説明

板状金属表面自動検査装置

【課題】リードフレームの最終検査における各種の不良項目の検査を、同時かつリアルタイムに高い信頼性の下で行うことが可能な検査装置を提供すること。
【解決手段】板状金属製品の検査装置であって、板状金属製品に照明光を照射する複数種類の照明手段と、板状金属製品を撮像する複数の撮像手段と、板状金属製品を一定速度で一方向へ移動する搬送手段と、搬送手段上に板状金属製品を1枚ずつ供給する供給部と、複数の撮像手段により板状金属製品を撮像して得られた画像データを用いて板状金属製品に存在する不良を検出し良否判定する検査部と、検査部によって良否判定された板状金属製品をその良否により仕分けして排出する排出部と、検査装置全体の動作制御を行う制御部とを備え、各撮像手段が搬送手段と同期を取りつつ各撮像手段の撮像位置に到達した板状金属製品の撮像を行うことを特徴とする板状金属表面検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の撮像手段によって得られる画像データを用いて配線パターン不良、めっき不良、位置ズレ不良、幅不良等を検査する自動検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
板状金属製品の中には部分的にめっきの施されたもの、テーピングが施されたものなどがあり、例えば半導体パッケージの基材であるリードフレームがこれに該当する。以下、このリードフレームを例に挙げて説明することとする。
現在、リードフレームを使用した半導体パッケージは用途拡大により、基材であるリードフレームに対しても厳しい品質保証が要求されている。一般にリードフレームの基材は鉄ニッケル合金(42材)及び銅合金等が用いられ、その製造方法には超精密金型を用いて機械的に金属を打ち抜くスタンピング方法と、化学的に金属を腐食してパターン形成を行なうエッチング方法がある。
【0003】
近年の半導体技術分野におけるパッケージング技術は、半導体装置の高集積、高機能化に伴い狭ピッチ化が進んでおり、これらのパッケージに用いられるリードフレームも多ピン化、狭ピッチ化が進んでいる。また、半導体素子の高速化に伴い、高い電気伝導度を有する金属材料の使用も年々増加している。
【0004】
従来、リードフレームのインナーリードは、ダイパッドの中心を基準として放射線状に広がるようにして延びていくように設計されている。リードフレームを用いた半導体装置は、ICチップがダイパッドに固定され、ICチップの電極パッドとインナーリード先端部のボンディング部とがワイヤボンディング等により電気的に接続される。ICチップが多機能化するにつれ電極パッドの数が増え、また、ICチップの小型化によって、電極パッド間の間隔も狭いものになってきている。それに伴い、電極パッドとの接続が行われるリードフレームのリード部位も多ピン化し、各リードの本数が増え、リード間ピッチ、リード幅も多種多様なものとなっている。
【0005】
パターン形成されたリードフレームは、インナーリード先端部等の所定位置に銀めっきが施される。このめっき部がボンディング部として使用される。
リード間のピッチ、リード幅が狭くなったリードは強度が弱く、僅かな外力によってもリードの変形を生じる。このことから、インナーリード同士及びダイパッドを支える吊りリードとインナーリードとの接触、電気的短絡やインナーリード等の変形を防止するために、保護テープを貼ったリードフレームが製造されるようになった。
そして更にダウンプレス処理後、インナーリード先端をカットする先端カット処理が施されるものもある。
【0006】
図1にリードフレーム10の概要を示す。図1(a)は表面側から観察した時のリードフレーム10を、図1(b)は裏面側から観察した時のリードフレームを示す。エッチング方法などにより製造されたリードフレーム10はダイパッド11、インナーリード12、アウターリード13、ダムバー14、フレーム部15を有し、配線パターンが形成されていない部分を空間部19とする。その後、インナーリード12に半導体素子とボンディング部の接続抵抗を低下させるためめっき16を施す。また、インナーリード同士及びダイパッドを支える吊りリードとインナーリードとの接触、電気的短絡やインナーリード等の変形を防止するために保護テープ17を貼り付ける。保護テープ17は絶縁体であることなどを考慮しポリイミドテープを使用している。さらに、ダウンプレスにより吊りリード18に段差を形成しダイパッド11への半導体素子積載を考慮し、インナーリード12先端の導通を取り除くためのインナーリード先端カットが行なわれ、リードフレームが完成する。
【0007】
以上により、リードフレーム最終検査における不良項目は、パターン不良(オープン系/ショート系/異物等)、リード変形、テープ不良(有無/位置ズレ/幅不良等)、めっき不良(有無/未着/付着/位置ズレ/幅不良等)、ダウンプレス有無等多岐に亘り、自動検査機を活用した製品弁別が欠かせない。しかし、全ての不良を1台の検査機で検査することは難しく、特に最近ではテープやめっきに関する検査要求がさらに高まっており、ICチップとの接続を行なうボンディング部に施される部分めっきの品位は特に重要で、CCDカメラ等でめっき部を撮像し、画像処理を用いてそのめっき状態を検査する方法として、例えば特許文献1が提案されている。
【0008】
特許文献1の技術によって確かに板状金属表面とめっき部とのコントラスト差を得ることはできるが、厳密には三次元的な形状を有した配線パターンの側面テーパー部も含めためっき状態の良し悪しを判断する検査方法が望ましく、かつ金属表面とめっき部とを明瞭にコントラスト分離できると共に、めっき部のみならず金属表面状態の良し悪しも同時に行なえる撮像、検査方法が望ましい。また、板状金属表面やめっき面をミクロ的に観察すると金属材料製法起因の圧延キズや凹凸が存在し、この凹凸による微小な明暗が画像上に生じてしまい画像処理における閾値設定によっては過検出要素となり、安定した自動判定が難しい。
【0009】
そこで、金属表面とめっき部とを明瞭にコントラスト分離できる方法として、撮像角度が0°〜10°で基板の表面を撮像する手段と、非めっき部の金属材料とめっき部のめっき材料との反射強度の差異が最大となる波長域の光源手段と、立体角2πの間接光を照射する照射手段による金属基板表面の検査方法が提案されている。これにより一光学系においてめっき部と非めっき部との同時撮像及び検査が実行可能となり、めっき部と非めっき部との個別撮像及び検査に比べ安価な装置実現が可能となった。
【0010】
しかし、最近めっき部は製造条件の微少な変動などによって表面状態や組成が変化し、金属表面とのコントラスト分離による検査が安定化しないことが極稀に発生することが分かってきた。そこで、我々はめっき製造条件の微少な変動によらず、めっきを施した金属パターン表面の欠陥を高精度に検査するのに好適な撮像方法の検討を更に進めている。そして、リードフレーム最終検査における不良項目は、この他テープ不良、ダウンプレス不良、位置ずれ不良、幅不良等も存在し、やはりこれら全ての検査実行可能な検査装置が求められているのが実状である。
【0011】
【特許文献1】特開2000−171402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたものであり、リードフレーム最終検査における不良項目、パターン不良(オープン系/ショート系/異物等)、リード変形、テープ不良(有無/位置ズレ/幅不良等)、めっき不良(有無/未着/付着/位置ズレ/幅不良等)、ダウンプレス有無の検査を同時に、かつリアルタイムに高い信頼性の下で行うことが可能な検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題を解決するために、請求項1においては、板状金属製品の検査装置であって、
前記板状金属製品に照明光を照射する複数種類の照明手段と、
前記板状金属製品を撮像する複数の撮像手段と、
前記板状金属製品を一定速度で一方向へ移動する搬送手段と、
前記搬送手段上に、前記板状金属製品を1枚ずつ供給する供給部と、
前記複数の撮像手段により板状金属製品を撮像して得られた画像データを用いて、板状金属製品に存在する不良を検出し良否判定する検査部と、
前記検査部によって良否判定された板状金属製品をその良否により仕分けして排出する排出部と、
検査装置全体の動作制御を行う制御部と、を備え、
前記各撮像手段が、前記搬送手段と同期を取りつつ、各撮像手段の撮像位置に到達した板状金属製品の撮像を行うことを特徴とする板状金属表面検査装置としたものである。
【0014】
これにより、各不良項目に最も適した撮像手段により得られた画像データを用いて、各不良検出に特化した画像処理を行うことで、板状金属製品表面を同時に高精度に検査することが可能となる。
【0015】
また本発明の請求項2においては、前記板状金属製品がリードフレームであることを特徴とする請求項1記載の板状金属表面検査装置としたものである。
【0016】
また本発明の請求項3においては、前記板状金属製品を検査結果により良品、不良品、ベリファイ品として仕分けする排出部を有する請求項1記載の板状金属表面検査装置と、
前記ベリファイ品の欠陥座標、欠陥種類、欠陥画像等の欠陥情報を記憶する記憶手段と、
前記ベリファイ品の前記欠陥情報を参照し欠陥のある箇所を詳細に観察する、詳細観察手段と、
前記板状金属表面検査装置および前記記憶手段および前記詳細観察手段を相互に接続し、前記欠陥情報のやり取りを行うネットワーク手段と、
を備えることを特徴とする板状金属表面検査システムとしたものである。
【0017】
これにより、板状金属製品のベリファイ品を目視により効率よく再確認することができ、欠陥が軽微な製品を良品としてより分けることが容易となる。
【0018】
また本発明の請求項4においては、前記板状金属製品がリードフレームであることを特徴とする請求項3記載の板状金属表面検査システムとしたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、上記のように複数の撮像手段によって得られる画像信号データを用いて配線パターン不良、めっき不良、位置ズレ不良、幅不良等を同時に検査する検査装置であり、各不良を適切な画像信号データ及び画像処理を使用して自動検出することができるので、不良検出感度の優れた検査装置の提供を可能としている。この結果、半導体装置の高密度化、高機能化に伴う板状金属製品の微細化や量産化に対応できるものとしている。

【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照してこの発明に係る板状金属表面の検査装置の実施形態を説明する。図2は、請求項1に係る本発明の板状金属表面の検査装置の一実施形態を示す構成概略図である。
【0021】
本発明の板状金属表面検査装置は、板状金属製品(リードフレーム)10を撮像検査部へ供給する供給部20と、板状金属製品10を一定速度で一方向へ移動する搬送手段60と、搬送手段と同期を取り検査位置に到達した板状金属製品の表面状態を撮像する複数の撮像手段30とを有し、複数の撮像手段により板状金属表面を撮像して得られた画像信号データを用いて板状金属表面に存在する各不良部を検出し自動判定する検査部70と、検査部70によって良否判定された板状金属製品10を良否弁別する排出部50と、各ステージ駆動や各種センサ類の制御を行う制御部80とで構成されている。
【0022】
供給部20は、リードフレーム10を間紙、台紙を挟んで収納するマガジンと、リードフレームを真空吸着する吸着パッドと、リードフレーム、間紙、台紙を識別検知するセンサと、マガジン内のリードフレームをピックアップして検査部搬送手段に移載する転送ヘッドと、マガジン内の間紙、台紙を吸着パッドで真空吸着して間紙/台紙回収部に回収する回収ヘッドを備えている。そして、転送ヘッドにてピックアップされたリードフレームは、検査ステージへ移載され、検査ステージに移載されたリードフレームは、イオナイザー及びエアーブロワにて粉塵等を取り除き、撮像、検査動作へ移行する。
【0023】
リードフレームを載せて固定した検査ステージを搬送手段60によって一定速度で一方向へ被撮像領域まで移動させ、この際搬送手段に取り付けた検査ステージの移動量、即ち板状金属製品の移動量を高精度に計測するユニットから単位距離毎の信号を得て、その信号を分周分配し検査部にこの信号を送ることによって、検査ステージの速度変動の影響を受けないように走査撮像を行なう。
【0024】
撮像手段30は、表反射ヘッド31、表透過ヘッド32、裏反射ヘッド33の三式を搭載する。表反射ヘッド31は、リードフレーム表面状態を検査するための画像信号データを得る、表透過ヘッド32は、リードフレーム表面から観察した際の配線パターンと間隙に跨る不良に注力した画像信号データを得る、裏反射ヘッド33はリードフレーム裏面状態を検査するための画像信号データを得るためのものである。
【0025】
表反射ヘッド31及び裏反射ヘッド33の照明手段は、間接光照射するドーム照明を使用する。エッチング法等により形成される配線パターンは、腐食進行の方向性の性質上、その側面テーパー部は曲線的になる。照明手段が同軸落射の場合、配線パターン表面にて光が反射されてしまい、配線パターン間並びに側面テーパー部に生じた欠陥の顕在化精度が落ちてしまう。
【0026】
一方ドーム照明は、被検査対象に対して立体角2πの照射によって、同軸方向を含む多くの角度成分の照射が可能であるため、側面テーパー部に生じた欠陥の顕在化に効果的である。ドーム照明にはドーム内面に光の出射口を形成し被検査対象に対して立体角2πの方向から直接光を照射するタイプと、ドーム内側面に光の出射口を形成しドーム内面で反射させた光を被検査対象に照射するタイプがあるが、同様の効果を生むことをできればどちらのタイプを使用しても構わない。
【0027】
また、少しでもシェーディング影響の軽減化を狙って板状金属製品幅Wに対して2W以上のドーム内径を有し、1回の撮像にて板状金属製品全面撮像を行なわせる。光源は撮像に必要な光量を考慮してメタルハライド光源やハロゲン光源等を選択使用する。
【0028】
また、表反射ヘッド31及び裏反射ヘッド33の撮像手段は、板状金属製品10の搬送方向と直交する所定の位置における板状金属表面10の線状領域を撮影し、板状金属全面の画像信号データを得る。撮像手段の仰角θは、板状金属製品の鉛直方向と光軸とのなす角度を指し、仰角θは好ましくは5°付近を採用する。尚、仰角θを0°としない理由は、撮像時に板状金属表面の圧延キズ等の細かな凹凸を軽減化させ、誤検出、過検出の防止を狙っているからである。そして、間接光照射するドーム照明上部の撮像用開口部は、この仰角θに合わせた所定の位置に開口形成させる必要がある。
【0029】
ところで、カメラはその用途に応じてラインカメラ、エリアカメラ、モノクロ、カラーの選択が可能であり、本例ではラインカメラを使用した場合の形態を示している。また、使用する板状金属材料とめっき材料に応じて反射強度差異が最も大なる波長域400nm以上600nm以下を活用して板状金属材料とめっき材料との光学的分離を図っている。
【0030】
図3(a)はインナーリード12、めっき部16、空間部19の概略を示した模式図で、(b)は(a)図中のL1線上のプロファイルを示したものである。このようにインナーリード12、めっき16、空間部19それぞれにおいて輝度情報の分離がなされ、めっき部、被めっき部との分離が画像上で可能となり、それぞれ独立に画像処理を展開することができる。
【0031】
この実施形態の特徴として、裏面側に表面側と同様の照明手段、撮像手段を持たせている点であり、例えばリードフレームの裏面側にはめっき処理は施されないが、リードフレーム裏面側へのめっき回り込み(付着)が生じる可能性があるため、この不良検査を行なうために同様の照明手段、撮像手段を検査ステージに対して対向させている。尚、裏面側でのめっき検査を実施しない場合には、前記板状金属材料とめっき材料との光学的分離を図る手段の搭載はしなくても良い。また、リードフレームのダウンプレス有無検査は、吊りリード18に生じるツールマークと称するダウンプレス痕を検知することで実行可能であり、このツールマークは裏面側吊りリード表面にも生じているため、ダウンプレス有無検査は、表面反射検査、裏面反射検査どちらで実行しても構わない。
【0032】
表透過ヘッド32の撮像手段は、ハロゲン光源やメタルハライド光源からの光をライン状ライトガイドへ導光させ、ライン状ライトガイドにシリンドリカルレンズや拡散板を具備させ、均一拡散光を板状金属裏面から表面に向けて透過する光を照射させ、透過撮像検査用撮像手段32でその像を得る。
【0033】
検査部70・制御部80では、搬送手段や各種センサ類の制御を行なうと共に板状金属表面を撮影して得られた画像信号データを用いて、板状金属表面に存在する欠陥部を抽出する。図4は、この画像処理・欠陥判定手段に関する全体動作を示したフローチャートである。板状金属製品を一定速度で一方向へ移動する搬送手段と、板状金属製品を一定速度で一方向へ移動する搬送手段と同期を取ることで画像信号を得る。
【0034】
この画像信号データは、制御・画像処理手段に送出され、この画像信号データから金属表面、めっき部の各部情報を抽出する(ステップS2)。更に、抽出された情報を用いて欠陥検出・判定処理が実行される(ステップS3)。この欠陥検出・判定処理は、リードフレームに形成されている全ての配線パターンやめっき、テープ等に対して実行され、この後全体動作は完了する(ステップS4,YES)。
【0035】
実際、表反射ヘッド31、表透過ヘッド32、裏反射ヘッド33で得られる画像信号データに対して、表1に示すように不良振り分け及び適切な処理方法を設定し、欠陥検出・判定処理(ステップS3)を行う。
【0036】
【表1】

【0037】
表反射ヘッド31、表透過ヘッド32、裏反射ヘッド33各々において予め基準となる画像をマスターデータとして保持しておき、このマスターデータに対して各不良を検出するためのパラメータ設定を行うことで、不良検出する。
【0038】
まず、めっき部関連の処理について説明する。マスターデータに対してめっき部のみを抽出する2値化処理を行い、更に必要に応じてこの2値画像に対する膨張収縮処理等を必要回数(段数)分行うことでエッジ部分のがたつきを抑えた後、この画像を新たにめっき用マスターデータとする。そして、このマスターデータと撮像画像との間で予め設定した基準位置を使用した位置補正処理を行った後、めっき部分でのマッチングエリア130を適正に設定した上で分割マッチング処理を行うことで、めっきカス・ブツ、全面めっき無し、めっき不着を検出させる(図5)。
【0039】
次に、めっきエリアズレ検出は次のように行う。マスター画像上の上下左右4方向におけるリードフレームアイランド11中心とめっき端間距離を予め求めておく。この距離を基準値とし、同様の処理を毎回撮像画像に対して行い、得られたアイランド11中心とめっき端間距離とマスター画像の基準値と比較し、ある閾値以上であればめっきエリアズレが生じていると判断している(図6(a))。
【0040】
尚、めっきは必ずインナーリード先端から施されているわけではなく、インナーリード途中に施されているものもある。その場合は、内側めっき端、外側めっき端とアイランド中心間距離を各々の方向において求め、基準値との比較により、めっきエリアズレを検出するようにしている(図6(b))。
【0041】
また、めっき付着は、本来付いてはいけない部位にめっきが付いてしまう不良を指し、この不良を検出するため被めっきエリアに対してめっき2値化レベル以上の輝度値部位が存在するか否かで判断をしている(図7)。
【0042】
次に、被めっき金属部関連の処理について説明する。マスターデータに対して被めっき部のみを抽出する2値化処理を行い、更に必要に応じてこの2値画像に対する膨張収縮処理を必要回数(段数)分行うことでエッジ部分のがたつきを抑えた後、この画像を新たに被めっき金属部用マスターデータとする。そして、このマスターデータと撮像画像との間で予め設定した基準位置を使用した位置補正処理を行った後、金属部分でマッチングエリア130を適正に設定した上で分割マッチング処理を行うことで、カケ・ピット、ショート、突起、オープン、リード間異物、汚れ・変色・キズ、リード変形、打痕を検出させている(図8)。
【0043】
また、インナーリード部のリード幅不良、間隙不良は、予め設定した計測開始線140及び終了線150間を所定の計測ピッチでリードのエッジを求め、リードエッジ間、間隙エッジ間距離の変化量がある閾値以上存在した場合、不良が存在すると判定している。また、先端カットが施されているリードの場合は、基準となるリード先端を予め求めておき、そのリード先端位置が所定の位置(X,Y)以上ずれている場合には、先端位置ズレが生じていると判断させることもできる(図9)。
【0044】
次に、保護テープ17関連の処理について説明する。本来あるべきテープ17の有無を検査する場合についてであるが、まずテープ17の所定位置を跨ぐように、予め計測開始線140と終了線150を設定する。計測開始線140からリードの2値化レベルからリードのエッジを求め、リードのスペース中心線上を計測終了線150に向かって輝度値をスキャンしていく。計測開始線140と終了線間150でテープ部の輝度レベル(黒レベル低階調)が連続的に存在していなければテープ無しと判断している(図10)。
【0045】
次にテープ位置ズレについてであるが、予めアイランド中心を求めておくと共に、テープ17を跨ぐように計測開始線140と終了線150を設定する。計測開始線140からリードの2値化レベルからリードのエッジを求め、リードのスペース中心線上を計測終了線150に向かって輝度値をスキャンしていく。テープの存在がテープ部の輝度レベル(黒レベル低階調)で確認された後、そのテープエッジ間距離からテープ中心を求め、アイランド中心からの距離を基準値として求めておく。同様の処理を毎回撮像画像に対して行い、得られたアイランド中心とテープ中心座標間の距離とマスター画像の基準値と比較し、ある閾値以上であればテープ位置ズレが生じていると判断している(図11)。
【0046】
テープ幅不良は、前述のテープ位置ズレで求めた方法と同様にテープエッジ間距離を予め基準値としてマスター画像上から求めておき、この基準値と毎回撮像画像から得られるテープエッジ間距離とを比較し、ある閾値以上であればテープ幅不良が生じていると判断している(図12)。
【0047】
最後にダウンプレス有無処理について説明する。この処理は、吊りリード18上のツールマーク有無によって判断させている。具体的には、予めアイランド中心を求めておき、吊りリード上のツールマーク部に計測線を設定し、この計測線内にツールマークの輝度レベル(黒レベル低階調)が連続的に存在しているか否かをスキャンし、黒レベルが連続的に存在していなければダウンプレス無しと判断している(図13)。
【0048】
以上で説明した、めっきの幅や位置の不良、およびテープの幅や位置の不良、およびダウンプレス有無に関する各計測処理は、上下、左右、斜めの各方向について実行している。
【0049】
このように各撮像手段によって得られた画像信号データを使用して検査部によって良否判定された板状金属製品は、排出部50によって良否弁別される。排出部は、良品、不良品、ベリファイ品に弁別する。ベリファイ品とは、不良検出されたが、その不良サイズ及び検出部輝度変動が不良品として判断し難いものを指す。所謂救済可能品を含むものと考えられる。
【0050】
排出部50は、良否判定されたリードフレームを間紙、台紙を挟んで収納する良品、不良品、ベリファイ品マガジン、間紙及び台紙が収納されたマガジンとリードフレームを真空吸着する吸着パッドと、リードフレーム、間紙、台紙を識別検知するセンサと、検査ステージからリードフレームをピックアップしてマガジンに移載する転送ヘッドと、間紙及び台紙収納マガジンから吸着パッドで真空吸着して間紙/台紙をマガジンへ移載する転送ヘッドを備えている。
【0051】
以上の動作により、1台の検査装置によってパターン不良(オープン系/ショート系/異物等)、リード変形、テープ不良(有無/位置ズレ/幅不良等)、めっき不良(有無/未着/付着/位置ズレ/幅不良等)、ダウンプレス有無の検査を同時に、かつリアルタイムに高い信頼性の下で行っている。
【0052】
さらに、ベリファイ品として判定されたワークにおいて検出された欠陥座標、欠陥種類、欠陥画像等の欠陥情報を自動検査中にデータ化し、このデータをハブ90を介してネットワーク上データサーバー100へ保存し、同データをベリファイ装置120で参照表示することによって顕微鏡110によるベリファイ作業に利用している。尚、必ずしも検査装置とベリファイ装置は1:1である必要はなく、ネットワーク上のデータサーバーを使用してベリファイデータを保存しているため、n:nの利用が可能である。

【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】(a)リードフレーム表面の形状を示す模式図 (b)リードフレーム裏面の形状を示す模式図
【図2】本発明に係る第1の実施形態の検査装置要部構成を示す概略構成図
【図3】(a)インナーリードめっき付近の状態説明図 (b)(a)のL1線上のラインプロファイルを示す説明図
【図4】欠陥検査装置の全体概略動作を示すフローチャート
【図5】めっきマッチング概要説明図
【図6】(a)リード先端めっき時のめっきズレ計測概要説明図 (b)リード中間めっき時のめっきズレ計測概要説明図
【図7】めっきラベリング概要説明図
【図8】被めっき部分割マッチング概要説明図
【図9】リード計測概要説明図
【図10】テープ計測処理(テープ無し)概要説明図
【図11】テープ計測処理(テープ位置ズレ)概要説明図
【図12】テープ計測処理(テープ幅不良)概要説明図
【図13】ダウンプレス計測処理(ダウンプレス無し)概要説明図
【符号の説明】
【0054】
10・・・板状金属製品(リードフレーム)
11・・・アイランド又はダイパット
12・・・インナーリード
13・・・アウターリード
14・・・ダムバー
15・・・フレーム部
16・・・めっき
17・・・保護テープ
18・・・吊りリード
19・・・空間部
20・・・供給部
30・・・撮像手段
31・・・撮像手段:表反射ヘッド
32・・・撮像手段:表透過ヘッド
33・・・撮像手段:裏反射ヘッド
40・・・イオナイザーおよびブロワー
50・・・排出部
60・・・搬送手段
70・・・検査部
80・・・制御部
90・・・ハブ
100・・・データサーバー
110・・・(実体)顕微鏡
120・・・ベリファイ装置
130・・・分割マッチングエリア
140・・・計測開始線
150・・・計測終了線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状金属製品の検査装置であって、
前記板状金属製品に照明光を照射する複数種類の照明手段と、
前記板状金属製品を撮像する複数の撮像手段と、
前記板状金属製品を一定速度で一方向へ移動する搬送手段と、
前記搬送手段上に、前記板状金属製品を1枚ずつ供給する供給部と、
前記複数の撮像手段により板状金属製品を撮像して得られた画像データを用いて、板状金属製品に存在する不良を検出し良否判定する検査部と、
前記検査部によって良否判定された板状金属製品をその良否により仕分けして排出する排出部と、
検査装置全体の動作制御を行う制御部と、を備え、
前記各撮像手段が、前記搬送手段と同期を取りつつ、各撮像手段の撮像位置に到達した板状金属製品の撮像を行うことを特徴とする板状金属表面検査装置。
【請求項2】
前記板状金属製品がリードフレームであることを特徴とする請求項1記載の板状金属表面検査装置。
【請求項3】
前記板状金属製品を検査結果により良品、不良品、ベリファイ品として仕分けする排出部を有する請求項1記載の板状金属表面検査装置と、
前記ベリファイ品の欠陥座標、欠陥種類、欠陥画像等の欠陥情報を記憶する記憶手段と、
前記ベリファイ品の前記欠陥情報を参照し欠陥のある箇所を詳細に観察する、詳細観察手段と、
前記板状金属表面検査装置および前記記憶手段および前記詳細観察手段を相互に接続し、前記欠陥情報のやり取りを行うネットワーク手段と、
を備えることを特徴とする板状金属表面検査システム。
【請求項4】
前記板状金属製品がリードフレームであることを特徴とする請求項3記載の板状金属表面検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−8596(P2009−8596A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172000(P2007−172000)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】