説明

接合構造体、接合方法及びレーザ加工装置

【課題】接合部材の接合部などに発生する応力を低減あるいは緩和できる接合構造体、接合方法及びレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】少なくともいずれかがレーザ光に対して透過性を有する第1及び第2の接合部材と、前記第1の接合部材と前記第2の接合部材との間にこれらに当接可能に設けられ、前記第1の接合部材と前記第2の接合部材との間の隙間を確保する小片部と、前記第1の接合部材と前記第2の接合部材とにそれぞれレーザ光により接合され、前記第1の接合部材と前記第2の接合部材とを結合する弾性体と、を備えたことを特徴とする接合構造体が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合構造体、接合方法及びレーザ加工装置に関し、具体的には複数の部材の接合部分にレーザ光を照射して各部材を互いに接合する接合構造体、接合方法及びレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ふたつの部材を接合する方法として、レーザ光の照射による接合方法がある。例えば、PDP(Plasma Display Panel)、SED(Surface-conduction Electron-emitter Display)、FED(Field Emission Display)、有機ELディスプレイ(Organic Electroluminescence Display)などの発光パネルは、一般的に2枚のガラスが接合された構造を有する。これらの接合部分に要求される性能として、接合強度が高いこと、真空シール性が高いこと、ガスの放出量が少ないこと、耐熱性が高いこと、などが挙げられる。
【0003】
ガラスを接合する方法の1つとして、一般的にガラスフリットなどを用いる方法がある(特許文献1)。しかしながら、特許文献1に記載されたようなガラスフリットを用いて複数のガラスを接合する方法においては、高温(例えば、400℃以上)の熱工程が必要である。また、その接合部分が剥離しないように、あるいは熱の影響による損傷をより少なくするために、熱工程が完了した後に徐冷を行う必要がある。そのため、接合工程が長くなるという問題がある。
【0004】
これに対して、複数の接合部材(ガラス)をより低温で接合する方法の1つとして、吸光材をガラスの接合面に添付または成膜し、その吸光材にレーザ光を照射するレーザ融着がある(特許文献2)。特許文献2に記載された接合方法およびその装置は、2枚の接合部材(ガラス)の接合面に吸光材を介在させ、その吸光材がレーザ光のエネルギーを吸収することにより、接合部材であるガラスが溶融して接合するものである。
【0005】
また、複数の接合部材をより低温で接合する他の方法として、2枚の接合部材の接合面にエラストマーからなる接着用シートを挟み、その接着用シートを溶融させることによって接合部材を接合させる方法がある(特許文献3)。特許文献3に記載された接合方法は、2枚の接合部材に挟まれた状態の接着シートが、レーザ光のエネルギーを吸収することによって加熱溶融され、加熱溶融された接着シートが再度固化することによって接合するものである。
【0006】
しかしながら、特許文献2および特許文献3に記載された接合方法によって接合部材を接合する場合、接合部材同士、あるいは接合部材と接着シートとは、接合部材や接着シートの溶融時に密着している必要がある。この際、接合部材に存在している歪みなどは強制的に変形矯正させられるため、接合界面には接合後に残留歪みが生ずる。さらに、接合部材や接着シートの溶融時の熱によっても歪みが生ずる。このように、接合面には応力が発生しやすいため、その接合面は剥離するおそれがある。また、その接合面にクラックが生ずるおそれがある。すなわち、接合部材と、吸光材あるいは接着シートと、の密着性が不十分であると、接合部材が剥離したり、クラックが生ずるおそれがある。
【0007】
例えば、PDP、SEDなどで量産に用いられるガラス基板には、少なからず歪みが存在する。このようなガラス基板において、歪みを全く存在しないように作成することは、技術的にもコスト的にも現実的ではない。そのため、複数の接合部材をレーザ融着によって接合する方法を実用化させるためには、接合面に発生する応力に対する対策が必要である。
【特許文献1】特開2007−200890号公報
【特許文献2】特開2003−170290号公報
【特許文献3】特開2008−7584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、接合部材の接合部などに発生する応力を低減あるいは緩和できる接合構造体、接合方法及びレーザ加工装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、少なくともいずれかがレーザ光に対して透過性を有する第1及び第2の接合部材と、前記第1の接合部材と前記第2の接合部材との間にこれらに当接可能に設けられ、前記第1の接合部材と前記第2の接合部材との間の隙間を確保する小片部と、前記第1の接合部材と前記第2の接合部材とにそれぞれレーザ光により接合され、前記第1の接合部材と前記第2の接合部材とを結合する弾性体と、を備えたことを特徴とする接合構造体が提供される。
【0010】
また、本発明の他の一態様によれば、少なくともいずれかがレーザ光に対して透過性を有する第1及び第2の接合部材の間に弾性体を設け、前記第1の接合部材に前記弾性体を当接させて前記弾性体にレーザ光を照射することにより前記第1の接合部材と前記弾性体とを接合し、前記第2の接合部材に前記弾性体を当接させて前記弾性体にレーザ光を照射することにより前記第2の接合部材と前記弾性体とを接合することを特徴とする接合方法が提供される。
【0011】
また、本発明の他の一態様によれば、レーザ光を出力するレーザ発振器と、前記レーザ光を集光して被照射体に向けて照射する光学系と、前記被照射体と、前記光学系と、の位置関係を制御するコントロールステージと、前記被照射体を搬送してその位置を調整する供給機構と、前記被照射体を挟持する押し付け治具の位置を調整する押し付け治具機構と、第1及び第2の接合部材と、弾性体と、を搬送して当接させるように前記供給機構を制御し、前記押し付け治具が前記弾性体を挟持するように前記押し付け治具機構を制御し、前記第1及び前記第2の接合部材に当接された弾性体に前記レーザ光を照射するように前記コントロールステージを制御する制御部と、を備えたことを特徴とするレーザ加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、接合部材の接合部などに発生する応力を低減あるいは緩和できる接合構造体、接合方法及びレーザ加工装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる接合構造体を例示する分解模式図である。
図1に表した接合構造体は、少なくともいずれかがレーザ光に対して透過性を有する接合部材100a(第1の接合部材)および接合部材100b(第2の接合部材)と、接合部材100aと接合部材100bとの間に挟設された枠102と、接合部材100aと枠102との間に設けられた弾性体104aと、接合部材100bと枠102との間に設けられた弾性体104bと、を有する。
【0014】
ここで、レーザ光に対する透過性とは、加熱源としてのレーザ光をほとんど反射も吸収もせずに透過させるか、あるいはレーザ光を一部吸収したり反射したりしても溶融することなく残りのレーザ光を透過し、吸光材まで到達させ得る性質をいう。接合部材100aおよび接合部材100bの少なくともいずれかの材料としては、レーザ光に対して前述した透過性を有する材料であれば特に限定されず、例えばガラスや樹脂、半導体などが挙げられる。
【0015】
接合部材100aと接合部材100bとの間の隙間は、図示しない小片部(スペーサ)によって管理されている。スペーサは、後に詳述するように、枠102と一体になっていてもよいし、枠102とは別体になっていてもよい。また、接合部材100aと接合部材100bとの間において真空シール性(密閉性)が要求される場合であっても、その真空シール性が確保される限り、接合部材100a、100bの全周囲に亘って枠102を設ける必要はない。さらに、後に詳述するように、枠102が設けられていない場合であっても、本発明に包含される得る。
【0016】
一方、弾性体104a、104bについては、接合部材100aと接合部材100bとの間において真空シール性が要求される場合には、その真空シール性を確保するために、図1に表したように、接合部材100a、100bの全周囲に亘って弾性体104a、104bを設ける必要がある。
【0017】
図2は、本実施形態にかかる接合構造体および接合方法を例示する側面模式図である。なお、図2は、図1に表した矢視Aの方向から眺めた模式図である。
図2に表した枠102は、接合部材100aと接合部材100bとの間の隙間を確保するための小片部102aと、弾性体104a、104bを接合するための接合部102bと、を有する。小片部102aは、接合部材100a、100bに密着しているが、接合部102bは、図2に表したように、接合部材100a、100bとは密着していない。すなわち、弾性体104a、104bと、接合部材100a、100bと、の間には隙間が存在する。
【0018】
また、図2に表した接合構造体では、枠102と弾性体104aとが、領域150aにおいて接合されている。これと同様に、枠102と弾性体104bとが、領域150bにおいて接合されている。これらの接合方法は、後に詳述するレーザ融着による方法であってもよいし、他の接合方法であってもよい。さらに、接合部材100aと弾性体104aとは、後に詳述するように、領域152aにおいてレーザ融着によって接合されている。これと同様に、接合部材100bと弾性体104bとは、領域152bにおいてレーザ融着によって接合されている。
【0019】
ここで、接合部材100aと弾性体104aとの接合面(領域152a)、および接合部材100bと弾性体104bとの接合面(領域152b)には、接着強度が高いこと、あるいは耐熱性が高いことなどの性能が要求される。さらに、接合部材100a、100bの内側に、光学素子や電子素子などが存在する場合には、真空シール性が要求されることがある。その場合には同時に、接合面(領域152a、領域152b)におけるガスの放出量が少ないことなども要求されることがある。
【0020】
複数の接合部材を吸光材や接着シートを用いてレーザ融着などにより接合する場合には、接合部材同士、あるいは接合部材と接着シートとは、接合部材や接着シートの溶融時に密着している必要がある。この際、接合部材に存在している歪みなどは強制的に変形矯正させられるため、接合面(界面)には接合後に残留歪みが生ずる。さらに、接合部材や接着シートの溶融時の熱によっても歪みが生ずる。このように、接合面を強制的に密着させると、接合面に応力が発生しやすいため、十分な接着強度が得られずに剥離したり、クラックが生ずるおそれがある。
【0021】
これに対して、図2に表した接合構造体では、接合部材100aと接合部材100bとは、弾性体104a、104bを介して結合され、弾性体104a、104bと接合部材100a、100bとの間には隙間が存在しているため、接合部に発生する応力を弾性体104a、104bの変形により低減あるいは緩和できる。例えば、図2に表した接合構造体は、接合部材100aと弾性体104aとの接合部(領域152a)、および接合部材100bと弾性体104bとの接合部(領域152b)などに発生する応力を、弾性体104aの屈曲部154aと、弾性体104bの屈曲部154bと、において吸収して低減あるいは緩和できる。
【0022】
これにより、接合部材100a、100bに歪みがあっても、接合面(領域152a、領域152b)が剥離したり、その接合面にクラックが生ずることを防止できる。さらに、これにより、接合部材100a、100bの内側の領域の真空シール性をより高く確保できる。
【0023】
なお、弾性体104a、104bは、前述したように、接合面に発生する応力を低減あるいは緩和する機能を有するため、接合部材100a、100bの歪みに追従する必要がある。また、より高い真空シール性が要求される場合には、ガスの放出量が少ないことも必要である。そのため、弾性体104a、104bとして、金属を用いることができる。このような金属材料としては、例えば、コバール、アルミニウム、あるいは鉄などが挙げられる。
【0024】
また、弾性体104a、104bが、レーザ光を吸収して発熱する材料であれば、接合面に吸光材を設ける必要はない。ここで、レーザ光に対する吸収性とは、加熱源としてのレーザ光を一部透過したり反射したりしても残りのレーザ光を吸収し、これにより加熱され得る性質をいう。このような金属の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金などが挙げられる。なお、接合構造体の用途によっては、接合面に吸光材を設けることもできる。
【0025】
図3は、弾性体の変形例を例示する模式図である。なお、図3(a)は、弾性体の右側方の長さが異なる変形例を例示する模式図であり、図3(b)は、弾性体の左右側方の長さが異なる変形例を例示する模式図である。にレーザ融着用の孔を設けた変形例を例示する模式図である。また、図3は、図2に表した接合構造体と同様に、図1に表した矢視Aの方向から眺めた模式図である。
【0026】
本実施形態にかかる接合構造体では、枠102と弾性体との接合は、前述したように、レーザ融着によって行うことができる。
そこで、図3(a)に表した接合構造体の弾性体104iにおいては、図3における右側方の長さが、弾性体104aの右側方よりも短い。そのため、弾性体104aおよび枠102には、弾性体104iに遮蔽されることなくレーザ光200を照射できる。このようにして、弾性体104aと枠102とを接合できる。
【0027】
一方、図3(b)に表した接合構造体の弾性体104cにおいては、図3における左右側方の長さが、弾性体104aの左右側方よりも短い。そのため、弾性体104cの右側方だけではなく、左側方においても遮蔽されることなく、弾性体104aにレーザ光200を照射できる。このとき、弾性体104a、104cが、前述したようなレーザ光を吸収して発熱する材料であれば、領域152a、156cにおける弾性体104a、104cに片側(図3(b)における上方)から照射できる。
【0028】
これによれば、接合部材100a、100bや弾性体104a、104cなどを上下反転させずに、レーザ光200を片側から照射させることにより接合部材を接合できる。そのため、例えば大きな接合部材であって、上限反転させることが困難な接合部材を接合する場合には、接合工程の簡略化、あるいは接合時間の短縮化を図ることができる。
【0029】
なお、領域152cにおいては、図2に表した領域152bと同様に、接合部材100bと弾性体104cとがレーザ融着によって接合されている。
【0030】
枠102は、接合部材100aと同様に、レーザ光200に対して透過性を有する必要がある。このように、枠102と、弾性体104a、104cと、をレーザ融着によって接合することができれば、その接合をより低温で行うことができる。また、高温の熱工程なども必要ない。そのため、接合工程の簡略化、あるいは接合時間の短縮化を図ることができる。
【0031】
図4は、弾性体の他の変形例を例示する模式図である。
図4に表した接合構造体の弾性体104dには、レーザ光200を通過させるための孔106dが設けられている。これと同様に、弾性体104eにも、レーザ光200を通過させるための孔106eが設けられている。このとき、孔106dと孔106eとは、図4に表したように、上下方向に重複しないように、左右方向にずれた位置に設けられている。
【0032】
そのため、弾性体104d、104eがレーザ光200に対する吸収性を有しておらず、弾性体104d、104eと枠102との接合面にレーザ光200に対する吸収性を有する吸光体を配置する場合に、孔106dを通して領域158eにおける弾性体104eにレーザ光200を照射することによって、弾性体104eと、枠102と、を接合できる。一方、孔106eを通して領域158dにおける弾性体104dにレーザ光200を照射することによって、弾性体104dと、枠102と、を接合できる。
【0033】
ここで、図3に関して前述したように、枠102は、接合部材100a、100bと同様に、レーザ光200に対して透過性を有する必要がある。このように、弾性体にレーザ光200を通過させるための孔を設けることによっても、レーザ融着によって枠102と弾性体104d、104eとを接合できる。そのため、図3に表した接合構造体と同様に、接合工程の簡略化、あるいは接合時間の短縮化を図ることができる。
【0034】
さらに、接合部材100a、100bや弾性体104d、104eなどを上下反転させずに、レーザ光200を両側から照射させることにより接合部材を接合できる。そのため、図3に関して説明した効果と同様に、接合工程の簡略化、あるいは接合時間の短縮化を図ることができる。なお、弾性体104d、104eには、孔106d、106eが必要となるため、接合部材100a、100bの全周囲に亘って接合することはできない。そのため、図4に表した弾性体104d、104eは、接合部材100aと接合部材100bとの間において真空シール性が要求されない場合に適用可能である。
【0035】
なお、孔106dと孔106eとの位置関係は、図4に表した位置関係に限定されず、例えば前後方向(図1参照)にずれた位置関係であってもよい。これによっても、孔106dと孔106eとを、上下方向に重複しないようにすることができる。すなわち、弾性体104d、104eに遮られることなく、レーザ光200を接合面(領域158d、領域158e)まで到達させることができればよい。また本変形例においては、図3(a)に表した弾性体104iと、図3(b)に表した弾性体104cと、を併用することも可能である。
【0036】
以下、枠と弾性体との接合手順、および弾性体と接合部材との接合手順の具体例について、図3(a)および図2に表した接合構造体を例に挙げて、図面を参照しつつ説明する。
図5〜図7は、図3(a)に表した接合構造体における、枠と弾性体との接合手順、および弾性体と接合部材との接合手順の具体例を例示する模式図である。
まず、図5(a)に表したように、図示しない供給機構などにより弾性体104iを枠102に対して所定位置に配置する。続いて、図5(b)に表したように、押し付け治具350を移動させ、枠102と押し付け治具350との間に弾性体104iを挟持する。続いて、図5(c)に表したように、枠102を通して弾性体104iにレーザ光200を照射する。これにより、枠102と弾性体104iとが接合される。ここで、押し付け治具350は、熱伝導率のより低い材料からなることが好ましい。これは、押し付け治具350が弾性体104iから熱を奪うことによって、枠102と弾性体104iとの接合効率が低下することを防止するためである。さらに、押し付け治具350については、弾性体104iがレーザ光200によって高熱になった際に、融解したり、弾性体104iと接合しないような耐熱性や剥離性が必要である。
【0037】
続いて、押し付け治具350を退避させ、図示しない反転機構などにより接合した枠102および弾性体104iを上下反転させる。そして、図5(a)および図5(b)に表した動作と同様にして、弾性体104aを枠102に対して所定位置に配置し、押し付け治具350を移動させ、枠102と押し付け治具350との間に弾性体104aを挟持する(図6(d))。続いて、図6(e)に表したように、枠102を通して弾性体104aにレーザ光200を照射する。これにより、枠102と弾性体104aとが接合される。続いて、図6(f)に表したように、図示しない供給機構などにより接合部材100bを所定位置に配置し、押し付け治具351を移動させ、接合部材100bと押し付け治具351との間に弾性体104iを挟持する。
【0038】
続いて、図7(g)に表したように、接合部材100bを通して弾性体104iにレーザ光200を照射する。これにより、弾性体104iと接合部材100bとが接合される。そして、押し付け治具351を退避させ、図示しない反転機構などにより接合した枠102、弾性体104a、104i、および接合部材100bを上下反転させる。続いて、図6(f)および図7(g)に表した動作と同様にして、図示しない供給機構などにより接合部材100aを所定位置に配置し、押し付け治具351を移動させ、接合部材100aと押し付け治具351との間に弾性体104aを挟持する。その後、図7(h)に表したように、接合部材100aを通して弾性体104aにレーザ光200を照射する。これにより、弾性体104aと接合部材100aとが接合される。
【0039】
続いて、押し付け治具351を退避させる。その後、必要に応じて、このままの状態で熱処理工程を行う。このようにして、接合構造体の接合工程が完了する。なお、接合部材100a、100bと、弾性体104a、104cと、の接合面における接合強度および真空シール性の信頼性をより向上させるために、図7(i)に表したように、弾性体104aと弾性体104cとの間にシール材を充填させてもよい。これについては、後に詳述する。
【0040】
本具体例の接合手順においては、枠102および接合部材100a、100bを通してレーザ光200を照射することによりそれぞれの接合を行うため、枠102および接合部材100a、100bはレーザ光200に対して透過性を有する必要がある。また、本具体例の接合手順は、弾性体を介して接触面(接合面)にレーザ光200を照射して接合することが容易ではない場合などに対して、有効な接合手順の1つである。つまり、レーザ光200に対して透過性を有する部材を通して接合面にレーザ光200を照射する必要がある場合などに、有効な接合手順の1つである。
【0041】
図8〜図9は、図2に表した接合構造体における、枠と弾性体との接合手順、および弾性体と接合部材との接合手順の他の具体例を例示する模式図である。
まず、図8(a)に表したように、図示しない供給機構などにより弾性体104a、104bを枠102に対して所定位置に配置する。続いて、図8(b)に表したように、押し付け治具350を移動させ、枠102と押し付け治具350との間に弾性体104a、104bを挟持する。続いて、図8(c)に表したように、押し付け治具350を通して弾性体104a、104bにレーザ光200を照射する。これにより、枠102と弾性体104a、104bとが接合される。そして、押し付け治具350を退避させる。
【0042】
続いて、図9(d)に表したように、図示しない供給機構などにより接合部材100a、100bを所定位置に配置し、押し付け治具350を移動させ、枠102と押し付け治具350との間に弾性体104a、104bを挟持する。その後、接合部材100a、100bを通して、弾性体104a、104bにレーザ光200を照射する。続いて、図9(e)に表したように、押し付け治具350を退避させる。その後、必要に応じて、このままの状態で熱処理工程を行う。このようにして、接合構造体の接合工程が完了する。なお、図7(i)に関して前述したように、接合部材100a、100bと、弾性体104a、104cと、の接合面における接合強度および真空シール性の信頼性をより向上させるために、弾性体104aと弾性体104cとの間にシール材を充填させてもよい(図9(f))。
【0043】
図10は、押し付け治具の具体例を例示する模式図である。なお、図10(a)は、レーザ光の移動方向に対して垂直な方向に凹部が設けられた具体例を例示する模式図であり、図10(b)は、押し付け面に回動部がさらに設けられた具体例を例示する模式図である。
図5に関して前述したように、押し付け治具は、弾性体がレーザ光によって高熱になった際に、融解したり、弾性体と接合しないような耐熱性や剥離性が必要である。そのため、押し付け治具は図10(a)および図10(b)に表したような構造を有すると、レーザ光の熱により融解したり、弾性体と接合するおそれは少なくなる。
【0044】
図10(a)に表した押し付け治具352は、弾性体104aを押し付けるための押し付け面352bであって、レーザ光200の照射位置の直下に凹部352aを有する。この凹部352aは、矢印Bで表したレーザ光200の移動方向に対して垂直方向に略沿うように凹部(溝)が設けられている。なお、凹部352aの形状は、丸孔、長孔、楕円形状などであってもよい。また、その凹部352aは、丸孔、長孔などがレーザ光200の照射方向(下方)に向かって貫通した形状を有していてもよい。
【0045】
このように、押し付け治具352は凹部352aを有するため、レーザ光200の照射位置の直下において、弾性体104aと押し付け治具352との接触部分は存在しない。そのため、レーザ光200のエネルギーを吸収することにより発熱した弾性体104の熱は、押し付け治具352には伝わりにくい。したがって、押し付け治具352は、レーザ光200の熱により融解したり、弾性体104aと接合するおそれは少ない。
【0046】
なお、レーザ光200は矢印Bに表したように移動するため、押し付け治具352はそれに伴って矢印Cに表したように移動する必要がある。すなわち、弾性体104aに対して移動する必要がある。そこで、図10(b)に表したように、押し付け面に回動部を有すると、押し付け治具は弾性体に対して移動しやすくなる。
【0047】
図10(b)に表した押し付け治具353は、押し付け面353bに回動部353cが設けられている。回動部353cは、押し付け面353bに対して回動自在に軸支されている。また、回動部353cの頂点は、押し付け面353cよりも上方、あるいは略同一面に位置している。そのため、押し付け治具353が矢印Cに表したように弾性体104aに対して移動する際には、回動部353cは押し付け面353bおよび弾性体104aに対して回動できる。したがって、押し付け面353bおよび回動部353cと弾性体104aとの摩擦力は小さくなるため、押し付け治具353は、弾性体104aに対して矢印Cの方向に移動しやすい。その他の構造については、図10(a)に表した押し付け治具の構造と同様である。
【0048】
図11は、押し付け治具の他の具体例を例示する模式図である。なお、図11(a)は、レーザ光の移動方向と並行な方向に凹部が設けられた具体例を例示する模式図であり、図11(b)は、レーザ光の移動方向に対して貫通溝が設けられた具体例を例示する模式図である。
図11(a)に表した押し付け治具354は、矢印Bで表したレーザ光200の移動方向と並行方向に略沿うように凹部354aが設けられている。この凹部354aは、図10(a)に表した押し付け治具352と同様に、押し付け面354aであってレーザ光200の照射位置の直下に設けられている。
【0049】
これによれば、レーザ光200の移動方向に略沿うように凹部354aが存在しているため、押し付け治具354はレーザ光200の移動に伴って移動しなくとも、レーザ光200の照射位置の直下において、弾性体104aと押し付け治具354との接触部分は存在しない。そのため、レーザ光200の移動に伴って移動しなくとも、押し付け治具354は、レーザ光200の熱により融解したり、弾性体104aと接合するおそれは少ない。
【0050】
一方、図11(b)に表した押し付け治具355は、レーザ光200の移動方向を長手方向とする2つの支持部355bを有する。そして、支持部355bは、レーザ光200の照射位置の直下において、貫通溝355aが存在するようにそれぞれ離間して設けられている。そのため、図11(a)に表した押し付け治具354と同様に、レーザ光200の移動に伴って移動しなくとも、押し付け治具355は、レーザ光200の熱により融解したり、弾性体104aと接合するおそれは少ない。また、支持部355bはそれぞれ別体であるため、貫通溝355aの幅(離間距離)を適宜設定することができる。このとき、レーザ光200のレーザスポット径と略同じか、あるいはそれよりもやや大きい値に貫通溝355aの幅を設定すると、押し付け効果をより高めることができるため好ましい。
【0051】
次に、本実施形態にかかる接合構造体および接合方法の変形例について、図面を参照しつつ説明する。
図12は、本実施形態にかかる接合構造体および接合方法の変形例を例示する模式図である。
図12に表した接合構造体には、弾性体104aと弾性体104bとの間、すなわち弾性体104a、104bの外側にシール材360が塗布されている。弾性体104a、104bの外側とは、例えば、接合部材100aと接合部材100bとの間において弾性体104a、104bにより取り囲まれた密閉空間の反対側(非密閉空間側)を意味している。このシール材360は、弾性体104a、104bと枠102との間の空間を充填させるように塗布されている。その他の構造および接合方法については、図2に表した接合構造体および接合方法と同様である。
【0052】
これによれば、接合部材100a、100bと、弾性体104a、104bと、の接合面における接合強度および真空シール性の信頼性をより向上させることができる。さらに、図2に表した接合構造体と同様に、接合部材100aと弾性体104aとの接合面、および接合部材100bと弾性体104bとの接合面に発生する応力を弾性体104a、104bの変形やシール材360の弾性により低減あるいは緩和できる。また、弾性体104a、104bの外側にシール材362を塗布することにより、図4に表したようなレーザ光200を通過させるための孔を弾性体に設けた場合でも、真空シール性をより向上させることができる。
【0053】
図13は、本実施形態にかかる接合構造体および接合方法の他の変形例を例示する模式図である。
図13に表した接合構造体には、図12に表した接合構造体と同様に、弾性体104aと弾性体104bとの間、すなわち弾性体104a、104bの外側(密閉空間の反対側)にシール材362が塗布されている。ここで、図12に表した接合構造体では、弾性体104a、104bと枠102との間の空間に殆ど隙間なくシール材360が充填されているのに対して、図13に表した接合構造体では、弾性体104a、104bと枠102との間に空間160が生ずるように塗布される。その他の構造および接合方法については、図2に表した接合構造体および接合方法と同様である。
【0054】
これによれば、接合部材100a、100bと、弾性体104a、104bと、の接合面における接合強度および真空シール性の信頼性をより向上させつつ、空間160が存在することにより、弾性体104a、104bの変形が容易になるため、その接合面に発生する応力をより低減あるいは緩和できる。また、弾性体104a、104bの外側にシール材362を塗布することにより、図12に関して前述したように、レーザ光200を通過させるための孔を弾性体に設けた場合にも、真空シール性をより向上させることができる。
【0055】
図14は、本実施形態にかかる接合構造体および接合方法のさらに他の変形例を例示する模式図である。
図14に表した接合構造体においては、弾性体104a、104bを接合する枠108と、接合部材100aと接合部材100bとの間の隙間を確保するための小片部110と、が別体となっている。その他の構造および接合方法については、図12に表した接合構造体および接合方法と同様である。
【0056】
これによれば、枠108と小片部110とが別体として設けられているため、枠108は小片部110に拘束されず、より自由度をもって変位することができる。そのため、接合部材100aと弾性体104aとの接合面、および接合部材100bと弾性体104bとの接合面に発生する応力をより低減あるいは緩和できる。さらに、シール材360が弾性体104aと弾性体104bとの間に充填されているため、図12に表した接合構造体と同様の効果を得ることができる。
【0057】
図15は、本実施形態にかかる接合構造体および接合方法のさらに他の変形例を例示する模式図である。
図15に表した接合構造体は、図14に表した接合構造体と同様に、弾性体104a、104iを接合する枠108と、接合部材100aと接合部材100bとの間の隙間を確保するための小片部110と、が別体となっている。また、枠108が接合部材100a、100bの外側に位置するように、接合部材100aと弾性体104aとが接合され、接合部材100bと弾性体104iとが接合されている。
【0058】
なお、弾性体104a、104iと、小片部110と、に囲まれた空間162には、シール材360は塗布されていない。そして、図5(a)〜図5(c)に表した接合手順と同様に、接合部材100bと図示しない押し付け治具との間に弾性体104iを挟持し、接合部材100bと弾性体104iとを接合する。続いて、接合部材100bの外側において、枠108を介してレーザ光200を下方から照射することにより、枠108と弾性体104iとを接合する。続いて、接合部材100bと弾性体100iとの接合の手順と同様にして、接合部材100aと弾性体104aとを図示しない押し付け治具を用いて接合する。続いて、枠108を介してレーザ光200を上方から照射することにより、接合部材100bと弾性体104iと枠108との接合構造体に、接合部材100aと弾性体104aとの接合構造体を接合する。このようにして、図15に表した接合構造体が得られる。
【0059】
これによれば、小片部110を接合部材100a、100bのより外側近傍に設置することができるため、例えば光学素子や電子素子などを設置する空間をより広くすることができる。また、弾性体104a、104iと、小片部110と、に囲まれた空間162が存在するため、接合部材100aと弾性体104aとの接合面、および接合部材100bと弾性体104iとの接合面に発生する応力をより低減あるいは緩和できる。
【0060】
図16は、本実施形態にかかる接合構造体および接合方法のさらに他の変形例を例示する模式図である。
図16に表した接合構造体は、図14に表した接合構造体と同様に、弾性体104f、104gを接合する枠108と、接合部材100aと接合部材100bとの間の隙間を確保するための小片部110と、が別体となっている。また、弾性体104fは、図16に表したように、屈曲部164fを有するように曲げられ、接合部材100aに接合されている。これと同様に、弾性体104gは、屈曲部164gを有するように曲げられ、接合部材100bに接合されている。
【0061】
これによれば、弾性体104fが曲げられたことによって生じた空間166fと、弾性体104gが曲げられたことによって生じた空間166gと、が存在しているため、図15に表した接合構造体と同様の効果を得ることができる。なお、接合部材100a、100bと、弾性体104f、104gと、の接合面における接合強度および真空シール性の信頼性をより向上させるために、空間166fと空間166gとの間、すなわち弾性体104f、104gの外側にシール材360を塗布してもよい。
【0062】
図17は、本実施形態にかかる接合構造体および接合方法のさらに他の変形例を例示する模式図である。
図17に表した接合構造体では、接合部材100aと接合部材100bとの間の隙間を確保するための小片部110は設けられているが、図14〜図16に表したような枠108は設けられていない。また、接合面に発生する応力を低減あるいは緩和する弾性体については、弾性体104hのみが設けられている。つまり、接合部材100aと弾性体104hとが、領域168aにおいて接合され、接合部材100bと弾性体104hとが、領域168bにおいて接合されている。その他の構造および接合方法については、図16に表した接合構造体および接合方法と同様である。
【0063】
これによれば、図14〜図16に表したような枠108が介在せず、弾性体104hのみで応力を低減あるいは緩和できる。そのため、接合部材100a、100bと弾性体104hとの接合面に発生する応力をより低減あるいは緩和できる。また、図14〜図16に表したような枠108を設ける必要がないため、接合工程の簡略化、あるいは接合時間の短縮化を図ることができる。
【0064】
次に、本実施形態にかかる接合構造体およびその接合方法に関してレーザ融着を行うレーザ加工装置について、図面を参照しつつ説明する。
図18は、レーザ加工装置を例示する模式図である。
図18に表したレーザ加工装置は、接合部材100a、100bや弾性体104a、104bや枠102などの被照射体を収納部から搬送し、所定位置に載置して3軸方向に調整する供給機構220と、レーザ光を集光し所定位置に照射するレンズなどの光学要素を有する光学系230a、230bと、レーザ光を発振するレーザ発振器260と、レーザ発振器260から発振されたレーザ光を光学系230a、230bへ伝送する光ファイバ240a、240bと、光学系230a、230bの位置を3軸方向に調整することができる3軸コントロールステージ250a、250bと、を備えている。
【0065】
さらに、図18に表したレーザ加工装置は、押し付け治具350などを所定位置に配置する押し付け治具機構357と、所定位置にシール材を塗布するシール塗布機構365と、接合部材100、100bや弾性体104a、104bなどの被照射体を上下反転させる反転機構375と、を備えている。
【0066】
供給機構220は、接合部材100a、100bや弾性体104a、104bや枠102などを図示しない収納部から搬送して所定位置に載置する。レーザ発振器260で発振されたレーザ光200は、光ファイバ240a、240bおよび光学系230a、230bの内部に設けられた図示しないレンズを通して、接合部材100aと接合部材100bとの接合面に集光され照射される。このとき、レーザ光200のレーザスポットの位置は、光学系230a、230bを支持している3軸コントロールステージ250a、250bによって制御される。
【0067】
また、押し付け治具機構357は、押し付け治具350を所定位置に適宜配置し、弾性体104a、104bを挟持する。さらに、シール塗布機構365は、必要に応じて所定位置にシール材を塗布する。反転機構375は、必要に応じて接合部材100a、100bや弾性体104a、104bなどを上下反転させて、接合時間をより短縮することができる。
【0068】
なお、供給機構220を3軸方向に調整することによって、レーザ光200の照射位置を制御することも可能である。また、必要に応じてレーザ発振器260から出力されたレーザ光をスプリッタ等により複数に分離して、複数の接合を同時に行うこともできる。つまり、レーザ加工装置は、光ファイバに限定されず、周知の分岐方法あるいは分離方法などを利用できる。また、必要に応じて複数のレーザ発振器260を備えることも可能である。
【0069】
さらに、図18においては、光学系230a、230bは接合部材100a、100bの両側からレーザ光200を照射する場合を例示しているが、これだけに限定されず、接合部材100a、100bの上方あるいは下方の片側からレーザ光200を照射してもよい。接合部材100a、100bの片側からレーザ光200を照射する場合には、光学系は1つであってもよい。これによれば、レーザ加工装置を簡略化することができる。
【0070】
図19は、レーザ加工装置の構成を例示するブロック図である。
図19に表したレーザ加工装置は、励起ランプ260aを有するレーザ発振器260と、レーザ発振器260に任意の大きさの駆動電力を印加するスイッチング電源270と、スイッチング電源270によりレーザ発振器260に印加される駆動電力を制御する制御用マイコン280と、を備えている。制御用マイコン280は、通信路285を介して制御用コンピュータ290に接続されている。例えば、レーザ光200がパルスレーザである場合には、制御用コンピュータ290は、使用者からの指示によりレーザ光200のパルス形状やパルス幅などを設定変更させるよう、スイッチング電源270を制御することができる。ここで、制御用マイコン280および制御用コンピュータ290により、制御用コンピュータが構成されている。
【0071】
すなわち、レーザ光200が例えばパルスレーザである場合には、レーザ発振器260から出射されるレーザ光のパルス形状は、スイッチング電源270により印加される駆動電力の波形に応じて制御される。制御用マイコン280および制御用コンピュータ290による制御の下で、スイッチング電源270によりレーザ発振器260に印加される駆動電力の波形が変更されることにより、レーザ発振器260から所定のピーク出力およびエネルギー密度を持つレーザ光200が出射されるようになっている。
【0072】
なお、図18および図19に表したレーザ加工装置の光学系230a、230bは、被照射体の画像を取得するためのカメラなどの光学要素をさらに有することもできる。これによれば、光学系230a、230bに設けられたカメラにより撮像された画像データは、制御用コンピュータ290に出力され、画像解析される。そして、その結果に基づいて、制御用コンピュータ290は、レーザ光200の照射位置が所定の位置となるように、3軸コントロールステージ250a、250bあるいは供給機構220を制御する。このようにすることで、より短時間で、より正確に所定の位置にレーザ光200を照射することができる。
【0073】
レーザ加工装置は図18および図19に表した構成を有することにより、図1〜図17に関して前述した接合方法を実行して接合構造体を製造することができる。すなわち、例えば、供給機構220は、接合部材100aと接合部材100bとの間に枠102や小片部110などを設置し、さらに接合部材100aと枠102との間に弾性体104aを設置し、接合部材100bと枠102との間に弾性体104bを設置できる。
【0074】
そして例えば、レーザ光200を所定の位置に照射することによって、枠102と弾性体104a、104bとを接合し、さらに接合部材100a、100bと弾性体104a、104bとを接合することができる。3軸コントロールステージ250a、250bあるいは供給機構220による被照射体の移動と、レーザ光200の照射と、を繰り返すことより、本実施形態にかかる接合構造体を製造することができる。なお、押し付け治具機構357と、シール塗布機構365と、反転機構375と、の動作は供給機構200などと同様に、制御用コンピュータ290によって制御される。
【0075】
以上説明したように、本実施形態によれば、複数の接合部材と枠とを弾性体を介して接合している。あるいは、枠を設けず、複数の接合部材同士を弾性体を介して接合している。そのため、接合部材の歪みなどによって生ずる接合面における応力を、弾性体が吸収して低減あるいは緩和できる。そのため、接合面が剥離したり、その接合面にクラックが生ずることを防止できる。また、接合面における接合強度および真空シール性の信頼性をより向上させるために、弾性体の間にシール材を充填あるいは塗布することもできる。さらに、レーザ融着によって接合を行うため、より低温で接合することができ、接合工程の長さもより短くすることができる。
【0076】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、接合構造体などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや弾性体および枠の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
例えば、図17に表した弾性体104hの形状は、これだけに限定されず、図16に表した弾性体104f、104gと同様に、屈曲部を有するように曲げられていてもよい。また、レーザ加工装置は、光ファイバ240a、240bだけに限定されず、周知の装置を利用できる。
また、前述した各具体例あるいはそれらが備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の形態にかかる接合構造体を例示する分解模式図である。
【図2】本実施形態にかかる接合構造体および接合方法を例示する側面模式図である。
【図3】弾性体の変形例を例示する模式図である。
【図4】弾性体の他の変形例を例示する模式図である。
【図5】枠と弾性体との接合手順、および弾性体と接合部材との接合手順の具体例を例示する模式図である。
【図6】枠と弾性体との接合手順、および弾性体と接合部材との接合手順の具体例を例示する模式図である。
【図7】枠と弾性体との接合手順、および弾性体と接合部材との接合手順の具体例を例示する模式図である。
【図8】枠と弾性体との接合手順、および弾性体と接合部材との接合手順の他の具体例を例示する模式図である。
【図9】枠と弾性体との接合手順、および弾性体と接合部材との接合手順の他の具体例を例示する模式図である。
【図10】押し付け治具の具体例を例示する模式図である。
【図11】押し付け治具の他の具体例を例示する模式図である。
【図12】本実施形態にかかる接合構造体および接合方法の変形例を例示する模式図である。
【図13】本実施形態にかかる接合構造体および接合方法の他の変形例を例示する模式図である。
【図14】本実施形態にかかる接合構造体および接合方法のさらに他の変形例を例示する模式図である。
【図15】本実施形態にかかる接合構造体および接合方法のさらに他の変形例を例示する模式図である。
【図16】本実施形態にかかる接合構造体および接合方法のさらに他の変形例を例示する模式図である。
【図17】本実施形態にかかる接合構造体および接合方法のさらに他の変形例を例示する模式図である。
【図18】レーザ加工装置を例示する模式図である。
【図19】レーザ加工装置の構成を例示するブロック図である。
【符号の説明】
【0078】
100a、100b 接合部材、 102 枠、 102a 小片部、 102b 接合部、 104a、104b、104c、104d、104e、104f、104g、104h、104i 弾性体、 106d、106e 孔、 108 枠、 110 小片部、 150a、150b、152a、152b、152c、152d、152e 領域、 154a、154b 屈曲部、 156a、156c、158d、158e 領域、 160、162 空間、 164f、164g 屈曲部、 166f、166g 空間、 168a、168b 領域、 200 レーザ光、 230a、230b 光学系、 240a、240b 光ファイバ、 250a、250b 3軸コントロールステージ、 260 レーザ発振器、 260a 励起ランプ、 270 スイッチング電源、 280 制御用マイコン、 285 通信路、 290 制御用コンピュータ、 350、351、352、353、354、355 押し付け治具、 352a、353a、354a 凹部、 352b、353b、354b 押し付け面、 353c 回動部、 355a 貫通溝、 355b 支持部、 357 押し付け治具機構、 360、362 シール材、356 シール塗布機構、 375 反転機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともいずれかがレーザ光に対して透過性を有する第1及び第2の接合部材と、
前記第1の接合部材と前記第2の接合部材との間にこれらに当接可能に設けられ、前記第1の接合部材と前記第2の接合部材との間の隙間を確保する小片部と、
前記第1の接合部材と前記第2の接合部材とにそれぞれレーザ光により接合され、前記第1の接合部材と前記第2の接合部材とを結合する弾性体と、
を備えたことを特徴とする接合構造体。
【請求項2】
前記第1の接合部材と、前記第2の接合部材と、の間に設けられた枠をさらに備え、
前記第1の接合部材及び前記第2の接合部材と、前記枠と、は、前記弾性体を介して結合されてなることを特徴とする請求項1記載の接合構造体。
【請求項3】
前記小片部と、前記枠と、は、一体化されてなることを特徴とする請求項2記載の接合構造体。
【請求項4】
前記弾性体は、前記第1の接合部材と前記第2の接合部材との間に環状に設けられ、
前記第1の接合部材と前記第2の接合部材との間において前記弾性体により取り囲まれた空間は、密閉されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の接合構造体。
【請求項5】
前記弾性体は、前記レーザ光を吸収する金属からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の接合構造体。
【請求項6】
前記第1の接合部材と前記第2の接合部材との間において、前記弾性体からみて前記弾性体により取り囲まれた空間とは反対側にシール材が塗布されてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の接合構造体。
【請求項7】
少なくともいずれかがレーザ光に対して透過性を有する第1及び第2の接合部材の間に弾性体を設け、
前記第1の接合部材に前記弾性体を当接させて前記弾性体にレーザ光を照射することにより前記第1の接合部材と前記弾性体とを接合し、
前記第2の接合部材に前記弾性体を当接させて前記弾性体にレーザ光を照射することにより前記第2の接合部材と前記弾性体とを接合することを特徴とする接合方法。
【請求項8】
前記第1の接合部材と前記第2の接合部材との間において、前記弾性体からみて前記弾性体により取り囲まれた空間とは反対側にシール材を塗布することを特徴とする請求項7記載の接合方法。
【請求項9】
レーザ光を出力するレーザ発振器と、
前記レーザ光を集光して被照射体に向けて照射する光学系と、
前記被照射体と、前記光学系と、の位置関係を制御するコントロールステージと、
前記被照射体を搬送してその位置を調整する供給機構と、
前記被照射体を挟持する押し付け治具の位置を調整する押し付け治具機構と、
第1及び第2の接合部材と、弾性体と、を搬送して当接させるように前記供給機構を制御し、前記押し付け治具が前記弾性体を挟持するように前記押し付け治具機構を制御し、前記第1及び前記第2の接合部材に当接された弾性体に前記レーザ光を照射するように前記コントロールステージを制御する制御部と、
を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項10】
前記被照射体を上下反転させる反転機構をさらに備えたことを特徴とする請求項9記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
前記光学系は、第1の光学系と、第2の光学系と、を有し、
前記第1の光学系と、前記第2の光学系と、は、前記被照射体を介して対向する位置から前記被照射体に向けて前記レーザ光を照射してなることを特徴とする請求項9記載のレーザ加工装置。
【請求項12】
前記第1の接合部材と前記第2の接合部材との間において前記弾性体により取り囲まれた空間の反対側にシール材を塗布するシール塗布機構をさらに備えたことを特徴とする請求項9〜11のいずれか1つに記載のレーザ加工装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−249237(P2009−249237A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99754(P2008−99754)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】