説明

撮像装置

【課題】複数の撮像光学系を含む撮像装置において、簡素化、小型化等を図る。
【解決手段】被写体光を複数の光路に分割してそれぞれの光路上で被写体を撮像するべく、被写体光の主光線を光軸Lと平行に導く物体側テレセントリックレンズ光学系30、物体側テレセントリックレンズ光学系の出射光を複数の光路に分割する光路分割要素40、光路分割要素により分割された複数の光路上に配置された複数の撮像レンズ光学系50、70を含む。これにより、被写体が所定の撮像位置から変動しあるいは周辺領域を撮像する場合でも、物体側テレセントリックレンズ光学系により、被写体の変動あるいは撮像領域に影響されない高精度な画像を撮像することができる。又、複数の撮像レンズ光学系50,70は、単一の物体側テレセントリックレンズ光学系30を共用するため、部品点数を削減でき、構造の簡素化、装置の小型化、低コスト化等を達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着ノズルによって吸着された電子部品等の被写体(物体)に光を照射し、撮像して得られた画像に基づいて電子部品等の位置や姿勢及び欠陥等を認識するための撮像装置に関し、特に、電子部品等の全体あるいは細部を撮像し得る複数の撮像レンズ光学系を含む撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、吸着ノズルに吸着された半導体チップや抵抗器等の電子部品を、プリント基板等に搬送して実装する表面実装機が知られている。このような表面実装機は、電子部品を撮像し、吸着ノズルと電子部品との間に生じた吸着時の位置ずれや姿勢の傾き等を検出するための撮像装置を備えている。
従来、この種の撮像装置としては、上方に電子部品等の被写体からの被写体光(物体光)を通す透明の防塵ガラスが配置されかつ内部に被写体光の光路を画定するケーシング、ケーシング内に配置されて被写体光を透過及び反射するハーフミラー、ハーフミラーを透過した被写体光を反射する全反射ミラー、ハーフミラーにより反射された被写体光を受光して細部を撮像する小視野用の撮像カメラ、全反射ミラーにより反射された被写体光を受光して全体を撮像する大視野用の撮像カメラ等を備え、小視野用の撮像カメラと大視野用の撮像カメラを切り替えることにより、電子部品の細部画像又は全体画像を撮像するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、このような撮像装置では、小視野用の撮像カメラと大視野用の撮像カメラがそれぞれ専用のレンズ光学系を含むものであるため、被写体光の主光線を光軸と平行に導く物体側テレセントリックレンズ光学系を採用する場合、それぞれの撮像カメラにおいてこの物体側テレセントリックレンズ光学系を採用する必要があり、部品点数が増大し、装置の大型化、複雑化、高コスト化等を招くという欠点があった。
また、2つの撮像カメラは、ケーシングに対して固定されており、予め選定された仕様以外の光学特性にて撮像を行うことは困難であった。
【0004】
【特許文献1】特開2003−124700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、部品点数の削減、構造の簡素化、装置の小型化、低コスト化等を図りつつ、電子部品等の被写体(物体)を全体に亘ってあるいは部分的に詳細に撮像することができ、特に電子部品等の実装工程において適用され得る撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の撮像装置は、被写体光を複数の光路に分割してそれぞれの光路上で被写体を撮像する撮像装置であって、被写体光の主光線を光軸と平行に導く物体側テレセントリックレンズ光学系と、物体側テレセントリックレンズ光学系の出射光を複数の光路に分割する光路分割要素と、光路分割要素により分割された複数の光路上に配置された複数の撮像レンズ光学系を含む、ことを特徴としている。
この構成によれば、被写体光は物体側テレセントリックレンズ光学系を通過した後、光路分割要素により複数の光路に分割され、それぞれの光路上に配置された複数の撮像レンズ光学系によりそれぞれ撮像される。
すなわち、被写体が所定の撮像位置から変動しあるいは周辺領域を撮像する場合でも、物体側テレセントリックレンズ光学系により、被写体の変動あるいは撮像領域に影響されない高精度な画像を撮像することができ、又、複数の撮像レンズ光学系は、単一つの物体側テレセントリックレンズ光学系を共用するため、それぞれに物体側テレセントリックレンズ光学系を設ける場合に比べて部品点数を削減でき、構造の簡素化、装置の小型化、低コスト化等を達成することができる。
【0007】
上記構成において、物体側テレセントリックレンズ光学系は、最も結像側において、所定の口径をなす開口絞りを含み、光路分割要素は、開口絞りよりも被写体側に配置されて物体側テレセントリックレンズ光学系の出射光を透過及び反射する、構成を採用することができる。
この構成によれば、物体側テレセントリンクレンズ光学系を通過した被写体光を、低コスト化を達成しつつ、二つの光路に容易に分割することができる。
【0008】
上記構成において、物体側テレセントリックレンズ光学系は、光路分割要素に向けて平行光束を出射し、光路分割要素は、平行光束を透過及び反射する、構成を採用することができる。
この構成によれば、物体側テレセントリックレンズ光学系から出射された被写体光が平行光束をなすため、光路分割要素の下流側に配置される撮像レンズ光学系として、光学特性の異なった種々の撮像レンズ光学系を適用することが可能になり、汎用性が向上する。
【0009】
上記構成において、複数の撮像レンズ光学系は、被写体の狭い範囲を撮像する小視野撮像レンズ光学系と、被写体の広い範囲を撮像する大視野撮像レンズ光学系を含む、構成を採用することができる。
この構成によれば、被写体の細部を詳細に拡大して撮像する場合は、小視野撮像レンズ光学系を用いて撮像することができ、又、被写体の全体を撮像する場合は、大視野撮像レンズ光学系を用いて撮像することができる。すなわち、撮影モードに応じて、細部画像又は全体画像の一方のみを又は両方を同時に撮像することができる。
【0010】
上記構成において、光路分割要素よりも結像側には、光路分割要素により反射された反射光を屈曲して小視野撮像レンズ系又は大視野撮像レンズ系に導く屈曲要素が配置されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、光路分割要素により反射された被写体光を屈曲要素により屈曲させて小視野撮像レンズ系又は大視野撮像レンズ系に導くことができるため、例えば、光路分割要素を透過した光路上に大視野撮像レンズ光学系を配置し、光路分割要素により反射されかつ屈曲要素により(例えば90度)屈曲されて方向変換された光路上に小視野撮像レンズ光学系を配置することで、両方の撮像レンズ光学系を並べて配置することができ、全体として装置を小型化、薄型化することができる。
【0011】
上記構成において、物体側テレセントリックレンズ光学系及び光路分割要素又は屈曲要素を保持するケーシングを含み、複数の撮像レンズ光学系は、ケーシングに対して脱着可能にユニット化されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、複数の撮像レンズ光学系がケーシングに対して脱着自在にユニット化されているため、物体側テレセントリックレンズ光学系を共通にした状態で、撮影要求に応じて適宜所望の光学特性をなす撮像レンズ光学系に交換することができる。
【0012】
上記構成において、物体側テレセントリックレンズ光学系よりも被写体側には、被写体光を屈曲して物体側テレセントリックレンズ光学系に導く屈曲要素が配置されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、例えば、上方から下方に向けて反射された被写体光を、屈曲要素で水平方向に方向変換して物体側テレセントリックレンズ光学系に導くようにすることで、装置の薄型化等を達成することができる。
【発明の効果】
【0013】
上記構成をなす撮像装置によれば、部品点数の削減、構造の簡素化、装置の小型化、低コスト化等を達成しつつ、電子部品等の被写体を全体に亘ってあるいは部分的に詳細に撮像することができ、特に電子部品等の実装工程において適用され得る撮像装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の最良の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1ないし図12は、本発明に係る撮像装置の一実施の形態を示すものであり、図1は装置の内部を示す斜視断面図、図2は装置の平面図、図3は装置の断面図、図4は大視野撮像光学系を示す構成図、図5は小視野撮像光学系を示す構成図、図6は物体側テレセントリックレンズ光学系の部分拡大断面図、図7は大視野撮像レンズ光学系及び小視野撮像レンズ光学系を示す部分断面図、図8は大視野撮像レンズ光学系を示す部分断面図、図9は小視野撮像レンズ光学系を示す部分断面図、図10は大視野撮像光学系のレンズ構成を示す構成図、図11は小視野撮像光学系のレンズ構成を示す構成図、図12及び図13は収差図である。
【0015】
この撮像装置は、図1ないし図3に示すように、全体を覆うケーシング10、屈折要素としての第1ハーフミラー20、物体側テレセントリックレンズ光学系30、光路分割要素としての第2ハーフミラー40、第2ハーフミラー40を透過した光路上に配置された大視野撮像レンズ光学系50、第2ハーフミラー40により反射された光路上に配置され被写体光を屈曲させる屈曲要素としての全反射ミラー60、全反射ミラー60に反射された被写体光の光路上に配置された小視野撮像レンズ光学系70、第1ハーフミラー20の上方に環状に配置された環状照明用の光源80、第1ハーフミラー20の下方に配置された同軸照明用の光源90等を備えている。
そして、この撮像装置においては、物体側テレセントリックレンズ光学系30及び大視野撮像レンズ光学系50により、被写体OBJを広い範囲に亘って撮像する大視野撮像光学系が形成され、又、物体側テレセントリックレンズ光学系30及び小視野撮像レンズ光学系70により、被写体OBJの狭い範囲を部分的に拡大して詳細に撮像する小視野撮像光学系が形成されている。
【0016】
ケーシング10は、図1ないし図3に示すように、縦断面が略L字形状をなすように形成され、吸着ノズルNにより保持されて所定の撮像位置に搬入されてきた被写体(電子部品)OBJから反射される被写体光を通す円形の開口部11、開口部11を覆う透明の防振ガラス12、光源80を保持する保持枠13、第1ハーフミラー20を保持する保持枠14、光源90を保持する保持板15、物体側テレセントリックレンズ光学系30を保持する保持筒16、第2ハーフミラー40を保持する保持枠17、全反射ミラー60を保持する保持枠18、大視野撮像レンズ光学系50を脱着自在に取り付ける取付孔19a及び小視野撮像レンズ光学系70を脱着自在に取り付ける取付孔19bをもつフランジ部19等を備えている。
【0017】
第1ハーフミラー20は、光を透過及び反射する作用をなすものであり、図1及び図3に示すように、被写体OBJにより下方に向けて発せられる被写体光を水平方向に屈曲させるように略45度傾斜させた状態で保持枠14に固定されている。
すなわち、上方から下方に向けて発せられた被写体光を水平方向に反射(方向変換)して物体側テレセントリックレンズ光学系30に導くようになっている。
このように、物体側テレセントリックレンズ光学系30よりも被写体側において、被写体光を屈曲させる第1ハーフミラー20(屈曲要素)を配置したことにより、上下方向に向かう被写体光を水平方向に導くことができ、装置の薄型化を達成することができる。また、第1ハーフミラー20の背後(下方)に同軸照明用の光源90を配置することができるため、全体として無駄なスペースを省き、装置を小型化することができる。
【0018】
光源80は、図1及び図3に示すように、開口部11の下方近傍でかつ第1ハーフミラー20の上方領域(被写体側寄り)おいて、3段に設けられた保持枠13にそれぞれ環状に配列して固定された複数の発光ダイオードにより形成されており、被写体OBJに対して斜め方向から照明光を照射するようになっている。
光源90は、図1及び図3に示すように、第1ハーフミラー20の下方(背後)領域において、保持板15上に面状に配列して固定された複数の発光ダイオード、発光ダイオードの光を拡散する拡散板等により形成されており、第1ハーフミラー20を透過して上方に位置する被写体OBJに向けて照明光を照射するようになっている。
【0019】
物体側テレセントリックレンズ光学系30は、図1及び図5に示すように、鏡筒31、鏡筒31内に被写体側から結像面側に向けて順に配列された、第1レンズG1、第2レンズG2、第3レンズG3、後述するユニットケース51,71に設けられた所定口径をなす開口絞りSDにより形成されている。
ここで、第1レンズG1は、図3及び図4に示すように、被写体側及び結像面側に凸面を向けた正の屈折力を有する両凸レンズである。
第2レンズG2は、図3及び図4に示すように、被写体側に凸面及び結像面側に凹面を向けた正の屈折力を有するメニスカスレンズである。
第3レンズG3は、図3及び図4に示すように、被写体側に平面及び結像面側に凹面を向けた負の屈折力を有する平凹レンズである。
そして、3つのレンズG1,G2,G3を保持した鏡筒31は、保持筒16に嵌合されて光軸Lが水平になるように方向付けられている。
【0020】
すなわち、物体側テレセントリックレンズ光学系30に進入する被写体光は、図4及び図5に示すように、その主光線L1が光軸Lに対して平行になるように形成されている。
したがって、被写体OBJが所定の撮像位置から変動した場合あるいは周辺領域を撮像する際においても、これらの変動あるいは撮像領域に影響されない高精度な画像を撮像することができ、又、大視野撮像光学系及び小視野撮像光学系のために単一つの物体側テレセントリックレンズ光学系30を共用するため、それぞれに物体側テレセントリックレンズ光学系を設ける場合に比べて部品点数を削減でき、構造の簡素化、装置の小型化、低コスト化等を達成することができる。
【0021】
また、物体側テレセントリックレンズ光学系30は、第3レンズG3を通過した被写体光の光束が、図6に示すように、平行拘束として出射され第2ハーフミラー40に導かれるように形成されている。
このように、平行光束として出射させることにより、光路分割要素としての第2ハーフミラー40の配置が容易になり、又、第2ハーフミラー40の下流側(結像面側)に配置される撮像レンズ光学系として、光学特性の異なった種々の撮像レンズ光学系を適用することが可能になり、汎用性が向上する。
【0022】
第2ハーフミラー40は、図1及び図3に示すように、物体側テレセントリックレンズ光学系30の第3レンズG3よりも下流側(結像面側)で開口絞りSDよりも被写体側において、その水平な光軸L上に45度に傾斜した状態に配置されて保持枠17に固定されており、物体側テレセントリックレンズ光学系30の(第3レンズG3を通過した)出射光を、そのまま透過させて直進させる光路と、90度下向きに反射して直進させる光路との二つの光路に分割するようになっている。
ここでは、光路分割要素として第2ハーフミラー40を採用しているため、所定の透過率及び反射率を容易に選定することができ、又、狭いスペースにおいて簡単にケーシング10内に取り付けて固定することができる。
【0023】
大視野撮像レンズ光学系50は、図3、図7及び図8に示すように、ケーシング10のフランジ部19に形成された取付孔19aに対して脱着自在に形成されたユニットケース51、ユニットケース51に内において被写体側から結像面側に向けて順に光軸L上に配列された、第4レンズG4、第5レンズG5、第6レンズG6、第7レンズG7、第8レンズG8、撮像素子52等を備えている。
尚、ユニットケース51には、第4レンズG4よりも被写体側において、物体側テレセントリックレンズ光学系30の一部をなす所定口径の開口絞りSDが設けられている。
【0024】
ここで、第4レンズG4は、図8に示すように、被写体側に凸面及び結像面側に凸面を向けた正の屈折力を有する両凸レンズである。
第5レンズG5は、図8に示すように、被写体側に凹面及び結像面側に凹面を向けた負の屈折力を有する両凹レンズであり、第4レンズG4に接合されている。
第6レンズG6は、図8に示すように、被写体側に凹面及び結像面側に凹面を向けた負の屈折力を有する両凹レンズである。
第7レンズG7は、図8に示すように、被写体側に凸面及び結像面側に凸面を向けた正の屈折力を有する両凸レンズであり、第6レンズG6に接合されている。
第8レンズG8は、図8に示すように、被写体側に凸面及び結像面側に凸面を向けた正の屈折力を有する両凸レンズである。
撮像素子52は、結像面Pを画定するエリアCCDである。このように、撮像素子52としてライン(線)ではなくエリア(面)にて撮像できるエリアCCDを用いることにより、撮像時間を短縮することができ、この撮像装置を実装ライン等に適用した場合に、実装スピードを速くすることができ、生産性を向上させることができる。
【0025】
したがって、被写体OBJを大視野にて撮像する場合は、図4に示すように、物体側テレセントリックレンズ光学系30及び大視野撮像レンズ光学系50からなる大視野撮像光学系により撮像される。すなわち、被写体OBJ→第1ハーフミラー20(反射)→物体側テレセントリックレンズ光学系30(第1レンズG1→第2レンズG2→第3レンズG3)→第2ハーフミラー40(透過)→開口絞りSD→大視野撮像レンズ光学系50(第4レンズG4→第5レンズG5→第6レンズG6→第7レンズG7→第8レンズG8→撮像素子52)という光路を経て、大視野画像が撮像される。
【0026】
また、大視野撮像レンズ光学系50は、ユニット化されて、そのユニットケース51がケーシング10(の取付孔19a)に対して脱着自在となっているため、物体側テレセントリックレンズ光学系30(の第1レンズG1,第2レンズG2,第3レンズG3)を共通にした状態で、撮影要求に応じて適宜他の光学特性をなす撮像レンズ光学系に容易に交換することができる。
【0027】
全反射ミラー60は、図1及び図3に示すように、第2ハーフミラー40よりも結像面側でかつ下方において、第2ハーフミラー40と平行になるように45度に傾斜した状態に配置されて保持枠18に固定されており、第2ハーフミラー40により下方に向けて反射された被写体光を、さらに水平方向に屈曲させて反射し、その下流側(結像面側)に位置する小視野撮像レンズ光学系70に導くようになっている。
このように、屈曲要素として全反射ミラー60を採用しているため、狭いスペースにおいて簡単にケーシング10内に取り付けて固定することができ、又、第2ハーフミラー40を透過した光路上に配置された大視野撮像レンズ光学系50と、第2ハーフミラー40により反射されかつ全反射ミラー60により反射された光路上に配置された小視野撮像レンズ光学系70を平行に並べて配置することができ、全反射ミラー60を設けない場合に比べて、全体として装置を小型化、薄型化を達成することができる。
【0028】
小視野撮像レンズ光学系70は、図3、図7及び図9に示すように、ケーシング10のフランジ部19に形成された取付孔19bに対して脱着自在に形成されたユニットケース71、ユニットケース71に内において被写体側から結像面側に向けて順に光軸L上に配列された、第9レンズG9、第10レンズG10、第11レンズG11、撮像素子72等を備えている。
尚、ユニットケース71には、第9レンズG9よりも被写体側において、物体側テレセントリックレンズ光学系30の一部をなす所定口径の開口絞りSDが設けられている。
【0029】
ここで、第9レンズG9は、図9に示すように、被写体側に凸面及び結像面側に凸面を向けた正の屈折力を有する両凸レンズである。
第10レンズG10は、図9に示すように、被写体側に凸面及び結像面側に凸面を向けた正の屈折力を有する両凸レンズである。
第11レンズG11は、図9に示すように、被写体側に凹面及び結像面側に凹面を向けた負の屈折力を有する両凹レンズであり、第10レンズG10に接合されている。
撮像素子72は、結像面Pを画定するエリアCCDである。このように、撮像素子72としてライン(線)ではなくエリア(面)にて撮像できるエリアCCDを用いることにより、撮像時間を短縮することができ、この撮像装置を実装ライン等に適用した場合に、実装スピードを速くすることができ、生産性を向上させることができる。
【0030】
したがって、被写体OBJを小視野にて撮像する場合は、図5に示すように、物体側テレセントリックレンズ光学系30及び小視野撮像レンズ光学系70からなる小視野撮像光学系により撮像される。すなわち、被写体OBJ→第1ハーフミラー20(反射)→物体側テレセントリックレンズ光学系30(第1レンズG1→第2レンズG2→第3レンズG3)→第2ハーフミラー40(反射)→全反射ミラー60(反射)→開口絞りSD→小視野撮像レンズ光学系70(第9レンズG9→第10レンズG10→第11レンズG11→撮像素子72)という光路を経て、小視野画像が撮像される。
【0031】
上記のように、被写体OBJの広い範囲を撮像する場合は大視野撮像光学系(30,50)で撮像し、被写体OBJの狭い範囲を詳細に撮像する場合は小視野撮像光学系(30,70)で撮像することができ、これらの撮像動作は、モニターが一つの場合は必要に応じて適宜切替えて一方の画像のみを撮像してもよく、又、モニターが二つの場合は同時に大小の画像を撮像してもよい。
すなわち、上記撮像装置によれば、撮影光路上において、被写体側には単一の物体側テレセントリックレンズ光学系30(第1レンズG1,第2レンズG2,第3レンズG3)を配置し、その下流側には第2ハーフミラー40を介して一つの光路を二つの光路に分割し、それぞれの光路を通して大視野画像と小視野画像を撮像することができるため、被写体OBJが所定の撮像位置から変動しても、大視野画像及び小視野画像を共に高精度な画像として撮像することができ、又、単一つの物体側テレセントリックレンズ光学系30(第1レンズG1,第2レンズG2,第3レンズG3)を共用するため、それぞれに物体側テレセントリックレンズ光学系を設ける場合に比べて部品点数を削減でき、構造の簡素化、装置の小型化、低コスト化等を達成することができる。
尚、上記構成においては、開口絞りSDをユニットケース51,71に設けた場合を示したが、ユニットケース51,71に設ける替わりに、ケーシング10の一部に固定して設けてもよい。
【0032】
次に、大視野撮像光学系(物体側テレセントリックレンズ光学系30及び大視野撮像レンズ光学系50)の具体的な仕様諸元、種々の数値データ(設定値)を示すと、以下の通りである。尚、図10に示すように、第1レンズG1〜第8レンズG8において、各々の面をSi(i=1〜14)、各々の面Siの曲率半径をRi(i=1〜14)、各々のレンズの屈折率をNi(i=1〜8)及びアッベ数をνi(i=1〜8)、光軸L上における距離(厚さ、空気間隔)をDi(i=1〜15)、各々のレンズの外径寸法をφi(i=1〜8)で表す。
【0033】
<仕様緒元>
使用波長=525nm、焦点距離=182.2mm、撮像範囲=φ95mm、開口絞りSD2の口径=φ0.19mm、明るさ(Fナンバー)=7.0、共役長(被写体OBJ〜結像面P)=369mm、レンズ全長=169.5mm
第1レンズG1→φ1=90mm、N1=1.7725、ν1=49.6
第2レンズG2→φ2=80mm、N2=1.48749、ν2=70.2
第3レンズG3→φ3=68mm、N3=1.78472、ν3=25.7
第4レンズG4→φ4=1.6mm、N4=1.7725、ν4=49.6
第5レンズG5→φ5=2.0mm、N5=1.51633、ν5=64.1
第6レンズG6→φ6=2.4mm、N6=1.78472、ν6=25.7
第7レンズG7→φ7=3.2mm、N7=1.62004、ν7=36.3
第8レンズG8→φ8=5.2mm、N8=1.6968、ν8=55.5
【0034】
<第1レンズG1〜第8レンズG8の曲率半径Ri(mm)>
R1=193.3425mm、R2=−401.1592mm、R3=66.8901mm、R4=231.4478mm、R5=∞、R6=105.5918mm、R7=5.7548mm、R8=−5.7548mm、R9=5.7094mm、R10=−3.0462mm、R11=5.2632mm、R12=−4.3035mm、R13=24.0046mm、R14=−11.0984mm
【0035】
<光軸上の面間隔(mm)>
D1=199.4560mm、D2=10.0000mm、D3=1.0000mm、D4=16.0000mm、D5=9.0429mm、D6=3.0000mm、D7=112.8758mm+(開口絞りSD)+0.1926mm、D8=1.0000mm、D9=0.8000mm、D10=1.5000mm、D11=1.1000mm、D12=2.0000mm、D13=0.5000mm、D14=1.5000mm、D15=8.9570mm
【0036】
上記構成をなす大視野撮像光学系における球面収差、非点収差、歪曲収差を示す収差図は、図12に示す結果となる。尚、図12中の非点収差において、Sはサジタル平面での収差、Mはメリジオナル平面での収差を示す。
【0037】
次に、小視野撮像光学系(物体側テレセントリックレンズ光学系30及び小視野撮像レンズ光学系70)の具体的な仕様諸元、種々の数値データ(設定値)を示すと、以下の通りである。尚、図11に示すように、第1レンズG1〜第3レンズG3、第9レンズG9〜第11レンズG11において、各々の面をSi(i=1〜6,15〜19)、各々の面Siの曲率半径をRi(i=1〜6,15〜19)、各々のレンズの屈折率をNi(i=1〜3,9〜11)及びアッベ数をνi(i=1〜3,9〜11)、光軸L上における距離(厚さ、空気間隔)をDi(i=1〜6,16〜21)、各々のレンズの外径寸法をφi(i=1〜3,9〜11)で表す。
【0038】
<仕様緒元>
使用波長=525nm、焦点距離=91.74mm、撮像範囲=φ40mm、開口絞りSD3の口径=φ4.06mm、明るさ(Fナンバー)=7.0、共役長(被写体OBJ〜結像面P)=401.45mm、レンズ全長=202mm
【0039】
第1レンズG1→φ1=90mm、N1=1.7725、ν1=49.6
第2レンズG2→φ2=80mm、N2=1.48749、ν2=70.2
第3レンズG3→φ3=68mm、N3=1.78472、ν3=25.7
第9レンズG9→φ9=10mm、N9=1.84666、ν9=23.8
第10レンズG10→φ10=9mm、N10=1.48749、ν10=70.2
第11レンズG11→φ11=8mm、N11=1.84666、ν11=23.8
【0040】
<第1レンズG1〜第3レンズG3、第9レンズG9〜第11レンズG11の曲率半径Ri(mm)>
R1=193.3425mm、R2=−401.1592mm、R3=66.8901mm、R4=231.4478mm、R5=∞、R6=105.5918mm、R15=39.5477mm、R16=−28.9141mm、R17=8.3924mm、R18=−46.2059mm、R19=8.3898mm
【0041】
<光軸上の面間隔(mm)>
D1=199.4560mm、D2=10.0000mm、D3=1.0000mm、D4=16.0000mm、D5=9.0429mm、D6=3.0000mm、D16=112.8758mm+(開口絞りSD)+0.1926mm、D17=4.0000mm、D18=1.0640mm、D19=2.8000mm、D20=2.0000mm、D21=17.1540mm
【0042】
上記構成をなす小視野撮像光学系における球面収差、非点収差、歪曲収差を示す収差図は、図13に示す結果となる。尚、図13中の非点収差において、Sはサジタル平面での収差、Mはメリジオナル平面での収差を示す。
【0043】
上記実施形態においては、光路分割要素として、透過する光路と反射する光路とに二分割する第2ハーフミラー40を示し、かつ、複数の撮像レンズ光学系として大視野撮像レンズ光学系50及び小視野撮像レンズ光学系70の2つを示したが、これに限定されるものではなく、その他複数の光路に分割する光路分割要素を採用し、かつ、2つ以外の複数の撮像レンズ光学系を適用してもよい。
上記実施形態においては、第2ハーフミラー40により反射された被写体光をさらに反射する全反射ミラー60を採用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、全反射ミラー60を廃止して、第2ハーフミラー40により反射された光路上に小視野撮像レンズ光学系70を配置してもよい。
【0044】
上記実施形態においては、第2ハーフミラー40を透過した被写体光の光路上に大視野撮像レンズ光学系50を配置し、第2ハーフミラー40により反射された被写体光の光路上に小視野撮像レンズ光学系70を配置した場合を示したが、これに限定されるものではなく、大視野撮像レンズ系50と小視野撮像レンズ系70を入れ替えて配置してもよい。
上記実施形態においては、物体側テレセントリックレンズ光学系30の上流側(被写体側)に第1ハーフミラー20を配置した場合を示したが、これに限定されるものではなく、光源90を他の手法により配置できれば第1ハーフミラー20を廃止してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る撮像装置の一実施形態を示すものであり、装置の内部を示す斜視断面図である。
【図2】図1に示す撮像装置の平面図である。
【図3】図1に示す撮像装置の断面図である。
【図4】撮像装置に含まれる大視野撮像光学系を示す構成図である。
【図5】撮像装置に含まれる小視野撮像光学系を示す構成図である。
【図6】撮像装置に含まれる物体側テレセントリックレンズ光学系の部分拡大断面図である。
【図7】撮像装置に含まれる大視野撮像レンズ光学系及び小視野撮像レンズ光学系を示す部分断面図である。
【図8】大視野撮像レンズ光学系を示す部分断面図である。
【図9】小視野撮像レンズ光学系を示す部分断面図である。
【図10】大視野撮像光学系のレンズ構成を示す構成図である。
【図11】小視野撮像光学系のレンズ構成を示す構成図である。
【図12】大視野撮像光学系における球面収差、非点収差、歪曲収差を示す収差図である。
【図13】小視野撮像光学系における球面収差、非点収差、歪曲収差を示す収差図である。
【符号の説明】
【0046】
10 ケーシング
11 開口部
12 防塵ガラス
13,14 保持枠
15 保持板
16 保持筒
17,18 保持枠
19 フランジ部
19a,19b 取付孔
20 第1ハーフミラー(屈曲要素)
30 物体側テレセントリックレンズ光学系
31 鏡筒
G1 第1レンズ
G2 第2レンズ
G3 第3レンズ
SD 開口絞り
40 第2ハーフミラー(光路分割要素)
50 大視野撮像レンズ光学系
51 ユニットケース
52 撮像素子
G4 第4レンズ
G5 第5レンズ
G6 第6レンズ
G7 第7レンズ
G8 第8レンズ
60 全反射ミラー(屈曲要素)
70 小視野撮像レンズ光学系
71 ユニットケース
72 撮像素子
G9 第9レンズ
G10 第9レンズ
G11 第11レンズ
80,90 光源



【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体光を複数の光路に分割してそれぞれの光路上で前記被写体を撮像する撮像装置であって、
前記被写体光の主光線を光軸と平行に導く物体側テレセントリックレンズ光学系と、
前記物体側テレセントリックレンズ光学系の出射光を複数の光路に分割する光路分割要素と、
前記光路分割要素により分割された複数の光路上に配置された複数の撮像レンズ光学系と、
を含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記物体側テレセントリックレンズ光学系は、最も結像側において、所定の口径をなす開口絞りを含み、
前記光路分割要素は、前記開口絞りよりも被写体側に配置されて前記物体側テレセントリックレンズ光学系の出射光を透過及び反射する、
ことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記物体側テレセントリックレンズ光学系は、前記光路分割要素に向けて平行光束を出射し、
前記光路分割要素は、平行光束を透過及び反射する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記複数の撮像レンズ光学系は、被写体の狭い範囲を撮像する小視野撮像レンズ光学系と、被写体の広い範囲を撮像する大視野撮像レンズ光学系を含む、
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載の撮像装置。
【請求項5】
前記光路分割要素よりも結像側には、前記光路分割要素により反射された反射光を屈曲して前記小視野撮像レンズ系又は大視野撮像レンズ系に導く屈曲要素が配置されている、
ことを特徴とする請求項2ないし4いずれかに記載の撮像装置。
【請求項6】
前記物体側テレセントリックレンズ光学系及び光路分割要素又は屈曲要素を保持するケーシングを含み、
前記複数の撮像レンズ光学系は、前記ケーシングに対して脱着可能にユニット化されている、
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれかに記載の撮像装置。
【請求項7】
前記物体側テレセントリックレンズ光学系よりも被写体側には、被写体光を屈曲して前記物体側テレセントリックレンズ光学系に導く屈曲要素が配置されている、
ことを特徴とする請求項1ないし6いずれかに記載の撮像装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−294317(P2008−294317A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139928(P2007−139928)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】