説明

永続ピストン保持システムを備えたターボマシン

【課題】流体を殆ど消費せず、優れた体積効率を呈し、比較的コンパクトで、ロータを所定位置に保持する界面での摩耗がなく長寿命で、高速での作動に適したターボマシンを提供する。
【解決手段】ロータが半径方向所定位置にあることを確保する半径方向位置決め手段(40、42;240、242;340、342)と、高速時にロータ(10R、110R)の軸線方向バランスをとるための、少なくとも1つのブレード形ホイールに配置された非接触軸線方向バランシング装置(38)とを有する、ロータ(10R、110R)およびステータ(10S)が設けられたターボマシン(10、210、310)。ターボマシンは、半径方向位置決め手段(40、42;140、142)とは別のスラストベアリング(36、136)を有し、スラストベアリングは、低速時にロータを軸線方向にバランスさせ、高速時には非接触でロータを軸線方向にバランスさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロータおよびステータが配置されたターボマシンに関し、より詳しくは、ターボマシンのステータに対してロータを所定位置に保持する手段の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボマシンは、流体流れ部分と、ターボマシンを通って流れる流体と電気回路との間でエネルギーを交換できるように協働する電気的部分とを有している。
【0003】
このエネルギー交換は両方向で行われ、したがって、このようなターボマシンは、ポンプのような流体流れ部分を駆動する電気的部分としての電気モータを備えたコンプレッサとして構成できる。ターボマシンはまた、流体流れ部分が、例えば、オルタネータのような発電機を構成する電気的部分を駆動するタービンである発電機としても構成できる。
【0004】
この形式のターボマシンは、より詳しくは、液化天然ガス(LNG)産業および液化石油ガス(LPG)産業において、膨張タービンまたは高圧ポンプの形態で使用されている。この場合、ターボマシンを通る流体は、天然ガス(メタン、エタン)、液化石油ガス(ブタン、プロパン)または冷媒ミックス(refrigerant-mix:RM)と呼ばれるこれらの混合物(一定量のより重い化合物を含む場合もある)である。
【0005】
このようなターボマシンを設計するときの永久的目的は、その寿命および性能を最高にすることである。
【0006】
この目的のため、特に、ロータの回転摩擦を低減させる努力がなされている。このためには、ステータに対するロータの位置を、半径方向および軸線方向の両方向に保持する適当な手段を選択することが重要である。通常、ロータには垂直に配置されたシャフトが設けられており、保持手段の第一機能は、特に、ロータの静止時または低速時にロータの重量を支持することにあることに気付くべきである。
【0007】
米国特許出願第2006/0186671号明細書(特許文献1)には、ターボマシンに使用するのに適した保持手段の種々の実施形態が開示されている。
【0008】
第一実施形態(図1)では、半径方向位置が転がりベアリングにより保持されたタービン発電機が開示されている。しかしながら、ボールベアリングは対面する表面同士が機械的に接触して摩擦が生じるため、特に高速回転時に摩耗およびエネルギーの消費をもたらしかつ最大許容回転速度が制限されてしまう。
【0009】
軸線方向位置は、低速時には上記ボールベアリングの1つにより保持され、高速時にはブレード形ホイールの後方に配置された軸線方向バランシング装置により保持される。
【0010】
上記ボールベアリングは、ステータに対して一定範囲内でスライド可能に取付けられた外輪を有している。低速時には、外輪は、前記範囲の一端でボールベアリングに当接してブロックされ、これによりロータの軸線方向位置がブロックされる。
【0011】
高速時には、ロータは、ブレード形ホイールに作用する流体の圧力により上方に押され、軸線方向バランシング装置は、ボールベアリングから引継いで、ロータを前記範囲内で実質的に静止位置に保持する。軸線方向バランシング装置は、第一ブレード形ホイールに組込まれておりかつバランシングチャンバを有している。このバランシングチャンバは、ブレード形ホイールの後面上に配置されており、軸線方向クリアランスを隔てかつロータの軸線方向位置を保持すべく、バランシングチャンバ内の圧力を調節する機能を有するノズルに関連している。
【0012】
この実施形態の欠点は、ボールベアリングの内輪(ロータに固定されている)およびボールがロータの移動により回転駆動され、このためボールベアリングに摩擦および摩耗が生じることである。この結果、発電機の当該部分の寿命が制限される。
【0013】
これらの欠点を改善するため、特許文献1にはタービン発電機の他の実施形態(図7)が開示されている。
【0014】
この実施形態では、ロータを半径方向に保持すべく、発電機がクラッチ解除可能なボールベアリングを有している。これらのボールベアリングは低速で使用される。これらのボールベアリングは、高速で作動する静圧ベアリングと並列に配置されている。静圧ベアリングは、ターボマシンのメイン回路内の圧力を使用しており、回転速度(したがって流体圧力)が充分な値に到達するやいなやロータの半径方向位置を保持する(特許文献1では、ターボマシンの「メイン回路」とは、流体がターボマシンの流体流れ部分を通って流れることを可能にする全ての回路を意味している)。
【0015】
静止状態時および低速時にロータの軸線方向位置を保持するため、一方のボールベアリングはロータシャフトの円錐状支持面に当接して、ロータシャフトを垂直方向に支持する。
【0016】
より高い速度では、ロータは、ブレード形ホイール内の流体圧力の作用を受けて僅かに上昇し、軸線方向バランシング装置により所定位置に保持される。次に、ボールベアリングは、直線移動するロータによりクラッチ解除され、これにより、ボールベアリングに整合しているロータシャフトの円錐状支持面に対してクリアランスを開く。下方ベアリングは直線移動(円錐状支持面からの分離)するロータによりクラッチ解除されるのに対し、上方ベアリングでは、円錐状支持面をクラッチ解除すべくベアリングに組込まれた装置に対して作用する流体圧力が上昇する。
【0017】
この構成は複雑であるという欠点を有し、かつ上記全ては信頼性を欠くものである。ボールベアリングはロータが直線移動(この直線移動は非常に小さい振幅である)するためクラッチ解除される。実際には、大径のシャフトを使用することにいかなる問題もないため、支持面の円錐度(conicity)は小さく維持され、このため、ベアリングのクラッチ解除時の信頼性が低下されかつ作動時にボールベアリングと静圧ベアリングとが強く相互作用する危険がある。
【0018】
また、並列に配置された半径方向保持手段(静圧ベアリングと並列のボールベアリング)は、ターボマシンに余分な重量をもたらしかつ体積の増大を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許出願第2006/0186671号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の第一目的は、ロータおよびステータが設けられたターボマシンであって、流体流れ部分を有し、前記流体流れ部分は、これを通る流体とロータとの間でのエネルギー交換を可能にし、ロータは、そのシャフトに装着された少なくとも1つのブレード形ホイールを備え、電気を仕事にまたは仕事を電気に変換するのに適した電気的部分と、ロータを半径方向に位置決めすべく機能する半径方向位置決め手段と、高速でのロータの軸線方向バランスをとるための、ブレード形ホイールに配置された非接触軸線方向バランシング装置とを更に有するターボマシンにおいて、流体を殆ど消費せずかつ優れた体積効率を呈し、比較的コンパクトであり、ロータを所定位置に保持する界面での摩耗がないため長寿命を有し、かつ高速での作動に適しているターボマシンを提案することにより上記欠点を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記第一目的は、ターボマシンが、半径方向位置決め手段(すなわち半径方向支持手段)とは別のスラストベアリングを有し、スラストベアリングが、低速ではロータの軸線方向バランスをとりかつ高速では非接触であり、半径方向位置決め手段は単に静圧ベアリングにより構成され、ターボマシンは、前記ベアリングを加圧流体源に連結するのに適した静圧ベアリングフィード回路を有しているという事実により達成される。
【0022】
これらのフィード回路は、ターボマシンのメイン流体回路とは部分的にまたは完全に別の構成にすることができる。
【0023】
このターボマシンでは、軸線方向位置および半径方向位置は別の手段により保持され、スラストベアリングは、半径方向位置決め手段とは別のものである。このため、2つの形式の保持手段の各々を作るのに高性能技術を使用でき、したがってターボマシンを最適化できる。すなわち、第一形式の保持手段は、高速で非接触軸線方向バランシング装置と組合わされるスラストベアリングであり、第二形式の保持手段は、半径方向に位置を保持する静圧ベアリングである。
【0024】
第一に留意すべきは、ターボマシンは、そのロータのシャフトが、水平位置ではなく、垂直位置または傾斜位置を占めるように設計されることである。ロータに作用する重力は、ロータの軸線方向上方への移動を制限し、したがってその軸線方向位置の保持に寄与する戻り力を形成する。
【0025】
軸線方向での下方移動は、スラストベアリングにより制限される。スラストベアリングは、ロータの静止時および低速時にロータの重量を支持する。有利なことは、スラストベアリングが半径方向位置保持機能をもたないので、小さいサイズにできることである。スラストベアリングが、高速(所定速度以上の速度)では非接触であるので、軸線方向当接によっても高速でのロータの作動を乱すことはなく、したがって、有利なことに、ロータの作動範囲を高速まで拡大できる。スラストベアリングは、軸線方向バランシング装置とは別のものである。
【0026】
高速では、軸線方向位置は、軸線方向バランシング装置により保持される。有利なことに、軸線方向バランシング装置はブレード形ホイール(単一または複数)内に組込まれておりかつ流体流れ部分を通って流れる流体により作動するので、流体の無意味な消費を回避できる。この組込み形態は、高体積効率をもつターボマシンに寄与する。
【0027】
半径方向位置は、単一装置、より詳しくは静圧ベアリングにより有利に保持される。半径方向位置を保持するのに、いかなるボールベアリングまたは接触による他の保持装置も使用しない。
【0028】
静圧ベアリングは、流体圧力を受けるやいなや、ロータとベアリングとの間に非常に小さいクリアランス(数十ミクロン)を呈する位置にロータを位置決めする。かくして、これらのベアリングは、摩擦ロスを極めて小さくでき、これは、機械的部材を、ロータとロータに固定されない他の部品との間で移動させる必要なくして達成される。
【0029】
また、静圧ベアリングは、ロータの静止時または低速回転時に流体を静圧ベアリングに供給可能にする静圧ベアリング自体のフィード回路を有しているので、特許文献1に開示の、ボールベアリングと並列の静圧ベアリングとは異なり、ロータの回転速度の如何にかかわらずロータを半径方向に位置決めするのに使用できる。かくして、静圧ベアリングは、ターボマシンのあらゆる速度においてロータの半径方向位置を保持すべく機能する。
【0030】
より詳しくは、ターボマシンが低圧または非常に低い圧力の流体(LNG、LPGまたはRM)に使用される場合に、静圧ベアリングのフィード回路に関連して外部の加圧流体源を使用することにより、非常に小さいクリアランスを有しかつターボマシンのコア内に位置するゾーンの温度を優先的に低下でき、また、ベアリングの温度を正確に制御することもできる。ベアリングの半径方向クリアランスは非常に小さいので、始動時の温度降下時に静圧ベアリングのジャミング(固着)を引起こす危険がある。ベアリングのフィード流体の温度を制御することにより、この危険を低下させかつ制御できる状態に維持できる。
【0031】
本発明により、ロータを所定位置に保持する界面は、或る所定速度以上の高速では非接触になる(本明細書では、用語「接触」とは、2つの固体間の機械的接触があることを意味する)。これらの界面は、半径方向位置決め手段、スラストベアリングおよび軸線方向バランシング装置での、ターボマシンのロータと他の部品との間の機械的界面である。
【0032】
かくして、高速では、流体膜が、ターボマシンのロータに固定されていない部分からロータを分離する。すなわち、ロータの表面と、ロータに固定されていない他の何らかの部分の表面との間にいかなる機械的接触も存在しない。このため、摩擦ロスおよび磨耗が最小になる。
【0033】
一実施形態では、スラストベアリングは、ロータの軸線に対して10°より大きい角度(好ましくは、90°に近い角度)を形成する支持面を有している。この結果、スラストベアリングのジャミングの危険性およびスラストベアリングと静圧ベアリングとの相互作用の危険性が回避される。
【0034】
特にスラストベアリングについては2つの実施形態を考えることができる。
【0035】
第一実施形態では、スラストベアリングは静圧ベアリングである。この実施形態は、半径方向位置を保持する静圧ベアリングと同様に、非常に永続的な態様で正確な位置決めを確保できる魅力があると考えられる。軸線方向および半径方向に作用する静圧ベアリングのフィード回路は一部を共通化できるが、これらの静圧ベアリングの機能面(支持面)は別体に維持される。
【0036】
第二実施形態では、スラストベアリングはボールベアリングである。このボールベアリングは、高回転速度で非接触となるように設計されている。
【0037】
これを達成するため、例えば、ボールベアリングは実質的に円筒状の半径方向内側面を備えた内輪を有し、前記内側面とロータの外側面との間にはクリアランスが形成されている。この半径方向クリアランスにより、ロータが回転しているときにボールベアリングのいかなる部分も回転駆動されない。このため、ロータの摩耗および故障の危険が最小になる。これに対し、ベアリングの軸線方向端部の表面は、スラストベアリング機能を遂行する力を伝達する必要がある。
【0038】
一実施形態では、ターボマシンは、更に、静圧ベアリングフィードの上流側にフィルタを有している。これにより、静圧ベアリングを損傷する虞れのあるあらゆる大径粒子が、静圧ベアリングの上流側で除去され、したがってベアリング寿命が延長される。
【0039】
一実施形態では、高速で、軸線方向バランシング装置は、ロータを軸線方向の所定位置に保持する目的で、ブレード形ホイール(単一または複数)を通って流れる流体のみを使用する。これにより、ターボマシンの体積効率が最適化され、軸線方向バランシング装置の構造が簡単に留められる。
【0040】
本発明の第二目的は、上記形式のターボマシンを有し、特に高速において高い体積効率および長寿命を呈し、かつターボマシンの静圧ベアリングに加圧流体を供給する内部手段を有しているターボマシン装置を提供することにある。
【0041】
この目的は、ターボマシン装置が、加圧流体源に連結するのに適した前述のターボマシンおよびターボマシンの静圧ベアリングへのフィードを選択する手段の両方を有し、前記フィードが、前記加圧流体源、または、ターボマシンのメイン流体回路のいずれかであるという事実により達成される。
【0042】
かくして、加圧流体源の選択が可能であるため、流体の不利な消費を最小化できる(すなわち、実際に、外部流体源を用いてターボマシンが作動する時間の長さを最短にする)。加圧流体源は、流体を必要圧力に圧縮するのに適した圧縮機を備えた流体タンクで構成できる。加圧流体源には、静止時には加圧流体が実質的に充満されていて、ターボマシンを始動させるのに必要な圧力で所与の量の流体を供給するのに適している流体バッファを等しく使用できる。バッファは、ターボマシンが始動されるやいなや再充填される。
【0043】
静圧ベアリング用の加圧流体源の選択を最適化することにより、ターボマシンの全体的エネルギー効率が最適化される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1A】スラストベアリングがボールベアリング当接している構成の本発明の一実施形態によるターボマシンを示す軸線方向断面図である。
【図1B】スラストベアリングの近傍におけるターボマシンの第一実施形態を示す軸線方向断面図である。
【図1C】軸線方向バランシング装置の近傍におけるターボマシンの第一実施形態を示す軸線方向断面図である。
【図2A】スラストベアリングが静圧ベアリング当接している構成の本発明の他の実施形態によるターボマシンを示す軸線方向断面図である。
【図2B】低速時でのスラストベアリングおよび軸線方向ベアリング装置の近傍におけるターボマシンの第二実施形態を示す軸線方向断面図である。
【図2C】高速時でのスラストベアリングおよび軸線方向ベアリング装置の近傍におけるターボマシンの第二実施形態を示す軸線方向断面図である。
【図3A】タービンにより駆動される発電機を有する本発明によるターボマシン装置を示す概略構成図である。
【図3B】電気的に駆動されるタービンポンプを有する本発明によるターボマシン装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は、非制限的な例として示す本発明の実施形態の以下の詳細な説明を読むことにより、本発明およびその長所はより明白に理解されよう。
【0046】
一要素が2つ以上の図面に示されているとき、その要素は、種々の図面において同じ参照番号で示されかつその要素が最初に示された図面を参照して説明される。
【0047】
図1を参照して、本発明のターボマシンを以下に説明する。
【0048】
ターボマシン10は、タービンにより駆動される発電機である。ターボマシン10は、タービンにより構成される流体流れ部分20と、発電機を構成する電気的部分50とを有している。
【0049】
ターボマシン10は、ステータ10S内でシャフト12の回りで回転するロータ10Rの形態に構成されている。
【0050】
ステータ10Sは、本質的に、4つの部分14、15、16、17からなるケーシング30を有している。これらの部分は静止しており、かつ、ねじ18により互いに固定されている。ステータ10Sはまた、発電機の静止部分、すなわち、ステータ部分54を有している。
【0051】
ロータ10Rは、本質的に、ねじ24により、ロータシャフト12自体により、および発電機50のロータ部分52(詳細ではないが図1に示された大径中央部)により、シャフト12の一端に固定されたブレード形ホイール22を有している。
【0052】
ターボマシン10は、次のように作動する。
【0053】
加圧流体は、シャフト12の軸線上でケーシング部分17に穿けられたオリフィス34を通って、ターボマシン10内に進入する。
【0054】
加圧流体は、ケーシング17の通路32、ケーシング16の通路31、ケーシング15の通路29、およびケーシング14の集合通路27(ホイールから上流側でケーシング14内に集合されたブレード)によりブレード形ホイール22まで案内され、更にブレード間を通って流れ、ブレード形ホイール22を回転駆動する。かくして、ロータ10Rは,流体の作用を受けて回転される。
【0055】
ロータのロータ部分52およびステータ部分54を備えた発電機50は、既知のターボマシンコンポーネントである。ロータ10Rの回転作用を受けて、発電機50は電気を発生し、発生された電気は、通路35を通るケーブル(図示せず)により搬送される。
【0056】
ブレード形ホイール22を通った後、流体は、ケーシング14の通路28を通って流れ、この通路28は、流体を、入口オリフィス34とは反対側のターボマシンの端部でケーシング部分14に配置された出口オリフィス26に案内する。
【0057】
ロータ10Rは、次のようにして所定位置に保持(軸線方向および半径方向に保持)される。
【0058】
最初に留意すべきは、ターボマシン10は垂直形態で機能するように、すなわちロータの軸線が垂直方向になるように設計されていることである。
【0059】
ロータシャフト12の軸線Aに沿って作用するロータの重量を支持するため、ターボマシンは、転がりベアリング、より詳しくはボールベアリング36により構成されたスラストベアリングを有している。ロータ10Rの静止時および低速回転時には、ボールベアリング36がロータの重量を支持する。ロータ10Rの回転速度が上昇するとロータは僅かに上昇し、その位置は、ブレード形ホイール22の後方に形成された軸線方向バランシング装置38により調整される。これらの要素の構成は、図1Bおよび図1Cに関連して詳細に説明する。
【0060】
ロータは、静圧ベアリング40、42により半径方向に位置決めされる。これらの静圧ベアリングは、メイン流体回路29、31とは別のフィード回路44、46、48を有している。これらの回路のフィードオリフィス45は、加圧流体源に連結されるように設計されている。ターボマシン10にはフィルタ(図示せず)を設けることができる。このフィルタは、静圧ベアリングから上流側に配置され、かつ流体内に存在する虞れのある非常に大きい直径のあらゆる粒子を除去するように設計されている。
【0061】
既知の態様では、これらの静圧ベアリング40、42の各々は、非常に小さいクリアランスでシャフト12の円筒状支持面を包囲するスリーブ状部分を有している。スリーブ状部分とシャフト12との間にベアリングフィード流体が噴射されて薄膜を形成する。この薄膜はベアリングからシャフト12を分離し、機械的摩擦なくしてシャフトを回転可能にし、かつシャフトを所望の半径方向位置に維持する。
【0062】
軸線方向保持手段の作動について、図1Bおよび図1Cを参照して以下に詳細に説明する。図1Bは低回転速度時に占める位置にあるロータを示し、一方、図1Cは高回転速度時に占める位置にあるロータを示す。最初に留意すべきは、ボールベアリング36の内輪58とシャフト12との間には内側クリアランス56が存在することである。このクリアランスの存在により、ベアリング36はロータ10Rの重量を支持しているときにのみ、回転駆動される。このとき、リング58の頂面62はシャフト12のショルダ64に接触している。スラストベアリング36の機能面すなわち支持面は、ロータ10Rの軸線Aに対して90°の角度αを形成している。
【0063】
ボールベアリング36の外側で、外輪60は、ロータの重量を、ねじ65によりケーシング部分15に固定された環状体61に伝達する。
【0064】
高回転速度(図1C)では、ロータ10Rは軸線Aに沿って上昇する。リング58の頂面62は、もはやシャフト12のショルダ64とは接触しなくなる。ボールベアリング36は回転駆動されず、全く機能しなくなる。
【0065】
図1Bおよび図1Cの下部には、軸線方向バランシング装置38が示されている。ブレード形ホイール22の後方でかつロータ10Rの横には、チャンバ72が形成されている。少量の流体が、ターボマシンのメイン回路から定断面ノズル74を通ってチャンバ72内に流入し、チャンバ72を充填する。流体は、環状体61の表面66とブレード形ホイール22の表面68との間に形成されたノズル76を介してチャンバ72から排出される。環状表面66は、ブレード形ホイール22の対応する環状表面68に実質的に対面して半径方向に延びている。これらの両表面66、68の間にはクリアランス70が形成されている。クリアランス70は、ステータ10Sに対するロータ10Rの軸線方向位置に関連して変化し、これによりチャンバ72内の圧力を調整する。最終的には、チャンバ72内の流体圧力が、既知の態様でブレード形ホイール22に、したがってロータ10Rに作用して、ロータを実質的に一定の軸線方向位置に保持する。
【0066】
次に、図2A,図2Bおよび図2Cを参照して第二実施形態を説明する。これらの図面に示すターボマシンの機能および構造は、図1Aから図1Cに関連して説明したターボマシンの機能および構造と実質的に同じである。
【0067】
ロータ110Rの半径方向位置決めは、ロータの実質的に両端部に配置された2つの静圧ベアリング140、142により行われる。
【0068】
これに対し、ロータ110Rを保持する手段は、上記第一実施形態の保持手段とは異なっている。静止時および低速回転時には、ロータ110Rは、静圧スラストベアリング136により構成されたスラストベアリングにより支持される。このベアリングは、半径方向位置を保持する静圧ベアリング140に隣接しており、このため、これらの2つのコンポーネンツは、ケーシング部分115に固定される共通リング144を用いて有利に作ることができる。それにもかかわらず、両コンポーネンツ136、140の機能表面は、それぞれ軸線方向および半径方向を向いた垂直を有する別の表面であり、スラストベアリング136は、半径方向位置を保持する静圧ベアリング140とは別のものである。
【0069】
静圧スラストベアリング136が設けられているため、オリフィス45に流体圧力が加えられるやいなや、ロータは非常に少量だけ上昇しかつ回転し始めることができる。
【0070】
図2Bおよび図2Cに示すように、静圧スラストベアリング136の作動は、軸線方向バランシング装置38と比較して、前述の実施形態におけるターボマシンの軸線方向バランシング装置に非常に良く似ている。
【0071】
ダクト148は、加圧流体を、静圧スラストベアリング136および静圧ベアリング140に流体を搬送するそれぞれの分配ダクト153および151に搬送する。ダクト148、151、153は、ケーシング部分115およびリング144の全周に亘って規則的な間隔で配置され、流体を全周に亘って分散できるようになっている。
【0072】
静止時および低速時には、ロータ110Rは、静圧スラストベアリング136内の流体圧力の作用を受けてリング144から持上げられ、その頂部162に近接した位置を占める。これにより、頂面162とロータ110Rの対向面164との間に非常に小さいクリアランスが形成され、これにより、ロータ110Rとステータとの間の機械的摩擦が完全に回避される。
【0073】
より高い速度では、軸線方向バランシング装置138が、静止時または低速時での位置に対してロータを少しだけ持上げ、これにより、頂面162と対向面164との間の軸線方向クリアランスが増大される。次に、静圧スラストベアリング136がクラッチ解除され、ロータ110Rの軸線方向位置が、軸線方向バランシング装置138によってのみ保持される。
【0074】
同時に、この構成は非常にコンパクトで、簡単かつ安価であると考えられる。なぜならば、軸線方向スラストベアリング(静圧スラストベアリング136)は、その一部が、静圧ベアリング140を構成する手段から作られているからである。
【0075】
図3Aおよび図3Bには、本発明の2つのターボマシン装置が示されている。
【0076】
第一装置200(図3A)は、タービン220により駆動される発電機250を備えたターボマシン210を有している。ターボマシンのロータ210Rは、2つの静圧ベアリング240、242により半径方向位置に保持される。
【0077】
タービン220および静圧ベアリング240、242には、単一パイプ205から加圧流体が供給される。
【0078】
パイプ205(このパイプの流量は弁217により制御される)には、第一パイプ215が連結されており、フィルタ219を介して静圧ベアリング240、242に流体を供給する。
【0079】
パイプ205には、タービン220に供給するための第二パイプ225も連結されている。タービン220を通る流体の流れは2つの弁227、237により制御される。これらの弁227、237は、それぞれ、パイプ225の上流側およびタービン220から下流側の流体排出パイプ235に配置されている。
【0080】
図3Bには、電気ポンプを構成するターボマシン用の、本発明によるターボマシン装置300が示されている。ターボマシン装置300は、ポンプ320を駆動する電気モータ350を備えたターボマシン310を有している。特定の例外を除き、図3Aに示した要素と同じ要素は、図3Aの要素の参照番号に100を加えた参照番号で示されている。
【0081】
静圧ベアリング340、342には、パイプ315からフィルタ319を介して流体が供給される。パイプ315は、ターボマシン装置300の外部の加圧流体源(図示せず)に連結するのに適している。このパイプ315を通る流量は、弁317により制御される。
【0082】
ポンプ320には、パイプ335を介して流体が供給される。この供給流量は、弁337により制御される。ポンプ320からの吐出はパイプ325を介して行われ、パイプ325内の流量は弁327により制御される。
【0083】
また、パイプ325は、パイプ345を介してパイプ315に連結されている。
【0084】
パイプ345には、パイプ325を通って流体が戻ることを防止する逆止弁321が配置されており、またパイプ315には、流体が加圧流体源(図示せず)に戻ることを防止する他の逆止弁311が配置されている。これらの2つの逆止弁が設けられているため、静圧ベアリング340、342には、ポンプ320からの吐出圧力(パイプ325内の圧力)および加圧流体源からの出口圧力により構成される大部分の圧力が加えられる。したがって、ポンプの吐出圧力が充分に高くなるやいなや、外部の加圧流体源からの加圧流体の消費が遮断される。
【0085】
他の実施形態では、静圧ベアリングを供給する加圧流体源を選択するための、例えば電子制御ユニットを用いた制御形切換え装置を設けることができる。
【符号の説明】
【0086】
10 ターボマシン
10R ロータ
10S ステータ
12 シャフト
20 流体流れ部分
22 ブレード形ホイール
36 ボールベアリング(スラストベアリング)
38 軸線方向バランシング装置
40、42 静圧ベアリング
72 チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ(10R、110R)およびステータ(10S)が設けられたターボマシン(10、210、310)であって、
流体流れ部分(20)を有し、前記流体流れ部分は、これを通る流体とロータ(10R、110R)との間でのエネルギー交換を可能にし、ロータは、そのシャフトに装着された少なくとも1つのブレード形ホイール(22)を備え、
電気を仕事にまたは仕事を電気に変換するのに適した電気的部分(50、250、350)と、
ロータを半径方向に位置決めすべく機能する半径方向位置決め手段(40、42;240、242;340、342)と、
高速でのロータ(10R、110R)の軸線方向バランスをとるための、ブレード形ホイールに配置された非接触軸線方向バランシング装置(38)とを更に有するターボマシンにおいて、
半径方向位置決め手段(40、42;140、142)とは別のスラストベアリング(36、136)を更に有し、スラストベアリングは低速ではロータの軸線方向バランスをとりかつ高速では非接触であり、
半径方向位置決め手段は単に静圧ベアリングにより構成され、ターボマシンは、前記ベアリングを加圧流体源に連結するのに適した静圧ベアリングフィード回路(44、46、48)を有していることを特徴とするターボマシン。
【請求項2】
前記スラストベアリング(36、136)は、ロータの軸線(A)に対して10°より大きい角度を形成する支持面を有していることを特徴とする請求項1記載のターボマシン。
【請求項3】
前記スラストベアリング(136)は静圧ベアリングであることを特徴とする請求項1または2記載のターボマシン。
【請求項4】
前記スラストベアリング(36)はボールベアリングであることを特徴とする請求項1または2記載のターボマシン。
【請求項5】
前記ボールベアリングは、実質的に円筒状である半径方向内側面を備えた内輪(58)を有し、前記内側面とロータの外側面との間にはクリアランス(56)が形成されていることを特徴とする請求項4記載のターボマシン。
【請求項6】
前記静圧ベアリングフィード(240、242;340、342)の上流側に設けられたフィルタ(219、319)を更に有していることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載のターボマシン。
【請求項7】
前記流体流れ部分はポンプ(320)を有し、電気的部分は電気モータ(350)であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載のターボマシン(310)。
【請求項8】
前記流体流れ部分はタービン(220)であり、電気的部分は発電機(250)であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載のターボマシン(210)。
【請求項9】
高速時には、前記軸線方向バランシング装置は、ロータ(10R、110R)を軸線方向の所定位置に保持することを目的として、ブレード形ホイール(単一または複数)を通って流れる流体のみを使用することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載のターボマシン。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載された特徴を有する、LNG、LPGまたは冷媒ミックス流体用ターボマシン。
【請求項11】
加圧流体源に連結するのに適した、請求項1から11のいずれか1項に記載のターボマシンおよびターボマシンの静圧ベアリング(340、342)へのフィードを選択する手段(311、321、315、345)の両方を有するターボマシン装置において、前記フィードは、前記加圧流体源またはターボマシンのメイン流体回路(325、335)のいずれかであることを特徴とするターボマシン装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【公開番号】特開2010−1894(P2010−1894A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−162208(P2009−162208)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(505277691)スネクマ (567)
【Fターム(参考)】