説明

放射線検出器および放射線検出器の製造方法

【課題】放射線検出器の製造方法を工夫することによって欠損画素の発生が抑制された放射線検出器を提供する。
【解決手段】本発明のX線検出器10は、常温硬化型エポキシ樹脂が硬化したエポキシ樹脂層5を備えている。常温硬化型エポキシ樹脂の注入作業と脱泡作業を行うには、樹脂の粘度は低い方がよい。しかしながら、粘度の低い樹脂は、硬化するのに時間がかかりすぎてしまい、これがアモルファスセレン層1の変質を招く。そこで、本発明の構成は、エポキシ樹脂を速やかに硬化させる目的で、エポキシ樹脂を硬化させる温度を限定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線をイメージングする放射線検出器および放射線検出器の製造方法に係り、特に、欠損画素の増加を抑制することにより、耐久性が向上した放射線検出器および放射線検出器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線をイメージングする放射線検出器は、医療分野をはじめ様々な分野で用いられる。この放射線検出器の具体的な構成について説明する。従来の放射線検出器60は、図13に示すように、放射線を電子・正孔のキャリア対に変換するアモルファスセレン層51と、アモルファスセレン層51の両面を覆うように積層された高抵抗膜52,57と、高抵抗膜57に接して設けられたガラス製のアクティブマトリックス基板54と、高抵抗膜52に積層された電極層53と、アモルファスセレン層51,高抵抗膜52,および電極層53を覆うように設けられた絶縁樹脂層55と、絶縁樹脂層55を覆うように設けられたガラス板56とを備えている(特許文献1参照)。
【0003】
このよう放射線検出器60は、両面がガラスの板で覆われている。こうすることで、放射線検出器60が温度変化により反り返ることがなくなり、放射線検出器60の内部がクラックすることが防がれる。
【0004】
高抵抗膜52は、電極層53からの電荷の注入を阻止するキャリア選択性の役割だけでなく、絶縁樹脂層55からアモルファスセレン層51を隔離する役割を担っている。絶縁樹脂層55に含まれるアミンなどの化合物がアモルファスセレン層51に浸透すると、アモルファスセレン層51が変質(結晶化)し、放射線検出器60に欠損画素を発生させてしまう。絶縁樹脂層55とアモルファスセレン層51との間に設けられているキャリア選択性の高抵抗膜52が十分な耐性を有していれば、変質の原因となる絶縁樹脂層55に含まれる化合物がアモルファスセレン層51に浸透することを防止することができる(特許文献2,特許文献3,特許文献4参照)。
【0005】
絶縁樹脂層55は、電極層53を電気的に遮蔽する目的で設けられている。こうすることで電極層53の周縁部から発生する沿面放電が防がれる。この絶縁樹脂層55の従来の製造方法について説明する。従来の絶縁樹脂層55を製造するには、まず、絶縁樹脂層55以外の各部を予め製造しておく。そして、図14に示すように、ガラス板56を固定する枠材59に設けられた穴から硬化前の樹脂をガラス板56と電極層53との間の隙間に充填する。樹脂が硬化すると、絶縁樹脂層55が完成となる。絶縁樹脂層55は、エポキシ樹脂からなる(特許文献5参照)。
【0006】
製造に使用されるエポキシ樹脂の硬化前の粘度が高いと、エポキシ樹脂の内部に入り込んだ空気を十分に抜くことができず、硬化前のエポキシ樹脂は、空気の泡を含んだまま上述の隙間に充填されてしまう。絶縁樹脂層55に空気の泡が混入することは放射線検出器60の製造において望ましいことではない。
【0007】
そこで、絶縁樹脂層55を製造するに際し、エポキシ樹脂として、硬化前の粘度が低いものを選択すれば製造に都合がよい。硬化前の低粘度のエポキシ樹脂に真空脱泡処理を施して、硬化前のエポキシ樹脂をガラス板56と電極層53との間の隙間に充填するようにすれば、絶縁樹脂層55に空気の泡が混入することがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−311144号公報
【特許文献2】特開2002−009268号公報
【特許文献3】特開2002−116259号公報
【特許文献4】特開2000−230981号公報
【特許文献5】特開2005−283260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の放射線検出器および放射線検出器の製造方法には、次のような問題点がある。
すなわち、粘度の低いエポキシ樹脂を放射線検出器60の製造に用いると、エポキシ樹脂が硬化するまでに時間がかかりすぎてしまい、これが放射線検出器60の性能に影響してしまう。
【0010】
粘度の低いエポキシ樹脂の硬化には、時間がかかり、例えば硬化に3日程度が必要である。この様にガラス板56と電極層53との間の隙間に硬化前のエポキシ樹脂が存している時間が長いと、アミン化合物がアモルファスセレン層51に到達する可能性が増大する。発明者は、エポキシ樹脂の硬化時間の長さとアモルファスセレン層51の変質のしやすさの関係を調査し、アミン化合物の浸透は、アモルファスセレン層51の異常成長突起が存する部分において顕著であることを突き止めた。
【0011】
アモルファスセレン層51の異常成長突起について説明する。図15は、アモルファスセレン層51の断面図である。アモルファスセレン層51は、どの部分でも同じ厚さを有していることが理想である。しかしながら、図15の(a)の矢印の部分では、アモルファスセレン層51が高抵抗膜52に向けて突出している。アモルファスセレン層51を製造する上で、このような異常成長突起の発生を完全に抑制することは難しい。高抵抗膜52は、異常成長突起を有したままのアモルファスセレン層51に積層されることになる。
【0012】
図15においては、高抵抗膜52は、電子移動剤を添加したポリカーボネート膜52aとSb膜52bとの二層からなっている。図16は、アモルファスセレン層51の異常成長突起の頭頂部の拡大図である。写真に黒い筋として表れているポリカーボネート膜52aは、異常成長突起の頭頂部に向かうに従って肉薄となっている。これはポリカーボネート膜52aを生成する際に、ポリカーボネートが異常成長突起の頭頂部から流れ落ちてしまったことに起因している。高抵抗膜52が肉薄となっている部分があると、そこから絶縁樹脂層55由来のアミン化合物がアモルファスセレン層51に浸透しやすくなる。
【0013】
図17は、アモルファスセレン層51の異常成長突起の付け根の拡大図である。この部分は、図15の(b)に相当している。図17の矢印の部分では、Sb膜52bに亀裂が生じている。すなわち、異常成長突起の付け根においては、V型となっているアモルファスセレン層51を覆うようにSb膜52bがV型に成長するので、その部分のSb膜52bは簡単にクラックしてしまう。クラックによりSb膜52bに穴が開くと、そこから絶縁樹脂層55由来のアミン化合物がアモルファスセレン層51に浸透しやすくなる。
【0014】
図18は、アモルファスセレン層51の異常成長突起の付け根において、Sb元素の分布を示している。写真は、図17と同じ部分を示しており、写真にはV型のSb膜52bが写り込んでいる。このSb膜52bをよく観察すると、2つの矢印の部分でSbの密度が低下している部分が存在することに気がつく。この2つの矢印の部分でSb膜52bのクラックが生じている可能性が高い。
【0015】
図19は、図15の(b)に示されるアモルファスセレン層51の異常成長突起の付け根において、窒素元素の分布を示している。写真は、図17と同じ部分を示しており、写真にはY型の窒素が高密度な部分が写り込んでいる。つまり、絶縁樹脂層55に含まれているアミン化合物はSb膜52bのクラックしている部分からポリカーボネート膜52aに漏れ出し、ポリカーボネート膜52aを通じてアモルファスセレン層51の内部に浸透していると考えられる。
【0016】
このように、粘度の低いエポキシ樹脂を放射線検出器60の製造に用いると、エポキシ樹脂が硬化するまでに時間がかかりすぎてしまい、絶縁樹脂層55由来のアミン化合物がアモルファスセレン層51の異常成長突起の存する部分から漏れ出してしまう。これにより、アモルファスセレン層51が部分的に変質(結晶化)し、部分的に暗電流が増大するので、放射線検出器60に欠損画素が発生してしまう。アミン化合物によるアモルファスセレン層51の結晶化は、アミン化合物の浸透量と時間に依存するため、アミン化合物の浸透量が多い放射線検出器60を使用すると、時間とともに欠損画素が増加してしまう。
【0017】
本発明はこの様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、放射線検出器の製造方法を工夫することによって欠損画素の発生が抑制された放射線検出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る放射線検出器は、(A)キャリアの移動によって誘起される電荷を蓄積する画素が2次元的に配列され、画素の各々から信号を読み出すマトリックス基板と、(B)放射線の入射によりキャリアを発生させるアモルファスセレン層と、(C)キャリアを選択的に透過させる高抵抗膜と、(D)高抵抗膜を介してアモルファスセレン層にバイアス電圧を印加する電極層と、(E)アモルファスセレン層、高抵抗膜、電極層を外部と電気的に絶縁させる絶縁樹脂層と、(F)絶縁性の補助板とがこの順に積層され、(G)絶縁樹脂層は、アモルファスセレン層、高抵抗膜の側端をも覆うとともに、絶縁樹脂層は、常温硬化型エポキシ樹脂を樹脂の調合後から20時間後のショア硬度が10N/mm以上になる程度に高い温度であるとともに、アモルファスセレンの結晶化が起こらない程度に低い温度で硬化させたものであることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明に係る放射線検出器は、(A)キャリアの移動によって誘起される電荷を蓄積する画素が2次元的に配列され、画素の各々から信号を読み出すマトリックス基板と、(B)放射線の入射によりキャリアを発生させるアモルファスセレン層と、(C)キャリアを選択的に透過させる高抵抗膜と、(D)高抵抗膜を介してアモルファスセレン層にバイアス電圧を印加する電極層と、(E)アモルファスセレン層、高抵抗膜、電極層を外部と電気的に絶縁させる絶縁樹脂層と、(F)絶縁性の補助板とがこの順に積層され、(H)絶縁樹脂層は、アモルファスセレン層、高抵抗膜の側端をも覆うとともに、絶縁樹脂層は、常温硬化型エポキシ樹脂を樹脂の調合後から24時間経過した時点でのガスクロマトグラフィー分析おいてアミン系化合物の検出量がアセトン、2−ブタン、2−メチルフラン等のアルコール以外の他の主要有機化合物の検出量よりも小さくなる程度に高い温度であるとともに、アモルファスセレンの結晶化が起こらない程度に低い温度で硬化させたものであることを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明に係る放射線検出器の製造方法は、(α)電荷を蓄積する画素が2次元的に配列され、画素の各々から信号を読み出すマトリックス基板と、放射線の入射によりキャリアを発生させるアモルファスセレン層と、キャリアを選択的に透過させる高抵抗膜と、高抵抗膜を介してアモルファスセレン層にバイアス電圧を印加する電極層とをこの順に積層する積層ステップと、(β)硬化前の常温硬化型エポキシ樹脂で電極層を覆う樹脂被覆ステップと、(γ)電極層を覆うように絶縁性の補助板を配置する補助板配置ステップと、(δ)常温硬化型エポキシ樹脂を樹脂の調合後から20時間後のショア硬度が10N/mm以上になる程度に高い温度であるとともに、アモルファスセレンの結晶化が起こらない程度に低い温度で硬化させることにより、常温硬化型エポキシ樹脂が硬化した絶縁樹脂層を電極層と補助板との間に生成する硬化ステップとを備えることを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明に係る放射線検出器の製造方法は、(α)電荷を蓄積する画素が2次元的に配列され、画素の各々から信号を読み出すマトリックス基板と、放射線の入射によりキャリアを発生させるアモルファスセレン層と、キャリアを選択的に透過させる高抵抗膜と、高抵抗膜を介してアモルファスセレン層にバイアス電圧を印加する電極層とをこの順に積層する積層ステップと、(β)硬化前の常温硬化型エポキシ樹脂で電極層を覆う樹脂被覆ステップと、(γ)電極層を覆うように絶縁性の補助板を配置する補助板配置ステップと、(ε)常温硬化型エポキシ樹脂を樹脂の調合後から24時間経過した時点でのガスクロマトグラフィー分析おいてアミン系化合物の検出量がアセトン、2−ブタン、2−メチルフラン等のアルコール以外の他の主要有機化合物の検出量よりも小さくなる程度に高い温度であるとともに、アモルファスセレンの結晶化が起こらない程度に低い温度で硬化させることにより、常温硬化型エポキシ樹脂が硬化した絶縁樹脂層を電極層と補助板との間に生成する硬化ステップとを備えることを特徴とするものである。
【0022】
[作用・効果]上述の放射線検出器は、常温硬化型エポキシ樹脂が硬化した絶縁樹脂層を備えている。常温硬化型エポキシ樹脂の注入作業と脱泡作業を行うには、樹脂の粘度は低い方がよい。しかしながら、粘度の低い樹脂は、硬化するのに時間がかかりすぎてしまい、これがアモルファスセレン層の変質を招く。具体的には、エポキシ樹脂が放出する化合物によりアモルファスセレン層が結晶化してしまう。そこで、本発明は、エポキシ樹脂を速やかに硬化させる目的で、エポキシ樹脂を硬化させる温度を限定している。その温度とは具体的には、エポキシ樹脂の硬化が速くなり始める温度よりも高く、アモルファスセレン層の変質が起き始める温度よりも低い。この様にすることで、アモルファスセレン層を熱によっても、エポキシ樹脂が放出する化合物によっても変質しない放射線検出器を提供できる。エポキシ樹脂の硬化に選択しうる温度の下限値は、樹脂の硬化開始からのショア硬度を基準に決定してもよいし、ガスクロマトグラフィー分析おけるアミン系化合物の検出量を基準に決定してもよい。
【0023】
また、上述の放射線検出器において、絶縁樹脂層に用いられる常温硬化型エポキシ樹脂の粘度は、1Pa・s以下であり、常温硬化型エポキシ樹脂の硬化温度は30℃以上、42℃以下であればより望ましい。
【0024】
また、上述の放射線検出器の製造方法において、硬化ステップに用いられる常温硬化型エポキシ樹脂の粘度は、1Pa・s以下であり、常温硬化型エポキシ樹脂の硬化温度は30℃以上、42℃以下であればより望ましい。
【0025】
[作用・効果]上述の構成は、本発明の構成をより具体的に表したものとなっている。エポキシ樹脂の粘度が1Pa・s以下であれば、エポキシ樹脂に含まれる空気の泡を十分に除去することができ、注入・滴下の方法で容易に絶縁樹脂層の形成が可能である。また、常温硬化型エポキシ樹脂の硬化温度は30℃以上、42℃以下であればアモルファスセレン層の変質は確実に抑制される。
【0026】
また、上述の放射線検出器の製造方法において、樹脂被覆ステップは、電極層と補助板との隙間に常温硬化型エポキシ樹脂を流し込むことにより、補助板配置ステップの後に行われればより望ましい。
【0027】
[作用・効果]上述の構成は、放射線検出器の製造方法におけるより具体的な構成を示すものである。樹脂被覆ステップを補助板配置ステップの後に行うようにすればより確実に放射線検出器が製造できる。
【0028】
また、上述の放射線検出器の製造方法において、硬化ステップは、補助板を加熱しながら行われればより望ましい。
【0029】
また、上述の放射線検出器の製造方法において、硬化ステップは、放射線検出器全体を加熱しながら行われればより望ましい。
【0030】
[作用・効果]上述の構成は、放射線検出器の製造方法におけるより具体的な構成を示すものである。硬化ステップにおける常温硬化型エポキシ樹脂の加熱方法の具体例としては、補助板を加熱するようにしてもよいし、放射線検出器全体を加熱するようにしてもよい。いずれの方法によっても、常温硬化型エポキシ樹脂は、確実に加熱される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1に係るX線検出器の構成を説明する断面図である。
【図2】実施例1に係るX線検出器の構成を説明する模式図である。
【図3】実施例1に係るX線検出器の製造方法を説明するフローチャートである。
【図4】実施例1に係るX線検出器の製造方法を説明する模式図である。
【図5】実施例1に係るX線検出器の製造方法を説明する模式図である。
【図6】実施例1に係るX線検出器の製造方法を説明する模式図である。
【図7】実施例1に係る硬化に要する時間と温度との関係を示すグラフである。
【図8】従来構成に係るガスクロマトグラフィー分析の結果である。
【図9】従来構成に係るガスクロマトグラフィー分析の結果である。
【図10】実施例1に係るガスクロマトグラフィー分析の結果である。
【図11】実施例1に係るX線検出器の効果を説明するグラフである。
【図12】本発明の1変形例に係るX線検出器の製造方法を説明する断面図である。
【図13】従来構成のX線検出器の構成を説明する断面図である。
【図14】従来構成のX線検出器の製造方法を説明する断面図である。
【図15】従来構成の技術的課題を説明する断面写真である。
【図16】従来構成の技術的課題を説明する断面写真である。
【図17】従来構成の技術的課題を説明する断面写真である。
【図18】従来構成の技術的課題を説明する断面組成分析写真である。
【図19】従来構成の技術的課題を説明する断面組成分析写真である。
【実施例1】
【0032】
次に、本発明の最良の形態である、各実施例に係る放射線検出器の構成について説明する。なお、以降の説明におけるX線は、本発明における放射線の一例である。
【0033】
<X線検出器の全体構成>
実施例1に係るX線検出器10は、図1(a)に示すように、キャリアの移動によって誘起される電荷を蓄積して読み出すアクティブマトリックス基板4と、X線をキャリア対に変換するアモルファスセレン層1と、第2高抵抗膜2と、共通電極3と、常温硬化型エポキシ樹脂が硬化して構成されるエポキシ樹脂層5と、ガラスで構成される補助板6とを有している。また、X線検出器10は、アクティブマトリックス基板4,第1高抵抗膜7,アモルファスセレン層1,第2高抵抗膜2,共通電極3,エポキシ樹脂層5,および補助板6の順に積層された構成となっている。X線検出器は、本発明の放射線検出器に相当する。エポキシ樹脂層5は、本発明の絶縁樹脂層に相当し、第2高抵抗膜2は、本発明の高抵抗膜に相当する。また、共通電極3は、本発明の共通電極に相当する。図1(a)と図1(b)とは、補助板6を固定する枠材9の有無が異なる。
【0034】
アモルファスセレン層1は、比抵抗10Ωcm以上(好ましくは1011Ωcm以上)となっている高純度のアモルファスセレンで構成される。その積層方向の厚さは、0.2mm〜3.0mmとなっている。このアモルファスセレン層1にX線が照射されると、正孔と電子のペアであるキャリア対が発生する。アモルファスセレン層1は、強い電場に置かれているので、キャリアは、それに伴って移動し、アクティブマトリックス基板4に形成された収集電極4aに電荷が誘起される。
【0035】
アクティブマトリックス基板4には、ガラス基板上にキャリア収集用の収集電極4aが形成されている。収集電極4aは、第1高抵抗膜7に接するとともに、アクティブマトリックス基板4の表面に2次元的に配列されている。この収集電極4aは、図1に示すように、電荷蓄積用のコンデンサ4cに接続されている。コンデンサ4cは、収集電極4aで収集された電荷が蓄積される。コンデンサ4cは、トランジスタ4tに接続されている。このトランジスタ4tは、コンデンサ4cに接続される入力端子の他に、電流制御用のゲートGと、検出信号読み出し用の読み出し電極Pとを有している。トランジスタ4tのゲートGがオンされると、コンデンサ4cに蓄積している電荷は読み出し電極Pに向けて流れる。
【0036】
2次元的に配列されたトランジスタ4tは、縦横に格子状に伸びる配線に接続されている。すなわち、図2における縦方向に配列したトランジスタ4tの読み出し電極Pは、全て共通のアンプ電極Q1〜Q4のいずれかに接続されており、図2における横方向に配列したトランジスタ4tのゲートGは、全て共通のゲート制御電極H1〜H4のいずれかに接続されている。ゲート制御電極H1〜H4は、ゲートドライブ13に接続され、アンプ電極Q1〜Q4は、アンプアレイ14に接続される。
【0037】
各コンデンサ4cに蓄積される電荷を読み出す構成について説明する。図2におけるコンデンサ4cの各々に電荷が蓄積されているものとする。ゲートドライブ13は、ゲート制御電極H1を通じてトランジスタ4tを一斉にオンする。オンされた横に並んだ4つのトランジスタ4tは、アンプ電極Q1〜Q4を通じて、電荷(原信号)をアンプアレイ14に伝達する。
【0038】
次に、ゲートドライブ13は、ゲート制御電極H2を通じてトランジスタ4tを一斉にオンする。この様に、ゲートドライブ13は、ゲート制御電極H1〜H4を順番にオンしていく。その度ごとに行の異なるトランジスタ4tがオンされる。こうして、FPD4は、コンデンサ4cの各々に蓄積された電荷を1行毎に読み出す構成となっている。
【0039】
アンプアレイ14には、アンプ電極Q1〜Q4の各々に、信号を増幅するアンプが設けられている。アンプ電極Q1〜Q4からアンプアレイ14に入力された原信号は、ここで所定の増幅率で増幅される。画像生成部15は、アンプアレイ14から出力された原信号を基にX線透視画像を生成する。
【0040】
収集電極4a,コンデンサ4c,およびトランジスタ4tは、X線を検出するX線検出素子を構成する。X線検出素子は、アクティブマトリックス基板4において、例えば3,072×3,072の縦横に並んだ2次元マトリックスを形成している。
【0041】
共通電極3は、金で構成され、第2高抵抗膜2を介してアモルファスセレン層1にバイアス電圧を印加する目的で設けられている。図1に示すようにノード3aに接続されている。ノード3aに高電位が供給されることにより、共通電極3には、電位にして、例えば、10kVの正のバイアス電圧が印加されている。
【0042】
第1高抵抗膜7,および第2高抵抗膜2は、例えばSbから構成され、電子、またはホールのうちのいずれかを選択的に通過させる膜である。その膜厚は、0.1μm〜5μm程度であり、比抵抗は10Ωcm以上となっている。
【0043】
絶縁性のエポキシ樹脂層5は、共通電極3を覆うように設けられている。エポキシ樹脂層5が共通電極3を覆うことで、共通電極3の高電位が封じ込められる。このエポキシ樹脂層5は、X線検出器10の周縁部において、第2高抵抗膜2,アモルファスセレン層1,および第1高抵抗膜7の側端をも覆っている。したがって、X線検出器10の周縁部において、エポキシ樹脂層5は、アクティブマトリックス基板4に接していることになる。つまり、共通電極3,第2高抵抗膜2,アモルファスセレン層1,および第1高抵抗膜7は、アクティブマトリックス基板4,およびエポキシ樹脂層5によって封止されている。言い換えれば、共通電極3,第2高抵抗膜2,アモルファスセレン層1,および第1高抵抗膜7の側端は、エポキシ樹脂層5で覆われている。この様にすることで、共通電極3に印加される電圧により未封止の側端に沿って外部に放電する沿面放電を防ぐことができる。
【0044】
補助板6は、絶縁性のガラス製の板であり、エポキシ樹脂層5に面している。その厚さは、0.5mm〜1.5mmとなっている。補助板6の熱膨張係数は、アクティブマトリックス基板4のそれと同程度となっている。この様にすることで、外気温の変化により補助板6とアクティブマトリックス基板4とは同じように伸縮することになる。すると、X線検出器10全体が外気温の変化に応じて反り返ることがなくなり、各層のクラックを防止することができる。
【0045】
スペーサ8は、角筒型で額縁状の形状をしており、一端の開口部がアクティブマトリックス基板4に当接しており、もう一端の開口部が補助板6もしくは、枠材9に当接している。枠材9とスペーサ8は一体のものでもよい。このように、スペーサ8と枠材9は、アクティブマトリックス基板4および補助板6を架橋するように設けられており、スペーサ8の開口の内部に共通電極3,第2高抵抗膜2,アモルファスセレン層1,第1高抵抗膜7,およびエポキシ樹脂層5が存している。
【0046】
<X線撮影装置の製造方法>
次に、X線検出器の製造方法について説明する。実施例1に係るX線検出器10を製造するには、図3に示すように、まず各層の積層が行われる(積層ステップS1)。そして、補助板6とスペーサ8が配置され(補助板配置ステップS2),補助板6と共通電極3との隙間に硬化前のエポキシ樹脂が注入される(樹脂被覆ステップS3)。最後にエポキシ樹脂の硬化が行われる(硬化ステップS4)。これらの各ステップの詳細について順を追って説明する。
【0047】
<積層ステップS1>
アクティブマトリックス基板4の上面上に、第1高抵抗膜7,アモルファスセレン層1,第2高抵抗膜2,および共通電極3をこの順に積層する。各層の具体的な生成方法としては、真空蒸着法が使用できる。図4は、ここまでのステップが完了した時点を示している。
【0048】
<補助板配置ステップS2,樹脂被覆ステップS3>
次に、共通電極3を覆うように補助板6を配置する。このとき、補助板6と、枠材9,スペーサ8とは予め接着しておく。補助板6と共通電極3との間には隙間が設けられている。そして、図5に示すように、アクティブマトリックス基板4を鉛直方向に対して傾斜させた状態で硬化前の常温硬化型エポキシ樹脂を枠材9に設けられた注入口から補助板6と共通電極3との間に設けられた隙間に注入する。このとき、共通電極3は、硬化前のエポキシ樹脂により被覆されることになる。また、各層とスペーサ8との間に設けられた隙間にも硬化前のエポキシ樹脂が進入する。アクティブマトリックス基板4を傾斜させた状態で保持するには、傾斜台21が用いられる。
【0049】
枠材9には2カ所の穴が開けられており、傾斜された補助板6の下側に硬化前のエポキシ樹脂の注入口が、上側に空気の抜け穴が設けられている。エポキシ樹脂は、注入口に挿通されたチューブを通過して上述の隙間に導入される。補助板6と共通電極3との間に設けられた隙間は、硬化前のエポキシ樹脂によって鉛直下側から順に充填されることになる。
【0050】
このときに使用されるエポキシ樹脂について説明する。具体的なエポキシ樹脂の種類としては、HUNTSMAN社製のAraldite2020が用いられる。このエポキシ樹脂の粘度は、0.15Pa・sとなっている。エポキシ樹脂は注入される前に予め真空脱泡により、含有する空気の泡を除去しておく。エポキシ樹脂として上述のような粘度の低いものを選択すれば、エポキシ樹脂に含まれる空気の泡は確実に除かれることになる。
【0051】
<硬化ステップS4>
エポキシ樹脂の充填の後、アクティブマトリックス基板4の傾斜を水平に戻して、エポキシ樹脂の硬化を行う。このとき、図6に示すように、補助板6を覆うようにヒータ22を配置した状態でエポキシ樹脂を温めながら硬化させる。ヒータの設定温度は例えば36℃が望ましい。36℃は、アモルファスセレン層1が変質しはじる温度が42℃よりも低い温度であり、エポキシ樹脂が急激に硬化し始める30℃よりも高い温度となっている。
【0052】
このエポキシ樹脂の硬化特性について説明する。図7は、エポキシ樹脂(Araldite2020)が所定の硬度となるまでにかかる時間と、温度との関係をグラフ化したものである。四角のプロットは、各温度において、エポキシ樹脂が硬化によりショア硬度10N/mmとなるまでにかかった時間をプロットしている。温度が高いほど硬化が速く進み、硬化にかかる時間が短くなるため、エポキシ樹脂に含まれるアミン系化合物が速やかに消費され、エポキシ樹脂からアモルファスセレン層1にアミン系化合物が浸透する危険性が少なくなる。実施例1で選択される温度は、主剤・硬化剤の二液調合後から20時間後のエポキシ樹脂のショア硬度が10N/mm以上になる程度に高い温度が望ましい。すなわち、図7の矢印が示す範囲の温度であり、かつ、アモルファスセレン層の変質が起こらない42℃以下の温度であることが望ましい。
【0053】
エポキシ樹脂が硬化すれば、本発明のX線検出器10は、完成となる。
【0054】
<ガスクロマトグラフィーの結果>
次に、エポキシ樹脂が急速に硬化することによって、エポキシ樹脂からアミン系化合物の放出が抑制される様子をガスクロマトグラフィーの結果を参照して説明する。分析条件は、固相マイクロ抽出法によりエポキシ樹脂より発生したガスを捕集管によりトラップし、250℃で3分間に放出されたガスを用い、ZB−1(ポリメチルシロキサン)カラムを用いて分画している。カラム温度は40℃を4分間保った後、5℃/分のペースで280℃まで上げるようにして調整し、注入口の温度は250℃である。そして、ヘリウム圧力は120kPaであり、サンプル時間は3分である。分析装置としては、島津ガスクロマトグラフ質量分析計GCMS−QP5050Aを用いている。
【0055】
図8は、主剤・硬化剤の二液調合後1日間22℃で放置後のエポキシ樹脂から放出されたガス成分である。図8においては、G,Iで示すアミン系の化合物由来の高いピークが観察される。図9は、二液調合後3日間22℃で放置後のエポキシ樹脂から放出されたガス成分である。図9においても、G,H,Iで示すアミン系の化合物由来のピークが観察され、22℃では3日以上アミンが放出し続けていることがわかる。
【0056】
図10は、二液調合後1日間35℃で放置後のエポキシ樹脂から放出されたガス成分である。図10においては、Gで示すアミン系の化合物由来のピークは、かなり小さなものとなっている。具体的には、図10のピーク番号7で示すアセトンや、ピーク番号17の2−ブタン、ピーク番号18の2−メチルフラン等のアルコール以外の他の主要有機化合物のピークよりもGで示すアミン系の化合物由来のピークが低くなっている。より正確には、ガスクロマトグラフィー分析おいてアミン系化合物の検出量がアセトン、2−ブタン、2−メチルフラン等のアルコール以外の他の主要有機化合物の検出量よりも小さくなっている。これに比べて、図8,図9では、G,H,Iで示すアミン系の化合物の検出量は、アセトン、2−ブタン、2−メチルフラン等のアルコール以外の他の主要有機化合物の検出量よりも多くなっている。この様に、エポキシ樹脂の硬化温度に依存してエポキシ樹脂から放出されるアミン系化合物の量は、大きく変化するのである。エポキシ樹脂を加熱して速く硬化させた方がアミン系化合物の放出が抑制され、結果として、アモルファスセレン層1に到達するアミン系化合物の量が減少する。これにより、X線検出器10の欠損画素の発生を抑制することができる。
【0057】
最後に、実施例1の構成とした効果について説明する。図11は、通常使用温度より高めの35℃でX線検出器10を使用して加速劣化試験を行った結果である。共通電極3には、10kVの電圧が印加されている。グラフ中の四角のプロットは従来の方法で製造されたX線検出器である。使用時間が1800時間を超えたあたりから欠損画素が急激に増加している。グラフ中の菱形のプロットは実施例1の方法で製造されたX線検出器である。実施例1の方法によれば従来と比べて欠損画素の増加が抑制されていることが分かる。
【0058】
以上のように、実施例1のX線検出器10は、常温硬化型エポキシ樹脂が硬化したエポキシ樹脂層5を備えている。常温硬化型エポキシ樹脂の注入作業と脱泡作業を行うには、樹脂の粘度は低い方がよい。しかしながら、粘度の低い樹脂は、硬化するのに時間がかかりすぎてしまい、これがアモルファスセレン層1の変質を招く。具体的には、エポキシ樹脂が放出するアミン系化合物によりアモルファスセレン層1が結晶化してしまう。そこで、実施例1の構成は、エポキシ樹脂を速やかに硬化させる目的で、エポキシ樹脂を硬化させる温度を限定している。その温度とは具体的には、エポキシ樹脂の硬化が速くなり始める温度よりも高く、アモルファスセレン層1の変質が起き始める温度よりも低い。この様にすることで、アモルファスセレン層1を熱によっても、エポキシ樹脂が放出する化合物によっても変質しない放射線検出器を提供できる。エポキシ樹脂の硬化に選択しうる温度の下限値は、樹脂の硬化開始からのショア硬度を基準に決定してもよいし、後述のようにガスクロマトグラフィー分析おけるアミン系化合物の検出量を基準に決定してもよい。
【0059】
本発明は、上述の構成に限られず、下記のような変形実施が可能である。
【0060】
(1)上述の構成によれば、補助板6と枠材9とスペーサ8を接着配置してからエポキシ樹脂の注入を行っていたが、この工程を逆にしてもよい。すなわち、図12に示すように、予め共通電極3を硬化前のエポキシ樹脂で被覆した後、補助板6をスペーサ8に当接させるようにしてX線検出器10を製造してもよい。
【0061】
(2)上述の構成によれば、ショア硬度を基準にエポキシ樹脂の硬化温度を決定していたが、本発明はこれに限られず、常温硬化型エポキシ樹脂を樹脂の硬化開始から24時間後経過した時点でのガスクロマトグラフィー分析おいてアミン系化合物の検出量がアセトン、2−ブタン、2−メチルフラン等のアルコール以外の他の主要有機化合物の検出量よりも小さくなることを基準に硬化温度を決定してもよい。
【0062】
(3)上述の構成によれば、補助板6を温めることでエポキシ樹脂を加熱していたが、X線検出器10全体を炉内に投入することでX線検出器10全体を温める構成としてもよい。
【0063】
(4)本発明が検出する放射線はX線に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0064】
1 アモルファスセレン層
2 第2高抵抗膜(高抵抗膜)
3 電極層(共通電極)
4 マトリックス基板
5 絶縁樹脂層(エポキシ樹脂層)
6 補助板
S1 積層ステップ
S2 補助板配置ステップ
S3 樹脂被覆ステップ
S4 硬化ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)キャリアの移動によって誘起される電荷を蓄積する画素が2次元的に配列され、前記画素の各々から信号を読み出すマトリックス基板と、
(B)放射線の入射によりキャリアを発生させるアモルファスセレン層と、
(C)キャリアを選択的に透過させる高抵抗膜と、
(D)前記高抵抗膜を介して前記アモルファスセレン層にバイアス電圧を印加する電極層と、
(E)前記アモルファスセレン層、前記高抵抗膜、前記電極層を外部と電気的に絶縁させる絶縁樹脂層と、
(F)絶縁性の補助板とがこの順に積層され、
(G)前記絶縁樹脂層は、前記アモルファスセレン層、前記高抵抗膜の側端をも覆うとともに、絶縁樹脂層は、常温硬化型エポキシ樹脂を樹脂の調合後から20時間後のショア硬度が10N/mm以上になる程度に高い温度であるとともに、アモルファスセレンの結晶化が起こらない程度に低い温度で硬化させたものであることを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
(A)キャリアの移動によって誘起される電荷を蓄積する前記画素が2次元的に配列され、前記画素の各々から信号を読み出すマトリックス基板と、
(B)放射線の入射によりキャリアを発生させるアモルファスセレン層と、
(C)キャリアを選択的に透過させる高抵抗膜と、
(D)前記高抵抗膜を介して前記アモルファスセレン層にバイアス電圧を印加する電極層と、
(E)前記アモルファスセレン層、前記高抵抗膜、前記電極層を外部と電気的に絶縁させる絶縁樹脂層と、
(F)絶縁性の補助板とがこの順に積層され、
(H)前記絶縁樹脂層は、前記アモルファスセレン層、前記高抵抗膜の側端をも覆うとともに、絶縁樹脂層は、常温硬化型エポキシ樹脂を樹脂の調合後から24時間経過した時点でのガスクロマトグラフィー分析おいてアミン系化合物の検出量がアセトン、2−ブタン、2−メチルフラン等のアルコール以外の他の主要有機化合物の検出量よりも小さくなる程度に高い温度であるとともに、アモルファスセレンの結晶化が起こらない程度に低い温度で硬化させたものであることを特徴とする放射線検出器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の放射線検出器において、
前記絶縁樹脂層に用いられる前記常温硬化型エポキシ樹脂の粘度は、1Pa・s以下であり、前記常温硬化型エポキシ樹脂の硬化温度は30℃以上、42℃以下であることを特徴とする放射線検出器。
【請求項4】
(α)電荷を蓄積する画素が2次元的に配列され、前記画素の各々から信号を読み出すマトリックス基板と、放射線の入射によりキャリアを発生させるアモルファスセレン層と、キャリアを選択的に透過させる高抵抗膜と、前記高抵抗膜を介して前記アモルファスセレン層にバイアス電圧を印加する電極層とをこの順に積層する積層ステップと、
(β)硬化前の常温硬化型エポキシ樹脂で前記電極層を覆う樹脂被覆ステップと、
(γ)前記電極層を覆うように絶縁性の補助板を配置する補助板配置ステップと、
(δ)前記常温硬化型エポキシ樹脂を樹脂の調合後から20時間後のショア硬度が10N/mm以上になる程度に高い温度であるとともに、アモルファスセレンの結晶化が起こらない程度に低い温度で硬化させることにより、前記常温硬化型エポキシ樹脂が硬化した絶縁樹脂層を前記電極層と前記補助板との間に生成する硬化ステップとを備えることを特徴とする放射線検出器の製造方法。
【請求項5】
(α)電荷を蓄積する画素が2次元的に配列され、前記画素の各々から信号を読み出すマトリックス基板と、放射線の入射によりキャリアを発生させるアモルファスセレン層と、キャリアを選択的に透過させる高抵抗膜と、前記高抵抗膜を介して前記アモルファスセレン層にバイアス電圧を印加する電極層とをこの順に積層する積層ステップと、
(β)硬化前の常温硬化型エポキシ樹脂で前記電極層を覆う樹脂被覆ステップと、
(γ)前記電極層を覆うように絶縁性の補助板を配置する補助板配置ステップと、
(ε)前記常温硬化型エポキシ樹脂を樹脂の調合後から24時間経過した時点でのガスクロマトグラフィー分析おいてアミン系化合物の検出量がアセトン、2−ブタン、2−メチルフラン等のアルコール以外の他の主要有機化合物の検出量よりも小さくなる程度に高い温度であるとともに、アモルファスセレンの結晶化が起こらない程度に低い温度で硬化させることにより、前記常温硬化型エポキシ樹脂が硬化した前記絶縁樹脂層を前記電極層と前記補助板との間に生成する硬化ステップとを備えることを特徴とする放射線検出器の製造方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の放射線検出器の製造方法において、
前記樹脂被覆ステップは、前記電極層と前記補助板との隙間に前記常温硬化型エポキシ樹脂を流し込むことにより、前記補助板配置ステップの後に行われることを特徴とする放射線検出器の製造方法。
【請求項7】
請求項4ないし請求項6のいずれかに記載の放射線検出器の製造方法において、
前記硬化ステップは、前記補助板を加熱しながら行われることを特徴とする放射線検出器の製造方法。
【請求項8】
請求項4ないし請求項6のいずれかに記載の放射線検出器の製造方法において、
前記硬化ステップは、放射線検出器全体を加熱しながら行われることを特徴とする放射線検出器の製造方法。
【請求項9】
請求項4ないし請求項8のいずれかに記載の放射線検出器の製造方法において、
前記硬化ステップに用いられる前記常温硬化型エポキシ樹脂の粘度は、1Pa・s以下であり、前記常温硬化型エポキシ樹脂の硬化温度は30℃以上、42℃以下であることを特徴とする放射線検出器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−216769(P2011−216769A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85152(P2010−85152)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】