放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置
【課題】連携方式でも非連携方式でも放射線画像撮影を行うことができる放射線画像撮影装置を備え、放射線にとって使い勝手の良い放射線画像撮影システムを提供する。
【解決手段】放射線画像撮影システム50は、撮影方式を連携方式と非連携方式との間で切り替え可能とされた放射線画像撮影装置1を備え、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、非連携方式で撮影を行う場合には、撮影前に読み出したリークデータdleakに基づいて放射線の照射開始を検出し、コンソール58は、撮影可能モードに切り替えられる等して放射線画像撮影装置1が撮影可能な状態になった後、放射線を照射させることが許容されるまでの待機時間WTを、連携方式の場合と非連携方式の場合とで同じ時間として処理し、画像処理装置58は、待機時間WTが同じ時間されることに伴って非連携方式で放射線画像撮影が行われる場合に画像データD中に生じる輝度の段差を補正する。
【解決手段】放射線画像撮影システム50は、撮影方式を連携方式と非連携方式との間で切り替え可能とされた放射線画像撮影装置1を備え、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、非連携方式で撮影を行う場合には、撮影前に読み出したリークデータdleakに基づいて放射線の照射開始を検出し、コンソール58は、撮影可能モードに切り替えられる等して放射線画像撮影装置1が撮影可能な状態になった後、放射線を照射させることが許容されるまでの待機時間WTを、連携方式の場合と非連携方式の場合とで同じ時間として処理し、画像処理装置58は、待機時間WTが同じ時間されることに伴って非連携方式で放射線画像撮影が行われる場合に画像データD中に生じる輝度の段差を補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照射されたX線等の放射線の線量に応じて検出素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる直接型の放射線画像撮影装置や、照射された放射線をシンチレーター等で可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換され照射された電磁波のエネルギーに応じてフォトダイオード等の光電変換素子で電荷を発生させて電気信号(すなわち画像データ)に変換するいわゆる間接型の放射線画像撮影装置が種々開発されている。なお、本発明では、直接型の放射線画像撮影装置における検出素子や、間接型の放射線画像撮影装置における光電変換素子を、あわせて放射線検出素子という。
【0003】
このタイプの放射線画像撮影装置はFPD(Flat Panel Detector)として知られており、また、それを用いた放射線画像撮影システムも種々開発されている(例えば特許文献1等参照)。放射線画像撮影装置は、従来は支持台と一体的に形成された、いわゆる専用機型(据え付け型等ともいう。)として構成されていたが(例えば特許文献2参照)、近年、放射線検出素子等を筐体内に収納し、持ち運び可能とした可搬型の放射線画像撮影装置が開発され、実用化されている(例えば特許文献3、4参照)。
【0004】
このような放射線画像撮影装置では、例えば後述する図7等に示すように、通常、複数の放射線検出素子7が、検出部P上に二次元状(マトリクス状)に配列され、各放射線検出素子7にそれぞれ薄膜トランジスター(Thin Film Transistor。以下、TFTという。)8で形成されたスイッチ手段が接続されて構成される。
【0005】
そして、放射線画像撮影では、放射線発生装置の放射線源から放射線画像撮影装置に対して、被写体を介した状態で放射線が照射されて行われる。そして、放射線の照射により放射線検出素子7内に蓄積された電荷が信号線6に順次放出され、画像データに変換されて読み出される。
【0006】
従来の放射線画像撮影装置では、後述するように、放射線画像撮影前に走査線5にオン電圧が順次印加されて各放射線検出素子7のリセット処理が行われる(後述する図13参照)。そして、放射線を照射するために、放射線技師により放射線発生装置55(後述する図11や図12参照)の曝射スイッチ56が操作されると、後述する図14に示すように、放射線発生装置55から放射線画像撮影装置に対して照射開始信号が送信される。
【0007】
そして、放射線画像撮影装置が1面分のリセット処理Rmを終了した時点で電荷蓄積状態に移行するとともに、放射線発生装置55にインターロック解除信号を送信する。そして、放射線発生装置55はこのインターロック解除信号を受信して初めて放射線源52から放射線を照射する。このようにして放射線画像撮影が行われることが多かった。
【0008】
なお、これらの処理の流れについては後で詳しく説明する。また、以下、このように放射線画像撮影装置と放射線発生装置との間で信号のやり取りを行い、放射線発生装置との間で連携を取りながら放射線画像撮影を行う方式を、連携方式という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−294229号公報
【特許文献2】特開平9−73144号公報
【特許文献3】特開2006−058124号公報
【特許文献4】特開平6−342099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、放射線画像撮影装置と放射線発生装置の製造メーカーが異なっているような場合には、両者の間でインターフェースを構築して上記のように互いに信号等をやり取りして連携しながら放射線画像撮影を行うように構成することが必ずしも容易でない場合がある。
【0011】
そのため、このような場合には、放射線画像撮影装置自体で放射線の照射が開始されたことを検出して放射線画像撮影を行うように構成することが必要となる。なお、以下、このように、放射線画像撮影装置と放射線発生装置との間で連携をとれない(或いはとらない)状態で放射線画像撮影を行う方式を、非連携方式という。
【0012】
そして、本発明者らが研究を重ねた結果、放射線画像撮影装置自体で放射線の照射が開始されたことを的確に検出できるいくつかの新たな検出方法を開発することができた。そして、このような新たな検出方法を用いれば、放射線発生装置側との間で信号等のやり取りを行うことができない非連携方式においても、的確に放射線画像撮影を行うことが可能となることが分かっている。
【0013】
一方、例えば、放射線画像撮影装置における消費電力を低減させるために、走査駆動手段15や各読み出し回路17(後述する図7参照)に電力を供給したりバイアス電源14から各放射線検出素子7に逆バイアス電圧を印加する等して放射線画像撮影を行うことができる状態である撮影可能モードと、それらの電力の供給を停止し、アンテナ装置41等の必要な機能部にのみ電力を供給し、放射線画像撮影を行うことができないスリープ(sleep)モードとの間で、放射線画像撮影装置の電力消費モードを切り替えることができるように構成されている場合がある。
【0014】
このような場合、放射線画像撮影装置の電力消費モードをスリープモードから撮影可能モードに切り替えてからすぐに放射線画像撮影を行うと、後述するように、読み出される画像データに比較的大きなノイズが重畳される場合があり、このような画像データに基づいて生成される放射線画像が、画質が悪いものになってしまう場合がある。
【0015】
そこで、通常、スリープモードから撮影可能モードに切り替えた後、放射線画像撮影装置を所定時間待機させた後で初めて、放射線源52から放射線画像撮影装置に対して放射線を照射させることが許容されるように構成される(例えば上記の特許文献1等参照)。また、このような現象は、上記のような電力消費モードの切り替え時だけでなく、例えば放射線画像撮影装置の電源がオンされた後にも生じ得る。
【0016】
なお、このように放射線画像撮影装置の電力消費モードがスリープモードから撮影可能モードに切り替えられたり、或いは放射線画像撮影装置の電源がオンされる等して、放射線画像撮影装置が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、実際に放射線源52から放射線画像撮影装置に対して放射線を照射させることが許容されるまでの経過時間を、以下、待機時間という。
【0017】
この待機時間は、通常、上記のように、読み出される画像データに重畳されるノイズの大きさが許容範囲内に収まるようになるまでの時間等として設定されるが、この観点から見た場合、本発明者らの研究では、放射線画像撮影を上記の非連携方式で行う場合には、放射線画像撮影を連携方式で行う場合よりも、待機時間を長く設定する方がよいことが分かってきた。
【0018】
しかし、放射線画像撮影が連携方式で行われるか非連携方式で行われるかに関わらず、同じように好きなタイミングで放射線を照射させたいと思っている放射線技師も少なくない。そのような場合に、上記のように、放射線画像撮影を非連携方式で行う場合の待機時間を、連携方式で行う場合の待機時間よりも長い時間として設定すると、特に非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に、放射線技師は好きなタイミングで放射線を照射させることができなくなり、放射線画像撮影装置や放射線画像撮影システムが、使い勝手が悪いものと感じられてしまう。
【0019】
そのため、特に非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に設定される待機時間は、上記のように長い時間として設定され易いが、この非連携方式における待機時間をできるだけ短い時間とすることが望まれる。
【0020】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、放射線画像撮影装置を用いて連携方式でも非連携方式でも放射線画像撮影を行うことができるように構成する場合に、放射線にとって使い勝手の良い放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【0021】
しかし、一方で、本発明者らの研究では、上記のように、非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に設定される待機時間をより短い時間に設定した場合、読み出される画像データや、それに基づいて生成される放射線画像中に輝度の段差が現れる場合があることが分かってきた。
【0022】
そこで、本発明は、放射線画像撮影装置を用いて連携方式でも非連携方式でも放射線画像撮影を行うことができるように構成する場合、特に非連携方式で撮影を行う場合に画像データ中に輝度の段差が生じたとしても、生成される放射線画像に輝度の段差が生じることを的確に防止することが可能な放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記の問題を解決するために、本発明の放射線画像撮影システムは、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子を備える検出部と、
前記各走査線に対して印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替える走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置との間で信号の送受信を行い、前記画像データを送信するための通信手段と、
を備える放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置に放射線を照射する放射線源を備える放射線発生装置と、
少なくとも前記放射線画像撮影装置を制御して放射線画像撮影を行わせるコンソールと、
前記放射線画像撮影装置から送信された前記画像データに基づいて放射線画像を生成する画像処理装置と、
を備え、
前記放射線画像撮影装置は、撮影方式を、前記放射線発生装置との間で連携を取りながら放射線画像撮影を行う連携方式と、前記放射線発生装置との間で連携をとらずに放射線画像撮影を行う非連携方式との間で切り替え可能とされており、
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、前記非連携方式で放射線画像撮影を行う場合には、放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段から前記各走査線にオフ電圧を印加して前記各スイッチ手段をオフ状態とした状態で前記各スイッチ手段を介して前記各放射線検出素子からリークした前記電荷をリークデータに変換するリークデータの読み出し処理を行わせ、読み出した前記リークデータが閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出し、
前記コンソールは、前記放射線画像撮影装置が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、前記放射線源から放射線を照射させることが許容されるまでの待機時間を、前記連携方式の場合と前記非連携方式の場合とで同じ時間として処理し、
前記画像処理装置は、前記待機時間が前記連携方式の場合と前記非連携方式の場合とで同じ時間されることに伴って前記非連携方式で放射線画像撮影が行われる場合に前記画像データ中に生じる輝度の段差を補正することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の放射線画像撮影システムは、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子を備える検出部と、
前記各走査線に対して印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替える走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置との間で信号の送受信を行い、前記画像データを送信するための通信手段と、
を備える放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置に放射線を照射する放射線源を備える放射線発生装置と、
少なくとも前記放射線画像撮影装置を制御して放射線画像撮影を行わせるコンソールと、
前記放射線画像撮影装置から送信された前記画像データに基づいて放射線画像を生成する画像処理装置と、
を備え、
前記放射線画像撮影装置は、撮影方式を、前記放射線発生装置との間で連携を取りながら放射線画像撮影を行う連携方式と、前記放射線発生装置との間で連携をとらずに放射線画像撮影を行う非連携方式との間で切り替え可能とされており、
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、前記非連携方式で放射線画像撮影を行う場合には、放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して照射開始検出用の画像データの読み出し処理を行わせ、読み出した前記照射開始検出用の画像データが閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出し、
前記コンソールは、前記放射線画像撮影装置が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、前記放射線源から放射線を照射させることが許容されるまでの待機時間を、前記連携方式の場合と前記非連携方式の場合とで同じ時間として処理し、
前記画像処理装置は、前記待機時間が前記連携方式の場合と前記非連携方式の場合とで同じ時間されることに伴って前記非連携方式で放射線画像撮影が行われる場合に前記画像データ中に生じる輝度の段差を補正することを特徴とする。
【0025】
また、本発明の放射線画像撮影装置は、前記制御手段が、前記検出部上の前記各走査線を、前記検出ラインと前記読み出し開始ラインとを境界として二分した場合、前記検出ラインを含む走査線群に属する前記各走査線、または前記読み出し開始ラインを含む走査線群に属する前記各走査線の少なくとも一方に対して、前記各走査線に接続されている前記各放射線検出素子から読み出された前記各画像データを補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明のような方式の放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置によれば、連携方式でも非連携方式でも放射線画像撮影を行うことが可能な放射線画像撮影装置を用いる放射線画像撮影システムにおいて、放射線画像撮影を連携方式で行う場合と非連携方式で行う場合とで待機時間が同じ時間になり、放射線技師が放射線を照射させることが許容されるまでのタイミングが両方式で同じタイミングになる。
【0027】
そのため、放射線技師は、放射線画像撮影が連携方式で行われるか非連携方式で行われるかにかかわらず、同じように好きなタイミングで放射線を照射させることが可能となる。特に非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に、連携方式の場合よりも長い時間待つ必要がなくなる。そして、放射線技師が、上記の待機時間以外の制約を何ら受けずに自由に好きなタイミングで放射線を照射させることが可能となり、放射線技師にとって、放射線画像撮影装置や放射線画像撮影システムが、使い勝手が良いものとなる。
【0028】
また、上記のように構成すると、非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に、読み出される画像データ中に輝度の段差が現れる場合があるが、検出ラインを含む走査線群、或いは読み出し開始ラインを含む走査線群の少なくとも一方に対して、各走査線に接続されている各放射線検出素子から読み出された各画像データを補正することで、画像データ中から輝度の段差を的確に除去することが可能となる。
【0029】
そのため、特に非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に、待機時間が短くなり、画像データ中に輝度の段差が生じたとしても、上記のようにして輝度の段差を的確に除去された画像データ等に基づいて放射線画像を生成することで、生成される放射線画像に輝度の段差が生じることを的確に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1におけるX−X線に沿う断面図である。
【図3】放射線画像撮影装置のコネクターにケーブルのコネクターを接続した状態を表す斜視図である。
【図4】放射線画像撮影装置の基板の構成を示す平面図である。
【図5】図4の基板上の小領域に形成された放射線検出素子とTFT等の構成を示す拡大図である。
【図6】フレキシブル回路基板やPCB基板等が取り付けられた基板を説明する側面図である。
【図7】放射線画像撮影装置の等価回路を表すブロック図である。
【図8】検出部を構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【図9】各放射線検出素子のリセット処理における電荷リセット用スイッチやTFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図10】画像データの読み出し処理における電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図11】放射線画像撮影室等に構築された本実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成例を示す図である。
【図12】回診車上に構築された本実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成例を示す図である。
【図13】放射線画像撮影装置で行われる各放射線検出素子のリセット処理におけるタイミングチャートである。
【図14】連携方式における照射開始信号の送信、リセット処理の終了および電荷蓄積状態への移行、インターロック解除信号の送信、および放射線の照射のタイミングを表すタイミングチャートである。
【図15】連携方式における各走査線にオン電圧を順次印加するタイミングを表すタイミングチャートである。
【図16】検出方法1においてTFTを介して各放射線検出素子からリークした各電荷がリークデータとして読み出されることを説明する図である。
【図17】リークデータの読み出し処理における電荷リセット用スイッチやTFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図18】放射線画像撮影前にリークデータの読み出し処理と各放射線検出素子のリセット処理を交互に行うように構成した場合の電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図19】検出方法1において各走査線にオン電圧を印加するタイミング等を説明するタイミングチャートである。
【図20】読み出されるリークデータの時間的推移の例を表すグラフである。
【図21】検出方法2において放射線画像撮影前に画像データの読み出し処理が繰り返し行われる際の各走査線にオン電圧を順次印加するタイミングを表すタイミングチャートである。
【図22】放射線画像撮影前に画像データの読み出し処理における電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングおよびオン時間ΔTを表すタイミングチャートである。
【図23】検出方法2において各走査線にオン電圧を印加するタイミング等を説明するタイミングチャートである。
【図24】検出部が4つの領域に分割され、各領域に読み出しICがそれぞれ割り当てられた状態を表す図である。
【図25】電力消費モードがスリープモードから撮影可能モードに切り替えられた時点や電源がオンされた時点からの経過時間tと各放射線検出素子内で発生する単位時間当たりの電荷量dQとの関係等を表すグラフである。
【図26】非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に画像データDや放射線画像I中に生じる輝度の段差を説明する図である。
【図27】(A)は検出ライン、(B)は検出ラインおよび読み出し開始ラインに接続された各放射線検出素子内で蓄積される電荷等を表すグラフである。
【図28】連携方式の場合には画像データDや放射線画像I中に輝度の段差が現れないことを説明する図である。
【図29】連携方式における待機時間よりも長い時間に設定される場合の非連携方式における待機時間を表すグラフである。
【図30】図26に示した各画像データの走査線ごとの平均値のプロファイルを表す図およびグラフであり、画像データ中に現れる輝度の段差を表す図およびグラフである。
【図31】検出ラインを含む走査線群の画像データが右方向に或いは読み出し開始ラインを含む走査線群の画像データが左方向にそれぞれαだけシフトして輝度の段差が解消されることを説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0032】
なお、以下では、放射線画像撮影装置として、シンチレーター等を備え、放射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置について説明するが、本発明は、シンチレーター等を介さずに放射線を放射線検出素子で直接検出する、いわゆる直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することができる。
【0033】
また、本発明は、本実施形態で説明する、いわゆる可搬型の放射線画像撮影装置のみならず、例えば支持台等と一体的に形成された専用機型の放射線画像撮影装置に対しても適用することが可能である。
【0034】
[放射線画像撮影装置]
図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図であり、図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体2内にシンチレーター3や基板4等で構成されるセンサーパネルSPが収納されている。
【0035】
本実施形態では、筐体2のうち、放射線入射面Rを有する中空の角筒状の筐体本体部2Aは、放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されており、筐体本体部2Aの両側の開口部を蓋部材2B、2Cで閉塞することで筐体2が形成されている。また、筐体2の一方側の蓋部材2Bには、電源スイッチ37や切替スイッチ38、コネクター39、バッテリー状態や放射線画像撮影装置1の稼働状態等を表示するLED等で構成されたインジケーター40等が配置されている。
【0036】
本実施形態では、コネクター39は、例えば図3に示すように、ケーブルCaの先端に設けられたコネクターCが接続されることにより、例えば外部のコンソール58(後述する図11や図12参照)等の装置との間でケーブルCaを介して信号等を送受信したり画像データD等を送信したりする際の有線方式の通信手段として機能するようになっている。
【0037】
また、図示を省略するが、例えば筐体2の反対側の蓋部材2C等に、アンテナ装置41(後述する図7参照)が例えば蓋部材2Cに埋め込む等して設けられており、本実施形態では、このアンテナ装置41が、放射線画像撮影装置1とコンソール58等との間で信号等の無線方式で送受信する場合の通信手段として機能するようになっている。
【0038】
図2に示すように、筐体2の内部には、基板4の下方側に図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33やバッテリー24等が取り付けられている。また、基板4やシンチレーター3の放射線入射面Rには、それらを保護するためのガラス基板34が配設されている。また、本実施形態では、センサーパネルSPと筐体2の側面との間に緩衝材35が設けられている。
【0039】
シンチレーター3は、基板4の後述する検出部Pに対向する位置に設けられるようになっている。本実施形態では、シンチレーター3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
【0040】
また、本実施形態では、基板4は、ガラス基板で構成されており、図4に示すように、基板4のシンチレーター3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。また、基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
【0041】
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた小領域rの全体、すなわち図4に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
【0042】
放射線検出素子7は、放射線画像撮影装置1の筐体2の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレーター3で放射線から変換された可視光等の電磁波が照射されると、その内部で電子正孔対を発生させる。放射線検出素子7は、このようにして、照射された放射線(本実施形態ではシンチレーター3で放射線から変換された電磁波)を電荷に変換するようになっている。
【0043】
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスター等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図4の拡大図である図5に示すように、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
【0044】
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15から走査線5を介してゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、ソース電極8sやドレイン電極8dを介して放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。また、TFT8は、接続された走査線5を介してゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内に電荷を蓄積させるようになっている。
【0045】
本実施形態では、図5に示すように、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、図4に示すように、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
【0046】
図4に示すように、本実施形態では、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう。)11に接続されている。各入出力端子11には、図6に示すように、後述する読み出しIC16や走査駆動手段15のゲートドライバー15bを構成するゲートIC15c等のチップがフィルム上に組み込まれたフレキシブル回路基板(Chip On Film等ともいう。)12が、異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
【0047】
そして、フレキシブル回路基板12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1のセンサーパネルSPが形成されている。なお、図6では、電子部品32等の図示が省略されている。
【0048】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、図8は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【0049】
前述したように、基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極7bにそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極7bにそれぞれ逆バイアス電圧(すなわち放射線検出素子7の第1電極7a側にかかる電圧以下の電圧)を印加するようになっている。
【0050】
走査駆動手段15は、配線15dを介してゲートドライバー15bにオン電圧とオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替えて各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えるゲートドライバー15bとを備えている。本実施形態では、ゲートドライバー15bは、複数の前述したゲートIC15c(図6参照)が並設されて構成されている。
【0051】
図7や図8に示すように、各信号線6は、読み出しIC16内に内蔵された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。読み出し回路17は、増幅回路18と相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサー21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、図7や図8中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図8中では、アナログマルチプレクサー21は省略されている。
【0052】
本実施形態では、増幅回路18は、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサー18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続され、オペアンプ18a等に電力を供給する電源供給部18dを備えたチャージアンプ回路で構成されている。また、増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位V0が印加されるようになっている。
【0053】
また、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。また、オペアンプ18aと相関二重サンプリング回路19との間には、電荷リセット用スイッチ18cと連動して開閉するスイッチ18eが設けられており、スイッチ18eは、電荷リセット用スイッチ18cがオン/オフ動作と連動してオフ/オン動作するようになっている。
【0054】
放射線画像撮影装置1で、各放射線検出素子7内に残存する電荷を除去するための各放射線検出素子7のリセット処理を行う際には、図9に示すように、電荷リセット用スイッチ18cがオン状態(およびスイッチ18eがオフ状態)とされた状態で、各TFT8がオン状態とされる。
【0055】
そして、オン状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7から電荷が信号線6に放出され、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cを通過して、オペアンプ18aの出力端子側からオペアンプ18a内を通り、非反転入力端子から出てアースされたり、電源供給部18dに流れ出す。このようにして、各放射線検出素子7のリセット処理が行われるようになっている。
【0056】
一方、各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理の際には、図10に示すように、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cがオフ状態(およびスイッチ18eがオン状態)とされた状態で、オン状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7から電荷が信号線6に放出されると、電荷が増幅回路18のコンデンサー18bに蓄積される。
【0057】
増幅回路18では、コンデンサー18bに蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力されるようになっており、増幅回路18により、各放射線検出素子7から流出した電荷が電荷電圧変換されるようになっている。
【0058】
そして、増幅回路18の出力側に設けられた相関二重サンプリング回路(CDS)19は、各放射線検出素子7から電荷が流出する前に制御手段22からパルス信号Sp1(図10参照)が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持し、上記のように各放射線検出素子7から流出した電荷が増幅回路18のコンデンサー18bに蓄積された後で、制御手段22からパルス信号Sp2が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持する。
【0059】
そして、相関二重サンプリング回路19は、それらの電圧値の差分Vfi−Vinを算出し、算出した差分Vfi−Vinをアナログ値の画像データDとして下流側に出力するようになっている。そして、相関二重サンプリング回路19から出力された各放射線検出素子7の画像データDは、アナログマルチプレクサー21を介して順次A/D変換器20に送信され、A/D変換器20で順次デジタル値の画像データDに変換されて記憶手段23に出力されて順次保存されるようになっている。
【0060】
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピューターや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、図7等に示すように、制御手段22には、SRAM(Static RAM)やSDRAM(Synchronous DRAM)等で構成される記憶手段23が接続されている。
【0061】
また、本実施形態では、制御手段22には、前述したアンテナ装置41が接続されており、さらに、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記憶手段23、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリー24が接続されている。また、バッテリー24には、図示しない充電装置からバッテリー24に電力を供給してバッテリー24を充電する際の接続端子25が取り付けられている。
【0062】
前述したように、制御手段22は、走査駆動手段15や読み出し回路17等を制御して画像データDの読み出し処理や各放射線検出素子7のリセット処理等を行わせるなど、放射線画像撮影装置1の各機能部の動作を制御するようになっている。
【0063】
また、本実施形態では、前述したように、放射線画像撮影装置1は、消費電力を低減させるために、走査駆動手段15や各読み出し回路17に電力を供給したりバイアス電源14から各放射線検出素子7に逆バイアス電圧を印加する等して放射線画像撮影を行うことが可能な撮影可能モードと、それらの電力の供給を停止し、アンテナ装置41等の必要な機能部にのみ電力を供給するスリープモードとの間で、電力消費モードを切り替えることができるように構成されている。なお、スリープモードでは、放射線画像撮影を行うことができない。
【0064】
この電力消費モードの切り替えは、本実施形態では、コンソール58から放射線画像撮影装置1に対してスリープモードから撮影可能モードに切り替えるための覚醒(wake up)信号等を送信したり、放射線技師が切替スイッチ38(図1参照)を操作することにより行うことができるようになっている。
【0065】
なお、制御手段22は、切替スイッチ38が操作されて電力消費モードがスリープモードから撮影可能モードに切り替えられた場合には、コンソール58に対して撮影可能モードに切り替えられたことを表す信号を送信するようになっている。また、制御手段22は、放射線技師により電源スイッチ37が操作されて電源がオンされた際、および電源がオフされる際には電源がオフになる前に、コンソール58に対して電源がオン或いはオフされたことを表す信号を送信するようになっている。
【0066】
また、本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、非連携方式で放射線画像撮影を行う場合には、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射開始を検出するようになっているが、そのための制御構成等については、本実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成等を説明した後で説明する。
【0067】
[放射線画像撮影システム]
次に、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50について説明する。図11は、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50の構成例を示す図である。図11では、放射線画像撮影システム50が放射線画像撮影室R1内等に構築されている場合が示されている。
【0068】
放射線画像撮影室R1には、ブッキー装置51が設置されており、ブッキー装置51は、そのカセッテ保持部(カセッテホルダともいう。)51aに上記の放射線画像撮影装置1を装填して用いることができるようになっている。なお、図11では、ブッキー装置51として、立位放射線画像撮影用のブッキー装置51Aと臥位放射線画像撮影用のブッキー装置51Bが設置されている場合が示されているが、例えば一方のブッキー装置51のみが設けられていてもよい。
【0069】
図11に示すように、放射線画像撮影室R1には、被写体を介してブッキー装置51に装填された放射線画像撮影装置1に放射線を照射する放射線源52Aが少なくとも1つ設けられている。本実施形態では、放射線源52Aの位置を移動させたり、放射線の照射方向を変えることで、立位放射線画像撮影用のブッキー装置51Aと臥位放射線画像撮影用のブッキー装置51Bのいずれにも放射線を照射することができるようになっている。
【0070】
放射線画像撮影室R1には、放射線画像撮影室R1内の各装置等や放射線画像撮影室R1外の各装置等の間の通信等を中継するための中継器(基地局等ともいう。)54が設けられている。なお、本実施形態では、中継器54には、放射線画像撮影装置1が無線方式で画像データDや信号等の送受信を行うことができるように、無線アンテナ(アクセスポイントともいう。)53が設けられている。
【0071】
また、中継器54は、放射線発生装置55やコンソール58と接続されており、中継器54には、放射線画像撮影装置1やコンソール58等から放射線発生装置55に送信するLAN(Local Area Network)通信用の信号等を放射線発生装置55用の信号等に変換し、また、その逆の変換も行う図示しない変換器が内蔵されている。
【0072】
前室(操作室等ともいう。)R2には、本実施形態では、放射線発生装置55の操作卓57が設けられており、操作卓57には、放射線技師等の操作者が操作して放射線発生装置55に対して放射線の照射開始等を指示するための曝射スイッチ56が設けられている。
【0073】
放射線発生装置55は、放射線源52を所定の位置に移動させたり、その放射方向を調整したり、放射線画像撮影装置1の所定の領域内に放射線が照射されるように図示しない絞りやコリメーター等を調整したり、或いは、適切な線量の放射線が照射されるように放射線源52を調整する等の種々の制御を行うようになっている。
【0074】
図11に示すように、本実施形態では、コンピューター等で構成されたコンソール58が前室R2に設けられている。なお、コンソール58を放射線画像撮影室R1や前室R2の外側や別室等に設けるように構成することも可能であり、適宜の場所に設置される。コンソール58は、少なくとも上記の放射線画像撮影装置1を制御して、放射線画像撮影システム50における放射線画像撮影を行わせるようになっている。
【0075】
また、コンソール58には、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等を備えて構成される表示部58aが設けられており、また、図示しないマウスやキーボード等の入力手段を備えている。また、コンソール58には、HDD(Hard Disk Drive)等で構成された記憶手段59が接続され、或いは内蔵されている。
【0076】
一方、放射線画像撮影装置1は、図12に示すように、ブッキー装置51には装填されずに、いわば単独の状態で用いることもできるようになっている。例えば、患者Hが病室R3のベッドBから起き上がれず、放射線画像撮影室R1に行くことができないような場合には、図12に示すように、放射線画像撮影装置1を病室R3内に持ち込み、ベッドBと患者の身体との間に差し込んだり患者の身体にあてがったりして用いることができる。
【0077】
また、放射線画像撮影装置1を病室R3等で用いる場合、前述した放射線画像撮影室R1に据え付けられた放射線発生装置55に代えて、図12に示すように、いわゆるポータブルの放射線発生装置55が例えば回診車71に搭載される等して病室R3に持ち込まれる。この場合、ポータブルの放射線発生装置55の放射線52Pは、任意の方向に放射線を照射できるように構成されており、ベッドBと患者の身体との間に差し込まれたり患者の身体にあてがわれたりした放射線画像撮影装置1に対して、適切な距離や方向から放射線を照射することができるようになっている。
【0078】
また、この場合、無線アンテナ53が設けられた中継器54が放射線発生装置55内に内蔵されており、上記と同様に、中継器54が放射線発生装置55とコンソール58との間の通信や、放射線画像撮影装置1とコンソール58との間の通信や画像データDの送信等を中継するようになっている。
【0079】
なお、図11に示したように、放射線画像撮影装置1を、放射線画像撮影室R1の臥位放射線画像撮影用のブッキー装置51B上に横臥した患者の身体と臥位放射線画像撮影用のブッキー装置51Bとの間に差し込んだり、臥位放射線画像撮影用のブッキー装置51B上で患者の身体にあてがったりして用いることも可能であり、その場合は、ポータブルの放射線52Pや、放射線画像撮影室R1に据え付けられた放射線源52Aのいずれを用いることも可能である。
【0080】
コンソール58は、放射線画像撮影装置1と無線方式や有線方式で通信できるように構成されており、前述したように、放射線画像撮影装置1に覚醒信号を送信して、放射線画像撮影装置1の電力消費モードをスリープモードから撮影可能モードに切り替えることができるように構成されている。また、コンソール58から放射線画像撮影装置1にスリープ信号を送信して、放射線画像撮影装置1の電力消費モードを撮影可能モードからスリープモードに切り替えることができるように構成することも可能である。
【0081】
そして、コンソール58は、例えば管理する対象となる放射線画像撮影装置1が1機の場合は勿論、複数存在する場合でも、それらの電力消費モードの情報(すなわち撮影可能モードであるかスリープモードであるか)や電源のオン/オフの情報を記憶手段59(図11参照。図12では図示が省略されているがコンソール58に接続されている。)に保存する等して、それらの状態を管理するようになっている。
【0082】
また、本実施形態では、コンソール58は、後述するように、放射線画像撮影装置1からプレビュー画像用のデータが送信されてくると、それに基づいてプレビュー画像I_preを生成して、表示部58a上に表示させるようになっている。
【0083】
また、本実施形態では、コンソール58は、画像処理装置としても機能するようになっている。そして、後述するように、放射線画像撮影装置1から画像データD等が送信されてくると、画像処理装置としてのコンソール58は、画像データD等に基づいて放射線画像Iを生成するようになっているが、この点については後で説明する。なお、画像処理装置をコンソール58とは別体の装置として設けるように構成することも可能である。
【0084】
[各方式で放射線画像撮影を行う場合の処理について]
次に、上記の放射線画像撮影装置1を用い、連携方式で放射線画像撮影を行う場合の処理と、非連携方式で放射線画像撮影を行う場合の処理についてそれぞれ説明する。
【0085】
[連携方式で放射線画像撮影を行う場合の処理]
本実施形態では、放射線画像撮影が連携方式で行われる場合、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、通常、まず、各放射線検出素子7のリセット処理を行うようになっている。各放射線検出素子7のリセット処理では、例えば図13に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバー15b(図7参照)から走査線5の各ラインL1〜Lxに対してオン電圧をそれぞれ印加し、各TFT8のゲート電極8gにオン電圧を印加してTFT8をオン状態として、各放射線検出素子7内に残存する電荷を各放射線検出素子7から各信号線6に放出させて除去する。
【0086】
そして、図13に示すように、オン電圧を印加する走査線5を順次切り替えて、走査線5の各ラインL1〜Lxに順次オン電圧を印加して、各放射線検出素子7のリセット処理を繰り返す。制御手段22は、このようにして、走査線5の最初のラインL1から最終ラインLxまで順次オン電圧を印加して行う検出部Pの1面分のリセット処理Rmを繰り返して行うように構成される。
【0087】
そして、図14に示すように、1面分のリセット処理Rmの最中に、前述したように放射線発生装置55側で曝射スイッチ56が操作されて、放射線発生装置55から放射線画像撮影装置1に照射開始信号が送信されてくると、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、照射開始信号が送信されてきた時点で行っている1面分のリセット処理Rmが完了した時点で、各放射線検出素子7のリセット処理を終了する。
【0088】
そして、走査駆動手段15から走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加させて全TFT8をオフ状態として、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生する電荷を各放射線検出素子7内に蓄積させる電荷蓄積状態に移行させる。
【0089】
また、制御手段22は、上記のように1面分のリセット処理Rmが完了した時点で、放射線発生装置55に対してインターロック解除信号を送信する。放射線発生装置55は、中継器54を介して放射線画像撮影装置1からインターロック解除信号を受信すると、放射線源52から放射線を照射させる。
【0090】
放射線画像撮影装置1の制御手段22は、インターロック解除信号を送信した後、放射線発生装置55から放射線の照射を終了したことを表す終了信号が送信されてくると、或いは電荷蓄積状態に移行してから所定の時間が経過した時点で、図15に示すように、走査線5の最初のラインL1から順に、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、各放射線検出素子7から画像データDをそれぞれ読み出すように構成される。
【0091】
なお、図15中の斜線は、その期間に放射線が照射されたことを表す。また、放射線画像撮影装置1で、照射された放射線の線量を測定できるように構成し、所定の線量の放射線が照射された時点で放射線画像撮影装置1から放射線発生装置55に放射線の照射を終了する信号を送信するように構成することも可能である。
【0092】
[非連携方式で放射線画像撮影を行う場合の処理]
次に、放射線画像撮影が連携方式で行われる場合の放射線画像撮影装置1における処理について説明する。
【0093】
前述したように、非連携方式の場合、放射線画像撮影装置1と放射線発生装置55との間で信号等のやり取りが行われないため、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射が開始されたことを検出して放射線画像撮影を行うことが必要となる。以下、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1で行われる放射線の照射開始の検出の仕方について説明する。
【0094】
なお、本実施形態に係る検出方法は、前述したように、本発明者らの研究により新たに見出された検出方法である。本発明者らの研究により新たに見出された検出方法としては、例えば、下記の2つの検出方法のいずれかを採用することが可能である。
【0095】
[検出方法1]
例えば、放射線画像撮影において放射線画像撮影装置1に放射線が照射される前に、リークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うように構成することが可能である。ここで、リークデータdleakとは、図16に示すように、各走査線5にオフ電圧を印加した状態で、オフ状態になっている各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qの信号線6ごとの合計値に相当するデータである。
【0096】
そして、リークデータdleakの読み出し処理では、図9に示した各放射線検出素子7のリセット処理や図10に示した画像データDの読み出し処理の場合と異なり、図17に示すように、走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加して各TFT8をオフ状態とした状態で、制御手段22から各読み出し回路17の相関二重サンプリング回路19(図7や図8のCDS参照)にパルス信号Sp1、Sp2を送信するようになっている。
【0097】
相関二重サンプリング回路19は、制御手段22からパルス信号Sp1が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持する。そして、増幅回路18のコンデンサー18bに各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qが蓄積されて増幅回路18から出力される電圧値が上昇し、制御手段22からパルス信号Sp2が送信されると、相関二重サンプリング回路19は、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持する。
【0098】
そして、相関二重サンプリング回路19が電圧値の差分Vfi−Vinを算出して出力した値が、リークデータdleakとなる。リークデータdleakが、その後、A/D変換器20でデジタル値に変換されることは、前述した画像データDの読み出し処理の場合と同様である。
【0099】
ところで、リークデータdleakの読み出し処理のみを繰り返し行うように構成すると、各TFT8がオフ状態のままとなってしまい、各放射線検出素子7内で発生した暗電荷が各放射線検出素子7内に蓄積され続ける状態になってしまう。
【0100】
そのため、上記のように、放射線画像撮影前に、リークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うように構成する場合には、図18に示すように、各走査線5にオフ電圧を印加した状態で行うリークデータdleakの読み出し処理と、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して行う各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に繰り返し行うように構成することが望ましい。なお、図18や後述する図19等のTやτ、Tacについては後で説明する。
【0101】
このように放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理と各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に繰り返して行うように構成した場合、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、シンチレーター3(図2参照)で放射線から変換された電磁波が、各TFT8に照射される。そして、それにより、各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷q(図18参照)がそれぞれ増加することが本発明者らの研究で分かっている。
【0102】
そして、例えば図19に示すように、放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理と各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に繰り返して行う場合、図20に示すように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始された時点で読み出されたリークデータdleakが、それ以前に読み出されたリークデータdleakよりも格段に大きな値になる。
【0103】
なお、図19および図20では、図19で走査線5のラインL4にオン電圧が印加されてリセット処理が行われた後の4回目の読み出し処理で読み出されたリークデータdleakが、図20の時刻t1におけるリークデータdleakに対応する。また、図19において「R」は各放射線検出素子7のリセット処理を表し、「L」はリークデータdleakの読み出し処理を表す。
【0104】
そこで、放射線画像撮影装置1の制御手段22で、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理で読み出されたリークデータdleakを監視するように構成し、読み出されたリークデータdleakが、例えば予め設定された所定の閾値dleak_th(図20参照)を越えた時点で、放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することができる。なお、以下、上記の走査線5のラインL4のように、放射線の照射が開始された際、或いはその直前にオン電圧が印加された走査線5を、以下、検出ラインという。
【0105】
[検出方法2]
また、上記の検出方法1のように、放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理を行うように構成する代わりに、放射線画像撮影前に、図21に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、各放射線検出素子7からの画像データdの読み出し処理を繰り返し行うように構成することも可能である。
【0106】
なお、前述したように、放射線画像撮影直後に行われる上記の本画像としての画像データDと区別して、以下、この放射線画像撮影前に放射線の照射開始の検出用に読み出される画像データを、照射開始検出用の画像データdという。
【0107】
また、照射開始検出用の画像データdの読み出し処理における読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフや、相関二重サンプリング回路19へのパルス信号Sp1、Sp2の送信等は、図22に示すように、図10に示した画像データDの読み出し処理における処理と同様に行われる。なお、図22等におけるTやΔTについては後で説明する。
【0108】
上記のように放射線画像撮影前に照射開始検出用の画像データdの読み出し処理を行うように構成した場合、図23に示すように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、その時点で読み出された照射開始検出用の画像データd(図23では走査線5のラインLnにオン電圧が印加されて読み出された照射開始検出用の画像データd)が、前述した図20に示したリークデータdleakの場合と同様に、それ以前に読み出された照射開始検出用の画像データdよりも格段に大きな値になる。
【0109】
そこで、放射線画像撮影装置1の制御手段22で、放射線画像撮影前の読み出し処理で読み出された照射開始検出用の画像データdを監視するように構成し、読み出された照射開始検出用の画像データdが予め設定された所定の閾値dthを越えた時点で、放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することができる。
【0110】
なお、図23中のΔTやτ、Tacについては以下で説明する。また、図23の場合、検出ラインは走査線5のラインLnである。
【0111】
[検出感度を向上させるための処理について]
また、上記の検出方法1において、放射線画像撮影前の各放射線検出素子7のリセット処理で、ある走査線5に対するオン電圧の印加を開始してから次の走査線5に対するオン電圧の印加を開始するまでの周期τ(図18や図19等参照)を長くして、リークデータdleakの読み出し処理において制御手段22から送信する2回のパルス信号Sp1、Sp2の送信間隔Tを長くすると、1回のリークデータdleakの読み出し処理で読み出されるリークデータdleakの値が大きくなる。
【0112】
また、上記の検出方法2において、放射線画像撮影前の照射開始検出用の画像データdの読み出し処理において、各TFT8をオン状態とする時間ΔT(図22や図23参照)、すなわち走査駆動手段15のゲートドライバー15bから走査線5にオン電圧を印加してからオフ電圧に切り替えるまでの時間ΔT(以下、オン時間ΔTという。)を長くすると、1回の読み出し処理で読み出される照射開始検出用の画像データdの値が大きくなる。
【0113】
そのため、上記のように構成することで、放射線画像撮影装置1における放射線の照射開始の検出感度を向上させることが可能となる。
【0114】
また、図24に示すように、例えば、検出部P(図4や図7等参照)が4つの領域Pa〜Pdに分割されるなど、検出部Pが複数の領域に分割されるように構成される場合がある。このような場合、検出部Pの各領域Pa〜Pdごとに、上記の検出方法1や検出方法2を用いて放射線の照射開始を検出するように構成することが可能である。
【0115】
そして、このように構成すれば、例えば、放射線が放射線画像撮影装置1に対して照射野が狭められて照射され、検出部Pの複数の領域Pa〜Pdのうち1つ或いはいくつかの領域のみに放射線が照射される状態になる場合があるが、そのような場合でも、放射線の照射開始を的確に検出することが可能となる。
【0116】
[電荷蓄積状態への移行と画像データDの読み出し処理]
上記の検出方法1、2のいずれの場合においても、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、上記のようにして放射線の照射が開始されたことを検出すると、図19(検出方法1の場合)や図23(検出方法2の場合)に示すように、放射線の照射開始を検出した時点で各走査線5へのオン電圧の印加を停止して、ゲートドライバー15bから走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加させ、各TFT8をオフ状態にして電荷蓄積状態に移行させる。
【0117】
そして、例えば放射線の照射開始を検出してから所定時間が経過した時点で、制御手段22は、本画像としての画像データDの読み出し処理を行わせるようになっている。
【0118】
本実施形態では、制御手段22は、図19や図23に示すように、前述した検出ライン(図19の場合は走査線5のラインL4、図23の場合は走査線5のラインLn)の次にオン電圧を印加すべき走査線5(図19の場合は走査線5のラインL5、図23の場合は走査線5のラインLn+1)からオン電圧の印加を開始し、各走査線5にオン電圧を順次印加させて、画像データDの読み出し処理を行うようになっている。
【0119】
なお、以下、画像データDの読み出し処理の最初にオン電圧を印加する走査線5(すなわち図19の場合は走査線5のラインL5、図23の場合は走査線5のラインLn+1)を、読み出し開始ラインという。
【0120】
すなわち、本実施形態では、画像データDの読み出し処理では、制御手段22は、検出ライン(すなわち図19の場合は走査線5のラインL4、図23の場合は走査線5のラインLn)に対して、検出部P(図4や図7参照)上で隣接し、検出ラインLnの次にオン電圧を印加すべき走査線5である読み出し開始ライン(すなわち図19の場合は走査線5のラインL5、図23の場合は走査線5のラインLn+1)からオン電圧の印加を開始し、走査駆動手段15のゲートドライバー15bから各走査線5にオン電圧を順次印加して画像データDの読み出し処理を行うようになっている。
【0121】
また、本実施形態では、画像データDの読み出し処理の際に、ゲートドライバー15bから各走査線5にオン電圧を印加する周期が、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理と交互に行われる各放射線検出素子7のリセット処理(検出方法1の場合。図19等参照)や照射開始検出用の画像データdの読み出し処理(検出方法2の場合。図23参照)における周期τと同じ周期になるように、各走査線5にオン電圧を順次印加するようになっている。
【0122】
このように構成すると、電荷蓄積状態への移行前に走査線5に印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えてから、電荷蓄積状態を経て画像データDの読み出し処理において当該走査線5に印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えるまでの時間Tac(図19や図23参照。以下、実効蓄積時間Tacという。)が、各走査線5で同じ時間になり好ましい。
【0123】
[待機時間の問題について]
次に、本実施形態における待機時間について説明する。なお、以下では、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1や放射線画像撮影システム50の作用についてもあわせて説明する。
【0124】
待機時間とは、前述したように、放射線画像撮影装置1の電力消費モードがスリープモードから撮影可能モードに切り替えられたり、放射線画像撮影装置1の電源がオンされて、放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になってから、実際に放射線源52から放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射させることが許容されるまでの時間をいう。
【0125】
放射線画像撮影を上記の連携方式で行う従来の放射線画像撮影装置では、前述したように、放射線画像撮影装置の電力消費モードをスリープモードから撮影可能モードに切り替えたり電源をオンする際、連携方式で放射線画像撮影を行う放射線画像撮影装置1の場合、切り替え直後にすぐに放射線源52(図11等参照)から放射線画像撮影装置に対して放射線を照射させないように構成される場合があった。
【0126】
これは、例えば図25に示すように、スリープモードから撮影可能モードに切り替えられた直後や電源がオンされた直後(図中の時刻0)には、各放射線検出素子7内で発生する単位時間当たりの電荷量dQが多く、その時点で画像データDの読み出し処理を行うと、上記の電荷蓄積状態(図15参照)の継続中に各放射線検出素子7内に蓄積される、放射線の照射により発生する電荷以外の電荷の量が多くなり過ぎる場合があるためである。
【0127】
例えば、この状態で放射線画像撮影を行って画像データDを読み出すと、画像データD中に含まれる上記の電荷量dQに対応するオフセット分が大きくなるため、画像データDのS/N比が悪化する。そして、そのような画像データDに基づいて放射線画像Iを生成すると、生成された放射線画像I中に比較的大きなノイズが重畳された状態になり、放射線画像Iの画質が劣化したものになってしまう。
【0128】
なお、図25は、スリープモードから撮影可能モードに切り替えられた時点や電源がオンされた時点(時刻0)からの経過時間tと、各放射線検出素子7内で発生する単位時間当たりの電荷量dQとの関係を表すグラフである。また、時間tが経過するにつれて各放射線検出素子7内で発生する単位時間当たりの電荷量dQは減少していき、暗電荷の発生量に等しい値に落ち着いていく。
【0129】
そして、上記のような事態が生じることを防止し、画像データDのS/N比等が許容される範囲内に収まるようにするために、従来の放射線画像撮影装置では、図25に示すように、各放射線検出素子7内で発生する単位時間当たりの電荷量dQに対して閾値dQthが設けられる。
【0130】
そして、スリープモードから撮影可能モードに切り替えられる等してから、各放射線検出素子7内で発生する単位時間当たりの電荷量dQが閾値dQth以下に低下するまで、放射線源52(図11等参照)から放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射させないように構成されていた。この各放射線検出素子7内で発生する単位時間当たりの電荷量dQが閾値dQthに低下するまで待機させる時間WTが、前述した待機時間になる。
【0131】
この待機時間WTが経過した後は、少なくとも各放射線検出素子7内で発生する単位時間当たりの電荷量dQが十分小さくなり、それによる画像データDのS/N比の劣化を許容範囲内に抑制することが可能となる。
【0132】
ところで、上記の連携方式における待機時間WTは、必ずしも1つの待機時間WTとして設定される訳ではない。すなわち、放射線画像撮影装置1の電力消費モードがスリープモードから撮影可能モードに切り替えられた場合には、上記のように放射線画像撮影装置1では速やかに各放射線検出素子7のリセット処理(図13等参照)が開始される。
【0133】
それに対し、電源がオンされて放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった場合には、各放射線検出素子7のリセット処理を開始する前に、走査駆動手段15や各読み出し回路17、バイアス電源14(図7参照)等を起動させる等の処理が必要になる。
【0134】
そのため、同じ連携方式で放射線画像撮影を行う場合であっても、スリープモードから撮影可能モードに切り替えられた場合と、電源がオンされた場合とでは、上記の待機時間WTは、通常、異なる時間とされる。
【0135】
本実施形態においても、放射線画像撮影装置1を用いて連携方式で放射線画像撮影が行われる場合の待機時間として、上記と同様の待機時間WTが設定されており、待機時間WTは、放射線画像撮影装置1の電力消費モードがスリープモードから撮影可能モードに切り替えられた場合と、電源がオンされた場合とで異なる時間として設定されている。
【0136】
そして、これらの待機時間WTは、放射線画像撮影装置1ごとに、工場出荷時や施設への導入時等に予め実験等が行われて設定される。なお、放射線画像撮影装置1のメンテナンス時等にこれらの待機時間WTを設定し直すように構成することも可能である。
【0137】
一方、本発明者らの研究では、放射線画像撮影装置1を用い、非連携方式で放射線画像撮影を行う際に、すなわち上記の検出方法1や検出方法2を用いて放射線画像撮影が行われる際に、上記の連携方式の場合の待機時間WTを用いると、例えば図26に示すように、読み出される画像データDや、それらに基づいて生成される放射線画像I中に、上記の検出ライン(図中のLn参照)と読み出し開始ライン(図中のLn+1参照)とを境界として、輝度の段差が現れる場合があることが分かった。
【0138】
なお、図26や後述する図28等では、輝度の違いが濃淡で表されており(なお明るい方が画像データD等の値が大きい。)、輝度の違いが極端に強調して表現されているが、実際には、輝度の違いや段差は僅かである。
【0139】
このような現象が生じる原因は、以下のように考えられている。いま仮に、例えば図25における待機時間WTに放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されたとする。また、その際、検出ラインが例えば走査線5のラインLnであったとする。すると、放射線画像撮影装置1はその時点WTから電荷蓄積状態に移行するため、検出ラインLnでは、その時点WTからTFT8がオフ状態とされる。
【0140】
そして、図19や図23に示したように、検出ラインLn(図19では検出ラインL4)では、その後、画像データDの読み出し処理が行われるまで、実効蓄積時間Tacの間、TFT8がオフされる状態が続く。そのため、検出ラインLnでは、図27(A)に示すように、待機時間WTから実効蓄積時間Tacの間、TFT8がオフ状態とされ、その間、図中に斜線を付して示した面積に相当する電荷Q(すなわち上記の単位時間当たりに発生する電荷量dQの積分値)が、各放射線検出素子7内に、画像データDに重畳されるオフセット分に相当する電荷Qとして蓄積される。
【0141】
一方、図19や図23では図示を省略したが、読み出し開始ラインLn+1(図19では検出ラインL5)では、検出ラインLn(図19では検出ラインL4)にオン電圧が印加されるよりも前にオン電圧が印加され、先に実効蓄積時間Tacの経過が開始されている。そのため、読み出し開始ラインLn+1では、図27(B)に示すように、検出ラインLnよりも先に実効蓄積時間Tacが始まり、検出ラインLnよりも先に実効蓄積時間Tacの経過が終了して画像データDの読み出し処理が行われる。
【0142】
なお、前述したように、本実施形態では、検出ラインLnの実効蓄積時間Tacと読み出し開始ラインLn+1の実効蓄積時間Tacは同じ時間とされている。また、図27(B)において読み出し開始ラインLn+1の実効蓄積時間Tacと検出ラインLnの実効蓄積時間Tacとが重なっている時間が、上記の電荷蓄積状態の継続時間に相当する。
【0143】
上記の場合、図27(B)に示すように、読み出し開始ラインLn+1に接続されている各放射線検出素子7の方が、検出ラインLnに接続されている各放射線検出素子7よりも、その内部に蓄積される電荷Q、すなわち画像データDに重畳されるオフセット分に相当する電荷Qが多くなる。
【0144】
そのため、例えば放射線画像撮影装置1に被写体が存在しない状態で一様に放射線を照射した場合でも、読み出される画像データDは、読み出し開始ラインLn+1に接続されている各放射線検出素子7の方が、検出ラインLnに接続されている各放射線検出素子7よりも大きくなるのである。
【0145】
なお、連携方式で放射線画像撮影を行った場合にも、実際には読み出し開始ラインLn+1と検出ラインLnとの間で輝度の差が生じている。しかし、連携方式における読み出し開始ラインは図15に示したように走査線5の最初のラインL1である。また、連携方式の場合には放射線の照射開始の検出処理は行われないため、この場合の「検出ラインLn」は存在しないが、読み出し終了のラインという意味で言えば、走査線5の最終ラインLxということになる。
【0146】
そのため、図28に示すように、この場合は、走査線5の各ラインL1〜Lxごとの各画像データDの輝度や、それらに基づいて生成された放射線画像Iにおける走査線5の各ラインL1〜Lxに相当する部分の輝度は、グラデーション状に変化する状態になる。そのため、連携方式では、少なくとも画像データDや放射線画像I中には輝度の段差が現れない状態になる。
【0147】
非連携方式において、上記のように画像データDや放射線画像I中に輝度の段差(図26参照)が生じないようにするためには、例えば図29に示すように、非連携方式における待機時間を連携方式における待機時間WTよりも長い時間WTncに設定することも考えられる。
【0148】
しかし、このように、放射線画像撮影を非連携方式で行う場合の待機時間を、連携方式で行う場合の待機時間WTよりも長い時間として設定すると、前述したように、特に非連携方式において放射線技師が放射線を照射させることができない制約される時間が長くなり、放射線技師にとって、放射線画像撮影装置1や放射線画像撮影システム50が、使い勝手が悪いものとなってしまう。
【0149】
そのため、特に非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に設定される待機時間を、上記の待機時間WTnc(図29参照)よりも、できるだけ短い時間とすることが望まれる。
【0150】
そこで、本実施形態では、放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、放射線源52から放射線を照射させることが許容されるまでの待機時間を、放射線画像撮影を連携方式で行う場合も非連携方式で行う場合も、いずれの場合も、同じ時間として処理されるようになっている。
【0151】
そして、本実施形態では、非連携方式の場合に設定する待機時間を短くし、連携方式の場合に設定されている待機時間WTと同じ時間とすることで、放射線画像撮影を連携方式で行う場合と非連携方式で行う場合とで、待機時間WTを同じ時間とするようになっている。また、両方式の待機時間を同じ時間とするが、上記の待機時間WT(図25等参照)とは別の同じ時間に設定することも可能である。
【0152】
このように構成すると、連携方式でも非連携方式でも放射線画像撮影を行うことが可能な放射線画像撮影装置1を用いる放射線画像撮影システム50において、放射線画像撮影を連携方式で行う場合と非連携方式で行う場合とで待機時間が同じ時間WTになり、放射線技師が放射線を照射させることが許容されるまでのタイミングが両方式で同じタイミングになる。
【0153】
そのため、待機時間WTの間は放射線が照射できないという制約はあるものの、放射線技師は、放射線画像撮影が連携方式で行われるか非連携方式で行われるかにかかわらず、同じように好きなタイミングで放射線を照射させることが可能となる。特に非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に、連携方式の場合よりも長い時間待つ必要がなくなる。
【0154】
そのため、放射線技師が、上記の待機時間WT以外の制約を何ら受けずに自由に好きなタイミングで放射線を照射させることが可能となり、放射線技師にとって、放射線画像撮影装置1や放射線画像撮影システム50が、使い勝手が良いものとなる。
【0155】
なお、上記のように構成すると、図26に示したように、少なくとも放射線画像撮影装置1で読み出される画像データD中に輝度の段差が生じている可能性が残る。そこで、画像データDに対する画像処理でこのような画像データD中の輝度の段差を解消するための処理が必要となるが、この点については後で説明する。
【0156】
[電力消費モードや電源のオン/オフを切り替えた直後の処理について]
本実施形態では、コンソール58は、上記のように、放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、放射線源52から放射線を照射させることが許容されるまでの待機時間WTを、連携方式の場合と非連携方式の場合とで同じ時間WTとして処理するようになっている。
【0157】
具体的には、コンソール58は、前述したように、管理する対象となる1機または複数の放射線画像撮影装置1について、それぞれ電力消費モードの状態(すなわち撮影可能モードであるかスリープモードであるか)や電源のオン/オフの状態を管理している。
【0158】
また、本実施形態では、コンソール58は、各放射線画像撮影装置1について、それぞれ待機時間WTを管理している。なお、このように、本実施形態では、待機時間WTは、各放射線画像撮影装置1ごとに、予めコンソール58に設定されている。そして、コンソール58は、放射線画像撮影に使用される放射線画像撮影装置1が判明すると、その放射線画像撮影装置1に対応する待機時間WTを例えば記憶手段59から読み出す。
【0159】
そして、当該放射線画像撮影装置1に対して覚醒信号を送信して当該放射線画像撮影装置1の電力消費モードをスリープモードから撮影可能モードに切り替えたり、或いは、放射線技師により放射線画像撮影装置1の切替スイッチ38(図1参照)が操作される等して撮影可能モードに切り替えられたことを表す信号が送信されてきた時点から経過時間tのカウントを開始する。
【0160】
また、コンソール58は、放射線画像撮影装置1から、放射線技師により電源スイッチ37が操作されて電源がオンされたことを表す信号が送信されてきた場合には、当該放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影に使用されると判断して、信号が送信されてきた時点から経過時間tのカウントを開始する。また、その放射線画像撮影装置1に対応する待機時間WTの情報を、例えば記憶手段59から読み出す。
【0161】
そして、本実施形態では、コンソール58は、上記のいずれの場合も、経過時間tのカウントを開始すると同時に、表示部58a(図11や図12参照)上に、放射線の照射を行わないように放射線技師に警告する表示を表示させるようになっている。そして、コンソール58は、経過時間tが待機時間WTに達すると、表示部58a上の表示を、上記の警告表示から通常の表示に切り替えるようになっている。
【0162】
上記のように、本実施形態では、放射線画像撮影を連携方式で行う場合と非連携方式で行う場合とで待機時間WTが同じ時間として設定されているため、コンソール58の表示部58a上に上記の警告表示が表示される時間が、両方式の場合で同じ時間となる。そして、放射線技師は、上記の表示の切り替えを確認した後で、曝射スイッチ56を操作して放射線源52から放射線を照射させる。
【0163】
なお、経過時間tが待機時間WTに達する前に、放射線源52から放射線が照射されてしまった場合には、上記のように、放射線画像Iの画質が劣化する可能性が生じる。そのため、それを放射線技師に知らせるために、例えば、コンソール58が、後述するように表示部58a上にプレビュー画像I_preを表示する際に、画質が悪くなっている可能性がある旨を警告する表示をあわせて表示させるように構成することも可能である。
【0164】
このように構成すれば、後述するように、放射線技師がプレビュー画像I_preを見て再撮影の要否を判断する際に、放射線の照射が早すぎて画質が劣化したり輝度の段差が生じる等して画質が悪くなっている可能性があることを認識したうえで、再撮影の要否を判断することが可能となる。
【0165】
[画像データの読み出し処理後の処理について]
本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、連携方式或いは非連携方式で放射線画像撮影を行い、上記のようにして画像データDの読み出し処理(図15や図19、図23参照)を終了すると、読み出した画像データDに基づいてプレビュー画像用のデータを作成して、コンソール58に送信するようになっている。
【0166】
そして、コンソール58(図11や図12参照)は、放射線画像撮影装置1からプレビュー画像用のデータが送信されてくると、前述したように、それに基づいてプレビュー画像I_pre(図示省略)を生成して表示部58a上に表示させるようになっている。
【0167】
そして、放射線技師等がこのプレビュー画像I_preを見て、撮影が適切に行われたか否かや再撮影が必要か否か等を判断するようになっている。なお、放射線技師等が、再撮影が必要であると判断した場合には、放射線画像撮影が最初からやり直される。
【0168】
一方、図19や図23に示したように、電荷蓄積状態の間、各TFT8はオフ状態とされるため、各放射線検出素子7内で発生した電荷が各放射線検出素子7内に蓄積される。その際、各放射線検出素子7の内部では、各放射線検出素子7自体の熱(温度)による熱励起等によりいわゆる暗電荷が常時発生しており、その暗電荷も各放射線検出素子7内に蓄積される。
【0169】
そして、読み出し処理で読み出された画像データD中には、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷に起因する有用なデータとともに、暗電荷に起因するオフセット分に相当するデータが含まれる。
【0170】
そこで、本実施形態では、上記のプレビュー画像用のデータの送信後、或いはそれと併行して、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、画像データD中に含まれる上記の暗電荷に起因するオフセット分に相当するデータをオフセットデータOとして読み出すためのオフセットデータOの読み出し処理を行うようになっている。なお、オフセットデータOの読み出し処理が放射線画像撮影の前に行われるように構成することも可能である。
【0171】
本実施形態では、オフセットデータOの読み出し処理は、図15(連携方式の場合)や図19(検出方法1を採用した場合)、図23(検出方法2を採用した場合)に示した一連の処理と同じ処理シーケンスを繰り返して、オフセットデータOの読み出し処理を行うようになっている。なお、その際、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射は行われない。
【0172】
そして、オフセットデータOの読み出し処理が終了すると、本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、画像処理装置であるコンソール58に、画像データDとオフセットデータOとをそれぞれ送信するようになっている。
【0173】
[画像処理装置における放射線画像の生成処理および画像データの補正処理]
前述したように、本実施形態では、コンソール58は、画像処理装置としても機能するようになっている。なお、画像処理装置をコンソール58とは別体の装置として設けるように構成することも可能であることは前述した通りである。
【0174】
そして、画像処理装置としてのコンソール58は、放射線画像撮影装置1から画像データDやオフセットデータOが送信されてくると、画像データDを補正したうえで、放射線画像Iを生成するようになっている。
【0175】
まず、画像処理装置における基本的な放射線画像Iの生成処理について説明する。画像処理装置としてのコンソール58は、上記のように、放射線画像撮影装置1から画像データDやオフセットデータOが送信されてくると、下記(1)式に従って、放射線検出素子7ごとに画像データDからオフセットデータOを減算して、いわゆる真の画像データD*を算出する。
D*=D−O …(1)
【0176】
上記のようにオフセットデータOは、画像データD中に含まれる暗電荷に起因するオフセット分に相当するデータであるため、それを画像データDから減算して算出される真の画像データD*は、放射線の照射により放射線検出素子7内で発生した電荷のみに起因する、被写体の情報が担持されたデータになる。
【0177】
そして、コンソール58は、放射線検出素子7ごとに算出した真の画像データD*に対してゲイン補正や欠陥画素補正、放射線画像撮影部位に応じた階調処理等の精密な画像処理を行って、最終的な放射線画像Iを生成するようになっている。
【0178】
しかし、前述したように、本実施形態では、放射線画像撮影を非連携方式で行う場合の待機時間が、図29に示した待機時間WTncではなく、図25に示した、より短い連携方式の場合の待機時間WTとされている。そのため、放射線画像撮影が非連携方式で行われた場合、読み出された画像データDには、図26に示したように、輝度の段差が生じている可能性がある。そして、そのままの画像データDを用いて放射線画像Iを生成すると、放射線画像Iにも輝度の段差が現れてしまう可能性がある。
【0179】
そこで、本実施形態では、画像処理装置としてのコンソール58(以下、簡単に画像処理装置58という。)は、上記のような放射線画像Iの生成処理を行う前に、以下のようにして、画像データD或いは上記の真の画像データD*の補正処理を行って、画像データD中或いは真の画像データD*中の輝度の段差をなくすようになっている。
【0180】
なお、以下では、上記の補正処理を、画像データDを対象として行う場合について説明するが、上記(1)式に従って算出した真の画像データD*を対象として行うように構成することも可能である。
【0181】
図26に示した各画像データDを、各走査線5ごとに平均値Dave(k)(kは走査線5のライン番号1〜x)を算出して、信号線方向(図中では縦方向)に並べてプロットすると、図30に示すような画像データDの平均値Dave(k)のプロファイルが得られる。その際の検出ラインLnにおける平均値Dave(n)と読み出し開始ラインLn+1における平均値Dave(n+1)との差が、すなわち上記の輝度の段差を表している。
【0182】
そこで、本実施形態では、画像処理装置58は、放射線画像撮影装置1の検出部P上の各走査線5を、検出ラインLnと読み出し開始ラインLn+1とを境界として二分し、検出ラインLnを含む走査線群に属する各走査線5(すなわち走査線5のラインL1〜Ln)、または読み出し開始ラインLn+1を含む走査線群に属する各走査線5(すなわち走査線5のラインLn+1〜Lx)の少なくとも一方に対して、各走査線5に接続されている各放射線検出素子7から読み出された各画像データDを補正するようになっている。
【0183】
具体的な補正の仕方としては、例えば、図30に示した読み出し開始ラインLn+1における平均値Dave(n+1)と検出ラインLnにおける平均値Dave(n)との差αを算出し、それを補正定数αとする。すなわち、補正定数αを、
α=Dave(n+1)−Dave(n) …(2)
として算出する。
【0184】
そして、この補正定数αを、例えば、検出ラインLnを含む走査線群(L1〜Ln)に属する各走査線5に接続されている各放射線検出素子7から読み出された各画像データDに加算する。すると、図31に示すように、走査線5の各ラインL1〜Lnに接続されている各放射線検出素子7から読み出された各画像データDが、図中右方向にαだけシフトする。そのため、輝度の段差が解消される。
【0185】
また、例えば、読み出し開始ラインLn+1を含む走査線群(Ln+1〜Lx)に属する各走査線5に接続されている各放射線検出素子7から読み出された各画像データDから、上記の補正定数αを減算する。すると、図31に示すように、走査線5の各ラインLn+1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7から読み出された各画像データDが、図中左方向にαだけシフトする。そのため、この場合も輝度の段差が解消される。
【0186】
なお、上記の補正定数αに基づいて、検出ラインLnを含む走査線群(L1〜Ln)と読み出し開始ラインLn+1を含む走査線群(Ln+1〜Lx)のそれぞれを補正する補正定数を算出し、両方の走査線群に係る画像データDをそれぞれ補正して(すなわち上記のように一方の走査線群のみの画像データDではなく両方の走査線群の画像データDをそれぞれ補正して)、輝度の段差を解消するように構成することも可能である。
【0187】
このようにして、例えば上記の補正定数αを用いて、検出ラインLnを含む走査線群(L1〜Ln)と読み出し開始ラインLn+1を含む走査線群(Ln+1〜Lx)の少なくとも一方の走査線群に係る画像データDを補正することで、待機時間を短くすることにより画像データD中に生じている可能性があった輝度の段差を的確になくすことが可能となる。
【0188】
ところで、本発明者らの研究によれば、上記の補正定数αは、種々の条件に応じて変化することが分かっている。
【0189】
例えば、上記のように、電力消費モードがスリープモードから撮影可能モードに切り替えられたり電源がオンされたりして放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、放射線源52から放射線を照射させることが許容されるまでの待機時間WTは、本実施形態では、連携方式の場合と非連携方式の場合とで同じ待機時間WT(図25参照)に設定される。
【0190】
しかし、この待機時間WTは、あくまで放射線源52から放射線を照射させることが許容されるようになるまでの時間であり、放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になってから、放射線技師が実際に放射線を照射させるまでの時間Trealは任意である。
【0191】
つまり、放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になると、本実施形態では、上記のように、コンソール58の表示部58上に放射線の照射を行わないように放射線技師に警告する表示を表示され、待機時間WTが経過すると、警告表示から通常の表示に切り替えられる。
【0192】
しかし、待機時間WTが経過して表示部58a上の表示が通常の表示に切り替えられても、放射線技師がすぐに放射線画像撮影装置1に放射線を照射するとは限らず、例えば、待機時間WTが経過して表示が切り替えられた後、ある程度時間が経ってから放射線が照射される場合もあり得る。この放射線技師が実際に放射線を照射させるまでの時間が、上記の時間Trealである。
【0193】
そして、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されると、上記のように、放射線画像撮影装置1の制御手段22が即座に放射線の照射が開始されたことを検出する。そのため、上記の時間Trealは、結局、放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、当該放射線画像撮影装置1の制御手段22が放射線の照射が開始されたことを検出するまでの時間ということになる。
【0194】
上記の時間Trealは、上記のように任意に変化し得る。そして、例えば上記の時間Trealが待機時間WTと同程度の時間であれば、図26や図27(A)、(B)に示したように、画像データD中に段差が現れる。しかし、上記の時間Trealが長くなり、例えば図29に示した時間WTnc或いはそれより長い時間になると、前述したように、画像データD中に輝度の段差が現れなくなる。
【0195】
このように、画像データD中に現れる輝度の段差の程度、すなわち上記の補正定数αは、少なくとも上記の時間Treal、すなわち、放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、実際に放射線が照射され、当該放射線画像撮影装置1の制御手段22が放射線の照射が開始されたことを検出するまでの時間Trealに依存して変化する。
【0196】
そこで、本実施形態では、画像処理装置58は、上記の補正定数αを、上記の時間Trealごとに補正定数がそれぞれ割り当てられたテーブルとして備えるようになっている。また、補正定数αを、上記の時間Trealの関数として有していてもよい。
【0197】
そして、放射線画像撮影装置1を、電力消費モードがスリープモードから撮影可能モードに切り替えられたり電源がオンされたりして放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になってから制御手段22が放射線の照射が開始されたことを検出するまでの時間Trealを計測するように構成し、画像データD等を画像処理装置58に送信する際に、この時間Trealの情報もあわせて送信するように構成する。
【0198】
そして、画像処理装置58は、上記のテーブルや関数に基づいて、放射線画像撮影装置1から送信されてきた時間Trealから補正定数αを割り出す。そして、割り出した補正定数αに基づいて、上記のようにして画像データDを補正するように構成することが可能である。
【0199】
また、放射線画像撮影装置1によっては、電力消費モードが撮影可能モードに切り替えられる前のスリープモードの継続時間(すなわち撮影可能モードに切り替えられる前にスリープモードがどの程度の期間継続されたか)に依存して、上記の補正定数α、すなわち図26に示した画像データD中の輝度の段差の程度が変化する場合がある。
【0200】
そこで、このような場合には、画像処理装置58は、上記の補正定数αを、上記の時間Trealのほかに、当該放射線画像撮影装置1の電力消費モードが撮影可能モードに切り替えられる前のスリープモードの継続時間Tsleepごとに補正定数がそれぞれ割り当てられたテーブルとして備えるように構成することが可能である。
【0201】
この場合、テーブルは、少なくとも上記の時間Trealと継続時間Tsleepに関する二次元状のテーブルになる。また、この場合も、補正定数αを、上記の時間Trealと継続時間Tsleepの関数として有していてもよい。
【0202】
そして、画像処理装置58は、以上のようにして、画像データDを補正した後、補正された画像データDに基づいて、前述したように、真の画像データD*を算出し、算出した真の画像データD*に対してゲイン補正や欠陥画素補正、放射線画像撮影部位に応じた階調処理等の精密な画像処理を行って、最終的な放射線画像Iを生成するようになっている。
【0203】
なお、上記の画像データDの補正処理では、画像処理装置58が、予め補正定数αをテーブルや関数等の形として有している場合について説明したが、例えば、放射線画像撮影装置1から画像データD等が送信されてくるごとに、上記(2)式や(3)式に従って補正定数αを算出して画像データDを補正するように構成することも可能である。
【0204】
また、上記の本実施形態では、画像処理装置58で画像データDの補正処理を行うように構成する場合について説明したが、この画像データDの補正処理を、放射線画像撮影装置1から画像処理装置58に画像データDを送信する前に、放射線画像撮影装置1の制御手段22が行うように構成することも可能である。
【0205】
この場合、上記のように補正定数αのテーブルや関数を放射線画像撮影装置1の制御手段22が有しておくように構成することも可能であり、或いは、放射線画像撮影装置1の制御手段22が、放射線画像撮影が行われるごとに、上記(2)式や(3)式に従って補正定数αを算出して画像データDを補正するように構成することも可能である。
【0206】
なお、この場合、放射線画像撮影装置1から画像処理装置58に、補正された画像データD等が送信され、画像処理装置58では、補正された画像データD等に対して画像処理を行って、放射線画像Iを生成するように構成される。
【0207】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50では、コンソール58は、放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、放射線源52から放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射させることが許容されるまでの待機時間WTを、放射線画像撮影が連携方式で行われる場合と非連携方式で行われる場合とで、同じ時間として処理する。
【0208】
そのため、連携方式でも非連携方式でも放射線画像撮影を行うことが可能な放射線画像撮影装置1を用いる放射線画像撮影システム50において、放射線画像撮影を連携方式で行う場合と非連携方式で行う場合とで待機時間が同じ時間WTになり、放射線技師が放射線を照射させることが許容されるまでのタイミングが両方式で同じタイミングになる。
【0209】
そのため、待機時間WTの間は放射線が照射できないという制約はあるものの、放射線技師は、放射線画像撮影が連携方式で行われるか非連携方式で行われるかにかかわらず、同じように好きなタイミングで放射線を照射させることが可能となる。特に非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に、連携方式の場合よりも長い時間待つ必要がなくなる。
【0210】
そして、放射線技師が、上記の待機時間WT以外の制約を何ら受けずに自由に好きなタイミングで放射線を照射させることが可能となり、放射線技師にとって、放射線画像撮影装置1や放射線画像撮影システム50が、使い勝手が良いものとなる。
【0211】
また、上記のように構成すると、非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に、読み出される画像データD中に輝度の段差が現れる場合がある。
【0212】
しかし、上記のように、画像処理装置58や放射線画像撮影装置1の制御手段22は、予め算出した補正定数αを用いたり、或いは放射線画像撮影ごとに算出する等して、検出ラインLnを含む走査線群、或いは読み出し開始ラインLn+1を含む走査線群の少なくとも一方に対して、各走査線5に接続されている各放射線検出素子7から読み出された各画像データDを補正することで、画像データD中から輝度の段差を的確に除去することが可能となる。
【0213】
そのため、特に非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に、待機時間WTが短くなり、画像データD中に輝度の段差が生じたとしても、上記のようにして輝度の段差を的確に除去された画像データD等に基づいて、画像処理装置58で放射線画像Iを生成するため、生成される放射線画像Iに輝度の段差が生じることを的確に防止することが可能となる。
【0214】
なお、本実施形態の非連携方式における上記の検出方法1や検出方法2をさらに改良して、より的確に放射線の照射開始を検出するように構成することが可能であり、そのような改良は適宜行われる。
【0215】
また、本実施形態では、画像データDの読み出し処理後にプレビュー画像用のデータを送信する場合について説明したが、そのように構成せず、例えば、その後のオフセットデータOの読み出し処理を終了した時点で、全ての画像データDおよびオフセットデータOを送信するように構成することも可能である。
【0216】
この場合、上記の画質が悪くなっている可能性がある旨を警告表示を行う場合には、生成された放射線画像Iが表示部58a上に表示される際に、あわせて表示されるように構成される。また、このように、放射線画像撮影装置1からコンソール58への画像データD等の送信の仕方は、適宜決められる。
【0217】
さらに、本発明が上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0218】
1 放射線画像撮影装置
5 走査線
6 信号線
7 放射線検出素子
8 TFT(スイッチ手段)
15 走査駆動手段
17 読み出し回路
22 制御手段
39 コネクター(通信手段)
41 アンテナ装置(通信手段)
50 放射線画像撮影システム
52 放射線源
55 放射線発生装置
58 コンソール、画像処理装置
D 画像データ
d 照射開始検出用の画像データ
Dave(n) 検出ラインの各画像データの平均値
Dave(n+1) 読み出し開始ラインの各画像データの平均値
dleak リークデータ
dleak_th 閾値
dth 閾値
I 放射線画像
L1〜Ln 検出ラインを含む走査線群に属する各走査線
Ln 検出ライン
Ln+1 読み出し開始ライン
Ln+1〜Lx 読み出し開始ラインを含む走査線群に属する各走査線
P 検出部
q 電荷
r 小領域
Treal 時間
Tsleep 継続時間
WT 待機時間
α 補正定数、差
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照射されたX線等の放射線の線量に応じて検出素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる直接型の放射線画像撮影装置や、照射された放射線をシンチレーター等で可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換され照射された電磁波のエネルギーに応じてフォトダイオード等の光電変換素子で電荷を発生させて電気信号(すなわち画像データ)に変換するいわゆる間接型の放射線画像撮影装置が種々開発されている。なお、本発明では、直接型の放射線画像撮影装置における検出素子や、間接型の放射線画像撮影装置における光電変換素子を、あわせて放射線検出素子という。
【0003】
このタイプの放射線画像撮影装置はFPD(Flat Panel Detector)として知られており、また、それを用いた放射線画像撮影システムも種々開発されている(例えば特許文献1等参照)。放射線画像撮影装置は、従来は支持台と一体的に形成された、いわゆる専用機型(据え付け型等ともいう。)として構成されていたが(例えば特許文献2参照)、近年、放射線検出素子等を筐体内に収納し、持ち運び可能とした可搬型の放射線画像撮影装置が開発され、実用化されている(例えば特許文献3、4参照)。
【0004】
このような放射線画像撮影装置では、例えば後述する図7等に示すように、通常、複数の放射線検出素子7が、検出部P上に二次元状(マトリクス状)に配列され、各放射線検出素子7にそれぞれ薄膜トランジスター(Thin Film Transistor。以下、TFTという。)8で形成されたスイッチ手段が接続されて構成される。
【0005】
そして、放射線画像撮影では、放射線発生装置の放射線源から放射線画像撮影装置に対して、被写体を介した状態で放射線が照射されて行われる。そして、放射線の照射により放射線検出素子7内に蓄積された電荷が信号線6に順次放出され、画像データに変換されて読み出される。
【0006】
従来の放射線画像撮影装置では、後述するように、放射線画像撮影前に走査線5にオン電圧が順次印加されて各放射線検出素子7のリセット処理が行われる(後述する図13参照)。そして、放射線を照射するために、放射線技師により放射線発生装置55(後述する図11や図12参照)の曝射スイッチ56が操作されると、後述する図14に示すように、放射線発生装置55から放射線画像撮影装置に対して照射開始信号が送信される。
【0007】
そして、放射線画像撮影装置が1面分のリセット処理Rmを終了した時点で電荷蓄積状態に移行するとともに、放射線発生装置55にインターロック解除信号を送信する。そして、放射線発生装置55はこのインターロック解除信号を受信して初めて放射線源52から放射線を照射する。このようにして放射線画像撮影が行われることが多かった。
【0008】
なお、これらの処理の流れについては後で詳しく説明する。また、以下、このように放射線画像撮影装置と放射線発生装置との間で信号のやり取りを行い、放射線発生装置との間で連携を取りながら放射線画像撮影を行う方式を、連携方式という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−294229号公報
【特許文献2】特開平9−73144号公報
【特許文献3】特開2006−058124号公報
【特許文献4】特開平6−342099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、放射線画像撮影装置と放射線発生装置の製造メーカーが異なっているような場合には、両者の間でインターフェースを構築して上記のように互いに信号等をやり取りして連携しながら放射線画像撮影を行うように構成することが必ずしも容易でない場合がある。
【0011】
そのため、このような場合には、放射線画像撮影装置自体で放射線の照射が開始されたことを検出して放射線画像撮影を行うように構成することが必要となる。なお、以下、このように、放射線画像撮影装置と放射線発生装置との間で連携をとれない(或いはとらない)状態で放射線画像撮影を行う方式を、非連携方式という。
【0012】
そして、本発明者らが研究を重ねた結果、放射線画像撮影装置自体で放射線の照射が開始されたことを的確に検出できるいくつかの新たな検出方法を開発することができた。そして、このような新たな検出方法を用いれば、放射線発生装置側との間で信号等のやり取りを行うことができない非連携方式においても、的確に放射線画像撮影を行うことが可能となることが分かっている。
【0013】
一方、例えば、放射線画像撮影装置における消費電力を低減させるために、走査駆動手段15や各読み出し回路17(後述する図7参照)に電力を供給したりバイアス電源14から各放射線検出素子7に逆バイアス電圧を印加する等して放射線画像撮影を行うことができる状態である撮影可能モードと、それらの電力の供給を停止し、アンテナ装置41等の必要な機能部にのみ電力を供給し、放射線画像撮影を行うことができないスリープ(sleep)モードとの間で、放射線画像撮影装置の電力消費モードを切り替えることができるように構成されている場合がある。
【0014】
このような場合、放射線画像撮影装置の電力消費モードをスリープモードから撮影可能モードに切り替えてからすぐに放射線画像撮影を行うと、後述するように、読み出される画像データに比較的大きなノイズが重畳される場合があり、このような画像データに基づいて生成される放射線画像が、画質が悪いものになってしまう場合がある。
【0015】
そこで、通常、スリープモードから撮影可能モードに切り替えた後、放射線画像撮影装置を所定時間待機させた後で初めて、放射線源52から放射線画像撮影装置に対して放射線を照射させることが許容されるように構成される(例えば上記の特許文献1等参照)。また、このような現象は、上記のような電力消費モードの切り替え時だけでなく、例えば放射線画像撮影装置の電源がオンされた後にも生じ得る。
【0016】
なお、このように放射線画像撮影装置の電力消費モードがスリープモードから撮影可能モードに切り替えられたり、或いは放射線画像撮影装置の電源がオンされる等して、放射線画像撮影装置が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、実際に放射線源52から放射線画像撮影装置に対して放射線を照射させることが許容されるまでの経過時間を、以下、待機時間という。
【0017】
この待機時間は、通常、上記のように、読み出される画像データに重畳されるノイズの大きさが許容範囲内に収まるようになるまでの時間等として設定されるが、この観点から見た場合、本発明者らの研究では、放射線画像撮影を上記の非連携方式で行う場合には、放射線画像撮影を連携方式で行う場合よりも、待機時間を長く設定する方がよいことが分かってきた。
【0018】
しかし、放射線画像撮影が連携方式で行われるか非連携方式で行われるかに関わらず、同じように好きなタイミングで放射線を照射させたいと思っている放射線技師も少なくない。そのような場合に、上記のように、放射線画像撮影を非連携方式で行う場合の待機時間を、連携方式で行う場合の待機時間よりも長い時間として設定すると、特に非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に、放射線技師は好きなタイミングで放射線を照射させることができなくなり、放射線画像撮影装置や放射線画像撮影システムが、使い勝手が悪いものと感じられてしまう。
【0019】
そのため、特に非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に設定される待機時間は、上記のように長い時間として設定され易いが、この非連携方式における待機時間をできるだけ短い時間とすることが望まれる。
【0020】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、放射線画像撮影装置を用いて連携方式でも非連携方式でも放射線画像撮影を行うことができるように構成する場合に、放射線にとって使い勝手の良い放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【0021】
しかし、一方で、本発明者らの研究では、上記のように、非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に設定される待機時間をより短い時間に設定した場合、読み出される画像データや、それに基づいて生成される放射線画像中に輝度の段差が現れる場合があることが分かってきた。
【0022】
そこで、本発明は、放射線画像撮影装置を用いて連携方式でも非連携方式でも放射線画像撮影を行うことができるように構成する場合、特に非連携方式で撮影を行う場合に画像データ中に輝度の段差が生じたとしても、生成される放射線画像に輝度の段差が生じることを的確に防止することが可能な放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記の問題を解決するために、本発明の放射線画像撮影システムは、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子を備える検出部と、
前記各走査線に対して印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替える走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置との間で信号の送受信を行い、前記画像データを送信するための通信手段と、
を備える放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置に放射線を照射する放射線源を備える放射線発生装置と、
少なくとも前記放射線画像撮影装置を制御して放射線画像撮影を行わせるコンソールと、
前記放射線画像撮影装置から送信された前記画像データに基づいて放射線画像を生成する画像処理装置と、
を備え、
前記放射線画像撮影装置は、撮影方式を、前記放射線発生装置との間で連携を取りながら放射線画像撮影を行う連携方式と、前記放射線発生装置との間で連携をとらずに放射線画像撮影を行う非連携方式との間で切り替え可能とされており、
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、前記非連携方式で放射線画像撮影を行う場合には、放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段から前記各走査線にオフ電圧を印加して前記各スイッチ手段をオフ状態とした状態で前記各スイッチ手段を介して前記各放射線検出素子からリークした前記電荷をリークデータに変換するリークデータの読み出し処理を行わせ、読み出した前記リークデータが閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出し、
前記コンソールは、前記放射線画像撮影装置が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、前記放射線源から放射線を照射させることが許容されるまでの待機時間を、前記連携方式の場合と前記非連携方式の場合とで同じ時間として処理し、
前記画像処理装置は、前記待機時間が前記連携方式の場合と前記非連携方式の場合とで同じ時間されることに伴って前記非連携方式で放射線画像撮影が行われる場合に前記画像データ中に生じる輝度の段差を補正することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の放射線画像撮影システムは、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子を備える検出部と、
前記各走査線に対して印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替える走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置との間で信号の送受信を行い、前記画像データを送信するための通信手段と、
を備える放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置に放射線を照射する放射線源を備える放射線発生装置と、
少なくとも前記放射線画像撮影装置を制御して放射線画像撮影を行わせるコンソールと、
前記放射線画像撮影装置から送信された前記画像データに基づいて放射線画像を生成する画像処理装置と、
を備え、
前記放射線画像撮影装置は、撮影方式を、前記放射線発生装置との間で連携を取りながら放射線画像撮影を行う連携方式と、前記放射線発生装置との間で連携をとらずに放射線画像撮影を行う非連携方式との間で切り替え可能とされており、
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、前記非連携方式で放射線画像撮影を行う場合には、放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して照射開始検出用の画像データの読み出し処理を行わせ、読み出した前記照射開始検出用の画像データが閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出し、
前記コンソールは、前記放射線画像撮影装置が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、前記放射線源から放射線を照射させることが許容されるまでの待機時間を、前記連携方式の場合と前記非連携方式の場合とで同じ時間として処理し、
前記画像処理装置は、前記待機時間が前記連携方式の場合と前記非連携方式の場合とで同じ時間されることに伴って前記非連携方式で放射線画像撮影が行われる場合に前記画像データ中に生じる輝度の段差を補正することを特徴とする。
【0025】
また、本発明の放射線画像撮影装置は、前記制御手段が、前記検出部上の前記各走査線を、前記検出ラインと前記読み出し開始ラインとを境界として二分した場合、前記検出ラインを含む走査線群に属する前記各走査線、または前記読み出し開始ラインを含む走査線群に属する前記各走査線の少なくとも一方に対して、前記各走査線に接続されている前記各放射線検出素子から読み出された前記各画像データを補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明のような方式の放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置によれば、連携方式でも非連携方式でも放射線画像撮影を行うことが可能な放射線画像撮影装置を用いる放射線画像撮影システムにおいて、放射線画像撮影を連携方式で行う場合と非連携方式で行う場合とで待機時間が同じ時間になり、放射線技師が放射線を照射させることが許容されるまでのタイミングが両方式で同じタイミングになる。
【0027】
そのため、放射線技師は、放射線画像撮影が連携方式で行われるか非連携方式で行われるかにかかわらず、同じように好きなタイミングで放射線を照射させることが可能となる。特に非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に、連携方式の場合よりも長い時間待つ必要がなくなる。そして、放射線技師が、上記の待機時間以外の制約を何ら受けずに自由に好きなタイミングで放射線を照射させることが可能となり、放射線技師にとって、放射線画像撮影装置や放射線画像撮影システムが、使い勝手が良いものとなる。
【0028】
また、上記のように構成すると、非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に、読み出される画像データ中に輝度の段差が現れる場合があるが、検出ラインを含む走査線群、或いは読み出し開始ラインを含む走査線群の少なくとも一方に対して、各走査線に接続されている各放射線検出素子から読み出された各画像データを補正することで、画像データ中から輝度の段差を的確に除去することが可能となる。
【0029】
そのため、特に非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に、待機時間が短くなり、画像データ中に輝度の段差が生じたとしても、上記のようにして輝度の段差を的確に除去された画像データ等に基づいて放射線画像を生成することで、生成される放射線画像に輝度の段差が生じることを的確に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1におけるX−X線に沿う断面図である。
【図3】放射線画像撮影装置のコネクターにケーブルのコネクターを接続した状態を表す斜視図である。
【図4】放射線画像撮影装置の基板の構成を示す平面図である。
【図5】図4の基板上の小領域に形成された放射線検出素子とTFT等の構成を示す拡大図である。
【図6】フレキシブル回路基板やPCB基板等が取り付けられた基板を説明する側面図である。
【図7】放射線画像撮影装置の等価回路を表すブロック図である。
【図8】検出部を構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【図9】各放射線検出素子のリセット処理における電荷リセット用スイッチやTFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図10】画像データの読み出し処理における電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図11】放射線画像撮影室等に構築された本実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成例を示す図である。
【図12】回診車上に構築された本実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成例を示す図である。
【図13】放射線画像撮影装置で行われる各放射線検出素子のリセット処理におけるタイミングチャートである。
【図14】連携方式における照射開始信号の送信、リセット処理の終了および電荷蓄積状態への移行、インターロック解除信号の送信、および放射線の照射のタイミングを表すタイミングチャートである。
【図15】連携方式における各走査線にオン電圧を順次印加するタイミングを表すタイミングチャートである。
【図16】検出方法1においてTFTを介して各放射線検出素子からリークした各電荷がリークデータとして読み出されることを説明する図である。
【図17】リークデータの読み出し処理における電荷リセット用スイッチやTFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図18】放射線画像撮影前にリークデータの読み出し処理と各放射線検出素子のリセット処理を交互に行うように構成した場合の電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図19】検出方法1において各走査線にオン電圧を印加するタイミング等を説明するタイミングチャートである。
【図20】読み出されるリークデータの時間的推移の例を表すグラフである。
【図21】検出方法2において放射線画像撮影前に画像データの読み出し処理が繰り返し行われる際の各走査線にオン電圧を順次印加するタイミングを表すタイミングチャートである。
【図22】放射線画像撮影前に画像データの読み出し処理における電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングおよびオン時間ΔTを表すタイミングチャートである。
【図23】検出方法2において各走査線にオン電圧を印加するタイミング等を説明するタイミングチャートである。
【図24】検出部が4つの領域に分割され、各領域に読み出しICがそれぞれ割り当てられた状態を表す図である。
【図25】電力消費モードがスリープモードから撮影可能モードに切り替えられた時点や電源がオンされた時点からの経過時間tと各放射線検出素子内で発生する単位時間当たりの電荷量dQとの関係等を表すグラフである。
【図26】非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に画像データDや放射線画像I中に生じる輝度の段差を説明する図である。
【図27】(A)は検出ライン、(B)は検出ラインおよび読み出し開始ラインに接続された各放射線検出素子内で蓄積される電荷等を表すグラフである。
【図28】連携方式の場合には画像データDや放射線画像I中に輝度の段差が現れないことを説明する図である。
【図29】連携方式における待機時間よりも長い時間に設定される場合の非連携方式における待機時間を表すグラフである。
【図30】図26に示した各画像データの走査線ごとの平均値のプロファイルを表す図およびグラフであり、画像データ中に現れる輝度の段差を表す図およびグラフである。
【図31】検出ラインを含む走査線群の画像データが右方向に或いは読み出し開始ラインを含む走査線群の画像データが左方向にそれぞれαだけシフトして輝度の段差が解消されることを説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0032】
なお、以下では、放射線画像撮影装置として、シンチレーター等を備え、放射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置について説明するが、本発明は、シンチレーター等を介さずに放射線を放射線検出素子で直接検出する、いわゆる直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することができる。
【0033】
また、本発明は、本実施形態で説明する、いわゆる可搬型の放射線画像撮影装置のみならず、例えば支持台等と一体的に形成された専用機型の放射線画像撮影装置に対しても適用することが可能である。
【0034】
[放射線画像撮影装置]
図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図であり、図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体2内にシンチレーター3や基板4等で構成されるセンサーパネルSPが収納されている。
【0035】
本実施形態では、筐体2のうち、放射線入射面Rを有する中空の角筒状の筐体本体部2Aは、放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されており、筐体本体部2Aの両側の開口部を蓋部材2B、2Cで閉塞することで筐体2が形成されている。また、筐体2の一方側の蓋部材2Bには、電源スイッチ37や切替スイッチ38、コネクター39、バッテリー状態や放射線画像撮影装置1の稼働状態等を表示するLED等で構成されたインジケーター40等が配置されている。
【0036】
本実施形態では、コネクター39は、例えば図3に示すように、ケーブルCaの先端に設けられたコネクターCが接続されることにより、例えば外部のコンソール58(後述する図11や図12参照)等の装置との間でケーブルCaを介して信号等を送受信したり画像データD等を送信したりする際の有線方式の通信手段として機能するようになっている。
【0037】
また、図示を省略するが、例えば筐体2の反対側の蓋部材2C等に、アンテナ装置41(後述する図7参照)が例えば蓋部材2Cに埋め込む等して設けられており、本実施形態では、このアンテナ装置41が、放射線画像撮影装置1とコンソール58等との間で信号等の無線方式で送受信する場合の通信手段として機能するようになっている。
【0038】
図2に示すように、筐体2の内部には、基板4の下方側に図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33やバッテリー24等が取り付けられている。また、基板4やシンチレーター3の放射線入射面Rには、それらを保護するためのガラス基板34が配設されている。また、本実施形態では、センサーパネルSPと筐体2の側面との間に緩衝材35が設けられている。
【0039】
シンチレーター3は、基板4の後述する検出部Pに対向する位置に設けられるようになっている。本実施形態では、シンチレーター3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
【0040】
また、本実施形態では、基板4は、ガラス基板で構成されており、図4に示すように、基板4のシンチレーター3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。また、基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
【0041】
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた小領域rの全体、すなわち図4に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
【0042】
放射線検出素子7は、放射線画像撮影装置1の筐体2の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレーター3で放射線から変換された可視光等の電磁波が照射されると、その内部で電子正孔対を発生させる。放射線検出素子7は、このようにして、照射された放射線(本実施形態ではシンチレーター3で放射線から変換された電磁波)を電荷に変換するようになっている。
【0043】
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスター等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図4の拡大図である図5に示すように、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
【0044】
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15から走査線5を介してゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、ソース電極8sやドレイン電極8dを介して放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。また、TFT8は、接続された走査線5を介してゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内に電荷を蓄積させるようになっている。
【0045】
本実施形態では、図5に示すように、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、図4に示すように、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
【0046】
図4に示すように、本実施形態では、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう。)11に接続されている。各入出力端子11には、図6に示すように、後述する読み出しIC16や走査駆動手段15のゲートドライバー15bを構成するゲートIC15c等のチップがフィルム上に組み込まれたフレキシブル回路基板(Chip On Film等ともいう。)12が、異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
【0047】
そして、フレキシブル回路基板12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1のセンサーパネルSPが形成されている。なお、図6では、電子部品32等の図示が省略されている。
【0048】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、図8は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【0049】
前述したように、基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極7bにそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極7bにそれぞれ逆バイアス電圧(すなわち放射線検出素子7の第1電極7a側にかかる電圧以下の電圧)を印加するようになっている。
【0050】
走査駆動手段15は、配線15dを介してゲートドライバー15bにオン電圧とオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替えて各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えるゲートドライバー15bとを備えている。本実施形態では、ゲートドライバー15bは、複数の前述したゲートIC15c(図6参照)が並設されて構成されている。
【0051】
図7や図8に示すように、各信号線6は、読み出しIC16内に内蔵された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。読み出し回路17は、増幅回路18と相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサー21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、図7や図8中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図8中では、アナログマルチプレクサー21は省略されている。
【0052】
本実施形態では、増幅回路18は、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサー18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続され、オペアンプ18a等に電力を供給する電源供給部18dを備えたチャージアンプ回路で構成されている。また、増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位V0が印加されるようになっている。
【0053】
また、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。また、オペアンプ18aと相関二重サンプリング回路19との間には、電荷リセット用スイッチ18cと連動して開閉するスイッチ18eが設けられており、スイッチ18eは、電荷リセット用スイッチ18cがオン/オフ動作と連動してオフ/オン動作するようになっている。
【0054】
放射線画像撮影装置1で、各放射線検出素子7内に残存する電荷を除去するための各放射線検出素子7のリセット処理を行う際には、図9に示すように、電荷リセット用スイッチ18cがオン状態(およびスイッチ18eがオフ状態)とされた状態で、各TFT8がオン状態とされる。
【0055】
そして、オン状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7から電荷が信号線6に放出され、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cを通過して、オペアンプ18aの出力端子側からオペアンプ18a内を通り、非反転入力端子から出てアースされたり、電源供給部18dに流れ出す。このようにして、各放射線検出素子7のリセット処理が行われるようになっている。
【0056】
一方、各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理の際には、図10に示すように、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cがオフ状態(およびスイッチ18eがオン状態)とされた状態で、オン状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7から電荷が信号線6に放出されると、電荷が増幅回路18のコンデンサー18bに蓄積される。
【0057】
増幅回路18では、コンデンサー18bに蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力されるようになっており、増幅回路18により、各放射線検出素子7から流出した電荷が電荷電圧変換されるようになっている。
【0058】
そして、増幅回路18の出力側に設けられた相関二重サンプリング回路(CDS)19は、各放射線検出素子7から電荷が流出する前に制御手段22からパルス信号Sp1(図10参照)が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持し、上記のように各放射線検出素子7から流出した電荷が増幅回路18のコンデンサー18bに蓄積された後で、制御手段22からパルス信号Sp2が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持する。
【0059】
そして、相関二重サンプリング回路19は、それらの電圧値の差分Vfi−Vinを算出し、算出した差分Vfi−Vinをアナログ値の画像データDとして下流側に出力するようになっている。そして、相関二重サンプリング回路19から出力された各放射線検出素子7の画像データDは、アナログマルチプレクサー21を介して順次A/D変換器20に送信され、A/D変換器20で順次デジタル値の画像データDに変換されて記憶手段23に出力されて順次保存されるようになっている。
【0060】
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピューターや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、図7等に示すように、制御手段22には、SRAM(Static RAM)やSDRAM(Synchronous DRAM)等で構成される記憶手段23が接続されている。
【0061】
また、本実施形態では、制御手段22には、前述したアンテナ装置41が接続されており、さらに、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記憶手段23、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリー24が接続されている。また、バッテリー24には、図示しない充電装置からバッテリー24に電力を供給してバッテリー24を充電する際の接続端子25が取り付けられている。
【0062】
前述したように、制御手段22は、走査駆動手段15や読み出し回路17等を制御して画像データDの読み出し処理や各放射線検出素子7のリセット処理等を行わせるなど、放射線画像撮影装置1の各機能部の動作を制御するようになっている。
【0063】
また、本実施形態では、前述したように、放射線画像撮影装置1は、消費電力を低減させるために、走査駆動手段15や各読み出し回路17に電力を供給したりバイアス電源14から各放射線検出素子7に逆バイアス電圧を印加する等して放射線画像撮影を行うことが可能な撮影可能モードと、それらの電力の供給を停止し、アンテナ装置41等の必要な機能部にのみ電力を供給するスリープモードとの間で、電力消費モードを切り替えることができるように構成されている。なお、スリープモードでは、放射線画像撮影を行うことができない。
【0064】
この電力消費モードの切り替えは、本実施形態では、コンソール58から放射線画像撮影装置1に対してスリープモードから撮影可能モードに切り替えるための覚醒(wake up)信号等を送信したり、放射線技師が切替スイッチ38(図1参照)を操作することにより行うことができるようになっている。
【0065】
なお、制御手段22は、切替スイッチ38が操作されて電力消費モードがスリープモードから撮影可能モードに切り替えられた場合には、コンソール58に対して撮影可能モードに切り替えられたことを表す信号を送信するようになっている。また、制御手段22は、放射線技師により電源スイッチ37が操作されて電源がオンされた際、および電源がオフされる際には電源がオフになる前に、コンソール58に対して電源がオン或いはオフされたことを表す信号を送信するようになっている。
【0066】
また、本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、非連携方式で放射線画像撮影を行う場合には、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射開始を検出するようになっているが、そのための制御構成等については、本実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成等を説明した後で説明する。
【0067】
[放射線画像撮影システム]
次に、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50について説明する。図11は、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50の構成例を示す図である。図11では、放射線画像撮影システム50が放射線画像撮影室R1内等に構築されている場合が示されている。
【0068】
放射線画像撮影室R1には、ブッキー装置51が設置されており、ブッキー装置51は、そのカセッテ保持部(カセッテホルダともいう。)51aに上記の放射線画像撮影装置1を装填して用いることができるようになっている。なお、図11では、ブッキー装置51として、立位放射線画像撮影用のブッキー装置51Aと臥位放射線画像撮影用のブッキー装置51Bが設置されている場合が示されているが、例えば一方のブッキー装置51のみが設けられていてもよい。
【0069】
図11に示すように、放射線画像撮影室R1には、被写体を介してブッキー装置51に装填された放射線画像撮影装置1に放射線を照射する放射線源52Aが少なくとも1つ設けられている。本実施形態では、放射線源52Aの位置を移動させたり、放射線の照射方向を変えることで、立位放射線画像撮影用のブッキー装置51Aと臥位放射線画像撮影用のブッキー装置51Bのいずれにも放射線を照射することができるようになっている。
【0070】
放射線画像撮影室R1には、放射線画像撮影室R1内の各装置等や放射線画像撮影室R1外の各装置等の間の通信等を中継するための中継器(基地局等ともいう。)54が設けられている。なお、本実施形態では、中継器54には、放射線画像撮影装置1が無線方式で画像データDや信号等の送受信を行うことができるように、無線アンテナ(アクセスポイントともいう。)53が設けられている。
【0071】
また、中継器54は、放射線発生装置55やコンソール58と接続されており、中継器54には、放射線画像撮影装置1やコンソール58等から放射線発生装置55に送信するLAN(Local Area Network)通信用の信号等を放射線発生装置55用の信号等に変換し、また、その逆の変換も行う図示しない変換器が内蔵されている。
【0072】
前室(操作室等ともいう。)R2には、本実施形態では、放射線発生装置55の操作卓57が設けられており、操作卓57には、放射線技師等の操作者が操作して放射線発生装置55に対して放射線の照射開始等を指示するための曝射スイッチ56が設けられている。
【0073】
放射線発生装置55は、放射線源52を所定の位置に移動させたり、その放射方向を調整したり、放射線画像撮影装置1の所定の領域内に放射線が照射されるように図示しない絞りやコリメーター等を調整したり、或いは、適切な線量の放射線が照射されるように放射線源52を調整する等の種々の制御を行うようになっている。
【0074】
図11に示すように、本実施形態では、コンピューター等で構成されたコンソール58が前室R2に設けられている。なお、コンソール58を放射線画像撮影室R1や前室R2の外側や別室等に設けるように構成することも可能であり、適宜の場所に設置される。コンソール58は、少なくとも上記の放射線画像撮影装置1を制御して、放射線画像撮影システム50における放射線画像撮影を行わせるようになっている。
【0075】
また、コンソール58には、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等を備えて構成される表示部58aが設けられており、また、図示しないマウスやキーボード等の入力手段を備えている。また、コンソール58には、HDD(Hard Disk Drive)等で構成された記憶手段59が接続され、或いは内蔵されている。
【0076】
一方、放射線画像撮影装置1は、図12に示すように、ブッキー装置51には装填されずに、いわば単独の状態で用いることもできるようになっている。例えば、患者Hが病室R3のベッドBから起き上がれず、放射線画像撮影室R1に行くことができないような場合には、図12に示すように、放射線画像撮影装置1を病室R3内に持ち込み、ベッドBと患者の身体との間に差し込んだり患者の身体にあてがったりして用いることができる。
【0077】
また、放射線画像撮影装置1を病室R3等で用いる場合、前述した放射線画像撮影室R1に据え付けられた放射線発生装置55に代えて、図12に示すように、いわゆるポータブルの放射線発生装置55が例えば回診車71に搭載される等して病室R3に持ち込まれる。この場合、ポータブルの放射線発生装置55の放射線52Pは、任意の方向に放射線を照射できるように構成されており、ベッドBと患者の身体との間に差し込まれたり患者の身体にあてがわれたりした放射線画像撮影装置1に対して、適切な距離や方向から放射線を照射することができるようになっている。
【0078】
また、この場合、無線アンテナ53が設けられた中継器54が放射線発生装置55内に内蔵されており、上記と同様に、中継器54が放射線発生装置55とコンソール58との間の通信や、放射線画像撮影装置1とコンソール58との間の通信や画像データDの送信等を中継するようになっている。
【0079】
なお、図11に示したように、放射線画像撮影装置1を、放射線画像撮影室R1の臥位放射線画像撮影用のブッキー装置51B上に横臥した患者の身体と臥位放射線画像撮影用のブッキー装置51Bとの間に差し込んだり、臥位放射線画像撮影用のブッキー装置51B上で患者の身体にあてがったりして用いることも可能であり、その場合は、ポータブルの放射線52Pや、放射線画像撮影室R1に据え付けられた放射線源52Aのいずれを用いることも可能である。
【0080】
コンソール58は、放射線画像撮影装置1と無線方式や有線方式で通信できるように構成されており、前述したように、放射線画像撮影装置1に覚醒信号を送信して、放射線画像撮影装置1の電力消費モードをスリープモードから撮影可能モードに切り替えることができるように構成されている。また、コンソール58から放射線画像撮影装置1にスリープ信号を送信して、放射線画像撮影装置1の電力消費モードを撮影可能モードからスリープモードに切り替えることができるように構成することも可能である。
【0081】
そして、コンソール58は、例えば管理する対象となる放射線画像撮影装置1が1機の場合は勿論、複数存在する場合でも、それらの電力消費モードの情報(すなわち撮影可能モードであるかスリープモードであるか)や電源のオン/オフの情報を記憶手段59(図11参照。図12では図示が省略されているがコンソール58に接続されている。)に保存する等して、それらの状態を管理するようになっている。
【0082】
また、本実施形態では、コンソール58は、後述するように、放射線画像撮影装置1からプレビュー画像用のデータが送信されてくると、それに基づいてプレビュー画像I_preを生成して、表示部58a上に表示させるようになっている。
【0083】
また、本実施形態では、コンソール58は、画像処理装置としても機能するようになっている。そして、後述するように、放射線画像撮影装置1から画像データD等が送信されてくると、画像処理装置としてのコンソール58は、画像データD等に基づいて放射線画像Iを生成するようになっているが、この点については後で説明する。なお、画像処理装置をコンソール58とは別体の装置として設けるように構成することも可能である。
【0084】
[各方式で放射線画像撮影を行う場合の処理について]
次に、上記の放射線画像撮影装置1を用い、連携方式で放射線画像撮影を行う場合の処理と、非連携方式で放射線画像撮影を行う場合の処理についてそれぞれ説明する。
【0085】
[連携方式で放射線画像撮影を行う場合の処理]
本実施形態では、放射線画像撮影が連携方式で行われる場合、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、通常、まず、各放射線検出素子7のリセット処理を行うようになっている。各放射線検出素子7のリセット処理では、例えば図13に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバー15b(図7参照)から走査線5の各ラインL1〜Lxに対してオン電圧をそれぞれ印加し、各TFT8のゲート電極8gにオン電圧を印加してTFT8をオン状態として、各放射線検出素子7内に残存する電荷を各放射線検出素子7から各信号線6に放出させて除去する。
【0086】
そして、図13に示すように、オン電圧を印加する走査線5を順次切り替えて、走査線5の各ラインL1〜Lxに順次オン電圧を印加して、各放射線検出素子7のリセット処理を繰り返す。制御手段22は、このようにして、走査線5の最初のラインL1から最終ラインLxまで順次オン電圧を印加して行う検出部Pの1面分のリセット処理Rmを繰り返して行うように構成される。
【0087】
そして、図14に示すように、1面分のリセット処理Rmの最中に、前述したように放射線発生装置55側で曝射スイッチ56が操作されて、放射線発生装置55から放射線画像撮影装置1に照射開始信号が送信されてくると、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、照射開始信号が送信されてきた時点で行っている1面分のリセット処理Rmが完了した時点で、各放射線検出素子7のリセット処理を終了する。
【0088】
そして、走査駆動手段15から走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加させて全TFT8をオフ状態として、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生する電荷を各放射線検出素子7内に蓄積させる電荷蓄積状態に移行させる。
【0089】
また、制御手段22は、上記のように1面分のリセット処理Rmが完了した時点で、放射線発生装置55に対してインターロック解除信号を送信する。放射線発生装置55は、中継器54を介して放射線画像撮影装置1からインターロック解除信号を受信すると、放射線源52から放射線を照射させる。
【0090】
放射線画像撮影装置1の制御手段22は、インターロック解除信号を送信した後、放射線発生装置55から放射線の照射を終了したことを表す終了信号が送信されてくると、或いは電荷蓄積状態に移行してから所定の時間が経過した時点で、図15に示すように、走査線5の最初のラインL1から順に、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、各放射線検出素子7から画像データDをそれぞれ読み出すように構成される。
【0091】
なお、図15中の斜線は、その期間に放射線が照射されたことを表す。また、放射線画像撮影装置1で、照射された放射線の線量を測定できるように構成し、所定の線量の放射線が照射された時点で放射線画像撮影装置1から放射線発生装置55に放射線の照射を終了する信号を送信するように構成することも可能である。
【0092】
[非連携方式で放射線画像撮影を行う場合の処理]
次に、放射線画像撮影が連携方式で行われる場合の放射線画像撮影装置1における処理について説明する。
【0093】
前述したように、非連携方式の場合、放射線画像撮影装置1と放射線発生装置55との間で信号等のやり取りが行われないため、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射が開始されたことを検出して放射線画像撮影を行うことが必要となる。以下、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1で行われる放射線の照射開始の検出の仕方について説明する。
【0094】
なお、本実施形態に係る検出方法は、前述したように、本発明者らの研究により新たに見出された検出方法である。本発明者らの研究により新たに見出された検出方法としては、例えば、下記の2つの検出方法のいずれかを採用することが可能である。
【0095】
[検出方法1]
例えば、放射線画像撮影において放射線画像撮影装置1に放射線が照射される前に、リークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うように構成することが可能である。ここで、リークデータdleakとは、図16に示すように、各走査線5にオフ電圧を印加した状態で、オフ状態になっている各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qの信号線6ごとの合計値に相当するデータである。
【0096】
そして、リークデータdleakの読み出し処理では、図9に示した各放射線検出素子7のリセット処理や図10に示した画像データDの読み出し処理の場合と異なり、図17に示すように、走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加して各TFT8をオフ状態とした状態で、制御手段22から各読み出し回路17の相関二重サンプリング回路19(図7や図8のCDS参照)にパルス信号Sp1、Sp2を送信するようになっている。
【0097】
相関二重サンプリング回路19は、制御手段22からパルス信号Sp1が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持する。そして、増幅回路18のコンデンサー18bに各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qが蓄積されて増幅回路18から出力される電圧値が上昇し、制御手段22からパルス信号Sp2が送信されると、相関二重サンプリング回路19は、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持する。
【0098】
そして、相関二重サンプリング回路19が電圧値の差分Vfi−Vinを算出して出力した値が、リークデータdleakとなる。リークデータdleakが、その後、A/D変換器20でデジタル値に変換されることは、前述した画像データDの読み出し処理の場合と同様である。
【0099】
ところで、リークデータdleakの読み出し処理のみを繰り返し行うように構成すると、各TFT8がオフ状態のままとなってしまい、各放射線検出素子7内で発生した暗電荷が各放射線検出素子7内に蓄積され続ける状態になってしまう。
【0100】
そのため、上記のように、放射線画像撮影前に、リークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うように構成する場合には、図18に示すように、各走査線5にオフ電圧を印加した状態で行うリークデータdleakの読み出し処理と、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して行う各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に繰り返し行うように構成することが望ましい。なお、図18や後述する図19等のTやτ、Tacについては後で説明する。
【0101】
このように放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理と各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に繰り返して行うように構成した場合、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、シンチレーター3(図2参照)で放射線から変換された電磁波が、各TFT8に照射される。そして、それにより、各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷q(図18参照)がそれぞれ増加することが本発明者らの研究で分かっている。
【0102】
そして、例えば図19に示すように、放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理と各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に繰り返して行う場合、図20に示すように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始された時点で読み出されたリークデータdleakが、それ以前に読み出されたリークデータdleakよりも格段に大きな値になる。
【0103】
なお、図19および図20では、図19で走査線5のラインL4にオン電圧が印加されてリセット処理が行われた後の4回目の読み出し処理で読み出されたリークデータdleakが、図20の時刻t1におけるリークデータdleakに対応する。また、図19において「R」は各放射線検出素子7のリセット処理を表し、「L」はリークデータdleakの読み出し処理を表す。
【0104】
そこで、放射線画像撮影装置1の制御手段22で、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理で読み出されたリークデータdleakを監視するように構成し、読み出されたリークデータdleakが、例えば予め設定された所定の閾値dleak_th(図20参照)を越えた時点で、放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することができる。なお、以下、上記の走査線5のラインL4のように、放射線の照射が開始された際、或いはその直前にオン電圧が印加された走査線5を、以下、検出ラインという。
【0105】
[検出方法2]
また、上記の検出方法1のように、放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理を行うように構成する代わりに、放射線画像撮影前に、図21に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、各放射線検出素子7からの画像データdの読み出し処理を繰り返し行うように構成することも可能である。
【0106】
なお、前述したように、放射線画像撮影直後に行われる上記の本画像としての画像データDと区別して、以下、この放射線画像撮影前に放射線の照射開始の検出用に読み出される画像データを、照射開始検出用の画像データdという。
【0107】
また、照射開始検出用の画像データdの読み出し処理における読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフや、相関二重サンプリング回路19へのパルス信号Sp1、Sp2の送信等は、図22に示すように、図10に示した画像データDの読み出し処理における処理と同様に行われる。なお、図22等におけるTやΔTについては後で説明する。
【0108】
上記のように放射線画像撮影前に照射開始検出用の画像データdの読み出し処理を行うように構成した場合、図23に示すように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、その時点で読み出された照射開始検出用の画像データd(図23では走査線5のラインLnにオン電圧が印加されて読み出された照射開始検出用の画像データd)が、前述した図20に示したリークデータdleakの場合と同様に、それ以前に読み出された照射開始検出用の画像データdよりも格段に大きな値になる。
【0109】
そこで、放射線画像撮影装置1の制御手段22で、放射線画像撮影前の読み出し処理で読み出された照射開始検出用の画像データdを監視するように構成し、読み出された照射開始検出用の画像データdが予め設定された所定の閾値dthを越えた時点で、放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することができる。
【0110】
なお、図23中のΔTやτ、Tacについては以下で説明する。また、図23の場合、検出ラインは走査線5のラインLnである。
【0111】
[検出感度を向上させるための処理について]
また、上記の検出方法1において、放射線画像撮影前の各放射線検出素子7のリセット処理で、ある走査線5に対するオン電圧の印加を開始してから次の走査線5に対するオン電圧の印加を開始するまでの周期τ(図18や図19等参照)を長くして、リークデータdleakの読み出し処理において制御手段22から送信する2回のパルス信号Sp1、Sp2の送信間隔Tを長くすると、1回のリークデータdleakの読み出し処理で読み出されるリークデータdleakの値が大きくなる。
【0112】
また、上記の検出方法2において、放射線画像撮影前の照射開始検出用の画像データdの読み出し処理において、各TFT8をオン状態とする時間ΔT(図22や図23参照)、すなわち走査駆動手段15のゲートドライバー15bから走査線5にオン電圧を印加してからオフ電圧に切り替えるまでの時間ΔT(以下、オン時間ΔTという。)を長くすると、1回の読み出し処理で読み出される照射開始検出用の画像データdの値が大きくなる。
【0113】
そのため、上記のように構成することで、放射線画像撮影装置1における放射線の照射開始の検出感度を向上させることが可能となる。
【0114】
また、図24に示すように、例えば、検出部P(図4や図7等参照)が4つの領域Pa〜Pdに分割されるなど、検出部Pが複数の領域に分割されるように構成される場合がある。このような場合、検出部Pの各領域Pa〜Pdごとに、上記の検出方法1や検出方法2を用いて放射線の照射開始を検出するように構成することが可能である。
【0115】
そして、このように構成すれば、例えば、放射線が放射線画像撮影装置1に対して照射野が狭められて照射され、検出部Pの複数の領域Pa〜Pdのうち1つ或いはいくつかの領域のみに放射線が照射される状態になる場合があるが、そのような場合でも、放射線の照射開始を的確に検出することが可能となる。
【0116】
[電荷蓄積状態への移行と画像データDの読み出し処理]
上記の検出方法1、2のいずれの場合においても、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、上記のようにして放射線の照射が開始されたことを検出すると、図19(検出方法1の場合)や図23(検出方法2の場合)に示すように、放射線の照射開始を検出した時点で各走査線5へのオン電圧の印加を停止して、ゲートドライバー15bから走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加させ、各TFT8をオフ状態にして電荷蓄積状態に移行させる。
【0117】
そして、例えば放射線の照射開始を検出してから所定時間が経過した時点で、制御手段22は、本画像としての画像データDの読み出し処理を行わせるようになっている。
【0118】
本実施形態では、制御手段22は、図19や図23に示すように、前述した検出ライン(図19の場合は走査線5のラインL4、図23の場合は走査線5のラインLn)の次にオン電圧を印加すべき走査線5(図19の場合は走査線5のラインL5、図23の場合は走査線5のラインLn+1)からオン電圧の印加を開始し、各走査線5にオン電圧を順次印加させて、画像データDの読み出し処理を行うようになっている。
【0119】
なお、以下、画像データDの読み出し処理の最初にオン電圧を印加する走査線5(すなわち図19の場合は走査線5のラインL5、図23の場合は走査線5のラインLn+1)を、読み出し開始ラインという。
【0120】
すなわち、本実施形態では、画像データDの読み出し処理では、制御手段22は、検出ライン(すなわち図19の場合は走査線5のラインL4、図23の場合は走査線5のラインLn)に対して、検出部P(図4や図7参照)上で隣接し、検出ラインLnの次にオン電圧を印加すべき走査線5である読み出し開始ライン(すなわち図19の場合は走査線5のラインL5、図23の場合は走査線5のラインLn+1)からオン電圧の印加を開始し、走査駆動手段15のゲートドライバー15bから各走査線5にオン電圧を順次印加して画像データDの読み出し処理を行うようになっている。
【0121】
また、本実施形態では、画像データDの読み出し処理の際に、ゲートドライバー15bから各走査線5にオン電圧を印加する周期が、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理と交互に行われる各放射線検出素子7のリセット処理(検出方法1の場合。図19等参照)や照射開始検出用の画像データdの読み出し処理(検出方法2の場合。図23参照)における周期τと同じ周期になるように、各走査線5にオン電圧を順次印加するようになっている。
【0122】
このように構成すると、電荷蓄積状態への移行前に走査線5に印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えてから、電荷蓄積状態を経て画像データDの読み出し処理において当該走査線5に印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えるまでの時間Tac(図19や図23参照。以下、実効蓄積時間Tacという。)が、各走査線5で同じ時間になり好ましい。
【0123】
[待機時間の問題について]
次に、本実施形態における待機時間について説明する。なお、以下では、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1や放射線画像撮影システム50の作用についてもあわせて説明する。
【0124】
待機時間とは、前述したように、放射線画像撮影装置1の電力消費モードがスリープモードから撮影可能モードに切り替えられたり、放射線画像撮影装置1の電源がオンされて、放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になってから、実際に放射線源52から放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射させることが許容されるまでの時間をいう。
【0125】
放射線画像撮影を上記の連携方式で行う従来の放射線画像撮影装置では、前述したように、放射線画像撮影装置の電力消費モードをスリープモードから撮影可能モードに切り替えたり電源をオンする際、連携方式で放射線画像撮影を行う放射線画像撮影装置1の場合、切り替え直後にすぐに放射線源52(図11等参照)から放射線画像撮影装置に対して放射線を照射させないように構成される場合があった。
【0126】
これは、例えば図25に示すように、スリープモードから撮影可能モードに切り替えられた直後や電源がオンされた直後(図中の時刻0)には、各放射線検出素子7内で発生する単位時間当たりの電荷量dQが多く、その時点で画像データDの読み出し処理を行うと、上記の電荷蓄積状態(図15参照)の継続中に各放射線検出素子7内に蓄積される、放射線の照射により発生する電荷以外の電荷の量が多くなり過ぎる場合があるためである。
【0127】
例えば、この状態で放射線画像撮影を行って画像データDを読み出すと、画像データD中に含まれる上記の電荷量dQに対応するオフセット分が大きくなるため、画像データDのS/N比が悪化する。そして、そのような画像データDに基づいて放射線画像Iを生成すると、生成された放射線画像I中に比較的大きなノイズが重畳された状態になり、放射線画像Iの画質が劣化したものになってしまう。
【0128】
なお、図25は、スリープモードから撮影可能モードに切り替えられた時点や電源がオンされた時点(時刻0)からの経過時間tと、各放射線検出素子7内で発生する単位時間当たりの電荷量dQとの関係を表すグラフである。また、時間tが経過するにつれて各放射線検出素子7内で発生する単位時間当たりの電荷量dQは減少していき、暗電荷の発生量に等しい値に落ち着いていく。
【0129】
そして、上記のような事態が生じることを防止し、画像データDのS/N比等が許容される範囲内に収まるようにするために、従来の放射線画像撮影装置では、図25に示すように、各放射線検出素子7内で発生する単位時間当たりの電荷量dQに対して閾値dQthが設けられる。
【0130】
そして、スリープモードから撮影可能モードに切り替えられる等してから、各放射線検出素子7内で発生する単位時間当たりの電荷量dQが閾値dQth以下に低下するまで、放射線源52(図11等参照)から放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射させないように構成されていた。この各放射線検出素子7内で発生する単位時間当たりの電荷量dQが閾値dQthに低下するまで待機させる時間WTが、前述した待機時間になる。
【0131】
この待機時間WTが経過した後は、少なくとも各放射線検出素子7内で発生する単位時間当たりの電荷量dQが十分小さくなり、それによる画像データDのS/N比の劣化を許容範囲内に抑制することが可能となる。
【0132】
ところで、上記の連携方式における待機時間WTは、必ずしも1つの待機時間WTとして設定される訳ではない。すなわち、放射線画像撮影装置1の電力消費モードがスリープモードから撮影可能モードに切り替えられた場合には、上記のように放射線画像撮影装置1では速やかに各放射線検出素子7のリセット処理(図13等参照)が開始される。
【0133】
それに対し、電源がオンされて放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった場合には、各放射線検出素子7のリセット処理を開始する前に、走査駆動手段15や各読み出し回路17、バイアス電源14(図7参照)等を起動させる等の処理が必要になる。
【0134】
そのため、同じ連携方式で放射線画像撮影を行う場合であっても、スリープモードから撮影可能モードに切り替えられた場合と、電源がオンされた場合とでは、上記の待機時間WTは、通常、異なる時間とされる。
【0135】
本実施形態においても、放射線画像撮影装置1を用いて連携方式で放射線画像撮影が行われる場合の待機時間として、上記と同様の待機時間WTが設定されており、待機時間WTは、放射線画像撮影装置1の電力消費モードがスリープモードから撮影可能モードに切り替えられた場合と、電源がオンされた場合とで異なる時間として設定されている。
【0136】
そして、これらの待機時間WTは、放射線画像撮影装置1ごとに、工場出荷時や施設への導入時等に予め実験等が行われて設定される。なお、放射線画像撮影装置1のメンテナンス時等にこれらの待機時間WTを設定し直すように構成することも可能である。
【0137】
一方、本発明者らの研究では、放射線画像撮影装置1を用い、非連携方式で放射線画像撮影を行う際に、すなわち上記の検出方法1や検出方法2を用いて放射線画像撮影が行われる際に、上記の連携方式の場合の待機時間WTを用いると、例えば図26に示すように、読み出される画像データDや、それらに基づいて生成される放射線画像I中に、上記の検出ライン(図中のLn参照)と読み出し開始ライン(図中のLn+1参照)とを境界として、輝度の段差が現れる場合があることが分かった。
【0138】
なお、図26や後述する図28等では、輝度の違いが濃淡で表されており(なお明るい方が画像データD等の値が大きい。)、輝度の違いが極端に強調して表現されているが、実際には、輝度の違いや段差は僅かである。
【0139】
このような現象が生じる原因は、以下のように考えられている。いま仮に、例えば図25における待機時間WTに放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されたとする。また、その際、検出ラインが例えば走査線5のラインLnであったとする。すると、放射線画像撮影装置1はその時点WTから電荷蓄積状態に移行するため、検出ラインLnでは、その時点WTからTFT8がオフ状態とされる。
【0140】
そして、図19や図23に示したように、検出ラインLn(図19では検出ラインL4)では、その後、画像データDの読み出し処理が行われるまで、実効蓄積時間Tacの間、TFT8がオフされる状態が続く。そのため、検出ラインLnでは、図27(A)に示すように、待機時間WTから実効蓄積時間Tacの間、TFT8がオフ状態とされ、その間、図中に斜線を付して示した面積に相当する電荷Q(すなわち上記の単位時間当たりに発生する電荷量dQの積分値)が、各放射線検出素子7内に、画像データDに重畳されるオフセット分に相当する電荷Qとして蓄積される。
【0141】
一方、図19や図23では図示を省略したが、読み出し開始ラインLn+1(図19では検出ラインL5)では、検出ラインLn(図19では検出ラインL4)にオン電圧が印加されるよりも前にオン電圧が印加され、先に実効蓄積時間Tacの経過が開始されている。そのため、読み出し開始ラインLn+1では、図27(B)に示すように、検出ラインLnよりも先に実効蓄積時間Tacが始まり、検出ラインLnよりも先に実効蓄積時間Tacの経過が終了して画像データDの読み出し処理が行われる。
【0142】
なお、前述したように、本実施形態では、検出ラインLnの実効蓄積時間Tacと読み出し開始ラインLn+1の実効蓄積時間Tacは同じ時間とされている。また、図27(B)において読み出し開始ラインLn+1の実効蓄積時間Tacと検出ラインLnの実効蓄積時間Tacとが重なっている時間が、上記の電荷蓄積状態の継続時間に相当する。
【0143】
上記の場合、図27(B)に示すように、読み出し開始ラインLn+1に接続されている各放射線検出素子7の方が、検出ラインLnに接続されている各放射線検出素子7よりも、その内部に蓄積される電荷Q、すなわち画像データDに重畳されるオフセット分に相当する電荷Qが多くなる。
【0144】
そのため、例えば放射線画像撮影装置1に被写体が存在しない状態で一様に放射線を照射した場合でも、読み出される画像データDは、読み出し開始ラインLn+1に接続されている各放射線検出素子7の方が、検出ラインLnに接続されている各放射線検出素子7よりも大きくなるのである。
【0145】
なお、連携方式で放射線画像撮影を行った場合にも、実際には読み出し開始ラインLn+1と検出ラインLnとの間で輝度の差が生じている。しかし、連携方式における読み出し開始ラインは図15に示したように走査線5の最初のラインL1である。また、連携方式の場合には放射線の照射開始の検出処理は行われないため、この場合の「検出ラインLn」は存在しないが、読み出し終了のラインという意味で言えば、走査線5の最終ラインLxということになる。
【0146】
そのため、図28に示すように、この場合は、走査線5の各ラインL1〜Lxごとの各画像データDの輝度や、それらに基づいて生成された放射線画像Iにおける走査線5の各ラインL1〜Lxに相当する部分の輝度は、グラデーション状に変化する状態になる。そのため、連携方式では、少なくとも画像データDや放射線画像I中には輝度の段差が現れない状態になる。
【0147】
非連携方式において、上記のように画像データDや放射線画像I中に輝度の段差(図26参照)が生じないようにするためには、例えば図29に示すように、非連携方式における待機時間を連携方式における待機時間WTよりも長い時間WTncに設定することも考えられる。
【0148】
しかし、このように、放射線画像撮影を非連携方式で行う場合の待機時間を、連携方式で行う場合の待機時間WTよりも長い時間として設定すると、前述したように、特に非連携方式において放射線技師が放射線を照射させることができない制約される時間が長くなり、放射線技師にとって、放射線画像撮影装置1や放射線画像撮影システム50が、使い勝手が悪いものとなってしまう。
【0149】
そのため、特に非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に設定される待機時間を、上記の待機時間WTnc(図29参照)よりも、できるだけ短い時間とすることが望まれる。
【0150】
そこで、本実施形態では、放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、放射線源52から放射線を照射させることが許容されるまでの待機時間を、放射線画像撮影を連携方式で行う場合も非連携方式で行う場合も、いずれの場合も、同じ時間として処理されるようになっている。
【0151】
そして、本実施形態では、非連携方式の場合に設定する待機時間を短くし、連携方式の場合に設定されている待機時間WTと同じ時間とすることで、放射線画像撮影を連携方式で行う場合と非連携方式で行う場合とで、待機時間WTを同じ時間とするようになっている。また、両方式の待機時間を同じ時間とするが、上記の待機時間WT(図25等参照)とは別の同じ時間に設定することも可能である。
【0152】
このように構成すると、連携方式でも非連携方式でも放射線画像撮影を行うことが可能な放射線画像撮影装置1を用いる放射線画像撮影システム50において、放射線画像撮影を連携方式で行う場合と非連携方式で行う場合とで待機時間が同じ時間WTになり、放射線技師が放射線を照射させることが許容されるまでのタイミングが両方式で同じタイミングになる。
【0153】
そのため、待機時間WTの間は放射線が照射できないという制約はあるものの、放射線技師は、放射線画像撮影が連携方式で行われるか非連携方式で行われるかにかかわらず、同じように好きなタイミングで放射線を照射させることが可能となる。特に非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に、連携方式の場合よりも長い時間待つ必要がなくなる。
【0154】
そのため、放射線技師が、上記の待機時間WT以外の制約を何ら受けずに自由に好きなタイミングで放射線を照射させることが可能となり、放射線技師にとって、放射線画像撮影装置1や放射線画像撮影システム50が、使い勝手が良いものとなる。
【0155】
なお、上記のように構成すると、図26に示したように、少なくとも放射線画像撮影装置1で読み出される画像データD中に輝度の段差が生じている可能性が残る。そこで、画像データDに対する画像処理でこのような画像データD中の輝度の段差を解消するための処理が必要となるが、この点については後で説明する。
【0156】
[電力消費モードや電源のオン/オフを切り替えた直後の処理について]
本実施形態では、コンソール58は、上記のように、放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、放射線源52から放射線を照射させることが許容されるまでの待機時間WTを、連携方式の場合と非連携方式の場合とで同じ時間WTとして処理するようになっている。
【0157】
具体的には、コンソール58は、前述したように、管理する対象となる1機または複数の放射線画像撮影装置1について、それぞれ電力消費モードの状態(すなわち撮影可能モードであるかスリープモードであるか)や電源のオン/オフの状態を管理している。
【0158】
また、本実施形態では、コンソール58は、各放射線画像撮影装置1について、それぞれ待機時間WTを管理している。なお、このように、本実施形態では、待機時間WTは、各放射線画像撮影装置1ごとに、予めコンソール58に設定されている。そして、コンソール58は、放射線画像撮影に使用される放射線画像撮影装置1が判明すると、その放射線画像撮影装置1に対応する待機時間WTを例えば記憶手段59から読み出す。
【0159】
そして、当該放射線画像撮影装置1に対して覚醒信号を送信して当該放射線画像撮影装置1の電力消費モードをスリープモードから撮影可能モードに切り替えたり、或いは、放射線技師により放射線画像撮影装置1の切替スイッチ38(図1参照)が操作される等して撮影可能モードに切り替えられたことを表す信号が送信されてきた時点から経過時間tのカウントを開始する。
【0160】
また、コンソール58は、放射線画像撮影装置1から、放射線技師により電源スイッチ37が操作されて電源がオンされたことを表す信号が送信されてきた場合には、当該放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影に使用されると判断して、信号が送信されてきた時点から経過時間tのカウントを開始する。また、その放射線画像撮影装置1に対応する待機時間WTの情報を、例えば記憶手段59から読み出す。
【0161】
そして、本実施形態では、コンソール58は、上記のいずれの場合も、経過時間tのカウントを開始すると同時に、表示部58a(図11や図12参照)上に、放射線の照射を行わないように放射線技師に警告する表示を表示させるようになっている。そして、コンソール58は、経過時間tが待機時間WTに達すると、表示部58a上の表示を、上記の警告表示から通常の表示に切り替えるようになっている。
【0162】
上記のように、本実施形態では、放射線画像撮影を連携方式で行う場合と非連携方式で行う場合とで待機時間WTが同じ時間として設定されているため、コンソール58の表示部58a上に上記の警告表示が表示される時間が、両方式の場合で同じ時間となる。そして、放射線技師は、上記の表示の切り替えを確認した後で、曝射スイッチ56を操作して放射線源52から放射線を照射させる。
【0163】
なお、経過時間tが待機時間WTに達する前に、放射線源52から放射線が照射されてしまった場合には、上記のように、放射線画像Iの画質が劣化する可能性が生じる。そのため、それを放射線技師に知らせるために、例えば、コンソール58が、後述するように表示部58a上にプレビュー画像I_preを表示する際に、画質が悪くなっている可能性がある旨を警告する表示をあわせて表示させるように構成することも可能である。
【0164】
このように構成すれば、後述するように、放射線技師がプレビュー画像I_preを見て再撮影の要否を判断する際に、放射線の照射が早すぎて画質が劣化したり輝度の段差が生じる等して画質が悪くなっている可能性があることを認識したうえで、再撮影の要否を判断することが可能となる。
【0165】
[画像データの読み出し処理後の処理について]
本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、連携方式或いは非連携方式で放射線画像撮影を行い、上記のようにして画像データDの読み出し処理(図15や図19、図23参照)を終了すると、読み出した画像データDに基づいてプレビュー画像用のデータを作成して、コンソール58に送信するようになっている。
【0166】
そして、コンソール58(図11や図12参照)は、放射線画像撮影装置1からプレビュー画像用のデータが送信されてくると、前述したように、それに基づいてプレビュー画像I_pre(図示省略)を生成して表示部58a上に表示させるようになっている。
【0167】
そして、放射線技師等がこのプレビュー画像I_preを見て、撮影が適切に行われたか否かや再撮影が必要か否か等を判断するようになっている。なお、放射線技師等が、再撮影が必要であると判断した場合には、放射線画像撮影が最初からやり直される。
【0168】
一方、図19や図23に示したように、電荷蓄積状態の間、各TFT8はオフ状態とされるため、各放射線検出素子7内で発生した電荷が各放射線検出素子7内に蓄積される。その際、各放射線検出素子7の内部では、各放射線検出素子7自体の熱(温度)による熱励起等によりいわゆる暗電荷が常時発生しており、その暗電荷も各放射線検出素子7内に蓄積される。
【0169】
そして、読み出し処理で読み出された画像データD中には、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷に起因する有用なデータとともに、暗電荷に起因するオフセット分に相当するデータが含まれる。
【0170】
そこで、本実施形態では、上記のプレビュー画像用のデータの送信後、或いはそれと併行して、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、画像データD中に含まれる上記の暗電荷に起因するオフセット分に相当するデータをオフセットデータOとして読み出すためのオフセットデータOの読み出し処理を行うようになっている。なお、オフセットデータOの読み出し処理が放射線画像撮影の前に行われるように構成することも可能である。
【0171】
本実施形態では、オフセットデータOの読み出し処理は、図15(連携方式の場合)や図19(検出方法1を採用した場合)、図23(検出方法2を採用した場合)に示した一連の処理と同じ処理シーケンスを繰り返して、オフセットデータOの読み出し処理を行うようになっている。なお、その際、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射は行われない。
【0172】
そして、オフセットデータOの読み出し処理が終了すると、本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、画像処理装置であるコンソール58に、画像データDとオフセットデータOとをそれぞれ送信するようになっている。
【0173】
[画像処理装置における放射線画像の生成処理および画像データの補正処理]
前述したように、本実施形態では、コンソール58は、画像処理装置としても機能するようになっている。なお、画像処理装置をコンソール58とは別体の装置として設けるように構成することも可能であることは前述した通りである。
【0174】
そして、画像処理装置としてのコンソール58は、放射線画像撮影装置1から画像データDやオフセットデータOが送信されてくると、画像データDを補正したうえで、放射線画像Iを生成するようになっている。
【0175】
まず、画像処理装置における基本的な放射線画像Iの生成処理について説明する。画像処理装置としてのコンソール58は、上記のように、放射線画像撮影装置1から画像データDやオフセットデータOが送信されてくると、下記(1)式に従って、放射線検出素子7ごとに画像データDからオフセットデータOを減算して、いわゆる真の画像データD*を算出する。
D*=D−O …(1)
【0176】
上記のようにオフセットデータOは、画像データD中に含まれる暗電荷に起因するオフセット分に相当するデータであるため、それを画像データDから減算して算出される真の画像データD*は、放射線の照射により放射線検出素子7内で発生した電荷のみに起因する、被写体の情報が担持されたデータになる。
【0177】
そして、コンソール58は、放射線検出素子7ごとに算出した真の画像データD*に対してゲイン補正や欠陥画素補正、放射線画像撮影部位に応じた階調処理等の精密な画像処理を行って、最終的な放射線画像Iを生成するようになっている。
【0178】
しかし、前述したように、本実施形態では、放射線画像撮影を非連携方式で行う場合の待機時間が、図29に示した待機時間WTncではなく、図25に示した、より短い連携方式の場合の待機時間WTとされている。そのため、放射線画像撮影が非連携方式で行われた場合、読み出された画像データDには、図26に示したように、輝度の段差が生じている可能性がある。そして、そのままの画像データDを用いて放射線画像Iを生成すると、放射線画像Iにも輝度の段差が現れてしまう可能性がある。
【0179】
そこで、本実施形態では、画像処理装置としてのコンソール58(以下、簡単に画像処理装置58という。)は、上記のような放射線画像Iの生成処理を行う前に、以下のようにして、画像データD或いは上記の真の画像データD*の補正処理を行って、画像データD中或いは真の画像データD*中の輝度の段差をなくすようになっている。
【0180】
なお、以下では、上記の補正処理を、画像データDを対象として行う場合について説明するが、上記(1)式に従って算出した真の画像データD*を対象として行うように構成することも可能である。
【0181】
図26に示した各画像データDを、各走査線5ごとに平均値Dave(k)(kは走査線5のライン番号1〜x)を算出して、信号線方向(図中では縦方向)に並べてプロットすると、図30に示すような画像データDの平均値Dave(k)のプロファイルが得られる。その際の検出ラインLnにおける平均値Dave(n)と読み出し開始ラインLn+1における平均値Dave(n+1)との差が、すなわち上記の輝度の段差を表している。
【0182】
そこで、本実施形態では、画像処理装置58は、放射線画像撮影装置1の検出部P上の各走査線5を、検出ラインLnと読み出し開始ラインLn+1とを境界として二分し、検出ラインLnを含む走査線群に属する各走査線5(すなわち走査線5のラインL1〜Ln)、または読み出し開始ラインLn+1を含む走査線群に属する各走査線5(すなわち走査線5のラインLn+1〜Lx)の少なくとも一方に対して、各走査線5に接続されている各放射線検出素子7から読み出された各画像データDを補正するようになっている。
【0183】
具体的な補正の仕方としては、例えば、図30に示した読み出し開始ラインLn+1における平均値Dave(n+1)と検出ラインLnにおける平均値Dave(n)との差αを算出し、それを補正定数αとする。すなわち、補正定数αを、
α=Dave(n+1)−Dave(n) …(2)
として算出する。
【0184】
そして、この補正定数αを、例えば、検出ラインLnを含む走査線群(L1〜Ln)に属する各走査線5に接続されている各放射線検出素子7から読み出された各画像データDに加算する。すると、図31に示すように、走査線5の各ラインL1〜Lnに接続されている各放射線検出素子7から読み出された各画像データDが、図中右方向にαだけシフトする。そのため、輝度の段差が解消される。
【0185】
また、例えば、読み出し開始ラインLn+1を含む走査線群(Ln+1〜Lx)に属する各走査線5に接続されている各放射線検出素子7から読み出された各画像データDから、上記の補正定数αを減算する。すると、図31に示すように、走査線5の各ラインLn+1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7から読み出された各画像データDが、図中左方向にαだけシフトする。そのため、この場合も輝度の段差が解消される。
【0186】
なお、上記の補正定数αに基づいて、検出ラインLnを含む走査線群(L1〜Ln)と読み出し開始ラインLn+1を含む走査線群(Ln+1〜Lx)のそれぞれを補正する補正定数を算出し、両方の走査線群に係る画像データDをそれぞれ補正して(すなわち上記のように一方の走査線群のみの画像データDではなく両方の走査線群の画像データDをそれぞれ補正して)、輝度の段差を解消するように構成することも可能である。
【0187】
このようにして、例えば上記の補正定数αを用いて、検出ラインLnを含む走査線群(L1〜Ln)と読み出し開始ラインLn+1を含む走査線群(Ln+1〜Lx)の少なくとも一方の走査線群に係る画像データDを補正することで、待機時間を短くすることにより画像データD中に生じている可能性があった輝度の段差を的確になくすことが可能となる。
【0188】
ところで、本発明者らの研究によれば、上記の補正定数αは、種々の条件に応じて変化することが分かっている。
【0189】
例えば、上記のように、電力消費モードがスリープモードから撮影可能モードに切り替えられたり電源がオンされたりして放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、放射線源52から放射線を照射させることが許容されるまでの待機時間WTは、本実施形態では、連携方式の場合と非連携方式の場合とで同じ待機時間WT(図25参照)に設定される。
【0190】
しかし、この待機時間WTは、あくまで放射線源52から放射線を照射させることが許容されるようになるまでの時間であり、放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になってから、放射線技師が実際に放射線を照射させるまでの時間Trealは任意である。
【0191】
つまり、放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になると、本実施形態では、上記のように、コンソール58の表示部58上に放射線の照射を行わないように放射線技師に警告する表示を表示され、待機時間WTが経過すると、警告表示から通常の表示に切り替えられる。
【0192】
しかし、待機時間WTが経過して表示部58a上の表示が通常の表示に切り替えられても、放射線技師がすぐに放射線画像撮影装置1に放射線を照射するとは限らず、例えば、待機時間WTが経過して表示が切り替えられた後、ある程度時間が経ってから放射線が照射される場合もあり得る。この放射線技師が実際に放射線を照射させるまでの時間が、上記の時間Trealである。
【0193】
そして、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されると、上記のように、放射線画像撮影装置1の制御手段22が即座に放射線の照射が開始されたことを検出する。そのため、上記の時間Trealは、結局、放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、当該放射線画像撮影装置1の制御手段22が放射線の照射が開始されたことを検出するまでの時間ということになる。
【0194】
上記の時間Trealは、上記のように任意に変化し得る。そして、例えば上記の時間Trealが待機時間WTと同程度の時間であれば、図26や図27(A)、(B)に示したように、画像データD中に段差が現れる。しかし、上記の時間Trealが長くなり、例えば図29に示した時間WTnc或いはそれより長い時間になると、前述したように、画像データD中に輝度の段差が現れなくなる。
【0195】
このように、画像データD中に現れる輝度の段差の程度、すなわち上記の補正定数αは、少なくとも上記の時間Treal、すなわち、放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、実際に放射線が照射され、当該放射線画像撮影装置1の制御手段22が放射線の照射が開始されたことを検出するまでの時間Trealに依存して変化する。
【0196】
そこで、本実施形態では、画像処理装置58は、上記の補正定数αを、上記の時間Trealごとに補正定数がそれぞれ割り当てられたテーブルとして備えるようになっている。また、補正定数αを、上記の時間Trealの関数として有していてもよい。
【0197】
そして、放射線画像撮影装置1を、電力消費モードがスリープモードから撮影可能モードに切り替えられたり電源がオンされたりして放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になってから制御手段22が放射線の照射が開始されたことを検出するまでの時間Trealを計測するように構成し、画像データD等を画像処理装置58に送信する際に、この時間Trealの情報もあわせて送信するように構成する。
【0198】
そして、画像処理装置58は、上記のテーブルや関数に基づいて、放射線画像撮影装置1から送信されてきた時間Trealから補正定数αを割り出す。そして、割り出した補正定数αに基づいて、上記のようにして画像データDを補正するように構成することが可能である。
【0199】
また、放射線画像撮影装置1によっては、電力消費モードが撮影可能モードに切り替えられる前のスリープモードの継続時間(すなわち撮影可能モードに切り替えられる前にスリープモードがどの程度の期間継続されたか)に依存して、上記の補正定数α、すなわち図26に示した画像データD中の輝度の段差の程度が変化する場合がある。
【0200】
そこで、このような場合には、画像処理装置58は、上記の補正定数αを、上記の時間Trealのほかに、当該放射線画像撮影装置1の電力消費モードが撮影可能モードに切り替えられる前のスリープモードの継続時間Tsleepごとに補正定数がそれぞれ割り当てられたテーブルとして備えるように構成することが可能である。
【0201】
この場合、テーブルは、少なくとも上記の時間Trealと継続時間Tsleepに関する二次元状のテーブルになる。また、この場合も、補正定数αを、上記の時間Trealと継続時間Tsleepの関数として有していてもよい。
【0202】
そして、画像処理装置58は、以上のようにして、画像データDを補正した後、補正された画像データDに基づいて、前述したように、真の画像データD*を算出し、算出した真の画像データD*に対してゲイン補正や欠陥画素補正、放射線画像撮影部位に応じた階調処理等の精密な画像処理を行って、最終的な放射線画像Iを生成するようになっている。
【0203】
なお、上記の画像データDの補正処理では、画像処理装置58が、予め補正定数αをテーブルや関数等の形として有している場合について説明したが、例えば、放射線画像撮影装置1から画像データD等が送信されてくるごとに、上記(2)式や(3)式に従って補正定数αを算出して画像データDを補正するように構成することも可能である。
【0204】
また、上記の本実施形態では、画像処理装置58で画像データDの補正処理を行うように構成する場合について説明したが、この画像データDの補正処理を、放射線画像撮影装置1から画像処理装置58に画像データDを送信する前に、放射線画像撮影装置1の制御手段22が行うように構成することも可能である。
【0205】
この場合、上記のように補正定数αのテーブルや関数を放射線画像撮影装置1の制御手段22が有しておくように構成することも可能であり、或いは、放射線画像撮影装置1の制御手段22が、放射線画像撮影が行われるごとに、上記(2)式や(3)式に従って補正定数αを算出して画像データDを補正するように構成することも可能である。
【0206】
なお、この場合、放射線画像撮影装置1から画像処理装置58に、補正された画像データD等が送信され、画像処理装置58では、補正された画像データD等に対して画像処理を行って、放射線画像Iを生成するように構成される。
【0207】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50では、コンソール58は、放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、放射線源52から放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射させることが許容されるまでの待機時間WTを、放射線画像撮影が連携方式で行われる場合と非連携方式で行われる場合とで、同じ時間として処理する。
【0208】
そのため、連携方式でも非連携方式でも放射線画像撮影を行うことが可能な放射線画像撮影装置1を用いる放射線画像撮影システム50において、放射線画像撮影を連携方式で行う場合と非連携方式で行う場合とで待機時間が同じ時間WTになり、放射線技師が放射線を照射させることが許容されるまでのタイミングが両方式で同じタイミングになる。
【0209】
そのため、待機時間WTの間は放射線が照射できないという制約はあるものの、放射線技師は、放射線画像撮影が連携方式で行われるか非連携方式で行われるかにかかわらず、同じように好きなタイミングで放射線を照射させることが可能となる。特に非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に、連携方式の場合よりも長い時間待つ必要がなくなる。
【0210】
そして、放射線技師が、上記の待機時間WT以外の制約を何ら受けずに自由に好きなタイミングで放射線を照射させることが可能となり、放射線技師にとって、放射線画像撮影装置1や放射線画像撮影システム50が、使い勝手が良いものとなる。
【0211】
また、上記のように構成すると、非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に、読み出される画像データD中に輝度の段差が現れる場合がある。
【0212】
しかし、上記のように、画像処理装置58や放射線画像撮影装置1の制御手段22は、予め算出した補正定数αを用いたり、或いは放射線画像撮影ごとに算出する等して、検出ラインLnを含む走査線群、或いは読み出し開始ラインLn+1を含む走査線群の少なくとも一方に対して、各走査線5に接続されている各放射線検出素子7から読み出された各画像データDを補正することで、画像データD中から輝度の段差を的確に除去することが可能となる。
【0213】
そのため、特に非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に、待機時間WTが短くなり、画像データD中に輝度の段差が生じたとしても、上記のようにして輝度の段差を的確に除去された画像データD等に基づいて、画像処理装置58で放射線画像Iを生成するため、生成される放射線画像Iに輝度の段差が生じることを的確に防止することが可能となる。
【0214】
なお、本実施形態の非連携方式における上記の検出方法1や検出方法2をさらに改良して、より的確に放射線の照射開始を検出するように構成することが可能であり、そのような改良は適宜行われる。
【0215】
また、本実施形態では、画像データDの読み出し処理後にプレビュー画像用のデータを送信する場合について説明したが、そのように構成せず、例えば、その後のオフセットデータOの読み出し処理を終了した時点で、全ての画像データDおよびオフセットデータOを送信するように構成することも可能である。
【0216】
この場合、上記の画質が悪くなっている可能性がある旨を警告表示を行う場合には、生成された放射線画像Iが表示部58a上に表示される際に、あわせて表示されるように構成される。また、このように、放射線画像撮影装置1からコンソール58への画像データD等の送信の仕方は、適宜決められる。
【0217】
さらに、本発明が上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0218】
1 放射線画像撮影装置
5 走査線
6 信号線
7 放射線検出素子
8 TFT(スイッチ手段)
15 走査駆動手段
17 読み出し回路
22 制御手段
39 コネクター(通信手段)
41 アンテナ装置(通信手段)
50 放射線画像撮影システム
52 放射線源
55 放射線発生装置
58 コンソール、画像処理装置
D 画像データ
d 照射開始検出用の画像データ
Dave(n) 検出ラインの各画像データの平均値
Dave(n+1) 読み出し開始ラインの各画像データの平均値
dleak リークデータ
dleak_th 閾値
dth 閾値
I 放射線画像
L1〜Ln 検出ラインを含む走査線群に属する各走査線
Ln 検出ライン
Ln+1 読み出し開始ライン
Ln+1〜Lx 読み出し開始ラインを含む走査線群に属する各走査線
P 検出部
q 電荷
r 小領域
Treal 時間
Tsleep 継続時間
WT 待機時間
α 補正定数、差
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子を備える検出部と、
前記各走査線に対して印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替える走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置との間で信号の送受信を行い、前記画像データを送信するための通信手段と、
を備える放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置に放射線を照射する放射線源を備える放射線発生装置と、
少なくとも前記放射線画像撮影装置を制御して放射線画像撮影を行わせるコンソールと、
前記放射線画像撮影装置から送信された前記画像データに基づいて放射線画像を生成する画像処理装置と、
を備え、
前記放射線画像撮影装置は、撮影方式を、前記放射線発生装置との間で連携を取りながら放射線画像撮影を行う連携方式と、前記放射線発生装置との間で連携をとらずに放射線画像撮影を行う非連携方式との間で切り替え可能とされており、
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、前記非連携方式で放射線画像撮影を行う場合には、放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段から前記各走査線にオフ電圧を印加して前記各スイッチ手段をオフ状態とした状態で前記各スイッチ手段を介して前記各放射線検出素子からリークした前記電荷をリークデータに変換するリークデータの読み出し処理を行わせ、読み出した前記リークデータが閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出し、
前記コンソールは、前記放射線画像撮影装置が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、前記放射線源から放射線を照射させることが許容されるまでの待機時間を、前記連携方式の場合と前記非連携方式の場合とで同じ時間として処理し、
前記画像処理装置は、前記待機時間が前記連携方式の場合と前記非連携方式の場合とで同じ時間されることに伴って前記非連携方式で放射線画像撮影が行われる場合に前記画像データ中に生じる輝度の段差を補正することを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項2】
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、前記リークデータの読み出し処理と、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して行う前記各放射線検出素子のリセット処理とを交互に行わせることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項3】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子を備える検出部と、
前記各走査線に対して印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替える走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置との間で信号の送受信を行い、前記画像データを送信するための通信手段と、
を備える放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置に放射線を照射する放射線源を備える放射線発生装置と、
少なくとも前記放射線画像撮影装置を制御して放射線画像撮影を行わせるコンソールと、
前記放射線画像撮影装置から送信された前記画像データに基づいて放射線画像を生成する画像処理装置と、
を備え、
前記放射線画像撮影装置は、撮影方式を、前記放射線発生装置との間で連携を取りながら放射線画像撮影を行う連携方式と、前記放射線発生装置との間で連携をとらずに放射線画像撮影を行う非連携方式との間で切り替え可能とされており、
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、前記非連携方式で放射線画像撮影を行う場合には、放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して照射開始検出用の画像データの読み出し処理を行わせ、読み出した前記照射開始検出用の画像データが閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出し、
前記コンソールは、前記放射線画像撮影装置が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、前記放射線源から放射線を照射させることが許容されるまでの待機時間を、前記連携方式の場合と前記非連携方式の場合とで同じ時間として処理し、
前記画像処理装置は、前記待機時間が前記連携方式の場合と前記非連携方式の場合とで同じ時間されることに伴って前記非連携方式で放射線画像撮影が行われる場合に前記画像データ中に生じる輝度の段差を補正することを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項4】
前記待機時間は、前記非連携方式の場合に設定する前記待機時間を、前記連携方式の場合に設定されている前記待機時間にあわせることで、前記連携方式の場合と前記非連携方式の場合とで同じ時間とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項5】
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、
放射線の照射が開始されたことを検出した時点で、前記走査駆動手段から前記各走査線にオフ電圧を印加して前記各スイッチ手段をオフ状態として前記各放射線検出素子内に電荷を蓄積される電荷蓄積状態に移行させた後、
放射線の照射が開始されたことを検出した時点またはその直前にオン電圧が印加された前記走査線である検出ラインの次にオン電圧を印加すべき前記走査線である読み出し開始ラインからオン電圧の印加を開始して、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して前記画像データの読み出し処理を行わせることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項6】
前記画像処理装置は、前記放射線画像撮影装置の前記検出部上の前記各走査線を、前記検出ラインと前記読み出し開始ラインとを境界として二分した場合、前記検出ラインを含む走査線群に属する前記各走査線、または前記読み出し開始ラインを含む走査線群に属する前記各走査線の少なくとも一方に対して、前記各走査線に接続されている前記各放射線検出素子から読み出された前記各画像データを補正して、放射線画像を生成することを特徴とする請求項5に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項7】
前記画像処理装置は、少なくとも一方の前記走査線群に属する前記各走査線に接続されている前記各放射線検出素子から読み出された前記各画像データに加算または減算して補正するための補正定数を備えていることを特徴とする請求項6に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項8】
前記画像処理装置は、前記補正定数を、前記放射線画像撮影装置が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、当該放射線画像撮影装置の前記制御手段が放射線の照射が開始されたことを検出するまでの時間ごとに前記補正定数がそれぞれ割り当てられたテーブルとして備えていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項9】
前記放射線画像撮影装置は、電力消費モードを、少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路に電力を供給して放射線画像撮影を行うことが可能な撮影可能モードと、必要な機能部にのみ電力を供給し放射線画像撮影を行うことができないスリープモードとの間で切り替え可能とされており、
前記画像処理装置は、前記補正定数を、前記時間のほかに、前記放射線画像撮影装置における前記スリープモードの継続時間ごとに前記補正定数がそれぞれ割り当てられたテーブルとして備えていることを特徴とする請求項8に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項10】
前記画像処理装置は、前記検出ラインに接続されている前記各放射線検出素子から読み出された前記各画像データの平均値と、前記読み出しラインに接続されている前記各放射線検出素子から読み出された前記各画像データの平均値とをそれぞれ算出し、後者の前者に対する差に基づいて、少なくとも一方の前記走査線群に属する前記各走査線に接続されている前記各放射線検出素子から読み出された前記各画像データを補正することを特徴とする請求項6に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項11】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子を備える検出部と、
前記各走査線に対して印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替える走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置との間で信号の送受信を行い、前記画像データを送信するための通信手段と、
を備え、
撮影方式を、前記放射線発生装置との間で連携を取りながら放射線画像撮影を行う連携方式と、前記放射線発生装置との間で連携をとらずに放射線画像撮影を行う非連携方式との間で切り替え可能とされており、
前記制御手段は、
前記非連携方式で放射線画像撮影を行う場合には、放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段から前記各走査線にオフ電圧を印加して前記各スイッチ手段をオフ状態とした状態で前記各スイッチ手段を介して前記各放射線検出素子からリークした前記電荷をリークデータに変換するリークデータの読み出し処理と、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して行う前記各放射線検出素子のリセット処理とを交互に行わせ、読み出した前記リークデータが閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出し、
放射線の照射が開始されたことを検出した時点で、前記走査駆動手段から前記各走査線にオフ電圧を印加して前記各スイッチ手段をオフ状態として前記各放射線検出素子内に電荷を蓄積される電荷蓄積状態に移行させた後、
放射線の照射が開始されたことを検出した時点またはその直前にオン電圧が印加された前記走査線である検出ラインの次にオン電圧を印加すべき前記走査線である読み出し開始ラインからオン電圧の印加を開始して、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して前記画像データの読み出し処理を行わせるとともに、
前記検出部上の前記各走査線を、前記検出ラインと前記読み出し開始ラインとを境界として二分した場合、前記検出ラインを含む走査線群に属する前記各走査線、または前記読み出し開始ラインを含む走査線群に属する前記各走査線の少なくとも一方に対して、前記各走査線に接続されている前記各放射線検出素子から読み出された前記各画像データを補正することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項12】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子を備える検出部と、
前記各走査線に対して印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替える走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置との間で信号の送受信を行い、前記画像データを送信するための通信手段と、
を備え、
撮影方式を、前記放射線発生装置との間で連携を取りながら放射線画像撮影を行う連携方式と、前記放射線発生装置との間で連携をとらずに放射線画像撮影を行う非連携方式との間で切り替え可能とされており、
前記制御手段は、
前記非連携方式で放射線画像撮影を行う場合には、放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して照射開始検出用の画像データの読み出し処理を行わせ、読み出した前記照射開始検出用の画像データが閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出し、
放射線の照射が開始されたことを検出した時点で、前記走査駆動手段から前記各走査線にオフ電圧を印加して前記各スイッチ手段をオフ状態として前記各放射線検出素子内に電荷を蓄積される電荷蓄積状態に移行させた後、
放射線の照射が開始されたことを検出した時点またはその直前にオン電圧が印加された前記走査線である検出ラインの次にオン電圧を印加すべき前記走査線である読み出し開始ラインからオン電圧の印加を開始して、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して前記画像データの読み出し処理を行わせるとともに、
前記検出部上の前記各走査線を、前記検出ラインと前記読み出し開始ラインとを境界として二分した場合、前記検出ラインを含む走査線群に属する前記各走査線、または前記読み出し開始ラインを含む走査線群に属する前記各走査線の少なくとも一方に対して、前記各走査線に接続されている前記各放射線検出素子から読み出された前記各画像データを補正することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項1】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子を備える検出部と、
前記各走査線に対して印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替える走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置との間で信号の送受信を行い、前記画像データを送信するための通信手段と、
を備える放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置に放射線を照射する放射線源を備える放射線発生装置と、
少なくとも前記放射線画像撮影装置を制御して放射線画像撮影を行わせるコンソールと、
前記放射線画像撮影装置から送信された前記画像データに基づいて放射線画像を生成する画像処理装置と、
を備え、
前記放射線画像撮影装置は、撮影方式を、前記放射線発生装置との間で連携を取りながら放射線画像撮影を行う連携方式と、前記放射線発生装置との間で連携をとらずに放射線画像撮影を行う非連携方式との間で切り替え可能とされており、
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、前記非連携方式で放射線画像撮影を行う場合には、放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段から前記各走査線にオフ電圧を印加して前記各スイッチ手段をオフ状態とした状態で前記各スイッチ手段を介して前記各放射線検出素子からリークした前記電荷をリークデータに変換するリークデータの読み出し処理を行わせ、読み出した前記リークデータが閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出し、
前記コンソールは、前記放射線画像撮影装置が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、前記放射線源から放射線を照射させることが許容されるまでの待機時間を、前記連携方式の場合と前記非連携方式の場合とで同じ時間として処理し、
前記画像処理装置は、前記待機時間が前記連携方式の場合と前記非連携方式の場合とで同じ時間されることに伴って前記非連携方式で放射線画像撮影が行われる場合に前記画像データ中に生じる輝度の段差を補正することを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項2】
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、前記リークデータの読み出し処理と、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して行う前記各放射線検出素子のリセット処理とを交互に行わせることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項3】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子を備える検出部と、
前記各走査線に対して印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替える走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置との間で信号の送受信を行い、前記画像データを送信するための通信手段と、
を備える放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置に放射線を照射する放射線源を備える放射線発生装置と、
少なくとも前記放射線画像撮影装置を制御して放射線画像撮影を行わせるコンソールと、
前記放射線画像撮影装置から送信された前記画像データに基づいて放射線画像を生成する画像処理装置と、
を備え、
前記放射線画像撮影装置は、撮影方式を、前記放射線発生装置との間で連携を取りながら放射線画像撮影を行う連携方式と、前記放射線発生装置との間で連携をとらずに放射線画像撮影を行う非連携方式との間で切り替え可能とされており、
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、前記非連携方式で放射線画像撮影を行う場合には、放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して照射開始検出用の画像データの読み出し処理を行わせ、読み出した前記照射開始検出用の画像データが閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出し、
前記コンソールは、前記放射線画像撮影装置が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、前記放射線源から放射線を照射させることが許容されるまでの待機時間を、前記連携方式の場合と前記非連携方式の場合とで同じ時間として処理し、
前記画像処理装置は、前記待機時間が前記連携方式の場合と前記非連携方式の場合とで同じ時間されることに伴って前記非連携方式で放射線画像撮影が行われる場合に前記画像データ中に生じる輝度の段差を補正することを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項4】
前記待機時間は、前記非連携方式の場合に設定する前記待機時間を、前記連携方式の場合に設定されている前記待機時間にあわせることで、前記連携方式の場合と前記非連携方式の場合とで同じ時間とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項5】
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、
放射線の照射が開始されたことを検出した時点で、前記走査駆動手段から前記各走査線にオフ電圧を印加して前記各スイッチ手段をオフ状態として前記各放射線検出素子内に電荷を蓄積される電荷蓄積状態に移行させた後、
放射線の照射が開始されたことを検出した時点またはその直前にオン電圧が印加された前記走査線である検出ラインの次にオン電圧を印加すべき前記走査線である読み出し開始ラインからオン電圧の印加を開始して、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して前記画像データの読み出し処理を行わせることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項6】
前記画像処理装置は、前記放射線画像撮影装置の前記検出部上の前記各走査線を、前記検出ラインと前記読み出し開始ラインとを境界として二分した場合、前記検出ラインを含む走査線群に属する前記各走査線、または前記読み出し開始ラインを含む走査線群に属する前記各走査線の少なくとも一方に対して、前記各走査線に接続されている前記各放射線検出素子から読み出された前記各画像データを補正して、放射線画像を生成することを特徴とする請求項5に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項7】
前記画像処理装置は、少なくとも一方の前記走査線群に属する前記各走査線に接続されている前記各放射線検出素子から読み出された前記各画像データに加算または減算して補正するための補正定数を備えていることを特徴とする請求項6に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項8】
前記画像処理装置は、前記補正定数を、前記放射線画像撮影装置が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、当該放射線画像撮影装置の前記制御手段が放射線の照射が開始されたことを検出するまでの時間ごとに前記補正定数がそれぞれ割り当てられたテーブルとして備えていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項9】
前記放射線画像撮影装置は、電力消費モードを、少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路に電力を供給して放射線画像撮影を行うことが可能な撮影可能モードと、必要な機能部にのみ電力を供給し放射線画像撮影を行うことができないスリープモードとの間で切り替え可能とされており、
前記画像処理装置は、前記補正定数を、前記時間のほかに、前記放射線画像撮影装置における前記スリープモードの継続時間ごとに前記補正定数がそれぞれ割り当てられたテーブルとして備えていることを特徴とする請求項8に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項10】
前記画像処理装置は、前記検出ラインに接続されている前記各放射線検出素子から読み出された前記各画像データの平均値と、前記読み出しラインに接続されている前記各放射線検出素子から読み出された前記各画像データの平均値とをそれぞれ算出し、後者の前者に対する差に基づいて、少なくとも一方の前記走査線群に属する前記各走査線に接続されている前記各放射線検出素子から読み出された前記各画像データを補正することを特徴とする請求項6に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項11】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子を備える検出部と、
前記各走査線に対して印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替える走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置との間で信号の送受信を行い、前記画像データを送信するための通信手段と、
を備え、
撮影方式を、前記放射線発生装置との間で連携を取りながら放射線画像撮影を行う連携方式と、前記放射線発生装置との間で連携をとらずに放射線画像撮影を行う非連携方式との間で切り替え可能とされており、
前記制御手段は、
前記非連携方式で放射線画像撮影を行う場合には、放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段から前記各走査線にオフ電圧を印加して前記各スイッチ手段をオフ状態とした状態で前記各スイッチ手段を介して前記各放射線検出素子からリークした前記電荷をリークデータに変換するリークデータの読み出し処理と、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して行う前記各放射線検出素子のリセット処理とを交互に行わせ、読み出した前記リークデータが閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出し、
放射線の照射が開始されたことを検出した時点で、前記走査駆動手段から前記各走査線にオフ電圧を印加して前記各スイッチ手段をオフ状態として前記各放射線検出素子内に電荷を蓄積される電荷蓄積状態に移行させた後、
放射線の照射が開始されたことを検出した時点またはその直前にオン電圧が印加された前記走査線である検出ラインの次にオン電圧を印加すべき前記走査線である読み出し開始ラインからオン電圧の印加を開始して、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して前記画像データの読み出し処理を行わせるとともに、
前記検出部上の前記各走査線を、前記検出ラインと前記読み出し開始ラインとを境界として二分した場合、前記検出ラインを含む走査線群に属する前記各走査線、または前記読み出し開始ラインを含む走査線群に属する前記各走査線の少なくとも一方に対して、前記各走査線に接続されている前記各放射線検出素子から読み出された前記各画像データを補正することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項12】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子を備える検出部と、
前記各走査線に対して印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替える走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置との間で信号の送受信を行い、前記画像データを送信するための通信手段と、
を備え、
撮影方式を、前記放射線発生装置との間で連携を取りながら放射線画像撮影を行う連携方式と、前記放射線発生装置との間で連携をとらずに放射線画像撮影を行う非連携方式との間で切り替え可能とされており、
前記制御手段は、
前記非連携方式で放射線画像撮影を行う場合には、放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して照射開始検出用の画像データの読み出し処理を行わせ、読み出した前記照射開始検出用の画像データが閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出し、
放射線の照射が開始されたことを検出した時点で、前記走査駆動手段から前記各走査線にオフ電圧を印加して前記各スイッチ手段をオフ状態として前記各放射線検出素子内に電荷を蓄積される電荷蓄積状態に移行させた後、
放射線の照射が開始されたことを検出した時点またはその直前にオン電圧が印加された前記走査線である検出ラインの次にオン電圧を印加すべき前記走査線である読み出し開始ラインからオン電圧の印加を開始して、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して前記画像データの読み出し処理を行わせるとともに、
前記検出部上の前記各走査線を、前記検出ラインと前記読み出し開始ラインとを境界として二分した場合、前記検出ラインを含む走査線群に属する前記各走査線、または前記読み出し開始ラインを含む走査線群に属する前記各走査線の少なくとも一方に対して、前記各走査線に接続されている前記各放射線検出素子から読み出された前記各画像データを補正することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2013−85556(P2013−85556A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225431(P2011−225431)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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