説明

放射線検出装置

【課題】放射線検出装置を暗電流を低く、残像を低減することができるものとする。
【解決手段】画像情報を担持した記録用の電磁波を透過する正バイアスを印加した第1電極1と、電磁波の照射を受けることにより電荷を発生する記録用光導電層3と、第1電極1と記録用光導電層3の間に積層された有機高分子層4と、記録用光導電層3に対して第1電極1が設けられている側とは反対側に設けられた第2電極2とからなる放射線検出装置において、有機高分子層4が正孔ブロック性材料を含有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線などの放射線撮像装置に適用して好適な放射線検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療診断を目的とする放射線撮影において、放射線を検出して電気信号に変換する放射線検出器(半導体を主要部とするもの)を使用した放射線検出装置が知られている。放射線検出器としては、放射線を直接電荷に変換し電荷を蓄積する直接変換方式と、放射線を一度CsI:Tl、GOS(GdS:Tb)などのシンチレータで光に変換し、その光を光導電層で電荷に変換し蓄積する間接変換方式がある。また、読取り方式から、光の照射により電荷を発生する半導体材料を利用した放射線画像検出器により読み取る、いわゆる光読取方式と、放射線の照射により発生した電荷を蓄積し、その蓄積した電荷を薄膜トランジスタ(thin film transistor:TFT)などの電気的スイッチを1画素ずつON・OFFすることにより読み取る方式(以下、TFT方式ともいう)に大別される。
【0003】
直接変換方式の放射線画像検出器は、放射線感応型の半導体膜(記録用光導電層)の表面に形成された電圧印加電極に所定のバイアス電圧を印加するとともに、半導体膜の裏面に形成されたキャリア収集電極で放射線照射に伴って生成したキャリアを収集して放射線検出信号として取り出すことにより放射線の検出を行う構成となっており、記録用光導電層は、高い暗抵抗を有し、応答速度が優れているという利点からアモルファス−Se(a−Se)により形成されることが多い。
【0004】
しかし、記録用光導電層を製膜した後にその表面に第1の電極層を製膜するような場合には、アモルファス状態のセレン膜は、第1の電極層の製膜時の蒸着過程における熱または電極材料との接触によってその界面において界面結晶化が進行するという問題がある。この界面結晶化は、上記放射線画像情報の記録時における第1の電極層の電極からの電荷注入を増加させるため、これがノイズとなりS/Nが低下するという問題が生じる。電極材料として透明酸化被膜、特にITOやIZOなどを用いた場合には、電極材料とa−Seの界面での界面結晶化が顕著に進行する。
【0005】
このような記録用光導電層における界面結晶化の問題を回避するため、記録光が照射される第1の電極層と記録用光導電層との間に、界面結晶化を抑制する有機ポリマーからなる抑制層を設けることが行われている。しかし、抑制層として有機ポリマーを利用すると、たとえば、大線量で放射線画像を記録し、これを読取るという動作を繰り返して行うと、抑制層内に電荷が残存し、これにより感度の劣化やゴースト像の残留などの問題が生じる。そこで、本出願人は、第1電極と記録用光導電層の間に積層された記録用光導電層の界面結晶化を抑制する抑制層を、画像情報の記録の際に第1電極に移動する電荷と逆極性の電荷に対しては絶縁性を有し、第1の電極に移動する電荷と同極性の電荷に対しては導電性を有する有機膜(絶縁性有機ポリマー)により形成することを提案している(特許文献1)。
【0006】
一方、特許文献2には、X線電荷変換膜と、X線電荷変換膜の一方の面に設けられた第1の電極と、X線電荷変換膜の他方の面に設けられた第2の電極と、X線電荷変換膜と前記第2の電極との間に介在する有機膜とを有するX線平面検出器において、有機膜として、アクリル系有機樹脂、ポリイミド、BCB、PVA、アクリル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミドや導電性ポリマーから選択できること、有機膜は顔料又は導電性金属又は導電性炭素を含有することが記載されている。
【特許文献1】特開2004−165480号公報
【特許文献2】特開2006−156555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載されている絶縁性有機ポリマーは、正孔ブロックには優れるものの、電子ブロック層としても作用してしまうために、本来の電子輸送性が十分に得られないという問題がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、暗電流、残像等の電気特性に優れた放射線検出装置を提供することを目的とするものである。
【0009】
なお、特許文献2には導電性炭素の記載があるが、導電性炭素は、通常カーボンブラック、グラファイト状カーボンを指し、また、導電性金属と同列に記載されていることから、単に導電性(抵抗値)を調製するために使用されるものであって、本発明の目的、効果とは異なるものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の放射線検出装置は、画像情報を担持した記録用の電磁波を透過する正バイアスを印加した第1電極と、前記電磁波の照射を受けることにより電荷を発生する記録用光導電層と、前記第1電極と前記記録用光導電層の間に積層された有機高分子層と、前記記録用光導電層に対して前記第1電極が設けられている側とは反対側に設けられた第2電極とからなり、前記電磁波の照射により前記記録用光導電層において発生した電荷を蓄積することにより前記画像情報を記録する放射線検出装置において、前記有機高分子層が正孔ブロック性材料を含有していることを特徴とするものである。
【0011】
前記正孔ブロック性材料とは、正孔をブロックして電子を通す材料であって、正孔ブロック性材料のうち、少なくとも1種は、カーボンクラスターまたはその誘導体であることが好ましく、前記カーボンクラスターは、フラーレンC60、フラーレンC70、酸化フラーレンまたはそれらの誘導体から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
あるいは、前記有機高分子層に含まれる前記正孔ブロック性材料のうち、少なくとも1種は、下記一般式(A−1)または一般式(B−1)で表されるいずれかの化合物であってもよい。
【化1】

【0013】
(一般式(A−1)中、LA1は連結基を、ZA1は含窒素ヘテロ環の形成に必要な原子群を、nA1は2以上の整数を表す。但し、一般式(A−1)で表される化合物は、分子内に少なくとも3つ以上の窒素原子を有する。)
【化2】

【0014】
(一般式(B−1)中、LB1は連結基を、ZB1は、芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環の形成に必要な原子群を、nB1は2以上の整数を表す。但し、一般式(B−1)で表される化合物は、分子内に少なくとも3つ以上の窒素原子を有する。)
【発明の効果】
【0015】
本発明の放射線検出装置は、画像情報を担持した記録用の電磁波を透過する正バイアスを印加した第1電極と、前記電磁波の照射を受けることにより電荷を発生する記録用光導電層と、前記第1電極と記録用光導電層の間に積層された有機高分子層と、前記記録用光導電層に対して前記第1電極が設けられている側とは反対側に設けられた第2電極とからなり、前記電磁波の照射により前記記録用光導電層において発生した電荷を蓄積することにより前記画像情報を記録する放射線検出装置において、前記有機高分子層が正孔ブロック性材料を含有しているので、暗電流を低く、残像を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。図1は本発明の放射線検出装置の一実施の形態を示す概略断面図である。
【0017】
放射線検出装置10は、スイッチングTFTからなる読み取り回路と画素電極とからなる第2電極7上に、記録用光導電層4から発生して第2電極7に向かって流れる電荷に対しては略絶縁体として作用し、且つその電荷と逆極性の輸送電荷に対しては略導電体として作用する電荷輸送層2、結晶化抑制層3、電磁波の照射を受けることにより電荷を発生する記録用光導電層4、正孔ブロック性材料を含有してなる有機高分子層5、記録用光導電層4から発生して第1電極1に向かって流れる電荷を輸送する電荷輸送層6、画像情報を担持した記録用の電磁波を透過する正バイアスを印加した第1電極1がこの順に積層され、第1電極1上に設けられたガラス板8と、四方を囲む樹脂枠9とによって形成された空間が樹脂11によって充填されたものである。
【0018】
第2電極7は、各画素毎に対応してTFTが形成されており、第1電極1と第2電極7との間に電圧を印可すると第1電極1に正バイアスが印可される。なお、各TFTの出力ラインは不図示の信号検出手段に接続されている。
【0019】
第1電極1は、放射線に対して透過性を有するものであればよく、例えば、100nm厚のAlやAuなどを用いることができる。あるいは、第1の電極層1は、ネサ皮膜(SnO)、ITO(Indium Tin Oxide)、アモルファス状光透過性酸化膜であるIDIXO(Idemitsu Indium X−metal Oxide ;出光興産(株))などを50〜200nm厚にして用いることができる。
【0020】
記録用光導電層4は、放射線の照射を受けることにより導電性を呈するものであればよく、放射線に対して比較的量子効率が高く、また暗抵抗が高いなどの点で優れているa−Seを主成分とするものを使用することができる。ここで、a−Seを主成分とするとは、記録用光導電層の成分においてa−Seの重量パーセント成分が最も高いものを意味する。
【0021】
電荷輸送層2および6は、記録用光導電層4から各々第2電極7および第1電極1に向かって流れる電荷を輸送し、且つ電荷輸送層2については、その電荷と逆極性の輸送電荷に対しては、ほぼ絶縁体として作用することが望ましい。電荷輸送層2および6としては、カルコゲニド化合物薄膜層を用いることができ、具体的には、硫化アンチモン(Sb23)、硫化亜鉛(ZnS)、As、CdS、CdZnTe等が好ましくあげられる。a−Seに対しては、発生電荷の輸送性の観点からは、好ましくは、As、Sbを用いることができ、さらに好ましくは、Sb23を用いることができる。電荷輸送層2および6は、0.1μm〜10μmの厚みで用いることができる。なお、図1では、有機高分子層5と第1電極1との間に電荷輸送層6を設けた態様を示しているが、電荷輸送層6を設けない態様としてもよい。また、電荷輸送層6を設ける場合は、少なくとも有機高分子層5、記録用光導電層4よりも成膜領域が広くなるようにすることが好ましい。これは、領域11に例えば硬化型樹脂等を注入する際に、有機高分子層が、未硬化の樹脂に溶解浸食される可能性があるためである。
【0022】
結晶化抑制層3は、記録用光導電層4の電荷輸送層2との界面の結晶化を抑制するために設ける層であり、As,Sb,Biのうちの少なくともいずれかを0.1wt%〜40wt%の範囲で含有するa−Se層を用いることができる。結晶化抑制層3は、0.02〜1μmの厚みで用いることが好ましい。
【0023】
また、記録用光導電層4をa−Seを主成分とした層とした場合には、記録用光導電層4と有機高分子層5は隣接させて設けられていることが好ましい。このように隣接させて有機高分子層5を設けることにより、記録用光導電層4の結晶化を抑制することができる。
【0024】
有機高分子層5は正孔ブロック性材料を含有するものであり、正孔ブロック性材料としては以下のようなものがあげられる。
【0025】
まず、カーボンクラスターまたはその誘導体を用いることができる。ここで、カーボンクラスターまたはその誘導体とは、炭素原子が、炭素−炭素間結合の種類は問わず数個から数百個結合して形成されている集合体であって、必ずしも100%炭素クラスターのみで構成されているとは限らず、他原子の混在や、置換基を有する場合も含むものである。正孔ブロック性材料として用いるカーボンクラスターは、例えば、フラーレン類の1種あるいは数種を含有してなるものである。
【0026】
ここで用いられるフラーレンとは、sp2炭素よりなる球状あるいはラグビーボール状のカーボンクラスターの総称であり、一般にC60、C70、C76、C78、C84等が知られている。本発明では、これらを単独で、あるいは混合物として用いることできる。好適には、C60とC70の混合物を用いることができる。また、フラーレンを酸化した酸化フラーレンを好適に用いることができる。酸化フラーレンとしては、C60(O)1、C60(O)2、C60(O)3等の混合物を用いることができる。好適には、下記一般式に示すような、酸素置換基がレギオ選択則に従って集合して付加している化合物が好ましく、官能基が付加したものであってもよい。
【化3】

【0027】
また、本発明の正孔ブロック性材料としては、下記一般式(A−1)、(B−1)で表される化合物も好適に用いることができる。まず、一般式(A−1)で表される化合物について説明する。
【化4】

【0028】
(一般式(A−1)中、LA1は連結基を、ZA1は含窒素ヘテロ環の形成に必要な原子群を、nA1は2以上の整数を表す。但し、一般式(A−1)で表される化合物は、分子内に少なくとも3つ以上の窒素原子を有する。)
【0029】
一般式(A−1)におけるLA1は連結基を表す。LA1で表される連結基としては、単結合の他、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子、酸素原子、ホウ素原子、ゲルマニウム原子等を含んで形成される連結基が好ましい。LA1としてより好ましくは、単結合、炭素原子、ケイ素原子、ホウ素原子、酸素原子、硫黄原子、ゲルマニウム原子、芳香族炭化水素環、及び芳香族ヘテロ環であり、さらに好ましくは炭素原子、ケイ素原子、芳香族炭化水素環、及び芳香族ヘテロ環であり、さらに好ましくは、二価以上の芳香族炭化水素環、二価以上の芳香族ヘテロ環、及び炭素原子であり、さらに好ましくは、二価以上の芳香族炭化水素環、及び二価以上の芳香族ヘテロ環であり、特に好ましくは1,3,5−ベンゼントリイル基、1,2,5,6−ベンゼンテトライル基、1,2,3,4,5,6−ベンゼンヘキサイル基、2,2’−ジメチル−4,4’−ビフェニレン基、2,4,6−ピリジントリイル基、2,3,4,5,6−ピリジンペンタイル基、2,4,6−ピリミジントリイル基、2,4,6−トリアジントリイル基、及び2,3,4,5−チオフェンテトライル基である。
【0030】
A1で表される連結基の具体例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化5】

【0031】
【化6】

【0032】
【化7】

【0033】
A1は更に置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、
【0034】
アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスメチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、
【0035】
スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子であり、具体的にはイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。置換基として好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、シシリル基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子であり、さらに好ましくはアルキル基、アリール基、芳香族ヘテロ環基、フッ素原子である。
【0036】
A1としては、上記の中で特に下記の2,4,6−トリアジントリイル基が好ましい。
【化8】

【0037】
一般式(A−1)におけるZA1は、含窒素ヘテロ環の形成に必要な原子群を表し、ZA1を含んで形成される含窒素ヘテロ環は、単環であっても二環以上の環が縮合した縮環であってもよい。ZA1を含んで形成される含窒素ヘテロ環として好ましくは、5〜8員の含窒素ヘテロ環であり、より好ましくは5〜7員の含窒素ヘテロ環であり、更に好ましくは5又は6員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、特に好ましくは5員の芳香族ヘテロ環である。LA1に連結する複数の、ZA1を含んで形成される含窒素ヘテロ環は、同一でも異なっていてもよい。
【0038】
A1を含んで形成される含窒素ヘテロ環の具体例としては、例えば、ピロール環、インドール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアザイゾール環、アザインドール環、カルバゾール環、カルボリン環(ノルハルマン環)、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、イミダゾピリジン環、プリン環、ピラゾ−ル環、インダゾール環、アザインダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、アゼピン環、イミノスチルベン環(ジベンゾアゼピン環)、トリベンゾアゼピン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環等が挙げられ、好ましくはオキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、イミダゾピリジン環であり、より好ましくはベンゾイミダゾール環、イミダゾピリジン環である。
【0039】
A1は可能であればさらに他の環と縮合環を形成してもよく、また置換基を有していてもよい。ZA1に導入可能な置換基としては、例えば、一般式(A−1)におけるLA1の置換基として挙げたものが適用でき、好ましい範囲も同様である。
A1は2以上の整数を表し、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜6を表す。
【0040】
一般式(A−1)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の化合物等が挙げられる。
【化9】

【0041】
次に、一般式(B−1)で表される化合物について説明する。
【化10】

【0042】
(一般式(B−1)中、LB1は連結基を、ZB1は、芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環の形成に必要な原子群を、nB1は2以上の整数を表す。但し、一般式(B−1)で表される化合物は、分子内に少なくとも3つ以上の窒素原子を有する。)
【0043】
一般式(B−1)におけるLB1は連結基を表す。LB1で表される連結基としては、前記一般式(A−1)における連結基LA1の具体例として挙げたものが適用できる。LB1として好ましくは、単結合、二価以上の芳香族炭化水素環、二価以上の芳香族ヘテロ環、炭素原子、窒素原子、ケイ素原子であり、より好ましくは、二価以上の芳香族炭化水素環、二価以上の芳香族ヘテロ環であり、さらに好ましくは1,3,5−ベンゼントリイル基、1,2,5,6−ベンゼンテトライル基、1,2,3,4,5,6−ベンゼンヘキサイル基、2,2’−ジメチル−4,4’−ビフェニレン基、2,4,6−ピリジントリイル基、2,3,4,5,6−ピリジンペンタイル基、2,4,6−ピリミジントリイル基、2,4,6−トリアジントリイル基、2,3,4,5−チオフェンテトライル基、炭素原子、窒素原子、ケイ素原子である。
【0044】
B1はさらに置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、例えば、前記一般式(A−1)におけるLA1の置換基として挙げたものが適用でき、好ましい範囲も同様である。
B1としては、上記の中でも特に1,3,5−ベンゼントリイル基が好ましい。
【0045】
B1は芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環を形成するのに必要な原子群を表し、ZB1を含んで形成される芳香族炭化水素環、又は芳香族ヘテロ環は、単環であっても二環以上の環が縮合した縮環であってもよい。LB1に連結する複数の、ZB1を含んで形成される芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環は、同一でも異なっていてもよい。
【0046】
B1を含んで形成される芳香族炭化水素環は、好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環であり、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、トリフェニレン環などが挙げられ、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、トリフェニレン環である。
【0047】
B1を含んで形成される芳香族ヘテロ環は、単環又は二環以上の環が縮合した縮合環のヘテロ環であり、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数2〜12、さらに好ましくは炭素数2〜10の芳香族ヘテロ環である。該ヘテロ環として好ましくは、窒素原子、酸素原子、硫黄原子の少なくとも一つを含む芳香族ヘテロ環である。ZB1で含んで形成されるヘテロ環の具体例としては、例えば、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、アクリジン環、フェナントリジン環、プテリジン環、ピラジン環、キノキサリン環、ピリミジン環、キナゾリン環、ピリダジン環、シンノリン環、フタラジン環、トリアジン環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環、インダゾール環、イソオキサゾール環、ベンゾイソオキサゾール環、イソチアゾール環、ベンゾイソチアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、インドール環、イミダゾピリジン環、カルバゾール環、フェナントロリン環等が挙げられ、好ましくはピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、アクリジン環、フェナントリジン環、ピラジン環、キノキサリン環、ピリミジン環、キナゾリン環、ピリダジン環、フタラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環、インダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾピリジン環、カルバゾール環、フェナントロリン環であり、より好ましくはピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、ピラジン環、キノキサリン環、ピリミジン環、キナゾリン環、ピリダジン環、フタラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾピリジン環、フェナントロリン環であり、更に好ましくはベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾピリジン環、フェナントロリン環であり、特に好ましくはベンゾイミダゾール環、イミダゾピリジン環である。
【0048】
B1を含んで形成される芳香族炭化水素環、又は芳香族ヘテロ環は、さらに他の環と縮合環を形成してもよく、また、置換基を有していてもよい。導入可能な置換基としては、例えば、前記一般式(A−1)におけるLA1の置換基として挙げたものが適用でき、好ましい範囲も同様である。
B1は2以上の整数を表し、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜6を表す。
【0049】
一般式(B−1)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の化合物等が挙げられる。
【化11】

【0050】
有機高分子層の膜厚は、0.02〜15μmの範囲であることが好ましく、さらには0.1〜3μmが好ましい。0.02μm未満であると、膜厚ムラから被覆性が不充分となり、所望の電気特性が得られない。一方、15μmよりも厚いと残像(信号放射線を遮断した後の、信号電流の減衰速度)が悪化するため好ましくない。
【0051】
上記の正孔ブロック性材料は、電荷輸送層に含まれるポリマーに対して、0.01wt%以上含むことが好ましく、さらには1〜50wt%の範囲で含むことが好ましい。正孔ブロック性材料が、0.01wt%よりも少ない場合には、正孔ブロックの機能が不十分となり、残像特性が悪化する。逆に50wt%よりも多い場合には、ポリマーのバインダーとしての性能が不十分となり、膜の安定性、光導電層に対する密着性が悪化するため好ましくない。
【0052】
電荷輸送層に含まれるポリマーとしては、アクリル系有機樹脂、ポリイミド、BCB,PVA、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミドが上げられる。特に、アクリル系有機樹脂、ポリカーボネートが好ましく、中でもポリカーボネートZ(PCz)が特に好ましい。
【0053】
なお、ここでは、本発明の好ましい実施の形態としてTFT方式の放射線固体検出装置を例にとって説明したが、記録用光導電層を備えた放射線固体検出装置であればどのようなものにも応用可能である。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
スイッチングTFTが配列された基板上に、2μmの膜厚の硫化アンチモン(Sb)からなる電荷輸送層を形成した。次に、Asを3%含有したSe原料を蒸着により成膜して膜厚0.15μmの結晶化抑制層を形成した。続いて、Naを10ppm含有したSe原料を蒸着により成膜して、膜厚1000μmの非晶質Seから成る記録用光導電層を形成した。
【0055】
次に、フラーレンを含有した有機高分子層を成膜した。フラーレンC60は、フロンティアカーボン株式会社製、nanom purpule(C60)を使用した。o−ジクロロベンゼンに2.5wt%のポリカーボネート樹脂(PCz)(三菱ガス化学株式会社製ユーピロンPCZ−400)および、PCzに対して30wt%のフラーレンC60を溶解して、塗布溶液を作製した。この溶液を記録用光導電層上にスピンコートにより成膜して、真空乾燥機で溶剤を蒸発させ、膜厚0.2μmの有機高分子層を得た。最後に、Auを蒸着により成膜して、膜厚0.1μmの電圧印加電極(第1電極)を形成した。
【0056】
(実施例2)
実施例1において、フラーレンC60のかわりに、酸化フラーレンC60(O)を含有させたこと以外は、実施例1と同様にして放射線検出装置を作製した。
【0057】
(実施例3)
実施例1において、フラーレンC60のかわりに、下記に示すETM1を含有させたこと以外は、実施例1と同様にして放射線検出装置を作製した。
【化12】

【0058】
(実施例4)
実施例1において、フラーレンC60のかわりに、ETM2を含有させたこと以外は、実施例1と同様にして、放射線検出装置を作製した。
【化13】

【0059】
(実施例5)
実施例1において、記録用光導電層を形成したのち有機高分子層を設ける前に、記録用光導電層上に、0.3μmの膜厚の硫化アンチモン(Sb)からなる電荷輸送層を形成した以外は、実施例1と同様にして放射線検出装置を作製した。
【0060】
(実施例6)
実施例1において、有機高分子層を設けたのち電極を設ける前に、有機高分子層上に、0.3μmの膜厚の硫化アンチモンからなる電荷輸送層を形成した以外は、実施例1と同様にして放射線検出装置を作製した。
【0061】
(比較例1)
実施例1において、有機高分子層をポリカーボネート樹脂(PCz)のみから成膜した以外は、実施例1と同様にして放射線検出装置を作製した。
【0062】
(比較例2)
実施例1において、有機高分子層に含有させるフラーレンC60をカーボンブラックに代えた以外は、実施例1と同様にして放射線検出装置を作製した。
【0063】
(評価)
暗電流は、基板上のテストパターンで測定した。電圧印加電極に+10kVの電圧を印加し、キャリア収集電極をグランドに接続して測定した。残像は、管電圧80kVで、計300mRのX線パルスを照射して、パルス照射中の明電流値(IA)と、パルス終端から15秒後のリーク電流値(IL)の比の常用対数値log(IA/IL)で評価した。この値が大きいほど、X線照射を切った後の信号減衰が早い、すなわち残像が少ないことに相当する。本評価のラグ値としては3.0以上が好ましく、3.2以上がより好ましい。
【0064】
結果を表1に示す。なお、a−Seの結晶化は、40℃に300時間保管した後の試料について、顕微ラマン散乱スペクトルを測定して評価した。Se−Se伸縮振動に帰属されるバンド(256cm-1)が、結晶化することにより237cm-1にシフトすることを利用して確認した。具体的には、a−Seの有機高分子層側の界面を含む部分を、エポキシ樹脂にて包埋し、ダイヤモンドミクロトームを用いて切断し、a−Seの界面を露出させる。a−Seの界面から深さ方向1μmの領域から、水平方向に50点を任意抽出して測定して、結晶化Seピークが検出された点数の割合を算出した。結晶化点数が0個の場合は◎、0〜3個の場合は、○、3〜10個の場合は△、それ以上は×とした。
【表1】

【0065】
表1から明らかなように、本発明の放射線検出装置は、有機高分子層をポリカーボネート樹脂(PCz)のみから成膜した比較例1、有機高分子層にカーボンブラックを含有させた比較例1に比べて、暗電流が低く、残像も低減されていた。また、有機高分子層が記録用光導電層に隣接している実施例1〜4では、有機高分子層と記録用光導電層との間に硫化アンチモンからなる電荷輸送層を設けた実施例5よりも記録用光導電層の結晶化抑制効果が得られた。
【0066】
(実施例7〜10)
実施例1において、有機高分子層の膜厚を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして放射線検出装置を作製した。暗電流と残像評価を表2に示す。
【表2】

【0067】
表2から明らかなように、膜厚は0.2μmがほぼ最適値であり、0.02μm〜15μmの間で好ましく用いることができる。0.02μm未満であると、膜厚ムラから被覆性が不充分となり、所望の電気特性が得られない。これを厚くしていくと、膜厚ムラに起因する不良が緩和され、一方、15μmよりも厚いと、電荷輸送性の低下により残像が悪化するため好ましくない。
【0068】
(実施例11〜15)
実施例1において、有機高分子層に含有させるフラーレンC60の含有量を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして放射線検出装置を作製した。暗電流と残像評価を表3に示す。なお、密着性の評価は、光導電層(a−Se層)と有機高分子層のみを実施例11〜15と同様の条件で成膜した試料を用いて評価した。評価は、JIS D0202-1988に準拠して碁盤目テープ剥離試験を行った。セロハンテープ(「CT24」,ニチバン(株)製)を用い、指の腹でフィルムに密着させた後剥離した。判定は20マスの内、剥離しないマス目の数で表し、有機高分子層が剥離しない場合を20/20、完全に剥離する場合を0/20として表した。
【表3】

【0069】
表3から明らかなように、正孔ブロック性材料は、電荷輸送層に含まれるポリマーに対して、0.01wt%以上含むことが好ましく、さらには1〜50wt%の範囲で含むことが好ましい。正孔ブロック性材料が、0.01wt%よりも少ない場合には、正孔ブロックの機能が不十分となり、残像特性が低下すると考えられる。逆に50wt%よりも多くなると、ポリマーのバインダーとしての性能が不十分となり、膜の安定性、光導電層に対する密着性が悪化すると考えられる。
【0070】
(実施例16)
スイッチングTFTが配列された基板上に、2μmの膜厚の硫化アンチモン(Sb23)からなる電荷輸送層を形成した。次に、Asを3%含有したSe原料を蒸着により成膜して膜厚0.15μmの結晶化抑制層を形成した。続いて、Naを10ppm含有したSe原料を蒸着により成膜して、膜厚1000μmの非晶質Seから成る記録用光導電層を形成した。次に、PCzに対しフラーレンC60を30wt%含有した膜厚0.2μmの有機層を成膜した。続いて、Sb23層(膜厚0.3μm)、上部電極としてAu層(0.1μm)を成膜した。最後に、高電圧印加用のケーブルをAgペーストを用いて上部電極に接続し、固定した。
【0071】
続いて、基板の外周部に樹脂製の枠を形成し、続いて上蓋のガラス板を接着したのち、上部電極と樹脂枠、ガラス板で形成される空間に2液混合型のエポキシ樹脂を注入した後、数日間硬化させ、放射線検出装置を作製した。
【0072】
なお、実施例16において注入樹脂は、2液混合型エポキシ樹脂を使用したが、シリコーン樹脂、特に付加型のシリコーン樹脂を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の放射線検出装置の一実施の形態を示す概略断面図
【符号の説明】
【0074】
1 第1電極
2 電荷輸送層
3 結晶化抑制層
4 記録用光導電層
5 有機高分子層
6 電荷輸送層
7 第2電極
10 放射線画像検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像情報を担持した記録用の電磁波を透過する正バイアスを印加した第1電極と、前記電磁波の照射を受けることにより電荷を発生する記録用光導電層と、前記第1電極と前記記録用光導電層の間に積層された有機高分子層と、前記記録用光導電層に対して前記第1電極が設けられている側とは反対側に設けられた第2電極とからなり、前記電磁波の照射により前記記録用光導電層において発生した電荷を蓄積することにより前記画像情報を記録する放射線検出装置において、
前記有機高分子層が正孔ブロック性材料を含有していることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項2】
前記有機高分子層に含まれる前記正孔ブロック性材料のうち、少なくとも1種が、カーボンクラスターまたはその誘導体であることを特徴とする請求項1記載の放射線検出装置。
【請求項3】
前記カーボンクラスターが、フラーレンC60、フラーレンC70、酸化フラーレンまたはそれらの誘導体から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項2記載の放射線検出装置。
【請求項4】
前記有機高分子層に含まれる前記正孔ブロック性材料のうち、少なくとも1種が、下記一般式(A−1)または一般式(B−1)で表されるいずれかの化合物であることを特徴とする請求項1記載の放射線検出装置。
【化1】

(一般式(A−1)中、LA1は連結基を、ZA1は含窒素ヘテロ環の形成に必要な原子群を、nA1は2以上の整数を表す。但し、一般式(A−1)で表される化合物は、分子内に少なくとも3つ以上の窒素原子を有する。)
【化2】

(一般式(B−1)中、LB1は連結基を、ZB1は、芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環の形成に必要な原子群を、nB1は2以上の整数を表す。但し、一般式(B−1)で表される化合物は、分子内に少なくとも3つ以上の窒素原子を有する。)

【図1】
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【公開番号】特開2008−227347(P2008−227347A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66407(P2007−66407)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100111040
【弁理士】
【氏名又は名称】渋谷 淑子
【Fターム(参考)】