説明

検査装置及び方法

【課題】
故障検出の分解能を高める装置と方法の提供。
【解決手段】
検査対象のサンプル101の予め定められた検出箇所に関連付けされた所定範囲の領域に対して加熱用のレーザビームを掃引し、サンプルの検出箇所に検出用レーザをあて検出用レーザの反射光から、熱反射情報又は赤外線の強度を検出する検出器110を備え、検出箇所からの検出結果に基づき、所定範囲の領域の熱分布情報を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置と方法に関し、特に、半導体装置の相互配線の欠陥等の検出に用いて好適な装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の内部相互配線の欠陥をレーザビームを用いて検査する方法として、例えばポンプレーザと呼ばれる強度変化のある加熱用のレーザをサンプルに照射し、その結果、サンプルに生じた反射率の変化をプローブレーザの反射率の変化として検出する手法が知られている。この従来の手法について、図5を参照して説明しておく。図5は、非特許文献1の記載内容に基づく図面であり、特許文献1、2に従来技術として説明されているものである。図5において、第1ハーフミラー205は、ポンプレーザ発生部204からの加熱用レーザ(予め定められた周波数ωで強度変調されている)を、顕微鏡光学系(対物レンズ)207の光軸に一致して通過させるよう作用し、プローブレーザ(検出用レーザ)発生部203からの検出用レーザ(強度は一定)を、顕微鏡光学系207の光軸に一致して反射させるように作用する。第1ハーフミラー205を通過した加熱用レーザと第1ハーフミラー205で反射された検出用レーザは、顕微鏡光学系(対物レンズ)207を介して、サンプル201の上に集光される。検出用レーザは、強度変調された加熱用レーザと同一のスポットに集光され、加熱用レーザによって誘起されたサンプルの反射率の変化(温度変化により反射率が変化する)が検出用レーザの反射光に基づき測定される。すなわち、サンプル201からの検出用レーザの反射光は、加熱用レーザと同一周波数のAC(交流)成分を有し、第1ハーフミラー205及び第2ハーフミラー206を介して、サーマルウエーブシグナル(熱波信号)検出器208で検出される。サーマルウエーブシグナル検出器208で検出された反射光のAC成分ΔR(周波数ω)とDC成分Rとの比ΔR/Rをサーマルウエーブシグナルという(非特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献3には、半導体集積回路チップの内部相互配線に電流を流した状態でレーザビームを照射し内部相互配線に流れる電流の変化を検知することで、内部相互配線の欠陥を検出する装置において、チップに照射するレーザビームによって電子・正孔対が励起しない波長範囲を選択するようにした検査装置が開示されている。
【0004】
非特許文献2には、金属配線構造におけるラインとビアのボイドを特徴付ける手法として、ライン又はビアチェインのような構造体(レーザスポットサイズよりも小さい)に集光されたレーザビームをあて焦点からの熱伝導(したがってスポット下の温度)がラインとビアの密度の関数であり、レーザの反射を用いて温度を測定し、ビア又はライン(配線)の接続を直接かつ非破壊的に測定する手法が記載されている。
【0005】
サンプルを、電流加熱、加熱物体の接触による加熱、電子ビーム、レーザビーム(パルス)の照射等によって、周期的に加熱し、サンプルから発生される赤外線を高感度エリアセンサで検出することで、断線箇所を検出するシステム等では、加熱する箇所(スポット)を変更した場合、再び、高感度エリアセンサで撮像し、欠陥箇所を絞りこんでいく。しかしながら、赤外線の波長が長いため空間分解能が低い。
【0006】
図6(A)に示すように、配線に断線がない場合、加熱用レーザビームを熱印加点に照射し、赤外線エリアカメラにて赤外線の発光を検出し、検出された赤外線の強度を輝度(階調)に対応させて表示装置に画像表示すると、例えば図6(B)に示すように、該熱印加点に近い領域で輝度が高く、遠い部分で輝度が低くなる像が得られる。
【0007】
一方、図7(A)に示すように、配線に断線がある場合、赤外線の波長が長いため、空間分解能が低く、断線箇所を特定することはできない。加熱用レーザビームが印加される熱印加点に対して、赤外線エリアカメラで赤外線の発光を検出し、検出された赤外線の強度を輝度に対応させて画像表示した場合、図7(B)に示すように、円で囲んだ領域のどこに断線があるか特定することは困難であるか不可能である。
【0008】
【特許文献1】特開平6−300824号公報(第3図)
【特許文献2】特開平7−92237号公報(第3図)
【特許文献3】特許第2518540号公報(第1図)
【非特許文献1】Technology-Thermal Wave(Implant) 平成17年4月4日検索 インターネット<URL:http://www.thermawave.com/technology/thermal.htm/>
【非特許文献2】P.Borden, J.P.Li, D.Derro, S.Smith, A.Diebold and W.Chism, "Copper line and via voiding measurements using metal illumination," IEEE Transaction on Semiconductor Manufacttureing, VOL.16, issure 3, Aug.30 2003, 第409-416頁
【非特許文献3】James Christofferson, Daryoosh Vashaee, Ali Shakouri, Philip Melese, and Edward T Croke III, "Thermoreflectance Imaging of Superlattice Micro Refrigerators" 平成17年4月4日検索 インターネット<URL:http://quantam.soe.ussc.edu/publications/01_02/AC4.pdf>
【非特許文献4】Naoyuki Taketoshi, Tetsuya Baba and Akira Ono, "Development of a thermal diffusivity measurement system for metal thin films using picosecond thermoreflectance technique," Measurement Science and technology 12 (2001)、第2064-2073頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したように、サンプルを加熱し発生する赤外線を検出するシステムにおいては、赤外線の波長が長いため、空間分解能が悪く、このため、不良箇所を特定することができない、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願で開示される発明は、概略以下の構成とされる。
【0011】
本発明の1つのアスペクトに係る装置は、検査対象のサンプルの予め定められた検出箇所に関連付けされた所定範囲の領域に対して加熱箇所を掃引する手段と、前記検出箇所からの熱情報を検出する手段と、を備え、前記検出箇所からの熱情報の検出結果に基づき、前記所定範囲の領域に関する熱分布情報を採取可能としている。
【0012】
本発明において、前記加熱箇所を掃引する手段は、前記サンプルの前記所定範囲の領域に対して加熱用のビームを掃引し、前記加熱用のビームの掃引による前記所定範囲の領域内の加熱箇所に対応して、前記検出箇所から検出された熱情報に基づき、前記所定範囲の領域に関する熱分布情報を採取可能としている。
【0013】
本発明において、前記検出箇所からの熱情報の検出結果に基づき、加熱された前記所定範囲の領域から前記検出箇所への熱伝達に関する情報を取得する手段を備え、前記所定範囲の領域内に、又は、前記所定範囲の領域と前記検出箇所との間に、熱的に不連続な箇所があるか否かを検出自在としている。
【0014】
本発明において、前記検出箇所からの熱情報を検出する手段は、前記検出箇所からの検出光の反射光を検出し、熱反射情報を取得するか、あるいは、前記検出箇所からの赤外線を検出し、赤外線強度情報を取得する。
【0015】
本発明において、前記加熱用のビームを掃引する手段は、前記サンプルの前記所定範囲の領域に対して強度変調された加熱用のレーザビームを掃引する。また前記検出箇所から熱情報を検出する手段は、前記サンプルの前記検出箇所に検出用のレーザを集光し前記検出箇所からの前記検出用のレーザの反射光を選択して検出する。
【0016】
本発明において、前記加熱用のレーザビームを掃引する手段は、前記サンプルに配設され一の方向に延在されてなる導電部材に関して前記導電部材の前記一の方向の所定の区間内の複数箇所で前記加熱用のレーザビームを照射し、前記サンプルの前記検出箇所は、前記導電部材上の前記区間と離間した位置、あるいは、前記導電部材の前記区間と熱的に接続された位置に配置されており、前記検出箇所からの前記検出用のレーザの反射光の検出結果に基づき、前記区間における前記導電部材の熱反射の分布像を取得可能としている。
【0017】
本発明において、前記加熱用のレーザビームを掃引する手段は、前記検出箇所に関して前記導電部材の長手方向の所定の区間の遠端側と近端側の間で、前記導電部材の一側から他側へ前記加熱用のレーザビームを掃引し、つづいて前記導電部材の長手方向に所定間隔あけて前記他側から前記一側に折り返し前記加熱用のレーザビームを掃引するようにしてもよい。
【0018】
本発明において、前記加熱用のレーザビームの掃引時における前記検出箇所からの前記検出用のレーザの反射光の検出結果を、前記加熱用のレーザビームの掃引位置に対応した位置の像として出力装置に出力するようにしてもよい。
【0019】
本発明において、前記加熱用レーザビームで加熱された熱が前記導電部材を伝達する割合が、前記導電部材に断線がある場合とない場合とで異なることを利用して、前記サンプルの導電部材における断線の有無、及び、断線が有る場合には断線箇所を特定する。
【0020】
本発明において、前記サンプルが半導体装置よりなり、熱伝導の分布から得られた不良箇所を、前記半導体装置のレイアウトデータに対応付けることで、故障解析装置としての利用を可能としている。
【0021】
本発明においては、変形例として、前記検出箇所と、前記加熱箇所とを同一としてもよい。
【0022】
本発明の他のアスペクトに係る方法は、検査対象のサンプルの予め定められた検出箇所に関連付けされた所定範囲の領域に対して加熱箇所を掃引してゆき、前記検出箇所からの熱情報を検出する工程と、前記検出箇所からの熱情報の検出結果に基づき、前記所定範囲の領域に関する熱分布情報を取得する工程と、を含む。
【0023】
本発明に係る方法においては、加熱用のビームを前記所定範囲の領域内で掃引することで、前記所定範囲の領域に対する前記加熱箇所の掃引を実行し、前記加熱用のビームの掃引による前記所定範囲の領域内の前記加熱箇所に対応して、前記検出箇所から検出された熱情報に基づき、前記所定範囲の領域に関する熱分布情報を採取可能としている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、加熱用の光を用いて所定範囲の領域を掃引し検出箇所からの熱情報に基づき、所定範囲の領域の熱情報を取得することにより、分解能が向上し、高精度の欠陥の絞込みを可能としている。
【0025】
また、本発明によれば、検出箇所を固定することにより、空間分解能の低下は回避される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
上記した本発明についてさらに詳細に説明すべく添付図面を参照して以下に説明する。
【0027】
はじめに、本発明の原理を説明する。本発明においては、加熱用のレーザ光にて、サンプルの所定範囲の領域(検査面)を掃引し、前記領域内の配線等を含む各箇所を加熱し、検出光は、配線の一箇所(検出箇所)に照射し、該検出箇所からの検出用レーザの反射光を検出し、あるいは、該検出箇所からの赤外線の強度の検出により、加熱用のレーザで加熱された掃引領域での熱が、配線を伝達する割合が断線がある場合とない場合で異なることを利用して、高感度(高分解能)で、断線の検出を可能としている。
【0028】
本発明の一実施形態において、加熱用のレーザビームの掃引は、特に制限されないが、配線の断線を検出する場合には、配線上の検出箇所に関して該配線の長手方向の所定の区間の遠端側と近端側の間で、配線の一側から他側へ加熱用のレーザを掃引し、つづいて前記配線の長手方向に所定間隔あけて他側から一側に折り返し加熱用のレーザビームを掃引するようにしてもよい。
【0029】
また、本発明の一実施形態において、加熱用のレーザビームの掃引時における、配線の検出箇所からの検出用のレーザ光の反射光の検出結果を、加熱用のレーザビームの掃引位置に対応した位置の像として、画像表示するようにしてもよい。以下実施例に即して説明する。
【実施例】
【0030】
図1は、本発明の一実施例の検査装置の要部構成を示す図である。図1を参照すると、この検査装置は、検査対象のサンプル101を載置するステージ102と、検出用レーザ(プローブレーザ)を出力する検出用レーザ発生部103と、所定の周波数で強度変調された加熱用のレーザ(ポンプレーザ)を出力するポンプレーザ発生部104と、ポンプレーザ発生部104からの加熱用のレーザビームを掃引するレーザ掃引手段108と、第1、第2ハーフミラー105、106と、顕微鏡光学系(対物レンズ)107と、検出用レーザの反射光を選択的に通過させるフィルタ109と、熱反射光信号検出器110とを備えている。
【0031】
検出用レーザ発生部103は、一定強度の検出用レーザを出力する。ポンプレーザ発生部104は、不図示の加熱用レーザ発生部から出力されるレーザ光を所定周波数で周期的に強度変調して出力する。第1ハーフミラー105は、加熱用レーザビームを顕微鏡光学系107の光軸に一致して通過させ、検出用レーザビームを顕微鏡光学系(対物レンズ)107の光軸に一致して反射させるよう作用する。第2ハーフミラー106は、検出用レーザ発生部103からの検出用レーザを光軸に一致させて通過させ、第1ハーフミラー105により反射された検出用レーザの反射光を反射してフィルタ109へと導く。なお、第2ハーフミラー106とフィルタ109との間に結像レンズを備えた構成としてもよい。
【0032】
フィルタ109は、加熱用レーザビームの反射光を遮断し、検出用レーザビームの反射光のみを通過させる。熱反射光信号検出器110は例えばフォトダイオード等で構成され、フィルタ109を通過した検出用レーザビームを検出する。
【0033】
レーザ掃引手段108は、加熱用レーザをXY方向に走査するスキャン機構を備え、例えばポリゴンミラーあるいは音響光学偏向素子等、ビームの偏向制御を行い、ラスタ走査可能なデバイスを備えている。
【0034】
加熱用レーザビームの掃引等の加熱による温度の変化ΔTにより金属膜(サンプル101が半導体装置の場合、配線等の導電部材)の反射率Rが変化することから、検出箇所111(本実施例では位置固定)からの検出用レーザの反射光の検出結果に基づき、レーザ掃引手段108による加熱用レーザビームの掃引範囲(図1の矢印で示す範囲)における、熱反射率の変化(温度変化)の様子を採取することができる。熱反射率の算出は、サンプルに周期的な励起パルスを与え、反射光を光検出器で検出し、温度変化を高空間分解能で検出する熱反射(thermoreflectance measurement)法等を用いてもよい(非特許文献3、4等参照)。そして、この熱反射率の算出は、熱反射光信号検出器110で行ってもよいし、あるいは、熱反射光信号検出器110からの検出信号を、CPU等のコントローラ(不図示)で受け、該コントローラで熱反射率を算出し、算出した結果を表示装置(不図示)に出力するようにしてもよい。
【0035】
ステージ102は、XY方向に位置決め自在なXYステージであってもよいし、Z方向に位置決め自在なXYZステージであってもよい。
【0036】
図2、図3は、図1の検査装置を、半導体装置の配線の断線検出等に用いた一実施例を説明するための図である。
【0037】
図2(A)を参照すると、1は検査対象のメタル配線(metal interconnect)、2は配線1に対して熱反射をモニタする検出箇所(定点検出箇所;図1の111に対応する)であり例えば配線1上に設定される。3は、図1のレーザ掃引手段108による加熱用レーザビームの掃引の軌跡である。加熱用レーザビーム(ポンプレーザビーム)を、3で示すように、検出箇所に関して、配線1の長手方向の所定区間の遠端と近端の間を、配線1にほぼ直行する方向に配線1の一側(図では左)から他側(図では右)に横切って走査し、前回の走査位置から、長手方向に所定間隔おいて、配線1の他側から一側に折り返して走査し、前回の走査位置から所定間隔おいて、再び配線1の一側から他側に横切って走査する手順を、繰り返す。なお、加熱用レーザビームの掃引は、上記のようなジグザグの掃引に制限されるものでなく、配線1のパタン形状等に応じて、任意の掃引が用いられる。検出箇所(定点検出箇所)2は、掃引される配線1と同一配線上に設けられているが、該配線1上のレーザの掃引範囲と熱的に接続している任意の配線、ビア等であってもよいことは勿論である。すなわち、検出箇所(定点検出箇所)2は、加熱用レーザビームの掃引による熱をモニタできる箇所(掃引範囲の加熱による熱が伝達する箇所)であればよい。
【0038】
本実施例においては、加熱用レーザビームを掃引しながら検出箇所2からの検出用レーザの反射光を、図1の熱反射光信号検出器110で検出し、熱反射率の変化から配線1の温度分布を導出する。
【0039】
加熱用レーザビームの掃引位置が検出箇所(定点検出箇所)2に近づくにしたがって、検出箇所2からの熱反射率の変化は大きい。
【0040】
熱反射光信号検出器110で検出された信号は、表示装置(不図示)に画像として表示され、例えば図2(B)のように、信号のレベル(強度)に応じた輝度(階調)にて表示される。特に制限されないが、例えば熱反射率の変化の大きいほど、高い輝度(明るい階調)として表示される。
【0041】
図2(B)は、加熱用レーザビームの掃引による配線1(図2(A))の掃引範囲の温度分布(2次元分布)を像として、表示装置(不図示)に表示したものであり、図2(A)の加熱用レーザの掃引の1ライン目の掃引時における検出箇所(定点検出箇所)2からの検出用レーザの反射光の検出結果に基づき、熱反射率の変化の大きさを、該1ライン目の掃引の位置に対応させて画像表示し、同様にして、2、3、…、nライン目の各ライン掃引時における検出箇所(定点検出箇所)2からの検出用レーザの反射光の検出結果に基づき、熱反射率の変化の大きさを、該当するライン目の掃引の位置に対応させて、画像表示したものである(図3(B)も同様)。
【0042】
配線1の掃引範囲内に断線がない場合、図2(C)に示すように、配線1上の加熱用レーザビームの掃引範囲における輝度(階調)の変化の様子は、配線1の掃引範囲の始端から終端まで連続的となる。図2(B)が、加熱用レーザビームの掃引による掃引範囲の温度変化(熱反射率の変化)を2次元画像として、表示装置(不図示)に表示したものであるのに対し、図2(C)は、図2(B)の2次元画像の輝度(階調)を横軸、配線1の長手方向の掃引方向を縦軸で表したものである(図3(C)も同様)。なお、図2(C)のグラフの縦、横は入れ替えてもよい。
【0043】
一方、図3(A)に示すように、配線1に断線4があると、当該断線箇所から先の配線は熱の伝わり方が小さいため(熱伝導率が小)、熱反射光信号検出器110で検出された信号のレベル(強度)は小さい。加熱用レーザビームの掃引箇所が断線4の定点検出箇所2側にある場合、熱は断線4側には伝わりにくいため、図3(C)に示すように、加熱用レーザビームの掃引箇所が検出箇所2側にわずかに移動しただけで、急激に大きな信号強度となり、そのあと、検出箇所2に近づくにつれ、連続に信号強度が増大する。すなわち、図3(C)に示すように、断線箇所は不連続点として検出される。
【0044】
すなわち、加熱用レーザで加熱された熱が、配線を伝達する割合が、断線がある場合とない場合で異なることを利用して、断線箇所における熱反射率の変化量の不連続点に基づき、断線箇所を特定している。なお、検出箇所(定点検出箇所)2に接続された配線1以外の場所(絶縁膜等)を、加熱用レーザで掃引した場合、該掃引箇所の熱は、検出箇所(定点検出箇所)2にはほとんど伝達されない。すなわち、熱良導体である配線1以外の場所での加熱用レーザビームで掃引による、検出箇所(定点検出箇所)2からの反射光の信号レベルは相対的に小とされ、このため、配線の欠陥情報を高精度に取得することができる。また、加熱用レーザビームの掃引間隔を狭めることで、断線箇所をより高精度に検出することができる。
【0045】
上記したように、本実施例によれば、加熱用レーザを掃引することにより、検出位置の分解能が向上し、また検出箇所を固定しているため、分解能の低下はない。
【0046】
次に、本発明の別の実施例として、図1の装置を用いて、サンプル101をなす半導体装置の配線等の検査を行い、検査結果を、当該半導体装置の設計情報(レイアウト情報)とつき合せ可能とした手法について説明する。熱反射光信号検出器110で検出された熱情報(熱反射率の変化)に対応する、レーザ掃引手段108による加熱用レーザビームの走査に関して、該加熱用レーザビームの掃引位置(画像表示される像の表示位置に対応する)と、その時点での光学系に対するステージ102の位置(サンプル101の位置)等から、サンプル101上での該加熱用レーザビームの掃引位置が求まる。これにより、表示装置(不図示)に表示される像(図2(B)又は図3(B)等参照)の座標と、サンプル101における加熱用レーザの掃引位置との対応付けが行われる。また、実デバイス(チップ)上における素子、配線等の位置座標は、該チップのレイアウトデータ(レイアウト装置で作成される)における位置座標に対応付けることができる。なお、この対応付けは、検査装置を構成するコンピュータで実行されるソフトウエアにより実現してもよいし、あるいは他のコンピュータ上で実行されるソフトウエアにより実現してもよい。サンプルの掃引位置と、レイアウトデータの位置座標を相互に関連付けすることで、図4(A)に示したような加熱用レーザの掃引3の結果、図4(C)の熱分布から不連続点が検出された場合(断線箇所有り)、当該不連続点の位置座標に基づき、図4(B)に示すように、例えば表示装置に表示されたCADレイアウトデータにおいて、半導体装置の相互配線のパターンに、断線箇所有りを示す情報を表示することができる。あるいは、図4(B)のCADレイアウトデータに、図3(B)の熱分布像(熱反射率の分布)を重ねて表示する等、互いに関連付けて表示装置に表示するようにしてもよい。
【0047】
このように、本実施例によれば、検査装置で検出された配線の断線箇所を、例えば半導体集積回路(LSI)のレイアウトデータの所定のメタル配線層における位置情報に関連付けすることができ、故障解析に貢献するものと期待される。なお、CADレイアウトの画面データ上に表示する断線の情報(文字、記号等)は任意である。
【0048】
なお、上記実施例においては、図1の熱反射光信号検出器110にて熱反射の変化を検出したが、本発明はかかる構成に限定されるものでなく、例えばサンプルの検出箇所からの赤外線の強度変化を検出するようにしてもよい。加熱用レーザで掃引しながら各掃引位置に対して、固定された定点検出箇所からの赤外線強度変化(温度変化)を検出する構成としたことにより、長波長による空間分解能の低下という課題を解消し、温度変化ΔTの検出の空間分解能を向上させることができる。定点検出箇所からの赤外線強度変化を、掃引位置に対応させて像として表示した場合にも、図2(B)あるいは図3(B)に示したような像を得ることができる。
【0049】
なお、上記実施例の変形として、定点検出箇所を、加熱用レーザで掃引箇所と同一とし、検出用レーザと加熱用レーザを同一箇所に集光し、検出用レーザの反射光より反射率の変化を検出するようにしてもよい。さらに、上記実施例では、周波数変調された加熱用レーザビームを掃引する例を説明したが、サンプル上の所定の広がりを有する領域内を、要求精度等に対応したスポット径、ライン間隔等にて掃引し、周期的に加熱することができるものであれば、他のビーム等の加熱手段を用いてもよい。
【0050】
以上本発明を上記実施例に即して説明したが、本発明は、上記実施例の構成に限定されるものでなく、本発明の範囲内で当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施例の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施例を説明する図(断線無し)であり、(A)は加熱用レーザの掃引の様子を示す模式図、(B)は掃引範囲の熱分布像(熱反射率変化、赤外線強度変化)の模式図、(C)は熱分布の変化の様子を示す図である。
【図3】本発明の一実施例を説明する図(断線有り)であり、(A)は加熱用レーザの掃引の様子を示す模式図、(B)は掃引範囲の熱分布像(熱反射率変化、赤外線強度変化)の模式図、(C)は温度の変化の様子を示す図である。
【図4】本発明の一実施例を説明する図であり、(A)は加熱用レーザの掃引の様子を示す模式図、(B)はCADレイアウトデータ、(C)は熱分布の変化の様子を示す図である。
【図5】従来の検査装置の構成を示す図である。
【図6】従来の検査装置を説明するための図(断線無し)であり、(A)は加熱用レーザの印加点を示す模式図、(B)は赤外線強度検出像を示す図である。
【図7】従来の検査装置を説明するための図(断線有り)であり、(A)は加熱用レーザの印加点を示す模式図、(B)は赤外線強度検出像を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 配線
2 検出箇所(定点検出箇所)
3 加熱用レーザの掃引
4 断線
101 サンプル
102 ステージ
103 検出用レーザ発生部
104 ポンプレーザ発生部
105 ハーフミラー
106 ハーフミラー
107 対物レンズ
108 レーザ掃引手段
109 フィルタ
110 熱反射光信号検出器
111 検出箇所
201 サンプル
202 ステージ
203 プローブレーザ発生部
204 ポンプレーザ発生部
205 ハーフミラー
206 ハーフミラー
207 対物レンズ
208 熱波信号検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象のサンプルの予め定められた検出箇所に関連付けされた所定範囲の領域に対して加熱箇所を掃引する手段と、
前記検出箇所からの熱情報を検出する手段と、
を備え、前記検出箇所からの熱情報の検出結果に基づき、前記所定範囲の領域に関する熱分布情報を採取可能としてなる、ことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記加熱箇所を掃引する手段が、前記サンプルの前記所定範囲の領域に対して加熱用のビームを掃引する手段を備え、
前記加熱用のビームの掃引による前記所定範囲の領域内の加熱箇所に対応して、前記検出箇所から検出された熱情報に基づき、前記所定範囲の領域に関する熱分布情報を採取可能としてなる、ことを特徴とする請求項1記載の検査装置。
【請求項3】
前記検出箇所からの熱情報の検出結果に基づき、加熱された前記所定範囲の領域から前記検出箇所への熱伝達に関する情報を取得する手段を備え、前記所定範囲の領域内に、又は、前記所定範囲の領域と前記検出箇所との間に、熱的に不連続な箇所があるか否かを検出可能としてなる、ことを特徴とする請求項1又は2記載の検査装置。
【請求項4】
前記検出箇所からの熱情報を検出する手段は、前記検出箇所に照射された検出光の反射光を検出し、熱反射情報を取得するか、又は、前記検出箇所からの赤外線を検出し、赤外線強度情報を取得する、ことを特徴とする請求項1又は2記載の検査装置。
【請求項5】
前記加熱用のビームを掃引する手段が、前記サンプルの前記所定範囲の領域に対して、強度変調された加熱用のレーザビームを掃引する手段を備え、
前記検出箇所から熱情報を検出する手段が、前記サンプルの前記検出箇所に検出用のレーザを集光し前記検出箇所からの前記検出用のレーザの反射光を選択して検出する手段を備えている、ことを特徴とする請求項2記載の検査装置。
【請求項6】
前記加熱用のレーザビームを掃引する手段が、前記サンプルに配設され一の方向に延在されてなる導電部材に関して前記導電部材の前記一の方向の所定の区間内の複数箇所で前記加熱用のレーザビームを照射し、
前記サンプルの前記検出箇所は、前記導電部材上の前記区間と離間した位置、あるいは、前記導電部材の前記区間と熱的に接続された位置に配置されており、前記検出箇所からの前記検出用のレーザの反射光の検出結果に基づき、前記区間における前記導電部材の熱反射の分布像を取得可能としてなる、ことを特徴とする請求項5記載の検査装置。
【請求項7】
前記加熱用のレーザビームを掃引する手段が、前記検出箇所に関して前記導電部材の長手方向の所定の区間の遠端側と近端側の間で、前記導電部材の一側から他側へ前記加熱用のレーザを掃引し、つづいて前記導電部材の長手方向に所定間隔あけて前記他側から前記一側に折り返し前記加熱用のレーザビームを掃引する、ことを特徴とする請求項6記載の検査装置。
【請求項8】
前記加熱用のレーザビームの掃引時における前記検出箇所からの前記検出用のレーザの反射光の検出結果を、前記加熱用のレーザビームの掃引位置に対応した位置の像として生成し表示装置に出力する手段を備えている、ことを特徴とする請求項7記載の検査装置。
【請求項9】
前記加熱用のレーザビームで加熱された熱が、前記導電部材を伝達する割合が、前記導電部材に断線がある場合とない場合とで異なることを利用して、前記導電部材における断線の有無、及び、断線が有る場合には断線箇所を特定する手段を備えている、ことを特徴とする請求項6記載の検査装置。
【請求項10】
前記サンプルが半導体装置よりなり、熱伝導の分布から得られた前記導電部材の不良箇所を、前記半導体装置のレイアウトデータに対応付ける手段を備えている、ことを特徴とする請求項9記載の検査装置。
【請求項11】
前記検出箇所と、前記加熱箇所とを同一としてなる、ことを特徴とする請求項1記載の検査装置。
【請求項12】
検査対象のサンプルの予め定められた検出箇所に関連付けされた所定範囲の領域に対して加熱箇所を掃引し、前記検出箇所からの熱情報を検出する工程と、
前記検出箇所からの熱情報の検出結果に基づき、前記所定範囲の領域に関する熱分布情報を取得する工程と、
を含む、ことを特徴とする検査方法。
【請求項13】
加熱用のビームを前記所定範囲の領域内で掃引することで、前記所定範囲の領域に対する前記加熱箇所の掃引を実行し、
前記加熱用のビームの掃引による前記所定範囲の領域内の前記加熱箇所に対応して、前記検出箇所から検出された熱情報に基づき、前記所定範囲の領域に関する熱分布情報を採取可能としてなる、ことを特徴とする請求項12記載の検査方法。
【請求項14】
前記検出箇所からの熱情報の検出結果に基づき、加熱された前記所定範囲の領域から前記検出箇所への熱伝達に関する情報を取得し、前記所定範囲の領域内に、又は、前記所定範囲の領域と前記検出箇所との間に、熱的に不連続な箇所があるか否かを検出可能としてなる、ことを特徴とする請求項12又は13記載の検査方法。
【請求項15】
前記検出箇所からの熱情報を検出するにあたり、前記検出箇所に照射された検出用レーザ光の反射光を検出し熱反射情報を取得するか、又は、前記検出箇所からの赤外線を検出し赤外線強度情報を取得する、ことを特徴とする請求項12記載の検査方法。
【請求項16】
前記加熱用のビームを掃引するにあたり、前記所定範囲の領域に対して強度変調された加熱用のレーザビームを掃引し、
前記検出箇所から熱情報を検出するにあたり、前記検出箇所に検出用のレーザを集光し前記検出箇所からの前記検出用のレーザの反射光を選択して検出する、ことを特徴とする請求項13記載の検査方法。
【請求項17】
前記所定範囲の領域に対して前記加熱用のレーザビームを掃引するにあたり、前記サンプルに配設され一の方向に延在されてなる導電部材に関して、前記導電部材の前記一の方向の所定の区間内の複数箇所で前記加熱用のレーザビームを照射し、
前記サンプルの前記検出箇所は、前記導電部材上の前記区間と離間した位置、あるいは、前記導電部材の前記区間と熱的に接続された位置に配置されており、前記検出箇所からの前記検出用のレーザの反射光の検出結果に基づき、前記区間における前記導電部材の熱反射の分布像を取得可能としてなる、ことを特徴とする請求項16記載の検査方法。
【請求項18】
前記検出箇所に関して前記導電部材の長手方向の所定の区間の遠端側と近端側の間で、前記導電部材の一側から他側へ前記加熱用のレーザビームを掃引し、つづいて前記導電部材の長手方向に所定間隔あけて前記他側から前記一側に折り返し前記加熱用のレーザビームを掃引する、ことを特徴とする請求項17記載の検査方法。
【請求項19】
前記加熱用のレーザの掃引時における前記検出箇所からの前記検出用のレーザの反射光の検出結果を、前記加熱用のレーザビームの掃引位置に対応した位置の像として表示する、ことを特徴とする請求項18記載の検査方法。
【請求項20】
前記加熱用のレーザビームで加熱された熱が、前記導電部材を伝達する割合が、前記導電部材に断線がある場合とない場合とで異なることを利用して、前記導電部材における断線の有無、及び、断線が有る場合には断線箇所を特定する工程を含む、ことを特徴とする請求項17記載の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−319193(P2006−319193A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141392(P2005−141392)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】