説明

汚水処理設備、汚水処理方法及び汚水処理設備の改築方法

【課題】設置スペースが限られる場合であっても、汚水から分離したし渣の処理設備を安価に構築できる高度処理用の汚水処理設備を提供する。
【解決手段】汚水中の固形物を沈殿除去する最初沈殿池91aと、最初沈殿池91aに連設され、汚水中の有機成分を生物膜法、担体法、または膜分離活性汚泥法の何れかを用いて分解除去する生物処理槽20を備えた汚水処理設備で、最初沈殿池91a及び生物処理槽20を含む汚水の処理経路82aの何れかの位置に、汚水からし渣を分離除去するし渣除去機構33を配置して、し渣除去機構33で分離したし渣を、最初沈殿池91aに移送するし渣移送機構36を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水中の固形物を沈殿除去する沈殿槽と、前記沈殿槽に連設され、汚水中の有機成分を生物膜法、担体法、または膜分離活性汚泥法の何れかを用いて分解除去する生物処理槽を備えた汚水処理設備、汚水処理方法、及び汚水処理設備の改築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図7には、一般的な都市下水等に対応した汚水処理設備が示されている。生活排水等の有機性汚濁物質を含む汚水は、沈砂池90で砂や粗大物が除去された後に、沈殿槽である最初沈殿池91に移送されて汚水中の浮遊固形物が沈殿される。さらに、生物処理槽の一例である標準活性汚泥法が採用された反応タンク92に移送されて、微生物の作用によって有機成分が分解除去された後に、最終沈殿池93に移送され、最終沈殿池93で活性汚泥が沈殿除去された上澄水が、消毒設備94で消毒された後に河川等に放流される。
【0003】
最初沈殿池91には、底部に沈殿した汚泥等の固形物を排出部16へ掻き寄せる汚泥掻寄機15が設けられ、排出部16へ掻き寄せられた汚泥が、引抜きポンプによって汚泥処理設備95へ移送される。
【0004】
汚泥処理設備95には、最初沈殿池91から移送された汚泥を濃縮する濃縮槽や濃縮汚泥を脱水する脱水機が設けられ、脱水された汚泥が脱水ケーキとして排出ホッパ96に集積され、排出ホッパ96からトラック97に積載されて汚泥処理施設に搬出されるように構成されている。
【0005】
図8に示すように、汚水の処理経路である最初沈殿池91、反応タンク92、最終沈殿池93はそれぞれ複数列並設され、下水道から沈砂池90に流入した汚水は、沈砂池が備えるポンプ12の吐出管から分配された流入水路81(81a〜81d)を経て最初沈殿池91(91a〜91d)に移送される。最初沈殿池91(91a〜91d)の汚水は流入水路82(82a〜82d)を経て反応タンク92(92a〜92d)へ移送され、反応タンク92(92a〜92d)の汚水は流入水路83(83a〜83d)を経て最終沈殿池93(93a〜93d)へ移送され、最終沈殿池93(93a〜93d)の汚水は流入水路84(84a〜84d)が合流され消毒設備94へ移送される。各流入水路81,82,83,84はトラフで構成され、上流側の汚水が自然流下するように構成されている。
【0006】
近年、このような既存の汚水処理設備の老朽化に伴い、汚水からリンや窒素等を効果的に除去する高度処理技術を採用した汚水処理設備等への改築の必要性が高まっている。
【0007】
例えば、汚水中の有機成分を膜分離活性汚泥法を用いて分解除去する生物処理槽に変更する場合には、汚水を嫌気処理する嫌気槽、嫌気処理された汚水から窒素を除去する無酸素槽、窒素が除去された汚水を好気処理する好気槽、好気処理された汚水から汚泥を分離して浄水を取り出す膜分離装置が浸漬された膜分離槽等が既存の反応タンク92を用いて再構築される。
【0008】
ところで、都市下水や一般下水には、毛髪類やトイレットペーパ等の繊維類が多量に含まれ、毛髪に繊維滓が絡んだし渣が汚水に浮遊すると、生物膜法、担体法、または膜分離活性汚泥法を採用した生物処理槽に様々な弊害をもたらす虞がある。
【0009】
特許文献1には、小型合併処理浄化槽を例に、汚水を脱窒室に導入して生物学的に脱窒処理し、この脱窒処理水を硝化室に移送して生物学的に硝化処理しつつ、室内の硝化処理水を膜分離装置により固液分離し、膜分離装置の濾過膜を透過した膜透過水を滅菌後に放流するとともに、硝化処理水の一部を脱窒室へ返送する汚水処理方法が開示されている。
【0010】
当該汚水処理方法では、脱窒処理水を硝化室へ移送する際に、脱窒室から硝化室への流路に設けたスクリーンにより脱窒処理水中に含まれる夾雑物を分離し、分離した夾雑物をスクリーンの下方に設けた滓渣貯留室に貯留するように処理される。そして、滓渣貯留室に貯留された夾雑物は、定期的なメンテナンス時に外部に取り出されて処理される。
【0011】
また、特許文献2には、このようなし渣を含む都市下水や一般下水に対する担体法を用いた汚水処理方法が開示されている。最初沈殿池等の前処理設備を経由したあるいは直接流入する汚水を、流入スクリーンを通さず毛髪類を含んだまま反応槽に流入させ、反応槽で微生物担体を用いた生物処理を行い、生物処理された処理水はスクリーンに付着した毛髪類の通過補助手段を備えた担体分離スクリーンを通し、生物処理担体は分離するが毛髪類は分離することなく槽外へ流出させることを特徴とする毛髪類を含む下水の生物処理方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3231179号公報
【特許文献2】特開2008−229466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した特許文献1に記載された汚水処理方法では、小型合併処理浄化槽にスクリーン及び滓渣貯留室を設置することにより、し渣に起因する弊害が解消される。滓渣貯留室に貯留されるし渣の量はそれほど多量では無く、定期的に外部に取り出されて処理場に搬送されること、合併処理浄化槽という閉塞された槽内に貯留されるため、悪臭等周辺環境を損なう虞は極めて少ない。
【0014】
特許文献2に記載されたような担体法が採用される生物処理方法では、担体を通過させずに、し渣を通過させる特殊なスクリーンを設置することにより、し渣が汚水の処理経路を沿って最終沈殿池に流出可能なように構成されているが、汚水中の有機成分を生物膜法や膜分離活性汚泥法等を用いて分解除去する生物処理槽では、し渣が生物膜や膜分離装置等に絡み付いて、生物処理や膜分離処理が良好に行なえなくなるという問題がある。担体法であっても、し渣の量が多くなると同様の不都合が生じる虞がある。
【0015】
そのため、汚水中の有機成分を生物膜法、担体法、または膜分離活性汚泥法の何れかを用いて分解除去する生物処理槽を備えた汚水処理設備では、生物処理の前に予め汚水からし渣を分離除去するスクリーン機構を備える必要があり、スクリーン機構で分離除去したし渣を貯留する設備を構築する必要がある。
【0016】
特に、都市下水や一般下水に対する汚水処理設備を新規に構築する場合には、スクリーン機構で分離除去される多量のし渣を脱水して貯留する設備をスクリーン機構の近傍に構築する必要があるが、この場合、貯留設備に貯留されたし渣から発生する悪臭による周辺環境の悪化を回避するために、脱臭設備等を付加する必要もあり設備費が嵩むという問題があり、そのような設備を構築するための設置スペースが十分に確保できないという問題もある。
【0017】
標準活性汚泥法を採用した既存の汚水処理設備を、このような生物膜法、担体法、または膜分離活性汚泥法の何れかを用いた汚水処理設備に改築する場合にも同様の問題が発生する。また、既存の汚水処理設備に脱臭設備等を備えた汚泥等の貯留設備等が構築されている場合には、新たな貯留設備を構築することなく、既存の貯留設備を有効に活用することが考えられるが、スクリーン機構の設置位置と既存の貯留設備が離れている場合には、スクリーン機構から既存の貯留設備まで長距離にわたる搬送機構を設置する必要があり、設備費が嵩むとともに、そのような長い搬送機構のメンテナンス費用も嵩むという問題もある。
【0018】
さらに、処理対象となる汚水が低BODの汚水である場合には、汚水からリンや窒素等を除去する高度処理を行なうために必要となる十分なBODを確保するべく、最初沈殿池で沈殿処理することなく、汚水を直接に生物処理槽に供給することになるが、そのような場合には、沈殿処理に替えて汚水からし渣を含む浮遊異物等を分離除去するために何らかのし渣除去機構を設ける必要がある、
【0019】
そのようなし渣除去機構で分離されるし渣の量は、最初沈殿池を介する場合に比べて100倍程度に増加するため、し渣の貯留設備の必要性が極めて高くなる。
【0020】
尚、汚水を最初沈殿槽で沈殿処理する場合、沈殿によりある程度のし渣が汚水から除去されるが、後段の処理で不都合が生じない程度に十分に除去される保証が無いため、し渣を除去する何らかの機構を設ける必要がある点で変わるところは無い。
【0021】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、設置スペースが限られる場合であっても、汚水から分離したし渣の処理設備を安価に構築できる高度処理用の汚水処理設備、汚水処理方法、及び汚水処理設備の改築方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上述の目的を達成するため、本発明による汚水処理設備の第一特徴構成は、特許請求の範囲の請求項1に記載した通り、汚水中の固形物を沈殿除去する沈殿槽と、前記沈殿槽の後段に連設され、汚水中の有機成分を生物膜法、担体法、または膜分離活性汚泥法の何れかを用いて分解除去する生物処理槽を備えた汚水処理設備であって、前記沈殿槽及び前記生物処理槽を含む汚水の処理経路に、汚水からし渣を分離除去するし渣除去機構が配置され、前記し渣除去機構で分離されたし渣を、前記沈殿槽または前記沈殿槽の汚水流入側に移送するし渣移送機構が設けられている点にある。
【0023】
上述の構成によれば、汚水の処理経路に設置されたし渣除去機構によって分離除去されたし渣が、し渣移送機構によって沈殿槽または沈殿槽の汚水流入側に移送され、沈殿槽に備えた汚泥処理設備で沈殿槽に沈殿した汚泥とともに処理されるため、し渣処理専用の新たな別途の設備を設ける必要がない。通常、し渣除去機構は沈殿槽の近傍に設置される場合が多いため、し渣移送機構によるし渣の搬送距離はそれほど長くならず、し渣移送機構それ自体が大掛かりで無く安価に構築できるようになり、また、その結果メンテナンス費用も安価になる。
【0024】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記し渣除去機構が前記沈殿槽と前記生物処理槽を連通させる処理経路中に配置される点にある。
【0025】
上述の構成によれば、前記沈殿槽から前記生物処理槽へ連通する処理経路中に
し渣除去機構を配置することで、前記生物処理槽にし渣が混入する虞を確実に回避することができる。
【0026】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記沈殿槽を経由することなく汚水を前記生物処理槽に移送するバイパス経路が設置され、前記し渣除去機構は、前記バイパス経路に移送される汚水からし渣を分離除去するように配置されている点にある。
【0027】
バイパス経路に沿って汚水を生物処理槽に移送する場合には、汚水に含まれるし渣等が、沈殿槽で沈殿処理されること無く、そのまま生物処理槽に移送される不都合を解消するために、バイパス経路に移送される汚水からし渣を分離除去するし渣除去機構が設けられる。沈殿槽を介することなくバイパス経路に移送される汚水からし渣除去機構で分離除去されるし渣の量は非常に多いが、そのような多量のし渣も、し渣移送機構によって沈殿槽または沈殿槽の汚水流入側に移送されることにより、沈殿槽に備えた汚泥処理設備で効率的に処理されるようになる。
【0028】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第三特徴構成に加えて、前記し渣除去機構は、前記沈殿槽を経由して前記生物処理槽に移送される処理経路中の汚水と、前記バイパス経路を経由して前記生物処理槽に移送される処理経路中の汚水の双方からし渣を分離除去可能な位置に配置されている点にある。
【0029】
上述の構成によれば、沈殿槽を経由して生物処理槽に移送される汚水の処理経路と、バイパス経路を経由して生物処理槽に移送される汚水の処理経路が併存する場合であっても、一つのし渣除去機構が兼用されて各処理経路を流れる汚水からし渣を除去することができるので、各別にし渣除去機構を設ける必要が無く、設備費を効果的に低減させることができる。
【0030】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記生物処理槽が生物膜法による生物膜、担体法による担体、または膜分離活性汚泥法による分離膜の何れかを備えた処理槽を含む複数の処理槽で構成され、前記し渣除去機構は前記処理槽間の汚水移送経路に配置されている点にある。
【0031】
し渣除去機構は、汚水の処理経路に設置されるものであるが、高度処理設備では、例えば嫌気処理槽、無酸素槽、好気処理槽等の順番に複数の生物処理槽が連設された汚水の処理経路が構成され、好気処理槽で好気処理された汚水の一部が好気処理槽との間で循環するように嫌気処理槽や無酸素槽に返送される循環経路が構成されている。このような場合であっても、処理槽間の汚水移送経路にし渣除去機構を設置すれば、し渣が上流側で十分に除去されなかった場合であっても、生物膜の膜表面を閉塞し、担体分離用のスクリーンの目詰まりを招き、膜分離装置を閉塞させる等の不都合な事態の発生を未然に回避することができる。
【0032】
特に、生物膜、担体、または分離膜の何れかを備えた処理槽の上流側の汚水処理経路にし渣除去機構を設置することが好ましい。また、さらに、循環経路にもし渣除去機構を設置すれば、前述の不都合な事態の発生をより確実の回避できる。
【0033】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、前記し渣除去機構は、目幅0.5mm以上、且つ、5mm以下の微細目スクリーンを備えている点にある。
【0034】
上述の構成によれば、微細目スクリーンにより汚水中の微細なし渣も確実に除去することが可能となる。
【0035】
本発明による汚水処理方法の第一特徴構成は、特許請求の範囲の請求項7に記載した通り、沈殿槽を用いて汚水中の固形物を沈殿除去する沈殿工程と、前記沈殿工程の後に生物処理槽を用いて汚水中の有機成分を生物膜法、担体法、または膜分離活性汚泥法の何れかを用いて分解除去する生物処理工程を実行する汚水処理方法であって、前記沈殿槽及び前記生物処理槽を含む汚水の処理経路に配置されたし渣除去機構により、汚水からし渣を分離除去するし渣除去工程と、前記し渣除去工程で分離されたし渣を、前記沈殿槽または前記沈殿槽の汚水流入側に移送するし渣移送工程が実行される点にある。
【0036】
同第二の特徴構成は、同請求項8に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記沈殿工程を実行することなく、バイパス経路を介して汚水を前記生物処理槽に移送して前記生物処理工程を実行し、前記し渣除去工程は、前記し渣除去機構により前記バイパス経路に移送される汚水からし渣を分離除去する点にある。
【0037】
同第三の特徴構成は、同請求項9に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記生物処理工程は、生物膜法による生物膜、担体法による担体、または膜分離活性汚泥法による分離膜の何れかを備えた処理槽を含む複数の処理槽で実行され、前記し渣除去工程は、前記処理槽間の汚水移送経路を移送される汚水に対して実行される点にある。
【0038】
本発明による汚水処理設備の改築方法の特徴構成は、同請求項10に記載した通り、汚水中の固形物を沈殿除去する沈殿槽と、前記沈殿槽の後段に連設され、汚水中の有機成分を活性汚泥を用いて分解除去する生物処理槽を備えている汚水処理設備の改築方法であって、生物膜法、担体法、または膜分離活性汚泥法の何れかを用いて汚水中の有機成分を分解除去するように前記生物処理槽を改築するとともに、前記沈殿槽及び改築後の生物処理槽を含む汚水の処理経路に、汚水からし渣を分離除去するし渣除去機構を設置し、前記し渣除去機構で分離されるし渣を、前記沈殿槽または前記沈殿槽の汚水流入側に移送するし渣移送機構を設置する点にある。
【0039】
既存の汚水処理設備を高度処理可能な汚水処理設備に再構築する場合、し渣除去機構で分離されるし渣を、沈殿槽または沈殿槽の汚水流入側に移送するし渣移送機構を設置することにより、既存の沈殿槽に構築された汚泥処理設備をし渣の処理に兼用できる点で、改築費用を安価に抑制でき、また改築工程を簡略化することができる。
【0040】
本発明による汚水処理設備の改築方法の特徴構成は、同請求項11に記載した通り、汚水中の固形物を沈殿除去する沈殿槽と、前記沈殿槽の後段に連設され、汚水中の有機成分を活性汚泥を用いて分解除去する生物処理槽を含む汚水の処理経路が複数列並設されている汚水処理設備の改築方法であって、生物膜法、担体法、または膜分離活性汚泥法の何れかを用いて汚水中の有機成分を分解除去するように、前記複数の処理経路の少なくとも一列の処理経路に備えた生物処理槽を改築するとともに、当該少なくとも一列の処理経路に、汚水からし渣を分離除去するし渣除去機構を設置し、前記し渣除去機構で分離されるし渣を、他列の処理経路に備えた沈殿槽またはその沈殿槽の汚水流入側に移送するし渣移送機構を設置する点にある。
【0041】
本発明による汚水処理設備の特徴構成は、同請求項12に記載した通り、汚水中の固形物を沈殿除去する沈殿槽と、前記沈殿槽の後段に連設され、汚水中の有機成分を生物処理により分解除去する生物処理槽を含む汚水の処理経路が複数列並設されている汚水処理設備であって、前記複数の処理経路の少なくとも一列の生物処理槽で生物膜法、担体法、または膜分離活性汚泥法の何れかによる処理が行われ、他の少なくとも一列の生物処理槽で、生物膜法、担体法、または膜分離活性汚泥法以外の活性汚泥による処理が行われ、前記少なくとも一列の処理経路に、汚水からし渣を分離除去するし渣除去機構を設置し、前記し渣除去機構で分離されたし渣を、前記他の少なくとも一列の処理経路に備えた沈殿槽またはその沈殿槽の汚水流入側に移送するし渣移送機構が設けられている点にある。
【発明の効果】
【0042】
以上説明した通り、本発明によれば、設置スペースが限られる場合であっても、汚水から分離したし渣の処理設備を安価に構築できる高度処理用の汚水処理設備、汚水処理方法、及び汚水処理設備の改築方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による汚水処理設備の第一の説明図
【図2】本発明による汚水処理設備の第二の説明図
【図3】本発明による汚水処理設備の第三の説明図
【図4】本発明による汚水処理設備の第四の説明図
【図5】本発明による汚水処理設備の第五の説明図
【図6】本発明による汚水処理設備の第六の説明図
【図7】従来の汚水処理装置の説明図
【図8】従来の汚水処理装置の説明図
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明による汚水処理設備、汚水処理方法及び既存の汚水処理設備の改築方法の実施形態を説明する。
【0045】
図1に示すように、汚水処理設備は、沈砂池90、最初沈殿池91、生物処理槽20を備えて構成されている。尚、図7,8に示すような従来の一般的な都市下水等に対応した汚水処理設備と同様の構成については同じ符号を付している。
【0046】
沈砂池90は、沈砂かき揚げ機10、除塵機11、ポンプ12を備え、下水道から流入する生活排水等の有機性汚濁物質を含む汚水の流れを遅くして砂や大きなゴミや重いゴミ等の粗大物を沈殿させる。沈砂かき揚げ機10は沈殿した砂や粗大物をかき揚げ、除塵機11は目幅が15〜50mm程度の細目スクリーン13を備え、細目スクリーン13にたまった砂や塵をレーキ14でかき揚げるように構成されている。細目スクリーン13を通過した汚水は、ポンプ12により流入水路81を介して最初沈殿池91に移送される。
【0047】
最初沈殿池91は、さらに汚水の流れを遅くして、沈砂池90で沈殿しなかった細かいゴミや砂等の浮遊固形物を沈殿させ、上澄水は、流入水路82を介して生物処理槽20へ自然流下する。
【0048】
生物処理槽20は、最初沈殿池91から流入した汚水を嫌気条件にして活性汚泥からリンを放出させる嫌気槽21、嫌気槽21から流入する汚水から窒素を除去する無酸素槽22、曝気装置29から酸素を供給して槽内を好気条件にして活性汚泥により硝化処理するとともに活性汚泥にリンを摂取させる好気槽23、好気槽23から流入した汚水から活性汚泥を分離して浄水を取り出す膜分離装置24が浸漬された膜分離槽25が区画壁26,27,28により区画されて構成されている。汚水は区画壁26,27,28をオーバーフローすることで下流側の処理槽へ移送される。尚、最初沈殿池91は流入調整槽としても機能している。
【0049】
膜分離装置24に用いられる分離膜として、限外濾過膜、精密濾過膜等が採用される。膜の形態は、中空糸膜、平膜、チューブラー膜などが採用される。膜分離装置24で処理された浄水は水路85により河川や海に放流される。
【0050】
膜分離装置24の下部には散気装置30が配設され、膜分離槽25では、散気装置30から供給される酸素を含む気泡により、分離膜の表面が洗浄されるとともに、好気条件下で活性汚泥により硝化処理が行われる。
【0051】
さらに、生物処理槽20は、膜分離槽25内の汚水を無酸素槽22へ返送する返送経路31と、無酸素槽22内の汚水を嫌気槽21へ返送する返送経路32を備えている。膜分離槽25内の余剰汚泥は槽外に排出される。返送経路31及び返送経路32は、水中ポンプ装置を用いて槽内の汚水を返送する構成であってもよいし、エアリフトポンプ装置を用いて槽内の汚水を返送する構成であってもよい。
【0052】
嫌気槽21に流入した汚水は嫌気処理され、BOD成分が微生物に取り込まれるとともに、リン化合物が加水分解されて正リン酸としてリンが放出される。無酸素槽22では汚水が脱窒処理、つまり、硝酸イオン及び亜硝酸イオンの窒素ガスへの還元処理される。好気槽23では好気処理され、微生物によるアンモニアの硝化と正リン酸の取り込みが行われる。
【0053】
返送経路31により好気槽23の汚水が無酸素槽22に返送され、返送経路32により無酸素槽22の汚水が嫌気槽21に返送されるように構成されているので、無酸素槽22で脱窒処理され硝酸性窒素、亜硝酸性窒素を含まず、酸素が消費された汚水が嫌気槽21に返送され、嫌気槽21でのリンの放出条件である無NOx及び無酸素状態が保たれる。つまり、嫌気槽21ではリン化合物が正リン酸として効率的に放出され、放出された正リン酸が後段の好気槽23で活性汚泥に過剰に取り込まれることにより、汚水からリンを高度に除去することが可能な、生物処理槽20が構築されるのである。
【0054】
さらに、最初沈殿池91及び生物処理槽20を含む汚水の処理経路としての流入水路82には、汚水からし渣を分離除去するし渣除去機構33が配置され、し渣除去機構33で分離されたし渣を、最初沈殿池91に移送する流水トラフで構成されたし渣移送機構36が設けられている。
【0055】
し渣除去機構33は、沈砂池90に備えられている細目スクリーン13より目の細かな微細目スクリーン34(目幅0.5mm以上、且つ、5mm以下の微細目スクリーン)と、微細目スクリーン34にたまったし渣をかき揚げるレーキ35を備えた裏かき式連続自動スクリーン機構で構成され、微細目スクリーン34により、最初沈殿池91から生物処理槽20へと流入する汚水中の微細なし渣も確実に除去することが可能となるのである。
【0056】
し渣除去機構33で分離されたし渣は、し渣移送機構36により最初沈殿池91に返送、つまり移送される。最初沈殿池91に移送されたし渣は、最初沈殿池91内で汚泥掻寄機15により排出部16へと掻き寄せられ、汚泥とともに引抜きポンプによって汚泥処理設備95へ移送される。
【0057】
し渣除去機構33は裏かき式連続自動スクリーン機構に限らず、円筒スクリーン機構、ドラム状スクリーン機構等の公知のスクリーン機構が採用され、設置箇所も、流入水路82の中に備える構成に限らず、生物処理槽20の近傍の躯体上に設置して、最初沈殿池91の汚水を水中ポンプにより揚水し、し渣除去機構33を介して生物処理槽20へ流入させる構成であってもよい。
【0058】
し渣移送機構36としての流水トラフを流れる水は、汚水または膜分離装置24から排出される浄水を利用すればよい。また、し渣移送機構36は、し渣除去機構33が除去したし渣をし渣除去機構33の近傍に新設したタンクに貯留し供給ポンプにより移送する構成であってもよいし、し渣ジェットや、ベルトコンベア、スクリューコンベア等のコンベア機構により移送する構成であってもよい。
【0059】
図2に示すように、し渣除去機構33は、最初沈殿池91から生物処理槽20への流入水路82に設ける場合に限らず、し渣除去機構33aのように最初沈殿池91の槽内に設けてもよい。し渣除去機構33aが除去したし渣は、そのままし渣除去機構33aの上流側の最初沈殿池91内に排出すればよいのでし渣の移送経路36aを短く構成できる点で好ましい。
【0060】
さらに、し渣除去機構33bのように生物処理槽20の流入部に設けてもよく、し渣除去機構33eのように、例えば、好気槽23から膜分離槽25への汚水の移送経路である区画壁28の汚水のオーバーフローする箇所に設けてもよく、
し渣除去機構33c,33dをさらに追加して、生物処理槽20内の汚水の返送経路31、または、返送経路32に設けてもよい。
【0061】
つまり、最初沈殿池91及び生物処理槽20を含む汚水の処理経路であって、閉塞等の不都合な事態となる虞のある膜分離装置24を備えた膜分離槽25の上流側、または、膜分離装置24の前段にし渣除去機構33を設ければよく、例えば、し渣除去機構33cとし渣除去機構33eを同時に設けるようにしてもよい。し渣が上流側で十分に除去されなかった場合であっても、膜分離装置24を閉塞する等の不都合な事態の発生を未然に回避することができる。
【0062】
し渣移送機構36は、し渣除去機構33で分離されたし渣を最初沈殿池91に搬送する場合に限らず、し渣移送機構36bのように最初沈殿池91の汚水流入側の流入水路81に移送するように構成してもよい。
【0063】
し渣除去機構33g及びし渣移送機構36cのように、膜分離装置24を洗浄液中に浸漬して分離膜の洗浄を行うための洗浄タンク40からの洗浄水の返送経路41に設けてもよい。
【0064】
上述の構成によれば、汚水の処理経路に設置されたし渣除去機構33によって分離除去されたし渣が、し渣移送機構36によって最初沈殿池91または最初沈殿池91の汚水流入側に移送され、最初沈殿池91に備えた汚泥処理設備95で最初沈殿池91に沈殿した汚泥とともに処理されるため、し渣処理専用の新たな別途の設備を設ける必要がなくなるのである。し渣除去機構33は最初沈殿池91の近傍に設置されるため、し渣移送機構33によるし渣の搬送距離はそれほど長くならず、し渣移送機構33それ自体が大掛かりで無く安価に構築できるようになり、また、その結果メンテナンス費用も安価になるのである。
【0065】
よって、最初沈殿池91を用いて汚水中の固形物を沈殿除去する沈殿工程と、前記沈殿工程の後に生物処理槽20を用いて汚水中の有機成分を膜分離活性汚泥法を用いて分解除去する生物処理工程を実行する汚水処理方法であって、最初沈殿池91及び生物処理槽20を含む汚水の処理経路に配置されたし渣除去機構33により、汚水からし渣を分離除去するし渣除去工程と、前記し渣除去工程で分離されたし渣を、最初沈殿池91または最初沈殿池91の汚水流入側に移送するし渣移送工程が実行されることを特徴とする汚水処理方法が実現される。
【0066】
さらに、前記生物処理工程は、膜分離活性汚泥法による分離膜を備えた処理槽を含む複数の処理槽で実行され、前記し渣除去工程は、前記処理槽間の汚水移送経路を移送される汚水に対して実行されることを特徴とする汚水処理方法が実現される。
【0067】
本発明による汚水処理設備の別実施形態について説明する。
図3に示すように、最初沈殿池91を経由することなく汚水を生物処理槽20に移送するバイパス経路86が設置され、し渣除去機構33fは、バイパス経路86に移送される汚水からし渣を分離除去するように配置されている。例えば、沈砂池90から移送される汚水のBODが低く活性汚泥にとっての栄養が少ないような場合や、生物処理槽20へ移送される汚水の量が少ない場合は、汚水を最初沈殿池91を経由させて生物処理槽20に移送すると、効果的なりん除去、窒素除去が行われないため、その場合はバイパス経路86を経由させて沈砂池90から直接生物処理槽20へと汚水を移送するのである。
【0068】
バイパス経路86に沿って汚水を生物処理槽20に移送する場合には、汚水に含まれるし渣等が、最初沈殿池91で沈殿処理されること無く、そのまま生物処理槽20に移送される不都合を解消するために、バイパス経路86に移送される汚水からし渣を分離除去するし渣除去機構33fが設けられる。最初沈殿池91を介することなくバイパス経路86に移送される汚水からし渣除去機構33fで分離除去されるし渣の量は非常に多いが、そのような多量のし渣も、し渣移送機構33によって最初沈殿池91または最初沈砂池91の汚水流入側に移送されることにより、最初沈砂池91に備えた汚泥処理設備95で効率的に処理されるようになる。
【0069】
このように構成することで、最初沈殿池91で沈殿工程を実行することなく、バイパス経路86を介して汚水を生物処理槽20に移送して生物処理工程を実行し、し渣除去工程は、し渣除去機構33fによりバイパス経路86に移送される汚水からし渣を分離除去する汚水処理方法が実現される。
【0070】
し渣除去機構33fを、最初沈殿池91を経由して生物処理槽20に移送される処理経路中の汚水と、バイパス経路86を経由して生物処理槽20に移送される処理経路中の汚水の双方からし渣を分離除去可能な位置に配置すると、最初沈殿池91を経由して生物処理槽20に移送される汚水の処理経路と、バイパス経路86を経由して生物処理槽20に移送される汚水の処理経路が併存する場合であっても、一つのし渣除去機構33fが兼用されて各処理経路を流れる汚水からし渣を除去することができるので、各別にし渣除去機構を設ける必要が無く、設備費を効果的に低減させることができる。
【0071】
次に、図7に示すような、従来の汚水中の固形物を沈殿除去する沈殿槽としての最初沈砂池91と、最初沈殿池91に連設され、汚水中の有機成分を標準活性汚泥法を用いて分解除去する生物処理槽としての反応タンク92を備えている汚水処理設備の改築方法について説明する。
【0072】
下水処理場などの大規模な汚水処理設備では、通常、図7に示すように、汚水の処理経路が複数列並設されており、汚水処理設備の改築時には、設備全体としての処理を継続させるために、一部の列の汚水の処理経路について改築を実施し、残りの列の汚水の処理経路は汚水の処理を継続させる。そして、一部の列の汚水の処理経路の改築完了後に、残りの列の汚水の処理経路も必要に応じて順次改築されることとなる。このため、改築済の処理経路と未改築の処理経路が並列して共存する状態が存在することになる。
【0073】
図4に示すように、本発明による汚水処理設備の改築方法は、反応タンクの一列92aを膜分離活性汚泥法を用いて汚水中の有機成分を分解除去する生物処理槽20に改築するとともに、最初沈殿池91及び改築後の生物処理槽20を含む汚水の処理経路である流入水路82aに、汚水からし渣を分離除去するし渣除去機構33を設置し、し渣除去機構33で分離されるし渣を、最初沈殿池91または最初沈殿池91の汚水流入側の流入水路81aに移送するし渣移送機構36を設置する。このように、標準活性汚泥法を用いた反応タンク82を膜分離活性汚泥法を用いた生物処理槽20に改築することで、従来必要であった最終沈殿池93や消毒設備94が不要となる。処理された浄水は水路85により河川や海に放流される。
【0074】
また、図4に示すように、汚水の処理経路が複数列並設されている汚水処理設備のうち、一部の列を標準活性汚泥法から膜分離活性汚泥法に改築した状態であれば、し渣除去機構33で分離したし渣を、改築されていない標準活性汚泥法による処理が行われている処理経路の最初沈殿池91b、または、最初沈殿池91bの汚水流入側の流入水路81bに移送するし渣移送機構36を設置することで、改築した膜分離活性汚泥法による処理が行われている処理経路へのし渣の再混入を完全に回避できる。この場合、し渣除去機構33を、汚水の処理経路の最上流部である流入水路81aの中に設けてもよい。
【0075】
さらに、汚水中のBODが低い場合には、図5に示すように、最初沈殿池で沈殿工程を実行することなく、バイパス経路86を介して汚水を改築した生物処理槽20に移送して膜分離活性汚泥法により生物処理するような場合がある。汚水中の固形物を沈殿除去する沈殿槽としての最初沈砂池91と、最初沈殿池91に連設され、汚水中の有機成分を標準活性汚泥法を用いて分解除去する生物処理槽としての反応タンク92を含む汚水の処理経路が残っていれば、し渣移送経路36を最初沈殿池91b〜91dまたはその最初沈殿池91b〜91dの汚水流入側81b〜81dに移送するように構成してもよい。
【0076】
尚、本発明による汚水処理設備の改築方法は、反応タンク92aのみを生物処理槽20へ改築する場合に限らず、反応タンク92b〜93dも反応タンク92aと同様に生物処理槽20へ改築することができる。
【0077】
上述の実施形態では、生物処理槽20で、汚水は区画壁26,27,28をオーバーフローすることで下流側の処理槽へと移送される構成について説明したが、区画壁26,27,28の上端を水面以上の高さに形成し、壁面に形成した開口部によって汚水を下流側の処理槽へ移送する構成であってもよい。処理槽間にし渣除去機構を設ける場合は、前記開口部の何れかにし渣除去機構を設ければよい。さらに、区画壁26,27,28を水面以上の高さに形成し、槽内に設置したポンプ及び移送配管により汚水を下流側の処理槽に移送し、好気槽から無酸素槽への返送経路及び無酸素槽から嫌気槽への返送経路は自然流下するように構成してもよい。この場合、し渣除去機構は移送配管や、返送経路に備えればよい。
【0078】
上述の実施形態では、生物処理槽20が、嫌気槽21、無酸素槽22、好気槽2で構成される循環式嫌気好気法に膜分離装置24が浸漬された膜分離槽25を備えた構成について説明したが、好気槽22内に膜分離装置24を設置して、膜分離槽を兼用する構成であってもよいし、嫌気槽21と無酸素槽22をあわせて一つな大きな嫌気槽としてもよい。汚水の処理方法は循環式嫌気好気法に限らず、長時間ばっ気法、オキシデーションディッチ法、二段ばっ気法、嫌気好気法、硝化液循環活性汚泥法等の処理方法であってもよく、膜分離装置を備えた生物処理に有効である。
【0079】
また、膜分離装置24は、浸漬型に限らず槽外型であってもよい。膜分離装置の前段でし渣除去機構により汚水からし渣を除去できればよい。
【0080】
上述の実施形態では、生物処理槽20が汚水中の有機成分を膜分離活性汚泥法を用いて分解除去する構成について説明したが、生物処理の方法は、膜分離槽活性汚泥法に限らず、汚水中の有機成分を生物膜法として、嫌気好気性ろ床法や接触酸化法や、担体法として流動担体法や固定担体法を用いて分離除去する生物処理槽へ改築する構成であってもよい。
【0081】
例えば、担体法として流動担体法を採用した生物処理槽について説明する。図6に示すように、生物処理槽70は、槽底に散気装置71を備え、汚水の流出口に担体分離用スクリーン72を備えている。このような生物処理槽70にし渣が混入して、担体分離用スクリーン72が閉塞し汚水の流出ができなくなると生物処理槽70の水位が増加し槽外へ流出する虞がある。そこで、生物処理槽70内の汚水の流入部にし渣除去機構33を備え、生物処理槽70へ流入する汚水からし渣を除去するのである。除去されたし渣は、移送経路36により最初沈殿池91へ移送され、最初沈殿池91の汚泥とともに汚泥処理設備95で処理される。
【0082】
上述の実施形態では、生活排水等の有機性汚濁物質を含む汚水を処理する汚水処理設備に本発明を採用する構成について説明したが、本発明は、農業集落排水処理施設のような小規模下水処理施設に採用することもできる。
【0083】
上述した実施形態では、改築対象の汚水処理設備における生物処理方式が標準活性汚泥法のものについて説明したが、本発明は、改築対象の汚水処理設備が生物膜、担体又は分離膜を備えない生物処理方式の場合に有効であり、回分式活性汚泥法、循環式硝化脱窒法等の公知の処理方式の汚水処理設備に採用することができる。
【0084】
上述した実施形態は、何れも本発明の一例であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0085】
20:生物処理槽
21:嫌気槽
22:無酸素槽
23:好気槽
24:膜分離装置
25:膜分離槽
26,27,28:区画壁
30:散気装置
31:返送経路
32:返送経路
33:し渣除去機構
34:微細目スクリーン
35:レーキ
86:バイパス経路
70:生物処理槽
71:散気装置
72:担体分離用スクリーン
81a〜81d:流入水路
82a〜82d:流入水路
83a〜83d:流入水路
84a〜84d:流入水路
85:水路
90:沈砂池
91(91a〜91d):最初沈殿池
92(92a〜92d):反応タンク
93(93a〜93d):最終沈殿池
94:消毒設備
95:汚泥処理設備
96:排出ホッパ
97:トラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚水中の固形物を沈殿除去する沈殿槽と、前記沈殿槽の後段に連設され、汚水中の有機成分を生物膜法、担体法、または膜分離活性汚泥法の何れかを用いて分解除去する生物処理槽を備えた汚水処理設備であって、
前記沈殿槽及び前記生物処理槽を含む汚水の処理経路に、汚水からし渣を分離除去するし渣除去機構が配置され、
前記し渣除去機構で分離されたし渣を、前記沈殿槽または前記沈殿槽の汚水流入側に移送するし渣移送機構が設けられていることを特徴とする汚水処理設備。
【請求項2】
前記し渣除去機構が前記沈殿槽と前記生物処理槽を連通させる処理経路中に配置されることを特徴とする請求項1記載の汚水処理設備。
【請求項3】
前記沈殿槽を経由することなく汚水を前記生物処理槽に移送するバイパス経路が設置され、
前記し渣除去機構は、前記バイパス経路に移送される汚水からし渣を分離除去するように配置されていることを特徴とする請求項1記載の汚水処理設備。
【請求項4】
前記し渣除去機構は、前記沈殿槽を経由して前記生物処理槽に移送される処理経路中の汚水と、前記バイパス経路を経由して前記生物処理槽に移送される処理経路中の汚水の双方からし渣を分離除去可能な位置に配置されていることを特徴とする請求項3記載の汚水処理設備。
【請求項5】
前記生物処理槽が生物膜法による生物膜、担体法による担体、または膜分離活性汚泥法による分離膜の何れかを備えた処理槽を含む複数の処理槽で構成され、
前記し渣除去機構は前記処理槽間の汚水移送経路に配置されていることを特徴とする請求項1記載の汚水処理設備。
【請求項6】
前記し渣除去機構は、目幅0.5mm以上、且つ、5mm以下の微細目スクリーンを備えていることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の汚水処理設備。
【請求項7】
沈殿槽を用いて汚水中の固形物を沈殿除去する沈殿工程と、前記沈殿工程の後に生物処理槽を用いて汚水中の有機成分を生物膜法、担体法、または膜分離活性汚泥法の何れかを用いて分解除去する生物処理工程を実行する汚水処理方法であって、
前記沈殿槽及び前記生物処理槽を含む汚水の処理経路に配置されたし渣除去機構により、汚水からし渣を分離除去するし渣除去工程と、
前記し渣除去工程で分離されたし渣を、前記沈殿槽または前記沈殿槽の汚水流入側に移送するし渣移送工程が実行されることを特徴とする汚水処理方法。
【請求項8】
前記沈殿工程を実行することなく、バイパス経路を介して汚水を前記生物処理槽に移送して前記生物処理工程を実行し、
前記し渣除去工程は、前記し渣除去機構により前記バイパス経路に移送される汚水からし渣を分離除去することを特徴とする請求項7記載の汚水処理方法。
【請求項9】
前記生物処理工程は、生物膜法による生物膜、担体法による担体、または膜分離活性汚泥法による分離膜の何れかを備えた処理槽を含む複数の処理槽で実行され、
前記し渣除去工程は、前記処理槽間の汚水移送経路を移送される汚水に対して実行されることを特徴とする請求項7記載の汚水処理方法。
【請求項10】
汚水中の固形物を沈殿除去する沈殿槽と、前記沈殿槽の後段に連設され、汚水中の有機成分を活性汚泥を用いて分解除去する生物処理槽を備えている汚水処理設備の改築方法であって、
生物膜法、担体法、または膜分離活性汚泥法の何れかを用いて汚水中の有機成分を分解除去するように前記生物処理槽を改築するとともに、前記沈殿槽及び改築後の生物処理槽を含む汚水の処理経路に、汚水からし渣を分離除去するし渣除去機構を設置し、前記し渣除去機構で分離されるし渣を、前記沈殿槽または前記沈殿槽の汚水流入側に移送するし渣移送機構を設置することを特徴とする汚水処理設備の改築方法。
【請求項11】
汚水中の固形物を沈殿除去する沈殿槽と、前記沈殿槽の後段に連設され、汚水中の有機成分を活性汚泥を用いて分解除去する生物処理槽を含む汚水の処理経路が複数列並設されている汚水処理設備の改築方法であって、
生物膜法、担体法、または膜分離活性汚泥法の何れかを用いて汚水中の有機成分を分解除去するように、前記複数の処理経路の少なくとも一列の処理経路に備えた生物処理槽を改築するとともに、当該少なくとも一列の処理経路に、汚水からし渣を分離除去するし渣除去機構を設置し、前記し渣除去機構で分離されるし渣を、他列の処理経路に備えた沈殿槽またはその沈殿槽の汚水流入側に移送するし渣移送機構を設置することを特徴とする汚水処理設備の改築方法。
【請求項12】
汚水中の固形物を沈殿除去する沈殿槽と、前記沈殿槽の後段に連設され、汚水中の有機成分を生物処理により分解除去する生物処理槽を含む汚水の処理経路が複数列並設されている汚水処理設備であって、
前記複数の処理経路の少なくとも一列の生物処理槽で生物膜法、担体法、または膜分離活性汚泥法の何れかによる処理が行われ、他の少なくとも一列の生物処理槽で、生物膜法、担体法、または膜分離活性汚泥法以外の活性汚泥による処理が行われ、
前記少なくとも一列の処理経路に、汚水からし渣を分離除去するし渣除去機構を設置し、前記し渣除去機構で分離されたし渣を、前記他の少なくとも一列の処理経路に備えた沈殿槽またはその沈殿槽の汚水流入側に移送するし渣移送機構が設けられていることを特徴とする汚水処理設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−585(P2012−585A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139168(P2010−139168)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【出願人】(595011238)クボタ環境サ−ビス株式会社 (19)
【Fターム(参考)】