説明

新規硬化性樹脂とその製造方法、及びエポキシ樹脂組成物、電子部品装置

【課題】成形性及び難燃性に優れており、かつ高い耐熱性を有することを可能にする新規硬化性樹脂を提供する。
【解決手段】特定の化学式で示されるシラン化合物、特定の化学式で示されるシラン化合物の部分縮合物、特定の化学式で示されるシラン化合物及び特定の化学式で示されるシラン化合物の部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物との反応により得られる化合物である硬化性樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規硬化性樹脂とその製造方法に関する。より詳細には、エポキシ樹脂硬化剤として有用な新規硬化性樹脂とその製造方法、その硬化性樹脂を硬化剤として含む成形材料、及び積層板、接着剤、塗料、インキといった幅広い用途の材料として好適なエポキシ樹脂組成物、及びそのエポキシ樹脂組成物によって封止された素子を備える電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、成形材料、積層板用及び接着剤用材料、各種電子電気部品、塗料及びインキ材料等の分野において、エポキシ樹脂等の硬化性樹脂が広く使用されている。特に、トランジスタ、IC等の電子部品素子の封止技術に関する分野では、封止材料としてエポキシ樹脂組成物が広く使用されている。その理由としては、エポキシ樹脂は、成形性、電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性等の諸特性においてバランスがとれているためである。
【0003】
近年、電子部品の分野では高速化及び高密度化が進んでおり、それに伴って、電子部品の発熱が顕著となってきている。また、高温下で作動する電子部品も増加している。そのため、電子部品に使用されるプラスチック、特にエポキシ樹脂組成物には高い耐熱性が要求されている。
【0004】
一方、エポキシ樹脂組成物の難燃化方法は、主にテトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテル等のハロゲン系難燃剤とアンチモン化合物を併用することにより行われているが、環境保護の観点からハロゲン系難燃剤やアンチモン化合物は規制の対象に挙げられており、ノンハロゲン化及びノンアンチモン化の要求が出てきている。そのため、エポキシ樹脂組成物にはハロゲン系難燃剤及びアンチモン化合物を含有することなく難燃性を発揮することが要求されている。
【0005】
エポキシ樹脂組成物の耐熱性を向上させる方法としては、特定のシラン化合物と特定のフェノール化合物を反応させて得られる化合物を硬化性樹脂として使用する方法がある。
【0006】
また、ハロゲン系難燃剤やアンチモン化合物を用いずに難燃化を達成する方法としては、リン酸エステル化合物などの有機リン系難燃剤を用いる方法(例えば特許文献1参照)、金属水酸化物などの無機難燃剤を用いる方法(例えば特許文献2参照)、充填剤の割合を高くする方法(例えば特許文献3参照)、難燃性の高い樹脂を使用する方法(例えば特許文献4参照)等が報告されている。
【0007】
【特許文献1】特開平9−235449号公報
【特許文献2】特開平9−241483号公報
【特許文献3】特開平7−82343号公報
【特許文献4】特開平11−140277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特定のシラン化合物と特定のフェノール化合物を反応させて得られる化合物を硬化性樹脂として使用する方法によれば、エポキシ樹脂組成物の耐熱性を向上させることは可能となる。しかしながら、上記硬化性樹脂のみでは十分な難燃性を満足するには至らないため、難燃性を確保するためには難燃剤の添加等の難燃化方法が必要である。
また、難燃化方法としては、エポキシ樹脂組成物にリン酸エステル化合物等の有機リン系難燃剤を用いる方法では可塑化により成形性や耐熱性が低下するという問題、無機難燃剤を用いる方法及び充填剤の割合を高くする方法では流動性が低下するという問題、難燃性の高い樹脂を使用する方法では樹脂の種類に限りがあるという問題がある。特に、官能基数が多く、当量が小さい樹脂を用いる場合、ベース樹脂の難燃性は低いため、難燃性を確保するためには多量の難燃剤を必要とする。
【0009】
以上のように、耐熱性を向上させ、かつハロゲン系難燃剤及びアンチモン化合物を含有することなく難燃性を確保しようとする場合、難燃剤を大量に添加する必要があり、結果として成形性や耐熱性が低下する。すなわち、現行のエポキシ樹脂組成物を用いて、高い耐熱性及び難燃性を有し、成形性に優れたエポキシ樹脂組成物が得られる方法は未だ提示されていないのが現状である。
【0010】
本発明はかかる状況に鑑みなされたものであり、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン化合物を含有することなく、成形性及び難燃性に優れており、かつ高い耐熱性を有することを可能にする方法として、新規硬化性樹脂を提供することを課題とする。さらに本発明では、それら硬化性樹脂を硬化剤として含むエポキシ樹脂組成物を封止材料として使用して耐熱性などの信頼性に優れた素子を備えた電子部品装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定のシラン化合物と、特定のフェノール化合物と特定のリン化合物の混合物を反応させて得られる硬化性樹脂が有用であり、それら硬化性樹脂の使用によって所期の目的が達成可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は以下に関する。
(1)(a)下記一般式(I−1)で示されるシラン化合物、下記一般式(I−1)で示されるシラン化合物の部分縮合物、下記一般式(I−2)で示されるシラン化合物及び下記一般式(I−2)で示されるシラン化合物の部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物との反応により得られる化合物であることを特徴とする硬化性樹脂。
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、nは0〜2の数であり、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、Rは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数2〜18のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、R及びRの2つ以上が結合して環状構造を形成してもよい。)
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、mは0又は1、nは2以上の整数であり、R1’は炭素数1〜18の置換又は非置換のn価の炭化水素基から選ばれ、R1’と結合する2つ以上のSiR2’3’(3−m)基とは全てが同一でも異なっていてもよく、R2’は水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、R1’又はR3’と結合して環状構造を形成してもよく、R3’は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数2〜18の置換又は非置換のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2つ以上のR3’が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。)
(2)(a)シラン化合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物との反応により得られる硬化性樹脂中に残存する揮発成分の含有量が、前記硬化性樹脂の全重量を基準として10重量%以下であることを特徴とする(1)に記載の硬化性樹脂。
(3)(a)シラン化合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物との反応により得られる硬化性樹脂であって、反応開始時の(a)シラン化合物におけるR及び/又はR3’基数を基準として、未反応のR及び/又はR3’基数が10%以下であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の硬化性樹脂。
(4)(a)シラン化合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物との反応により得られる硬化性樹脂において、前記硬化性樹脂中のリン原子含有量が0.5重量%以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の硬化性樹脂。
(5)(c)フェノール性水酸基含有リン化合物において、下記一般式(I−6)で示される構造式であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の硬化性樹脂。
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、lは1以上の整数であり、R7aは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2つのR7aが互いに結合して環状構造を形成してもよく、
7bは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2つ以上のR7bが互いに結合して環状構造を形成してもよい)
(6)(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物において、2価フェノール化合物と分子内にフェノール性水酸基を2つ有するリン化合物の合計が(b)と(c)の混合物全体の全重量を基準としてその70重量%以上であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の硬化性樹脂。
(7)(a)シラン化合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物とを反応させて得られる化合物の(b)と(c)において、(b)と(c)の混合物全体の全重量を基準としてその30重量%以上が(a)の少なくとも1種の化合物と環化可能であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の硬化性樹脂。
(8)(a)シラン化合物におけるR及び/又はR3’が、水酸基又は1価のオキシ基であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の硬化性樹脂。
(9)アリールオキシシリル(ArO−Si)結合を有し、下記一般式(I−3)及び(I−4)で示される構造部位の少なくとも一方を含有することを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の硬化性樹脂。
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示す。)
【0021】
【化5】

【0022】
(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示し、nは0以上の数を示す。)
(10)アリールオキシシリル結合の全数を基準として、一般式(I−3)及び(I−4)で示される構造部位の少なくとも一方を形成するアリールオキシシリル結合が20%以上であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の硬化性樹脂。
(11)(1)〜(11)のいずれかに記載の硬化性樹脂の製造方法であって、(a)シラン化合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物とを反応させる工程を有することを特徴とする硬化性樹脂の製造方法。
(12)(a)シラン化合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物との反応をホスフィン化合物、ホスホニウム塩化合物、環状アミジン化合物、及び環状アミジニウム塩からなる群より選ばれる触媒の存在下で実施することを特徴とする(11)に記載の硬化性樹脂の製造方法。
(13)触媒が、下記一般式(I−5)で示されるホスフィン化合物又はその分子間塩であることを特徴とする(12)に記載の硬化性樹脂の製造方法。
【0023】
【化6】

【0024】
(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよく、Rは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよく、Yは1以上の放出可能なプロトン(H)を有する炭素数0〜18の有機基から1つのプロトンが脱離した基であり1以上のRと互いに結合して環状構造を形成してもよい)
(14)(1)〜(10)のいずれかに記載の硬化性樹脂を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
(15)(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤とを含有するエポキシ樹脂組成物であって、(B)硬化剤が(1)〜(10)のいずれかに記載の硬化性樹脂を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
(16)さらに(C)硬化促進剤を含有することを特徴とする(15)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(17)さらに(D)無機充填剤を含有することを特徴とする(15)又は(16)に記載のエポキシ樹脂組成物。
(18)(A)エポキシ樹脂が、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂、及びアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物からなる群より選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂を含有することを特徴とする(15)〜(17)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
(19)(15)〜(18)のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物によって封止された素子を備えることを特徴とする電子部品装置。
【発明の効果】
【0025】
本発明による新規硬化性樹脂は様々な用途に使用することが可能である。例えば、本発明による硬化性樹脂は、エポキシ樹脂硬化剤として有用であり、それらを用いてエポキシ樹脂組成物を構成することによって、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン化合物を含有することなく、成形性及び難燃性に優れており、かつ高い耐熱性を有する硬化物を提供することが可能である。特に、本発明によるエポキシ樹脂組成物を用いてIC、LSI等の電子部品を封止することによって、信頼性の高い電子部品装置を提供することが可能となるため、その工業的価値は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明による新規硬化性樹脂は、(a)下記一般式(I−1)で示されるシラン化合物、下記一般式(I−1)で示されるシラン化合物の部分縮合物、下記一般式(I−2)で示されるシラン化合物及び下記一般式(I−2)で示されるシラン化合物の部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物との反応により得られる化合物であることを特徴とする。
【0027】
【化7】

【0028】
(式中、nは0〜2の数であり、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、Rは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数2〜18の置換又は非置換のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、R及びRの2つ以上が結合して環状構造を形成してもよい。)
【0029】
【化8】

【0030】
(式中、mは0又は1、nは2以上の整数であり、R1’は炭素数1〜18の置換又は非置換のn価の炭化水素基から選ばれ、R1’と結合する2つ以上のSiR2’3’(3−m)基とは全てが同一でも異なっていてもよく、R2’は水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、R1’又はR3’と結合して環状構造を形成してもよく、R3’は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数2〜18の置換又は非置換のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2つ以上のR3’が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。)
【0031】
((a)シラン化合物)
上記一般式(I−1)で示されるシラン化合物において、Rとして記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基」は、炭素数1〜18を有し、置換されても又は非置換であってもよい脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含むことを意味する。
【0032】
より具体的には、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、アリル基、ビニル基等の脂肪族炭化水素基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、及びイソシアネート基等で置換したものが挙げられる。
【0033】
また、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基には、置換又は非置換の脂環式炭化水素基も含まれる。置換又は非置換の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基等、並びにそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等で置換したものが挙げられる。
【0034】
上記置換又は非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基等のアリール基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基等のアルキル基置換アリール基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシ基置換アリール基等が挙げられ、それらはさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等で置換したものであってもよい。
【0035】
なお、上記一般式(I−1)のRとしては、特に限定されるものではないが、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる1価の置換基であることが好ましい。中でも、原料の入手しやすさの観点から、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基等の非置換或いはアルキル基又は/及びアルコキシ基又は/及び水酸基置換のアリール基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、エポキシシクロヘキシルエチル基、グリシドキシプロピル基、クロロプロピル基、メタクリルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基、N−フェニルアミノプロピル基、N−アミノプロピルアミノプロピル基、ウレイドプロピル基、イソシアネートプロピル基等の置換又は非置換の鎖状又は環状のアルキル基から選ばれる置換基がより好ましい。
【0036】
上記一般式(I−1)のRとして記載した「ハロゲン原子」には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が含まれる。
【0037】
また、上記一般式(I−1)のRとして記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基」には、例えば「炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素オキシ基」、及び「炭素数1〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素オキシ基」等が含まれる。より具体的な例示は以下の通りである。
【0038】
上記「炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素オキシ基」としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、アリルオキシ基、ビニルオキシ基等のRとして先に説明した脂肪族炭化水素基に酸素原子が結合した構造のオキシ基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
【0039】
上記「炭素数1〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素オキシ基」としては、例えば、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、フェノキシフェノキシ基等のRとして先に説明した芳香族炭化水素基に酸素原子が結合した構造のオキシ基等、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
【0040】
上記一般式(I−1)のRとして記載した「炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基」には、例えば、非置換のアミノ基、炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素アミノ基、芳香族炭化水素アミノ基、ジ脂肪族炭化水素アミノ基、ジ芳香族炭化水素アミノ基、脂肪族炭化水素芳香族炭化水素アミノ基、及びシリルアミノ基が含まれる。より具体的な例示は以下の通りである。
【0041】
上記「炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素アミノ基」としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、オクチルアミノ基、デシルアミノ基、ドデシルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、シクロヘプチルアミノ基、アリルアミノ基、ビニルアミノ基、シクロペンテニルアミノ基、シクロヘキセニルアミノ基等のRとして先に説明した脂肪族炭化水素基により置換されたアミノ基、及びこれらの脂肪族炭化水素基部分にアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子等が置換したものが挙げられる。
【0042】
「炭素数1〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素アミノ基」としては、例えば、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、トリルアミノ基、ジメチルフェニルアミノ基、エチルフェニルアミノ基、ブチルフェニルアミノ基、tert−ブチルフェニルアミノ基、メトキシフェニルアミノ基、エトキシフェニルアミノ基、ブトキシフェニルアミノ基、tert−ブトキシフェニルアミノ基等のRとして先に説明した脂肪族炭化水素基により置換されたアミノ基、及びこれらの芳香族炭化水素基部分にアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が置換したものが挙げられる。
【0043】
「炭素数1〜18の置換又は非置換のジ脂肪族炭化水素アミノ基」としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、ジ−tert−ブチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘプチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、メチルイソプロピルアミノ基、メチル−n−ブチルアミノ基、メチル−sec−ブチルアミノ基、メチル−tert−ブチルアミノ基、メチルシクロヘキシルアミノ基、ジアリルアミノ基、ジビニルアミノ基、ジシクロペンテニルアミノ基、ジシクロヘキセニルアミノ基、アリルメチルアミノ基等のRとして先に説明した2つの脂肪族炭化水素基により置換されたアミノ基、及びこれらにアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子等が置換したものが挙げられる。
【0044】
「炭素数1〜18の置換又は非置換のジ芳香族炭化水素アミノ基」としては、例えば、ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基、ジトリルアミノ基、ビス(ジメチルフェニル)アミノ基、ビス(エチルフェニル)アミノ基、ビス(ブチルフェニル)アミノ基、ビス(tert−ブチルフェニル)アミノ基、ビス(メトキシフェニル)アミノ基、ビス(エトキシフェニル)アミノ基、ビス(ブトキシフェニル)アミノ基、ビス(tert−ブトキシフェニル)アミノ基等のRとして先に説明した2つの芳香族炭化水素基により置換されたアミノ基、及びこれらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が置換したものが挙げられる。
【0045】
「炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素芳香族炭化水素アミノ基」としては、例えば、メチルフェニルアミノ基、メチルナフチルアミノ基、ブチルフェニルアミノ基等の、Rとして先に説明した脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基により置換されたアミノ基が挙げられる。
【0046】
「炭素数1〜18の置換又は非置換のシリルアミノ基」としては、例えば、非置換のシリルアミノ基、トリメチルシリルアミノ基、トリエチルシリルアミノ基、トリフェニルシリルアミノ基、メチル(トリメチルシリル)アミノ基、メチル(トリフェニルシリル)アミノ基、フェニル(トリメチルシリル)アミノ基、フェニル(トリフェニルシリル)アミノ基等のシリル基及び/又はアミノ基にRとして先に説明した脂肪族炭化水素基又は/及び芳香族炭化水素基により置換されたシリルアミノ基等、及びこれらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が置換したものが挙げられる。
【0047】
また、上記一般式(I−1)のRとして記載した「炭素数2〜18の置換又は非置換のカルボニルオキシ基」には、例えば「炭素数2〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基」、及び「炭素数2〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素カルボニルオキシ基」等が含まれる。より具体的な例示は以下の通りである。
【0048】
上記「炭素数2〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基」としては、例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、tert−ブチルカルボニルオキシ基、シクロプロピルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、アリルカルボニルオキシ基、ビニルカルボニルオキシ基等のRとして先に説明した脂肪族炭化水素基のカルボニルオキシ基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
【0049】
上記「炭素数2〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素カルボニルオキシ基」としては、例えば、フェニルカルボニルオキシ基、メチルフェニルカルボニルオキシ基、エチルフェニルカルボニルオキシ基、メトキシフェニルカルボニルオキシ基、ブトキシフェニルカルボニルオキシ基、フェノキシフェニルカルボニルオキシ基等のRとして先に説明した芳香族炭化水素基に酸素原子が結合した構造のオキシ基等、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
【0050】
上記一般式(I−1)のRは、特に限定されるものではないが、入手が容易であることから、塩素原子、水酸基、炭素数1〜8を有する置換又は非置換の1価のオキシ基が好ましい。中でも、反応性の観点からは、塩素原子、水酸基又はオキシ基がより好ましく、本発明による新規硬化性樹脂をエポキシ樹脂硬化剤として使用して得られる硬化物の長期信頼性に及ぼす影響を考慮すると、Rの少なくとも1つが水酸基又は炭素数1〜8のオキシ基であることがさらに好ましい。
【0051】
また、上記一般式(I−1)に記載した「R及びRの2つ以上が結合して環状構造を形成してもよい」とは、R及びRが互いに結合し、全体としてそれぞれ2価以上の有機基となる場合を意味する。
例えば、2つのRがSi原子と結合して環状構造を形成する場合、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等のアルキレン基、エチレニル、プロピレニル、ブチレニル基等のアルケニル基、メチレンフェニレン基等のアラルキレン基、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等のアリーレン基が挙げられる。1つのRと1つのRとがSi原子と結合して環状構造を形成する場合、上記アルキレン基、アルケニル基、アラルキレン基、アリーレン基のオキシ基が挙げられる。2つのRがSi原子と結合して環状構造を形成する場合、上記アルキレン基、アルケニル基、アラルキレン基のジオキシ基が挙げられる。それらの有機基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等で置換されていてもよい。
【0052】
上記一般式(I−1)における「n」は、0〜2の数であれば特に制限されるものではない。しかし、耐熱性の観点からはn=0又は1であることが好ましく、流動性の観点からはn=1であることがさらに好ましい。また、生成する硬化物の低応力性の観点からはn=2であることが好ましい。
【0053】
上記一般式(I−1)の具体的な化合物を以下に例示するが、それらに限られるものではない。n=0のシラン化合物としては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラキス(エトキシエトキシ)シラン、テトラキス(メトキシエトキシ)シラン、テトラプロポキシシラン、テトラアリロキシシラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラアセトキシシラン、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン等が挙げられる。
【0054】
n=1のシラン化合物としては、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリフルオロシラン、フェニルアセトキシシラン、フェニルビス(ジメチルアミノ)クロロシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルアセトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルアセトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0055】
また、n=2のシラン化合物としては、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメシチルジメトキシシラン等の置換又は非置換のジアリールジアルコキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、デシルメチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等の置換又は非置換のジアルキルジアルコキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビニルフェニルジエトキシシラン等のアリールアルキルジアルコキシシラン、ジフェニルシランジオール等の置換又は非置換のジアリールシランジオール、ジフェニルジクロロシラン、ジトリルジクロロシラン、ジメシチルジクロロシラン等の置換又は非置換のジアリールジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ドデシルメチルジクロロシラン、ジビニルジクロロシラン、ジイソプロピルジクロロシラン等の置換又は非置換のジアルキルジクロロシラン、フェニルエチルジクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン等の置換又は非置換のアリールアルキルジクロロシラン、ジメチルジアセトキシシラン等のジアルキルジアセトキシシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジエチルシラン等の置換又は非置換のジアルキルジアミノシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルシラン等の置換又は非置換のジアリールジアミノシラン、フェニルメチルビス(ジメチルアミノ)シラン、ヘキサメチルシクロトリシラザン等の環状シラン化合物、ジメチルメトキシクロロシラン等のジアルキルアルコキシクロロシラン等が挙げられる。
【0056】
上述の具体例は、いずれも工業製品又は試薬として入手可能である。上記一般式(I−1)で示される化合物は、工業製品又は試薬として購入可能な化合物を用いても、公知の方法で合成した化合物を用いても構わない。
【0057】
上記「一般式(I−1)で示されるシラン化合物の部分縮合物」とは、上記一般式(I−1)で示される1種の化合物が自己縮合した化合物、又は2種以上の化合物が互いに反応し縮合して生成した化合物を意味する。特に限定されるものではないが、縮合反応は、必要であれば水を用い、また、必要に応じて、酸、アルカリ等の縮合反応を促進する公知の物質を加えて行うことができる。通常の縮合反応では、1分子の水を消費して、1つの縮合反応が起こり、2分子のRHが副生成物として生じる(2≡Si−R+HO→≡Si−O−Si≡+2RH)。
【0058】
縮合の度合いは、反応条件により調節することが可能であり、縮合してできる化合物の分子数は、特に限定されるものではないが、平均で1.5分子以上であることが好ましく、2〜50分子であることがより好ましく、2〜20分子であることがさらに好ましい。本発明で使用可能なシラン化合物は、上述のようにそれらが部分的に縮合した化合物を含めばよく、その一部は縮合せずに上記一般式(I−1)で示される化合物のままであってよい。
【0059】
本発明において使用される(a)上記一般式(I−1)で示されるシラン化合物の部分縮合物は、予めシラン化合物を縮合させて用いても、フェノール化合物と反応させるときに同時に縮合させても、市販品として入手可能なものを用いても、これらを組み合わせても構わない。市販品として入手可能な上記一般式(I−1)で示される化合物の部分縮合物の具体例としては、式(I−1)のRがメトキシ基であり、n=0、平均縮合分子数が3〜5のMシリケート51(多摩化学工業株式会社製商品名)、Rがメトキシ基であり、n=0、平均縮合分子数が8〜12のMシリケート56(多摩化学工業株式会社製商品名)、Rがエトキシ基であり、n=0、平均縮合分子数が約5のシリケート40(多摩化学工業株式会社製商品名)、Rがエトキシ基であり、n=0、平均縮合分子数が6〜8のシリケート45(多摩化学工業株式会社製商品名)、Rがメチル基及びRがメトキシ基であり、n=1、平均縮合分子数が3〜5のMTMS−A(多摩化学工業株式会社製商品名)、Rがメチル基、Rがメトキシ基であり、n=1、縮合分子数が2の1,3−ジメチルテトラメトキシジシロキサン(アズマックス株式会社販売試薬)、Rがn−オクチル基、Rがエトキシ基であり、n=1、縮合分子数が2の1,3−ジ−n−オクチルテトラエトキシジシロキサン(アズマックス株式会社販売試薬)等が挙げられる。
【0060】
上記一般式(I−2)のR1’として記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換のn価の炭化水素基(nは2以上の整数)」は、炭素数1〜18を有し、置換されても又は非置換であってもよいn価の脂肪族炭化水素基及びn価の芳香族炭化水素炭素基を含むことを意味する。
【0061】
より具体的には、上記置換又は非置換のn価の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、ビニレン基、エチリデン基、ビニリデン基、プロペニレン基、ブタジエニレン基等の2価の脂肪族炭化水素基、メチリデン基、エチリデン基、1,2,3−プロパントリイル基等の3価の脂肪族炭化水素基、ブタンジイリデン基、1,3−プロパンジイル−2−イリデン等の4価の脂肪族炭化水素基及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基、ニトロ基等で置換したものが挙げられる。
【0062】
また、上記置換又は非置換のn価の脂肪族炭化水素基には、置換又は非置換の脂環式炭化水素基も含まれる。置換又は非置換の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロペンテニレン基、シクロヘキセニレン基、シクロヘキシリデン基等の2価の脂環式炭化水素基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基等の3価の脂環式炭化水素基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基、ニトロ基等で置換したものが挙げられる。
【0063】
また、上記置換又は非置換のn価の脂肪族炭化水素基には、置換又は非置換のヘテロ原子含有脂肪族炭化水素基も含まれる。置換又は非置換のヘテロ原子含有脂肪族炭化水素基としては、例えば、2−オキサプロピレン基、2−オキサブチレン基、3−オキサペンチレン基、2−チオプロピレン基、2−チオブチレン基、3−チオペンチレン基、4−チオヘプチレン基、2,3−ジチオブチレン基、4,5−ジチオオクチレン基、4,5,6,7−テトラチオノニレン基、4−アザヘプチレン基等の2価のヘテロ原子含有脂肪族炭化水素基、2−アザプロパンジイル−2−メチレン基、3−アザペンタンジイル−3−エチレン基等の3価のヘテロ原子含有脂肪族炭化水素基及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基、ニトロ基等で置換したものが挙げられる。
【0064】
上記置換又は非置換のn価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基等の2価の芳香族炭化水素基、ベンゼントリイル基、ビフェニルトリイル基等の3価の芳香族炭化水素基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基、ニトロ基等で置換したものが挙げられる。
【0065】
また、上記置換又は非置換のn価の芳香族炭化水素基には、置換又は非置換の多環芳香族炭化水素基も含まれる。置換又は非置換の多環芳香族式炭化水素基としては、ナフチレン基、アントラセニレン基等の2価の多環芳香族炭化水素基、ナフタレントリイル基等の3価の多環芳香族炭化水素基及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基、ニトロ基等で置換したものが挙げられる。
【0066】
また、上記置換又は非置換のn価の芳香族炭化水素基には、置換又は非置換のヘテロ原子含有芳香族炭化水素基も含まれる。置換又は非置換のヘテロ原子含有芳香族炭化水素基としては、ジフェニレンオキシド基、ジフェニレンスルフィド基等の2価のヘテロ原子含有芳香族炭化水素基、トリフェニレンアミノ基等の3価のヘテロ原子含有芳香族炭化水素基及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基、ニトロ基等で置換したものが挙げられる。
【0067】
また、上記置換又は非置換のヘテロ原子含有脂肪族炭化水素基又は/及びヘテロ原子含有芳香族炭化水素基には、置換又は非置換の複素環含有基も含まれる。置換又は非置換の複素環含有基としては、フランジイル基、チオフェンジイル基、ピロールジイル基、イミダゾールジイル基、モルホリンジイル基等の2価の複素環含有基、フラントリイル基、チオフェントリイル基、ピロールトリイル基、イミダゾールトリイル基、モルホリントリイル基、トリアジントリイル基、イソシアヌレートトリイル基、イソシアヌレートトリプロピレン基等の3価の複素環含有基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基、ニトロ基等で置換したものが挙げられる。
【0068】
また、上記置換又は非置換のn価の脂肪族炭化水素基及びn価の芳香族炭化水素基には、脂肪族部分と芳香族部分とが混在した置換基も含まれる。このような置換基として、例えば、メチレンビスフェニレン基、プロピレンビスフェニレン基、フェニレンビスメチレン基、フェニレンビスエチレン基、フェニレンメチレン基等の2価の置換基、ベンゼントリイルトリスメチレン基等の3価の置換基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基、ニトロ基等で置換したものが挙げられる。
【0069】
上記一般式(I−2)における「n」は、2以上の整数であれば特に制限されるものではない。しかし、粘度の観点からは、nは2又は3であることが好ましく、2価又は3価の炭化水素基であることが好ましい。中でも、原料の入手のしやすさの観点から、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、フェニレンビスエチレン基等の2価の炭素原子及び水素原子のみからなる脂肪族炭化水素基、2−チオプロピレン基、4−チオヘプチレン基、4,5−ジチオオクチレン基、4,5,6,7−テトラチオノニレン基、4−アザヘプチレン基等の2価のヘテロ原子含有脂肪族炭化水素基、イソシアヌレートトリプロピレン基等の3価の複素環含有基がより好ましい。
【0070】
上記一般式(I−2)のR2’として記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基」は、炭素数1〜18を有し、置換されても又は非置換であってもよい脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素炭素基を含むことを意味する。
【0071】
より具体的には、上記一般式(I−1)で示されるシラン化合物において、Rとして記載した置換基が挙げられる。
【0072】
また、上記一般式(I−2)のR2’として記載した「R1’又はR3’と結合して環状構造を形成してもよい」とは、R1’又はR2’又はR2’又はR3’が互いに結合し、全体としてそれぞれ2価の有機基となる場合を意味する。例えば、R1’とR2’がSi原子と結合して環状構造を形成する場合、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等のアルキレン基、エチレニル、プロピレニル、ブチレニル基等のアルケニル基、メチレンフェニレン基等のアラルキレン基、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等のアリーレン基が挙げられる。また、R2’とR3’がSi原子と結合して環状構造を形成する場合、上記アルキレン基、アルケニル基、アラルキレン基、アリーレン基のオキシ基が挙げられる。それらの有機基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等で置換されていてもよい。
【0073】
上記一般式(I−2)のR3’として記載した「ハロゲン原子」には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が含まれる。
【0074】
また、上記一般式(I−2)のR3’として記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基」には、例えば「炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素オキシ基」、及び「炭素数1〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素オキシ基」等が含まれる。より具体的には、上記一般式(I−1)で示されるシラン化合物において、Rとして例示した「炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基」が挙げられる。
【0075】
上記一般式(I−2)のR3’として記載した「炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基」には、例えば、非置換のアミノ基、炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素アミノ基、芳香族炭化水素アミノ基、ジ脂肪族炭化水素アミノ基、ジ芳香族炭化水素アミノ基、脂肪族炭化水素芳香族炭化水素アミノ基、及びシリルアミノ基が含まれる。より具体的には、上記一般式(I−1)で示されるシラン化合物において、Rとして例示した「炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基」が挙げられる。
【0076】
また、一般式(I−2)のR3’として記載した「炭素数2〜18の置換又は非置換のカルボニルオキシ基」には、例えば「炭素数2〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基」、及び「炭素数2〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素カルボニルオキシ基」等が含まれる。より具体的には、上記一般式(I−1)で示されるシラン化合物において、Rとして例示した「炭素数2〜18の置換又は非置換のカルボニルオキシ基」が挙げられる。
【0077】
また、一般式(I−2)のR3’として記載した「2つ以上のR3’が互いに結合して環状構造を形成してもよい」とは、2つ以上のR3’が互いに結合し、全体としてそれぞれ2価以上の有機基となる場合を意味する。例えば、Si原子と結合して環状構造を形成し得るR1’として先に例示した2価の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基のジオキシ基、R1’として先に例示した3価の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基のトリオキシ基等が挙げられ、それらはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン等で置換されていてもよい。
【0078】
上記一般式(I−2)のR3’は、特に限定されるものではないが、入手が容易であることから、塩素原子、水酸基、炭素数1〜8を有する置換又は非置換の1価のオキシ基が好ましい。中でも、反応性の観点からは、塩素原子、水酸基又はオキシ基がより好ましく、シラン化合物とフェノール化合物を反応させて得られる化合物の製造の簡便さに及ぼす影響を考慮すると、R3’の少なくとも1つが水酸基又は炭素数1〜8のオキシ基であることがさらに好ましい。
【0079】
上記一般式(I−2)における「m」は、0又は1であれば特に制限されるものではない。しかし、耐熱性の観点からは、n=0であることが好ましく、生成する硬化物の低応力性の観点からはn=1であることが好ましい。
【0080】
上記一般式(I−2)の具体的な化合物の例示としては、以下に限られるものではないが、ビス(ジクロロシリル)メタン、ビス(メチルジクロロシリル)メタン、ビス(メチルジクロロシリル)エタン、ビス(メチルジフルオロシリル)エタン等の置換又は非置換のビス(アルキルジハロシリル)アルカン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)アミン等の置換又は非置換のビス(アルキルジアルコキシシリルアルキル)アミン等のm=1のシラン化合物が挙げられる。また、ビス(トリクロロシリル)メタン、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン、1,3−ビス(トリクロロシリル)プロパン、1,6−ビス(トリクロロシリル)へキサン、1,8−ビス(トリクロロシリル)オクタン等の置換又は非置換のビス(トリハロシリル)アルキル、ビス(トリクロロシリル)エチレン等の置換又は非置換のビス(トリハロシリル)アルケン、ビス(トリクロロ)アセチレン等の置換又は非置換のビス(トリハロシリル)アルキン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,8−ビス(トリエトキシシリル)オクタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)デカン等の置換又は非置換のビス(トリアルコキシシリル)アルカン、ビス(トリエトキシシリル)エチレン等の置換又は非置換のビス(トリアルコキシシリル)アルケン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン等のビス(アルコキシシリル)アレーン、1,4−ビス(トリメトキシシリルメチル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメトキシシリルプロピル)ベンゼン等のビス(アルコキシシリルアルキル)アレーン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン等の置換又は非置換のビス(トリアルコキシシリルアルキル)アミン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等の置換又は非置換のビス(トリアルコキシシリルアルキル)スルフィド等のm=0のシラン化合物が挙げられる。これら具体例は、いずれも工業製品又は試薬として入手可能である。上記一般式(I−2)で示される化合物は、工業製品又は試薬として購入可能な化合物を用いても、公知の方法で合成した化合物を用いても構わない。
【0081】
上記「一般式(I−2)で示されるシラン化合物の部分縮合物」とは、上記一般式(I−2)で示される1種の化合物が自己縮合した化合物、又は2種以上の化合物が互いに反応し縮合して生成した化合物を意味する。特に限定されるものではないが、縮合反応は、必要であれば水を用い、また、必要に応じて、酸、アルカリ等の縮合反応を促進する公知の物質を加えて行うことができる。通常の縮合反応では、1分子の水を消費して、1つの縮合反応が起こり、2分子のR3’Hが副生成物として生じる(2≡Si−R3’+HO→≡Si−O−Si≡+2R3’H)。
【0082】
縮合の度合いは、反応条件により調節することが可能であり、縮合してできる化合物の分子数は、特に限定されるものではないが、平均で1分子より大きいことが好ましく、1.05〜50分子であることがより好ましく、1.1〜20分子であることがさらに好ましい。本発明で使用可能なシラン化合物は、上述のようにそれらが部分的に縮合した化合物を含有すればよく、その一部は縮合せずに上記一般式(I−2)で示される化合物のままであってよい。
【0083】
本発明において使用されるシラン化合物の部分縮合物は、予め上記一般式(I−2)で示されるシラン化合物を縮合させて用いても、フェノール化合物と反応させるときに同時に縮合させても、市販品として入手可能なものを用いても、これらを組み合わせても構わない。
【0084】
((b)フェノール化合物)
本発明において使用可能な(b)フェノール化合物としては、分子内に1個以上のフェノール性水酸基を有するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、クミルフェノール、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類、α−ナフトール、β−ナフトール、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン等のナフトール類等の1分子中に1個のフェノール性水酸基を有する化合物(すなわち、1価フェノール化合物);
レゾルシン、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の1分子内に2個のフェノール性水酸基を有する化合物(すなわち、2価フェノール化合物);
フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;
フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;
パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;
メラミン変性フェノール樹脂;
テルペン変性フェノール樹脂;
フェノール類及び/又はナフトール類とジシクロペンタジエンから共重合により合成される、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;
シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;
多環芳香環変性フェノール樹脂;
ビフェニル型フェノール樹脂;
トリフェニルメタン型フェノール樹脂;および
上記樹脂の2種以上を共重合して得たフェノール樹脂
等の分子内に2つ以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物が挙げられる。上記フェノール化合物の1種を単独で使用しても、それら化合物の2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0085】
本発明において使用可能な(b)フェノール化合物は、本発明による硬化性樹脂の粘度の観点では、1分子中に2つ以下のフェノール性水酸基を有する化合物が好ましい。1分子中のフェノール性水酸基の数が多いほど、生成する化合物の粘度が高くなり、製造及び/又は製造後の取り扱いが困難となる傾向がある。特に、ノボラック型フェノール樹脂又はレゾール型フェノール樹脂を用いた場合、1分子中のフェノール性水酸基が多く、反応点間の分子量が小さいことからゲル化が起こりやすい傾向がある。
【0086】
一方、本発明において使用可能な(b)フェノール化合物は、本発明による硬化性樹脂を含有したエポキシ樹脂組成物の耐熱性の観点では、1分子中に2つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物が好ましい。しかし、上述のように分子内のフェノール性水酸基の数が増えると、得られる硬化性樹脂の粘度が高くなる傾向がある。そのため、本発明における(b)フェノール化合物は2価フェノール化合物を用いることが好ましい。
【0087】
2価フェノール化合物の中でも、シラン化合物と環化反応が可能なフェノール化合物が好ましい。このような化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば下記一般式(I−1a)〜(I−1d)に示されるようなフェノール化合物が挙げられ、それらの1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
【化9】

【0089】
(式中、R6aは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のR6aが結合して環状構造を形成してもよい)
【0090】
上記一般式(I−1a)で示されるフェノール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、カテコール、2,3−ジヒドロキシナフタレンが挙げられる。
【0091】
【化10】

【0092】
(式中、R6bは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のR6bが結合して環状構造を形成してもよい)
【0093】
上記一般式(I−1b)で示されるフェノール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、2,2’−ビフェノール、1,1’−ビ−2−ナフトールが挙げられる。
【0094】
【化11】

【0095】
(式中、R6cは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のR6cが結合して環状構造を形成してもよく、
6dは、炭素数0〜18の2価の有機基を示す)
【0096】
上記一般式(I−1c)で示されるフェノール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2’−ジヒドロキシ−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’、5,5’−−テトラメチルジフェニルメタン、2,2’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、1,1’−メチレンジ−2−ナフトールが挙げられる。
【0097】
【化12】

【0098】
(式中、R6eは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のR6eが結合して環状構造を形成してもよい)
【0099】
上記一般式(I−1d)で示されるフェノール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、1,8−ジヒドロキシナフタレンが挙げられる。
【0100】
上記一般式(I−1a)〜(I−1d)のR6a、R6b、R6c、及びR6eとして記載した用語「炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基」は、炭素数1〜18を有し、かつ置換されても又は非置換であってもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素オキシ基、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素カルボニル基、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素オキシカルボニル基、及び脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素カルボニルオキシ基が結合したものを含むことを意味する。
【0101】
上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、アリル基、及びビニル基等の脂肪族炭化水素基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、水酸基、アミノ基、及びハロゲン等で置換したもの挙げられる。
【0102】
上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基には、置換又は非置換の脂環式炭化水素基も含まれる。置換又は非置換の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基等、並びにそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、及びハロゲン等で置換したものが挙げられる。
【0103】
上記置換又は非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基等のアリール基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基等のアルキル基置換アリール基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシ基置換アリール基が挙げられ、それらをさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものであってもよい。
【0104】
上記脂肪族炭化水素オキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、アリルオキシ基、ビニルオキシ基等の上述の脂肪族炭化水素基に酸素原子が結合した構造を有する基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものが挙げられる。上記芳香族炭化水素オキシ基としては、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、フェノキシフェノキシ基等の上述の芳香族炭化水素基に酸素原子が結合した構造を有する基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものが挙げられる。
【0105】
上記カルボニル基としては、ホルミル基、アセチル基、エチルカルボニル基、ブチリル基、シクロヘキシルカルボニル基、アリルカルボニル等の脂肪族炭化水素カルボニル基、フェニルカルボニル基、メチルフェニルカルボニル基等の芳香族炭化水素カルボニル基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものが挙げられる。
【0106】
上記オキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の脂肪族炭化水素オキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、メチルフェノキシカルボニル基等の芳香族炭化水素オキシカルボニル基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものが挙げられる。
【0107】
上記カルボニルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、アリルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基等の脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、メチルフェニルカルボニルオキシ基等の芳香族炭化水素カルボニルオキシ基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものが挙げられる。
【0108】
さらに、R6a、R6b、R6c、及びR6eとして記載した「環状構造を形成してもよい」とは、2以上のR6a、R6b、R6c、又はR6e結合し、全体としてそれぞれ2〜4価の有機基となる場合を意味する。例えば、それらが結合するベンゼン環と併せて、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等の多環芳香族環を形成するような基が挙げられ、それらはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン等で置換されてもよい。
【0109】
上記一般式(I−1a)〜(I−1d)のR6a、R6b、R6c、及びR6eは、特に限定されるものではないが、水素原子、水酸基、及び1価の有機基であるアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。中でも、原料の入手しやすさの観点からは、水素原子、水酸基、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基、等の非置換或いはアルキル基又は/及びアルコキシ基又は/及び水酸基置換の芳香族基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基等の鎖状又は環状のアルキル基から選ばれる置換基がより好ましく、水素原子、水酸基、フェニル基、メチル基、エチル基、tert−ブチル基から選ばれる置換基がさらに好ましい。2以上のR、R、R、又はR10が結合して環状構造を形成する場合、それらが結合するベンゼン環と併せて、ナフタレン環となることが好ましい。
【0110】
また、上記一般式(I−1a)〜(I−1d)のR6a、R6b、R6c、及びR6eは、特に限定されるものではないが、耐熱性の観点から、R6a、R6b、R6c、及びR6eそれぞれの50%以上が水素原子であることが好ましく、75%以上が水素原子であることがより好ましい。
【0111】
上記一般式(I−1c)のR6dは、炭素数0〜18の2価の有機基を示す。炭素数0〜18の有機基としては、特に制限はなく、例えば、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基、スルホニル基、炭素数1〜18の2価の炭化水素基等が挙げられる。炭素数1〜18の2価の炭化水素基としては、特に制限はなく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、シクロへキシレン基、シクロペンチレン基等の脂肪族炭化水素基及びこれらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等が置換したもの、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基等の芳香族炭化水素基及びこれらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等が置換したものが挙げられる。
【0112】
中でも、入手しやすさの観点からは、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基、スルホニル基、アルキレン基、シクロへキシレン基、シクロペンチレン基、これらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基が置換したものが好ましい。酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基、スルホニル基、メチレン基、メチルメチレン基、イソプロピルメチレン基、フェニルメチレン基、シクロヘキシルメチレン基、ジメチルメチレン基、メチルジイソピルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、シクロへキシレン基、シクロペンチレン基、シクロペンチレン基がより好ましい。
【0113】
((c)フェノール性水酸基含有リン化合物)
【0114】
上記一般式(I−6)のR7aとして記載した「ハロゲン原子」には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が含まれる。
【0115】
上記一般式(I−6)のR7aとして記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基」は、炭素数1〜18を有し、かつ置換されても又は非置換であってもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、及び脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素オキシ基、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素カルボニル基、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素オキシカルボニル基、及び脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素カルボニルオキシ基を含むことを意味する。
【0116】
より具体的には、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、アリル基、ビニル基等の脂肪族炭化水素基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、水酸基、アミノ基、及びハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
【0117】
また、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基には、置換又は非置換の脂環式炭化水素基も含まれる。置換又は非置換の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基等、並びにそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、及びハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
【0118】
上記置換又は非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基等のアリール基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基等のアルキル基置換アリール基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシ基置換アリール基等が挙げられ、それらはさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものであってもよい。
【0119】
上記脂肪族炭化水素オキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、アリルオキシ基、ビニルオキシ基等の上述の脂肪族炭化水素基に酸素原子が結合した構造を有する基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。上記芳香族炭化水素オキシ基としては、例えば、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、フェノキシフェノキシ基等の上述の芳香族炭化水素基に酸素原子が結合した構造を有する基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
【0120】
上記カルボニル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、エチルカルボニル基、ブチリル基、シクロヘキシルカルボニル基、アリルカルボニル等の脂肪族炭化水素カルボニル基、フェニルカルボニル基、メチルフェニルカルボニル基等の芳香族炭化水素カルボニル基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
【0121】
上記オキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の脂肪族炭化水素オキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、メチルフェノキシカルボニル基等の芳香族炭化水素オキシカルボニル基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子で置換したものが挙げられる。
【0122】
上記カルボニルオキシ基としては、例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、アリルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基等の脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、メチルフェニルカルボニルオキシ基等の芳香族炭化水素カルボニルオキシ基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
【0123】
上記一般式(I−6)のR7aとして記載したした用語「2つのR7aが互いに結合して環状構造を形成してもよい」とは、2つのR7aが結合し、2価の有機基となる場合を意味する。例えば、リン原子と結合して環状構造を形成し得るエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等のアルキレン基、エチレニル、プロピレニル、ブチレニル基等のアルケニル基、メチレンフェニレン基等のアラルキレン基、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等のアリーレン基が挙げられ、それらはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。
【0124】
上記一般式(I−6)のR7aとしては、特に限定されるものではないが、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。中でも原料の入手しやすさの観点からは、水素原子、水酸基、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基等の非置換或いはアルキル基及び/又はアルコキシ基及び/又は水酸基置換のアリール基、及びメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基等の鎖状又は環状のアルキル基から選ばれる置換基がさらに好ましい。2つのR7aが互いに結合して環状構造を形成する場合は、特に限定されないが、R7aが結合しているベンゼン環と併せて、1−(−2−ヒドロキシナフチル)基、1−(−4−ヒドロキシナフチル)基等の多環芳香族基を形成する有機基が好ましい。
【0125】
上記一般式(I−6)のR7bとして記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基」は、炭素数1〜18を有し、かつ置換されても又は非置換であってもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、及び脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素オキシ基、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素カルボニル基、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素オキシカルボニル基、及び脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素カルボニルオキシ基を含むことを意味する。
【0126】
より具体的には、上記一般式(I−6)のR7aとして記載した置換基が挙げられる。
【0127】
上記一般式(I−6)のR7bとして記載した用語「2つ以上のR7bが互いに結合して環状構造を形成してもよい」とは、2〜4つのR7bが結合し、全体としてそれぞれ2〜4価の有機基となる場合を意味する。例えば、環状構造を形成し得るエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等のアルキレン基、エチレニル、プロピレニル、ブチレニル基等のアルケニル基、メチレンフェニレン基等のアラルキレン基、並びにフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等のアリーレン基、及びそれらアルキレン基、アルケニル基、アラルキレン基、及びアリーレン基にオキシ基又はジオキシ基が結合した基が挙げられ、それらはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0128】
上記一般式(I−6)のR7bとしては、特に限定されるものではないが、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。中でも原料の入手しやすさの観点からは、水素原子、水酸基、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基等の非置換或いはアルキル基又は/及びアルコキシ基又は/及び水酸基置換のアリール基、及びメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基等の鎖状又は環状のアルキル基から選ばれる置換基がさらに好ましい。2つ以上のR7bが互いに結合して環状構造を形成する場合は、特に限定されないが、R7bが結合しているベンゼン環と併せて、1−(−2−ヒドロキシナフチル)基、1−(−4−ヒドロキシナフチル)基等の多環芳香族基を形成する有機基が好ましい。
【0129】
また、上記一般式(I−6)のR7bとしては、特に限定されるものではないが、耐熱性の観点から、R7bの50%以上が水素原子であることが望ましく、75%以上が水素原子であることがより好ましい。
【0130】
上記一般式(I−6)における「l」は、1〜5の整数であれば特に制限されるものではない。しかし、本発明による硬化性樹脂の粘度の観点では、リン化合物中に2つ以下のフェノール性水酸基を有することが好ましい。リン化合物中のフェノール性水酸基の数が多いほど、生成する硬化性樹脂の粘度が高くなり、製造及び/又は製造後の取り扱いが困難となる傾向がある。
【0131】
上記一般式(I−6)における「l」は、1〜5の整数であれば特に制限されるものではないが、本発明による硬化性樹脂の耐熱性の観点では、リン化合物中に2つ以上のフェノール性水酸基を有することが好ましい。しかし、上述のように分子内のフェノール性水酸基の数が増えると、得られる反応性生物の粘度が高くなる傾向がある。そのため、本発明における(c)フェノール性水酸基含有リン化合物はフェノール性水酸基を2つ有するリン化合物であることが望ましい。
【0132】
フェノール性水酸基を2つ含有するリン化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(I−6a)及び(I−6b)で示されるフェナントレン型リン化合物、下記一般式(I−6c)で示されるリン化合物が挙げられ、これら化合物の1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせ用いてもよい。
【0133】
【化13】

【0134】
【化14】

【0135】
【化15】

【0136】
(式中、R7cは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソブロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基等を示す)
【0137】
上記一般式(I−6a)〜(I−6c)で示されるリン化合物の中でも、(I−6a)のR7cが全て水素原子である10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(三光株式会社製商品名HCA−HQ)、(I−6b)のR7cが全て水素原子である10−(1,4−ジヒドロキシ―2―ナフチル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、(I−6c)のR7cが全て水素原子である2−(ジフェニルホスフィニル)ハイドロキノン(北興化学工業株式会社製商品名PPQ)等が市販品として入手可能である。
【0138】
本発明による硬化性樹脂中の(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の含有量は、特に制限されるものではないが、難燃性の観点から、前記硬化性樹脂中のリン原子の量で0.5重量%以上であることが好ましく、0.6重量%以上であることがより好ましく、0.7重量%以上であることがさらに好ましい。リン原子含有量が少なくなると、難燃性が低下する傾向がある。例えば、リン原子含有量が0.5重量%未満である場合、十分な難燃性を得られない傾向がある。
【0139】
((b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物)
本発明おいて使用可能な(b)フェノール化合物及び(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物は、特に限定されるものではないが、前述のように、硬化性樹脂の粘度の観点では分子中に2つ以下のフェノール性水酸基を有する化合物であることが好ましい。1分子中のフェノール性水酸基の数が多くなるほど、生成する硬化性樹脂の粘度が高くなり、製造及び/又は製造後の取り扱いが困難となる傾向がある。
【0140】
本発明おいて使用可能な(b)フェノール化合物及び(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物は、特に限定されるものではないが、前述のように、硬化性樹脂の耐熱性の観点では2つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物であることが好ましい。しかし、上述のように分子内のフェノール性水酸基の数が増えると、得られる硬化性樹脂の粘度が高くなる傾向がある。そのため、本発明における(b)と(c)の混合物において、(b)と(c)の混合物全体の全重量を基準として、2価フェノール化合物とフェノール性水酸基を2つ有するリン化合物の含有量を、好ましくはその60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは75重量%以上とすることが望ましい。例えば、2価フェノール化合物とフェノール性水酸基を2つ有するリン化合物の含有量が60重量%以下、分子内に3つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物の含有量が40重量%以上となると、反応によって得られる硬化性樹脂の粘度が高くなり、取り扱い性に劣る傾向がある。
【0141】
本発明おいて(b)フェノール化合物及び(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物は、特に限定されるものではないが、分子内に2つ以上のフェノール性水酸基を有し、さらに(a)シラン化合物と環化可能な化合物を使用することも可能である。この場合、分子内に3つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物の含有量が30重量%以上となっても、反応によって得られる硬化性樹脂の粘度は著しく高くならず、取り扱い性が著しく低下することはない。(a)と環化可能な分子内に2つ以上のフェノール性水酸基を有する(b)及び/又は(c)を使用する場合、それら化合物に由来するフェノール性水酸基が、全フェノール性水酸基中の30重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましく、70重量%以上であることが特に好ましい。
【0142】
(a)シラン化合物と環化可能な(b)フェノール化合物及び/又は(c)フェノール性水酸基含有リン化合物を使用する場合、より具体的には、流動性の観点では、(b)と(c)の混合物全体の全重量を基準として、分子内に2つのフェノール性水酸基を有する化合物の含有量を20重量%以上とすることが好ましく、30重量%以上とすることがより好ましい。耐熱性の観点では、分子内に3つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物の含有量を20重量%以上とすることが好ましく、30重量%以上とすることがより好ましい。しかし、分子内に3つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物と分子内に2つのフェノール性水酸基を有する化合物との割合は、特に制限されるものではなく、流動性及び耐熱性の必要度に応じて適切に調節することが可能である。なお、環化可能なフェノール化合物における、少なくとも2つのフェノール性水酸基は、それぞれ前述に示した一般式(I−1a)〜(I−1d)のいずれかに示す位置関係となることが好ましい。
【0143】
(揮発性成分)
本発明における「揮発性成分」とは、(a)シラン化合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物との反応で生成する水、アルコール、アンモニア、アミン、カルボン酸、ハロゲン化水素等の副生成物、反応時に任意で使用される溶剤及び樹脂粘度の調節等の目的で任意に含有する溶剤を意味している。また、上記反応で得られる新規硬化性樹脂に存在する未反応のR基及びR3’基も潜在的な揮発性成分として見なされる。すなわち、未反応のR基及びR3’基を有する硬化性樹脂は、それらを例えばエポキシ樹脂硬化剤として使用した場合、硬化反応時に水、アルコール、アンモニア、アミン、カルボン酸、又はハロゲン化水素といった揮発性成分を生成することになる。
【0144】
本発明による硬化性樹脂を封止材等の成形材料に用いる場合、上記副生成物及び溶剤は、通常、上記反応時にその大部分が硬化性樹脂から分離除去され、最終的に得られる硬化性樹脂は本質的にそれら成分を含まないことが好ましい。したがって、本明細書に記載する「硬化性樹脂中に残存する揮発性成分の含有量」とは、副生成物及び溶剤を分離除去した後の硬化性樹脂の全重量を基準としている。さらに「硬化性樹脂中に残存する揮発性成分」とは、反応時に分離除去されずに残った副生成物と溶剤、及び未反応のまま残ったR基及びR3’基から生じ得る成分を意図しており、硬化性樹脂中に残存する揮発性成分の含有量が硬化性樹脂の全重量を基準として、5重量%未満であることが好ましく、2重量%未満であることがより好ましく、0.5重量%未満であることがさらに好ましい。なお、未反応のR基及びR3’基が存在する場合、その重量は、それらが反応して、例えば、水、アルコール、アンモニア、アミン、カルボン酸といった揮発性成分になった場合を想定して算出される。
【0145】
また、本発明による硬化性樹脂を積層板用、接着剤用、塗料用等の成形材料以外の用途に用いる場合は、副生成物及び必要に応じて使用される溶剤を含んでいても構わない。これらの用途では、条件を設定することでボイドが生じないように副生成物及び溶剤を除去することが容易であるが、未反応R基及び未反応R3’基の反応と硬化性樹脂の硬化がほぼ同じ条件で起こることから、未反応R基及び未反応R3’基から生じるRH及び3’Hに起因するボイドの発生を避けることは困難である。このような観点から、上記反応で得られる硬化性樹脂において、反応開始時の上記(a)シラン化合物におけるR基数及びR3’基数を基準として、未反応R基数及び未反応R3’基が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。
【0146】
(硬化性樹脂の構造部位)
本発明による硬化性樹脂は、(a)シラン化合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物との反応によって生じる、アリールオキシシリル(ArO−Si)結合を有することを特徴とする。本発明による硬化性樹脂の一形態では、下記一般式(I−3)及び(I−4)で示される構造部位の少なくとも一方を含有することが好ましい。
上記構造部位を有する硬化性樹脂は、(a)シラン化合物と環化可能である分子内に2つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物を、(b)フェノール化合物及び/又は(c)フェノール性水酸基含有リン化合物として使用することによって得られる。なお、下記一般式(I−3)で示される構造部位は、上記一般式(I−1)及び(I−2)で示されるシラン化合物そのものに起因するものであり、下記一般式(I−4)で示される構造部位は、上記シラン化合物において部分的に縮合された部位に起因するものである。
【0147】
【化16】

【0148】
(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示す)
【0149】
【化17】

【0150】
(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示し、nは0以上の数を示す。)
【0151】
ここで、Arとして記載した「炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基」とは、特に限定されるものではなく、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基、ビナフチレン基、メチレンビスフェニレン基、メチレンビスナフチレン基、オキシビスフェニレン基、スルホニルビスフェニレン基、チオビスフェニレン基等のアリール基を両側に有する2価の有機基、及びフラニレン、チオフェニレン、イミダゾリレン、メチレンビスフラニレン、メチレンビスチオフェニレン、メチレンビスイミダゾリレン等の複素環基を両側に有する2価の有機基、一方にアリール基を有し他方に複素環基を有する2価の有機基等の有機基が含まれる。
【0152】
式中の「n」は、0以上の数を示すが、環状構造の生成し易さの観点からは、nは0〜10の範囲であることが好ましく、0〜5の範囲であることがより好ましく、0〜3の範囲であることがさらに好ましい。
【0153】
上記(I−3)及び/又は(I−4)で示される構造部位を有する本発明による硬化性樹脂は、それ自体を比較的小さい分子量とすることが可能であり、その製造及び製造後の取り扱いが容易となる傾向がある。また、シラン化合物の含有量を高めることが可能となるため、本発明によるエポキシ樹脂組成物から得られる硬化物は耐熱性が向上する傾向がある。このような観点から、本発明による硬化性樹脂は、樹脂中に存在するアリールオキシシリル(ArO−Si)結合の全数を基準として、上記一般式(I−3)及び/又は(I−4)で示される構造部位を形成するアリールオキシシリル結合が20%以上存在することが好ましく、30%以上存在することがより好ましい。
【0154】
(硬化性樹脂の製造方法)
本発明による硬化性樹脂の製造方法は、(a)シラン化合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物とを反応させる工程を有することを特徴とする。
【0155】
本発明による製造方法において、(a)シラン化合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物との反応は、目的とする化合物が生成する方法であれば、その反応手段等の制限は特にない。本発明による製造方法では、必要に応じて、溶媒を用いてもよい。溶媒は、反応後に、ろ別、蒸留等によって除去する。本発明において使用できる溶媒としては、上記特定のシラン化合物とフェノール化合物との反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限されるものではなく、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶媒等の公知の溶媒を用いることができる。
【0156】
また、本発明による製造方法において、(a)シラン化合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物との比率は、反応が進行し目的の化合物が得られる範囲において、特に限定されるものではない。例えば、(a)シラン化合物におけるR基及び/又はR3’基と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物におけるフェノール性水酸基との当量比(すなわち、[(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物のフェノール性水酸基数の合計]/[(a)シラン化合物のR基数及び/又はR3’基数])が、0.1〜10の間であることが好ましく、0.5〜5.0の間であることがより好ましく、0.9〜3.0の間であることがさらに好ましい。特に、上記当量比は1付近であることが最も好ましい。上記当量比が0.1未満となる場合、未反応のR基及び/又はR3’基が残りやすい傾向がある。一方、上記当量比が10よりも大きくなると、(a)シラン化合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物とを反応させて得られる硬化性樹脂のエポキシ硬化剤としての有用性が低下し、硬化物の耐熱性は低下する傾向がある。なお、「当量比」とは、仕込み比のことではなく、製造後に生成物中に含有されている(b)及び/又は(c)のフェノール性水酸基由来の基と(a)のR基及び/又はR3’基由来の基の比([(b)及び/又は(c)の未反応フェノール性水酸基数+(b)及び/又は(c)のフェノール性水酸基が反応して生成した結合の数]/[(a)のシラン化合物におけるR基及び/又はR3’基数+(a)のシラン化合物におけるR基及び/又はR3’基が反応して生成した結合の数])を意味する。すなわち、揮発、ろ過、洗浄等によって除去されたものは、含まないものとする。また、当量比が「1付近」とは、秤量誤差、純度のずれ等によって実際には1.0から少しずれていても良いことを意味する。具体的には、上記当量比は0.9〜1.1が好ましく、0.95〜1.05がより好ましい。
【0157】
また、本発明による製造方法において、(a)シラン化合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物との反応率は、特に限定されるものではない。例えば、反応開始時の(a)シラン化合物における全R基数及び/又は全R3’基数を基準として、未反応のR基数及び/又は全R3’基数が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。反応開始時の全R基数及び/又は全R3’基数を基準として、10%を超える数のR基及び/又はR基が未反応となると、(a)シラン化合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物を反応させて得られる硬化性樹脂のエポキシ硬化剤としての有用性は低下し、硬化物のボイドの発生や長期信頼性の低下を招く傾向がある。
【0158】
本発明による製造方法では、目的とする化合物とともに、(a)シラン化合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物との反応の副生成物としてRH及びR3’Hが生成することになる。そのため、本発明による製造方法は、必要に応じて加熱して、反応生成物からRH及びR3’Hを除去する工程を設けることが好ましい。より具体的な例示としては、以下の通りである:
(a)シラン化合物のR及びR3’がハロゲン原子であるシラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物とを反応させた場合は、必要に応じて加熱及び/又は減圧留去、洗浄、ろ過等によって、副生成物のハロゲン化水素を除去する;
(a)シラン化合物のR及びR3’が水酸基であるシラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物とを反応させた場合は、必要に応じて加熱及び/又は減圧留去、洗浄、ろ過等によって、副生成物の水を除去する;
(a)シラン化合物のR及びR3’がオキシ基であるシラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物とを反応させた場合は、必要に応じて加熱及び/又は減圧留去、洗浄、ろ過等によって、副生成物のアルコール又はアリールオールを除去する;
(a)シラン化合物のR及びR3’がアミノ基であるシラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物とを反応させた場合は、必要に応じて加熱及び/又は減圧留去、洗浄、ろ過等によって、副生成物のアンモニア又はアミンを除去する;
(a)シラン化合物のR及びR3’がカルボニルオキシ基であるシラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物とを反応させた場合は、必要に応じて加熱及び/又は減圧留去、洗浄、ろ過等によって、副生成物のカルボン酸を除去する。
【0159】
本発明による製造方法では、(a)シラン化合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物との反応を促進するために、必要に応じて、触媒を使用しても良い。使用可能な触媒としては、例えば、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケン等のシクロアミジン化合物、その誘導体、それらのフェノールノボラック塩及びこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、ピリジン・トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類及びこれらの誘導体、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等の有機ホスフィン類、又はこれら有機ホスフィン類と有機ボロン類との錯体やこれら有機ホスフィン類と無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、これら有機ホスフィン類と4−ブロモフェノール、3−ブロモフェノール、2−ブロモフェノール、4−クロロフェノール、3−クロロフェノール、2−クロロフェノール、4−ヨウ化フェノール、3−ヨウ化フェノール、2−ヨウ化フェノール、4−ブロモ−2−メチルフェノール、4−ブロモ−3−メチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジメチルフェノール、4−ブロモ−3,5−ジメチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−クロロ−1−ナフトール、1−ブロモ−2−ナフトール、6−ブロモ−2−ナフトール、4−ブロモ−4´−ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる分子内分極を有する化合物(特開2004−156036号公報参照)等が挙げられる。
【0160】
本発明による製造方法では、(a)シラン化合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物と、触媒との組み合わせを特に限定するものではないが、反応の簡便さ及び反応生成物の使用によって達成される硬化物の長期安定性の観点から、下記一般式(I−5)で示されるホスホニウム化合物又はその分子間塩を触媒として用い、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物と、(a)シラン化合物のR及びR3’がオキシ基であるシラン化合物とを反応させ、80℃〜300℃に加熱して副生成物のアルコールを除去することによって実施することが好ましい。副生成物となるRH及びR3’Hの除去容易性の観点からは、R及びR3’が炭素数1〜3のアルコキシ基であることがさらに好ましい。
【0161】
【化18】

【0162】
(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよく、Rは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよく、Yは、1以上の放出可能なプロトン(H)を有する炭素数0〜18の有機基から1つのプロトンが脱離した有機基であり、1以上のRと互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
なお、上記一般式(I−5)のRとして記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基」は、炭素数1〜18を有し、置換されても又は非置換であってもよい脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含むことを意味する。
【0163】
より具体的には、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、アリル基、ビニル基等の脂肪族炭化水素基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、水酸基、アミノ基、及びハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
【0164】
また、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基には、置換又は非置換の脂環式炭化水素基も含まれる。置換又は非置換の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基等、並びにそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、及びハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
【0165】
上記置換又は非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基等のアリール基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基等のアルキル基置換アリール基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシ基置換アリール基等が挙げられ、それらはさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものであってもよい。
【0166】
一般式(I−5)のRとして記載した用語「2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよい」とは、2又は3つのRが結合し、全体としてそれぞれ2又は3価の炭化水素基となる場合を意味する。例えば、Si原子と結合して環状構造を形成し得るエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等のアルキレン基、エチレニル、プロピレニル、ブチレニル基等のアルケニル基、メチレンフェニレン基等のアラルキレン基、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等のアリーレン基が挙げられ、それらはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。
【0167】
なお、上記一般式(I−5)のRとしては、特に限定されるものではないが、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる1価の置換基であることが好ましい。中でも、原料の入手しやすさの観点から、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、m−ヒドロキシフェニル基、o−ヒドロキシフェニル基、2,5−ジヒドロキシフェニル基、4−(4−ヒドロキシフェニル)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−(2−ヒドロキシナフチル)基、1−(4−ヒドロキシナフチル)基等の非置換或いはアルキル基又は/及びアルコキシ基又は/及び水酸基置換のアリール基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基等の鎖状又は環状のアルキル基から選ばれる置換基がより好ましい。フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、m−ヒドロキシフェニル基、o−ヒドロキシフェニル基、2,5−ジヒドロキシフェニル基、4−(4−ヒドロキシフェニル)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−(2−ヒドロキシナフチル)基、1−(4−ヒドロキシナフチル)基等の非置換或いはアルキル基及び/又はアルコキシ基及び/又は水酸基置換のアリール基であることがさらに好ましい。
【0168】
上記一般式(I−5)のRとして記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基」は、炭素数1〜18を有し、かつ置換されても又は非置換であってもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、及び脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素オキシ基、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素カルボニル基、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素オキシカルボニル基、及び脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素カルボニルオキシ基を含むことを意味する。
【0169】
より具体的には、上記一般式(I−6)で示されるフェノール性水酸基含有リン化合物において、R7aとして記載した置換基が挙げられる。
【0170】
上記一般式(I−5)のRとして記載した用語「2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよい」とは、2〜4つのRが結合し、全体としてそれぞれ2〜4価の有機基となる場合を意味する。例えば、環状構造を形成し得るエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等のアルキレン基、エチレニル、プロピレニル、ブチレニル基等のアルケニル基、メチレンフェニレン基等のアラルキレン基、並びにフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等のアリーレン基、及びそれらアルキレン基、アルケニル基、アラルキレン基、及びアリーレン基にオキシ基又はジオキシ基が結合した基が挙げられ、それらはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0171】
上記一般式(I−5)のRとしては、特に限定されるものではないが、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。中でも原料の入手しやすさの観点からは、水素原子、水酸基、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基等の非置換或いはアルキル基又は/及びアルコキシ基又は/及び水酸基置換のアリール基、及びメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基等の鎖状又は環状のアルキル基から選ばれる置換基がさらに好ましい。2以上のRが互いに結合して環状構造を形成する場合は、特に限定されないが、Rが結合しているベンゼン環と併せて、1−(−2−ヒドロキシナフチル)基、1−(−4−ヒドロキシナフチル)基等の多環芳香族基を形成する有機基が好ましい。
【0172】
上記一般式(I−5)におけるYは、1以上の放出可能なプロトン(H)を有する炭素数0〜18の有機基から1つのプロトンが脱離した有機基であり、1以上のRと互いに結合して環状構造を形成してもよい。例えば、Yは水酸基、メルカプト基、ハイドロセレノ基等の16族原子に水素原子が結合した1価の有機基からプロトンが脱離した基、カルボキシル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシフェニル基カルボキシナフチル基等のカルボキシル基を有する炭素数1〜18の1価の有機基からカルボン酸のプロトンが脱離した基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシフェニルメチル基、ヒドロキシナフチル基、ヒドロキシフリル基、ヒドロキシチエニル基、ヒドロキシピリジル基等のフェノール性水酸基を有する炭素数1〜18の1価の有機基からフェノール性プロトンが脱離した基が挙げられる。
【0173】
また、上記一般式(I−5)中のYが1以上のRと結合して環状構造を形成する場合、例えば、Yは、それが結合しているベンゼン環と併せて、2−(−6−ヒドロキシナフチル)基等のヒドロキシ多環芳香族基の水酸基からプロトンが脱離した基を形成する2価の有機基が挙げられる。
【0174】
先に例示したYの中でも、特に限定されるものではないが、水酸基からプロトンが脱離してなる酸素アニオン、又はヒドロキシフェニル基、ヒドロキシフェニルメチル基、ヒドロキシナフチル基、ヒドロキシフリル基、ヒドロキシチエニル基、ヒドロキシピリジル基等のフェノール性水酸基からプロトンが脱離してなる酸素アニオンを有する1価の有機基であることが好ましい。
【0175】
また、上記一般式(I−5)中のYが1以上のRと結合して環状構造を形成する場合、例えば、Yは、それが結合しているベンゼン環と併せて、2−(−6−ヒドロキシナフチル)基等のヒドロキシ多環芳香族基の水酸基からプロトンが脱離した基が好ましい。
【0176】
また、上記一般式(I−5)で示されるホスホニウム化合物の分子間塩としては、限定されるものではないが、式(I−5)で示されるホスホニウム化合物とフェノール、ナフトール、分子内に2以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物として先に例示した化合物等のフェノール性水酸基を有する化合物、トリフェニルシラノール、ジフェニルシランジオール、トリメチルシラノール等のシラノール基を有する化合物、シュウ酸、酢酸、安息香酸等の有機酸、塩酸、臭化水素、硫酸、硝酸等の無機酸等との分子間塩化合物が挙げられる。
【0177】
また、上記一般式(I−5)で示されるホスホニウム化合物の具体例としては、限定されるものではないが、トリス−(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス−(o−メトキシフェニル)ホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、ビス−(p−メトキシフェニル)フェニルホスフィン、ビス−(o−メトキシフェニル)ホスフィン、ジ−p−トリルフェニルホスフィン、ジ−o−トリルフェニルホスフィン、ジ−m−トリルフェニルホスフィン、ジフェニル−(p−メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル−(o−メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル−p−トリルホスフィン、ジフェニル−o−トリルホスフィン、ジフェニル−m−トリルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のトリアリールホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、オクチルジフェニルホスフィン等のアルキルジアリールホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、ジオクチルフェニルホスフィン等のジアルキルアリールホスフィン等の3級ホスフィンと1,4−ベンゾキノン、メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4ベンゾキノン、2,5−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、メトキシ−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメチル−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−1,4−ベンゾキノン、メチル−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジ−t−ブチル−1,4−ベンゾキノン、t−ブチル−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン、1,4−ナフトキノン等の付加反応物、また、これら3級ホスフィンと4−ブロモフェノール、3−ブロモフェノール、2−ブロモフェノール、4−クロロフェノール、3−クロロフェノール、2−クロロフェノール、4−ヨウ化フェノール、3−ヨウ化フェノール、2−ヨウ化フェノール、4−ブロモ−2−メチルフェノール、4−ブロモ−3−メチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジメチルフェノール、4−ブロモ−3,5−ジメチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−クロロ−1−ナフトール、1−ブロモ−2−ナフトール、6−ブロモ−2−ナフトール、4−ブロモ−4´−ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる分子内分極を有する化合物(特開2004−156035及び特開2004−156036記載)などが挙げられる。
【0178】
これらの中でも原料の入手し易さ及び上記一般式(I−5)で示されるホスホニウム化合物の安定性からは、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンの付加反応物、トリ−p−トリルホスフィンと1,4−ベンゾキノンの付加反応物、トリス−(p−メトキシフェニル)ホスフィンと1,4−ベンゾキノンの付加反応物、ジフェニル−p−トリルホスフィと1,4−ベンゾキノンの付加反応物、トリブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンの付加反応物、トリシクロヘキシルホスフィンと1,4−ベンゾキノンの付加反応物、シクロヘキシルジフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンの付加反応物、ジシクロヘキシルフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンの付加反応物、特開2004−156035の合成例1〜9で製造した式(XXIX)〜(XXXVII)に記載の構造で示される化合物が好ましい。
【0179】
本発明における「硬化性樹脂中のリン原子含有量」とは、製造方法において触媒を用いた場合、その触媒が有するリン原子も硬化性樹脂中のリン原子含有量に含まれるものとする。
【0180】
(エポキシ樹脂組成物)
本発明による新規硬化性樹脂は、それ単独で又は他の樹脂と反応して硬化することが可能な硬化性樹脂として様々な用途に使用することが可能である。例えば、封止材等の成形材料、積層板用材料、各種接着剤用材料、各種電子電気部品用材料、及び塗料材料等の用途に使用することが可能である。本発明による新規硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、アリル樹脂、アルキド樹脂等の他の硬化性樹脂と組み合わせて使用することも可能である。また、本発明による新規硬化性樹脂は、エポキシ樹脂硬化剤として有用であるため、エポキシ樹脂、及び必要に応じてエポキシ樹脂の硬化を促進する他の成分と組み合わせて硬化性樹脂組成物とすることも可能である。
【0181】
本発明によるエポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤とを含有するものであって、(B)硬化剤が、先に説明した本発明による硬化性樹脂を含むことを特徴とする。本発明によるエポキシ樹脂組成物は、上記成分(A)及び(B)に、さらに(C)硬化促進剤及び(D)無機充填剤を含有するものであってもよい。また、必要に応じて、カップリング剤、イオン交換体、離型剤、応力緩和剤、着色剤といった各種添加剤を追加したものであってもよい。以下、本発明によるエポキシ樹脂組成物を構成する主な成分について説明する。
【0182】
(A)エポキシ樹脂
本発明において使用可能な(A)エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であればよく、特に限定されるものではない。例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂;
ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換又は非置換のビフェノール、スチルベン系フェノール類等のジグリシジルエーテル(ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂)、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテル;
フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等のカルボン酸類のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;
アニリン、イソシアヌル酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したもの等のグリシジル型又はメチルグリシジル型のエポキシ樹脂;
分子内のオレフィン結合をエポキシ化して得られるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂;
パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂;
ハイドロキノン型エポキシ樹脂;
トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;
オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;
ジフェニルメタン型エポキシ樹脂;
フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物;
硫黄原子含有エポキシ樹脂;
ナフタレン型エポキシ樹脂
が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0183】
上記エポキシ樹脂の中でも、耐リフロークラック性及び流動性の点でビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、ナフタレン型フェノール樹脂が好ましく、それらのいずれか1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。但し、それらの性能を発揮するためには、エポキシ樹脂全量に対して、それらを合計で30重量%以上使用することが好ましく、50重量%以上使用することがより好ましい。以下、好ましいエポキシ樹脂の具体例を示す。
【0184】
ビフェニル型エポキシ樹脂としては、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(II)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。下記一般式(II)で示されるエポキシ樹脂の中でもRのうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´,5,5´位がメチル基でそれ以外が水素原子であるYX−4000H(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)、全てのRが水素原子である4,4´−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル、全てのRが水素原子の場合及びRのうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´,5,5´位がメチル基でそれ以外が水素原子である場合の混合品であるYL−6121H(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0185】
【化19】

【0186】
(式(II)中、Rは水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数4〜18のアリール基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0187】
スチルベン型エポキシ樹脂としては、スチルベン骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(III)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。下記一般式(III)で示されるエポキシ樹脂の中でも、Rのうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´,5,5´位がメチル基でそれ以外が水素原子でありR10の全てが水素原子の場合と3,3´,5,5´位のうちの3つがメチル基、1つがtert−ブチル基でそれ以外が水素原子でありR10の全てが水素原子の場合の混合品であるESLV−210(住友化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0188】
【化20】

【0189】
(式(III)中、R及びR10は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0190】
ジフェニルメタン型エポキシ樹脂としては、ジフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(IV)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。下記一般式(IV)で示されるエポキシ樹脂の中でも、R11の全てが水素原子でありR12のうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´,5,5´位がメチル基でそれ以外が水素原子であるYSLV−80XY(新日鐵化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0191】
【化21】

【0192】
(式(IV)中、R11及びR12は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0193】
硫黄原子含有型エポキシ樹脂としては、硫黄原子を含有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えば下記一般式(V)で示されるエポキシ樹脂が挙げられる。下記一般式(V)で示されるエポキシ樹脂の中でも、R13のうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´位がtert−ブチル基で6,6´位がメチル基でそれ以外が水素原子であるYSLV−120TE(新日鐵化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0194】
【化22】

【0195】
(式(V)中、R13は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0196】
ノボラック型エポキシ樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂をエポキシ化したエポキシ樹脂であれば、特に限定されるものではないが、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ナフトールノボラック等のノボラック型フェノール樹脂をグリリシジルエーテル化等の手法を用いてエポキシ化したエポキシ樹脂が好ましく、例えば下記一般式(VI)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(VI)で示されるエポキシ樹脂の中でも、R14の全てが水素原子でありR15がメチル基でi=1であるESCN−190、ESCN−195(住友化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0197】
【化23】

【0198】
(式(VI)中、R14及びR15は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0199】
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、ジシクロペンタジエン骨格を有する化合物を原料としてエポキシ化したエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(VII)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。下記一般式(VII)で示されるエポキシ樹脂の中でも、i=0であるHP−7200(大日本インキ化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0200】
【化24】

【0201】
(式(VII)中、R16は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0202】
サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂としては、サリチルアルデヒド骨格を持つ化合物を原料とするエポキシ樹脂であれば特に制限はないが、サリチルアルデヒド骨格を持つ化合物とフェノール性水酸基を有する化合物とのノボラック型フェノール樹脂等のサリチルアルデヒド型フェノール樹脂をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂等のサリチルアルデヒド型エポキシ樹脂が好ましく、下記一般式(VIII)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(VIII)で示されるエポキシ樹脂の中でも、i=0、k=0である1032H60(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)、EPPN−502H(日本化薬株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0203】
【化25】

【0204】
(式(VIII)中、R17及びR18は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0205】
ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂としては、ナフトール骨格を有する化合物及びフェノール骨格を有する化合物を原料とするエポキシ樹脂であれば、特に限定されるものではないが、ナフトール骨格を有する化合物及びフェノール骨格を有する化合物を用いたノボラック型フェノール樹脂をグリシジルエーテル化したものが好ましく、下記一般式(IX)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(IX)で示されるエポキシ樹脂の中でも、R21がメチル基でi=1であり、j=0、k=0であるNC−7300(日本化薬株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0206】
【化26】

【0207】
(式(IX)中、R19〜R21は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、jは0〜2の整数、kは0〜4の整数を示し、pは平均値で0〜1の正数を示し、l、mはそれぞれ平均値で0〜11の正数であり(l+m)は1〜11の正数を示す)
上記一般式(IX)で示されるエポキシ樹脂としては、l個の構成単位及びm個の構成単位をランダムに含むランダム共重合体、交互に含む交互共重合体、規則的に含む共重合体、ブロック状に含むブロック共重合体が挙げられ、これらのいずれか1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0208】
フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物としては、フェノール、クレゾール等のフェノール類及び/又はナフトール、ジメチルナフトール等のナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルやこれらの誘導体から合成されるフェノール樹脂を原料とするエポキシ樹脂であれば、特に限定されるものではない。例えば、フェノール、クレゾール等のフェノール類及び/又はナフトール、ジメチルナフトール等のナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルやこれらの誘導体から合成されるフェノール樹脂をグリシジルエーテル化したものが好ましく、下記一般式(X)及び(XI)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(X)で示されるエポキシ樹脂の中でも、i=0、R40が水素原子であるNC−3000S(日本化薬株式会社製商品名)、i=0、R40が水素原子であるエポキシ樹脂と一般式(II)の全てのRが水素原子であるエポキシ樹脂を重量比80:20で混合したCER−3000(日本化薬株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。また、下記一般式(XI)で示されるエポキシ樹脂の中でも、i=0、j=0、k=0であるESN−175(新日鐵化学株式会社商品名)等が市販品として入手可能である。
【0209】
【化27】

【0210】
(式(X)及び(XI)において、R37〜R41は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、jは0〜2の整数、kは0〜4の整数を示す)
上記一般式(II)〜(XI)中のR〜R21及びR37〜R41について、「それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい」とは、例えば、式(II)中の8〜88個のRの全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。他のR〜R21及びR37〜R41についても、式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。また、R〜R21及びR37〜R41はそれぞれが同一でも異なっていてもよい。例えば、RとR10の全てについて同一でも異なっていてもよい。
【0211】
ナフタレン型エポキシ樹脂としては、ナフタレン環を含有するエポキシ化合物であれば、特に限定されるものではない。例えば、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、ジメチルナフトール等のナフトール類の誘導体から合成されるナフトール化合物をグリシジルエーテル化したものが好ましく、下記一般式(XI−a)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(XI−a)で示されるエポキシ樹脂の中でも、n=1であり、R41及びR42の全てが水素原子、R43の全てがグリシジルオキシ基であるEXA−4700、EXA−4701(大日本インキ化学株式会社製商品名)、n=0であり、R41及びR42の全てが水素原子、R43がグリシジルオキシ基であるHP−4032 (大日本インキ化学株式会社製商品名)、n=1であり、R41及びR42の全てが水素原子、R43の一方が水素原子であり、他方がグリシジルオキシ基であるEXA−4750(大日本インキ化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0212】
【化28】

【0213】
(式(XI−a)中、R41及びR42は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、R43は水素原子又はグリシジルオキシ基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、nは平均値であり、0〜10の正数を示す。)
【0214】
上記一般式(II)〜(XI)及び(XI−a)中のR〜R21及びR37〜R43について、「それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい」とは、例えば、式(II)中の8〜88個のRの全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。他のR〜R21及びR37〜R41についても、式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。また、R〜R21及びR37〜R41はそれぞれが同一でも異なっていてもよい。例えば、RとR10の全てについて同一でも異なっていてもよい。
【0215】
上記一般式(II)〜(XI)及び(XI−a)中の「n」は、0〜10の範囲である必要があり、10を超えた場合は(B)成分の溶融粘度が高くなるため、硬化性樹脂組成物の溶融成形時の粘度も高くなり、未充填不良やボンディングワイヤ(素子とリードを接続する金線)の変形を引き起こしやすくなる。1分子中の平均nは0〜4の範囲に設定されることが好ましい。
【0216】
(B)硬化剤
本発明によるエポキシ樹脂組成物では、(B)硬化剤として、先に示した本発明による硬化性樹脂を使用することを特徴とする。本発明によるエポキシ樹脂組成物において、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤となる本発明による硬化性樹脂との配合比率は、(A)エポキシ樹脂における全エポキシ基の数と、(B)本発明による硬化性樹脂における−ArO−Si結合の数及び本発明による硬化性樹脂における未反応フェノール性水酸基の数の合計との比率、すなわち、[((B)本発明による硬化性樹脂における−ArO−Si結合の数)+(本発明による硬化性樹脂における未反応フェノール性水酸基数)]/[エポキシ樹脂中の全エポキシ基数]で、0.5〜2.0の範囲に設定されることが好ましい。上記配合比率は、0.7〜1.5の範囲に設定することがより好ましく、0.8〜1.3の範囲に設定することがさらに好ましい。上記配合比率が0.5未満となると、エポキシ樹脂の硬化が不十分となり、硬化物の耐熱性、耐湿性及び電気特性が低下する傾向にある。一方、上記配合比率が2.0を超えると、硬化剤成分が過剰となり、硬化効率が低下するだけでなく、硬化樹脂中に多量のフェノール性水酸基が残るため、パッケージの電気特性及び耐湿性が低下する傾向にある。
【0217】
本発明によるエポキシ樹脂組成物では、(B)硬化剤として、先に示した本発明による硬化性樹脂以外の化合物を含んでもよい。硬化剤として併用可能な化合物としては、エポキシ樹脂を硬化させることができる化合物であれば特に限定されるものではない。例えば、フェノール樹脂等のフェノール化合物、ジアミン、ポリアミン等のアミン化合物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の無水有機酸、ジカルボン酸、ポリカルボン酸等のカルボン酸化合物が挙げられ、これらの樹脂の1種以上を組み合わせて使用してもよい。中でも、1分子内に2つ以上のフェノール性水酸基を有する化合物を併用することが好ましい。
【0218】
なお、本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明による硬化性樹脂に加えて硬化剤としてフェノール化合物を併用する場合、(B)硬化剤となる成分の合計量を基準として、本発明による硬化性樹脂の配合量を、30重量%以上とすることが好ましく、50重量%以上とすることがより好ましい。(B)硬化剤における本発明による硬化性樹脂の含有量が30重量%未満となると低吸水性の特性が低下し、本発明によって達成可能な効果が低減する傾向がある。
【0219】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物において、硬化剤として1分子内に2以上のフェノール性水酸基を有する化合物を併用する場合、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤として本発明の硬化性樹脂及び併用するフェノール性水酸基を有する化合物の配合比率は、(A)エポキシ樹脂における全エポキシ基の数と、(B)本発明による硬化性樹脂における−ArO−Si結合の数、本発明による硬化性樹脂における未反応フェノール性水酸基の数、及び併用する化合物のフェノール性水酸基数の合計との比率、すなわち、[(本発明による硬化性樹脂における−ArO−Si結合の数)+(本発明による硬化性樹脂における未反応フェノール性水酸基数)+(併用する化合物のフェノール性水酸基数)]/[エポキシ樹脂中の全エポキシ基数]で、0.5〜2.0の範囲に設定されることが好ましい。上記配合比率は、0.7〜1.5の範囲に設定することがより好ましく、0.8〜1.3の範囲に設定することがさらに好ましい。上記配合比率が0.5未満となると、エポキシ樹脂の硬化が不十分となり、硬化物の耐熱性、耐湿性及び電気特性が低下する傾向にある。一方、上記配合比率が2.0を超えると、硬化剤成分が過剰となり、硬化効率が低下するだけでなく、硬化樹脂中に多量のフェノール性水酸基が残るため、パッケージの電気特性及び耐湿性が低下する傾向にある。
【0220】
上述の範囲において、硬化剤として本発明による硬化性樹脂と併用することが可能なフェノール化合物は、特に限定されず、硬化剤として一般に使用される1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物であってよい。例えば、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する化合物;
フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;
フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;
パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;
メラミン変性フェノール樹脂;
テルペン変性フェノール樹脂;
フェノール類及び/又はナフトール類とジシクロペンタジエンから共重合により合成される、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;
シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;
多環芳香環変性フェノール樹脂;
ビフェニル型フェノール樹脂;
トリフェニルメタン型フェノール樹脂;
これら樹脂の2種以上を共重合して得たフェノール樹脂が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0221】
上述のフェノール化合物の中でも、耐リフロークラック性の観点からはアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型とアラルキル型の共重合型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂が好ましい。これらアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型とアラルキル型の共重合型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂は、そのいずれか1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。但し、本発明による硬化性樹脂の効果を発揮させるために、上述のフェノール樹脂は、硬化剤の全量に対して、合計で好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下で併用することが望ましい。
【0222】
アラルキル型フェノール樹脂としては、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルやこれらの誘導体から合成されるフェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(XII)〜(XIV)で示されるフェノール樹脂が好ましい。
【0223】
【化29】

【0224】
(式(XII)〜(XIV)において、R22〜R28は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、jは0〜2の整数、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0225】
上記一般式(XII)で示されるフェノール樹脂の中でも、i=0、R23が全て水素原子であるMEH−7851(明和化成株式会社商品名)等が市販品として入手可能である。
上記一般式(XIII)で示されるフェノール樹脂の中でも、i=0、k=0であるXL−225、XLC(三井化学株式会社製商品名)、MEH−7800(明和化成株式会社商品名)等が市販品として入手可能である。
上記一般式(XIV)で示されるフェノール樹脂の中でも、j=0、R27のk=0、R28のk=0であるSN−170(新日鐵化学株式会社商品名)等が市販品として入手可能である。
【0226】
ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂としては、ジシクロペンタジエン骨格を有する化合物を原料として用いたフェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(XV)で示されるフェノール樹脂が好ましい。下記一般式(XV)で示されるフェノール樹脂の中でもi=0であるDPP(新日本石油化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0227】
【化30】

【0228】
(式(XV)中、R29は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0229】
サリチルアルデヒド型フェノール樹脂としては、サリチルアルデヒド骨格を有する化合物を原料として用いたフェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(XVI)で示されるフェノール樹脂が好ましい。
【0230】
下記一般式(XVI)で示されるフェノール樹脂の中でもi=0、k=0であるMEH−7500(明和化成株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0231】
【化31】

【0232】
(式(XVI)中、R30及びR31は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0233】
ベンズアルデヒド型とアラルキル型との共重合型フェノール樹脂としては、ベンズアルデヒド骨格を有する化合物を原料として用いたフェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型フェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(XVII)で示されるフェノール樹脂が好ましい。
【0234】
下記一般式(XVII)で示されるフェノール樹脂の中でもi=0、k=0、q=0であるHE−510(エア・ウォーター・ケミカル株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0235】
【化32】

【0236】
(式(XVII)中、R32〜R34は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、qは0〜5の整数、l、mはそれぞれ平均値で0〜11の正数であり(l+m)は1〜11の正数を示す)
【0237】
ノボラック型フェノール樹脂としては、フェノール類及び/又はナフトール類とアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるフェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(XVIII)で示されるフェノール樹脂が好ましい。
【0238】
下記一般式(XVIII)で示されるフェノール樹脂の中でもi=0、R35が全て水素原子であるタマノル758、759(荒川化学工業株式会社製商品名)、HP−850N(日立化成工業株式会社商品名)等が市販品として入手可能である。
【0239】
【化33】

【0240】
(式(XVIII)中、R35及びR36は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0241】
上記一般式(XII)〜(XVIII)におけるR22〜R36について記載した「それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい」は、例えば、式(XIV)中のi個のR22の全てが同一でも相互に異なっていてもよいことを意味している。他のR23〜R36についても、式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも相互に異なっていてもよいことを意味している。また、R22〜R36は、それぞれが同一でも異なっていてもよい。例えば、R22およびR23の全てについて同一でも異なってもよく、R30およびR31の全てについて同一でも異なっていてもよい。
【0242】
上記一般式(XII)〜(XVIII)における「n」は、0〜10の範囲である必要があり、10を超えた場合は(B)硬化性樹脂成分の溶融粘度が高くなるため、硬化性樹脂組成物の溶融成形時の粘度も高くなり、未充填不良やボンディングワイヤ(素子とリードを接続する金線)の変形を引き起こしやすくなる。1分子中の平均nは0〜4の範囲に設定されることが好ましい。
【0243】
本発明によるエポキシ樹脂組成物は、さらに(C)硬化促進剤及び(D)無機充填剤を含有するものであってもよい。また、必要に応じて、カップリング剤、イオン交換体、離型剤、応力緩和剤、着色剤といった各種添加剤を追加したものであってもよい。
【0244】
(C)硬化促進剤
本発明によるエポキシ樹脂組成物では、必要に応じて硬化剤促進剤を配合してもよい。使用可能な硬化促進剤としては、例えば、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケンなどのシクロアミジン化合物、その誘導体、それらのフェノールノボラック塩及びこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどのπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類及びこれらの誘導体、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等の有機ホスフィン類、又はこれら有機ホスフィン類と有機ボロン類との錯体やこれら有機ホスフィン類と無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどのπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、これら有機ホスフィン類と4−ブロモフェノール、3−ブロモフェノール、2−ブロモフェノール、4−クロロフェノール、3−クロロフェノール、2−クロロフェノール、4−ヨウ化フェノール、3−ヨウ化フェノール、2−ヨウ化フェノール、4−ブロモ−2−メチルフェノール、4−ブロモ−3−メチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジメチルフェノール、4−ブロモ−3,5−ジメチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−クロロ−1−ナフトール、1−ブロモ−2−ナフトール、6−ブロモ−2−ナフトール、4−ブロモ−4´−ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素して得られる分子内分極を有する化合物(特開2004−156036記載)、などが挙げられる。これら硬化促進剤を併用する場合、中でも、流動性の観点からは有機ホスフィン類とπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、有機ホスフィン類とハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素して得られる分子内分極を有する化合物、硬化性の観点からは有機ホスフィン類とハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる分子内分極を有する化合物が好ましい。特に、下記一般式(I−5)で示されるホスフィン化合物又はその分子間塩を使用することが好ましい。なお、式中、R、R、Yは先に説明した通りである。
【0245】
【化34】

【0246】


本発明によるエポキシ樹脂組成物における(F)硬化促進剤の配合量は、硬化促進効果が達成されれば特に制限はない。しかし、エポキシ樹脂組成物の吸湿時の硬化性及び流動性における改善の観点からは、(A)エポキシ樹脂の合計100重量部に対し、(F)硬化促進剤を合計で好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは1〜7.0重量部配合することが望ましい。配合量が0.1重量部未満では短時間で硬化させることが困難であり、10重量部を超えると硬化速度が速すぎて良好な成形品が得られない場合がある。
【0247】
(D)無機充填剤
本発明のエポキシ樹脂組成物には、(D)無機充填剤を必要に応じてさらに配合することができる。本発明において用いられる(D)無機充填剤としては、一般に封止用成形材料に用いられるものであってよく、特に限定されるものではない。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、シリカゲル、多孔質シリカ、ガラス、ゼオライト、アルミナ、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレイ、マイカ等の微粉未、又はこれらを球形化したビーズなどが挙げられる。中でも、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましい。これら無機充填剤の1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0248】
(D)無機充填剤の配合量は、本発明の効果が得られれば特に制限はないが、エポキシ樹脂組成物に対して30〜90体積%の範囲であることが好ましい。これら無機充填剤は硬化物の成型収縮率、熱膨張係数、熱伝導率、弾性率、難燃性等の改良を目的に配合するものであり、配合量が30体積%未満ではこれらの特性の改良が不十分となる傾向があり、90体積%を超えるとエポキシ樹脂組成物の粘度が上昇して流動性が低下し成形が困難になる傾向がある。
【0249】
また(D)無機充填剤の平均粒径は1〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。1μm未満ではエポキシ樹脂組成物の粘度が上昇しやすく、50μmを超えると樹脂成分と無機充墳剤とが分離しやすくなり、硬化物が不均一になったり硬化物特性がばらついたり、狭い隙間への充填性が低下したりする傾向がある。
【0250】
流動性の観点からは、(D)無機充填剤の粒子形状は角形より球形が好ましく、(D)無機充填剤の粒度分布は広範囲に分布したものが好ましい。例えば、無機充填剤を75体積%以上配合する場合、その70重量%以上を球状粒子とし、0.1〜80μmという広範囲に分布したものが好ましい。このような無機充填剤は最密充填構造をとりやすいため配合量を増加させても材料の粘度上昇が少なく、流動性に優れたエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【0251】
(各種添加剤)
本発明によるエポキシ樹脂組成物では、必要に応じて上述の成分(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)無機充填剤に加えて、以下に例示するカップリング剤、イオン交換体、離型剤、応力緩和剤、着色剤といった各種添加剤を追加してもよい。しかし、本発明によるエポキシ樹脂組成物には、以下の添加剤に限定することなく、必要に応じて当技術分野で周知の各種添加剤を追加してもよい。
【0252】
(カップリング剤)
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物には、樹脂成分と無機充填剤との接着性を高めるために、必要に応じて、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤を添加することができる。
【0253】
カップリング剤の配合量は、(G)無機充填剤に対して0.05〜5重量%であることが好ましく、0.1〜2.5重量%がより好ましい。0.05重量%未満ではフレームとの接着性が低下する傾向があり、5重量%を超えるとパッケージの成形性が低下する傾向がある。
【0254】
上記カップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−[ビス(β−ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、二級アミノ基を有するカップリング剤が流動性及びワイヤ流れの観点から好ましい。
【0255】
(イオン交換体)
本発明のエポキシ樹脂組成物には、陰イオン交換体を必要に応じて配合することができる。特にエポキシ樹脂組成物を封止用成形材料として用いる場合には、封止される素子を備える電子部品装置の耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、陰イオン交換体を配合することが好ましい。本発明において用いられる陰イオン交換体としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、例えば、ハイドロタルサイト類や、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ビスマスから選ばれる元素の含水酸化物等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、下記一般式(XIX)で示されるハイドロタルサイトが好ましい。
【0256】
【化35】

【0257】
(0<X≦0.5、mは正の数)
これらの陰イオン交換体の配合量は、ハロゲンイオンなどの陰イオンを捕捉できる十分量であれば特に制限はないが、(A)エポキシ樹脂に対して0.1〜30重量%の範囲が好ましく、1〜5重量%がより好ましい。
【0258】
(離型剤)
本発明のエポキシ樹脂組成物には、成形時に金型との良好な離型性を持たせるため離型剤を配合してもよい。本発明において用いられる離型剤としては特に制限はなく従来公知のものを用いることができる。例えば、カルナバワックス、モンタン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックス等が挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、酸化型又は非酸化型のポリオレフィン系ワックスが好ましく、その配合量としては(A)エポキシ樹脂に対して0.01〜10重量%が好ましく、0.1〜5重量%がより好ましい。ポリオレフィン系ワックスの配合量が0.01重量%未満では離型性が不十分な傾向があり、10重量%を超えると接着性が阻害される可能性がある。ポリオレフィン系ワックスとしては、例えば市販品ではヘキスト社製のH4、PE、PEDシリーズ等の数平均分子量が500〜10000程度の低分子量ポリエチレンなどが挙げられる。また、ポリオレフィン系ワックスに他の離型剤を併用する場合、その配合量は(A)エポキシ樹脂に対して0.1〜10重量%が好ましく、0.5〜3重量%がより好ましい。
【0259】
(応力緩和剤)
本発明のエポキシ樹脂組成物には、シリコーンオイル、シリコーンゴム粉末等の応力緩和剤などを必要に応じて配合することができる。応力緩和剤を配合することにより、パッケージの反り変形量、パッケージクラックを低減させることができる。使用できる応力緩和剤としては、一般に使用されている公知の可とう剤(応力緩和剤)であれば特に限定されるものではない。一般に使用されている可とう剤としては、例えば、シリコーン系、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エラストマー、NR(天然ゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンパウダー等のゴム粒子、メタクリル酸メチル−スチレン−ブタジエン共重合体(MBS)、メタクリル酸メチル−シリコーン共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル共重合体等のコア−シェル構造を有するゴム粒子等が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。中でも、シリコーン系可とう剤が好ましく、シリコーン系可とう剤としては、エポキシ基を有するもの、アミノ基を有するもの、これらをポリエーテル変性したものが挙げられる。
【0260】
(着色剤)
また、カーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の公知の着色剤を配合しても良い。
【0261】
先に説明した本発明のエポキシ樹脂組成物は、各種成分を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できる。一般的な手法としては、所定の配合量の成分をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練した後、冷却、粉砕する方法を挙げることができる。より具体的には、例えば、上述した成分の所定量を均一に撹拌、混合し、予め70〜140℃に加熱してあるニーダー、ロール、エクストルーダー等で混練、冷却し、粉砕するなどの方法で得ることができる。エポキシ樹脂組成物は、パッケージの成形条件に合うような寸法及び重量でタブレット化すると取り扱いが容易である。
【0262】
本発明による電子部品装置は、上述の硬化性樹脂組成物によって封止した素子を備えることを特徴とする。電子部品装置としては、例えば、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載したものが挙げられ、それら素子部を本発明の硬化性樹脂組成物で封止したものが挙げられる。より具体的には、例えば、リードフレーム上に半導体素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部をワイヤボンディングやバンプで接続した後、本発明の硬化性樹脂組成物を用いてトランスファー成形等によって封止した、DIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J−lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC、テープキャリアにバンプで接続した半導体チップを、本発明の硬化性樹脂組成物で封止したTCP(Tape Carrier Package)、配線板やガラス上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子及び/又はコンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子を、本発明の硬化性樹脂組成物で封止したCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール、裏面に配線板接続用の端子を形成した有機基板の表面に素子を搭載し、バンプ又はワイヤボンディングにより素子と有機基板に形成された配線を接続した後、本発明の硬化性樹脂組成物で素子を封止したBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)が挙げられる。中でも、本発明の硬化性樹脂組成物は高温における弾性率低下が少ないため、耐熱性、高温動作保証等が要求されている用途に好適に使用することができる。具体的には、パワーモジュールパッケージ、車載用途パッケージ、SiC等の高温でも動作する半導体のパッケージ等が挙げられる。また、CCDイメージセンサー、MOSイメージセンサー、CMOSイメージセンサー、CPD、EPROM、LED、OEL等の光半導体素子を備える中空パッケージ型の装置にも有効に使用することができる。さらに、プリント回路板においても本発明の硬化性樹脂組成物を有効に使用することができる。
【0263】
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、電子部品装置を封止する方法としては、低圧トランスファー成形法が最も一般的ではあるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等を用いてもよい。
【実施例】
【0264】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔合成例〕
(合成例1)
1000mlのセパラブルフラスコに、2,2’−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)100g(0.54mol)、HCA−HQ(三光株式会社製試薬)25g(0.077mol)及びメチルイソブチルケトン800mlを投入し、約100℃に加熱して溶解させ溶液とした。そのまま約100℃に維持しながら、溶液にメチルトリメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製MTMS−A)78gを約30分かけて滴下した。さらに溶液に、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加物を0.63g(0.0017mol)加え、110〜130℃で約28時間続けた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたメチルイソブチルケトンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃でメチルイソブチルケトンを減圧除去し、フッ素樹脂コートした金属製の容器に出し、室温(25℃)まで冷却することによって、151gの固体の生成物(リン原子含有量1.47重量%)を得た。
【0265】
得られた生成物のH−NMR測定及びIR測定を行った。
本実施例で得られた生成物のH−NMRスペクトルを図1に示す。H−NMR測定の結果から、原料であるメチルトリメトキシシランの部分縮合物のメトキシ基由来のシグナルが、反応開始時を基準として0.3%であることを確認した。
IR測定の結果を図2、図3及び図4に示す。図2は原料である2,2’−ビフェノールのIRスペクトル、図3は原料であるHCA−HQのIRスペクトル、図4は本実施例で得られた生成物のIRスペクトルである。生成物のIR測定の結果から、880〜980cm−1にSi−OAr基に特徴的な吸収帯の存在していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピークが減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は下記一般式(XX)及び/又は(XXI)で示される単位構造を有していると推測される。
【0266】
【化36】

【0267】
【化37】

【0268】
(合成例2)
300mlのセパラブルフラスコに、2,2’−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)100g(0.54mol)、HCA−HQ(三光株式会社製試薬)25g(0.077mol)及びトルエン800mlを投入し、約100℃に加熱した。HCA−HQはすべて溶解しなかったため、懸濁液のまま、約100℃に維持しながら、溶液にメチルトリメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製MTMS−A)78gを約30分かけて滴下した。さらに溶液に、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加物を0.63g(0.0017mol)加え、110〜150℃で約34時間続けた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃でトルエンを減圧除去し、フッ素樹脂コートした金属製の容器に出し、室温(25℃)まで冷却することによって、153gの固体の生成物(リン原子含有量1.47重量%)を得た。
【0269】
得られた生成物のH−NMR測定及びIR測定を行った。
本実施例で得られた生成物のH−NMRスペクトルを図5に示す。H−NMR測定の結果から、原料であるメチルトリメトキシシランの部分縮合物のメトキシ基及び副生成物であるメタノール由来のシグナルは確認されなかった。
本実施例で得られた生成物のIRスペクトルを図6に示す。IR測定の結果から、880〜980cm−1にSi−OAr基に特徴的な吸収帯の存在していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピークが減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は上記一般式(XX)及び/又は(XXI)で示される単位構造を有していると推測される。
【0270】
(合成例3)
300mlのセパラブルフラスコに、2,2’−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)100g(0.54mol)、HCA−HQ(三光株式会社製試薬)50g(0.15mol)及びトルエン122mlを投入し、約100℃に加熱した。HCA−HQはすべて溶解しなかったため、懸濁液のまま、約100℃に維持しながら、溶液にメチルトリメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製MTMS−A)88gを約30分かけて滴下した。さらに溶液に、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加物を0.75g(0.0020mol)加え、110〜150℃で約34時間続けた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃でトルエンを減圧除去し、フッ素樹脂コートした金属製の容器に出し、室温(25℃)まで冷却することによって、180gの固体の生成物(リン原子含有量2.47重量%)を得た。
【0271】
得られた生成物のH−NMR測定及びIR測定を行った。
本実施例で得られた生成物のH−NMRスペクトルを図7に示す。H−NMR測定の結果から、原料であるメチルトリメトキシシランの部分縮合物のメトキシ基由来のシグナルが、反応開始時を基準として1.6%であることを確認した。
本実施例で得られた生成物のIRスペクトルを図8に示す。IR測定の結果から、880〜980cm−1にSi−OAr基に特徴的な吸収帯の存在していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピークが減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は上記一般式(XX)及び/又は(XXI)で示される単位構造を有していると推測される。
【0272】
(合成例4)
300mlのセパラブルフラスコに、2,2’−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)80g(0.43mol)、HCA−HQ(三光株式会社製試薬)53g(0.16mol)及びトルエン104mlを投入し、約100℃に加熱した。HCA−HQはすべて溶解しなかったため、懸濁液のまま、約100℃に維持しながら、溶液にメチルトリメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製MTMS−A)76gを約30分かけて滴下した。さらに溶液に、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加物を0.67g(0.0018mol)加え、110〜150℃で約34時間続けた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃でトルエンを減圧除去し、フッ素樹脂コートした金属製の容器に出し、室温(25℃)まで冷却することによって、150gの固体の生成物(リン原子含有量2.98重量%)を得た。
【0273】
得られた生成物のH−NMR測定及びIR測定を行った。
本実施例で得られた生成物のH−NMRスペクトルを図9に示す。H−NMR測定の結果から、原料であるメチルトリメトキシシランの部分縮合物のメトキシ基由来のシグナルが、反応開始時を基準として2.6%であることを確認した。
本実施例で得られた生成物のIRスペクトルを図10に示す。IR測定の結果から、880〜980cm−1にSi−OAr基に特徴的な吸収帯の存在していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピークが減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は上記一般式(XX)及び/又は(XXI)で示される単位構造を有していると推測される。
【0274】
(合成例5)
300mlのセパラブルフラスコに、2,2’−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)75g(0.40mol)、HCA−HQ(三光株式会社製試薬)87g(0.24mol)及びトルエン119mlを投入し、約100℃に加熱した。HCA−HQはすべて溶解しなかったため、懸濁液のまま、約100℃に維持しながら、溶液にメチルトリメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製MTMS−A)86gを約30分かけて滴下した。さらに溶液に、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加物を0.81g(0.0022mol)加え、110〜150℃で約34時間続けた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃でトルエンを減圧除去し、フッ素樹脂コートした金属製の容器に出し、室温(25℃)まで冷却することによって、197gの固体の生成物(リン原子含有量4.06重量%)を得た。
【0275】
得られた生成物のH−NMR測定及びIR測定を行った。
本実施例で得られた生成物のH−NMRスペクトルを図11に示す。H−NMR測定の結果から、原料であるメチルトリメトキシシランの部分縮合物のメトキシ基由来のシグナルが、反応開始時を基準として3.2%であることを確認した。
本実施例で得られた生成物のIRスペクトルを図12に示す。IR測定の結果から、880〜980cm−1にSi−OAr基に特徴的な吸収帯の存在していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピークが減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は上記一般式(XX)及び/又は(XXI)で示される単位構造を有していると推測される。
【0276】
(合成例6)
300mlのセパラブルフラスコに、2,2’−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)100g(0.54mol)、PPQ(三光株式会社製試薬)50g(0.16mol)及びトルエン123mlを投入し、約100℃に加熱した。PPQはすべて溶解しなかったため、懸濁液のまま、約100℃に維持しながら、溶液にメチルトリメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製MTMS−A)89gを約30分かけて滴下した。さらに溶液に、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加物を0.75g(0.0020mol)加え、110〜150℃で約34時間続けた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃でトルエンを減圧除去し、フッ素樹脂コートした金属製の容器に出し、室温(25℃)まで冷却することによって、187gの固体の生成物(リン原子含有量2.57重量%)を得た。
【0277】
得られた生成物のH−NMR測定及びIR測定を行った。
本実施例で得られた生成物のH−NMRスペクトルを図13に示す。H−NMR測定の結果から、原料であるメチルトリメトキシシランの部分縮合物のメトキシ基由来のシグナルが、反応開始時を基準として2.4%であることを確認した。
IR測定の結果を図14及び図15に示す。図14は原料であるPPQのスペクトル、図15は本実施例で得られた生成物のH−NMRスペクトルである。IR測定の結果から、880〜980cm−1にSi−OAr基に特徴的な吸収帯の存在していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピークが減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は上記一般式(XX)及び/又は(XXI)で示される単位構造を有していると推測される。
【0278】
(合成例7)
300mlのセパラブルフラスコに、2,2’−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)100g(0.54mol)、PPQ(三光株式会社製試薬)67g(0.22mol)及びトルエン133mlを投入し、約100℃に加熱した。PPQはすべて溶解しなかったため、懸濁液のまま、約100℃に維持しながら、溶液にメチルトリメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製MTMS−A)96gを約45分かけて滴下した。さらに溶液に、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加物を0.83g(0.0022mol)加え、110〜150℃で約38時間続けた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃でトルエンを減圧除去し、フッ素樹脂コートした金属製の容器に出し、室温(25℃)まで冷却することによって、207gの固体の生成物(リン原子含有量3.11重量%)を得た。
【0279】
得られた生成物のH−NMR測定及びIR測定を行った。
本実施例で得られた生成物のH−NMRスペクトルを図16に示す。H−NMR測定の結果から、原料であるメチルトリメトキシシランの部分縮合物のメトキシ基由来のシグナルが、反応開始時を基準として2.4%であることを確認した。
本実施例で得られた生成物のIRスペクトルを図17に示す。IR測定の結果から、880〜980cm−1にSi−OAr基に特徴的な吸収帯の存在していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピークが減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は上記一般式(XX)及び/又は(XXI)で示される単位構造を有していると推測される。
【0280】
(合成例8)
300mlのセパラブルフラスコに、2,2’−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)80g(0.43mol)、PPQ(三光株式会社製試薬)67g(0.22mol)及びトルエン114mlを投入し、約100℃に加熱した。PPQはすべて溶解しなかったため、懸濁液のまま、約100℃に維持しながら、溶液にメチルトリメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製MTMS−A)82gを約30分かけて滴下した。さらに溶液に、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加物を0.73g(0.0020mol)加え、110〜150℃で約24時間続けた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃でトルエンを減圧除去し、フッ素樹脂コートした金属製の容器に出し、室温(25℃)まで冷却することによって、176gの固体の生成物(リン原子含有量3.54重量%)を得た。
【0281】
得られた生成物のH−NMR測定及びIR測定を行った。
本実施例で得られた生成物のH−NMRスペクトルを図18に示す。H−NMR測定の結果から、原料であるメチルトリメトキシシランの部分縮合物のメトキシ基由来のシグナルが、反応開始時を基準として3.0%であることを確認した。
本実施例で得られた生成物のIRスペクトルを図19に示す。IR測定の結果から、880〜980cm−1にSi−OAr基に特徴的な吸収帯の存在していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピークが減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は上記一般式(XX)及び/又は(XXI)で示される単位構造を有していると推測される。
【0282】
(合成例9)
300mlのセパラブルフラスコに、2,2’−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)75g(0.40mol)、PPQ(三光株式会社製試薬)83g(0.27mol)及びトルエン119mlを投入し、約100℃に加熱した。PPQはすべて溶解しなかったため、懸濁液のまま、約100℃に維持しながら、溶液にメチルトリメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製MTMS−A)86gを約30分かけて滴下した。さらに溶液に、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加物を0.79g(0.0021mol)加え、110〜150℃で約24時間続けた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃でトルエンを減圧除去し、フッ素樹脂コートした金属製の容器に出し、室温(25℃)まで冷却することによって、176gの固体の生成物(リン原子含有量4.13重量%)を得た。
【0283】
得られた生成物のH−NMR測定及びIR測定を行った。
本実施例で得られた生成物のH−NMRスペクトルを図20に示す。H−NMR測定の結果から、原料であるメチルトリメトキシシランの部分縮合物のメトキシ基由来のシグナルが、反応開始時を基準として2.3%であることを確認した。
本実施例で得られた生成物のIRスペクトルを図21に示す。IR測定の結果から、880〜980cm−1にSi−OAr基に特徴的な吸収帯の存在していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピークが減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は上記一般式(XX)及び/又は(XXI)で示される単位構造を有していると推測される。
【0284】
(合成例10)
本発明による硬化性樹脂の比較例として、(c)フェノール性水酸基含有リン化合物を含有しない硬化性樹脂を、下記のPCT/JP2006/301584に記載の方法で得た。
【0285】
すなわち、300mlのセパラブルフラスコに、2,2’−ビフェノール100g(0.537mol)及びトルエン152mlを投入し、約100℃に加熱して固形成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、その溶液にトリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を0.50g(0.0013mol)加え、さらにメチルトリメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製製品名MTMS−A) 55.0gを約20分かけて滴下し、120℃で12時間にわたって反応を進めた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用い約80℃で、反応溶液からトルエンを減圧除去し、次いで残渣をフッ素樹脂コーティングした金属製容器に移して、室温まで冷却することによって、112gの固体の生成物(リン原子含有量0.18重量%)を得た。
【0286】
なお、合成例1〜10で用いた2,2’−ビフェノールは、東京化成工業株式会社製の試薬であるが、イオンクロマトグラフによって陽イオン濃度及び陰イオン濃度を測定した結果、ナトリウムイオンが600ppm、カリウムイオンが380ppm、塩化物イオンが610ppm、リン酸イオンが130ppm、硝酸イオンが10ppmであった。合成例1〜9で用いた2,2’−ビフェノールは、東京化成工業株式会社製の試薬を精製して用いた。精製後の陽イオン濃度及び陰イオン濃度は、ナトリウムイオンが60ppm、塩化物イオンが9.0ppmであり、それ以外の精製前に検出されたイオンは検出されなかった。2,2’−ビフェノールの具体的な精製方法について以下に説明する。
【0287】
(2,2’−ビフェノールの精製)
3000mlのセパラブルフラスコに、2,2’−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)1500g、トルエン500ml、及び蒸留水1000mlを投入し、それらを約90℃に加熱して固体成分を溶解させ溶液とした。その溶液を、約90℃に維持しながら2.5時間にわたって加熱及び攪拌した後に、一晩放置し、析出した固形物をろ過、洗浄(蒸留水1500ml)した。その固形物を、再び3000mlのセパラブルフラスコに投入し、トルエン500ml及び蒸留水1000mlを加え、約90℃に加熱して溶解させ溶液とした。その溶液を約90℃に維持しながら、2.5時間にわたって加熱及び攪拌した後、一晩放置し、析出した固形物をろ過、洗浄(蒸留水1500ml)した。得られた固形物を70℃で真空乾燥した後に、2000mlのセパラブルフラスコに投入し、500mlのトルエンを加え、加熱して溶解させ溶液とし、微量残っている水を共沸によって除去した。引き続き、その溶液を一晩放置し、析出した固形物をろ過、乾燥することによって、精製した2,2’−ビフェノールを1340g得た。
【0288】
合成例1〜10で得られた反応生成物(以下「硬化性樹脂」と称す)の各種測定の詳細は以下の通りである。
(1)H−NMR
約10mgの硬化性樹脂を約1mlの重アセトン(合成例1〜8)又は重クロロホルム(合成例9)に溶かして溶液とし、溶液をφ5mmの試料管に入れ、ブルカーバイオスピン社製AV−300Mを用いて測定した。シフト値は、重アセトンを用いた場合は(CD3)2CO(2.05ppm)、重クロロホルムを用いた場合は溶媒に微量含まれるテトラメチルシラン(0.00ppm)を基準とした。
(2)IR
Bio−Rad社製FTS 3000MXを用い、KBr法に従って測定した。
(3)イオンクロマトグラフ
乳鉢を用いて粉砕した硬化性樹脂5g及び蒸留水50gをポリプロピレン製容器に入れ、95℃で20時間加熱して調製した抽出水をろ過し、以下の方法を用いて測定した。この測定値から、先と同様にポリプロピレン製容器に蒸留水50gを入れ、95℃で20時間加熱して調製した水の測定値を差し引き、硬化性樹脂に含まれる各種イオンの値に変換し、イオン濃度とした。
(3−1)陽イオン
ガードカラム(Shim−pack IC−GC3)及び分離カラム(Shim−pack IC−C3)を装着した島津製作所製HIC−6Aイオンクロマトグラフを用いて、溶離液:1mMシュウ酸水溶液/アセトニトリル=5/1、流速:1.1ml/min、カラム温度:30℃の条件で測定した。
(3−2)陰イオン
ガードカラム(IonPac AG9−HC)及び分離カラム(IonPac AS9−HC)を装着したDIONEX社製IC20イオンクロマトグラフを用いて、溶離液:9mM炭酸ナトリウム水溶液、流速:1.0ml/min、カラム温度:30℃の条件で測定した。
【0289】
〔エポキシ樹脂組成物の作製及び特性評価〕
(実施例1〜9、比較例1〜5)
(A)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂1:エポキシ当量168、軟化点62℃のサリチルアルデヒド型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名「1032H60」)
【0290】
(B)硬化剤
硬化剤1:合成例1で得た硬化性樹脂
硬化剤2:合成例2で得た硬化性樹脂
硬化剤3:合成例3で得た硬化性樹脂
硬化剤4:合成例4で得た硬化性樹脂
硬化剤5:合成例5で得た硬化性樹脂
硬化剤6:合成例6で得た硬化性樹脂
硬化剤7:合成例7で得た硬化性樹脂
硬化剤8:合成例8で得た硬化性樹脂
硬化剤9:合成例9で得た硬化性樹脂
硬化剤A:合成例10で得た硬化性樹脂
硬化剤B:水酸基当量103、軟化点86℃のサリチルアルデヒド型フェノール樹脂(明和化成株式会社製商品名「MEH−7500」)
【0291】
(C)硬化促進剤
トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物
【0292】
(D)無機充填剤
平均粒径17.5μm、比表面積3.8m/gの球状溶融シリカ
【0293】
(その他の各種添加剤)
リン化合物A:2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト(株式会社ADEKA製品名「アデカスタブHP−10」)
リン化合物B:トリフェニルホスフィンオキサイド(北興化学工業株式会社製「TPPO」)
リン化合物C:10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(三光株式会社製商品名HCA−HQ)
リン化合物D:2−(ジフェニルホスフィニル)ハイドロキノン(北興化学工業株式会社製商品名PPQ)
カップリング剤:エポキシシラン(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
着色剤:カーボンブラック(三菱化学株式会社製商品名「MA−100」)
離型剤:カルナバワックス(株式会社セラリカNODA製)
【0294】
上述の成分をそれぞれ表1〜3に示す重量部で配合し、混練温度80℃、混練時間15分の条件でロール混練を行うことによって、それぞれ実施例1〜9、比較例1〜16のエポキシ樹脂組成物を得た。なお、表1〜3に記載の「樹脂中のリン原子含有量」とは、エポキシ樹脂組成物における無機充填剤を除く樹脂成分の全重量における、例えば、硬化剤、硬化促進剤及び難燃剤等に含まれるリン原子の含有量を意味している。
【0295】
【表1】

【0296】
【表2】

【0297】
【表3】

【0298】
次に、実施例1〜9、比較例1〜16によって得たそれぞれのエポキシ樹脂組成物を、以下に示す各試験によって評価した。評価結果を表4〜6に示す。なお、エポキシ樹脂組成物の成形は、トランスファー成形機を用い、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で行った。また、後硬化は175℃で6時間行った。
(1)熱時硬度
エポキシ樹脂組成物を上記条件で直径50mm×厚さ3mmの円板に成形し、成形後直ちにショアD型硬度計を用いて測定した。
(2)ガラス転移温度
エポキシ樹脂組成物を上記条件で長さ80mm×幅10mm×厚さ3mmの大きさに成形し、後硬化した。次いで、ダイヤモンドカッターで長さ55mmに切断し、粘弾性測定装置ARES(レオメトリックサイエンティフィックエフイー株式会社製)を用い、ダイナミックモードで昇温速度5℃、周波数6.28rad/sの条件でのtanδの測定からガラス転移温度(℃)を求めた。
(3−1)高温時弾性率(240℃)
上記(2)における測定から240℃における貯蔵弾性率(10Pa)を求めた。
(3−2)高温時弾性率(270℃)
上記(2)における測定から270℃における貯蔵弾性率(10Pa)を求めた。
(4)難燃性
エポキシ樹脂組成物を上記条件で長さ185mm×幅12mm×厚さ1/8インチの大きさに成型し、後硬化後、UL−94試験法に従って難燃性を評価した。
【0299】
【表4】

【0300】
【表5】

【0301】
【表6】

【0302】
本発明による硬化性樹脂を硬化剤として含有する実施例1〜9は、いずれも熱時硬度、ガラス転移温度、高温弾性率及び難燃性に優れている。これに対して、本発明による硬化性樹脂を硬化剤として含まない比較例1〜16において、リン化合物を含有していない比較例1と9及び比較例10については難燃性の指標であるUL−94 V−0を満足していない。フェノール性水酸基を持たないリン化合物を使用した比較例2〜6及び11〜14については、難燃性に優れるものの、熱時硬度及び高温弾性率の点で劣っている。また、フェノール性水酸基含有リン化合物をロール混練時に添加した比較例7、8、15及び16については、難燃性及び熱時硬度は優れているものの、高温弾性率の点で劣っている。実施例のガラス転移温度はtanδのピークがブロードとなった影響で対応する比較例9及び10と比較し低くなっているが、高温、特に270℃での弾性率については比較例9及び10よりも優れており、耐熱性に優れている。よって、本発明の硬化性樹脂によれば、優れた耐熱性を発現させるとともに、成形性及び難燃性に優れることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0303】
【図1】本発明による硬化性樹脂(合成例1)のH−NMRスペクトルである。
【図2】本発明による硬化性樹脂の合成例で使用した2,2’−ビフェノールのIRスペクトルである。
【図3】本発明による硬化性樹脂の合成例で使用したHCA−HQのIRスペクトルである。
【図4】本発明による硬化性樹脂(合成例1)のIRスペクトルである。
【図5】本発明による硬化性樹脂(合成例2)のH−NMRスペクトルである。
【図6】本発明による硬化性樹脂(合成例2)のIRスペクトルである。
【図7】本発明による硬化性樹脂(合成例3)のH−NMRスペクトルである。
【図8】本発明による硬化性樹脂(合成例3)のIRスペクトルである。
【図9】本発明による硬化性樹脂(合成例4)のH−NMRスペクトルである。
【図10】本発明による硬化性樹脂(合成例4)のIRスペクトルである。
【図11】本発明による硬化性樹脂(合成例5)のH−NMRスペクトルである。
【図12】本発明による硬化性樹脂(合成例5)のIRスペクトルである。
【図13】本発明による硬化性樹脂(合成例6)のH−NMRスペクトルである。
【図14】本発明による硬化性樹脂の合成例で使用したPPQのIRスペクトルである。
【図15】本発明による硬化性樹脂(合成例6)のIRスペクトルである。
【図16】本発明による硬化性樹脂(合成例7)のH−NMRスペクトルである。
【図17】本発明による硬化性樹脂(合成例7)のIRスペクトルである。
【図18】本発明による硬化性樹脂(合成例8)のH−NMRスペクトルである。
【図19】本発明による硬化性樹脂(合成例8)のIRスペクトルである。
【図20】本発明による硬化性樹脂(合成例9)のH−NMRスペクトルである。
【図21】本発明による硬化性樹脂(合成例9)のIRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(I−1)で示されるシラン化合物、下記一般式(I−1)で示されるシラン化合物の部分縮合物、下記一般式(I−2)で示されるシラン化合物及び下記一般式(I−2)で示されるシラン化合物の部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物との反応により得られる化合物であることを特徴とする硬化性樹脂。
【化1】

(式中、nは0〜2の数であり、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、Rは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数2〜18のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、R及びRの2つ以上が結合して環状構造を形成してもよい。)
【化2】

(式中、mは0又は1、nは2以上の整数であり、R1’は炭素数1〜18の置換又は非置換のn価の炭化水素基から選ばれ、R1’と結合する2つ以上のSiR2’3’(3−m)基とは全てが同一でも異なっていてもよく、R2’は水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、R1’又はR3’と結合して環状構造を形成してもよく、R3’は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数2〜18の置換又は非置換のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2つ以上のR3’が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。)
【請求項2】
硬化性樹脂中に残存する揮発成分の含有量が、前記硬化性樹脂の全重量を基準として10重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂。
【請求項3】
反応開始時の(a)シラン化合物におけるR及び/又はR3’基数を基準として、未反応のR及び/又はR3’基数が10%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化性樹脂。
【請求項4】
硬化性樹脂中のリン原子含有量が0.5重量%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂。
【請求項5】
(c)フェノール性水酸基含有リン化合物が、下記一般式(I−6)で示される構造式であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性樹脂。
【化3】

(式中、lは1以上の整数であり、R7aは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2つのR7aが互いに結合して環状構造を形成してもよく、R7bは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2つ以上のR7bが互いに結合して環状構造を形成してもよい)
【請求項6】
(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物において、2価フェノール化合物と分子内にフェノール性水酸基を2つ有するリン化合物の合計が(b)と(c)の混合物全体の全重量を基準としてその70重量%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性樹脂。
【請求項7】
(a)シラン化合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物とを反応させて得られる化合物の(b)と(c)において、(b)と(c)の混合物全体の全重量を基準としてその30重量%以上が(a)の少なくとも1種の化合物と環化可能であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性樹脂。
【請求項8】
(a)シラン化合物におけるR及び/又はR3’が、水酸基又は1価のオキシ基であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の硬化性樹脂。
【請求項9】
アリールオキシシリル(ArO−Si)結合を有し、下記一般式(I−3)及び(I−4)で示される構造部位の少なくとも一方を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の硬化性樹脂。
【化4】

(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示す。)
【化5】

(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示し、nは0以上の数を示す。)
【請求項10】
アリールオキシシリル結合の全数を基準として、一般式(I−3)及び(I−4)で示される構造部位の少なくとも一方を形成するアリールオキシシリル結合が20%以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の硬化性樹脂。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の硬化性樹脂の製造方法であって、(a)シラン化合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物とを反応させる工程を有することを特徴とする硬化性樹脂の製造方法。
【請求項12】
(a)シラン化合物と、(b)フェノール化合物と(c)フェノール性水酸基含有リン化合物の混合物との反応をホスフィン化合物、ホスホニウム塩化合物、環状アミジン化合物、及び環状アミジニウム塩からなる群より選ばれる触媒の存在下で実施することを特徴とする請求項11に記載の硬化性樹脂の製造方法。
【請求項13】
触媒が、下記一般式(I−5)で示されるホスフィン化合物又はその分子間塩であることを特徴とする請求項12に記載の硬化性樹脂の製造方法。
【化6】


(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよく、Rは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2以上のRが互いに結合して環状構造を形成してもよく、Yは1以上の放出可能なプロトン(H)を有する炭素数0〜18の有機基から1つのプロトンが脱離した基であり1以上のRと互いに結合して環状構造を形成してもよい)
【請求項14】
請求項1〜10のいずれかに記載の硬化性樹脂を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項15】
(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤とを含有するエポキシ樹脂組成物であって、(B)硬化剤が請求項1〜10のいずれかに記載の硬化性樹脂を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項16】
さらに(C)硬化促進剤を含有することを特徴とする請求項15に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項17】
さらに(D)無機充填剤を含有することを特徴とする請求項15又は16に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項18】
(A)エポキシ樹脂が、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂、及びアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物からなる群より選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂を含有することを特徴とする請求項15〜17のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項19】
請求項15〜18のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物によって封止された素子を備えることを特徴とする電子部品装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−260853(P2008−260853A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104740(P2007−104740)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】