気相成長装置及びガス供給方法
【課題】ヒータに対して均一にパージガスを供給することができる気相成長装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る気相成長装置は、気相成長を施す基板5を加熱するためのヒータ7と、基板5を保持するためのサセプタ6と、上記ヒータ7に対する基板の反対側において、上記ヒータの対面側の放熱を抑制するために互いに水平に設置された板状かつ複数の対面リフレクタ8a、8b、8cと、ヒータ7の側面側における放熱を抑制する側面リフレクタ9とを備えており、ヒータ7に対して基板5の反対側から、対面リフレクタへパージガスを供給するパージガス供給管13と、パージガスを排出する排出口3を備え、対面リフレクタ8a、8b、8cのそれぞれには、複数の通気孔が形成されており、上記対面リフレクタのうち、隣接する対面リフレクタに形成された複数の通気孔同士は対向しない位置に形成されている。
【解決手段】本発明に係る気相成長装置は、気相成長を施す基板5を加熱するためのヒータ7と、基板5を保持するためのサセプタ6と、上記ヒータ7に対する基板の反対側において、上記ヒータの対面側の放熱を抑制するために互いに水平に設置された板状かつ複数の対面リフレクタ8a、8b、8cと、ヒータ7の側面側における放熱を抑制する側面リフレクタ9とを備えており、ヒータ7に対して基板5の反対側から、対面リフレクタへパージガスを供給するパージガス供給管13と、パージガスを排出する排出口3を備え、対面リフレクタ8a、8b、8cのそれぞれには、複数の通気孔が形成されており、上記対面リフレクタのうち、隣接する対面リフレクタに形成された複数の通気孔同士は対向しない位置に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長装置及びガス供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード、半導体レーザー、化合物太陽電池などに用いられるIII-V族系化合物半導体薄膜の製造方法としては、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウム等のIII族元素を含む有機金属材料と、アンモニア、ホスフィン、アルシン等のV族元素を含む水素化合物ガスなどとを化学反応させて薄膜を形成する気相成長法がある。気相成長法は、上記ガスを反応炉内に供給し、加熱した基板上で化学反応させることにより薄膜形成するものである。
【0003】
この方法を用いる気相成長装置として、MOCVD装置(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属化学気相成長装置)がある。MOCVD装置によって得られる薄膜は、膜厚および膜質の面内均一性に優れており、同様に化合物半導体を結晶成長させる分子線エピタキシャル成長装置(MBE装置)に比較して量産性に優れているという点から、化合物半導体を製造する業界において一般的に用いられている装置である。
【0004】
MOCVD装置は一般的に、(1)有機金属材料、水素化物ガス、キャリアガスおよびパージガスを流量制御して供給するガス供給系と、(2)該ガス供給系が接続され、内部に基板を設置し、該基板を加熱、回転できる機構を有し、さらに供給されたガスを排出する排気系を有する反応炉と、(3)反応炉から排出されるガスを無害化し外部へ排気する除害系から構成される。本発明は、MOCVD装置を構成する上記3要素の中で、特に上記(2)の反応炉の内部構造に関するものである。以下、従来のMOCVD装置の反応炉内の構成について説明する。なお、基板上に供給される、有機金属材料、及び水素化物ガスを以下、原料ガスと称す。また原料ガス、キャリアガスを含めた、基板上に供給されるガスをプロセスガスと称す。
【0005】
図11に、従来技術に係るMOCVD装置の反応炉部分の断面図を示す。本MOCVD装置は横フロー型と呼ばれ、成膜に使用するガスを基板面に対して平行に一方向から流し込むガス供給方式が採用されている。
【0006】
供給されたプロセスガスは層流を形成する。このため、基板105との間にできる境界層を介して原料ガスが基板上に拡散し、サセプタ106に備えられた基板105上で反応が進行することになる。したがって反応炉内では、プロセスガスを上流側から下流側に一方向(横向き)に整流がなされ、できるだけガスの流れを乱さないように基板105を含めた流路が形成される。図中、上記反応炉は、一般にステンレス等の金属チャンバ101を備えており、その一端にはガス供給口102が設けられており、他方にはガス排気口103が設けられている。
【0007】
ガス供給口102は、プロセスガスを供給する部分であり、ガス排気口103は、未反応ガスや化学反応で生じた中間生成物、あるいはキャリアガス等の余剰ガスを排出するためのポートで、排気系(図示せず)に接続される。
【0008】
反応炉120には、ガス供給口102およびガス排気口103の内部に位置する反応管(流路)104が配置されている。反応管104は石英等で形成されている。ガス供給口102の方向から供給された各種ガスは、反応管104を通り、ガス排気口103の方向へ排気される。このため、供給された各種ガスは、反応管104を介して一方向の流れに整流され、基板105の表面へ導かれる。
【0009】
反応管104はフローチャネルとも呼ばれ、横フロー型MOCVD装置で一般に用いられる構成部材である。反応管104の形状は、一般には直方体形状(箱型)または円筒型であることが多く、ガス供給口102から基板105の設置部、及びガス排気口103まで一体で形成される。あるいは、反応管104の部分的に形成された各部を嵌合させることにより流路が形成される。また、流れの上流側では、異種の原料ガスがあまり早く混合して反応してしまわないように、仕切り104aを設ける場合もある。
【0010】
次に図12を用いて、基板105及びサセプタ106周辺構造の説明を行う。図12は、図11に示す従来のMOCVD装置の反応炉部分の内部構造を示す断面図である。反応管104の略中央部には、基板105、及び基板105を載置するサセプタ106が設置され、流路の一部を形成することになる。サセプタ106の下部には、基板105を加熱するためのヒータ107が設置される。
【0011】
基板105はサセプタ106上に設置されるが、サセプタ106の表面には基板105の形状に合わせた堀込が設けられ、堀込の深さは、ガスの流れを乱さないように、サセプタ106の表面(基板105の設置部以外)と基板105の表面とが略同一面になるように設定される。また、サセプタ106の表面は、反応管104の反応管底面板104bとも略同一平面になるよう設置されている。
【0012】
サセプタ106の下部には、基板加熱用のヒータ107が設置される。ヒータ107は円盤形状である。また、サセプタ106は、サセプタ106の裏面(基板設置面の反対側)における中央部近傍に設置されたサセプタ支持棒111によって支持されている。ヒータ7の中央部には開口が形成されており、サセプタ支持棒111はヒータ107の開口部を通る構造となっている。
【0013】
熱電対112は、中空構造となっているサセプタ支持棒111内を通して導入される。この熱電対112に計測される温度に基づきヒータ107の温度は制御される。一般的には、予め熱電対112に設定された温度になるように制御される。
【0014】
サセプタ支持棒111は回転機構(図示せず)に接続され、基板105の温度の均一性を向上させるため、サセプタ106を回転させる。なお、ヒータ107及び熱電対112は非回転であり、サセプタ106とは接触しない構造となる。また、ヒータ107の側面および下側には、ヒータ107からの熱が側面および下側に放熱されることを抑制し、加熱効率を上げ、また周辺部の昇温を防ぐための、側面リフレクタ109および底面リフレクタ110が設置されている。
【0015】
上記構造により電力消費を抑制すると共に、基板105側へ効率良く熱を伝導できることになる。またチャンバ壁面など周辺部への熱の影響が低減され、耐熱対策も不要となり、装置コストを下げることができる。なお、側面リフレクタ109および底面リフレクタ110は一体型で形成される場合と、分割で形成される場合があるが、何れの場合にもできるだけ放熱を抑制するため、密閉に近い空間がヒータ107の周辺に形成されることになる。
【0016】
さらに、側面リフレクタ109または底面リフレクタ110の効果を高めるために、複数のリフレクタを設置する場合もある。しかしながら、上記構成により、ヒータ107の周囲への放熱をできるだけ抑制し、密閉性を高めた構造を取る場合、成膜が終了して基板を取り出す際の冷却に非常に時間がかかることになる。これは装置運用上、タクトダウンにつながり、量産装置の場合、生産性を損なうことになる。
【0017】
次に成膜中のガスの流れについて、ヒータ107の近傍にどのようなガスの流れが生じるかを説明する。反応管104の上流方向(ガス供給口102側)から一方向に流れてくるプロセスガスは、ほとんどが基板105上を通過して、下流のガス排気口103側へ流れていく。
【0018】
しかし、一部のガスAがサセプタ106と反応管底面板104bとの隙間から、下方へ流れ込み、ヒータ107の周辺部へ達する。一旦流れ込んだガスAは、側面リフレクタ109および底面リフレクタ110間の隙間、もしくは、意図的に設置された図示しない排気口から外部へ排出されることにより、装置排気系から排出される。
【0019】
ここで流れ込んだガスAの中に原料ガスが含まれ、該ガスの反応性が高い場合には、高温になっているヒータ107と反応し、場合によってはヒータ107を腐食し、発熱特性を変化させ、発熱状態にばらつきを生じさせ、最悪の事態にはヒータ断線に至ってしまう。ヒータ特性が不安定になると、成膜への影響が大きく、膜特性の再現性が劣化する。またヒータ交換の場合には、交換作業や、新規ヒータの脱ガス処理、ヒータ供給電力と基板温度との関係を再測定するなど、立上げに多大な時間を要することになる。
【0020】
上記に述べた冷却に時間がかかる、あるいはヒータ劣化を招くといった問題を防ぐため、ヒータ近傍にパージガスが供給される。パージガスには、成膜に影響を与えないガスが用いられる。例えば原料ガスのキャリアガスとして使用される水素ガス、または窒素ガスあるいはアルゴンガスのような不活性ガスが用いられる。パージガスの供給流路としては、サセプタ支持棒の中空空間が利用されることが多い。この場合、ヒータ107の下方向からパージガスをヒータ107近傍に流し込むことにより、冷却時間の短縮や、ヒータ周辺部の反応ガスとの隔離または希釈がなされる。冷却時には、ヒータ107や、サセプタ106の中央部が局所的に冷却される可能性があり、また耐食性に関しても均一な効果が期待できない。また、同じくサセプタ支持棒の中空から供給される熱電対も局所的に冷却されてしまうため、実温度との乖離が一定でなくなり温度調整が困難となる。
【0021】
また、図13は、従来の縦型MOCVD装置(シャワーヘッド型MOCVD装置)を示す断面図である。図13において、図12にて説明した部材と同じ部材については、同一の部材番号を付して、その説明を省略する。図13の縦型MOCVD装置には、シャワープレート115が備えられており、シャワープレート115から反応ガスおよびキャリアガスが供給される点で、図11の横型のMOCVD装置とは大きく異なる。なお、反応ガスおよびキャリアガスの供給源となるガス供給源122、ガス排気口103に連結された、パージライン103aを介して排気されたガスを無害化するための排ガス処理装置123をも備えている。
【0022】
このようなシャワー型MOCVD装置の場合も、ヒータ107周辺への原料ガスの拡散は発生し、腐食によるヒータ劣化は生じる。
【0023】
また、図14は、従来のMOCVD装置(中央放射型MOCVD装置)を示す断面斜視図である。図14において、図12にて説明した部材と同じ部材については、同一の部材番号を付して、その説明を省略する。中央放射型MOCVD装置は、サセプタの円周上に複数の基板を載置し、サセプタの中心近傍から放射状にプロセスガスを供給する。したがって、基板上では、基板面に水平にプロセスガスの流れが形成され、横フロー型MOCVD装置とよく似た化学反応が起こる。このような中央放射型MOCVD装置においても、ヒータ周辺への原料ガスの拡散は発生し、腐食によるヒータ劣化は生じる。
【0024】
このようなヒータに劣化が生じる問題に対して、例えば、特許文献1には、専用配管114を備える横型のMOCVD装置が開示されている。図15は、特許文献1の横型MOCVD装置を示す断面図である。図15に示すように、横型のMOCVD装置において、パージガスを積極的にヒータ近傍に供給できるように専用配管114が設けられており、効率良く冷却を行うことが開示されている。また温調系の制御についても、昇温時にはパージガスを遮断し、冷却時にはヒータオフと同時にパージガスを供給するシステムを組み、タクトアップを図っている。
【0025】
また特許文献2では、リフレクタ108が備えられたプラズマCVD装置が開示されている。図16は、特許文献2のプラズマCVD装置を示す断面図であり、プラズマCVD装置の下部電極107aの直下にはリフレクタ108が設けられている。図17は、リフレクタ108の斜視図である。同図に示すように、リフレクタ108は中空構造であり、リフレクタ108の上面には分散孔が設けられている。特許文献2では、該リフレクタ108の中空内に供給される冷却ガスにより、電極やリフレクタの冷却効率の向上が提案されている。
【特許文献1】特開2000−114180公報(2000年4月21日公開)
【特許文献2】特開平8−69969号公報(1996年3月12日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
しかしながら、上述の従来の気相成長装置では、ヒータ近傍におけるパージガスの局所的な濃度分布が発生し易いという問題がある。
【0027】
具体的に説明すると、図15の横型のMOCVD装置では、ヒータ107に、専用配管114を介してパージガスを照射させることにより、冷却時間は短くなる一方、パージガスの噴出部がヒータ位置に対して、偏って設置されている。このため、ヒータの部位によってパージガスが接する量が異なり、ヒータ107自体に温度分布が生じることによって、熱応力差による歪みが発生し、場合によっては、ヒータ107の破壊や故障を招くおそれがある。
【0028】
また耐食性を考慮すると、成膜中に必ずパージガスを流す必要があるが、パージガスの偏重供給(濃度が偏った供給)がヒータの発熱分布に影響を及ぼし、結果的に基板温度分布への悪影響を及ぼすことになり、結晶品質を低下させる原因となる。
【0029】
さらにヒータ耐食性についても、本開示技術のようにパージガスを偏重して照射し、かつ排出口109aのように1箇所から排出される場合、図中拡大図に示すように、ヒータ近傍で流れが乱れ、場合によっては、流れ込んだ反応性が高いプロセスガスがヒータ近傍で滞留し、局所的にヒータ腐食が発生する可能性もある。また流れの乱れを低減するために、排出口109aのサイズを大きくした場合、ヒータ107からの熱が排出口109aから放射されるため、側面リフレクタがリフレクタとしての役目を果たさなくなる。さらにガス滞留を抑えようと、パージガスの流量を増加させ、ヒータ107近傍のパージガスの流量を上げた場合は、反応管側にパージガスが逆流入し、反応ガスの流れ(層流)が乱され、成膜に対して悪影響を与えてしまう。
【0030】
上記観点から、特許文献1の開示技術は、冷却時間の短縮に有効であるが、偏重した(濃度が偏った)パージガス照射が、基板温度分布に影響し、結晶品質の劣化を招くこととなる。またヒータの長寿命化には効果は乏しく、逆に局所的な冷却がヒータの短寿命化を招くことにもなる。ヒータの寿命が短くなれば、ヒータの交換作業が頻繁になり、装置稼働率が低下するため、生産性を損なうことになる。
【0031】
また特許文献2で開示されたプラズマCVD装置の冷却方法は、リフレクタからガスをヒータ全面に供給する構造であることから、MOCVD装置のヒータパージに利用することが可能である。一方、プラズマCVD装置では基板温度がMOCVD装置より低温であることから、側面リフレクタのような隔壁は不要である。しかしながら、高温にて結晶成長を行うMOCVD装置に適用する場合には、側面リフレクタは必須であり、その場合、分散孔からのガス流速のバラツキにより、やはりヒータ周辺部はガスが充満し、流れは乱れ、局所的にガス滞留部が存在することが考えられる。
【0032】
したがって、プロセス終了後の冷却にはある一定の効果が見込まれるものの、MOCVD装置のように、プロセス中に反応性が高いガスが流入した場合には、高温になっているヒータ周辺のパージガスの滞留部への拡散により、腐食が進行することになり、ヒータ寿命を短くする原因となる。
【0033】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、ヒータに対して均一にパージガスを供給することができる気相成長装置を提供することにある。さらには、MOCVD装置に関する上記課題を解決し、成膜品質を損ねることなく、装置の稼働率を高めながら効率的に、安定した歩留まりを長期間維持しつづけることができる気相成長装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明の気相成長装置は、上記課題を解決するために、気相成長を施す基板を加熱するためのヒータと、上記基板を保持するためのサセプタと、上記ヒータに対する基板の反対側において、上記ヒータの対面側の放熱を抑制するために互いに水平に設置された板状かつ複数の対面リフレクタと、上記ヒータの側面側における放熱を抑制する側面リフレクタとを備えた気相成長装置において、上記ヒータに対して基板の反対側から、上記複数の対面リフレクタへパージガスを供給する第1パージガス供給手段と、上記パージガスを排出するパージガス排出手段を備え、上記複数の対面リフレクタのそれぞれには、複数の通気孔が形成されており、上記複数の対面リフレクタのうち、隣接する対面リフレクタに形成された複数の通気孔同士は対向しない位置に形成されていることを特徴としている。
【0035】
上記構成によれば、第1パージガス供給手段によって、対面リフレクタに対してパージガスを供給することができる。対面リフレクタには複数の通気孔が形成されているため、供給されたパージガスは、上記対面リフレクタに形成された複数の通気孔を通り、隣接する対面リフレクタに衝突する。これにより、パージガスのガス流速分布が均一化され、最終的にはヒータに対して、パージガスが均一に、すなわちシャワー状に供給することができる。
【0036】
また、本発明の気相成長装置では、上記パージガス排出手段は、上記ヒータの側面近傍に設けられていることが好ましい。
【0037】
このため、パージガスは、ヒータ側面近傍のパージガス排出手段から排出されるので、第1パージガス供給手段から供給されたパージガスがヒータの近傍にて滞留することを抑制することができる。したがって、ヒータに対してパージガスをさらに均一に供給することができる気相成長装置を提供することができる。
【0038】
また、本発明の気相成長装置では、上記ヒータに対する基板の反対側において、パージガスを供給する第2パージガス供給手段が備えられており、上記第2パージガス供給手段は、上記サセプタに対して垂直であって、サセプタの中心部に位置する垂直軸上に配置されており、自身の周囲にパージガスを供給することが好ましい。
【0039】
これにより、第1パージガス供給手段からの供給に加え、第2パージガス供給手段からもパージガスを供給することができ、パージガスを供給するバリエーションを増加させることができる。
【0040】
また、本発明の気相成長装置では、上記サセプタおよびヒータは、空間を介して配置されており、上記第2パージガス供給手段は、上記サセプタおよびヒータの間の空間へパージガスを供給することが好ましい。
【0041】
これにより、第1パージガス供給手段に加え、第2パージガス供給手段は、上記サセプタおよびヒータの間の空間へパージガスを供給することができるので、パージガスの流れをさらに安定化することができる。このため、第1パージガス供給手段のみからパージガスが供給される場合と比較して、ヒータの近傍におけるパージガスの濃度分布の偏りをさらに生じ難くすることができる。
【0042】
また、本発明の気相成長装置では、上記第2パージガス供給手段から供給されるパージガスの流量Q2と、上記第1パージガス供給手段から供給されるパージガスの流量Q1とが、Q2≦Q1、かつ、Q2/Q1≦100の関係を満たすことが好ましい。
【0043】
これにより、パージガスの滞留し難くなる虞をより回避することができ、ヒータの近傍におけるパージガスの濃度分布の偏りをさらに生じ難くすることができる。
【0044】
本発明の気相成長方法は、上記課題を解決するために、気相成長を施す基板を加熱するためのヒータと、上記基板を保持するためのサセプタと、上記ヒータに対する基板の反対側において、上記ヒータの対面側の放熱を抑制するために互いに水平に設置された板状かつ複数の対面リフレクタと、上記ヒータの側面側における放熱を抑制する側面リフレクタとを備えた気相成長装置にパージガスを供給するガス供給方法において、上記気相成長装置は、上記ヒータに対して上記サセプタの反対側から、上記複数の対面リフレクタへパージガスを供給する第1パージガス供給手段と、上記パージガスを排出するパージガス排出手段を備えており、上記複数の対面リフレクタのそれぞれには、複数の通気孔が形成されており、上記複数の対面リフレクタのうち、隣接する対面リフレクタに形成された複数の通気孔同士は対向しない位置に形成されており、上記第1パージガス供給手段から、上記複数の対面リフレクタに対してパージガスを供給することを特徴としている。
【0045】
上記構成によれば、第1パージガス供給手段によって、対面リフレクタに対してパージガスを供給することができる。対面リフレクタには複数の通気孔が形成されているため、供給されたパージガスは、上記対面リフレクタに形成された複数の通気孔を通り、隣接する対面リフレクタに衝突する。これにより、パージガスのガス流速分布が均一化され、最終的にはヒータに対して、パージガスが均一に、すなわちシャワー状に供給することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明の気相成長装置は、以上のように、上記ヒータの対面側の放熱を抑制するために互いに水平に設置された板状かつ複数の対面リフレクタと、上記ヒータの側面側における放熱を抑制する側面リフレクタとを備えた気相成長装置において、上記ヒータに対して基板の反対側から、上記複数の対面リフレクタへパージガスを供給する第1パージガス供給手段と、上記パージガスを排出するパージガス排出手段を備え、上記複数の対面リフレクタのそれぞれには、複数の通気孔が形成されており、上記複数の対面リフレクタのうち、隣接する対面リフレクタに形成された複数の通気孔同士は対向しない位置に形成されているものである。
【0047】
それゆえ、第1パージガス供給手段によって、対面リフレクタに対してパージガスを供給することができる。対面リフレクタには複数の通気孔が形成されているため、供給されたパージガスは、上記対面リフレクタに形成された複数の通気孔を通り、隣接する対面リフレクタに衝突する。これにより、パージガスのガス流速分布が均一化され、最終的にはヒータに対して、パージガスが均一に、すなわちシャワー状に供給することができるという効果を奏する。
【0048】
また、ガス滞留部が少ない流れを形成することができるため、流入する反応ガスによるヒータ損傷を低減し、また偏重供給ではないため、ヒータ発熱分布が生じず、基板温度分布の均一性を損なうことなく、膜特性の均一化、及びヒータの長寿命化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1ないし図9に基づいて説明すれば、以下の通りである。図1に本実施の形態に係るMOCVD装置(気相成長装置)の反応炉の断面図を示す。反応炉内の基本構成は、図11に示す従来のMOCVD装置の反応炉内の構成と同様である。すなわち、チャンバ1内にプロセスガスを供給するガス供給口2と、該ガスを基板105に導き、その後、ガス排気口3にまで流路を形成する反応管4と、ガス排気系(図示せず)に接続されるガス排気口3が備えられている。
【0050】
反応管4の略中央部には、基板5を載置するサセプタ6、またサセプタ6の下部には、基板5を加熱するためのヒータ7が設置されている。ヒータ7には電力供給線14が接続されている。さらに、サセプタを支持するサセプタ支持棒(第2パージガス供給手段)11が、サセプタ6の中央部にてサセプタ6を支持している。ヒータ7の中央部には開口が形成されており、サセプタ支持棒11はヒータ7の開口部を通る構造となっている。また、サセプタ支持棒11中には熱電対12が配置されている。
【0051】
その他、基板回転機構やサセプタの昇降機構が取り付けられているが、煩雑になるため図示しない。上記の部材が基本構成となる。
【0052】
基板5は、気相成長が施され、結晶膜の成長が生じる場となる部材である。基板5は気相成長を施すことができれば特に限定されるものではなく、気相成長に用いられる公知の基板を用いることができる。また、説明の便宜のため、図1では、基板5は一箇所に設置された構成としているが、この設置数に限定されず、基板5が複数箇所に設置された構成であってもよい。
【0053】
サセプタ6は、基板5を保持するものである。基板5と同様に、気相成長装置に用いられる公知のサセプタを用いることができる。また、基板5が複数箇所に設置されている場合、サセプタ6も基板5に対応する複数箇所に設置される。また複数枚の基板を設置する一体型のサセプタを用いる場合もある。サセプタの形状についても、図1に示す形状に限られたものでなく、基板設置面の一部に開口部を設け、ヒータから直接輻射熱が照射される形状の場合もあり、基板を保持できればよい。ヒータ7としては、円盤形状のものを採用しているが、基板5を加熱することができればよく、円盤形状に限定されるものではない。ヒータ7は、サセプタ6と空間を介して配置されている。なお、上記基本構成以外の構成については、図2を用いて説明する。
【0054】
次に、図2を用いて、図1の反応炉内におけるヒータ7の周辺部をより詳細に説明する。図2は、図1のMOCVD装置の反応炉内におけるヒータ7周辺を示す断面図である。
【0055】
図2のヒータ周辺の構造としては、上記基本構成に加えて、ヒータ7に対する基板5の反対側において、対面リフレクタ8a、8b、8cが備えられている。また、ヒータ7および対面リフレクタ8a、8b、8cを収容するようにヒータ7の側面には側面リフレクタ9が備えられ、側面リフレクタ9を繋ぐように後面リフレクタ10が備えられている。さらに、後面リフレクタ10からはパージガス供給管(第1パージガス供給手段)13が挿入されている。
【0056】
対面リフレクタ8a、8b、8cは、ヒータ7に対する基板5の反対側において、ヒータ7の対面側の放熱を抑制するために互いに水平に設置されている。同図に示すように、板状かつ複数の対面リフレクタが備えられている。また、対面リフレクタ8a、8b、8cは、後面リフレクタ10よりもヒータ7寄りの位置に配置されており、ヒータからの熱が基板5の反対側へ放熱されることを抑制するための部材である。上記前面リフレクタの材料としては、モリブデン、タンタル、タングステンなどの高融点金属、あるいはアルミナ、窒化ホウ素などのセラミック材料などを用いることができる。対面リフレクタについては、より詳細に後述する。
【0057】
側面リフレクタ9および後面リフレクタ10は、ヒータ7を覆っており、ヒータ7周辺における放熱を抑制するものである。側面リフレクタ9および後面リフレクタ10は互いに隙間なく接触している。ただし接触することは必須ではない。また、側面リフレクタ9は、図2において、円筒形状にて1層設けられているが、この形状に限られるものではなく、2層以上、すなわち、2重管以上設けられていてもよい。これにより、ヒータ7周辺における放熱をより抑制することができる。なお、側面リフレクタ、後面リフレクタ、およびヒータで略囲まれる領域に存在する部材一式を、ヒータユニットと総称する場合がある。
【0058】
パージガス供給管13は、ヒータ7へパージガスを供給する部材である。パージガスの供給により、ヒータ7を冷却することができる。パージガス供給管13は、後面リフレクタ10を貫通して設けられており、パージガス供給管13の先端は、前面リフレクタ8cには接触しておらず、間隔を設けて配置されている。パージガスとしては、水素ガス、窒素ガスあるいはアルゴンガスのような反応に寄与しないガスを用いればよい。
【0059】
パージガス供給管13の配置は、対面リフレクタ8cの下方位置に管口があればよく、特に限定されるものではない。ただし対面リフレクタ8cの直近であれば、対面リフレクタ8cから対面リフレクタ8bの間でのパージガスの拡散が不十分になるおそれがあるので、例えば、リフレクタ8cの下面から2〜3mm以上離して設置されることが望ましい。
【0060】
また、3枚の対面リフレクタ8a、8b、8cについて、より明確に説明するため、図3を用いて説明する。図3は、前面リフレクタ8a、8b、8cを示す斜視図である。同図に示すように、対面リフレクタ8a、8b、8bはそれぞれ間隔を設けて、互いに水平に配置されている。この間隔は本実施の形態では、1mmにて設置されているが、間隔については、これに限られない。
【0061】
平行に配置された対面リフレクタ8a、8b、8cのそれぞれには、16箇所に通気孔が形成されており、隣接する前面リフレクタ同士に形成された複数の通気孔同士は対向しない位置に形成されている。換言すると、平行に配置された対面リフレクタ8a、8b、8cに形成された複数の通気孔同士は、隣接する対面リフレクタ間において、対面リフレクタに対して垂直な方向に沿って一致しない位置に形成されているといえる、または、対面リフレクタに対して垂直な方向に沿って重ならない位置に形成されているともいえる。
【0062】
対面リフレクタ8a、8b、8cに設置する通気口の配置としては、本実施の形態においては、通気口をリフレクタ径方向に直線上に配置したが、これに限られるわけではなく、対面リフレクタ内に異なる半径を有する円周上に配置されていてもよい。ただしその場合、互いに隣り合う対面リフレクタでは、円周半径を異なるよう通気口を配置することが求められる。さらに、対面リフレクタ内に千鳥格子状に通気口を配置してもよい。この場合においても、互いに隣り合うリフレクタでは、通気口位置が垂直方向において、一致しないことが求められる。
【0063】
なお、上記通気孔は、円形に形成されているが、上記の位置に形成されていれば、その形状は特に限定されるものではない。
【0064】
また、図2の反応炉内では、対面リフレクタは3枚備えられている構成であるが、少なくとも2枚備えられていれば本発明の気相成長装置が構成され得る。
【0065】
対面リフレクタ8a、8b、8cに形成された通気孔は、上記のように配置されているため、図2に示すように、パージガス供給管13からパージガスが供給されると、前面リフレクタ8cの通気孔を通ったパージガスは、前面リフレクタ8bに衝突することとなる。その後、パージガスは前面リフレクタ8bに沿って分散され、さらに、対面リフレクタ8bの通気孔を通る。同様の過程が対面リフレクタ8aについてもなされ、パージガスがヒータ7の近傍へ供給される。このため、パージガスが、対面リフレクタに衝突することなくヒータ7の近傍に到達することはできない。
【0066】
上記のように、パージガス供給管13から供給されたパージガスは、対面リフレクタ8a、8b、8cに設けられた複数の通気孔を通過して、各対面リフレクタ間でパージガス同士が衝突する。これを繰返しながら、パージガスはヒータ7に導かれるため、パージガスの流れ方向がランダムに分散されると同時に、ガス流速分布が均一化に向かいながらヒータ7に到達することになる。最終的に、パージガスは、ヒータ7に到達する直前の最上段の対面リフレクタ8aに設置された複数の通気孔から、上向きにシャワー状に均一に照射されることになる。
【0067】
また、ヒータ7の側面近傍には、側面リフレクタ9の上面側(サセプタ側)と流路を形成する反応管底面板4bとの間に隙間が設けられていることによって、排出口(パージガス排出手段)9aが形成されている。即ち該隙間を排気口として、供給されたパージガスは排出されることになるので、パージガスの流れには一定の流量が確保され、照射されたパージガスがヒータ7近傍で滞留することを抑制できる。このため、本実施の形態に係る気相成長装置によれば、ヒータ7近傍の濃度分布の偏りを抑制することができ、ヒータに対してパージガスをさらに均一に供給することができる。
【0068】
ここで、ヒータ7の側面近傍とは、具体的には、ヒータ7および対面リフレクタ8a、8b、8cを収容する(囲う)側面リフレクタ9のうち、ヒータ7に対向する位置から、サセプタ6に対向する位置までの位置を意味する。図2では、排出口9aは、側面リフレクタ9のサセプタ6に対向する面に形成されている。
【0069】
さらに、図2に示す気相成長装置は、好ましい形態として、サセプタ支持棒11が中空構造となっており、パージガスがサセプタ支持棒11の下方からサセプタ側に供給される構造となっている。サセプタ支持棒11のサセプタ6と接する先端部には開口が形成されており、パージガスが上記開口から、サセプタ6およびヒータ7の間の空間に供給される。その後、パージガスは排出口9aから排出されることとなる。
【0070】
上記気相成長装置が、サセプタ支持棒11からパージガスを供給する構成を備えることによって、対面リフレクタ8a、8b、8cからシャワー状に供給されるパージガスの流れと組み合わせ、パージガスの流れをさらに安定化することができる。このため、パージガス供給管13のみからパージガスが供給される場合に比べて、ヒータ7の近傍におけるパージガスの濃度分布の偏りをさらに生じ難くすることができる。
【0071】
より具体的には、パージガス供給管13からのパージガスの流れを第1パージガスとし、サセプタ支持棒11を介して流すパージガスを第2パージガスとすると、第1パージガスの流れに第2パージガスが加わることにより、ヒータ7の中央部近傍から周辺部へかけて、放射状の流れを形成することができる。
【0072】
このとき、第1及び第2パージガスの流量のバランスを適正化することにより、排出口9aまでの流れをさらに安定化させることができ、ガスの滞留部をより低減することができる。流量のバランスは、第2パージガスの流量Q2が第1パージガスの流量Q1を超えないことが好ましく、流量Q1に対して流量Q2は、Q2≦Q1、かつ、Q2/Q1≦100の関係を満たすことが好ましい。上記の関係が満たされる場合、供給されたパージガスに滞留部分が生じ難くなる。
【0073】
以上の構成により、パージガスが、ヒータ7の近傍に均等に拡散供給され、また一定の流速が確保されたガスの流れを形成することにより、成膜時には、パージガスの流れがバリアガスとして働き、ヒータ7側に反応ガスが流入しにくくなる。また、反応管底面板4bとサセプタ6との間から腐食性のプロセスガスが流入しても、ヒータ7近傍で滞留することなく、排出口9aから排出されることになる。このため、ヒータ7との反応が低減され、ヒータ7の寿命を大幅に向上させることができる。
【0074】
またパージガスが均一にヒータ7に照射されることから、ヒータ7の発熱が面内で均一に安定し、基板5の温度分布均一性を向上させることができる。これは結晶品質の向上につながり、歩留りを改善することができる。また物理的な干渉などが原因で、サセプタ6中心軸にパージガス流路を形成できない場合であっても、中心軸からずれたパージガス供給管13の位置からパージガスを供給することが可能となり、装置設計の自由度も増すことができる。
【0075】
なお、本実施の形態では横フロー型MOCVD装置について記載したが、図13における、基板上方より反応ガスを供給する縦型MOCVD装置に対しても適用可能である。また図14における、サセプタ6の円周上に複数の基板5を載置し、サセプタ6の中心から放射状にガスを供給する中央放射型MOCVD装置においても適用可能である。
【0076】
次に本発明の効果をより明確にするために、ヒータ周辺部のパージガスの流れを熱流体解析により評価した結果を示す。用いる熱流体解析は、一般に広く用いられる、コンピュータを用いた数値解析によって、モデリングされた気相成長装置内のガスの流れに関する様態を求める方法である。図2に示す気相成長装置を含め、6種類の気相成長装置のモデルに関する解析結果を図4〜図9に示す。図中の小矢印が流れベクトルとなる。なお、各モデルに対してサセプタ支持棒11を中心軸Cとして、片断面を回転させた擬似3次元計算がなされた解析結果が示されている。
【0077】
各モデルのサイズについては、パージガスの供給配管径や排出口9aの隙間大きさなどの共通部分に関しては同じ寸法にし、基準は本実施の形態に係る図2の気相成長装置を基本としている。したがって共通部名称については、図2と同じ符号を付している。また、パージガスの供給流量も同じである。パージガス供給管13およびサセプタ支持棒11の2系統からパージガスを供給している場合も各々の系統から同じ流量を供給しているため、1系統のみの場合の2倍のパージガスを供給していることになる。また排出口9aの下部には側面リフレクタ9が境界条件として存在するが、計算モデル上は記載していない。
【0078】
図4は、本発明に係る気相成長装置のモデルの解析結果を示す図あり、図2における気相成長装置において、パージガス供給管13のみからパージガスが供給されるモデルを示している。すなわち、サセプタ支持棒11には、パージガスを供給するための開口は形成されていない。同図に示すように、対面リフレクタ8a、8b、8cには複数の通気孔が設けられている。パージガスはパージガス供給管13から供給され、排出口9aより排出される。
【0079】
本解析結果から、パージガスがパージガス供給管13から供給された直後には、パージガスの流れの乱れが見受けられるものの、対面リフレクタ8a、8b、8cが複数の通気孔を備える構造によって、ガスの流れは拡散し、均一にヒータ7へ照射されていることがわかる。またヒータ7周辺に大きなガスの流れの乱れは生じておらず、排出口9aより排出されることがわかる。
【0080】
図5は本発明に係る気相成長装置のモデルの解析結果を示す図であり、図2に示す気相成長装置に対応するモデルを対象としている。すなわち、サセプタ支持棒11から、ヒータ近傍にてサセプタの中央付近から放射状にパージガスが供給される。この場合、図4に示したモデルと同様に対面リフレクタ8a、8b、8cの複数の通気孔を備える構造(多孔構造)によるパージガスの拡散供給の効果と、さらにサセプタ支持棒11内からの中央放射状のガスの流れによって、パージガスの流れがさらに安定化する。最後に、パージガスは、排出口9aから排出され、ガス滞留部はほとんど見られない。
【0081】
また本解析結果は、パージガス供給管13からの第1パージガスの流量Q1とサセプタ支持棒11からの第2パージガスの流量Q2とが同じ場合であるが、両者Q1、Q2の流量比を変えて計算した結果、Q1>Q2の場合は、流れとしては、図4と類似するものの、ガスの流れの大きな乱れは発生しない。
【0082】
しかしながらQ1<Q2で、かつ流量比Q2/Q1が100を超える場合には、大きくガスの流れが乱れ、ガス滞留部が発生することが確認できた。したがって本構造のパージ機構の場合には、中央部からの第2パージガスの流量Q2と、底面リフレクタを介して拡散シャワー状に供給する第1パージガス流量Q1とがQ2≦Q1、かつ、Q2/Q1≦100の関係を満たすことが望ましい。
【0083】
図6は、比較用の気相成長装置のモデルに関する解析結果を示す図である。本実施の形態に係る対面リフレクタ8aとは異なり、上記モデルのリフレクタ108には、通気孔が形成されていない。また、パージガス供給管113は、ヒータ7近傍に設置されており、従来技術として開示される特許文献1に類似する構成である。
【0084】
図6の解析結果から、パージガス供給管113からパージガスがヒータ107に向け供給された直後において、ガスの大きな乱れが発生し、乱れが生じた近傍においてガスの滞留部が存在することがわかる。サセプタ106の隙間から混入した反応ガスが、拡散によってヒータ107の近傍に移動した場合、反応ガスは長時間滞留することになる。図6に示す結果は、高温に保持されるヒータ107と反応ガスとの接触機会が増加し、腐食を促進する原因となり得ることを示す結果と言える。
【0085】
図7は、比較用の気相成長装置のモデルに関する解析結果を示す図である。本実施の形態に係る対面リフレクタ8aとは異なり、リフレクタ108aには、通気孔が形成されているものの、隣接するリフレクタ108a同士に形成された通気孔同士は対向するように配置されている。上記の通気孔には、例えば、突き上げ機構などの機構部が装着される場合などが想定される。
【0086】
図7に示す解析結果から、パージガスが各リフレクタ108aに設けられた通気孔を通過した直後に、大きなガスの乱れが発生しており、ガス滞留部が見受けられる。また、ヒータ107近傍でも同様に、ガス滞留部が見受けられる。したがって図6の解析結果と同様、このガス滞留部により反応ガスが滞在するので、ヒータ107の腐食が進行するおそれが高い。
【0087】
図8は、比較用の気相成長装置のモデルに関する解析結果を示す図である。同図に示すモデルでは、サセプタ支持棒111を中空構造にし、その内部にパージガスを供給し、ヒータ107近傍にパージガスの供給口を設け、ヒータ107近傍にパージガスを供給する構成となっている。また、排出口109aも設けられているため、パージガスはサセプタ106の中央部から排出口109aに向かって放射状に流れを形成することになる。しかしながら、解析結果によると、パージガスがサセプタ支持棒111から供給された供給口の近傍で、ガス滞留部が発生していること、および、ヒータ107下部の周辺近傍ではガスの流れが形成されていないことがわかる。したがって本構造でも、ヒータ107周辺に混入した反応ガスの滞留が発生し、ヒータ107の腐食が進行するおそれが高い。
【0088】
図9は、比較用の気相成長装置のモデルに関する解析結果を示す図である。同図に示すモデルでは、対面リフレクタ108bが中空構造となっており、対面リフレクタ108bの上面側に多孔構造を設けた構成を示しており、従来技術として開示される特許文献2に類似する構成となる。パージガス供給管113、113bから供給されたパージガスは、中空構造となっている対面リフレクタ108b内に一旦供給されるが、パージガス供給管113、113aの近傍でパージガスの流れの乱れが見受けられる。
【0089】
また、対面リフレクタ108bの上面には複数の通気孔が設けられている。上記述べたパージガスの流れが乱れている近傍の通気孔から照射されたガスはヒータ7の近傍で流れが乱れ、滞留していることがわかる。したがって本構造でも、混入した反応性ガスの滞留が発生し、ヒータ107の腐食が進行することが考えられる。
【0090】
以上のように、本発明によれば、図6〜図9に示した演算結果とは異なり、ヒータの下面にパージガスを均一に供給することができる。また、パージガスの流れを安定化させる上記の対面リフレクタが備えられていることにより、ヒータ近傍における滞留部を低減し、また反応ガスの流入を低下させ、ヒータの長寿命化が実現することができ、また基板温度の面内均一性を安定化することで、結晶品質を安定化し歩留向上を実現することができる。
【0091】
なお、上記の気相成長装置に係る説明は、上記気相成長装置において、パージガス供給管から、上記複数の対面リフレクタに対してパージガスを供給するガス供給方法についても同時になされているものである。また、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0092】
〔実施の形態2〕
本発明に係る他の実施の形態について図10に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0093】
図10は、本実施の形態に係るMOCVD装置の反応炉内におけるヒータ7周辺を示す断面図である。同図に示す気相成長装置では、図2に示す気相成長装置と対面リフレクタ8a、8b、8cなどの構成は同じであるが、異なる点としては、パージガス供給管13を備えておらず、代わりにパージガス供給口13bがサセプタ支持棒11の周囲に後面リフレクタ10を貫通するように形成されている点が挙げられる。
【0094】
パージガス供給口13bから反応炉内にはパージガスが供給される。上記パージガスとしては、チャンバ内に供給され、壁面汚染や冷却に用いるリアクターパージガス(図示せず)を利用したものが用いられる。そして、リアクターパージガスの一部がパージガス供給口から流れ込むことになる。供給されたパージガスは、それぞれに複数孔が設けられた3枚の対面リフレクタ8a、8b、8cを通過し、ヒータ7へ供給される。パージガスは、各対面リフレクタに施された複数の通気孔を通ることによって、各対面リフレクタ間で衝突を繰り返し、ガス流速分布が均一化され、最終的にはヒータ7に対して均一にシャワー状に供給されることになる。
【0095】
上記の構成により、実施の形態1の気相成長装置と同様に、パージガスが、ヒータ7の近傍に均等に拡散供給され、また一定の流速が確保されたガスの流れを形成することにより、成膜時には、パージガスの流れがバリアガスとして働き、ヒータ7側に反応ガスが流入しにくくなる。また、反応管底面板4bとサセプタ6との間から腐食性の反応ガスが流入しても、ヒータ7近傍で滞留することなく、排出口9aから排出されることになる。このため、ヒータ7との反応が低減され、ヒータ7の寿命を大幅に向上させることができる。
【0096】
またパージガスが均一にヒータ7に照射されることから、ヒータ7の発熱が面内で均一に安定し、基板5の温度分布均一性を向上させることができる。これは結晶品質の向上につながり、歩留りを改善することができる。また物理的な干渉などが原因で、サセプタ6中心軸にパージガス流路を形成できない場合であっても、中心軸からずれたパージガス供給管13の位置からパージガスを供給することが可能となり、装置設計の自由度も増すことができる。
【0097】
さらにサセプタ支持棒11から第2パージガスを供給することももちろん可能であり、第2パージガスが供給される場合には、ヒータ7の中央部から周辺部へかけて放射状に流れを安定して形成することができ、排出口9aまでの流れをさらに安定化させることができ、ガスの滞留部をより低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明に係るヒータに対してパージガスを均一に供給することができる気相成長装置を提供することができ、気相成長装置を用いる様々な分野において利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本実施の形態に係るMOCVD装置(気相成長装置)の反応炉の断面図である。
【図2】図1のMOCVD装置の反応炉内におけるヒータ7周辺を示す断面図である。
【図3】対面リフレクタ8a、8b、8cを示す斜視図である。
【図4】本発明に係る気相成長装置のモデルの解析結果を示す図である。
【図5】本発明に係る気相成長装置のモデルの解析結果を示す図である。
【図6】比較用の気相成長装置のモデルに関する解析結果を示す図である。
【図7】比較用の気相成長装置のモデルに関する解析結果を示す図である。
【図8】比較用の気相成長装置のモデルに関する解析結果を示す図である。
【図9】比較用の気相成長装置のモデルに関する解析結果を示す図である。
【図10】本発明の他の実施の形態に係るMOCVD装置の反応炉内におけるヒータ7周辺を示す断面図である。
【図11】従来技術に係るMOCVD装置の反応炉部分の断面図を示す。
【図12】図11に示す従来のMOCVD装置の反応炉部分の内部構造を示す断面図である。
【図13】従来の縦型MOCVD装置を示す断面図である。
【図14】中央放射型MOCVD装置を示す断面図である。
【図15】従来の横型MOCVD装置を示す断面図である。
【図16】従来のプラズマCVD装置を示す断面図である。
【図17】図16のプラズマCVD装置が備えるリフレクタ108の斜視図である。
【符号の説明】
【0100】
3 排出口(パージガス排出手段)
5 基板
6 サセプタ
7 ヒータ
8a〜e 対面リフレクタ
9 側面リフレクタ
10 後面リフレクタ
11 サセプタ支持棒(第2パージガス供給手段)
12 熱電対
13 パージガス供給管(第1パージガス供給手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長装置及びガス供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード、半導体レーザー、化合物太陽電池などに用いられるIII-V族系化合物半導体薄膜の製造方法としては、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウム等のIII族元素を含む有機金属材料と、アンモニア、ホスフィン、アルシン等のV族元素を含む水素化合物ガスなどとを化学反応させて薄膜を形成する気相成長法がある。気相成長法は、上記ガスを反応炉内に供給し、加熱した基板上で化学反応させることにより薄膜形成するものである。
【0003】
この方法を用いる気相成長装置として、MOCVD装置(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属化学気相成長装置)がある。MOCVD装置によって得られる薄膜は、膜厚および膜質の面内均一性に優れており、同様に化合物半導体を結晶成長させる分子線エピタキシャル成長装置(MBE装置)に比較して量産性に優れているという点から、化合物半導体を製造する業界において一般的に用いられている装置である。
【0004】
MOCVD装置は一般的に、(1)有機金属材料、水素化物ガス、キャリアガスおよびパージガスを流量制御して供給するガス供給系と、(2)該ガス供給系が接続され、内部に基板を設置し、該基板を加熱、回転できる機構を有し、さらに供給されたガスを排出する排気系を有する反応炉と、(3)反応炉から排出されるガスを無害化し外部へ排気する除害系から構成される。本発明は、MOCVD装置を構成する上記3要素の中で、特に上記(2)の反応炉の内部構造に関するものである。以下、従来のMOCVD装置の反応炉内の構成について説明する。なお、基板上に供給される、有機金属材料、及び水素化物ガスを以下、原料ガスと称す。また原料ガス、キャリアガスを含めた、基板上に供給されるガスをプロセスガスと称す。
【0005】
図11に、従来技術に係るMOCVD装置の反応炉部分の断面図を示す。本MOCVD装置は横フロー型と呼ばれ、成膜に使用するガスを基板面に対して平行に一方向から流し込むガス供給方式が採用されている。
【0006】
供給されたプロセスガスは層流を形成する。このため、基板105との間にできる境界層を介して原料ガスが基板上に拡散し、サセプタ106に備えられた基板105上で反応が進行することになる。したがって反応炉内では、プロセスガスを上流側から下流側に一方向(横向き)に整流がなされ、できるだけガスの流れを乱さないように基板105を含めた流路が形成される。図中、上記反応炉は、一般にステンレス等の金属チャンバ101を備えており、その一端にはガス供給口102が設けられており、他方にはガス排気口103が設けられている。
【0007】
ガス供給口102は、プロセスガスを供給する部分であり、ガス排気口103は、未反応ガスや化学反応で生じた中間生成物、あるいはキャリアガス等の余剰ガスを排出するためのポートで、排気系(図示せず)に接続される。
【0008】
反応炉120には、ガス供給口102およびガス排気口103の内部に位置する反応管(流路)104が配置されている。反応管104は石英等で形成されている。ガス供給口102の方向から供給された各種ガスは、反応管104を通り、ガス排気口103の方向へ排気される。このため、供給された各種ガスは、反応管104を介して一方向の流れに整流され、基板105の表面へ導かれる。
【0009】
反応管104はフローチャネルとも呼ばれ、横フロー型MOCVD装置で一般に用いられる構成部材である。反応管104の形状は、一般には直方体形状(箱型)または円筒型であることが多く、ガス供給口102から基板105の設置部、及びガス排気口103まで一体で形成される。あるいは、反応管104の部分的に形成された各部を嵌合させることにより流路が形成される。また、流れの上流側では、異種の原料ガスがあまり早く混合して反応してしまわないように、仕切り104aを設ける場合もある。
【0010】
次に図12を用いて、基板105及びサセプタ106周辺構造の説明を行う。図12は、図11に示す従来のMOCVD装置の反応炉部分の内部構造を示す断面図である。反応管104の略中央部には、基板105、及び基板105を載置するサセプタ106が設置され、流路の一部を形成することになる。サセプタ106の下部には、基板105を加熱するためのヒータ107が設置される。
【0011】
基板105はサセプタ106上に設置されるが、サセプタ106の表面には基板105の形状に合わせた堀込が設けられ、堀込の深さは、ガスの流れを乱さないように、サセプタ106の表面(基板105の設置部以外)と基板105の表面とが略同一面になるように設定される。また、サセプタ106の表面は、反応管104の反応管底面板104bとも略同一平面になるよう設置されている。
【0012】
サセプタ106の下部には、基板加熱用のヒータ107が設置される。ヒータ107は円盤形状である。また、サセプタ106は、サセプタ106の裏面(基板設置面の反対側)における中央部近傍に設置されたサセプタ支持棒111によって支持されている。ヒータ7の中央部には開口が形成されており、サセプタ支持棒111はヒータ107の開口部を通る構造となっている。
【0013】
熱電対112は、中空構造となっているサセプタ支持棒111内を通して導入される。この熱電対112に計測される温度に基づきヒータ107の温度は制御される。一般的には、予め熱電対112に設定された温度になるように制御される。
【0014】
サセプタ支持棒111は回転機構(図示せず)に接続され、基板105の温度の均一性を向上させるため、サセプタ106を回転させる。なお、ヒータ107及び熱電対112は非回転であり、サセプタ106とは接触しない構造となる。また、ヒータ107の側面および下側には、ヒータ107からの熱が側面および下側に放熱されることを抑制し、加熱効率を上げ、また周辺部の昇温を防ぐための、側面リフレクタ109および底面リフレクタ110が設置されている。
【0015】
上記構造により電力消費を抑制すると共に、基板105側へ効率良く熱を伝導できることになる。またチャンバ壁面など周辺部への熱の影響が低減され、耐熱対策も不要となり、装置コストを下げることができる。なお、側面リフレクタ109および底面リフレクタ110は一体型で形成される場合と、分割で形成される場合があるが、何れの場合にもできるだけ放熱を抑制するため、密閉に近い空間がヒータ107の周辺に形成されることになる。
【0016】
さらに、側面リフレクタ109または底面リフレクタ110の効果を高めるために、複数のリフレクタを設置する場合もある。しかしながら、上記構成により、ヒータ107の周囲への放熱をできるだけ抑制し、密閉性を高めた構造を取る場合、成膜が終了して基板を取り出す際の冷却に非常に時間がかかることになる。これは装置運用上、タクトダウンにつながり、量産装置の場合、生産性を損なうことになる。
【0017】
次に成膜中のガスの流れについて、ヒータ107の近傍にどのようなガスの流れが生じるかを説明する。反応管104の上流方向(ガス供給口102側)から一方向に流れてくるプロセスガスは、ほとんどが基板105上を通過して、下流のガス排気口103側へ流れていく。
【0018】
しかし、一部のガスAがサセプタ106と反応管底面板104bとの隙間から、下方へ流れ込み、ヒータ107の周辺部へ達する。一旦流れ込んだガスAは、側面リフレクタ109および底面リフレクタ110間の隙間、もしくは、意図的に設置された図示しない排気口から外部へ排出されることにより、装置排気系から排出される。
【0019】
ここで流れ込んだガスAの中に原料ガスが含まれ、該ガスの反応性が高い場合には、高温になっているヒータ107と反応し、場合によってはヒータ107を腐食し、発熱特性を変化させ、発熱状態にばらつきを生じさせ、最悪の事態にはヒータ断線に至ってしまう。ヒータ特性が不安定になると、成膜への影響が大きく、膜特性の再現性が劣化する。またヒータ交換の場合には、交換作業や、新規ヒータの脱ガス処理、ヒータ供給電力と基板温度との関係を再測定するなど、立上げに多大な時間を要することになる。
【0020】
上記に述べた冷却に時間がかかる、あるいはヒータ劣化を招くといった問題を防ぐため、ヒータ近傍にパージガスが供給される。パージガスには、成膜に影響を与えないガスが用いられる。例えば原料ガスのキャリアガスとして使用される水素ガス、または窒素ガスあるいはアルゴンガスのような不活性ガスが用いられる。パージガスの供給流路としては、サセプタ支持棒の中空空間が利用されることが多い。この場合、ヒータ107の下方向からパージガスをヒータ107近傍に流し込むことにより、冷却時間の短縮や、ヒータ周辺部の反応ガスとの隔離または希釈がなされる。冷却時には、ヒータ107や、サセプタ106の中央部が局所的に冷却される可能性があり、また耐食性に関しても均一な効果が期待できない。また、同じくサセプタ支持棒の中空から供給される熱電対も局所的に冷却されてしまうため、実温度との乖離が一定でなくなり温度調整が困難となる。
【0021】
また、図13は、従来の縦型MOCVD装置(シャワーヘッド型MOCVD装置)を示す断面図である。図13において、図12にて説明した部材と同じ部材については、同一の部材番号を付して、その説明を省略する。図13の縦型MOCVD装置には、シャワープレート115が備えられており、シャワープレート115から反応ガスおよびキャリアガスが供給される点で、図11の横型のMOCVD装置とは大きく異なる。なお、反応ガスおよびキャリアガスの供給源となるガス供給源122、ガス排気口103に連結された、パージライン103aを介して排気されたガスを無害化するための排ガス処理装置123をも備えている。
【0022】
このようなシャワー型MOCVD装置の場合も、ヒータ107周辺への原料ガスの拡散は発生し、腐食によるヒータ劣化は生じる。
【0023】
また、図14は、従来のMOCVD装置(中央放射型MOCVD装置)を示す断面斜視図である。図14において、図12にて説明した部材と同じ部材については、同一の部材番号を付して、その説明を省略する。中央放射型MOCVD装置は、サセプタの円周上に複数の基板を載置し、サセプタの中心近傍から放射状にプロセスガスを供給する。したがって、基板上では、基板面に水平にプロセスガスの流れが形成され、横フロー型MOCVD装置とよく似た化学反応が起こる。このような中央放射型MOCVD装置においても、ヒータ周辺への原料ガスの拡散は発生し、腐食によるヒータ劣化は生じる。
【0024】
このようなヒータに劣化が生じる問題に対して、例えば、特許文献1には、専用配管114を備える横型のMOCVD装置が開示されている。図15は、特許文献1の横型MOCVD装置を示す断面図である。図15に示すように、横型のMOCVD装置において、パージガスを積極的にヒータ近傍に供給できるように専用配管114が設けられており、効率良く冷却を行うことが開示されている。また温調系の制御についても、昇温時にはパージガスを遮断し、冷却時にはヒータオフと同時にパージガスを供給するシステムを組み、タクトアップを図っている。
【0025】
また特許文献2では、リフレクタ108が備えられたプラズマCVD装置が開示されている。図16は、特許文献2のプラズマCVD装置を示す断面図であり、プラズマCVD装置の下部電極107aの直下にはリフレクタ108が設けられている。図17は、リフレクタ108の斜視図である。同図に示すように、リフレクタ108は中空構造であり、リフレクタ108の上面には分散孔が設けられている。特許文献2では、該リフレクタ108の中空内に供給される冷却ガスにより、電極やリフレクタの冷却効率の向上が提案されている。
【特許文献1】特開2000−114180公報(2000年4月21日公開)
【特許文献2】特開平8−69969号公報(1996年3月12日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
しかしながら、上述の従来の気相成長装置では、ヒータ近傍におけるパージガスの局所的な濃度分布が発生し易いという問題がある。
【0027】
具体的に説明すると、図15の横型のMOCVD装置では、ヒータ107に、専用配管114を介してパージガスを照射させることにより、冷却時間は短くなる一方、パージガスの噴出部がヒータ位置に対して、偏って設置されている。このため、ヒータの部位によってパージガスが接する量が異なり、ヒータ107自体に温度分布が生じることによって、熱応力差による歪みが発生し、場合によっては、ヒータ107の破壊や故障を招くおそれがある。
【0028】
また耐食性を考慮すると、成膜中に必ずパージガスを流す必要があるが、パージガスの偏重供給(濃度が偏った供給)がヒータの発熱分布に影響を及ぼし、結果的に基板温度分布への悪影響を及ぼすことになり、結晶品質を低下させる原因となる。
【0029】
さらにヒータ耐食性についても、本開示技術のようにパージガスを偏重して照射し、かつ排出口109aのように1箇所から排出される場合、図中拡大図に示すように、ヒータ近傍で流れが乱れ、場合によっては、流れ込んだ反応性が高いプロセスガスがヒータ近傍で滞留し、局所的にヒータ腐食が発生する可能性もある。また流れの乱れを低減するために、排出口109aのサイズを大きくした場合、ヒータ107からの熱が排出口109aから放射されるため、側面リフレクタがリフレクタとしての役目を果たさなくなる。さらにガス滞留を抑えようと、パージガスの流量を増加させ、ヒータ107近傍のパージガスの流量を上げた場合は、反応管側にパージガスが逆流入し、反応ガスの流れ(層流)が乱され、成膜に対して悪影響を与えてしまう。
【0030】
上記観点から、特許文献1の開示技術は、冷却時間の短縮に有効であるが、偏重した(濃度が偏った)パージガス照射が、基板温度分布に影響し、結晶品質の劣化を招くこととなる。またヒータの長寿命化には効果は乏しく、逆に局所的な冷却がヒータの短寿命化を招くことにもなる。ヒータの寿命が短くなれば、ヒータの交換作業が頻繁になり、装置稼働率が低下するため、生産性を損なうことになる。
【0031】
また特許文献2で開示されたプラズマCVD装置の冷却方法は、リフレクタからガスをヒータ全面に供給する構造であることから、MOCVD装置のヒータパージに利用することが可能である。一方、プラズマCVD装置では基板温度がMOCVD装置より低温であることから、側面リフレクタのような隔壁は不要である。しかしながら、高温にて結晶成長を行うMOCVD装置に適用する場合には、側面リフレクタは必須であり、その場合、分散孔からのガス流速のバラツキにより、やはりヒータ周辺部はガスが充満し、流れは乱れ、局所的にガス滞留部が存在することが考えられる。
【0032】
したがって、プロセス終了後の冷却にはある一定の効果が見込まれるものの、MOCVD装置のように、プロセス中に反応性が高いガスが流入した場合には、高温になっているヒータ周辺のパージガスの滞留部への拡散により、腐食が進行することになり、ヒータ寿命を短くする原因となる。
【0033】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、ヒータに対して均一にパージガスを供給することができる気相成長装置を提供することにある。さらには、MOCVD装置に関する上記課題を解決し、成膜品質を損ねることなく、装置の稼働率を高めながら効率的に、安定した歩留まりを長期間維持しつづけることができる気相成長装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明の気相成長装置は、上記課題を解決するために、気相成長を施す基板を加熱するためのヒータと、上記基板を保持するためのサセプタと、上記ヒータに対する基板の反対側において、上記ヒータの対面側の放熱を抑制するために互いに水平に設置された板状かつ複数の対面リフレクタと、上記ヒータの側面側における放熱を抑制する側面リフレクタとを備えた気相成長装置において、上記ヒータに対して基板の反対側から、上記複数の対面リフレクタへパージガスを供給する第1パージガス供給手段と、上記パージガスを排出するパージガス排出手段を備え、上記複数の対面リフレクタのそれぞれには、複数の通気孔が形成されており、上記複数の対面リフレクタのうち、隣接する対面リフレクタに形成された複数の通気孔同士は対向しない位置に形成されていることを特徴としている。
【0035】
上記構成によれば、第1パージガス供給手段によって、対面リフレクタに対してパージガスを供給することができる。対面リフレクタには複数の通気孔が形成されているため、供給されたパージガスは、上記対面リフレクタに形成された複数の通気孔を通り、隣接する対面リフレクタに衝突する。これにより、パージガスのガス流速分布が均一化され、最終的にはヒータに対して、パージガスが均一に、すなわちシャワー状に供給することができる。
【0036】
また、本発明の気相成長装置では、上記パージガス排出手段は、上記ヒータの側面近傍に設けられていることが好ましい。
【0037】
このため、パージガスは、ヒータ側面近傍のパージガス排出手段から排出されるので、第1パージガス供給手段から供給されたパージガスがヒータの近傍にて滞留することを抑制することができる。したがって、ヒータに対してパージガスをさらに均一に供給することができる気相成長装置を提供することができる。
【0038】
また、本発明の気相成長装置では、上記ヒータに対する基板の反対側において、パージガスを供給する第2パージガス供給手段が備えられており、上記第2パージガス供給手段は、上記サセプタに対して垂直であって、サセプタの中心部に位置する垂直軸上に配置されており、自身の周囲にパージガスを供給することが好ましい。
【0039】
これにより、第1パージガス供給手段からの供給に加え、第2パージガス供給手段からもパージガスを供給することができ、パージガスを供給するバリエーションを増加させることができる。
【0040】
また、本発明の気相成長装置では、上記サセプタおよびヒータは、空間を介して配置されており、上記第2パージガス供給手段は、上記サセプタおよびヒータの間の空間へパージガスを供給することが好ましい。
【0041】
これにより、第1パージガス供給手段に加え、第2パージガス供給手段は、上記サセプタおよびヒータの間の空間へパージガスを供給することができるので、パージガスの流れをさらに安定化することができる。このため、第1パージガス供給手段のみからパージガスが供給される場合と比較して、ヒータの近傍におけるパージガスの濃度分布の偏りをさらに生じ難くすることができる。
【0042】
また、本発明の気相成長装置では、上記第2パージガス供給手段から供給されるパージガスの流量Q2と、上記第1パージガス供給手段から供給されるパージガスの流量Q1とが、Q2≦Q1、かつ、Q2/Q1≦100の関係を満たすことが好ましい。
【0043】
これにより、パージガスの滞留し難くなる虞をより回避することができ、ヒータの近傍におけるパージガスの濃度分布の偏りをさらに生じ難くすることができる。
【0044】
本発明の気相成長方法は、上記課題を解決するために、気相成長を施す基板を加熱するためのヒータと、上記基板を保持するためのサセプタと、上記ヒータに対する基板の反対側において、上記ヒータの対面側の放熱を抑制するために互いに水平に設置された板状かつ複数の対面リフレクタと、上記ヒータの側面側における放熱を抑制する側面リフレクタとを備えた気相成長装置にパージガスを供給するガス供給方法において、上記気相成長装置は、上記ヒータに対して上記サセプタの反対側から、上記複数の対面リフレクタへパージガスを供給する第1パージガス供給手段と、上記パージガスを排出するパージガス排出手段を備えており、上記複数の対面リフレクタのそれぞれには、複数の通気孔が形成されており、上記複数の対面リフレクタのうち、隣接する対面リフレクタに形成された複数の通気孔同士は対向しない位置に形成されており、上記第1パージガス供給手段から、上記複数の対面リフレクタに対してパージガスを供給することを特徴としている。
【0045】
上記構成によれば、第1パージガス供給手段によって、対面リフレクタに対してパージガスを供給することができる。対面リフレクタには複数の通気孔が形成されているため、供給されたパージガスは、上記対面リフレクタに形成された複数の通気孔を通り、隣接する対面リフレクタに衝突する。これにより、パージガスのガス流速分布が均一化され、最終的にはヒータに対して、パージガスが均一に、すなわちシャワー状に供給することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明の気相成長装置は、以上のように、上記ヒータの対面側の放熱を抑制するために互いに水平に設置された板状かつ複数の対面リフレクタと、上記ヒータの側面側における放熱を抑制する側面リフレクタとを備えた気相成長装置において、上記ヒータに対して基板の反対側から、上記複数の対面リフレクタへパージガスを供給する第1パージガス供給手段と、上記パージガスを排出するパージガス排出手段を備え、上記複数の対面リフレクタのそれぞれには、複数の通気孔が形成されており、上記複数の対面リフレクタのうち、隣接する対面リフレクタに形成された複数の通気孔同士は対向しない位置に形成されているものである。
【0047】
それゆえ、第1パージガス供給手段によって、対面リフレクタに対してパージガスを供給することができる。対面リフレクタには複数の通気孔が形成されているため、供給されたパージガスは、上記対面リフレクタに形成された複数の通気孔を通り、隣接する対面リフレクタに衝突する。これにより、パージガスのガス流速分布が均一化され、最終的にはヒータに対して、パージガスが均一に、すなわちシャワー状に供給することができるという効果を奏する。
【0048】
また、ガス滞留部が少ない流れを形成することができるため、流入する反応ガスによるヒータ損傷を低減し、また偏重供給ではないため、ヒータ発熱分布が生じず、基板温度分布の均一性を損なうことなく、膜特性の均一化、及びヒータの長寿命化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1ないし図9に基づいて説明すれば、以下の通りである。図1に本実施の形態に係るMOCVD装置(気相成長装置)の反応炉の断面図を示す。反応炉内の基本構成は、図11に示す従来のMOCVD装置の反応炉内の構成と同様である。すなわち、チャンバ1内にプロセスガスを供給するガス供給口2と、該ガスを基板105に導き、その後、ガス排気口3にまで流路を形成する反応管4と、ガス排気系(図示せず)に接続されるガス排気口3が備えられている。
【0050】
反応管4の略中央部には、基板5を載置するサセプタ6、またサセプタ6の下部には、基板5を加熱するためのヒータ7が設置されている。ヒータ7には電力供給線14が接続されている。さらに、サセプタを支持するサセプタ支持棒(第2パージガス供給手段)11が、サセプタ6の中央部にてサセプタ6を支持している。ヒータ7の中央部には開口が形成されており、サセプタ支持棒11はヒータ7の開口部を通る構造となっている。また、サセプタ支持棒11中には熱電対12が配置されている。
【0051】
その他、基板回転機構やサセプタの昇降機構が取り付けられているが、煩雑になるため図示しない。上記の部材が基本構成となる。
【0052】
基板5は、気相成長が施され、結晶膜の成長が生じる場となる部材である。基板5は気相成長を施すことができれば特に限定されるものではなく、気相成長に用いられる公知の基板を用いることができる。また、説明の便宜のため、図1では、基板5は一箇所に設置された構成としているが、この設置数に限定されず、基板5が複数箇所に設置された構成であってもよい。
【0053】
サセプタ6は、基板5を保持するものである。基板5と同様に、気相成長装置に用いられる公知のサセプタを用いることができる。また、基板5が複数箇所に設置されている場合、サセプタ6も基板5に対応する複数箇所に設置される。また複数枚の基板を設置する一体型のサセプタを用いる場合もある。サセプタの形状についても、図1に示す形状に限られたものでなく、基板設置面の一部に開口部を設け、ヒータから直接輻射熱が照射される形状の場合もあり、基板を保持できればよい。ヒータ7としては、円盤形状のものを採用しているが、基板5を加熱することができればよく、円盤形状に限定されるものではない。ヒータ7は、サセプタ6と空間を介して配置されている。なお、上記基本構成以外の構成については、図2を用いて説明する。
【0054】
次に、図2を用いて、図1の反応炉内におけるヒータ7の周辺部をより詳細に説明する。図2は、図1のMOCVD装置の反応炉内におけるヒータ7周辺を示す断面図である。
【0055】
図2のヒータ周辺の構造としては、上記基本構成に加えて、ヒータ7に対する基板5の反対側において、対面リフレクタ8a、8b、8cが備えられている。また、ヒータ7および対面リフレクタ8a、8b、8cを収容するようにヒータ7の側面には側面リフレクタ9が備えられ、側面リフレクタ9を繋ぐように後面リフレクタ10が備えられている。さらに、後面リフレクタ10からはパージガス供給管(第1パージガス供給手段)13が挿入されている。
【0056】
対面リフレクタ8a、8b、8cは、ヒータ7に対する基板5の反対側において、ヒータ7の対面側の放熱を抑制するために互いに水平に設置されている。同図に示すように、板状かつ複数の対面リフレクタが備えられている。また、対面リフレクタ8a、8b、8cは、後面リフレクタ10よりもヒータ7寄りの位置に配置されており、ヒータからの熱が基板5の反対側へ放熱されることを抑制するための部材である。上記前面リフレクタの材料としては、モリブデン、タンタル、タングステンなどの高融点金属、あるいはアルミナ、窒化ホウ素などのセラミック材料などを用いることができる。対面リフレクタについては、より詳細に後述する。
【0057】
側面リフレクタ9および後面リフレクタ10は、ヒータ7を覆っており、ヒータ7周辺における放熱を抑制するものである。側面リフレクタ9および後面リフレクタ10は互いに隙間なく接触している。ただし接触することは必須ではない。また、側面リフレクタ9は、図2において、円筒形状にて1層設けられているが、この形状に限られるものではなく、2層以上、すなわち、2重管以上設けられていてもよい。これにより、ヒータ7周辺における放熱をより抑制することができる。なお、側面リフレクタ、後面リフレクタ、およびヒータで略囲まれる領域に存在する部材一式を、ヒータユニットと総称する場合がある。
【0058】
パージガス供給管13は、ヒータ7へパージガスを供給する部材である。パージガスの供給により、ヒータ7を冷却することができる。パージガス供給管13は、後面リフレクタ10を貫通して設けられており、パージガス供給管13の先端は、前面リフレクタ8cには接触しておらず、間隔を設けて配置されている。パージガスとしては、水素ガス、窒素ガスあるいはアルゴンガスのような反応に寄与しないガスを用いればよい。
【0059】
パージガス供給管13の配置は、対面リフレクタ8cの下方位置に管口があればよく、特に限定されるものではない。ただし対面リフレクタ8cの直近であれば、対面リフレクタ8cから対面リフレクタ8bの間でのパージガスの拡散が不十分になるおそれがあるので、例えば、リフレクタ8cの下面から2〜3mm以上離して設置されることが望ましい。
【0060】
また、3枚の対面リフレクタ8a、8b、8cについて、より明確に説明するため、図3を用いて説明する。図3は、前面リフレクタ8a、8b、8cを示す斜視図である。同図に示すように、対面リフレクタ8a、8b、8bはそれぞれ間隔を設けて、互いに水平に配置されている。この間隔は本実施の形態では、1mmにて設置されているが、間隔については、これに限られない。
【0061】
平行に配置された対面リフレクタ8a、8b、8cのそれぞれには、16箇所に通気孔が形成されており、隣接する前面リフレクタ同士に形成された複数の通気孔同士は対向しない位置に形成されている。換言すると、平行に配置された対面リフレクタ8a、8b、8cに形成された複数の通気孔同士は、隣接する対面リフレクタ間において、対面リフレクタに対して垂直な方向に沿って一致しない位置に形成されているといえる、または、対面リフレクタに対して垂直な方向に沿って重ならない位置に形成されているともいえる。
【0062】
対面リフレクタ8a、8b、8cに設置する通気口の配置としては、本実施の形態においては、通気口をリフレクタ径方向に直線上に配置したが、これに限られるわけではなく、対面リフレクタ内に異なる半径を有する円周上に配置されていてもよい。ただしその場合、互いに隣り合う対面リフレクタでは、円周半径を異なるよう通気口を配置することが求められる。さらに、対面リフレクタ内に千鳥格子状に通気口を配置してもよい。この場合においても、互いに隣り合うリフレクタでは、通気口位置が垂直方向において、一致しないことが求められる。
【0063】
なお、上記通気孔は、円形に形成されているが、上記の位置に形成されていれば、その形状は特に限定されるものではない。
【0064】
また、図2の反応炉内では、対面リフレクタは3枚備えられている構成であるが、少なくとも2枚備えられていれば本発明の気相成長装置が構成され得る。
【0065】
対面リフレクタ8a、8b、8cに形成された通気孔は、上記のように配置されているため、図2に示すように、パージガス供給管13からパージガスが供給されると、前面リフレクタ8cの通気孔を通ったパージガスは、前面リフレクタ8bに衝突することとなる。その後、パージガスは前面リフレクタ8bに沿って分散され、さらに、対面リフレクタ8bの通気孔を通る。同様の過程が対面リフレクタ8aについてもなされ、パージガスがヒータ7の近傍へ供給される。このため、パージガスが、対面リフレクタに衝突することなくヒータ7の近傍に到達することはできない。
【0066】
上記のように、パージガス供給管13から供給されたパージガスは、対面リフレクタ8a、8b、8cに設けられた複数の通気孔を通過して、各対面リフレクタ間でパージガス同士が衝突する。これを繰返しながら、パージガスはヒータ7に導かれるため、パージガスの流れ方向がランダムに分散されると同時に、ガス流速分布が均一化に向かいながらヒータ7に到達することになる。最終的に、パージガスは、ヒータ7に到達する直前の最上段の対面リフレクタ8aに設置された複数の通気孔から、上向きにシャワー状に均一に照射されることになる。
【0067】
また、ヒータ7の側面近傍には、側面リフレクタ9の上面側(サセプタ側)と流路を形成する反応管底面板4bとの間に隙間が設けられていることによって、排出口(パージガス排出手段)9aが形成されている。即ち該隙間を排気口として、供給されたパージガスは排出されることになるので、パージガスの流れには一定の流量が確保され、照射されたパージガスがヒータ7近傍で滞留することを抑制できる。このため、本実施の形態に係る気相成長装置によれば、ヒータ7近傍の濃度分布の偏りを抑制することができ、ヒータに対してパージガスをさらに均一に供給することができる。
【0068】
ここで、ヒータ7の側面近傍とは、具体的には、ヒータ7および対面リフレクタ8a、8b、8cを収容する(囲う)側面リフレクタ9のうち、ヒータ7に対向する位置から、サセプタ6に対向する位置までの位置を意味する。図2では、排出口9aは、側面リフレクタ9のサセプタ6に対向する面に形成されている。
【0069】
さらに、図2に示す気相成長装置は、好ましい形態として、サセプタ支持棒11が中空構造となっており、パージガスがサセプタ支持棒11の下方からサセプタ側に供給される構造となっている。サセプタ支持棒11のサセプタ6と接する先端部には開口が形成されており、パージガスが上記開口から、サセプタ6およびヒータ7の間の空間に供給される。その後、パージガスは排出口9aから排出されることとなる。
【0070】
上記気相成長装置が、サセプタ支持棒11からパージガスを供給する構成を備えることによって、対面リフレクタ8a、8b、8cからシャワー状に供給されるパージガスの流れと組み合わせ、パージガスの流れをさらに安定化することができる。このため、パージガス供給管13のみからパージガスが供給される場合に比べて、ヒータ7の近傍におけるパージガスの濃度分布の偏りをさらに生じ難くすることができる。
【0071】
より具体的には、パージガス供給管13からのパージガスの流れを第1パージガスとし、サセプタ支持棒11を介して流すパージガスを第2パージガスとすると、第1パージガスの流れに第2パージガスが加わることにより、ヒータ7の中央部近傍から周辺部へかけて、放射状の流れを形成することができる。
【0072】
このとき、第1及び第2パージガスの流量のバランスを適正化することにより、排出口9aまでの流れをさらに安定化させることができ、ガスの滞留部をより低減することができる。流量のバランスは、第2パージガスの流量Q2が第1パージガスの流量Q1を超えないことが好ましく、流量Q1に対して流量Q2は、Q2≦Q1、かつ、Q2/Q1≦100の関係を満たすことが好ましい。上記の関係が満たされる場合、供給されたパージガスに滞留部分が生じ難くなる。
【0073】
以上の構成により、パージガスが、ヒータ7の近傍に均等に拡散供給され、また一定の流速が確保されたガスの流れを形成することにより、成膜時には、パージガスの流れがバリアガスとして働き、ヒータ7側に反応ガスが流入しにくくなる。また、反応管底面板4bとサセプタ6との間から腐食性のプロセスガスが流入しても、ヒータ7近傍で滞留することなく、排出口9aから排出されることになる。このため、ヒータ7との反応が低減され、ヒータ7の寿命を大幅に向上させることができる。
【0074】
またパージガスが均一にヒータ7に照射されることから、ヒータ7の発熱が面内で均一に安定し、基板5の温度分布均一性を向上させることができる。これは結晶品質の向上につながり、歩留りを改善することができる。また物理的な干渉などが原因で、サセプタ6中心軸にパージガス流路を形成できない場合であっても、中心軸からずれたパージガス供給管13の位置からパージガスを供給することが可能となり、装置設計の自由度も増すことができる。
【0075】
なお、本実施の形態では横フロー型MOCVD装置について記載したが、図13における、基板上方より反応ガスを供給する縦型MOCVD装置に対しても適用可能である。また図14における、サセプタ6の円周上に複数の基板5を載置し、サセプタ6の中心から放射状にガスを供給する中央放射型MOCVD装置においても適用可能である。
【0076】
次に本発明の効果をより明確にするために、ヒータ周辺部のパージガスの流れを熱流体解析により評価した結果を示す。用いる熱流体解析は、一般に広く用いられる、コンピュータを用いた数値解析によって、モデリングされた気相成長装置内のガスの流れに関する様態を求める方法である。図2に示す気相成長装置を含め、6種類の気相成長装置のモデルに関する解析結果を図4〜図9に示す。図中の小矢印が流れベクトルとなる。なお、各モデルに対してサセプタ支持棒11を中心軸Cとして、片断面を回転させた擬似3次元計算がなされた解析結果が示されている。
【0077】
各モデルのサイズについては、パージガスの供給配管径や排出口9aの隙間大きさなどの共通部分に関しては同じ寸法にし、基準は本実施の形態に係る図2の気相成長装置を基本としている。したがって共通部名称については、図2と同じ符号を付している。また、パージガスの供給流量も同じである。パージガス供給管13およびサセプタ支持棒11の2系統からパージガスを供給している場合も各々の系統から同じ流量を供給しているため、1系統のみの場合の2倍のパージガスを供給していることになる。また排出口9aの下部には側面リフレクタ9が境界条件として存在するが、計算モデル上は記載していない。
【0078】
図4は、本発明に係る気相成長装置のモデルの解析結果を示す図あり、図2における気相成長装置において、パージガス供給管13のみからパージガスが供給されるモデルを示している。すなわち、サセプタ支持棒11には、パージガスを供給するための開口は形成されていない。同図に示すように、対面リフレクタ8a、8b、8cには複数の通気孔が設けられている。パージガスはパージガス供給管13から供給され、排出口9aより排出される。
【0079】
本解析結果から、パージガスがパージガス供給管13から供給された直後には、パージガスの流れの乱れが見受けられるものの、対面リフレクタ8a、8b、8cが複数の通気孔を備える構造によって、ガスの流れは拡散し、均一にヒータ7へ照射されていることがわかる。またヒータ7周辺に大きなガスの流れの乱れは生じておらず、排出口9aより排出されることがわかる。
【0080】
図5は本発明に係る気相成長装置のモデルの解析結果を示す図であり、図2に示す気相成長装置に対応するモデルを対象としている。すなわち、サセプタ支持棒11から、ヒータ近傍にてサセプタの中央付近から放射状にパージガスが供給される。この場合、図4に示したモデルと同様に対面リフレクタ8a、8b、8cの複数の通気孔を備える構造(多孔構造)によるパージガスの拡散供給の効果と、さらにサセプタ支持棒11内からの中央放射状のガスの流れによって、パージガスの流れがさらに安定化する。最後に、パージガスは、排出口9aから排出され、ガス滞留部はほとんど見られない。
【0081】
また本解析結果は、パージガス供給管13からの第1パージガスの流量Q1とサセプタ支持棒11からの第2パージガスの流量Q2とが同じ場合であるが、両者Q1、Q2の流量比を変えて計算した結果、Q1>Q2の場合は、流れとしては、図4と類似するものの、ガスの流れの大きな乱れは発生しない。
【0082】
しかしながらQ1<Q2で、かつ流量比Q2/Q1が100を超える場合には、大きくガスの流れが乱れ、ガス滞留部が発生することが確認できた。したがって本構造のパージ機構の場合には、中央部からの第2パージガスの流量Q2と、底面リフレクタを介して拡散シャワー状に供給する第1パージガス流量Q1とがQ2≦Q1、かつ、Q2/Q1≦100の関係を満たすことが望ましい。
【0083】
図6は、比較用の気相成長装置のモデルに関する解析結果を示す図である。本実施の形態に係る対面リフレクタ8aとは異なり、上記モデルのリフレクタ108には、通気孔が形成されていない。また、パージガス供給管113は、ヒータ7近傍に設置されており、従来技術として開示される特許文献1に類似する構成である。
【0084】
図6の解析結果から、パージガス供給管113からパージガスがヒータ107に向け供給された直後において、ガスの大きな乱れが発生し、乱れが生じた近傍においてガスの滞留部が存在することがわかる。サセプタ106の隙間から混入した反応ガスが、拡散によってヒータ107の近傍に移動した場合、反応ガスは長時間滞留することになる。図6に示す結果は、高温に保持されるヒータ107と反応ガスとの接触機会が増加し、腐食を促進する原因となり得ることを示す結果と言える。
【0085】
図7は、比較用の気相成長装置のモデルに関する解析結果を示す図である。本実施の形態に係る対面リフレクタ8aとは異なり、リフレクタ108aには、通気孔が形成されているものの、隣接するリフレクタ108a同士に形成された通気孔同士は対向するように配置されている。上記の通気孔には、例えば、突き上げ機構などの機構部が装着される場合などが想定される。
【0086】
図7に示す解析結果から、パージガスが各リフレクタ108aに設けられた通気孔を通過した直後に、大きなガスの乱れが発生しており、ガス滞留部が見受けられる。また、ヒータ107近傍でも同様に、ガス滞留部が見受けられる。したがって図6の解析結果と同様、このガス滞留部により反応ガスが滞在するので、ヒータ107の腐食が進行するおそれが高い。
【0087】
図8は、比較用の気相成長装置のモデルに関する解析結果を示す図である。同図に示すモデルでは、サセプタ支持棒111を中空構造にし、その内部にパージガスを供給し、ヒータ107近傍にパージガスの供給口を設け、ヒータ107近傍にパージガスを供給する構成となっている。また、排出口109aも設けられているため、パージガスはサセプタ106の中央部から排出口109aに向かって放射状に流れを形成することになる。しかしながら、解析結果によると、パージガスがサセプタ支持棒111から供給された供給口の近傍で、ガス滞留部が発生していること、および、ヒータ107下部の周辺近傍ではガスの流れが形成されていないことがわかる。したがって本構造でも、ヒータ107周辺に混入した反応ガスの滞留が発生し、ヒータ107の腐食が進行するおそれが高い。
【0088】
図9は、比較用の気相成長装置のモデルに関する解析結果を示す図である。同図に示すモデルでは、対面リフレクタ108bが中空構造となっており、対面リフレクタ108bの上面側に多孔構造を設けた構成を示しており、従来技術として開示される特許文献2に類似する構成となる。パージガス供給管113、113bから供給されたパージガスは、中空構造となっている対面リフレクタ108b内に一旦供給されるが、パージガス供給管113、113aの近傍でパージガスの流れの乱れが見受けられる。
【0089】
また、対面リフレクタ108bの上面には複数の通気孔が設けられている。上記述べたパージガスの流れが乱れている近傍の通気孔から照射されたガスはヒータ7の近傍で流れが乱れ、滞留していることがわかる。したがって本構造でも、混入した反応性ガスの滞留が発生し、ヒータ107の腐食が進行することが考えられる。
【0090】
以上のように、本発明によれば、図6〜図9に示した演算結果とは異なり、ヒータの下面にパージガスを均一に供給することができる。また、パージガスの流れを安定化させる上記の対面リフレクタが備えられていることにより、ヒータ近傍における滞留部を低減し、また反応ガスの流入を低下させ、ヒータの長寿命化が実現することができ、また基板温度の面内均一性を安定化することで、結晶品質を安定化し歩留向上を実現することができる。
【0091】
なお、上記の気相成長装置に係る説明は、上記気相成長装置において、パージガス供給管から、上記複数の対面リフレクタに対してパージガスを供給するガス供給方法についても同時になされているものである。また、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0092】
〔実施の形態2〕
本発明に係る他の実施の形態について図10に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0093】
図10は、本実施の形態に係るMOCVD装置の反応炉内におけるヒータ7周辺を示す断面図である。同図に示す気相成長装置では、図2に示す気相成長装置と対面リフレクタ8a、8b、8cなどの構成は同じであるが、異なる点としては、パージガス供給管13を備えておらず、代わりにパージガス供給口13bがサセプタ支持棒11の周囲に後面リフレクタ10を貫通するように形成されている点が挙げられる。
【0094】
パージガス供給口13bから反応炉内にはパージガスが供給される。上記パージガスとしては、チャンバ内に供給され、壁面汚染や冷却に用いるリアクターパージガス(図示せず)を利用したものが用いられる。そして、リアクターパージガスの一部がパージガス供給口から流れ込むことになる。供給されたパージガスは、それぞれに複数孔が設けられた3枚の対面リフレクタ8a、8b、8cを通過し、ヒータ7へ供給される。パージガスは、各対面リフレクタに施された複数の通気孔を通ることによって、各対面リフレクタ間で衝突を繰り返し、ガス流速分布が均一化され、最終的にはヒータ7に対して均一にシャワー状に供給されることになる。
【0095】
上記の構成により、実施の形態1の気相成長装置と同様に、パージガスが、ヒータ7の近傍に均等に拡散供給され、また一定の流速が確保されたガスの流れを形成することにより、成膜時には、パージガスの流れがバリアガスとして働き、ヒータ7側に反応ガスが流入しにくくなる。また、反応管底面板4bとサセプタ6との間から腐食性の反応ガスが流入しても、ヒータ7近傍で滞留することなく、排出口9aから排出されることになる。このため、ヒータ7との反応が低減され、ヒータ7の寿命を大幅に向上させることができる。
【0096】
またパージガスが均一にヒータ7に照射されることから、ヒータ7の発熱が面内で均一に安定し、基板5の温度分布均一性を向上させることができる。これは結晶品質の向上につながり、歩留りを改善することができる。また物理的な干渉などが原因で、サセプタ6中心軸にパージガス流路を形成できない場合であっても、中心軸からずれたパージガス供給管13の位置からパージガスを供給することが可能となり、装置設計の自由度も増すことができる。
【0097】
さらにサセプタ支持棒11から第2パージガスを供給することももちろん可能であり、第2パージガスが供給される場合には、ヒータ7の中央部から周辺部へかけて放射状に流れを安定して形成することができ、排出口9aまでの流れをさらに安定化させることができ、ガスの滞留部をより低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明に係るヒータに対してパージガスを均一に供給することができる気相成長装置を提供することができ、気相成長装置を用いる様々な分野において利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本実施の形態に係るMOCVD装置(気相成長装置)の反応炉の断面図である。
【図2】図1のMOCVD装置の反応炉内におけるヒータ7周辺を示す断面図である。
【図3】対面リフレクタ8a、8b、8cを示す斜視図である。
【図4】本発明に係る気相成長装置のモデルの解析結果を示す図である。
【図5】本発明に係る気相成長装置のモデルの解析結果を示す図である。
【図6】比較用の気相成長装置のモデルに関する解析結果を示す図である。
【図7】比較用の気相成長装置のモデルに関する解析結果を示す図である。
【図8】比較用の気相成長装置のモデルに関する解析結果を示す図である。
【図9】比較用の気相成長装置のモデルに関する解析結果を示す図である。
【図10】本発明の他の実施の形態に係るMOCVD装置の反応炉内におけるヒータ7周辺を示す断面図である。
【図11】従来技術に係るMOCVD装置の反応炉部分の断面図を示す。
【図12】図11に示す従来のMOCVD装置の反応炉部分の内部構造を示す断面図である。
【図13】従来の縦型MOCVD装置を示す断面図である。
【図14】中央放射型MOCVD装置を示す断面図である。
【図15】従来の横型MOCVD装置を示す断面図である。
【図16】従来のプラズマCVD装置を示す断面図である。
【図17】図16のプラズマCVD装置が備えるリフレクタ108の斜視図である。
【符号の説明】
【0100】
3 排出口(パージガス排出手段)
5 基板
6 サセプタ
7 ヒータ
8a〜e 対面リフレクタ
9 側面リフレクタ
10 後面リフレクタ
11 サセプタ支持棒(第2パージガス供給手段)
12 熱電対
13 パージガス供給管(第1パージガス供給手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相成長を施す基板を加熱するためのヒータと、上記基板を保持するためのサセプタと、上記ヒータに対する基板の反対側において、上記ヒータの対面側の放熱を抑制するために互いに水平に設置された板状かつ複数の対面リフレクタと、上記ヒータの側面側における放熱を抑制する側面リフレクタとを備えた気相成長装置において、
上記ヒータに対して基板の反対側から、上記複数の対面リフレクタへパージガスを供給する第1パージガス供給手段と、上記パージガスを排出するパージガス排出手段を備え、
上記複数の対面リフレクタのそれぞれには、複数の通気孔が形成されており、
上記複数の対面リフレクタのうち、隣接する対面リフレクタに形成された複数の通気孔同士は対向しない位置に形成されていることを特徴とする気相成長装置。
【請求項2】
上記パージガス排出手段は、上記ヒータの側面近傍に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項3】
上記ヒータに対する基板の反対側において、パージガスを供給する第2パージガス供給手段が備えられており、
上記第2パージガス供給手段は、上記サセプタに対して垂直であって、サセプタの中心部に位置する垂直軸上に配置されており、自身の周囲にパージガスを供給することを特徴とする請求項2に記載の気相成長装置。
【請求項4】
上記サセプタおよびヒータは、空間を介して配置されており、
上記第2パージガス供給手段は、上記サセプタおよびヒータの間の空間へパージガスを供給することを特徴とする請求項3に記載の気相成長装置。
【請求項5】
上記第2パージガス供給手段から供給されるパージガスの流量Q2と、上記第1パージガス供給手段から供給されるパージガスの流量Q1とが、Q2≦Q1、かつ、Q2/Q1≦100の関係を満たすことを特徴とする請求項3または4に記載の気相成長装置。
【請求項6】
気相成長を施す基板を加熱するためのヒータと、上記基板を保持するためのサセプタと、上記ヒータに対する基板の反対側において、上記ヒータの対面側の放熱を抑制するために互いに水平に設置された板状かつ複数の対面リフレクタと、上記ヒータの側面側における放熱を抑制する側面リフレクタとを備えた気相成長装置にパージガスを供給するガス供給方法において、
上記気相成長装置は、上記ヒータに対して上記サセプタの反対側から、上記複数の対面リフレクタへパージガスを供給する第1パージガス供給手段と、上記パージガスを排出するパージガス排出手段を備えており、
上記複数の対面リフレクタのそれぞれには、複数の通気孔が形成されており、
上記複数の対面リフレクタのうち、隣接する対面リフレクタに形成された複数の通気孔同士は対向しない位置に形成されており、
上記第1パージガス供給手段から、上記複数の対面リフレクタに対してパージガスを供給することを特徴とするガス供給方法。
【請求項1】
気相成長を施す基板を加熱するためのヒータと、上記基板を保持するためのサセプタと、上記ヒータに対する基板の反対側において、上記ヒータの対面側の放熱を抑制するために互いに水平に設置された板状かつ複数の対面リフレクタと、上記ヒータの側面側における放熱を抑制する側面リフレクタとを備えた気相成長装置において、
上記ヒータに対して基板の反対側から、上記複数の対面リフレクタへパージガスを供給する第1パージガス供給手段と、上記パージガスを排出するパージガス排出手段を備え、
上記複数の対面リフレクタのそれぞれには、複数の通気孔が形成されており、
上記複数の対面リフレクタのうち、隣接する対面リフレクタに形成された複数の通気孔同士は対向しない位置に形成されていることを特徴とする気相成長装置。
【請求項2】
上記パージガス排出手段は、上記ヒータの側面近傍に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項3】
上記ヒータに対する基板の反対側において、パージガスを供給する第2パージガス供給手段が備えられており、
上記第2パージガス供給手段は、上記サセプタに対して垂直であって、サセプタの中心部に位置する垂直軸上に配置されており、自身の周囲にパージガスを供給することを特徴とする請求項2に記載の気相成長装置。
【請求項4】
上記サセプタおよびヒータは、空間を介して配置されており、
上記第2パージガス供給手段は、上記サセプタおよびヒータの間の空間へパージガスを供給することを特徴とする請求項3に記載の気相成長装置。
【請求項5】
上記第2パージガス供給手段から供給されるパージガスの流量Q2と、上記第1パージガス供給手段から供給されるパージガスの流量Q1とが、Q2≦Q1、かつ、Q2/Q1≦100の関係を満たすことを特徴とする請求項3または4に記載の気相成長装置。
【請求項6】
気相成長を施す基板を加熱するためのヒータと、上記基板を保持するためのサセプタと、上記ヒータに対する基板の反対側において、上記ヒータの対面側の放熱を抑制するために互いに水平に設置された板状かつ複数の対面リフレクタと、上記ヒータの側面側における放熱を抑制する側面リフレクタとを備えた気相成長装置にパージガスを供給するガス供給方法において、
上記気相成長装置は、上記ヒータに対して上記サセプタの反対側から、上記複数の対面リフレクタへパージガスを供給する第1パージガス供給手段と、上記パージガスを排出するパージガス排出手段を備えており、
上記複数の対面リフレクタのそれぞれには、複数の通気孔が形成されており、
上記複数の対面リフレクタのうち、隣接する対面リフレクタに形成された複数の通気孔同士は対向しない位置に形成されており、
上記第1パージガス供給手段から、上記複数の対面リフレクタに対してパージガスを供給することを特徴とするガス供給方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−116606(P2010−116606A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291122(P2008−291122)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]