説明

歩行者横断支援システム及び歩行者横断支援方法

【課題】 歩行者の利用経路によっては、夜間等において歩行者が横断歩道を横断する際に交通信号制御装置を何度も操作する必要性が生じ煩雑性を感じる。
【解決手段】 基地局3a、3bは交通信号機2a、2bとそれにより交通規制される横断歩道を通信エリアに含む。歩行者の歩行経路を登録データベース12に予め登録しておき、携帯通信端末1a、1bが基地局3a、3bの通信エリア内に入った時に、携帯通信端末1a、1bが識別番号と共に現在位置の位置情報を送信し、基地局3a、3bを介して基地局13にて受信させる。交通信号機制御システムサーバ11は、受信された識別番号に対応する番号が登録データベース12に登録されているときには受信した位置情報と識別番号に対応して登録されている交通信号機情報とに基づいて、交通信号機制御信号を基地局13から基地局3a、3bを介して制御部4a、4bへ送信し、信号を切替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歩行者横断支援システム及び歩行者横断支援方法に係り、特に横断歩道を横断する歩行者に対して、その横断を円滑に行えるように支援する歩行者横断支援システム及び歩行者横断支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の交通信号機においては、自動車等が通行する車道の交通渋滞解消を重視し、特に夜間においては歩行者横断利用が少ないこともあり、歩行者が横断する際には交通信号制御装置を操作することにより、横断する方法が一般的である。しかしながら、歩行者の利用経路によっては、幾度となく交通信号制御装置を操作する必要性が生じ煩雑性を感じることとなる。
【0003】
ところで、現在急速に普及している携帯通信端末を利用して、この携帯通信端末を所持する歩行障害者が横断歩道を横断する際の歩行者横断支援システムが従来より知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1記載の従来の歩行者横断支援システムでは、障害者が所持する携帯通信端末と、横断歩道付近のみを通信エリアとする信号機基地局と、信号機基地局と無線回線で接続された移動通信システムと、信号機基地局と接続された信号機制御部と、交通信号機で構成され、携帯通信端末が信号機基地局の通信エリアに入ると、信号機基地局は移動通信システムに対して位置登録供給を行い、移動通信システムがこの位置登録要求を受けて携帯通信端末の所持者が障害者であることを認識すると、信号機制御部に対して信号機設定信号を送出して、信号機制御部を介して交通信号機に対してハンディキャップに応じた障害者サポートを行う構成である。
【0004】
一方、緊急車両の優先通行支援を行うために、緊急車両の走行ルート上の各交通信号機の車両通行時刻を、その緊急車両の速度変化に合わせて補正する通行支援システムも従来より知られている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2記載の通行支援システムでは、支援装置が、緊急車両から衛星測位手段により導き出した目的地に到るルートの情報及び緊急車両の位置情報を移動体通信網を介して受信し、その位置情報及びその受信時刻に基づいて、緊急車両の走行速度を算出し、上記ルート上の各交通信号機の緊急車両の通行予測時刻を算出し、算出した通行予測時刻に合わせて交通信号機を車両通行を優先するように制御する構成である。
【0005】
また、移動体からの位置情報と道路地図情報及び情報表示盤、交通信号機の場所情報をもとに情報表示盤及び交通信号機を一括制御することにより移動体の進行制御を行うようにした交通集中制御システムも知られている(例えば、特許文献3参照)。この特許文献3記載のシステムによれば、情報表示盤に自動車等の移動体の接近情報、進行方向の表示と交通信号機の制御をすることで、移動体に対する最適経路の伝達と、他の交通、歩行者への注意の喚起と交差点での交通の遮断を行うものである。
【0006】
【特許文献1】特開2001−243593号公報
【特許文献2】特開2000−296881号公報
【特許文献3】特開平9−115091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、特許文献1記載の従来の歩行者横断支援システムは、横断歩道を横断する歩行者が障害者である場合の、ハンディキャップに応じた障害者サポートを行うために交通信号機を制御する構成であり、健常者を含めた歩行者の横断支援システムではない。
【0008】
また、特許文献2及び特許文献3記載の発明は、いずれも緊急車両などのような、歩行者に比べて極めて高速で移動する車両(移動体)を目的地へ到達するまでの時間短縮を目的として交通信号機を制御するものであり、健常者を含めた歩行者の横断支援システムではなく、また、車両に比べて極めて低速な歩行者に対しては、基地局の通信エリアに歩行者が入ったことを検出すれば足り、歩行速度を演算して歩行速度に対応した交通信号機の制御は不要である。
【0009】
更に、特に夜間などでは、主に外出先からの帰宅が想定され、歩行者の歩行経路が限定されるのが通常であるが、かかる限定された歩行経路を歩行する歩行者に対する横断歩道の横断支援に関しては特許文献1〜3のいずれにも開示されていない。
【0010】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、予め歩行者の歩行経路を登録することで、その歩行経路上にある交通信号機を制御することにより、交通信号制御装置の操作を不要とし得る歩行者横断支援システム及び歩行者横断支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、第1の発明は、横断歩道を横断する歩行者が携帯する携帯通信端末からの情報に基づいて、交通信号機を制御する歩行者横断支援システムであって、交通信号機及びその交通信号機が設けられた交差点の横断歩道を含む範囲を少なくとも通信エリアとする第1の基地局と、第1の基地局により受信された交通信号機制御信号に基づいて、第1の基地局の通信エリア内の交通信号機の信号状態を制御する制御部と、歩行者が携帯しており、第1の基地局の通信エリア内に入った時に、現在の位置情報を取得して第1の基地局へ固有の識別番号と共に無線送信する機能を備えた携帯通信端末と、歩行者の歩行経路の途中にある交通信号機の位置情報を含む歩行経路情報を、歩行者の識別情報と共に予め登録している登録データベースと、第1の基地局との間で所定の伝送網を介して通信する第2の基地局と、第2の基地局に接続されており、携帯通信端末から送信された位置情報及び識別番号が、第1の基地局及び所定の伝送網及び第2の基地局を介して入力されたときは、受信入力された識別番号に対応する識別情報が登録データベースに登録されているか否か検索し、登録されているときには、交通信号機制御信号を生成して、受信した位置情報が示す位置付近の交通信号機を通信エリアとする第1の基地局に対して、生成した交通信号機制御信号を第2の基地局から送信させて第1の基地局により受信させるシステムサーバ装置とを有し、第1の基地局により受信されたシステムサーバ装置からの交通信号機制御信号を制御部に供給して、交通信号機を歩行者の横断歩道の横断を許可する青信号に切り替え制御することを特徴とする。
【0012】
この発明では、歩行者の歩行経路の途中にある交通信号機を通信エリア内とする第1の基地局の当該通信エリアに携帯通信端末を携帯する歩行者が入った時に、携帯通信端末から現在位置の位置情報と識別番号とをシステムサーバ装置に伝送し、システムサーバ装置で交通信号機制御信号を生成して受信した位置情報が示す位置付近の交通信号機の制御部に送信して、交通信号機を歩行者の横断歩道の横断を許可する青信号に切り替え制御するようにしたため、歩行者が横断歩道を横断する際に、歩行者の横断歩道の横断を許可する青信号に強制的に切り替えるために、歩行者により操作される交通信号制御装置を操作しなくても横断歩道を横断することができる。
【0013】
また、上記の目的を達成するため、第2の発明は、交通信号機が、歩行者が横断歩道を横断する際に、歩行者の横断歩道の横断を許可する青信号に強制的に切り替えるために、歩行者により操作される交通信号制御装置を備えていることを特徴とする。
【0014】
また、上記の目的を達成するため、第3の発明は、システムサーバ装置が、歩行者が横断歩道を横断する際に、歩行者の横断歩道の横断を許可する青信号に強制的に切り替えるための交通信号制御装置に対して、歩行者の操作が許可されている時間帯において第2の基地局が受信した携帯通信端末の現在の位置情報及び識別番号のうち、受信した識別番号に対応する識別情報が、登録データベースに登録されているか否かの検索及び交通信号機制御信号の生成及び送信を行うことを特徴とする。
【0015】
また、上記の目的を達成するため、第4の発明は、第1の基地局が、交通信号機に設置されており、交通信号機とその交通信号機により交通規制される横断歩道を含むエリアを通信エリアとすることを特徴とする。
【0016】
また、上記の目的を達成するため、第5の発明は、同じ交差点にあり、かつ、異なる方向の複数の横断歩道の交通を規制するための異なる複数の交通信号機をそれぞれ通信エリアとする複数の第1の基地局に対して、複数の横断歩道をそれぞれほぼ同時に横断しようとする複数の歩行者の複数の携帯通信端末からそれぞれ位置情報及び識別番号がほぼ同時に送信されたときには、システムサーバ装置は、複数の第1の基地局及び所定の伝送網及び第2の基地局を介して受信した複数の位置情報及び識別番号の入力に基づき、青信号から赤信号又は赤信号から青信号に切り替わってから予め設定した一定時間経過した時点で信号切り替えを行わせる交通信号機制御信号を第1の基地局へ送信することを特徴とする。この発明では、異なる方向の横断歩道をほぼ同時に横断する歩行者が携帯する携帯通信端末からそれぞれ位置情報及び識別番号がほぼ同時に送信されたときには、システムサーバ装置は、複数の第1の基地局及び所定の伝送網及び第2の基地局を介して受信した複数の位置情報及び識別番号の入力に基づき、青信号から赤信号又は赤信号から青信号に切り替わってから予め設定した一定時間経過した時点で信号切り替えを行わせる交通信号機制御信号を第1の基地局へ送信するようにしたため、交通に混乱をきたすことなく、歩行者の横断支援が適切にできる。
【0017】
また、上記の目的を達成するため、第6の発明は、横断歩道を横断する歩行者が携帯する携帯通信端末からの情報に基づいて、交通信号機を制御する歩行者横断支援方法であって、交通信号機及びその交通信号機が設けられた交差点の横断歩道を含む範囲を少なくとも通信エリアとする第1の基地局の当該通信エリア内に、携帯通信端末を携帯する歩行者が入った時に、携帯通信端末が現在の位置情報を取得して第1の基地局へ固有の識別番号と共に無線送信する第1のステップと、第1の基地局が受信した携帯通信端末の現在の位置情報及び識別番号を、所定の伝送網を介して第2の基地局へ送信する第2のステップと、第2の基地局が受信した携帯通信端末の現在の位置情報及び識別番号のうち、識別番号に対応する識別情報が、歩行者の歩行経路の途中にある交通信号機の位置情報を含む歩行経路情報を、歩行者の識別情報と共に予め登録している登録データベースに登録されているか否か検索する第3のステップと、第3のステップの検索により識別番号に対応する識別情報が登録データベースに登録されていると確認した時には、交通信号機制御信号を生成して、受信した位置情報が示す位置付近の交通信号機を通信エリアとする第1の基地局に対して、生成した交通信号機制御信号を第2の基地局から送信させる第4のステップと、第1の基地局が受信した交通信号機制御信号に基づいて、第1の基地局の通信エリア内の交通信号機を歩行者の横断歩道の横断を許可する青信号に切り替え制御する第5のステップとを含むことを特徴とする。
【0018】
この発明では、歩行者の歩行経路の途中にある交通信号機を通信エリア内とする第1の基地局の当該通信エリアに携帯通信端末を携帯する歩行者が入った時に、携帯通信端末から送信される現在位置の位置情報と識別番号とに基づいて、交通信号機制御信号を生成して受信した位置情報が示す位置付近の交通信号機に送信して、交通信号機を歩行者の横断歩道の横断を許可する青信号に切り替え制御するようにしたため、歩行者が横断歩道を横断する際に、歩行者の横断歩道の横断を許可する青信号に強制的に切り替えるために、歩行者により操作される交通信号制御装置を操作しなくても横断歩道を横断することができる。
【0019】
また、上記の目的を達成するため、第7の発明は、上記の第3のステップを、歩行者が横断歩道を横断する際に、歩行者の横断歩道の横断を許可する青信号に強制的に切り替えるための交通信号制御装置に対して、歩行者の操作が許可されている時間帯において、第2の基地局が携帯通信端末の現在の位置情報及び識別番号を受信したときに、受信した識別番号に対応する識別情報が、登録データベースに登録されているか否か検索することを特徴とする。
【0020】
また、上記の目的を達成するため、第8の発明は、第1のステップにおいて、同じ交差点にあり、かつ、異なる方向の複数の横断歩道の交通を規制するための異なる複数の交通信号機をそれぞれ通信エリアとする複数の第1の基地局に対して、複数の横断歩道をそれぞれほぼ同時に横断しようとする複数の歩行者の複数の携帯通信端末からそれぞれ位置情報及び識別番号がほぼ同時に送信されたときには、第4のステップは、複数の第1の基地局及び所定の伝送網及び第2の基地局を介して受信した複数の位置情報及び識別番号の入力に基づき、青信号から赤信号又は赤信号から青信号に切り替わってから予め設定した一定時間経過した時点で信号切り替えを行わせる交通信号機制御信号を第1の基地局へ送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、登録した歩行経路中に存在する交通信号機を歩行横断する際に、交通信号機制御装置を操作することなく歩行横断することができるようにしたため、交通信号制御装置を操作する煩雑さから解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は本発明になる歩行者横断支援システムの一実施の形態のシステム構成図を示す。同図において、本実施の形態の歩行者横断支援システムは、携帯通信端末1a及び1bと、交通信号機2a及び2bと、交通信号機制御システムサーバ11とから大略構成されている。交通信号機2a、2bには、各々基地局3a、3bと、交通信号機制御部4a、4bと、交通信号制御装置5a、5bとが設けられている。また、交通信号機制御システムサーバ11は、例えば、本実施の形態の歩行者横断支援サービスを提供する国土交通省により運営されるサーバ装置であり、登録データベース12及び基地局13に接続されている。
【0023】
携帯通信端末1a及び1bは、歩行者により携帯されて当該歩行者と共に移動する移動端末装置である。交通信号機2a及び2bは、赤信号、黄信号及び緑信号のいずれかを切り替えて点灯表示する信号表示部を備えており、通常は一定時間毎に横断歩道の歩行者横断と、歩行者横断に替えて車道の車両通過とを交互に許可するように信号の表示色を切り替える周知の交通信号機である。基地局3a、3bは、交通信号機2a、2bに付随する基地局であり、自己を中心とする通信エリア内に在圏する携帯通信端末1a、1bと無線通信を行う。
【0024】
交通信号機制御部4a、4bは、基地局3a、3bに接続されており、基地局3a、3bと基地局13との間の無線回線を介して交通信号機制御システムサーバ11と接続されており、交通信号機制御システムサーバ11の制御の下に交通信号機2a、2bを制御する。交通信号制御装置5a、5bは、歩行者により操作可能な装置で、歩行者が操作することにより、交通信号機2a、2bを当該操作時点より短時間で歩行者横断可能な信号状態(表示色)に切り替え制御するための装置である。
【0025】
基地局13は、交通信号機2a、2bに設置された基地局3a、3bとの間で、図示しない所定の伝送網を介して無線通信する。交通信号機制御システムサーバ11は、基地局13を経由して携帯通信端末1a、1bの位置情報を取得し、事前登録してある登録データベース12を参照して、交通信号機制御部4a、4bを制御することにより、交通信号機2a、2bを制御する。登録データベース12は、本実施の形態の歩行者横断支援サービスの提供を受ける携帯通信端末1a、1bの所有者により、当該所有者が歩行する出発地点から到着地点までの歩行経路が予め当該所有者の固有の識別番号と対応付けて登録されている(なお、以下の説明では登録されている識別番号を登録番号ともいうものとする。)。
【0026】
図2は登録データベース12の登録内容の一例を示す図である。同図に示すように、登録データベース12のうちの一部の登録内容21は、携帯通信端末1a(又は1b)の所有者が歩行する歩行経路の出発地点22及び到着地点23と、出発地点22から到着地点23までの歩行経路の情報とを含む。この歩行経路の情報中には、歩行経路の途中に交通信号機2a、2bが存在する交差点24a、24bを判別可能とする情報も含まれているものとする。
【0027】
携帯通信端末1a及び1bはそれぞれ同一構成で、例えば図3のブロック図に示す携帯電話機の構成とされている。同図において、携帯通信端末の一例である携帯電話機は、電話機全体を統括的に制御する制御部31と、各種の情報を入力する複数のボタンからなる操作部32と、各種の画像を表示する表示部33と、表示部33を駆動して画像を表示させる表示駆動部34と、プログラムや電話帳データなどが記憶されている記憶部35と、最寄りの基地局との間で無線通信する無線部36と、無線部36で受信した受信信号や無線部36から送信する送信信号に対して、所定の信号処理を行う信号処理部37と、音声処理を行う音声処理部38と、受話音声信号などを電気−音響変換して音声として発音するスピーカ39と、送話音声を音響−電気変換して送話音声信号を生成して音声処理部38へ出力するマイク40と、自端末の位置情報を取得する位置情報取得部41とから構成される。位置情報取得部41としては、例えば、周知の全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)の一部を構成する複数の人工衛星からのGPS信号を受信して位置情報を計算により求めるGPS受信機などを用い得る。
【0028】
本実施の形態の携帯通信端末(図1の1a、1b)は、通話時は、操作部32から入力されたダイヤル番号(発信時)又は所定の着信応答操作信号が制御部31に入力され、これにより制御部31から信号処理部37、無線部36を介して最寄りの基地局へ送信信号が無線出力され、更に基地局から公衆網などを介して相手端末との間で所定のシーケンスに従って通話路が確立される。その後、周知の方法で相手端末との間で通話がなされる。
【0029】
このような公知の通話機能を有する携帯通信端末(図1の1a、1b)は、記憶部35のプログラムに基づき、基地局との位置登録の通信の際に本実施の形態の歩行者横断支援サービスを受ける歩行者であることを示す、予め記憶部35に登録されている登録番号(識別番号)を基地局へ送信する機能を有する。この登録番号は、図1の登録データベース12にも登録されている。また、位置情報取得部41によりGPS信号を受信し計算して得た自端末の位置情報を、制御部31、信号処理部37及び無線部36を介して無線送信する機能も有する。
【0030】
次に、本実施の形態の動作について、図4のフローチャートを併せ参照して更に詳細に説明する。事前に携帯通信端末の所有者が、本実施の形態の歩行者横断支援サービスを受けるために、当該所有者が歩行する出発地点から到着地点までの歩行経路の情報を、予め当該所有者の固有の識別番号と対応付けて登録する(ステップS1)。登録データベース12内の登録内容21は、図2に示すように、携帯通信端末を所有する歩行者の出発地点22及び到着地点23の各位置情報と、通過する交差点に存在する交通信号機2a、2bの位置情報とを含む。
【0031】
その後、上記の携帯通信端末の所有者が自分の携帯通信端末を携帯して、登録されている歩行経路の出発点(図2の22)を出発し、当該歩行経路に沿って歩行し、例えば、図1に1aで示すように交通信号機2aに付随する基地局3aの通信エリア内に入ると(ステップS2)、携帯通信端末1aは図3に示した位置情報取得部41によりGPS信号を受信して自端末の位置情報を計算により取得し(ステップS3)、その位置情報を自端末の固有の登録番号と共に制御部31、信号処理部37及び無線部36を介して無線送信する。
【0032】
無線送信された位置情報及び登録番号は、基地局3aにより受信された後、所定の伝送網を介して基地局13へ送信されて受信され、交通信号機制御システムサーバ11に供給される(ステップS4)。交通信号機制御システムサーバ11は、受信入力された位置情報及び登録番号を登録データベース12に事前登録されている登録内容21と比較する(ステップS5)。
【0033】
交通信号機制御システムサーバ11は、受信した登録番号(すなわち、本実施の形態の歩行者横断支援サービスを受けようとする歩行者)が登録データベース12に存在し経路登録者と一致している比較結果が得られた場合には(ステップS6)、その登録番号と共に受信した位置情報に基づき、歩行者の現在位置が交通信号機2aが存在する交差点に近付いていることを認識し、制御信号を生成して基地局13及び所定の伝送網を介して基地局3aへ送信して交通信号機制御部4aに交通信号機2aを、歩行者が横断歩道を歩行できるように制御するように促す(ステップS7)。これにより、歩行者は夜間等の歩行者横断利用が少ないために、従来は歩行者が横断する際に交通信号制御装置を操作する必要があった交通信号機2aのある交差点であっても、交通信号制御装置5aを操作することなく、殆ど時間待ちすることなく、その交差点の横断歩道を横断することができる。
【0034】
なお、ステップS6で交通信号機制御システムサーバ11は、受信した登録番号が登録データベース12に存在しておらず不一致の比較結果を得た場合には、本実施の形態の歩行者横断支援サービスを受ける正当な歩行者ではないと判断して、上記の交通信号機制御は行わない。従って、この場合は、交通信号制御装置5aを操作することで従来通りの動作が可能となる。なお、この場合、交通信号機制御システムサーバ11は、交通信号機制御は行わない旨のメッセージ、あるいはアラームメッセージを生成して、基地局13及び所定の伝送網を介して基地局3aをそれぞれ経由して携帯通信端末1aにそれを受信して画面に表示させるようにしてもよい。
【0035】
上記の例は歩行者の現在位置が交通信号機2aが存在する交差点に近付いて基地局3aの通信エリア内に携帯通信端末が入った場合の動作であるが、歩行者の現在位置が交通信号機2bが存在する交差点に近付いて基地局3bの通信エリア内に携帯通信端末が図1に1bで示すように入った場合も、上記と同様の動作が行われるため、従来は歩行者が横断する際に交通信号制御装置を操作する必要があった交通信号機2bのある交差点であっても、交通信号制御装置5bを操作することなく、殆ど時間待ちすることなく、その交差点の横断歩道を横断することができる。
【0036】
なお、図5に示すように、本実施の形態の歩行者横断支援サービスに登録した登録者の歩行者AとBが、別方向から同時に同じ交差点に近付いてきたような特殊な場合は、直交する道路の交通規制を行う交通信号機CとDは通常の信号機の制御が行われる。すなわち、図5において上下方向に伸びる車道51の自動車及びその車道51上にある横断歩道53の歩行者の交通規制を行うための交通信号機Cと、図中、左右方向に伸びる車道52の自動車及びその車道52上にある横断歩道54の歩行者の交通規制を行うための交通信号機Dとは、通常は一方が赤信号である時には、他方は青信号であり、歩行者Aが交通信号機Cに付随する基地局(図1の3a又は3bに相当)の通信エリア内に入った時に交通信号機Cの信号状態が一定時間以上継続していれば、その信号状態を切り替える(例えば、赤信号であれば青信号に切り替え、青信号であれば赤信号に切り替える)。
【0037】
一方、歩行者Bも交通信号機Dに付随する基地局(図1の3b又は3aに相当)の通信エリア内に、歩行者Aが交通信号機Cに付随する基地局の通信エリア内に入ると同時に入るので、交通信号機Cとは逆の信号状態となるように制御される。ただし、交通信号機C及びDの信号状態が切り替わってから上記の一定時間経っていない場合は信号状態の切り替えは上記の一定時間経ってから行われる。通常の交通信号機の制御と同様に、信号状態を切り替えるには一定時間の信号状態の保持が必要であるためである。
【0038】
なお、本発明は、夜間等の人通りが少なく、歩行者が横断する際に交通信号制御装置を操作する必要がある時間帯において、交通信号制御装置を備えた交通信号機に適用するものである。また、携帯通信端末未所持の歩行者が基地局3a、3bの通信エリア内に入ってきた場合等は、交通信号制御装置5a、5bを操作することで従来通りの動作が可能であることは勿論である。
【0039】
なお、本発明は以上の実施の形態に限定されるものではなく、例えば、基地局3a、3bは交通信号機2a、2bに設置された基地局であるものとして説明したが、交通信号機2a、2bが設置された場所付近に設置されており、交通信号機2a、2bをその通信エリアに含む基地局でもよい。また、上記の実施の形態では、携帯通信端末の位置情報の取得方法は、GPS信号を受信して取得するものとして説明したが、携帯通信端末が無線通信する最寄りの基地局の存在位置から得てもよいし、位置の分かっている複数の基地局との交信の電波強度差や伝搬時間遅れ等から位置情報を算出する方法でもよく、公知の位置情報取得方法のいずれでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の歩行者横断支援システムの一実施の形態のシステム構成図である。
【図2】図1中の登録データベースの登録内容の一例を示す図である。
【図3】図1中の携帯通信端末の一例のブロック図である。
【図4】本発明システムの動作説明用フローチャートである。
【図5】登録した歩行者が同時に交差点に異なる方向から進入する場合の本発明システムの動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0041】
1a、1b 携帯通信端末
2a、2b 交通信号機
3a、3b、13 基地局
4a、4b 交通信号機制御部
5a、5b 交通信号制御装置
11 交通信号機制御システムサーバ
12 登録データベース
21 登録データベース内容
22 出発地点
23 到着地点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断歩道を横断する歩行者が携帯する携帯通信端末からの情報に基づいて、交通信号機を制御する歩行者横断支援システムであって、
前記交通信号機及びその交通信号機が設けられた交差点の横断歩道を含む範囲を少なくとも通信エリアとする第1の基地局と、
前記第1の基地局により受信された交通信号機制御信号に基づいて、該第1の基地局の通信エリア内の前記交通信号機の信号状態を制御する制御部と、
前記歩行者が携帯しており、前記第1の基地局の通信エリア内に入った時に、現在の位置情報を取得して前記第1の基地局へ固有の識別番号と共に無線送信する機能を備えた携帯通信端末と、
歩行者の歩行経路の途中にある交通信号機の位置情報を含む歩行経路情報を、該歩行者の識別情報と共に予め登録している登録データベースと、
前記第1の基地局との間で所定の伝送網を介して通信する第2の基地局と、
前記第2の基地局に接続されており、前記携帯通信端末から送信された前記位置情報及び識別番号が、前記第1の基地局及び前記所定の伝送網及び前記第2の基地局を介して入力されたときは、受信入力された前記識別番号に対応する識別情報が前記登録データベースに登録されているか否か検索し、登録されているときには、前記交通信号機制御信号を生成して、受信した前記位置情報が示す位置付近の前記交通信号機を通信エリアとする前記第1の基地局に対して、生成した前記交通信号機制御信号を前記第2の基地局から送信させて該第1の基地局により受信させるシステムサーバ装置と
を有し、前記第1の基地局により受信された前記システムサーバ装置からの前記交通信号機制御信号を前記制御部に供給して、前記交通信号機を前記歩行者の前記横断歩道の横断を許可する青信号に切り替え制御することを特徴とする歩行者横断支援システム。
【請求項2】
前記交通信号機は、前記歩行者が横断歩道を横断する際に、該歩行者の該横断歩道の横断を許可する青信号に強制的に切り替えるために、該歩行者により操作される交通信号制御装置を備えていることを特徴とする請求項1記載の歩行者横断システム。
【請求項3】
前記システムサーバ装置は、前記歩行者が横断歩道を横断する際に、該歩行者の該横断歩道の横断を許可する青信号に強制的に切り替えるための交通信号制御装置に対して、前記歩行者の操作が許可されている時間帯において前記第2の基地局が受信した前記携帯通信端末の現在の位置情報及び識別番号のうち、受信した該識別番号に対応する識別情報が、前記登録データベースに登録されているか否かの検索及び前記交通信号機制御信号の生成及び送信を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の歩行者横断支援システム。
【請求項4】
前記第1の基地局は、前記交通信号機に設置されており、該交通信号機とその交通信号機により交通規制される横断歩道を含むエリアを通信エリアとすることを特徴とする請求項1記載の歩行者横断支援システム。
【請求項5】
同じ交差点にあり、かつ、異なる方向の複数の横断歩道の交通を規制するための異なる複数の交通信号機をそれぞれ通信エリアとする複数の前記第1の基地局に対して、前記複数の横断歩道をそれぞれほぼ同時に横断しようとする複数の歩行者の複数の前記携帯通信端末からそれぞれ前記位置情報及び識別番号がほぼ同時に送信されたときには、前記システムサーバ装置は、前記複数の第1の基地局及び前記所定の伝送網及び前記第2の基地局を介して受信した前記複数の位置情報及び識別番号の入力に基づき、青信号から赤信号又は赤信号から青信号に切り替わってから予め設定した一定時間経過した時点で信号切り替えを行わせる前記交通信号機制御信号を前記第1の基地局へ送信することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の歩行者横断支援システム。
【請求項6】
横断歩道を横断する歩行者が携帯する携帯通信端末からの情報に基づいて、交通信号機を制御する歩行者横断支援方法であって、
前記交通信号機及びその交通信号機が設けられた交差点の横断歩道を含む範囲を少なくとも通信エリアとする第1の基地局の当該通信エリア内に、携帯通信端末を携帯する歩行者が入った時に、該携帯通信端末が現在の位置情報を取得して前記第1の基地局へ固有の識別番号と共に無線送信する第1のステップと、
前記第1の基地局が受信した前記携帯通信端末の現在の位置情報及び識別番号を、所定の伝送網を介して第2の基地局へ送信する第2のステップと、
前記第2の基地局が受信した前記携帯通信端末の現在の位置情報及び識別番号のうち、該識別番号に対応する識別情報が、前記歩行者の歩行経路の途中にある交通信号機の位置情報を含む歩行経路情報を、該歩行者の識別情報と共に予め登録している登録データベースに登録されているか否か検索する第3のステップと、
前記第3のステップの検索により前記識別番号に対応する前記識別情報が前記登録データベースに登録されていると確認した時には、交通信号機制御信号を生成して、受信した前記位置情報が示す位置付近の前記交通信号機を通信エリアとする前記第1の基地局に対して、生成した前記交通信号機制御信号を前記第2の基地局から送信させる第4のステップと、
前記第1の基地局が受信した前記交通信号機制御信号に基づいて、該第1の基地局の通信エリア内の前記交通信号機を前記歩行者の前記横断歩道の横断を許可する青信号に切り替え制御する第5のステップと
を含むことを特徴とする歩行者横断支援方法。
【請求項7】
前記第3のステップは、前記歩行者が横断歩道を横断する際に、該歩行者の該横断歩道の横断を許可する青信号に強制的に切り替えるための交通信号制御装置に対して、前記歩行者の操作が許可されている時間帯において、前記第2の基地局が前記携帯通信端末の現在の位置情報及び識別番号を受信したときに、受信した該識別番号に対応する識別情報が、前記登録データベースに登録されているか否か検索することを特徴とする請求項6記載の歩行者横断支援方法。
【請求項8】
前記第1のステップにおいて、同じ交差点にあり、かつ、異なる方向の複数の横断歩道の交通を規制するための異なる複数の交通信号機をそれぞれ通信エリアとする複数の前記第1の基地局に対して、前記複数の横断歩道をそれぞれほぼ同時に横断しようとする複数の歩行者の複数の前記携帯通信端末からそれぞれ前記位置情報及び識別番号がほぼ同時に送信されたときには、前記第4のステップは、前記複数の第1の基地局及び前記所定の伝送網及び前記第2の基地局を介して受信した前記複数の位置情報及び識別番号の入力に基づき、青信号から赤信号又は赤信号から青信号に切り替わってから予め設定した一定時間経過した時点で信号切り替えを行わせる前記交通信号機制御信号を前記第1の基地局へ送信することを特徴とする請求項6又は7記載の歩行者横断支援方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−201894(P2006−201894A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−11101(P2005−11101)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】