾性変形して、減衰板105(堅軸104)とケーシング102とが相対変位することになる。このとき、高粘性液体は、ケーシング102の内面と減衰板の外面との隙間を通って流れてせん断されるため、取付部と取付対象物との間には、高粘性液体の粘度に応じた減衰力が発生する。このように、高粘性液体封入マウント101では、減衰板105、つまり堅軸104の移動範囲が大きい程、大きな減衰効果を得ることができる。
【0005】
より大きな減衰効果を得るために、例えば、特許文献1には、上下の振動ストロークを大きくした液体封入サスペンションが開示されている。図6は、特許文献1に係る液体封入サスペンションを示す側面断面図である。
【0006】
図6を参照して、特許文献1の液体封入サスペンション107は、容器108と、ガイドシャフト109と、容器108に対してガイドシャフト109を横方向に支持するマウントゴム110と、容器108に対してガイドシャフト109を軸方向に支持するばね部材111とを備えている。マウントゴム110は、ガイドシャフト109を軸方向に摺動可能な状態で横方向に支持する。つまり、特許文献1に係る液体封入サスペンション107は、横方向にガイドシャフト109を支持するマウントゴム110と、軸方向にガイドシャフト109を支持するばね部材111とをそれぞれ備えているため、ばね部材111の設定次第でガイドシャフト109の上下の振動ストロークを大きくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−254241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の液体封入サスペンション107は、ガイドシャフト109の軸方向の振動ストロークを大きくしているので、振動が生じたときにおける、ガイドシャフト109と容器108との間の振幅が大きくなるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、振幅を維持しつつ、大きな減衰効果を得ることができる振動吸収装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、第1部材と第2部材とを連結しながら、これら第1部材と第2部材との間で伝達される振動を吸収するための振動吸収装置であって、
前記第1部材に固定され、内部に流体を封入可能な貯留部材と、前記貯留部材内に封入され、この貯留部材内を移動する部材に対してその移動速度が高いほど大きな抵抗力を与える粘性を有する振動吸収用流体と、前記第2部材に、この第2部材とともに変位するように固定される被固定部材と、前記被固定部材の少なくとも一部が前記貯留部材内の振動吸収用流体内に浸漬されるように当該被固定部材と当該貯留部材とを連結し、かつ、当該貯留部材に対する当該被固定部材の相対変位を許容するように弾性変形することが可能な弾性部材と、前記振動吸収用流体内に浸漬され、前記被固定部材と連動して前記振動吸収用流体中を移動するように当該被固定部材と連結される連動部材と、前記貯留部材に対する前記被固定部材の相対移動に伴い、その相対移動速度よりも高い速度で前記連動部材の少なくとも一部が前記振動吸収用流体内を移動するように、当該連動部材を当該被固定部材と連動させる増速機構とを備えたことを特徴とする振動吸収装置を提供する。
【0011】
本発明によれば、増速機構により貯留部材と被固定部材との相対移動速度よりも高い速度で連動部材を振動吸収用流体内で移動させることができるので、前記相対移動について振動吸収用流体から大きな抵抗力を得ることができる。
【0012】
したがって、本発明によれば、第1部材と第2部材との相対的な変位量、すなわち、振幅を維持しつつ、大きな減衰効果を得ることができる。
【0013】
前記振動吸収装置において、前記増速機構は、前記連動部材が所定の回動支点回りに回動可能となるように当該連動部材を前記貯留部材側に支持する回動支持部を含み、前記回動支点の位置は、当該回動支点から前記連動部材のうちこの連動部材が前記被固定部材に連結される連結部位までの距離よりも、当該回動支点から当該回動支点を挟んで前記連結部位と反対側の部位までの距離が大きくなるように、設定されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、回動支点から連動部材の被固定部材に対する連結部位までの回動半径よりも、回動支点から前記連結部位と反対側の部位までの回動半径を大きくすることにより、被固定部材と貯留部材との相対変位の速度よりも連動部材の前記反対側の部位の回動の速度を高くすることができる。
【0015】
前記振動吸収装置において、前記被固定部材は、前記第1部材と前記第2部材とが並ぶ方向と平行な方向に延びる軸状をなし、前記回動支持部は、前記連動部材が前記被固定部材の軸方向と略直交する軸回りに回動可能となるように当該連動部材を支持することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、被固定部材の軸方向の振動を、当該被固定部材の軸方向と直交する軸回りに連動部材を回動させることによって減衰させることが可能となる。
【0017】
前記振動吸収装置において、前記連動部材及びこれを支持する回動支持部が、前記被固定部材を中心としてその周方向に並ぶ複数の位置にそれぞれ配置されることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、1の被固定部材に対して複数の連動部材及び回動支持部が設けられているため、より大きな減衰効果を得ることができる。
【0019】
また、本発明は、走行体を含む本体部と、前記本体部上に搭載されるキャブと、前記本体部とキャブとを連結しながら当該本体部から当該キャブに伝達される振動を吸収するマウントとを備え、前記マウントとして前記振動吸収装置を含み、この振動吸収装置の被固定部材が前記本体部、前記キャブのうちのいずれか一方に固定され、他方に前記振動吸収装置の貯留部材が固定されることを特徴とする自走式作業機械を提供する。
【0020】
さらに、本発明は、走行体を含む本体部と、前記本体部上に搭載されるキャブと、前記本体部とキャブとを連結しながら当該本体部から当該キャブに伝達される振動を吸収するマウントとを備え、前記マウントとして請求項2〜4のいずれかに記載の振動吸収装置を含み、この振動吸収装置の被固定部材の軸方向が上下方向となる姿勢で当該被固定部材が前記本体部、前記キャブのうちのいずれか一方に固定され、他方に前記振動吸収装置の貯留部材が固定されることを特徴とする自走式作業機械を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、振幅を維持しつつ、大きな減衰効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る油圧ショベルの右側面図である。
【図2】図1の油圧ショベルのキャブを拡大して示す右側面図である。
【図3】図2のマウント16の側面断面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】従来の高粘性液体封入マウントの構成を示す側面断面図である。
【図6】特許文献1に係る液体封入サスペンションを示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る油圧ショベルの右側面図である。図2は、図1の油圧ショベルのキャブを拡大して示す右側面図である。なお、以下の説明では、キャブ8内のオペレータから見た前後左右方向を用いて説明する。
【0025】
図1を参照して、建設機械の一例としての油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2と、この下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とを備えている。
【0026】
下部走行体2は、ロワフレーム4と、このロワフレーム4の左右両側に設けられた一対のクローラ5(図1では1つ示している)とを備えている。各クローラ5は、駆動輪5aと、遊動輪5bと、これら両輪5a、5bに巻回されたクローラベルト5cとをそれぞれ備え、前記クローラベルト5cの循環動作に応じて走行するようになっている。
【0027】
上部旋回体3は、下部走行体2上に旋回可能に搭載された旋回フレーム6と、この旋回フレーム6に起伏可能に設けられた作業アタッチメント7と、この作業アタッチメント7の左側で、旋回フレーム6の前部に設けられたキャブ8と、このキャブ8と旋回フレーム6との間に設けられた複数のマウント16(図2)とを備えている。
【0028】
作業アタッチメント7は、ブーム9と、このブーム9の先端部に揺動可能に軸支されたアーム10と、このアーム10の先端部に揺動可能に軸支されたバケット11とを備えている。ブーム9は、旋回フレーム6との間に設けられたブームシリンダ12の伸縮に応じて旋回フレーム6に対して起伏する。アーム10は、ブーム9との間に設けられたアームシリンダ14の伸縮に応じてブーム9に対して揺動する。バケット11は、アーム10との間に設けられたバケットシリンダ15の伸縮に応じてアーム10に対して揺動する。
【0029】
キャブ8は、前記作業アタッチメント7(ブーム9)の左側で、旋回フレーム6の前部に設けられている。具体的に、キャブ8は、図2に示すように、旋回フレーム6上に固定された複数のマウント16の上に取り付けられている。
【0030】
図3は、図2のマウント16の側面断面図である。図4は、図3のIV−IV線断面図である。
【0031】
図2〜図4を参照して、本実施形態において、マウント16は、キャブ8の4隅に対応する前後左右位置に4個設けられている(図2では左側の2つのみ示している)。これらマウント16は、全て同様の構成を有しているため、以下、1つのマウント16の構成を例に挙げて説明する。
【0032】
マウント16は、旋回フレーム6とキャブ8との間に設けられ、前記旋回フレーム6からキャブ8に伝達する振動を吸収するようになっている。具体的に、マウント16は、旋回フレーム6に固定されたケーシング(貯留部材)17と、このケーシング17の上部に設けられた弾性部材18と、キャブ8に固定された堅軸(被固定部材)19と、ケーシング17内に溜められた高粘性液体(振動吸収用流体)20と、前記ケーシング17内に設けられた連動機構21とを備えている。
【0033】
ケーシング17は、金属等からなる有底容器状の部材である。具体的に、本実施形態に係るケーシング17は、筒状の胴体部22と、この胴体部22の下端を閉じる底部23と、前記胴体部22の上部から外側に折り返されたフランジ部24とを一体に備えている。このケーシング17は、前記旋回フレーム6に形成された図外の孔に上から挿入され、前記フランジ部24の下面と旋回フレーム6の上面とを当接させた状態で、当該旋回フレーム6上に固定される。
【0034】
高粘性液体20は、ケーシング17内に封入されている。また、高粘性液体20は、コの高粘性液体20内を移動する部材に対してその移動速度が高いほど大きな抵抗力を与える粘性を有している。
【0035】
弾性部材18は、前記ケーシング17における胴体部22の上部開口を塞ぐように、当該胴体部22の内側面及びフランジ部24の上面に固定されている。また、弾性部材18には、前記胴体部22の軸線に沿って上下に貫通する貫通孔25が形成されている。弾性部材18は、ケーシング17だけでなく、貫通孔25に挿入された堅軸19の途中部にも固定されている。具体的に、弾性部材18は、堅軸19の下端部がケーシング17内の高粘性液体20内に浸漬されるように堅軸19と連結し、かつ、ケーシング17に対する堅軸19の相対変位を許容するように弾性変形することが可能に構成されている。
【0036】
堅軸19は、旋回フレーム6とキャブ8とが並ぶ方向と平行な方向に延びるとともに、前記ケーシング17の胴体部22と同軸に配置された金属製の軸である。堅軸19は、弾性部材18を弾性変形させつつ、上下方向及び前後左右方向に変位可能となるように、ケーシング17に取り付けられている。また、堅軸19の下部には、堅軸19の途中部の直径寸法よりも小さな直径寸法を有する小径部26と、この小径部26の下端部で径方向に膨出するディスク部27とが設けられており、ディスク部27から小径部26の途中部までの範囲が高粘性液体20に浸漬されている。
【0037】
連動機構21は、高粘性液体20に浸漬された状態で、前記堅軸19回りの90°ごとに4個設けられている。各連動機構21は、それぞれ同様の構成を有しているため、以下の説明では、1つの連動機構21の構成について説明する。
【0038】
連動機構21は、堅軸19と連動して高粘性液体20中を移動するように堅軸19と連結される回動部材(連動部材)30と、堅軸19の移動に伴い、その相対移動速度よりも高い速度で回動部材30の少なくとも一部が高粘性液体20内を移動するように、当該か移動部材30を回動軸(回動支点)29回りに回動可能となるように回動部材30をケーシング17に支持する支持部(回動支持部)28とを備えている。具体的に、回動軸29の位置は、当該回動軸29から回動部材30のうちこの回動部材30が堅軸19に連結される連結部位までの距離D1よりも、回動軸29から当該回動軸29を挟んで前記連結部位と反対側の部位までの距離D2が大きくなるように、設定されている。
【0039】
回動軸29は、前記堅軸19の軸線と直交する方向に延びる金属製の軸である。回動軸29は、前記各支持部28によって両端部が支持されており、各支持部28の間の途中部において回動部材30を軸支するようになっている。
【0040】
回動部材30の基端部は、前記堅軸19のディスク部27と従動可能に連結されている一方、回動部材30の先端部は、前記基端部の上下動に応じて前記回動軸29回りに回動する自由端部とされている。具体的に、回動部材30の基端部には、前記ディスク部27に係合する係合部31が設けられている。係合部31は、前記ディスク部27を上下に挟むことができるように、側面視でコの字型の断面形状とされている。したがって、前記ディスク部27の上下動に応じて回動部材30が回動軸29回りに上下に回動することになる。
【0041】
また、回動部材30のうち、前記回動軸29から自由端部までの範囲は、先広がりの扇形部32(図4参照)とされている。扇形部32は、堅軸19と直交する方向のケーシング17(胴体部22)の円形断面を、堅軸19の軸線を通る平面によって4等分(回動部材30の数で等分)したときの1の部分の形状に対応して形成されている。換言すると、4つの扇形部32の形状を合わせることにより、ケーシング17(胴体部22)の断面形状に対応する形となる。この扇形部32の先端部は、上方に屈曲された鉤状部33とされ、高粘性液体20内を移動する際の抵抗(減衰効果を生じさせるための力)をより大きなものにするようになっている。
【0042】
前記マウント16の動作について説明する。
【0043】
旋回フレーム6に上下方向の振動が生じると、ケーシング17に対して堅軸19が上下に相対変位する。堅軸19が変位すると、当該堅軸19のディスク部27に従動して係合部31が上下動し、係合部31の上下動に応じて各回動部材30が回動する。各回動部材30について、回動部材30の基端部と回動軸29との間の距離D1が回動部材30の自由端部と回動軸29との間の距離D2よりも短く設定されているため、堅軸19の変位量よりも大きな変位量で回動部材30の自由端部を変位させることができる。換言すると、堅軸19の実際の移動速度よりも高い速度で回動部材30の自由端部を高粘性液体20内で移動させることができる。したがって、回動部材30が高粘性液体20から受ける抵抗力をより大きくすることができるため、旋回フレーム6において生じた振動を減衰させる効果をより大きなものとすることができる。
【0044】
以上説明したように、前記実施形態によれば、ケーシング17と堅軸19との相対移動速度よりも高い速度で回動部材30を高粘性液体20内で移動させることができるので、前記相対移動について高粘性液体20から大きな抵抗力を得ることができる。
【0045】
したがって、本発明によれば、ケーシング17と堅軸19との相対的な変位量、すなわち、旋回フレーム6とキャブ8との間の振幅を維持しつつ、大きな減衰効果を得ることができる。
【0046】
前記実施形態のように、回動軸29から回動部材30の基端部までの距離D1よりも、回動軸29から回動部材30の自由端部までの距離D2が大きくなるように回動軸29の位置が設定されていることにより、堅軸19とケーシング17との相対変位の速度よりも回動部材30の自由端部の回動の速度を高くすることができる。
【0047】
前記実施形態のように、回動部材30が堅軸19の軸方向と略直交する軸回りに回動可能となるように、支持部28が回動部材30を支持する構成によれば、堅軸19の軸方向の振動を、当該堅軸19の軸方向と直交する軸回りに回動部材30を開動させることによって減衰させることができる。
【0048】
前記実施形態のように、回動部材30及びこれを支持する支持部28が堅軸19を中心としてその周方向に並ぶ複数の位置にそれぞれ配置されている構成によれば、1の堅軸19に対して複数の連動部材30及び支持部28が設けられているので、より大きな減衰効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 油圧ショベル(建設機械)
6 旋回フレーム
8 キャブ
16 マウント
17 ケーシング(貯留部)
19 堅軸(被固定部材)
20 高粘性液体(振動吸収用流体)
21 連動機構
28 支持部(回動支持部)
29 回動軸(回動支点)
30 回動部材(連動部材)
31 係合部
32 扇形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材とを連結しながら、これら第1部材と第2部材との間で伝達される振動を吸収するための振動吸収装置であって、
前記第1部材に固定され、内部に流体を封入可能な貯留部材と、
前記貯留部材内に封入され、この貯留部材内を移動する部材に対してその移動速度が高いほど大きな抵抗力を与える粘性を有する振動吸収用流体と、
前記第2部材に、この第2部材とともに変位するように固定される被固定部材と、
前記被固定部材の少なくとも一部が前記貯留部材内の振動吸収用流体内に浸漬されるように当該被固定部材と当該貯留部材とを連結し、かつ、当該貯留部材に対する当該被固定部材の相対変位を許容するように弾性変形することが可能な弾性部材と、
前記振動吸収用流体内に浸漬され、前記被固定部材と連動して前記振動吸収用流体中を移動するように当該被固定部材と連結される連動部材と、
前記貯留部材に対する前記被固定部材の相対移動に伴い、その相対移動速度よりも高い速度で前記連動部材の少なくとも一部が前記振動吸収用流体内を移動するように、当該連動部材を当該被固定部材と連動させる増速機構とを備えたことを特徴とする振動吸収装置。
【請求項2】
請求項1記載の振動吸収装置において、
前記増速機構は、前記連動部材が所定の回動支点回りに回動可能となるように当該連動部材を前記貯留部材側に支持する回動支持部を含み、
前記回動支点の位置は、当該回動支点から前記連動部材のうちこの連動部材が前記被固定部材に連結される連結部位までの距離よりも、当該回動支点から当該回動支点を挟んで前記連結部位と反対側の部位までの距離が大きくなるように、設定されていることを特徴とする振動吸収装置。
【請求項3】
請求項2記載の振動吸収装置において、
前記被固定部材は、前記第1部材と前記第2部材とが並ぶ方向と平行な方向に延びる軸状をなし、
前記回動支持部は、前記連動部材が前記被固定部材の軸方向と略直交する軸回りに回動可能となるように当該連動部材を支持することを特徴とする振動吸収装置。
【請求項4】
請求項3記載の振動吸収装置において、
前記連動部材及びこれを支持する回動支持部が、前記被固定部材を中心としてその周方向に並ぶ複数の位置にそれぞれ配置されることを特徴とする振動吸収装置。
【請求項5】
走行体を含む本体部と、
前記本体部上に搭載されるキャブと、
前記本体部とキャブとを連結しながら当該本体部から当該キャブに伝達される振動を吸収するマウントとを備え、
前記マウントとして請求項1〜4のいずれか1項に記載の振動吸収装置を含み、
この振動吸収装置の被固定部材が前記本体部、前記キャブのうちのいずれか一方に固定され、他方に前記振動吸収装置の貯留部材が固定されることを特徴とする自走式作業機械。
【請求項6】
走行体を含む本体部と、
前記本体部上に搭載されるキャブと、
前記本体部とキャブとを連結しながら当該本体部から当該キャブに伝達される振動を吸収するマウントとを備え、
前記マウントとして請求項2〜4のいずれかに記載の振動吸収装置を含み、
この振動吸収装置の被固定部材の軸方向が上下方向となる姿勢で当該被固定部材が前記本体部、前記キャブのうちのいずれか一方に固定され、他方に前記振動吸収装置の貯留部材が固定されることを特徴とする自走式作業機械。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−230038(P2010−230038A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76045(P2009−76045)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】