携帯ナビゲーション装置
【課題】GPS電波が届かない場所でも使用でき、歩行者の現在位置を正確に表示できる携帯ナビゲーション装置1を提供する。
【解決手段】
ナビゲーション開始位置において、ユーザが進行予定方向に携帯端末3を向けて方向設定ボタンを押圧する進行方向設定操作を受け付けて、その操作時における携帯端末3の方位をユーザの進行予定方向として記憶する進行方向記憶手段32aを備える。また、保持状態における、携帯端末3が向く方位を携帯保持方向として記憶する保持方向記憶手段32bを備える。さらに、ユーザの歩数を検出する歩数検出手段21を備える。また、進行予定方向と携帯保持方向との関係から、ユーザの進行方向を検出する進行方向検出手段23を備える。そして、予め記憶されたユーザの歩幅と、歩数と、ユーザの進行方向とから、ユーザの現在位置を算出し、地図情報とともに表示する。
【解決手段】
ナビゲーション開始位置において、ユーザが進行予定方向に携帯端末3を向けて方向設定ボタンを押圧する進行方向設定操作を受け付けて、その操作時における携帯端末3の方位をユーザの進行予定方向として記憶する進行方向記憶手段32aを備える。また、保持状態における、携帯端末3が向く方位を携帯保持方向として記憶する保持方向記憶手段32bを備える。さらに、ユーザの歩数を検出する歩数検出手段21を備える。また、進行予定方向と携帯保持方向との関係から、ユーザの進行方向を検出する進行方向検出手段23を備える。そして、予め記憶されたユーザの歩幅と、歩数と、ユーザの進行方向とから、ユーザの現在位置を算出し、地図情報とともに表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS電波が届かない場所でも使用できる携帯ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、目的地への経路案内(ナビゲーション)を行う経路案内装置として、車載用のカーナビゲーション装置や、経路案内機能を備えた携帯電話機やPDAの携帯端末等が知られている。このような経路案内装置としては、例えば、GPS(Global Positioning System:全地球無線側位システム)を利用して現在地点を測位するものがある。しかし、GPSを利用した経路案内装置では、地下鉄構内や建築物内部等、GPS衛星のGPS信号を受信しにくい場所では、現在地点を検知できないおそれがある。
【0003】
GPS衛星等を利用せずに移動方向や移動距離を検出するための技術としては、自律航法技術が知られている。車載装置向けの自律航法技術としては、例えば、地磁気センサと車速センサとを利用したものがある(特許文献1参照。)。この自律航法技術では、車両の進行軸に略一致するように固定した地磁気センサを利用して車両の進行方向を検出し、車速センサを利用して移動距離を検出している。
【0004】
一方、携帯用のナビゲーション装置では、車両等とは異なり、歩行者が手で持ったり、ポケットに入れたりするため、携帯端末がさまざまな方向を向く。そのため、車両の場合と違って、歩行者の進行方向を特定することが困難である。
そこで、歩行者向けのナビゲーション装置として、3軸磁気センサと3軸加速度センサとを用いて、歩行者の進行方向および歩数を検出するものが開発されている(下記特許文献2)。これらのセンサを用いれば、携帯端末の姿勢に関係なく、歩行者の進行方向を検出することができる。また、歩行者の歩幅が予め設定されていれば、上記進行方向と歩数とにより、GPS電波が届かない場所でも歩行者の現在位置を算出できる。
【0005】
【特許文献1】特開平8−327377号公報
【特許文献2】特開2008−64729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献2の装置では、歩行者の進行方向を正確に測定することが困難である。そのため、歩行者の現在位置を正確に表示することができなかった。
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、GPS電波が届かない場所でも使用でき、歩行者の現在位置を正確に表示できる携帯ナビゲーション装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、歩行者を案内する携帯ナビゲーション装置であって、
携帯端末に設けられ、互いに直交する3軸方向における地磁気の各強度を測定する3軸磁気センサと、
上記携帯端末に設けられ、上記3軸方向における重力加速度の各強度を測定する3軸加速度センサと、
上記3軸方向における、上記地磁気と上記重力加速度との測定値に基づいて、上記携帯端末が向く方位を算出する姿勢算出手段と、
ナビゲーション開始位置において、ユーザが進行予定方向に上記携帯端末を向けて方向設定ボタンを押圧する進行方向設定操作を受け付けて、その操作時における上記携帯端末の方位を上記ユーザの上記進行予定方向として記憶する進行方向記憶手段と、
上記ユーザにより、上記進行方向とは異なる方向に上記携帯端末を向けて保持する動作が行われた後に、その保持状態における上記携帯端末が向く方位を携帯保持方向として記憶する保持方向記憶手段と、
上記3軸加速度センサによって検知された加速度の時間変化に基づいて、上記ナビゲーション開始位置からの上記ユーザの歩数を検出する歩数検出手段と、
上記ユーザが歩行を開始した後に、上記姿勢算出手段によって算出された上記携帯端末の向く方位と、上記進行予定方向および上記携帯保持方向との関係から、上記ユーザの進行方向を検出する進行方向検出手段と、
予め記憶された上記ユーザの歩幅と、上記歩数と、上記進行方向検出手段により検出された上記ユーザの進行方向とから、該ユーザの現在位置を算出し、該現在位置を地図情報とともに表示する現在位置表示手段と、
を備えることを特徴とする携帯ナビゲーション装置にある(請求項1)。
【0009】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
本発明では、ユーザがGPS電波の届かない場所(地下街等)に行く場合、ナビゲーション開始位置にて、ユーザが、進行予定方向に携帯端末を向けて方向設定ボタンを押圧する進行方向設定操作を行う。例えば、ナビゲーションを開始すると当該操作を行うためのメニューが表示画面に表示され、ユーザがこのメニューの指示に従って操作することにより、上記進行方向設定操作が行われる。
【0010】
携帯端末に搭載されたセンサの軸に一致した座標系をセンサ座標系と呼ぶ。例えば、携帯端末スクリーンの横断方向をX軸、上下方向をY軸、スクリーン面の法線方向をZ軸とする。また、携帯端末を操作する人が立つ場所を基準とし、水平方向に互いに直交する軸をx軸、y軸、z軸とする座標系を地球座標系とする。
【0011】
ユーザが、携帯端末のセンサ座標系のY軸を進行予定方向に向けて、方向設定ボタンを押圧する進行方向設定操作を行う。
この操作を行うことにより、ユーザの進行方向は、地球座標系における、北を0°とし右回りの角度θ1で表示される方位として記憶される。また、携帯端末の、地球座標系に対する姿勢S1(θ1、φ1、η1)が記憶される。
【0012】
この後、ユーザが携帯端末をポケット等に入れて保持すると、携帯端末は上記進行方向θ1に向けた姿勢と異なる姿勢になる。この際の姿勢をS2(θ2、φ2、η2)とする。両者はS2=A・S1となる回転行列Aを介して結ばれている。この状態であっても、ユーザの進行予定方向θ1は記憶されている。
【0013】
ユーザが歩行を開始した後の、ポケットに入れられた携帯端末の姿勢をS3(θ3、φ3、η3)とする。また、その状態で仮にユーザが携帯端末を進行方向に向けたとした場合の、その携帯端末の姿勢をS4(θ4、φ4、η4)とする。センサを用いてS3を測定することにより、A−1・S3=S4から、上記姿勢S4(θ4、φ4、η4)を算出することができる。このθ4が、歩行中におけるユーザの進行方向である。
【0014】
そして地図データ上にて、ナビゲーション開始位置からユーザの歩幅を進行方向θ4に向けて歩数分だけ順次加算する処理を行うことにより、ユーザの現在位置を求めることができる。この現在位置を地図情報とともに表示する。これにより、GPS電波が届かない場所でも正確に現在位置を表示できるようになる。
また、GPS受信装置は消費電力が大きいため、上述のようにGPSに頼らずにナビゲーションを行うことにより、携帯端末のバッテリーを長持ちさせることができる。
【0015】
以上のごとく、本発明によれば、GPS電波が届かない場所でも使用でき、歩行者の現在位置を正確に表示できる携帯ナビゲーション装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
上述した本発明における好ましい実施の形態につき説明する。
本発明(請求項1)において、上記ユーザによる、目的地の入力操作を受け付けて、上記ナビゲーション開始位置から上記目的地までの案内経路を、上記地図情報に重ねて表示する案内経路表示手段を備えることが好ましい(請求項2)。
このようにすると、ユーザが目的地を入力することにより、地下街等の、GPS電波が届かない場所で使用した場合でも、その目的地までの案内経路を表示することが可能になる。
【0017】
また、保持方向記憶手段は、上記進行方向設定操作がされた後、上記歩数検出手段により検出された上記歩数が予め定められた値を超えた際に、上記携帯保持方向を記憶することが好ましい(請求項3)。
上述したように、進行方向設定操作が行われた後、ユーザがポケット等に携帯端末を収納するのであるが、進行方向設定操作が行われた後、すぐに携帯保持方向を測定すると、携帯端末がポケット内で安定していない場合がある。その場合、携帯保持方向を正確に測定できなくなり、ユーザの進行方向を正確に算出できなくなる。
そのため、進行方向設定操作がされた後、歩数検出手段により検出された歩数が予め定められた値(例えば5〜7歩程度)を超えた際に、携帯保持方向を測定して記憶する。これにより、携帯端末が安定してから測定できるため、携帯保持方向を正確に測定できる。
【0018】
また、上記重力加速度の測定値の変化に基づいて、上記保持状態における上記携帯端末の姿勢が変化したか否かを判断するとともに、該姿勢が変化したと判断した場合に、上記進行方向検出手段により検出される上記進行方向を補正する進行方向補正手段を備えることが好ましい(請求項4)。
このようにすると、歩行中に携帯端末がポケット等の中で倒れた場合でも、ユーザの進行方向を正確に算出することが可能になる。すなわち、ポケットに携帯端末を例えば縦方向に収納していた場合、携帯端末が倒れて横向きになることがある。この場合、ユーザの進行方向を正確に測定できなくなってしまうが、上記進行方向補正手段を具備することにより、この不具合を回避できる。
具体的には、3軸加速度センサを用いて重力加速度の方向を監視し、重力加速度が急に変化した場合に、携帯端末が倒れたと判断する。そして、倒れた後の携帯端末の姿勢をS’(θ’、φ’、η’)を測定する。S’とS2は、S’=B・S2となる回転行列Bを介して結ばれる。
【0019】
なお、上記3軸磁気センサは、上記携帯端末の操作面または表示面に直交するZ軸と、上記携帯端末の横幅方向を向くX軸と、上記Z軸と上記X軸との双方に直交するY軸との3軸方向における、上記地磁気の強度を測定し、上記3軸加速度センサは、上記X軸と上記Y軸と上記Z軸との3軸方向における上記加速度の強度を測定し、上記姿勢算出手段は、上記Y軸を水平面に投影したY投影線と、該水平面上に存在し磁北を向く直線とのなす角度を、上記携帯端末の向く方位として算出している。
このようにすると、携帯端末の向く方位を正確に測定しやすくなる。すなわち、上記Y軸は携帯端末の長手方向を向いているため、ユーザが進行方向設定操作を行った場合には、この長手方向(Y軸)を進行予定方向に向けて方向設定ボタンを押すことになる。そのため、ユーザが指し示す方向をそのまま進行予定方向として入力することができる。
【実施例】
【0020】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる携帯ナビゲーション装置につき、図1〜図13を用いて説明する。
図1に、本例にかかる携帯ナビゲーション装置1の概念図を示し、図2にブロック図を示す。図1に示すごとく、本例の携帯ナビゲーション装置1は、携帯端末3(図3参照)に設けられ、互いに直交する3軸(X軸,Y軸,Z軸)方向における地磁気Mの各強度を測定する3軸磁気センサ62を備える。
また、携帯端末3に設けられ、上記3軸方向における重力加速度Gの各強度を測定する3軸加速度センサ63を備える。
さらに、3軸方向における、地磁気Mと重力加速度Gとの測定値に基づいて、携帯端末3が向く方位θ(図4参照)を算出する姿勢算出手段20を備える。
そして、ナビゲーション開始位置において、ユーザ7(図5参照)が進行予定方向に携帯端末3を向けて方向設定ボタンを押圧する進行方向設定操作を受け付けて、その操作時における携帯端末3の方位をユーザ7の進行予定方向θ1として記憶する進行方向記憶手段32aを備える。
また、ユーザ7により、進行方向とは異なる方向に携帯端末3を向けて保持する動作(図6参照)が行われた後に、その保持状態における携帯端末3が向く方位を携帯保持方向θ2として記憶する保持方向記憶手段32bを備える。
さらに、3軸加速度センサ63によって検知された加速度の時間変化に基づいて、ナビゲーション開始位置からのユーザ7の歩数を検出する歩数検出手段21を備える(図9参照)。
また、ユーザ7が歩行を開始した後に、姿勢算出手段20によって算出された携帯端末3の向く方位θ3と、進行予定方向θ1および携帯保持方向θ2との関係から、ユーザ7の進行方向θ4を検出する進行方向検出手段23を備える(図9参照)
そして、予め記憶されたユーザ7の歩幅と、歩数と、進行方向検出手段23により検出されたユーザ7の進行方向θ4とから、ユーザ7の現在位置を算出し、現在位置を地図情報とともに表示する現在位置表示手段22を備える(図9、図11参照)。
【0021】
本例の携帯ナビゲーション装置1は、図3に示すごとく、携帯端末3(携帯電話)に組み込まれている。この携帯端末3は折り畳み可能であって、折り畳んだときに表示部14(液晶ディスプレイ)及び操作部15が内側に収容される折り畳み式のものである。図2に示すごとく、携帯端末3は、データ通信用のアンテナを含み、データの変復調を行う送受信部111と、データの送受信を制御する通信制御部11と、表示部14と、データ通信等を実施するのに必要な各種演算を行うCPU2と、各種データを記憶するROM31、RAM32とを有する。CPU2には、テンキーボタン150を含む操作部15と、音声通話用のマイク及びスピーカ16と、着信報知用のスピーカ12及びバイブレータ13とが接続されている。また、CPU2には、GPSアンテナ51とGPS測位部52とからなるGPS測位手段5と、3軸磁気センサ62と、3軸加速度センサ63とが接続されている。
【0022】
図2に示すごとく、ROM31には、ナビゲーションを実行するためのプログラム31aと、地図データ31bとが記憶されている。CPU2がプログラム31aを読み出して実行することにより、上述した姿勢算出手段20、歩数検出手段21、現在位置表示手段22、進行方向検出手段23、案内経路表示手段26、進行方向補正手段27が実現される。また、RAM32は、本例の進行方向記憶手段32aと、保持方向記憶手段32bとして使用されている。
【0023】
本例では図3に示すごとく、3軸磁気センサ62と3軸磁気センサ63を一体化した6Dセンサ6を使用している。3軸磁気センサ62と3軸加速度センサ63にはX軸、Y軸、Z軸が設定されている。3軸磁気センサ62は、これらX軸、Y軸、Z軸の3軸方向における地磁気Mの強度(Mx,My,Mz)を測定する。また、3軸加速度センサ63は、上記3軸方向における重力加速度Gの強度(Gx,Gy,Gz)を測定する。
【0024】
図4に示すごとく、携帯端末3のY軸を水平面Hに投影した投影線Y’と、水平面H上に存在し磁北を向く直線50とのなす角度θを、携帯端末3の向く方位θとしている。地球座標系に対する携帯端末の姿勢S(θ、φ、η)は、3軸磁気センサ62により測定した地磁気Mの強度(Mx,My,Mz)と、3軸加速度センサ63により測定した重力加速度Gの強度(Gx,Gy,Gz)とを用いて、例えば以下の数式を使って算出することができる。
【0025】
【数1】
【0026】
次に、図5〜図7を用いて、本例の携帯ナビゲーション装置1の使用方法および動作について説明する。
図5、図7(A)に示すごとく、地下街等の、GPS電波が届かない場所に行く場合に、ユーザ7は進行予定方向に携帯端末3を向けて方向設定ボタン8を押圧する進行方向設定操作を行う。この操作を受けると携帯ナビゲーション装置1は、操作時における携帯端末3の姿勢S1(θ1、φ1、η1)を測定して記憶する。
【0027】
次に、図6、図7(B)に示すごとく、ユーザ7は携帯端末3をポケット等に収納し保持する。この動作により携帯端末3の向きが変わる。この動作が行われた後、携帯ナビゲーション装置1は、保持状態における携帯端末3の向く姿勢S2(θ2、φ2、η2)を算出して記憶する。
【0028】
この結果、図7(C)に示すごとく、進行予定方向θ1と携帯保持方向θ2との関係が定まる。すなわち、保持されている携帯端末3の姿勢と、ユーザ7の進行方向との関係が定まる。
具体的には、S2=A・S1となる回転行列を算出する。また、ユーザが歩行を開始した後の、ポケットに入れられた携帯端末の姿勢をS3(θ3、φ3、η3)とする。そして、その状態で仮にユーザが携帯端末を進行方向に向けたとした場合の、その携帯端末の姿勢をS4(θ4、φ4、η4)とする。センサを用いてS3を測定することにより、A−1・S3=S4から、上記姿勢S4(θ4、φ4、η4)を算出することができる。このθ4が、歩行中におけるユーザの進行方向θ4となる。
【0029】
次に、ROM31(図2参照)に記憶されているプログラム31aのフローチャートの説明をする。
図8に示すごとく、プログラム31aを開始すると、表示部14(図2参照)に目標地点入力画面を表示する(ステップS1)。その後ステップS2に移り、ユーザ7が目標地点を入力したか否かを判断する。目標地点が入力されるまで上記入力画面を表示し続け、目標地点が入力された場合はYesと判断してステップS3に移る。
【0030】
ステップS3では、進行方向入力画面を表示する。すなわち、ユーザの進行方向に携帯端末3を向けて、方向設定ボタン8を押圧するよう、画面に指示が表示される。ステップS4では、この操作が行われたか否かを判断し、操作された場合はYesと判断してステップS5に移る。
【0031】
ステップS5では、上記数式1を用いて携帯端末の姿勢S1(θ1、φ1、η1)を測定し記憶する(図5、図7(A)参照)。
その後、ステップS6に移り、ユーザ7が所定歩数歩いたか否かを判定する。所定歩数とは、例えば5〜7歩程度である。ここでYesと判断された場合は、ステップS7に移り、携帯端末3の姿勢S2を、上記数式1を用いて測定し記憶する。このように、所定歩数歩いた後にS2を測定するのは、歩き始めた直後はポケット等に収納されている携帯端末3が不安定な場合があるからである。なお、ユーザ7の歩数は、3軸加速度センサ63(図1、図2参照)が測定した加速度の時間的変化を用いることにより検出する。
【0032】
次にステップS8に移り、S2・S1−1=Aを算出する。これにより、S2=A・S1を満たす回転行列Aが求まる。
その後、ステップS9に移り、ユーザが歩行を開始した後の、携帯端末3の姿勢S3を測定する。そして、A−1・S3=S4から、姿勢S4(θ4、φ4、η4)を算出する。このθ4が、ユーザの進む方向である。
【0033】
次に、3軸加速度センサ63を使って、ナビゲーション開始位置からの、ユーザ7の歩数を求め(ステップS11)、予め記憶されたユーザ7の歩幅と、上記歩数と、進行方向θ4とから、ユーザ7の現在位置を算出する(ステップS12)。すなわち、地図上にて、ナビゲーション開始位置からユーザ7の歩幅を進行方向θ4に向けて歩数分だけ順次加算する処理を行う。
なお、この際、地図に記されている道路から、ユーザ7の現在位置が外れてしまった場合、ユーザ7が道路上に存在するように位置修正する、いわゆるマップマッチング処理を行うことが好ましい。
【0034】
そして、表示部14(図3参照)にユーザ7の現在位置を地図情報とともに表示する(ステップS13)。また、ステップS14では、ユーザ7が目的地に到達したか否かを判断し、YesになるまでステップS9〜ステップS13を処理する。
【0035】
図10に、別のフローチャートを示す。このフローチャートは図8に続くもので、携帯端末3を収納した後、携帯端末3がポケット内で倒れる等して姿勢が変化した場合に、姿勢を補正するフローチャートである。
図示するごとく、ステップS9を処理した後ステップS9aに移り、携帯端末3の姿勢が変化したか否かを判断する。この判断は、3軸加速度センサ62により測定された、重力加速度に基づいて行う。すなわち、重力加速度の向きが急に変動した場合には、携帯端末3の姿勢が変化したと判断され、変動しない場合は、姿勢が変化しないと判断される。
【0036】
ステップS9aでYesと判断された場合、ステップS9bに移り、携帯端末3の姿勢S’を測定する。その後、S’・S2−1=Bを算出する(ステップS9c)。これにより、S’=B・S2を満たす回転行列Bが求まる。そして、A=A・Bと書き換える処理を行う(ステップS9d)。書き換え後のAを使ってS4を算出する(ステップS10)。これにより、携帯端末2の姿勢の変化を補正できるため、ユーザの進行方向θ4を正確に測定できる。
【0037】
図11は、表示部14の表示例である。このように、ユーザ7の現在位置を十字カーソル140で表示し、地図情報31bを併せて表示している。また、目的地までの案内経路80を表示している。
【0038】
次に、3軸磁気センサ62及び3軸加速度センサ63について説明する。本例では図12に示すごとく、3軸磁気センサ62(磁気センサ62X,62Y,62Z)と、3軸加速度センサ63(加速度センサ63X,63Y,63Z)とを一体的にモジュール化した6Dセンサ6を使用している。
各磁気センサ62は、地磁気を検出する磁気検出素子64を備えている。
各加速度センサ63は、加速度に応じて磁石体631が変位するように構成した磁石体変位ユニット630と、磁石体631の変位を検知する磁気検出ヘッド635とからなる。この磁気検出ヘッド635は、磁気センサ62と同じ仕様の磁気検出素子64を備えている。
【0039】
6Dセンサ6は、図12に示すごとく、3基の磁気センサ62X,62Y,62Zと、3基の加速度センサ63X,63Y,63Zと、6個の磁気検出素子64を制御する1個の制御回路612(制御ICチップ)と、を共通基板613に実装したものである。なお、本例では、共通基板613の外縁をなす直交2辺に沿ってX軸及びY軸を規定し、基板613の法線方向に沿ってZ軸を規定してある。また、本例の磁気検出素子64は、マグネト・インピーダンス素子(MI素子)からなる。
【0040】
磁石体変位ユニット630は、図12に示すごとく、共通基板613に固定した支持ポスト633と、該支持ポスト633に一方の端部を支持されていると共に他端に磁石体631を保持するカンチレバー634とよりなる。カンチレバー634は、材質Ni−Pよりなる略矩形板状のものである。本例のカンチレバー634は、その一端を支持ポスト633に固定してなり、支持ポスト633を中心として回動するよう弾性的に変形し得る。本例のカンチレバー634では、加速度に対する磁石体631の変位量を大きく確保できるよう、支持ポスト633側の付け根部分から自由端の手前に至る位置にかけて長孔634Hを設けてある。
【0041】
磁石体631は、図12に示すごとく、カンチレバー634の自由端側の端部に配設してある。本例の磁石体631は、カンチレバー634の表面に塗布した磁石体塗料の乾燥、硬化後の着磁により形成したものである。磁石体631は、カンチレバー634の撓みに応じて変位する。なお、このカンチレバー634の撓みや自由端の変位は微少であり、例えば、カンチレバー634の自由端の変位は、カンチレバー634の長さの10分の1程度以下である。
【0042】
磁気検出ヘッド635は、図12に示すごとく、カンチレバー634の自由端側の先端面に対向するように配設してある。磁気検出ヘッド635は、上記磁気センサ62と同一仕様の磁気検出素子64よりなる。本例では、上記のごとく、磁気検出素子64として、マグネト・インピーダンス素子を採用している。
【0043】
上記制御回路612は、図13に示すごとく、6基の磁気検出素子64を制御するように構成した回路である。制御回路612は、感磁体644に入力するパルス電流を生成する信号発生器601と、検出コイル645の誘起電圧に応じた計測信号を出力する信号処理部602とを含んでいる。信号発生器601は、所定のパルス電流を生成すると共に、パルス電流の立ち下がりに同期したトリガー信号を、信号処理部602のアナログスイッチ602aに向けて出力する。
【0044】
信号処理部602は、図13に示すごとく、いわゆるピークホールド回路として機能する同期検波回路と、増幅器602bとを組み合わせたものである。同期検波回路は、検出コイル645と信号処理部601との間の電気的な接続を上記トリガー信号に同期してオンオフするアナログスイッチ602a、及びこのアナログスイッチ602aを介して検出コイル645と接続したコンデンサ602cを用いて構成した回路である。
【0045】
制御回路612は、信号発生器601と各感磁体644との間の電気経路及び、信号処理部602と各検出コイル645との間の電気経路を切り替える電子スイッチ608を設けてある。これにより、X軸、Y軸、Z軸(図3参照)の各軸における磁界の強度を計測する3基の磁気検出素子64(磁気センサ62)、及びX軸、Y軸、Z軸の各軸における加速度を計測する3基の磁気検出素子64(磁気検出ヘッド635)の合計6基の磁気検出素子64について、所定の時間毎の切り替えによる制御回路612の時分割共用を可能としている。
【0046】
ここで、本例の磁気検出素子64による磁気検出方法について、簡単に説明しておく。本例の磁気検出方法は、感磁体644に通電したパルス電流の立ち下がり時に、検出コイル645に発生する誘起電圧を計測するというものである。磁界中に置かれた感磁体644に通電したパルス電流が遮断された瞬間、磁界のうち感磁体644の長手方向成分に比例した大きさの誘起電圧が検出コイル645の両端に発生する。本例の制御回路612では、検出コイル645の誘起電圧が、上記トリガー信号によりONとされたアナログスイッチ602aを介してコンデンサ602cに蓄積され、さらに、増幅器602bで増幅されて出力端子605から出力される。
本例の各磁気検出素子64は、以上のように、感磁体644の長手方向に作用する磁界の強度に応じた出力信号を、制御回路612を介して外部に出力する。
【0047】
次に、本例の作用効果について説明する。本例の携帯ナビゲーション装置1は、上述した姿勢S1と、S2とを測定し、これからS2=A・S1を満たす回転行列Aを算出する。ユーザ7が歩行を開始した後に、ポケットに入れられた携帯端末3の姿勢S3を測定し、A−1・S3=S4を算出する。これにより、ユーザ7が進む方位θ4が求まる。
姿勢S1、S2、S3は、3軸磁気センサ62と3軸加速度センサ63とを用いて正確に求めることができるため、これらを使うことにより、ユーザの進行方向θ4を正確に算出することが可能となる。
【0048】
また、図1に示すごとく、ユーザ7による、目的地の入力操作を受け付けて、ナビゲーション開始位置から目的地までの案内経路80を、地図情報に重ねて表示する案内経路表示手段26を備える。
このようにすると、ユーザ7が目的地を入力することにより、図11に示すごとく、地下街等の、GPS電波が届かない場所で使用した場合でも、その目的地までの案内経路80を表示することが可能になる。
【0049】
また、図8に示すごとく、保持方向記憶手段32bは、進行方向設定操作がされた後、歩数検出手段21により検出された歩数が予め定められた値を超えた際に、携帯保持方向を記憶する(ステップS6,S7参照)。
上述したように、進行方向設定操作が行われた後、ユーザ7がポケット等に携帯端末3を収納するのであるが、進行方向設定操作が行われた後、すぐに姿勢S2を測定すると、携帯端末3がポケット内で安定していない場合がある。その場合、姿勢S2を正確に測定できなくなり、ユーザ7の進行方向θ4を正確に算出できなくなる。
そのため、進行方向設定操作がされた後、歩数検出手段21により検出された歩数が予め定められた値(例えば5〜7歩程度)を超えた際に、姿勢S2を測定して記憶する。これにより、携帯端末3が安定してから測定できるため、姿勢S2を正確に測定できる。
【0050】
また本例では、図1、図10に示すごとく、重力加速度Gの測定値の変化に基づいて、保持状態における携帯端末3の姿勢が変化したか否かを判断するとともに、該姿勢が変化したと判断した場合に、進行方向検出手段23により検出される進行方向θ4を補正する進行方向補正手段27を備える。
このようにすると、歩行中に携帯端末3がポケット等の中で倒れた場合でも、ユーザ7の進行方向θ4を正確に算出することが可能になる。すなわち、ポケットに携帯端末3を例えば縦方向に収納していた場合、携帯端末3が倒れて横向きになることがある。この場合、ユーザ7の進行方向θ4を正確に測定できなくなってしまうが、上記進行方向補正手段27を具備することにより、この不具合を回避できる。
【0051】
また、図3、図4に示すごとく、3軸磁気センサ63は、携帯端末3の操作面または表示面に直交するZ軸と、携帯端末3の横幅方向を向くX軸と、Z軸とX軸との双方に直交するY軸との3軸方向における、地磁気Mの強度(Mx,My,Mz)を測定し、3軸加速度センサ63は、X軸とY軸とZ軸との3軸方向における加速度Gの強度(Gx,Gy,Gz)を測定し、姿勢算出手段20は、Y軸を水平面Hに投影したY投影線と、該水平面H上に存在し磁北を向く直線50とのなす角度θを、携帯端末3の向く方位として算出している。
このようにすると、携帯端末3の向く方位を正確に測定しやすくなる。すなわち、Y軸は携帯端末3の長手方向を向いているため、ユーザ7が進行方向設定操作を行った場合には、この長手方向(Y軸)を進行予定方向に向けて方向設定ボタンを押すことになる。そのため、ユーザ7が指し示す方向をそのまま進行予定方向θ1として入力することができる。
【0052】
以上のごとく、本例によれば、GPS電波が届かない場所でも使用でき、歩行者の現在位置を正確に表示できる携帯ナビゲーション装置1を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例1における、携帯ナビゲーション装置の概念図。
【図2】実施例1における、携帯ナビゲーション装置のブロック図。
【図3】実施例1における、携帯端末の一部切欠斜視図。
【図4】実施例1における、携帯端末と水平面との関係を表した図。
【図5】実施例1における、進行方向設定操作をする際の(A)ユーザの側面図(B)携帯端末の斜視図。
【図6】実施例1における、携帯保持状態における(A)ユーザの側面図(B)携帯の斜視図。
【図7】実施例1における、携帯端末の(A)進行方向設定操作をする際の正面図(B)保持状態での正面図(C)進行方向設定操作時と保持状態時との差を表した図。
【図8】実施例1における、プログラムのフローチャート。
【図9】図8に続くフローチャート。
【図10】図8に続くフローチャートであって、携帯端末の姿勢が変わった場合に補正する例。
【図11】実施例1における、携帯端末の表示例。
【図12】実施例1における、3軸磁気センサおよび3軸加速度センサの斜視図。
【図13】実施例1における、制御回路の構成を説明するための図。
【符号の説明】
【0054】
1 携帯ナビゲーション装置
2 CPU
3 携帯端末
20 姿勢算出手段
21 歩数検出手段
22 現在位置表示手段
23 進行方向検出手段
32a 進行方向記憶手段
32b 保持方向記憶手段
62 3軸磁気センサ
63 3軸加速度センサ
M 地磁気
G 重力加速度
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS電波が届かない場所でも使用できる携帯ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、目的地への経路案内(ナビゲーション)を行う経路案内装置として、車載用のカーナビゲーション装置や、経路案内機能を備えた携帯電話機やPDAの携帯端末等が知られている。このような経路案内装置としては、例えば、GPS(Global Positioning System:全地球無線側位システム)を利用して現在地点を測位するものがある。しかし、GPSを利用した経路案内装置では、地下鉄構内や建築物内部等、GPS衛星のGPS信号を受信しにくい場所では、現在地点を検知できないおそれがある。
【0003】
GPS衛星等を利用せずに移動方向や移動距離を検出するための技術としては、自律航法技術が知られている。車載装置向けの自律航法技術としては、例えば、地磁気センサと車速センサとを利用したものがある(特許文献1参照。)。この自律航法技術では、車両の進行軸に略一致するように固定した地磁気センサを利用して車両の進行方向を検出し、車速センサを利用して移動距離を検出している。
【0004】
一方、携帯用のナビゲーション装置では、車両等とは異なり、歩行者が手で持ったり、ポケットに入れたりするため、携帯端末がさまざまな方向を向く。そのため、車両の場合と違って、歩行者の進行方向を特定することが困難である。
そこで、歩行者向けのナビゲーション装置として、3軸磁気センサと3軸加速度センサとを用いて、歩行者の進行方向および歩数を検出するものが開発されている(下記特許文献2)。これらのセンサを用いれば、携帯端末の姿勢に関係なく、歩行者の進行方向を検出することができる。また、歩行者の歩幅が予め設定されていれば、上記進行方向と歩数とにより、GPS電波が届かない場所でも歩行者の現在位置を算出できる。
【0005】
【特許文献1】特開平8−327377号公報
【特許文献2】特開2008−64729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献2の装置では、歩行者の進行方向を正確に測定することが困難である。そのため、歩行者の現在位置を正確に表示することができなかった。
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、GPS電波が届かない場所でも使用でき、歩行者の現在位置を正確に表示できる携帯ナビゲーション装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、歩行者を案内する携帯ナビゲーション装置であって、
携帯端末に設けられ、互いに直交する3軸方向における地磁気の各強度を測定する3軸磁気センサと、
上記携帯端末に設けられ、上記3軸方向における重力加速度の各強度を測定する3軸加速度センサと、
上記3軸方向における、上記地磁気と上記重力加速度との測定値に基づいて、上記携帯端末が向く方位を算出する姿勢算出手段と、
ナビゲーション開始位置において、ユーザが進行予定方向に上記携帯端末を向けて方向設定ボタンを押圧する進行方向設定操作を受け付けて、その操作時における上記携帯端末の方位を上記ユーザの上記進行予定方向として記憶する進行方向記憶手段と、
上記ユーザにより、上記進行方向とは異なる方向に上記携帯端末を向けて保持する動作が行われた後に、その保持状態における上記携帯端末が向く方位を携帯保持方向として記憶する保持方向記憶手段と、
上記3軸加速度センサによって検知された加速度の時間変化に基づいて、上記ナビゲーション開始位置からの上記ユーザの歩数を検出する歩数検出手段と、
上記ユーザが歩行を開始した後に、上記姿勢算出手段によって算出された上記携帯端末の向く方位と、上記進行予定方向および上記携帯保持方向との関係から、上記ユーザの進行方向を検出する進行方向検出手段と、
予め記憶された上記ユーザの歩幅と、上記歩数と、上記進行方向検出手段により検出された上記ユーザの進行方向とから、該ユーザの現在位置を算出し、該現在位置を地図情報とともに表示する現在位置表示手段と、
を備えることを特徴とする携帯ナビゲーション装置にある(請求項1)。
【0009】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
本発明では、ユーザがGPS電波の届かない場所(地下街等)に行く場合、ナビゲーション開始位置にて、ユーザが、進行予定方向に携帯端末を向けて方向設定ボタンを押圧する進行方向設定操作を行う。例えば、ナビゲーションを開始すると当該操作を行うためのメニューが表示画面に表示され、ユーザがこのメニューの指示に従って操作することにより、上記進行方向設定操作が行われる。
【0010】
携帯端末に搭載されたセンサの軸に一致した座標系をセンサ座標系と呼ぶ。例えば、携帯端末スクリーンの横断方向をX軸、上下方向をY軸、スクリーン面の法線方向をZ軸とする。また、携帯端末を操作する人が立つ場所を基準とし、水平方向に互いに直交する軸をx軸、y軸、z軸とする座標系を地球座標系とする。
【0011】
ユーザが、携帯端末のセンサ座標系のY軸を進行予定方向に向けて、方向設定ボタンを押圧する進行方向設定操作を行う。
この操作を行うことにより、ユーザの進行方向は、地球座標系における、北を0°とし右回りの角度θ1で表示される方位として記憶される。また、携帯端末の、地球座標系に対する姿勢S1(θ1、φ1、η1)が記憶される。
【0012】
この後、ユーザが携帯端末をポケット等に入れて保持すると、携帯端末は上記進行方向θ1に向けた姿勢と異なる姿勢になる。この際の姿勢をS2(θ2、φ2、η2)とする。両者はS2=A・S1となる回転行列Aを介して結ばれている。この状態であっても、ユーザの進行予定方向θ1は記憶されている。
【0013】
ユーザが歩行を開始した後の、ポケットに入れられた携帯端末の姿勢をS3(θ3、φ3、η3)とする。また、その状態で仮にユーザが携帯端末を進行方向に向けたとした場合の、その携帯端末の姿勢をS4(θ4、φ4、η4)とする。センサを用いてS3を測定することにより、A−1・S3=S4から、上記姿勢S4(θ4、φ4、η4)を算出することができる。このθ4が、歩行中におけるユーザの進行方向である。
【0014】
そして地図データ上にて、ナビゲーション開始位置からユーザの歩幅を進行方向θ4に向けて歩数分だけ順次加算する処理を行うことにより、ユーザの現在位置を求めることができる。この現在位置を地図情報とともに表示する。これにより、GPS電波が届かない場所でも正確に現在位置を表示できるようになる。
また、GPS受信装置は消費電力が大きいため、上述のようにGPSに頼らずにナビゲーションを行うことにより、携帯端末のバッテリーを長持ちさせることができる。
【0015】
以上のごとく、本発明によれば、GPS電波が届かない場所でも使用でき、歩行者の現在位置を正確に表示できる携帯ナビゲーション装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
上述した本発明における好ましい実施の形態につき説明する。
本発明(請求項1)において、上記ユーザによる、目的地の入力操作を受け付けて、上記ナビゲーション開始位置から上記目的地までの案内経路を、上記地図情報に重ねて表示する案内経路表示手段を備えることが好ましい(請求項2)。
このようにすると、ユーザが目的地を入力することにより、地下街等の、GPS電波が届かない場所で使用した場合でも、その目的地までの案内経路を表示することが可能になる。
【0017】
また、保持方向記憶手段は、上記進行方向設定操作がされた後、上記歩数検出手段により検出された上記歩数が予め定められた値を超えた際に、上記携帯保持方向を記憶することが好ましい(請求項3)。
上述したように、進行方向設定操作が行われた後、ユーザがポケット等に携帯端末を収納するのであるが、進行方向設定操作が行われた後、すぐに携帯保持方向を測定すると、携帯端末がポケット内で安定していない場合がある。その場合、携帯保持方向を正確に測定できなくなり、ユーザの進行方向を正確に算出できなくなる。
そのため、進行方向設定操作がされた後、歩数検出手段により検出された歩数が予め定められた値(例えば5〜7歩程度)を超えた際に、携帯保持方向を測定して記憶する。これにより、携帯端末が安定してから測定できるため、携帯保持方向を正確に測定できる。
【0018】
また、上記重力加速度の測定値の変化に基づいて、上記保持状態における上記携帯端末の姿勢が変化したか否かを判断するとともに、該姿勢が変化したと判断した場合に、上記進行方向検出手段により検出される上記進行方向を補正する進行方向補正手段を備えることが好ましい(請求項4)。
このようにすると、歩行中に携帯端末がポケット等の中で倒れた場合でも、ユーザの進行方向を正確に算出することが可能になる。すなわち、ポケットに携帯端末を例えば縦方向に収納していた場合、携帯端末が倒れて横向きになることがある。この場合、ユーザの進行方向を正確に測定できなくなってしまうが、上記進行方向補正手段を具備することにより、この不具合を回避できる。
具体的には、3軸加速度センサを用いて重力加速度の方向を監視し、重力加速度が急に変化した場合に、携帯端末が倒れたと判断する。そして、倒れた後の携帯端末の姿勢をS’(θ’、φ’、η’)を測定する。S’とS2は、S’=B・S2となる回転行列Bを介して結ばれる。
【0019】
なお、上記3軸磁気センサは、上記携帯端末の操作面または表示面に直交するZ軸と、上記携帯端末の横幅方向を向くX軸と、上記Z軸と上記X軸との双方に直交するY軸との3軸方向における、上記地磁気の強度を測定し、上記3軸加速度センサは、上記X軸と上記Y軸と上記Z軸との3軸方向における上記加速度の強度を測定し、上記姿勢算出手段は、上記Y軸を水平面に投影したY投影線と、該水平面上に存在し磁北を向く直線とのなす角度を、上記携帯端末の向く方位として算出している。
このようにすると、携帯端末の向く方位を正確に測定しやすくなる。すなわち、上記Y軸は携帯端末の長手方向を向いているため、ユーザが進行方向設定操作を行った場合には、この長手方向(Y軸)を進行予定方向に向けて方向設定ボタンを押すことになる。そのため、ユーザが指し示す方向をそのまま進行予定方向として入力することができる。
【実施例】
【0020】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる携帯ナビゲーション装置につき、図1〜図13を用いて説明する。
図1に、本例にかかる携帯ナビゲーション装置1の概念図を示し、図2にブロック図を示す。図1に示すごとく、本例の携帯ナビゲーション装置1は、携帯端末3(図3参照)に設けられ、互いに直交する3軸(X軸,Y軸,Z軸)方向における地磁気Mの各強度を測定する3軸磁気センサ62を備える。
また、携帯端末3に設けられ、上記3軸方向における重力加速度Gの各強度を測定する3軸加速度センサ63を備える。
さらに、3軸方向における、地磁気Mと重力加速度Gとの測定値に基づいて、携帯端末3が向く方位θ(図4参照)を算出する姿勢算出手段20を備える。
そして、ナビゲーション開始位置において、ユーザ7(図5参照)が進行予定方向に携帯端末3を向けて方向設定ボタンを押圧する進行方向設定操作を受け付けて、その操作時における携帯端末3の方位をユーザ7の進行予定方向θ1として記憶する進行方向記憶手段32aを備える。
また、ユーザ7により、進行方向とは異なる方向に携帯端末3を向けて保持する動作(図6参照)が行われた後に、その保持状態における携帯端末3が向く方位を携帯保持方向θ2として記憶する保持方向記憶手段32bを備える。
さらに、3軸加速度センサ63によって検知された加速度の時間変化に基づいて、ナビゲーション開始位置からのユーザ7の歩数を検出する歩数検出手段21を備える(図9参照)。
また、ユーザ7が歩行を開始した後に、姿勢算出手段20によって算出された携帯端末3の向く方位θ3と、進行予定方向θ1および携帯保持方向θ2との関係から、ユーザ7の進行方向θ4を検出する進行方向検出手段23を備える(図9参照)
そして、予め記憶されたユーザ7の歩幅と、歩数と、進行方向検出手段23により検出されたユーザ7の進行方向θ4とから、ユーザ7の現在位置を算出し、現在位置を地図情報とともに表示する現在位置表示手段22を備える(図9、図11参照)。
【0021】
本例の携帯ナビゲーション装置1は、図3に示すごとく、携帯端末3(携帯電話)に組み込まれている。この携帯端末3は折り畳み可能であって、折り畳んだときに表示部14(液晶ディスプレイ)及び操作部15が内側に収容される折り畳み式のものである。図2に示すごとく、携帯端末3は、データ通信用のアンテナを含み、データの変復調を行う送受信部111と、データの送受信を制御する通信制御部11と、表示部14と、データ通信等を実施するのに必要な各種演算を行うCPU2と、各種データを記憶するROM31、RAM32とを有する。CPU2には、テンキーボタン150を含む操作部15と、音声通話用のマイク及びスピーカ16と、着信報知用のスピーカ12及びバイブレータ13とが接続されている。また、CPU2には、GPSアンテナ51とGPS測位部52とからなるGPS測位手段5と、3軸磁気センサ62と、3軸加速度センサ63とが接続されている。
【0022】
図2に示すごとく、ROM31には、ナビゲーションを実行するためのプログラム31aと、地図データ31bとが記憶されている。CPU2がプログラム31aを読み出して実行することにより、上述した姿勢算出手段20、歩数検出手段21、現在位置表示手段22、進行方向検出手段23、案内経路表示手段26、進行方向補正手段27が実現される。また、RAM32は、本例の進行方向記憶手段32aと、保持方向記憶手段32bとして使用されている。
【0023】
本例では図3に示すごとく、3軸磁気センサ62と3軸磁気センサ63を一体化した6Dセンサ6を使用している。3軸磁気センサ62と3軸加速度センサ63にはX軸、Y軸、Z軸が設定されている。3軸磁気センサ62は、これらX軸、Y軸、Z軸の3軸方向における地磁気Mの強度(Mx,My,Mz)を測定する。また、3軸加速度センサ63は、上記3軸方向における重力加速度Gの強度(Gx,Gy,Gz)を測定する。
【0024】
図4に示すごとく、携帯端末3のY軸を水平面Hに投影した投影線Y’と、水平面H上に存在し磁北を向く直線50とのなす角度θを、携帯端末3の向く方位θとしている。地球座標系に対する携帯端末の姿勢S(θ、φ、η)は、3軸磁気センサ62により測定した地磁気Mの強度(Mx,My,Mz)と、3軸加速度センサ63により測定した重力加速度Gの強度(Gx,Gy,Gz)とを用いて、例えば以下の数式を使って算出することができる。
【0025】
【数1】
【0026】
次に、図5〜図7を用いて、本例の携帯ナビゲーション装置1の使用方法および動作について説明する。
図5、図7(A)に示すごとく、地下街等の、GPS電波が届かない場所に行く場合に、ユーザ7は進行予定方向に携帯端末3を向けて方向設定ボタン8を押圧する進行方向設定操作を行う。この操作を受けると携帯ナビゲーション装置1は、操作時における携帯端末3の姿勢S1(θ1、φ1、η1)を測定して記憶する。
【0027】
次に、図6、図7(B)に示すごとく、ユーザ7は携帯端末3をポケット等に収納し保持する。この動作により携帯端末3の向きが変わる。この動作が行われた後、携帯ナビゲーション装置1は、保持状態における携帯端末3の向く姿勢S2(θ2、φ2、η2)を算出して記憶する。
【0028】
この結果、図7(C)に示すごとく、進行予定方向θ1と携帯保持方向θ2との関係が定まる。すなわち、保持されている携帯端末3の姿勢と、ユーザ7の進行方向との関係が定まる。
具体的には、S2=A・S1となる回転行列を算出する。また、ユーザが歩行を開始した後の、ポケットに入れられた携帯端末の姿勢をS3(θ3、φ3、η3)とする。そして、その状態で仮にユーザが携帯端末を進行方向に向けたとした場合の、その携帯端末の姿勢をS4(θ4、φ4、η4)とする。センサを用いてS3を測定することにより、A−1・S3=S4から、上記姿勢S4(θ4、φ4、η4)を算出することができる。このθ4が、歩行中におけるユーザの進行方向θ4となる。
【0029】
次に、ROM31(図2参照)に記憶されているプログラム31aのフローチャートの説明をする。
図8に示すごとく、プログラム31aを開始すると、表示部14(図2参照)に目標地点入力画面を表示する(ステップS1)。その後ステップS2に移り、ユーザ7が目標地点を入力したか否かを判断する。目標地点が入力されるまで上記入力画面を表示し続け、目標地点が入力された場合はYesと判断してステップS3に移る。
【0030】
ステップS3では、進行方向入力画面を表示する。すなわち、ユーザの進行方向に携帯端末3を向けて、方向設定ボタン8を押圧するよう、画面に指示が表示される。ステップS4では、この操作が行われたか否かを判断し、操作された場合はYesと判断してステップS5に移る。
【0031】
ステップS5では、上記数式1を用いて携帯端末の姿勢S1(θ1、φ1、η1)を測定し記憶する(図5、図7(A)参照)。
その後、ステップS6に移り、ユーザ7が所定歩数歩いたか否かを判定する。所定歩数とは、例えば5〜7歩程度である。ここでYesと判断された場合は、ステップS7に移り、携帯端末3の姿勢S2を、上記数式1を用いて測定し記憶する。このように、所定歩数歩いた後にS2を測定するのは、歩き始めた直後はポケット等に収納されている携帯端末3が不安定な場合があるからである。なお、ユーザ7の歩数は、3軸加速度センサ63(図1、図2参照)が測定した加速度の時間的変化を用いることにより検出する。
【0032】
次にステップS8に移り、S2・S1−1=Aを算出する。これにより、S2=A・S1を満たす回転行列Aが求まる。
その後、ステップS9に移り、ユーザが歩行を開始した後の、携帯端末3の姿勢S3を測定する。そして、A−1・S3=S4から、姿勢S4(θ4、φ4、η4)を算出する。このθ4が、ユーザの進む方向である。
【0033】
次に、3軸加速度センサ63を使って、ナビゲーション開始位置からの、ユーザ7の歩数を求め(ステップS11)、予め記憶されたユーザ7の歩幅と、上記歩数と、進行方向θ4とから、ユーザ7の現在位置を算出する(ステップS12)。すなわち、地図上にて、ナビゲーション開始位置からユーザ7の歩幅を進行方向θ4に向けて歩数分だけ順次加算する処理を行う。
なお、この際、地図に記されている道路から、ユーザ7の現在位置が外れてしまった場合、ユーザ7が道路上に存在するように位置修正する、いわゆるマップマッチング処理を行うことが好ましい。
【0034】
そして、表示部14(図3参照)にユーザ7の現在位置を地図情報とともに表示する(ステップS13)。また、ステップS14では、ユーザ7が目的地に到達したか否かを判断し、YesになるまでステップS9〜ステップS13を処理する。
【0035】
図10に、別のフローチャートを示す。このフローチャートは図8に続くもので、携帯端末3を収納した後、携帯端末3がポケット内で倒れる等して姿勢が変化した場合に、姿勢を補正するフローチャートである。
図示するごとく、ステップS9を処理した後ステップS9aに移り、携帯端末3の姿勢が変化したか否かを判断する。この判断は、3軸加速度センサ62により測定された、重力加速度に基づいて行う。すなわち、重力加速度の向きが急に変動した場合には、携帯端末3の姿勢が変化したと判断され、変動しない場合は、姿勢が変化しないと判断される。
【0036】
ステップS9aでYesと判断された場合、ステップS9bに移り、携帯端末3の姿勢S’を測定する。その後、S’・S2−1=Bを算出する(ステップS9c)。これにより、S’=B・S2を満たす回転行列Bが求まる。そして、A=A・Bと書き換える処理を行う(ステップS9d)。書き換え後のAを使ってS4を算出する(ステップS10)。これにより、携帯端末2の姿勢の変化を補正できるため、ユーザの進行方向θ4を正確に測定できる。
【0037】
図11は、表示部14の表示例である。このように、ユーザ7の現在位置を十字カーソル140で表示し、地図情報31bを併せて表示している。また、目的地までの案内経路80を表示している。
【0038】
次に、3軸磁気センサ62及び3軸加速度センサ63について説明する。本例では図12に示すごとく、3軸磁気センサ62(磁気センサ62X,62Y,62Z)と、3軸加速度センサ63(加速度センサ63X,63Y,63Z)とを一体的にモジュール化した6Dセンサ6を使用している。
各磁気センサ62は、地磁気を検出する磁気検出素子64を備えている。
各加速度センサ63は、加速度に応じて磁石体631が変位するように構成した磁石体変位ユニット630と、磁石体631の変位を検知する磁気検出ヘッド635とからなる。この磁気検出ヘッド635は、磁気センサ62と同じ仕様の磁気検出素子64を備えている。
【0039】
6Dセンサ6は、図12に示すごとく、3基の磁気センサ62X,62Y,62Zと、3基の加速度センサ63X,63Y,63Zと、6個の磁気検出素子64を制御する1個の制御回路612(制御ICチップ)と、を共通基板613に実装したものである。なお、本例では、共通基板613の外縁をなす直交2辺に沿ってX軸及びY軸を規定し、基板613の法線方向に沿ってZ軸を規定してある。また、本例の磁気検出素子64は、マグネト・インピーダンス素子(MI素子)からなる。
【0040】
磁石体変位ユニット630は、図12に示すごとく、共通基板613に固定した支持ポスト633と、該支持ポスト633に一方の端部を支持されていると共に他端に磁石体631を保持するカンチレバー634とよりなる。カンチレバー634は、材質Ni−Pよりなる略矩形板状のものである。本例のカンチレバー634は、その一端を支持ポスト633に固定してなり、支持ポスト633を中心として回動するよう弾性的に変形し得る。本例のカンチレバー634では、加速度に対する磁石体631の変位量を大きく確保できるよう、支持ポスト633側の付け根部分から自由端の手前に至る位置にかけて長孔634Hを設けてある。
【0041】
磁石体631は、図12に示すごとく、カンチレバー634の自由端側の端部に配設してある。本例の磁石体631は、カンチレバー634の表面に塗布した磁石体塗料の乾燥、硬化後の着磁により形成したものである。磁石体631は、カンチレバー634の撓みに応じて変位する。なお、このカンチレバー634の撓みや自由端の変位は微少であり、例えば、カンチレバー634の自由端の変位は、カンチレバー634の長さの10分の1程度以下である。
【0042】
磁気検出ヘッド635は、図12に示すごとく、カンチレバー634の自由端側の先端面に対向するように配設してある。磁気検出ヘッド635は、上記磁気センサ62と同一仕様の磁気検出素子64よりなる。本例では、上記のごとく、磁気検出素子64として、マグネト・インピーダンス素子を採用している。
【0043】
上記制御回路612は、図13に示すごとく、6基の磁気検出素子64を制御するように構成した回路である。制御回路612は、感磁体644に入力するパルス電流を生成する信号発生器601と、検出コイル645の誘起電圧に応じた計測信号を出力する信号処理部602とを含んでいる。信号発生器601は、所定のパルス電流を生成すると共に、パルス電流の立ち下がりに同期したトリガー信号を、信号処理部602のアナログスイッチ602aに向けて出力する。
【0044】
信号処理部602は、図13に示すごとく、いわゆるピークホールド回路として機能する同期検波回路と、増幅器602bとを組み合わせたものである。同期検波回路は、検出コイル645と信号処理部601との間の電気的な接続を上記トリガー信号に同期してオンオフするアナログスイッチ602a、及びこのアナログスイッチ602aを介して検出コイル645と接続したコンデンサ602cを用いて構成した回路である。
【0045】
制御回路612は、信号発生器601と各感磁体644との間の電気経路及び、信号処理部602と各検出コイル645との間の電気経路を切り替える電子スイッチ608を設けてある。これにより、X軸、Y軸、Z軸(図3参照)の各軸における磁界の強度を計測する3基の磁気検出素子64(磁気センサ62)、及びX軸、Y軸、Z軸の各軸における加速度を計測する3基の磁気検出素子64(磁気検出ヘッド635)の合計6基の磁気検出素子64について、所定の時間毎の切り替えによる制御回路612の時分割共用を可能としている。
【0046】
ここで、本例の磁気検出素子64による磁気検出方法について、簡単に説明しておく。本例の磁気検出方法は、感磁体644に通電したパルス電流の立ち下がり時に、検出コイル645に発生する誘起電圧を計測するというものである。磁界中に置かれた感磁体644に通電したパルス電流が遮断された瞬間、磁界のうち感磁体644の長手方向成分に比例した大きさの誘起電圧が検出コイル645の両端に発生する。本例の制御回路612では、検出コイル645の誘起電圧が、上記トリガー信号によりONとされたアナログスイッチ602aを介してコンデンサ602cに蓄積され、さらに、増幅器602bで増幅されて出力端子605から出力される。
本例の各磁気検出素子64は、以上のように、感磁体644の長手方向に作用する磁界の強度に応じた出力信号を、制御回路612を介して外部に出力する。
【0047】
次に、本例の作用効果について説明する。本例の携帯ナビゲーション装置1は、上述した姿勢S1と、S2とを測定し、これからS2=A・S1を満たす回転行列Aを算出する。ユーザ7が歩行を開始した後に、ポケットに入れられた携帯端末3の姿勢S3を測定し、A−1・S3=S4を算出する。これにより、ユーザ7が進む方位θ4が求まる。
姿勢S1、S2、S3は、3軸磁気センサ62と3軸加速度センサ63とを用いて正確に求めることができるため、これらを使うことにより、ユーザの進行方向θ4を正確に算出することが可能となる。
【0048】
また、図1に示すごとく、ユーザ7による、目的地の入力操作を受け付けて、ナビゲーション開始位置から目的地までの案内経路80を、地図情報に重ねて表示する案内経路表示手段26を備える。
このようにすると、ユーザ7が目的地を入力することにより、図11に示すごとく、地下街等の、GPS電波が届かない場所で使用した場合でも、その目的地までの案内経路80を表示することが可能になる。
【0049】
また、図8に示すごとく、保持方向記憶手段32bは、進行方向設定操作がされた後、歩数検出手段21により検出された歩数が予め定められた値を超えた際に、携帯保持方向を記憶する(ステップS6,S7参照)。
上述したように、進行方向設定操作が行われた後、ユーザ7がポケット等に携帯端末3を収納するのであるが、進行方向設定操作が行われた後、すぐに姿勢S2を測定すると、携帯端末3がポケット内で安定していない場合がある。その場合、姿勢S2を正確に測定できなくなり、ユーザ7の進行方向θ4を正確に算出できなくなる。
そのため、進行方向設定操作がされた後、歩数検出手段21により検出された歩数が予め定められた値(例えば5〜7歩程度)を超えた際に、姿勢S2を測定して記憶する。これにより、携帯端末3が安定してから測定できるため、姿勢S2を正確に測定できる。
【0050】
また本例では、図1、図10に示すごとく、重力加速度Gの測定値の変化に基づいて、保持状態における携帯端末3の姿勢が変化したか否かを判断するとともに、該姿勢が変化したと判断した場合に、進行方向検出手段23により検出される進行方向θ4を補正する進行方向補正手段27を備える。
このようにすると、歩行中に携帯端末3がポケット等の中で倒れた場合でも、ユーザ7の進行方向θ4を正確に算出することが可能になる。すなわち、ポケットに携帯端末3を例えば縦方向に収納していた場合、携帯端末3が倒れて横向きになることがある。この場合、ユーザ7の進行方向θ4を正確に測定できなくなってしまうが、上記進行方向補正手段27を具備することにより、この不具合を回避できる。
【0051】
また、図3、図4に示すごとく、3軸磁気センサ63は、携帯端末3の操作面または表示面に直交するZ軸と、携帯端末3の横幅方向を向くX軸と、Z軸とX軸との双方に直交するY軸との3軸方向における、地磁気Mの強度(Mx,My,Mz)を測定し、3軸加速度センサ63は、X軸とY軸とZ軸との3軸方向における加速度Gの強度(Gx,Gy,Gz)を測定し、姿勢算出手段20は、Y軸を水平面Hに投影したY投影線と、該水平面H上に存在し磁北を向く直線50とのなす角度θを、携帯端末3の向く方位として算出している。
このようにすると、携帯端末3の向く方位を正確に測定しやすくなる。すなわち、Y軸は携帯端末3の長手方向を向いているため、ユーザ7が進行方向設定操作を行った場合には、この長手方向(Y軸)を進行予定方向に向けて方向設定ボタンを押すことになる。そのため、ユーザ7が指し示す方向をそのまま進行予定方向θ1として入力することができる。
【0052】
以上のごとく、本例によれば、GPS電波が届かない場所でも使用でき、歩行者の現在位置を正確に表示できる携帯ナビゲーション装置1を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例1における、携帯ナビゲーション装置の概念図。
【図2】実施例1における、携帯ナビゲーション装置のブロック図。
【図3】実施例1における、携帯端末の一部切欠斜視図。
【図4】実施例1における、携帯端末と水平面との関係を表した図。
【図5】実施例1における、進行方向設定操作をする際の(A)ユーザの側面図(B)携帯端末の斜視図。
【図6】実施例1における、携帯保持状態における(A)ユーザの側面図(B)携帯の斜視図。
【図7】実施例1における、携帯端末の(A)進行方向設定操作をする際の正面図(B)保持状態での正面図(C)進行方向設定操作時と保持状態時との差を表した図。
【図8】実施例1における、プログラムのフローチャート。
【図9】図8に続くフローチャート。
【図10】図8に続くフローチャートであって、携帯端末の姿勢が変わった場合に補正する例。
【図11】実施例1における、携帯端末の表示例。
【図12】実施例1における、3軸磁気センサおよび3軸加速度センサの斜視図。
【図13】実施例1における、制御回路の構成を説明するための図。
【符号の説明】
【0054】
1 携帯ナビゲーション装置
2 CPU
3 携帯端末
20 姿勢算出手段
21 歩数検出手段
22 現在位置表示手段
23 進行方向検出手段
32a 進行方向記憶手段
32b 保持方向記憶手段
62 3軸磁気センサ
63 3軸加速度センサ
M 地磁気
G 重力加速度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者を案内する携帯ナビゲーション装置であって、
携帯端末に設けられ、互いに直交する3軸方向における地磁気の各強度を測定する3軸磁気センサと、
上記携帯端末に設けられ、上記3軸方向における重力加速度の各強度を測定する3軸加速度センサと、
上記3軸方向における、上記地磁気と上記重力加速度との測定値に基づいて、上記携帯端末が向く方位を算出する姿勢算出手段と、
ナビゲーション開始位置において、ユーザが進行予定方向に上記携帯端末を向けて方向設定ボタンを押圧する進行方向設定操作を受け付けて、その操作時における上記携帯端末の方位を上記ユーザの上記進行予定方向として記憶する進行方向記憶手段と、
上記ユーザにより、上記進行方向とは異なる方向に上記携帯端末を向けて保持する動作が行われた後に、その保持状態における上記携帯端末が向く方位を携帯保持方向として記憶する保持方向記憶手段と、
上記3軸加速度センサによって検知された加速度の時間変化に基づいて、上記ナビゲーション開始位置からの上記ユーザの歩数を検出する歩数検出手段と、
上記ユーザが歩行を開始した後に、上記姿勢算出手段によって算出された上記携帯端末の向く方位と、上記進行予定方向および上記携帯保持方向との関係から、上記ユーザの進行方向を検出する進行方向検出手段と、
予め記憶された上記ユーザの歩幅と、上記歩数と、上記進行方向検出手段により検出された上記ユーザの進行方向とから、該ユーザの現在位置を算出し、該現在位置を地図情報とともに表示する現在位置表示手段と、
を備えることを特徴とする携帯ナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1において、上記ユーザによる、目的地の入力操作を受け付けて、上記ナビゲーション開始位置から上記目的地までの案内経路を、上記地図情報に重ねて表示する案内経路表示手段を備えることを特徴とする携帯ナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、保持方向記憶手段は、上記進行方向設定操作がされた後、上記歩数検出手段により検出された上記歩数が予め定められた値を超えた際に、上記携帯保持方向を記憶することを特徴とする携帯ナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項において、上記重力加速度の測定値の変化に基づいて、上記保持状態における上記携帯端末の姿勢が変化したか否かを判断するとともに、該姿勢が変化したと判断した場合に、上記進行方向検出手段により検出される上記進行方向を補正する進行方向補正手段を備えることを特徴とする携帯ナビゲーション装置。
【請求項1】
歩行者を案内する携帯ナビゲーション装置であって、
携帯端末に設けられ、互いに直交する3軸方向における地磁気の各強度を測定する3軸磁気センサと、
上記携帯端末に設けられ、上記3軸方向における重力加速度の各強度を測定する3軸加速度センサと、
上記3軸方向における、上記地磁気と上記重力加速度との測定値に基づいて、上記携帯端末が向く方位を算出する姿勢算出手段と、
ナビゲーション開始位置において、ユーザが進行予定方向に上記携帯端末を向けて方向設定ボタンを押圧する進行方向設定操作を受け付けて、その操作時における上記携帯端末の方位を上記ユーザの上記進行予定方向として記憶する進行方向記憶手段と、
上記ユーザにより、上記進行方向とは異なる方向に上記携帯端末を向けて保持する動作が行われた後に、その保持状態における上記携帯端末が向く方位を携帯保持方向として記憶する保持方向記憶手段と、
上記3軸加速度センサによって検知された加速度の時間変化に基づいて、上記ナビゲーション開始位置からの上記ユーザの歩数を検出する歩数検出手段と、
上記ユーザが歩行を開始した後に、上記姿勢算出手段によって算出された上記携帯端末の向く方位と、上記進行予定方向および上記携帯保持方向との関係から、上記ユーザの進行方向を検出する進行方向検出手段と、
予め記憶された上記ユーザの歩幅と、上記歩数と、上記進行方向検出手段により検出された上記ユーザの進行方向とから、該ユーザの現在位置を算出し、該現在位置を地図情報とともに表示する現在位置表示手段と、
を備えることを特徴とする携帯ナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1において、上記ユーザによる、目的地の入力操作を受け付けて、上記ナビゲーション開始位置から上記目的地までの案内経路を、上記地図情報に重ねて表示する案内経路表示手段を備えることを特徴とする携帯ナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、保持方向記憶手段は、上記進行方向設定操作がされた後、上記歩数検出手段により検出された上記歩数が予め定められた値を超えた際に、上記携帯保持方向を記憶することを特徴とする携帯ナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項において、上記重力加速度の測定値の変化に基づいて、上記保持状態における上記携帯端末の姿勢が変化したか否かを判断するとともに、該姿勢が変化したと判断した場合に、上記進行方向検出手段により検出される上記進行方向を補正する進行方向補正手段を備えることを特徴とする携帯ナビゲーション装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−145180(P2010−145180A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321411(P2008−321411)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(501034106)アイチ・マイクロ・インテリジェント株式会社 (42)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(501034106)アイチ・マイクロ・インテリジェント株式会社 (42)
【Fターム(参考)】
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