説明

曲げ加工用金型、これを用いた自動車用サスペンションアームの製造装置およびその製造方法

【課題】装置構成が簡単で安価であり、装置の設置面積を小さくできると共に、製造の自動化が可能な曲げ加工用金型、これを用いた自動車用サスペンションアームの製造装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】自動車用サスペンションアームの製造装置に用いられ、丸棒状素材20を曲げ加工して曲げ加工材21を作製するための曲げ加工用金型1であって、丸棒状素材20を載置する載置部3を備える曲げ下金型2と、曲げ下金型2に載置された丸棒状素材20を垂直方向に押圧する押圧部5を備える曲げ上金型4とからなり、載置部3および押圧部5は、曲げ加工材21の曲げ形状に沿った形状に形成され曲げ加工材21と接触する下金型接触部6および上金型接触部7を備え、下金型接触部6は、その中央部に曲げ加工材21と非接触で移動手段が曲げ加工材21を把持できる大きさに形成された溝部8を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用サスペンションアームの製造装置に用いられる曲げ加工用金型、これを用いた自動車用サスペンションアームの製造装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用サスペンションアームは、ツブシ鍛造および仕上鍛造、または、ツブシ鍛造、荒鍛造および仕上鍛造によって製造されている。また、その製造装置においては、各鍛造間での部材の搬出入をトランスファフィーダで行なうものが一般的であった。そして、トランスファフィーダを備えた製造装置としては、例えば特許文献1に以下のような構成のものが記載されている。
【0003】
製造装置は、据込型、荒仕上型、仕上型および打抜型が並設された鍛造装置と、各型の下型が配置された下ダイホルダの上に配置され、往復3次元運動する2本の各フィードバーに把持爪が対向して配置されたトランスファフィーダとを備える。そして、トランスファフィーダは、フィードバーの中途部を脱着可能な中間バーで構成し、複数の把持爪の一部を中間バーに対して昇降可能に設け、この把持爪を昇降動作させる伝達機構部を中間バーに取り付け、フィードバーの送り動作に連動して伝達機構部を駆動する駆動リンク機構部を下ダイホルダ上に設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平06−530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車用サスペンションアームの製造においては、自動車用サスペンションアームの形状によって、鍛造用素材としてあらかじめ曲げ加工を施した素材を使用する場合がある。特許文献1に記載された製造装置においては、曲げ加工を行なう機構が備えられていないため、製造装置とは別の曲げ加工装置によって作製された曲げ加工材を鍛造用素材として使用することとなる。その場合、従来の曲げ加工装置としては、水平方向プレス機を使用していた。この水平方向プレス機は、素材に対して水平方向に力を印加する機構を有するため、装置全体の横幅(水平方向の幅)が広くなる。その結果、水平方向プレス機の設置には、広い設置面積が必要になるという問題がある。
【0006】
また、特許文献1に記載されたトランスファフィーダは、前記したように複雑な装置構成であるため、それを備えた製造装置が高価となると共に、部材の搬出入の自動化が容易でないという問題がある。さらに、特許文献1の製造装置は、据込型による据込加工工程の前に、曲げ加工工程を行なう水平方向プレス機を設置した場合には、前記したように、製造装置の設置には広い設置面積が必要になるという問題もある。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題を解決すべく創案されたもので、その課題は、装置構成が簡単で安価であり、装置の設置面積を小さくできると共に、製造の自動化が可能な曲げ加工用金型、これを用いた自動車用サスペンションアームの製造装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明に係る曲げ加工用金型は、自動車用サスペンションアームの製造装置に用いられ、移動手段により搬入される丸棒状素材を曲げ加工して曲げ加工材を作製するための曲げ加工用金型であって、前記丸棒状素材を載置する載置部を備える曲げ下金型と、前記曲げ下金型の支持溝に載置された前記丸棒状素材を垂直方向に押圧する押圧部を備える曲げ上金型とからなり、前記載置部および前記押圧部は、前記曲げ加工材の曲げ形状に沿った形状に形成され当該曲げ加工材と接触する下金型接触部および上金型接触部を備え、前記下金型接触部は、その中央部に前記曲げ加工材と非接触で前記移動手段が当該曲げ加工材を把持できる大きさに形成された溝部を備えることを特徴とする。
【0009】
前記構成によれば、曲げ上金型が丸棒状素材を垂直方向に押圧する押圧部を備えることによって、曲げ加工の際には丸棒状素材に垂直方向に力が印加される機構となるため、曲げ加工金型の横幅(水平方向の幅)を小さくできる。また、下金型接触部に所定の大きさの溝部を備えることによって、溝部に移動手段の把持部を挿入して曲げ加工材の移動を行なうことが可能となり、自動車用サスペンションアームの製造装置に組み込んで使用した際に製造の自動化が容易となる。
【0010】
また、本発明に係る曲げ加工用金型は、前記上金型接触部が、その中央部に前記曲げ加工材と接触しない非接触部を備えることを特徴とする。
【0011】
前記構成によれば、上金型接触部に非接触部を備えることによって、曲げ加工材と上金型接触部との間に空間部が形成され、この空間部で曲げ加工材の加工歪が吸収されるため、右輪用曲げ加工用金型で曲げ加工された曲げ加工材の形状と、左輪用曲げ加工用金型で曲げ加工された曲げ加工材の形状との差異を小さくできる。
【0012】
本発明に係る自動車用サスペンションアームの製造装置は、前記曲げ加工用金型を用いた自動車用サスペンションアームの製造装置であって、前記曲げ加工用金型と、前記曲げ加工用金型によって作製された曲げ加工材を鍛造加工してツブシ鍛造材を作製するツブシ鍛造用金型と、前記ツブシ鍛造材を鍛造加工して仕上鍛造材を作製する仕上鍛造用金型とが並設される少なくとも1つの鍛造装置と、前記仕上鍛造材のバリ部をトリミングするトリミング装置と、前記丸棒状素材を前記曲げ加工用金型に搬入すると共に、前記曲げ加工材を前記ツブシ鍛造用金型に移動させ、前記ツブシ鍛造材を前記仕上鍛造用金型に移動させ、かつ、前記仕上鍛造材を前記トリミング装置に搬出する移動手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
前記構成によれば、鍛造装置において前記曲げ加工用金型を他の鍛造用金型と並設させることによって、製造装置に曲げ加工機能が付与されると共に、製造装置の装置構成も複雑にならず、しかも、部材の搬入および移動にロボットアーム等の移動手段が使用できる。また、製造装置が移動手段を備えることによって、部材の搬出入の自動化が容易となり、自動車用サスペンションアームの製造の自動化が容易となる。
【0014】
本発明に係る自動車用サスペンションアームの製造装置は、前記移動手段が、前記丸棒状素材を前記曲げ加工用金型に搬入すると共に、前記曲げ加工材を前記ツブシ鍛造用金型に移動させる第1移動手段と、前記ツブシ鍛造材を前記仕上鍛造用金型に移動させる第2移動手段と、前記仕上鍛造材を前記トリミング装置に搬出する第3移動手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
前記構成によれば、曲げ加工材を搬入および移動させる第1移動手段と、ツブシ鍛造材を移動させる第2移動手段と、仕上鍛造材を搬出する第3移動手段とを備えることによって、部材の搬出入の自動化がさらに容易となり、自動車用サスペンションアームの製造の自動化がさらに容易となる。
【0016】
また、本発明に係る自動車用サスペンションアームの製造装置は、前記鍛造装置には、前記ツブシ鍛造材を鍛造加工して荒鍛造材を作製する荒鍛造用金型がさらに並設され、前記仕上鍛造用金型では前記荒鍛造材を鍛造加工して仕上鍛造材を作製し、かつ、前記移動手段が、前記ツブシ鍛造材を前記荒鍛造用金型に移動させると共に、前記荒鍛造材を前記仕上鍛造用金型に移動させることを特徴とする。
【0017】
前記構成によれば、荒鍛造用金型が並設されることによって、各金型での加工度を小さく設定できるため、複雑な形状に対応できる。
【0018】
本発明に係る自動車用サスペンションアームの製造方法は、前記製造装置を用いた自動車用サスペンションアームの製造方法であって、前記曲げ加工用金型を用いて、垂直方向から押圧して前記丸棒状素材を曲げ加工して前記曲げ加工材を作製する曲げ加工工程と、前記ツブシ鍛造用金型を用いて、前記曲げ加工材を鍛造加工して前記ツブシ鍛造材を作製するツブシ鍛造工程と、前記仕上鍛造用金型を用いて、前記ツブシ鍛造材を鍛造加工して前記仕上鍛造材を作製する仕上鍛造工程と、前記トリミング装置を用いて、前記仕上鍛造材のバリ部をトリミングして自動車用サスペンションアームを製造するトリミング工程とを含むことを特徴とする。
【0019】
前記製造方法によれば、前記製造装置を用いて前記手順を行うことによって、自動車用サスペンションアームの製造の自動化が容易となる。
【0020】
また、本発明に係る自動車用サスペンションアームの製造方法は、前記製造装置を用いた自動車用サスペンションアームの製造方法であって、前記曲げ加工用金型を用いて、垂直方向から押圧して前記丸棒状素材を曲げ加工して前記曲げ加工材を作製する曲げ加工工程と、前記ツブシ鍛造用金型を用いて、前記曲げ加工材を鍛造加工して前記ツブシ鍛造材を作製するツブシ鍛造工程と、前記荒鍛造用金型を用いて、前記ツブシ鍛造材を鍛造加工して前記荒鍛造材を作製する荒鍛造工程と、前記仕上鍛造用金型を用いて、前記荒鍛造材を鍛造加工して前記仕上鍛造材を作製する仕上鍛造工程と、前記トリミング装置を用いて、前記仕上鍛造材のバリ部をトリミングして自動車用サスペンションアームを製造するトリミング工程とを含むことを特徴とする。
【0021】
前記製造方法によれば、前記製造装置を用いて前記手順を行うことによって、自動車用サスペンションアームの製造の自動化が容易となる。また、荒鍛造用金型を用いて荒鍛造工程を行なうことによって、各金型での加工度を小さく設定できるため、複雑な形状に対応できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る曲げ加工用金型によれば、自動車用サスペンションアームの製造装置に組み込んで使用した際に、製造装置の装置構成が簡単で安価であり、装置の設置面積が小さくできると共に、製造の自動化が可能となる。また、製造される自動車用サスペンションアームの寸法精度が優れたものとなる。
【0023】
本発明に係る製造装置によれば、装置構成が簡単で安価であり、装置の設置面積が小さくできると共に、製造の自動化が可能となる。また、製造装置の寿命が長期なものとなる。
【0024】
本発明に係る製造方法によれば、自動車用サスペンションアームの製造の自動化が可能となる。また、製造装置の寿命が長期なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)は本発明に係る曲げ加工用金型の構成を示す斜視図、(b)は曲げ加工時の断面図である。
【図2】(a)は本発明に係る曲げ加工用金型の構成を示す斜視図、(b)は曲げ加工時の断面図である。
【図3】本発明に係る製造装置の構成を模式的に示す図である。
【図4】(a)〜(f)は本発明に係る製造装置の各段階で得られる部材の形状を模式的に示す図である。
【図5】(a)はツブシ鍛造用金型の平面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(a)のB−B線断面図、(d)はツブシ鍛造用金型で作製されるツブシ鍛造材のB−B線での断面図である。
【図6】荒鍛造用金型の平面図である。
【図7】仕上鍛造用金型の平面図である。
【図8】(a)、(b)は第1移動手段(ロボットアーム)の正面図である。
【図9】(a)、(b)は第2または第3移動手段(ロボットアーム)の正面図である。
【図10】本発明に係る製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る曲げ加工用金型、これを用いた自動車用サスペンションアームの製造装置および製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
<曲げ加工用金型>
本発明に係る曲げ加工用金型は、自動車用サスペンションアームの製造装置に用いられ、丸棒状素材を曲げ加工して曲げ加工材を作製するものである。
なお、自動車用サスペンションアームは、非軸対称で複雑な形状を有することが多く、鉄鋼材料並みの高強度や疲労強度が要求される反面、高い衝撃性も必要とされる。したがって、丸棒状素材には、JIS規定の6061合金やその改善材等の6000系のアルミニウム合金からなるものが使用される。また、自動車用サスペンションアームの形状によっては、円形や楕円形等の断面形状を有する丸棒状素材だけでなく、四角形、六角形等の角形の断面形状を有する角棒状素材を曲げ加工材の作製に用いてもよい。
【0028】
図1(a)、(b)および図2(a)、(b)に示すように、曲げ加工用金型1は、曲げ下金型2と、曲げ上金型4とからなる。図1(a)、(b)には、右輪用サスペンションアームの製造装置に用いられる右輪用曲げ加工用金型を示し、図2(a)、(b)には左輪用サスペンションアームの製造装置に用いられる左輪用曲げ加工用金型を示す。
【0029】
(曲げ下金型)
曲げ下金型2は、丸棒状素材20を載置する載置部3を備え、載置部3には載置された丸棒状素材20を支持する支持溝3aを備える。ここで、載置部3は、曲げ加工の際に、曲げ上金型4の押圧部5と対面する面であって、押圧部5と凹凸関係にあり、その大きさは丸棒状素材20より大きく形成する。また、支持溝3aは、丸棒状素材20の軸方向に沿って形成され、溝形状は丸棒状素材20を支持しやすい丸溝または角溝であることが好ましい。
【0030】
そして、載置部3は、作製された曲げ加工材21の曲げ形状に沿った形状に形成され、曲げ加工材21と接触する下金型接触部6を備える。ここで、曲げ加工材21の曲げ形状は、最終製品である自動車用サスペンションアームの形状によって適宜決定され、例えば、軸方向に沿って湾曲した形状である。
【0031】
具体的には、下金型接触部6は、図1(a)、(b)に示すように右輪用曲げ加工用金型1では、曲げ加工材21の曲げ形状に沿って下方に湾曲した形状(凹形状)に形成され、図2(a)、(b)に示すように左輪用曲げ加工用金型1では、曲げ加工材21の曲げ形状に沿って上方に湾曲した形状(凸形状)に形成されている。
【0032】
また、下金型接触部6は、その中央部に曲げ加工材21の軸方向に直交するように形成された溝部8を備える。この溝部8は、曲げ加工材21を曲げ加工用金型1から移動する際に、移動手段、例えば、第1移動手段16の把持部16c(図8参照)が挿入される空間部となる。したがって、この溝部8は、曲げ加工材21が押圧されるときでも非接触となるような大きさであって、第1移動手段16の把持部16cが曲げ加工材21を把持できる大きさに形成される。そして、溝部8の形状は、断面からみて図1(b)、図2(b)で示すように、ほぼ四角形となるように形成されているが、把持部16cが入り込んで曲げ加工材21を把持できる形状であれば、半円や三角形等であってもよく、限定されるものではない。
【0033】
(曲げ上金型)
曲げ上金型4は、曲げ下金型2に載置された丸棒状素材20を垂直方向に押圧する押圧部5を備え、押圧部5には支持溝5aを備える。ここで、押圧部5は、曲げ加工の際に、曲げ下金型2の載置部3と対面する面であって、載置部3と凹凸関係にある。また、支持溝5aは、丸棒状素材20(曲げ加工材21)の軸方向に沿って形成され、溝形状は丸棒状素材20を押圧するために丸溝である。
【0034】
そして、押圧部5は、曲げ加工によって作製された曲げ加工材21の曲げ形状に沿った形状に形成され、曲げ加工材21と接触する上金型接触部7を備える。ここで、曲げ加工材21の曲げ形状は、最終製品である自動車用サスペンションアームの形状によって適宜決定され、例えば、軸方向に沿って湾曲した形状である。
【0035】
具体的には、上金型接触部7は、図1(a)、(b)に示すように右輪用曲げ加工用金型1では、曲げ加工材21の曲げ形状に沿って下方に湾曲した形状(凸形状)に形成され、図2(a)、(b)に示すように左輪用曲げ加工用金型1では、曲げ加工材21の曲げ形状に沿って上方に湾曲した形状(凹形状)に形成されている。
【0036】
曲げ上金型4は、上金型接触部7の中央部に曲げ加工材21と接触しない非接触部9を備えることが好ましい。この非接触部9は、上金型接触部7と曲げ加工材21との間に空間部を形成するように、上金型接触部7の頂部または底部を上方にへこませて形成したものである。具体的には、非接触部9は、図1(a)、(b)に示すように右輪用曲げ加工用金型1では、上金型接触部7の頂部を上方にへこませて形成した面であって、図2(a)、(b)に示すように左輪用曲げ加工用金型1では、上金型接触部7の底部を上方にへこませて形成した丸棒状素材20の軸方向に直交する溝部である。
【0037】
この非接触部9を曲げ上金型4に形成することによって、曲げ加工材21と上金型接触部7との間に空間部が形成され、この空間部で曲げ加工材21の加工歪が吸収されるため、右輪用曲げ加工用金型1で曲げ加工された曲げ加工材21の形状と、左輪用曲げ加工用金型1で曲げ加工された曲げ加工材21の形状との差異を小さくできる。なお、非接触部9の形状は、特に限定されるものではない。
【0038】
<製造装置>
次に、自動車用サスペンションアームの製造装置について説明する。製造装置は、前記曲げ加工用金型を用いた製造装置である。
【0039】
図3に示すように、製造装置10は、鍛造装置11と、トリミング装置15と、移動手段(第1移動手段16、第2移動手段17、第3移動手段18)とを備える。
【0040】
(鍛造装置)
鍛造装置11は、曲げ加工用金型1と、ツブシ鍛造用金型12と、仕上鍛造用金型14とが、この順序で並設されたものである。
曲げ加工用金型1は、前記したように、図4(a)に示すような丸棒状素材20を曲げ加工して、図4(b)に示すような曲げ加工材21を作製するものである。曲げ加工用金型1の構成については前記したとおりであるので、説明を省略する。
【0041】
ツブシ鍛造用金型12は、曲げ加工用金型1によって作製された曲げ加工材21を鍛造加工して、図4(c)に示すような平板状のツブシ鍛造材22を作製するものである。
図5(a)、(c)に示すように、ツブシ鍛造用金型12は、ツブシ鍛造材22を作製するための凹部12aが形成されたツブシ下金型12Aと、凹部12aに対応した凸部が形成されたツブシ上金型12Bとからなる。そして、ツブシ下金型12Aの上に曲げ加工材21が載置され、ツブシ上金型12Bの押圧によってツブシ鍛造材22が作製される。
【0042】
ツブシ下金型12Aの凹部12aには、ノックアウトピン12dが埋め込まれている。図5(b)に示すように、ノックアウトピン12dは、鍛造加工終了後、凹部12a内に突出して、作製されたツブシ鍛造材22の裏面を押圧して、凹部12aからツブシ鍛造材22を浮き上がらせる。その結果、ツブシ鍛造材22を仕上鍛造用金型14に移動する際に、ツブシ鍛造材22を移動手段(第2移動手段17)で把持しやすくなる。
【0043】
図5(a)、(c)に示すように、ツブシ下金型12Aの凹部12aには、円形凹状に形成された丸ピン部12b、および、矩形凹状に形成された平面部12cが所定位置に形成されている。丸ピン部12bと平面部12cは、ツブシ下金型12Aにツブシ上金型12Bを押圧する鍛造加工によって、図5(d)に示すように、ツブシ鍛造材22の端部に、丸ピン部12bおよび平面部12cに対応した凹部22b、22cを形成させる。ここで、ツブシ鍛造材22の端部とは、ツブシ鍛造材22において、製造終了時に自動車用サスペンションアーム25(図4(f)参照)となる本体部22hの外周部に形成されたバリ部22aを意味する。したがって、丸ピン部12bおよび平面部12cは、バリ部22aが形成される凹部12aの端部に形成する。
【0044】
また、ツブシ鍛造材22の凹部22b、22cは、ツブシ鍛造材22を仕上鍛造用金型14に移動する際に、移動手段(第2移動手段17)で把持される。したがって、丸ピン部12bおよび平面部12cは、丸ピン部12bおよび平面部12cに対応して形成される凹部22bおよび凹部22cが、第2移動手段17の上把持部17dおよび下把持部17f(図9参照)と整合するように、その形状を決定する。
なお、丸ピン部12bおよび平面部12c(凹部22bおよび凹部22c)は、ツブシ鍛造材22を仕上鍛造用金型14に載置する際の位置調整にも使用される。
【0045】
仕上鍛造用金型14は、ツブシ鍛造用金型12によって作製されたツブシ鍛造材22を鍛造加工して、図4(e)に示すような平板状の仕上鍛造材24を作製するものである。
図7に示すように、仕上鍛造用金型14は、仕上鍛造材24を作製するための凹部14aが形成された仕上下金型14Aと、凹部14aに対応した凸部が形成された仕上上金型(図示せず)とからなる。そして、仕上下金型14Aの上にツブシ鍛造材22が載置され、仕上上金型の押圧によって仕上鍛造材24が作製される。
【0046】
仕上下金型14Aの凹部14aには、ノックアウトピン14dが埋め込まれている。ノックアウトピン14dは、鍛造加工終了後、凹部14a内に突出して、作製された仕上鍛造材24(図4(e)参照)の裏面を押圧して、凹部14aから仕上鍛造材24を浮き上がらせる。その結果、仕上鍛造材24をトリミング装置15(図3参照)に移動する際に、仕上鍛造材24を移動手段(第3移動手段18、図9参照)で把持しやすくなる。
【0047】
仕上下金型14Aには、円形凹状に形成された丸ピン部14b、および、矩形凹状に形成された平面部14cが所定位置に形成されている。この丸ピン部14bおよび平面部14cは、ツブシ上金型12B(図5(a)参照)の丸ピン部12bおよび平面部12cと同一位置に同一形状で形成する。そして、この丸ピン部14bおよび平面部14cは、ツブシ鍛造材22(図4(c)参照)を仕上下金型14Aに載置した際に、ツブシ鍛造材22の凹部22bおよび凹部22cと整合する。これによって、ツブシ鍛造材22の載置位置が調整される。
なお、丸ピン部14bおよび平面部14cの形成によって、仕上鍛造材24(図4(e)参照)には凹部24bおよび凹部24cが形成される。この凹部24bおよび凹部24cは、仕上鍛造材24をトリミング装置15(図3参照)のトリミング金型(図示せず)に載置する際の載置位置の調整に利用される。
【0048】
仕上下金型14Aには、載置されるツブシ鍛造材22のバリ部22a(図4(c)参照)の外周部と接触してツブシ鍛造材22を拘束するために、複数の凸部14eが形成されている。これらの凸部14eの形成によって、載置されるツブシ鍛造材22の載置位置がさらに調整される。
【0049】
仕上下金型14Aには、円形凹状に形成された丸ピン部14f、および、矩形凹状に形成された平面部14gが所定位置に形成されている。この丸ピン部14fおよび平面部14gは、前記した丸ピン部14bおよび平面部14cと異なる位置に同一形状で形成する。そして、この丸ピン部14fおよび平面部14gを形成することによって、仕上鍛造材24の端部に凹部24dおよび凹部24eが形成される(図4(e)参照)。この凹部24dおよび凹部24eは、仕上鍛造材24をトリミング装置15(図3参照)に搬出する際に、移動手段(第3移動手段18)で把持され、第3移動手段18の上把持部18dおよび下把持部18f(図9参照)と整合する。これによって、仕上鍛造材24を第3移動手段18で把持しやすくなる。
【0050】
鍛造装置11において、前記以外の構成、例えば、曲げ上金型4、ツブシ上金型12Bおよび仕上上金型を降下させて曲げ下金型2、ツブシ下金型12Aおよび仕上下金型14Aを押圧するプレス装置は、従来公知のプレス装置を用いる。また、1台のプレス装置で前記した全ての上金型を昇降させてもよいし、3台のプレス装置で各上金型を昇降させてもよい。なお、図3では、1つの鍛造装置11に、曲げ加工用金型1、ツブシ鍛造用金型12および仕上鍛造用金型14が並設された例を記載したが、曲げ加工用金型1が設けられた鍛造装置と、ツブシ鍛造用金型12および仕上鍛造用金型14が設けられた鍛造装置とを並設、すなわち、2つの鍛造装置を並設させてもよい。また、曲げ加工用金型1が設けられた鍛造装置と、ツブシ鍛造用金型12が設けられた鍛造装置と、仕上鍛造用金型14が設けられた鍛造装置とを並設、すなわち、3つの鍛造装置を並設させてもよい。
【0051】
(トリミング装置)
図3に示すように、トリミング装置15は、仕上鍛造材24のバリ部24a(図4(e)参照)をトリミングして自動車用サスペンションアーム25(図4(f)参照)を作製できれば、構成は特に限定されず、従来公知のトリミング金型を備えたトリミング装置(図示せず)を用いる。また、トリミング金型を前記鍛造装置の複数の金型と並設させて、鍛造装置をトリミング装置として用いてもよい。
【0052】
(移動手段)
移動手段は、丸棒状素材20を曲げ加工用金型1に搬入すると共に、曲げ加工材21をツブシ鍛造用金型12に移動させ、ツブシ鍛造材22を仕上鍛造用金型14に移動させ、かつ、仕上鍛造材24をトリミング装置15に搬出するための手段である。このように、部材の搬出入に移動手段を使用することによって、自動車用サスペンションアームの製造の自動化が容易となる。
【0053】
移動手段は、その構成は部材を把持して搬出入できる機能を有するものであれば、特に限定されない。しかしながら、移動手段の把持部は、部材形状によって2種の把持部を使用することが好ましい。具体的には、丸棒状素材20および曲げ加工材21のように丸棒状の部材を把持しやすい把持部と、各鍛造材のように平板状の部材を把持しやすい把持部との2種を使用することが好ましい。
【0054】
移動手段は、1台の移動手段で各種の部材の搬出入を行なってもよいが、好ましくは、丸棒状素材20の搬入および曲げ加工材21の移動のための第1移動手段16、ツブシ鍛造材22の移動のための第2移動手段17、および、仕上鍛造材24の搬出のための第3移動手段18の3台の移動手段で部材の搬出入を行なうことが好ましい。3台の移動手段を使用することによって、部材の搬出入にかかる時間が短縮され、製造の自動化がさらに容易となる。第1移動手段16、第2移動手段17および第3移動手段18の構成は、特に限定されないが、以下のような構成を備えることが好ましい。
【0055】
図3に示すように、第1移動手段16は、丸棒状素材20(図4(a)参照)を曲げ加工用金型1に搬入すると共に、曲げ加工用金型1で作製された曲げ加工材21(図4(b)参照)をツブシ鍛造用金型12に移動させることができれば、構成は特に限定されず、ロボットアームが好ましく、例えば、以下に示すような第1移動手段16を用いる。
【0056】
図8(a)、(b)に示すように、第1移動手段16は、一対の把持部16cをシリンダー等で開閉させて丸棒状素材20を把持する本体部16bと、本体部16bをシリンダー等で水平移動させるアーム部16aと、把持部16cをアーム部16aの前後方向に回転させる回転駆動部16dとを備える。
【0057】
図3に示すように、第2移動手段17は、ツブシ鍛造用金型12で作製されたツブシ鍛造材22(図4(c)参照)を仕上鍛造用金型14に移動させることができれば、構成は特に限定されず、ロボットアームが好ましく、例えば、以下に示すような第2移動手段17を用いる。
【0058】
図9(a)、(b)に示すように、第2移動手段17は、1つの上爪部17cを2つの下爪部17eに対してシリンダー等で昇降させてツブシ鍛造材22を把持する本体部17bと、本体部17bをシリンダー等で水平移動させるアーム部17aとを備える。
【0059】
第2移動手段17は、ツブシ鍛造材22を把持する際に、ツブシ鍛造材22の凹部22c(図4(c)、図5(d)参照)の上面と当接する上把持部17dを上爪部17cの先端部に備え、ツブシ鍛造材22の凹部22b(図4(c)、図5(d)参照)の下面と当接する溝状の下把持部17fを下爪部17eの先端部に備えることが好ましい。そして、上把持部17dは、上爪部17cの前後方向に回転することによって、ツブシ鍛造材22の凹部22cと当接することが好ましい。第2移動手段17がこのような上把持部17dおよび下把持部17fを備えることによって、ツブシ鍛造材22を把持した際に、ツブシ鍛造材22が前後方向にぶれることがなく、安定して把持することが可能となる。
【0060】
第2移動手段17は、本体部17bのシリンダーストローク量を調整して、上爪部17cと下爪部17eが交差できるようにすることがさらに好ましい。これによって、ツブシ鍛造材22が把持できずに上爪部17cと下爪部17eが交差した場合を、シリンダーストローク量によって判定することが可能となり、オートスイッチによって製造装置を自動停止させることが可能となる。
【0061】
図3に示すように、第3移動手段18は、仕上鍛造用金型14で作製された仕上鍛造材24(図4(e)参照)をトリミング装置15に搬出させることができれば、構成は特に限定されず、ロボットアームが好ましく、例えば、前記した第2移動手段17と同一構成の第3移動手段18を用いる。
【0062】
図3に示すように、本発明に係る製造装置10は、鍛造装置11が、ツブシ鍛造用金型12と仕上鍛造用金型14との間に荒鍛造用金型13がさらに並設されたものであることが好ましい。そして、製造装置10では、荒鍛造用金型13は、ツブシ鍛造材22(図4(c)参照)を鍛造加工して荒鍛造材23(図4(d)参照)を作製するもので、仕上鍛造用金型14では荒鍛造材23を鍛造加工して仕上鍛造材24(図4(e)参照)を作製し、かつ、移動手段(第2移動手段17)が、ツブシ鍛造材22を荒鍛造用金型13に移動させると共に、荒鍛造材23を仕上鍛造用金型14に移動させる。
【0063】
図6に示すように、荒鍛造用金型13は、荒鍛造材23を作製するための凹部13aが形成された荒下金型13Aと、凹部13aに対応した凸部が形成された荒上金型(図示せず)とからなる。そして、荒下金型13Aの上にツブシ鍛造材22が載置され、荒上金型の押圧によって荒鍛造材23が作製される。
【0064】
荒下金型13Aの凹部13aには、ノックアウトピン13dが埋め込まれている。ノックアウトピン13dは、鍛造加工終了後、凹部13a内に突出して、作製された荒鍛造材23(図4(d)参照)の裏面を押圧して、凹部13aから荒鍛造材23を浮き上がらせる。その結果、荒鍛造材23を仕上鍛造用金型14(図3参照)に移動する際に、荒鍛造材23を移動手段(第2移動手段17)で把持しやすくなる。
【0065】
荒下金型13Aの凹部13aには、円形凹状に形成された丸ピン部13b、および、矩形凹状に形成された平面部13cが所定位置に形成されている。この丸ピン部13bおよび平面部13cは、ツブシ下金型12A(図5(a)参照)の丸ピン部12bおよび平面部12cと同一位置に同一形状で形成する。そして、この丸ピン部13bおよび平面部13cは、ツブシ鍛造材22(図4(c)参照)を荒下金型13Aに載置した際に、ツブシ鍛造材22の凹部22bおよび凹部22cと整合する。これによって、ツブシ鍛造材22の載置位置が調整される。
【0066】
荒下金型13Aには、凹部13aによって壁部13eが形成され、この壁部13eが載置されるツブシ鍛造材22のバリ部22aの外周部と接触してツブシ鍛造材22を拘束する。このため、載置されるツブシ鍛造材22の載置位置がさらに調整される。
【0067】
また、丸ピン部13bおよび平面部13cの形成によって、荒鍛造材23には凹部23bおよび凹部23cが形成される(図4(d)参照)。この凹部23bおよび凹部23cは、荒鍛造材23を仕上鍛造用金型14に載置した際に、仕上鍛造用金型14の丸ピン部14bおよび平面部14cと整合する。これによって、荒鍛造材23の載置位置が調整される。
【0068】
さらに、荒鍛造材23(図4(d)参照)の凹部23bおよび凹部23cは、荒鍛造材23を仕上鍛造用金型14に移動する際に(図3参照)、移動手段(第2移動手段17、図9参照)で把持され、第2移動手段17の上把持部17dおよび下把持部17fと整合する。これによって、荒鍛造材23を移動手段(第2移動手段17)で把持しやすくなる。
【0069】
以上、自動車用サスペンションアームの製造装置について説明したが、本発明の製造装置は、前記構成以外に、鍛造装置における押圧、各移動手段の移動等を制御する従来公知の制御装置を備える。
【0070】
<製造方法>
次に、自動車用サスペンションアームの製造方法について説明する。本発明に係る製造方法は、前記製造装置を用いた自動車用サスペンションアームの製造方法である。
【0071】
図10に示すように、本発明に係る製造方法は、曲げ加工工程S102と、ツブシ鍛造工程S103と、仕上鍛造工程S105と、トリミング工程S106とを含むものである。以下、各工程について説明する、なお、曲げ加工用金型の構成、および、製造装置の構成については、適宜、図面を参照して説明する。
【0072】
(曲げ加工工程)
曲げ加工工程S102は、曲げ加工用金型1を用いて、丸棒状素材20を曲げ加工して曲げ加工材21を作製する工程である。
【0073】
まず、押出し加工、または、鋳造により作製して所定長さに切断された丸棒状素材20を、移動手段(第1移動手段16)を用いて曲げ下金型2に載置する。載置された丸棒状素材20を、曲げ上金型4を用いて垂直方向から押圧することによって曲げ加工材21を作製する。なお、押圧条件(曲げ加工条件)については、丸棒状素材20の材質、曲げ形状等を考慮して適宜設定する。なお、曲げ上金型4の押圧方向が垂直方向であるため、曲げ加工用金型1の横幅(水平方向の幅)を小さくできる。
【0074】
次に、作製された曲げ加工材21は、曲げ下金型2の溝部8に移動手段(第1移動手段16)を挿入することによって、移動手段(第1移動手段16)で把持される。そして、第1移動手段16の回転駆動部16dの駆動により曲げ加工材21を軸回りに90度回転させ、その状態で曲げ加工材21をツブシ鍛造用金型12(ツブシ下金型12A)に載置する。
【0075】
(ツブシ鍛造工程)
ツブシ鍛造工程S103は、ツブシ鍛造用金型12を用いて、曲げ加工材21を鍛造加工してツブシ鍛造材22を作製する工程である。
【0076】
まず、ツブシ下金型12Aに載置された曲げ加工材21を、ツブシ上金型で押圧することによってツブシ鍛造材22を作製する。なお、押圧条件(鍛造加工条件)については、丸棒状素材20の材質、ツブシ鍛造形状等を考慮して適宜設定する。
【0077】
次に、ツブシ上金型の押圧を解除した後(ツブシ上金型を上昇させた後)、ツブシ下金型12A上のツブシ鍛造材22をノックアウトピン12dの凹部12aへの突出によってツブシ下金型12Aから浮かせ、浮いたツブシ鍛造材22(凹部22bおよび凹部22c)を移動手段(第2移動手段17)で把持し、移動手段(第2移動手段17)を用いてツブシ鍛造材22を仕上鍛造用金型14(仕上下金型14A)に載置する。
【0078】
(仕上鍛造工程)
仕上鍛造工程S105は、仕上鍛造用金型14を用いて、ツブシ鍛造材22を鍛造加工して仕上鍛造材24を作製する工程である。
【0079】
まず、仕上下金型14Aに載置されたツブシ鍛造材22を、仕上上金型で押圧することによって仕上鍛造材24を作製する。なお、押圧条件(鍛造加工条件)については、丸棒状素材20の材質、仕上鍛造形状等を考慮して適宜設定する。
【0080】
次に、仕上上金型の押圧を解除した後(仕上上金型を上昇させた後)、仕上下金型14A上の仕上鍛造材24をノックアウトピン14dの凹部14aへの突出によって仕上下金型14Aから浮かせ、浮いた仕上鍛造材24(凹部24dおよび凹部24e)を移動手段(第3移動手段18)で把持し、移動手段(第3移動手段18)を用いて仕上鍛造材24をトリミング装置15に搬出する。
【0081】
(トリミング工程)
トリミング工程S106は、トリミング装置15を用いて、仕上鍛造材24のバリ部24aをトリミングして自動車用サスペンションアーム25を製造する工程である。
【0082】
搬出された仕上鍛造材24のトリミングには、例えば、一対のトリミング上金型とトリミング下金型とからなるトリミング装置15が用いられる。そして、トリミング下金型に載置された仕上鍛造材24を、トリミング上金型で押圧することによってバリ部24aをトリミングして自動車用サスペンションアーム25を作製する。なお、押圧条件(トリミング条件)については、丸棒状素材20の材質、サスペンションアーム形状等を考慮して適宜設定する。
なお、トリミング終了後、必要に応じて、ボス孔の穿孔や、ボス孔にブッシュを取り付ける等の付加工程を行ってもよい。
【0083】
また、前記製造方法においては、1つの自動車用サスペンションアーム25の製造終了後、次の自動車用サスペンションアーム25の製造を開始するように説明したが、1つの自動車用サスペンションアーム25の製造中に、次の自動車用サスペンションアーム25の製造を開始または並行して行ってもよい。例えば、1つの自動車用サスペンションアーム25のツブシ鍛造工程S103、仕上鍛造工程S105またはトリミング工程S106と、次の自動車用サスペンションアーム25の曲げ加工工程S102とを同時に行ってもよい。また、1つの自動車用サスペンションアーム25の仕上鍛造工程S105またはトリミング工程S106と、次の自動車用サスペンションアーム25のツブシ鍛造工程S103と、さらに次の自動車用サスペンションアーム25の曲げ加工工程S102とを同時に行ってもよい。
【0084】
本発明に係る製造方法は、曲げ加工工程S102と、ツブシ鍛造工程S103と、荒鍛造工程S104と、仕上鍛造工程S105と、トリミング工程S106とを含むものであってもよい。曲げ加工工程S102およびトリミング工程S106については、前記と同様であるので、説明を省略する。
【0085】
(ツブシ鍛造工程)
ツブシ鍛造材22を、移動手段(第2移動手段17)を用いて、荒鍛造用金型13(荒下金型13A)に載置すること以外は、前記と同様である。
【0086】
(荒鍛造工程)
荒鍛造工程S104は、荒鍛造用金型13を用いて、ツブシ鍛造材22を鍛造加工して荒鍛造材23を作製する工程である。
【0087】
まず、荒下金型13Aに載置されたツブシ鍛造材22を、荒上金型で押圧することによって荒鍛造材23を作製する。なお、押圧条件(鍛造加工条件)については、丸棒状素材20の材質、荒鍛造形状等を考慮して適宜設定する。
【0088】
次に、荒上金型の押圧を解除した後(荒上金型を上昇させた後)、荒下金型13A上の荒鍛造材23をノックアウトピン13dの凹部13aへの突出によって荒下金型13Aから浮かせ、浮いた荒鍛造材23(凹部23bおよび凹部23c)を移動手段(第2移動手段17)で把持し、移動手段(第2移動手段17)を用いて荒鍛造材23を仕上鍛造用金型14(仕上下金型14A)に載置する。
【0089】
(仕上鍛造工程)
仕上鍛造用金型14を用いて、荒鍛造材23を鍛造加工して仕上鍛造材24を作製すること以外は、前記と同様である。
【0090】
また、前記製造方法においては、1つの自動車用サスペンションアーム25の製造終了後、次の自動車用サスペンションアーム25の製造を開始するように説明したが、前記したように、1つの自動車用サスペンションアーム25の製造中に、次の自動車用サスペンションアーム25の製造を開始または並行して行ってもよい。
【0091】
本発明に係る製造方法は、曲げ加工工程S102の前に、予備加工工程S101を含んでもよい。
予備加工工程S101は、ツブシ鍛造工程S103、荒鍛造工程S104および仕上鍛造工程S105の各工程で発生するバリを少なくするために行なわれる工程である。予備加工工程S101としては、丸棒状素材20の外径を軸方向に沿って段階的に変化させた段差付き素材(図示せず)を作製するロール成形工程が好ましい。ロール成形工程は、丸棒状素材20を加熱炉等で加熱処理し、その後、加熱処理された丸棒状素材20に、従来公知のロール成形機を用いて、軸方向に沿って外径段差を付けるものである。
【符号の説明】
【0092】
1 曲げ加工用金型
2 曲げ下金型
3 載置部
3a 支持溝
4 曲げ上金型
5 押圧部
5a 支持溝
6 下金型接触部
7 上金型接触部
8 溝部
9 非接触部
10 製造装置
11 鍛造装置
12 ツブシ鍛造用金型
13 荒鍛造用金型
14 仕上鍛造用金型
15 トリミング装置
16 第1移動手段
17 第2移動手段
18 第3移動手段
20 丸棒状素材
21 曲げ加工材
22 ツブシ鍛造材
23 荒鍛造材
24 仕上鍛造材
S102 曲げ加工工程
S103 ツブシ鍛造工程
S104 荒鍛造工程
S105 仕上鍛造工程
S106 トリミング工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用サスペンションアームの製造装置に用いられ、移動手段により搬入される丸棒状素材を曲げ加工して曲げ加工材を作製するための曲げ加工用金型であって、
前記丸棒状素材を載置する載置部を備える曲げ下金型と、
前記曲げ下金型の支持溝に載置された前記丸棒状素材を垂直方向に押圧する押圧部を備える曲げ上金型とからなり、
前記載置部および前記押圧部は、前記曲げ加工材の曲げ形状に沿った形状に形成され当該曲げ加工材と接触する下金型接触部および上金型接触部を備え、
前記下金型接触部は、その中央部に前記曲げ加工材と非接触で前記移動手段が当該曲げ加工材を把持できる大きさに形成された溝部を備えることを特徴とする曲げ加工用金型。
【請求項2】
前記上金型接触部が、その中央部に前記曲げ加工材と接触しない非接触部を備えることを特徴とする請求項1に記載の曲げ加工用金型。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の曲げ加工用金型を用いた自動車用サスペンションアームの製造装置であって、
前記曲げ加工用金型と、前記曲げ加工用金型によって作製された曲げ加工材を鍛造加工してツブシ鍛造材を作製するツブシ鍛造用金型と、前記ツブシ鍛造材を鍛造加工して仕上鍛造材を作製する仕上鍛造用金型とが並設される少なくとも1つの鍛造装置と、
前記仕上鍛造材のバリ部をトリミングするトリミング装置と、
前記丸棒状素材を前記曲げ加工用金型に搬入すると共に、前記曲げ加工材を前記ツブシ鍛造用金型に移動させ、前記ツブシ鍛造材を前記仕上鍛造用金型に移動させ、かつ、前記仕上鍛造材を前記トリミング装置に搬出する移動手段とを備えることを特徴とする自動車用サスペンションアームの製造装置。
【請求項4】
前記移動手段が、前記丸棒状素材を前記曲げ加工用金型に搬入すると共に、前記曲げ加工材を前記ツブシ鍛造用金型に移動させる第1移動手段と、前記ツブシ鍛造材を前記仕上鍛造用金型に移動させる第2移動手段と、前記仕上鍛造材を前記トリミング装置に搬出する第3移動手段とを備えることを特徴とする請求項3に記載の自動車用サスペンションアームの製造装置。
【請求項5】
前記鍛造装置には、前記ツブシ鍛造材を鍛造加工して荒鍛造材を作製する荒鍛造用金型がさらに並設され、
前記仕上鍛造用金型では前記荒鍛造材を鍛造加工して仕上鍛造材を作製し、かつ、前記移動手段が、前記ツブシ鍛造材を前記荒鍛造用金型に移動させると共に、前記荒鍛造材を前記仕上鍛造用金型に移動させることを特徴とする請求項3に記載の自動車用サスペンションアームの製造装置。
【請求項6】
請求項3または請求項4に記載の製造装置を用いた自動車用サスペンションアームの製造方法であって、
前記曲げ加工用金型を用いて、垂直方向から押圧して前記丸棒状素材を曲げ加工して前記曲げ加工材を作製する曲げ加工工程と、
前記ツブシ鍛造用金型を用いて、前記曲げ加工材を鍛造加工して前記ツブシ鍛造材を作製するツブシ鍛造工程と、
前記仕上鍛造用金型を用いて、前記ツブシ鍛造材を鍛造加工して前記仕上鍛造材を作製する仕上鍛造工程と、
前記トリミング装置を用いて、前記仕上鍛造材のバリ部をトリミングして自動車用サスペンションアームを製造するトリミング工程とを含むことを特徴とする自動車用サスペンションアームの製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の製造装置を用いた自動車用サスペンションアームの製造方法であって、
前記曲げ加工用金型を用いて、垂直方向から押圧して前記丸棒状素材を曲げ加工して前記曲げ加工材を作製する曲げ加工工程と、
前記ツブシ鍛造用金型を用いて、前記曲げ加工材を鍛造加工して前記ツブシ鍛造材を作製するツブシ鍛造工程と、
前記荒鍛造用金型を用いて、前記ツブシ鍛造材を鍛造加工して前記荒鍛造材を作製する荒鍛造工程と、
前記仕上鍛造用金型を用いて、前記荒鍛造材を鍛造加工して前記仕上鍛造材を作製する仕上鍛造工程と、
前記トリミング装置を用いて、前記仕上鍛造材のバリ部をトリミングして自動車用サスペンションアームを製造するトリミング工程とを含むことを特徴とする自動車用サスペンションアームの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−255404(P2011−255404A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132572(P2010−132572)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】