排ガス浄化装置
【課題】再生処理の頻度を少なくすることができ、複雑なシステム制御を用いることなく排ガス浄化フィルタ内の急激温度上昇を抑制することができる排ガス浄化装置を提供すること。
【解決手段】内燃機関5の排ガス通路54に設けられ、排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集する排ガス浄化フィルタ2と、その温度を所定の再生温度まで上昇させて排ガス浄化フィルタ2内に堆積した粒子状物質を燃焼除去することにより、排ガス浄化フィルタ2の捕集能力の再生処理を行うフィルタ再生手段151とを備える排ガス浄化装置1である。排ガス浄化フィルタ2は、多孔質体からなる基材と、該基材に担持された排ガス浄化触媒とを有する。排ガス浄化触媒は、ゼオライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物又はソーダライトが温度600℃以上で焼成されてなる。
【解決手段】内燃機関5の排ガス通路54に設けられ、排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集する排ガス浄化フィルタ2と、その温度を所定の再生温度まで上昇させて排ガス浄化フィルタ2内に堆積した粒子状物質を燃焼除去することにより、排ガス浄化フィルタ2の捕集能力の再生処理を行うフィルタ再生手段151とを備える排ガス浄化装置1である。排ガス浄化フィルタ2は、多孔質体からなる基材と、該基材に担持された排ガス浄化触媒とを有する。排ガス浄化触媒は、ゼオライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物又はソーダライトが温度600℃以上で焼成されてなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関の排ガス中には、パティキュレートマター(PM)、NOx等の有害物質が含まれている。また、直噴ガソリンエンジンでは、理論空燃比よりも薄い混合気で運転(リーンバーン)するエンジンがあり、このようなガソリンエンジンから排出される排ガス中においても、PM及びNOx等の有害物質が含まれている。
このような有害物質は、排ガス経路に設けられた排ガス浄化フィルタにより燃焼除去又は吸着除去されていた。
【0003】
一般に、排ガス浄化フィルタは、多孔質体からなり、PM等の粒子状物質を捕集することができる。粒子状物質が堆積すると圧力損失が高まり、エンジンの運転に悪影響を与えるおそれがある。そのため、排ガス浄化フィルタに堆積した粒子状物質を間欠的に燃焼除去するという再生処理が行われていた。具体的には、内燃機関において燃料を燃焼させ、これにより生じる高温の排ガスを用いて再生処理を行っていた。
【0004】
この再生処理を比較的低温でかつ確実に行うために、排ガス浄化フィルタに、PMに対する燃焼促進作用を有する白金等の貴金属触媒を担持することが行われていた。
貴金属触媒が担持された排ガス浄化フィルタにおいては、再生処理は、PMが燃焼する温度600℃以上で行われていた。より確実な燃焼のためには、630℃以上で行う必要があった。
【0005】
再生処理中に、例えば内燃機関の運転状態が減速状態になると、上記排ガス浄化フィルタへ流入する排ガスの量が減少し、PMの燃焼熱が上記排ガス浄化フィルタ内に滞留し、上記排ガス浄化フィルタ内の急速温度上昇を引き起こすという問題を生じていた。この急速温度上昇は、1000℃を越える高温にまで到達するおそれがあり、その結果、排ガス浄化フィルタの溶損を引き起こすおそれがあった。
【0006】
急速温度上昇を抑制するために、アイドル運転時に、アイドル回転数を上昇させる技術が開発されている(特許文献1参照)。
また、フィルタが過昇温するかどうかを判定するOT判定手段を設ける技術が開発されている(特許文献2参照)
また、排気管の構成部品の温度をモニタリングし、温度超過が会った場合、多段階手段の構成を使用する技術が開発されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−204774号公報
【特許文献2】特開2005−201210号公報
【特許文献3】特開2007−170382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術において、急速温度上昇を抑制するためには、ロバスト性の高いシステム制御が必要となり、システムが複雑化するという問題があった。また、例えば15分程度の短時間でPMを燃焼させるためには、600℃以上という高温での燃焼が必要となり、燃費が悪化するおそれがあった。
【0009】
また、内燃機関の運転状態が減速状態になったときにおける急速温度上昇は、PMの堆積量が多くなると起こりやすくなる。即ち、PMの燃焼は、一旦始まると燃焼伝播で急速に進行し、特に排ガス浄化フィルタ内に白金等の貴金属系触媒が存在する場合には、燃焼伝播はさらに加速する。その結果、急速温度上昇が加速的に進行し、排ガス浄化フィルタの溶損が起こる可能性が高くなる。これを回避するために、従来においては、PMがあまり多く堆積していない状態で上記排ガス浄化フィルタの再生を行い、再生のタイミングをできるだけ早くして再生処理の頻度を多くする必要があった。しかし、上記排ガス浄化フィルタの再生は、燃料の消費を伴うため、再生のタイミングを早くするとますます燃費が低下してしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、再生処理の頻度を少なくすることができ、複雑なシステム制御を用いることなく排ガス浄化フィルタ内の急激温度上昇を抑制することができる排ガス浄化装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、内燃機関の排ガス通路に設けられ、排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集する排ガス浄化フィルタと、該排ガス浄化フィルタ内の温度を所定の再生温度まで上昇させて上記排ガス浄化フィルタ内に堆積した上記粒子状物質を燃焼除去することにより、上記排ガス浄化フィルタの捕集能力の再生処理を行うフィルタ再生手段とを備える排ガス浄化装置において、
上記排ガス浄化フィルタは、多孔質体からなる基材と、該基材に担持された排ガス浄化触媒とを有し、
該排ガス浄化触媒は、ゼオライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物又はソーダライトが温度600℃以上で焼成されてなることを特徴とする排ガス浄化装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0012】
本発明の排ガス浄化装置において、上記排ガス浄化フィルタは、上記基材と上記排ガス浄化触媒とを有し、該排ガス浄化触媒は、ゼオライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物又はソーダライトが温度600℃以上で焼成されてなる。
上記排ガス浄化触媒は、パティキュレートマター(PM)等の上記粒子状物質に対する優れた燃焼促進作用を有する。そのため、上記排ガス浄化フィルタにおいては、上記排ガス浄化触媒の作用により、上記粒子状物質を例えば600℃未満という低温で燃焼除去させることができる。それ故、上記排ガス浄化フィルタの再生温度を低くすることができる。
【0013】
また、上記排ガス浄化触媒を備えた上記排ガス浄化フィルタにおいては、急速温度上昇が抑制される。
即ち、従来のPt等の貴金属触媒を備えた排ガス浄化フィルタにおいては、例えば内燃機関の運転状態が減速状態になった時などに、急速温度上昇が起こり上記排ガス浄化フィルタ内の温度が少なくとも部分的に例えば1000℃を越える高温にまで到達するおそれがあった。その結果、排ガス浄化フィルタの基材が溶損するおそれがあった。
これに対し、上記混合物又はソーダライトを温度600℃以上で焼成してなる上記排ガス浄化触媒を備えた上記排ガス浄化フィルタにおいては、Pt等の貴金属触媒が担持されたものに比べて温度上昇が緩やかになり、上記基材に溶損等のダメージを与える程の高温にはなり難くなる。上記再生処理中に上記内燃機関の運転状態が減速状態になったときにおいても上記排ガス浄化フィルタ内の急速温度上昇を抑制することができる。
したがって、本発明によれば、従来のように複雑なシステム制御を行わなくとも急速温度上昇を抑制することができる。
【0014】
また、急速温度上昇は、上記再生処理の開始温度、即ち、上記再生温度に依存する傾向がある。即ち、上記再生温度を高く設定すると、再生処理中の急速温度上昇がより高い温度にまで到達し易くなる。
例えば従来の貴金属触媒を用いた場合においては、PMを確実に燃焼するために再生温度を630℃程度にする必要が生じるが、このような高い再生温度では、急速温度上昇が起こって排ガス浄化フィルタの温度が基材にダメージを与える高温(例えば900℃以上)にまで上昇するおそれがあった。
これに対し、上記排ガス浄化触媒を用いると、再生温度を630℃程度にしても、再生処理中に基材にダメージを与える温度まで温度が急上昇することを防止することができる。さらに、上述のごとく上記排ガス浄化触媒を用いると600℃未満という低温でもPM等の上記粒子状物質を燃焼させることができる。そのため、上記再生温度を600℃未満に設定することができ、より確実に急速温度上昇を抑制し、上述の溶損を防止することができる。
【0015】
また、急速温度上昇は、PM等の粒子状物質の堆積量に依存する傾向がある。即ち、上記再生処理開始時に上記排ガス浄化フィルタ内に堆積していた上記粒子状物質の堆積量が多いほど、より低温の再生温度からでも急速温度上昇が起こり易く、基材にダメージを与える高温に到達し易くなる傾向にある。
従来のPt等の貴金属触媒を用いた場合には、PMの堆積量が6g/L程度の状態で再生処理を行っても急速温度上昇が起こるおそれがある。そのため、再生処理を開始するPMの堆積量を5g/L以下、より好ましくは4g/L以下にする必要があった。
これに対し、本発明の上記排ガス浄化装置においては、上記排ガス浄化触媒が用いられているため、例えばPMの堆積量12g/Lの状態で再生処理を行っても、再生温度を例えば600℃未満に設定することにより、急速温度上昇を抑制することができる。
そのため、上記再生処理を行う頻度を減らすことができ、低燃費化を図ることができる。
【0016】
また、上記排ガス浄化触媒は、アルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素の保持力が高い。
そのため、上記排ガス浄化触媒の性能劣化を防止することができ、上記排ガス浄化フィルタは、長期間安定に排ガスの浄化を行うことができる。
また、上記排ガス浄化触媒は、NOxを吸着することもできる。そのため、上記排ガス浄化フィルタは、排ガス中からNOxを吸着除去することもできる。
【0017】
以上のように、本発明によれば、再生処理の頻度を少なくすることができ、複雑なシステム制御を用いることなく排ガス浄化フィルタ内の急激温度上昇を抑制することができる排ガス浄化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1にかかる、排ガス浄化装置を組み込んだエンジンシステムを模式的に示した説明図。
【図2】実施例1にかかる、排ガス浄化フィルタを示す説明図。
【図3】実施例1にかかる、排ガス浄化フィルタの断面を示す説明図。
【図4】実施例1にかかる、排ガス浄化フィルタの隔壁の拡大断面を示し、隔壁に排ガス浄化触媒が担持された構成を示す説明図。
【図5】実施例1にかかる、排ガス浄化フィルタの部分断面を示し、排ガス浄化フィルタ内を排ガスが通過する様子を示す説明図。
【図6】実施例1にかかる、排ガス浄化フィルタの上流端側と下流端側における差圧と、排ガス浄化フィルタ内に堆積した粒子状物質(スート)の堆積量との関係を示す説明図。
【図7】実施例2にかかる、排ガス浄化装置を組み込んだエンジンシステムを模式的に示した説明図。
【図8】実施例2にかかる、排ガス浄化フィルタ内の熱電対の配設位置を示す説明図。
【図9】実施例2にかかる、。再生処理における燃料添加及び停止のタイミング、エンジン回転速度、吸入空気量、及び入口から10mmの位置における排ガス浄化フィルタの温度の制御パターンを示す説明図。
【図10】実施例2にかかる、排ガス浄化装置(装置E)を用いて、PM堆積モード、強制再生モード、減速運転モードを行ったときにおける排ガス浄化フィルタ内に設けられた各熱電対A〜Fによって検出された温度の経時変化を示す説明図。
【図11】実施例2にかかる、排ガス浄化装置(装置C)を用いて、PM堆積モード、強制再生モード、減速運転モードを行ったときにおける排ガス浄化フィルタ内に設けられた各熱電対A〜Fによって検出された温度の経時変化を示す説明図。
【図12】実施例2にかかる、再生処置を開始するときのPM堆積量を6g/L及び10g/Lに設定した排ガス浄化装置(装置E)を用いて再生処理を行ったときにおける再生温度と排ガス浄化フィルタ(DPF)内の最高温度との関係、及び再生処置を開始するときのPM堆積量を6g/Lに設定した排ガス浄化装置(装置C)を用いて再生処理を行ったときにおける再生温度と排ガス浄化フィルタ(DPF)内の最高温度との関係を示す説明図。
【図13】実験例1にかかる、各触媒種を用いて、又は触媒を用いずに、カーボンブラックを燃焼させたときのDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【図14】実験例1にかかる、触媒を用いずにカーボンブラックを単独で燃焼させた場合における温度とTG及びDTAとの関係を示す線図。
【図15】実験例1にかかる、触媒種として貴金属系触媒を用いてカーボンブラックを燃焼させた場合における温度とTG及びDTAとの関係を示す線図。
【図16】実験例1にかかる、触媒種として炭酸カリウムを用いてカーボンブラックを燃焼させた場合における温度とTG及びDTAとの関係を示す線図。
【図17】実験例1にかかる、触媒種として排ガス浄化触媒(試料E1)を用いてカーボンブラックを燃焼させた場合における温度とTG及びDTAとの関係を示す線図。
【図18】実験例1にかかる、焼成温度と水洗前後における排ガス浄化触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図19】実験例1にかかる、カリウム塩種と水洗前後における排ガス浄化触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図20】実験例1にかかる、アルカリ金属元素種・アルカリ土類金属元素種と水洗前後における排ガス浄化触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図21】実験例1にかかる、カリウム以外のアルカリ金属元素種・アルカリ土類金属元素種と水洗前後における排ガス浄化触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図22】実験例1にかかる、混合工程において混合するカリウム量と水洗前後における排ガス浄化触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図23】実験例1にかかる、混合工程において混合するバリウム量と水洗前後における排ガス浄化触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図24】実験例2にかかる、各触媒種を用いて、又は触媒を用いずに、カーボンブラックを燃焼させたときのDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【図25】実験例2にかかる、焼成温度と水洗前後における排ガス浄化触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図26】実験例2にかかる、ゼオライト種と触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図27】実験例3にかかる、各触媒種を用いて、又は触媒を用いずに、カーボンブラックを燃焼させたときの水洗前後のDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【図28】実験例4にかかる、種々のゼオライトと炭酸カリウムとの混合物を焼成してなる排ガス浄化触媒の水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【図29】実験例4にかかる、種々のゼオライトと炭酸カリウムとの混合物を触媒として用いたときの水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【図30】実験例5にかかる、種々の異なる焼成温度で作製した排ガス浄化触媒の水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【図31】実験例6にかかる、種々の異なる量のカリウムをゼオライトに混合して作製した排ガス浄化触媒の水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【図32】実験例7にかかる、種々の異なるアルカリ金属元素種・アルカリ土類金属元素種を用いて作製した排ガス浄化触媒の水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
本発明の排ガス浄化装置は、上記排ガス浄化触媒と上記フィルタ再生手段とを有する。
上記フィルタ再生手段は、例えばエンジン内での燃焼の噴射等を制御するエンジンコントロールユニット(以下ECUという)に組み込まれたコンピュータプログラムとして構成することができる。
【0020】
上記フィルタ再生手段は、400℃以上かつ600℃未満の上記再生温度まで上記排ガス浄化フィルタ内の温度を上昇させて上記再生処理を開始するように構成されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記再生温度を600℃未満という比較的低い温度にすることにより、上記急速温度上昇をより抑制することができる。また、この場合には、再生処理の開始時におけるPM等の粒子状物質の堆積量を増やすことができるため、上記再生処理の頻度をより少なくすることができる。また、上記排ガス浄化触媒は、その優れた燃焼促進作用により、上述のごとく600℃未満という低い再生温度でも短時間で上記粒子状物質を燃焼させることができる。
上記再生温度が400℃未満の場合には、上記粒子状物質の燃焼除去が困難になるおそれがある。
【0021】
また、上記フィルタ再生手段は、上記内燃機関の運転状態が減速状態にあるときに、600℃未満の上記再生温度で上記再生処理を開始し、上記運転状態が減速状態以外の状態にあるときには、温度600℃以上の温度で上記排ガス浄化フィルタの上記再生処理を行うことができる。
この場合には、運転状態が減速状態以外の状態にあるときにおける上記再生処理をより短時間で行うことができる。
【0022】
好ましくは、上記フィルタ再生手段は、上記内燃機関の運転状態によらず、常時600℃未満の上記再生温度で上記再生処理を行うように構成されていることがよい。
この場合には、運転状態によらず、より確実に急激温度上昇を抑制することができる。
即ち、運転状態は、運転者の操作に依存するため、ある時点の運転状態がその後どのような状態になるかを予想することは非常に困難であり、運転状態に応じた制御には限界がある。上記のごとく、運転状態によらず常時600℃未満の上記再生温度で上記再生処理を行うと、運転状態に応じた制御を行う必要がなくなる。そして、本発明においては、上記排ガス浄化触媒を採用しているため、温度600℃未満という低い温度でも上記粒子状物質の燃焼除去が可能であり、急激温度上昇を抑制することができる。
よって、複雑なシステムを用いることなく、よりロバスト性の高い上記排ガス浄化装置の構成が可能になる。
【0023】
上記排ガス浄化装置は、上記フィルタ再生手段は、上記排ガス浄化フィルタの上流側から10〜20mm内部にある所定位置の温度を上記再生温度として上記再生処理を行うように構成されていることが好ましい(請求項3)。
上記のごとく、上記排ガス浄化フィルタの上流側から10〜20mm内部、即ち、上記排ガス浄化フィルタにおいて、該排ガス浄化フィルタの軸方向における排ガスの入り側から10〜20mm内部にある所定位置の温度を上記再生温度とすることにより、正確に上記再生温度を決定し易くなる。
また、上記再生温度を決定する所定位置は、上記排ガス浄化フィルタの軸方向と垂直方向における略中心であることが好ましい。
上記排ガス浄化フィルタ内の上流側から10〜20mm内部の所定位置の温度は、サーミスタ、熱電対等の温度検出手段により測定することができる。
【0024】
次に、上記フィルタ再生手段は、上記排ガス浄化フィルタに流入する排ガスの温度を上昇させることにより上記粒子状物質の燃焼除去を行うように構成されていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、簡単に上記排ガス浄化フィルタ内の温度を上昇させることができる。
具体的には、例えば上記フィルタ再生手段による制御に基づいて内燃機関において燃料を燃焼させることにより、発生する排ガスの温度を上昇させることができる。
また、例えば上記フィルタ再生手段により上記排ガス浄化フィルタの上流側に配置したヒータの作動を制御し、上記排ガス浄化フィルタ内に流入する上記排ガスの温度を上昇させることができる。
【0025】
また、上記排ガス浄化フィルタの上流側には酸化触媒が配置されていることが好ましい(請求項5)。
この場合には、排ガス中に含まれる一酸化炭素等の有害成分を酸化し、無害化することができる。また、酸化により発生する熱により、排ガス浄化フィルタに流入する排ガスの温度を上昇させることができる。
【0026】
上記フィルタ再生手段は、上記排ガス浄化フィルタ内における上記粒子状物質の堆積量が4g/L〜12g/Lとなったときに上記再生処理を行うように構成されていることが好ましい(請求項6)。
即ち、上記排ガス浄化フィルタは、上記排ガス浄化触媒を有しており、その優れた触媒作用により、4g/L〜12g/Lという大量の上記粒子状物質が堆積した状態で上記再生処理を開始しても急速温度上昇を抑制することができる。したがって、従来よりも多くの粒子状物質が堆積した状態で上記再生処理を開始しても、上記排ガス浄化フィルタにダメージを与える程の高温(例えば約900℃)まで上記排ガス浄化フィルタ内の温度が上昇することを防止することができる。そのため、再生処理の頻度を減らすことができ、燃費を向上させることができる。
上記再生処理を行う際の上記堆積量が4g/L未満の場合には、上記再生処理の頻度が多くなり、燃費が低下するおそれがある。一方、12g/Lを越える場合には、再生処理中に上記粒子状物質の燃焼が燃焼伝播で進み、温度上昇が急速に進行するおそれがある。より好ましくは、5g/L〜10g/Lがよい。この場合には、より確実に急速温度上昇を抑制し、上記排ガス浄化フィルタの溶損を防止することができる。
上記粒子状物質の堆積量は、上記排ガス浄化フィルタの軸方向の両端、即ち上流端と下流端との差圧から算出することができる。しかし、その値はフィルタ形状により異なるため、堆積量と差圧との関係を事前に把握しておくことが好ましい。上記排ガス浄化フィルタの上流端と下流端との差圧は、差圧計により測定することができる。
【0027】
次に、上記排ガス浄化フィルタについて説明する。
上記排ガス浄化フィルタは、多孔質体からなる基材と、該基材に担持された排ガス浄化触媒とを有する。該ガス浄化触媒は、ゼオライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物又はソーダライトが温度600℃以上で焼成されてなる。
上記混合物又はソーダライトの焼成温度が600℃未満の場合には、上記排ガス浄化触媒の耐久性が劣化するおそれがある。その結果、上記排ガス浄化フィルタを長期間安定して使用することができなくなるおそれがある。より好ましくは、焼成温度は700℃以上がよく、さらに好ましくは800℃以上がよい。
なお、焼成温度は、上記混合物又はソーダライト自体の温度のことであり、雰囲気温度ではない。したがって、焼成時には、上記混合物又はソーダライト自体の温度が600℃以上になるように焼成を行う。また、焼成時においては、上記焼成温度の焼成を好ましくは1時間以上、より好ましくは5時間以上、さらに好ましくは10時間以上行うことがよい。
【0028】
上記排ガス浄化フィルタにおける上記排ガス浄化触媒は、上記混合物又はソーダライトを上記温度600℃以上で焼成した後、上記基材に担持されていることが好ましい(請求項7)。
この場合には、焼成後に得られる上記排ガス浄化触媒に対して、粉砕等を行うことが可能になる。この粉末状の上記排ガス浄化触媒を上記基材に担持させることができるため、上記排ガス浄化フィルタにおいて触媒が担持された面の表面積を大きくすることができる。そのため、触媒活性を向上させることができる。
したがって、上記排ガス燃焼触媒は、上記混合物又は上記ソーダライトの焼成後かつ上記基材への担持前に粉砕されてあることが好ましい。
また、粉砕時には、上記排ガス浄化触媒のメジアン径を50μm以下に調整することがよい。メジアン径が50μmを超える場合には、上記排ガス浄化触媒を上記基材にコートする際に、目詰まりが起こったり、担持量にばらつきが生じ易くなるおそれがある。より好ましくは、メジアン径は10μm以下であることがよい。
上記排ガス浄化触媒のメジアン径は、例えばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置あるいは走査電子顕微鏡等により測定することができる。
【0029】
また、粉砕を行う場合には、上記混合物又はソーダライトの焼成時の温度は、1200℃以下であることが好ましい。上記混合物又はソーダライトを1200℃を越える温度で焼成した場合には、一旦溶融状態を経るため、上記排ガス浄化触媒が硬度の高い塊状になってしまうおそれがある。その結果この場合には、上述のごとく粉砕を行って上記排ガス浄化触媒を所望の粒径に調整することが困難になるおそれがある。
【0030】
上記排ガス浄化フィルタにおける上記排ガス浄化触媒は、上記混合物又はソーダライトを上記基材に担持した後に温度600℃以上で焼成されていることが好ましい(請求項8)。
この場合には、上記混合物又はソーダライトが温度600℃以上で焼成されてなる上記排ガス浄化触媒の生成と、上記基材への担持(焼付け)を一度の焼成で行うことが可能になる。また、この場合には、例えば1200℃を越える高温での焼成も可能になる。上述のごとく、1200℃を越える高温で焼成を行うと、一旦溶融状態を経て上記排ガス浄化触媒が硬度の高い塊状になるが、この塊状の上記排ガス浄化触媒も、低温でPM等の粒子状物質に対する燃焼促進効果を示し、また、耐久性にも優れる。
【0031】
上記排ガス浄化触媒は、上記基材に直接担持させることができる。直接担持させるための方法は例えば次のような方法がある。
即ち、まず、上記排ガス浄化触媒とシリカゾルとを含むスラリーに上記基材を浸漬し、上記基材の内部にまで上記排ガス浄化触媒を進入させる。上記基材としては、例えばハニカム状又はフォーム状の多孔質体を採用することができる。次いで、エアブローにより、余分なスラリーを吹き飛ばした後、例えば温度400℃〜800℃で加熱することにより焼付けを行う。これにより、上記基材に上記排ガス浄化触媒を直接接触させて担持させることができる。
この場合には、上記排ガス浄化フィルタの気孔率を高くすることができ、特にPMに対する燃焼効率を向上させることができる。
【0032】
また、上記排ガス浄化触媒は、上記基材の表面に形成された担持層に担持させることができる。
この場合には、上記担持層を介して上記排ガス浄化触媒が上記基材に担持され、上記排ガス浄化触媒の担持を容易に行うことができる。
具体的には、アルミナ等を含有するウォッシュコート成分と上記排ガス浄化触媒とを混合し、ゾル状又はスラリー状の複合材料を作製し、該複合材料を上記基材にコートして例えば温度400℃〜600℃で加熱する。これにより、ウォッシュコート成分により担持層が形成され、該担持層に上記排ガス浄化触媒を担持させることができる。
【0033】
上記担持層は、Al2O3、ZrO2、TiO2、CeO2、SiO2から選ばれる1種以上の酸化物からなることが好ましい。
この場合には、表面積の大きな上記担持層が形成されやすくなり、上記排ガス浄化フィルタの表面積を大きくすることができる。その結果、上記排ガス浄化触媒とPM等の粒子状物質とが接触し易くなり、上記排ガス浄化フィルタはより効率よく粒子状物質の燃焼除去を行うことができる。
【0034】
上記排ガス浄化触媒は、上述のごとく、ゼオライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物、又はソーダライトを温度600℃以上で焼成して得られる。ここで、ゼオライトとしては、ソーダライトを用いることもできる。
即ち、上記排ガス浄化触媒は、ゼオライト(ソーダライトを含む)とアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物を温度600℃焼成することにより得ることができ、
また、上記排ガス浄化触媒は、ソーダライトを単独で他成分と混合することなく温度600℃以上で燃焼することによっても得ることができる。
【0035】
ソーダライトを除くゼオライトは、一般に、一般式M2/nO・Al2O3・ySiO2・zH2O(但し、Mは、Na、K、及びHから選ばれる少なくとも1種の元素、y≧2、z≧0である)で表され、本発明においても、上記一般式で表されるゼオライトを採用することができる。ゼオライトとしては、例えばLTA型、FAU(フォージャサイト)型、MOR型、LTL型、FER型、MFI型、及びBEA型等の構造のゼオライトを採用することができる。
また、ソーダライトは、一般式3(Na2O・Al2O3・2SiO2)・2NaXで表される。Xは、一価の陰イオンとなる原子又は原子団であり、例えばF、Cl、Br、I等のハロゲン、又はOH等である。
【0036】
また、上記ゼオライトは、その組成中のAl2O31モルに対するSiO2量が200モル未満であることが好ましい(請求項9)。
即ち、ゼオライト組成中のSiO2/Al2O3(モル比)が200未満のゼオライト、さらに換言すれば、上記一般式M2/nO・Al2O3・ySiO2・zH2Oにおけるyの値がy<200であるゼオライトを採用することが好ましい。
ゼオライト組成中のAl2O31モルに対するSiO2量が200モル以上のゼオライト、即ち、上記一般式におけるyの値がy≧200のゼオライトは、所謂ハイシリカゼオライトと呼ばれ、かかるゼオライトを用いた場合には、上記排ガス浄化触媒のPMに対する燃焼促進特性の向上効果が小さくなるおそれがある。
【0037】
上記混合物におけるゼオライトとしては、ソーダライトが採用されていることが好ましい(請求項10)。
この場合には、ソーダライト中のNaと、上記アルカリ金属元素源中のアルカリ金属元素及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素とがPM等の粒子状物質に対する優れた燃焼促進特性を発揮することができる。
【0038】
また、上記ゼオライトとしてソーダライトを用いた場合には、上記混合物においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記ソーダライト中のSi元素1モルに対して2.25モル以下となっていることが好ましい(請求項11)。
上記アルカリ金属元素と上記アルカリ土類金属元素との合計量がソーダライト中のSi元素1モルに対して2.25モルを超える場合には、上記混合物の焼成中に該混合物が溶融し易くなる。その結果、焼成後に得られる上記排ガス浄化触媒は、一旦溶融状態を経るおそれがあるため、その硬度が高くなってしまうおそれがある。そのためこの場合には、焼成後に粉砕を行って上記排ガス浄化触媒を所望の粒径に調整することが困難になるおそれがある。また、この場合には、上記排ガス浄化触媒自体の触媒活性は優れていても、水分による影響を受けやすくなるおそれがある。即ち、水分による触媒活性の低下幅が大きくなるおそれがある。そのため、所定の触媒活性を長期間維持させることが困難になり、上記排ガス浄化フィルタの寿命に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0039】
より好ましくは、上記混合物においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記ソーダライト中のSi元素1モルに対して1モル以下となっていることがよい(請求項12)。
さらに好ましくは、上記混合物においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記ソーダライト中のSi元素1モルに対して0.5モル以下となっていることがよい。
【0040】
上記ゼオライトとして、ソーダライト以外のゼオライトを採用する場合には、上記混合物においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記ゼオライト中のSi元素1モルに対して0.1モル以上かつ2.0モル以下となっていることが好ましい(請求項13)。
ゼオライト中のSi元素1モルに対する上記アルカリ金属元素と上記アルカリ土類金属元素との合計量が0.1モル未満の場合には、上記排ガス浄化触媒の耐水性が悪くなるおそれがある。
一方2.0モルを越える場合にも、水分存在下における上記排ガス浄化触媒の燃焼促進特性が低下し易くなり、その低下幅が非常に大きくなるおそれがある。またこの場合には、上記混合物の焼成中に該混合物が溶融し易くなる。したがって、上記焼成後に得られる上記排ガス浄化触媒は、一旦溶融状態を経るおそれがあるため、その硬度が高くなってしまうおそれがある。その結果この場合には、焼成後に粉砕を行って上記排ガス浄化触媒を所望の粒径に調整することが困難になるおそれがある。
【0041】
より好ましくは、上記混合物においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記アルミノケイ酸塩中のSi元素1モルに対して0.2モル以上かつ1.5モル以下となっていることがよい。
【0042】
また、上述のアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量は、ゼオライトに混合するアルカリ金属元素源中のアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素との合計量であり、アルカリ金属元素源及びアルカリ土類金属元素源のうちいずれか一方だけを用いた場合には、もう一方の元素の量は0モルとして算出できる。また、複数のアルカリ金属元素源、複数のアルカリ土類金属元素源を用いた場合には、それらのすべての合計量として算出できる。
【0043】
上記アルカリ金属元素源としては、例えばアルカリ金属の化合物等がある。また、上記アルカリ土類金属元素源としては、例えばアルカリ土類金属の化合物等がある。
上記混合物は、少なくとも上記アルカリ金属元素源を含有することが好ましい(請求項14)。
この場合には、上記排ガス浄化触媒のPM等の粒子状物質に対する燃焼促進特性をより向上させることができる。
【0044】
上記アルカリ金属元素源は、Na、K、Rb、及びCsから選ばれる1種以上を含有し、上記アルカリ土類金属元素源はMg、Ca、Sr、及びBaから選ばれる1種以上を含有することが好ましい(請求項15)。
この場合にも、上記排ガス浄化触媒のPM等の粒子状物質に対する燃焼促進特性をより向上させることができる。
より好ましくは、上記ゼオライトとしてソーダライトを用いた場合には、上記アルカリ土類金属元素源としてはCa、Sr、Baを含有する化合物を用いることがよく、ソーダライト以外のゼオライトを用いた場合には、上記アルカリ土類金属元素源としてはBaを含有する化合物を用いることがよい。
【0045】
また、上記アルカリ土類金属元素源は、少なくともBaを含有することが好ましい。
この場合には、Ba以外の他のアルカリ土類金属元素を含有する上記アルカリ土類金属元素源を用いた場合に比べて、上記排ガス浄化触媒の燃焼促進特性をより向上させることができる。
【0046】
上記ゼオライトと上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源との混合物は、上記ゼオライトと上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを極性溶媒中で混合し、該極性溶媒を蒸発させて得られる固形分からなることが好ましい(請求項17)。
この場合には、上記ゼオライトと上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源との混合を容易に行うことができ、これらが均一に混合した上記混合物を得ることができる。そのため、焼成後に得られる上記排ガス浄化触媒に触媒活性の偏りが発生することを抑制することができる。
上記極性溶媒としては、例えばメタノール、エタノール等のアルコール、及び水等を用いることができる。また、これらの混合溶媒を用いることができる。
また、上記極性溶媒としては、揮発し易い溶媒を用いることが好ましい。
この場合には、混合後の乾燥を容易に行うことができる。
【0047】
上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源は、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、酸化物、又は水酸化物であることが好ましい(請求項16)。
この場合には、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源を容易に水等の極性溶媒に混合させることができるため、上記混合物の作製時に、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とゼオライトとを上記極性溶媒中で混合させることにより、これらが均一に分散された上記混合物を容易に得ることができる。
【0048】
より好ましくは、上記アルカリ金属元素源としてはアルカリ金属元素の塩を用い、上記アルカリ土類金属元素源としてはアルカリ土類金属元素の塩を用いることがよい。
この場合には、上記アルカリ金属元素源及び上記アルカリ土類金属元素源は、水等の極性溶媒に対して優れた溶解性で溶解できるため、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とゼオライトとの混合を水等の極性溶媒中で行う場合に、ゼオライトと、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを簡単かつ均一に混合させることができる。
【0049】
上記基材は、多孔質隔壁を多角形格子状に配して軸方向に延びる多数のセルを形成した多孔質基材からなり、上記セルは排ガス流路を形成していることが好ましい(請求項18)。
この場合には、上記排ガス浄化フィルタを排ガスの浄化用により最適な構造にすることができる。
また、全てのセルが両端面に開口した構造体を用いることもできるが、一部のセルが基材(ハニカム構造体)両端面に開口し、残りのセルは両端面に形成された栓部によって閉塞された構造体を用いることもできる。
全てのセルが両端面に開口した構造体を用いた場合には、ガソリンエンジン用の排ガス浄化フィルタに好適なものになる。一方、一部のセルが両端面に開口し、残りのセルが栓部によって閉塞された構造体を用いた場合には、ディーゼルエンジン用の排ガス浄化フィルタに好適なもになる。
【0050】
上記基材は、コージェライト又はSiCからなることが好ましい(請求項19)。
この場合には、上記排ガス浄化フィルタを排ガスの浄化用により最適なものにすることができる。
【実施例】
【0051】
(実施例1)
次に、本発明の実施例につき、図面を用いて説明する。
図1に示すごとく、本例の排ガス浄化装置1は、排ガス浄化フィルタ2とフィルタ再生手段151とを有する。排ガス浄化フィルタ2は、内燃機関5の排ガス通路54、19に設けられ、排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集する。
排ガス浄化フィルタ11は、図2〜図4に示すごとく、多孔質体からなる基材20と、これに担持された排ガス浄化触媒4とを有する。排ガス浄化触媒4は、ゼオライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物又はソーダライトが温度600℃以上で焼成されてなる。
また、図1に示すごとく、フィルタ再生手段151は、排ガス浄化フィルタ2内の温度を所定の再生温度まで上昇させて排ガス浄化フィルタ2内に堆積した粒子状物質を燃焼除去することにより、排ガス浄化フィルタ2の捕集能力の再生処理を行う。
【0052】
以下本例の排ガス浄化装置についてより詳細に説明する。
図2及び図3に示すごとく、排ガス浄化フィルタ2においては、ハニカム状の基材20に排ガス浄化触媒4が担持されている。本例において、基材20は、外周壁21と、この外周壁21の内側においてハニカム状に設けられた隔壁25と、この隔壁25により仕切られた複数のセル3とを有する。セル3は、基材20の両端面23、24に部分的に開口している。即ち、各セル3は、基材20の一方の端面23(24)に開口し、もう一方の端面24(23)に形成された栓部32によって閉塞している。
【0053】
図2及び図3に示すように、本例においては、セル3の両端面23(24)における開口部31と栓部32とは交互に配置されており、所謂市松模様を形成している。
図5に示すごとく、本例の排ガス浄化フィルタ2においては、排ガス10の入口側となる上流側端面23及び排ガス10の出口となる下流側端面24に位置するセルの端部は、栓部32が配置された部分と配置されていない部分とをそれぞれ交互に有している。多孔質体の隔壁25には多数の空孔が形成され、排ガス10が通過できるようになっている。
そして、図2〜図5に示すごとく、基材20の隔壁25には、排ガス浄化触媒4が担持されている。本例において、排ガス浄化触媒4としては、ソーダライトとK源(炭酸カリウム)との混合物を温度800℃で焼成してなる触媒を採用してある。
【0054】
また、本例の排ガス浄化フィルタ2の全体サイズは、直径129mm、長さ150mm、容積約2L、の円柱状であり、セルサイズは、セル厚さ3mm、セルピッチ1.47mmである。
また、基材20はコーディエライトからなり、そのセル3は、断面が四角形状のものを採用した(図2参照)。セル3は、その他にも例えば、三角形、六角形等の様々な断面形状を採用することができる。
【0055】
本例の排ガス浄化フィルタは、次のようにして作製することができる。
即ち、まず、ソーダライト(3(Na2O・Al2O3・2SiO2)・2NaOH)の粉末を準備した。このソーダライト100重量部と炭酸カリウム5重量部とを水に投入し、水中で混合した。
次いで、混合液を温度120℃で加熱し、水分を蒸発させた。これにより、固形分(ソーダライトと炭酸カリウムとの混合物)を得た。
次に、この固形分を温度700℃で焼成した。具体的には、固形分を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度700℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。
次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、排ガス浄化触媒を得た。
【0056】
次に、以下のようにして、ハニカム構造の基材を作製した。
即ち、まず、タルク、溶融シリカ、及び水酸化アルミニウムを所望のコーディエライト組成となるように秤量し、造孔剤、バインダー、水等を加え、混合機にて混合撹拌した。そして、得られた粘土質のセラミック材料を成形機にて押出成形し、ハニカム状の成形体を得た。これを乾燥した後、所望の長さに切断し、外周壁と、その内側においてハニカム状に設けられた隔壁と、隔壁により仕切られていると共に両端面に貫通してなる複数のセルとを有する成形体を作製した。次いで、この成形体を温度1400〜1450℃で2〜10時間加熱することにより仮焼して仮焼体(ハニカム構造体)を得た。
【0057】
次に、ハニカム構造体の両端面全体を覆うようにマスキングテープを貼り付けた。そして、セラミックハニカム構造体の両端面の栓詰めすべき位置に対応するマスキングテープにレーザ光を順次照射し、マスキングテープを溶融又は焼却除去して貫通穴を形成した。これにより、セルの端部における栓部により栓詰めすべき部分に貫通穴を形成した。セルの端部のその他の部分はマスキングテープで覆われている。本例においては、セルの両端面に貫通穴とマスキングテープで覆われた部分とが交互に配置するように、マスキングテープに貫通穴を形成した。本例では、マスキングテープとしては、厚さ0.1mmの樹脂フィルムを用いた。
【0058】
次に、栓部の材料である栓材の主原料となるタルク、溶融シリカ、アルミナ、及び水酸化アルミニウムを所望の組成となるように秤量し、バインダー、水等を加え、混合機にて混合撹拌し、スラリー状の栓材を作製した。このとき、必要に応じて造孔材を添加することもできる。そして、スラリー状の栓材を入れた容器を準備した後、貫通孔を部分的に形成したハニカム構造体の端面を浸漬した。これにより、マスキングテープの貫通穴からセルの端部に栓材を適量浸入させた。また、ハニカム構造体のもう一方の端面についても同様の工程を行った。このようにして、栓詰めすべきセルの開口部内に栓材が配置されたハニカム構造体を得た。
【0059】
次に、ハニカム構造体とその栓詰めすべき部分に配置した栓材とを同時に約1400〜1450℃で焼成した。これにより、マスキングテープは焼却除去され、図2及び図3に示すごとく、セル3の両端に、その端部を開口する複数の開口部31と、セル3の端部を閉塞する複数の栓部32とが形成されたセラミックハニカム構造体(基材)20を作製した。
【0060】
次に、排ガス浄化触媒をシリカゾルを5wt%配合したシリカスラリーに混合した。さらに固形分100重量部に対する水分量が400重量部となるように水を加え、スラリー状の排ガス浄化触媒を得た。
次に、スラリー状の排ガス浄化触媒中に基材2を浸漬し、基材2の多孔質の隔壁25に排ガス浄化触媒を含浸させた。次いで、エアーブローにより余分な水分を吹き飛ばした後、温度500℃で加熱することにより、焼き付けを行った。本例においては、排ガス浄化触媒を70g/L(そのうちK濃度はK2CO3換算で約7g/L)コートした。
このようにして、図2〜図4に示すごとく、排ガス浄化触媒4を基材20に担持した排ガス浄化フィルタ2を得た。
【0061】
図1に、排ガス浄化装置1を含むエンジンシステムの模式図を示す。
同図に示すごとく、排ガス浄化フィルタ2は、内燃機関5(ディーゼルエンジン)から排出される排ガス中のパティキュレートを除去するために用いられる。
ディーゼルエンジン車において、エンジン5の吸気ポートには、吸気マニホールド51を介して吸気管52が接続されている。また、排気ポートには、排気マニホールド53を介して排気管54が接続され、これらによって排気通路が構成されている。
【0062】
吸気管52には、過給圧コントロール手段を備えたターボ過給機55のコンプレッサ521と、ターボ過給機55により圧縮された吸気を冷却するインタークーラ522とがそれぞれ設けられている。
また、排気管54にはターボ過給機55のタービン541が設けられている。
ターボ過給機55において、コンプレッサ521の回転翼(図示略)とタービン541の回転翼(図示略)はシャフト(図示略)により連結されており、エンジンから排出される排ガスのエネルギーによりタービン541が回転し、さらにシャフトを介してコンプレッサ521が回転するように構成されている。そしてこのコンプレッサ521の回転により、吸気管52内の吸入空気が圧縮される。
【0063】
排気管54の途中には、エンジン側(排ガスの上流側)から順に、酸化触媒フィルタ11と、排ガス浄化フィルタ(DPF)2とが設けられる。酸化触媒フィルタ11は、酸化触媒としてだけでなく、NOx触媒としての機能も兼ね備える場合もある。酸化触媒フィルタ11においては、白金−アルミナ触媒等からなる酸化触媒がコージェライトからなるハニカム状の基材に担持されている。
酸化触媒フィルタ11及び排ガス浄化フィルタ2は、排気管54の直径を拡大した筒状の捕集器19内に収容される。
捕集器19には、酸化触媒フィルタの上流側、酸化触媒フィルタと排ガス浄化フィルタとの間、及び排ガス浄化フィルタの下流側にそれぞれ温度検出手段としてのサーミスタ157、158、159が配置されている。各サーミスタ157、158、159は、それぞれ、酸化触媒フィルタへの入口側の排ガス温度、排ガス浄化フィルタの入口側の排ガス温度、及び排ガス浄化フィルタの出口側の排ガス温度をそれぞれ検出することができる。
サーミスタ157、158、159によって検出された温度データは、エンジンコントロールユニット(ECU)15に送られ、ECU15による各種制御に用いられる。
【0064】
また、エンジン5には、排気を再び吸気に回して再循環させるためのEGR(Exhaust Gas Recirculation)制御バルブ56が取り付けられている。さらに、排気を再び吸気に回す際に排気を冷却させるEGRクーラ57が取り付けられる。
【0065】
内燃機関5には、吸気管52から吸気マニホールド51を経て空気が供給される。また、内燃機関5には、コモンレール及び燃料噴射装置等から構成される燃料供給系(図示略)の燃料添加弁50から燃料が供給される。内燃機関5においては、燃料と空気が所定の混合比で混合され、この混合燃料を圧縮着火により燃焼する。
燃焼後の排気ガスは、排気マニホールド53を経て排気管54に送られる。そして、排気ガスは、捕集器内の酸化触媒フィルタ11に担持された酸化触媒により酸化され、さらに排ガス浄化フィルタ内でPM等の粒子状物質が吸着除去されて外部に排出される。
ECU15は、過吸圧センサの出力、流入空気量センサの出力、エンジン回転数、車速等の各種の運転データを収集し、これらのデータに基づいて燃料添加弁50やEGR制御バルブ56等を制御するように構成されている。
【0066】
排ガス浄化フィルタ2に粒子状物質が堆積すると、排気抵抗が増大する。これを回避するために、フィルタ再生手段151の制御によって、排ガス浄化フィルタ2内の温度を所定の再生温度まで上昇させて排ガス浄化フィルタ2内に堆積したPM等の粒子状物質を燃焼除去して、排ガス浄化フィルタ2の再生処理を行う。
具体的には、フィルタ再生手段151は、所定のタイミングで、排ガス浄化フィルタ2内に流入する排ガスの温度を上昇させることにより、排ガス浄化フィルタ2を再生温度まで昇温させて再生処理を行う。本例においては、フィルタ再生手段151は、燃焼の噴射制御などを制御するECU15に組み込まれている。
【0067】
本例においては、フィルタ再生手段151は、所定のタイミングで燃料添加弁50等を制御する制御信号Pを送信し、内燃機関内での燃料の燃焼を開始させる。これにより、排ガス浄化フィルタ2内に流入する排ガスの温度を上昇させて、再生処理を開始させることができる。また、フィルタ再生手段151は、所定の再生温度に到達した後は、燃料の添加を停止する制御信号Qを燃料の燃焼を停止するように構成されている。一旦再生温度に到達すると、排ガス浄化フィルタ内では粒子状物質の燃焼が燃焼伝播で進むため、粒子状物質の燃焼反応は進行する。
【0068】
排ガス浄化フィルタ2には、その上流端及び下流端の差圧を計測する差圧計155が設けられている。フィルタ制御手段151は、差圧計155によって計測される差圧を検出信号Rとして受信し、この検出信号Rに基づいて、排ガス浄化フィルタ2内に堆積したPM等の粒子状物質(スート)の堆積量を算出し、堆積量が例えば5〜12g/Lとなったときに、再生処理を行うように構成されている。差圧と堆積量との関係を図6に示す。
【0069】
そして、酸化触媒フィルタ19と排ガス浄化フィルタとの間、即ち、排ガス浄化フィルタ2のすぐ上流側には、排ガス浄化フィルタに流入する排ガスの温度を測定するサーミスタ158が設けられている。フィルタ再生手段151は、サーミスタ158によって計測される排ガスの温度を検出信号Sとして受信し、検出信号Sに基づいて、排ガス浄化フィルタ2の上流側から10〜20mm内部(軸方向と垂直な方向においては中央)にある所定位置の温度を算出する。フィルタ再生手段151は、この所定位置の温度を400℃以上かつ600℃未満まで上昇させて再生処理を行う。
【0070】
以下、本例の作用効果につき、説明する。
本例において、図2〜図5に示すごとく、排ガス浄化フィルタ2は、基材20と排ガス浄化触媒4とを有し、排ガス浄化触媒4は、ゼオライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物又はソーダライトを温度600℃以上で焼成してなる。
排ガス浄化触媒4は、パティキュレートマター(PM)等の粒子状物質に対する優れた燃焼促進作用を有する(後述の実験例参照)。そのため、排ガス浄化フィルタ2においては、排ガス浄化触媒4の作用により、粒子状物質を例えば600℃未満という低温で燃焼除去させることができる。それ故、排ガス浄化フィルタ2の再生温度を低く設定することができる。
【0071】
また、排ガス浄化触媒4を備えた排ガス浄化フィルタ2においては、急速温度上昇が抑制される。
即ち、従来のPt等の貴金属触媒を備えた排ガス浄化フィルタにおいては、例えば内燃機関の運転状態が減速状態になった時などに、急速温度上昇が起こり排ガス浄化フィルタ内の温度が少なくとも部分的に例えば1000℃を越える高温にまで到達するおそれがあった。その結果、排ガス浄化フィルタの基材が溶損するおそれがあった。
これに対し、上記混合物又はソーダライトを温度600℃以上で焼成してなる上記排ガス浄化触媒4を備えた排ガス浄化フィルタ2においては、Pt等の貴金属触媒が担持されたものに比べて温度上昇が緩やかになり、基材20に溶損等のダメージを与える程の高温にはなり難くなる。上記再生処理中に上記内燃機関の運転状態が減速状態になったときにおいても排ガス浄化フィルタ2内の急速温度上昇を抑制することができる。
したがって、本発明によれば、従来のように複雑なシステム制御を行わなくとも急速温度上昇を抑制することができる。
【0072】
また、急速温度上昇は、上記再生処理の開始温度、即ち、上記再生温度に依存する傾向がある。即ち、上記再生温度を高く設定すると、再生処理中の急速温度上昇がより高い温度にまで到達し易くなる。
例えば従来の貴金属触媒を用いた場合においては、PMを確実に燃焼するために再生温度を630℃程度にする必要が生じるが、このような高い再生温度では、急速温度上昇が起こって排ガス浄化フィルタの温度が基材にダメージを与える高温(例えば900℃以上)にまで上昇するおそれがあった。
これに対し、上記排ガス浄化触媒4を用いると、再生温度を630℃程度にしても、再生処理中に基材20にダメージを与える温度まで温度が急上昇することを防止することができる。さらに、上述のごとく上記排ガス浄化触媒4を用いると600℃未満という低温でもPM等の上記粒子状物質を燃焼させることができる。そのため、上記再生温度を600℃未満に設定することができ、より確実に急速温度上昇を抑制し、上述の溶損を防止することができる。
【0073】
また、急速温度上昇は、PM等の粒子状物質の堆積量に依存する傾向がある。即ち、上記再生処理開始時に上記排ガス浄化フィルタ2内に堆積していた上記粒子状物質の堆積量が多いほど、より低温の再生温度からでも急速温度上昇が起こり易く、基材20にダメージを与える高温に到達し易くなる傾向にある。
従来のPt等の貴金属触媒を用いた場合には、PMの堆積量が6g/L程度の状態で再生処理を行っても急速温度上昇が起こるおそれがある。そのため、再生処理を開始するPMの堆積量を5g/L以下、より好ましくは4g/L以下にする必要があった。
これに対し、本例においては、上記排ガス浄化触媒4が用いられているため、例えばPMの堆積量12g/Lの状態で再生処理を行っても、再生温度を例えば600℃未満に設定することにより、急速温度上昇を抑制することができる。
そのため、上記再生処理を行う頻度を減らすことができ、低燃費化を図ることができる。
【0074】
また、排ガス浄化触媒4は、アルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素の保持力が高い。
そのため、水分存在下においても上記アルカリ金属元素及び/又は上記アルカリ土類金属元素が溶出することを防止することができる。それ故、排ガス浄化触媒4の性能劣化を防止することができ、排ガス浄化フィルタ2は、長期間安定に排ガスの浄化を行うことができる。
また、排ガス浄化触媒4は、NOxを吸着することもできる。そのため、排ガス浄化フィルタ2は、排ガス中からNOxを吸着除去することもできる。
【0075】
また、本例においては、フィルタ再生手段151は、400℃以上かつ600℃未満の再生温度まで排ガス浄化フィルタ2内の温度を上昇させて上記再生処理を開始するように構成されている。そのため、上記急速温度上昇をより抑制することができる。また、この場合には、再生処理の開始時におけるPM等の粒子状物質の堆積量を増やすことができるため、上記再生処理の頻度をより少なくすることができる。また、上記排ガス浄化触媒4は、その優れた燃焼促進作用により、上述のごとく600℃未満という低い再生温度でも短時間で上記粒子状物質を燃焼させることができる。
【0076】
また、フィルタ再生手段151は、内燃機関5の運転状態によらず、常時600℃未満の再生温度で上記再生処理を行うように構成することができる。
この場合には、運転状態によらず、より確実に急激温度上昇を抑制することができる。そして、複雑なシステムを用いることなく、よりロバスト性の高い上記排ガス浄化装置の構成が可能になる。
【0077】
また、フィルタ再生手段151は、排ガス浄化フィルタに流入する排ガスの温度を上昇させることにより上記粒子状物質の燃焼除去を行うように構成されている。そのため、簡単に上記排ガス浄化フィルタ2内の温度を上昇させることができる。
【0078】
また、排ガス浄化フィルタ2の上流側には酸化触媒が配置されている。
この場合には、排ガス中に含まれる一酸化炭素等の有害成分を酸化し、無害化することができる。また、酸化により発生する熱により、排ガス浄化フィルタに流入する排ガスの温度を上昇させることができる。
【0079】
また、フィルタ再生手段151は、排ガス浄化フィルタ内における上記粒子状物質の堆積量が4g/L〜12g/Lとなったときに上記再生処理を行うように構成されている。
そのため、再生処理の頻度を少なくすることができる。そして、このように再生頻度を少なくしても、上記排ガス浄化触媒の作用により、急速温度上昇により排ガス浄化フィルタが例えば900℃を越える高温にまで達し、溶損を引き起こすことを抑制することができる。
【0080】
以上のように、本例によれば、再生処理の頻度を少なくすることができ、複雑なシステム制御を用いることなく排ガス浄化フィルタ内の急激温度上昇を抑制することができる排ガス浄化装置を提供することができる。
【0081】
(実施例2)
本例は、実施例1と同様の構成の排ガス浄化装置について、再生処理中にエンジンの運転状態を減速状態(アイドル状態)にしたときの排ガス浄化フィルタ内の急速温度上昇を検討する例である。
図7に示すごとく、本例の排ガス浄化装置(装置E)は、実施例1と同様の構成を有する。さらに、本例においては、排ガス浄化フィルタ2内の様々な位置における温度を検出するために、排ガス浄化フィルタ2内の6ヵ所の位置に、シース径φ0.5mmの熱電対を配置した。
【0082】
図8に熱電対の配置位置を示す。図8の左側は捕集器19内に配置された酸化触媒フィルタ11と排ガス浄化フィルタ2を排ガス浄化フィルタ2の側面、即ち排ガス浄化フィルタ2の軸方向と垂直な方向から見た図であり、排ガス浄化フィルタ2内に配置した熱電対の位置を黒丸印で示してある。また、図8の右側は、排ガス浄化フィルタ2を軸方向の下流端24側から見た図であり、熱電対の位置を黒丸印で示してある。
図8に示すごとく、1つ目の熱電対A153aは、排ガス浄化フィルタ2における排ガスの入口側から10mm(排ガス浄化フィルタ2の上流端23側から10mm;a=10mm)の位置であって、軸方向と垂直な方向における中心位置に配置した。2つ目の熱電対B153bは、排ガス浄化フィルタ2における軸方向の中心位置、かつ軸方向と垂直な方向における中心位置に配置した。3つ目の熱電対C153cは、排ガス浄化フィルタ2における排ガスの出口側から10mm(排ガス浄化フィルタ2の下流端24側から10mm;b=10mm)の位置であって、軸方向と垂直な方向における中心位置に配置した。4つ目の熱電対D153dは、排ガス浄化フィルタ2における排ガスの出口側から10mm(排ガス浄化フィルタの下流端24側から10mm;b=10mm)の位置であって、軸方向と垂直な方向における中心位置から16.25mm(c=16.25mm)外方に配置した。5つ目の熱電対E153eは、排ガス浄化フィルタ2における排ガスの出口側から10mm(排ガス浄化フィルタの下流端24側から10mm;b=10mm)の位置であって、軸方向と垂直な方向における中心位置から32.5mm(d=16.25、c+d=32.5mm)外方に配置した。6つ目の熱電対F153fは、排ガス浄化フィルタ2における排ガスの出口側から10mm(排ガス浄化フィルタ2の下流端24側から10mm(b=10mm))の位置であって、軸方向と垂直な方向における中心位置から48.75mm(e=16.25、c+d+e=48.75mm)外方に配置した。
各熱電対A〜Fは、導線150を介して温度記録手段(データロガー)152に接続されている(図7参照)。そして、温度記録手段152により、経時的に排ガス浄化フィルタ2内の上述の各位置における温度を記録することができる。
【0083】
図7に示すごとく、実施例1と同様のエンジン(四気筒のディーゼルエンジン)システムにおいて、排ガス浄化フィルタ2内に8g/LまでPMを堆積させて、再生処理を行った。再生処理は、フィルタ再生手段151によって制御されている。再生処理における燃料添加及び停止のタイミング、エンジン回転速度、吸入空気量、及び入口から10mmの位置における排ガス浄化フィルタの温度(熱電対A153a(図8参照)によって検出される温度)の制御パターンを図9に示す。
【0084】
同図に示すごとく、エンジン回転数:2000rpm、qfin:19、排ガス温度:300℃という条件で排ガス浄化フィルタ内にPMを堆積させた(PM堆積モード)。PM堆積量が8g/Lに到達した時点(時間t0)で、図7に示すごとく、フィルタ再生手段151の制御に基づいて、内燃機関5内で燃料を燃焼させて排ガス浄化フィルタ2内に流入する排ガスの温度を上昇させることにより、排ガス浄化フィルタ2内に蓄積したPMを燃焼させる再生処理を開始し、排ガス浄化フィルタ2の入口から10mmの位置における温度が所定の温度(629℃)に到達した時点(時間t1)で燃料の燃焼を停止した(強制再生モード)。強制再生モードは、エンジン回転数:2000rpm、qfin:23、排ガス温度(上限):629℃という条件で行った。強制再生モードにおける時間t0からt1までは約40〜50秒である(図9参照)。
また、本例においては、時間t1以降エンジンをアイドリング状態にし、アイドリング状態を10分間継続させた(減速運転モード)。
このときの、排ガス浄化フィルタ2内の上述の所定位置に設けた熱電対A〜熱電対Fによって検出される経時的な温度変化を計測し、温度記録手段152により記録した(図7及び図8参照)。その結果を図10に示す。
【0085】
また、本例においては、比較用として、Pt触媒を担持した排ガス浄化フィルタを備えた排ガス浄化装置を用いて急速温度上昇の検討を行った。
即ち、まず、Pt触媒を担持した排ガス浄化フィルタを作製した。この排ガス浄化フィルタは、実施例1の排ガス浄化触媒の代わりにPtを基材に担持した点を除いて実施例1の排ガス浄化フィルタと同様にして作製することができる。そして、この比較用の排ガス浄化フィルタを用いて、上述の装置Eと同様の排ガス浄化装置(装置C)を構成した。
【0086】
この比較用の排ガス浄化装置(装置C)についても、装置Eと同様に、排ガス浄化フィルタ内に6ヵ所に熱電対A〜Fを配置してある。そして装置CについてもPM堆積モード、強制再生モード、減速運転モードを行い、排ガス浄化フィルタ内の上述の所定位置に設けた熱電対A〜Fによって検出される経時的な温度変化を計測した。装置Cにおいては、PM堆積モードのPM堆積量は6g/Lとし、強制再生モードの開始温度を623℃とした。その結果を図11に示す。
【0087】
図11より知られるごとく、装置Cにおいては、PM堆積量6g/Lにて再生処理を開始したが、アイドリング状態にしたときに、急速温度上昇が起こり、排ガス浄化フィルタの出口側付近の温度(熱電対D〜Fを設けた位置における温度)が1000℃を越える高温状態になっていた。排ガス浄化フィルタは、900℃以上の高温領域で溶損するおそれがあるため、装置Cにおいては、PM堆積量の限界値(SOOT MASS LIMIT;SML)は、6g/Lを下回り、高頻度の再生処理が必要になる。
【0088】
装置Cの排ガス浄化フィルタにおいて、PM(カーボン)の燃焼は、下記の二段階の反応で進行し、Pt触媒は、これら二段階の反応を促進させる。
(1)2C+O2→2CO 2×26.4kcal(固気反応)
(2)2CO+O2→2CO2 2×67.7kcal(気相反応)
即ち、装置Cにおいては、気相反応におけるCOの酸化発熱分が上乗せされるため、1000℃を越える高温にまで達すると考えられる。
【0089】
一方、図10より知られるごとく、装置Eにおいては、PM堆積量8g/Lにて再生処理を開始したが、アイドリング状態にしても、急速温度上昇が抑制され、排ガス浄化フィルタ内の温度は、最大でも750℃を下回っていた。よって、SMLは8g/Lを上回り、再生処理の頻度を減らすことができる。
装置Eにおいて、排ガス浄化フィルタに担持された排ガス浄化触媒は、上述の2段階の反応のうち気相反応、即ちCOの酸化は促進しない。そのため、1000℃を越えるという異常高温に達することを防止し、溶損を防止することができる。
【0090】
また、装置Eについて、強制再生モードを行う条件をPM堆積量が6g/L又は10g/Lに到達した時点とし、このときの、再生温度と排ガス浄化フィルタ(DPF)内の最高温度との関係を調べた。その結果を図12に示す。
また、図12には、装置C(PM堆積量6g/Lのときに強制再生モードを実施)についても、その再生温度とDPF内の最高温度との関係を示す。
【0091】
図12より知られるごとく、装置Eにおいては、PM堆積量を6g/Lにしたときには、再生温度を635℃程度にしても排ガス浄化フィルタ内の最高温度は900℃に到達しない。また、装置Eにおいて、PM堆積量を10g/Lにしたときには、再生温度が616℃になったところで、排ガス浄化フィルタ内の最高温度が900℃に到達している。よって、再生温度を616℃未満にすることにより、再生時のPM堆積量を10g/Lにしても、排ガス浄化フィルタの溶損を防止できることがわかる。装置Eの排ガス浄化フィルタに担持された排ガス浄化触媒は、温度600℃以下でもPMを燃焼させることができるため、再生時のPM堆積量を12g/Lにしても排ガス浄化フィルタの溶損を防止できると考えられる。そのため、再生処理の頻度を少なくすることができる。
【0092】
これに対し、装置Cにおいて、PM堆積量を6g/Lにしたときには、再生温度を597℃にしても排ガス浄化フィルタ内の最高温度は900℃に達し、溶損のおそれがある。また、Pt触媒は、温度600℃未満では、充分にPMに対する燃焼促進作用を発揮できない。よって、装置Cにおいては、溶損を起こすことなく、PMの燃焼を確実に行うために、再生処理を実施するときのPM堆積量を5g/L以下、より好ましくは4g/L以下にする必要がある。その結果、再生処理の頻度が多くなり、燃費低下等の不具合を生じうる。
【0093】
以上のように、本発明の実施例にかかる排ガス浄化装置(装置E)は、再生処理の頻度を少なくすることができ、複雑なシステム制御を用いることなく排ガス浄化フィルタ内の急激温度上昇を抑制することができる。
【0094】
(実験例1)
本例は、実施例1及び2の排ガス浄化装置において用いた排ガス浄化触媒の触媒作用を検討する例である。
排ガス浄化触媒は、ゼオライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物又はソーダライトを温度600℃以上で焼成して得られる。
本例においては、実施例1及び2と同様にゼオライトとしてソーダライトを用い、このソーダライトをアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源と混合した混合物を用いた例について説明する。
【0095】
具体的には、まず、原料となるゼオライトとして、ソーダライト(3(Na2O・Al2O3・2SiO2)・2NaOH)の粉末を準備した。このソーダライト100重量部と炭酸カリウム5重量部とを水に投入し、水中で混合した。
次いで、混合液を温度120℃で加熱し、水分を蒸発させた。これにより、固形分(ソーダライトと炭酸カリウムとの混合物)を得た。
次に、この固形分を温度800℃で焼成した。具体的には、固形分を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度800℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。
次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、排ガス浄化触媒を得た。これを試料E1とする。
【0096】
次に、本例において作製した排ガス浄化触媒(試料E1)について、PMに対する燃焼促進特性を調べた。また、比較用として、貴金属系触媒(Pt粉末)、炭酸カリウム粉末についても燃焼促進特性を調べた。
【0097】
具体的には、まず、触媒種(試料E1、貴金属系触媒、又は炭酸カリウム粉末)200mgとカーボンブラック(CB;PMの代替として使用)20mgとをそれぞれ電子天秤にて正確に秤量した。これらをメノウ乳鉢を用いて触媒種(重量):CB(重量)=10:1となるように一定時間混合し、各触媒種とカーボンブラックとを含有する3種類の評価サンプルを得た。さらに、触媒種を用いずに、CBのみからなる評価サンプルを比較用として作製した。CB単独の評価サンプルについても、他のサンプルと同様にメノウ乳鉢を用いて一定時間混合したものを用いた。即ち、評価サンプルとしては、CB単独、貴金属系触媒とCBとの混合物、試料E1とCBとの混合物、炭酸カリウムとCBとの混合物という4種類のサンプルを作製した。
【0098】
次いで、熱分析−示差熱重量(TG−DTA)同時測定装置(理学電機社製のTG8120)用いて、各評価サンプル6mgを昇温速度10℃/minにて最高温度900℃まで加熱してCBを燃焼させると共に、このときのDTA発熱ピーク温度、及び温度とTGとの関係を測定した。なお、CB単独からなる評価サンプルについては、0.5mgを用いてDTA発熱ピーク温度の測定を行った。また、加熱は、流束50mL//minで空気を評価サンプルに流通させながら行った。各触媒種を用いたときのDTA発熱ピーク温度の結果を図13に示す。また、温度とTGとの測定結果については、CB単独を用いた結果を図14に示し、触媒種として貴金属系触媒を用いた結果を図15に示し、K2CO3を用いた結果を図16に示し、試料E1を用いた結果を図17に示す。図14〜図17の縦軸は、カーボンブラックの最大燃焼速度を示すDTA発熱ピークを用いている。
【0099】
また、触媒種(試料E1、貴金属系触媒、又は炭酸カリウム粉末)1gを水500cc中に投入し、一昼夜撹拌することにより洗浄した。次に、水洗浄処理後の触媒種をろ過し、ろ過後の触媒種にさらに1500ccの水を流通させて充分に洗浄した後、温度120℃にて乾燥させた。これらの水洗浄処理後の触媒種(試料E1及び貴金属系触媒)200mgとカーボンブラック(CB)20mgとを電子天秤にて正確に秤量した。これらをメノウ乳鉢を用いて触媒種(重量):CB(重量)=10:1となるように一定時間混合し、各触媒種とカーボンブラックとを含有する2種類の評価サンプルを得た。なお、CB単独からなる評価サンプルについては、他のサンプルと同様に洗浄及び乾燥を行い、その後メノウ乳鉢で混合したものを用いた。また、触媒種として炭酸カリウムを用いた評価サンプルは、水洗洗浄処理により水に溶解してしまったため、その後の操作を行うことができなかった。即ち、水洗後の評価サンプルとしては、CB単独、貴金属系触媒とCBとの混合物、試料E1とCBとの混合物という3種類のサンプルを作製した。これらのサンプルについて、再度熱分析−示差熱重量(TG−DTA)同時測定装置によって、DTA発熱ピーク温度の測定を行った。水洗浄処理後のDTA発熱ピーク温度の結果を図1に併記する。
【0100】
図1〜図5より知られるごとく、水洗浄前において、試料E1を用いたサンプル及び炭酸カリウム用いたサンプルは、DTA発熱ピーク温度が低く、比較的低い温度でPM(CB)を燃焼できることがわかる。なお、図1及び図5から知られるごとく、試料E1は、約400℃付近に発熱ピークを有しているが、実際にはこれよりも低い温度(例えば350℃程度)でもカーボンブラックの燃焼は開始されている。
【0101】
図1より知られるごとく、CB単独、貴金属系触媒、及び試料E1については、水洗前後でCBに対する燃焼促進特性はほとんど変化しなかった。これに対して、炭酸カリウムを用いたサンプルは、水洗後に炭酸カリウムが水に溶解し、測定が不可能であった。
【0102】
したがって、試料E1は、PMに対して優れた燃焼促進特性を有し、低温でPMを燃焼除去することができる。また、試料E1は、水分存在下においてもその優れた特性を維持できるため、長期間安定してPMの燃焼を行うことができる。したがって、試料E1は、水蒸気を多く含む排ガス中においても、PMを長期間安定して燃焼させることができる。
【0103】
上記試料E1は、上述のごとくソーダライト100重量部と炭酸カリウム5重量部との混合物を温度800℃で10時間焼成することにより作製した触媒である。次に、本例においては、焼成温度による触媒活性への影響を調べるために、異なる温度でソーダライトと炭酸カリウムとの混合物(上記固形分)を焼成して複数の触媒を作製した。
具体的には、まず、ソーダライト100重量部と炭酸カリウム10重量部とを水中で混合し混合液を得た。次いで、混合液を温度120℃で加熱し、水分を蒸発させ、固形分(混合物)を得た。次に、この混合物を温度500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃、1200℃、1300℃で焼成して9種類の触媒を作製した。これらの触媒は、焼成温度を変更した点を除いては互いに同様にして作製した触媒であり、ソーダライトに対する炭酸カリウムの混合割合及び焼成温度を変更した点を除いては、上記試料E1と同様にして作製した触媒である。さらに、温度600℃での焼成については焼成時間の影響を調べるため、上記試料E1と同様に10時間の焼成を行って作製した触媒の他に、焼成時間を5時間にして作製した触媒も準備した。その他の焼成温度で作製した触媒については、上記試料E1と同様に、いずれも10時間焼成を行って作製した。
【0104】
そしてこれらの触媒についても、上記試料E1と同様にPMに対する燃焼促進特性を調べた。このとき、比較用としてソーダライトと炭酸カリウムとの混合物についてもPMに対する燃焼促進特性を調べた。このソーダライトと炭酸カリウムとの混合物としては、焼成を行う代わりに室温(約25℃)で約10時間放置したものを採用した。
燃焼促進特性の測定は、上記試料E1と同様にしてDTA発熱ピーク温度を測定することにより行った。その結果を図18に示す。
【0105】
図18より知られるごとく、温度600℃以上で焼成を行って作製した排ガス浄化触媒のDTA発熱ピークトップ温度は、水洗前及び水洗後においても約460℃以下という非常に低い値を示した。PMに対する燃焼触媒として一般に用いられる貴金属(Pt)触媒のDTA発熱ピーク温度は520℃程度(図1参照)であることから、これらの排ガス浄化触媒は、PMに対して充分に優れた触媒活性を有していることがわかる。
【0106】
これに対し、温度600℃未満で焼成した触媒は、水洗前においては、貴金属(Pt)触媒に比べて充分に低いDTA発熱ピーク温度を示し、優れた触媒活性を示していたが、水洗後においては、DTA発熱ピーク温度は著しく上昇し、貴金属触媒よりも触媒活性が低下していた。また、焼成を行っていないソーダライトと炭酸カリウムとの混合物についても、水洗前には優れた触媒活性を示していたが、水洗後には触媒活性が著しく低下していた。
温度600℃未満で焼成して得られる触媒、及び焼成を行なわずに作製した触媒において、上記のごとく水洗後において触媒活性が著しく低下していた原因は、水洗後にカリウムが溶出したためであると考えられる。
【0107】
したがって、水分を多く含む排ガスの浄化触媒として用いるためには、焼成温度は600℃以上で行う必要があることがわかる。また、図18より知られるごとく、特に温度700℃〜1200℃で焼成を行うことにより、よりDTA発熱ピーク温度の低い排ガス浄化触媒、即ち触媒活性に優れた排ガス浄化触媒が得られることがわかる。さらに、同図より知られるごとく、5時間で焼成を行った場合に比べて10時間焼成を行った場合の方が、水洗後の触媒活性の低下が抑制されていた。
【0108】
上述の例においては、ソーダライトにK源として炭酸カリウムを混合して排ガス浄化触媒を作製した。本例においては、次に、ソーダライトに混合するカリウム塩の種類を変えて複数の排ガス浄化触媒を作製し、そのDTA発熱ピークトップ温度を調べた。
【0109】
具体的には、ソーダライトに、各カリウム塩(炭酸カリウム、硝酸カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、リン酸カリウム、又は水酸化カリウム)を混合して混合物を得た。各カリウム塩は、カリウム塩中のカリウム元素量がソーダライト中のSi元素1モルに対して0.225モル又は0.00225モルとなるように混合を行った。また、混合は、上記試料E1と同様に水中で行い、上述のごとく混合液の水分を乾燥させることにより混合物を得た。
【0110】
次に、混合物を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、排ガス浄化触媒を得た。
このようにして得られた各排ガス浄化触媒について、上記試料E1と同様に水洗前後のDTA発熱ピーク温度を測定した。その結果を図19に示す。
【0111】
図7より知られるごとく、いずれのカリウム塩を用いて作製しても、排ガス浄化触媒は、水洗前後において優れた触媒活性を示した。また、カリウム塩の量を減らすと触媒活性は低下するものの、この場合においても水洗前後において450℃以下という非常にDTAピーク発熱トップ温度を維持しており、優れた触媒活性を示していた。
【0112】
上述の例においては、混合時にソーダライトにアルカリ金属元素源(アルカリ金属塩)としてカリウム塩を混合し、排ガス浄化触媒を作製した。次に、本例においては、ソーダライトにカリウム塩の以外の各種アルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源を混合して複数の排ガス浄化触媒を作製し、これらのDTA発熱ピークトップ温度を調べた。
【0113】
具体的には、まず、ソーダライトに、各種アルカリ金属塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、又は炭酸セシウム)、又はアルカリ土類金属塩(水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム)を混合して混合物を得た。各アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、ソーダライト中のSi元素1モルに対する各アルカリ金属塩中のアルカリ金属元素量又はアルカリ土類金属塩中のアルカリ土類金属元素量が0.225モル又は0.00225モルとなるように混合した。また、混合は、上記試料E1と同様に水中で行い、上述のごとく混合液の水分を乾燥させることにより固形分(混合物)を得た。
【0114】
次に、混合物を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、排ガス浄化触媒を得た。
このようにして得られた各排ガス浄化触媒について、上記試料E1と同様に水洗前後のDTA発熱ピーク温度を測定した。その結果を図20に示す。図20において、横軸は、混合時に添加したアルカリ金属元素源中のアルカリ元素種、及びアルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属種を示し、縦軸は、DTA発熱ピーク温度を示す。
【0115】
図20より知られるごとく、ソーダライトに各種アルカリ金属元素(Na、K、Rb、Cs)を混合して作製した排ガス浄化触媒は、いずれのアルカリ金属元素を用いた場合でも、水洗前後において優れた触媒活性を示した。
これに対し、ソーダライトに各種アルカリ土類金属元素(Mg、Ca、Sr、Ba)を混合して作製した排ガス浄化触媒においては、アルカリ土類金属元素としてMgを選択した場合に、若干触媒活性が不十分である場合が認められるものの、いずれの場合においても、実用上問題ないレベルの触媒活性を示した。
このように、K以外にも、その他のアルカリ金属、又はアルカリ土類金属をソーダライトに混合して焼成しても、優れた触媒活性を有する排ガス浄化触媒が得られることがわかる。
【0116】
また、アルカリ土類金属元素源としてMg源を用いた場合について、さらに詳細に説明すると、図20より知られるごとく、Mgをソーダライト中のSi元素1モルに対して0.00225モル加えて得られた触媒は優れた触媒活性を示した。しかし、Mgを0.225モル加えて作製した触媒は、実用に供することは可能であるものの、触媒活性が低下していた。一方、その他のアルカリ土類金属元素(Ca、Sr、Ba)を用いて得られた触媒は、いずれの場合においても優れた触媒活性を示した。
したがって、ソーダライトを用いる場合において、アルカリ土類金属元素源を選択する場合には、Mg以外のアルカリ土類金属元素源を採用することが好ましい。また、Mg源を採用する場合には、Mg源中のMg量がソーダライト中のSi元素1モルに対して0.225モル未満となるように、Mg源とソーダライトとの混合を行うことが好ましい。より好ましくは、0.00225モル以下がよい。
【0117】
上記の例においては、ソーダライトに1種類のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を混合して排ガス浄化触媒を作製した。次に、本例においては、混合時にソーダライトに複数のアルカリ金属元素、アルカリ土類金属を混合して排ガス浄化触媒を作製し、そのDTA発熱ピーク温度を測定した。
【0118】
具体的には、まず、ソーダライトに、炭酸カリウムを加え、さらにアルカリ金属元素源(炭酸ナトリウム、炭酸ルビジウム、又は炭酸セシウム)又はアルカリ土類金属元素源(水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、又は炭酸バリウム)を加えて混合し混合物を得た。このようにして得られた各混合物は、ソーダライトと、炭酸カリウムと、炭酸カリウム以外のアルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源とを含有する。
各混合物は、ソーダライト中のSi元素1モルに対して炭酸カリウム中のカリウム量が0.1125モルとなるようにソーダライトに炭酸カリウム(カリウム源)を加え、さらにソーダライト中のSi元素1モルに対して各アルカリ金属元素源中のアルカリ金属元素量又はアルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素量が0.1125モルとなるようにソーダライトに各種アルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源を加えて作製した。
したがって、各混合物においては、ソーダライト中のSi元素1モルに対する炭酸カリウム中のカリウム量と、その他のアルカリ金属元素量又はアルカリ土類金属元素量との合計量は、いずれも0.225モルとなっている。
また、混合は、上記試料E1と同様に水中で行い、上述のごとく混合液の水分を乾燥させることにより混合物を得た。
【0119】
次に、混合物を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持した。これにより混合物の焼成を行った。次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、排ガス浄化触媒を得た。
【0120】
このようにして得られた各排ガス浄化触媒について、上記試料E1と同様に水洗前後のDTA発熱ピーク温度を測定した。その結果を図21に示す。同図において、縦軸はDTA発熱ピーク温度を示し、横軸は、炭酸カリウム以外に添加したアルカリ金属元素源中のアルカリ金属元素種又はアルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素種を示す。また、同図には、ソーダライトに炭酸カリウムだけを混合し焼成して作製した排ガス浄化触媒(図21において横軸がKで示されたサンプル)についての水洗前後のDTA発熱ピーク温度を併記する。
【0121】
図21より知られるごとく、ソーダライトにK(カリウム)の他に、さらに各種アルカリ金属元素(Na、Rb、Cs)又はアルカリ土類金属元素(Mg、Ca、Sr、Ba)を混合した場合においても、Kを単独で混合した場合と同様に、優れた触媒活性を有する排ガス浄化触媒が得られた。
このように、混合時に複数のアルカリ金属元素源及びアルカリ土類金属源を用いても、優れた触媒活性を有する排ガス浄化触媒が得られることがわかる。
【0122】
次に、本例においては、アルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源の添加量が排ガス浄化触媒の触媒活性に与える影響を調べるために、ソーダライトに混合するアルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源の添加割合を変えて排ガス浄化触媒を作製し、そのDTA発熱ピーク温度を測定した。
【0123】
まず、ソーダライト100重量部に、炭酸カリウム又は炭酸バリウムを0〜100重量部の添加量で混合し、混合物を得た。
具体的には、後述の表1及び図22に示すごとく、ソーダライト(SOD)100重量部に対して、炭酸カリウムをそれぞれ0重量部、0.1重量部、0.5重量部、1重量部、3重量部、5重量部、10重量部、15重量部、20重量部、40重量部、及び100重量部混合して混合物を作製した。
また、後述の表2及び図23に示すごとく、ソーダライト(SOD)100重量部に対して、炭酸バリウムをそれぞれ0重量部、5重量部、10重量部、15重量部、20重量部、40重量部、70重量部、100重量部、150重量部、200重量部、及び300重量部混合して混合物を作製した。
これらの混合は、上記試料E1と同様に水中で行い、上述のごとく混合液の水分を乾燥させることにより複数の混合物を得た。
【0124】
次に、これらの混合物を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃に達したところで10時間保持した。これにより、混合物の焼成を行った。次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、排ガス浄化触媒を得た。
【0125】
このようにして得られた各排ガス浄化触媒について、上記試料E1と同様に水洗前後のDTA発熱ピーク温度を測定した。
炭酸カリウムを用いて作製した排ガス浄化触媒の水洗前後のDTA発熱ピーク温度の結果を表1及び図22に示し、炭酸バリウムを用いて作製した排ガス浄化触媒の水洗前後のDTA発熱ピーク温度の結果を表2及び図23に示す。
なお、表1には、ソーダライト100重量部に対するKの混合量(重量部)をソーダライト中のSi量(mol)に対するKの混合量(mol)に換算した値を示してある(表1参照)。同様に、表2には、ソーダライト100重量部に対するBaの混合量(重量部)をソーダライト中のSi量(mol)に対するBaの混合量(mol)に換算した値を示してある(表2参照)。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
表1、表2、図22、及び図23より知られるごとく、混合時におけるアルカリ金属元素量及びアルカリ土類金属元素量を変えても、得られる排ガス浄化触媒は優れた触媒活性を示していた。
その一方で、アルカリ金属量又はアルカリ土類金属量を増やすと、水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度の差が大きくなっていた。表1及び表2より知られるごとく、混合時に、アルカリ金属元素源(K2CO3)中に含まれるアルカリ金属元素(K)量、アルカリ土類金属元素源(BaCO3)中に含まれるアルカリ土類金属元素(Ba)量がソーダライト中のSi元素1モルに対して2.25モル以下となるように、ソーダライトとアルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源とを混合すれば、水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度の差が比較的小さな排ガス浄化触媒、即ち水分に対する耐久性に優れた排ガス浄化触媒を作製できることがわかる。また、上述のアルカリ金属元素量とアルカリ土類金属元素量が2.25モルを超える場合には、混合物が焼成時に一旦溶融し易くなり、焼成後に得られる排ガス浄化触媒の粉砕が困難になる。
同様の観点から、より好ましくは、ソーダライト中のSi元素1モルに対してアルカリ金属元素量(モル)、アルカリ土類金属元素量(モル)は1モル以下がよく、さらにより好ましくは0.5モル以下がよい。
【0129】
以上のように、本例によれば、ソーダライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物を温度600℃以上で焼成することにより、低温でかつ長期間安定にPMを燃焼除去できる排ガス浄化触媒が得られることがわかる。
かかる排ガス浄化触媒は、実施例1及び実施例2に示すごとく、ハニカム構造体等の基材に担持させることにより、排ガス浄化フィルタとして好適に用いることができる。そして、これを用いて実施例1及び実施例2と同様に排ガス浄化装置を構成することができる。
【0130】
(実験例2)
本例は、ソーダライトを単独で焼成することにより排ガス浄化触媒を作製し、その特性を評価する例である。
具体的には、まず、ソーダライト(3(Na2O・Al2O3・2SiO2)・2NaOH)の粉末を準備した。
次いで、このソーダライトを温度1000℃で焼成した。具体的には、ソーダライトを昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。次いで、焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、粉末状の排ガス浄化触媒を得た。これを試料E2とする。
【0131】
次に、本例において作製した排ガス浄化触媒(試料E2)について、PMに対する燃焼促進特性を調べた。また、比較用として、貴金属系触媒(Pt粉末)、炭酸カリウム粉末についても燃焼促進特性を調べた。
【0132】
具体的には、まず、実験例1と同様にして、CB単独、貴金属系触媒とCBとの混合物、試料E2とCBとの混合物、炭酸カリウムとCBとの混合物という4種類の評価サンプルを作製した。
次いで、実験例1と同様に、DTA発熱ピーク温度を測定した。各触媒種を用いたときのDTA発熱ピーク温度の測定結果を図24に示す。
【0133】
また、実験例1と同様に、触媒種(試料E2、貴金属系触媒、又は炭酸カリウム粉末)を水で洗浄し、乾燥後の触媒種(試料E2及び貴金属系触媒)とCBとを混合し、各触媒種とカーボンブラックとを含有する2種類の評価サンプルを得た。なお、CB単独からなる評価サンプルについても、実験例1と同様にして調整した。また、触媒種として炭酸カリウムを用いた評価サンプルは、水洗洗浄処理により水に溶解してしまったため、その後の操作を行うことができなかった。即ち、水洗後の評価サンプルとしては、CB単独、貴金属系触媒とCBとの混合物、試料E2とCBとの混合物という3種類のサンプルを作製した。これらのサンプルについて、再度熱分析−示差熱重量(TG−DTA)同時測定装置によって、DTA発熱ピーク温度の測定を行った。水洗浄処理後のDTA発熱ピーク温度の結果を図24に併記する。
【0134】
図24より知られるごとく、水洗浄前において、試料E2を用いたサンプル及び炭酸カリウム用いたサンプルは、DTA発熱ピーク温度が低く、比較的低い温度でPM(CB)を燃焼できることがわかる。なお、図24から知られるごとく、試料E2は、約450℃付近に発熱ピークを有しているが、実際にはこれよりも低い温度(例えば400℃程度)でもカーボンブラックの燃焼は開始されている。
また、図24より知られるごとく、CB単独、貴金属系触媒、及び試料E2については、水洗前後でCBに対する燃焼促進特性はほとんど変化しなかった。これに対して、炭酸カリウムを用いたサンプルは、水洗後に炭酸カリウムが水に溶解し、測定が不可能であった。
【0135】
したがって、試料E2は、PMに対して優れた燃焼促進特性を有し、低温でPMを燃焼除去することができる。また、試料E2は、水分存在下においてもその優れた特性を維持できるため、水分を多く含む排ガスの浄化触媒として用いても長期間安定してPMの燃焼を行うことができる。
【0136】
また、本例においては、上記試料E2とは異なる焼成温度でソーダライトを焼成し、さらに3種類の触媒を作製した。
即ち、上記試料E2においては、焼成温度1000℃(保持時間10時間)でソーダライトの焼成を行ったが、これら3種類の触媒は、それぞれ焼成温度700℃(保持時間10時間)、焼成温度600℃(保持時間10時間)又は焼成温度500℃(保持時間10時間)で焼成して作製した。そしてこれら3種類の排ガス浄化触媒についても、上記試料E2と同様にPMに対する燃焼促進特性を調べた。このとき、比較用として排ガス浄化触媒の作製に用いたソーダライト粉末についてもPMに対する燃焼促進特性を調べた。このソーダライトの粉末としては、焼成を行う代わりに室温(約25℃)で約10時間放置したものを採用した。燃焼促進特性の測定は、上記試料E2と同様にしてDTA発熱ピーク温度を測定することにより行った。その結果を図25に示す。なお、同図には、試料E2、即ち焼成温度1000℃で焼成してなる排ガス浄化触媒の結果を併記する。
【0137】
図25より知られるごとく、ソーダライトを温度600℃以上で焼成して得られた排ガス浄化触媒のDTA発熱ピークトップ温度は、500℃以下という非常に低い値を示した。PMに対する燃焼触媒として一般に用いられる貴金属(Pt)触媒のDTA発熱ピーク温度は520℃程度(図24参照)であることから、これらの排ガス浄化触媒は、PMに対して充分に優れた触媒活性を有していることがわかる。
また、温度600℃以上で焼成してなる排ガス浄化触媒は、水洗後においても、貴金属(Pt)触媒のDTA発熱ピーク温度と同程度又はそれより低い温度を示しており、水洗後においても優れた触媒活性を維持できることがわかる。
【0138】
これに対し、温度500℃で焼成して得られた触媒は、水洗前においては、貴金属(Pt)触媒と同程度のDTA発熱ピーク温度(約520℃)を示したが、水洗後においては、DTA発熱ピーク温度は約540℃まで上昇し、貴金属触媒よりも触媒活性が低下していた。また、焼成を行っていないソーダライトにおいては、水洗前後にかかわらずPMの燃焼に対する触媒活性が不十分であった。
【0139】
また、本例においては、上記試料E2の比較用として、ソーダライト(SOD)以外の各種ゼオライトを単独で焼成し、これを触媒として用いて燃焼促進特性を調べた。
具体的には、まず、ソーダライト以外のゼオライトとして、ゼオライト構造(BEA型、FAU(フォージャサイト)型、FER型、LTA型、LTL型、MFI型、及びMOR型)及び/又はゼオライト組成中のSiO2/Al2O3比が異なる12種類のゼオライトを準備した(表3参照)。これらは、いずれも東ソー(株)製のゼオライトである。これらのゼオライトの製品名、ゼオライト構造の型の種類、及びSiO2/Al2O3比を表3に示す。なお、表3及び後述の図26におけるゼオライト種の名称は、東ソー(株)製のゼオライトの製品名である。また、表3には試料E2の作製に用いたソーダライト(SOD)についても併記してある。
【0140】
【表3】
【0141】
次に、表3に示す各種ゼオライトを上記試料E2と同様に焼成した。具体的には、各種ゼオライトをそれぞれ昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。次いで、焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、粉末状の触媒を得た。そしてこれらの触媒についても、上記試料E2と同様にPMに対する燃焼促進特性を調べた。なお、これらの触媒については、水洗後の燃焼促進特性の測定は行っていない。その結果を図26に示す。また、図26には、ソーダライトを焼成して得られた上記試料E2の結果「SOD」として併記してある。
【0142】
図26より知られるごとく、ソーダライト以外のゼオライトを焼成してなる物質を触媒として用いた場合には、DTA発熱ピーク温度が非常に高く、PMの燃焼促進特性が不十分であった。これに対し、SODを焼成してなる触媒(試料E2)は、約450℃という非常に低いDTA発熱ピーク温度を示しており、PMを低温で燃焼できる。よって、単独で焼成を行う場合には、ゼオライトの中でもソーダライトを採用することが必要であることがわかる。
【0143】
以上のように、本例によれば、ソーダライトを単独で温度600℃以上で焼成することにより、低温でかつ長期間安定にPMを燃焼除去することができる排ガス浄化触媒が得られることがわかる。
かかる排ガス浄化触媒は、実施例1及び実施例2に示すごとく、ハニカム構造体等の基材に担持させることにより、排ガス浄化フィルタとして好適に用いることができる。そして、実施例1及び実施例2と同様に排ガス浄化装置を構成することができる。
【0144】
(実験例3)
本例は、ソーダライト以外のゼオライトを用いて排ガス浄化触媒を作製し、その特性を評価する例である。
具体的には、まず、ゼオライトとして、LTA型で、Al2O31モルに対するSiO2量(SiO2/Al2O3)が2.0モルであるゼオライト(東ソー(株)製の「A−3」)を準備した。また、アルカリ金属元素源として、炭酸カリウムを準備した。
次に、ゼオライト中のSi元素1モルに対する炭酸カリウム中のK量が0.225モルとなる割合でゼオライトと炭酸カリウムとを水に投入し、水中で両者を混合した。
次いで、混合液を温度120℃で加熱し、水分を蒸発させ、固形分(混合物)を得た。
【0145】
次に、固形分を温度1000℃で焼成した。具体的には、固形分を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。
次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、排ガス浄化触媒を得た。これを試料E3とする。
【0146】
次に、本例において作製した排ガス浄化触媒(試料E3)について、PMに対する燃焼促進特性を調べた。また、比較用として、貴金属系触媒(Pt粉末)、炭酸カリウム粉末についても燃焼促進特性を調べた。
【0147】
具体的には、まず、実験例1と同様にして、CB単独、貴金属系触媒とCBとの混合物、試料E3とCBとの混合物、炭酸カリウムとCBとの混合物という4種類の評価サンプルを作製した。
次いで、実験例1と同様に、DTA発熱ピーク温度を測定した。各触媒種を用いたときのDTA発熱ピーク温度の測定結果を図27に示す。
【0148】
また、実験例1と同様に、触媒種(試料E3、貴金属系触媒、及び炭酸カリウム粉末)を水で洗浄し、乾燥後の触媒種(試料E3及び貴金属系触媒)とCBとを混合し、各触媒種とカーボンブラックとを含有する2種類の評価サンプルを得た。なお、CB単独からなる評価サンプルについても、実験例1と同様にして調整した。また、触媒種として炭酸カリウムを用いた評価サンプルは、水洗により水に溶解してしまったため、その後の操作を行うことができなかった。即ち、水洗後の評価サンプルとしては、CB単独、貴金属系触媒とCBとの混合物、試料E3とCBとの混合物という3種類のサンプルを作製した。これらのサンプルについて、再度熱分析−示差熱重量(TG−DTA)同時測定装置によって、DTA発熱ピーク温度の測定を行った。水洗浄処理後のDTA発熱ピーク温度の結果を図27に併記する。
【0149】
図27より知られるごとく、水洗浄前において、試料E3を用いたサンプル及び炭酸カリウム用いたサンプルは、DTA発熱ピーク温度が低く、比較的低い温度でPM(CB)を燃焼できることがわかる。なお、図27から知られるごとく、試料E3は、約410℃付近(水洗前)にDTA発熱ピーク温度を有しているが、実際にはこれよりも低い温度(例えば360℃程度)でもカーボンブラックの燃焼は開始されている。
【0150】
また、図27より知られるごとく、CB単独、貴金属系触媒、及び試料E3については、水洗前後でCBに対する燃焼促進特性はほとんど変化しなかった。これらの中でも試料E3は、水洗後における燃焼促進特性の低下幅が最も大きくなっているが、それでも水洗後のDTA発熱ピーク温度は450℃程度であり、CB単独及び貴金属系触媒に比べて充分低い値を示している。したがって、試料E3は、水洗後においてもPMに対する優れた燃焼促進特性を示すことがわかる。
一方、炭酸カリウムを用いたサンプルは、水洗後に炭酸カリウムが水に溶解し、測定が不可能であった。
【0151】
このように、ソーダライト以外のゼオライトを用いて作製した排ガス浄化触媒(試料E3)も、PMに対して優れた燃焼促進特性を有し、低温でPMを燃焼除去することができる。また、試料E3は、水分存在下においてもその優れた特性を維持できるため、長期間安定してPMの燃焼を行うことができる。また、上記試料E3は、その作製時に高価な貴金属等を必要としないため、低コストで作製することができる。
かかる排ガス浄化触媒(試料E3)は、実施例1及び実施例2に示すごとく、ハニカム構造体等の基材に担持させることにより、排ガス浄化フィルタとして好適に用いることができる。そして、これを用いて実施例1及び実施例2と同様に排ガス浄化装置を構成することができる。
【0152】
(実験例4)
本例は、組成の異なる複数のゼオライトを用いて排ガス浄化触媒を作製し、水洗前後におけるPMに対する燃焼促進特性を調べる例である。
本例の排ガス浄化触媒は、ゼオライト種を変更する点を除いては、実験例3の上記試料E3と同様にして製造することができる。
【0153】
具体的には、まず、上記試料E3の作製に用いたゼオライト(東ソー株式会社製の「A−3」)を含む、構造及び/又は組成中のSiO2/Al2O3比(モル比)が異なる9種類のゼオライトを準備した。これらのゼオライトは、LTA型、BEA型、FAU(フォーじゃライト)型、FER型、LTL型、MFI型、又はMOR型の構造を有し(上述の表3参照)、いずれも東ソー(株)製のゼオライトである。具体的には、東ソー(株)製の「A−3」、「A−4」、「F−9」、「642NAA」、「320NAA」、「500KOA」、「720KOA」、「820NAA」、及び「940HOA」を用いた(表3参照)。
【0154】
次に、各種ゼオライトと炭酸カリウムとをそれぞれ混合した。混合は、実験例3と同様に、水中で行い、混合液の水分を蒸発させることにより、固形分を得た。各種ゼオライトと炭酸カリウムとの混合割合は、実験例3と同様に、各種ゼオライト中のSi元素1モルに対する炭酸カリウム中のK量が0.225モルとなる割合とした。
【0155】
次に、各固形分を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。
次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、排ガス浄化触媒を得た。
【0156】
このようにして、上述の各種ゼオライトを用いて9種類の排ガス浄化触媒を作製した。そして、これらの排ガス浄化触媒についても、実験例1の上記試料E1と同様に水洗前後におけるPMに対する燃焼促進特性を調べた。その結果を図28に示す。
【0157】
また、本例においては、焼成の意義を調べるために、焼成前の上記固形分、即ち各種ゼオライトと炭酸カリウムとの混合物を触媒として用い、実験例3の上記試料E3と同様に水洗前後におけるPMに対する燃焼促進特性を調べた。その結果を図29に示す。
【0158】
図28より知られるごとく、いずれのゼオライトを用いて場合においても、排ガス浄化触媒は、水洗浄前において約480℃以下という低いDTA発熱ピーク温度を示した。これは一般にPMの燃焼触媒として用いられている貴金属(Pt)触媒(DTA発熱ピーク温度:約520℃(図27参照))に比べて充分に小さな値である。したがって、各種ゼオライトを用いて作製した排ガス浄化触媒は、PMに対して優れた燃焼促進特性を有し、低温でPMを燃焼除去させることができることがわかる。
【0159】
また、図28より知られるごとく、各種ゼオライトを用いて作製した排ガス浄化触媒は、水洗後においても貴金属(Pt)触媒(DTA発熱ピーク温度:約520℃(図27参照))と同等又はそれよりも小さなDTA発熱ピーク温度を示した。したがって、これらの排ガス浄化触媒は、水分存在下においてもPMに対して優れた燃焼促進特性を維持できることがわかる。
【0160】
また、図29より知られるごとく、焼成を行っていない各種ゼオライトと炭酸カリウムとの混合物は、水洗前においては非常に低いDTA発熱ピーク温度を示した。しかし、水洗後においては、いずれの混合物においてもDTA発熱ピーク温度は顕著に上昇していた。
一方、焼成後においては、上述のごとく水洗後においてもDTA発熱ピーク温度の上昇が小さくなっていた(図28参照)ことから、混合物(上記固形分)を焼成することにより、水分に対する耐久性を向上させることができることがわかる。
【0161】
以上のように、本例によれば、様々なゼオライトを用いても、低温でかつ水分存在下でも長期間安定にPMを燃焼除去できる排ガス浄化触媒が得られることがわかる。かかる排ガス浄化触媒は、実施例1及び実施例2に示すごとく、ハニカム構造体等のフィルタ基材に担持させることにより、排ガス浄化フィルタとして好適に用いることができる。そして、これを用いて実施例1及び実施例2と同様に排ガス浄化装置を構成することができる。
【0162】
(実験例5)
本例は、ソーダライト以外のゼオライトを用いた場合における焼成温度が触媒活性に与える影響を調べる例である。
即ち、本例においては、異なる複数の焼成温度でゼオライトと炭酸カリウムとの混合物を焼成して複数の排ガス浄化触媒を作製し、これらの触媒のPMに対する燃焼促進特性を調べる。
本例の排ガス浄化触媒は、焼成温度を変更する点を除いては、実験例3と同様にして作製する。
【0163】
具体的には、まず、実験例3と同様にして、LTA型で、SiO2/Al2O3比(モル比)が2.0のゼオライト(東ソー(株)製の「A−3」)と炭酸カリウムとの混合物(上記固形分)を得た。本例においても、実験例3と同様に、混合は水中で行い、ゼオライトと炭酸カリウムとの混合割合についても、実験例3と同様に、ゼオライト中のSi元素1モルに対する炭酸カリウム中のK量が0.225モルとなる割合とした。
【0164】
次に、混合物を異なる温度で焼成して複数の触媒を作製した。
具体的には、混合物を焼成温度500℃、600℃、800℃、700℃、900℃、1000℃、1100℃、1200℃、1300℃で焼成した。焼成速度は100℃/hとし、各焼成温度で10時間保持することにより焼成を行った。その後、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、異なる温度で焼成された9種類の触媒を得た。
【0165】
そしてこれら9種類の触媒についても、実験例3の上記試料E3と同様にPMに対する水洗前後の燃焼促進特性を調べた。このとき、比較用として、焼成を行っていないゼオライト(A−3)と炭酸カリウムとの混合物についてもPMに対する燃焼促進特性を調べた。このゼオライトと炭酸カリウムとの混合物としては、焼成を行う代わりに室温(約25℃)で約10時間放置したものを採用した。
燃焼促進特性の測定は、実験例3の上記試料E3と同様にしてDTA発熱ピーク温度を測定することにより行った。その結果を図30に示す。
【0166】
図30より知られるごとく、温度600℃以上で焼成を行って作製した排ガス浄化触媒のDTA発熱ピークトップ温度は、水洗前及び水洗後においても500℃を下回っていた。PMに対する燃焼触媒として一般に用いられる貴金属(Pt)触媒のDTA発熱ピーク温度は520℃程度(図27参照)であることから、これらの排ガス浄化触媒は、PMに対して充分に優れた燃焼促進特性を有していることがわかる。
【0167】
これに対し、図30より知られるごとく、温度600℃未満で焼成した触媒は、水洗前においては、貴金属(Pt)触媒に比べて充分に低いDTA発熱ピーク温度を示していたが、水洗後においては、DTA発熱ピーク温度は著しく上昇し、貴金属触媒のDTA発熱ピーク温度(520℃程度(図27参照))よりも大きくなっていた。即ち、水洗後には、PMに対する燃焼促進特性が不十分であった。
また、焼成を行っていないゼオライトと炭酸カリウムとの混合物も、水洗前にはPMに対して優れた燃焼促進特性を示していたが、水洗後には燃焼促進特性が著しく低下していた。
温度600℃未満で焼成して得られる触媒、及び焼成を行なわずに作製した触媒において、上記のごとく水洗後においてPMに対する燃焼促進特性が著しく低下していた原因は、水洗後にカリウムが溶出したためであると考えられる。
【0168】
したがって、本例によれば、焼成時における焼成温度は600℃以上で行う必要があることがわかる。また、図30より知られるごとく、好ましくは温度700℃〜1200℃、より好ましくは、800℃〜1100℃で焼成を行うことにより、燃焼促進特性がより優れると共に耐水性にもより優れた排ガス浄化触媒が得られることがわかる。かかる排ガス浄化触媒は、実施例1及び実施例2に示すごとく、ハニカム構造体等のフィルタ基材に担持させることにより、排ガス浄化フィルタとして好適に用いることができる。そして、これを用いて実施例1及び実施例2と同様に排ガス浄化装置を構成することができる。
【0169】
(実験例6)
本例は、混合時にゼオライトに添加するアルカリ金属元素量が触媒活性に与える影響を調べる例である。
即ち、本例においては、ゼオライトに対して異なる複数の混合割合で炭酸カリウムを混合し、複数の排ガス浄化触媒を作製し、これらのPMに対する燃焼促進特性を調べる。
本例の排ガス浄化触媒は、ゼオライトと炭酸カリウムとの混合割合を変更する点を除いては、上記実験例3と同様にして作製する。
【0170】
具体的には、まず、実験例3と同様にして、LTA型で、SiO2/Al2O3比(モル比)が2.0のゼオライト(東ソー(株)製の「A−3」)を準備した。
次いで、このゼオライト100重量部に炭酸カリウムを0〜100重量部混合し、混合物を得た。
具体的には、後述の表4及び図31に示すごとく、ゼオライト100重量部に対して、炭酸カリウムをそれぞれ0重量部、1重量部、2.5重量部、5重量部、10重量部、20重量部、40重量部、60重量部、80重量部、及び100重量部混合して混合物を作製した。
これらの混合は、実験例3の上記試料E3と同様に水中で行い、上述のごとく混合液の水分を蒸発させることにより、Kの配合割合の異なる複数の混合物(上記固形分)を得た。
【0171】
次に、これらの混合物を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃に達したところで10時間保持した。これにより、各混合物の焼成を行った。次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、Kの配合割合が異なる10種類の排ガス浄化触媒を得た。
【0172】
このようにして得られた各排ガス浄化触媒について、実験例3の上記試料E3と同様にPMに対する水洗前後の燃焼促進特性を調べた。燃焼促進特性の測定は、実験例3の上記試料E3と同様にしてDTA発熱ピーク温度を測定することにより行った。その結果を表4及び図31に示す。
なお、表4には、ゼオライト100重量部に対するKの混合量(重量部)をゼオライト中のSi量(mol)に対するKの混合量「K/Si」(mol)に換算した値を示してある(表4参照)。
【0173】
【表4】
【0174】
表4及び図31より知られるごとく、混合時に、ゼオライト中のSi元素1モルに対して炭酸カリウム中のK量が0.1モル〜2.0モルとなるように、ゼオライトと炭酸カリウムとを混合した場合、即ち本例における混合時にゼオライト100重量部に対して炭酸カリウムを5重量部〜80重量部混合した場合には、水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度が低く、燃焼促進特性が優れた排ガス浄化触媒が得られた。
これに対し、上述の0.1モル〜2.0モルという範囲から外れた場合には、特に水洗後の発熱ピーク温度が高くなっており、得られた触媒は、耐水性の低いものであった。
また、好ましくは、ゼオライト中のSi元素1モルに対する炭酸カリウム中のK量を0.2モル以上かつ1.5モル以下にすることにより、より耐水性の優れた排ガス浄化触媒が得られることがわかる(表4、図31参照)。
【0175】
以上のように、本例によれば、混合時に、ゼオライトと炭酸カリウム(アルカリ金属元素源)とを、ゼオライト中のSi元素1モルに対する炭酸カリウム中のK元素(アルカリ金属元素)量が0.1モル〜2.0モルとなるように混合することにより、より耐水性に優れ長期間安定してPMを燃焼除去できる排ガス浄化触媒が得られることがわかる。
かかる排ガス浄化触媒は、実施例1及び実施例2に示すごとく、ハニカム構造体等の基材に担持させることにより、排ガス浄化フィルタとして好適に用いることができる。そして、これを用いて実施例1及び実施例2と同様に排ガス浄化装置を構成することができる。
【0176】
(実験例7)
本例は、混合時に、ゼオライトに対して種々のアルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源を添加して排ガス浄化触媒を作製し、そのPMに対する燃焼促進特性を調べる例である。
本例の排ガス浄化触媒は、ゼオライトに混合するアルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源を変更する点を除いては、実験例3と同様にして作製する。
【0177】
具体的には、まず、実験例3と同様にして、LTA型で、SiO2/Al2O3比(モル比)が2.0のゼオライト(東ソー(株)製の「A−3」)を準備した。
次いで、このゼオライトに各種アルカリ金属元素源(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、又は炭酸セシウム)、又は各種アルカリ土類金属元素源(水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、又は炭酸バリウム)を混合した。ゼオライトと各種アルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源との混合割合は、実験例3と同様に、ゼオライト中のSi元素1モルに対するアルカリ土類金属元素源中のアルカリ金属元素量又はアルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素量が0.225モルとなる割合とした。
また、本例においても、実験例3と同様に、混合は水中で行い、混合液の水分を蒸発させることにより、ゼオライトと、各種アルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源との混合物(上記固形分)を作製した。
【0178】
次に、これらの混合物を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃に達したところで10時間保持した。これにより、各混合物の焼成を行った。次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、異なるアルカリ金属元素(Na、K、Rb、又はCs)又はアルカリ土類金属元素(Mg、Ca、Sr、又はBa)を含有する8種類の排ガス浄化触媒を得た。
【0179】
このようにして得られた各排ガス浄化触媒について、実験例3の上記試料E3と同様にPMに対する水洗前後の燃焼促進特性を調べた。燃焼促進特性の測定は、実験例3の上記試料E3と同様にしてDTA発熱ピーク温度を測定することにより行った。その結果を図32に示す。なお、図32において、横軸は、混合時に添加したアルカリ金属元素源中のアルカリ金属元素種、及びアルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素種を示し、縦軸は、DTA発熱ピーク温度を示す。
【0180】
図32より知られるごとく、各種アルカリ金属元素源、アルカリ土類金属元素源を用いて作製した排ガス浄化触媒は、いずれの場合においても、水洗前後において従来の貴金属触媒とほぼ同等又はそれよりも低いDTA発熱ピーク温度を示した。
特に、アルカリ金属元素源を用いた場合及びアルカリ土類金属元素源としてBa源(炭酸バリウム)を用いた場合には、水洗後においても、DTA発熱ピーク温度が500℃を下回っており、より優れた排ガス浄化触媒が得られることがわかる。
【0181】
このように、本例によれば、混合時に、様々なアルカリ金属元素源、アルカリ土類金属元素源を用いても、低温でかつ水分存在下でも長期間安定にPMを燃焼除去することができる排ガス浄化触媒が得られることがわかる。
かかる排ガス浄化触媒は、実施例1及び実施例2に示すごとく、ハニカム構造体等のフィルタ基材に担持させることにより、排ガス浄化フィルタとして好適に用いることができる。そして、これを用いて実施例1及び実施例2と同様に排ガス浄化装置を構成することができる。
【符号の説明】
【0182】
1 排ガス浄化装置
2 排ガス浄化フィルタ
151 フィルタ再生手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関の排ガス中には、パティキュレートマター(PM)、NOx等の有害物質が含まれている。また、直噴ガソリンエンジンでは、理論空燃比よりも薄い混合気で運転(リーンバーン)するエンジンがあり、このようなガソリンエンジンから排出される排ガス中においても、PM及びNOx等の有害物質が含まれている。
このような有害物質は、排ガス経路に設けられた排ガス浄化フィルタにより燃焼除去又は吸着除去されていた。
【0003】
一般に、排ガス浄化フィルタは、多孔質体からなり、PM等の粒子状物質を捕集することができる。粒子状物質が堆積すると圧力損失が高まり、エンジンの運転に悪影響を与えるおそれがある。そのため、排ガス浄化フィルタに堆積した粒子状物質を間欠的に燃焼除去するという再生処理が行われていた。具体的には、内燃機関において燃料を燃焼させ、これにより生じる高温の排ガスを用いて再生処理を行っていた。
【0004】
この再生処理を比較的低温でかつ確実に行うために、排ガス浄化フィルタに、PMに対する燃焼促進作用を有する白金等の貴金属触媒を担持することが行われていた。
貴金属触媒が担持された排ガス浄化フィルタにおいては、再生処理は、PMが燃焼する温度600℃以上で行われていた。より確実な燃焼のためには、630℃以上で行う必要があった。
【0005】
再生処理中に、例えば内燃機関の運転状態が減速状態になると、上記排ガス浄化フィルタへ流入する排ガスの量が減少し、PMの燃焼熱が上記排ガス浄化フィルタ内に滞留し、上記排ガス浄化フィルタ内の急速温度上昇を引き起こすという問題を生じていた。この急速温度上昇は、1000℃を越える高温にまで到達するおそれがあり、その結果、排ガス浄化フィルタの溶損を引き起こすおそれがあった。
【0006】
急速温度上昇を抑制するために、アイドル運転時に、アイドル回転数を上昇させる技術が開発されている(特許文献1参照)。
また、フィルタが過昇温するかどうかを判定するOT判定手段を設ける技術が開発されている(特許文献2参照)
また、排気管の構成部品の温度をモニタリングし、温度超過が会った場合、多段階手段の構成を使用する技術が開発されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−204774号公報
【特許文献2】特開2005−201210号公報
【特許文献3】特開2007−170382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術において、急速温度上昇を抑制するためには、ロバスト性の高いシステム制御が必要となり、システムが複雑化するという問題があった。また、例えば15分程度の短時間でPMを燃焼させるためには、600℃以上という高温での燃焼が必要となり、燃費が悪化するおそれがあった。
【0009】
また、内燃機関の運転状態が減速状態になったときにおける急速温度上昇は、PMの堆積量が多くなると起こりやすくなる。即ち、PMの燃焼は、一旦始まると燃焼伝播で急速に進行し、特に排ガス浄化フィルタ内に白金等の貴金属系触媒が存在する場合には、燃焼伝播はさらに加速する。その結果、急速温度上昇が加速的に進行し、排ガス浄化フィルタの溶損が起こる可能性が高くなる。これを回避するために、従来においては、PMがあまり多く堆積していない状態で上記排ガス浄化フィルタの再生を行い、再生のタイミングをできるだけ早くして再生処理の頻度を多くする必要があった。しかし、上記排ガス浄化フィルタの再生は、燃料の消費を伴うため、再生のタイミングを早くするとますます燃費が低下してしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、再生処理の頻度を少なくすることができ、複雑なシステム制御を用いることなく排ガス浄化フィルタ内の急激温度上昇を抑制することができる排ガス浄化装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、内燃機関の排ガス通路に設けられ、排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集する排ガス浄化フィルタと、該排ガス浄化フィルタ内の温度を所定の再生温度まで上昇させて上記排ガス浄化フィルタ内に堆積した上記粒子状物質を燃焼除去することにより、上記排ガス浄化フィルタの捕集能力の再生処理を行うフィルタ再生手段とを備える排ガス浄化装置において、
上記排ガス浄化フィルタは、多孔質体からなる基材と、該基材に担持された排ガス浄化触媒とを有し、
該排ガス浄化触媒は、ゼオライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物又はソーダライトが温度600℃以上で焼成されてなることを特徴とする排ガス浄化装置にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0012】
本発明の排ガス浄化装置において、上記排ガス浄化フィルタは、上記基材と上記排ガス浄化触媒とを有し、該排ガス浄化触媒は、ゼオライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物又はソーダライトが温度600℃以上で焼成されてなる。
上記排ガス浄化触媒は、パティキュレートマター(PM)等の上記粒子状物質に対する優れた燃焼促進作用を有する。そのため、上記排ガス浄化フィルタにおいては、上記排ガス浄化触媒の作用により、上記粒子状物質を例えば600℃未満という低温で燃焼除去させることができる。それ故、上記排ガス浄化フィルタの再生温度を低くすることができる。
【0013】
また、上記排ガス浄化触媒を備えた上記排ガス浄化フィルタにおいては、急速温度上昇が抑制される。
即ち、従来のPt等の貴金属触媒を備えた排ガス浄化フィルタにおいては、例えば内燃機関の運転状態が減速状態になった時などに、急速温度上昇が起こり上記排ガス浄化フィルタ内の温度が少なくとも部分的に例えば1000℃を越える高温にまで到達するおそれがあった。その結果、排ガス浄化フィルタの基材が溶損するおそれがあった。
これに対し、上記混合物又はソーダライトを温度600℃以上で焼成してなる上記排ガス浄化触媒を備えた上記排ガス浄化フィルタにおいては、Pt等の貴金属触媒が担持されたものに比べて温度上昇が緩やかになり、上記基材に溶損等のダメージを与える程の高温にはなり難くなる。上記再生処理中に上記内燃機関の運転状態が減速状態になったときにおいても上記排ガス浄化フィルタ内の急速温度上昇を抑制することができる。
したがって、本発明によれば、従来のように複雑なシステム制御を行わなくとも急速温度上昇を抑制することができる。
【0014】
また、急速温度上昇は、上記再生処理の開始温度、即ち、上記再生温度に依存する傾向がある。即ち、上記再生温度を高く設定すると、再生処理中の急速温度上昇がより高い温度にまで到達し易くなる。
例えば従来の貴金属触媒を用いた場合においては、PMを確実に燃焼するために再生温度を630℃程度にする必要が生じるが、このような高い再生温度では、急速温度上昇が起こって排ガス浄化フィルタの温度が基材にダメージを与える高温(例えば900℃以上)にまで上昇するおそれがあった。
これに対し、上記排ガス浄化触媒を用いると、再生温度を630℃程度にしても、再生処理中に基材にダメージを与える温度まで温度が急上昇することを防止することができる。さらに、上述のごとく上記排ガス浄化触媒を用いると600℃未満という低温でもPM等の上記粒子状物質を燃焼させることができる。そのため、上記再生温度を600℃未満に設定することができ、より確実に急速温度上昇を抑制し、上述の溶損を防止することができる。
【0015】
また、急速温度上昇は、PM等の粒子状物質の堆積量に依存する傾向がある。即ち、上記再生処理開始時に上記排ガス浄化フィルタ内に堆積していた上記粒子状物質の堆積量が多いほど、より低温の再生温度からでも急速温度上昇が起こり易く、基材にダメージを与える高温に到達し易くなる傾向にある。
従来のPt等の貴金属触媒を用いた場合には、PMの堆積量が6g/L程度の状態で再生処理を行っても急速温度上昇が起こるおそれがある。そのため、再生処理を開始するPMの堆積量を5g/L以下、より好ましくは4g/L以下にする必要があった。
これに対し、本発明の上記排ガス浄化装置においては、上記排ガス浄化触媒が用いられているため、例えばPMの堆積量12g/Lの状態で再生処理を行っても、再生温度を例えば600℃未満に設定することにより、急速温度上昇を抑制することができる。
そのため、上記再生処理を行う頻度を減らすことができ、低燃費化を図ることができる。
【0016】
また、上記排ガス浄化触媒は、アルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素の保持力が高い。
そのため、上記排ガス浄化触媒の性能劣化を防止することができ、上記排ガス浄化フィルタは、長期間安定に排ガスの浄化を行うことができる。
また、上記排ガス浄化触媒は、NOxを吸着することもできる。そのため、上記排ガス浄化フィルタは、排ガス中からNOxを吸着除去することもできる。
【0017】
以上のように、本発明によれば、再生処理の頻度を少なくすることができ、複雑なシステム制御を用いることなく排ガス浄化フィルタ内の急激温度上昇を抑制することができる排ガス浄化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1にかかる、排ガス浄化装置を組み込んだエンジンシステムを模式的に示した説明図。
【図2】実施例1にかかる、排ガス浄化フィルタを示す説明図。
【図3】実施例1にかかる、排ガス浄化フィルタの断面を示す説明図。
【図4】実施例1にかかる、排ガス浄化フィルタの隔壁の拡大断面を示し、隔壁に排ガス浄化触媒が担持された構成を示す説明図。
【図5】実施例1にかかる、排ガス浄化フィルタの部分断面を示し、排ガス浄化フィルタ内を排ガスが通過する様子を示す説明図。
【図6】実施例1にかかる、排ガス浄化フィルタの上流端側と下流端側における差圧と、排ガス浄化フィルタ内に堆積した粒子状物質(スート)の堆積量との関係を示す説明図。
【図7】実施例2にかかる、排ガス浄化装置を組み込んだエンジンシステムを模式的に示した説明図。
【図8】実施例2にかかる、排ガス浄化フィルタ内の熱電対の配設位置を示す説明図。
【図9】実施例2にかかる、。再生処理における燃料添加及び停止のタイミング、エンジン回転速度、吸入空気量、及び入口から10mmの位置における排ガス浄化フィルタの温度の制御パターンを示す説明図。
【図10】実施例2にかかる、排ガス浄化装置(装置E)を用いて、PM堆積モード、強制再生モード、減速運転モードを行ったときにおける排ガス浄化フィルタ内に設けられた各熱電対A〜Fによって検出された温度の経時変化を示す説明図。
【図11】実施例2にかかる、排ガス浄化装置(装置C)を用いて、PM堆積モード、強制再生モード、減速運転モードを行ったときにおける排ガス浄化フィルタ内に設けられた各熱電対A〜Fによって検出された温度の経時変化を示す説明図。
【図12】実施例2にかかる、再生処置を開始するときのPM堆積量を6g/L及び10g/Lに設定した排ガス浄化装置(装置E)を用いて再生処理を行ったときにおける再生温度と排ガス浄化フィルタ(DPF)内の最高温度との関係、及び再生処置を開始するときのPM堆積量を6g/Lに設定した排ガス浄化装置(装置C)を用いて再生処理を行ったときにおける再生温度と排ガス浄化フィルタ(DPF)内の最高温度との関係を示す説明図。
【図13】実験例1にかかる、各触媒種を用いて、又は触媒を用いずに、カーボンブラックを燃焼させたときのDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【図14】実験例1にかかる、触媒を用いずにカーボンブラックを単独で燃焼させた場合における温度とTG及びDTAとの関係を示す線図。
【図15】実験例1にかかる、触媒種として貴金属系触媒を用いてカーボンブラックを燃焼させた場合における温度とTG及びDTAとの関係を示す線図。
【図16】実験例1にかかる、触媒種として炭酸カリウムを用いてカーボンブラックを燃焼させた場合における温度とTG及びDTAとの関係を示す線図。
【図17】実験例1にかかる、触媒種として排ガス浄化触媒(試料E1)を用いてカーボンブラックを燃焼させた場合における温度とTG及びDTAとの関係を示す線図。
【図18】実験例1にかかる、焼成温度と水洗前後における排ガス浄化触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図19】実験例1にかかる、カリウム塩種と水洗前後における排ガス浄化触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図20】実験例1にかかる、アルカリ金属元素種・アルカリ土類金属元素種と水洗前後における排ガス浄化触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図21】実験例1にかかる、カリウム以外のアルカリ金属元素種・アルカリ土類金属元素種と水洗前後における排ガス浄化触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図22】実験例1にかかる、混合工程において混合するカリウム量と水洗前後における排ガス浄化触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図23】実験例1にかかる、混合工程において混合するバリウム量と水洗前後における排ガス浄化触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図24】実験例2にかかる、各触媒種を用いて、又は触媒を用いずに、カーボンブラックを燃焼させたときのDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【図25】実験例2にかかる、焼成温度と水洗前後における排ガス浄化触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図26】実験例2にかかる、ゼオライト種と触媒のDTA発熱ピーク温度との関係を示す説明図。
【図27】実験例3にかかる、各触媒種を用いて、又は触媒を用いずに、カーボンブラックを燃焼させたときの水洗前後のDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【図28】実験例4にかかる、種々のゼオライトと炭酸カリウムとの混合物を焼成してなる排ガス浄化触媒の水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【図29】実験例4にかかる、種々のゼオライトと炭酸カリウムとの混合物を触媒として用いたときの水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【図30】実験例5にかかる、種々の異なる焼成温度で作製した排ガス浄化触媒の水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【図31】実験例6にかかる、種々の異なる量のカリウムをゼオライトに混合して作製した排ガス浄化触媒の水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【図32】実験例7にかかる、種々の異なるアルカリ金属元素種・アルカリ土類金属元素種を用いて作製した排ガス浄化触媒の水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
本発明の排ガス浄化装置は、上記排ガス浄化触媒と上記フィルタ再生手段とを有する。
上記フィルタ再生手段は、例えばエンジン内での燃焼の噴射等を制御するエンジンコントロールユニット(以下ECUという)に組み込まれたコンピュータプログラムとして構成することができる。
【0020】
上記フィルタ再生手段は、400℃以上かつ600℃未満の上記再生温度まで上記排ガス浄化フィルタ内の温度を上昇させて上記再生処理を開始するように構成されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記再生温度を600℃未満という比較的低い温度にすることにより、上記急速温度上昇をより抑制することができる。また、この場合には、再生処理の開始時におけるPM等の粒子状物質の堆積量を増やすことができるため、上記再生処理の頻度をより少なくすることができる。また、上記排ガス浄化触媒は、その優れた燃焼促進作用により、上述のごとく600℃未満という低い再生温度でも短時間で上記粒子状物質を燃焼させることができる。
上記再生温度が400℃未満の場合には、上記粒子状物質の燃焼除去が困難になるおそれがある。
【0021】
また、上記フィルタ再生手段は、上記内燃機関の運転状態が減速状態にあるときに、600℃未満の上記再生温度で上記再生処理を開始し、上記運転状態が減速状態以外の状態にあるときには、温度600℃以上の温度で上記排ガス浄化フィルタの上記再生処理を行うことができる。
この場合には、運転状態が減速状態以外の状態にあるときにおける上記再生処理をより短時間で行うことができる。
【0022】
好ましくは、上記フィルタ再生手段は、上記内燃機関の運転状態によらず、常時600℃未満の上記再生温度で上記再生処理を行うように構成されていることがよい。
この場合には、運転状態によらず、より確実に急激温度上昇を抑制することができる。
即ち、運転状態は、運転者の操作に依存するため、ある時点の運転状態がその後どのような状態になるかを予想することは非常に困難であり、運転状態に応じた制御には限界がある。上記のごとく、運転状態によらず常時600℃未満の上記再生温度で上記再生処理を行うと、運転状態に応じた制御を行う必要がなくなる。そして、本発明においては、上記排ガス浄化触媒を採用しているため、温度600℃未満という低い温度でも上記粒子状物質の燃焼除去が可能であり、急激温度上昇を抑制することができる。
よって、複雑なシステムを用いることなく、よりロバスト性の高い上記排ガス浄化装置の構成が可能になる。
【0023】
上記排ガス浄化装置は、上記フィルタ再生手段は、上記排ガス浄化フィルタの上流側から10〜20mm内部にある所定位置の温度を上記再生温度として上記再生処理を行うように構成されていることが好ましい(請求項3)。
上記のごとく、上記排ガス浄化フィルタの上流側から10〜20mm内部、即ち、上記排ガス浄化フィルタにおいて、該排ガス浄化フィルタの軸方向における排ガスの入り側から10〜20mm内部にある所定位置の温度を上記再生温度とすることにより、正確に上記再生温度を決定し易くなる。
また、上記再生温度を決定する所定位置は、上記排ガス浄化フィルタの軸方向と垂直方向における略中心であることが好ましい。
上記排ガス浄化フィルタ内の上流側から10〜20mm内部の所定位置の温度は、サーミスタ、熱電対等の温度検出手段により測定することができる。
【0024】
次に、上記フィルタ再生手段は、上記排ガス浄化フィルタに流入する排ガスの温度を上昇させることにより上記粒子状物質の燃焼除去を行うように構成されていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、簡単に上記排ガス浄化フィルタ内の温度を上昇させることができる。
具体的には、例えば上記フィルタ再生手段による制御に基づいて内燃機関において燃料を燃焼させることにより、発生する排ガスの温度を上昇させることができる。
また、例えば上記フィルタ再生手段により上記排ガス浄化フィルタの上流側に配置したヒータの作動を制御し、上記排ガス浄化フィルタ内に流入する上記排ガスの温度を上昇させることができる。
【0025】
また、上記排ガス浄化フィルタの上流側には酸化触媒が配置されていることが好ましい(請求項5)。
この場合には、排ガス中に含まれる一酸化炭素等の有害成分を酸化し、無害化することができる。また、酸化により発生する熱により、排ガス浄化フィルタに流入する排ガスの温度を上昇させることができる。
【0026】
上記フィルタ再生手段は、上記排ガス浄化フィルタ内における上記粒子状物質の堆積量が4g/L〜12g/Lとなったときに上記再生処理を行うように構成されていることが好ましい(請求項6)。
即ち、上記排ガス浄化フィルタは、上記排ガス浄化触媒を有しており、その優れた触媒作用により、4g/L〜12g/Lという大量の上記粒子状物質が堆積した状態で上記再生処理を開始しても急速温度上昇を抑制することができる。したがって、従来よりも多くの粒子状物質が堆積した状態で上記再生処理を開始しても、上記排ガス浄化フィルタにダメージを与える程の高温(例えば約900℃)まで上記排ガス浄化フィルタ内の温度が上昇することを防止することができる。そのため、再生処理の頻度を減らすことができ、燃費を向上させることができる。
上記再生処理を行う際の上記堆積量が4g/L未満の場合には、上記再生処理の頻度が多くなり、燃費が低下するおそれがある。一方、12g/Lを越える場合には、再生処理中に上記粒子状物質の燃焼が燃焼伝播で進み、温度上昇が急速に進行するおそれがある。より好ましくは、5g/L〜10g/Lがよい。この場合には、より確実に急速温度上昇を抑制し、上記排ガス浄化フィルタの溶損を防止することができる。
上記粒子状物質の堆積量は、上記排ガス浄化フィルタの軸方向の両端、即ち上流端と下流端との差圧から算出することができる。しかし、その値はフィルタ形状により異なるため、堆積量と差圧との関係を事前に把握しておくことが好ましい。上記排ガス浄化フィルタの上流端と下流端との差圧は、差圧計により測定することができる。
【0027】
次に、上記排ガス浄化フィルタについて説明する。
上記排ガス浄化フィルタは、多孔質体からなる基材と、該基材に担持された排ガス浄化触媒とを有する。該ガス浄化触媒は、ゼオライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物又はソーダライトが温度600℃以上で焼成されてなる。
上記混合物又はソーダライトの焼成温度が600℃未満の場合には、上記排ガス浄化触媒の耐久性が劣化するおそれがある。その結果、上記排ガス浄化フィルタを長期間安定して使用することができなくなるおそれがある。より好ましくは、焼成温度は700℃以上がよく、さらに好ましくは800℃以上がよい。
なお、焼成温度は、上記混合物又はソーダライト自体の温度のことであり、雰囲気温度ではない。したがって、焼成時には、上記混合物又はソーダライト自体の温度が600℃以上になるように焼成を行う。また、焼成時においては、上記焼成温度の焼成を好ましくは1時間以上、より好ましくは5時間以上、さらに好ましくは10時間以上行うことがよい。
【0028】
上記排ガス浄化フィルタにおける上記排ガス浄化触媒は、上記混合物又はソーダライトを上記温度600℃以上で焼成した後、上記基材に担持されていることが好ましい(請求項7)。
この場合には、焼成後に得られる上記排ガス浄化触媒に対して、粉砕等を行うことが可能になる。この粉末状の上記排ガス浄化触媒を上記基材に担持させることができるため、上記排ガス浄化フィルタにおいて触媒が担持された面の表面積を大きくすることができる。そのため、触媒活性を向上させることができる。
したがって、上記排ガス燃焼触媒は、上記混合物又は上記ソーダライトの焼成後かつ上記基材への担持前に粉砕されてあることが好ましい。
また、粉砕時には、上記排ガス浄化触媒のメジアン径を50μm以下に調整することがよい。メジアン径が50μmを超える場合には、上記排ガス浄化触媒を上記基材にコートする際に、目詰まりが起こったり、担持量にばらつきが生じ易くなるおそれがある。より好ましくは、メジアン径は10μm以下であることがよい。
上記排ガス浄化触媒のメジアン径は、例えばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置あるいは走査電子顕微鏡等により測定することができる。
【0029】
また、粉砕を行う場合には、上記混合物又はソーダライトの焼成時の温度は、1200℃以下であることが好ましい。上記混合物又はソーダライトを1200℃を越える温度で焼成した場合には、一旦溶融状態を経るため、上記排ガス浄化触媒が硬度の高い塊状になってしまうおそれがある。その結果この場合には、上述のごとく粉砕を行って上記排ガス浄化触媒を所望の粒径に調整することが困難になるおそれがある。
【0030】
上記排ガス浄化フィルタにおける上記排ガス浄化触媒は、上記混合物又はソーダライトを上記基材に担持した後に温度600℃以上で焼成されていることが好ましい(請求項8)。
この場合には、上記混合物又はソーダライトが温度600℃以上で焼成されてなる上記排ガス浄化触媒の生成と、上記基材への担持(焼付け)を一度の焼成で行うことが可能になる。また、この場合には、例えば1200℃を越える高温での焼成も可能になる。上述のごとく、1200℃を越える高温で焼成を行うと、一旦溶融状態を経て上記排ガス浄化触媒が硬度の高い塊状になるが、この塊状の上記排ガス浄化触媒も、低温でPM等の粒子状物質に対する燃焼促進効果を示し、また、耐久性にも優れる。
【0031】
上記排ガス浄化触媒は、上記基材に直接担持させることができる。直接担持させるための方法は例えば次のような方法がある。
即ち、まず、上記排ガス浄化触媒とシリカゾルとを含むスラリーに上記基材を浸漬し、上記基材の内部にまで上記排ガス浄化触媒を進入させる。上記基材としては、例えばハニカム状又はフォーム状の多孔質体を採用することができる。次いで、エアブローにより、余分なスラリーを吹き飛ばした後、例えば温度400℃〜800℃で加熱することにより焼付けを行う。これにより、上記基材に上記排ガス浄化触媒を直接接触させて担持させることができる。
この場合には、上記排ガス浄化フィルタの気孔率を高くすることができ、特にPMに対する燃焼効率を向上させることができる。
【0032】
また、上記排ガス浄化触媒は、上記基材の表面に形成された担持層に担持させることができる。
この場合には、上記担持層を介して上記排ガス浄化触媒が上記基材に担持され、上記排ガス浄化触媒の担持を容易に行うことができる。
具体的には、アルミナ等を含有するウォッシュコート成分と上記排ガス浄化触媒とを混合し、ゾル状又はスラリー状の複合材料を作製し、該複合材料を上記基材にコートして例えば温度400℃〜600℃で加熱する。これにより、ウォッシュコート成分により担持層が形成され、該担持層に上記排ガス浄化触媒を担持させることができる。
【0033】
上記担持層は、Al2O3、ZrO2、TiO2、CeO2、SiO2から選ばれる1種以上の酸化物からなることが好ましい。
この場合には、表面積の大きな上記担持層が形成されやすくなり、上記排ガス浄化フィルタの表面積を大きくすることができる。その結果、上記排ガス浄化触媒とPM等の粒子状物質とが接触し易くなり、上記排ガス浄化フィルタはより効率よく粒子状物質の燃焼除去を行うことができる。
【0034】
上記排ガス浄化触媒は、上述のごとく、ゼオライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物、又はソーダライトを温度600℃以上で焼成して得られる。ここで、ゼオライトとしては、ソーダライトを用いることもできる。
即ち、上記排ガス浄化触媒は、ゼオライト(ソーダライトを含む)とアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物を温度600℃焼成することにより得ることができ、
また、上記排ガス浄化触媒は、ソーダライトを単独で他成分と混合することなく温度600℃以上で燃焼することによっても得ることができる。
【0035】
ソーダライトを除くゼオライトは、一般に、一般式M2/nO・Al2O3・ySiO2・zH2O(但し、Mは、Na、K、及びHから選ばれる少なくとも1種の元素、y≧2、z≧0である)で表され、本発明においても、上記一般式で表されるゼオライトを採用することができる。ゼオライトとしては、例えばLTA型、FAU(フォージャサイト)型、MOR型、LTL型、FER型、MFI型、及びBEA型等の構造のゼオライトを採用することができる。
また、ソーダライトは、一般式3(Na2O・Al2O3・2SiO2)・2NaXで表される。Xは、一価の陰イオンとなる原子又は原子団であり、例えばF、Cl、Br、I等のハロゲン、又はOH等である。
【0036】
また、上記ゼオライトは、その組成中のAl2O31モルに対するSiO2量が200モル未満であることが好ましい(請求項9)。
即ち、ゼオライト組成中のSiO2/Al2O3(モル比)が200未満のゼオライト、さらに換言すれば、上記一般式M2/nO・Al2O3・ySiO2・zH2Oにおけるyの値がy<200であるゼオライトを採用することが好ましい。
ゼオライト組成中のAl2O31モルに対するSiO2量が200モル以上のゼオライト、即ち、上記一般式におけるyの値がy≧200のゼオライトは、所謂ハイシリカゼオライトと呼ばれ、かかるゼオライトを用いた場合には、上記排ガス浄化触媒のPMに対する燃焼促進特性の向上効果が小さくなるおそれがある。
【0037】
上記混合物におけるゼオライトとしては、ソーダライトが採用されていることが好ましい(請求項10)。
この場合には、ソーダライト中のNaと、上記アルカリ金属元素源中のアルカリ金属元素及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素とがPM等の粒子状物質に対する優れた燃焼促進特性を発揮することができる。
【0038】
また、上記ゼオライトとしてソーダライトを用いた場合には、上記混合物においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記ソーダライト中のSi元素1モルに対して2.25モル以下となっていることが好ましい(請求項11)。
上記アルカリ金属元素と上記アルカリ土類金属元素との合計量がソーダライト中のSi元素1モルに対して2.25モルを超える場合には、上記混合物の焼成中に該混合物が溶融し易くなる。その結果、焼成後に得られる上記排ガス浄化触媒は、一旦溶融状態を経るおそれがあるため、その硬度が高くなってしまうおそれがある。そのためこの場合には、焼成後に粉砕を行って上記排ガス浄化触媒を所望の粒径に調整することが困難になるおそれがある。また、この場合には、上記排ガス浄化触媒自体の触媒活性は優れていても、水分による影響を受けやすくなるおそれがある。即ち、水分による触媒活性の低下幅が大きくなるおそれがある。そのため、所定の触媒活性を長期間維持させることが困難になり、上記排ガス浄化フィルタの寿命に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0039】
より好ましくは、上記混合物においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記ソーダライト中のSi元素1モルに対して1モル以下となっていることがよい(請求項12)。
さらに好ましくは、上記混合物においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記ソーダライト中のSi元素1モルに対して0.5モル以下となっていることがよい。
【0040】
上記ゼオライトとして、ソーダライト以外のゼオライトを採用する場合には、上記混合物においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記ゼオライト中のSi元素1モルに対して0.1モル以上かつ2.0モル以下となっていることが好ましい(請求項13)。
ゼオライト中のSi元素1モルに対する上記アルカリ金属元素と上記アルカリ土類金属元素との合計量が0.1モル未満の場合には、上記排ガス浄化触媒の耐水性が悪くなるおそれがある。
一方2.0モルを越える場合にも、水分存在下における上記排ガス浄化触媒の燃焼促進特性が低下し易くなり、その低下幅が非常に大きくなるおそれがある。またこの場合には、上記混合物の焼成中に該混合物が溶融し易くなる。したがって、上記焼成後に得られる上記排ガス浄化触媒は、一旦溶融状態を経るおそれがあるため、その硬度が高くなってしまうおそれがある。その結果この場合には、焼成後に粉砕を行って上記排ガス浄化触媒を所望の粒径に調整することが困難になるおそれがある。
【0041】
より好ましくは、上記混合物においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記アルミノケイ酸塩中のSi元素1モルに対して0.2モル以上かつ1.5モル以下となっていることがよい。
【0042】
また、上述のアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量は、ゼオライトに混合するアルカリ金属元素源中のアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素との合計量であり、アルカリ金属元素源及びアルカリ土類金属元素源のうちいずれか一方だけを用いた場合には、もう一方の元素の量は0モルとして算出できる。また、複数のアルカリ金属元素源、複数のアルカリ土類金属元素源を用いた場合には、それらのすべての合計量として算出できる。
【0043】
上記アルカリ金属元素源としては、例えばアルカリ金属の化合物等がある。また、上記アルカリ土類金属元素源としては、例えばアルカリ土類金属の化合物等がある。
上記混合物は、少なくとも上記アルカリ金属元素源を含有することが好ましい(請求項14)。
この場合には、上記排ガス浄化触媒のPM等の粒子状物質に対する燃焼促進特性をより向上させることができる。
【0044】
上記アルカリ金属元素源は、Na、K、Rb、及びCsから選ばれる1種以上を含有し、上記アルカリ土類金属元素源はMg、Ca、Sr、及びBaから選ばれる1種以上を含有することが好ましい(請求項15)。
この場合にも、上記排ガス浄化触媒のPM等の粒子状物質に対する燃焼促進特性をより向上させることができる。
より好ましくは、上記ゼオライトとしてソーダライトを用いた場合には、上記アルカリ土類金属元素源としてはCa、Sr、Baを含有する化合物を用いることがよく、ソーダライト以外のゼオライトを用いた場合には、上記アルカリ土類金属元素源としてはBaを含有する化合物を用いることがよい。
【0045】
また、上記アルカリ土類金属元素源は、少なくともBaを含有することが好ましい。
この場合には、Ba以外の他のアルカリ土類金属元素を含有する上記アルカリ土類金属元素源を用いた場合に比べて、上記排ガス浄化触媒の燃焼促進特性をより向上させることができる。
【0046】
上記ゼオライトと上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源との混合物は、上記ゼオライトと上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを極性溶媒中で混合し、該極性溶媒を蒸発させて得られる固形分からなることが好ましい(請求項17)。
この場合には、上記ゼオライトと上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源との混合を容易に行うことができ、これらが均一に混合した上記混合物を得ることができる。そのため、焼成後に得られる上記排ガス浄化触媒に触媒活性の偏りが発生することを抑制することができる。
上記極性溶媒としては、例えばメタノール、エタノール等のアルコール、及び水等を用いることができる。また、これらの混合溶媒を用いることができる。
また、上記極性溶媒としては、揮発し易い溶媒を用いることが好ましい。
この場合には、混合後の乾燥を容易に行うことができる。
【0047】
上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源は、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、酸化物、又は水酸化物であることが好ましい(請求項16)。
この場合には、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源を容易に水等の極性溶媒に混合させることができるため、上記混合物の作製時に、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とゼオライトとを上記極性溶媒中で混合させることにより、これらが均一に分散された上記混合物を容易に得ることができる。
【0048】
より好ましくは、上記アルカリ金属元素源としてはアルカリ金属元素の塩を用い、上記アルカリ土類金属元素源としてはアルカリ土類金属元素の塩を用いることがよい。
この場合には、上記アルカリ金属元素源及び上記アルカリ土類金属元素源は、水等の極性溶媒に対して優れた溶解性で溶解できるため、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とゼオライトとの混合を水等の極性溶媒中で行う場合に、ゼオライトと、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを簡単かつ均一に混合させることができる。
【0049】
上記基材は、多孔質隔壁を多角形格子状に配して軸方向に延びる多数のセルを形成した多孔質基材からなり、上記セルは排ガス流路を形成していることが好ましい(請求項18)。
この場合には、上記排ガス浄化フィルタを排ガスの浄化用により最適な構造にすることができる。
また、全てのセルが両端面に開口した構造体を用いることもできるが、一部のセルが基材(ハニカム構造体)両端面に開口し、残りのセルは両端面に形成された栓部によって閉塞された構造体を用いることもできる。
全てのセルが両端面に開口した構造体を用いた場合には、ガソリンエンジン用の排ガス浄化フィルタに好適なものになる。一方、一部のセルが両端面に開口し、残りのセルが栓部によって閉塞された構造体を用いた場合には、ディーゼルエンジン用の排ガス浄化フィルタに好適なもになる。
【0050】
上記基材は、コージェライト又はSiCからなることが好ましい(請求項19)。
この場合には、上記排ガス浄化フィルタを排ガスの浄化用により最適なものにすることができる。
【実施例】
【0051】
(実施例1)
次に、本発明の実施例につき、図面を用いて説明する。
図1に示すごとく、本例の排ガス浄化装置1は、排ガス浄化フィルタ2とフィルタ再生手段151とを有する。排ガス浄化フィルタ2は、内燃機関5の排ガス通路54、19に設けられ、排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集する。
排ガス浄化フィルタ11は、図2〜図4に示すごとく、多孔質体からなる基材20と、これに担持された排ガス浄化触媒4とを有する。排ガス浄化触媒4は、ゼオライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物又はソーダライトが温度600℃以上で焼成されてなる。
また、図1に示すごとく、フィルタ再生手段151は、排ガス浄化フィルタ2内の温度を所定の再生温度まで上昇させて排ガス浄化フィルタ2内に堆積した粒子状物質を燃焼除去することにより、排ガス浄化フィルタ2の捕集能力の再生処理を行う。
【0052】
以下本例の排ガス浄化装置についてより詳細に説明する。
図2及び図3に示すごとく、排ガス浄化フィルタ2においては、ハニカム状の基材20に排ガス浄化触媒4が担持されている。本例において、基材20は、外周壁21と、この外周壁21の内側においてハニカム状に設けられた隔壁25と、この隔壁25により仕切られた複数のセル3とを有する。セル3は、基材20の両端面23、24に部分的に開口している。即ち、各セル3は、基材20の一方の端面23(24)に開口し、もう一方の端面24(23)に形成された栓部32によって閉塞している。
【0053】
図2及び図3に示すように、本例においては、セル3の両端面23(24)における開口部31と栓部32とは交互に配置されており、所謂市松模様を形成している。
図5に示すごとく、本例の排ガス浄化フィルタ2においては、排ガス10の入口側となる上流側端面23及び排ガス10の出口となる下流側端面24に位置するセルの端部は、栓部32が配置された部分と配置されていない部分とをそれぞれ交互に有している。多孔質体の隔壁25には多数の空孔が形成され、排ガス10が通過できるようになっている。
そして、図2〜図5に示すごとく、基材20の隔壁25には、排ガス浄化触媒4が担持されている。本例において、排ガス浄化触媒4としては、ソーダライトとK源(炭酸カリウム)との混合物を温度800℃で焼成してなる触媒を採用してある。
【0054】
また、本例の排ガス浄化フィルタ2の全体サイズは、直径129mm、長さ150mm、容積約2L、の円柱状であり、セルサイズは、セル厚さ3mm、セルピッチ1.47mmである。
また、基材20はコーディエライトからなり、そのセル3は、断面が四角形状のものを採用した(図2参照)。セル3は、その他にも例えば、三角形、六角形等の様々な断面形状を採用することができる。
【0055】
本例の排ガス浄化フィルタは、次のようにして作製することができる。
即ち、まず、ソーダライト(3(Na2O・Al2O3・2SiO2)・2NaOH)の粉末を準備した。このソーダライト100重量部と炭酸カリウム5重量部とを水に投入し、水中で混合した。
次いで、混合液を温度120℃で加熱し、水分を蒸発させた。これにより、固形分(ソーダライトと炭酸カリウムとの混合物)を得た。
次に、この固形分を温度700℃で焼成した。具体的には、固形分を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度700℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。
次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、排ガス浄化触媒を得た。
【0056】
次に、以下のようにして、ハニカム構造の基材を作製した。
即ち、まず、タルク、溶融シリカ、及び水酸化アルミニウムを所望のコーディエライト組成となるように秤量し、造孔剤、バインダー、水等を加え、混合機にて混合撹拌した。そして、得られた粘土質のセラミック材料を成形機にて押出成形し、ハニカム状の成形体を得た。これを乾燥した後、所望の長さに切断し、外周壁と、その内側においてハニカム状に設けられた隔壁と、隔壁により仕切られていると共に両端面に貫通してなる複数のセルとを有する成形体を作製した。次いで、この成形体を温度1400〜1450℃で2〜10時間加熱することにより仮焼して仮焼体(ハニカム構造体)を得た。
【0057】
次に、ハニカム構造体の両端面全体を覆うようにマスキングテープを貼り付けた。そして、セラミックハニカム構造体の両端面の栓詰めすべき位置に対応するマスキングテープにレーザ光を順次照射し、マスキングテープを溶融又は焼却除去して貫通穴を形成した。これにより、セルの端部における栓部により栓詰めすべき部分に貫通穴を形成した。セルの端部のその他の部分はマスキングテープで覆われている。本例においては、セルの両端面に貫通穴とマスキングテープで覆われた部分とが交互に配置するように、マスキングテープに貫通穴を形成した。本例では、マスキングテープとしては、厚さ0.1mmの樹脂フィルムを用いた。
【0058】
次に、栓部の材料である栓材の主原料となるタルク、溶融シリカ、アルミナ、及び水酸化アルミニウムを所望の組成となるように秤量し、バインダー、水等を加え、混合機にて混合撹拌し、スラリー状の栓材を作製した。このとき、必要に応じて造孔材を添加することもできる。そして、スラリー状の栓材を入れた容器を準備した後、貫通孔を部分的に形成したハニカム構造体の端面を浸漬した。これにより、マスキングテープの貫通穴からセルの端部に栓材を適量浸入させた。また、ハニカム構造体のもう一方の端面についても同様の工程を行った。このようにして、栓詰めすべきセルの開口部内に栓材が配置されたハニカム構造体を得た。
【0059】
次に、ハニカム構造体とその栓詰めすべき部分に配置した栓材とを同時に約1400〜1450℃で焼成した。これにより、マスキングテープは焼却除去され、図2及び図3に示すごとく、セル3の両端に、その端部を開口する複数の開口部31と、セル3の端部を閉塞する複数の栓部32とが形成されたセラミックハニカム構造体(基材)20を作製した。
【0060】
次に、排ガス浄化触媒をシリカゾルを5wt%配合したシリカスラリーに混合した。さらに固形分100重量部に対する水分量が400重量部となるように水を加え、スラリー状の排ガス浄化触媒を得た。
次に、スラリー状の排ガス浄化触媒中に基材2を浸漬し、基材2の多孔質の隔壁25に排ガス浄化触媒を含浸させた。次いで、エアーブローにより余分な水分を吹き飛ばした後、温度500℃で加熱することにより、焼き付けを行った。本例においては、排ガス浄化触媒を70g/L(そのうちK濃度はK2CO3換算で約7g/L)コートした。
このようにして、図2〜図4に示すごとく、排ガス浄化触媒4を基材20に担持した排ガス浄化フィルタ2を得た。
【0061】
図1に、排ガス浄化装置1を含むエンジンシステムの模式図を示す。
同図に示すごとく、排ガス浄化フィルタ2は、内燃機関5(ディーゼルエンジン)から排出される排ガス中のパティキュレートを除去するために用いられる。
ディーゼルエンジン車において、エンジン5の吸気ポートには、吸気マニホールド51を介して吸気管52が接続されている。また、排気ポートには、排気マニホールド53を介して排気管54が接続され、これらによって排気通路が構成されている。
【0062】
吸気管52には、過給圧コントロール手段を備えたターボ過給機55のコンプレッサ521と、ターボ過給機55により圧縮された吸気を冷却するインタークーラ522とがそれぞれ設けられている。
また、排気管54にはターボ過給機55のタービン541が設けられている。
ターボ過給機55において、コンプレッサ521の回転翼(図示略)とタービン541の回転翼(図示略)はシャフト(図示略)により連結されており、エンジンから排出される排ガスのエネルギーによりタービン541が回転し、さらにシャフトを介してコンプレッサ521が回転するように構成されている。そしてこのコンプレッサ521の回転により、吸気管52内の吸入空気が圧縮される。
【0063】
排気管54の途中には、エンジン側(排ガスの上流側)から順に、酸化触媒フィルタ11と、排ガス浄化フィルタ(DPF)2とが設けられる。酸化触媒フィルタ11は、酸化触媒としてだけでなく、NOx触媒としての機能も兼ね備える場合もある。酸化触媒フィルタ11においては、白金−アルミナ触媒等からなる酸化触媒がコージェライトからなるハニカム状の基材に担持されている。
酸化触媒フィルタ11及び排ガス浄化フィルタ2は、排気管54の直径を拡大した筒状の捕集器19内に収容される。
捕集器19には、酸化触媒フィルタの上流側、酸化触媒フィルタと排ガス浄化フィルタとの間、及び排ガス浄化フィルタの下流側にそれぞれ温度検出手段としてのサーミスタ157、158、159が配置されている。各サーミスタ157、158、159は、それぞれ、酸化触媒フィルタへの入口側の排ガス温度、排ガス浄化フィルタの入口側の排ガス温度、及び排ガス浄化フィルタの出口側の排ガス温度をそれぞれ検出することができる。
サーミスタ157、158、159によって検出された温度データは、エンジンコントロールユニット(ECU)15に送られ、ECU15による各種制御に用いられる。
【0064】
また、エンジン5には、排気を再び吸気に回して再循環させるためのEGR(Exhaust Gas Recirculation)制御バルブ56が取り付けられている。さらに、排気を再び吸気に回す際に排気を冷却させるEGRクーラ57が取り付けられる。
【0065】
内燃機関5には、吸気管52から吸気マニホールド51を経て空気が供給される。また、内燃機関5には、コモンレール及び燃料噴射装置等から構成される燃料供給系(図示略)の燃料添加弁50から燃料が供給される。内燃機関5においては、燃料と空気が所定の混合比で混合され、この混合燃料を圧縮着火により燃焼する。
燃焼後の排気ガスは、排気マニホールド53を経て排気管54に送られる。そして、排気ガスは、捕集器内の酸化触媒フィルタ11に担持された酸化触媒により酸化され、さらに排ガス浄化フィルタ内でPM等の粒子状物質が吸着除去されて外部に排出される。
ECU15は、過吸圧センサの出力、流入空気量センサの出力、エンジン回転数、車速等の各種の運転データを収集し、これらのデータに基づいて燃料添加弁50やEGR制御バルブ56等を制御するように構成されている。
【0066】
排ガス浄化フィルタ2に粒子状物質が堆積すると、排気抵抗が増大する。これを回避するために、フィルタ再生手段151の制御によって、排ガス浄化フィルタ2内の温度を所定の再生温度まで上昇させて排ガス浄化フィルタ2内に堆積したPM等の粒子状物質を燃焼除去して、排ガス浄化フィルタ2の再生処理を行う。
具体的には、フィルタ再生手段151は、所定のタイミングで、排ガス浄化フィルタ2内に流入する排ガスの温度を上昇させることにより、排ガス浄化フィルタ2を再生温度まで昇温させて再生処理を行う。本例においては、フィルタ再生手段151は、燃焼の噴射制御などを制御するECU15に組み込まれている。
【0067】
本例においては、フィルタ再生手段151は、所定のタイミングで燃料添加弁50等を制御する制御信号Pを送信し、内燃機関内での燃料の燃焼を開始させる。これにより、排ガス浄化フィルタ2内に流入する排ガスの温度を上昇させて、再生処理を開始させることができる。また、フィルタ再生手段151は、所定の再生温度に到達した後は、燃料の添加を停止する制御信号Qを燃料の燃焼を停止するように構成されている。一旦再生温度に到達すると、排ガス浄化フィルタ内では粒子状物質の燃焼が燃焼伝播で進むため、粒子状物質の燃焼反応は進行する。
【0068】
排ガス浄化フィルタ2には、その上流端及び下流端の差圧を計測する差圧計155が設けられている。フィルタ制御手段151は、差圧計155によって計測される差圧を検出信号Rとして受信し、この検出信号Rに基づいて、排ガス浄化フィルタ2内に堆積したPM等の粒子状物質(スート)の堆積量を算出し、堆積量が例えば5〜12g/Lとなったときに、再生処理を行うように構成されている。差圧と堆積量との関係を図6に示す。
【0069】
そして、酸化触媒フィルタ19と排ガス浄化フィルタとの間、即ち、排ガス浄化フィルタ2のすぐ上流側には、排ガス浄化フィルタに流入する排ガスの温度を測定するサーミスタ158が設けられている。フィルタ再生手段151は、サーミスタ158によって計測される排ガスの温度を検出信号Sとして受信し、検出信号Sに基づいて、排ガス浄化フィルタ2の上流側から10〜20mm内部(軸方向と垂直な方向においては中央)にある所定位置の温度を算出する。フィルタ再生手段151は、この所定位置の温度を400℃以上かつ600℃未満まで上昇させて再生処理を行う。
【0070】
以下、本例の作用効果につき、説明する。
本例において、図2〜図5に示すごとく、排ガス浄化フィルタ2は、基材20と排ガス浄化触媒4とを有し、排ガス浄化触媒4は、ゼオライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物又はソーダライトを温度600℃以上で焼成してなる。
排ガス浄化触媒4は、パティキュレートマター(PM)等の粒子状物質に対する優れた燃焼促進作用を有する(後述の実験例参照)。そのため、排ガス浄化フィルタ2においては、排ガス浄化触媒4の作用により、粒子状物質を例えば600℃未満という低温で燃焼除去させることができる。それ故、排ガス浄化フィルタ2の再生温度を低く設定することができる。
【0071】
また、排ガス浄化触媒4を備えた排ガス浄化フィルタ2においては、急速温度上昇が抑制される。
即ち、従来のPt等の貴金属触媒を備えた排ガス浄化フィルタにおいては、例えば内燃機関の運転状態が減速状態になった時などに、急速温度上昇が起こり排ガス浄化フィルタ内の温度が少なくとも部分的に例えば1000℃を越える高温にまで到達するおそれがあった。その結果、排ガス浄化フィルタの基材が溶損するおそれがあった。
これに対し、上記混合物又はソーダライトを温度600℃以上で焼成してなる上記排ガス浄化触媒4を備えた排ガス浄化フィルタ2においては、Pt等の貴金属触媒が担持されたものに比べて温度上昇が緩やかになり、基材20に溶損等のダメージを与える程の高温にはなり難くなる。上記再生処理中に上記内燃機関の運転状態が減速状態になったときにおいても排ガス浄化フィルタ2内の急速温度上昇を抑制することができる。
したがって、本発明によれば、従来のように複雑なシステム制御を行わなくとも急速温度上昇を抑制することができる。
【0072】
また、急速温度上昇は、上記再生処理の開始温度、即ち、上記再生温度に依存する傾向がある。即ち、上記再生温度を高く設定すると、再生処理中の急速温度上昇がより高い温度にまで到達し易くなる。
例えば従来の貴金属触媒を用いた場合においては、PMを確実に燃焼するために再生温度を630℃程度にする必要が生じるが、このような高い再生温度では、急速温度上昇が起こって排ガス浄化フィルタの温度が基材にダメージを与える高温(例えば900℃以上)にまで上昇するおそれがあった。
これに対し、上記排ガス浄化触媒4を用いると、再生温度を630℃程度にしても、再生処理中に基材20にダメージを与える温度まで温度が急上昇することを防止することができる。さらに、上述のごとく上記排ガス浄化触媒4を用いると600℃未満という低温でもPM等の上記粒子状物質を燃焼させることができる。そのため、上記再生温度を600℃未満に設定することができ、より確実に急速温度上昇を抑制し、上述の溶損を防止することができる。
【0073】
また、急速温度上昇は、PM等の粒子状物質の堆積量に依存する傾向がある。即ち、上記再生処理開始時に上記排ガス浄化フィルタ2内に堆積していた上記粒子状物質の堆積量が多いほど、より低温の再生温度からでも急速温度上昇が起こり易く、基材20にダメージを与える高温に到達し易くなる傾向にある。
従来のPt等の貴金属触媒を用いた場合には、PMの堆積量が6g/L程度の状態で再生処理を行っても急速温度上昇が起こるおそれがある。そのため、再生処理を開始するPMの堆積量を5g/L以下、より好ましくは4g/L以下にする必要があった。
これに対し、本例においては、上記排ガス浄化触媒4が用いられているため、例えばPMの堆積量12g/Lの状態で再生処理を行っても、再生温度を例えば600℃未満に設定することにより、急速温度上昇を抑制することができる。
そのため、上記再生処理を行う頻度を減らすことができ、低燃費化を図ることができる。
【0074】
また、排ガス浄化触媒4は、アルカリ金属元素及び/又はアルカリ土類金属元素の保持力が高い。
そのため、水分存在下においても上記アルカリ金属元素及び/又は上記アルカリ土類金属元素が溶出することを防止することができる。それ故、排ガス浄化触媒4の性能劣化を防止することができ、排ガス浄化フィルタ2は、長期間安定に排ガスの浄化を行うことができる。
また、排ガス浄化触媒4は、NOxを吸着することもできる。そのため、排ガス浄化フィルタ2は、排ガス中からNOxを吸着除去することもできる。
【0075】
また、本例においては、フィルタ再生手段151は、400℃以上かつ600℃未満の再生温度まで排ガス浄化フィルタ2内の温度を上昇させて上記再生処理を開始するように構成されている。そのため、上記急速温度上昇をより抑制することができる。また、この場合には、再生処理の開始時におけるPM等の粒子状物質の堆積量を増やすことができるため、上記再生処理の頻度をより少なくすることができる。また、上記排ガス浄化触媒4は、その優れた燃焼促進作用により、上述のごとく600℃未満という低い再生温度でも短時間で上記粒子状物質を燃焼させることができる。
【0076】
また、フィルタ再生手段151は、内燃機関5の運転状態によらず、常時600℃未満の再生温度で上記再生処理を行うように構成することができる。
この場合には、運転状態によらず、より確実に急激温度上昇を抑制することができる。そして、複雑なシステムを用いることなく、よりロバスト性の高い上記排ガス浄化装置の構成が可能になる。
【0077】
また、フィルタ再生手段151は、排ガス浄化フィルタに流入する排ガスの温度を上昇させることにより上記粒子状物質の燃焼除去を行うように構成されている。そのため、簡単に上記排ガス浄化フィルタ2内の温度を上昇させることができる。
【0078】
また、排ガス浄化フィルタ2の上流側には酸化触媒が配置されている。
この場合には、排ガス中に含まれる一酸化炭素等の有害成分を酸化し、無害化することができる。また、酸化により発生する熱により、排ガス浄化フィルタに流入する排ガスの温度を上昇させることができる。
【0079】
また、フィルタ再生手段151は、排ガス浄化フィルタ内における上記粒子状物質の堆積量が4g/L〜12g/Lとなったときに上記再生処理を行うように構成されている。
そのため、再生処理の頻度を少なくすることができる。そして、このように再生頻度を少なくしても、上記排ガス浄化触媒の作用により、急速温度上昇により排ガス浄化フィルタが例えば900℃を越える高温にまで達し、溶損を引き起こすことを抑制することができる。
【0080】
以上のように、本例によれば、再生処理の頻度を少なくすることができ、複雑なシステム制御を用いることなく排ガス浄化フィルタ内の急激温度上昇を抑制することができる排ガス浄化装置を提供することができる。
【0081】
(実施例2)
本例は、実施例1と同様の構成の排ガス浄化装置について、再生処理中にエンジンの運転状態を減速状態(アイドル状態)にしたときの排ガス浄化フィルタ内の急速温度上昇を検討する例である。
図7に示すごとく、本例の排ガス浄化装置(装置E)は、実施例1と同様の構成を有する。さらに、本例においては、排ガス浄化フィルタ2内の様々な位置における温度を検出するために、排ガス浄化フィルタ2内の6ヵ所の位置に、シース径φ0.5mmの熱電対を配置した。
【0082】
図8に熱電対の配置位置を示す。図8の左側は捕集器19内に配置された酸化触媒フィルタ11と排ガス浄化フィルタ2を排ガス浄化フィルタ2の側面、即ち排ガス浄化フィルタ2の軸方向と垂直な方向から見た図であり、排ガス浄化フィルタ2内に配置した熱電対の位置を黒丸印で示してある。また、図8の右側は、排ガス浄化フィルタ2を軸方向の下流端24側から見た図であり、熱電対の位置を黒丸印で示してある。
図8に示すごとく、1つ目の熱電対A153aは、排ガス浄化フィルタ2における排ガスの入口側から10mm(排ガス浄化フィルタ2の上流端23側から10mm;a=10mm)の位置であって、軸方向と垂直な方向における中心位置に配置した。2つ目の熱電対B153bは、排ガス浄化フィルタ2における軸方向の中心位置、かつ軸方向と垂直な方向における中心位置に配置した。3つ目の熱電対C153cは、排ガス浄化フィルタ2における排ガスの出口側から10mm(排ガス浄化フィルタ2の下流端24側から10mm;b=10mm)の位置であって、軸方向と垂直な方向における中心位置に配置した。4つ目の熱電対D153dは、排ガス浄化フィルタ2における排ガスの出口側から10mm(排ガス浄化フィルタの下流端24側から10mm;b=10mm)の位置であって、軸方向と垂直な方向における中心位置から16.25mm(c=16.25mm)外方に配置した。5つ目の熱電対E153eは、排ガス浄化フィルタ2における排ガスの出口側から10mm(排ガス浄化フィルタの下流端24側から10mm;b=10mm)の位置であって、軸方向と垂直な方向における中心位置から32.5mm(d=16.25、c+d=32.5mm)外方に配置した。6つ目の熱電対F153fは、排ガス浄化フィルタ2における排ガスの出口側から10mm(排ガス浄化フィルタ2の下流端24側から10mm(b=10mm))の位置であって、軸方向と垂直な方向における中心位置から48.75mm(e=16.25、c+d+e=48.75mm)外方に配置した。
各熱電対A〜Fは、導線150を介して温度記録手段(データロガー)152に接続されている(図7参照)。そして、温度記録手段152により、経時的に排ガス浄化フィルタ2内の上述の各位置における温度を記録することができる。
【0083】
図7に示すごとく、実施例1と同様のエンジン(四気筒のディーゼルエンジン)システムにおいて、排ガス浄化フィルタ2内に8g/LまでPMを堆積させて、再生処理を行った。再生処理は、フィルタ再生手段151によって制御されている。再生処理における燃料添加及び停止のタイミング、エンジン回転速度、吸入空気量、及び入口から10mmの位置における排ガス浄化フィルタの温度(熱電対A153a(図8参照)によって検出される温度)の制御パターンを図9に示す。
【0084】
同図に示すごとく、エンジン回転数:2000rpm、qfin:19、排ガス温度:300℃という条件で排ガス浄化フィルタ内にPMを堆積させた(PM堆積モード)。PM堆積量が8g/Lに到達した時点(時間t0)で、図7に示すごとく、フィルタ再生手段151の制御に基づいて、内燃機関5内で燃料を燃焼させて排ガス浄化フィルタ2内に流入する排ガスの温度を上昇させることにより、排ガス浄化フィルタ2内に蓄積したPMを燃焼させる再生処理を開始し、排ガス浄化フィルタ2の入口から10mmの位置における温度が所定の温度(629℃)に到達した時点(時間t1)で燃料の燃焼を停止した(強制再生モード)。強制再生モードは、エンジン回転数:2000rpm、qfin:23、排ガス温度(上限):629℃という条件で行った。強制再生モードにおける時間t0からt1までは約40〜50秒である(図9参照)。
また、本例においては、時間t1以降エンジンをアイドリング状態にし、アイドリング状態を10分間継続させた(減速運転モード)。
このときの、排ガス浄化フィルタ2内の上述の所定位置に設けた熱電対A〜熱電対Fによって検出される経時的な温度変化を計測し、温度記録手段152により記録した(図7及び図8参照)。その結果を図10に示す。
【0085】
また、本例においては、比較用として、Pt触媒を担持した排ガス浄化フィルタを備えた排ガス浄化装置を用いて急速温度上昇の検討を行った。
即ち、まず、Pt触媒を担持した排ガス浄化フィルタを作製した。この排ガス浄化フィルタは、実施例1の排ガス浄化触媒の代わりにPtを基材に担持した点を除いて実施例1の排ガス浄化フィルタと同様にして作製することができる。そして、この比較用の排ガス浄化フィルタを用いて、上述の装置Eと同様の排ガス浄化装置(装置C)を構成した。
【0086】
この比較用の排ガス浄化装置(装置C)についても、装置Eと同様に、排ガス浄化フィルタ内に6ヵ所に熱電対A〜Fを配置してある。そして装置CについてもPM堆積モード、強制再生モード、減速運転モードを行い、排ガス浄化フィルタ内の上述の所定位置に設けた熱電対A〜Fによって検出される経時的な温度変化を計測した。装置Cにおいては、PM堆積モードのPM堆積量は6g/Lとし、強制再生モードの開始温度を623℃とした。その結果を図11に示す。
【0087】
図11より知られるごとく、装置Cにおいては、PM堆積量6g/Lにて再生処理を開始したが、アイドリング状態にしたときに、急速温度上昇が起こり、排ガス浄化フィルタの出口側付近の温度(熱電対D〜Fを設けた位置における温度)が1000℃を越える高温状態になっていた。排ガス浄化フィルタは、900℃以上の高温領域で溶損するおそれがあるため、装置Cにおいては、PM堆積量の限界値(SOOT MASS LIMIT;SML)は、6g/Lを下回り、高頻度の再生処理が必要になる。
【0088】
装置Cの排ガス浄化フィルタにおいて、PM(カーボン)の燃焼は、下記の二段階の反応で進行し、Pt触媒は、これら二段階の反応を促進させる。
(1)2C+O2→2CO 2×26.4kcal(固気反応)
(2)2CO+O2→2CO2 2×67.7kcal(気相反応)
即ち、装置Cにおいては、気相反応におけるCOの酸化発熱分が上乗せされるため、1000℃を越える高温にまで達すると考えられる。
【0089】
一方、図10より知られるごとく、装置Eにおいては、PM堆積量8g/Lにて再生処理を開始したが、アイドリング状態にしても、急速温度上昇が抑制され、排ガス浄化フィルタ内の温度は、最大でも750℃を下回っていた。よって、SMLは8g/Lを上回り、再生処理の頻度を減らすことができる。
装置Eにおいて、排ガス浄化フィルタに担持された排ガス浄化触媒は、上述の2段階の反応のうち気相反応、即ちCOの酸化は促進しない。そのため、1000℃を越えるという異常高温に達することを防止し、溶損を防止することができる。
【0090】
また、装置Eについて、強制再生モードを行う条件をPM堆積量が6g/L又は10g/Lに到達した時点とし、このときの、再生温度と排ガス浄化フィルタ(DPF)内の最高温度との関係を調べた。その結果を図12に示す。
また、図12には、装置C(PM堆積量6g/Lのときに強制再生モードを実施)についても、その再生温度とDPF内の最高温度との関係を示す。
【0091】
図12より知られるごとく、装置Eにおいては、PM堆積量を6g/Lにしたときには、再生温度を635℃程度にしても排ガス浄化フィルタ内の最高温度は900℃に到達しない。また、装置Eにおいて、PM堆積量を10g/Lにしたときには、再生温度が616℃になったところで、排ガス浄化フィルタ内の最高温度が900℃に到達している。よって、再生温度を616℃未満にすることにより、再生時のPM堆積量を10g/Lにしても、排ガス浄化フィルタの溶損を防止できることがわかる。装置Eの排ガス浄化フィルタに担持された排ガス浄化触媒は、温度600℃以下でもPMを燃焼させることができるため、再生時のPM堆積量を12g/Lにしても排ガス浄化フィルタの溶損を防止できると考えられる。そのため、再生処理の頻度を少なくすることができる。
【0092】
これに対し、装置Cにおいて、PM堆積量を6g/Lにしたときには、再生温度を597℃にしても排ガス浄化フィルタ内の最高温度は900℃に達し、溶損のおそれがある。また、Pt触媒は、温度600℃未満では、充分にPMに対する燃焼促進作用を発揮できない。よって、装置Cにおいては、溶損を起こすことなく、PMの燃焼を確実に行うために、再生処理を実施するときのPM堆積量を5g/L以下、より好ましくは4g/L以下にする必要がある。その結果、再生処理の頻度が多くなり、燃費低下等の不具合を生じうる。
【0093】
以上のように、本発明の実施例にかかる排ガス浄化装置(装置E)は、再生処理の頻度を少なくすることができ、複雑なシステム制御を用いることなく排ガス浄化フィルタ内の急激温度上昇を抑制することができる。
【0094】
(実験例1)
本例は、実施例1及び2の排ガス浄化装置において用いた排ガス浄化触媒の触媒作用を検討する例である。
排ガス浄化触媒は、ゼオライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物又はソーダライトを温度600℃以上で焼成して得られる。
本例においては、実施例1及び2と同様にゼオライトとしてソーダライトを用い、このソーダライトをアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源と混合した混合物を用いた例について説明する。
【0095】
具体的には、まず、原料となるゼオライトとして、ソーダライト(3(Na2O・Al2O3・2SiO2)・2NaOH)の粉末を準備した。このソーダライト100重量部と炭酸カリウム5重量部とを水に投入し、水中で混合した。
次いで、混合液を温度120℃で加熱し、水分を蒸発させた。これにより、固形分(ソーダライトと炭酸カリウムとの混合物)を得た。
次に、この固形分を温度800℃で焼成した。具体的には、固形分を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度800℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。
次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、排ガス浄化触媒を得た。これを試料E1とする。
【0096】
次に、本例において作製した排ガス浄化触媒(試料E1)について、PMに対する燃焼促進特性を調べた。また、比較用として、貴金属系触媒(Pt粉末)、炭酸カリウム粉末についても燃焼促進特性を調べた。
【0097】
具体的には、まず、触媒種(試料E1、貴金属系触媒、又は炭酸カリウム粉末)200mgとカーボンブラック(CB;PMの代替として使用)20mgとをそれぞれ電子天秤にて正確に秤量した。これらをメノウ乳鉢を用いて触媒種(重量):CB(重量)=10:1となるように一定時間混合し、各触媒種とカーボンブラックとを含有する3種類の評価サンプルを得た。さらに、触媒種を用いずに、CBのみからなる評価サンプルを比較用として作製した。CB単独の評価サンプルについても、他のサンプルと同様にメノウ乳鉢を用いて一定時間混合したものを用いた。即ち、評価サンプルとしては、CB単独、貴金属系触媒とCBとの混合物、試料E1とCBとの混合物、炭酸カリウムとCBとの混合物という4種類のサンプルを作製した。
【0098】
次いで、熱分析−示差熱重量(TG−DTA)同時測定装置(理学電機社製のTG8120)用いて、各評価サンプル6mgを昇温速度10℃/minにて最高温度900℃まで加熱してCBを燃焼させると共に、このときのDTA発熱ピーク温度、及び温度とTGとの関係を測定した。なお、CB単独からなる評価サンプルについては、0.5mgを用いてDTA発熱ピーク温度の測定を行った。また、加熱は、流束50mL//minで空気を評価サンプルに流通させながら行った。各触媒種を用いたときのDTA発熱ピーク温度の結果を図13に示す。また、温度とTGとの測定結果については、CB単独を用いた結果を図14に示し、触媒種として貴金属系触媒を用いた結果を図15に示し、K2CO3を用いた結果を図16に示し、試料E1を用いた結果を図17に示す。図14〜図17の縦軸は、カーボンブラックの最大燃焼速度を示すDTA発熱ピークを用いている。
【0099】
また、触媒種(試料E1、貴金属系触媒、又は炭酸カリウム粉末)1gを水500cc中に投入し、一昼夜撹拌することにより洗浄した。次に、水洗浄処理後の触媒種をろ過し、ろ過後の触媒種にさらに1500ccの水を流通させて充分に洗浄した後、温度120℃にて乾燥させた。これらの水洗浄処理後の触媒種(試料E1及び貴金属系触媒)200mgとカーボンブラック(CB)20mgとを電子天秤にて正確に秤量した。これらをメノウ乳鉢を用いて触媒種(重量):CB(重量)=10:1となるように一定時間混合し、各触媒種とカーボンブラックとを含有する2種類の評価サンプルを得た。なお、CB単独からなる評価サンプルについては、他のサンプルと同様に洗浄及び乾燥を行い、その後メノウ乳鉢で混合したものを用いた。また、触媒種として炭酸カリウムを用いた評価サンプルは、水洗洗浄処理により水に溶解してしまったため、その後の操作を行うことができなかった。即ち、水洗後の評価サンプルとしては、CB単独、貴金属系触媒とCBとの混合物、試料E1とCBとの混合物という3種類のサンプルを作製した。これらのサンプルについて、再度熱分析−示差熱重量(TG−DTA)同時測定装置によって、DTA発熱ピーク温度の測定を行った。水洗浄処理後のDTA発熱ピーク温度の結果を図1に併記する。
【0100】
図1〜図5より知られるごとく、水洗浄前において、試料E1を用いたサンプル及び炭酸カリウム用いたサンプルは、DTA発熱ピーク温度が低く、比較的低い温度でPM(CB)を燃焼できることがわかる。なお、図1及び図5から知られるごとく、試料E1は、約400℃付近に発熱ピークを有しているが、実際にはこれよりも低い温度(例えば350℃程度)でもカーボンブラックの燃焼は開始されている。
【0101】
図1より知られるごとく、CB単独、貴金属系触媒、及び試料E1については、水洗前後でCBに対する燃焼促進特性はほとんど変化しなかった。これに対して、炭酸カリウムを用いたサンプルは、水洗後に炭酸カリウムが水に溶解し、測定が不可能であった。
【0102】
したがって、試料E1は、PMに対して優れた燃焼促進特性を有し、低温でPMを燃焼除去することができる。また、試料E1は、水分存在下においてもその優れた特性を維持できるため、長期間安定してPMの燃焼を行うことができる。したがって、試料E1は、水蒸気を多く含む排ガス中においても、PMを長期間安定して燃焼させることができる。
【0103】
上記試料E1は、上述のごとくソーダライト100重量部と炭酸カリウム5重量部との混合物を温度800℃で10時間焼成することにより作製した触媒である。次に、本例においては、焼成温度による触媒活性への影響を調べるために、異なる温度でソーダライトと炭酸カリウムとの混合物(上記固形分)を焼成して複数の触媒を作製した。
具体的には、まず、ソーダライト100重量部と炭酸カリウム10重量部とを水中で混合し混合液を得た。次いで、混合液を温度120℃で加熱し、水分を蒸発させ、固形分(混合物)を得た。次に、この混合物を温度500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃、1200℃、1300℃で焼成して9種類の触媒を作製した。これらの触媒は、焼成温度を変更した点を除いては互いに同様にして作製した触媒であり、ソーダライトに対する炭酸カリウムの混合割合及び焼成温度を変更した点を除いては、上記試料E1と同様にして作製した触媒である。さらに、温度600℃での焼成については焼成時間の影響を調べるため、上記試料E1と同様に10時間の焼成を行って作製した触媒の他に、焼成時間を5時間にして作製した触媒も準備した。その他の焼成温度で作製した触媒については、上記試料E1と同様に、いずれも10時間焼成を行って作製した。
【0104】
そしてこれらの触媒についても、上記試料E1と同様にPMに対する燃焼促進特性を調べた。このとき、比較用としてソーダライトと炭酸カリウムとの混合物についてもPMに対する燃焼促進特性を調べた。このソーダライトと炭酸カリウムとの混合物としては、焼成を行う代わりに室温(約25℃)で約10時間放置したものを採用した。
燃焼促進特性の測定は、上記試料E1と同様にしてDTA発熱ピーク温度を測定することにより行った。その結果を図18に示す。
【0105】
図18より知られるごとく、温度600℃以上で焼成を行って作製した排ガス浄化触媒のDTA発熱ピークトップ温度は、水洗前及び水洗後においても約460℃以下という非常に低い値を示した。PMに対する燃焼触媒として一般に用いられる貴金属(Pt)触媒のDTA発熱ピーク温度は520℃程度(図1参照)であることから、これらの排ガス浄化触媒は、PMに対して充分に優れた触媒活性を有していることがわかる。
【0106】
これに対し、温度600℃未満で焼成した触媒は、水洗前においては、貴金属(Pt)触媒に比べて充分に低いDTA発熱ピーク温度を示し、優れた触媒活性を示していたが、水洗後においては、DTA発熱ピーク温度は著しく上昇し、貴金属触媒よりも触媒活性が低下していた。また、焼成を行っていないソーダライトと炭酸カリウムとの混合物についても、水洗前には優れた触媒活性を示していたが、水洗後には触媒活性が著しく低下していた。
温度600℃未満で焼成して得られる触媒、及び焼成を行なわずに作製した触媒において、上記のごとく水洗後において触媒活性が著しく低下していた原因は、水洗後にカリウムが溶出したためであると考えられる。
【0107】
したがって、水分を多く含む排ガスの浄化触媒として用いるためには、焼成温度は600℃以上で行う必要があることがわかる。また、図18より知られるごとく、特に温度700℃〜1200℃で焼成を行うことにより、よりDTA発熱ピーク温度の低い排ガス浄化触媒、即ち触媒活性に優れた排ガス浄化触媒が得られることがわかる。さらに、同図より知られるごとく、5時間で焼成を行った場合に比べて10時間焼成を行った場合の方が、水洗後の触媒活性の低下が抑制されていた。
【0108】
上述の例においては、ソーダライトにK源として炭酸カリウムを混合して排ガス浄化触媒を作製した。本例においては、次に、ソーダライトに混合するカリウム塩の種類を変えて複数の排ガス浄化触媒を作製し、そのDTA発熱ピークトップ温度を調べた。
【0109】
具体的には、ソーダライトに、各カリウム塩(炭酸カリウム、硝酸カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、リン酸カリウム、又は水酸化カリウム)を混合して混合物を得た。各カリウム塩は、カリウム塩中のカリウム元素量がソーダライト中のSi元素1モルに対して0.225モル又は0.00225モルとなるように混合を行った。また、混合は、上記試料E1と同様に水中で行い、上述のごとく混合液の水分を乾燥させることにより混合物を得た。
【0110】
次に、混合物を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、排ガス浄化触媒を得た。
このようにして得られた各排ガス浄化触媒について、上記試料E1と同様に水洗前後のDTA発熱ピーク温度を測定した。その結果を図19に示す。
【0111】
図7より知られるごとく、いずれのカリウム塩を用いて作製しても、排ガス浄化触媒は、水洗前後において優れた触媒活性を示した。また、カリウム塩の量を減らすと触媒活性は低下するものの、この場合においても水洗前後において450℃以下という非常にDTAピーク発熱トップ温度を維持しており、優れた触媒活性を示していた。
【0112】
上述の例においては、混合時にソーダライトにアルカリ金属元素源(アルカリ金属塩)としてカリウム塩を混合し、排ガス浄化触媒を作製した。次に、本例においては、ソーダライトにカリウム塩の以外の各種アルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源を混合して複数の排ガス浄化触媒を作製し、これらのDTA発熱ピークトップ温度を調べた。
【0113】
具体的には、まず、ソーダライトに、各種アルカリ金属塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、又は炭酸セシウム)、又はアルカリ土類金属塩(水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム)を混合して混合物を得た。各アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、ソーダライト中のSi元素1モルに対する各アルカリ金属塩中のアルカリ金属元素量又はアルカリ土類金属塩中のアルカリ土類金属元素量が0.225モル又は0.00225モルとなるように混合した。また、混合は、上記試料E1と同様に水中で行い、上述のごとく混合液の水分を乾燥させることにより固形分(混合物)を得た。
【0114】
次に、混合物を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、排ガス浄化触媒を得た。
このようにして得られた各排ガス浄化触媒について、上記試料E1と同様に水洗前後のDTA発熱ピーク温度を測定した。その結果を図20に示す。図20において、横軸は、混合時に添加したアルカリ金属元素源中のアルカリ元素種、及びアルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属種を示し、縦軸は、DTA発熱ピーク温度を示す。
【0115】
図20より知られるごとく、ソーダライトに各種アルカリ金属元素(Na、K、Rb、Cs)を混合して作製した排ガス浄化触媒は、いずれのアルカリ金属元素を用いた場合でも、水洗前後において優れた触媒活性を示した。
これに対し、ソーダライトに各種アルカリ土類金属元素(Mg、Ca、Sr、Ba)を混合して作製した排ガス浄化触媒においては、アルカリ土類金属元素としてMgを選択した場合に、若干触媒活性が不十分である場合が認められるものの、いずれの場合においても、実用上問題ないレベルの触媒活性を示した。
このように、K以外にも、その他のアルカリ金属、又はアルカリ土類金属をソーダライトに混合して焼成しても、優れた触媒活性を有する排ガス浄化触媒が得られることがわかる。
【0116】
また、アルカリ土類金属元素源としてMg源を用いた場合について、さらに詳細に説明すると、図20より知られるごとく、Mgをソーダライト中のSi元素1モルに対して0.00225モル加えて得られた触媒は優れた触媒活性を示した。しかし、Mgを0.225モル加えて作製した触媒は、実用に供することは可能であるものの、触媒活性が低下していた。一方、その他のアルカリ土類金属元素(Ca、Sr、Ba)を用いて得られた触媒は、いずれの場合においても優れた触媒活性を示した。
したがって、ソーダライトを用いる場合において、アルカリ土類金属元素源を選択する場合には、Mg以外のアルカリ土類金属元素源を採用することが好ましい。また、Mg源を採用する場合には、Mg源中のMg量がソーダライト中のSi元素1モルに対して0.225モル未満となるように、Mg源とソーダライトとの混合を行うことが好ましい。より好ましくは、0.00225モル以下がよい。
【0117】
上記の例においては、ソーダライトに1種類のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を混合して排ガス浄化触媒を作製した。次に、本例においては、混合時にソーダライトに複数のアルカリ金属元素、アルカリ土類金属を混合して排ガス浄化触媒を作製し、そのDTA発熱ピーク温度を測定した。
【0118】
具体的には、まず、ソーダライトに、炭酸カリウムを加え、さらにアルカリ金属元素源(炭酸ナトリウム、炭酸ルビジウム、又は炭酸セシウム)又はアルカリ土類金属元素源(水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、又は炭酸バリウム)を加えて混合し混合物を得た。このようにして得られた各混合物は、ソーダライトと、炭酸カリウムと、炭酸カリウム以外のアルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源とを含有する。
各混合物は、ソーダライト中のSi元素1モルに対して炭酸カリウム中のカリウム量が0.1125モルとなるようにソーダライトに炭酸カリウム(カリウム源)を加え、さらにソーダライト中のSi元素1モルに対して各アルカリ金属元素源中のアルカリ金属元素量又はアルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素量が0.1125モルとなるようにソーダライトに各種アルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源を加えて作製した。
したがって、各混合物においては、ソーダライト中のSi元素1モルに対する炭酸カリウム中のカリウム量と、その他のアルカリ金属元素量又はアルカリ土類金属元素量との合計量は、いずれも0.225モルとなっている。
また、混合は、上記試料E1と同様に水中で行い、上述のごとく混合液の水分を乾燥させることにより混合物を得た。
【0119】
次に、混合物を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持した。これにより混合物の焼成を行った。次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、排ガス浄化触媒を得た。
【0120】
このようにして得られた各排ガス浄化触媒について、上記試料E1と同様に水洗前後のDTA発熱ピーク温度を測定した。その結果を図21に示す。同図において、縦軸はDTA発熱ピーク温度を示し、横軸は、炭酸カリウム以外に添加したアルカリ金属元素源中のアルカリ金属元素種又はアルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素種を示す。また、同図には、ソーダライトに炭酸カリウムだけを混合し焼成して作製した排ガス浄化触媒(図21において横軸がKで示されたサンプル)についての水洗前後のDTA発熱ピーク温度を併記する。
【0121】
図21より知られるごとく、ソーダライトにK(カリウム)の他に、さらに各種アルカリ金属元素(Na、Rb、Cs)又はアルカリ土類金属元素(Mg、Ca、Sr、Ba)を混合した場合においても、Kを単独で混合した場合と同様に、優れた触媒活性を有する排ガス浄化触媒が得られた。
このように、混合時に複数のアルカリ金属元素源及びアルカリ土類金属源を用いても、優れた触媒活性を有する排ガス浄化触媒が得られることがわかる。
【0122】
次に、本例においては、アルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源の添加量が排ガス浄化触媒の触媒活性に与える影響を調べるために、ソーダライトに混合するアルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源の添加割合を変えて排ガス浄化触媒を作製し、そのDTA発熱ピーク温度を測定した。
【0123】
まず、ソーダライト100重量部に、炭酸カリウム又は炭酸バリウムを0〜100重量部の添加量で混合し、混合物を得た。
具体的には、後述の表1及び図22に示すごとく、ソーダライト(SOD)100重量部に対して、炭酸カリウムをそれぞれ0重量部、0.1重量部、0.5重量部、1重量部、3重量部、5重量部、10重量部、15重量部、20重量部、40重量部、及び100重量部混合して混合物を作製した。
また、後述の表2及び図23に示すごとく、ソーダライト(SOD)100重量部に対して、炭酸バリウムをそれぞれ0重量部、5重量部、10重量部、15重量部、20重量部、40重量部、70重量部、100重量部、150重量部、200重量部、及び300重量部混合して混合物を作製した。
これらの混合は、上記試料E1と同様に水中で行い、上述のごとく混合液の水分を乾燥させることにより複数の混合物を得た。
【0124】
次に、これらの混合物を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃に達したところで10時間保持した。これにより、混合物の焼成を行った。次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、排ガス浄化触媒を得た。
【0125】
このようにして得られた各排ガス浄化触媒について、上記試料E1と同様に水洗前後のDTA発熱ピーク温度を測定した。
炭酸カリウムを用いて作製した排ガス浄化触媒の水洗前後のDTA発熱ピーク温度の結果を表1及び図22に示し、炭酸バリウムを用いて作製した排ガス浄化触媒の水洗前後のDTA発熱ピーク温度の結果を表2及び図23に示す。
なお、表1には、ソーダライト100重量部に対するKの混合量(重量部)をソーダライト中のSi量(mol)に対するKの混合量(mol)に換算した値を示してある(表1参照)。同様に、表2には、ソーダライト100重量部に対するBaの混合量(重量部)をソーダライト中のSi量(mol)に対するBaの混合量(mol)に換算した値を示してある(表2参照)。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
表1、表2、図22、及び図23より知られるごとく、混合時におけるアルカリ金属元素量及びアルカリ土類金属元素量を変えても、得られる排ガス浄化触媒は優れた触媒活性を示していた。
その一方で、アルカリ金属量又はアルカリ土類金属量を増やすと、水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度の差が大きくなっていた。表1及び表2より知られるごとく、混合時に、アルカリ金属元素源(K2CO3)中に含まれるアルカリ金属元素(K)量、アルカリ土類金属元素源(BaCO3)中に含まれるアルカリ土類金属元素(Ba)量がソーダライト中のSi元素1モルに対して2.25モル以下となるように、ソーダライトとアルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源とを混合すれば、水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度の差が比較的小さな排ガス浄化触媒、即ち水分に対する耐久性に優れた排ガス浄化触媒を作製できることがわかる。また、上述のアルカリ金属元素量とアルカリ土類金属元素量が2.25モルを超える場合には、混合物が焼成時に一旦溶融し易くなり、焼成後に得られる排ガス浄化触媒の粉砕が困難になる。
同様の観点から、より好ましくは、ソーダライト中のSi元素1モルに対してアルカリ金属元素量(モル)、アルカリ土類金属元素量(モル)は1モル以下がよく、さらにより好ましくは0.5モル以下がよい。
【0129】
以上のように、本例によれば、ソーダライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物を温度600℃以上で焼成することにより、低温でかつ長期間安定にPMを燃焼除去できる排ガス浄化触媒が得られることがわかる。
かかる排ガス浄化触媒は、実施例1及び実施例2に示すごとく、ハニカム構造体等の基材に担持させることにより、排ガス浄化フィルタとして好適に用いることができる。そして、これを用いて実施例1及び実施例2と同様に排ガス浄化装置を構成することができる。
【0130】
(実験例2)
本例は、ソーダライトを単独で焼成することにより排ガス浄化触媒を作製し、その特性を評価する例である。
具体的には、まず、ソーダライト(3(Na2O・Al2O3・2SiO2)・2NaOH)の粉末を準備した。
次いで、このソーダライトを温度1000℃で焼成した。具体的には、ソーダライトを昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。次いで、焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、粉末状の排ガス浄化触媒を得た。これを試料E2とする。
【0131】
次に、本例において作製した排ガス浄化触媒(試料E2)について、PMに対する燃焼促進特性を調べた。また、比較用として、貴金属系触媒(Pt粉末)、炭酸カリウム粉末についても燃焼促進特性を調べた。
【0132】
具体的には、まず、実験例1と同様にして、CB単独、貴金属系触媒とCBとの混合物、試料E2とCBとの混合物、炭酸カリウムとCBとの混合物という4種類の評価サンプルを作製した。
次いで、実験例1と同様に、DTA発熱ピーク温度を測定した。各触媒種を用いたときのDTA発熱ピーク温度の測定結果を図24に示す。
【0133】
また、実験例1と同様に、触媒種(試料E2、貴金属系触媒、又は炭酸カリウム粉末)を水で洗浄し、乾燥後の触媒種(試料E2及び貴金属系触媒)とCBとを混合し、各触媒種とカーボンブラックとを含有する2種類の評価サンプルを得た。なお、CB単独からなる評価サンプルについても、実験例1と同様にして調整した。また、触媒種として炭酸カリウムを用いた評価サンプルは、水洗洗浄処理により水に溶解してしまったため、その後の操作を行うことができなかった。即ち、水洗後の評価サンプルとしては、CB単独、貴金属系触媒とCBとの混合物、試料E2とCBとの混合物という3種類のサンプルを作製した。これらのサンプルについて、再度熱分析−示差熱重量(TG−DTA)同時測定装置によって、DTA発熱ピーク温度の測定を行った。水洗浄処理後のDTA発熱ピーク温度の結果を図24に併記する。
【0134】
図24より知られるごとく、水洗浄前において、試料E2を用いたサンプル及び炭酸カリウム用いたサンプルは、DTA発熱ピーク温度が低く、比較的低い温度でPM(CB)を燃焼できることがわかる。なお、図24から知られるごとく、試料E2は、約450℃付近に発熱ピークを有しているが、実際にはこれよりも低い温度(例えば400℃程度)でもカーボンブラックの燃焼は開始されている。
また、図24より知られるごとく、CB単独、貴金属系触媒、及び試料E2については、水洗前後でCBに対する燃焼促進特性はほとんど変化しなかった。これに対して、炭酸カリウムを用いたサンプルは、水洗後に炭酸カリウムが水に溶解し、測定が不可能であった。
【0135】
したがって、試料E2は、PMに対して優れた燃焼促進特性を有し、低温でPMを燃焼除去することができる。また、試料E2は、水分存在下においてもその優れた特性を維持できるため、水分を多く含む排ガスの浄化触媒として用いても長期間安定してPMの燃焼を行うことができる。
【0136】
また、本例においては、上記試料E2とは異なる焼成温度でソーダライトを焼成し、さらに3種類の触媒を作製した。
即ち、上記試料E2においては、焼成温度1000℃(保持時間10時間)でソーダライトの焼成を行ったが、これら3種類の触媒は、それぞれ焼成温度700℃(保持時間10時間)、焼成温度600℃(保持時間10時間)又は焼成温度500℃(保持時間10時間)で焼成して作製した。そしてこれら3種類の排ガス浄化触媒についても、上記試料E2と同様にPMに対する燃焼促進特性を調べた。このとき、比較用として排ガス浄化触媒の作製に用いたソーダライト粉末についてもPMに対する燃焼促進特性を調べた。このソーダライトの粉末としては、焼成を行う代わりに室温(約25℃)で約10時間放置したものを採用した。燃焼促進特性の測定は、上記試料E2と同様にしてDTA発熱ピーク温度を測定することにより行った。その結果を図25に示す。なお、同図には、試料E2、即ち焼成温度1000℃で焼成してなる排ガス浄化触媒の結果を併記する。
【0137】
図25より知られるごとく、ソーダライトを温度600℃以上で焼成して得られた排ガス浄化触媒のDTA発熱ピークトップ温度は、500℃以下という非常に低い値を示した。PMに対する燃焼触媒として一般に用いられる貴金属(Pt)触媒のDTA発熱ピーク温度は520℃程度(図24参照)であることから、これらの排ガス浄化触媒は、PMに対して充分に優れた触媒活性を有していることがわかる。
また、温度600℃以上で焼成してなる排ガス浄化触媒は、水洗後においても、貴金属(Pt)触媒のDTA発熱ピーク温度と同程度又はそれより低い温度を示しており、水洗後においても優れた触媒活性を維持できることがわかる。
【0138】
これに対し、温度500℃で焼成して得られた触媒は、水洗前においては、貴金属(Pt)触媒と同程度のDTA発熱ピーク温度(約520℃)を示したが、水洗後においては、DTA発熱ピーク温度は約540℃まで上昇し、貴金属触媒よりも触媒活性が低下していた。また、焼成を行っていないソーダライトにおいては、水洗前後にかかわらずPMの燃焼に対する触媒活性が不十分であった。
【0139】
また、本例においては、上記試料E2の比較用として、ソーダライト(SOD)以外の各種ゼオライトを単独で焼成し、これを触媒として用いて燃焼促進特性を調べた。
具体的には、まず、ソーダライト以外のゼオライトとして、ゼオライト構造(BEA型、FAU(フォージャサイト)型、FER型、LTA型、LTL型、MFI型、及びMOR型)及び/又はゼオライト組成中のSiO2/Al2O3比が異なる12種類のゼオライトを準備した(表3参照)。これらは、いずれも東ソー(株)製のゼオライトである。これらのゼオライトの製品名、ゼオライト構造の型の種類、及びSiO2/Al2O3比を表3に示す。なお、表3及び後述の図26におけるゼオライト種の名称は、東ソー(株)製のゼオライトの製品名である。また、表3には試料E2の作製に用いたソーダライト(SOD)についても併記してある。
【0140】
【表3】
【0141】
次に、表3に示す各種ゼオライトを上記試料E2と同様に焼成した。具体的には、各種ゼオライトをそれぞれ昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。次いで、焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、粉末状の触媒を得た。そしてこれらの触媒についても、上記試料E2と同様にPMに対する燃焼促進特性を調べた。なお、これらの触媒については、水洗後の燃焼促進特性の測定は行っていない。その結果を図26に示す。また、図26には、ソーダライトを焼成して得られた上記試料E2の結果「SOD」として併記してある。
【0142】
図26より知られるごとく、ソーダライト以外のゼオライトを焼成してなる物質を触媒として用いた場合には、DTA発熱ピーク温度が非常に高く、PMの燃焼促進特性が不十分であった。これに対し、SODを焼成してなる触媒(試料E2)は、約450℃という非常に低いDTA発熱ピーク温度を示しており、PMを低温で燃焼できる。よって、単独で焼成を行う場合には、ゼオライトの中でもソーダライトを採用することが必要であることがわかる。
【0143】
以上のように、本例によれば、ソーダライトを単独で温度600℃以上で焼成することにより、低温でかつ長期間安定にPMを燃焼除去することができる排ガス浄化触媒が得られることがわかる。
かかる排ガス浄化触媒は、実施例1及び実施例2に示すごとく、ハニカム構造体等の基材に担持させることにより、排ガス浄化フィルタとして好適に用いることができる。そして、実施例1及び実施例2と同様に排ガス浄化装置を構成することができる。
【0144】
(実験例3)
本例は、ソーダライト以外のゼオライトを用いて排ガス浄化触媒を作製し、その特性を評価する例である。
具体的には、まず、ゼオライトとして、LTA型で、Al2O31モルに対するSiO2量(SiO2/Al2O3)が2.0モルであるゼオライト(東ソー(株)製の「A−3」)を準備した。また、アルカリ金属元素源として、炭酸カリウムを準備した。
次に、ゼオライト中のSi元素1モルに対する炭酸カリウム中のK量が0.225モルとなる割合でゼオライトと炭酸カリウムとを水に投入し、水中で両者を混合した。
次いで、混合液を温度120℃で加熱し、水分を蒸発させ、固形分(混合物)を得た。
【0145】
次に、固形分を温度1000℃で焼成した。具体的には、固形分を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。
次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、排ガス浄化触媒を得た。これを試料E3とする。
【0146】
次に、本例において作製した排ガス浄化触媒(試料E3)について、PMに対する燃焼促進特性を調べた。また、比較用として、貴金属系触媒(Pt粉末)、炭酸カリウム粉末についても燃焼促進特性を調べた。
【0147】
具体的には、まず、実験例1と同様にして、CB単独、貴金属系触媒とCBとの混合物、試料E3とCBとの混合物、炭酸カリウムとCBとの混合物という4種類の評価サンプルを作製した。
次いで、実験例1と同様に、DTA発熱ピーク温度を測定した。各触媒種を用いたときのDTA発熱ピーク温度の測定結果を図27に示す。
【0148】
また、実験例1と同様に、触媒種(試料E3、貴金属系触媒、及び炭酸カリウム粉末)を水で洗浄し、乾燥後の触媒種(試料E3及び貴金属系触媒)とCBとを混合し、各触媒種とカーボンブラックとを含有する2種類の評価サンプルを得た。なお、CB単独からなる評価サンプルについても、実験例1と同様にして調整した。また、触媒種として炭酸カリウムを用いた評価サンプルは、水洗により水に溶解してしまったため、その後の操作を行うことができなかった。即ち、水洗後の評価サンプルとしては、CB単独、貴金属系触媒とCBとの混合物、試料E3とCBとの混合物という3種類のサンプルを作製した。これらのサンプルについて、再度熱分析−示差熱重量(TG−DTA)同時測定装置によって、DTA発熱ピーク温度の測定を行った。水洗浄処理後のDTA発熱ピーク温度の結果を図27に併記する。
【0149】
図27より知られるごとく、水洗浄前において、試料E3を用いたサンプル及び炭酸カリウム用いたサンプルは、DTA発熱ピーク温度が低く、比較的低い温度でPM(CB)を燃焼できることがわかる。なお、図27から知られるごとく、試料E3は、約410℃付近(水洗前)にDTA発熱ピーク温度を有しているが、実際にはこれよりも低い温度(例えば360℃程度)でもカーボンブラックの燃焼は開始されている。
【0150】
また、図27より知られるごとく、CB単独、貴金属系触媒、及び試料E3については、水洗前後でCBに対する燃焼促進特性はほとんど変化しなかった。これらの中でも試料E3は、水洗後における燃焼促進特性の低下幅が最も大きくなっているが、それでも水洗後のDTA発熱ピーク温度は450℃程度であり、CB単独及び貴金属系触媒に比べて充分低い値を示している。したがって、試料E3は、水洗後においてもPMに対する優れた燃焼促進特性を示すことがわかる。
一方、炭酸カリウムを用いたサンプルは、水洗後に炭酸カリウムが水に溶解し、測定が不可能であった。
【0151】
このように、ソーダライト以外のゼオライトを用いて作製した排ガス浄化触媒(試料E3)も、PMに対して優れた燃焼促進特性を有し、低温でPMを燃焼除去することができる。また、試料E3は、水分存在下においてもその優れた特性を維持できるため、長期間安定してPMの燃焼を行うことができる。また、上記試料E3は、その作製時に高価な貴金属等を必要としないため、低コストで作製することができる。
かかる排ガス浄化触媒(試料E3)は、実施例1及び実施例2に示すごとく、ハニカム構造体等の基材に担持させることにより、排ガス浄化フィルタとして好適に用いることができる。そして、これを用いて実施例1及び実施例2と同様に排ガス浄化装置を構成することができる。
【0152】
(実験例4)
本例は、組成の異なる複数のゼオライトを用いて排ガス浄化触媒を作製し、水洗前後におけるPMに対する燃焼促進特性を調べる例である。
本例の排ガス浄化触媒は、ゼオライト種を変更する点を除いては、実験例3の上記試料E3と同様にして製造することができる。
【0153】
具体的には、まず、上記試料E3の作製に用いたゼオライト(東ソー株式会社製の「A−3」)を含む、構造及び/又は組成中のSiO2/Al2O3比(モル比)が異なる9種類のゼオライトを準備した。これらのゼオライトは、LTA型、BEA型、FAU(フォーじゃライト)型、FER型、LTL型、MFI型、又はMOR型の構造を有し(上述の表3参照)、いずれも東ソー(株)製のゼオライトである。具体的には、東ソー(株)製の「A−3」、「A−4」、「F−9」、「642NAA」、「320NAA」、「500KOA」、「720KOA」、「820NAA」、及び「940HOA」を用いた(表3参照)。
【0154】
次に、各種ゼオライトと炭酸カリウムとをそれぞれ混合した。混合は、実験例3と同様に、水中で行い、混合液の水分を蒸発させることにより、固形分を得た。各種ゼオライトと炭酸カリウムとの混合割合は、実験例3と同様に、各種ゼオライト中のSi元素1モルに対する炭酸カリウム中のK量が0.225モルとなる割合とした。
【0155】
次に、各固形分を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃(焼成温度)に達したところで10時間保持することにより焼成を行った。
次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、排ガス浄化触媒を得た。
【0156】
このようにして、上述の各種ゼオライトを用いて9種類の排ガス浄化触媒を作製した。そして、これらの排ガス浄化触媒についても、実験例1の上記試料E1と同様に水洗前後におけるPMに対する燃焼促進特性を調べた。その結果を図28に示す。
【0157】
また、本例においては、焼成の意義を調べるために、焼成前の上記固形分、即ち各種ゼオライトと炭酸カリウムとの混合物を触媒として用い、実験例3の上記試料E3と同様に水洗前後におけるPMに対する燃焼促進特性を調べた。その結果を図29に示す。
【0158】
図28より知られるごとく、いずれのゼオライトを用いて場合においても、排ガス浄化触媒は、水洗浄前において約480℃以下という低いDTA発熱ピーク温度を示した。これは一般にPMの燃焼触媒として用いられている貴金属(Pt)触媒(DTA発熱ピーク温度:約520℃(図27参照))に比べて充分に小さな値である。したがって、各種ゼオライトを用いて作製した排ガス浄化触媒は、PMに対して優れた燃焼促進特性を有し、低温でPMを燃焼除去させることができることがわかる。
【0159】
また、図28より知られるごとく、各種ゼオライトを用いて作製した排ガス浄化触媒は、水洗後においても貴金属(Pt)触媒(DTA発熱ピーク温度:約520℃(図27参照))と同等又はそれよりも小さなDTA発熱ピーク温度を示した。したがって、これらの排ガス浄化触媒は、水分存在下においてもPMに対して優れた燃焼促進特性を維持できることがわかる。
【0160】
また、図29より知られるごとく、焼成を行っていない各種ゼオライトと炭酸カリウムとの混合物は、水洗前においては非常に低いDTA発熱ピーク温度を示した。しかし、水洗後においては、いずれの混合物においてもDTA発熱ピーク温度は顕著に上昇していた。
一方、焼成後においては、上述のごとく水洗後においてもDTA発熱ピーク温度の上昇が小さくなっていた(図28参照)ことから、混合物(上記固形分)を焼成することにより、水分に対する耐久性を向上させることができることがわかる。
【0161】
以上のように、本例によれば、様々なゼオライトを用いても、低温でかつ水分存在下でも長期間安定にPMを燃焼除去できる排ガス浄化触媒が得られることがわかる。かかる排ガス浄化触媒は、実施例1及び実施例2に示すごとく、ハニカム構造体等のフィルタ基材に担持させることにより、排ガス浄化フィルタとして好適に用いることができる。そして、これを用いて実施例1及び実施例2と同様に排ガス浄化装置を構成することができる。
【0162】
(実験例5)
本例は、ソーダライト以外のゼオライトを用いた場合における焼成温度が触媒活性に与える影響を調べる例である。
即ち、本例においては、異なる複数の焼成温度でゼオライトと炭酸カリウムとの混合物を焼成して複数の排ガス浄化触媒を作製し、これらの触媒のPMに対する燃焼促進特性を調べる。
本例の排ガス浄化触媒は、焼成温度を変更する点を除いては、実験例3と同様にして作製する。
【0163】
具体的には、まず、実験例3と同様にして、LTA型で、SiO2/Al2O3比(モル比)が2.0のゼオライト(東ソー(株)製の「A−3」)と炭酸カリウムとの混合物(上記固形分)を得た。本例においても、実験例3と同様に、混合は水中で行い、ゼオライトと炭酸カリウムとの混合割合についても、実験例3と同様に、ゼオライト中のSi元素1モルに対する炭酸カリウム中のK量が0.225モルとなる割合とした。
【0164】
次に、混合物を異なる温度で焼成して複数の触媒を作製した。
具体的には、混合物を焼成温度500℃、600℃、800℃、700℃、900℃、1000℃、1100℃、1200℃、1300℃で焼成した。焼成速度は100℃/hとし、各焼成温度で10時間保持することにより焼成を行った。その後、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、異なる温度で焼成された9種類の触媒を得た。
【0165】
そしてこれら9種類の触媒についても、実験例3の上記試料E3と同様にPMに対する水洗前後の燃焼促進特性を調べた。このとき、比較用として、焼成を行っていないゼオライト(A−3)と炭酸カリウムとの混合物についてもPMに対する燃焼促進特性を調べた。このゼオライトと炭酸カリウムとの混合物としては、焼成を行う代わりに室温(約25℃)で約10時間放置したものを採用した。
燃焼促進特性の測定は、実験例3の上記試料E3と同様にしてDTA発熱ピーク温度を測定することにより行った。その結果を図30に示す。
【0166】
図30より知られるごとく、温度600℃以上で焼成を行って作製した排ガス浄化触媒のDTA発熱ピークトップ温度は、水洗前及び水洗後においても500℃を下回っていた。PMに対する燃焼触媒として一般に用いられる貴金属(Pt)触媒のDTA発熱ピーク温度は520℃程度(図27参照)であることから、これらの排ガス浄化触媒は、PMに対して充分に優れた燃焼促進特性を有していることがわかる。
【0167】
これに対し、図30より知られるごとく、温度600℃未満で焼成した触媒は、水洗前においては、貴金属(Pt)触媒に比べて充分に低いDTA発熱ピーク温度を示していたが、水洗後においては、DTA発熱ピーク温度は著しく上昇し、貴金属触媒のDTA発熱ピーク温度(520℃程度(図27参照))よりも大きくなっていた。即ち、水洗後には、PMに対する燃焼促進特性が不十分であった。
また、焼成を行っていないゼオライトと炭酸カリウムとの混合物も、水洗前にはPMに対して優れた燃焼促進特性を示していたが、水洗後には燃焼促進特性が著しく低下していた。
温度600℃未満で焼成して得られる触媒、及び焼成を行なわずに作製した触媒において、上記のごとく水洗後においてPMに対する燃焼促進特性が著しく低下していた原因は、水洗後にカリウムが溶出したためであると考えられる。
【0168】
したがって、本例によれば、焼成時における焼成温度は600℃以上で行う必要があることがわかる。また、図30より知られるごとく、好ましくは温度700℃〜1200℃、より好ましくは、800℃〜1100℃で焼成を行うことにより、燃焼促進特性がより優れると共に耐水性にもより優れた排ガス浄化触媒が得られることがわかる。かかる排ガス浄化触媒は、実施例1及び実施例2に示すごとく、ハニカム構造体等のフィルタ基材に担持させることにより、排ガス浄化フィルタとして好適に用いることができる。そして、これを用いて実施例1及び実施例2と同様に排ガス浄化装置を構成することができる。
【0169】
(実験例6)
本例は、混合時にゼオライトに添加するアルカリ金属元素量が触媒活性に与える影響を調べる例である。
即ち、本例においては、ゼオライトに対して異なる複数の混合割合で炭酸カリウムを混合し、複数の排ガス浄化触媒を作製し、これらのPMに対する燃焼促進特性を調べる。
本例の排ガス浄化触媒は、ゼオライトと炭酸カリウムとの混合割合を変更する点を除いては、上記実験例3と同様にして作製する。
【0170】
具体的には、まず、実験例3と同様にして、LTA型で、SiO2/Al2O3比(モル比)が2.0のゼオライト(東ソー(株)製の「A−3」)を準備した。
次いで、このゼオライト100重量部に炭酸カリウムを0〜100重量部混合し、混合物を得た。
具体的には、後述の表4及び図31に示すごとく、ゼオライト100重量部に対して、炭酸カリウムをそれぞれ0重量部、1重量部、2.5重量部、5重量部、10重量部、20重量部、40重量部、60重量部、80重量部、及び100重量部混合して混合物を作製した。
これらの混合は、実験例3の上記試料E3と同様に水中で行い、上述のごとく混合液の水分を蒸発させることにより、Kの配合割合の異なる複数の混合物(上記固形分)を得た。
【0171】
次に、これらの混合物を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃に達したところで10時間保持した。これにより、各混合物の焼成を行った。次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、Kの配合割合が異なる10種類の排ガス浄化触媒を得た。
【0172】
このようにして得られた各排ガス浄化触媒について、実験例3の上記試料E3と同様にPMに対する水洗前後の燃焼促進特性を調べた。燃焼促進特性の測定は、実験例3の上記試料E3と同様にしてDTA発熱ピーク温度を測定することにより行った。その結果を表4及び図31に示す。
なお、表4には、ゼオライト100重量部に対するKの混合量(重量部)をゼオライト中のSi量(mol)に対するKの混合量「K/Si」(mol)に換算した値を示してある(表4参照)。
【0173】
【表4】
【0174】
表4及び図31より知られるごとく、混合時に、ゼオライト中のSi元素1モルに対して炭酸カリウム中のK量が0.1モル〜2.0モルとなるように、ゼオライトと炭酸カリウムとを混合した場合、即ち本例における混合時にゼオライト100重量部に対して炭酸カリウムを5重量部〜80重量部混合した場合には、水洗前後におけるDTA発熱ピーク温度が低く、燃焼促進特性が優れた排ガス浄化触媒が得られた。
これに対し、上述の0.1モル〜2.0モルという範囲から外れた場合には、特に水洗後の発熱ピーク温度が高くなっており、得られた触媒は、耐水性の低いものであった。
また、好ましくは、ゼオライト中のSi元素1モルに対する炭酸カリウム中のK量を0.2モル以上かつ1.5モル以下にすることにより、より耐水性の優れた排ガス浄化触媒が得られることがわかる(表4、図31参照)。
【0175】
以上のように、本例によれば、混合時に、ゼオライトと炭酸カリウム(アルカリ金属元素源)とを、ゼオライト中のSi元素1モルに対する炭酸カリウム中のK元素(アルカリ金属元素)量が0.1モル〜2.0モルとなるように混合することにより、より耐水性に優れ長期間安定してPMを燃焼除去できる排ガス浄化触媒が得られることがわかる。
かかる排ガス浄化触媒は、実施例1及び実施例2に示すごとく、ハニカム構造体等の基材に担持させることにより、排ガス浄化フィルタとして好適に用いることができる。そして、これを用いて実施例1及び実施例2と同様に排ガス浄化装置を構成することができる。
【0176】
(実験例7)
本例は、混合時に、ゼオライトに対して種々のアルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源を添加して排ガス浄化触媒を作製し、そのPMに対する燃焼促進特性を調べる例である。
本例の排ガス浄化触媒は、ゼオライトに混合するアルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源を変更する点を除いては、実験例3と同様にして作製する。
【0177】
具体的には、まず、実験例3と同様にして、LTA型で、SiO2/Al2O3比(モル比)が2.0のゼオライト(東ソー(株)製の「A−3」)を準備した。
次いで、このゼオライトに各種アルカリ金属元素源(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、又は炭酸セシウム)、又は各種アルカリ土類金属元素源(水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、又は炭酸バリウム)を混合した。ゼオライトと各種アルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源との混合割合は、実験例3と同様に、ゼオライト中のSi元素1モルに対するアルカリ土類金属元素源中のアルカリ金属元素量又はアルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素量が0.225モルとなる割合とした。
また、本例においても、実験例3と同様に、混合は水中で行い、混合液の水分を蒸発させることにより、ゼオライトと、各種アルカリ金属元素源又はアルカリ土類金属元素源との混合物(上記固形分)を作製した。
【0178】
次に、これらの混合物を昇温速度100℃/時間で加熱し、温度1000℃に達したところで10時間保持した。これにより、各混合物の焼成を行った。次いで、得られた焼成物をメジアン径10μm以下、かつ最大粒径100μm以下にまで粉砕し、異なるアルカリ金属元素(Na、K、Rb、又はCs)又はアルカリ土類金属元素(Mg、Ca、Sr、又はBa)を含有する8種類の排ガス浄化触媒を得た。
【0179】
このようにして得られた各排ガス浄化触媒について、実験例3の上記試料E3と同様にPMに対する水洗前後の燃焼促進特性を調べた。燃焼促進特性の測定は、実験例3の上記試料E3と同様にしてDTA発熱ピーク温度を測定することにより行った。その結果を図32に示す。なお、図32において、横軸は、混合時に添加したアルカリ金属元素源中のアルカリ金属元素種、及びアルカリ土類金属元素源中のアルカリ土類金属元素種を示し、縦軸は、DTA発熱ピーク温度を示す。
【0180】
図32より知られるごとく、各種アルカリ金属元素源、アルカリ土類金属元素源を用いて作製した排ガス浄化触媒は、いずれの場合においても、水洗前後において従来の貴金属触媒とほぼ同等又はそれよりも低いDTA発熱ピーク温度を示した。
特に、アルカリ金属元素源を用いた場合及びアルカリ土類金属元素源としてBa源(炭酸バリウム)を用いた場合には、水洗後においても、DTA発熱ピーク温度が500℃を下回っており、より優れた排ガス浄化触媒が得られることがわかる。
【0181】
このように、本例によれば、混合時に、様々なアルカリ金属元素源、アルカリ土類金属元素源を用いても、低温でかつ水分存在下でも長期間安定にPMを燃焼除去することができる排ガス浄化触媒が得られることがわかる。
かかる排ガス浄化触媒は、実施例1及び実施例2に示すごとく、ハニカム構造体等のフィルタ基材に担持させることにより、排ガス浄化フィルタとして好適に用いることができる。そして、これを用いて実施例1及び実施例2と同様に排ガス浄化装置を構成することができる。
【符号の説明】
【0182】
1 排ガス浄化装置
2 排ガス浄化フィルタ
151 フィルタ再生手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排ガス通路に設けられ、排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集する排ガス浄化フィルタと、該排ガス浄化フィルタ内の温度を所定の再生温度まで上昇させて上記排ガス浄化フィルタ内に堆積した上記粒子状物質を燃焼除去することにより、上記排ガス浄化フィルタの捕集能力の再生処理を行うフィルタ再生手段とを備える排ガス浄化装置において、
上記排ガス浄化フィルタは、多孔質体からなる基材と、該基材に担持された排ガス浄化触媒とを有し、
該排ガス浄化触媒は、ゼオライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物又はソーダライトが温度600℃以上で焼成されてなることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項2】
請求項1において、上記フィルタ再生手段は、400℃以上かつ600℃未満の上記再生温度まで上記排ガス浄化フィルタ内の温度を上昇させて上記再生処理を開始するように構成されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記フィルタ再生手段は、上記排ガス浄化フィルタの上流側から10〜20mm内部にある所定位置の温度を上記再生温度として上記再生処理を行うように構成されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記フィルタ再生手段は、上記排ガス浄化フィルタに流入する排ガスの温度を上昇させることにより上記粒子状物質の燃焼除去を行うように構成されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記排ガス浄化フィルタの上流側には酸化触媒が配置されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、上記フィルタ再生手段は、上記排ガス浄化フィルタ内における上記粒子状物質の堆積量が4g/L〜12g/Lとなったときに上記再生処理を行うように構成されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項において、上記排ガス浄化フィルタにおける上記排ガス浄化触媒は、上記混合物又はソーダライトを上記温度600℃以上で焼成した後、上記基材に担持されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項において、上記排ガス浄化フィルタにおける上記排ガス浄化触媒は、上記混合物又はソーダライトを上記基材に担持した後に温度600℃以上で焼成されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項において、上記ゼオライトは、その組成中のAl2O31モルに対するSiO2量が200モル未満であることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項において、上記混合物におけるゼオライトとしては、ソーダライトが採用されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項11】
請求項10において、上記混合物においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記ソーダライト中のSi元素1モルに対して2.25モル以下となっていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項12】
請求項10において、上記混合物においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記ソーダライト中のSi元素1モルに対して1モル以下となっていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか一項において、上記混合物におけるゼオライトとしては、ソーダライト以外のゼオライトが採用されており、上記混合物においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記ゼオライト中のSi元素1モルに対して0.1モル以上かつ2.0モル以下となっていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項において、上記混合物は、少なくとも上記アルカリ金属元素源を含有することを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項において、上記アルカリ金属元素源は、Na、K、Rb、及びCsから選ばれる1種以上を含有し、上記アルカリ土類金属元素源はMg、Ca、Sr、及びBaから選ばれる1種以上を含有することを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項において、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源は、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、酸化物、又は水酸化物であることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項において、上記混合物は、上記ゼオライトと上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを極性溶媒中で混合し、該極性溶媒を蒸発させて得られる固形分からなることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項において、上記基材は、多孔質隔壁を多角形格子状に配して軸方向に延びる多数のセルを形成した多孔質基材からなり、上記セルは排ガス流路を形成していることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項において、上記基材は、コージェライト又はSiCからなることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項1】
内燃機関の排ガス通路に設けられ、排ガス中に含まれる粒子状物質を捕集する排ガス浄化フィルタと、該排ガス浄化フィルタ内の温度を所定の再生温度まで上昇させて上記排ガス浄化フィルタ内に堆積した上記粒子状物質を燃焼除去することにより、上記排ガス浄化フィルタの捕集能力の再生処理を行うフィルタ再生手段とを備える排ガス浄化装置において、
上記排ガス浄化フィルタは、多孔質体からなる基材と、該基材に担持された排ガス浄化触媒とを有し、
該排ガス浄化触媒は、ゼオライトとアルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源との混合物又はソーダライトが温度600℃以上で焼成されてなることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項2】
請求項1において、上記フィルタ再生手段は、400℃以上かつ600℃未満の上記再生温度まで上記排ガス浄化フィルタ内の温度を上昇させて上記再生処理を開始するように構成されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記フィルタ再生手段は、上記排ガス浄化フィルタの上流側から10〜20mm内部にある所定位置の温度を上記再生温度として上記再生処理を行うように構成されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記フィルタ再生手段は、上記排ガス浄化フィルタに流入する排ガスの温度を上昇させることにより上記粒子状物質の燃焼除去を行うように構成されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記排ガス浄化フィルタの上流側には酸化触媒が配置されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、上記フィルタ再生手段は、上記排ガス浄化フィルタ内における上記粒子状物質の堆積量が4g/L〜12g/Lとなったときに上記再生処理を行うように構成されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項において、上記排ガス浄化フィルタにおける上記排ガス浄化触媒は、上記混合物又はソーダライトを上記温度600℃以上で焼成した後、上記基材に担持されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項において、上記排ガス浄化フィルタにおける上記排ガス浄化触媒は、上記混合物又はソーダライトを上記基材に担持した後に温度600℃以上で焼成されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項において、上記ゼオライトは、その組成中のAl2O31モルに対するSiO2量が200モル未満であることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項において、上記混合物におけるゼオライトとしては、ソーダライトが採用されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項11】
請求項10において、上記混合物においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記ソーダライト中のSi元素1モルに対して2.25モル以下となっていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項12】
請求項10において、上記混合物においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記ソーダライト中のSi元素1モルに対して1モル以下となっていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか一項において、上記混合物におけるゼオライトとしては、ソーダライト以外のゼオライトが採用されており、上記混合物においては、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源中に含まれるアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素との合計量が上記ゼオライト中のSi元素1モルに対して0.1モル以上かつ2.0モル以下となっていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項において、上記混合物は、少なくとも上記アルカリ金属元素源を含有することを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項において、上記アルカリ金属元素源は、Na、K、Rb、及びCsから選ばれる1種以上を含有し、上記アルカリ土類金属元素源はMg、Ca、Sr、及びBaから選ばれる1種以上を含有することを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項において、上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源は、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、酸化物、又は水酸化物であることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項において、上記混合物は、上記ゼオライトと上記アルカリ金属元素源及び/又は上記アルカリ土類金属元素源とを極性溶媒中で混合し、該極性溶媒を蒸発させて得られる固形分からなることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項において、上記基材は、多孔質隔壁を多角形格子状に配して軸方向に延びる多数のセルを形成した多孔質基材からなり、上記セルは排ガス流路を形成していることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項において、上記基材は、コージェライト又はSiCからなることを特徴とする排ガス浄化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2010−184183(P2010−184183A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29194(P2009−29194)
【出願日】平成21年2月11日(2009.2.11)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月11日(2009.2.11)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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