説明

検査装置

【課題】基板上の膜厚を測定可能な検査装置を提供する。
【解決手段】表面検査装置1は、表面に薄膜が設けられたウェハWを支持するステージ10と、ステージ10に支持されたウェハWの表面に照明光を照射する照明系20と、照明光が照射されたウェハWの表面からの光を検出する撮像装置35と、撮像装置35により検出された光の情報から薄膜の膜厚を測定する膜厚算出部50と、照明光の実際の波長を測定する画像処理部45とを備え、膜厚算出部50は、画像処理部45により測定された照明光の実際の波長を用いて、撮像装置35により検出された光の情報から膜厚を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程において半導体ウェハ等の基板表面を検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上述のような検査装置として、半導体ウェハの表面に照明光を照射して当該ウェハの表面に形成された繰返しパターンからの回折光による像を撮像し、撮像面内における輝度変化からパターンの良否判断を行う表面検査装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。このような表面検査装置では、ウェハの表面検査だけではなく、ウェハの表面に形成されたレジスト膜等の膜厚を測定する機能が求められることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−151663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の表面検査装置では、ウェハ上での膜厚の変動を知ることはできたが、実際の膜厚は分からなかった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、基板上の膜厚を測定可能な検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的達成のため、本発明に係る検査装置は、表面に膜が設けられた基板を支持するステージと、前記ステージに支持された前記基板の表面に照明光を照射する照射部と、前記照明光が照射された前記基板の表面からの光を検出する検出部と、前記検出部により検出された前記光の情報から前記膜の膜厚を測定する膜厚測定部と、前記照明光の波長を測定する波長測定部とを備え、前記膜厚測定部は、前記波長測定部により測定された前記照明光の波長を用いて、前記光の情報から前記膜厚を求めるようになっている。
【0007】
なお、上述の検査装置において、前記波長測定部により前記照明光の波長を測定する際、前記照射部は、所定の繰り返しパターンが形成された基板の表面に前記照明光を照射するとともに、前記検出部は、前記繰り返しパターンで生じた回折光を検出し、前記波長測定部は、前記検出部により検出された前記回折光の情報に基づいて、前記照明光の波長を求めることが好ましい。
【0008】
また、上述の検査装置において、前記膜厚測定部により前記膜厚を測定する際、前記照射部は、前記膜が設けられた基板の表面に前記照明光を照射するとともに、前記検出部は、前記照明光が照射された前記基板の表面からの正反射光を検出し、前記膜厚測定部は、前記検出部により検出された前記正反射光の情報から前記膜厚を求めることが好ましい。
【0009】
また、上述の検査装置において、前記膜厚測定部により前記膜厚を測定する際、前記照射部は、前記膜が設けられた基板の表面に互いに波長の異なる複数種の照明光をそれぞれ照射するとともに、前記検出部は、前記複数種の照明光ごとに前記照明光が照射された前記基板の表面からの正反射光をそれぞれ検出し、前記膜厚測定部は、前記複数種の照明光の波長および、前記検出部により前記複数種の照明光ごとに検出された前記正反射光の情報から前記膜厚を求め、前記波長測定部は、前記複数種の照明光のうち少なくとも一つについて、前記照明光の波長を測定することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板上の膜厚を高い精度で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】表面検査装置を示す図である。
【図2】膜厚算出部を示すブロック図である。
【図3】膜厚と各波長の反射率との対応関係を示す図である。
【図4】フィッティング計算処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態の表面検査装置を図1に示しており、この装置により被検基板である半導体ウェハW(以下、ウェハWと称する)の表面を検査する。本実施形態の表面検査装置1は、略円盤形に形成されたウェハWを支持するステージ10を備え、不図示の搬送装置によって搬送されてくるウェハWは、ステージ10の上に載置されるとともに真空吸着によって固定保持される。ステージ10は、ウェハWの回転対称軸(ステージ10の中心軸)を回転軸として、ウェハWを回転(ウェハWの表面内での回転)可能に支持する。また、ステージ10は、ウェハWの表面に沿った軸を中心に、ウェハWをチルト(傾動)させることが可能であり、照明光の入射角を調整できるようになっている。
【0013】
表面検査装置1はさらに、ステージ10に支持されたウェハWの表面に照明光を平行光として照射する照明系20と、照明光の照射を受けたときのウェハWからの正反射光および回折光を集光する受光系30と、受光系30により集光された光を受けてウェハWの表面の像を撮像する撮像装置35と、制御部40と、画像処理部45と、膜厚算出部50とを備えて構成される。照明系20は、照明光を射出する照明ユニット21と、照明ユニット21から射出された照明光をウェハWの表面に向けて反射させる照明側凹面鏡25とを有して構成される。照明ユニット21は、メタルハライドランプや水銀ランプ等の光源部22と、光源部22からの光のうち所定の波長を有する光を抽出し強度を調節する調光部23と、調光部23からの光を照明光として照明側凹面鏡25へ導く導光ファイバ24とを有して構成される。なお、調光部23には、複数の波長選択フィルタ(図示せず)が内蔵されており、これら複数の波長選択フィルタのうちいずれか一つを選んで光路上に挿入することで、照明光の波長を(例えば、h線およびi線の波長や、248nm等に)変えることができるようになっている。
【0014】
そして、光源部22からの光は調光部23を通過し、所定の波長(例えば、248nmの波長)を有する照明光が導光ファイバ24から照明側凹面鏡25へ射出され、導光ファイバ24から照明側凹面鏡25へ射出された照明光は、導光ファイバ24の射出部が照明側凹面鏡25の焦点面に配置されているため、照明側凹面鏡25により平行光束となってステージ10に保持されたウェハWの表面に照射される。そのため、ウェハWの表面は位置によらず同一な入射角で照明されている。なお、ウェハWに対する照明光の入射角と出射角との関係は、ステージ10をチルト(傾動)させてウェハWの載置角度を変化させることにより調整可能である。
【0015】
ウェハWの表面からの出射光(例えば、正反射光や回折光)は受光系30により集光される。受光系30は、ステージ10に対向して配設された受光側凹面鏡31を主体に構成され、受光側凹面鏡31により集光された出射光(正反射光や回折光)は、撮像装置35の撮像面上に達し、ウェハWの像(例えば、正反射像や回折像)が結像される。撮像装置35は、撮像面上に形成されたウェハWの表面の像を光電変換して画像信号を生成し、画像信号を画像処理部45に出力する。
【0016】
制御部40は、撮像装置35や画像処理部45、ステージ10等の作動を制御する。画像処理部45は、撮像装置35から入力されたウェハWの画像信号に基づいて、ウェハWのデジタル画像を生成する。画像処理部45の内部メモリ(図示せず)には、良品ウェハの画像データ(複数の次数における回折像および正反射像等)が予め記憶されており、画像処理部45は、ウェハWの画像(デジタル画像)を生成すると、ウェハWの画像データと良品ウェハの画像データとを比較して、ウェハWの表面における欠陥(異常)の有無を検査する。そして、画像処理部45による検査結果およびそのときのウェハWの画像が図示しない画像表示装置で出力表示される。
【0017】
なお、ウェハWは、最上層のレジスト膜への露光・現像後、不図示の搬送系により、不図示のウェハカセットまたは現像装置からステージ10上に搬送される。なおこのとき、ウェハWは、ウェハWのパターンもしくは外縁部(ノッチやオリエンテーションフラット等)を基準としてアライメントが行われた状態で、ステージ10上に搬送される。なお、詳細な図示を省略するが、ウェハWの表面には、複数のショット領域(チップ領域)が縦横に配列され、各ショット領域の中には、ラインパターンまたはホールパターン等の繰り返しパターンが形成されている。
【0018】
また、画像処理部45により生成されたウェハWの画像データは画像記憶部47に記憶され、膜厚算出部50は、画像記憶部47に記憶されたウェハWの画像データから、レジスト膜やシリコン酸化膜等の薄膜の膜厚を求める(詳細は後述する)。膜厚算出部50には、図2に示すように、測定条件保持部48や反射率データ算出部49が電気的に接続される。測定条件保持部48には、ウェハWへの照明光の入射角や、照明ユニット21から射出される照明光の分光強度(波長ごとの強度)、および撮像装置35の分光感度(波長ごとの感度)を含む測定条件情報とともに、ウェハWの基材(例えば、Si)および薄膜の各波長についての複素屈折率が格納されている。
【0019】
ウェハWの基材の各波長についての複素屈折率および、このウェハWの基材上に形成された単層の薄膜を構成する物質の各波長についての複素屈折率とは、例えば、エリプソメトリを利用した屈折率計測装置などによって、ウェハWの少なくとも一つの基準点(例えば、ウェハWの中心位置)について測定を行うことで、予め特定しておくことができる。そして、このようにして特定された各波長についての複素屈折率と照明光のウェハWへの入射角とに基づいて、反射率データ算出部49により、図1に示した照明系20による照明で実現される角度条件において、ウェハWの基材上に様々な膜厚の薄膜を形成した際に、薄膜表面および裏面からの反射光の干渉を含んだ反射率を算出しておくことができる。
【0020】
例えば、上述した角度条件に対応する薄膜干渉式に、ウェハWの基材(例えば、Si)と単層膜の材質(例えば、SiO2)との複素屈折率を代入し、膜厚が1070nm〜1370nmの範囲について、例えば、10nm刻みで膜厚を変化させ、照明光をh線(波長405nm)、g線(436nm)、およびe線(546nm)等とした際の反射率を計算し、計算結果を膜厚算出部50の反射率テーブル51に保持することができる。例えば図3に、波長がそれぞれ405nm、436nm、および546nmの照明光について、横軸で示される膜厚の二酸化ケイ素薄膜からの反射率を計算して得られた反射率曲線を、それぞれ太い実線、太い破線、および細い一点鎖線で示す。
【0021】
更に、上述した少なくとも一つの基準点における薄膜の幾何膜厚を、例えば、別に用意された膜厚測定機などによって測定しておき、これらの測定結果を膜厚データ保持部56に保持して、反射率に基づく膜厚計測の補正に用いることもできる。
【0022】
以上のように構成される表面検査装置1を用いて、ウェハWの表面検査を行うには、まず、不図示の搬送装置により、ウェハWをステージ10上に搬送する。なお、搬送の途中で不図示のアライメント機構によりウェハWの表面に形成されているパターンの位置情報を取得しており、ウェハWをステージ10上の所定の位置に所定の方向で載置することができる。
【0023】
次に、ウェハWの表面上における照明方向とパターンの繰り返し方向とが一致するようにステージ10を回転させるとともに、パターンのピッチをPとし、ウェハWの表面に照射する照明光の波長をλとし、照明光の入射角をθ1とし、n次回折光の出射角をθ2としたとき、ホイヘンスの原理より、次の(1)式を満足するように設定を行う(ステージ10をチルトさせる)。
【0024】
P=n×λ/{sin(θ1)−sin(θ2)} …(1)
【0025】
次に、照明光をウェハWの表面に照射する。このような条件で照明光をウェハWの表面に照射する際、照明ユニット21における光源部22からの光は調光部23を通過し、所定の波長(例えば、248nmの波長)を有する照明光が導光ファイバ24から照明側凹面鏡25へ射出され、照明側凹面鏡25で反射した照明光が平行光束となってウェハWの表面に照射される。ウェハWの表面から出射された回折光は、受光側凹面鏡31により集光されて撮像装置35の撮像面上に達し、ウェハWの像(回折像)が結像される。
【0026】
そこで、撮像装置35は、撮像面上に形成されたウェハWの像を光電変換して画像信号を生成し、画像信号を画像処理部45に出力する。画像処理部45は、撮像装置35から入力された画像信号に基づいて、ウェハWのデジタル画像を生成する。また、画像処理部45は、ウェハWの画像(デジタル画像)を生成すると、ウェハWの画像データと良品ウェハの画像データとを比較して、ウェハWの表面における欠陥(異常)の有無を検査(検出)する。そして、画像処理部45による検査結果およびそのときのウェハWの表面全体の画像が図示しない画像表示装置で出力表示される。
【0027】
次に、ウェハWの表面に形成された薄膜の膜厚を測定する場合について述べる。この場合まず、表面検査の場合と同様に、ウェハWをステージ10上に搬送する。次に、受光系30においてウェハW表面での照明光の正反射光を受光できるようにステージ10をチルトさせる。
【0028】
次に、5種類の照明波長(例えば、546nm、436nm、405nm、313nm、および248nm)について、照明光をウェハWの表面に照射する。このとき、5種類の波長のうちいずれかの波長を有する照明光が平行光束となってウェハWの表面に照射される。ウェハW表面からの正反射光は、受光側凹面鏡31により集光されて撮像装置35の撮像面上に達し、ウェハWの像(正反射像)が結像される。そこで、撮像装置35は、5種類の照明波長についてそれぞれ、撮像面上に形成されたウェハWの像を光電変換して画像信号を生成し、画像信号を画像処理部45に出力する。画像処理部45は、撮像装置35から入力された画像信号に基づいて、ウェハWのデジタル画像を生成し、画像データを画像記憶部47に記憶させる。画像記憶部47に記憶された画像データは、膜厚算出部50による処理に供される。
【0029】
ここで、膜厚算出部50によって行われるフィッティング計算処理について説明する。本実施形態のように照明側と撮像側との双方がテレセントリックとなっている光学系では、撮影対象であるウェハWの反射像の全領域について、上述した反射率曲線の算出に用いられた角度条件を適用した薄膜干渉式を適用することができる。したがって、以下に述べるようにして、画像記憶部47に各波長に対応して記憶された反射像に含まれる各画素の階調値で示される反射率の組み合わせを与えるような膜厚を、反射率テーブル51に基づいて探索するフィッティング処理を行うことにより、反射像に捉えられたウェハW上の各位置についての膜厚を求めることができる。
【0030】
図4に、フィッティング計算処理を表すフローチャートを示す。まず、反射率算出部52により、画像記憶部47に記憶された反射像に含まれる基準位置の画素の階調値と、測定条件保持部48に記憶された照明光の分光強度および撮像装置35の分光感度(波長ごとの感度)とに基づいて、反射像の撮影の際に選択された照明光の波長(λ1、λ2、…)についての基準位置での反射率(R(λ1)、R(λ2)、…)が算出される(ステップS101)。
【0031】
次に、補正値算出部54は、ステップS101で算出した反射率を与える推定膜厚を反射率テーブル51から探索し、得られた推定膜厚と膜厚データ保持部56に保持された実測膜厚とから、波長ごとに補正値を算出する(ステップS102)。補正値算出部54は、例えば、波長λ1に対応する反射率曲線と基準点における波長λ1の実際の反射率を示す直線との交点に対応する膜厚候補(例えば、C1〜C4)を見つけ、これらの膜厚候補の中から最も幾何膜厚の実測値tに近いものとこの実測値tとの差を、その波長の反射率から膜厚を決定する場合の補正値δλ1とすることができる。照明波長を切り換えて、同様にして、補正値算出部54は、各波長に対応する補正値δを算出する。
【0032】
次に、反射率算出部52は、画像記憶部47に照明光の波長ごとに記憶された反射像に含まれる各画素の階調値に基づいて、上述したステップS101と同様にして、それぞれの波長の反射率を算出し(ステップS103)、候補抽出部53の処理に供する。
【0033】
候補抽出部53では、上述したステップS102と同様に、各波長について算出された反射率と対応する波長について反射率テーブル51に保持された反射率データで示される反射率曲線との交点を求めることにより、波長ごとに少なくとも一つの膜厚候補を抽出する(ステップS104)。
【0034】
このようにして抽出された膜厚候補は、補正処理部55により、上述した各波長対応の補正値を用いて補正された後に(ステップS105)、誤差演算部57に渡される。
【0035】
誤差演算部57には、補正処理部55から、例えば、各波長(λ1、λ2、λ3…)に対応して、それぞれ要素数k1、k2、k3、…の膜厚候補の集合{C(λ1)1,…,C(λ1)k1}、{C(λ2)1,…,C(λ2)k2}、{C(λ3)1,…,C(λ3)k3}、…が渡される。この場合に、誤差算出部27は、各集合から一つずつの要素をとる場合の考えられる全ての組み合わせについて、それぞれの組み合わせで各集合から選択された膜厚候補(Cλ1、Cλ2、Cλ3、…)を用いて次の(2)式で表される誤差Eを算出する(ステップS106)。
【0036】
E=(Cλ1−Cλ2)2+(Cλ2−Cλ3)2+(Cλ3−Cλ1)2+… ・・・(2)
【0037】
例えば、5つの異なる波長(例えば、546nm、436nm、405nm、313nm、および248nm)の照明光によって撮影された反射像の注目画素に対応する反射率に基づいて、それぞれ4つの膜厚候補{C(λi)1,C(λi)2,C(λi)3,C(λi)4}(i=1〜5)が得られた場合に、誤差演算部57により、これらの組み合わせとして考えられる45(=1024)通りの組み合わせについて、上述した(2)式を用いて誤差が算出される。
【0038】
決定処理部58は、上述した誤差演算部57による演算結果を受け取り、最も誤差の値が小さい膜厚候補の組み合わせを検出し、例えば、この組み合わせに含まれる膜厚候補の平均値を反射率から求めた膜厚測定値として特定する(ステップS107)。決定処理部58が特定した膜厚測定値は、反射像における画素位置に対応して膜厚データ保持部56に保持される。
【0039】
ここで、ウェハWの反射像に含まれるすべての画素について膜厚測定値が得られたか否かを判定する(ステップS108)。判定がNoである場合、上述したステップS103からステップS107の処理を反射像に含まれる各画素について繰り返す。
【0040】
一方、判定がYesである場合、膜厚データ保持部56に保持された膜厚分布に基づいて、検証処理部59により、膜厚分布の連続性の検証処理が行われる(ステップS109)。このときまず、検証処理部59は、例えば、ウェハWの反射像に含まれる座標(xi,yi)で示される注目画素に対応して得られた膜厚測定値t(xi,yi)と、周囲の画素に対応して得られた膜厚測定値との差をそれぞれ求める。
【0041】
次いで、周囲の膜厚測定値と注目画素に対応する膜厚測定値との差をそれぞれ所定の閾値と比較し、閾値以下である場合に、検証処理部59は、注目画素に対応する膜厚測定値は周囲の膜厚測定値との連続性を有していると判断し、検証処理を終了する。
【0042】
一方、検証処理部59は、例えば、注目画素の膜厚測定値とその周囲の少なくとも一つの画素に対応する膜厚測定値との差が上述した閾値を超えていた場合に、注目画素からかけ離れた異常値となっていると判断し、膜厚測定値の修正処理を行う。
【0043】
この場合に、検証処理部59は、例えば、上述したステップS107で検出された組み合わせの次に誤差演算部57で得られた誤差が小さい組み合わせを検出し、この組み合わせに含まれる膜厚候補の平均値を用いて膜厚測定値を修正し、再び、周囲の画素に対応する膜厚測定値との連続性を検証することができる。
【0044】
このようにして修正した膜厚測定値と、周囲の画素に対応する膜厚測定値との差が上述した閾値以下となった場合に、検証処理部59は、修正された膜厚測定値を膜厚データ保持部56に書き込んで検証処理を終了する。
【0045】
上述した手順を全ての画素について繰り返すことにより、画素ごとに個別にフィッティング処理を行って得られた膜厚データを近傍の画素に対応する結果に基づいて検証し、異常値を検出して補正することができる。
【0046】
このような検証処理が完了した後に、次のステップS110において、膜厚データ保持部56に保持された、異常値の補正が済んだ膜厚データを出力することにより、ウェハW全面に対応する膜厚分布を利用者に提供することができる。
【0047】
上述したように、本実施形態の表面検査装置1では、各照明波長について、測定対象のウェハW全面に対応する正反射像を一括して取得しているので、膜厚の算出に必要な反射率データを短時間で取得することができる。したがって、非常に短い時間でウェハW全面の膜厚分布を測定することができ、ウェハWの全数検査などにも適用可能である。
【0048】
ところで、光源部22に例えば水銀ランプを用いた場合、調光部23の波長選択フィルタが水銀ランプからの光によって加熱され、波長選択フィルタの透過波長域がシフトする可能性がある。例えば、h線(波長405nm)やi線(365nm)は水銀の輝線スペクトルであるため、加熱により波長選択フィルタの透過波長域が多少シフトしても、シフトした透過波長域に当該輝線スペクトルが入っていれば、波長選択フィルタを透過して得られる光(h線やi線)の波長に影響は殆どない。
【0049】
ところが、水銀ランプからの光のうち248nmの波長域を有する光は、比較的ブロードな波長のピークを有している。そのため、加熱により波長選択フィルタの透過波長域がシフトすると、波長選択フィルタを透過して得られる(248nm狙いの)光の波長もシフトしてしまう可能性があり、照明光の波長に誤差が生じて膜厚の測定精度が低下するおそれがある。
【0050】
そこで、本実施形態においては、膜厚の測定を行う前に、繰り返しパターンの形状(ピッチ)が既知のウェハWの画像から実際の照明光の波長(例えば、248nm狙いの光の波長)を算出し、実際の照明光の波長に応じた補正を行う。具体的にはまず、表面検査の場合と同様にして、繰り返しパターンの形状が既知のウェハWをステージ10上に搬送する。次に、ウェハW表面からの回折光が得られるように表面検査の場合と同様の設定を行う。続いて、表面検査の場合と同様に、繰り返しパターンの形状が既知のウェハWの表面に248nm狙いの照明光を照射し、ステージ10を少しずつ(例えば0.5度ずつ)チルトさせながら撮像装置35により当該ウェハWの像を光電変換して画像信号を生成し、画像信号を画像処理部45に出力する。
【0051】
このとき、照明光の波長が狙いの波長(248nm)からシフトすればそれに応じて回折条件も変化するため、画像処理部45は、撮像装置35から入力された画像信号より、回折光の強度が最も大きくなるチルト角度を求め、前述の(1)式等を利用して実際の照明光の波長を算出する。このようにして、実際の照明光の波長を算出すると、248nmの波長域に関しては測定した実際の波長を用いて、膜厚算出部50等がウェハWの膜厚を測定する。
【0052】
このように、本実施形態の表面検査装置1によれば、膜厚算出部50が照明光の実際の波長を用いて膜厚を求めるため、波長選択フィルタ(図示せず)の加熱による透過波長域のシフトに拘わらず、より高い精度で膜厚を測定することができる。また、同種の装置間における測定差を低減させることも可能になる。
【0053】
なおこのとき、画像処理部45は、繰り返しパターンの形状が既知のウェハWからの回折光による画像に基づいて、照明光の実際の波長を求めるため、照明光の実際の波長を容易に求めることができる。
【0054】
またこのとき、画像処理部45は、膜厚測定に用いる複数種の照明光のうち少なくとも一つ(本実施形態では、248nm狙いの照明光)について、照明光の実際の波長を測定するため、照明光の実際の波長を必要な分だけ短時間で測定することができる。
【0055】
なお、上述の実施形態において、ウェハW全面の正反射像を撮像して膜厚を測定しているが、これに限られるものではなく、ウェハWの表面で生じた回折光を利用して膜厚を測定可能な表面検査装置においても、本発明を適用可能である。
【0056】
また、上述の実施形態において、ウェハWの表面に設けられた膜(薄膜)の膜厚を測定しているが、これに限られるものではなく、例えば、ガラス基板に設けられた膜(薄膜)の膜厚を測定することも可能である。また、ウェハに設けたパターンを用いて照明光の波長を求めているが、これに限られるものではなく、例えば、ステージ上の照明光により照明され且つウェハで遮光されない位置に基準となる回折格子を設け、当該回折格子を用いて照明光の波長を求めるようにしてもよい。
【0057】
また、上述の実施形態において、膜厚測定に用いる複数種の照明光のうち、248nm狙いの照明光について、照明光の実際の波長を測定しているが、これに限られるものではなく、膜厚測定に用いる全ての照明光の実際の波長を測定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
W ウェハ
1 表面検査装置
10 ステージ 20 照明系(照射部)
30 受光系 35 撮像装置(検出部)
40 制御部 45 画像処理部(波長測定部)
50 膜厚算出部(膜厚測定部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に膜が設けられた基板を支持するステージと、
前記ステージに支持された前記基板の表面に照明光を照射する照射部と、
前記照明光が照射された前記基板の表面からの光を検出する検出部と、
前記検出部により検出された前記光の情報から前記膜の膜厚を測定する膜厚測定部と、
前記照明光の波長を測定する波長測定部とを備え、
前記膜厚測定部は、前記波長測定部により測定された前記照明光の波長を用いて、前記光の情報から前記膜厚を求めることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記波長測定部により前記照明光の波長を測定する際、前記照射部は、所定の繰り返しパターンが形成された基板の表面に前記照明光を照射するとともに、前記検出部は、前記繰り返しパターンで生じた回折光を検出し、
前記波長測定部は、前記検出部により検出された前記回折光の情報に基づいて、前記照明光の波長を求めることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記膜厚測定部により前記膜厚を測定する際、前記照射部は、前記膜が設けられた基板の表面に前記照明光を照射するとともに、前記検出部は、前記照明光が照射された前記基板の表面からの正反射光を検出し、
前記膜厚測定部は、前記検出部により検出された前記正反射光の情報から前記膜厚を求めることを特徴とする請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記膜厚測定部により前記膜厚を測定する際、前記照射部は、前記膜が設けられた基板の表面に互いに波長の異なる複数種の照明光をそれぞれ照射するとともに、前記検出部は、前記複数種の照明光ごとに前記照明光が照射された前記基板の表面からの正反射光をそれぞれ検出し、
前記膜厚測定部は、前記複数種の照明光の波長および、前記検出部により前記複数種の照明光ごとに検出された前記正反射光の情報から前記膜厚を求め、
前記波長測定部は、前記複数種の照明光のうち少なくとも一つについて、前記照明光の波長を測定することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−141136(P2011−141136A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−676(P2010−676)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】