説明

摩擦板の摩耗検知手段を備えたブレーキ及びクラッチ

【課題】 ブレーキやクラッチの摩擦板の摩耗において、摩耗の許容限度を超える前に摩耗限界を検知し、ユーザー等に認知させることができる、摩耗検知手段を備えたブレーキ又はクラッチを提供する。
【解決手段】
ブレーキ10は、同一円周上に、1又は2以上のスリット11aが設けられたハブ11と、ハブ11に設けられたスリット11aに対向する位置に1又は2以上の凹部12aが形成された摩擦板12と、摩擦板12の凹部12aに光を照射する発光部16aと、摩擦板12の凹部12aを通過した光を受光する受光部16bと、発光部16aと受光部16b間に貫通孔13aが形成されたアーマチュア13とを備え、発光部16aからの光が、摩擦板12の摩耗によりハブ11のスリット11a、摩擦板12の凹部12a、アーマチュア13の貫通孔13aを通過し、この光を受光部16bが受光することにより、摩擦板12の摩耗限界を検知するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦板を用いたブレーキ及びクラッチに係り、特に、光学的な監視手段を設け、摩擦板の摩耗限界を検知し、容易にブレーキ及びクラッチの交換時期を把握できるようにした、摩耗検知手段を備えたブレーキ又はクラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
アーマチュアと摩擦板との摩擦力を利用したクラッチが、特許文献1乃至3に、開示されている。
また、同じく、アーマチュアと摩擦板との摩擦力を利用したブレーキが、特許文献4乃至6に開示されている。
この摩擦板を用いたブレーキの一例として、乾式複板無励磁作動形ブレーキについて、図8を用いて説明する。
図8は、従来の乾式複板無励磁作動形ブレーキの構成を示す縦断側面図である。
【0003】
図8に示すように、乾式複板無励磁作動形ブレーキ100の主要構成は、アーマチュア110、プレート120、回転軸130、ハブ140、フィールドコア150、励磁コイル152、摩擦板160、バネ170である。
なお、同図において、122はプレート120とフィールドコア150の固定ネジである。
【0004】
乾式複板無励磁作動形ブレーキ100では、フィールドコア150の励磁コイル152に電流を流さない状況では、アーマチュア110はバネ170によりプレート120側に付勢され、摩擦板160がアーマチュア110及びプレート120の両面側で摩擦しあうことにより、ブレーキ動作を行う。
一方、フィールドコア150の励磁コイル152に電流を流した状態では、アーマチュア110がバネ170の付勢力に抗してフィールドコア150側に吸着され、ブレーキ動作が解除されることになる。
即ち、非通電時にブレーキがかかり、通電時にブレーキが解除される機能を備えている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−331028
【特許文献2】特開2005−030491
【特許文献3】特開2004−332802
【特許文献4】特開2003−090364
【特許文献5】特開2002−005206
【特許文献6】特開2001−159433
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、アーマチュアと摩擦板との摩擦力を利用したクラッチ又はブレーキは、長期間使用すると、摩擦板が摩耗するため交換が必要になる。
しかし、従来のクラッチ又はブレーキでは、交換時期を把握できるベテランサービスマンが減少していることや、また、ユーザーが摩耗量を知る手段がないため、交換時期が来ても交換されずに放置され、摩耗が進行しすぎて動作しなくなる場合がある。
【0007】
そのため、例えば、製造ラインの組立用ロボットに、従来のクラッチやブレーキが組み込まれている場合、当該クラッチやブレーキの動作不良が原因でライン全体を止めてしまったり、ライン停止の原因がどのクラッチやブレーキの摩耗であるかを特定するまでに、時間がかかる等の問題を備えている。
【0008】
本発明は、上記課題(問題点)を解決し、ブレーキやクラッチの摩擦板の摩耗において、摩耗の許容限度を超える前に摩耗限界を検知し、ユーザー等に認知させることができる、摩耗検知手段を備えたブレーキ又はクラッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の摩耗検知手段を備えたブレーキは、請求項1に記載のものは、アーマチュアと摩擦板との摩擦力により、ブレーキ動作を行うブレーキにおいて、前記摩擦板の所定箇所に光を照射する発光部と、前記摩擦板の所定箇所を通過した光を受光する受光部とを備え、前記発光部からの光が、前記摩擦板の摩耗により前記所定箇所を通過し、この光を前記受光部が受光することにより、前記摩擦板の摩耗限界を検知するようにした。
【0010】
請求項2に記載のブレーキは、アーマチュアと摩擦板との摩擦力により、ブレーキ動作を行うブレーキにおいて、前記摩擦板の所定箇所に光を照射する発光部と、前記摩擦板の所定箇所を通過し、所定の反射面に反射された光を受光する受光部とを備え、前記発光部からの光が、前記摩擦板の摩耗により前記所定箇所を通過し、前記所定の反射面に反射され、この光を前記受光部が受光することにより、前記摩擦板の摩耗限界を検知するようにした。
【0011】
請求項3に記載のブレーキは、アーマチュアと摩擦板との摩擦力により、ブレーキ動作を行うブレーキにおいて、同一円周上に、1又は2以上のスリットが設けられたハブと、前記ハブに設けられたスリットに対向する位置に1又は2以上の凹部が形成された摩擦板と、前記摩擦板の凹部に光を照射する発光部と、前記摩擦板の凹部を通過した光を受光する受光部と、前記発光部と前記受光部間に貫通孔が形成されたアーマチュアとを備え、前記発光部からの光が、前記摩擦板の摩耗により前記ハブのスリット、前記摩擦板の凹部、前記アーマチュアの貫通孔を通過し、この光を前記受光部が受光することにより、前記摩擦板の摩耗限界を検知するようにした。
【0012】
請求項4に記載のブレーキは、アーマチュアと摩擦板との摩擦力により、ブレーキ動作を行うブレーキにおいて、同一円周上に、1又は2以上のスリットが設けられたハブと、前記ハブに設けられたスリットに対向する位置に1又は2以上の凹部が形成された摩擦板と、前記摩擦板の凹部に光を照射する発光部と、前記摩擦板の凹部を通過し、前記アーマチュアから反射された光を受光する受光部とを備え、前記発光部からの光が、前記摩擦板の摩耗により前記ハブのスリット、前記摩擦板の凹部を通過して、前記アーマチュアから反射した光を前記受光部が受光することにより、前記摩擦板の摩耗限界を検知するようにした。
【0013】
請求項5に記載のブレーキは、前記発光部と受光部が、所定箇所に、複数組配置されている構成とした。
【0014】
請求項6に記載のブレーキは、前記発光部と受光部は、透過型フォトインタラプタ又は反射型フォトインタラプタである構成とした。
【0015】
本発明の摩耗検知手段を備えたクラッチは、請求項7に記載のものは、アーマチュアと摩擦板との摩擦力により、クラッチ動作を行うクラッチにおいて、前記摩擦板の所定箇所に光を照射する発光部と、前記摩擦板の所定箇所を通過した光を受光する受光部とを備え、前記発光部からの光が、前記摩擦板の摩耗により前記摩擦板の所定箇所を通過し、この光を前記受光部が受光することにより、前記摩擦板の摩耗限界を検知するようにした。
【0016】
請求項8に記載のクラッチは、アーマチュアと摩擦板との摩擦力により、クラッチ動作を行うクラッチにおいて、前記摩擦板の所定箇所に光を照射する発光部と、前記摩擦板の所定箇所を通過し、所定の反射面に反射された光を受光する受光部とを備え、前記発光部からの光が、前記摩擦板の摩耗により前記所定箇所を通過し、前記所定の反射面に反射され、この光を前記受光部が受光することにより、前記摩擦板の摩耗限界を検知するようにした。
【0017】
請求項9に記載のクラッチは、アーマチュアと摩擦板との摩擦力により、クラッチ動作を行うクラッチにおいて、同一円周上に、1又は2以上のスリットが設けられたロータと、前記ロータに設けられたスリットに対向する位置に1又は2以上の凹部が形成された摩擦板と、前記摩擦板の凹部に光を照射する発光部と、前記摩擦板の凹部を通過した光を受光する受光部と、前記発光部と前記受光部間にスリットが形成されたアーマチュアとを備え、前記発光部からの光が、前記摩擦板の摩耗により、前記アーマチュアのスリット、前記摩擦板の凹部、前記ロータのスリットを通過し、この光を前記受光部が受光することにより、前記摩擦板の摩耗限界を検知するようにした。
【0018】
請求項10に記載のクラッチは、アーマチュアと摩擦板との摩擦力により、クラッチ動作を行うクラッチにおいて、同一円周上に、1又は2以上の凹部が形成された摩擦板と、前記摩擦板に形成された凹部に対する位置に1又は2以上のスリットが形成されたアーマチュアと、前記摩擦板の凹部に光を照射する発光部と、前記摩擦板の凹部を通過し、ロータから反射された光を受光する受光部とを備え、前記発光部からの光が、前記摩擦板の摩耗により、前記摩擦板の凹部、前記アーマチュアのスリットを通過して、前記ロータから反射した光を前記受光部が受光することにより、前記摩擦板の摩耗限界を検知するようにした。
【0019】
請求項11に記載のクラッチは、前記発光部と受光部が、所定箇所に、複数組配置されている構成とした。
【0020】
請求項12に記載のクラッチは、前記発光部と受光部は、透過型フォトインタラプタ又は反射型フォトインタラプタである構成とした。
【発明の効果】
【0021】
本発明の摩耗検知手段を備えたブレーキは、上記のように構成したために、以下のような優れた効果を有する。
(1)請求項1及び2に記載したように構成すると、極めて簡単な構成で、低コストで、摩擦板の摩耗限界を検出するブレーキとすることができる。
【0022】
(2)請求項3に記載したように構成すると、簡単な構成で、低コストで、摩擦板が許容範囲以上に摩耗すると、その事態を即座に検出するため、ベテランサービスマンでなくても、ブレーキが動作しなくなる前に、ブレーキの交換時期を知ることができる。
【0023】
(3)請求項4に記載したように構成すると、請求項3と同様の効果の他に、スリット等の加工が少なくて済むので、全体の製作コストを更に抑えることができる。
【0024】
(4)請求項5に記載したように構成すると、摩擦板の摩耗がアーマチュアの回転角度によって偏りがある場合でも、摩擦板の許容範囲以上の摩耗を正確に検出することができる。
【0025】
(5)請求項6に記載したように構成すると、安価なフォトインタラプタを用いることで、全体の製作コストを削減することができる。
【0026】
本発明の摩耗検知手段を備えたクラッチは、上記のように構成したために、以下のような優れた効果を有する。
(6)請求項7及び8に記載したように構成すると、極めて簡単で、低コストで、摩擦板の摩耗限界を検出するクラッチとすることができる。
【0027】
(7)請求項9に記載したように構成すると、簡単な構成で、低コストで、摩擦板が許容範囲以上に摩耗すると、その事態を即座に検出するため、ベテランサービスマンでなくても、クラッチが動作しなくなる前に、クラッチの交換時期を知ることができる。
【0028】
(8)請求項10に記載したように構成すると、請求項9と同様の効果の他に、スリット等の加工が少なくて済むので、全体の製作コストを更に抑えることができる。
【0029】
(9)請求項11に記載したように構成すると、摩擦板の摩耗がアーマチュアの回転位置によって偏りがある場合でも、摩擦板の許容範囲以上の摩耗を正確に検出することができる。
【0030】
(10)請求項12に記載したように構成すると、安価なフォトインタラプタを用いることで、全体の製作コストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の摩擦板の摩耗検知手段を備えたブレーキの第1及び第2の実施の形態、本発明の摩擦板の摩耗検知手段を備えたクラッチの第1及び第2の実施の形態、そして、最後に、本発明の摩擦板の摩耗検知手段を備えたブレーキの第3の実施の形態について、図1乃至図7を用いて、以下、順次説明する。
【0032】
本発明のブレーキの第1の実施の形態:
先ず、本発明の摩擦板の摩耗検知手段を備えたブレーキの第1の実施の形態について、図1及び図2を用いて説明する。
図1は、本発明の摩擦板の摩耗検知手段を備えたブレーキの第1の実施の形態を示す縦断側面図である。
図2は、本発明の摩擦板の摩耗検知手段を備えたブレーキの第1の実施の形態を示す一部裁断斜視図である。
【0033】
先ず、本実施の形態のブレーキ10の基本構成を図1及び図2を用いて説明する。
本実施の形態のブレーキ10は、従来のブレーキ同様に、図1及び図2に示すように、ハブ11、摩擦板12、アーマチュア13、フィールドコア14、励磁コイル15を備えている。
一方、本実施の形態のブレーキ10では、発光部16aと受光部16bを一体化した透過型フォトインタラプタ16、摩耗検知部17を備えている。
【0034】
ハブ11には、図2に示すように、同一円周上に複数のスリット11aが所定の間隔で形成されている。
また、摩擦板12には、ハブ11に形成されたスリット11aと平面形状が同一で、同等の間隔で凹部12aが形成され、アーマチュア13には、透過型フォトインタラプタ16の発光部16aと受光部16b間に貫通孔13aが形成されている。
【0035】
ここで、図1に示すように、摩擦板12において、凹部12aの底面とアーマチュア13間の厚さをxとする。
厚さxは、摩擦板12が摩耗してブレーキとして機能しなくなる前に、x≦0となるように設定されている。
なお、フォトインタラプタ16は、図示しない電源によって常時動作し、また、図示しない支持具によって、フィールドコア14或いはブレーキ10外周面近傍に固定されている。
【0036】
次に、以上の構成を踏まえ、本実施の形態のブレーキ10の基本動作を説明する。
本実施の形態のブレーキ10では、従来同様に、励磁コイル15が励磁状態になると、アーマチュア13が摩擦板12から離れてフィールドコア14側に吸引され、ハブ11は回転自由となる。
また、励磁コイル15が非励磁状態になると、アーマチュア13は図示しないバネの復元力によってフィールドコア14から離れ、摩擦板12に押し付けられてハブ11を固定する。
【0037】
アーマチュア13と摩擦板12とのブレーキ作用により、摩擦板12が徐々に摩耗して行くと、摩擦板12の凹部12aの底面とアーマチュア13間の厚さxが、徐々に減少して行き、x≦0となると、摩擦板12の凹部12aは貫通してスリットとなる。
すると、フォトインタラプタ16の発光部16aからの光は、ハブ11のスリット11a、摩擦板12のスリット化した凹部12a、アーマチュア13の貫通孔13aを通過して受光部16bに受光される。
【0038】
摩耗検知部17は、フォトインタラプタ16が受光部16bに光を受光した状態を検知し、摩擦板12が許容範囲以上に摩耗したことを通知する。
即ち、本実施の形態のブレーキ10では、摩擦板12が許容範囲以上に摩耗すると、摩擦板12に形成した凹部12aがスリット状となり、フォトインタラプタ16の発光部16aからの光が、ハブ11のスリット11a、摩擦板12の凹部12a、アーマチュア13の貫通孔13aを通過し、受光部16bが受光することにより、摩擦板12の許容範囲以上の摩耗を検出するため、ベテランサービスマンでなくても、ブレーキ10の交換時期を知ることができる。
また、発光部16a及び受光部16bを安価な透過型フォトインタラプタ16とすることで、ブレーキ10全体の製作コストを抑えることができる。
【0039】
本発明のブレーキの第2の実施の形態:
次に、本発明の摩擦板の摩耗検知手段を備えたブレーキの第2の実施の形態について、図3を用いて説明する。
図3は、本発明の摩擦板の摩耗検知手段を備えたブレーキの第2の実施の形態を示す縦断側面図である。
【0040】
先ず、本実施の形態のブレーキ20の基本構成を図3を用いて説明する。
本実施の形態のブレーキ20は、第1の実施の形態のブレーキ10同様に、図3に示すように、ハブ21、摩擦板22、アーマチュア23、フィールドコア24、励磁コイル25、摩耗検知部27を備えている。
一方、本実施の形態のブレーキ20は、発光部26aと受光部26bを一体化した反射型フォトインタラプタ26を備えている。
【0041】
ハブ21には、図3に示すように、同一円周上に複数のスリット21aが所定の間隔で形成されている。
また、摩擦板22には、ハブ21に形成されたスリット21aと平面形状が同一で、同等の間隔で凹部22aが形成されている。
【0042】
ここで、図3に示すように、摩擦板22において、凹部22aの底面とアーマチュア23間の厚さをxとする。
厚さxは、摩擦板22が摩耗してブレーキとして機能しなくなる前に、x≦0となるように設定されている。
なお、フォトインタラプタ26は、図示しない電源によって常時動作し、また、図示しない支持具によって、フィールドコア24或いはブレーキ20外周面近傍に固定されている。
【0043】
次に、以上の構成を踏まえ、本実施の形態のブレーキ20の基本動作を説明する。
アーマチュア23と摩擦板22とのブレーキ作用により、摩擦板22が徐々に摩耗して行くと、摩擦板22の凹部22aの底面とアーマチュア23間の厚さxが、徐々に減少して行き、x≦0となると、摩擦板22の凹部22aは貫通してスリットとなる。
すると、フォトインタラプタ26の発光部26aからの光は、ハブ21のスリット21a、摩擦板22のスリット化した凹部22aを通過し、アーマチュア23表面に反射し、受光部16bに受光される。
【0044】
摩耗検知部27は、フォトインタラプタ26が受光部26bに光を受光した状態を検知し、摩擦板22が許容範囲以上に摩耗したことを通知する。
即ち、本実施の形態のブレーキ20では、摩擦板22が許容範囲以上に摩耗すると、摩擦板22に形成した凹部22aがスリット状となり、フォトインタラプタ26の発光部26aからの光が、ハブ21のスリット21a、摩擦板22の凹部22a、アーマチュア23の表面に反射し、受光部26bが受光することにより、摩擦板22の許容範囲以上の摩耗を検出するため、ベテランサービスマンでなくても、ブレーキ20の交換時期を知ることができる。
【0045】
また、発光部26a及び受光部26bを安価な反射型フォトインタラプタ26とすることで、透過型フォトインタラプタに比べてスリット等の加工が少なくて済むので、ブレーキ20全体の製作コストを更に抑えることができる。
【0046】
本発明のクラッチの第1の実施の形態:
次に、本発明の摩擦板の摩耗検知手段を備えたクラッチの第1の実施の形態について、図4及び図5を用いて説明する。
図4は、本発明の摩擦板の摩耗検知手段を備えたクラッチの第1の実施の形態を示す縦断側面図である。
図5は、本発明の摩擦板の摩耗検知手段を備えたクラッチの第1の実施の形態を示す一部裁断斜視図である。
【0047】
先ず、本実施の形態のクラッチ30の基本構成を図4及び図5を用いて説明する。
本実施の形態のクラッチ30は、従来のクラッチ同様に、図4及び図5に示すように、ハブ31、摩擦板32、アーマチュア33、フィールドコア34、励磁コイル35、ロータ39を備えている。
一方、本実施の形態のクラッチ30は、発光部36aと受光部36bを一体化した透過型フォトインタラプタ36、摩耗検知部37を備えている。
【0048】
図5に示すように、ロータ39には、同一円周上に、複数のスリット39aが設けられ、摩擦板32には、ロータ39に設けられたスリット39aに対向する位置に、このスリット39aと同じ平面形状で、同じ間隔で、複数の凹部32aが形成されている。
また、アーマチュア33には、透過型フォトインタラプタ36の発光部36aと受光部36b間に、ロータ39のスリット39aと異なる平面形状で、異なる間隔で、スリット33aが形成されている。
【0049】
ここで、図4に示すように、摩擦板32において、凹部32aの底面とアーマチュア33間の厚さをxとする。
厚さxは、摩擦板32が摩耗してクラッチとして機能しなくなる前に、x≦0となるように設定されている。
なお、フォトインタラプタ36は、図示しない電源によって常時動作し、また、図示しない支持具によって、フィールドコア34或いはクラッチ30外周面近傍に固定されている。
【0050】
次に、以上の構成を踏まえ、本実施の形態のクラッチ30の基本動作を説明する。
本実施の形態のクラッチ30では、従来同様に、励磁コイル35が非励磁状態になると、アーマチュア33は図示しないバネの復元力によって摩擦板32から離れ、ハブ31に接触し、ハブ31側とフィールドコア34側の回転を切り離す。
一方、励磁コイル35が励磁状態になると、アーマチュア33はフィールドコア34側に吸引されて摩擦板32に押し付けられ、ハブ31側とフィールドコア34側の回転を連結する。
【0051】
アーマチュア33と摩擦板32とのクラッチ作用により、摩擦板32が徐々に摩耗して行くと、摩擦板32の凹部32aの底面とアーマチュア33間の厚さxが、徐々に減少して行き、x≦0となると、摩擦板32の凹部32aは貫通してスリットとなる。
すると、フォトインタラプタ36の発光部36aからの光は、アーマチュア33のスリット33a、摩擦板32のスリット化した凹部32a、ロータ39のスリット39aを通過し、受光部16bに受光される。
【0052】
摩耗検知部37は、フォトインタラプタ36が受光部36bで光を受光した状態を検知し、摩擦板32が許容範囲以上に摩耗したことを通知する。
即ち、本実施の形態のクラッチ30では、摩擦板32が許容範囲以上に摩耗すると、摩擦板32に形成した凹部32aがスリット状となり、フォトインタラプタ36の発光部36aからの光が、アーマチュア33のスリット33a、摩擦板32の凹部32a、ロータ39のスリット39aを通過し、受光部36bが受光することにより、摩擦板32の許容範囲以上の摩耗を検出するため、ベテランサービスマンでなくても、クラッチ30の交換時期を知ることができる。
また、発光部36a及び受光部36bを安価な透過型フォトインタラプタ36とすることで、クラッチ30全体の製作コストを抑えることができる。
【0053】
本発明のクラッチの第2の実施の形態:
次に、本発明の摩擦板の摩耗検知手段を備えたクラッチの第2の実施の形態について、図6を用いて説明する。
図6は、本発明の摩擦板の摩耗検知手段を備えたクラッチの第2の実施の形態を示す縦断側面図である。
【0054】
先ず、本実施の形態のクラッチ40の基本構成を図6を用いて説明する。
本実施の形態のクラッチ40は、第1の実施の形態のクラッチ同様に、図6に示すように、ハブ41、摩擦板42、アーマチュア43、フィールドコア44、励磁コイル45、ロータ49、摩耗検知部47を備えている。
一方、本実施の形態のクラッチでは、発光部46aと受光部46bを一体化した反射型フォトインタラプタ46を備えている。
【0055】
図6に示すように、摩擦板42には、アーマチュア43との摩擦面とは反対側に、複数の凹部42aが形成されている。
また、アーマチュア43には、反射型フォトインタラプタ46の発光部46aと受光部46b間に、摩擦板42の凹部42aに対する位置に、当該摩擦板42の凹部42aとは異なる平面形状、異なる間隔で、スリット43aが形成されている。
【0056】
ここで、図6に示すように、摩擦板42において、凹部42aの底面とアーマチュア43間の厚さをxとする。
厚さxは、摩擦板42が摩耗してクラッチとして機能しなくなる前に、x≦0となるように設定されている。
なお、フォトインタラプタ46は、図示しない電源によって常時動作し、また、図示しない支持具によって、フィールドコア44或いはクラッチ40外周面近傍に固定されている。
【0057】
次に、以上の構成を踏まえ、本実施の形態のクラッチ40の基本動作を説明する。
アーマチュア43と摩擦板42とのクラッチ作用により、摩擦板42が徐々に摩耗して行くと、摩擦板42の凹部42aの底面とアーマチュア43間の厚さxが、徐々に減少して行き、x≦0となると、摩擦板42の凹部42aは貫通してスリットとなる。
すると、フォトインタラプタ46の発光部46aからの光は、アーマチュア43のスリット43a、摩擦板42のスリット化した凹部42aを通過し、ロータ49の表面に反射し、受光部46bに受光される。
【0058】
摩耗検知部47は、フォトインタラプタ46が受光部46bで光を受光した状態を検知し、摩擦板42が許容範囲以上に摩耗したことを通知する。
即ち、本実施の形態のクラッチ40では、摩擦板42が許容範囲以上に摩耗すると、摩擦板42に形成した凹部42aがスリット状となり、フォトインタラプタ46の発光部46aからの光が、アーマチュア43のスリット43a、摩擦板42の凹部42aを通過し、ロータ49の表面に反射し、受光部46bが受光することにより、摩擦板42の許容範囲以上の摩耗を検出するため、ベテランサービスマンでなくても、クラッチ40の交換時期を知ることができる。
【0059】
また、発光部46a及び受光部46bを安価な反射型フォトインタラプタ46とすることで、透過型フォトインタラプタに比べてスリット等の加工が少なくて済むので、全体の製作コストを更に抑えることができる。
【0060】
本発明のクラッチの第3の実施の形態:
次に、本発明の摩擦板の摩耗検知手段を備えたブレーキの第3の実施の形態について、図7を用いて説明する。
図7は、本発明の摩擦板の摩耗検知手段を備えたブレーキの第3の実施の形態を示す縦断側面図である。
【0061】
本実施の形態のブレーキ50の基本構成について図7を用いて説明する。
本実施の形態のブレーキ50の特徴は、発光部56Aa,56Baと受光部56Ab、56Bbを一体化した複数(図示のものは2)の透過型フォトインタラプタ56A、56Bと摩耗検知部57を備えている点である。
なお、透過型フォトインタラプタ56A、56Bは、どちらか一方の発光部56Aa、56Baが必ずアーマチュア53のスリット53aを透過できるように配置されているものとする。
【0062】
次に、以上の構成を踏まえ、本実施の形態のブレーキ50の基本動作を説明する。
アーマチュア53と摩擦板52とのブレーキ作用により、摩擦板52が徐々に摩耗して行くと、摩擦板52の凹部52aの底面とアーマチュア53間の厚さxが、徐々に減少して行き、x≦0となると、摩擦板52の凹部52aは貫通してスリットとなる。
すると、フォトインタラプタ56Aの発光部56Aaからの光は、ハブ51のスリット51a、アーマチュア53のスリット53a、摩擦板52のスリット化した凹部52aを通過し、受光部56Abに受光される。
なお、フォトインタラプタ56Bの発光部56Baからの光は、ハブ51のスリット51a、摩擦板52の凹部52aを通過するが、アーマチュア53に遮られる。
【0063】
これとは逆に、図示は省略するが、アーマチュア53のスリット53aがフォトインタラプタ56B側にある場合は、フォトインタラプタ56Bの発光部56Baからの光は、ハブ51のスリット51a、アーマチュア53のスリット53a、摩擦板52の凹部52aを通過し、受光部56bに受光される。
この場合、フォトインタラプタ56Aの発光部56Aaからの光は、ハブ51のスリット51a、摩擦板52の凹部52aを通過するが、アーマチュア53に遮られる。
【0064】
本実施の形態のブレーキ50では、フォトインタラプタ56A、56Bのいずれかが受光することにより、摩擦板52の許容範囲以上の摩耗を検出するため、アーマチュア53の回転角度によっては、フォトインタラプタ56A、56Bの光が遮られて、摩耗を検知するまでのタイムラグの発生が想定されるが、その事態を防止することができる。
即ち、本実施の形態では、2以上のフォトインタラプタ56A、56Bを用いることにより、アーマチュアの回転角度によらず、確実に摩擦板52の摩耗限界を検知することができる。
【0065】
本発明のブレーキ及びクラッチは、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。
本願の特徴は、ブレーキ及びクラッチに光学的な監視手段を設け、摩擦板の摩耗限界を検知し、容易にブレーキ及びクラッチの交換時期を把握できるようにしたものであるので、ハブやアーマチュア、ロータに形成したスリットの形状、摩擦板に形成した凹部の形状等については、上記実施の形態のものに限定されないのは勿論のことである。
また、ブレーキの第3の実施の形態では、透過型フォトインタラプタを用いた例で説明したが、これを反射型フォトインタラプタとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の摩擦板の摩耗検知手段を備えたブレーキの第1の実施の形態を示す縦断側面図である。
【図2】本発明の摩擦板の摩耗検知手段を備えたブレーキの第1の実施の形態を示す一部裁断斜視図である。
【図3】本発明の摩擦板の摩耗検知手段を備えたブレーキの第2の実施の形態を示す縦断側面図である。
【図4】本発明の摩擦板の摩耗検知手段を備えたクラッチの第1の実施の形態を示す縦断側面図である。
【図5】本発明の摩擦板の摩耗検知手段を備えたクラッチの第1の実施の形態を示す一部裁断斜視図である。
【図6】本発明の摩擦板の摩耗検知手段を備えたクラッチの第2の実施の形態を示す縦断側面図である。
【図7】本発明の摩擦板の摩耗検知手段を備えたクラッチの第3の実施の形態を示す縦断側面図である。
【図8】従来の乾式複板無励磁作動形ブレーキの構成を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0067】
10、20、50:ブレーキ
30、40:クラッチ
11、21、31、41、51:ハブ
12、22、32、42、52:摩擦板
13、23、33、43、53:アーマチュア
14、24、34、44、54:フィールドコア
15、25、35、45:励磁コイル
16、16A、16B:フォトインタラプタ
16a、16Aa、16Ba:発光部
16b、16Ab、16Bb:受光部
17、27、37、47、57:摩耗検知部
39、49:ロータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーマチュアと摩擦板との摩擦力により、ブレーキ動作を行うブレーキにおいて、
前記摩擦板の所定箇所に光を照射する発光部と、
前記摩擦板の所定箇所を通過した光を受光する受光部とを備え、
前記発光部からの光が、前記摩擦板の摩耗により前記所定箇所を通過し、この光を前記受光部が受光することにより、前記摩擦板の摩耗限界を検知するようにしたことを特徴とする摩擦板の摩耗検知手段を備えたブレーキ。
【請求項2】
アーマチュアと摩擦板との摩擦力により、ブレーキ動作を行うブレーキにおいて、
前記摩擦板の所定箇所に光を照射する発光部と、
前記摩擦板の所定箇所を通過し、所定の反射面に反射された光を受光する受光部とを備え、
前記発光部からの光が、前記摩擦板の摩耗により前記所定箇所を通過し、前記所定の反射面に反射され、この光を前記受光部が受光することにより、前記摩擦板の摩耗限界を検知するようにしたことを特徴とする摩擦板の摩耗検知手段を備えたブレーキ。
【請求項3】
アーマチュアと摩擦板との摩擦力により、ブレーキ動作を行うブレーキにおいて、
同一円周上に、1又は2以上のスリットが設けられたハブと、
前記ハブに設けられたスリットに対向する位置に1又は2以上の凹部が形成された摩擦板と、
前記摩擦板の凹部に光を照射する発光部と、
前記摩擦板の凹部を通過した光を受光する受光部と、
前記発光部と前記受光部間に貫通孔が形成されたアーマチュアとを備え、
前記発光部からの光が、前記摩擦板の摩耗により前記ハブのスリット、前記摩擦板の凹部、前記アーマチュアの貫通孔を通過し、この光を前記受光部が受光することにより、前記摩擦板の摩耗限界を検知するようにしたことを特徴とする摩擦板の摩耗検知手段を備えたブレーキ。
【請求項4】
アーマチュアと摩擦板との摩擦力により、ブレーキ動作を行うブレーキにおいて、
同一円周上に、1又は2以上のスリットが設けられたハブと、
前記ハブに設けられたスリットに対向する位置に1又は2以上の凹部が形成された摩擦板と、
前記摩擦板の凹部に光を照射する発光部と、
前記摩擦板の凹部を通過し、前記アーマチュアから反射された光を受光する受光部とを備え、
前記発光部からの光が、前記摩擦板の摩耗により前記ハブのスリット、前記摩擦板の凹部を通過して、前記アーマチュアから反射した光を前記受光部が受光することにより、前記摩擦板の摩耗限界を検知するようにしたことを特徴とする摩擦板の摩耗検知手段を備えたブレーキ。
【請求項5】
前記発光部と受光部が、所定箇所に、複数組配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の摩擦板の摩耗検知手段を備えたブレーキ。
【請求項6】
前記発光部と受光部は、透過型フォトインタラプタ又は反射型フォトインタラプタであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の摩擦板の摩耗検知手段を備えたブレーキ。
【請求項7】
アーマチュアと摩擦板との摩擦力により、クラッチ動作を行うクラッチにおいて、
前記摩擦板の所定箇所に光を照射する発光部と、
前記摩擦板の所定箇所を通過した光を受光する受光部とを備え、
前記発光部からの光が、前記摩擦板の摩耗により前記摩擦板の所定箇所を通過し、この光を前記受光部が受光することにより、前記摩擦板の摩耗限界を検知するようにしたことを特徴とする摩擦板の摩耗検知手段を備えたクラッチ。
【請求項8】
アーマチュアと摩擦板との摩擦力により、クラッチ動作を行うクラッチにおいて、
前記摩擦板の所定箇所に光を照射する発光部と、
前記摩擦板の所定箇所を通過し、所定の反射面に反射された光を受光する受光部とを備え、
前記発光部からの光が、前記摩擦板の摩耗により前記所定箇所を通過し、前記所定の反射面に反射され、この光を前記受光部が受光することにより、前記摩擦板の摩耗限界を検知するようにしたことを特徴とする摩擦板の摩耗検知手段を備えたクラッチ。
【請求項9】
アーマチュアと摩擦板との摩擦力により、クラッチ動作を行うクラッチにおいて、
同一円周上に、1又は2以上のスリットが設けられたロータと、
前記ロータに設けられたスリットに対向する位置に1又は2以上の凹部が形成された摩擦板と、
前記摩擦板の凹部に光を照射する発光部と、
前記摩擦板の凹部を通過した光を受光する受光部と、
前記発光部と前記受光部間にスリットが形成されたアーマチュアとを備え、
前記発光部からの光が、前記摩擦板の摩耗により、前記アーマチュアのスリット、前記摩擦板の凹部、前記ロータのスリットを通過し、この光を前記受光部が受光することにより、前記摩擦板の摩耗限界を検知するようにしたことを特徴とする摩擦板の摩耗検知手段を備えたクラッチ。
【請求項10】
アーマチュアと摩擦板との摩擦力により、クラッチ動作を行うクラッチにおいて、
同一円周上に、1又は2以上の凹部が形成された摩擦板と、
前記摩擦板に形成された凹部に対する位置に1又は2以上のスリットが形成されたアーマチュアと、
前記摩擦板の凹部に光を照射する発光部と、
前記摩擦板の凹部を通過し、ロータから反射された光を受光する受光部とを備え、
前記発光部からの光が、前記摩擦板の摩耗により、前記摩擦板の凹部、前記アーマチュアのスリットを通過して、前記ロータから反射した光を前記受光部が受光することにより、前記摩擦板の摩耗限界を検知するようにしたことを特徴とする摩擦板の摩耗検知手段を備えたクラッチ。
【請求項11】
前記発光部と受光部が、所定箇所に、複数組配置されていることを特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載の摩擦板の摩耗検知手段を備えたクラッチ。
【請求項12】
前記発光部と受光部は、透過型フォトインタラプタ又は反射型フォトインタラプタであることを特徴とする請求項7乃至11のいずれかに記載の摩擦板の摩耗検知手段を備えたクラッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−144869(P2008−144869A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333152(P2006−333152)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(000002059)神鋼電機株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】