説明

欠陥検出方法および欠陥検出装置

【課題】画像形成装置用のブレードの製品検査において、その側面の粗さや反射率に関わりなく凝固物等を検出できる欠陥検出方法を提供する。
【解決手段】投光装置22の光を透明または半透明の板状体10の側面に照射し、その反射光を撮像装置21によって撮像して得られた画像を、記憶・処理装置24に取り込んで画像処理を行う。撮像された画像は複数の枠で分割され、各枠領域の受光量の正規分布に対する標準偏差を算出し、隣接する枠領域との標準偏差の差分値を算出して基準値と比較する。基準値として、予め、目視によって判断される板状体側面の最小不良箇所を撮像して得られた画像における標準偏差の差分値を用いることで、製品ごとの表面粗さや反射率の差によるノイズを回避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明または半透明の板状体の側面に光を照射して欠陥を検出する欠陥検出方法および欠陥検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
板状体の欠陥を判別する方法として、人手で行う方法、検査装置を用いて行う方法があった。人手で行う方法に関しては、製品の高精度化に伴い、微小な欠陥を発見する必要があり、そのために長時間集中しなければならない根気のいる作業となり、精神的な負担も大きくなり疲労も倍増することになる。加えて、視覚による検査は、検査員の主観的な検査判定であって、検査員の判断に依存し、検査員が異なる場合や、同じ検査員であっても、検査時間の推移によって、検査水準が変化する可能性がある。
【0003】
上記検査員に代わる方法として、特許文献1に開示されたように、CCDカメラ等の撮像装置による外観検査方法も知られている。これは、透明な製品から反射した光が、製品に欠陥があった場合には、その欠陥部分で光の乱反射が起こることを利用し、反射光による画像を撮像装置により撮影して映像信号化し、その映像信号を2値化処理することで欠陥を検出する方法である。
【特許文献1】特開平8−304295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、透明または半透明の板状体側面部に存在する欠陥に対して外観を正確に検査できるのは、側面部表面にある大きな凹凸や、ゴミ・ケバなど、反射光を大きく遮断する異物不良のときである。製品表面の緩やかな凹凸に対しては、光量の変化量が小さく出てしまうために、一定の閾値を設定した2値化処理のみでは、製品ごとの側面平坦部の粗さや反射率の差によるノイズを拾ってしまい、正確な検査ができないという未解決の課題があった。
【0005】
本発明は上記従来の技術の有する未解決の課題に鑑みてなされたものであり、画像形成装置用のブレード等の板状体の側面の欠陥を高精度で検出できる欠陥検出方法および欠陥検出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の板状体側面の欠陥検出方法は、透明または半透明の板状体の側面の欠陥を検出する欠陥検出方法において、投光装置の光を板状体の側面に照射し、その反射光による画像を撮像装置によって撮像する工程と、撮像された画像を複数の演算領域に分割し、各演算領域における受光量の、正規分布に対する標準偏差を算出する工程と、隣接する2つの演算領域ごとに標準偏差の差分値を算出し、基準値と比較する工程と、を有し、前記基準値が、目視により判断される板状体の側面の最小不良箇所を撮像して得られた画像における標準偏差の差分値であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
板状体の側面を撮像し、その画像を複数の演算領域に分割し、演算領域ごとの受光量の正規分布に対する標準偏差を算出し、隣接する演算領域との間の標準偏差の差分値を算出する。その差分値と、同じ板状体側面の目視に基づく基準値とを比較して欠陥を検出する。
【0008】
製品ごとの基準値を用いることで、表面粗さや反射率の差に関わらず、安定した高精度な欠陥検査を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1に示すように、検査ステージ1上の板状体10の側面に撮像装置21のレンズ21aを対峙させ、投光装置22からの光を板状体10の側面で反射させて、反射光による画像を撮像装置21により撮像する。
【0011】
撮像装置21によって得られた画像を画像処理装置である記憶・処理装置24で以下のようにデジタル処理し、欠陥を検出する。
【0012】
図2に示すように、撮像装置21によって得られた画像のエッジEの間の有効領域Sを複数の枠Lによって分割し、各枠領域(演算領域)ごとの受光量の、正規分布に対する標準偏差を算出し、さらに、隣接する枠領域との標準偏差の差分値を算出する。他方、板状体10の側面の目視により判断される最小不良箇所(凹凸等の異物が最小である部位)を撮像し、その画像による標準偏差の差分値を基準値として、前記枠領域のそれぞれの差分値を基準値と比較することにより欠陥を検出する。
【0013】
そして、駆動装置25によって検査ステージ1を逐次移動させて、板状体10の側面全体を撮像し、すべての画像の画像処理の結果を表示装置26に表示する。
【実施例】
【0014】
撮像装置としてCCDカメラを使用し、その撮影範囲を板状体側面の検査対象範囲内に設置する。
【0015】
撮像装置として用いたCCDカメラは、カメラの画素配置が2次元平面のものとなっている、2次元用のカメラを用いた。このカメラは1画像に付き約30万画素のもので、1画像に含まれる約30万の画素は各々アナログ階調となっており255段階の光量に分割されているものを選択した。しかしながら、板状体側面の欠陥を検出可能な撮像装置であればこのカメラ仕様に限定するものではない。
【0016】
検査時には板状体を支持する検査ステージを移動させることにより、撮像装置が板状体の検査対象範囲に対して逐次撮影を行い、検査対象範囲全域を撮影する。取り込んだ画像より、画像処理を行い、欠陥がある場合には、検査ステージの駆動装置より出されているトリガをもとに取り込み画像の画像番号を算出する。同時に欠陥が発見された画像における画像内部での位置情報を算出し、これらを組み合わせることによって検査物である板状体における不良箇所の位置情報を得る。同時に、欠陥の大きさ、1回の検査における欠陥の数等も記憶して表示可能としておく。
【0017】
対象となる透明または半透明の板状体側面の持つ製品としての公差の観点から、撮像した画像において製品平坦部の荒れや反射率の差に関わり無く処理が可能なような枠の設置位置、枠の個数および枠の大きさ設定に苦慮した。
【0018】
すなわち、単に、撮像された画像を複数の枠によって分割し、枠領域ごとの受光量の標準偏差を算出し、隣接する枠領域との標準偏差の差分値を算出し、差分値と基準値を比較して、判定させればよいのではなく、適合配置があった。
【0019】
枠の設置位置は、撮像した画像において、板状体側面の平坦部の粗さや反射率の差が軽減できるような位置に配置する必要がある。
【0020】
なお、撮像した画像において、板状体側面の粗さおよび反射率の差が軽減できるような枠の個数、枠領域の大きさは実験的に最適値を得ることができる。
【0021】
本実施例においては、1つの撮像した画像を製品短手方向の板状体側面の両端のエッジ位置が撮像できるように設定した。枠領域の数は、取り込んだ画像の光量ムラに影響されない程度の画素数を得るという観点より、約1万〜3万画素程度になるように製品短手方向に対して10個とし、両端のエッジ位置から10画素内側の位置から均等に分割・配置した。
【0022】
また、1つの画像内に存在する枠領域の位置は、製品寸法の公差、駆動装置のはしり精度の影響を受けても設定した枠領域が検査領域外とならないように、両端のエッジ位置は、1つの撮像した画像ごとに、画像処理により位置を算出させ枠領域の設定が可能なようにしておく。
【0023】
製品長手方向へは、設定した枠領域が1つの撮像した画像領域を全て満たすようにという観点から1分割とし、長方形になるように設定した。
【0024】
画像判定処理は、図3のフローチャートに示すように、ステップS101で検査範囲の画像取り込み、エッジ位置の抽出、検査領域の抽出を行い、ステップS102で輝度変換をし、ステップS103でノイズ軽減のために平滑化処理を行う。その後、ステップS104で枠を割り当て、ステップS105で枠領域ごとの受光量の標準偏差を算出し、ステップS106で隣接する枠領域との標準偏差の差分値を算出し、ステップS107で差分値と基準値を比較する。これによって、ステップS108で枠領域内に存在する透明または半透明の凝固物の検出が可能となる。
【0025】
取り込み画像の輝度変換の調整値は255階調中の好きな数値に設定可能である。好ましくは、製品の公差左右されにくい輝度にするという観点より135付近が望ましいが、製品内部を良好に撮影可能であれば、この数値に限定するものではない。
【0026】
平滑化処理に関しては、データの伝送時に発生する外因的な影響によるノイズ、カメラの画素欠けによるノイズ等を低減させるために設定している。なお、検出条件、設置状況の違いに対応した設定値の数値変更は可能なようにしておく。
【0027】
目視により判断される最小の不良箇所を撮像し、その画像により数値化された差分値を基準値とすることにより、枠領域に存在する透明または半透明の凝固物の検出が可能となる。本実施例では、撮像した画像において板状体側面の平坦部の粗さや反射率の差が軽減できるような数値にするという観点より、基準値は2.2と設定した。なお、板状体側面の平坦部の粗さや、光の反射率の差が軽減できるような数値であれば、基準値はこの数値に限定されるものではなく、1.0〜6.5の範囲内で任意に設定できる。
【0028】
なお、本実施例における検査物である板状体は、画像形成装置のブレードとして用いるものである。
【0029】
図4は検査工程を示すフローチャートである。投光装置よりの光が、板状体にて反射され、レンズを通り結像し、撮像装置によって撮影される。撮影された画像は記憶・処理装置に転送される。その際転送された画像番号は記憶・処理装置に記憶するようにしておく。
【0030】
撮像装置の設置位置については、撮像した画像において、板状体の像が撮影できる範囲にする必要がある。撮像可能範囲の位置は撮像される画像において、板状体側面の両エッジが映る範囲でよいが、本実施例ではレンズの被写界深度が板状体側面部を十分にカバーできる幅に設定した。
【0031】
ステップS1で電源供給を受けた投光装置から均一化された光量の可視光を発光する。ステップS2で検査ステージの駆動を開始し、ステップS3で画像取り込みを開始する。
【0032】
投光装置より発光されるスポット光の大きさは、レンズ倍率と撮像装置視野の観点からφ15程度とした。このスポット光は板状体側面に照射される。このスポット光は板状体の側面に欠陥がある場合、欠陥によって影となり、その欠陥によって形成された光が、レンズを通過し結像し、撮像装置によって撮影され、記憶・処理装置に画像データとして取り込まれる。
【0033】
レンズは、近接撮影時に最良な光学性能が得られる近接撮影専用レンズを用い、フォーカス機能およびアイリス絞り機能を有し光量を調節可能なものを使用し、撮像装置において像がハレーションを起こすことなく、精度よく結像できるようなものを選択した。
【0034】
ステップS4で検査ステージを駆動し、ステップS5で画像を取り込む。ステップS6で画像は撮像装置から記憶・処理装置に電気信号で転送され、記憶装置に画像データとして収納される。
【0035】
撮像装置にて得られた画像データは、2次元カメラを用い2次元平面のものとなっており、1画像に付き約30万画素のものであり、各々の画素はアナログ階調となっており255段階の光量に分割できるよう設定されているものを選択した。なお、透明または半透明の板状体側面の欠陥を検出可能な撮像装置であればこのカメラ仕様に限定されるものではない。
【0036】
取り込んだ画像は、まず初めにノイズ等を取り除くため、画像フィルター処理を行っている。これは、1つの画素が突発的に周囲の隣合う画素と大きく異なる光量の場合など、画素の突発的なノイズを除去させている処理である。
【0037】
ステップS7で、前述のように、撮像された画像を複数の枠で分割した枠領域内の光量の標準偏差を算出し、隣接する枠領域との標準偏差の差分値を算出し、目視により判断される最小不良箇所を撮像して得られた画像に基づく差分値を基準値として、比較する。このことにより、各枠領域に存在する透明または半透明の凝固物の検出が可能となる。
【0038】
その際には、レンズの倍率、撮像装置の設置角度、撮像可能範囲の位置などの設定は予め処理装置へ登録しておく。前記情報を元に、欠陥の位置情報、大きさを記憶装置上で算出し、記憶装置に記録を行い、表示装置へ出力する。
【0039】
記憶装置は、検査ステージの駆動装置と連動させ、設定した計測分解能に従い検査ステージを制御し、板状体側面の検査位置を順次変えてステップS4からステップS8までを繰り返すことで、板状体側面全域を検査する。さらに、ステップS9で画像取り込みを終了し、ステップS10で製品不良を判定し、ステップS11で表示装置に出力する。
【0040】
(比較例)
撮像された画像を分割する枠を設けずに二値化にて処理する方法で欠陥検査を行い、上記実施例と比較した。
【0041】
そのときに用いた板状体のサンプルは、透明または半透明の板状体の側面部に半透明の凝固物が埋没しており、表面が緩やかな凸になっているもので、平坦部の粗さも、透明度も、各サンプルにより違うものを20本選択した。また、凝固物の凸形状の大きさは、拡大顕微鏡による測定により、高さ方向に30〜80μmのものを選択した。
【0042】
比較例においては、製品の表面粗さに関わらず20本中14本のサンプルの凝固物箇所の検出が可能であった。
【0043】
これに対して、画像を分割した枠領域の光量の標準偏差を算出し、隣接する枠領域との標準偏差の差分値を算出して基準値と比較する本実施例の方法では、製品の表面粗さや透明度の違いに関わらず20本中全てのサンプルの凝固物の検出が可能であった。
【0044】
このことより、本実施例による板状体の欠陥検出方法は、比較例による検査方法より正確な検査が可能であることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】一実施例による欠陥検出装置の構成を示すもので、(a)はその全体を示す模式立面図、(b)は板状体と投光装置との関係を示す平面図である。
【図2】取り込み画像を分割する枠を説明する図である。
【図3】画像を解析する流れを示すフローチャートである。
【図4】板状体の検査工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0046】
1 検査ステージ
21 撮像装置
21a レンズ
22 投光装置
24 記憶・処理装置
25 駆動装置
26 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明または半透明の板状体の側面の欠陥を検出する欠陥検出方法において、
投光装置の光を板状体の側面に照射し、その反射光による画像を撮像装置によって撮像する工程と、
撮像された画像を複数の演算領域に分割し、各演算領域における受光量の、正規分布に対する標準偏差を算出する工程と、
隣接する2つの演算領域ごとに標準偏差の差分値を算出し、基準値と比較する工程と、を有し、
前記基準値が、目視により判断される板状体の側面の最小不良箇所を撮像して得られた画像における標準偏差の差分値であることを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項2】
基準値が1.0ないし6.5であることを特徴とする請求項1記載の欠陥検出方法。
【請求項3】
板状体が画像形成装置のブレードであることを特徴とする請求項2記載の欠陥検出方法。
【請求項4】
撮像装置と、板状体の側面に光を照射し、その反射光を撮像装置に導入する投光装置と、前記撮像装置によって得られた前記反射光による画像を処理する画像処理装置と、を有し、前記画像処理装置において、前記画像を複数の演算領域に分割し、各演算領域における受光量の、正規分布に対する標準偏差を求めて、隣接する2つの演算領域ごとに標準偏差の差分値を算出し、目視により判断される前記板状体の側面の最小不良箇所を撮像して得られた画像に基づく基準値と比較することで、前記板状体の側面の欠陥を検出することを特徴とする欠陥検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−198762(P2007−198762A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14520(P2006−14520)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】