説明

携帯通信端末

【課題】カメラが撮像した映像データをリアルタイムで保存することができる携帯通信端末を提供する。
【解決手段】携帯通信端末1において、画像用エンコーダ103は、カメラ102から入力された映像信号をJPEG形式で圧縮符号化して、写真画像データ41を生成する。携帯通信端末1が写真画像データ41の生成及び保存処理を繰り返し実行することにより、1秒間あたりに複数の写真画像データ41が生成される。加速度センサ108が所定値以上の加速度を出力した場合、結合プログラム110は、送信対象データを特定する。送信対象データは、所定値以上の加速度が出力された基準時刻から12.5秒遡った時刻と基準時刻から12.5秒経過した時刻との間に生成された写真画像データ41である。携帯通信端末1は、送信対象データを一つにまとめて結合データ43を生成する。結合データ43は、管理サーバ3に送信される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯通信端末に関し、さらに詳しくは、携帯通信端末をドライブレコーダとして利用する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライブレコーダは、自動車などの車両前方の景色の録画や、車内及び車外の音声の録音などを行う装置である。ドライブレコーダが記録したデータを利用することにより、交通事故の原因の特定が容易となる。ドライブレコーダを車両に搭載することにより、運転者の安全運転に対する意識が向上するというメリットもある。
【0003】
従来から市販されているドライブレコーダは、カメラとドライブレコーダ本体とをケーブルを介して接続するタイプが一般的である。このタイプのドライブレコーダは、自動車に取り付ける作業が煩雑である。そこで、カメラ機能を有する携帯通信端末にドライブレコーダ機能を組み込むことが検討されている(たとえば、特許文献1参照)。この場合、携帯端末をダッシュボード上に固定すればよいため、ドライブレコーダの取り付け作業を簡略化することができる。
【0004】
特許文献1に係る携帯端末は、カメラが撮影した撮影画像データを圧縮符号化して動画ストリームデータを生成する。携帯端末は、動画ストリームデータと、マイクから入力された音声データを圧縮符号化した音声ストリームデータとを多重化して多重化ストリームを生成する。多重化ストリームは、通信網を介して外部記憶装置に送信される。
【0005】
しかし、携帯端末に搭載されるCPU(Central Processing Unit)の処理能力は、パーソナルコンピュータに搭載されるCPUの処理能力に比べて大幅に低い。携帯端末で撮影画像データから動画ストリームデータを生成する場合、動画ストリームデータの生成時間は、実際の撮影時間より長くなる。このように、携帯端末は、カメラから出力される撮影画像データを符号化して、動画ストリームデータをリアルタイムに生成することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−27464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、カメラが撮像した映像データをリアルタイムで圧縮符号化することができる携帯通信端末を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
本発明による携帯通信端末は、車両に設置される。本発明による携帯通信端末は、カメラと、写真画像生成手段と、メモリと、送信手段とを備える。カメラは、車両の外側または内側の状況を撮影する。写真画像生成手段は、カメラから入力された映像信号を符号化して、第1所定期間あたりに複数の写真画像データを連続的に生成する。メモリは、写真画像生成手段により生成された複数の写真画像データを記憶する。送信手段は、メモリに記憶された複数の写真画像データを送信する。
【0009】
写真画像データの生成時間は、動画ストリームデータの生成時間に比べて非常に短い。したがって、本発明による携帯通信端末は、カメラから出力される映像信号をリアルタイムで符号化することができる。
【0010】
好ましくは、本発明による携帯通信端末は、さらに、マイクと、録音手段とを備える。録音手段は、マイクから第2所定期間内に入力された音声信号を符号化して、音声データを連続的に生成する。録音手段により生成された音声データは、メモリに記憶される。送信手段は、メモリに記憶された音声データを送信する。
【0011】
本発明による携帯通信端末は、写真画像データの生成と並行して、音声を録音した音声データを生成する。写真画像データだけでなく、音声データを利用することにより、車両の状況の把握がさらに容易となる。
【0012】
好ましくは、本発明による携帯通信端末は、さらに、加速度計測手段と、特定手段とを備える。加速度計測手段は、車両の加速度を計測する。特定手段は、加速度計測手段が所定値以上の加速度を計測した時刻を基準時刻として、基準時刻から所定の事前対象時間を遡った時刻と基準時刻から所定の事後対象時間を経過した時刻との間の期間を送信対象期間に設定する。特定手段は、メモリに記憶されたデータのうち、送信対象期間に生成されたデータを、送信手段により送信されるべき対象に特定する。
【0013】
本発明による携帯通信端末は、加速度検出手段が所定値以上の加速度を検出した時刻に基づいて送信対象期間を設定して、送信すべきデータを特定する。これにより、交通事故などが発生した時刻における車両の状況を容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態による携帯通信端末の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】携帯通信端末の取り付け状態を示す図である。
【図3】画像生成タイミングと録音タイミングとを示すタイムチャートである。
【図4】ドライブレコーダとして動作を開始してから終了するまでの動作を示すフローチャートである。
【図5】撮影処理のフローチャートである。
【図6】録音処理のフローチャートである。
【図7】送信対象データと所定値以上の加速度を検出した時刻との対応関係を示す図である。
【図8】送信判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0016】
{携帯通信端末1の構成}
図1は、本発明の実施の形態による携帯通信端末1を示す機能ブロック図である。携帯通信端末1は、ドライブレコーダ機能が組み込まれた携帯電話である。携帯通信端末1は、自動車などの車両に設置された状態で、車両前方の景色の映像の記録と、車内及び車外の音声の録音とを行う。以下、携帯通信端末1が車両に設置された場合を説明する。
【0017】
携帯通信端末1は、車両前方の映像から1秒間あたりに複数の写真画像データ41を生成する。携帯通信端末1は、録音時間が1秒間の音声データ42を繰り返し生成する。複数の写真画像データ41,41・・・及び複数の音声データ42,42・・・とは、結合データ43として一つにまとめられる。結合データ43は、ネットワーク2を介して管理サーバ3に送信される。管理サーバ3は、携帯通信端末1から受信した結合データ43を、メモリ31に保存する。
【0018】
車両が交通事故に関与した場合、携帯通信端末1に大きな加速度が発生する可能性が高い。そこで、携帯通信端末1は、所定値以上の加速度を検出したときに、結合データ43を生成して管理サーバ3に送信する。これにより、車両の管理者は、管理サーバ3に送信された結合データ43を利用して、交通事故の原因などを特定することができる。
【0019】
携帯通信端末1の構成について説明する。携帯通信端末1は、コントローラ101と、カメラ102と、画像用エンコーダ103と、モニタ104と、マイク105と、音声用エンコーダ106と、メモリ107と、加速度センサ108と、送信指示プログラム109と、結合プログラム110と、メーラー111と、操作キー112と、通信コントローラ113とを備える。
【0020】
コントローラ101は、CPU及びRAM(Random Access Memory)などを備え、携帯通信端末1の各構成要素を制御する。
【0021】
カメラ102は、被写体を撮影する。具体的には、カメラ102は、自動車前方の景色を被写体として撮影して、映像信号を出力する。画像用エンコーダ103は、カメラ102から入力された映像信号を符号化して、1秒間あたりに複数の写真画像データ41,41・・・を生成する。モニタ104は、液晶ディスプレイなどであり、カメラ102が撮影した映像を表示する。
【0022】
マイク105は、車内及び車外の音声を入力して音声信号を出力する。音声用エンコーダ106は、マイク105から1秒間に入力された音声信号を符号化して音声データ42を連続的に生成する。
【0023】
メモリ107は、フラッシュメモリなどである。メモリ107は、画像用エンコーダ103により生成された複数の写真画像データ41,41・・・と、音声用エンコーダ106により生成された音声データ42とを記憶する。
【0024】
加速度センサ108は、携帯通信端末1の加速度を計測する。つまり、加速度センサ108は、携帯通信端末1が取り付けられた車両の加速度を検出する。
【0025】
送信指示プログラム109は、メモリ107に記憶されたデータを管理サーバ3に送信するか否かを判定する送信判定処理を実行する。送信指示プログラム109は、加速度センサ108が所定値以上の加速度を検出した時刻を基準時刻として、基準時刻から所定の事前対象時間を遡った時刻と基準時刻から所定の事後対象時間を経過した時刻との間の期間を送信対象期間に設定する。送信指示プログラム109は、メモリ107に記憶されたデータのうち、送信対象期間に生成されたデータを管理サーバ3へ送信すべき送信対象データとして特定する。
【0026】
結合プログラム110は、送信指示プログラム109が特定した送信対象データを一つにまとめた結合データ43を生成する。メーラー111は、結合データ43を添付したメールを、予め送信先として指定された管理サーバ3に送信する。
【0027】
操作キー112は、車両の運転手からの操作を受け付ける。通信コントローラ113は、携帯通信網を利用した通信を制御する。
【0028】
{携帯通信端末1の取り付け状態}
次に、携帯通信端末1の取り付け状態について説明する。図2は、携帯通信端末1が車両に取り付けられた状態を示す模式図である。図2に示すように、携帯通信端末1は、ダッシュボード51上に固定されたクレードル52に取り付けられる。クレードル52は、携帯通信端末1及びクレードル52が運転手の視界の妨げとならない位置に固定される。
【0029】
図2に示すように、カメラ102とモニタ104とは、携帯通信端末1の筺体10の互いに反対側となる位置に取り付けられている。カメラ102が撮影した映像は、モニタ104に表示される。これにより、運転手は、シート53に座りながら、携帯通信端末1がドライブレコーダとして機能していることを容易に確認することができる。携帯通信端末1がカメラ102の向きを変えることができるのであれば、カメラ102の取り付け位置は、モニタ104の反対側でなくてもよい。
【0030】
携帯通信端末1をタクシーなどに設置する場合、携帯通信端末1を車内に向けて設置してもよい。携帯通信端末1を車内に設置するのであれば、カメラ102とモニタ104とは、筺体10の同一面に取り付けられていてもよい。これにより、携帯通信端末1が車内の状況を撮影することができるため、防犯の効果を期待することができる。
【0031】
{撮影処理及び録音処理の概要}
写真画像データ41を生成する撮影処理、及び音声データ42を生成する録音処理の概要について説明する。
【0032】
図3は、画像用エンコーダ103及び音声用エンコーダ106の処理タイミングを示すタイムチャートである。図3に示す「符号化」とは、映像信号または音声信号の圧縮符号化処理を指す。「保存」とは、圧縮符号化により生成されたデータの保存処理を指す。
【0033】
運転手の操作により、携帯通信端末1は、時刻Taから撮影処理及び録音処理を開始する。
【0034】
まず、撮影処理について説明する。画像用エンコーダ103は、時刻Taにカメラ102から映像信号を取得する。画像用エンコーダ103は、取得した映像信号の圧縮符号化を時刻Taから開始することにより、写真画像データ41aを生成する。映像信号の圧縮符号化は、たとえばJPEG形式に基づいて行われる。時刻Tbに映像信号の圧縮符号化が終了する。写真画像データ41aは、たとえば、写真画像データ41aのファイル名に時刻Taを示す情報が付与されることにより、映像信号の取得時刻Taと対応付けられる。画像用エンコーダ103は、写真画像データ41aのメモリ107への書き込みを、時刻Tbから開始する。
【0035】
画像用エンコーダ103は、写真画像データ41aの符号化が終了した時刻Tbに、映像信号を新たに取得する。画像用エンコーダ103は、新たに取得した映像信号の圧縮符号化を時刻Tbから開始して、写真画像データ41bを生成する。この結果、写真画像データ41aの保存処理と新たに取得した映像信号の圧縮符号化処理とが、時刻Tb〜Tb1まで、並行して実行される。画像用エンコーダ103は、時刻Tcに圧縮符号化が終了すると、時刻Tcから写真用画像データ41bの保存処理と、映像信号の圧縮符号化処理とを開始する。
【0036】
以下、映像信号を取得する処理と、圧縮符号化処理と、保存処理とが繰り返されることにより、写真画像データ41c,41d,41e,41f・・・が順次生成される。
【0037】
JPEG形式に基づく圧縮符号化処理がコントローラ101のCPUに与える負荷は、動画ストリームデータの生成処理と比較して非常に小さい。一つの写真画像データ41の生成及び保存に要する時間は、数十ミリ秒から数百ミリ秒程度である。したがって、画像用エンコーダ103は、1秒間あたりに複数の写真画像データ41,41・・・を生成することができる。
【0038】
図3では、時刻Ta〜Tgの1秒間に五つの写真画像データ41が生成されている。しかし、1秒間あたりに生成される写真画像データ41の数は、コントローラ101が備えるCPUの処理能力や、並行して実行される処理(後述する結合データ43の生成処理など)によって変化する。
【0039】
管理サーバ3のユーザ(車両の管理者)は、写真画像データ41を生成するために映像信号を取得した時刻(撮影時刻)の順に写真画像データ41を連続的に表示させることにより、写真画像データ41を、まるで動画を見ているかのように閲覧することができる。
【0040】
次に、音声データ42の生成について説明する。音声データ42を生成する録音処理は、図3に示すように、撮影処理と並行して実行される。音声用エンコーダ106は、時刻Taのタイミングでマイク105から入力された音声信号の取得を開始する。時刻Taから1秒が経過した時刻Tgにおいて、音声用エンコーダ106は、音声信号の取得を停止する。
【0041】
音声用エンコーダ106は、時刻Ta〜Tgの間に取得した音声信号を、たとえばOGG形式に基づいて圧縮符号化して音声データ42を生成する。音声データ42の生成が終了した後に、音声用エンコーダ106は、画像用エンコーダ103と同様に、音声データ42の録音を開始した時刻Taと対応付けてメモリ107に保存する。
【0042】
音声データ42の保存が終了した時刻Thに、音声用エンコーダ106は、新たに音声信号の取得を開始する。このように、音声用エンコーダ106は、音声信号を1秒間取得する処理と、音声データ42を生成して保存する処理とを繰り返す。
【0043】
図3に示すように、音声データ42の生成及び保存が行われる時刻Tg〜Thの期間には、音声用エンコーダ106が音声信号を取得しない。つまり、携帯通信端末1は、時刻Tg〜Thの期間に録音を実行しない。しかし、時刻Tg〜Thの期間は、数100ミリ秒程度と非常に短い時間である。したがって、音声データ42を音声時刻の取得開始時刻順に連続して再生したとしても、車両の走行状況を十分に把握することができる。
【0044】
コントローラ101が備えるCPUの処理能力に余裕があれば、携帯通信端末1は、音声信号の圧縮符号化と音声信号の取得とを並行して実行してもよい。図3に示す例では、時刻Tgに新たな音声信号の取得が開始される。これにより、録音が実行されない期間が発生することを防ぐことができる。
【0045】
{ドライブレコーダとしての動作の流れ}
図4は、携帯通信端末1がドライブレコーダとして動作を開始してから、終了するまでの動作の流れを示す図である。図4に示す処理は、運転手が操作キー112を操作して、カメラ102の起動を指示することにより開始される。
【0046】
まず、カメラ102が、運転手の操作に応じて起動する(ステップS1)。起動したカメラ102が出力した映像信号が、モニタ104に入力される(ステップS2)。モニタ104に、車両前方の景色が表示される。
【0047】
運転手が操作キー112を操作してドライブレコーダ機能をオンにすることにより(ステップS3でYes)、送信指示プログラム109が送信判定処理を開始する(ステップS4)。送信判定処理の詳細については、後述する。撮影処理(ステップS5)及び録音処理(ステップS6)が並行して実行される。これにより、車両前方の映像が写真画像データ41として記録される。車内及び車外の音声が、音声データ42として記録される。図4には示していないが、送信判定処理は、撮影処理(ステップS5)及び録音処理(ステップS6)と並行して実行される。
【0048】
運転手が操作キー112を操作してドライブレコーダ機能のオフを指示した場合(ステップS7でYes)、コントローラ101は、撮影処理、録音処理、及び送信判定処理の終了を指示する(ステップS8)。これにより、図4に示す処理が終了する。
【0049】
図5は、撮影処理(ステップS5)の流れを示すフローチャートである。まず、画像用エンコーダ103は、撮影初期化処理を実行する(ステップS51)。撮影初期化処理とは、一つの写真画像データ41の保存に必要な記憶領域を、メモリ107に確保する処理である。一つの写真画像データ41の保存に必要な記憶領域がメモリ107に存在しない場合、撮影時刻の一番古い写真画像データ41がメモリ107から削除される。
【0050】
画像用エンコーダ103は、映像信号を圧縮符号化して、写真画像データ41を生成する(ステップS52)。写真画像データ41は、撮影時刻を示すファイル名が付与された上で、メモリ107に保存される(ステップS53)。たとえば、撮影時刻が2009年7月28日16時23分54.491秒である場合、写真画像データ41のファイル名は、「2009_0728_1623_54491.jpg」となる。
【0051】
画像用エンコーダ103は、撮影終了が指示されていなければ(ステップS54でNo)、ステップS51の処理に戻る。これにより、写真画像データ41を生成する処理が、繰り返し実行される。一方、画像用エンコーダ103は、撮影終了が指示されていれば(ステップS54でYes)、図5に示す処理を終了する。
【0052】
図6は、録音処理(ステップS6)の流れを示すフローチャートである。まず、音声用エンコーダ106は、録音初期化処理を実行する(ステップS61)。録音初期化処理とは、撮影初期化処理(ステップS51)と同様に、一つの音声データ42の保存に必要な記憶領域を、メモリ107に確保する処理である。一つの音声データ42の保存に必要な記憶領域がメモリ107に存在しない場合、録音開始時刻の一番古い音声データ42がメモリ107から削除される。
【0053】
音声用エンコーダ106は、音声信号の取得を開始する(ステップS62)。音声信号の取得開始から1秒が経過した場合(ステップS63でYes)、音声用エンコーダ106は、音声信号の取得を停止し、取得した音声信号を圧縮符号化して音声データ42を生成する(ステップS64)。音声データ42は、写真画像データ41と同様に録音開始時刻を示すファイル名が付与されて、メモリ107に保存される(ステップS65)。
【0054】
音声用エンコーダ106は、録音終了が指示されていなければ(ステップS66でNo)、ステップS61の処理に戻る。これにより、音声データ42を生成する処理が、繰り返し実行される。一方、音声用エンコーダ106は、録音終了が指示されていれば(ステップS66でYes)、図6に示す処理を終了する。
【0055】
{送信判定処理}
上述したように、携帯通信端末1は、ドライブレコーダ機能がオンされることに伴い、送信判定処理を開始する(ステップS4、図4参照)。送信判定処理では、加速度センサ108が所定値以上の加速度を検出することにより、送信対象データが管理サーバ3に送信される。
【0056】
まず、送信対象データの特定について説明する。一般的に、交通事故が発生した時刻を中心として25秒間の映像を記録していれば、交通事故の原因の特定が容易になるとされている。そこで、携帯通信端末1は、加速度センサ108が所定値以上の加速度を出力した時刻(以下、「基準時刻」という)を中心とした25秒間の期間に記録された写真画像データ41及び音声データ42を、送信対象データとして特定する。写真画像データ41及び音声データ42が送信対象データに含まれるか否かは、写真画像データ41の撮影時刻及び音声データ42の録音開始時刻に基づいて判定される。
【0057】
図7は、送信対象データと基準時刻との対応関係を示す図である。図7に示す期間中、写真画像データ41及び音声データ42は、連続して生成されている。
【0058】
加速度センサ108が、所定値以上の加速度を13時45分17秒(基準時刻)に検出したとする。送信指示プログラム109は、基準時刻から待機時間(12.5秒)を経過した送信指示時刻(13時45分29.5秒)に、送信対象データを特定する。
【0059】
送信指示プログラム109は、送信指示時刻と、送信指示時刻から送信対象時間(25秒)前の時刻(13時45分4.5秒)との間の期間に記録されたデータを、送信対象データとして特定する。つまり、送信対象データは、基準時刻から12.5秒(事前対象時間)を遡った時刻と基準時刻から12.5秒(事後対象時間)を経過した時刻との間の期間に生成されたデータである。
【0060】
待機時間及び送信対象時間は、送信指示プログラム109に予め設定されており、これらの時間の長さを変更することができる。待機時間及び送信対象時間の変更に応じて、事前対象時間及び事後対象時間の長さも変更される。
【0061】
写真画像データ41の生成頻度が1秒間あたり約5個である場合、送信対象データとして、約125個の写真画像データ41が特定される。音声の録音期間は1秒であるため、送信対象データとして、約25個の音声データ42が特定される。
【0062】
図8は、送信判定処理の流れを示すフローチャートである。送信判定処理は、ステップS4の処理(図4参照)に応じて開始される。送信判定処理と並行して、撮影処理(ステップS5)及び録音処理(ステップS6)が実行されている。
【0063】
送信指示プログラム109は、加速度センサ108から出力される加速度を監視している(ステップS81)。所定値以上の加速度を検出した場合(ステップS81でYes)、送信指示プログラム109は、携帯通信端末1が設置された車両が関与する交通事故が発生したと判断する。送信指示プログラム109は、基準時刻を基準として、待機時間(12.5秒)の計測を開始する。
【0064】
送信指示プログラム109は、基準時刻から待機時間が経過した場合(ステップS82でYes)、メモリ107に保存されている写真画像データ41及び音声データ42の中から送信対象データを特定する(ステップS83)。送信対象データを特定する流れは、上述した通りである。
【0065】
送信指示プログラム109は、判定終了が指示されていなければ(ステップS84でNo)、ステップS81の処理に戻る。これにより、送信判定処理が継続される。一方、送信指示プログラム109は、判定終了が指示されていれば(ステップS84でYes)、図8に示す処理を終了する。
【0066】
次に、送信指示プログラム109が送信対象データを特定した後の携帯通信端末1の動作を説明する。結合プログラム110は、送信対象データを一つにまとめることにより、結合データ43を生成する。コントローラ101が備えるCPUの処理能力に余裕があれば、結合プログラム110は、結合データ43をさらに圧縮してもよい。結合データ43は、メモリ107に保存される。
【0067】
メーラー111は、メモリ107に保存された結合データ43を添付ファイルとした電子メールを作成する。メーラー111には、結合データ43の送信先として管理サーバ3のメールアドレスが設定されている。メーラー111は、宛先を管理サーバ3として、結合データ43が添付された電子メールを送信する。
【0068】
管理サーバ3は、受信した電子メールから結合データ43を取り出し、メモリ31に保存する。車両の管理者は、結合データ43の結合を解除することにより、写真画像データ41及び音声データ42を利用することができる。
【0069】
このように、携帯通信端末1は、メモリ107に記憶された全ての写真画像データ41及び音声データ42を送信対象データとするのではなく、基準時刻に基づいて送信対象データを特定する。結合データ43のデータサイズを小さくすることができるため、携帯通信端末1と管理サーバ3との通信帯域が圧迫されることを防ぐことができる。
【0070】
以上説明したように、本実施の形態に係る携帯通信端末1は、カメラ102が出力する映像信号から動画ストリームデータを生成するのではなく、1秒間あたりに複数の写真画像データ41,41・・・を生成する。携帯通信端末1は、CPUの処理能力が低くても、写真画像データ41を数百ミリ秒以内に生成することができる。したがって、カメラ102が撮影した映像をリアルタイムで保存することができる。
【0071】
{変形例}
本実施の形態では、加速度センサ108から所定値以上の加速度が出力された時に、結合データ43を送信する例について説明したが、これに限られない。送信指示プログラム109は、加速度センサ108に代えて、予め設定された設定時間(たとえば1時間)が経過するたびに、送信指示プログラム109に送信対象データの特定を指示するプログラムを備えてもよい。携帯通信端末1は、結合データ43が定期的に生成して管理サーバ3に送信する。車両の管理者は、定期的に送信される結合データ43を用いて、車両の走行状況を記録したダイジェストデータを容易に作成することができる。
【0072】
この場合、送信指示プログラム109は、設定時間が経過したタイミングを送信指示時刻としてもよい。つまり、送信指示プログラム109は、待機時間の計測を行わなくてもよい。あるいは、送信指示プログラム109は、設定時間が経過したタイミングから所定時間内に新たに作成された写真画像データ41及び音声データ42を送信対象データとして特定してもよい。
【0073】
携帯通信端末1は、加速度センサ108に代えて、管理サーバ3から結合データ43の送信を要求されたときに送信指示プログラム109に送信対象データの特定を指示するプログラムを備えてもよい。具体的には、携帯通信端末1に管理サーバ3の電話番号を予め登録しておく。送信指示プログラム109は、管理サーバ3から着信があるたびに、送信対象データを特定する。これにより、運転手の意図と関係なく結合データ43が管理サーバ3に送信されるために、車両の走行状況が常時管理されているのと同一の状況を作り出すことができる。運転手に安全運転を常に心がけるようになると考えられるため、交通事故を防止することができる。
【0074】
加速度センサ108は、携帯通信端末1がドライブレコーダとして動作している間、継続的に加速度を出力している例について説明したが、これに限られない。加速度センサ108のオン・オフを、運転手が設定できるようにしてもよい。急カーブが連続する山道や、砂利道などを自動車が走行するときには、所定値以上の加速度を検出する頻度が増加する。このような道路の走行時には、交通事故が発生していないにも関わらず、結合データ43の送信回数が増加する。道路状況に応じて運転手が加速度センサ108のオン・オフを切り替えることにより、交通事故の誤判定を防ぐことができる。
【0075】
携帯通信端末1は、加速度センサ108に代えて、地磁気センサを備えていてもよい。この場合、携帯通信端末1は、地磁気センサから出力される情報を用いて携帯通信端末1の加速度を計算する加速度計算プログラムを備える必要がある。
【0076】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 携帯通信端末
101 コントローラ
102 カメラ
103 画像用エンコーダ
104 モニタ
105 マイク
106 音声用エンコーダ
107 メモリ
108 加速度センサ
109 送信指示プログラム
110 結合プログラム
111 メーラー
41,41a,41b,41c,41d,41e 写真画像データ
42 音声データ
43 結合データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置される携帯通信端末であって、
前記車両の外側または内側の状況を撮影するカメラと、
前記カメラから入力された映像信号を符号化して、第1所定期間あたりに複数の写真画像データを連続的に生成する写真画像生成手段と、
前記写真画像生成手段により生成された複数の写真画像データを記憶するメモリと、
前記メモリに記憶された複数の写真画像データを送信する送信手段とを備える携帯通信端末。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯通信端末であって、さらに、
マイクと、
前記マイクから第2所定期間内に入力された音声信号を符号化して、音声データを連続的に生成する録音手段とを備え、
前記メモリは、前記録音手段により生成された音声データを記憶し、
前記送信手段は、前記メモリに記憶された音声データを送信する携帯通信端末。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の携帯通信端末であって、さらに、
前記車両の加速度を計測する加速度計測手段と、
前記加速度計測手段が所定値以上の加速度を計測した時刻を基準時刻として、前記基準時刻から所定の事前対象時間を遡った時刻と前記基準時刻から所定の事後対象時間を経過した時刻との間の期間を送信対象期間に設定し、前記メモリに記憶されたデータのうち、前記送信対象期間に生成されたデータを前記送信手段により送信されるべき対象に特定する特定手段とを備える携帯通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−34215(P2011−34215A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178087(P2009−178087)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(509215765)株式会社パイ・アール (3)
【Fターム(参考)】