説明

毛髪および外被品質を改良するための経口投与可能な組成物

本発明は、毛髪または外被品質を改良するための経口投与可能な組成物であって、活性成分として細胞のエネルギー代謝を刺激する分子、または酸化防止剤、またはそれらの組合せ混合物の有効量を経口的に許容可能なキャリヤー中に含んでなる、組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトまたは動物における毛髪または外被品質を改良する方法に関する。本発明は、毛髪成長を刺激する方法にも関する。本発明は、外被または毛髪品質および成長を改良するための経口投与可能な組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
近年、毛髪や外被の損傷の増加が進行してきている。実際に、毛髪は年がら年中外部から様々なストレスを受け続けている。すなわち、毛髪は太陽からの紫外線、大気汚染、および埃のような自然のストレスだけでなく、シャンプー、ブラッシング、ドライヤーからの熱、および染毛および漂白のような美容術のような一層強いストレスに暴露されている。その結果、乾燥して荒れた毛髪、枝毛の数の増加、切れ毛、垂れ毛、および毛髪繊維の強度減少などの周知の毛髪の問題が引き起こされる。
【0003】
従って、上記の毛髪の損傷を予防しまたは軽減するために、様々な試みが様々な方法から提案されてきた。
【0004】
シャンプー、ヘアーリンス、ヘアートリートメントなど様々な毛髪化粧品組成物が知られている。例えば、特許公告JP-A-63-105000号明細書には、アシル化ペプチドを含む様々な毛髪化粧品組成物が開示されている。米国特許第6,251,379号明細書では、第四アンモニウム塩でカチオン化するケラトースとシリコーン誘導体を含む毛髪化粧品組成物が提供されている。カチオン性界面活性剤も、毛髪繊維に滑らかさを付与する目的で頻繁に用いられる。しかしながら、これによって付与される光沢は完全に満足なモノではなく、その上、カチオン性界面活性剤を多量に混和することは安全性に関して好ましくない。
【0005】
他の試みは、経口投与可能な組成物によって行われてきた。例えば、米国特許第5,250,300号明細書には、家畜用の液体内服薬であって、天然のステビア植物の茎からの抽出物のみを含むものが開示されている。これは、家畜の肉体的構成を改良し、更に家畜の肉品質、乳品質および毛髪の光沢を改良するためのものである。
【0006】
また、栄養介入が、ペットの皮膚品質および外被の状態を改良するためのリノール酸と亜鉛の組合せが開示されているWO 9856263号明細書におけるような毛髪状態に強い影響を与えることがあることが知られている。
【0007】
しかしながら、ヒトおよび動物の毛髪または外被品質、特に艶および毛髪成長を改良するための効果的な栄養法を提供することが当該技術分野で未だに求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明の概要
この目的に対して、本発明は、毛髪または外被品質を改良するための経口投与可能な組成物であって、活性成分として細胞のエネルギー代謝を刺激する分子、または酸化防止剤、またはそれらの組合せ混合物の有効量を経口的に許容可能なキャリヤー中に含んでなる、組成物を提供する。
【0009】
このような組成物は、ヒトまたは動物の毛髪の成長も改良する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実際に、意外なことには、L-カルニチンのようなエネルギー代謝を刺激する幾つかの分子、および酸化防止剤が毛髪および外被品質および状態を改良することかできることを見出した。
【0011】
組成物は、ヒトまたは動物の完全且つ栄養的にバランスのとれた食物であることができる。これは、例えば、栄養補助食品、医薬または動物用医薬組成物であることもできる。
【0012】
本発明による組成物は、毛髪の厚みおよび光沢を増し、毛髪の組成および構造を改良し、皮脂産生または組成を変更することにより多数の利点を提供することができる。
【0013】
もう一つの態様では、本発明は、ヒトまたは動物の毛髪または外被品質を改良することを目的とする組成物を調製するための、細胞のエネルギー代謝を刺激する分子、酸化防止剤、またはそれらの組合せ混合物の有効量の使用に関する。
【0014】
もう一つの態様では、本発明は、ヒトまたは動物の毛髪または外被品質を改良する方法であって、個体に上記の経口投与可能な組成物を投与することを含んでなる、方法を提供する。
【0015】
発明の詳細な説明
第一の態様によれば、毛髪または外被品質を改良するための経口投与可能な組成物であって、活性成分として細胞のエネルギー代謝を刺激する分子、酸化防止剤、またはそれらの組合せ混合物の有効量を経口的に許容可能なキャリヤー中に含んでなる、組成物に関する。
【0016】
細胞のエネルギー代謝を刺激する分子は、例えば、L-カルニチン、クレアチン、脂肪酸(モノまたはポリ不飽和脂肪酸、特にω-3脂肪酸)、カルジオリピン、ニコチンアミド、炭水化物、およびそれらの天然供給源でよい。
【0017】
好ましくは、上記分子の量は、体重1kg当たり1日当たり少なくとも1mgであり、更に好ましくは、体重1kg当たり1日当たり1mg-1gである。
【0018】
酸化防止剤は、タンパク質の酸化を減少させる(例えば、タンパク質カルボニルの形成を防止する)化合物である。それらは、チオールの供給源(例えば、リポ酸、システイン、シスチン、メチオニン、S-アデノシル-メチオニン、タウリン、グルタチオン、およびそれらの天然供給源)であるか、または例えば、イン・ビボでのそれらの生合成をアップレギュレーションする化合物である。本発明による酸化防止剤は、ビタミンC、ビタミンE(トコフェロールおよびトコトリエノール)、カロテノイド(カロテン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチンなど)、ユビキノン(例えば、CoQ1O)、茶カテキン(例えば、エピガロカテキンガレート)、ポリフェノールおよび/またはジテルペン(例えば、カウヘオール(kawheol)およびカフェストール)を含むコーヒー抽出物、イチョウ抽出物、プロアントシアニジンがリッチなブドウまたはブドウ種子抽出物、香辛料抽出物 (例えば、ローズマリー)、イソフラボンおよび関連フィトエストロゲンを含む大豆抽出物、および酸化防止剤活性を有するフラボノイドの他の供給源のような他の酸化防止剤、細胞の酸化防止剤防御をアップレギュレーションする化合物(例えば、グルタチオンS-トランスフェラーゼの増加に対するウルソデオキシコール酸、カタラーゼの増加に対するウルソール酸、スーパーオキシドジスムターゼの増加に対するチョウセンニンジンおよびジンゲノシド、およびそれらの天然供給源、すなわち草本薬)であってもよい。
【0019】
好ましくは、酸化防止剤の量は、体重1kg当たり1日当たり少なくとも0.025mgであり、更に好ましくは、体重1kg当たり1日当たり0.025mg-250mgである。
【0020】
キャリヤーは、任意の食料または医薬生成物、または栄養補給物、または経口投与用の組成物でよい。食料または医薬キャリヤーの例は、乳、ヨーグルト、凝乳、チーズ、発酵乳、乳を基剤とした醗酵生成物、アイスクリーム、醗酵シリアルを基剤とした生成物、乳を基剤とした粉末、幼児処方または錠剤、液状懸濁液、乾燥した経口栄養補給物、湿りのある経口栄養補給物、ドライ-チューブ-フィーディング(dry-tube-feeding)、ペットフード製品である。経口投与用組成物は、カプセル、軟質カプセル、錠剤、ペーストまたはトローチ、ガム、または飲用溶液またはエマルションでよい。キャリヤーの調製方法は、通常の知識である。
【0021】
本発明による組成物は、通常の賦形剤、特に甘味料、香味料、または防腐剤を含んでなることもできる。これは、更にプレバイオティックおよび/またはプロバイオティック微生物を含んでなることもできる。
【0022】
本発明の組成物は、当該技術分野で周知の任意の手法によって処方することができる。
【0023】
一態様では、個体で所望な効果を達成するのに十分な量の目的物質の少なくとも1つを含む医薬組成物を調製することができる。この組成物は、錠剤、液体、乾燥した経口栄養補給物、湿った経口栄養補給物、ドライチューブ-フィーディング(dry tube-feeding)、ウェットチューブ-フィーディング(wet tube-feeding)などでよい。医薬組成物は、更に様々な性質のそれぞれの活性分子をターゲット組織に送るのに適するキャリヤーおよび賦形剤も含む。キャリヤー/賦形剤の種類およびそれらの量は、物質の性質、および予想される薬剤送達および/または投与の様式によって変化する。熟練者であれば、彼自身の知識に基づいて、活性化合物を皮膚にターゲット設定するのに適当な成分および生薬形態を選択することが理解されるであろう。
【0024】
もう一つの態様では、ヒトが消費するための食料組成物を調製する。この組成物は、栄養上完全な処方、酪農製品、冷蔵または貯蔵安定な飲料、スープ、食糧栄養補給物、代用食、および栄養バーまたは菓子でよい。
【0025】
栄養処方は、好ましくは腸内投与可能であり、例えば、粉末、液体濃縮物、または即席飲料の形態である。粉末状栄養処方を生成したいときには、均質化混合物を噴霧乾燥機または凍結乾燥機のような適当な乾燥装置に移して、粉末に転換する。
【0026】
もう一つの態様では、通常の食料製品を本発明による組合せで強化することができる。例えば、発酵乳、ヨーグルト、新鮮なチーズ、レンネット乳(renneted milk)、菓子バー、朝食用シリアルフレークまたはバー、飲物、粉末乳、大豆基剤製品、乳以外の醗酵製品、または臨床栄養用の栄養補給物である。次に、エネルギー代謝を刺激する分子の量は、好ましくは少なくとも50重量ppmであり、酸化防止剤は、好ましくは少なくとも10重量ppmである。
【0027】
もう一つの態様では、ペットフード製品を調製することができる。ペットフード処方物は、好ましくは完全で栄養上バランスのとれたペットフードである。これは、ペットの食餌栄養補給物であるかまたは医薬組成物の形態であることもできる。本発明による栄養的に完全なペットフード処方物は、任意の適当な形態、例えば、粉末、乾燥粗挽き穀物、またはペレットまたは他の乾燥形態、押出形態、半湿式または湿式形態、例えば、厚切り(chunk)または塊(loaf)またはプディングでよい。これは冷蔵することができ、または貯蔵安定な製品として提供することができる。このペットフードは、通常の方法によって製造することができる。
【0028】
もう一つの態様では、食糧栄養補給物を調製してペットフード品質を改良するようにすることができる。食餌添加物としては、それらをカプセル化してもよくまたは粉末形態で提供することができ、湿っていてもまたは乾燥していても主食と共にまたはとは別個に包装することができる。例えば、本発明による選択された物質を含む粉末は、粉末形態で、またはゲルまたは脂質または他の適当なキャリヤーに加えたものをサシェに詰めることができる。これらの別個に包装した単位は、主食と一緒に、または使用者の指示に従って主食または御馳走と共に用いるマルチユニットパックで提供することができる。
【0029】
本発明による食料組成物は、毛髪の厚みおよび光沢を増し、毛髪の組成および構造を改良し、皮脂産生または組成を変更することを目的とする。
【0030】
他の態様によれば、本発明は、細胞のエネルギー代謝を刺激する分子、酸化防止剤、またはそれらの組合せの有効量を用いて、ヒトまたは動物の毛髪または外被品質を改良しようとすることに関する。
【0031】
最後の態様によれば、本発明は、ヒトまたは動物の外被または毛髪品質を改良する方法であって、個体に上記の組成物を投与することを含んでなる、方法を提供する。
【0032】
上記組成物は、個体に通常の食事の栄養補給物としてまたは栄養が完全な食物の一成分として投与することができる。上記のような栄養的に完全な食物を調製するのが好ましい。
【0033】
好ましくは、有益な効果を得るために個体によって消費される組成物の量は、その大きさ、その種類、およびその年齢によって変化する。しかしながら、体重1kg当たり1日当たり少なくとも1mgのL-カルニチンの量および体重1kg当たり1日当たり少なくとも0.025mgの酸化防止剤の量が、通常適当である。
【0034】
下記の実施例は単に例示のために示すものであり、本出願明細書の主題を制限するものと解釈すべきではない。総ての百分率は、特に断らない限り重量で示す。
【実施例1】
【0035】
例1 本発明による食糧栄養補給物の効果のイン・ビボ試験
1. 材料および方法
1.1 研究デザイン:
食餌介入は、12月齢で試験した。マウスを無作為に12匹ずつ6群に分割し、3ヶ月間餌A、B、C、DおよびEを給餌した。マウスは全試験期間中自由に食物および水を摂ることができ(自由給餌)、12時間ずつの明暗サイクルを受けさせた。動物の体重を1週間に1回測定した。
【0036】
1.2 動物:
雄マウスC57/BL6は、9週齢のものをIffa credo (フランス)から入手した。3週間の適応後、マウス(12週齢)を1匹ずつ収容して、栄養介入までコントロール食餌を与えた。
【0037】
1.3 食餌
18%タンパク質(大豆およびホエー)、11%脂肪(大豆油)、59%炭水化物(澱粉+スクロース)、および10%セルロースから構成されるコントロール食餌(食餌A)に、活性成分を補足した。これらの食餌は、下記の通りである:
食餌A-コントロール: 18%タンパク質(大豆およびホエー)、11%脂肪、59%炭水化物、10%セルロース。
食餌B: 食餌A + 0.3% L-カルニチン。
食餌C-酸化防止剤のカクテル: 食餌A+0.19%ビタミンC、0.03% ビタミンE、0.075%ブドウ種子抽出物、0.4%システイン。
食餌D: 食餌A+0.3%L-カルニチン+食餌Cの酸化防止剤のカクテル。
食餌E: 食餌A+0.0375%イチョウ抽出物(Linnea)。
【0038】
1.4 毛髪皮脂脂質測定
1.4.1 毛髪試料採取および皮脂脂質の抽出
マウス毛髪を動物の背中の小さな部分から採取し、アルゴンを満たしたネジ蓋付き試験管に-80℃で保管した。毛髪皮脂脂質を、ヘプタン4mlで抽出した。簡単に説明すれば、試験管を1分間激しく振盪し、5000rpmで5分間遠心分離した後、脂質を含む上相を除去した。脂質相を窒素下で蒸発させ、乾燥した脂質を最後にヘプタン(1000μl)に溶解した後、-80℃で使用まで保管した。
【0039】
1.4.2 毛髪皮脂脂質の定性分析
脂質を自動サンプラー(ATS4-Merck)でスポットし、シリカゲルをコーティングした10x20cmガラスプレート上で一次元高性能薄層クロマトグラフィー(HPTL)によって分離した。脂質分離には、下記の相を用いた:ヘプタン、トルエン、およびヘプタン/ジクロロメタン/酢酸(70/30/1)。ワックスおよびステロールエステルは最初の2回の移動中に分離し、極性脂質は3回目の移動中に分離した。スクワレン、コレステロールエステル、ワックスエステル、トリグリセリド、ジグリセリド、リノール酸およびコレステロールには、外部脂質標準を用いた。
【0040】
1.4.3 毛髪皮脂脂質の定量分析
それぞれの試料1μlの容量をLicrospher DIOLカラム(5pm)に注入し、ヘプタンおよびヘプタン/イソプロパノール/ブタノールを移動相として用いて分離した後、光散乱検出器(DDL31-Eurosep)に結合した高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)上で定量した。スクワレン、コレステロールエステル、ワックスエステル、トリグリセリド、ジグリセリド、遊離脂肪酸、およびコレステロールからなる外部脂質標準を、定量に用いた。データーは、毛髪1mg当たりの脂質のμg数として表した。
【0041】
1.5 外被外観の官能評価
毛髪光沢の官能評価は、目で捉えられた情報に基づいている。光沢は、保護毛髪直線性、密度および滑らかさのような毛髪繊維特性によって変化すると考えられる。光沢の認知は評価される試料の色によって影響を受けることが多く、暗い色は明るい色より光沢が強いように見える。
【0042】
事前に訓練を受けていない単独の個人が、犠牲になった外被光沢の官能評価を試みた。外被外観は、外被の艶および脂っぽさ、毛髪密度および白髪の存在について1-10の等級で評価した。
【0043】
外被の外観に寄与することができる幾つかの他の成分、すなわち毛髪密度、脂っぽさ、および灰色毛髪の存在によって、外被変化の観察を試みた。
【0044】
2. 結果
2.1 総毛髪皮脂脂質の定量
2.1.1 総脂質
HPLC分析によって測定した脂質をそれぞれのコントロール時間に対する分散の片側分析(1w-ANOVA)と比較した後、ANOVAが0.95の信頼水準で有意であるときにはLSD-マルチ-比較法(最小有意差)を行った。予め、群内の分散をBartlett均一性試験によって比較した。メジアンおよびロウバスト(robust)群内分散を伴うロウバストANOVAも行って、本発明者らの統計学的結論を確認した。
【0045】
表1に示されるように、成熟マウスの総脂質は、L-カルニチンと組み合わせた酸化防止剤カクテルによって有意に増加する。酸化防止剤カクテルのみでは、コントロールマウス(食餌A)と比較したとき、総脂質は有意に増加しない。食餌E(イチョウ)およびB(L-カルニチン)は有意な変化を誘導しない。
【0046】
【表1】

【0047】
2.1.2 総脂質組成物
酸化防止剤カクテルのみまたはL-カルニチンと組み合わせた酸化防止剤カクテルを含む食餌を与えたマウスで観察される総脂質の増加は、主として極性および無極性脂質の量の変化によるものである(下表2A参照)。
【0048】
【表2】

【0049】
2.1.3 無極性脂質
酸化防止剤カクテルのみまたはL-カルニチンと組み合わせた酸化防止剤カクテルを補足した食餌(食餌CおよびD)を与えたマウスは、総ての他の群と比較したとき無極性脂質の量は有意に高くなった(表2A)。
【0050】
2.1.4 トリグリセリド
皮脂に含まれるトリグリセリドは、群間で有意差はなかった(表2A)。
【0051】
2.1.5 極性脂質
極性脂質(コレステロール、ジグリセリドおよび脂肪酸)は、酸化防止剤のみまたはL-カルニチンと組み合わせた酸化防止剤(食餌CおよびD)を与えたマウスでは有意に高かった(表2A)。
【0052】
2.2 毛髪皮脂脂質バランス
コントロール食餌(A)を与えたマウスの毛髪脂質組成のHPLC分析では、文献に報告されたものと一致する脂質バランスのデーター、すなわち46%無極性脂質(コレステロールおよびワックスエステル)、46%トリグリセリド、および8%極性脂質(コレステロール、ジグリセリドおよび脂肪酸)が得られた(表2B)。
【0053】
【表3】

【0054】
酸化防止剤カクテルのみ(食餌C)またはL-カルニチンと組み合わせた食餌(食餌D)では、無極性脂質の割合はコントロールでの46%と比較して毛髪皮脂では約60%に増加した(表2B)。イチョウ(食餌E)またはL-カルニチン(食餌B)を補足した食餌は、コントロール食餌(A)と比較して、脂質バランスにほとんど影響しなかった。
【0055】
HPTLCによる皮脂脂質の分析は、スクワレンはマウスの毛髪皮脂に存在しないことを示している(データーは示さず)。
【0056】
2.3 犠牲になった外被外観である艶、毛髪密度、脂っぽさ、および灰色毛髪の存在の官能評価
一般に、官能評価では、外被の艶は、酸化防止剤(食餌C)を与えたマウスで他の総ての群よりも光沢が強くなり、イチョウ(食餌E)を与えたマウスでコントロールマウス(食餌A)より光沢が強くなったことを除き、有意差を示さなかった。L-カルニチンと組み合わせた酸化防止剤(食餌D)を与えたマウスでは、灰色毛髪が一層増加した。
【0057】
3. 結論
L-カルニチンと組み合わせたまたは組み合わせていない酸化防止剤のカクテル(それぞれ、食餌Dおよび食餌C)を含む食餌を与えたマウスでは、コントロール食餌(A)と比較して、無極性(コレステロールエステルおよびワックスエステル)、および極性脂質(脂肪酸、ジグリセリドおよびコレステロール)、並びに毛髪皮脂中の総脂質が増加した。
【0058】
これらの2種類の食餌では、脂質バランスの変更も観察され、無極性脂質の割合はコントロール食餌での46%と比較して60%まで増加した。
【0059】
官能評価は、他の総ての食餌を与えたマウスと比較して酸化防止剤のみのカクテル(ビタミンC、ビタミンE、ブドウ種子抽出物、およびシステイン)を補足した食餌を与えたマウスについて最高得点となった。興味深いことには、酸化防止剤のカクテルとL-カルニチンを組み合わせた食餌(食餌D)も皮脂における同様な脂質変化を誘発したが、艶については良好な評価は得られなかった。この差の考えられる理由の一つは、光沢が黒色で最良の評価を受けることが以前に明らかにされているので、この食餌を与えたマウスで灰色毛髪の量が多くなることである。食餌Dによって誘発される灰色毛髪の量が増加することについて現在説明はされていないが、食餌Dを長期間(20ヶ月)投与してもこのような表現型を誘発しないので、これはメラニン形成の一過性の欠陥であると仮定した。
【実施例2】
【0060】
例2:
1. 材料および方法
1.1 動物での研究デザイン
食餌AおよびBによる長期栄養介入の効果を、Iffa credo(フランス)から入手した9週齢のC57/BL6雄マウスで試験した。研究中はマウスを1匹ずつ収容し、12時間ずつの明暗サイクルを受けさせ、食物および水は自由に与えた。
【0061】
栄養介入の効果を、介入中の様々な時点、すなわち若い(6月齢)、成熟した(12および18月齢)、および老齢マウス(21および24月齢)において処理の3、9、15、18および21ヶ月後に試験した。介入の開始時に、12匹ずつのマウスの群にランダムに分け、自由に食餌を与えた。動物の体重および食物消費を、それぞれの動物について1週間毎に記録した。
【0062】
1.2 食餌
18%タンパク質(大豆およびホエー)、11%脂肪、59%炭水化物、および10%セルロースから構成される食餌(食餌A)に、酸化防止剤ビタミンC、ビタミンE、ブドウ種子抽出物およびシステインを含んでなる酸化防止剤のカクテル、およびL-カルニチンを補足した(食餌B)。
【0063】
1.3 外被光沢の測定
本発明者らの目的は、非破壊法による光学的変数によってマウス外被の背部表面を評価することであり、これらの評価の光沢の視覚による等級に関する。本発明者らは2種類の機器による手法を用い、それらの結果を官能評価と比較した。
【0064】
1.3.1 Macbeth ColorEye XTHを用いる光沢の測定
外被光沢を、CIE (Commission International de l'Eclairage)標準的日光照度供給源D65,10mm円形視野直径 (RAV)を備えた携帯型分光光度計「Macbeth, Colour-eye XTH」を用いる反射分析法によって、除外反射成分(SCE)および包含反射成分(SCI)において測定した(この測定は反射成分を包含し、色以外の外観の総ての側面を最小にする(→色))。外被光沢を、下式によりSCIとSCE方式の間のL*a*b*(色パラメーター)として計算した。
【数1】

【0065】
測定の色を無視することによって、ΔE*(SCI-SCE)は、試料の光沢の評価を提供する。これらの計算を用いて、ペットの毛の光沢のある外観を測定した。Macbeth CE-XTHは分光光度計であり、この方法によって得られる光沢の値は、試料の色の効果を除去するための式を用いても、試料の色によって影響を受ける可能性がある。
【0066】
外被の光沢は、尾に近い背の最も低い部分で生きているマウスで測定した。それぞれの動物について、3回の測定を行った。
【0067】
1.3.1 官能試験による光沢
毛髪光沢の官能評価は、目に入る情報に基づいている。光沢は、保護毛髪直線性、密度および滑らかさのような毛髪繊維特性によって変化すると考えられる。光沢の認知は評価される試料の色によって影響を受けることが多く、暗い色は明るい色より光沢が強いように見える。
【0068】
事前に訓練を受けていない単独の個人が、犠牲になった外被光沢の官能評価を試みた。外被外観は、外被の艶および脂っぽさ、毛髪密度および白髪の存在について1-10の等級で評価した。
【0069】
2. 結果
2.1 Macbeth XTHを用いる外被光沢の測定
外被の光沢に対する食餌の影響
マウスの外被光沢の評価は、補足の15ヶ月後に行った(18月齢のマウス)。結果を、表3に示す。
【0070】
【表4】

【0071】
それぞれのマウスに対する外被光沢値を、18月齢マウスでのコントロール食餌について観察された平均値に対して規格化した(データーは示さず)。分散分析ANOVAを用いて、95%信頼係数での処理の差の有意性を試験した。群「カルニチン+酸化防止剤」(B)は、コントロール群(A)と比較して、補足の15ヶ月後に一層光沢のある外被を有する(P値0.00023)。
【0072】
2.2 犠牲になった外被外観の官能評価: 艶、毛髪密度, 脂っぽさおよび灰色毛髪の存在
毛髪密度、脂っぽさおよび灰色毛髪の存在を別々に検討し、相間マトリックスを計算して、異なるパラメーターの間の関連を決定した。
【0073】
総ての食餌群の総ての動物を考えるとき、毛髪密度は外被の艶に正に相関した。マウスの毛髪の密度が、パネラーの決定に影響を与えることを意味している。しかしながら、灰色毛髪は18月齢マウスについての外被光沢の官能評価と負に相関したが、24月齢マウスについては任意の相間を計算した(表4)。毛髪の脂っぽさの外被の光沢に対する効果について、有意な相間は見られなかった。
【0074】
【表5】

【実施例3】
【0075】
例3: イヌでのイン・ビボ試験
耐脱毛性を、イヌで測定した。約4.6%獣脂ブリーチ、66%コーンイエロー、16%鳥肉、9%牛肉および骨粉、4%トウモロコシ胚、2%トウモロコシグルテンミールであって、0.036%ビタミンE、0.08%ブドウ種子抽出物、0.1%ビタミンC、35%および0.1%L-カルニチンから構成される生物活性成分のカクテルを加えたものを含む食餌を調製する。
【0076】
本発明者らは、上記食餌を与えたイヌの外被毛髪は、生物活性成分のカクテルを含まない同じ食餌を与えたイヌと比較して、向上した耐脱毛性を示すことを見出してきた。
【実施例4】
【0077】
例4: 乾燥ペットフード
トウモロコシ約58重量%、トウモロコシグルテン約5.5重量%、チキンミール約22重量%、2.5%乾燥チコリー、0.1%カルニチン、0.1%ビタミンC、ビタミンE(150IU/kg)、0.05%ブドウ種子プロアントシアニジン抽出物、および酸化防止剤としての0.4%システインであって、残りが塩、ビタミンおよびミネラルであるものから、飼料混合物を作製する。飼料混合物をプレコンディショナーに入れて、加湿する。次に、加湿した飼料を押出機-調理器に入れ、ゼラチン化する。押出機から出てくるゼラチン化したマトリックスをダイに入れて、押し出す。押出成型物をイヌの飼料に適当な細片に切断し、約110℃で20分間乾燥し、冷却してペレットを生成する。
【0078】
この乾燥したドッグフードは、イヌの外被品質、特に外被光沢を改良することができる。
【実施例5】
【0079】
実施例5 乾燥ペットフード
飼料混合物を、実施例4と同様に2%カルニチンおよび酸化防止剤として0.05%イチョウ抽出物を用いて調製する。次に、飼料混合物を実施例4と同様に加工する。乾燥ドッグフードは、特にイヌの外被品質、特に外被光沢を改良することを目的としている。
【実施例6】
【0080】
実施例6 栄養処方
粉末100gに対して、タンパク質加水分解生成物15%、脂肪25%、炭水化物(マルトデキストリン37%、澱粉6%、スクロース12%を含む) 55%、1日必要量に見合うだけの微量のビタミンおよびオリゴ成分(oligoelements)、2%ミネラル、および3%水分、および2%ピルベート、および酸化防止剤としての1%カルノシンまたはカルノシン前駆体を含む栄養組成物を調製する。
【0081】
この粉末13gを水100mlと混合する。得られる処方は、特に毛髪成長および毛髪品質、特に艶を改良することを目的としている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物の毛髪または外被品質を改良するための経口投与可能な組成物であって、活性成分として細胞のエネルギー代謝を刺激する分子、または酸化防止剤、またはそれらの組合せ混合物の有効量を経口的に許容可能なキャリヤー中に含んでなる、組成物。
【請求項2】
上記分子がL-カルニチン、クレアチン、脂肪酸(モノ不飽和およびポリ不飽和、特にω-3 脂肪酸)、カルジオリピン、ニコチンアミド、または炭水化物、およびそれらの天然供給源である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
酸化防止剤が、リポ酸、システイン、シスチン、メチオニン、S-アデノシル-メチオニン、タウリン、グルタチオン、またはそれらの天然供給源のようなチオールの供給源、またはイン・ビボでのそれらの生合成をアップレギュレーションする化合物、またはビタミンC、ビタミンE、カロテノイド、ユビキノン、茶カテキン、ポリフェノールおよび/またはジテルペンを含むコーヒー抽出物、プロアントシアニジンリッチなブドウまたはブドウ種子抽出物、香辛料抽出物、大豆抽出物、および酸化防止剤活性を有する他のフラボノイドの供給源のような他の酸化防止剤、またはウルソデオキシコール酸、ウルソール酸、チョウセンニンジンおよびジンゲノシドのような化合物、およびそれらの天然供給源のような化合物である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
医薬組成物、栄養上完全なペットフード、または動物が消費するための栄養補助食餌である、請求項1-3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
医薬組成物、栄養上完全なヒトの食品、またはヒトが消費するための栄養補助食事である、請求項1-3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
毛髪の成長を刺激する、請求項1-5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
毛髪皮脂脂質の産生および/または組成を調節する、請求項1-5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
カルニチン、または酸化防止剤、またはそれらの組合せ混合物を含んでなる、請求項1-7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
ヒトまたは動物の毛髪または外被品質の改良を目的とする経口投与可能な組成物を調製するための、細胞のエネルギー代謝を刺激する分子、酸化防止剤、またはそれらの組合せの使用。
【請求項10】
ヒトまたは動物の毛髪成長を刺激することを目的とする経口投与可能な組成物を調製するための、細胞のエネルギー代謝を刺激する分子、酸化防止剤、またはそれらの組合せの使用。
【請求項11】
毛髪皮脂脂質の産生および/または組成を調節することを目的とする経口投与可能な組成物を調製するための、細胞のエネルギー代謝を刺激する分子、酸化防止剤、またはそれらの組合せの使用。
【請求項12】
ヒトまたは動物が成体である、請求項9-11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
ヒトまたは動物の毛髪または外被品質の改良方法であって、個体に請求項1-7のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含んでなる、方法。
【請求項14】
ヒトまたは動物の毛髪成長を刺激する方法であって、個体に請求項1-7のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含んでなる、方法。
【請求項15】
毛髪皮脂の産生および/または組成を調節する方法であって、個体に請求項1-7のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含んでなる、方法。
【請求項16】
個体が成体である、請求項13-15のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2006−510591(P2006−510591A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−535219(P2004−535219)
【出願日】平成15年9月1日(2003.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2003/009685
【国際公開番号】WO2004/024108
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】