有機半導体素子およびその製造方法
【課題】有機半導体素子およびその製造方法の提供。
【解決手段】基板と、ソース電極と、ドレイン電極と、前記ソース電極と前記ドレイン電極とを連結する有機半導体層と、前記有機半導体層に電界を印加するためのゲート電極と、前記有機半導体層とゲート電極間に配置されるゲート絶縁膜とを備え、前記ゲート絶縁膜がハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする有機半導体素子及びその製造方法。
【解決手段】基板と、ソース電極と、ドレイン電極と、前記ソース電極と前記ドレイン電極とを連結する有機半導体層と、前記有機半導体層に電界を印加するためのゲート電極と、前記有機半導体層とゲート電極間に配置されるゲート絶縁膜とを備え、前記ゲート絶縁膜がハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする有機半導体素子及びその製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイパーブランチポリマーをゲート絶縁膜に用いた有機半導体素子と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報が電子化されて提供される機会が増え、薄くて軽い、手軽に持ち運びが可能なモバイル用表示媒体として、電子ペーパーやデジタルペーパー等のフレキシブル電子デバイスの実現への期待が高まり、フレキシブル基板や有機半導体材料の開発及び有機デバイスの作成法などの研究が盛んに行われている。
しかし、有機トランジスタ(OFET)のゲート絶縁膜は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)やポリスチレン(PS)、またパターニングが可能な感光性樹脂としてポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール類、耐熱性の熱硬化性樹脂としてポリイミド類、気相成膜できるパリレン誘導体などが報告されているが(特許文献1、非特許文献1及び2参照)、それぞれ溶媒選択性やパターニングが困難であったり、透明でないといった、課題があった。
特に溶媒選択性は、塗布によりゲート絶縁膜を作製する上で重要な課題となっている。
【0003】
ゲート絶縁膜と接触する有機半導体層には、ペンタセン等の低極性有機材料が用いられており、ゲート絶縁膜を形成するために塗布される有機溶剤によって、有機半導体層中の有機材料が溶け出してしまうことがある。
このことから、有機半導体層中の有機材料の溶出を抑制できるような溶媒選択性に優れた、つまり幅広い有機溶剤に溶解可能な有機材料が求められていた。
また、前記感光性樹脂を用いる場合、光硬化の際に光重合開始剤を添加剤として使用する。この添加剤は、不純物となり、ゲート絶縁膜の絶縁特性を損なう原因となっていた。
これらのことから、光重合開始剤を使用しなくとも光照射により硬化可能である絶縁特性に優れた有機材料が求められていた。
【0004】
ハイパーブランチポリマーはデンドリマーと共にデンドリティック(樹枝状)ポリマーとして分類され、従来の高分子は一般的に紐状の形状であるのに対し、これらのデンドリティックポリマーは積極的に分枝を導入している点でその特異な構造を有し、特に末端基数の多さがデンドリティックポリマーの最も顕著な特徴である。このような末端基数の多いデンドリティックポリマーは、末端基の種類によって分子間相互作用が大きく左右されるので、ガラス転移温度や溶解性、薄膜形成性などが大きく変化し、一般の線状高分子にはない特徴を有する。
【0005】
ハイパーブランチポリマーのデンドリマーに対する利点は、その合成の簡便さが挙げられ、特に工業的生産においては有利である。一般にデンドリマーが保護−脱保護を繰り返し合成されるのに対し、ハイパーブランチポリマーは1分子中に2種類の置換基を合計3個以上もつ、いわゆるABX型モノマーの1段階重合により合成することができる。
【0006】
ハイパーブランチポリマーの例として、ジチオカルバメート基を有するスチレン化合物の光重合によるハイパーブランチポリマー(非特許文献3、4,5参照。)や、ジチオカルバメート基を有するアクリル化合物の光重合によるジチオカルバメート基を有するハイパーブランチポリマー(非特許文献6、7,8参照。)、及びジチオカルバメート基が還元されたハイパーブランチポリマー(特許文献2参照)が報告されている。
【特許文献1】特開2007−5698号公報
【特許文献2】国際公開WO2006/093050号パンフレット
【非特許文献1】APPLIED PHYSICS LETTERS 89, 182108 (2006)
【非特許文献2】APPLIED PHYSICS LETTERS 87, 182109 (2005)
【非特許文献3】Koji Ishizu, Akihide Mori, Macromol. Rapid Commun. 21,665−668(2000)
【非特許文献4】Koji Ishizu, Akihide Mori, Polymer International 50,906−910(2001)
【非特許文献5】Koji Ishizu, Yoshihiro Ohta, Susumu Kawauchi, Macromolecules Vol.35, No.9, 3781−3784(2002)
【非特許文献6】Koji Ishizu, Takeshi Shibuya, Akihide Mori, Polymer International 51,424−428(2002)
【非特許文献7】Koji Ishizu, Takeshi Shibuya, Susumu Kawauchi, Macromolecules Vol.36, No.10, 3505−3510(2002)
【非特許文献8】Koji Ishizu, Takeshi Shibuya, Jaebum Park, Satoshi Uchida, Polymer International 53,259−265(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、有機材料を塗布することにより作製できる優れた電気特性を有するゲート絶縁膜及びゲート絶縁膜の表面処理層を有する有機半導体素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ハイパーブランチポリマーをゲート絶縁膜及びゲート絶縁膜の表面処理層に用いた有機半導体素子を作成し、本素子が高いキャリア移動度を有することを見出した。
また、ジチオカーバメート基を有するハイパーブランチの薄膜へフォトマスクを用いてUV照射することによりパターニングができ、パターン化したゲート絶縁膜及びゲート絶縁膜の表面処理層を有する有機半導体素子が作成可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は、第1観点として、基板と、ソース電極と、ドレイン電極と、前記ソース電極と前記ドレイン電極とを連結する有機半導体層と、前記有機半導体層に電界を印加するためのゲート電極と、前記有機半導体層とゲート電極間に配置されるゲート絶縁膜とを備え、前記ゲート絶縁膜がハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする有機半導体素子、
第2観点として、基板と、ソース電極と、ドレイン電極と、前記ソース電極と前記ドレイン電極とを連結する有機半導体層と、前記有機半導体層に電界を印加するためのゲート電極と、前記有機半導体層とゲート電極間に配置されるゲート絶縁膜と、前記有機半導体層と接するゲート絶縁膜の表面に配置される表面処理層とを備え、前記表面処理層がハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする有機半導体素子、
第3観点として、前記有機半導体層が、π共役系化合物であることを特徴とする第1又は第2観点記載の有機半導体素子、
第4観点として、前記ハイパーブランチポリマーが、式(1)で表される第1又は第2観点記載の有機半導体素子、
【化1】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、A1は式(2)又は式(3):
【化2】
(式中A2はエーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1〜30の直
鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を表し、X1、X2、X3及びX4は、それぞれ、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。)を表し、nは繰り返し単位構造の数であって2〜100000の整数を表す。)で表される構造を有するハイパーブランチポリマー、
第5観点として、前記ハイパーブランチポリマーのA1が式(4)で表される第4観点
記載の有機半導体素子、
【化3】
第6観点として、前記ハイパーブランチポリマーのA1が式(5)で表される第4観点
記載の有機半導体素子、
【化4】
(式中、mは2〜10の整数を表す。)
第7観点として、前記ハイパーブランチポリマーの分子末端が、チオール基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、水素原子もしくは式(6)で表されるジチオカーバメート基であるか、または水素原子と式(6)で表されるジチオカーバメート基との混在状態にある、第4観点に記載の有機半導体素子、
【化5】
(R2及びR3は、それぞれ、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基または炭素原子数7〜12のアリールアルキル基を表すか、または、R2
とR3は互いに結合し、窒素原子と共に環を形成していてもよい。)
第8観点として、前記ハイパーブランチポリマーのゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量が500〜5000000である、第4観点に記載の有機半導体素子、
第9観点として、前記ゲート絶縁膜が、式(6)で表されるジチオカーバメート基を分子末端に有し、かつ重量平均分子量が500〜200000であるハイパーブランチポリマーより形成されてなるものであることを特徴とする第1観点記載の有機半導体素子、
第10観点として、前記ゲート絶縁膜が、式(6)で表されるジチオカーバメート基を分子末端に有し、かつ重量平均分子量が500〜200000であるハイパーブランチポリマーを光重合して形成されてなる硬化膜からなることを特徴とする第1観点記載の有機半導体素子、
第11観点として、前記表面処理層が、式(6)で表されるジチオカーバメート基を分子末端に有し、かつ重量平均分子量が500〜200000であるハイパーブランチポリマーをより形成されてなるものであることを特徴とする第2観点記載の有機半導体素子、
第12観点として、前記表面処理層が、式(6)で表されるジチオカーバメート基を分子末端に有し、かつ重量平均分子量が500〜200000であるハイパーブランチポリマーを光重合して形成されてなる硬化物からなることを特徴とする第2観点記載の有機半導体素子、
【0010】
第13観点として、
(a−1):基板上に形成されたゲート電極、
(a−2):前記(a−1)のゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜、
(a−3):前記(a−2)のゲート絶縁膜上に形成されたソース電極及びドレイン電極、
(a−4):前記(a−3)のソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めるように前記ゲート絶縁膜上に形成された有機半導体層、
を具備した有機半導体素子(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)であって、
前記ゲート絶縁膜が、ハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とす
る第1観点記載の有機半導体素子、
第14観点として、
(b−1):基板上に形成されたゲート電極、
(b−2):前記(b−1)のゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜、
(b−3):前記(b−2)のゲート絶縁膜上に形成された有機半導体層、
(b−4):前記(b−3)の有機半導体層上に形成されたソース電極及びドレイン電極、
を具備した有機半導体素子(ボトムゲート・トップコンタクト型)であって、
前記ゲート絶縁膜が、ハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする第1観点記載の有機半導体素子、
第15観点として、
(c−1):基板上に形成されたソース電極及びドレイン電極、
(c−2):前記(c−1)のソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めると共に、それらの上面を覆うように形成された有機半導体層、
(c−3):前記(c−2)の有機半導体層上に形成されたゲート絶縁膜、
(c−4):前記(c−3)のゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極、
を具備した有機半導体素子(トップゲート・ボトムコンタクト型)であって、
前記ゲート絶縁膜が、ハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする第1観点記載の有機半導体素子、
第16観点として、
(工程a−1):基板上にゲート電極を形成する工程、
(工程a−2):前記(工程a−1)で形成されたゲート電極上に、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を塗布、乾燥してゲート絶縁膜を形成する工程、
(工程a−3):前記(工程a−2)で形成されたゲート絶縁膜上に、ソース電極及びドレイン電極を互いに離間して形成する工程、
(工程a−4):前記(工程a−3)で形成されたソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めるように前記ゲート絶縁膜上に有機半導体層を形成する工程、
を含むことを特徴とする第13観点に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法、
第17観点として、
前記(工程a−2)において、ハイパーブランチポリマーを含む溶液をゲート電極上に塗布、乾燥した後、光重合させてゲート絶縁膜を形成することを特徴とする第16観点に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法、
第18観点として、
(工程b−1):基板上にゲート電極を形成する工程、
(工程b−2):前記(工程b−1)で形成されたゲート電極上に、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を塗布、乾燥してゲート絶縁膜を形成する工程、
(工程b−3):前記(工程b−2)で形成されたゲート絶縁膜上に、有機半導体層を形成する工程、
(工程b−4):前記(工程b−3)で形成された有機半導体層上に、ソース電極及びドレイン電極を互いに離間して形成する工程、
を含むことを特徴とする第14観点に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・トップコンタクト型)の製造方法、
第19観点として、
前記(工程b−2)において、ハイパーブランチポリマーを含む溶液をゲート電極上に塗布、乾燥した後、光重合させてゲート絶縁膜を形成することを特徴とする第18観点に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・トップコンタクト型)の製造方法、
第20観点として、
(工程c−1):基板上にソース電極及びドレイン電極を互いに離間して形成する工程、(工程c−2):前記(工程c−1)で形成されたソース電極及びドレイン電極の間隔を
埋めると共に、それらの上面を覆うように前記基板、該ソース電極及び該ドレイン電極上に有機半導体層を形成する工程、
(工程c−3):前記(工程c−2)で形成された有機半導体層上に、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を塗布、乾燥してゲート絶縁膜を形成する工程、
(工程c−4):前記(工程c−3)で形成されたゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程、
を含むことを特徴とする第15観点に記載の有機半導体素子(トップゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法、
第21観点として、
前記(工程c−3)において、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を有機半導体層上に塗布、乾燥した後、光重合させてゲート絶縁膜を形成することを特徴とする第20観点に記載の有機半導体素子(トップゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法、
第22観点として、
(a−1):基板上に形成されたゲート電極、
(a−2):前記(a−1)のゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜、
(a−3):前記(a−2)のゲート絶縁膜上に形成された表面処理層、
(a−4):前記(a−3)の表面処理層上に形成されたソース電極及びドレイン電極、(a−5):前記(a−2)のソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めるように前記表面処理層上に形成された有機半導体層、
を具備した有機半導体素子(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)であって、
前記表面処理層が、ハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする第2観点記載の有機半導体素子、
第23観点として、
(b−1):基板上に形成されたゲート電極、
(b−2):前記(b−1)のゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜、
(b−3):前記(b−2)のゲート絶縁膜上に形成された表面処理層、
(b−4):前記(b−3)の表面処理層上に形成された有機半導体層、
(b−5):前記(b−4)の表面処理層層上に形成されたソース電極及びドレイン電極、
を具備した有機半導体素子(ボトムゲート・トップコンタクト型)であって、
前記表面処理層が、ハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする第2観点記載の有機半導体素子、
第24観点として、
(c−1):基板上に形成されたソース電極及びドレイン電極、
(c−2):前記(c−1)のソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めると共に、それらの上面を覆うように形成された有機半導体層、
(c−3):前記(c−2)の有機半導体層上に形成された表面処理層、
(c−4):前記(c−3)の表面処理層層上に形成されたゲート絶縁膜、
(c−5):前記(c−4)のゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極、
を具備した有機半導体素子(トップゲート・ボトムコンタクト型)であって、
前記表面処理層が、ハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする第2観点記載の有機半導体素子、
【0011】
第25観点として、
(工程a−1):基板上にゲート電極を形成する工程、
(工程a−2):前記(工程a−1)で形成されたゲート電極上に、ゲート絶縁膜を形成する工程、
(工程a−3):前記(工程a−2)で形成されたゲート絶縁膜の表面に、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を塗布、乾燥して表面処理層を形成する工程、
(工程a−4):前記(工程a−3)で形成されたゲート絶縁膜上に、ソース電極及びド
レイン電極を互いに離間して形成する工程、
(工程a−5):前記(工程a−4)で形成されたソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めるように前記ゲート絶縁膜上に有機半導体層を形成する工程、
を含むことを特徴とする第22観点に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法、
第26観点として、
前記(工程a−3)において、ハイパーブランチポリマーを含む溶液をゲート絶縁膜の表面に塗布、乾燥した後、光重合させて表面処理層を形成することを特徴とする第25観点に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法、
第27観点として、
(工程b−1):基板上にゲート電極を形成する工程、
(工程b−2):前記(工程b−1)で形成されたゲート電極上にゲート絶縁膜を形成する工程、
(工程b−3):前記(工程b−2)で形成されたゲート絶縁膜の表面に、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を塗布、乾燥して表面処理層を形成する工程、
(工程b−4):前記(工程b−3)で形成されたゲート絶縁膜上に、有機半導体層を形成する工程、
(工程b−5):前記(工程b−4)で形成された有機半導体層上に、ソース電極及びドレイン電極を互いに離間して形成する工程、
を含むことを特徴とする第23観点に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・トップコンタクト型)の製造方法、
第28観点として、
前記(工程b−3)において、ハイパーブランチポリマーを含む溶液をゲート絶縁膜の表面に塗布、乾燥した後、光重合させて表面処理層を形成することを特徴とする第27観点に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・トップコンタクト型)の製造方法、
第29観点として、
(工程c−1):基板上にソース電極及びドレイン電極を互いに離間して形成する工程、(工程c−2):前記(工程c−1)で形成されたソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めると共に、それらの上面を覆うように前記基板、該ソース電極及び該ドレイン電極上に有機半導体層を形成する工程、
(工程c−3):前記(工程c−2)で形成された有機半導体層の表面に、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を塗布、乾燥して表面処理層を形成する工程、
(工程c−4):前記(工程c−3)で形成された表面処理層上にゲート絶縁膜を形成する工程、
(工程c−5):前記(工程c−4)で形成されたゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程、
を含むことを特徴とする第24観点に記載の有機半導体素子(トップゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法、
第30観点として、
前記(工程c−3)において、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を有機半導体層の表面に塗布、乾燥した後、光重合させて表面処理層を形成することを特徴とする第29観点に記載の有機半導体素子(トップゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法、
第31観点として、第1又は第2観点記載の有機半導体素子が複数配置されたディスプレイパネル、
である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のハイパーブランチポリマーをゲート絶縁膜及びゲート絶縁膜の表面処理層に用いた有機半導体素子(以下、有機FETと略称する場合がある。)は、トップコンタクト型有機FETだけでなく、ボトムコンタクト型有機FETの作成が可能となるだけでなく
、有機半導体層がn型でもp型でも動作させることができ、幅広い分野での産業応用が可能となる。
例えば、トップゲート・ボトムコンタクト型有機FETをインクジェット法を用いて作製する場合、微細化するためには図1に示すような構造になる。
一つのトップゲート・ボトムコンタクト型有機FETを作製するため、疎水性処理したゲート長になるバンクと、溶液の広がりを防ぐバンクが必要になる。疎水性処理したバンクをゲート絶縁膜として利用することも可能だが、長方形に保持しておかないと、インクジェットで塗布した金属コロイドで作製する電極がうまくできない。そこで、基板側から順にインクジェット塗布することになる。そのため、活性層(有機半導体層)を溶かすことがないポリマー絶縁膜が求められる。
【0013】
ボトムゲート・ボトムコンタクト型有機FETの場合、微細化するためには、ソース−ドレイン電極をフォトリソ法を用いて作製する必要があるが、これまでのポリマー絶縁膜は、パターン化して不溶化することが困難であり、光重合開始剤入りPVAやフォトレジス
トに用いられるPVP等しかない。光重合開始剤は、絶縁膜表面に存在するトラップに非常
に敏感であり、有機半導体層にペンタセンを用いた有機FETで1桁も移動度が低下する
ことを覚悟しなければならない。
しかし、本発明のハイパーブランチポリマーをゲート絶縁膜及びゲート絶縁膜の表面処理層に用いた有機FETでは、有機半導体層がn型でもp型でも非常によい特性を発現できることが分かり、光活性なジチオカーバメート基を利用してパターンをとりながら光重合固定化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の有機半導体素子は、ハイパーブランチポリマーを成分として含有するゲート絶縁膜及びゲート絶縁膜の表面処理層に係わる。ここで、ゲート絶縁膜及びゲート絶縁膜の表面処理層に用いるハイパーブランチポリマーとしては、例えば、式(1)で示すものが挙げられる。
【化6】
式(1)において、R1は水素原子又はメチル基を表す。nは繰り返し単位構造の数で
あって2〜100,000の整数を表す。また、A1は式(2)又は式(3)で表される
構造を表す。
【化7】
式(2)及び式(3)中、A2はエーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭
素原子数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を表し、X1、X2、X3及び
X4は、それぞれ、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20の
アルコキシ基、ハロゲン基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。
【0015】
アルキレン基の具体例としては、メチレン、エチレン、ノルマルプロピレン、ノルマルブチレン、ノルマルヘキシレン等の直鎖状アルキレン、イソプロピレン、イソブチレン、2−メチルプロピレン等の分岐状アルキレンが挙げられる。また環状アルキレンとしては、炭素数3〜30の単環式、多環式、架橋環式の環状構造の脂環式脂肪族基が挙げられる。具体的には、炭素数4以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有する基を挙げることができる。例えば、下記に脂環式脂肪族基のうち、脂環式部分の構造例(a)〜(s)を示す。
【化8】
【0016】
炭素原子数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基及びノルマルペンチル基等が挙げられる。炭素原子数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、シクロヘキシルオキシ基及びノルマルペンチルオキシ基等が挙げられる。
ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
X1、X2、X3及びX4としては、水素原子又は炭素原子数1〜20のアルキル基が好ましい。
また、式(1)のA1としては、式(4)又は式(5)で表される構造であることが好
ましい。
【化9】
【化10】
式(5)中、mは2〜10の整数を表し、mとしては2又は3が好ましい。
【0017】
ハイパーブランチポリマーにおける分子末端としては、チオール基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、水素原子、式(6)で表されるジチオカーバメート基、または水素原子と式(6)で表されるジチオカーバメート基の混在状態が挙げられ、水素原子、式(6)で表されるジチオカーバメート基、または水素原子と式(6)で表されるジチオカーバメート基の混在状態が好ましい。
【化11】
式(6)中、R2及びR3は、それぞれ、炭素原子数1ないし5のアルキル基、炭素原子数1ないし5のヒドロキシアルキル基又は炭素原子数7ないし12のアリールアルキル基を表すか、または、R2とR3は互いに結合し、窒素原子と共に環を形成していてもよい。
【0018】
炭素原子数1ないし5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロペンチル基及びノルマルペンチル基等が挙げられる。炭素原子数1ないし5のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基等が挙げられる。炭素原子数7ないし12のアリールアルキル基としては、ベンジル基及びフェネチル基等が挙げられる。
【0019】
R2とR3が互いに結合し窒素原子と共に形成する環としては四ないし八員環が挙げられる。そして、環としてメチレン基を四ないし六個含む環が挙げられる。また、環としては酸素原子又は硫黄原子と、四ないし六個のメチレン基を含む環が挙げられる。R2とR3が互いに結合し窒素原子と共に形成する環の具体例としては、ピペリジン環、ピロリジン環、モルホリン環、チオモルホリン環及びホモピペリジン環等が挙げられる。
【0020】
本発明のゲート絶縁膜及びゲート絶縁膜の表面処理層に用いるハイパーブランチポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwが500〜5000000であり、又は1000〜1000000であり、又は20
00〜500000であり、又は3000〜100000である。また、分散度Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)としては1.0〜7.0であり、又は1.1〜6.0であり、又は1.2〜5.0である。
【0021】
分子末端にジチオカーバメート基を有するハイパーブランチポリマーは、ジチオカーバメート基を有するスチレン化合物の光重合による合成方法(Koji Ishizu, Akihide Mori, Macromol. Rapid Commun. 21,66
5−668(2000)、Koji Ishizu, Akihide Mori, Polymer International 50,906−910(2001)、Koji
Ishizu, Yoshihiro Ohta, Susumu Kawauchi, M
acromolecules Vol.35, No.9, 3781−3784(200
2))や、ジチオカルバメート基を有するアクリル化合物の光重合による合成方法(Koji Ishizu, Takeshi Shibuya, Akihide Mori, Polymer International 51,424−428(2002)、Koji Ishizu, Takeshi Shibuya, Susumu Kawauchi
, Macromolecules Vol.36, No.10, 3505−3510(2002)、Koji Ishizu, Takeshi Shibuya, Jaebum
Park, Satoshi Uchida, Polymer Internation
al 53,259−265(2004))によって合成できる。
【0022】
例えば、式(7)(式中、R1、R2、R3及びA1は、前記と同様である。)で表されるジチオカルバメート化合物をリビングラジカル重合することによりジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーを得ることができる。ジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーは次のようにして生成すると考えられる。すなわち、式(7)の化合物への光照射等によってA1−S結合が開裂してラジカル種
(式(8))が発生する。次に、(8)のラジカル種が式(7)の化合物と反応して式(9)の化合物を生成する。さらに、式(9)においてC−S結合又はA1−S結合が開裂
してラジカル種を発生し、それが式(7)の化合物と反応することによって、式(10)又は式(11)の化合物を与える。なお、式(10)及び式(11)中、DCはジチオカルバメート基(−SC(=S)N(R2)R3)を表す。そして、式(10)及び式(11)の化合物から同様の反応が繰り返されることによって、ジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーが生成すると考えられる。
【化12】
【0023】
ハイパーブランチポリマーを用いて絶縁膜及びゲート絶縁膜の表面処理層を形成する方法としては、ハイパーブランチポリマーの溶液を用いて薄膜が形成できるスピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平板、スクリーン印刷等)等があり、膜厚としては一般に1μm以下、特に10nm〜500nmが好ましい。
【0024】
ハイパーブランチポリマー薄膜へ光照射することによる硬化膜(ハイパーブランチポリマーが、光重合して巨大なマトリックス状の高分子の膜を形成したもの。)の作成方法としては、ハイパーブランチポリマーを基板上にコートし、溶媒をプリベークにより除いた後、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ及びキセノンランプ等の紫外線照射ランプを照射することにより作成できる。
【0025】
本発明の有機半導体層に用いられる、π共役化合物としては、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリアセン、ポリフェニレンビニレン等の共役炭化水素ポリマー、およびこれらの共役炭化水素ポリマーのオリゴマーを含む誘導体、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフラン、ポリピリジン、ポリチエニレンビニレン等の共役複素環式
ポリマー、およびこれらの共役複素環式ポリマーのオリゴマーを含む誘導体、テトラセン、クリセン、ペンタセン、ピレン、ペリレン、コロネン等の縮合芳香族炭化水素、およびこれらの誘導体、銅フタロシアニン、ルテニウムビスフタロシアニン等のフタロシアニンの金属錯体、白金ポルフィリン等のポルフィリンの金属錯体、また、フラーレンやカーボンナノチューブが挙げられる。
【0026】
有機半導体層を形成する方法としては、蒸着により形成する方法や、上記有機半導体材料を溶媒に溶解して、有機半導体溶液を作製し、該有機半導体溶液を塗布して形成する方法が挙げられる。中でも、塗布によって形成する方法が、生産性に優れるため、好ましく、塗布方法として、スピンコート法、印刷法、インクジェット法を用いることが特に好ましい。
また、目的とする有機半導体の前駆体の層を形成し、その後に加熱等の処理を行うことによって、該前駆体層を、目的とする有機半導体層に変換し、有機半導体層を形成してもよい。
【0027】
電極には、Au、Pt、Ag、Al、Cu、Rh、Ir、In、Ni、Pd、As、Se、Te、Mo、W、Mg、Zn等の金属、Mg/Cu、Mg/Ag、Mg/Al、Mg/In等の合金、SnO2、InO2、ZnO、InO2・SnO2(ITO)、Sb2O5・SnO2(ATO)等の金属酸化物、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性
ポリチオフェン等の導電性高分子等が挙げられる。
【0028】
電極の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、インクジェット法、印刷法、ゾルゲル法等が挙げることができ、更にそのパターニング方法としては、フォトリソグラフィー法、インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法、及びこれらの手法を複数組み合わせた方法が挙げることができる。中でも、上記導電性材料を溶媒に溶解した導電性材料溶液を用いて、印刷法又はインクジェット法により電極を形成する方法が、生産性に優れており、好ましい。
【0029】
有機FETの代表的な構造を示す。
ボトムゲート・ボトムコンタクト型有機FETは、例えば、図2に示すように、基板1上にゲート電極2が設けられ、この上にゲート絶縁膜3が設けられ、ゲート絶縁膜3の上に有機半導体層4が設けられている。この有機半導体層4に接するように、ソース電極5とドレイン電極6がゲート絶縁膜3上に設けられている。
ボトムゲート・トップコンタクト型有機FETは、例えば、図3に示すように、ゲート絶縁膜3上の有機半導体層4上にソース電極5とドレイン電極6が設けられている点がボトムゲート・ボトムコンタクト型有機FETと異なるが、その他は同様の構成である。
トップゲート・ボトムコンタクト型有機FETは、例えば、図4に示すように、基板1上にソース電極5とドレイン電極6が設けられ、これら基板1、ソース電極5及びドレイン電極6の上に有機半導体層4が設けられ、その上にゲート絶縁体層3が設けられ、ゲート絶縁膜3上にゲート電極2が設けられている。
【実施例】
【0030】
以下、本発明について実施例を挙げて詳述するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例において、試料の物性測定には下記の装置を使用した。
液体クロマトグラフィー
装置:Agilent製 1100Series
カラム:Inertsil ODS−2
カラム温度:40℃
溶媒:アセトニトリル/水=60/40(体積比)
検出器:RI
ゲル浸透クロマトグラフィー
装置:(株)島津製作所製 SCL−10AVP
カラム:Shodex KF−804L+KF−803L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:RI
1H−NMRスペクトル
装置:日本電子データム(株)製 JNM−LA400
溶媒:CDCl3
内部標準:テトラメチルシラン
元素分析(炭素、水素、窒素)
装置:パーキンエルマー製 PE2400II
燃焼管温度:975℃
元素分析(硫黄)
装置:サーモフィニガン製 Flash EA1112
燃焼管温度:1000℃
熱重量分析
装置:セイコー電子工業(株)製 TG/DTA320
昇温速度:10℃/分
空気量:300ml/分
AFM測定
装置:Veeco Instruments製 Dimension 3100
プローブ材質:単結晶シリコン
測定モード:タッピングモード
【0031】
参考例1
<N、N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレンの合成>
【化13】
2Lの反応フラスコに、クロロメチルスチレン[セイミケミカル(株)製、CMS−14(商品名)]120g、N、N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム3水和物[関東化学(株)製]181g、アセトン1400gを仕込み、撹拌下、40℃で1時間反応させた。反応後、析出した塩化ナトリウムを濾過して除き、その後エバポレーターで反応溶液からアセトンを留去させ、反応粗粉末を得た。この反応粗粉末をトルエンに再溶解させ、トルエン/水系で分液後、−20℃の冷凍庫内でトルエン相から目的物を再結晶させた。再結晶物を濾過、真空乾燥して、白色粉末の目的物206g(収率97%)を得た。液体クロマトグラフィーによる純度(面積百分率値)は100%であった。DSC測定で融点は56℃であった。
【0032】
参考例2
<HPSの製造:ジチオカルバメート基を分子末端に有するスチレン系ハイパーブランチポリマーの合成>
【化14】
300mLの反応フラスコに、N、N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン108g、トルエン72gを仕込み、撹拌して淡黄色透明溶液を調製した後、反応系内を窒素置換した。この溶液の真ん中から100Wの高圧水銀灯[セン特殊光源(株)製、HL−
100]を点灯させ、内部照射による光重合反応を、撹拌下、室温で12時間行なった。
次にこの反応液をメタノール3000gに添加してポリマーを高粘度な塊状状態で再沈した後、上澄み液をデカンテーションで除いた。さらにこのポリマーをテトラヒドロフラン300gに再溶解した後、この溶液をメタノール3000gに添加してポリマーをスラリー状態で再沈した。このスラリーを濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(HPS)48gを得た。ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは19,000、分散度Mw/Mnは3.98であった。
【0033】
参考例3
<HPS−Hの製造:ジチオカルバメート基の還元除去>
【化15】
300mLの反応フラスコに、参考例2で得たジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマー(HPS)14g、水素化トリブチルスズ[アルドリッチ社
製]28g、トルエン140gを仕込み、撹拌して無色透明溶液を調製した後、反応系内
を窒素置換した。この溶液の真ん中から100Wの高圧水銀灯[セン特殊光源(株)製、
HL−100]を点灯させ、内部照射による反応を、撹拌下、室温で15分間行なった。
次にこの反応液にトルエン500gを添加して希釈し、この希釈液をメタノール3600gに添加して、ハイパーブランチポリマーをスラリー状態で再沈した。このスラリーを濾過し、真空乾燥して、白色粉末のジチオカルバメート基が水素に置換されたハイパーブランチポリマー5.3gを得た。ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは36,000、分散度Mw/Mnは5.05であった。
【0034】
参考例4
<N、N−ジエチルジチオカルバミルエチルメタクリレートの合成>
【化16】
2Lの反応フラスコに、クロロエチルメタクリレート[ランカスター社製]100g、N、N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム3水和物[関東化学(株)製]178g、アセトン1100gを仕込み、撹拌下、40℃で14時間反応させた。反応後、析出した塩化ナトリウムを濾過して除き、その後エバポレーターで反応溶液からアセトンを留去させ、反応粗粉末を得た。この反応粗粉末を1,2−ジクロロエタンに再溶解させ、1,2−ジクロロエタン/水系で分液後、1,2−ジクロロエタン相から1,2−ジクロロエタンを留去させて黄色液体の目的物171g(収率97%)を得た。液体クロマトグラフィーによる純度(面積百分率値)は96%であった。
【0035】
参考例5
<HPEMAの製造:ジチオカルバメート基を分子末端に有するアクリル系ハイパーブランチポリマーの合成>
【化17】
300mLの反応フラスコに、N、N−ジエチルジチオカルバミルエチルメタクリレート90g、トルエン90gを仕込み、撹拌して淡黄色透明溶液を調製した後、反応系内を窒素置換した。この溶液の真ん中から100Wの高圧水銀灯[セン特殊光源(株)製、H
L−100]を点灯させ、内部照射による光重合反応を、撹拌下、室温で5時間行った。
次にこの反応液をメタノール3000gに添加してポリマーを高粘度な塊状状態で再沈した後、上澄み液をデカンテーションで除いた。さらにこのポリマーをテトラヒドロフラン400gに再溶解した後、この溶液をメタノール5000gに添加してポリマーをスラリー状態で再沈した。このスラリーを濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(HPEMA)44gを得た。ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは34,900、分散度Mw/Mnは2.65であった。
【0036】
参考例6
<HPEMA−Hの製造:ジチオカルバメート基の還元除去>
【化18】
300mLの反応フラスコに、参考例5で得たジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマー(HPEMA)15g、水素化トリブチルスズ[アルドリッ
チ製]30g、テトラヒドロフラン135gを仕込み、撹拌して淡黄色透明溶液を調製し
た後、反応系内を窒素置換した。この溶液の真ん中から100Wの高圧水銀灯[セン特殊
光源(株)製、HL−100]を点灯させ、内部照射による反応を、撹拌下、室温で1時
間行なった。次にこの反応液をヘキサン2000gに添加して、ハイパーブランチポリマーをスラリー状態で再沈した。このスラリーを濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(HPEMA−H)5.7gを得た。ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは25,000、分散度Mw/Mnは1.81であった。
【0037】
実施例1(ハイパーブランチポリマーを表面処理層に用いた有機FET特性の評価)
図5に本実施例における有機FETの構造を示す。
まず、300nmの熱酸化膜付きn++ヘビードープシリコン基板に、ハイパーブランチポリマー30mg/トルエン(1mL)溶液を3000rpmで30秒間スピンコートし、150℃のホットプレート上で1時間乾燥した。この条件で作製したハイパーブランチポリマーの膜厚は、平均50nmである。次に、ハイパーブランチポリマーを成膜したn++ヘビードープシリコン基板を真空蒸着装置にセットし、10-4Pa台まで真空引きし、抵抗加熱法によりペンタセンまたはフラーレンを活性層(有機半導体層)として50nm真空蒸着した。その後、チャネル長(L)50μm、チャネル幅(W)2mmとなるように設計した厚さ100μmのステンレス製シャドウマスクを通して、金を50nm真空蒸着し有機FETを作製した。得られた有機FET素子を、測定用チャンバーに導入し、10-3Paの真空に保ち、タングステン製プローブでコンタクトをとり、半導体パラメーターアナライザ(Agilent B1500A)を用いて、電圧を印加し電界効果移動度を測定した。
【0038】
a)ペンタセンを活性層(有機半導体層)とした有機FETの特性を以下に示す。
(1−1)参考例2で合成したHPS(ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される、重量平均分子量Mwは19,000、分散度Mw/Mnは3.98であった。)をハイパーブランチポリマーとして用いた有機FET特性は、移動度が0.42cm2/V・sec、ON/OFF比が107だった。
(1−2)参考例3で合成したHPS−H(ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される、重量平均分子量Mwは36,000、分散度Mw/Mnは5.05であった。)をハイパーブランチポリマーとして用いた有機FET特性は、移動度が0.84cm2/V・sec、ON/OFF比が106だった。
(1−3)参考例5で合成したHPEMA(ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される、重量平均分子量Mwは34,900、分散度Mw/Mnは2.6
5であった。)をハイパーブランチポリマーとして用いた有機FET特性は、移動度が0.21cm2/V・sec、ON/OFF比が106だった。
(1−4)参考例6で合成したHPEMA−H(ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される、重量平均分子量Mwは25,000、分散度Mw/Mnは1.81であった。)をハイパーブランチポリマーとして用いた、有機FET特性は、移動度が0.24cm2/V・sec、ON/OFF比が104だった。
表面処理層を用いないペンタセンを用いた有機FETの特性は、0.24cm2/V・s
ec、ON/OFF比が106であり、HPS及び、HPS−Hでは、良い特性を得るこ
とができ、HPEMAおよびHPEMA−Hでは、未処理基板と比べても遜色ない特性を得た。
【0039】
b)フラーレンを活性層(有機半導体層)とした有機FETの特性を以下に示す。
(1−5)参考例2で合成したHPS(ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される、重量平均分子量Mwは19,000、分散度Mw/Mnは3.98であった。)をハイパーブランチポリマーとして用いた有機FET特性は、移動度が0.026cm2/V・sec、ON/OFF比が106だった。
(1−6)参考例3で合成したHPS−H(ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される、重量平均分子量Mwは36,000、分散度Mw/Mnは5.05であった。)をハイパーブランチポリマーとして用いた有機FET特性は、移動度が0.069cm2/V・sec、ON/OFF比が106だった。
(1−7)参考例5で合成した合成したHPEMA(ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される、重量平均分子量Mwは34,900、分散度Mw/Mnは2.65であった。)をハイパーブランチポリマーとして用いた有機FET特性は、移動度が0.038cm2/V・sec、ON/OFF比が104だった。
(1−8)参考例6で合成した合成したHPEMA−H(ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される、重量平均分子量Mwは25,000、分散度Mw/Mnは1.81であった。)をハイパーブランチポリマーとして用いた有機FET特性は、移動度が0.010cm2/V・sec、ON/OFF比が104だった。
【0040】
表面処理層を用いないフラーレンを用いた有機FETの特性は観察されず、ハイパーブランチポリマーが表面処理層として非常に有効であることが明らかになった。また、一般的にn型有機FETの表面処理層として用いられるポリメタクリル酸メチル表面処理層を有する有機FETの特性は、0.087cm2/V・sec、ON/OFF比が106であり、HPSでは、良い特性を得ることができ、HPS−H、HPEMAおよびHPEMA−Hでは、性能は劣るものの、現在選択肢の少ないn型有機FET用ゲート絶縁膜表面処理剤として利用できることが分かった。
【0041】
実施例2(ハイパーブランチポリマーのゲート絶縁膜特性)
図6に本実施例における絶縁特性評価デバイス構造を示す。
インジウム−スズ酸化物透明電極(以下ITO電極)基板上に、ハイパーブランチポリマー300mg/トルエン(1ml)溶液を3000rpmで30秒間スピンコートし、150℃のホットプレート上で1時間乾燥した。この条件で作製したハイパーブランチポリマーの膜厚は、平均2μmである。次に、ハイパーブランチポリマーを成膜した基板を真空蒸着装置にセットし、10-4Pa台まで真空引きし、抵抗加熱法により直径1mmの円形状となるように設計したステンレス製シャドウマスクを通して、金上部電極を作製した。素子を、測定用チャンバーに導入し、10-3Paの真空に保ち、タングステン製プローブでコンタクトをとり、半導体パラメーターアナライザ(Agilent B1500A)を用いて、電圧を印加しハイパーブランチポリマー絶縁膜の漏れ電流(リーク電流)特性を測定した。Agilent B1500Aの電流測定限界は、10-11Aであり、
100Vの電圧印加時にリーク電流が10-11A台であれば、ゲート絶縁膜に利用できる
と判断し、「○」とし、それ以上のリーク電流が観察された絶縁膜を「×」と評価する。
【表1】
この絶縁性の評価により、HPS、HPS−H、HPEMA−Hは優れた絶縁特性を有し、有機FETのゲート絶縁膜として使用できることが分かる。
【0042】
実施例3(ハイパーブランチポリマーをゲート絶縁膜に有する有機FETの評価)
図7に本実施例におけるトランジスタ構造を示す。
ゲート電極としてインジウム−スズ酸化物透明電極やアルミニウムが成膜されたガラスまたはプラスチックなどからなる支持基板に、ゲート電極をして必要となる部分にフォトレジストなどを塗布し、エッチングすることでゲート電極をした。この時、この後作製するソース−ドレイン電極と、一部または全部とゲート電極がオーバーラップするように作製する(例えば、図8の2本の点線で示される範囲(2箇所)の一部又は全部で重なるように作製する。)。もしくは、金を代表とするリフトオフが可能な金属においては、フォトレジストとリフトオフ法を用いてゲート電極を作製してもよい。こうして作製したゲート電極上に、ハイパーブランチポリマー300mg/トルエン(1mL)溶液を3000rpmで30秒間スピンコートし、150℃のホットプレート上で1時間乾燥した。この条件で作製したハイパーブランチポリマーの膜厚は、平均2μmである。次に、ハイパーブランチポリマーを成膜した基板を真空蒸着装置にセットし、10-4Pa台まで真空引きし、抵抗加熱法によりペンタセンを活性層(有機半導体層)として50nm真空蒸着した。その後、チャネル長(L)50μm、チャネル幅(W)2mmとなるように設計した厚さ100μmのステンレス製シャドウマスクを通して、金を50nm真空蒸着し有機FETを作製した。得られた有機FET素子を、測定用チャンバーに導入し、10-3Paの真空に保ち、タングステン製プローブでコンタクトをとり、半導体パラメーターアナライザ(Agilent B1500A)を用いて、電圧を印加し電界効果移動度を測定した。
【0043】
a)ペンタセンを活性層(有機半導体層)とした有機FETの特性を以下に示す。
(3−1)参考例2で合成したHPS(ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される、重量平均分子量Mwは19,000、分散度Mw/Mnは3.98であった。)をハイパーブランチポリマーとして用いた有機FET特性は、移動度が0.10cm2/V・sec、ON/OFF比が105だった。
(3−2)参考例3で合成したHPS−H(ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される、重量平均分子量Mwは36,000、分散度Mw/Mnは5.05であった。)をハイパーブランチポリマーとして用いた有機FET特性は、移動度が0.032cm2/V・sec、ON/OFF比が104だった。
【0044】
実施例4(ハイパーブランチポリマーゲート絶縁膜の光パターン化)
ハイパーブランチポリマーなどポリマーを用いたゲート絶縁膜は、光や熱などによって、必要なところだけにパターンでき、その上に塗布法で活性層(有機半導体層)を成膜するためには、固定化(不溶化)することが望ましい。そこで、光を用いたパターン化と固定化を行った。基板には、実施例3で作製したITO電極基板を用いた。不活性ガスである窒素雰囲気に保ったグローブボックス内で、ITO電極基板上に、HPS(ゲル浸透クロ
マトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される、重量平均分子量Mwは19,000、分散度Mw/Mnは3.98であった。)200mg/トルエン(1mL)溶液を3000rpmで30秒間スピンコートし、100℃のホットプレート上で1時間乾燥した。この条件で作製したハイパーブランチポリマーの膜厚は、平均1μmである。次に、直径が1mm、0.4mm、0.2mmの円形の穴が開いたステンレス製のマスクを通して、300Wの高圧水銀灯を20分間照射し、必要な部分に光を照射し、光固層重合を利用することにより、固化した。この基板を、アセトンとトルエンでそれぞれ十分にすすぐことにより、パターンが形成されていることを顕微鏡で確認した。図9に顕微鏡写真を示す。光を照射した部分のHPSが残り、光が当たっていない部分のHPSは除去されパターン化されていることが確認された。また、触針法により測定した膜厚は、実施例において光重合前で1.2μm、光重合後有機溶剤で十分にすすいだあとで、1.0μmであり、膜の損失もなくパターン化できた。光に活性なDC基を有するハイパーブランチポリマーを用いることによって、光重合開始剤など有機FETに取ってキャリアトラップとなり、性能を劣化させうる試薬を含まないパターン化されたゲート絶縁膜を得ることができた。
さらに、このようにして不溶化したゲート絶縁膜上に、フォトレジストを塗布し、25μmの櫛形電極用パターンを転写し(図10)、リフトオフ法によってボトムコンタクト用電極を作製したところ、電極の剥離もなくハイパーブランチポリマーでパターン化されたゲート絶縁膜上にボトムコンタクト用ソース−ドレイン金電極を作製できる(図11:黒く見えるところには、HPSが確実に残っている。)。この特性は、フォトレジストに用いられるポリビニルフェノール類に限られていたが、これまで実施例で示した有機FET用ゲート絶縁膜として優れた特性を示すDC基を有するハイパーブランチポリマーを用いても実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】インクジェット法を用いて作製されるトップゲート・ボトムコンタクト型有機FETの構造(断面図)を示す概略図である。
【図2】ボトムゲート・ボトムコンタクト型有機FETの構造(断面図)を示す概略図である。
【図3】ボトムゲート・トップコンタクト型有機FETの構造(断面図)を示す概略図である。
【図4】トップゲート・ボトムコンタクト型有機FETの構造(断面図)を示す概略図である。
【図5】実施例1における有機FETの構造(断面図)を示す概略図である。
【図6】実施例2における絶縁特性評価デバイス構造(断面図)を示す概略図である。
【図7】実施例3におけるトランジスタ構造(断面図)を示す概略図である。
【図8】実施例3のトランジスタ構造におけるソース−ドレイン電極とゲート電極の関係を示す図である。
【図9】実施例4におけるハイパーブランチポリマーゲート絶縁膜の光パターン化を示す顕微鏡写真である。
【図10】ハイパーブランチポリマーゲート絶縁膜上に、フォトレジストを塗布し、25μmの櫛形電極用パターンを転写した際の顕微鏡写真である。
【図11】ハイパーブランチポリマーでパターン化されたゲート絶縁膜上にボトムコンタクト用ソース−ドレイン金電極を作製した際の顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0046】
a:インクジェットで成膜した親水性溶液から作製した電極(金属コロイドやPEDT/
PSS)
b:トップゲートコンタクト
c:トップゲート絶縁膜
d:バンク(溶液の広がりを制限する)
e:疎水性処理(ゲート長になる)
f:インクジェットで成膜した有機活性層(有機半導体層)
g:基板(ガラスやプラスチック)
1:基板
2:ゲート電極
3:ゲート絶縁膜
4:有機半導体層
5:ソース電極
6:ドレイン電極
7:金ドレイン電極
8:金ソース電極
9:活性層(有機半導体層)
10:ハイパーブランチポリマー表面処理膜
11:熱酸化膜(ゲート絶縁膜)
12:ヘビードープシリコン基板
13:直径1mm金電極
14:ハイパーブランチポリマー膜
15:ITO電極
16:ガラス基板
17:ハイパーブランチポリマーゲート絶縁膜
18:ゲート電極
19:支持基板
20:25μmの隙間
21:50μmの金が蒸着されるところ
22:25μmの隙間(チャネル)
23:50μmの金
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイパーブランチポリマーをゲート絶縁膜に用いた有機半導体素子と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報が電子化されて提供される機会が増え、薄くて軽い、手軽に持ち運びが可能なモバイル用表示媒体として、電子ペーパーやデジタルペーパー等のフレキシブル電子デバイスの実現への期待が高まり、フレキシブル基板や有機半導体材料の開発及び有機デバイスの作成法などの研究が盛んに行われている。
しかし、有機トランジスタ(OFET)のゲート絶縁膜は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)やポリスチレン(PS)、またパターニングが可能な感光性樹脂としてポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール類、耐熱性の熱硬化性樹脂としてポリイミド類、気相成膜できるパリレン誘導体などが報告されているが(特許文献1、非特許文献1及び2参照)、それぞれ溶媒選択性やパターニングが困難であったり、透明でないといった、課題があった。
特に溶媒選択性は、塗布によりゲート絶縁膜を作製する上で重要な課題となっている。
【0003】
ゲート絶縁膜と接触する有機半導体層には、ペンタセン等の低極性有機材料が用いられており、ゲート絶縁膜を形成するために塗布される有機溶剤によって、有機半導体層中の有機材料が溶け出してしまうことがある。
このことから、有機半導体層中の有機材料の溶出を抑制できるような溶媒選択性に優れた、つまり幅広い有機溶剤に溶解可能な有機材料が求められていた。
また、前記感光性樹脂を用いる場合、光硬化の際に光重合開始剤を添加剤として使用する。この添加剤は、不純物となり、ゲート絶縁膜の絶縁特性を損なう原因となっていた。
これらのことから、光重合開始剤を使用しなくとも光照射により硬化可能である絶縁特性に優れた有機材料が求められていた。
【0004】
ハイパーブランチポリマーはデンドリマーと共にデンドリティック(樹枝状)ポリマーとして分類され、従来の高分子は一般的に紐状の形状であるのに対し、これらのデンドリティックポリマーは積極的に分枝を導入している点でその特異な構造を有し、特に末端基数の多さがデンドリティックポリマーの最も顕著な特徴である。このような末端基数の多いデンドリティックポリマーは、末端基の種類によって分子間相互作用が大きく左右されるので、ガラス転移温度や溶解性、薄膜形成性などが大きく変化し、一般の線状高分子にはない特徴を有する。
【0005】
ハイパーブランチポリマーのデンドリマーに対する利点は、その合成の簡便さが挙げられ、特に工業的生産においては有利である。一般にデンドリマーが保護−脱保護を繰り返し合成されるのに対し、ハイパーブランチポリマーは1分子中に2種類の置換基を合計3個以上もつ、いわゆるABX型モノマーの1段階重合により合成することができる。
【0006】
ハイパーブランチポリマーの例として、ジチオカルバメート基を有するスチレン化合物の光重合によるハイパーブランチポリマー(非特許文献3、4,5参照。)や、ジチオカルバメート基を有するアクリル化合物の光重合によるジチオカルバメート基を有するハイパーブランチポリマー(非特許文献6、7,8参照。)、及びジチオカルバメート基が還元されたハイパーブランチポリマー(特許文献2参照)が報告されている。
【特許文献1】特開2007−5698号公報
【特許文献2】国際公開WO2006/093050号パンフレット
【非特許文献1】APPLIED PHYSICS LETTERS 89, 182108 (2006)
【非特許文献2】APPLIED PHYSICS LETTERS 87, 182109 (2005)
【非特許文献3】Koji Ishizu, Akihide Mori, Macromol. Rapid Commun. 21,665−668(2000)
【非特許文献4】Koji Ishizu, Akihide Mori, Polymer International 50,906−910(2001)
【非特許文献5】Koji Ishizu, Yoshihiro Ohta, Susumu Kawauchi, Macromolecules Vol.35, No.9, 3781−3784(2002)
【非特許文献6】Koji Ishizu, Takeshi Shibuya, Akihide Mori, Polymer International 51,424−428(2002)
【非特許文献7】Koji Ishizu, Takeshi Shibuya, Susumu Kawauchi, Macromolecules Vol.36, No.10, 3505−3510(2002)
【非特許文献8】Koji Ishizu, Takeshi Shibuya, Jaebum Park, Satoshi Uchida, Polymer International 53,259−265(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、有機材料を塗布することにより作製できる優れた電気特性を有するゲート絶縁膜及びゲート絶縁膜の表面処理層を有する有機半導体素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ハイパーブランチポリマーをゲート絶縁膜及びゲート絶縁膜の表面処理層に用いた有機半導体素子を作成し、本素子が高いキャリア移動度を有することを見出した。
また、ジチオカーバメート基を有するハイパーブランチの薄膜へフォトマスクを用いてUV照射することによりパターニングができ、パターン化したゲート絶縁膜及びゲート絶縁膜の表面処理層を有する有機半導体素子が作成可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は、第1観点として、基板と、ソース電極と、ドレイン電極と、前記ソース電極と前記ドレイン電極とを連結する有機半導体層と、前記有機半導体層に電界を印加するためのゲート電極と、前記有機半導体層とゲート電極間に配置されるゲート絶縁膜とを備え、前記ゲート絶縁膜がハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする有機半導体素子、
第2観点として、基板と、ソース電極と、ドレイン電極と、前記ソース電極と前記ドレイン電極とを連結する有機半導体層と、前記有機半導体層に電界を印加するためのゲート電極と、前記有機半導体層とゲート電極間に配置されるゲート絶縁膜と、前記有機半導体層と接するゲート絶縁膜の表面に配置される表面処理層とを備え、前記表面処理層がハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする有機半導体素子、
第3観点として、前記有機半導体層が、π共役系化合物であることを特徴とする第1又は第2観点記載の有機半導体素子、
第4観点として、前記ハイパーブランチポリマーが、式(1)で表される第1又は第2観点記載の有機半導体素子、
【化1】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、A1は式(2)又は式(3):
【化2】
(式中A2はエーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1〜30の直
鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を表し、X1、X2、X3及びX4は、それぞれ、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。)を表し、nは繰り返し単位構造の数であって2〜100000の整数を表す。)で表される構造を有するハイパーブランチポリマー、
第5観点として、前記ハイパーブランチポリマーのA1が式(4)で表される第4観点
記載の有機半導体素子、
【化3】
第6観点として、前記ハイパーブランチポリマーのA1が式(5)で表される第4観点
記載の有機半導体素子、
【化4】
(式中、mは2〜10の整数を表す。)
第7観点として、前記ハイパーブランチポリマーの分子末端が、チオール基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、水素原子もしくは式(6)で表されるジチオカーバメート基であるか、または水素原子と式(6)で表されるジチオカーバメート基との混在状態にある、第4観点に記載の有機半導体素子、
【化5】
(R2及びR3は、それぞれ、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基または炭素原子数7〜12のアリールアルキル基を表すか、または、R2
とR3は互いに結合し、窒素原子と共に環を形成していてもよい。)
第8観点として、前記ハイパーブランチポリマーのゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量が500〜5000000である、第4観点に記載の有機半導体素子、
第9観点として、前記ゲート絶縁膜が、式(6)で表されるジチオカーバメート基を分子末端に有し、かつ重量平均分子量が500〜200000であるハイパーブランチポリマーより形成されてなるものであることを特徴とする第1観点記載の有機半導体素子、
第10観点として、前記ゲート絶縁膜が、式(6)で表されるジチオカーバメート基を分子末端に有し、かつ重量平均分子量が500〜200000であるハイパーブランチポリマーを光重合して形成されてなる硬化膜からなることを特徴とする第1観点記載の有機半導体素子、
第11観点として、前記表面処理層が、式(6)で表されるジチオカーバメート基を分子末端に有し、かつ重量平均分子量が500〜200000であるハイパーブランチポリマーをより形成されてなるものであることを特徴とする第2観点記載の有機半導体素子、
第12観点として、前記表面処理層が、式(6)で表されるジチオカーバメート基を分子末端に有し、かつ重量平均分子量が500〜200000であるハイパーブランチポリマーを光重合して形成されてなる硬化物からなることを特徴とする第2観点記載の有機半導体素子、
【0010】
第13観点として、
(a−1):基板上に形成されたゲート電極、
(a−2):前記(a−1)のゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜、
(a−3):前記(a−2)のゲート絶縁膜上に形成されたソース電極及びドレイン電極、
(a−4):前記(a−3)のソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めるように前記ゲート絶縁膜上に形成された有機半導体層、
を具備した有機半導体素子(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)であって、
前記ゲート絶縁膜が、ハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とす
る第1観点記載の有機半導体素子、
第14観点として、
(b−1):基板上に形成されたゲート電極、
(b−2):前記(b−1)のゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜、
(b−3):前記(b−2)のゲート絶縁膜上に形成された有機半導体層、
(b−4):前記(b−3)の有機半導体層上に形成されたソース電極及びドレイン電極、
を具備した有機半導体素子(ボトムゲート・トップコンタクト型)であって、
前記ゲート絶縁膜が、ハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする第1観点記載の有機半導体素子、
第15観点として、
(c−1):基板上に形成されたソース電極及びドレイン電極、
(c−2):前記(c−1)のソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めると共に、それらの上面を覆うように形成された有機半導体層、
(c−3):前記(c−2)の有機半導体層上に形成されたゲート絶縁膜、
(c−4):前記(c−3)のゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極、
を具備した有機半導体素子(トップゲート・ボトムコンタクト型)であって、
前記ゲート絶縁膜が、ハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする第1観点記載の有機半導体素子、
第16観点として、
(工程a−1):基板上にゲート電極を形成する工程、
(工程a−2):前記(工程a−1)で形成されたゲート電極上に、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を塗布、乾燥してゲート絶縁膜を形成する工程、
(工程a−3):前記(工程a−2)で形成されたゲート絶縁膜上に、ソース電極及びドレイン電極を互いに離間して形成する工程、
(工程a−4):前記(工程a−3)で形成されたソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めるように前記ゲート絶縁膜上に有機半導体層を形成する工程、
を含むことを特徴とする第13観点に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法、
第17観点として、
前記(工程a−2)において、ハイパーブランチポリマーを含む溶液をゲート電極上に塗布、乾燥した後、光重合させてゲート絶縁膜を形成することを特徴とする第16観点に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法、
第18観点として、
(工程b−1):基板上にゲート電極を形成する工程、
(工程b−2):前記(工程b−1)で形成されたゲート電極上に、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を塗布、乾燥してゲート絶縁膜を形成する工程、
(工程b−3):前記(工程b−2)で形成されたゲート絶縁膜上に、有機半導体層を形成する工程、
(工程b−4):前記(工程b−3)で形成された有機半導体層上に、ソース電極及びドレイン電極を互いに離間して形成する工程、
を含むことを特徴とする第14観点に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・トップコンタクト型)の製造方法、
第19観点として、
前記(工程b−2)において、ハイパーブランチポリマーを含む溶液をゲート電極上に塗布、乾燥した後、光重合させてゲート絶縁膜を形成することを特徴とする第18観点に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・トップコンタクト型)の製造方法、
第20観点として、
(工程c−1):基板上にソース電極及びドレイン電極を互いに離間して形成する工程、(工程c−2):前記(工程c−1)で形成されたソース電極及びドレイン電極の間隔を
埋めると共に、それらの上面を覆うように前記基板、該ソース電極及び該ドレイン電極上に有機半導体層を形成する工程、
(工程c−3):前記(工程c−2)で形成された有機半導体層上に、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を塗布、乾燥してゲート絶縁膜を形成する工程、
(工程c−4):前記(工程c−3)で形成されたゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程、
を含むことを特徴とする第15観点に記載の有機半導体素子(トップゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法、
第21観点として、
前記(工程c−3)において、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を有機半導体層上に塗布、乾燥した後、光重合させてゲート絶縁膜を形成することを特徴とする第20観点に記載の有機半導体素子(トップゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法、
第22観点として、
(a−1):基板上に形成されたゲート電極、
(a−2):前記(a−1)のゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜、
(a−3):前記(a−2)のゲート絶縁膜上に形成された表面処理層、
(a−4):前記(a−3)の表面処理層上に形成されたソース電極及びドレイン電極、(a−5):前記(a−2)のソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めるように前記表面処理層上に形成された有機半導体層、
を具備した有機半導体素子(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)であって、
前記表面処理層が、ハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする第2観点記載の有機半導体素子、
第23観点として、
(b−1):基板上に形成されたゲート電極、
(b−2):前記(b−1)のゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜、
(b−3):前記(b−2)のゲート絶縁膜上に形成された表面処理層、
(b−4):前記(b−3)の表面処理層上に形成された有機半導体層、
(b−5):前記(b−4)の表面処理層層上に形成されたソース電極及びドレイン電極、
を具備した有機半導体素子(ボトムゲート・トップコンタクト型)であって、
前記表面処理層が、ハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする第2観点記載の有機半導体素子、
第24観点として、
(c−1):基板上に形成されたソース電極及びドレイン電極、
(c−2):前記(c−1)のソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めると共に、それらの上面を覆うように形成された有機半導体層、
(c−3):前記(c−2)の有機半導体層上に形成された表面処理層、
(c−4):前記(c−3)の表面処理層層上に形成されたゲート絶縁膜、
(c−5):前記(c−4)のゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極、
を具備した有機半導体素子(トップゲート・ボトムコンタクト型)であって、
前記表面処理層が、ハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする第2観点記載の有機半導体素子、
【0011】
第25観点として、
(工程a−1):基板上にゲート電極を形成する工程、
(工程a−2):前記(工程a−1)で形成されたゲート電極上に、ゲート絶縁膜を形成する工程、
(工程a−3):前記(工程a−2)で形成されたゲート絶縁膜の表面に、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を塗布、乾燥して表面処理層を形成する工程、
(工程a−4):前記(工程a−3)で形成されたゲート絶縁膜上に、ソース電極及びド
レイン電極を互いに離間して形成する工程、
(工程a−5):前記(工程a−4)で形成されたソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めるように前記ゲート絶縁膜上に有機半導体層を形成する工程、
を含むことを特徴とする第22観点に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法、
第26観点として、
前記(工程a−3)において、ハイパーブランチポリマーを含む溶液をゲート絶縁膜の表面に塗布、乾燥した後、光重合させて表面処理層を形成することを特徴とする第25観点に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法、
第27観点として、
(工程b−1):基板上にゲート電極を形成する工程、
(工程b−2):前記(工程b−1)で形成されたゲート電極上にゲート絶縁膜を形成する工程、
(工程b−3):前記(工程b−2)で形成されたゲート絶縁膜の表面に、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を塗布、乾燥して表面処理層を形成する工程、
(工程b−4):前記(工程b−3)で形成されたゲート絶縁膜上に、有機半導体層を形成する工程、
(工程b−5):前記(工程b−4)で形成された有機半導体層上に、ソース電極及びドレイン電極を互いに離間して形成する工程、
を含むことを特徴とする第23観点に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・トップコンタクト型)の製造方法、
第28観点として、
前記(工程b−3)において、ハイパーブランチポリマーを含む溶液をゲート絶縁膜の表面に塗布、乾燥した後、光重合させて表面処理層を形成することを特徴とする第27観点に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・トップコンタクト型)の製造方法、
第29観点として、
(工程c−1):基板上にソース電極及びドレイン電極を互いに離間して形成する工程、(工程c−2):前記(工程c−1)で形成されたソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めると共に、それらの上面を覆うように前記基板、該ソース電極及び該ドレイン電極上に有機半導体層を形成する工程、
(工程c−3):前記(工程c−2)で形成された有機半導体層の表面に、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を塗布、乾燥して表面処理層を形成する工程、
(工程c−4):前記(工程c−3)で形成された表面処理層上にゲート絶縁膜を形成する工程、
(工程c−5):前記(工程c−4)で形成されたゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程、
を含むことを特徴とする第24観点に記載の有機半導体素子(トップゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法、
第30観点として、
前記(工程c−3)において、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を有機半導体層の表面に塗布、乾燥した後、光重合させて表面処理層を形成することを特徴とする第29観点に記載の有機半導体素子(トップゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法、
第31観点として、第1又は第2観点記載の有機半導体素子が複数配置されたディスプレイパネル、
である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のハイパーブランチポリマーをゲート絶縁膜及びゲート絶縁膜の表面処理層に用いた有機半導体素子(以下、有機FETと略称する場合がある。)は、トップコンタクト型有機FETだけでなく、ボトムコンタクト型有機FETの作成が可能となるだけでなく
、有機半導体層がn型でもp型でも動作させることができ、幅広い分野での産業応用が可能となる。
例えば、トップゲート・ボトムコンタクト型有機FETをインクジェット法を用いて作製する場合、微細化するためには図1に示すような構造になる。
一つのトップゲート・ボトムコンタクト型有機FETを作製するため、疎水性処理したゲート長になるバンクと、溶液の広がりを防ぐバンクが必要になる。疎水性処理したバンクをゲート絶縁膜として利用することも可能だが、長方形に保持しておかないと、インクジェットで塗布した金属コロイドで作製する電極がうまくできない。そこで、基板側から順にインクジェット塗布することになる。そのため、活性層(有機半導体層)を溶かすことがないポリマー絶縁膜が求められる。
【0013】
ボトムゲート・ボトムコンタクト型有機FETの場合、微細化するためには、ソース−ドレイン電極をフォトリソ法を用いて作製する必要があるが、これまでのポリマー絶縁膜は、パターン化して不溶化することが困難であり、光重合開始剤入りPVAやフォトレジス
トに用いられるPVP等しかない。光重合開始剤は、絶縁膜表面に存在するトラップに非常
に敏感であり、有機半導体層にペンタセンを用いた有機FETで1桁も移動度が低下する
ことを覚悟しなければならない。
しかし、本発明のハイパーブランチポリマーをゲート絶縁膜及びゲート絶縁膜の表面処理層に用いた有機FETでは、有機半導体層がn型でもp型でも非常によい特性を発現できることが分かり、光活性なジチオカーバメート基を利用してパターンをとりながら光重合固定化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の有機半導体素子は、ハイパーブランチポリマーを成分として含有するゲート絶縁膜及びゲート絶縁膜の表面処理層に係わる。ここで、ゲート絶縁膜及びゲート絶縁膜の表面処理層に用いるハイパーブランチポリマーとしては、例えば、式(1)で示すものが挙げられる。
【化6】
式(1)において、R1は水素原子又はメチル基を表す。nは繰り返し単位構造の数で
あって2〜100,000の整数を表す。また、A1は式(2)又は式(3)で表される
構造を表す。
【化7】
式(2)及び式(3)中、A2はエーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭
素原子数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を表し、X1、X2、X3及び
X4は、それぞれ、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20の
アルコキシ基、ハロゲン基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。
【0015】
アルキレン基の具体例としては、メチレン、エチレン、ノルマルプロピレン、ノルマルブチレン、ノルマルヘキシレン等の直鎖状アルキレン、イソプロピレン、イソブチレン、2−メチルプロピレン等の分岐状アルキレンが挙げられる。また環状アルキレンとしては、炭素数3〜30の単環式、多環式、架橋環式の環状構造の脂環式脂肪族基が挙げられる。具体的には、炭素数4以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有する基を挙げることができる。例えば、下記に脂環式脂肪族基のうち、脂環式部分の構造例(a)〜(s)を示す。
【化8】
【0016】
炭素原子数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基及びノルマルペンチル基等が挙げられる。炭素原子数1〜20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、シクロヘキシルオキシ基及びノルマルペンチルオキシ基等が挙げられる。
ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
X1、X2、X3及びX4としては、水素原子又は炭素原子数1〜20のアルキル基が好ましい。
また、式(1)のA1としては、式(4)又は式(5)で表される構造であることが好
ましい。
【化9】
【化10】
式(5)中、mは2〜10の整数を表し、mとしては2又は3が好ましい。
【0017】
ハイパーブランチポリマーにおける分子末端としては、チオール基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、水素原子、式(6)で表されるジチオカーバメート基、または水素原子と式(6)で表されるジチオカーバメート基の混在状態が挙げられ、水素原子、式(6)で表されるジチオカーバメート基、または水素原子と式(6)で表されるジチオカーバメート基の混在状態が好ましい。
【化11】
式(6)中、R2及びR3は、それぞれ、炭素原子数1ないし5のアルキル基、炭素原子数1ないし5のヒドロキシアルキル基又は炭素原子数7ないし12のアリールアルキル基を表すか、または、R2とR3は互いに結合し、窒素原子と共に環を形成していてもよい。
【0018】
炭素原子数1ないし5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロペンチル基及びノルマルペンチル基等が挙げられる。炭素原子数1ないし5のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基及びヒドロキシプロピル基等が挙げられる。炭素原子数7ないし12のアリールアルキル基としては、ベンジル基及びフェネチル基等が挙げられる。
【0019】
R2とR3が互いに結合し窒素原子と共に形成する環としては四ないし八員環が挙げられる。そして、環としてメチレン基を四ないし六個含む環が挙げられる。また、環としては酸素原子又は硫黄原子と、四ないし六個のメチレン基を含む環が挙げられる。R2とR3が互いに結合し窒素原子と共に形成する環の具体例としては、ピペリジン環、ピロリジン環、モルホリン環、チオモルホリン環及びホモピペリジン環等が挙げられる。
【0020】
本発明のゲート絶縁膜及びゲート絶縁膜の表面処理層に用いるハイパーブランチポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwが500〜5000000であり、又は1000〜1000000であり、又は20
00〜500000であり、又は3000〜100000である。また、分散度Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)としては1.0〜7.0であり、又は1.1〜6.0であり、又は1.2〜5.0である。
【0021】
分子末端にジチオカーバメート基を有するハイパーブランチポリマーは、ジチオカーバメート基を有するスチレン化合物の光重合による合成方法(Koji Ishizu, Akihide Mori, Macromol. Rapid Commun. 21,66
5−668(2000)、Koji Ishizu, Akihide Mori, Polymer International 50,906−910(2001)、Koji
Ishizu, Yoshihiro Ohta, Susumu Kawauchi, M
acromolecules Vol.35, No.9, 3781−3784(200
2))や、ジチオカルバメート基を有するアクリル化合物の光重合による合成方法(Koji Ishizu, Takeshi Shibuya, Akihide Mori, Polymer International 51,424−428(2002)、Koji Ishizu, Takeshi Shibuya, Susumu Kawauchi
, Macromolecules Vol.36, No.10, 3505−3510(2002)、Koji Ishizu, Takeshi Shibuya, Jaebum
Park, Satoshi Uchida, Polymer Internation
al 53,259−265(2004))によって合成できる。
【0022】
例えば、式(7)(式中、R1、R2、R3及びA1は、前記と同様である。)で表されるジチオカルバメート化合物をリビングラジカル重合することによりジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーを得ることができる。ジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーは次のようにして生成すると考えられる。すなわち、式(7)の化合物への光照射等によってA1−S結合が開裂してラジカル種
(式(8))が発生する。次に、(8)のラジカル種が式(7)の化合物と反応して式(9)の化合物を生成する。さらに、式(9)においてC−S結合又はA1−S結合が開裂
してラジカル種を発生し、それが式(7)の化合物と反応することによって、式(10)又は式(11)の化合物を与える。なお、式(10)及び式(11)中、DCはジチオカルバメート基(−SC(=S)N(R2)R3)を表す。そして、式(10)及び式(11)の化合物から同様の反応が繰り返されることによって、ジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマーが生成すると考えられる。
【化12】
【0023】
ハイパーブランチポリマーを用いて絶縁膜及びゲート絶縁膜の表面処理層を形成する方法としては、ハイパーブランチポリマーの溶液を用いて薄膜が形成できるスピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平板、スクリーン印刷等)等があり、膜厚としては一般に1μm以下、特に10nm〜500nmが好ましい。
【0024】
ハイパーブランチポリマー薄膜へ光照射することによる硬化膜(ハイパーブランチポリマーが、光重合して巨大なマトリックス状の高分子の膜を形成したもの。)の作成方法としては、ハイパーブランチポリマーを基板上にコートし、溶媒をプリベークにより除いた後、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ及びキセノンランプ等の紫外線照射ランプを照射することにより作成できる。
【0025】
本発明の有機半導体層に用いられる、π共役化合物としては、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリアセン、ポリフェニレンビニレン等の共役炭化水素ポリマー、およびこれらの共役炭化水素ポリマーのオリゴマーを含む誘導体、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフラン、ポリピリジン、ポリチエニレンビニレン等の共役複素環式
ポリマー、およびこれらの共役複素環式ポリマーのオリゴマーを含む誘導体、テトラセン、クリセン、ペンタセン、ピレン、ペリレン、コロネン等の縮合芳香族炭化水素、およびこれらの誘導体、銅フタロシアニン、ルテニウムビスフタロシアニン等のフタロシアニンの金属錯体、白金ポルフィリン等のポルフィリンの金属錯体、また、フラーレンやカーボンナノチューブが挙げられる。
【0026】
有機半導体層を形成する方法としては、蒸着により形成する方法や、上記有機半導体材料を溶媒に溶解して、有機半導体溶液を作製し、該有機半導体溶液を塗布して形成する方法が挙げられる。中でも、塗布によって形成する方法が、生産性に優れるため、好ましく、塗布方法として、スピンコート法、印刷法、インクジェット法を用いることが特に好ましい。
また、目的とする有機半導体の前駆体の層を形成し、その後に加熱等の処理を行うことによって、該前駆体層を、目的とする有機半導体層に変換し、有機半導体層を形成してもよい。
【0027】
電極には、Au、Pt、Ag、Al、Cu、Rh、Ir、In、Ni、Pd、As、Se、Te、Mo、W、Mg、Zn等の金属、Mg/Cu、Mg/Ag、Mg/Al、Mg/In等の合金、SnO2、InO2、ZnO、InO2・SnO2(ITO)、Sb2O5・SnO2(ATO)等の金属酸化物、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性
ポリチオフェン等の導電性高分子等が挙げられる。
【0028】
電極の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、インクジェット法、印刷法、ゾルゲル法等が挙げることができ、更にそのパターニング方法としては、フォトリソグラフィー法、インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法、及びこれらの手法を複数組み合わせた方法が挙げることができる。中でも、上記導電性材料を溶媒に溶解した導電性材料溶液を用いて、印刷法又はインクジェット法により電極を形成する方法が、生産性に優れており、好ましい。
【0029】
有機FETの代表的な構造を示す。
ボトムゲート・ボトムコンタクト型有機FETは、例えば、図2に示すように、基板1上にゲート電極2が設けられ、この上にゲート絶縁膜3が設けられ、ゲート絶縁膜3の上に有機半導体層4が設けられている。この有機半導体層4に接するように、ソース電極5とドレイン電極6がゲート絶縁膜3上に設けられている。
ボトムゲート・トップコンタクト型有機FETは、例えば、図3に示すように、ゲート絶縁膜3上の有機半導体層4上にソース電極5とドレイン電極6が設けられている点がボトムゲート・ボトムコンタクト型有機FETと異なるが、その他は同様の構成である。
トップゲート・ボトムコンタクト型有機FETは、例えば、図4に示すように、基板1上にソース電極5とドレイン電極6が設けられ、これら基板1、ソース電極5及びドレイン電極6の上に有機半導体層4が設けられ、その上にゲート絶縁体層3が設けられ、ゲート絶縁膜3上にゲート電極2が設けられている。
【実施例】
【0030】
以下、本発明について実施例を挙げて詳述するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例において、試料の物性測定には下記の装置を使用した。
液体クロマトグラフィー
装置:Agilent製 1100Series
カラム:Inertsil ODS−2
カラム温度:40℃
溶媒:アセトニトリル/水=60/40(体積比)
検出器:RI
ゲル浸透クロマトグラフィー
装置:(株)島津製作所製 SCL−10AVP
カラム:Shodex KF−804L+KF−803L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:RI
1H−NMRスペクトル
装置:日本電子データム(株)製 JNM−LA400
溶媒:CDCl3
内部標準:テトラメチルシラン
元素分析(炭素、水素、窒素)
装置:パーキンエルマー製 PE2400II
燃焼管温度:975℃
元素分析(硫黄)
装置:サーモフィニガン製 Flash EA1112
燃焼管温度:1000℃
熱重量分析
装置:セイコー電子工業(株)製 TG/DTA320
昇温速度:10℃/分
空気量:300ml/分
AFM測定
装置:Veeco Instruments製 Dimension 3100
プローブ材質:単結晶シリコン
測定モード:タッピングモード
【0031】
参考例1
<N、N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレンの合成>
【化13】
2Lの反応フラスコに、クロロメチルスチレン[セイミケミカル(株)製、CMS−14(商品名)]120g、N、N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム3水和物[関東化学(株)製]181g、アセトン1400gを仕込み、撹拌下、40℃で1時間反応させた。反応後、析出した塩化ナトリウムを濾過して除き、その後エバポレーターで反応溶液からアセトンを留去させ、反応粗粉末を得た。この反応粗粉末をトルエンに再溶解させ、トルエン/水系で分液後、−20℃の冷凍庫内でトルエン相から目的物を再結晶させた。再結晶物を濾過、真空乾燥して、白色粉末の目的物206g(収率97%)を得た。液体クロマトグラフィーによる純度(面積百分率値)は100%であった。DSC測定で融点は56℃であった。
【0032】
参考例2
<HPSの製造:ジチオカルバメート基を分子末端に有するスチレン系ハイパーブランチポリマーの合成>
【化14】
300mLの反応フラスコに、N、N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン108g、トルエン72gを仕込み、撹拌して淡黄色透明溶液を調製した後、反応系内を窒素置換した。この溶液の真ん中から100Wの高圧水銀灯[セン特殊光源(株)製、HL−
100]を点灯させ、内部照射による光重合反応を、撹拌下、室温で12時間行なった。
次にこの反応液をメタノール3000gに添加してポリマーを高粘度な塊状状態で再沈した後、上澄み液をデカンテーションで除いた。さらにこのポリマーをテトラヒドロフラン300gに再溶解した後、この溶液をメタノール3000gに添加してポリマーをスラリー状態で再沈した。このスラリーを濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(HPS)48gを得た。ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは19,000、分散度Mw/Mnは3.98であった。
【0033】
参考例3
<HPS−Hの製造:ジチオカルバメート基の還元除去>
【化15】
300mLの反応フラスコに、参考例2で得たジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマー(HPS)14g、水素化トリブチルスズ[アルドリッチ社
製]28g、トルエン140gを仕込み、撹拌して無色透明溶液を調製した後、反応系内
を窒素置換した。この溶液の真ん中から100Wの高圧水銀灯[セン特殊光源(株)製、
HL−100]を点灯させ、内部照射による反応を、撹拌下、室温で15分間行なった。
次にこの反応液にトルエン500gを添加して希釈し、この希釈液をメタノール3600gに添加して、ハイパーブランチポリマーをスラリー状態で再沈した。このスラリーを濾過し、真空乾燥して、白色粉末のジチオカルバメート基が水素に置換されたハイパーブランチポリマー5.3gを得た。ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは36,000、分散度Mw/Mnは5.05であった。
【0034】
参考例4
<N、N−ジエチルジチオカルバミルエチルメタクリレートの合成>
【化16】
2Lの反応フラスコに、クロロエチルメタクリレート[ランカスター社製]100g、N、N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム3水和物[関東化学(株)製]178g、アセトン1100gを仕込み、撹拌下、40℃で14時間反応させた。反応後、析出した塩化ナトリウムを濾過して除き、その後エバポレーターで反応溶液からアセトンを留去させ、反応粗粉末を得た。この反応粗粉末を1,2−ジクロロエタンに再溶解させ、1,2−ジクロロエタン/水系で分液後、1,2−ジクロロエタン相から1,2−ジクロロエタンを留去させて黄色液体の目的物171g(収率97%)を得た。液体クロマトグラフィーによる純度(面積百分率値)は96%であった。
【0035】
参考例5
<HPEMAの製造:ジチオカルバメート基を分子末端に有するアクリル系ハイパーブランチポリマーの合成>
【化17】
300mLの反応フラスコに、N、N−ジエチルジチオカルバミルエチルメタクリレート90g、トルエン90gを仕込み、撹拌して淡黄色透明溶液を調製した後、反応系内を窒素置換した。この溶液の真ん中から100Wの高圧水銀灯[セン特殊光源(株)製、H
L−100]を点灯させ、内部照射による光重合反応を、撹拌下、室温で5時間行った。
次にこの反応液をメタノール3000gに添加してポリマーを高粘度な塊状状態で再沈した後、上澄み液をデカンテーションで除いた。さらにこのポリマーをテトラヒドロフラン400gに再溶解した後、この溶液をメタノール5000gに添加してポリマーをスラリー状態で再沈した。このスラリーを濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(HPEMA)44gを得た。ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは34,900、分散度Mw/Mnは2.65であった。
【0036】
参考例6
<HPEMA−Hの製造:ジチオカルバメート基の還元除去>
【化18】
300mLの反応フラスコに、参考例5で得たジチオカルバメート基を分子末端に有するハイパーブランチポリマー(HPEMA)15g、水素化トリブチルスズ[アルドリッ
チ製]30g、テトラヒドロフラン135gを仕込み、撹拌して淡黄色透明溶液を調製し
た後、反応系内を窒素置換した。この溶液の真ん中から100Wの高圧水銀灯[セン特殊
光源(株)製、HL−100]を点灯させ、内部照射による反応を、撹拌下、室温で1時
間行なった。次にこの反応液をヘキサン2000gに添加して、ハイパーブランチポリマーをスラリー状態で再沈した。このスラリーを濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(HPEMA−H)5.7gを得た。ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは25,000、分散度Mw/Mnは1.81であった。
【0037】
実施例1(ハイパーブランチポリマーを表面処理層に用いた有機FET特性の評価)
図5に本実施例における有機FETの構造を示す。
まず、300nmの熱酸化膜付きn++ヘビードープシリコン基板に、ハイパーブランチポリマー30mg/トルエン(1mL)溶液を3000rpmで30秒間スピンコートし、150℃のホットプレート上で1時間乾燥した。この条件で作製したハイパーブランチポリマーの膜厚は、平均50nmである。次に、ハイパーブランチポリマーを成膜したn++ヘビードープシリコン基板を真空蒸着装置にセットし、10-4Pa台まで真空引きし、抵抗加熱法によりペンタセンまたはフラーレンを活性層(有機半導体層)として50nm真空蒸着した。その後、チャネル長(L)50μm、チャネル幅(W)2mmとなるように設計した厚さ100μmのステンレス製シャドウマスクを通して、金を50nm真空蒸着し有機FETを作製した。得られた有機FET素子を、測定用チャンバーに導入し、10-3Paの真空に保ち、タングステン製プローブでコンタクトをとり、半導体パラメーターアナライザ(Agilent B1500A)を用いて、電圧を印加し電界効果移動度を測定した。
【0038】
a)ペンタセンを活性層(有機半導体層)とした有機FETの特性を以下に示す。
(1−1)参考例2で合成したHPS(ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される、重量平均分子量Mwは19,000、分散度Mw/Mnは3.98であった。)をハイパーブランチポリマーとして用いた有機FET特性は、移動度が0.42cm2/V・sec、ON/OFF比が107だった。
(1−2)参考例3で合成したHPS−H(ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される、重量平均分子量Mwは36,000、分散度Mw/Mnは5.05であった。)をハイパーブランチポリマーとして用いた有機FET特性は、移動度が0.84cm2/V・sec、ON/OFF比が106だった。
(1−3)参考例5で合成したHPEMA(ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される、重量平均分子量Mwは34,900、分散度Mw/Mnは2.6
5であった。)をハイパーブランチポリマーとして用いた有機FET特性は、移動度が0.21cm2/V・sec、ON/OFF比が106だった。
(1−4)参考例6で合成したHPEMA−H(ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される、重量平均分子量Mwは25,000、分散度Mw/Mnは1.81であった。)をハイパーブランチポリマーとして用いた、有機FET特性は、移動度が0.24cm2/V・sec、ON/OFF比が104だった。
表面処理層を用いないペンタセンを用いた有機FETの特性は、0.24cm2/V・s
ec、ON/OFF比が106であり、HPS及び、HPS−Hでは、良い特性を得るこ
とができ、HPEMAおよびHPEMA−Hでは、未処理基板と比べても遜色ない特性を得た。
【0039】
b)フラーレンを活性層(有機半導体層)とした有機FETの特性を以下に示す。
(1−5)参考例2で合成したHPS(ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される、重量平均分子量Mwは19,000、分散度Mw/Mnは3.98であった。)をハイパーブランチポリマーとして用いた有機FET特性は、移動度が0.026cm2/V・sec、ON/OFF比が106だった。
(1−6)参考例3で合成したHPS−H(ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される、重量平均分子量Mwは36,000、分散度Mw/Mnは5.05であった。)をハイパーブランチポリマーとして用いた有機FET特性は、移動度が0.069cm2/V・sec、ON/OFF比が106だった。
(1−7)参考例5で合成した合成したHPEMA(ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される、重量平均分子量Mwは34,900、分散度Mw/Mnは2.65であった。)をハイパーブランチポリマーとして用いた有機FET特性は、移動度が0.038cm2/V・sec、ON/OFF比が104だった。
(1−8)参考例6で合成した合成したHPEMA−H(ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される、重量平均分子量Mwは25,000、分散度Mw/Mnは1.81であった。)をハイパーブランチポリマーとして用いた有機FET特性は、移動度が0.010cm2/V・sec、ON/OFF比が104だった。
【0040】
表面処理層を用いないフラーレンを用いた有機FETの特性は観察されず、ハイパーブランチポリマーが表面処理層として非常に有効であることが明らかになった。また、一般的にn型有機FETの表面処理層として用いられるポリメタクリル酸メチル表面処理層を有する有機FETの特性は、0.087cm2/V・sec、ON/OFF比が106であり、HPSでは、良い特性を得ることができ、HPS−H、HPEMAおよびHPEMA−Hでは、性能は劣るものの、現在選択肢の少ないn型有機FET用ゲート絶縁膜表面処理剤として利用できることが分かった。
【0041】
実施例2(ハイパーブランチポリマーのゲート絶縁膜特性)
図6に本実施例における絶縁特性評価デバイス構造を示す。
インジウム−スズ酸化物透明電極(以下ITO電極)基板上に、ハイパーブランチポリマー300mg/トルエン(1ml)溶液を3000rpmで30秒間スピンコートし、150℃のホットプレート上で1時間乾燥した。この条件で作製したハイパーブランチポリマーの膜厚は、平均2μmである。次に、ハイパーブランチポリマーを成膜した基板を真空蒸着装置にセットし、10-4Pa台まで真空引きし、抵抗加熱法により直径1mmの円形状となるように設計したステンレス製シャドウマスクを通して、金上部電極を作製した。素子を、測定用チャンバーに導入し、10-3Paの真空に保ち、タングステン製プローブでコンタクトをとり、半導体パラメーターアナライザ(Agilent B1500A)を用いて、電圧を印加しハイパーブランチポリマー絶縁膜の漏れ電流(リーク電流)特性を測定した。Agilent B1500Aの電流測定限界は、10-11Aであり、
100Vの電圧印加時にリーク電流が10-11A台であれば、ゲート絶縁膜に利用できる
と判断し、「○」とし、それ以上のリーク電流が観察された絶縁膜を「×」と評価する。
【表1】
この絶縁性の評価により、HPS、HPS−H、HPEMA−Hは優れた絶縁特性を有し、有機FETのゲート絶縁膜として使用できることが分かる。
【0042】
実施例3(ハイパーブランチポリマーをゲート絶縁膜に有する有機FETの評価)
図7に本実施例におけるトランジスタ構造を示す。
ゲート電極としてインジウム−スズ酸化物透明電極やアルミニウムが成膜されたガラスまたはプラスチックなどからなる支持基板に、ゲート電極をして必要となる部分にフォトレジストなどを塗布し、エッチングすることでゲート電極をした。この時、この後作製するソース−ドレイン電極と、一部または全部とゲート電極がオーバーラップするように作製する(例えば、図8の2本の点線で示される範囲(2箇所)の一部又は全部で重なるように作製する。)。もしくは、金を代表とするリフトオフが可能な金属においては、フォトレジストとリフトオフ法を用いてゲート電極を作製してもよい。こうして作製したゲート電極上に、ハイパーブランチポリマー300mg/トルエン(1mL)溶液を3000rpmで30秒間スピンコートし、150℃のホットプレート上で1時間乾燥した。この条件で作製したハイパーブランチポリマーの膜厚は、平均2μmである。次に、ハイパーブランチポリマーを成膜した基板を真空蒸着装置にセットし、10-4Pa台まで真空引きし、抵抗加熱法によりペンタセンを活性層(有機半導体層)として50nm真空蒸着した。その後、チャネル長(L)50μm、チャネル幅(W)2mmとなるように設計した厚さ100μmのステンレス製シャドウマスクを通して、金を50nm真空蒸着し有機FETを作製した。得られた有機FET素子を、測定用チャンバーに導入し、10-3Paの真空に保ち、タングステン製プローブでコンタクトをとり、半導体パラメーターアナライザ(Agilent B1500A)を用いて、電圧を印加し電界効果移動度を測定した。
【0043】
a)ペンタセンを活性層(有機半導体層)とした有機FETの特性を以下に示す。
(3−1)参考例2で合成したHPS(ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される、重量平均分子量Mwは19,000、分散度Mw/Mnは3.98であった。)をハイパーブランチポリマーとして用いた有機FET特性は、移動度が0.10cm2/V・sec、ON/OFF比が105だった。
(3−2)参考例3で合成したHPS−H(ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される、重量平均分子量Mwは36,000、分散度Mw/Mnは5.05であった。)をハイパーブランチポリマーとして用いた有機FET特性は、移動度が0.032cm2/V・sec、ON/OFF比が104だった。
【0044】
実施例4(ハイパーブランチポリマーゲート絶縁膜の光パターン化)
ハイパーブランチポリマーなどポリマーを用いたゲート絶縁膜は、光や熱などによって、必要なところだけにパターンでき、その上に塗布法で活性層(有機半導体層)を成膜するためには、固定化(不溶化)することが望ましい。そこで、光を用いたパターン化と固定化を行った。基板には、実施例3で作製したITO電極基板を用いた。不活性ガスである窒素雰囲気に保ったグローブボックス内で、ITO電極基板上に、HPS(ゲル浸透クロ
マトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される、重量平均分子量Mwは19,000、分散度Mw/Mnは3.98であった。)200mg/トルエン(1mL)溶液を3000rpmで30秒間スピンコートし、100℃のホットプレート上で1時間乾燥した。この条件で作製したハイパーブランチポリマーの膜厚は、平均1μmである。次に、直径が1mm、0.4mm、0.2mmの円形の穴が開いたステンレス製のマスクを通して、300Wの高圧水銀灯を20分間照射し、必要な部分に光を照射し、光固層重合を利用することにより、固化した。この基板を、アセトンとトルエンでそれぞれ十分にすすぐことにより、パターンが形成されていることを顕微鏡で確認した。図9に顕微鏡写真を示す。光を照射した部分のHPSが残り、光が当たっていない部分のHPSは除去されパターン化されていることが確認された。また、触針法により測定した膜厚は、実施例において光重合前で1.2μm、光重合後有機溶剤で十分にすすいだあとで、1.0μmであり、膜の損失もなくパターン化できた。光に活性なDC基を有するハイパーブランチポリマーを用いることによって、光重合開始剤など有機FETに取ってキャリアトラップとなり、性能を劣化させうる試薬を含まないパターン化されたゲート絶縁膜を得ることができた。
さらに、このようにして不溶化したゲート絶縁膜上に、フォトレジストを塗布し、25μmの櫛形電極用パターンを転写し(図10)、リフトオフ法によってボトムコンタクト用電極を作製したところ、電極の剥離もなくハイパーブランチポリマーでパターン化されたゲート絶縁膜上にボトムコンタクト用ソース−ドレイン金電極を作製できる(図11:黒く見えるところには、HPSが確実に残っている。)。この特性は、フォトレジストに用いられるポリビニルフェノール類に限られていたが、これまで実施例で示した有機FET用ゲート絶縁膜として優れた特性を示すDC基を有するハイパーブランチポリマーを用いても実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】インクジェット法を用いて作製されるトップゲート・ボトムコンタクト型有機FETの構造(断面図)を示す概略図である。
【図2】ボトムゲート・ボトムコンタクト型有機FETの構造(断面図)を示す概略図である。
【図3】ボトムゲート・トップコンタクト型有機FETの構造(断面図)を示す概略図である。
【図4】トップゲート・ボトムコンタクト型有機FETの構造(断面図)を示す概略図である。
【図5】実施例1における有機FETの構造(断面図)を示す概略図である。
【図6】実施例2における絶縁特性評価デバイス構造(断面図)を示す概略図である。
【図7】実施例3におけるトランジスタ構造(断面図)を示す概略図である。
【図8】実施例3のトランジスタ構造におけるソース−ドレイン電極とゲート電極の関係を示す図である。
【図9】実施例4におけるハイパーブランチポリマーゲート絶縁膜の光パターン化を示す顕微鏡写真である。
【図10】ハイパーブランチポリマーゲート絶縁膜上に、フォトレジストを塗布し、25μmの櫛形電極用パターンを転写した際の顕微鏡写真である。
【図11】ハイパーブランチポリマーでパターン化されたゲート絶縁膜上にボトムコンタクト用ソース−ドレイン金電極を作製した際の顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0046】
a:インクジェットで成膜した親水性溶液から作製した電極(金属コロイドやPEDT/
PSS)
b:トップゲートコンタクト
c:トップゲート絶縁膜
d:バンク(溶液の広がりを制限する)
e:疎水性処理(ゲート長になる)
f:インクジェットで成膜した有機活性層(有機半導体層)
g:基板(ガラスやプラスチック)
1:基板
2:ゲート電極
3:ゲート絶縁膜
4:有機半導体層
5:ソース電極
6:ドレイン電極
7:金ドレイン電極
8:金ソース電極
9:活性層(有機半導体層)
10:ハイパーブランチポリマー表面処理膜
11:熱酸化膜(ゲート絶縁膜)
12:ヘビードープシリコン基板
13:直径1mm金電極
14:ハイパーブランチポリマー膜
15:ITO電極
16:ガラス基板
17:ハイパーブランチポリマーゲート絶縁膜
18:ゲート電極
19:支持基板
20:25μmの隙間
21:50μmの金が蒸着されるところ
22:25μmの隙間(チャネル)
23:50μmの金
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、ソース電極と、ドレイン電極と、前記ソース電極と前記ドレイン電極とを連結する有機半導体層と、前記有機半導体層に電界を印加するためのゲート電極と、前記有機半導体層とゲート電極間に配置されるゲート絶縁膜とを備え、前記ゲート絶縁膜がハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする有機半導体素子。
【請求項2】
基板と、ソース電極と、ドレイン電極と、前記ソース電極と前記ドレイン電極とを連結する有機半導体層と、前記有機半導体層に電界を印加するためのゲート電極と、前記有機半導体層とゲート電極間に配置されるゲート絶縁膜と、前記有機半導体層と接するゲート絶縁膜の表面に配置される表面処理層とを備え、前記表面処理層がハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする有機半導体素子。
【請求項3】
前記有機半導体層が、π共役系化合物であることを特徴とする請求項1又は2記載の有機半導体素子。
【請求項4】
前記ハイパーブランチポリマーが、式(1)で表される請求項1又は2記載の有機半導体素子。
【化1】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、A1は式(2)又は式(3):
【化2】
(式中A2はエーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1〜30の直
鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を表し、X1、X2、X3及びX4は、それぞれ、水素
原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。)を表し、nは繰り返し単位構造の数であって2〜100000の整数を表す。)で表される構造を有するハイパーブランチポリマー。
【請求項5】
前記ハイパーブランチポリマーのA1が式(4)で表される請求項4記載の有機半導体素
子。
【化3】
【請求項6】
前記ハイパーブランチポリマーのA1が式(5)で表される請求項4記載の有機半導体素
子。
【化4】
(式中、mは2〜10の整数を表す)
【請求項7】
前記ハイパーブランチポリマーの分子末端が、チオール基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、水素原子もしくは式(6)で表されるジチオカーバメート基であるか、または水素原子と式(6)で表されるジチオカーバメート基との混在状態にある、請求項4に記載の有機半導体素子。
【化5】
(R2及びR3は、それぞれ、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基または炭素原子数7〜12のアリールアルキル基を表すか、または、R2
とR3は互いに結合し、窒素原子と共に環を形成していてもよい。)
【請求項8】
前記ハイパーブランチポリマーのゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量が500〜5000000である、請求項4に記載の有機半導体素子。
【請求項9】
前記ゲート絶縁膜が、式(6)で表されるジチオカーバメート基を分子末端に有し、かつ重量平均分子量が500〜200000であるハイパーブランチポリマーより形成されてなるものであることを特徴とする請求項1記載の有機半導体素子。
【請求項10】
前記ゲート絶縁膜が、式(6)で表されるジチオカーバメート基を分子末端に有し、かつ重量平均分子量が500〜200000であるハイパーブランチポリマーを光重合して形成されてなる硬化膜からなることを特徴とする請求項1記載の有機半導体素子。
【請求項11】
前記表面処理層が、式(6)で表されるジチオカーバメート基を分子末端に有し、かつ重量平均分子量が500〜200000であるハイパーブランチポリマーをより形成されてなるものであることを特徴とする請求項2記載の有機半導体素子。
【請求項12】
前記表面処理層が、式(6)で表されるジチオカーバメート基を分子末端に有し、かつ重量平均分子量が500〜200000であるハイパーブランチポリマーを光重合して形成されてなる硬化物からなることを特徴とする請求項2記載の有機半導体素子。
【請求項13】
(a−1):基板上に形成されたゲート電極、
(a−2):前記(a−1)のゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜、
(a−3):前記(a−2)のゲート絶縁膜上に形成されたソース電極及びドレイン電極、
(a−4):前記(a−3)のソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めるように前記ゲート絶縁膜上に形成された有機半導体層、
を具備した有機半導体素子(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)であって、
前記ゲート絶縁膜が、ハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする請求項1記載の有機半導体素子。
【請求項14】
(b−1):基板上に形成されたゲート電極、
(b−2):前記(b−1)のゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜、
(b−3):前記(b−2)のゲート絶縁膜上に形成された有機半導体層、
(b−4):前記(b−3)の有機半導体層上に形成されたソース電極及びドレイン電極、
を具備した有機半導体素子(ボトムゲート・トップコンタクト型)であって、
前記ゲート絶縁膜が、ハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする請求項1記載の有機半導体素子。
【請求項15】
(c−1):基板上に形成されたソース電極及びドレイン電極、
(c−2):前記(c−1)のソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めると共に、それらの上面を覆うように形成された有機半導体層、
(c−3):前記(c−2)の有機半導体層上に形成されたゲート絶縁膜、
(c−4):前記(c−3)のゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極、
を具備した有機半導体素子(トップゲート・ボトムコンタクト型)であって、
前記ゲート絶縁膜が、ハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする請求項1記載の有機半導体素子。
【請求項16】
(工程a−1):基板上にゲート電極を形成する工程、
(工程a−2):前記(工程a−1)で形成されたゲート電極上に、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を塗布、乾燥してゲート絶縁膜を形成する工程、
(工程a−3):前記(工程a−2)で形成されたゲート絶縁膜上に、ソース電極及びドレイン電極を互いに離間して形成する工程、
(工程a−4):前記(工程a−3)で形成されたソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めるように前記ゲート絶縁膜上に有機半導体層を形成する工程、
を含むことを特徴とする請求項13に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法。
【請求項17】
前記(工程a−2)において、ハイパーブランチポリマーを含む溶液をゲート電極上に塗布、乾燥した後、光重合させてゲート絶縁膜を形成することを特徴とする請求項16に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法。
【請求項18】
(工程b−1):基板上にゲート電極を形成する工程、
(工程b−2):前記(工程b−1)で形成されたゲート電極上に、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を塗布、乾燥してゲート絶縁膜を形成する工程、
(工程b−3):前記(工程b−2)で形成されたゲート絶縁膜上に、有機半導体層を形成する工程、
(工程b−4):前記(工程b−3)で形成された有機半導体層上に、ソース電極及びドレイン電極を互いに離間して形成する工程、
を含むことを特徴とする請求項14に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・トップコンタクト型)の製造方法。
【請求項19】
前記(工程b−2)において、ハイパーブランチポリマーを含む溶液をゲート電極上に塗布、乾燥した後、光重合させてゲート絶縁膜を形成することを特徴とする請求項18に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・トップコンタクト型)の製造方法。
【請求項20】
(工程c−1):基板上にソース電極及びドレイン電極を互いに離間して形成する工程、(工程c−2):前記(工程c−1)で形成されたソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めると共に、それらの上面を覆うように前記基板、該ソース電極及び該ドレイン電極上に有機半導体層を形成する工程、
(工程c−3):前記(工程c−2)で形成された有機半導体層上に、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を塗布、乾燥してゲート絶縁膜を形成する工程、
(工程c−4):前記(工程c−3)で形成されたゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程、
を含むことを特徴とする請求項15に記載の有機半導体素子(トップゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法。
【請求項21】
前記(工程c−3)において、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を有機半導体層上に塗布、乾燥した後、光重合させてゲート絶縁膜を形成することを特徴とする請求項20に記載の有機半導体素子(トップゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法。
【請求項22】
(a−1):基板上に形成されたゲート電極、
(a−2):前記(a−1)のゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜、
(a−3):前記(a−2)のゲート絶縁膜上に形成された表面処理層、
(a−4):前記(a−3)の表面処理層上に形成されたソース電極及びドレイン電極、(a−5):前記(a−2)のソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めるように前記表面処理層上に形成された有機半導体層、
を具備した有機半導体素子(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)であって、
前記表面処理層が、ハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする請求項2記載の有機半導体素子。
【請求項23】
(b−1):基板上に形成されたゲート電極、
(b−2):前記(b−1)のゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜、
(b−3):前記(b−2)のゲート絶縁膜上に形成された表面処理層、
(b−4):前記(b−3)の表面処理層上に形成された有機半導体層、
(b−5):前記(b−4)の表面処理層層上に形成されたソース電極及びドレイン電極、
を具備した有機半導体素子(ボトムゲート・トップコンタクト型)であって、
前記表面処理層が、ハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする請求項2記載の有機半導体素子。
【請求項24】
(c−1):基板上に形成されたソース電極及びドレイン電極、
(c−2):前記(c−1)のソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めると共に、それらの上面を覆うように形成された有機半導体層、
(c−3):前記(c−2)の有機半導体層上に形成された表面処理層、
(c−4):前記(c−3)の表面処理層層上に形成されたゲート絶縁膜、
(c−5):前記(c−4)のゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極、
を具備した有機半導体素子(トップゲート・ボトムコンタクト型)であって、
前記表面処理層が、ハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする請求項2記載の有機半導体素子。
【請求項25】
(工程a−1):基板上にゲート電極を形成する工程、
(工程a−2):前記(工程a−1)で形成されたゲート電極上に、ゲート絶縁膜を形成する工程、
(工程a−3):前記(工程a−2)で形成されたゲート絶縁膜の表面に、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を塗布、乾燥して表面処理層を形成する工程、
(工程a−4):前記(工程a−3)で形成されたゲート絶縁膜上に、ソース電極及びドレイン電極を互いに離間して形成する工程、
(工程a−5):前記(工程a−4)で形成されたソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めるように前記ゲート絶縁膜上に有機半導体層を形成する工程、
を含むことを特徴とする請求項22に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法。
【請求項26】
前記(工程a−3)において、ハイパーブランチポリマーを含む溶液をゲート絶縁膜の表面に塗布、乾燥した後、光重合させて表面処理層を形成することを特徴とする請求項25に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法。
【請求項27】
(工程b−1):基板上にゲート電極を形成する工程、
(工程b−2):前記(工程b−1)で形成されたゲート電極上にゲート絶縁膜を形成する工程、
(工程b−3):前記(工程b−2)で形成されたゲート絶縁膜の表面に、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を塗布、乾燥して表面処理層を形成する工程、
(工程b−4):前記(工程b−3)で形成されたゲート絶縁膜上に、有機半導体層を形成する工程、
(工程b−5):前記(工程b−4)で形成された有機半導体層上に、ソース電極及びドレイン電極を互いに離間して形成する工程、
を含むことを特徴とする請求項23に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・トップコンタクト型)の製造方法。
【請求項28】
前記(工程b−3)において、ハイパーブランチポリマーを含む溶液をゲート絶縁膜の表面に塗布、乾燥した後、光重合させて表面処理層を形成することを特徴とする請求項27に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・トップコンタクト型)の製造方法。
【請求項29】
(工程c−1):基板上にソース電極及びドレイン電極を互いに離間して形成する工程、(工程c−2):前記(工程c−1)で形成されたソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めると共に、それらの上面を覆うように前記基板、該ソース電極及び該ドレイン電極上に有機半導体層を形成する工程、
(工程c−3):前記(工程c−2)で形成された有機半導体層の表面に、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を塗布、乾燥して表面処理層を形成する工程、
(工程c−4):前記(工程c−3)で形成された表面処理層上にゲート絶縁膜を形成する工程、
(工程c−5):前記(工程c−4)で形成されたゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程、
を含むことを特徴とする請求項24に記載の有機半導体素子(トップゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法。
【請求項30】
前記(工程c−3)において、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を有機半導体層の表面に塗布、乾燥した後、光重合させて表面処理層を形成することを特徴とする請求項29に記載の有機半導体素子(トップゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法。
【請求項31】
請求項1又は2記載の有機半導体素子が複数配置されたディスプレイパネル。
【請求項1】
基板と、ソース電極と、ドレイン電極と、前記ソース電極と前記ドレイン電極とを連結する有機半導体層と、前記有機半導体層に電界を印加するためのゲート電極と、前記有機半導体層とゲート電極間に配置されるゲート絶縁膜とを備え、前記ゲート絶縁膜がハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする有機半導体素子。
【請求項2】
基板と、ソース電極と、ドレイン電極と、前記ソース電極と前記ドレイン電極とを連結する有機半導体層と、前記有機半導体層に電界を印加するためのゲート電極と、前記有機半導体層とゲート電極間に配置されるゲート絶縁膜と、前記有機半導体層と接するゲート絶縁膜の表面に配置される表面処理層とを備え、前記表面処理層がハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする有機半導体素子。
【請求項3】
前記有機半導体層が、π共役系化合物であることを特徴とする請求項1又は2記載の有機半導体素子。
【請求項4】
前記ハイパーブランチポリマーが、式(1)で表される請求項1又は2記載の有機半導体素子。
【化1】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、A1は式(2)又は式(3):
【化2】
(式中A2はエーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1〜30の直
鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を表し、X1、X2、X3及びX4は、それぞれ、水素
原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。)を表し、nは繰り返し単位構造の数であって2〜100000の整数を表す。)で表される構造を有するハイパーブランチポリマー。
【請求項5】
前記ハイパーブランチポリマーのA1が式(4)で表される請求項4記載の有機半導体素
子。
【化3】
【請求項6】
前記ハイパーブランチポリマーのA1が式(5)で表される請求項4記載の有機半導体素
子。
【化4】
(式中、mは2〜10の整数を表す)
【請求項7】
前記ハイパーブランチポリマーの分子末端が、チオール基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、水素原子もしくは式(6)で表されるジチオカーバメート基であるか、または水素原子と式(6)で表されるジチオカーバメート基との混在状態にある、請求項4に記載の有機半導体素子。
【化5】
(R2及びR3は、それぞれ、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のヒドロキシアルキル基または炭素原子数7〜12のアリールアルキル基を表すか、または、R2
とR3は互いに結合し、窒素原子と共に環を形成していてもよい。)
【請求項8】
前記ハイパーブランチポリマーのゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量が500〜5000000である、請求項4に記載の有機半導体素子。
【請求項9】
前記ゲート絶縁膜が、式(6)で表されるジチオカーバメート基を分子末端に有し、かつ重量平均分子量が500〜200000であるハイパーブランチポリマーより形成されてなるものであることを特徴とする請求項1記載の有機半導体素子。
【請求項10】
前記ゲート絶縁膜が、式(6)で表されるジチオカーバメート基を分子末端に有し、かつ重量平均分子量が500〜200000であるハイパーブランチポリマーを光重合して形成されてなる硬化膜からなることを特徴とする請求項1記載の有機半導体素子。
【請求項11】
前記表面処理層が、式(6)で表されるジチオカーバメート基を分子末端に有し、かつ重量平均分子量が500〜200000であるハイパーブランチポリマーをより形成されてなるものであることを特徴とする請求項2記載の有機半導体素子。
【請求項12】
前記表面処理層が、式(6)で表されるジチオカーバメート基を分子末端に有し、かつ重量平均分子量が500〜200000であるハイパーブランチポリマーを光重合して形成されてなる硬化物からなることを特徴とする請求項2記載の有機半導体素子。
【請求項13】
(a−1):基板上に形成されたゲート電極、
(a−2):前記(a−1)のゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜、
(a−3):前記(a−2)のゲート絶縁膜上に形成されたソース電極及びドレイン電極、
(a−4):前記(a−3)のソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めるように前記ゲート絶縁膜上に形成された有機半導体層、
を具備した有機半導体素子(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)であって、
前記ゲート絶縁膜が、ハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする請求項1記載の有機半導体素子。
【請求項14】
(b−1):基板上に形成されたゲート電極、
(b−2):前記(b−1)のゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜、
(b−3):前記(b−2)のゲート絶縁膜上に形成された有機半導体層、
(b−4):前記(b−3)の有機半導体層上に形成されたソース電極及びドレイン電極、
を具備した有機半導体素子(ボトムゲート・トップコンタクト型)であって、
前記ゲート絶縁膜が、ハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする請求項1記載の有機半導体素子。
【請求項15】
(c−1):基板上に形成されたソース電極及びドレイン電極、
(c−2):前記(c−1)のソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めると共に、それらの上面を覆うように形成された有機半導体層、
(c−3):前記(c−2)の有機半導体層上に形成されたゲート絶縁膜、
(c−4):前記(c−3)のゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極、
を具備した有機半導体素子(トップゲート・ボトムコンタクト型)であって、
前記ゲート絶縁膜が、ハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする請求項1記載の有機半導体素子。
【請求項16】
(工程a−1):基板上にゲート電極を形成する工程、
(工程a−2):前記(工程a−1)で形成されたゲート電極上に、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を塗布、乾燥してゲート絶縁膜を形成する工程、
(工程a−3):前記(工程a−2)で形成されたゲート絶縁膜上に、ソース電極及びドレイン電極を互いに離間して形成する工程、
(工程a−4):前記(工程a−3)で形成されたソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めるように前記ゲート絶縁膜上に有機半導体層を形成する工程、
を含むことを特徴とする請求項13に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法。
【請求項17】
前記(工程a−2)において、ハイパーブランチポリマーを含む溶液をゲート電極上に塗布、乾燥した後、光重合させてゲート絶縁膜を形成することを特徴とする請求項16に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法。
【請求項18】
(工程b−1):基板上にゲート電極を形成する工程、
(工程b−2):前記(工程b−1)で形成されたゲート電極上に、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を塗布、乾燥してゲート絶縁膜を形成する工程、
(工程b−3):前記(工程b−2)で形成されたゲート絶縁膜上に、有機半導体層を形成する工程、
(工程b−4):前記(工程b−3)で形成された有機半導体層上に、ソース電極及びドレイン電極を互いに離間して形成する工程、
を含むことを特徴とする請求項14に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・トップコンタクト型)の製造方法。
【請求項19】
前記(工程b−2)において、ハイパーブランチポリマーを含む溶液をゲート電極上に塗布、乾燥した後、光重合させてゲート絶縁膜を形成することを特徴とする請求項18に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・トップコンタクト型)の製造方法。
【請求項20】
(工程c−1):基板上にソース電極及びドレイン電極を互いに離間して形成する工程、(工程c−2):前記(工程c−1)で形成されたソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めると共に、それらの上面を覆うように前記基板、該ソース電極及び該ドレイン電極上に有機半導体層を形成する工程、
(工程c−3):前記(工程c−2)で形成された有機半導体層上に、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を塗布、乾燥してゲート絶縁膜を形成する工程、
(工程c−4):前記(工程c−3)で形成されたゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程、
を含むことを特徴とする請求項15に記載の有機半導体素子(トップゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法。
【請求項21】
前記(工程c−3)において、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を有機半導体層上に塗布、乾燥した後、光重合させてゲート絶縁膜を形成することを特徴とする請求項20に記載の有機半導体素子(トップゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法。
【請求項22】
(a−1):基板上に形成されたゲート電極、
(a−2):前記(a−1)のゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜、
(a−3):前記(a−2)のゲート絶縁膜上に形成された表面処理層、
(a−4):前記(a−3)の表面処理層上に形成されたソース電極及びドレイン電極、(a−5):前記(a−2)のソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めるように前記表面処理層上に形成された有機半導体層、
を具備した有機半導体素子(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)であって、
前記表面処理層が、ハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする請求項2記載の有機半導体素子。
【請求項23】
(b−1):基板上に形成されたゲート電極、
(b−2):前記(b−1)のゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜、
(b−3):前記(b−2)のゲート絶縁膜上に形成された表面処理層、
(b−4):前記(b−3)の表面処理層上に形成された有機半導体層、
(b−5):前記(b−4)の表面処理層層上に形成されたソース電極及びドレイン電極、
を具備した有機半導体素子(ボトムゲート・トップコンタクト型)であって、
前記表面処理層が、ハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする請求項2記載の有機半導体素子。
【請求項24】
(c−1):基板上に形成されたソース電極及びドレイン電極、
(c−2):前記(c−1)のソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めると共に、それらの上面を覆うように形成された有機半導体層、
(c−3):前記(c−2)の有機半導体層上に形成された表面処理層、
(c−4):前記(c−3)の表面処理層層上に形成されたゲート絶縁膜、
(c−5):前記(c−4)のゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極、
を具備した有機半導体素子(トップゲート・ボトムコンタクト型)であって、
前記表面処理層が、ハイパーブランチポリマーを成分として含有することを特徴とする請求項2記載の有機半導体素子。
【請求項25】
(工程a−1):基板上にゲート電極を形成する工程、
(工程a−2):前記(工程a−1)で形成されたゲート電極上に、ゲート絶縁膜を形成する工程、
(工程a−3):前記(工程a−2)で形成されたゲート絶縁膜の表面に、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を塗布、乾燥して表面処理層を形成する工程、
(工程a−4):前記(工程a−3)で形成されたゲート絶縁膜上に、ソース電極及びドレイン電極を互いに離間して形成する工程、
(工程a−5):前記(工程a−4)で形成されたソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めるように前記ゲート絶縁膜上に有機半導体層を形成する工程、
を含むことを特徴とする請求項22に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法。
【請求項26】
前記(工程a−3)において、ハイパーブランチポリマーを含む溶液をゲート絶縁膜の表面に塗布、乾燥した後、光重合させて表面処理層を形成することを特徴とする請求項25に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法。
【請求項27】
(工程b−1):基板上にゲート電極を形成する工程、
(工程b−2):前記(工程b−1)で形成されたゲート電極上にゲート絶縁膜を形成する工程、
(工程b−3):前記(工程b−2)で形成されたゲート絶縁膜の表面に、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を塗布、乾燥して表面処理層を形成する工程、
(工程b−4):前記(工程b−3)で形成されたゲート絶縁膜上に、有機半導体層を形成する工程、
(工程b−5):前記(工程b−4)で形成された有機半導体層上に、ソース電極及びドレイン電極を互いに離間して形成する工程、
を含むことを特徴とする請求項23に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・トップコンタクト型)の製造方法。
【請求項28】
前記(工程b−3)において、ハイパーブランチポリマーを含む溶液をゲート絶縁膜の表面に塗布、乾燥した後、光重合させて表面処理層を形成することを特徴とする請求項27に記載の有機半導体素子(ボトムゲート・トップコンタクト型)の製造方法。
【請求項29】
(工程c−1):基板上にソース電極及びドレイン電極を互いに離間して形成する工程、(工程c−2):前記(工程c−1)で形成されたソース電極及びドレイン電極の間隔を埋めると共に、それらの上面を覆うように前記基板、該ソース電極及び該ドレイン電極上に有機半導体層を形成する工程、
(工程c−3):前記(工程c−2)で形成された有機半導体層の表面に、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を塗布、乾燥して表面処理層を形成する工程、
(工程c−4):前記(工程c−3)で形成された表面処理層上にゲート絶縁膜を形成する工程、
(工程c−5):前記(工程c−4)で形成されたゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程、
を含むことを特徴とする請求項24に記載の有機半導体素子(トップゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法。
【請求項30】
前記(工程c−3)において、ハイパーブランチポリマーを含む溶液を有機半導体層の表面に塗布、乾燥した後、光重合させて表面処理層を形成することを特徴とする請求項29に記載の有機半導体素子(トップゲート・ボトムコンタクト型)の製造方法。
【請求項31】
請求項1又は2記載の有機半導体素子が複数配置されたディスプレイパネル。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図1】
【図9】
【図10】
【図11】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図1】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−244022(P2008−244022A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80361(P2007−80361)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】
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