説明

排気ガス浄化装置

【課題】製造コストの低い排気ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【解決手段】排気ガス浄化装置1において、機関側排気通路100に接続される主排気通路2及び分岐排気通路3を備え、主排気通路2及び分岐排気通路3の排気入口2a、3aに、排気ガスを遮断可能な遮断弁4A、4Bを備え、主排気通路2内に、空気過剰雰囲気で窒素酸化物を一時的に吸着し、該吸着した窒素酸化物を昇温又は還元雰囲気で脱離する窒素酸化物吸着材5と、窒素酸化物吸着材5より排気上流側に配置され、空気ノズル61を有すると共に、空気ノズル61から供給される空気を昇温又は還元雰囲気にする吸着物質脱離手段6と、窒素酸化物吸着材5より排気下流側に配置され、空気ノズル71、燃料ノズル72及び着火ノズル73から構成される燃焼装置7と、を備え、分岐排気通路3の排気出口3aからは、機関側排気通路100からの排気ガスがそのまま排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼル機関、ガス機関、ガソリン機関あるいはガスタービン機関等の内燃機関、又は、焼却炉やボイラ等の燃焼機器、の排気ガスを浄化する装置に関し、特に空気過剰状態で通常運転を行う内燃機関等の排気通路に接続されて窒素酸化物を除去する排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関等から排出される排気ガスには、有害成分として、窒素酸化物、一酸化炭素及び炭化水素など、が含まれている。これらの物質を排気ガスより除去して、排気ガスを浄化する装置は、従来各種開発されている。
【0003】
本件出願人は、排気ガス浄化装置を開発し、既に出願している(特許文献1)。図5には、特許文献1の図1に記載の排気ガス浄化装置が示されている。図5に示されるように、本件出願人による従前の排気ガス浄化装置には、内燃機関等に接続される複数の分岐排気通路202a、202bのそれぞれに、窒素酸化物吸着材204と、吸着物質脱離手段203と、燃焼装置205と、が設けられている。内燃機関等からの排気ガスは、一部の分岐排気通路202a(又は202b)にのみ供給され、他の分岐排気通路202b(又は202a)には供給されない。そして、排気ガスの供給された分岐排気通路202aでは、窒素酸化物が窒素酸化物吸着材204に吸着されて除去されると共に、窒素酸化物吸着材204の有する酸化触媒により、一酸化炭素及び炭化水素が、二酸化炭素や水に酸化される。一方、排気ガスの供給が遮断された分岐排気通路202bでは、吸着物質脱離手段203により窒素酸化物吸着材204から窒素酸化物から脱離され、脱離された窒素酸化物が燃焼装置205により窒素に還元される。つまり、一部の分岐排気通路202aでは、窒素酸化物を窒素酸化物吸着材204に吸着させる通常運転が行われ、同時に、他の分岐排気通路202bでは、窒素酸化物を吸着材204から脱離させる再生運転が行われ、窒素酸化物吸着材204の吸着能力の維持が図られている。
【0004】
図5に示される排気ガス浄化装置は、三元触媒や、アンモニアや尿素などを用いることのない浄化装置である。三元触媒は、窒素酸化物、一酸化炭素及び炭化水素を同時に分解できる触媒であるが、空気過剰条件下では有効に作用しない。アンモニア等を用いた浄化装置は、装置自体が非常に複雑で高価であり、還元剤としてのアンモニア等の維持費やアンモニア等の供給体制の整備も必要で、問題点が多い。図5に示される排気ガス浄化装置は、上記問題点を解決している。図5に示される排気ガス浄化装置は、空気過剰条件下で運転される内燃機関等から排出される排気ガスより、有害成分(窒素酸化物、一酸化炭素、炭化水素)を除去して浄化し、しかも、その浄化能力を低下させることなく維持できる。
【特許文献1】特開2006−272115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
窒素酸化物吸着材の吸着能力を維持するため、図5に示される排気ガス浄化装置では、複数の分岐排気通路のそれぞれに、有害成分の除去に関わる手段(吸着剤、脱離手段、燃焼装置)が配置されている。このため、排気ガス浄化装置の製造コストが高くなる不具合があった。
【0006】
本発明は、製造コストの低い排気ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1発明は、内燃機関又は燃焼機器の機関側排気通路に接続される排気ガス浄化装置において、
前記機関側排気通路に接続される主排気通路及び分岐排気通路と、
前記主排気通路及び前記分岐排気通路の排気入口で、排気ガスを遮断可能な排気ガス遮断手段と、
前記主排気通路内に設けられ、空気過剰雰囲気で窒素酸化物を一時的に吸着し、該吸着した窒素酸化物を昇温又は還元雰囲気で脱離する窒素酸化物吸着材と、
前記主排気通路内で前記窒素酸化物吸着材より排気上流側に配置され、空気供給手段を有すると共に、該空気供給手段から供給される空気を昇温又は還元雰囲気にする吸着物質脱離手段と、
前記主排気通路内で前記窒素酸化物吸着材より排気下流側に配置され、空気供給手段、燃料供給手段及び着火手段から構成される燃焼装置と、
を備え、
前記分岐排気通路は、前記機関側排気通路からの排気ガスが処理されずにそのまま排出されるように構成されている、
ことを特徴とする。
【0008】
前記第1発明は、次の構成(a)、(b)を採用することが好ましい。
【0009】
(a)前記主排気通路内で前記燃焼装置の排気下流側に配置され、排気ガスに含まれる粒子状物質を捕獲可能なフィルター部材を、備えている。
【0010】
(b)前記主排気通路内で前記窒素酸化物吸着材の排気上流側かつ前記吸着物質脱離手段の排気下流側に配置され、空気過剰雰囲気で硫黄酸化物を一時的に吸着し、該吸着した硫黄酸化物を昇温又は還元雰囲気で脱離する硫黄酸化物吸着材を、備えている。
【0011】
本願の第2発明は、内燃機関又は燃焼機器の機関側排気通路に接続される排気ガス浄化装置において、
前記排気通路に接続される主排気通路及び分岐排気通路と、
前記主排気通路の排気出口及び前記分岐排気通路の排気入口で、それぞれ、排気ガスを遮断可能な排気ガス遮断手段と、
前記主排気通路内に設けられ、空気過剰雰囲気で窒素酸化物を一時的に吸着し、該吸着した窒素酸化物を昇温又は還元雰囲気で脱離する窒素酸化物吸着材と、
前記主排気通路内で前記窒素酸化物吸着材より排気下流側に配置され、空気供給手段を有すると共に、前記窒素酸化物吸着材に対応して、該空気供給手段から供給される空気を昇温又は還元雰囲気にする吸着物質脱離手段と、
前記主排気通路内で前記窒素酸化物吸着材より排気上流側に配置され、硫黄酸化物を吸着可能な硫黄酸化物吸着材と、
前記主排気通路内で前記硫黄酸化物吸着材より排気上流側に配置され、空気供給手段、燃料供給手段及び着火手段から構成される燃焼装置と、
前記主排気通路内で前記燃焼装置より排気上流側に配置され、排気ガスに含まれる粒子状物質を捕獲可能なフィルター部材と、
通常運転と再生運転とを行う制御装置と、
を備え、
前記分岐排気通路が、前記機関側排気通路からの排気ガスが処理されずにそのまま排出されるように構成されており、
前記制御装置が、前記通常運転において、前記排気ガス遮断手段により前記主排気通路の排気出口を開放かつ前記分岐排気通路の排気入口を閉鎖して、排気ガスを主排気通路に沿って流すようにし、
前記制御装置が、前記再生運転において、前記排気ガス遮断手段により前記主排気通路の排気出口を閉鎖かつ前記分岐排気通路の排気入口を開放し、前記吸着物質脱離手段及び前記燃焼装置を作動させて、前記排気ガス遮断手段及び前記燃焼装置の空気供給手段が発生させた空気流を、前記主排気通路内での排気ガスの流れ方向とは逆方向に流すようにする、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願の第1発明によれば、排気ガスをそのまま流すための分岐排気通路が設けられているので、主排気通路への排気ガスの流入を遮断して、主排気通路内で窒素酸化物吸着材から窒素酸化物を脱離させることができる。このため、排気ガス浄化装置は、窒素酸化物の吸着、脱離及び還元に係る、窒素酸化物吸着材5、吸着物質脱離手段及び燃焼装置を、1つの排気通路(主排気通路)にのみ配置しながら、窒素酸化物の吸着能力を維持できる。したがって、製造コストの低い排気ガス浄化装置が提供される。
【0013】
更に、構成(a)によれば、排気ガス浄化装置は、フィルター部材を備えることより、粒子状物質を排気ガスより除去できる。また、吸着物質脱離手段の作動により、フィルター部材の捕獲能力を維持できる。
【0014】
更に、構成(b)によれば、排気ガス浄化装置は、窒素酸化物吸着材の排気上流側に、硫黄酸化物吸着材を備えることより、窒素酸化物吸着材への硫黄酸化物の流入を防止できる。また、吸着物質脱離手段の作動により、硫黄酸化物吸着材の硫黄酸化物の吸着能力を維持できる。しかも、硫黄酸化物が脱離したときは、窒素酸化物吸着材も昇温又は還元雰囲気に置かれるため、窒素酸化物吸着材に硫黄酸化物が付着しない。つまり、窒素酸化物吸着材の硫黄酸化物の被毒による性能劣化が防止される。
【0015】
本願の第2発明によれば、排気ガスをそのまま流すための分岐排気通路が設けられているので、主排気通路への排気ガスの流入を遮断して、主排気通路内で窒素酸化物吸着材から窒素酸化物を脱離させることができる。このため、排気ガス浄化装置は、窒素酸化物の吸着、脱離及び還元に係る、窒素酸化物吸着材5、吸着物質脱離手段及び燃焼装置を、1つの排気通路(主排気通路)にのみ配置しながら、窒素酸化物の吸着能力を維持できる。したがって、製造コストの低い排気ガス浄化装置が提供される。
【0016】
更に、排気ガス浄化装置は、フィルター部材を備えることより、粒子状物質を排気ガスより除去できる。また、吸着物質脱離手段の作動により、フィルター部材の捕獲能力を維持できる。
【0017】
更に、排気ガス浄化装置は、窒素酸化物吸着材の排気上流側に、硫黄酸化物吸着材を備えることより、窒素酸化物吸着材への硫黄酸化物の流入を防止できる。また、吸着物質脱離手段の作動により、硫黄酸化物吸着材の硫黄酸化物の吸着能力を維持できる。特に、吸着物質脱離手段が作動するときに、排気上流側へ向けて空気流が形成され、窒素酸化物吸着材に硫黄酸化物が流入しない。つまり、窒素酸化物吸着材の硫黄酸化物の被毒による性能劣化が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[第1実施形態]
図1を用いて、第1実施形態の排気ガス浄化装置1が説明される。排気ガス浄化装置1は、内燃機関又は燃焼機器の機関側排気通路100に接続される装置である。
【0019】
内燃機関又は燃焼機器は、空気及び燃料の混合気体を燃焼させて、排気ガスを生成する。排気ガスには、窒素酸化物(N0x)や、未燃物としての一酸化炭素(C0)や炭化水素(HC)、などが含まれている。機関側排気通路100は、内燃機関又は燃焼機器が備える排気通路である。内燃機関又は燃焼機器で生成された排気ガスは、機関側排気通路100より排出される。
【0020】
図1には、排気ガスの通路として、機関側排気通路100と、主排気通路2及び分岐排気通路3と、合流排気通路110と、が示されている。主排気通路2及び分岐排気通路3は、排気ガス浄化装置1が備える排気通路である。機関側排気通路100の排気出口100bは、主排気通路2の排気入口2a及び分岐排気通路3の排気入口3aに接続されている。主排気通路2の排気出口2b及び分岐排気通路3の排気出口3bは、合流排気通路110aに接続されている。これらの排気通路100、2、3及び110は、外気から遮断された通路であり、例えば、パイプで構成される。なお、合流排気通路110は、排気ガス浄化装置1が備える排気通路であっても、内燃機関又は燃焼機器の排気通路であってもよい。
【0021】
機関側排気通路100からの排気ガスは、主排気通路2内では、排気入口2aから排気出口2bへと流れ、分岐排気通路3内では、排気入口3aから排気出口3bへと流れる。したがって、以下では、主排気通路2について、排気入口2aから排気出口2bへと向かう方向が、排気方向F2である。同じく、分岐排気通路3について、排気入口3aから排気出口3bへと向かう方向が、排気方向F3である。
【0022】
排気ガス浄化装置1は、制御装置(電子コントロールユニット)10を備えている。制御装置10は、排気ガス浄化装置1に備える各装置(後述)を制御する。
【0023】
排気ガス浄化装置1は、主排気通路2及び分岐排気通路3の排気入口2a、3aに、排気ガスを遮断可能な排気ガス遮断手段を備えている。
【0024】
排気ガス遮断手段として、具体的には、排気入口2a、3aのそれぞれに、ガスの遮断弁4A、4Bが設けられている。遮断弁4Aは、機関側排気通路100から主排気通路2への排気ガスの流入を、遮断又は許容する。同じく、遮断弁4Bは、機関側排気通路100から分岐排気通路3への排気ガスの流入を、遮断又は許容する。遮断弁4A、4Bにおける遮断及び許容の切替えは、制御装置10の制御により行われる。なお、排気ガス遮断手段は、機関側排気通路100に連通する排気ガスの流路を、主排気通路2及び分岐排気通路3の間で択一的に切替える単一の切替弁でもよい。この切替弁は、主排気通路2及び分岐排気通路3の排気入口2a、3aに配置される。
【0025】
排気ガス浄化装置1は、主排気通路2内に、窒素酸化物吸着材5と、吸着物質脱離手段6と、燃焼装置7と、を備えている。排気方向F2の上流側から下流側に向けて、吸着物質脱離手段6、窒素酸化物吸着材5、燃焼装置7が、順に配置されている。
【0026】
窒素酸化物吸着材5は、空気過剰雰囲気で窒素酸化物を一時的に吸着し、該吸着した窒素酸化物を昇温又は還元雰囲気で脱離する材料である。
【0027】
ここで、空気過剰とは、空気(酸素)及び燃料の混合気体において、空気過剰率(供給された混合気体の空燃比を理想空燃比で割った値)が、1より大きい状態を指す。また、空気過剰率が1より小さい状態は、燃料過剰の状態である。還元雰囲気とは、燃焼(酸化及び還元反応)が発生した際に、還元剤が過剰で酸素が不足する状態にあるガスを指す。
【0028】
また、窒素酸化物吸着材5から窒素酸化物が脱離する場合には、次の3つの場合がある。脱離の第1の場合は、窒素酸化物吸着材5が、昇温雰囲気に置かれた場合である。脱離の第2の場合は、窒素酸化物吸着材5が、還元雰囲気に置かれた場合である。脱離の第3の場合は、窒素酸化物吸着材5が、昇温雰囲気かつ還元雰囲気に置かれた場合、である。
【0029】
窒素酸化物吸着材5は、酸化作用を有する触媒成分も有している。
【0030】
吸着物質脱離手段6は、空気供給手段を有すると共に、該空気供給手段から供給される空気を昇温又は還元雰囲気にする脱離手段である。
【0031】
吸着物質脱離手段6は、本実施形態では、燃焼装置である。燃焼装置は、空気供給手段と、燃料供給手段と、着火手段と、で構成される。そして、吸着物質脱離手段6は、燃料過剰条件下で燃焼反応を発生させることで、還元剤としての未燃物(一酸化炭素及び炭化水素)を発生させると共に、燃焼反応の熱により昇温を実現する。
【0032】
吸着物質脱離手段6の空気供給手段は、空気供給装置11と、空気調量装置12と、空気ノズル61と、を備えている。空気供給装置11は、外気を取り込んで、空気調量装置12に供給する。空気調量装置12は、供給された空気(外気)を、空気量を調整した後、空気ノズル61に供給する。空気ノズル61は、主排気通路2内の領域A6に開口したノズルである。空気ノズル61に供給された空気は、主排気通路2内に噴射される。ここで、制御装置10が、空気調量装置12を制御して、空気ノズル61に供給される空気量を調整する。
【0033】
吸着物質脱離手段6の燃料供給手段は、制御装置10と、燃料タンク13と、燃料調量装置14と、燃料ノズル62と、を備えている。燃料タンク13には、燃料が蓄えられている。燃料調量装置14は、燃料タンク13から供給される燃料を、燃料の量を調整した後、燃料ノズル62に供給する。燃料ノズル62は、主排気通路2内の領域A6に開口したノズルである。領域A6は、窒素酸化物吸着材5の排気上流側に位置している。燃料ノズル62に供給された燃料は、主排気通路2内に噴射される。また、制御装置10は、燃料調量装置14を制御して、燃料ノズル62に供給される燃料の量を調整する。
【0034】
吸着物質脱離手段6の着火手段は、点火プラグ63である。点火プラグ63は、主排気通路2内で、着火を行う装置である。ここで、空気ノズル61から噴射された空気と、燃料ノズル62から噴射された燃料とにより、主排気通路2内の領域A6に、混合ガスが生成されている。点火プラグ63は、この混合ガスを着火して、燃焼させる。
【0035】
吸着物質脱離手段6は、燃焼装置であるので、吸着物質脱離手段6の排気下流側に、昇温及び還元雰囲気を発生させる。昇温雰囲気は、混合ガスの燃焼の熱により発生する。還元雰囲気は、混合ガスの燃焼により未燃物(一酸化炭素、炭化水素)が生成されることにより、発生する。したがって、吸着物質脱離手段6は、空気供給手段を有すると共に、該空気供給手段から供給される空気を昇温又は還元雰囲気にする手段である。
【0036】
なお、主排気通路2における吸着物質脱離手段6の位置は、正確には、空気ノズル61、燃焼ノズル62及び点火プラグ63の位置を指している。空気ノズル61、燃焼ノズル62及び点火プラグ63が、吸着物質脱離手段6において、主排気通路2に直接係りのある要素である。
【0037】
なお、吸着物質脱離手段6は、上述したような燃焼装置に限定されない。吸着物質脱離手段6は、空気供給手段を備え、昇温又は還元雰囲気のいずれか一方を提供できれば良い。空気供給手段は、排気入口2aが閉鎖された際に主排気通路2内で送風するために必要である。
【0038】
燃焼装置7は、空気供給手段と、燃料供給手段と、点火プラグ63と、で構成される。燃焼装置7は、空気過剰条件で運転され、未反応のまま窒素酸化物吸着材5を通過した還元剤(未燃物)を酸化して除去する。なお、燃焼装置7が発生させる燃焼火炎内には局所的に燃料過剰の燃焼領域が存在するので、この燃料過剰の燃焼領域で窒素酸化物が還元されて除去される。特に、燃焼装置7が発生させる燃焼領域が、燃焼過剰燃焼領域と空気過剰燃焼領域とに明確に分離された所謂2段燃焼形態である場合、窒素酸化物及び未燃物の除去作用が効果的に実現される。更に、窒素酸化物吸着材5に含まれる酸化触媒成分が、Pt、Rh、Pdなどの貴金属である場合、窒素酸化物吸着材5は、還元雰囲気で窒素酸化物を還元する還元触媒成分をも有することになる。この場合、窒素酸化物は、窒素酸化物吸着材5から脱離すると大部分が還元されて除去されるため、窒素酸化物の除去作用がより一層効果的に実現される。
【0039】
燃焼装置7の空気供給手段も、吸着物質脱離手段6の空気供給手段と同様である。燃焼装置7の空気供給手段は、空気供給装置11と、空気調量装置12と、空気ノズル71と、を備えている。つまり、吸着物質脱離手段6の空気供給手段の空気ノズル61が、燃焼装置7の空気供給手段では、空気ノズル71に置換されている。なお、空気ノズル61は、主排気通路2内の領域A7に開口している。領域A7は、窒素酸化物吸着材5の排気下流側に位置している。
【0040】
燃焼装置7の燃料供給手段も、吸着物質脱離手段6の燃料供給手段と同様である。燃焼装置7の燃料供給手段は、燃料タンク13と、燃料調量装置14と、燃料ノズル72と、を備えている。つまり、吸着物質脱離手段6の空気供給手段の燃料ノズル62が、燃焼装置7の燃料供給手段では、燃料ノズル72に置換されている。なお、燃料ノズル62は、主排気通路2内の領域A7に開口している。
【0041】
燃焼装置7の着火手段も、吸着物質脱離手段6の着火手段と同様である。燃焼装置7の着火手段は、点火プラグ73であり、主排気通路2内の領域A7で着火を行う装置である。
【0042】
一方、排気ガス浄化装置1は、分岐排気通路3内には、排気ガスの処理に係る装置を、備えていない。このため、機関側排気通路100から分岐排気通路3に供給された排気ガスは、分岐排気通路3の排気出口3bから、そのまま排出される。
【0043】
[第1実施形態の作動]
次に、排気ガス浄化装置1の作動が説明される。ここで、制御装置10が、排気ガス浄化装置1を作動させる。制御装置10が排気ガス浄化装置1を作動させる運転には、通常運転と、再生運転と、がある。
【0044】
通常運転は、内燃機関等の機関側排気通路100から排出される排気ガスを主排気通路2に通し、該排気ガスに含まれる窒素酸化物を窒素酸化物吸着材5に吸着させる運転を意味する。通常運転では、制御装置10は、遮断弁4Aを開放すると共に、遮断弁4Bを閉鎖する。このとき、制御装置10は、吸着物質脱離手段6及び燃焼装置7を作動させない。
【0045】
再生運転は、通常運転により窒素酸化物吸着材5に吸着した窒素酸化物を、窒素酸化物吸着材5から脱離させた後、窒素に還元して無害化する運転を意味する。再生運転では、制御装置10は、遮断弁4Aを閉鎖すると共に、遮断弁4Bを開放する。また、制御装置10は、吸着物質脱離手段6及び燃焼装置7を作動させる。
【0046】
排気ガス浄化装置1に接続される内燃機関等の作動が開始されると、それに応じて、制御装置10は、排気ガス浄化装置1の作動を開始させる。このとき、制御装置10は、通常運転を開始する。遮断弁4Aが開放されることにより、排気ガスは、主排気通路2に供給され、排出方向F2に沿って主排気通路2内を流れる。一方、遮断弁4Bが閉鎖されることにより、排気ガスは、分岐排気通路3内には流入しない。
【0047】
通常運転において、排気ガスに含まれる窒素酸化物は、窒素酸化物吸着材5に吸着される。そして、排気ガスより窒素酸化物が除去される。また、窒素酸化物吸着材5が酸化触媒成分を有していることにより、排気ガスに含まれる一酸化炭素及び炭化水素が酸化される。一酸化炭素及び炭化水素は、二酸化炭素及び水に酸化されて、無害化される。そして、排気ガスより、一酸化炭素及び炭化水素が除去される。
【0048】
窒素酸化物吸着材5に窒素酸化物が吸着されるにつれて、窒素酸化物吸着材5の吸着能力が低下する。窒素酸化物吸着材5の吸着能力を維持するには、窒素酸化物吸着材5より窒素酸化物を脱離させる必要がある。
【0049】
制御装置10は、窒素酸化物吸着材5への窒素酸化物の吸着量が所定量に達するまで、もしくは、所定の一定時間の間、通常運転を行う。通常運転の実行される時間を、通常運転時間とする。
【0050】
制御装置10は、通常運転の開始時から通常運転時間が経過すると、通常運転を中断して、再生運転を開始する。遮断弁4Aが閉鎖されることにより、排気ガスは、主排気通路2内には流入しない。一方、遮断弁4Bが開放されることにより、排気ガスは、分岐排気通路3に供給され、排出方向F3に沿って分岐排気通路3内を流れる。
【0051】
再生運転において、制御装置10は、燃料過剰条件で吸着物質脱離手段6を作動させる。吸着物質脱離手段6の作動により、領域A6で、燃料、空気の混合ガスが生成された後、この混合ガスが燃焼される。混合ガスが燃焼されて生成される燃焼後ガスには、未燃物として、一酸化炭素及び炭化水素が含まれている。一酸化炭素及び炭化水素は、窒素酸化物の還元剤として働く。また、燃焼後ガスは、燃焼の熱のため、昇温されている。この燃焼後ガスは、空気ノズル61で空気が噴射されることにより、排気下流側へと送られる。そして、この燃焼後ガスにより、窒素酸化物吸着材5の周囲に、還元雰囲気及び昇温雰囲気が発生する。
【0052】
窒素酸化物吸着材5が還元雰囲気及び昇温雰囲気に置かれるので、窒素酸化物吸着材5に吸着した窒素酸化物が、窒素酸化物吸着材5より脱離する。ここで、窒素酸化物吸着材5の材料が貴金属であるPt等の場合、脱離した窒素酸化物は、直ちに、窒素に還元される。
【0053】
制御装置10は、吸着物質脱離手段6の作動と同時もしくは作動後に、燃料過剰条件で燃焼装置7を作動させる。燃焼装置7の作動により、領域A7で、燃料、空気の混合ガスが生成された後、この混合ガスが燃焼される。
【0054】
ここで、窒素酸化物等の含まれた燃焼後ガスが、領域A7を通過する。窒素酸化物等の含まれた燃焼後ガスも、領域A7で燃焼される。領域A7の燃料過剰燃焼領域で、燃焼後ガスに含まれる窒素酸化物等が、燃料及び未燃物(一酸化炭素及び炭化水素)を還元剤として還元され、窒素に変化する。また、領域A7の空気過剰燃焼領域で、未燃物は、燃焼反応により酸化されて、二酸化炭素及び水に変化する。
【0055】
主排気通路2の排気出口2bからは、2度の燃焼を経たガスが排出されるが、このガス中からは、窒素酸化物が除去されていると共に、未燃物である一酸化炭素及び炭化水素も除去されている。つまり、有害物質の除去されたガスが、主排気通路2より排出される。
【0056】
制御装置10は、窒素酸化物吸着材5への窒素酸化物の吸着量が0(もしくは微小な一定値)になるまで、もしくは、所定の一定時間の間、再生運転を行う。再生運転の実行される時間を、再生運転時間とする。再生運転の間は、制御装置10は、吸着物質脱離手段6及び燃焼装置7の作動を継続する。この再生運転により、窒素酸化物吸着材5より窒素酸化物が除去されて、窒素酸化物吸着材5の吸着性能が再生される。制御装置10は、通常運転の開始時から再生運転時間が経過すると、再生運転を中断して、再び、通常運転を開始する。以後、制御装置10は、通常運転と、再生運転とを、交互に繰り返す。
【0057】
ここで、再生運転の間は、排気ガスは、分岐排気通路3を通じて排出される。再生運転の間は、排気ガスに含まれる窒素酸化物が除去されない状態で、排気ガスが、排気ガス浄化装置1より排出される。
【0058】
そこで、通常運転時間に対する再生運転時間の比が、小さくなるように設定されている。通常運転時間は、窒素酸化物吸着材5が一定以上の吸着性能を発揮できる時間として設定されている。このため、排気ガス浄化装置1の作動条件を変更しても、通常運転時間の占める割合(通常運転時間/(通常運転時間+再生運転時間))を短縮することはできない。一方、再生運転時間は、窒素酸化物吸着材5が再生されるのに要する時間として設定されている。窒素酸化物吸着材5の再生の速度は、吸着物質脱離手段6及び燃焼装置7の作動条件(単位時間当たりの燃料及び空気の噴射量の設定など)の変更によって、短縮させることが可能である。そして、通常運転時間に対する再生運転時間の比を小さくすることで、排気ガスに含まれる窒素酸化物の低減率が、高く維持される。
【0059】
[第1実施形態の効果]
第1実施形態の排気ガス浄化装置1は、次のような効果を発揮する。
【0060】
排気ガスをそのまま流すための分岐排気通路3が設けられているので、主排気通路2への排気ガスの流入を遮断して、主排気通路2内で窒素酸化物吸着材5から窒素酸化物を脱離させることができる。このため、排気ガス浄化装置1は、窒素酸化物の吸着、脱離及び還元に係る、窒素酸化物吸着材5、吸着物質脱離手段6及び燃焼装置7を、1つの排気通路(主排気通路2)にのみ配置しながら、窒素酸化物の吸着能力を維持できる。したがって、製造コストの低い排気ガス浄化装置が提供される。
【0061】
[第2実施形態]
図2を用いて、第2実施形態の排気ガス浄化装置1が説明される。第2実施形態の排気ガス浄化装置1には、第1実施形態の排気ガス浄化装置1に、更に、フィルター部材8が備えられている。
【0062】
フィルター部材8は、主排気通路2内で、燃焼装置7の排気下流側に配置されている。
【0063】
フィルター部材8は、排気ガスに含まれる粒子状物質を捕獲可能な部材である。粒子状物質は、燃料の不完全燃焼によって発生する、炭素、炭化水素、硝酸塩類の微粒子などである。
【0064】
[第2実施形態の作動]
次に、排気ガス浄化装置1の作動において、フィルター部材8に係る点が説明される。
【0065】
第2実施形態では、制御装置10が排気ガス浄化装置1を作動させる運転に、通常運転及び再生運転に加えて、フィルター再生運転及びフィルター通常運転がある。
【0066】
フィルター再生運転は、フィルター部材8に捕獲された粒子状物質を酸化して除去する運転を意味する。フィルター再生運転では、制御装置10は、燃焼装置7を作動させる。燃焼装置7が作動すると、領域A7及び領域A7の排気下流側で燃焼反応が発生する。この燃焼反応により、フィルター部材8に捕獲された粒子状物質(炭素)が、酸化されて、除去される。粒子状物質を酸化させるため、フィルター再生運転においても、燃焼装置7は、空気過剰の混合ガスを生成して、燃焼させる。
【0067】
フィルター通常運転は、フィルター再生運転の実行されないときの運転を指している。つまり、フィルター通常運転では、制御装置10は、燃焼装置7を作動させない。
【0068】
制御装置10は、フィルター部材8による粒子状物質の捕獲量が所定量に達するまで、もしくは、所定の一定時間の間、フィルター通常運転を行う。フィルター通常運転の実行される時間を、フィルター通常運転時間とする。
【0069】
捕獲量の検出は、フィルター部材8の捕獲量の検出手段を設けることで可能である。例えば、フィルター部材8の排気上流側及び排気下流側に、主排気通路2内の圧力を検出する圧力センサが、捕獲量の検出手段として設けられる。捕獲量に応じて、フィルター部材8の目詰まりの程度が変化し、フィルター部材8の排気上流側と排気下流側との間の圧力差の大きさが変化する。このため、この圧力差の大きさより、捕獲量を特定することが可能である。
【0070】
フィルター再生運転及びフィルター通常運転は、通常運転及び再生運転とは、異なるタイミングに実施される。なお、フィルター再生運転及び再生運転は共に空気過剰条件での運転であるので、通常運転及び再生運転が同一のタイミングで実施されても良い。
【0071】
[第2実施形態の効果]
第2実施形態の排気ガス浄化装置1は、更に、次のような効果を発揮する。
【0072】
排気ガス浄化装置1は、フィルター部材8を備えることより、粒子状物質を排気ガスより除去できる。また、吸着物質脱離手段6の作動により、フィルター部材8の捕獲能力を維持できる。
【0073】
[第3実施形態]
図3を用いて、第3実施形態の排気ガス浄化装置1が説明される。第3実施形態の排気ガス浄化装置1には、第2実施形態の排気ガス浄化装置1に、更に、硫黄酸化物吸着材9が備えられている。
【0074】
燃料に硫黄が含まれている場合、排気ガスに硫黄酸化物が含まれる。硫黄酸化物吸着材9は、排気ガスに含まれる硫黄酸化物の除去に係る。
【0075】
硫黄酸化物吸着材9は、主排気通路2内で、窒素酸化物吸着材5の排気上流側かつ吸着物質脱離手段6の排気下流側に配置されている。
【0076】
硫黄酸化物吸着材9は、空気過剰雰囲気で硫黄酸化物を一時的に吸着し、該吸着した硫黄酸化物を昇温又は還元雰囲気で脱離する材料である。硫黄酸化物吸着材9における吸着及び脱離の作用は、窒素酸化物吸着材5における吸着及び脱離の作用と同様である。
【0077】
[第3実施形態の作動]
次に、排気ガス浄化装置1の作動において、硫黄酸化物吸着材9に係る点が説明される。
【0078】
通常運転において、排気ガスに含まれる窒素酸化物は、窒素酸化物吸着材5に吸着される。また、排気ガスに含まれる硫黄酸化物は、硫黄酸化物吸着材9に吸着される。そして、排気ガスより硫黄酸化物が除去される。
【0079】
再生運転において、制御装置10は、吸着物質脱離手段6を作動させる。吸着物質脱離手段6の作動により、燃焼後ガスが、領域A6の排気下流側へと送られる。この燃焼後ガスにより、窒素酸化物吸着材5の周囲に、還元雰囲気及び昇温雰囲気が発生すると共に、硫黄酸化物吸着材9の周囲に、還元雰囲気及び昇温雰囲気が発生する。
【0080】
硫黄酸化物吸着材9が還元雰囲気又は昇温雰囲気に置かれると、硫黄酸化物吸着材9に吸着した硫黄酸化物が、硫黄酸化物吸着材9より脱離する。このため、窒素酸化物吸着材5の再生運転において、硫黄酸化物吸着材9の吸着能力も、再生される。ここで、窒素酸化物吸着材5も昇温又は還元雰囲気に置かれているため、窒素酸化物吸着材5への硫黄酸化物の吸着が防止されている。
【0081】
[第3実施形態の効果]
第3実施形態の排気ガス浄化装置1は、更に、次のような効果を発揮する。
【0082】
排気ガス浄化装置1は、窒素酸化物吸着材5の排気上流側に、硫黄酸化物吸着材9を備えることより、窒素酸化物吸着材5への硫黄酸化物の流入を防止できる。また、吸着物質脱離手段5の作動により、硫黄酸化物吸着材9の硫黄酸化物の吸着能力を維持できる。しかも、硫黄酸化物が脱離したときは、窒素酸化物吸着材5も昇温又は還元雰囲気に置かれるため、窒素酸化物吸着材5に硫黄酸化物が付着しない。つまり、窒素酸化物吸着材5の硫黄酸化物の被毒による性能劣化が防止される。
【0083】
[第4実施形態]
図4を用いて、第4実施形態の排気ガス浄化装置1が説明される。第4実施形態の排気ガス浄化装置1は、第3実施形態の排気ガス浄化装置1と比べて、装置構成の点では同一であるが、配置構成の点で相違している。第1の相違点は、排気ガス遮断手段の配置構成である。第2の相違点は、主排気通路2内における、窒素酸化物吸着材5、吸着物質脱離手段6、燃焼装置7、フィルター部材8及び硫黄酸化物吸着材9の配置構成である。また、配置構成の変更により、制御装置10の制御内容が変更される。したがって、第3の相違点は、制御装置10の制御内容である。
【0084】
第4実施形態では、排気ガス遮断手段である遮断弁4A、4Bが、主排気通路2の排気出口2b、分岐排気通路3の排気入口3aのそれぞれに、設けられている。
【0085】
第4実施形態では、主排気通路2内に、排気方向F2に沿って(排気上流側から下流側に向けて)、フィルター部材8、燃焼装置7、硫黄酸化物吸着材9、窒素酸化物吸着材5、吸着物質脱離手段6及び遮断弁4Aが、順に配置されている。
【0086】
[第4実施形態の作動]
次に、第4実施形態の排気ガス浄化装置1の作動が説明される。ここで、第4実施形態の排気ガス浄化装置1は、窒素酸化物吸着材5、硫黄酸化物吸着材9及びフィルター部材8を備えている。このため、第4実施形態の制御装置10は、通常運転及び再生運転を繰り返し行うと共に、フィルター通常運転及びフィルター再生運転を繰り返し行う。
【0087】
特に、第4実施形態では、通常運転と再生運転とで、主排気通路2内において、窒素酸化物吸着材5及び硫黄酸化物吸着材9を通過する空気流の方向が、逆方向に変化する。これに対して、第1〜第3実施形態では、窒素酸化物吸着材5及び硫黄酸化物吸着材9を通過する空気流の方向は、常に同じである。
【0088】
第4実施形態の通常運転では、ガスの流れる経路は、第1〜第3実施形態と同様である。通常運転では、制御装置10は、遮断弁4Aを開放すると共に、遮断弁4Bを閉鎖する。遮断弁4Aが開放されることにより、機関側排気通路100からの排気ガスは、主排気通路2内を排出方向F2に沿って流れた後、合流排気通路110へと排出される。一方、遮断弁4Bが閉鎖されることにより、排気ガスは、分岐排気通路3内には流入しない。
【0089】
通常運転において、排気ガスは、主排気通路2内で、フィルター部材8、硫黄酸化物吸着材9及び窒素酸化物吸着材5を、順に通過する。このため、排気ガス中の硫黄酸化物が硫黄酸化物吸着材9により除去される。排気ガス中の粒子状物質がフィルター部材8により除去される。排気ガス中の窒素酸化物が窒素酸化物吸着材5により除去される。
【0090】
第4実施形態の再生運転では、ガスの流れる経路が、第1〜第3実施形態とは相違する。再生運転では、制御装置10は、遮断弁4Aを閉鎖すると共に、遮断弁4Bを開放する。このとき、遮断弁4Bが開放されることにより、機関側排気通路100からの排気ガスは、主排気通路2内を排出方向F3に沿って流れた後、合流排気通路110へと排出される。一方、遮断弁4Aが遮断されているが、遮断弁4Bは主排気通路2の排気出口2bを開閉するものである。主排気通路2の排気入口2aは開放されている。したがって、吸着物質脱離手段6又は燃焼装置7が作動すると、吸着物質脱離手段6及び燃焼装置7は空気供給手段を備えているため、主排気通路2内に、排気方向F2(排気ガスの流れ方向)とは逆方向FRの空気流が発生する。そして、吸着物質脱離手段6及び燃焼装置7で生成されたガスが、主排気通路2内を逆方向FRに沿って流され、排気出口100bで排気ガスと合流し、分岐排気通路3内を排気方向F3に沿って流された後、合流排気通路110へと排出される。
【0091】
再生運転において、吸着物質脱離手段6により領域A6で生成された燃焼後ガスは、主排気通路2内で、逆方向FRに沿って、窒素酸化物吸着材5、硫黄酸化物吸着材9、燃焼装置7及びフィルター部材8を、順に通過する。このため、窒素酸化物は、窒素酸化物吸着材5から脱離した後、燃焼装置7により窒素に還元されて、無害化される。硫黄酸化物は、硫黄酸化物吸着材9から脱離する。このようにして、窒素酸化物吸着材5及び硫黄酸化物吸着材9が、再生される。
【0092】
フィルター再生運転において、燃焼装置7により領域A7で生成された空気過剰の燃焼後ガスは、主排気通路2内で、逆方向FRに沿って流されて、フィルター部材8を通過する。そして、フィルター部材8に捕獲された粒子状物質が、燃焼されて、無害化される。このようにして、フィルター部材8が、再生される。
【0093】
第4実施形態においても、第1〜第3実施形態と同様に、通常運転時間に対する再生運転時間の比は、小さくなるように設定されている。
【0094】
[第4実施形態の効果]
第4実施形態の排気ガス浄化装置1は、次のような効果を発揮する。
【0095】
排気ガスをそのまま流すための分岐排気通路3が設けられているので、主排気通路2への排気ガスの流入を遮断して、主排気通路2内で窒素酸化物吸着材5から窒素酸化物を脱離させることができる。このため、排気ガス浄化装置1は、窒素酸化物の吸着、脱離及び還元に係る、窒素酸化物吸着材5、吸着物質脱離手段6及び燃焼装置7を、1つの排気通路(主排気通路2)にのみ配置しながら、窒素酸化物の吸着能力を維持できる。したがって、製造コストの低い排気ガス浄化装置が提供される。
【0096】
更に、排気ガス浄化装置1は、フィルター部材8を備えることより、粒子状物質を排気ガスより除去できる。また、燃焼装置7の作動により、フィルター部材8の捕獲能力を維持できる。
【0097】
更に、排気ガス浄化装置1は、窒素酸化物吸着材5の排気上流側に、硫黄酸化物吸着材9を備えることより、窒素酸化物吸着材5への硫黄酸化物の流入を防止できる。また、吸着物質脱離手段6の作動により、硫黄酸化物吸着材9の硫黄酸化物の吸着能力を維持できる。特に、吸着物質脱離手段6が作動するときに、排気上流側へ向けて空気流(逆方向FRへの燃焼後ガスの流れ)が形成され、窒素酸化物吸着材5に硫黄酸化物が流入しない。つまり、窒素酸化物吸着材5の硫黄酸化物の被毒による性能劣化が防止される。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、ディーゼル機関、ガス機関、ガソリン機関あるいはガスタービン機関等の内燃機関、又は、焼却炉やボイラ等の燃焼機器、の排気ガスを浄化する装置に、適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】排気ガス浄化装置の概略図である(第1実施形態)。
【図2】排気ガス浄化装置の概略図である(第2実施形態)。
【図3】排気ガス浄化装置の概略図である(第3実施形態)。
【図4】排気ガス浄化装置の概略図である(第4実施形態)。
【図5】従来の排気ガス浄化装置の概略図である。
【符号の説明】
【0100】
1 排気ガス浄化装置
2 主排気通路
2a 排気入口
2b 排気出口
3 分岐排気通路
3a 排気入口
3b 排気出口
4A、4B 遮断弁
5 窒素酸化物吸着材
6 吸着物質脱離手段
7 燃焼装置
8 フィルター部材
9 硫黄酸化物吸着材
10 制御装置
61、71 空気ノズル(空気供給手段の一部)
62、72 燃料ノズル(燃料供給手段の一部)
63、73 点火プラグ(着火装置)
100 機関側排気通路
100b 排気出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関又は燃焼機器の機関側排気通路に接続される排気ガス浄化装置において、
前記機関側排気通路に接続される主排気通路及び分岐排気通路と、
前記主排気通路及び前記分岐排気通路の排気入口で、排気ガスを遮断可能な排気ガス遮断手段と、
前記主排気通路内に設けられ、空気過剰雰囲気で窒素酸化物を一時的に吸着し、該吸着した窒素酸化物を昇温又は還元雰囲気で脱離する窒素酸化物吸着材と、
前記主排気通路内で前記窒素酸化物吸着材より排気上流側に配置され、空気供給手段を有すると共に、該空気供給手段から供給される空気を昇温又は還元雰囲気にする吸着物質脱離手段と、
前記主排気通路内で前記窒素酸化物吸着材より排気下流側に配置され、空気供給手段、燃料供給手段及び着火手段から構成される燃焼装置と、
を備え、
前記分岐排気通路は、前記機関側排気通路からの排気ガスが処理されずにそのまま排出されるように構成されている、
ことを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項2】
請求項1記載の排気ガス浄化装置において、
前記主排気通路内で前記燃焼装置の排気下流側に配置され、排気ガスに含まれる粒子状物質を捕獲可能なフィルター部材を、備えている、
排気ガス浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の排気ガス浄化装置において、
前記主排気通路内で前記窒素酸化物吸着材の排気上流側かつ前記吸着物質脱離手段の排気下流側に配置され、空気過剰雰囲気で硫黄酸化物を一時的に吸着し、該吸着した硫黄酸化物を昇温又は還元雰囲気で脱離する硫黄酸化物吸着材を、備えている、
排気ガス浄化装置。
【請求項4】
内燃機関又は燃焼機器の機関側排気通路に接続される排気ガス浄化装置において、
前記排気通路に接続される主排気通路及び分岐排気通路と、
前記主排気通路の排気出口及び前記分岐排気通路の排気入口で、それぞれ、排気ガスを遮断可能な排気ガス遮断手段と、
前記主排気通路内に設けられ、空気過剰雰囲気で窒素酸化物を一時的に吸着し、該吸着した窒素酸化物を昇温又は還元雰囲気で脱離する窒素酸化物吸着材と、
前記主排気通路内で前記窒素酸化物吸着材より排気下流側に配置され、空気供給手段を有すると共に、前記窒素酸化物吸着材に対応して、該空気供給手段から供給される空気を昇温又は還元雰囲気にする吸着物質脱離手段と、
前記主排気通路内で前記窒素酸化物吸着材より排気上流側に配置され、硫黄酸化物を吸着可能な硫黄酸化物吸着材と、
前記主排気通路内で前記硫黄酸化物吸着材より排気上流側に配置され、空気供給手段、燃料供給手段及び着火手段から構成される燃焼装置と、
前記主排気通路内で前記燃焼装置より排気上流側に配置され、排気ガスに含まれる粒子状物質を捕獲可能なフィルター部材と、
通常運転と再生運転とを行う制御装置と、
を備え、
前記分岐排気通路が、前記機関側排気通路からの排気ガスが処理されずにそのまま排出されるように構成されており、
前記制御装置が、前記通常運転において、前記排気ガス遮断手段により前記主排気通路の排気出口を開放かつ前記分岐排気通路の排気入口を閉鎖して、排気ガスを主排気通路に沿って流すようにし、
前記制御装置が、前記再生運転において、前記排気ガス遮断手段により前記主排気通路の排気出口を閉鎖かつ前記分岐排気通路の排気入口を開放し、前記吸着物質脱離手段及び前記燃焼装置を作動させて、前記排気ガス遮断手段及び前記燃焼装置の空気供給手段が発生させた空気流を、前記主排気通路内での排気ガスの流れ方向とは逆方向に流すようにする、
ことを特徴とする排気ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−185763(P2009−185763A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28845(P2008−28845)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】