説明

排気浄化装置

【課題】排気ガス中に含まれるPMを捕集するパティキュレートフィルタ(DPF)を備えた排気浄化装置において、DPFに堆積したPMを燃焼・除去する再生制御を適切に実行する。
【解決手段】DPFのPM堆積量が所定値に達したことを条件にフィルタ再生制御を開始し(ステップST2,ST5)、この再生制御開始後に、空燃比センサの素子インピーダンスが所定値Z2(PMの燃焼可能温度に相当する値)よりも小さくなった時点で、再生制御終了時間を算出して再生制御の終了タイミングを決定する(ステップST6〜ST8)。このように、空燃比センサの素子温度(排気温度)と相関関係にある素子インピーダンスに基づいて再生制御終了タイミングを決定することで、DPFに堆積したPMの全体を確実に燃焼させることが可能となり、再生制御を適切なタイミングで終了することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関からの排気ガスを浄化する排気浄化装置に関し、さらに詳しくは、排気ガス中に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタを備えた排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載されるガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関(以下、エンジンともいう)を駆動したときに排出される排気ガス中には、そのまま大気に排出することが好ましくない物質が含まれている。特に、ディーゼルエンジンの排気ガス中には、カーボンを主成分とする粒子状物質(以下、PM(Particulate Matter)という場合もある)、SOOT(煤)、SOF(可溶性有機成分:Soluble Organic Fraction)などが含まれており、大気汚染の原因になる。
【0003】
排気ガス中のPMを浄化する装置として、ディーゼルエンジンの排気通路にパティキュレートフィルタを配置し、排気通路を流れる排気ガス中に含まれるPMを捕集することによって、大気中に放出されるエミッションの量を低減する排気浄化装置が知られている。
【0004】
パティキュレートフィルタとしては、例えば、DPF(Diesel Particulate Filter)や、DPNR(Diesel Particulate−NOx Reduction system)触媒が用いられている。
【0005】
パティキュレートフィルタ(以下、単に「フィルタ」という場合もある)を用いてPMの捕集を行う場合、捕集したPMの堆積量が多くなってフィルタの詰りが生じると、フィルタを通過する排気ガスの圧力損失が増大し、これに伴うエンジンの排気背圧増大によってエンジン出力低下や燃費の低下が発生する。これを解消する方法として、排気通路(フィルタの上流側)に燃料添加を行って排気温度を上昇させることによって、フィルタに堆積したPMを燃焼・除去する制御(フィルタ再生制御)が行われている。
【0006】
また、フィルタの再生制御において排気温度を上昇させる他の方法として、燃料噴射時期を遅角して排気温度を高くする方法や、エンジンの吸入空気量を絞ることにより空燃比(A/F)を低くして排気温度を高くする方法などがある。
【0007】
こうしたフィルタ再生制御では、フィルタへのPMの堆積量を推定し、そのPM堆積量が所定の基準値(限界堆積量)に達したときに、フィルタの再生時期であると判定して燃料添加等の再生制御を実施している。
【0008】
具体的には、例えば、フィルタの上流側圧力と下流側圧力との差圧(フィルタ前後の差圧)を検出する圧力センサを設け、その圧力センサの出力値(差圧検出値)が所定値(限界堆積量に相当する値)に達したときにフィルタの再生制御を開始し、圧力センサの出力値が所定値(再生制御終了判定値)以下となったときにフィルタの再生制御を終了するという処理が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、排気通路を流れる排気ガスの温度を検出する排気温度センサを設け、その排気温度センサにて検出される排気温度に基づいてPM堆積量を推定してフィルタの再生制御を行っている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
一方、車両に搭載されるエンジンにおいては、排気通路に配置した空燃比センサによって排気ガス中の酸素濃度を検出し、その検出した酸素濃度に基づいて排気空燃比が適切な目標空燃比となるように空燃比フィードバック制御を実行している。
【0011】
空燃比フィードバック制御等に用いる空燃比センサにおいては、検出精度を維持するために、センサ素子を活性状態に保つ必要がある。そのため、センサ素子を加熱するヒータ(例えば電気ヒータ)を設け、素子温度が所定の活性化温度となるようにヒータへの通電を制御している。
【0012】
このようなヒータの通電制御を行うには、センサ素子の温度を検出する必要があるが、一般には素子温度を直接検出するのではなく、センサ素子の素子インピーダンス(交流インピーダンス)と素子温度との間に相関関係があることを利用し、素子インピーダンスを検出し、その検出した素子インピーダンスに基づいて素子温度を間接的に検出している。
【特許文献1】特開2004−036454号公報
【特許文献2】特開2006−291828号公報
【特許文献3】特開2003−097333号公報
【特許文献4】特開2001−355503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、フィルタの再生制御に圧力センサを用いる場合、圧力センサではフィルタの全体が再生されたことを把握することができないため、以下の点が問題となる。
【0014】
まず、フィルタに堆積したPMの燃焼・除去は、フィルタの全体にわたって均一に行われずに、PMが部分的に除去される場合がある。フィルタに堆積したPMが部分的に除去されてフィルタの一部が吹き抜けた状態になると、フィルタ前後の差圧が低下する。このようにしてフィルタ前後の差圧が低下すると、圧力センサの出力値が所定値(再生制御終了判定値)以下となってしまい、フィルタ全体の再生(PM燃焼)が完了していないのにも関わらず、フィルタの再生制御が終了してしまう。さらに、フィルタの吹き抜けた部分にPMが堆積し、その部分に詰まりが生じたときに、再度、フィルタの再生制御が開始されてしまうため、短期間の間に再生制御が繰り返される状況となる場合がある。
【0015】
また、上記した従来のフィルタ再生制御では、圧力センサや排気温度センサなどの再生制御に必要な情報を得るためのセンサが必要である。
【0016】
本発明はそのような実情を考慮してなされたもので、内燃機関からの排気ガス中に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタを備えた排気浄化装置において、フィルタに堆積したPMを燃焼・除去する再生制御を適切に実行することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、内燃機関の排気通路に配設され、排気ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタと、前記排気通路に配設された空燃比センサと、前記フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼・除去する再生制御を実行する再生制御手段とを備え、所定の条件が成立したときに前記再生制御を開始する排気浄化装置において、前記空燃比センサの素子インピーダンスを検出し、その素子インピーダンスに基づいて前記再生制御の終了タイミングを決定することを特徴としている。
【0018】
本発明の具体的な構成として、フィルタの再生制御を開始した後、空燃比センサの素子インピーダンスが所定値よりも小さくなった時点で、再生制御終了時間を算出して再生制御の終了タイミングを決定するという構成を挙げることができる。
【0019】
次に、本発明の作用を述べる。
【0020】
まず、本発明では、所定の条件が成立したときにフィルタの再生制御を開始する。具体的には、フィルタへの粒子状物質の堆積量を推定し、その粒子状物質堆積量が所定値(限界堆積量)に達したことを条件にフィルタの再生制御を開始する。フィルタの再生制御としては、例えば、フィルタの上流側の排気通路に燃料を添加して排気温度を上昇させることで、粒子状物質を燃焼・除去するという方法を採用する。
【0021】
なお、フィルタの再生制御を開始する際に、ヒータ加熱により空燃比センサの素子温度が高温(活性化温度)になっている場合、ヒータ加熱を停止して空燃比センサの素子温度を粒子状物質の燃焼可能温度よりも低い温度(例えば素子インピーダンスの検出が可能な温度)にまで低下させた後に、燃料添加等により排気温度を上昇させる。
【0022】
次に、フィルタ再生制御の終了タイミングを空燃比センサの素子インピーダンスに基づいて決定する。具体的には、空燃比センサの素子温度と相関関係にある素子インピーダンスを検出し、その素子インピーダンスが所定値(粒子状物質の燃焼可能温度に相当する値)よりも小さくなった時点で、再生制御終了時間を算出して再生制御の終了タイミングを決定する。再生制御終了時間は、フィルタに堆積した粒子状物質が十分に燃焼することが可能な時間とし、例えば、内燃機関の積算吸入空気量及び空燃比センサの素子温度に基づいて算出する。そして、このようにして算出した再生制御停止時間が経過した時点でフィルタの再生制御を終了する。
【0023】
以上のように、本発明によれば、空燃比センサの素子温度(排気温度)と相関関係にある素子インピーダンスを検出し、その素子インピーダンスに基づいて再生制御終了時間を算出してフィルタの再生制御終了タイミングを決定しているので、空燃比センサの素子インピーダンスをパラメータとして、フィルタに堆積した粒子状物質の全体を確実に燃焼させることが可能な再生制御終了時間を、予め実験・計算等により経験的に求めておけば、フィルタに堆積した粒子状物質の全体が十分に燃焼するタイミングで再生制御を適切に終了することができる。これによって、フィルタ全体の再生が完了していないのにも関わらず、再生制御が終了してしまうといった不具合が発生することがなくなり、フィルタの再生制御を適切に実行することができる。
【0024】
しかも、本発明では、内燃機関の制御用の空燃比センサを利用し、その空燃比センサの素子インピーダンスに基づいてフィルタの再生制御を行っているので、圧力センサや排気温度センサなどの再生制御に必要な情報を得るためのセンサを搭載する必要がなくなる。
【0025】
本発明において、フィルタの再生制御を開始する前に、空燃比センサのセンサ素子のヒータ加熱を停止し、そのヒータ加熱の停止後に、当該空燃比センサの素子インピーダンスが所定値よりも上昇した時点で再生制御を開始する。
【0026】
このようにヒータ加熱停止して空燃比センサの素子温度を一度低下させた状態で、フィルタの再生制御を開始することで、再生制御により排気温度が上昇しても、空燃比センサのセンサ素子が過度に加熱されることを防止することができ、センサ素子を保護することができる。
【0027】
本発明において、排気通路への燃料添加にてフィルタの再生制御を実行する場合、再生制御中の空燃比センサの素子インピーダンスが所定値(粒子状物質の燃焼に適した温度に相当する素子インピーダンス)になるように燃料添加量を制御する。このような制御を行うと、再生制御中において空燃比センサの素子インピーダンス(素子温度)つまりフィルタの床温を粒子状物質燃焼に適した温度に保持することが可能となり、粒子状物質の燃焼を効率よく安定して行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
−エンジン−
本発明を適用するディーゼルエンジンの概略構成を図1を参照して説明する。
【0030】
この例のディーゼルエンジン1(以下、「エンジン1」という)は、例えばコモンレール式筒内直噴4気筒エンジンであって、燃料供給系2、燃焼室3、吸気通路6、及び、排気通路7などを主要部として構成されている。
【0031】
燃料供給系2は、サプライポンプ21、コモンレール22、インジェクタ(燃料噴射弁)23、遮断弁24、燃料添加弁25、燃圧制御弁26、燃料調量弁27、機関燃料通路28、及び、添加燃料通路29などを備えている。
【0032】
サプライポンプ21は、燃料タンクから燃料を汲み上げ、この汲み上げた燃料を高圧にした後、機関燃料通路28を介してコモンレール22に供給する。コモンレール22は、サプライポンプ21から供給された高圧燃料を所定圧力に保持(蓄圧)する蓄圧室としての機能を有し、この蓄圧した燃料を各インジェクタ23に分配する。インジェクタ23は所定電圧が印加されたときに開弁して、燃焼室3内に燃料を噴射供給する電磁駆動式の開閉弁である。
【0033】
また、サプライポンプ21は、燃料タンクから汲み上げた燃料の一部を、添加燃料通路29を介して燃料添加弁25に供給する。燃料添加弁25は、所定電圧が印加されたときに開弁して、排気通路7の排気ポート71から排気マニホールド72に燃料を添加する電磁駆動式の開閉弁である。遮断弁24は、緊急時に添加燃料通路29を遮断して燃料供給を停止する。
【0034】
吸気通路6は、シリンダヘッドに形成された吸気ポートに接続される吸気マニホールド63と、この吸気マニホールド63に接続される吸気管64とを備えている。また、吸気通路6には、上流側から順にエアクリーナ65、エアフローメータ32、スロットルバルブ62、吸気温センサ33、及び、吸気圧センサ34が配設されている。
【0035】
排気通路7は、シリンダヘッドに形成された排気ポート71に接続される排気マニホールド72と、この排気マニホールド72に接続される排気管73とを備えている。排気管73には排気ガス中のPMを捕集するDPF4が配設されている。
【0036】
DPF4は、図2(A)及び(B)に示すように、多孔質材料(例えばコージェライト)からなる円筒形状のセラミック構造体40によって形成されている。セラミック構造体40の内部は、セル隔壁41によって格子状に区画されたハニカム構造となっており(図2(A)参照)、複数のガス流入側セル42及びガス流出側セル43が設けられている(図2(B)参照)。ガス流入側セル42は排気ガス下流側の端部が閉塞されたガス流路であり、ガス流出側セル43は排気ガス上流側の端部が閉塞されたガス流路である。これらガス流入側セル42とガス流出側セル43とは、ガス流通の際にフィルタとなるセル隔壁(フィルタ隔壁)41を介して互いに隣り合っている。
【0037】
以上の構造のDPF4において、上流側開口部42aからガス流入側セル42内に流入した排気ガスは、図2(B)の矢印で示すように、セル隔壁41を通過して隣接するガス流出側セル43に流入し、下流側開口部43aから排出される。このようにして排気ガスがセル隔壁41を通過する際に、排気ガス中に含まれるPMがセル隔壁41で捕集され、PMの排出を抑制することができる。
【0038】
以上のDPF4、燃料添加弁25、添加燃料通路29、後述する空燃比センサ101、及び、燃料添加弁25の開閉制御などを実行するECU(Electronic Control Unit)200等によって排気浄化装置が構成されている。
【0039】
エンジン1には、ターボチャージャ(過給機)5が設けられている。このターボチャージャ5は、タービンシャフト51を介して連結されたタービンホイール52とコンプレッサインペラ53とを備えている。
【0040】
コンプレッサインペラ53は吸気管64内部に臨んで配置され、タービンホイール52は排気管73内部に臨んで配置されている。このようなターボチャージャ5は、タービンホイール52が受ける排気流(排気圧)を利用してコンプレッサインペラ53を回転させることにより吸入空気を過給する。この例のターボチャージャ5は、可変ノズル式ターボチャージャであって、タービンホイール52側に可変ノズルベーン機構54が設けられており、この可変ノズルベーン機構54の開度を調整することにより、エンジン1の過給圧を調整することができる。
【0041】
吸気通路6の吸気管64には、ターボチャージャ5での過給によって昇温した吸入空気を強制冷却するためのインタークーラ61が設けられている。このインタークーラ61の下流側にスロットルバルブ62が設けられている。スロットルバルブ62は、その開度を無段階に調整することが可能な電子制御式の開閉弁であり、所定の条件下において吸入空気の流路面積を絞り、この吸入空気の供給量を調整(低減)する機能を有している。
【0042】
また、エンジン1には、吸気通路6と排気通路7とを接続するEGR通路(排気還流通路)8が設けられている。EGR通路8は、排気ガスの一部を適宜吸気通路6に還流させて燃焼室3へ再度供給することにより燃焼温度を低下させ、これによってNOx発生量を低減させるものである。また、EGR通路8には、EGRバルブ81と、EGR通路8を通過(還流)する排気ガスを冷却するためのEGRクーラ82とが設けられており、EGRバルブ81の開度を調整することにより、排気通路7から吸気通路6に導入されるEGR量(排気還流量)を調整することができる。
【0043】
−センサ類−
エンジン1の各部位には、各種センサが取り付けられており、それぞれの部位の環境条件や、エンジン1の運転状態に関する信号を出力する。
【0044】
例えば、エアフローメータ32は、吸気通路6のスロットルバルブ62の上流側に配置され、吸入空気量に応じた検出信号を出力する。吸気温センサ33は、吸気マニホールド63に配置され、吸入空気の温度に応じた検出信号を出力する。吸気圧センサ34は、吸気マニホールド63に配置され、吸入空気圧力に応じた検出信号を出力する。レール圧センサ35は、コモンレール22内に蓄えられている燃料の圧力に応じた検出信号を出力する。
【0045】
そして、空燃比センサ101は、排気通路7の排気管73(DPF4の下流側)に配置され、排気空燃比に応じた検出信号を出力する。空燃比センサ101の構造について説明する。
【0046】
−空燃比センサ−
空燃比センサ101は、積層型の空燃比センサであって、図3に示すように、センサ素子110、通気性の内カバー116、及び、外カバー117などを備えている。また、空燃比センサ101には、センサ素子110を加熱するためのヒータ102が組み込まれている。
【0047】
センサ素子110は、板状の固体電解質層(例えば部分安定化ジルコニア製)111、この固体電解質層111の一方の面に形成された大気側電極(例えば白金電極)112、固体電解質層111の他方の面に形成された排気側電極(例えば白金電極)113、及び拡散抵抗層(例えば多孔質のセラミック)114などによって構成されている。
【0048】
センサ素子110の大気側電極112は大気ダクト115内に配置されている。大気ダクト115内は大気に解放されており、この大気ダクト115内に流入した大気が大気側電極112に接触する。
【0049】
排気側電極113の表面は拡散抵抗層114にて覆われており、DPF4の下流側の排気管73を流れる排気ガスの一部が、拡散抵抗層114によって拡散された状態で排気側電極113に接触する。なお、排気ガスは、外カバー117の小孔117a及び内カバー116の小孔116aを通過してセンサ素子110(排気側電極113)に達する。
【0050】
ヒータ102は、車載のバッテリ電源VB(図5参照)からの通電により発熱する線状の発熱体によって構成されており、その発熱体の発熱によってセンサ素子110の全体を加熱する。
【0051】
以上の構造の空燃比センサ101において、大気側電極112と排気側電極113との間に、後述する検出用電圧VR(=[VAF+]−[VAF−])が印加され、この電圧印加によって空燃比センサ101に、排気ガス中の酸素濃度に応じた電流が流れる。
【0052】
−ECU・空燃比センサの制御回路−
ECU200は、図4に示すように、CPU201、ROM202、RAM203及びバックアップRAM204などを備えている。
【0053】
ROM202は、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPU201は、ROM202に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて各種の演算処理を実行する。また、RAM203は、CPU201での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM204は、例えばエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。
【0054】
ECU200には、エンジン1の冷却水温に応じた信号を出力する水温センサ31、エアフローメータ32、吸気温センサ33、吸気圧センサ34、空燃比センサ101、レール圧センサ35、アクセルペダルへの踏み込み量に応じた検出信号を出力するアクセル開度センサ36、及び、エンジン1の出力軸であるクランクシャフトの回転数(エンジン回転数)を検出するクランクポジションセンサ37などが接続されている。
【0055】
また、ECU200には、インジェクタ23、遮断弁24、燃料添加弁25、可変ノズルベーン機構54、スロットルバルブ62、EGRバルブ81、及び、空燃比センサ101のヒータ102などが接続されている。
【0056】
次に、空燃比センサ101の制御を行う制御回路210の構成を図5を参照して説明する。なお、制御回路210はECU200の内部に組み込まれている。
【0057】
この例の空燃比センサ101の制御回路210は、オペアンプOP1〜OP4、シャント抵抗R1、抵抗R2〜R7、基準電圧発生回路211、パルス印加回路212、及び、ヒータ102の制御用のトランジスタ213などを備えている。
【0058】
基準電圧発生回路211は、電源VCとグランドとの間に直列接続された3つの抵抗R11,R12,R13によって構成されており、抵抗R11と抵抗R12との間で電圧VAF+(例えば3.3V)が生成され、抵抗R12とR13との間で電圧VFA−(例えば2.9V)が生成される。
【0059】
抵抗R11と抵抗R12との間で生成された電圧VAF+は、オペアンプOP3及びパルス印加回路212を介して、オペアンプOP1のプラス側端子に印加される。また、抵抗R12と抵抗R13との間で生成された電圧VAF−は、オペアンプOP2のプラス側端子に直接印加される。
【0060】
オペアンプOP1の出力端子は、シャント抵抗R1を介して空燃比センサ101のプラス側入力端子(大気側電極112側の端子)101aに接続されるとともに、抵抗R1,R2を介して当該オペアンプP1のマイナス側端子に接続されている。
【0061】
オペアンプOP2の出力端子は、抵抗R3,R5を介して空燃比センサ101のマイナス側入力端子(排気側電極113側の端子)101bに接続されるとともに、抵抗R3,R4を介して当該オペアンプOP2のマイナス側端子に接続されている。
【0062】
空燃比センサ101のプラス側入力端子101aにはオペアンプOP1から電圧VAF+が印加される。また、空燃比センサ101のマイナス側入力端子101bにはオペアンプOP2から電圧VAF−が印加される。これによって、空燃比センサ101の入力端子101a,101b間(大気側電極112と排気側電極113との間)に、電圧VAF+と電圧VAF−との差電圧(例えば0.4V)が、排気ガス中の酸素濃度を検出するための検出用電圧VRとして印加される。
【0063】
オペアンプOP3の出力端子とオペアンプOP1のプラス側端子との間にはパルス印加回路212が設けられている。パルス印加回路212は、オペアンプOP1のプラス側端子に印加する電圧、つまり、空燃比センサ101のプラス側入力端子101a(大気側電極112)に印加する電圧VAF+を、所定の変化幅ΔVAF(例えばΔVAF=0.2V)でプラス側とマイナス側に所定周期で変化させる回路である。
【0064】
ヒータ102の一端はバッテリ電源VBに接続されている。ヒータ102の他端にはトランジスタ213が接続されている。トランジスタ213のベースはCPU201に接続されており、そのCPU201からのヒータ制御信号に応じてトランジスタ213がON/OFFすることによってヒータ102の通電が制御される。
【0065】
以上の回路構成において、オペアンプOP1と空燃比センサ101との間に接続されたシャント抵抗R1には、空燃比センサ101に流れる電流(センサ電流Is)と同じ電流が流れるので、そのシャント抵抗R1の両端電位差(V1−V2)は、センサ電流Isに比例した値となる。従って、シャント抵抗R1の両端電位差(V1−V2)を算出することで、空燃比センサ101のセンサ電流Isを検出できる。
【0066】
そこで、この例では、シャント抵抗R1の空燃比センサ101側の電圧V1をオペアンプOP4のプラス側端子に抵抗R6を介して導き、シャント抵抗R1の空燃比センサ101側とは反対側の電圧V2をオペアンプOP4のマイナス側端子に抵抗R7を介して導いて、それら電圧の差(V1−V2)を演算・増幅している。
【0067】
オペアンプOP4の出力信号V3は、センサ電流検出用のアナログデジタル変換器(ADC)214によってデジタル変換された後にCPU201に入力される。CPU201では、オペアンプOP4の出力信号V3(デジタル変換後の信号)からセンサ電流Isを算出し、そのセンサ電流Isに基づいて排気ガスの空燃比を算出する。
【0068】
また、CPU201には、シャント抵抗R1の両端の電圧V1,電圧V2が、それぞれインピーダンス検出用のアナログデジタル変換器(ADC)215,216を介して入力される。CPU201では、それら入力電圧V1,V2、及び、空燃比センサ101のプラス側入力端子(大気側電極112)に印加する電圧VAF+の変化幅ΔVAFに基づいて空燃比センサ101の素子インピーダンス(交流インピーダンス)を検出する。
【0069】
素子インピーダンスは、センサ素子110に印加する電圧の電圧変化ΔV(ΔVAF)と、その電圧変化ΔVによって生じる電流変化ΔI(シャント抵抗R1の両端電位差(V1−V2)から得られる電流変化量)に基づいて、演算式[素子インピーダンス=ΔV/ΔI]から求めることができる。
【0070】
ここで、空燃比センサ101の素子温度と素子インピーダンスとの間には相関関係があるので、この関係を利用して、上記処理により検出した素子インピーダンスに基づいて空燃比センサ101の素子温度を推定することができる。
【0071】
そして、ECU200は、上記の処理で検出した空燃比センサ101の素子インピーダンスに基づいてセンサ素子110の温度を求め、その実際の素子温度が目標値(センサ素子の活性化温度(例えば750℃))に一致するように、トランジスタ213へのヒータ制御信号のデューティ比を算出してヒータ102の通電制御を行う。
【0072】
また、ECU200は、上記した各種センサの出力に基づいて、エンジン1の各種制御を実行する。さらに、ECU200は下記のフィルタ再生制御を実行する。
【0073】
−フィルタ再生制御−
まず、この例のフィルタ再生制御では、DPF4へのPMの堆積量が所定値に達したことを条件にDPF4の再生制御を開始し、空燃比センサ101の素子インピーダンスに基づいて再生制御の終了タイミングを決定する点に特徴がある。
【0074】
そのフィルタ再生制御の具体的な例を図6及び図7を参照して説明する。図6に示すフィルタ再生制御の制御ルーチンはECU200において所定時間毎に繰り返して実行される。なお、図6に示す制御ルーチンの実行中においても、空燃比センサ101の素子インピーダンスを上記した処理にて逐次検出している。
【0075】
ステップST1において、DPF4へのPMの堆積量を推定する。PM堆積量を推定する方法としては、例えば、エンジン1の運転状態(例えば、燃料噴射量、エンジン回転数等)に応じたPM付着量を予め実験等により求めてマップ化しておき、このマップにより求められるPM付着量を積算してPMの堆積量とするという方法を採用する。
【0076】
ステップST2では、ステップST1で推定したPM推定量が所定値(限界堆積量)よりも大きくなったときに、DPF4の再生時期であると判断してステップST3に進む。ステップST2の判定結果が否定判定である場合は、このルーチンを一旦抜ける。
【0077】
ステップST3では、空燃比センサ101のヒータ102をOFFにする。このステップST3の処理は空燃比センサ101の保護を目的として行われる。
【0078】
具体的には、空燃比センサ101の素子温度が高い状態(活性温度)のときに、DPF4の再生制御が実行されると、センサ素子110が過度に加熱される可能性があり、これを回避するために、DPF4の再生制御を開始する前に、空燃比センサ101のヒータ102をOFFにして空燃比センサ101の素子温度を一旦低下させている。
【0079】
このようにして、ヒータ102をOFFにし、空燃比センサ101の素子温度を一度低下させることにより、DPF4の再生制御(排気通路7への燃料添加)により排気温度が上昇しても、空燃比センサ101のセンサ素子110が高温に加熱されることを防止することができ、センサ素子110を保護することができる。
【0080】
なお、ヒータ102のOFFにより空燃比センサ101の素子温度が低下すると、空燃比センサ101の素子インピーダンスが上昇する(図7参照)。
【0081】
次に、ステップST4において、素子インピーダンスが所定値Z1よりも上昇したか否かを判定する。その判定結果が肯定判定(素子インピーダンス>Z1)となったときにDPF4の再生制御を開始する(ステップST5)。
【0082】
DPF4の再生制御は、燃料添加弁25の開閉を制御して排気通路7(DPF4の上流側の排気マニホールド72)に燃料添加を断続的に繰り返すという処理によって行う。また、再生制御時の燃料添加量は、空燃比センサ101の素子インピーダンスが所定値Z3(PM燃焼に適した温度に相当する素子インピーダンス)に一致するように制御する(図7参照)。このような燃料添加により、排気温度(DPF4の床温)が上昇し、DPF4に堆積しているPMが酸化され、H2OやCO2となって排出する。また、燃料添加により排気温度が上昇すると、これに伴って空燃比センサ101の温度が上昇して素子インピーダンスが低下する(図7参照)。
【0083】
なお、上記ステップST4の判定処理に用いる所定値Z1については、空燃比センサ101の素子インピーダンスの検出限界値(素子インピーダンスの検出が可能な素子温度の下限値に相当する値)に近い値を設定する。
【0084】
以上のDPF4の再生制御を開始した後、空燃比センサ101の素子インピーダンスが所定値Z2よりも低下した否かを判定し(ステップST6)、素子インピーダンスが所定値Z2未満(素子インピーダンス<Z2)となった時点で、空燃比センサ101の素子温度つまり排気温度が、PM燃焼が可能な温度に達したと判断してステップST7に進む。なお、ステップST6の判定処理に用いる所定値Z2は、空燃比センサ101の素子温度(PM燃焼可能温度)と素子インピーダンスとの関係を考慮して設定する。
【0085】
ステップST7では、DPF4の再生制御終了時間Teを算出する。具体的には、エアフローメータ32の出力信号に基づいて積算吸入空気量(再生制御開始時からの積算量)を算出するとともに、素子インピーダンスから空燃比センサ101の素子温度を推定し、それら積算吸入空気量及び素子温度に基づいて、予め作成したマップを参照して再生制御終了時間Teを算出する。再生制御終了時間Teは、図7に示すように、素子インピーダンスが所定値Z2未満(素子インピーダンス<Z2)となった時点から再生制御終了までの時間である。
【0086】
なお、再生制御終了時間Teを求めるマップは、積算吸入空気量と素子温度(素子インピーダンス)とをパラメータとして、DPF4に堆積したPMが十分に燃焼するのに要する時間を、実験・計算等によって経験的に求めた値をマップ化したものであり、ECU200のROM202内に記憶されている。
【0087】
そして、ステップST8において、空燃比センサ101の素子インピーダンスが所定値Z2未満となった時点から、ステップST7で算出した再生制御終了時間Teが経過した否かを判定し、その判定結果が肯定判定となった時点でDPF4の再生制御を終了する(ステップST9)。
【0088】
以上のように、この例の再生制御によれば、空燃比センサ101の素子温度(排気温度)と相関関係にある素子インピーダンスに基づいて再生制御終了時間Teを算出して、DPF4の再生制御終了タイミングを決定しているので、フィルタに堆積した粒子状物質の全体が十分に燃焼するタイミングで再生制御を適切に終了することができる。これによって、再生制御に圧力センサ(差圧センサ)を用いた場合の問題、つまり、DPF4全体の再生(PM燃焼)が完了していないのにも関わらず、DPF4の再生制御が終了してしまうといった不具合が発生することがなく、DPF4の再生制御を適切に実行することができる。
【0089】
しかも、エンジン1の制御用の空燃比センサ101を利用し、その空燃比センサ101の素子インピーダンスに基づいてフィルタの再生制御を実行しているので、圧力センサや排気温度センサなどの再生制御に必要な情報を得るためのセンサを搭載する必要がなくなる。
【0090】
さらに、この例では、DPF4の再生制御を行う際に、空燃比センサ101の素子インピーダンスが所定値Z3(PM燃焼に適した温度に相当する素子インピーダンス)に一致するように燃料添加量を制御しているので、再生制御中において空燃比センサ101の素子インピーダンス(素子温度)つまりDPF4の床温をPM燃焼に適した温度に保持することが可能となり、DPF4に堆積しているPMの燃焼を効率よく安定して行うことができる。
【0091】
−他の実施形態−
以上の例では、排気通路に燃料添加を行って排気温度を上昇させることによって、DPF上のPMの燃焼・除去を行っているが、他の方法を採用してもよい。例えば、燃料噴射時期を遅角(着火遅れ制御)して排気温度を高くする方法、あるいは、エンジンの吸入空気量を絞ることにより空燃比を低くして排気温度を高くする方法によって、DPF上のPMの燃焼・除去を行うようにしてもよい。
【0092】
以上の例では、積層型の空燃比センサが搭載されたエンジンの排気浄化装置に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、コップ型の空燃比センサが搭載されたエンジンの排気浄化装置にも適用可能である。
【0093】
以上の例では、DPFを備えた排気浄化装置に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、例えばDPNRなどの他のパティキュレートフィルタを備えた排気浄化装置にも適用可能である。
【0094】
以上の例では、本発明の排気浄化装置を筒内直噴4気筒ディーゼルエンジンに適用した例を示したが、本発明はこれに限られることなく、例えば筒内直噴6気筒ディーゼルエンジンなど他の任意の気筒数のディーゼルエンジンにも適用できる。また、筒内直噴ディーゼルエンジンに限られることなく、他のタイプのディーゼルエンジンにも本発明の排気浄化装置を適用することできる。
【0095】
さらに、本発明の排気浄化装置は、高い空燃比(リーン雰囲気)の混合気を燃焼に供して機関運転を行う運転領域が、全運転領域の大部分を占める希薄燃焼式ガソリンエンジンにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明を適用するディーゼルエンジンの一例を示す概略構成図である。
【図2】DPFの正面図(A)及び中央縦断面図(B)を併記して示す図である。
【図3】空燃比センサの構造を示す断面図である。
【図4】ECU等の制御系の構成を示すブロック図である。
【図5】空燃比センサの制御回路の構成を示す回路図である。
【図6】フィルタの再生制御の一例を示すフローチャートである。
【図7】フィルタの再生制御時における素子インピーダンスの変化を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0097】
1 エンジン(内燃機関)
2 燃料供給系
21 サプライポンプ
23 インジェクタ
24 遮断弁
25 燃料添加弁
29 添加燃料通路
4 DPF(パティキュレートフィルタ)
7 排気通路
71 排気ポート
72 排気マニホールド
73 排気管
101 空燃比センサ
110 センサ素子
102 ヒータ(空燃比センサ加熱用)
200 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配設され、排気ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタと、前記排気通路に配設された空燃比センサと、前記フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼・除去する再生制御を実行する再生制御手段とを備え、所定の条件が成立したときに前記再生制御を開始する排気浄化装置において、
前記空燃比センサの素子インピーダンスを検出し、その素子インピーダンスに基づいて前記再生制御の終了タイミングを決定することを特徴とする排気浄化装置。
【請求項2】
請求項1記載の排気浄化装置において、
前記再生制御を開始した後、前記空燃比センサの素子インピーダンスが所定値よりも小さくなった時点で、再生制御終了時間を算出して前記再生制御の終了タイミングを決定することを特徴とする排気浄化装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の排気浄化装置において、
前記再生制御を開始する前に、前記空燃比センサのセンサ素子のヒータ加熱を停止し、前記ヒータ加熱の停止後に、当該空燃比センサの素子インピーダンスが所定値よりも大きくなった時点で再生制御を開始することを特徴とする排気浄化装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の排気浄化装置において、
前記排気通路に燃料を添加することにより前記再生制御を行うとともに、当該再生制御中の空燃比センサの素子インピーダンスが所定値になるように燃料添加量を制御することを特徴とする排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−297948(P2008−297948A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143787(P2007−143787)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】