説明

核酸分析方法、核酸分析装置および核酸分析用カートリッジ

【課題】血液等の試料から採取から核酸の分析までを人手を介さずに処理できる方法およびカートリッジを提供すること。
【解決手段】予め定められた手順に従って、核酸を含む試料を採取し、遠心力により試料、洗浄液および試薬を夫々独立した容器から流路を移動させて、反応物を核酸捕捉材に捕捉させ、必要な核酸反応を行わせその溶離物を検出する核酸分析方法であって、上記試料を収容する試料容器部を陰圧に保ち、その陰圧を利用して試料採取を行うことを特徴とする核酸分析方法。本発明は、更に、本発明は、上記方法に用いるのに適した核酸分析用カートリッジおよび核酸分析装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸分析方法、核酸分析装置および核酸分析用カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野で行われている感染症の遺伝子検査では、血液等の生体試料から核酸を精製し、精製した核酸を増幅させた後に蛍光等で測定することにより、DNAやRNAを検出するのが一般的である。
【0003】
特許文献1には、遺伝子検査を一貫して行うための一体型カートリッジおよび分析装置が開示されており、この装置によれば、試料から核酸を精製し、増幅試薬と混合し、増幅後に検出するまでを人手を介することなく行うことが可能である。従って、これまでの核酸分析に伴った煩雑さや、増幅後の核酸のコンタミネーションによる偽陽性の問題を回避することができる。この装置は、一体型カートリッジ内部に溶解液や洗浄液や溶離液等の試薬、及び核酸を捕捉する捕捉構成部材を備えている。核酸を含む試料をカートリッジ内部に注入した後、前記試料と溶離液を混合させて前記捕捉構成部品に通過させ、更に捕捉構成部品に洗浄液を通過させ、捕捉構成部品に溶離液を通過させる。そして、捕捉構成部品を通過した後の溶離液を増幅試薬に接触させ反応チャンバへと流すものである。
【0004】
【特許文献1】特開2004−212050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の核酸分析・検査方法では、血液等の試料の注入は人手により行うことになっている。例えば血液の場合、真空採血管に採取された血液をピペットで所定量吸い上げ、カートリッジの試料容器に注入することになる。従って、作業が煩雑であるばかりか、対象とする血液がHIVやC型肝炎などのウィルスに汚染されている場合には作業者が感染の危険に曝されることになる。この感染の危険は、操作ミスによる血液の付着のみならず、採血管の開封やカートリッジ注入後のキャップなどの操作自体に潜んでいる構造的な危険である。従って、感染リスクを無くすことは難しく、従来は作業場所を安全キャビネット内に限定する、作業者が手袋やマスク・眼鏡をする、などの対処によって感染リスクを下げるような努力をしてきた。本発明の課題は、作業者が生体試料に接することなく簡便に試料を採取する方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、試料容器を備えたカートリッジを陰圧とし、血液等の試料を採取する際には、検体とこの陰圧の試料容器とを連結するだけで、作業者が試料に一切触れることなく採取できるように構成したものである。本発明は、このような機能を利用した核酸分析方法、核酸分析装置および核酸分析装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、試薬を注入する作業による作業者の感染のリスクが無くなると同時に、作業が試料の採取作業が簡便になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明によれば、予め定められた手順に従って、遠心力により核酸試料、洗浄液および試薬を夫々独立した容器から流路を移動させて、必要な核酸反応を行わせ、反応物を核酸捕捉材に捕捉させ、その溶離物を検出する核酸分析方法である。そして、上記核酸試料を収容する試料容器部を陰圧に保ち、その陰圧を利用して試料採取を行うことを特徴とする核酸分析方法が提供される。
【0009】
以上の実施形態によれば、採血管等で採取した試料を人手によってカートリッジに注入する必要がなく、試薬を注入する作業による作業者の感染のリスクが無くなると同時に、作業が簡便になる。カートリッジに設けた陰圧の試料容器20は、穿刺可能なシリコーンゴム等の弾性体からなるキャップ1(試料注入口)を持っている。
【0010】
試料注入の際には通常の真空採血管と同様に、適当な長さを持つチューブとキャップ1の穿刺用の針を持つ注射針等を用意し、血管に穿刺した後、もう一方の針をカートリッジのキャップ1に刺す。カートリッジの試料容器が陰圧になっているために、血液は、試料提供者から直接試料容器に流入し、これは試料容器が常圧になるまで続く。試料注入後は弾性体に刺した針を引き抜くだけで、シリコーンゴムの復元性により試料容器は密閉された状態に戻る。また、採血を生化学検査等の諸検査用の採血と同時に行えば、試料提供者への穿刺を一度で済ませることが可能であり、提供者の身体的負担や採血者の負担、およびコストを減少させることができる。
【0011】
上記核酸分析方法において、試料容器部から試料を送液する流路にシリコーンゴムなどの、試料や試薬類に不活性な弾性体を充填して気密性を保つことが好ましい。また、試料を送液する流路に充填した弾性体の周囲をミネラルオイルなどの粘調な液体で封止することが好ましい。更に、上記核酸分析方法において、気密性を保つために試料を送液する流路に充填した弾性体の周囲を多糖類などの水溶性物質などの封止材で封止することが好ましい。上記封止材はいずれも試料や試薬等に対し不活性で、分析結果に影響を与えないものを選択する。上記弾性体の形状や機能については後述する。
【0012】
本発明は、核酸を含む試料を収容する試料容器部と、核酸を捕捉する物質を収容し核酸反応させる核酸捕捉部と、該核酸捕捉部に供給する試薬および洗浄液を収容する複数の試薬容器部と、反応後の廃液を保持する廃液容器部および反応によって生産される物質を検出する検出部を気密に収容するカートリッジを提供するものである。上記試料容器、核酸捕捉部、試薬容器部および廃液容器部が必要なときに相互に連通することができるように配管が形成され、カートリッジが遠心力下にあるとき、上記核酸捕捉部は上記廃液容器部に次いで遠心力の中心より最も遠い位置に形成され、上記試料容器部は遠心力の中心から最も近い位置に形成され、かつ陰圧になっている。該試料容器部には通常は閉じている試料供給口が設けられている。
【0013】
上記カートリッジにおいて、核酸を捕捉する物質と、その捕捉物質上に送液する各種洗浄液を充填する複数の試薬容器と、廃液を保持する容器および検出部が一体化されていることが好ましい。また、試料が通過する流路が試料容器部から見て(すなわち試料容器部の下流方向)、送液方向に対して次第に広くなっていることが好ましい。更に、試料を送液する流路に弾性体を充填して試料容器部の首部の気密性を保つことが好ましい。更に試料用基部と試料を送液する流路に充填した弾性体の周囲をオイルで封止するが好ましい。更に、気密性を保つために試料を送液する流路に充填した弾性体の周囲を多糖類などの水溶性物質で封止することが好ましい。
【0014】
本発明による核酸分析装置は、少なくとも試料、試薬および核酸捕捉材を気密に収容する複数のカートリッジを搭載して回転するディスクと、該ディスクを回転する動力と、上記カートリッジの所定個所に穿孔してカートリッジの回転による遠心力を利用して上記試料および試薬の移動をさせる穿孔機などの連通手段と、上記カートリッジ内で核酸反応により得られた生産物を検出する検出器を備えている。そして、上記カートリッジは、核酸を含む試料を収容する試料容器部と、核酸を捕捉する物質を収容し核酸反応させる核酸捕捉部と、該核酸捕捉部に供給する試薬および洗浄液を収容する複数の試薬容器部と、反応後の廃液を保持する廃液容器部および反応によって生産される物質を検出する検出部を気密に収容するものである。上記試料容器、核酸捕捉部、試薬容器部および廃液容器部が必要なときに連通することができるように配管が形成され、カートリッジが遠心力下にあるとき、上記核酸捕捉部は上記廃液容器部に次いで遠心力の中心より最も遠い位置に形成され、上記試料容器部は遠心力の中心から最も近い位置に形成され、かつ陰圧になっていて、該試料容器部に通常は閉じている試料供給口が設けられていることを特徴とする核酸分析装置を提供するものである。本明細書において、上記遠心力の中心とは、ディスクの回転中心と同じ意味で使用される。
【0015】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は核酸分析装置の全体構成図であり、図2はカートリッジを上から見た上面図である。核酸分析装置11は、モーター17により回転可能に支持された保持ディスク14と、保持ディスク上に最大6個まで設置されたカートリッジ13と、液体の流動を制御するための穿孔機15と、位置決め及びシグナル検出、温度制御のための光学装置16を備えている。保持ディスクには、光学装置用の検出窓18が備わっている。また、カートリッジ13に貼り付ける封止用フィルム13’には穿孔用孔に相当する位置に複数の穿孔マーク19が設けられる。穿孔マーク19はカートリッジの試料容器、試薬容器あるいは洗浄液容器などに対応した位置に設けられる。
【0017】
図2はカートリッジ13の構成図であり、図3(a)はカートリッジの試料注入口から見た正面図、図3(b)はカートリッジの平面図である。カートリッジは樹脂加工品であり、試料容器20と試薬容器21、22、23、24、32、核酸捕捉部25、流路26、廃液保持部27、検出部28などから構成されている。詳細は後述する。このカートリッジ上面にフィルム13’を溶着することによりカートリッジ内の各種容器と流路を密閉する。
【0018】
フィルム13’はカートリッジと同素材または溶着可能な素材であり、溶着方法は熱または溶剤が適用可能である。
【0019】
図4Aおよび図4Bは図3(b)のカートリッジにおける、本発明に係わる試料容器20の近傍の構成図であり、図4A(a)は図3(b)の試料容器部20の平面図、図4A(b)は断面図である。試料容器20からの流路は試料や試薬に不活性なシリコーンゴムのような弾性体4で封止されている。この弾性体は試料充填フィルム13’にて固定されているが、試料充填フィルムは、気密性を保つためにカートリッジの一体型容器と同素材のものが好ましく、熱・溶剤などによる溶着または接着剤により接着される。
【0020】
弾性体4は試料容器が陰圧に保たれているときは、その陰圧により、試料容器の首部にしっかりと固定され、試料容器の気密性を保つ。
【0021】
試料充填フィルムの溶着、または試料注入口を溶着または接着する時のいずれかは陰圧条件下で行い、試料充填部が陰圧となるよう設定する。これにより、陰圧時には遠心力方向下流側から上流側への力がかかるため、気密性が保たれる。一方、送液のために回転を始めると、上流側から下流側に力がかかり、弾性体4は流路側へ外れやすくなる。試料液そのものの重みも加わることから、より弾性体4は外れやすいことがわかる。さらに、カートリッジはコストの面からプラスチックの成型品が使用されるが、弾性体4を利用することにより成型によるカートリッジの微妙な歪みを吸収することが可能になり、より気密性を確保しやすくなる。この実施例で用いた弾性体4は状面が楔形で、流路は一様な幅を持っている。
【0022】
また、シリコーンゴム封止前にシリコーンゴムまたは流路にミネラルオイル等の油性の物質を塗布することは、気密性の点から効果的である。ここで用いる油性の物質は、ミネラルオイル等の分子生物学の分野で用いられた実績のあるものが望ましい。付着した油性の物質は試料と混合され、最終的には核酸捕捉部や検出部に留まる可能性があるが、ミネラルオイルであれば精製後の核酸の増幅を阻害することがないからである。
【0023】
油性の物質だけでなく、多糖類のような水溶性の物質を弾性体の周囲に塗布することも可能である。この場合、水溶性の物質は水性の試料に触れて溶解し、粘性を持った液体となる。この液体が、油性物質(粘性液体)と同様に遠心力が弾性体4を押出すのを助ける。水溶性の物質は、洗浄液を通液することにより洗い流され、残留の可能性は低くなるため、核酸の精製や増幅を阻害する可能性は少ない。そのため、水溶性の物質であれば特に規定はないが、多糖類のように粒子が細かいものをスプレー法などで均一に塗布したものなどが、気密性の面からも好ましい。
【0024】
試料注入口1は採血針に付随した穿孔用の針で穿孔可能な素材で一部または全部が構成されており、この素材は試料注入後、元の状態に戻り穿孔穴を塞ぐような材質であることが好ましい。一般に使用されている真空採血管と同様の仕様にすることが最も好ましく、これにより採血作業を共通して行うことが可能になる。これは、採血に要する試料提供者の血管への穿刺が1回で済むこととなり、提供者の負担軽減や試料採取コストの低下の面でも重要である。試料容器には血液凝固剤を予め封入しておくこともあるが、この場合、核酸の精製や増幅を阻害しないような材料を選ぶ必要がある。
【0025】
試料注入口は遠心平面にはなく、遠心力方向に対して垂直となるよう配置されている。このことにより、送液のための遠心操作中に試料がキャップに触れることがなくなり、感染性の液体が飛散する危険性を回避できる。
【0026】
図4B(a)、(b)示す試料容器部近傍の構成は、図4Aと異なり、流路26が送液方向に広がっており、そのため弾性体5は、試料容器が陰圧の場合に、試料容器の首部において留まることができる。弾性体5の断面形状は、流路の下流方向に一様であり、流路形状によって、弾性体(栓)5が試料容器部が陰圧の場合にその首部に固定される。
【0027】
このカートリッジを用いて、試料中の核酸の精製から増幅、蛍光検出を行った。本発明の核酸分析方法の概略を図5に示した。
【0028】
以下、特許文献1に従い、全血を試料として用いた場合のウィルス核酸の抽出及び分析動作を説明する。血液から核酸の抽出および分析操作を図5に示す。全決採取にあたっては、本発明のカートリッジにキャップ1と検体を採血管で結ぶことにより、安全かつ簡便に採血される。なお、ここでは流路構造と穿孔によって送液を制御するカートリッジを用いたが、ワックス弁を熱で融解させて送液するような捨てバルブ機能を持ったカートリッジでもよい。また、その他の微細弁やサイフォン、キャピラリー力などによる多段階の液体プロセスによる送液制御カートリッジでも同様に適用することができる。
【0029】
操作者は検査対象者に採血用の針を穿刺し、採血管用の針をカートリッジの試料注入口に刺す。これにより、検査対象者の血液はカートリッジの試料容器が正圧になるまで試料容器に流入することになる。試薬容器32に溶解液、22に第一洗浄液、23に第二洗浄液、21に溶離液、24に増幅試薬を注入し、保持ディスクにカートリッジを装着する。試薬の充填はカートリッジの上面フィルムに穿刺することにより行うが、穿刺後は気密性を保つようシールして置かなければならない。
【0030】
カートリッジ装着後、保持ディスクを回転させる。試料容器に注入された全血は、保持ディスクの回転により発生する遠心力の作用で外周側に流動する。全血はこの遠心操作により血球と血清に分離され、血清は血清容器29、血球は血球貯留容器33に移動する。試料容器の陰圧を保つために用いられた弾性体4または5はこの分画操作により血球貯留容器に移動することになり、以後の操作を妨げることは無い。
【0031】
所定の時間回転させ血清分離動作が終了するとカートリッジは停止し、血清容器内の血清の一部が表面張力により毛細管流動し流路に流出する。試薬容器32には血清中のウィルスの膜蛋白を溶解するための溶解液が分注してある。穿孔機により試薬容器32上面に通気孔を作り、モーターを回転させると遠心力の作用により溶解液は混合部34に流れ込む。また、同時に血清容器内の血清も混合部へ流出し、混合部内で溶解液と血清が混合される。
【0032】
血清と溶解液の混合液は、更なる遠心操作により核酸捕捉部25へ流れ込む。核酸捕捉部にはガラスフィルタ等の遺伝子を吸着するような部材が含まれており、混合液中の核酸は核酸捕捉部に吸着された後、廃液保持部27へと流れ込む。
【0033】
次にモーターを停止し、穿孔機で第一洗浄液の充填された試薬容器22を含む流路に空気を供給するため、穿孔機により試薬容器22上部に通気孔を開ける。再びモーター11を回転させると、遠心力の作用により第一洗浄液は試薬容器22より遺伝子抽出部に流れ込み、遺伝子抽出部に付着した蛋白等の不要成分を洗浄する。第一洗浄液としては、たとえば上述の溶解液或いは溶解液の塩濃度を低減した液を使用すればよい。
【0034】
一旦モーターを停止後、穿孔機で試薬容器23に空気を供給するための通気孔を作り、再びモーターを回転させると、遠心力の作用により試薬容器23中の第二洗浄液は核酸捕捉部に流れ込み、核酸捕捉部部材に付着した第一洗浄液を洗浄する。このように遺伝子抽出部を洗浄し核酸のみが吸着している状態にした後、核酸の溶離工程に移行する。
【0035】
モーター停止の状態で、穿孔機で溶離液容器21に空気を供給するための通気孔をあける。再びモーターを回転させ、遺伝子抽出部に溶離液を流す。溶離液は、核酸を核酸捕捉部材から溶離する液で、水或いはpHを7から9に調整した水溶液を用いればよい。特に溶離しやすくするため、40℃以上に加温することが望ましい。
【0036】
溶離液は核酸捕捉部を通過後、溶離液流路を経て検出容器28に流れ込む。溶離液は微量であるため、廃液部まで流出せず、検出部中に留め置くことができる。同様の操作により増幅液24も検出部に送液する。溶離液と増幅液は検出部で混合され、適温に加温されることにより当該遺伝子が増幅され、蛍光等の光学的検出が可能になる。
【0037】
検出のために保持ディスクは、全血或いは各試薬の流動終了後回転数を低下させ、位置決め用の低速回転を維持する。位置センサが位置決めを行いつつ保持ディスクを低速で回転し、次のカートリッジの位置、すなわちカートリッジが6枚装着されている場合は60度回転して停止し、光学検出を行う。この操作を増幅終了まで行うことにより、検出部の核酸の有無、すなわち被験者の感染症の有無を調べることができる。
【実施例2】
【0038】
実施例1では図4A(a)、(b)のように流路に対して角度のついた弾性体4を用いることにより試薬容器の気密性を保持したが、図4B(a)、(b)のように角度をもたない弾性体5を用意し、流路に角度をつけることにより気密性を確保しても良い。実施例1と同様に、この弾性体5の周囲をミネラルオイル等の潤滑作用のある液体で覆ってもよいし、多糖類のような水溶性の物質でコーティングしてもよい。この実施例の場合、流路断面が試料容器から遠ざかるに従って広がる形状を有しており、弾性体は試料容器の入口で密に固定されることになる。
【実施例3】
【0039】
実施例1では試薬容器を予め陰圧に保ち、試料が自動的に注入されるような構成としたが、試薬注入口に採血用の針を穿刺した後に、試薬注入口の異なる位置にシリンジに接続した針を穿刺し、シリンジにより吸引することにより採血を行っても良い。その場合の試料容器は、実施例1や実施例2と同様な構造により気密性を保持すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明が適用される核酸分析装置の全体構成を示す一部断面斜視図。
【図2】本発明の実施例によるカートリッジの構成を示す分解斜視図。
【図3】本発明の実施例によるカートリッジの一体型試料容器の構成を示す正面図および平面図。
【図4A】本発明の実施例による試料容器の構成を示す平面図および断面図。
【図4B】本発明の他の実施例による試料容器の構成を示す平面図および断面図。
【図5】本発明の核酸分析法における抽出および分析操作を示すフロー図。
【符号の説明】
【0041】
1…試料注入口、2…弾性体、4…試料充填フィルム、11…核酸分析装置、13…カートリッジ、14…保持ディスク、15…穿孔機、16…光学装置、17…モーター、18…検出窓、19…穿孔マーク、20…試料容器、21、22、23、24、32…試薬容器、25…核酸捕捉部、26…流路、27…廃液保持部、28…検出部、29…血清容器、33…血球貯留容器、34…混合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた手順に従って、核酸を含む試料を採取し、遠心力により試料、洗浄液および試薬を夫々独立した容器から流路を移動させて、反応物を核酸捕捉材に捕捉させ、必要な核酸反応を行わせ、その溶離物を検出する核酸分析方法であって、上記試料を収容する試料容器部を陰圧に保ち、その陰圧を利用して試料採取を行うことを特徴とする核酸分析方法。
【請求項2】
試料容器から試料を送液する流路に弾性体を充填して試料容器の気密性を保つことを特徴とする請求項1記載の核酸分析方法。
【請求項3】
上記弾性体の周囲を粘性液体で封止するしたことを特徴とする請求項2記載の核酸分析方法。
【請求項4】
上記弾性体の周囲を水溶性物質で封止したことを特徴とする請求項2記載の核酸分析方法。
【請求項5】
核酸を含む試料を収容する試料容器部と、核酸を捕捉する物質を収容し核酸反応させる核酸捕捉部と、該核酸捕捉部に供給する試薬および洗浄液を収容する複数の試薬容器部と、反応後の廃液を保持する廃液容器部および反応によって生産される物質を検出する検出部を気密に収容するカートリッジであって、上記試料容器、核酸捕捉部、試薬容器部および廃液容器部が必要なときに連通することができるように配管が形成され、カートリッジが遠心力下にあるとき、上記核酸捕捉部は上記廃液容器部に次いで遠心力の中心より最も遠い位置に形成され、上記試料容器部は遠心力の中心から他の容器よりも近い位置に形成され、かつ陰圧に保たれていて、該試料容器部に通常は閉じている試料供給口が設けられていることを特徴とする核酸分析用カートリッジ。
【請求項6】
核酸を捕捉する物質と、その捕捉物質上に送液する各種洗浄液を充填する複数の試薬容器と、廃液を保持する容器および検出部が一体化されていることを特徴とする請求項5記載の核酸分析用カートリッジ。
【請求項7】
試料容器部から試料が通過する流路が送液方向に対して試料容器部の首部よりも広くなっていることを特徴とする請求項5記載の核酸分析用カートリッジ。
【請求項8】
上記弾性体を試料容器部の首部に充填して試料容器部の気密性を保ったことを特徴とする請求項5記載の核酸分析用カートリッジ。
【請求項9】
上記弾性体の周囲を粘性液体で封止したことを特徴とする請求項8記載の核酸分析用カートリッジ。
【請求項10】
上記弾性体の周囲を水溶性物質で封止したことを特徴とする請求項8記載の核酸分析用カートリッジ。
【請求項11】
少なくとも試料、試薬および核酸捕捉材を気密に収容する複数のカートリッジを搭載して回転するディスクと、該ディスクを回転する動力と、上記カートリッジの所定個所に穿孔してカートリッジの回転による遠心力を利用して上記試料および試薬の移動をさせる手段と、上記カートリッジ内で核酸反応により得られた生成物を検出する検出器を備え、上記カートリッジは、核酸を含む試料を収容する試料容器部と、核酸を捕捉する物質を収容し核酸反応させる核酸捕捉部と、該核酸捕捉部に供給する試薬および洗浄液を収容する複数の試薬容器部と、反応後の廃液を保持する廃液容器部および反応によって生成される物質を検出する検出部を気密に収容するカートリッジであって、上記試料容器、核酸捕捉部、試薬容器部および廃液容器部が必要なときに連通することができるように配管が形成され、カートリッジが遠心力下にあるとき、上記核酸捕捉部は上記廃液容器部に次いで遠心力の中心より最も遠い位置に形成され、上記試料容器部は遠心力の中心から最も近い位置に形成され、かつ陰圧になっていて、該試料容器部に通常は閉じている試料供給口が設けられていることを特徴とする核酸分析装置。
【請求項12】
核酸を捕捉する物質と、その捕捉物質上に送液する各種洗浄液を充填する複数の試薬容器と、廃液を保持する容器および検出部が一体化されていることを特徴とする請求項11記載の核酸分析装置。
【請求項13】
試料容器部に連通していて、試料が通過する流路が送液方向に対して試料容器部の首部よりも広くなっていることを特徴とする請求項11記載の核酸分析装置。
【請求項14】
試料を送液する流路に弾性体を充填して試料容器部の気密性を保ったことを特徴とする請求項11記載の核酸分析装置。
【請求項15】
上記弾性体の周囲を粘性液体で封止するしたことを特徴とする請求項14記載の核酸分析装置。
【請求項16】
上記弾性体の周囲を水溶性物質で封止したことを特徴とする請求項14記載の核酸分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−308428(P2006−308428A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−131617(P2005−131617)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】