説明

樹脂封止方法

【課題】成形品の製造歩留まりを向上することのできる技術を提供する。
【解決手段】上テーパプレート24に対して、そのテーパ面24aと対向するテーパ面25aを有する下テーパプレート25を型開閉方向と直交する方向に移動して、テーパ面24aおよびテーパ面25aでスライドさせると共に、下テーパプレート25を介してインサートブロック22を型開閉方向に移動させてクランプ位置を固定させる。次いで、ワークWが第1クランプ力C1より高い第2クランプ力C2でクランプされた状態で、キャビティ15aが完全に充填されるまで第1樹脂圧P1で溶融樹脂28aを注入し、ワークWが第2クランプ力C2より高い第3クランプ力C3でクランプされた状態で、キャビティ15aで充填された溶融樹脂28aに対して第1樹脂圧P1より高い第2樹脂圧P2で加圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂封止技術に関し、特に、基板上の電子部品を樹脂封止してなる成形品に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平6−204379号公報(特許文献1)には、金型を使用して、半導体素子及びリードフレームを樹脂で覆う半導体装置の製造方法が開示されている。この製造方法は、第1の圧力を付与して型締めされた金型においてキャビティへの樹脂注入が完了した後、第1の圧力より高い第2の圧力に上昇させ、キャビティに注入した樹脂に最終成形圧力を加える工程を含むものである。
【0003】
また、特開2002−343819号公報(特許文献2)には、リードフレームやプリント基板などからなる基板に半導体チップを樹脂封止する際に、基板を適正な圧力でクランプして樹脂封止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−204379号公報
【特許文献2】特開2002−343819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トランスファ成形による樹脂封止装置においては、例えば、基板に電子部品が実装されたワークをモールド金型によってクランプし、キャビティに溶融樹脂を充填して電子部品が樹脂封止される。樹脂成形するにあたりキャビティに充填されている溶融樹脂に対して高い圧力(成形圧)を加える必要があるため、樹脂が漏れないように、モールド金型は一定の高いクランプ力でワークをクランプする必要がある。
【0006】
しかしながら、基板の厚さにばらつきがあると、一定のクランプ力でワークをクランプした際に、基板に対してクランプ力が強く働いて基板が損傷する場合や、基板に対してクランプ力が弱く働いて樹脂漏れする場合がある。このような場合、成形品に不具合が生じ、成形品の製造歩留まりが低下してしまう。
【0007】
ところで、モールド金型がワークをクランプしている状態で、溶融樹脂がキャビティ内に注入され始めると、キャビティ内のエアが圧縮されて中の圧力が上昇することが知られている。キャビティ内の圧力が高いと溶融樹脂が入りきらず、キャビティ内を完全に充填できない。そこで、モールド金型にはクランプ面にエアベント溝が形成され、樹脂注入の際にキャビティ内のエアをエアベント溝で排出している。
【0008】
しかしながら、リードフレームのように表面が金属の基板ではなく、絶縁性樹脂層によって覆われた基板(例えば、樹脂基板)をモールド金型でワークをクランプした際に、基板に対してクランプ力が強く働いてエアベント溝を絶縁性樹脂層で塞いでしまう場合がある。このような場合、キャビティ内を溶融樹脂で完全に充填できず、成形品の製造歩留まりが低下してしまう。
【0009】
以上のことから、樹脂基板はもちろん、リードフレームなどの基板を用いた場合において、樹脂漏れの他にエアベントも考慮した最適なクランプ力でキャビティに樹脂注入することが好ましいことを本発明者は初めて見出した。
【0010】
本発明の目的は、成形品の製造歩留まりを向上することのできる技術を提供する。本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。本発明の一実施形態における樹脂封止方法は、(a)対向する一方および他方の金型を離間させて、前記他方の金型のクランプ面にワークを載置する工程と、(b)前記(a)工程後、前記一方および他方の金型を近接させて、第1クランプ力で前記ワークをクランプすると共に、前記一方の金型のキャビティ凹部と前記ワークとでキャビティを形成する工程と、(c)前記(b)工程後、前記他方の金型の金型ブロックのクランプ面と反対側に組み付けられ、第1テーパ面を有する第1テーパプレートに対して、前記第1テーパ面と対向する第2テーパ面を有する第2テーパプレートを型開閉方向と直交する方向に移動して、前記第1および第2テーパ面でスライドさせると共に、前記第1テーパプレートを介して前記金型ブロックを型開閉方向に移動させてクランプ位置を固定させる工程と、(d)前記(c)工程後、前記一方および他方の金型をさらに近接させて、前記ワークが前記第1クランプ力より高い第2クランプ力でクランプされた状態で、プランジャを押動させて前記キャビティへ溶融樹脂を注入する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、次のとおりである。この一実施形態によれば、成形品の製造歩留まりを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態における動作中の樹脂封止装置の要部を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に続く動作中の樹脂封止装置の要部を模式的に示す断面図である。
【図3】図2に続く動作中の樹脂封止装置の要部を模式的に示す断面図である。
【図4】図3に続く動作中の樹脂封止装置の要部を模式的に示す断面図である。
【図5】図4に続く動作中の樹脂封止装置の要部を模式的に示す断面図である。
【図6】図1に示す樹脂封止装置の処理対象のワークの要部を模式的に示す平面図である。
【図7】本発明の一実施形態における樹脂封止の際のクランプ力および樹脂圧のタイミングチャートである。
【図8】図4に対応するクランプ時のワークの要部を模式的に示す断面図である。
【図9】図5に対応するクランプ時のワークの要部を模式的に示す断面図である。
【図10】図7に示すタイミングチャートとは異なる樹脂封止の際のクランプ力および樹脂圧のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0015】
図1〜図5に、本実施形態における樹脂封止装置11の要部であるモールド金型12の断面を示す。この図1〜図5では、プランジャ27の軸で左右対称のモールド金型12の片側(右側)を示している。また、図1〜図5では、ワークWがモールド金型12に供給されて樹脂封止されるまでの動作状態を示している。
【0016】
まず、樹脂封止装置11の動作を概略する。樹脂封止装置11は、被成形品供給部(図示しない)からローダによりワークW(被成形品)をモールド金型12に供給する(図1)。次いで、モールド金型12でワークWをクランプし(図2)、ワークWの厚さ調整を行う(図3)。次いで、キャビティ15aに樹脂を完全に充填するまで注入し(図4)、樹脂圧を成形圧まで上昇させて樹脂封止する(図5)。次いで、型開きしたモールド金型12からアンローダによりワークW(成形品)を取り出して成形品収納部(図示しない)へ収納する。
【0017】
次に、樹脂封止装置11の処理対象となるワークWについて説明する。ワークWは、基板に電子部品が実装されたものである。図8に示すように、ワークWの基板は、例えば、絶縁性樹脂層36(例えば、エポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂)を介して配線パターン35a、35b、32a、32b(例えば、銅やアルミニウムなどの金属パターン)が多層に形成された樹脂基板1であり、絶縁性樹脂層33(例えば、ソルダレジスト)によって表面が保護されている。なお、配線パターン35a、35bは同一層に形成され、配線パターン32a、32bはそれよりも上層の同一層に形成されている。
【0018】
また、図1に示すように、ワークWの電子部品は、例えば、半導体チップ2である。樹脂基板2(配線パターン)と半導体チップ2は、ボンディングワイヤ3によって電気的に接続されている。
【0019】
この樹脂基板1には、図6に示すように、中央部で整列配置されて複数の半導体チップ2(図6では9つ)が基板実装され、モールドされる実装領域4(第1領域)と、外周部で実装領域4を囲む周囲領域5(第2領域)が設けられている。この周囲領域5では配線パターン(図示せず)が絶縁性樹脂層(例えば、ソルダレジスト)によって覆われている(図8参照)。
【0020】
図6のA−A線における樹脂基板1の断面が図1〜図6で対応して示されている。なお、図6では、図1〜図5の説明を明解にするために、モールド金型12に形成されるキャビティ凹部15、ランナ16およびエアベント溝18も合わせて示している。
【0021】
次に、樹脂封止装置11の構成について説明する。図1に示すように、樹脂封止装置11は、上下に対向して配置された上型13(金型)と下型14(金型)を有するモールド金型12を備えている。モールド金型12は、上型13と下型14とが近接して型閉じされ、離間して型開きされる。上型13を固定型とし、下型14を可動型とした場合、上型13に対して下型14が近接してモールド金型12が型閉じされ、上型13に対して下型14が離間してモールド金型12が型開きされる。なお、上型13を可動型、下型14を固定型としても良く、また両者を可動型としても良い。
【0022】
上型13は、例えば合金工具鋼からなる部材が組み付けられている。上型13には、ワークWをクランプするクランプ面13aが形成されている。また、上型13には、キャビティ凹部15、ランナ16およびカル17が連通して形成されている。
【0023】
キャビティ凹部15は、樹脂基板1の実装領域4(図6)に対応するようにクランプ面13aから窪んだ平面視矩形状のものであり、クランプ時に半導体チップ2およびボンディングワイヤ3を内包するものである。また、ランナ16は、キャビティ凹部15へ溶融樹脂を注入する際の樹脂路であり、キャビティ凹部15側で樹脂路が狭められてゲートが形成される。また、カル17は、下型14で樹脂(例えば、樹脂タブレット28)が装填されるポット26に対向する位置に形成されている。
【0024】
下型14は、例えば合金工具鋼からなる部材が組み付けられている。下型14には、ワークWをクランプするクランプ面14a(図4参照)が形成される。下型14は、チェイスブロック21と、インサートブロック22(金型ブロック)と、クランパブロック23と、上テーパプレート24と、下テーパプレート25と、ポット26とを有している。このうち、インサートブロック22とクランパブロック23のそれぞれには、クランプ面14aを構成するクランプ面22a、23aが形成されている。
【0025】
チェイスブロック21には凹部が形成されており、その内部でインサートブロック22、クランパブロック23、上テーパプレート24および下テーパプレート25が組み付けられている。このチェイスブロック21の内側(図1左側)には、筒状のポット26が設けられている。このポット26内には、上下動可能なプランジャ27が挿入して設けられており、その先端で載置されるように樹脂タブレット28が供給される(図1参照)。
【0026】
下テーパプレート25は、チェイスブロック21の内側の底面上に設けられている。この下テーパプレート25には、チェイスブロック21の内側の底面と反対側にテーパ面25aが形成されている。また、図1に示すように、下テーパプレート25の側面とチェイスブロック21の内壁面との間には進退動するための隙間が形成されている。
【0027】
このような下テーパプレート25は、チェイスブロック21の内側の底面に沿って進退機構によって型開閉方向(図1では上下方向)と直交する方向(図1では左右方向)に進退動可能となっている。この進退機構は、例えば、ボールねじ29をサーボモータ30により回転駆動する構成である。サーボモータ30は、下型14の外部に設けられており、ボールねじ29の一端が取り付けられている。ボールねじ29は、チェイスブロック21に形成された貫通孔に挿入されて、他端が下テーパプレート25の側面に螺合されている。
【0028】
上テーパプレート24は、下テーパプレート25上に設けられ、また、側面がチェイスブロック21の内壁面と接して設けられている。この上テーパプレート24には、下テーパプレート25のテーパ面25aと対向するテーパ面24aが形成されている。このテーパ面24aがテーパ面25aと接して、上テーパプレート24は、下テーパプレート25上に設けられている。
【0029】
このような上テーパプレート24は、下テーパプレート25がチェイスブロック21の内側の底面に沿って進退動することで、チェイスブロック21の内壁面に沿って型開閉方向に上下動可能となっている。
【0030】
インサートブロック22は、上テーパプレート24上に設けられている。また、このインサートブロック22は、クランパブロック23の貫通孔(ガイド孔)に挿入されて設けられている。すなわち、インサートブロック22の側面側の周囲にはクランパブロック23が設けられている。なお、インサートブロック22の型開閉方向における厚さは、クランパブロック22と同じとしている。
【0031】
このようなインサートブロック22は、上テーパプレート24がチェイスブロック21の内壁面に沿って上下動することで、クランパブロック23の内壁面に沿って型開閉方向に上下動可能となっている。なお、インサートブロック22は、上テーパプレート24と固定して組み付けておくことで、クランパブロック23の内壁面に接触していても上テーパプレート24と一体に上下動することができる。
【0032】
クランパブロック23は、型開閉方向に伸縮可能な弾性部材31によって支持されている。この弾性部材31は、例えば、スプリングであり、一端がチェイスブロック21の内側の底面、他端がクランパブロック23に接して組み付けられている。モールド金型12が型開きした状態(図1参照)では、弾性部材31によって、クランパブロック23のクランプ面23aは、チェイスブロック21の内側の底面からの高さがインサートブロック22のクランプ面22aより高くなっている。
【0033】
また、クランパブロック23は、外壁面(側面)がチェイスブロック21の内壁面と接して設けられている。また、クランパブロック23には、厚さ方向(型開閉方向)に貫通する貫通孔(ガイド孔)が形成されており、この貫通孔内にインサートブロック22が挿入されている。すなわち、クランパブロック23は、内壁面がインサートブロック22の側面と接して設けられている。
【0034】
このようなクランパブロック23は、上型13と下型14とでワークWをクランプするクランプ力に抗するように弾性部材31が作用し、弾性部材31が伸縮することで、チェイスブロック21の内壁面およびチェイスブロック21の側面に沿って型開閉方向に上下動可能となっている。なお、図1〜図5では、弾性部材31を、上テーパプレート24と下テーパプレート25と重なって図示しているが、実際には、これらに形成された貫通孔に挿入している。
【0035】
次に、本実施形態におけるワークWに対する樹脂封止方法、すなわち樹脂封止装置11の動作方法について図1〜図5、図7〜図9を参照して説明する。図1〜図5は動作中の樹脂封止装置11の要部を模式的に示す断面図であり、図7は樹脂封止の際のクランプ力および樹脂圧のタイミングチャートである。図8および図9はそれぞれ図4および図5に対応するワークWの要部を模式的に示す断面図である。
【0036】
図1に示すように、対向する上型13(一方の金型)および下型14(他方の金型)を離間させて、すなわちモールド金型12を型開きさせて、下型14のクランプ面にワークWを載置する。本実施形態では、配線基板1の実装領域4(図6参照)にインサートブロック22を対応させ、周囲領域5にクランパブロック23を対応させてワークWを載置する。
【0037】
このモールド金型12が型開きした状態では、インサートブロック22のクランプ面22aは、クランパブロック23のクランプ面23aより退避している。言い換えると、クランパブロック23のクランプ面23aは、チェイスブロック21の内側の底面からの高さがインサートブロック22のクランプ面22aより高くなっている。このため、モールド金型12が型開きした状態では、下型14のクランプ面14a(図4参照)を構成するインサートブロック22のクランプ面22aおよびクランパブロック23のクランプ面23aのうち、ワークWはクランパブロック23のクランプ面23aに載置される。
【0038】
ここで、モールド金型12が型開きした状態では、インサートブロック22が最も退避した位置となるように調整されている。具体的には、インサートブロック22が設けられる上テーパプレート24に対して、下テーパプレート25を型開閉方向と直交方向において最も後退させている。このように、インサートブロック22が最も退避した位置であるので、型開きしたモールド金型12のクランパブロック23のクランプ面23aに確実にワークWを載置することができる。なお、後の工程で、配線基板1(ワークW)の厚さばらつきの調整(板厚調整)を行うための準備としても、インサートブロック22を最も退避した位置となるように調整している。
【0039】
続いて、図2に示すように、上型13および下型14を近接させて(型閉めして)、第1クランプ力C1(図7参照)でワークWをクランプすると共に、上型13のキャビティ凹部15とワークWとでキャビティ15aを形成する。
【0040】
ここでは、図7の時間t1の時点で上型13のクランプ面13aと配線基板1の周囲領域5(図6参照)とが当接し、クランプ力が加わることで弾性部材31が縮み始めて、上型13および下型14の型閉じが完了したとき(図7の時間t2の時点)、換言すれば、板厚調整が完了したときに、第1クランプ力C1となったところで弾性部材31が停止する。この弾性部材31は、第1クランプ力C1に抗してクランパブロック23を押圧している。すなわち、配線基板1(ワークW)の厚さにばらつきがあっても所定の第1クランプ力C1でワークWをクランプ(板厚調整)している。
【0041】
また、本実施形態では、第1クランプ力C1に抗して弾性部材31が縮んだ状態のクランパブロック23でワークWをクランプしている。したがって、配線基板1の周囲領域5に対してクランプする構成であるため、この領域のクランプ力が上昇すぎて回路が破断されて基板が破損する事態を確実に防止できる。
【0042】
なお、図2では、インサートブロック22のクランプ面22aとクランパブロック23のクランプ面23aとが同一水平面内にあるように示しているが、実際はわずかにクランパブロック23に対してインサートブロック22は退避している。
【0043】
続いて、図3に示すように、インサートブロック22のクランプ面22aと反対側に組み付けられた上テーパプレート24に対して、下テーパプレート25を型開閉方向と直交し下型14内から引き出す方向(右方向)に押し込んで(移動して)、テーパ面24aおよびテーパ面25aでスライドさせると共に、上テーパプレート24を介してインサートブロック22を型開閉方向(上方向)に移動させてクランプ位置を固定させる。
【0044】
板厚調整完了(図7の時間t2の時点)からクランプ力を上昇させ始める(時間t3の時点)まで第1クランプ力C1でのワークWのクランプとなる。即ち、図7に示すように、時間t2で下テーパプレート25が移動し始め、時間t3で下テーパプレート25が、上テーパプレート24とチェイスブロック21の内側の底面との間に挿入される。
【0045】
ここでは、上型13とクランパブロック23とでワークWをクランプしており、言い換えると、クランパブロック23が弾性部材31によって上型13に対して固定されている。また、インサートブロック22とクランパブロック23は同じ厚さで、図2で説明した状態では、インサートブロック22はクランパブロック23に対して退避している。したがって、この退避している分だけ、下テーパプレート25を移動させて、上テーパプレート24を介してインサートブロック22を移動させる。すなわち、インサートブロック22のクランプ面22aとクランパブロック23のクランプ面23aとが面一となってクランプ面14aを構成し、その位置がクランプ位置として固定される。
【0046】
次いで、図7に示すように、時間t3で第1クランプ力C1より強くなるようにワークWのクランプ力を上昇し始めて、第2クランプ力C2となるようにする(時間t4)。第2クランプ力C2は、第1クランプ力C1の状態から上型13および下型14をさらに近接させることで発生する。
【0047】
続いて、図4に示すように、ワークWが第1クランプ力C1より高い第2クランプ力C2でクランプされた状態で、プランジャ27を押動させてキャビティ15aが完全に充填されるまで溶融樹脂15a(溶融した樹脂タブレット15)を注入する。
【0048】
第2クランプ力C2でワークWをクランプした状態において(図7の時間t4から時間t7まで)、プランジャ27が上昇して溶融樹脂15aの注入が開始され(同図の時間t5)樹脂圧は上昇し、溶融樹脂15aが充填されたときに第1樹脂圧P1がキャビティ15aに加わる(同図の時間t6)。すなわち、時間t6までにキャビティ15a内への樹脂充填が完了する。
【0049】
また、この時間t4から時間t7までの時間帯では、図8に示すように、上型13のクランプ面13aを配線基板1(ワークW)の周囲領域5に押し付けて配線パターン32a、32b間の絶縁性樹脂層33(例えば、ソルダレジスト)の凹凸でエア路34が形成される。本実施形態では、このエア路34でエアベントしながら、キャビティ15aへ溶融樹脂28aを注入する。
【0050】
これにより、樹脂注入の際にキャビティ15a内のエアをエアベント溝18(図6参照)の他に、エア路34でも排出しているので、より確実にキャビティ15a内を完全に溶融樹脂28aで充填することができる。したがって、成形品の製造歩留まりをより向上することができる。また、板厚調整しインサートブロック22を上下のテーパプレート24、25で固定した後にクランプ力C2を加えているので樹脂基板1の厚みがばらつく場合でも全ての配線基板1を均一なクランプ力でクランプすることができるので、樹脂漏れすることなくエアの排出も確実に行うことができる。また、ポット26を挟んだ両側にワークWを配置して一括して樹脂封止するときには、同時に樹脂封止する一対の基板の厚みが異なっていたとしても均一なクランプ力でクランプすることができるので好ましい。
【0051】
次いで、図7に示すように、時間t7の時点で第2クランプ力C2より強くなるようにワークWのクランプ力を上昇させ、第3クランプ力C3となるようにする(時間t8)。第3クランプ力C3は、第1クランプ力C2の状態から上型13および下型14をさらに近接させることで発生する。
【0052】
続いて、図5に示すように、ワークWが第2クランプ力C2より高い第3クランプ力C3でクランプされた状態で、プランジャ27をさらに押動させてキャビティ15aで充填された溶融樹脂28aに対して第1樹脂圧P1より高い第2樹脂圧P2(成形圧)で加圧する。
【0053】
図7に示すように、時間t8から第3クランプ力C3でワークWをクランプしたままとする。この際には、第3クランプ力C3にした後にプランジャ27がさらに上昇してキャビティ15a内で充填された溶融樹脂15aに対して加圧され始め(時間t9)、所定位置までプランジャ27を上昇させた時点(時間t10)で第2樹脂圧P2がキャビティ15aに加わる。すなわち、時間t10以降は、第2樹脂圧P2(成形圧)がキャビティ15a内で充填された溶融樹脂15aに加わる。なお、時間t10から所定時間第2樹脂圧P2を加え、溶融樹脂28aを加熱硬化させた後、モールド金型12を型開きしてワークW(成形品)が取り出される。
【0054】
また、この時間t8以降の時間帯では、図9に示すように、配線基板1(ワークW)の周囲領域5に上型13のクランプ面13aを第3クランプ力C3で押し付けることで、図8で示したエア路34が潰される。これにより、第2樹脂圧P2がキャビティ15a内の溶融樹脂28aに加わったときでも、周囲領域5での樹脂漏れを防止することができる。したがって、成形品の製造歩留まりをより向上することができる。
【0055】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0056】
例えば、前記実施形態では、ワークを構成する基板として樹脂基板に適用した場合について説明した。これに限らず、表面が膜(例えば、保護膜、めっき膜など)で覆われている半導体ウエハ、セラミック基板、リードフレームなどにも適用することができる。また、ワークで樹脂封止する部材として電子部品に適用した場合について説明した。これに限らず、樹脂封止して保護される部品などにも適用することができる。例えば、電子部品としては、チップ状部品のコンデンサにも適用することができる。
【0057】
また、前記実施形態では、インサートブロック22とクランパブロック23とを別に設け、クランパブロック23を弾性部材31で支持する場合について説明した。これに限らず、インサートブロック22およびクランパブロック23を一体の金型ブロックとし、これを弾性部材31で支持する場合にも適用することができる。
【0058】
また、前記実施形態では、エア路34(図8参照)を形成してキャビティ15a内のエアを排出しながら溶融樹脂28aをキャビティ15a内に注入した場合について説明した。これに限らず、エアベント溝18(図6参照)でエア路が確保されているのであれば、溶融樹脂28aの注入の際、キャビティ15a内のエアを排出することができるので、エア路34が形成されなくとも良い。ただし、前記実施形態で示したように、エアベント溝18の他にエア路34が形成されている場合は、より排出効果を期待できる。
【0059】
また、前記実施形態では、板厚調整を行う工程を含む場合について説明したが、板厚調整の工程を含まない場合にも有効である。例えば、まず、対向する上型13および下型14を離間させて、下型14のクランプ面にワークWを載置する。次いで、上型13および下型14を近接させて、低クランプ力(第1クランプ力C1相当)でワークWをクランプすると共に、上型13のキャビティ凹部15とワークWとでキャビティ15aを形成し、キャビティ15aが完全に充填されるまで第1樹脂圧P1で溶融樹脂28aを注入する。次いで、ワークWが低クランプ力より高い高クランプ力(第3クランプ力C3に相当)でクランプされた状態で、キャビティ15aで充填された溶融樹脂28aに対して第1樹脂圧P1より高い第2樹脂圧P2で加圧する。このようにキャビティ15a内を完全に充填する際に低クランプ力でワークWをクランプするので、樹脂注入の際にキャビティ15a内のエアをエアベント溝18(図6参照)の他に、エア路34でも排出できる。これにより、確実にキャビティ15a内を完全に溶融樹脂28aで充填することができる。したがって、成形品の製造歩留まりをより向上することができる。
【0060】
また、前記実施形態では、図7を参照して、最終的な第2樹脂圧P2より弱い第1樹脂圧P1でキャビティ15aを溶融樹脂28aで完全に充填する場合について説明した。すなわち、第1樹脂圧P1(充填圧力)および第2樹脂圧P2(最終成形圧力)のそれぞれで所定時間維持して二段の樹脂圧で樹脂モールドする場合について説明した。これに限らず、図10に示すように、第2樹脂圧P2を所定時間維持した一段の樹脂圧で樹脂モールドする場合にも有効である。例えば、まず、下型14のクランプ面にワークWを載置する。次いで、上型13および下型14を近接させて、板厚調整機構により低クランプ力(第1クランプ力C1相当)でワークWをクランプした後、第2クランプ力相当でクランプする。この際に、プランジャ27を上昇(押動)させ溶融樹脂28aの注入を開始する。次いで、溶融樹脂28aの充填が完了するよりも十分に手前の段階において、高クランプ力(第3クランプ力C3に相当)でクランプした後、溶融樹脂28aの充填を完了させる。次いで、プランジャ27をさらに上昇(押動)させてキャビティ15aで充填された溶融樹脂28aに対して第2樹脂圧P2相当の樹脂圧(最終成形圧力)で加圧する。このようにキャビティ15a内を完全に充填される手前まで低クランプ力(第2クランプ力C2に相当)でワークWをクランプするので、樹脂注入の際にキャビティ15a内のエアをエアベント溝18(図6参照)の他に、エア路34でも排出できる。これにより、確実にキャビティ15a内を完全に溶融樹脂28aで充填することができる。したがって、成形品の製造歩留まりをより向上することができる。
【符号の説明】
【0061】
13 上型
13a クランプ面
14 下型
14a クランプ面
15 キャビティ凹部
15a キャビティ
22 インサートブロック(金型ブロック)
24 上テーパプレート
24a テーパ面
25 下テーパプレート
25a テーパ面
27 プランジャ
28a 溶融樹脂
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)対向する一方および他方の金型を離間させて、前記他方の金型のクランプ面にワークを載置する工程と、
(b)前記(a)工程後、前記一方および他方の金型を近接させて、第1クランプ力で前記ワークをクランプすると共に、前記一方の金型のキャビティ凹部と前記ワークとでキャビティを形成する工程と、
(c)前記(b)工程後、前記他方の金型の金型ブロックのクランプ面と反対側に組み付けられ、第1テーパ面を有する第1テーパプレートに対して、前記第1テーパ面と対向する第2テーパ面を有する第2テーパプレートを型開閉方向と直交する方向に移動して、前記第1および第2テーパ面でスライドさせると共に、前記第1テーパプレートを介して前記金型ブロックを型開閉方向に移動させてクランプ位置を固定させる工程と、
(d)前記(c)工程後、前記一方および他方の金型をさらに近接させて、前記ワークが前記第1クランプ力より高い第2クランプ力でクランプされた状態で、プランジャを押動させて前記キャビティへ溶融樹脂を注入する工程と、
を含むことを特徴とする樹脂封止方法。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂封止方法であって、
前記(d)工程では、前記キャビティが完全に充填されるまで第1樹脂圧で溶融樹脂を注入し、
(e)前記(d)工程後、前記一方および他方の金型をさらに近接させて、前記ワークが前記第2クランプ力より高い第3クランプ力でクランプされた状態で、前記プランジャをさらに押動させて前記キャビティで充填された溶融樹脂に対して前記第1樹脂圧より高い第2樹脂圧で加圧する工程を含むことを特徴とする樹脂封止方法。
【請求項3】
請求項1記載の樹脂封止方法であって、
(e)前記(d)工程後、前記一方および他方の金型をさらに近接させて、前記ワークが前記第2クランプ力より高い第3クランプ力でクランプされた状態で、前記プランジャをさらに押動させて前記キャビティで充填された溶融樹脂に対して成形圧力で加圧する工程を含むことを特徴とする樹脂封止方法。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の樹脂封止方法において、
前記他方の金型は、型開閉方向に伸縮可能な弾性部材によって支持され、前記金型ブロックを囲むクランパブロックを有し、
前記(b)工程では、前記第1クランプ力に抗して前記弾性部材が縮んだ状態の前記クランパブロックで前記ワークをクランプすることを特徴とする樹脂封止方法。
【請求項5】
請求項4記載の樹脂封止方法において、
前記ワークは、第1領域と前記第1領域を囲む第2領域が設けられ、前記第1領域では電子部品が実装され、前記第2領域では配線パターンが絶縁性樹脂層によって覆われた基板であり、
前記(a)工程では、前記第1領域に前記金型ブロックを対応させ、前記第2領域に前記クランパブロックを対応させて前記ワークを載置し、
前記(d)工程では、前記一方の金型のクランプ面を前記第2領域に押し付けて前記配線パターン間の前記絶縁性樹脂層の凹凸で形成されたエア路でエアベントしながら、前記キャビティへ溶融樹脂を注入することを特徴とする樹脂封止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−248780(P2012−248780A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121286(P2011−121286)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000144821)アピックヤマダ株式会社 (194)
【Fターム(参考)】