説明

治療薬を送達するための装置および方法

様々な実施形態において、薬物送達デバイス(90)は、患者へ送達するための治療薬をそれぞれ収容することができる1つ又は複数のリザーバ(100A,100B)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
様々な実施形態において、本発明は、例えば患者の目のような、患者の体の一部に治療薬を送達するための装置と方法に関する。
【0002】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2007年12月20日に出願された米国仮特許出願第61/015,509号、及び2008年10月30に出願された米国仮特許出願第61/197,750号の優先権を主張し、且つそれらの恩恵を求めており、係る仮特許出願は参照により全体的に本明細書に組み込まれる。
【0003】
背景
薬物治療は、患者の体の特定部分に治療薬(例えば、薬剤、薬など)を投与することが必要な場合が多い。静脈注射は、昔から薬を全身的に送達するための医療行為の中心である。しかしながら、いくつかの疾患は、アクセスを実現することが非常に困難な解剖学的領域に薬を投与することを必要とする。
【0004】
患者の目(眼球)は、到達することが困難な解剖学的領域の典型的な例である。糖尿病性網膜症および黄斑変性症のような眼病変は一般に、血管系と流体連絡していない硝子体液に薬を投与することにより治療される。係る投与は、必要とされている場所に直接的に薬を送達するだけでなく、患者の体の残りの部分を薬に曝すことも最小限にし、それ故にその潜在的な副作用を受けることも最小限にする。
【0005】
患者の体内への薬の注射(例えば、眼球の硝子体液へ)は、医学的に実行可能であるが、一般にボーラス投与量の薬を送達する。しかしながら、ボーラス注入法はいくつかの問題を生じる。第1に、慢性の目の病気の治療におけるそれらの使用は一般に、目への度重なる注射、及び医師の診療室への度重なる費用のかかる訪問を概して必要とする痛みを伴う治療を必要とし、目の外傷を生じる可能性がある。第2に、ボーラス注入法は本質的に、経時的な薬物濃度の鋸歯プロファイル状の依存性を生じるので、注射の投薬量は、毒性の限界値の近くになる傾向がある。係る注射の投薬量は一般に、例えばラニビズマブ(ranibizumab)で生じるような、全身性副作用の可能性を増加させる。
【0006】
従って、目において適切に選択された治療薬剤の濃度の時間変化を最小限にするように、当該治療薬剤を目に投与する装置と方法が必要とされている。
【0007】
発明の概要
種々の実施形態において、本発明は、例えば患者の目のような、患者の体の一部へ治療薬を送達するための装置と方法を特徴としている。一手法において、薬物送達デバイスは、様々な治療薬の1つを患者に送達するための単一のリザーバを特徴としている。別の手法において、薬物送達デバイスは、例えば段階的に、又は交互に患者へ2つ以上の異なる治療薬を送達するための複数のリザーバを特徴としている。
【0008】
従って、一態様において、本発明の実施形態は、薬物送達デバイスを特徴とし、その薬物送達デバイスは、第1の治療薬を有する第1の液体を収容するための第1のリザーバと、第1の治療薬とは異なる第2の治療薬を有する第2の液体を収容するための第2のリザーバと、第1及び第2のリザーバと流体連絡する少なくとも1つのカニューレ(例えば、第1のリザーバと流体連絡する第1のカニューレ及び第2のリザーバと流体連絡する第2の別個のカニューレ)を含む。少なくとも1つのカニューレは、第1及び第2の液体を患者へ別々に送達するための排出口を有することができる。様々な実施形態において、実際には、第1のリザーバが第1の液体を含み、第2のリザーバが第2の液体を含む。
【0009】
概して、別の態様において、本発明の実施形態は、眼疾患を治療するための方法を特徴とする。その方法は、今述べたような薬物送達デバイスを準備し、少なくとも1つのカニューレの排出口が患者の目の結膜の内部に入るように、当該結膜上に薬物送達デバイスを取り付け、第1の治療薬を有する第1の液体で第1のリザーバを満たし、(第1の治療薬とは異なる)第2の治療薬を有する第2の液体で第2のリザーバを満たし、少なくとも1つのカニューレの排出口を介して、第1及び第2の治療薬を患者に別々に送達することを含む。
【0010】
様々な実施形態において、第1及び第2の治療薬のそれぞれは、緑内障および/または高眼圧症を治療する。このような場合、第1及び第2の治療薬のそれぞれは、アセタゾールアミド、ベタキソロール、ビマトプロスト、ブリモニジン、ブリンゾラミド、カルビドパ、カルテオロール、ドルゾラミド、エピネフリン、ラタノプロスト、レボドパ、レボブノロール、レボベタキソロール、ロラタジン、メチプラノロール、ピロカルピン、偽エフェドリン、チモロール、トラボプロスト、及びイソプロピルウノプロストンからなるグループから選択される。別の実施形態において、第1及び第2の治療薬は、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症に関連した黄斑浮腫、及び/又は網膜血管閉塞症に関連した黄斑浮腫を治療する。この場合、第1及び第2の治療薬は、ラニビズマブ、ペガプタニブ、ベルテポルフィン、ベバシズマブ、ステロイド、網膜においてβアミロイド沈着を防止する薬、目における補体Hの活性化をブロックするための抗ヒト補体活性化遮断薬、及び低分子干渉RNA(siRNA)分子からなるグループから選択され得る。更に別の実施形態において、第1及び第2の治療薬のそれぞれは、サイトメガロウイルス性網膜炎を治療し、バルガンシクロビル、ビトラベン、及びシドフォビルからなるグループから選択され得る。更に別の実施形態において、第1及び第2の治療薬のそれぞれが、かゆみ及びアレルギー性結膜炎を治療し、エタボン酸ロテプレドノール、ナファゾリン、マレイン酸フェニラミン、ペミロラスト、及びフマル酸ケトチフェンからなるグループから選択され得る。
【0011】
代替の実施形態において、第1及び第2の治療薬は、緑内障、高眼圧症、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症に関連した黄斑浮腫、網膜血管閉塞症に関連した黄斑浮腫、涙液の産生量低下、サイトメガロウイルス性網膜炎、細菌性結膜炎、かゆみ及びアレルギー性結膜炎、術後の目の炎症、単純ヘルペスウィルスによる角膜炎、白内障摘出後の術後の炎症、角膜潰瘍、及びシェーグレン症候群からなるグループから選択された2つの異なる病気を治療するように選択される。
【0012】
薬物送達デバイスの別の実施形態において、第1及び第2の治療薬のそれぞれは、再発悪性神経膠腫、及び/又は悪性脳腫瘍を治療する。このような場合、第1及び第2の治療薬のそれぞれは、ベバシズマブ、イリノテカン、及びステロイドからなるグループから選択され得る。更に別の実施形態において、第1及び第2の治療薬のそれぞれは、炎症反応を抑制する。この場合、第1の治療薬はステロイドとすることができ、第2の治療薬は、非ステロイド性薬物、又は抗癌剤とすることができる。更に別の実施形態において、第1及び第2の治療薬のそれぞれは、網膜疾患、緑内障、及び/又は脳障害に神経防護作用を提供する。例えば、第1及び第2の治療薬のそれぞれは、脳由来成長因子、毛様体神経栄養因子、塩基性線維芽細胞成長因子、神経成長因子、及び腫瘍壊死成長因子阻害薬からなるグループから選択される。
【0013】
代替の実施形態において、第1及び第2の治療薬は、再発悪性神経膠腫、悪性脳腫瘍、アルツハイマー病、脳浮腫、及び炎症反応からなるグループから選択された2つの異なる病気を治療するように選択される。
【0014】
概して、更に別の態様において、本発明の実施形態は、リザーバ、及びリザーバと流体連絡するカニューレを含む薬物送達デバイスを特徴とする。リザーバは治療薬を含む液体を収容し、カニューレは治療薬を患者に送達するための排出口を有する。
【0015】
概して、更に別の態様において、本発明の実施形態は、眼疾患を治療するための方法を特徴とする。その方法は、患者の目に薬物送達デバイスを埋め込み、治療薬を含む液体で薬物送達デバイスを満たすことを含む。
【0016】
これら後者の態様のそれぞれに関する様々な実施形態において、治療薬は、アセタゾールアミド、ベタキソロール、ベバシズマブ、ビマトプロスト、ブリモニジン、ブリンゾラミド、カルビドパ、カルテオロール、シドフォビル、シクロスポリン、ドルゾラミド、エピネフリン、成長因子、イリノテカン、ケトロラクトロメタミン、フマル酸ケトチフェン、ラタノプロスト、レボベタキソロール、レボブノロール、レボドパ、レボフロキサシン、ロラタジン、エタボン酸ロテプレドノール、メチプラノロール、ナファゾリン、オフロキサシン、ペガプタニブ、ペミロラスト、マレイン酸フェニラミン、ピロカルピン、偽エフェドリン、ラニビズマブ、ステロイド、チモロール、トラボプロスト、トリフルリジン、腫瘍壊死因子遮断薬、イソプロピルウノプロストン、バルガンシクロビル、ベルテポルフィン、ビトラベン、網膜または脳においてβアミロイド沈着を防止する薬、目における補体Hの活性化をブロックする抗ヒト補体活性化遮断薬、及びsiRNA分子からなるグループから選択される。
【0017】
概して、更なる態様において、本発明の実施形態は、眼疾患を治療するための方法を特徴とする。その方法は、患者の腫瘍の近くに薬物送達デバイスを埋め込み、薬の組み合わせで薬物送達デバイスを満たすことを含む。当該薬の組み合わせは、例えば、以下の1つである。即ち、i)ベバシズマブとCPT−11、ii)ラニビズマブとCPT−11、iii)レトロゾールとタモキシフェン、iv)ドキソルビシンとドセタキセル、v)ベバシズマブと任意の化学療法薬、vi)ゲムシタビンとCP−870,893、vii)PF−3512676と細胞毒性を有する化学療法薬、viii)ベバシズマブとパクリタキセル、ix)ドセタキセルとスニチニブ、x)ベバシズマブとスニチニブ、xi)ラパチニブとレトロゾール、xii)イクサベピロンとカペシタビン、及びxiii)タンパク質に結合したパクリタキセルとタキサンである。
【0018】
概して、更なる態様において、本発明の実施形態は、薬物送達デバイスを特徴とし、その薬物送達デバイスは、第1の治療薬を有する第1の液体を収容するための第1のリザーバと、 第1の治療薬とは異なる第2の治療薬を有する第2の液体を収容するための第2のリザーバと、薬物送達の投薬計画を格納するためのメモリと、格納された薬物送達の投薬計画の実行に基づいて、少なくとも1つのカニューレを介して第1及び第2の液体を患者に送達することを制御するためのマイクロプロセッサとを含む。
【0019】
種々の実施形態において、また、薬物送達デバイスは、患者からのフィードバックを受け取るためのセンサ、及び/又は薬物送達の投薬計画を再プログラミングする命令を(例えば、医師から)ワイヤレスで受信するための受信機も含む。また、マイクロプロセッサは、フィードバックに基づいて前記薬物送達の投薬計画を変更することもできる。例えば、フィードバックは、患者の測定された眼圧、患者の姿勢、患者により行われている活動、及び/又は患者の組織に存在する第1又は第2の治療薬の測定された残留量とすることができる。更に、薬物送達の投薬計画の実行は、1日の時間、患者特有の因子、及び/又は第1及び第2の治療薬のアイデンティティのような変数により影響され得る。
【0020】
本明細書に開示された本発明の実施形態の利点および特徴と共に、これらの及び他の目的は、以下の説明、添付図面、及び特許請求の範囲の参照を通じて、より明らかになるであろう。更に、理解されるべきは、本明細書で説明される様々な実施形態の特徴は、互いに排他的ではなく、様々な組み合わせ及び置き換えで存在することができる。
【0021】
図面において、様々な図面の全体にわたって、同じ参照符号は概して、同じ部品を指す。また、図面は必ずしも一律の縮尺に従っておらず、むしろ概して本発明の原理を例証することに重点が置かれている。以下の説明において、本発明の様々な実施形態は、以下の図面に関連して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】本発明の一実施形態による、薬物送達デバイスの組立分解図である。
【図1B】図1Aに示された例示的な薬物送達デバイスの組立後の図である。
【図2】本発明の一実施形態による、患者の目に埋め込まれた薬物送達デバイスを示す図である。
【図3】図1Bに示された例示的な薬物送達デバイスの一部の断面図である。
【図4A】本発明の一実施形態による、薬物送達デバイスのバルブの動作を示す断面図である。
【図4B】本発明の一実施形態による、薬物送達デバイスのバルブの動作を示す断面図である。
【図5A】本発明の一実施形態による、別の薬物送達デバイスの上面図である。
【図5B】本発明の一実施形態による、更に別の薬物送達デバイスの上面図である。
【図6】本発明の一実施形態による、電気分解式ポンプ作用を利用する薬物送達デバイスを示す図である。
【図7A】本発明の一実施形態による、電気分解式マイクロポンプの水平断面図である。
【図7B】本発明の一実施形態による、電気分解式マイクロポンプの垂直断面図である。
【図8A】本発明の一実施形態による、電気分解式マイクロポンプの切開上面図である。
【図8B】本発明の一実施形態による、電気分解式マイクロポンプの切開側面図である。
【図9A】本発明の一実施形態による、薬リザーバ及びポンプチャンバの連続的な切り欠き図の1つである。
【図9B】本発明の一実施形態による、薬リザーバ及びポンプチャンバの連続的な切り欠き図の1つである。
【図9C】本発明の一実施形態による、薬リザーバ及びポンプチャンバの連続的な切り欠き図の1つである。
【図9D】本発明の一実施形態による、薬リザーバ及びポンプチャンバの連続的な切り欠き図の1つである。
【図10】薬リザーバ、カニューレ、バルブ、ポンプ、詰め替え可能ポート、及び縫合タブを有する薬物送達デバイスの一実施形態を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態による、リザーバに対する注入ポートの一タイプの内部構造を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態による、シリコンマスクを製作および成形されたポリジメチルシロキサン(PDMS)の層を作成するための工程を示す図である。
【図13】本発明の一実施形態による、電気分解式ポンプ作用の電極、及び一体型カニューレを含む埋め込み型薬物送達デバイスの基層を製作するための工程を示す図である。
【図14】(a)は例示的な電気分解式ポンプの流量試験結果を示し、(b)は例示的な電気分解式ポンプの超低流量の試験結果を示し、(c)は流量送達データから計算された場合のポンプ効率を示し、及び(d)はポンプにおいて観測された典型的なガス再結合を示す。
【図15】例示的な電気分解式ポンプにおいて、電流パルスを用いた250nLの投与量のボーラス投与送達を示す図である。
【図16】典型的な生理学的背圧の下での例示的な電気分解式ポンプの流量性能を示す図である。
【0023】
説明
一般に、本発明の実施形態は、例えば患者の目のような、患者の体の一部に治療薬を送達するための装置と方法に関する。特定の実施形態において、目に対する埋め込み型薬物送達デバイスは、小さいサイズ及び詰め替え可能なリザーバを兼ね備える。小さいサイズは、デバイスから患者の目への不快感を最小限にすると同時に、詰め替え可能なリザーバにより、デバイスは、交換される代わりにそのままで詰め替えられる(補充される)ことが可能になる。そのようなものだから、単一薬剤の溶液のような流体は、長期間にわたって患者の目に供給され得る。
【0024】
特定の実施形態において、薬物送達デバイスは、詰め替え可能なリザーバ、カニューレ、及びバルブを含む。詰め替え可能なリザーバは、送達されるべき流体を保持し、カニューレは流体を標的部位に送り、バルブは流体の送達を制御して逆流を防止する。一実施形態において、詰め替え可能なリザーバは、詰め替えのために針(ニードル)で刺し通すことができる再セルフシール性の上部層、及び針の針刺しに耐える下部層を有し、それにより詰め替え工程中の偶発的な損傷から目を保護する。一方で、カニューレは、患者の目への挿入を容易にするために先細にされ得る。
【0025】
図1A及び図1Bはそれぞれ、薬物送達デバイス5の一実施形態の組立分解図および組立後の図を概略的に示す。デバイス5は、治療薬(例えば、薬)を含む液体を収容するように構成されたリザーバ100、及びリザーバ100と流体連絡するカニューレ110を含む。その遠位端部117において又はその遠位端部117の近くにおいて、患者(例えば、患者の目)への挿入のために構成されたカニューレ110は、患者へ薬を送達するための排出口115を含む。更に、以下で更に説明されるように、薬物送達デバイス5は、カニューレ110の遠位端部117に又はその近くに配置されたバルブ120も含むことができる。代案として、バルブ120は、リザーバ100に近接する端部のような、カニューレ110の長さに沿った他の場所に配置されてもよい。
【0026】
一実施形態において、リザーバ100は、針により刺されることができる第1の壁10、及び針により概して刺されることができない第2の対向する壁50を有する、詰め替え可能な多層構造である。以下で更に説明されるように、針は、薬のような治療薬を含む液体をリザーバ100に詰め替える際に使用される。第1の壁10は、針により穴を開けられた後で漏れることのない、柔軟で薬不浸透性のポリマー(例えば、シリコーン)の層を含むことができるが、第2の壁50は、あまり柔軟ではなく、より機械的に頑強な材料(例えば、ポリマー又は複合材料のような、より剛性の高い材料)を有する層を含むことができる。代案として、第2の壁50は、第1の壁10を製作するために使用されたものと同じ材料でより厚いものを含んでもよい。薬物送達デバイス5が患者の目に埋め込まれる特定の実施形態において、第2の壁50は、目の強膜に隣接して配置され、第2の壁50のより大きな機械的強度は、リザーバ100を詰め替えるために第1の壁100を刺すために使用される針のストロークを制限する。このように、目は、偶発的に刺すことから保護される。以下でより十分に説明されるように、リザーバ100は、第1の壁10と第2の壁50を互いに接合することにより、又は1つ又は複数の介在層20に接合することにより形成され得る。
【0027】
一実施形態において、リザーバ100は、第1の壁10と第2の壁50との間の考えられる接触面積を低減し、且つリザーバ100が完全につぶれることを防止する一体型機械的支持構造体60を含む。機械的支持構造体60は、第1の壁10及び第2の壁50の少なくとも1つから延在する1つ又は複数の突起物(例えば、支柱)とすることができるか、又は1つ又は複数の突起物(例えば、支柱)を含むことができる。また、他の機械的支持構造体も、本明細書で説明される様々な実施形態に適合する。
【0028】
一実施形態において、カニューレ110は、細長い第1の部分70、及び合わさってカニューレ110の中を通る管腔72を画定する壁30を含む。また、カニューレ110は、カニューレ110が管腔72をつぶしたり及びふさいだりすることを防止するために、管腔72内に1つ又は複数の一体型機械的支持構造体74も含む。例えば、機械的支持構造体74は、カニューレ110の第1の部分70の内面からカニューレ110の壁30の方へ延在する1つ又は複数の突起物(例えば、支柱)とすることができるか、又は1つ又は複数の突起物(例えば、支柱)を含むことができる。特定の実施形態において、機械的支持構造体74は、第1の部分70の内面から壁30まで延びる高さ、及び管腔72の全幅より少なく延びる幅を有する。また、他の機械的支持構造体も、本明細書で説明される様々な実施形態に適合する。
【0029】
カニューレ110の端部117は、患者の目へ挿入されるように構成され得る。例えば、カニューレ110の端部117は、目への挿入を容易にするために、先細にされ得る。特定の他の実施形態において、端部117は、目への挿入を容易にするように、角が丸められている。一実施形態において、カニューレ110の外径は、25ゲージの針の外径以下である。別の実施形態において、カニューレ110の外径は、1mm未満(例えば、0.5mm)である。薬物送達デバイス5が目に埋込み可能である実施形態において、カニューレ110の外径は、目の完全な状態を維持するのに役立つために、挿入部位において縫合の必要性を取り除くのに十分に小さい。
【0030】
また、カニューレ110は、一定の流量を維持するために1つ又は複数の流量調整器構造(例えば、バルブ)も含むことができる。このように、薬の投薬量は、カニューレ110を介して流体の流れを駆動する、加えられた圧力の大きさではなくて、薬を含有する流体がカニューレ110を介して流れる持続時間に依存する。それにより、投薬量のより正確な制御が達成されることができ、当該投薬量は、外部の機械的影響(例えば、患者が目をこする場合)に無関係のままである。カニューレ110の1つ又は複数の流量調整器構造の代わりに、又はそれらに加えて、リザーバ100は、1つ又は複数の係る流量調整器構造を含むことができる。
【0031】
更に、カニューレ110は、リザーバ100に伴う様々な動作(例えば、パージング、クリーニング、及び/又は補充)中に患者の体(例えば、目)からリザーバ100を切り離す1つ又は複数の流体流動分離構造(例えば、バルブ)を含むことができ、それにより、リザーバ100と患者の体との間での流体の交換(何れの方向でも)が防止される。カニューレ110の1つ又は複数の流体流動分離構造の代わりに、又はそれらに加えて、リザーバ100は、1つ又は複数の係る流体流動分離構造を含むことができる。
【0032】
図2は、本発明の一実施形態による、患者の目に埋め込まれた例示的な薬物送達デバイス5を模式的に示す。図示されたように、デバイス5は、目の結膜上に配置され、カニューレ110はそれを通して目の後眼房に挿入される。以下でより完全に説明されるように、特定の実施形態において、リザーバ100は、第1の壁10に針で突き通すことができる部分を含み、当該部分は、リザーバ100の補充ポートとしての機能を果たす。薬物送達デバイス5は、カニューレ110及びバルブ120を介して目の後眼房に流体を投与する。他の実施形態において、デバイス5は、レンズにより後眼房から隔てられている目の前房に流体を投与するために使用される。
【0033】
また、デバイス5は、体の他の部分にも埋め込まれ得る。例えば、デバイス5は、化学療法を行うために、或いは脳の別のタイプの治療を行うために、脳のクモ膜下腔に埋め込まれることができ、以下で説明されるよう、化学療法を行うために患者の体の任意の部分における腫瘍の近くに、又はインスリン放出を引き起こす作動薬(例えば、タンパク質、ウイルスベクター等)を提供するためにグルコースに十分に反応しない膵臓に埋め込まれ得る。
【0034】
前述のように、一実施形態において、薬物送達デバイス5は詰め替え可能である。図1Aを再び参照すると、リザーバ100の第1の壁10は、針(図示せず)により刺されることが可能であり、それによりリザーバ100は針を介して補充(再充填)されることが可能になる。一実施形態において、第1の壁10の少なくとも一部はセルフシール(自己封止)する。例えば、セルフシールの部分は、針で刺されることができ、且つ針を取り外す際にそれ自身で再シールする柔軟なプラスチック材料を含むことができる。一実施形態において、セルフシール材料は有利には、多数の針刺しに耐えることができるリザーバの補充場所を提供し、生体適合性を有する。セルフシール材料に利用され得る材料の例は、以下に限定されないが、PDMS、パリレンC、パリレンHT、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリウレタン、アクリロニトリル共重合体、ポリ塩化ビニルの共重合体、ポリアミド、ポリスルホン、ポリスチレン、フッ化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルエステル、ポリビニルブチレート、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリエーテル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロエーテル、ポリメタクリル酸メチル、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ナイロン、セルロース、ゼラチン、シリコーンゴム、及び多孔質ゴムを含む。セルフシール材料は、それと接触する薬を侵出または吸収することができるプラスチック(例えば、シリコーン)を含み、薬が当該プラスチックにさらされないように、パリレンが当該プラスチックの上にコーティングされ得る。
【0035】
第1の壁10の材料としてのPDMSの安定性を示すために、3つの異なる型の針がPDMSの厚板に挿入され、当該針は、(i)20ゲージの標準の先端が鋭い針、(ii)30ゲージのノンコアリング(non-coring)針、及び(iii)30ゲージのコアリング(coring)針である。刺す場所は、走査電子顕微鏡および光学顕微鏡を用いて観察された。先端が鋭い標準20ゲージ針及び30ゲージのノンコアリング針では、当該針が取り除かれた後で、PDMSが刺し穴をセルフシールすることが可能であった。しかしながら、30ゲージのコアリング針は、それを取り除いた後でPDMSに流路を残した。標準またはノンコアリング型の小径の針で刺し通すメカニズムは、PDMS材料を取り除くのではなくて、PDMS材料を裂いて変位させることによって、PDMSが刺し穴を再シールすることを可能にしていると考えられる。更に、25ゲージ針による多数の針刺しの後に、PDMSの構造的完全性が観察された。表1は、大気条件下で実施された試験に関する、壁70の厚みと漏れとの間の関係を示し、漏れは目視検査を通じて判定された。
【0036】
【表1】

【0037】
詰め替え可能なリザーバ100は、治療される病気のタイプに依存して、様々な薬物含有流体と共に使用され得る。一般に、目の治療に選択された調合薬は、角膜、強膜、及び血液網膜関門のような目の保護用の生理学的障壁に浸透する。更に、調合薬は、毛様体、網膜、及び角(angle)のような眼内組織をターゲットにして到達することが困難である。例として、以下の治療薬を単独で又は適切な組み合わせで含有する流体が、以下の病気の治療に関して、本明細書で説明される薬物送達デバイスと共に使用され得る。即ち、
i)緑内障および/または高眼圧症の治療用の、アセタゾールアミド、ベタキソロール、ビマトプロスト、ブリモニジン、ブリンゾラミド、カルビドパ、カルテオロール、ドルゾラミド、エピネフリン、ラタノプロスト、レボドパ、レボブノロール、レボベタキソロール、ロラタジン、メチプラノロール、ピロカルピン、偽エフェドリン、チモロール、トラボプロスト、及びイソプロピルウノプロストン;
ii)加齢性黄斑変性症、および/または糖尿病性網膜症および網膜血管閉塞症に関連した黄斑浮腫の治療用の、ラニビズマブ、ペガプタニブ、ベルテポルフィン、ベバシズマブ(例えば、アバスチン(R))、ステロイド(フルオシノロン及びトリアムシノロンなど(例えば、ケナログ(R)))、網膜においてβアミロイド沈着を防止する薬(タレンフルルビルなど(例えば、Flurizan(R)))、目における補体Hの活性化をブロックするための抗ヒト補体活性化遮断薬、及びsiRNA分子(適切に滴定され得る送達);
iii)涙液の産生量低下の治療用のシクロスポリンの点眼薬;
iv)サイトメガロウイルス性網膜炎の治療用のバルガンシクロビル、ビトラベン、及びシドフォビル;
v)細菌性結膜炎の治療用のレボフロキサシン;
vi)かゆみ及びアレルギー性結膜炎の治療用のエタボン酸ロテプレドノール、ナファゾリン、マレイン酸フェニラミン、ペミロラスト、及びフマル酸ケトチフェン;
vii)術後の目の炎症の治療用のエタボン酸ロテプレドノール;
viii)単純ヘルペスウィルスによる子供の角膜炎症の治療用のトリフルリジン;
ix)白内障摘出後の術後の炎症の治療用のケトロラクトロメタミン;
x)角膜潰瘍の治療用のオフロキサシン;
xi)シェーグレン症候群、自己免疫疾患の治療用のピロカルピン;
xii)再発悪性神経膠腫の大人の患者の治療、及び/又は危険性の高い悪性脳腫瘍の小児患者の治療用のベバシズマブ(例えば、アバスチン(R))、イリノテカン(CPT−11としても知られている)、及びステロイド;
xiii)アルツハイマー病の治療用の、脳においてβアミロイド沈着を防止する薬(タレンフルルビルなど(例えば、Flurizan(R)));
xiv)中枢神経系の発作後の浮腫を低減するための、及び/又は頭部外傷後の脳浮腫を低減するためのステロイド;
xv)炎症反応(例えば、マクロファージ)を抑制するために、非ステロイド性薬物と組み合わせたステロイド、又は抗癌剤(例えば、腫瘍壊死因子遮断薬)と組み合わせたステロイド;及び
xvi)脳由来成長因子のような成長因子、毛様体神経栄養因子、塩基性線維芽細胞成長因子、及び神経成長因子、並びに網膜疾患、緑内障、及び/又は脳障害における神経防護作用に対する腫瘍壊死成長因子阻害薬である。
【0038】
詰め替え可能なリザーバ100が様々な異なる薬剤含有の流体と共に使用され得るので、場合によっては、詰め替える前にリザーバ100から任意の残留する流体を取り除くことが望ましいかもしれない。リザーバ100に残留する流体は、例えば、リザーバ100から流体を吸い出すために第1の壁10のセルフシール部分を貫いて針又は注射器を挿入することにより、リザーバから取り除かれ得る。次いで、リザーバ100は、第1の壁10のセルフシール部分を貫いて挿入された別の針又は注射器を介して、新たな薬剤を含有する流体で詰め替えられ得る。必要に応じて、パージングは、パージング流体の注入と除去の繰り返しサイクルを通じて行われ得る。
【0039】
一実施形態において、リザーバ100の詰め替え可能性により、そうでない場合に比べて、薬物送達デバイス5がより小さくすることが可能になり、その理由は、リザーバ100が、投与されるべき薬の生涯供給量を保持するのに十分に大きくする必要がないからである。薬物送達デバイス5のより小さいサイズは有利には、埋込みと日常使用の双方に関してデバイス5の侵襲性を低減する。
【0040】
更に、リザーバ100の詰め替え可能性により、医師が患者の変化する要求に対して治療計画を調整する、又は薬の新たな進歩を利用することが有利に可能になる。一実施形態において、詰め替え可能なリザーバ100は、必要な詰め替えの回数を減らすために、少なくとも一ヶ月分の薬の供給量(例えば、六ヶ月分の供給量)を蓄える。
【0041】
図3は、カニューレ110の遠位端部117におけるバルブ120の一実施形態の断面図を概略的に示す。図3の断面図は、図1Bの波線により示された平面においてである。バルブ120は、弁座80、及び第1と第2の位置との間で移動可能な構成要素を含むことができる。図4A及び図4Bはそれぞれ、可動構成要素122が第1の位置および第2の位置にある状態のバルブ120の断面図を概略的に示す。一実施形態において、カニューレ110の壁30のフレキシブルな部分が可動構成要素122を形成し、可動構成要素122はそれを貫通するオリフィス40を特徴とする。可動構成要素122は、壁30の当該部分が弁座80と接触しない第1の位置(図4Aにより概略的に示されたような)と、オリフィス40が塞がれるように壁30の当該部分が弁座80に接触する第2の位置(図4Bにより概略的に示されたような)との間で移動可能である。可動構成要素122が第1の位置にある際、液体はオリフィス40を通ってカニューレ110の排出口115へ流れることができる。しかしながら、可動構成要素122が第2の位置にある際、液体はオリフィス40を通って排出口115へ流れることが阻止される。そういうものだから、バルブ120は、薬物送達デバイス5から標的臓器への薬の不必要な拡散、及び患者の体からカニューレ110への物質の不必要な逆流の双方を防止することができる。
【0042】
一実施形態において、図4A及び図4Bに概略的に示されるように、弁座80は、カニューレ110の内面から可動構成要素122(例えば、壁30のフレキシブルな部分)の方へ延在する突起物(例えば、支柱)である。突起物は、上述したカニューレ110の管腔72における1つ又は複数の一体型機械的支持構造体74と実質的に同一である。
【0043】
特定の実施形態において、可動構成要素122は、カニューレ110内の流体により壁30の部分に加えられた圧力に応答して、第2の位置(図4B)から第1の位置(図4A)に移動する。例えば、リザーバ100の1つ又は複数の壁10、50に加えられた機械的(例えば、手操作による)圧力が、カニューレ110を通して流体を強制的に送ることができ、その結果、当該流体の圧力がバルブ120を開く。特定の実施形態において、バルブ120は、カニューレ110の内部の流体圧力がカニューレ110の外部の流体圧力より大きい所定の閾値を越える時だけ開く。バルブ120は、カニューレ110の内部の流体圧力がカニューレ110の外部の流体圧力に等しいか、又はそれ未満である場合に閉じたままであり、それにより生体液が薬物送達デバイス5へ逆に流れることが防止される。
【0044】
図5Aは、薬物送達デバイス90に関する別の実施形態の上面図を概略的に示す。図示されるように、単一のリザーバ100と流体連絡する単一のカニューレ110を有する単一のリザーバ100を特徴とするのではなく、薬物送達デバイス90は2つのリザーバ100A、100Bを含む。各リザーバ100A、100Bは、それと流体連絡する単一の異なるカニューレ110A、110Bを有する。一実施形態において、各リザーバ100A、100Bは、液体の形態で異なる治療薬を収容する。これは、例えば、段階的に又は交互に2つの異なる薬を別々に投与することを可能にする。
【0045】
薬物送達デバイス90の各リザーバ/カニューレの対は、図1A〜図4Bに示された薬物送達デバイス5の実施形態に関連して上述された1つ又は全ての構成要素を特徴とし、且つ類似した態様で動作する独立したポンプとすることができる。例えば、リザーバ100Aの1つ又は複数の壁に加えられた機械的(例えば、手操作による)圧力は、第1の流体が排出口115Aを出るように、カニューレ110Aを通して第1の治療液を押し出すことができる。次いで、リザーバ100Bの1つ又は複数の壁に加えられた機械的(例えば、手操作による)圧力は、第2の流体が排出口115Bを出るように、カニューレ110Bを通して第2の異なる治療液を押し出すことができる。代案として、薬物送達デバイス90の各リザーバ/カニューレの対は実際には、図6〜図10に示された薬物送達デバイス200の実施形態に関連して後述される独立した電気分解式ポンプとして実現されることができ、最適な治療用量の各異なる薬を患者に送達するために個別に制御され得る。
【0046】
薬物送達デバイス90が2つだけのリザーバ/カニューレの対を有するものとして示されているが、実際には、3つ、4つ又は任意の数のリザーバ/カニューレの対を有するように製造され得る。更に、(図5Aに示されるように)各リザーバと流体連絡する単一の独立したカニューレを有するのではなくて、実際には、単一のカニューレ110は、図5Bに示されるように、2つ、3つ、4つ又はそれ以上のリザーバと流体連絡することができる。こうした場合、図示されたように、リザーバ間の流体連絡を防止するために各リザーバへ分岐するカニューレ110の異なる部分に、追加のバルブ112が必要に応じて使用され得る。
【0047】
一実施形態において、薬物送達デバイス90が2つのリザーバ100A、100Bを含む場合、各リザーバの容量は、例えば63μL〜105μLの範囲にわたる。例えば、各リザーバ100A、100Bは、約3mmの幅w、約7mmの奥行きd、及び3mm〜5mmの範囲にわたる高さを有することができる。係る実施形態において、薬物送達デバイス90の全体寸法は、3mm〜5mmの高さを有する8mm×8mmの実装面積の範囲内とすることができる。薬物送達デバイス90を製造するためのプロセスは、単一リザーバの薬物送達デバイス5及び200のそれぞれに関する図12の(A)〜(K)及び図13の(A)〜(M)に関連して以下で説明されるようにすることができる。
【0048】
2つ以上のリザーバを利用することにより、様々な薬の異なる組み合わせ及び/又は順序が、様々な病気を治すために適切に使用され得る。例えば、2つ、3つ、4つ又はそれ以上のリザーバを特徴とする薬物送達デバイス90は、加齢性黄斑変性症、及び/又は糖尿病性網膜症および網膜血管閉塞症に関連した黄斑浮腫を治療するために、ラニビズマブ、ペガプタニブ、ベルテポルフィン、ベバシズマブ、及び/又はステロイド(フルオシノロン及びトリアムシノロンなど)の適切な量を送達するために使用され得る。更に、係るデバイス90の1つ又は複数のリザーバは、これら薬の1つ又は複数を組み合わせて、網膜においてβアミロイド沈着を防止する薬(タレンフルルビルなど)、目における補体Hの活性化をブロックするための抗ヒト補体活性化遮断薬、及びsiRNA分子を送達するために使用されてもよい。別の実施形態において、加齢性黄斑変性症を治すために、抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)の2つの異なるイソ型が使用される。多くの場合、加齢性黄斑変性症は、第1及び第10染色体の多型により生じる。従って、本発明の実施形態は、患者の遺伝子構造に基づいて患者の治療をカスタマイズするために、異なる量の抗VEGF変異体の投薬量をカスタマイズするために使用され得る。
【0049】
別の例として、3つのリザーバを特徴とする薬物送達デバイス90は、サイトメガロウイルス性網膜炎を治すために、適切な量のバルガンシクロビル、ビトラベン、及びシドフォビルを送達するために使用されることができ、或いは2つのリザーバを特徴とする薬物送達デバイス90は、サイトメガロウイルス性網膜炎を治すために、適切な量のこれら薬の2つを送達するために使用され得る。同様に、2つ、3つ又はそれ以上のリザーバを特徴とする薬物送達デバイス90は、緑内障および/または高眼圧症を治すために、上記で特定された適切な量の任意の薬を送達するために使用されることができ、又は代案として、医師により適切と考えられる任意の組み合わせで、かゆみ及びアレルギー性結膜炎を治すために、上記で特定された適切な量の任意の薬を送達するために使用されることができる。更に、2つ、3つ又はそれ以上のリザーバを特徴とする薬物送達デバイス90は、医師により適切と考えられる任意の組み合わせで、i)アルツハイマー病の治療中に脳においてβアミロイド沈着を防止するための様々な薬、ii)中枢神経系の発作後の浮腫を低減するための様々なステロイド、iii)頭部外傷後の脳浮腫を低減するための様々なステロイド、iv)炎症反応(例えば、マクロファージ)を抑制するために、非ステロイド性薬物と組み合わせたステロイド、v)炎症反応(例えば、マクロファージ)を抑制するために抗癌剤(例えば、腫瘍壊死因子遮断薬)と組み合わせたステロイド、又はvi)上記で特定された適切な量の任意の成長因子、及び/又は網膜疾患、緑内障および/または脳障害における神経防護作用に対する腫瘍壊死成長因子阻害薬を送達するために使用され得る。更に、2つ以上の病気(例えば、上述した任意のタイプの)は、これら異なる病気を治すために対象とされた異なる薬を収容する2つ、3つ又はそれ以上のリザーバを特徴とする薬物送達デバイス90により並行して治療され得る。
【0050】
化学療法において、複数の薬を送達することは、脳腫瘍と戦う際に非常に有用にすることができる。例えば、ベバシズマブ(例えば、アバスチン(R))及びCPT−11の組み合わせは、再発悪性神経膠腫にかかった大人の患者、又は危険性の高い悪性脳腫瘍の小児患者に極めて効果的とすることができる。より具体的には、アバスチン(R)及びCPT−11の組み合わせの治療は、再発悪性神経膠腫の患者において迅速な臨床治療の向上およびX線写真での回復を示した。患者の中には、長期間にわたる回復を達成した人さえいた。更に、アバスチン(R)及びCPT−11(並びにカルボプラチン及びエトポシドと共に)で治療された再発性神経膠腫の患者のMRI人体像は、迅速な造影の腫瘍縮小を示した。一実施形態において、送達デバイス90は、異なる間隔で脳腫瘍に各薬物のボーラスを間欠的に投与するために使用される(例えば、奇数日にアバスチン(R)、偶数日にCPT−11)。アバスチン(R)及びCPT−11は、異なって動作し(即ち、アバスチン(R)は、血管内皮増殖因子(VEGF)、腫瘍のライフサイクルの全体にわたって血管形成および既存の血管の維持に大きな役割を果たすタンパク質を抑制することにより血管の増大の速度を落とす一方で、CPT−11は、トポイソメラーゼI、複製および転写中に超らせんDNAを緩和する酵素を抑制することにより核DNAを分裂させる)、異なる間隔で各薬物のボーラスを間欠的に投与することにより、当該薬物は互いに干渉せずに機能することが可能になる。更に、ステロイドは、腫瘍治療中に周囲の脳浮腫を治すために、アバスチン(R)又はCPT−11と共に間欠的に投与され得る。
【0051】
更なる例として、以下の薬の特定の組み合わせ(例えば、流体の形態で)が、癌の治療に関して薬物送達デバイス90と共に使用されることができ、即ち、i)ラニビズマブとCPT−11、ii)レトロゾールとタモキシフェン、iii)ドキソルビシンとドセタキセル、iv)ベバシズマブと任意の化学療法薬、v)ゲムシタビンとCP−870,893(CD40アゴニスト単クローン抗体)、vi)PF−3512676と細胞毒性を有する化学療法薬、vii)ベバシズマブとパクリタキセル、viii)ドセタキセルとスニチニブ、ix)ベバシズマブとスニチニブ、x)ラパチニブとレトロゾール、xi)イクサベピロンとカペシタビン、及びxii)タンパク質に結合したパクリタキセルと他のタキサンである。
【0052】
一実施形態において、複数のリザーバ100からの薬の送達を制御(例えば、段階的または交互)するために、薬物送達デバイス90は更に、マイクロコントローラ又はマイクロプロセッサ130、メモリ132、センサ134、及びトランシーバ136のようなマイクロエレクトロニクスを含む。より詳細には、メモリ132は、薬物送達の投薬計画を格納し、マイクロプロセッサ130は、格納された薬物送達の投薬計画を実行することにより、リザーバ100から1つ又は複数のカニューレ110を介した患者への薬の送達を制御することができる。格納された薬物送達の投薬計画を実行中、マイクロプロセッサ130は、リザーバ/カニューレの対を機械的に又は(以下で説明されるような)電気分解を通じて付勢して、そこから薬を放出するように命令を発行することができる。格納された薬物送達の投薬計画は、例えば、任意の適切な因子または変数に基づいて放出される薬の量、頻度、及びタイプを制御するためにプログラミングされ得る。例えば、放出される薬の量、頻度、及びタイプは、1日の時間に依存するか(例えば、大量の特定タイプの薬は、患者が睡眠している夜に更に頻繁に放出され得る)、又は患者の病気の重症度、特定タイプの薬に対する患者の耐性、患者の体重、患者の遺伝子構造(例えば、患者の遺伝子検査から確かめられ得る)などのような、患者特有の因子に依存することができる。一実施形態において、また、格納された薬物送達の投薬計画は、リザーバ110に収容された薬のタイプを識別するプログラム可能な変数も含む。
【0053】
一実施形態において、センサ134は、患者からのフィードバックを収集する。次いで、マイクロプロセッサ130は、メモリ132に格納された薬物送達の投薬計画を変更するためにフィードバックを使用することができる。例えば、センサ134は、患者の眼圧を測定することができ、その後、マイクロプロセッサ130は、組み合わせて使用されている複数の薬の1つ又は複数が放出される量および/または頻度を増減することができる。別の例として、センサ134は、患者の組織に残された第1の薬の残留量を求めることができ、第1の薬の残留物が消滅した際に、マイクロプロセッサ130は、第2の薬が患者に送達され得ることを生じさせるための命令を発行することができる。一実施形態において、センサ134は、患者における第1の薬の生理学的効果を監視することにより、患者の組織における第1の薬の残りの存在を判定する。例えば、センサ134は、患者の血液をサンプリングして分析することにより、第1の薬に対する患者の反応を測定することができる。
【0054】
更に別の実施形態において、センサ134は、例えば、ジャイロスコープのようなデバイスの使用を通じて、患者の姿勢(例えば、患者が水平に横たわっているか、又は直立しているか否か)を求める。更に、センサ134を使用して、患者の活動(例えば、患者が運動しているか又は休息しているか否か)を判定するために患者の心臓の心拍数を監視することができる。次いで、マイクロプロセッサ130は、最適な時間に薬または薬の組み合わせを患者に送達するために、係る検出された情報を使用することができる。例えば、患者が水平に横たわって休息しており、時刻が午前3時であると判定する場合、マイクロプロセッサ130は、患者が睡眠している際に最大に投与される、患者への薬の送達を生じさせることができる。別の例として、患者が運動していることを、患者の検出された心拍数が示す場合、十分な混合を必要とする薬が患者に送達され得る。
【0055】
上述した機能は、薬物送達デバイス90内で完全に実現され得るか、又は代案として、マイクロエレクトロニクスは、局所的に実現されている特定の機能に加えて、機能が遠隔的にも実現され得るように、トランシーバ136も含むことができる。一実施形態において、トランシーバ136は、局所的部分と遠隔的部分との間でワイヤレス通信を可能にする。更に、トランシーバ136は、医者が薬物送達の投薬計画をワイヤレス(無線)で再プログラミングすることを可能にするために使用され得る。
【0056】
一般に、マイクロプロセッサ130は、メモリ132からフェッチされた命令に応答し且つ当該命令を処理する任意の論理回路とすることができる。例えば、マイクロプロセッサ130は、カリフォルニア州マウンテン・ビューのインテル社により製造された多くの汎用マイクロプロセッサユニットの1つとすることができる。一方、メモリ132は、データを格納することができ、且つ任意の記憶場所がマイクロプロセッサ130により直接的にアクセスされることが可能な1つ又は複数のメモリチップにより提供され得る。メモリ132に格納された薬物送達の投薬計画は、任意の適切なプログラミング言語(単数または複数)(例えば、C++、C#、Java(R)、ビジュアルベーシック、LISP、BASIC、PERLなど)を用いてプログラミングされ得る。トランシーバ136は、例えばプロセッサ間通信およびワイヤレス通信のような、要求、応答およびコマンドを含む情報を送受信することができる、任意のハードウェアデバイス、又はハードウェアのインターフェースを有するソフトウェアモジュールとすることができる。
【0057】
また、リアルタイムで2つ以上の変動する投薬量を処方することによって治療をカスタマイズする能力(例えば、医師が必要に応じてワイヤレスで投薬量を調整することができる)は、患者の厄介で危険な副作用も最小限にする。目に対する1つのよく効く組み合わせは、送達デバイス90を用いて、1日の異なる時間に併用療法を達成する能力である。例えば、会社は、チモロールとプロスタグランジンの併用療法(1日の異なる時間中に同じ点眼薬で又は別個の点眼薬で局所に与えられる)を提案するが、これらの薬は一般に、患者に対して不便で不快であるという理由で、目に直接的に注入されない。チモロールは、点眼薬が投与された後の約1時間、目における最大効果を有するが、目におけるプロスタグランジンは、局所投与の後の約4時間、最大効果を有する。従って、本明細書で説明された実施形態に従って、薬物送達デバイス90は、開放隅角緑内障のような病気に対する併用療法の認可された投薬の最大効果に適合させるために、薬物送達に時間差を設けることができる。
【0058】
従来技術において、例えば、患者は、おおよそ午後8時と午後11にそれぞれ各薬物の最大効果のために、チモロールとプロスタグランジンを含有するFDA認可の単一の点眼薬を午後7時に自分で投与することができる。対照的に、薬物送達デバイス90は、局所に与えられた場合に臨床的に同じ所望の効果に達するために、異なる時間差を設けた時間にそれぞれの薬物を噴出するようにプログラミングされ得る。薬は一般に局所に投与された場合に角膜の透過に異なる時間を有するが、薬物送達デバイス90を用いて目へ直接的に注入される場合にその問題を生じないので、薬物送達デバイス90は、時間差を設けられた前房内への注入と最適な臨床効果を一致させるように使用され得る。
【0059】
薬物送達デバイス90を用いて患者に投与され得る薬の例示的な固定の組み合わせは、チモロール0.5%/ドルゾラミド2.0%、チモロール0.5%/ブリモニジン0.2%、並びにチモロール0.5%/ラタノプロスト0.005%、チモロール0.5%/トラボプロスト0.005%、及びチモロール0.5%/ビマトプロスト0.03%のようなプロスタグランジン+チモロール0.5%の固定の組み合わせを含む。
【0060】
薬物送達デバイス90でもって前房内に注入される薬の固定の組み合わせは、薬剤の洗い出しをなくすことに役立ち、当該洗い出しは、複数の単一薬剤を受ける患者が点眼薬間の非常に短い間隔で様々な薬剤を注入される際に生じる可能性がある。実際には、複数の薬に対して複数の点眼薬を用いることで、1つの薬によって、別の薬が、治療効果が生じる前に、流出を増大させることにより無効にされる場合に著しい洗い出し効果が生じる可能性がある。更に、大規模臨床試験は、チモロール/ドルゾラミドの固定の組み合わせが固定されていない組み合わせ(多くても時点)に同等であることを示しているが、実際の研究は、固定の組み合わせと固定されていない組み合わせの対比に関して、改善された眼圧(IOP)低下を示した。
【0061】
局所の併用療法に伴う現在の制限は、薬物送達デバイス90を用いて投与され得る成分薬剤と同じように柔軟に個人に合わせた治療を調整することができないことを含む。局所の固定された併用療法の柔軟性のないことは、いくつかの成分の最適な投薬の頻度またはタイミングを妨げる可能性がある(例えば、1日1回が十分な量である場合に1日2回β遮断薬(ブロッカー)を使用しなければならない)。様々な実施形態において、薬物送達デバイス90のポンプは、1日の間に異なる併用療法を可能にする(例えば、朝に薬AとB、昼間に薬B、及び夜に薬A)。他方では、患者は一般に、係る複雑な投薬スケジュールに従うことはできない。結果として、当該患者の医師は、薬AとBの組み合わせを有する1つのボトルを当該患者に与え、例えば、1つの薬の夜におけるいくつかの投薬に関して必要ない場合でも、その組み合わせを1日当たり2回または3回取ることを患者に求める。更に、薬の組み合わせの副作用は、相加的である可能性があり、薬物間相互作用は、治療の組み合わせを複雑にすることが多い。しかしながら、薬物送達デバイス90のポンプは、1つの薬効および所望のタイミングを含まずに同じ臨床効果を達成することができる。
【0062】
図6は、薬物送達デバイス200の更に別の実施形態を示す。デバイス200は、治療薬(例えば、薬)を含む液体を収容するように構成されたリザーバ300、及びリザーバ300と流体連絡するカニューレ310を含む。カニューレ310は、パリレン又は他の適切な材料から製造され得る。その遠位端部317において又はその遠位端部317の近くにおいて、カニューレ310は、患者(例えば、患者の目)と流体連絡するように構成された排出口315を含む。また、デバイス200は、第1の電極320、第2の電極330、及び第1と第2の電極320、330と電気連絡する物質(材料)340も含む。電極320、330の少なくとも一方は、平面である。物質340が電極320、330の双方と確実に電気連絡するように、電極は互いに噛み合わせられ得る。一実施形態において、第1の電極320と第2の電極330との間に印加された電圧は、物質340からガスを生成する。生成されたガスは、リザーバ300からカニューレ310を通って排出口315へ流体を強制的に流す。言い換えれば、第1及び第2の電極320、330は、リザーバ300からの液体を、カニューレ310を介して排出口315へ駆動する電気分解式ポンプを動作させる。
【0063】
より詳細には、電気分解式ポンプは、1つの場所から別の場所へ流体(例えば、薬含有の液体)を分配する圧力を生成するために、電気化学的に生成されたガスを使用する。例えば、水性電解質に入れられた2つの電極(一般に、金、パラジウム、又は白金)の間に適切な電圧を印加することにより、ピストン、膜、又は他の変換器に圧力を印加するために使用され得る酸素と水素のガスが生成される。水の電気分解は、白金のような触媒の存在下で急速に可逆的に生じ、当該触媒は、印加された電圧がない場合には、水素と酸素の再結合に触媒作用を及ぼして、水を再形成する。説明されたように、特定の実施形態において、薬物送達デバイス200は、電気分解で生成されたガスを使用して、リザーバ300からの薬を、カニューレ310を介して患者へ送り込む。カニューレ310の遠位端部317におけるチェックバルブ(図示せず)は、十分な圧力がポンピング装置により生成されるまで、薬の前方への流れを防止するために使用され得る。係る電気分解ポンピングは、薬の送達の電子制御を容易にすることができる。
【0064】
電気分解式ポンプは、薬の送達にいくつかの利点をもたらす。それらの低い温度、低い電圧、及び低い電力の動作は、電気分解式ポンプを生体内での長期間の動作に良好に適合させる。目の用途の場合、電気分解式ポンプは、ごくわずかな熱を生成し、高い応力歪み関係も達成することができる。更に、それらは、ポンプに印加される電圧を制御(従って、圧力生成の一時的なパターン)するためのマイクロエレクトロニクスの使用に容易に適しており、それにより、ボーラス投与および/または連続的な投与のモードのどちらにおいてもデバイス200が動作することが可能になる。また、無線(RF)送受信を用いて、無線電力を提供し、且つポンプを動作させるマイクロエレクトロニクス回路の制御も行うことができる。
【0065】
外部と流体連絡するチャンバ内の電気分解は、作動流体をチャンバから押し出すガスを生成する。印加電圧の極性を逆にすることはプロセスを逆にすることができ、それによりチャンバはその元の状態に戻される。小さなトリクル充電がこの逆のプロセスを防止することができるので、薬物送達デバイス200は電力のほとんどない状態で定位置に保持され得る(即ち、デバイス200はラッチ可能である)。
【0066】
依然として図6を参照すると、薬物送達デバイス200は、第1の部分250、及び第1の部分250に取り付けられた第2の部分260から構成され得る。図示されたように、第1の部分250は、カニューレ310、第1の電極320、及び第2の電極330を含むことができる。第2の部分260を第1の部分250に取り付けることにより、リザーバ300がそれらの間に形成される。特定の実施形態において、第2の部分260は、上述したように、繰り返される針刺しに対してセルフシールする液体不浸透性およびガス不浸透性の材料(例えば、シリコーン)を含む。
【0067】
図7A及び図7Bはそれぞれ、本発明の別の実施形態による、薬物送達デバイス200の第1の部分250に関する水平断面図および垂直断面図を概略的に示す。図示されたように、第1の部分250は、支持層305、第1の電極320、及び第2の電極330を含む。第1及び第2の電極320、330は、支持層305の上に配置され、第1の電極320及び第2の電極330の少なくとも一方は平面である。
【0068】
特定の実施形態において、支持層305は、液体不浸透性およびガス不浸透性であり、且つ支持層305の上に任意の導電性材料がない状態で、第1の電極320及び第2の電極330が互いから電気的に絶縁されるように、電気的に絶縁性でもある。第1の電極320及び第2の電極330は、第1の電極320と第2の電極330の間に電圧差を印加する電圧源(図示せず)と電気連絡するように構成される。
【0069】
図7A及び図7Bに示されるように、特定の実施形態において、第1及び第2の電極320、330は、互いに同一平面上にある。特定の実施形態において、第1及び第2の電極320、330の少なくとも一方は、電極により画定された平面内に細長い部分または指状部分(フィンガ)を有するようにパターン形成される。例えば、図7Aに示されたように、第1の電極320は、ほぼ円形の周辺部に沿って細長く延在することができ、当該円形周辺部の中心の方へ延びる放射状の細長い部分322を有する。一方、第2の電極330は、中央の細長い部分332を有し、そこから延在するほぼ垂直な細長い部分334を有する。特定の実施形態において、細長い部分334は、図7Aに示されるように、第1の電極320のほぼ円形の周辺部内に、ほぼ円形の周辺部を画定する。また、第1の電極320及び第2の電極330の他の形状および構成も、本明細書で説明された薬物送達デバイス200の実施形態に適合する。
【0070】
また、特定の実施形態において、第1の部分250は、液体不浸透性およびガス不浸透性である外壁360も含む。以下で更に十分に説明されるように、外壁360は、デバイス200の第2の部分260の対応する壁に接合されるように構成される。
【0071】
また、薬物送達デバイス200の第1の部分250は、第1の電極320と第2の電極330との間に第1の構造体370も含むことができる。図7A及び図7Bに示されるように、第1の構造体370は、支持層305から概して垂直に延在するほぼ円形の壁とすることができる。特定の実施形態において、第1の構造体370は、以下で更に十分に説明されるように、第1の電極320の上の第1の領域380と、第2の電極330の上の第2の領域385との間で、流体が流れることができる1つ又は複数の流体通路372を含む。また、第1の構造体370は、第1の領域380と第2の領域385との間に、液体浸透性であるがガス不浸透性であるバリヤ(障壁)も含むことができる。
【0072】
また、特定の実施形態において、第1の部分250は、第1の電極320の上の第2の構造体374、及び第2の電極330の上の第3の構造体376も含む。第2の構造体374は、図7Bに示されるように、第1の構造体370及び外壁360に機械的に結合されることができ、その結果、支持層305、外壁360、第1の構造体370、及び第2の構造体374は、第1の電極320を含む第1の領域380を画定する。更に、第3の構造体376は、図7Bに示されるように、第1の構造体370に機械的に結合されることができ、その結果、支持層305、第1の構造体370、及び第3の構造体376は、第2の電極330を含む第2の領域385を画定する。
【0073】
第2の構造体374及び/又は第3の構造体376は、フレキシブルであり、液体不浸透性およびガス不浸透性とすることができる。例えば、第2の構造体374及び/又は第3の構造体376は、フレキシブルな膜(例えば、波形のパリレン膜)を含むことができる。第2の構造体374及び/又は第3の構造体376は、対応する第1の領域380及び/又は第2の領域385の圧力の増減でもって、膨張したり収縮したりするように構成され得る。いくつかの係る実施形態において、第2及び第3の構造体374、376は、図7Bに示されるように、同じフレキシブルな膜の部分を含む、又は提供する。
【0074】
図8A及び図8Bはそれぞれ、第1及び第2の部分250、260を含む薬物送達デバイス200の実施形態に関する上面図および垂直断面図を概略的に示す。第2の部分260は、デバイス200の第1の部分250に接合されるように構成された液体不浸透性壁を含む。図8A及び図8Bに示されたように、第2の部分260は、第1の部分250の外壁360に接合されることができ、その結果、第2の部分260、第2の構造体374、及び第3の構造体376は、薬を収容するように構成されたリザーバ300を画定する。
【0075】
特定の実施形態において、第1の領域380及び第2の領域385は、物質340を含み、当該物質340は、物質340に十分な電圧が印加された場合にガスを放出する。例えば、特定の実施形態において、物質340は、印加電圧によって水素ガスと酸素ガスに電気分解により分離される水を含む。図8Bに示されるように、第2及び第3の構造体374、376の双方は、液体不浸透性およびガス不浸透性のフレキシブルな膜を含むことができる。第1の電極320で生成されたガスは、第1の領域380内の圧力を増加させ、それにより第2の構造体374がリザーバ300の方へ撓む。更に、第2の電極330で生成されたガスは、第2の領域385内の圧力を増加させ、それにより第3の構造体376がリザーバ300の方へ撓む。第2の構造体374及び/又は第3の構造体376が撓むことにより、リザーバ300からカニューレ310を通って1つ又は複数の排出口315へ液体(例えば、薬のような治療薬を含有する)が強制的に流される。
【0076】
一実施形態において、デバイス200は、第1の電極320で生成されたガスが第2の電極330で生成されたガスと混合するのを制限する。例えば、図8Bに示されるように、物質340が水を含む場合、第1の電極320で生成された水素ガスは概して、第1の領域380に制限され、他方、第2の電極330で生成された水素ガスは概して第2の領域385に制限される。
【0077】
図9A〜図9Dは、図8A及び図8Bの薬物送達デバイス200の様々な図を概略的に示す。図9Aは、第1の電極320、第2の電極330、第2の部分260、及びカニューレ310と共に、デバイス200の上面図を概略的に示す。図9Bは、第1の電極320、第2の電極330、第2の部分260、カニューレ310、第2の構造体374、及び第3の構造体376を示す部分的切り欠き上面図を概略的に示す。図9Bに示されるように、第2の構造体374及び第3の構造体376は、デバイス200の第1の部分250にわたって延在する膜の部分である。図9Cは、第1の領域380の一部、第1の領域380内の第1の電極320、第2の領域385、第2の領域385内の第2の電極330、第2の構造体374、第3の構造体376、第2の部分260、及びカニューレ310を示す。図9Dに示されたデバイス200は、物質340又は薬を含まないが、図8Bに示された充填されたデバイス200に対応する。
【0078】
図10は、注射針420を受け入れるように構成された注入ポート410を含む薬物送達デバイス200の様々な図を概略的に示す。一実施形態において、注入ポート410は、デバイス200の第1の部分250の一部であるが、別の実施形態において、注入ポート410は、デバイス200の第2の部分260の一部である。注入ポート410は、デバイス200のリザーバ300と流体連絡して、デバイス200の詰め替え(補充)を容易にするが、デバイス200は埋め込まれる。更に、図10に示されるように、デバイス200は、デバイス200を患者の体(例えば、患者の目の表面)に固定するための縫合タブ400を含むことができる。
【0079】
図11は、例示的な注入ポート410の内部構造を概略的に示す。注射針420は、針注入ガイド510を貫いて注入ポート410の表面500を刺し通し、それにより、注入玄関部520にアクセスする。針420から玄関部520への流体の注入は、注入ポートバルブ530を介してリザーバ540へ液体を押し込む。
【0080】
特定の実施形態において、デバイス200は、内部バッテリー(図示せず)により電力供給されるが、他の実施形態において、デバイス200は外部電源(図示せず)により電力供給される。代案として、バッテリーと外部電源の双方が使用されてもよい。例えば、仮に電力がワイヤレスで再充電され得るとしても、より小さいバッテリーを用いて、1週間分の電力を蓄電することができ、それにより有利には、デバイスが小さく及び侵襲が最小限に保たれる。
【0081】
外部電源は、配線を用いて、又は無線手段(例えば、RF送信機と受信機を用いることにより)により、デバイス200に電気結合され得る。外部電源を利用して内部バッテリーの使用を避けることにより、デバイス200は有利には、更に小さく作成されることができ、従って、侵襲が少ない。更に、デバイス200の動作(例えば、デバイスのオン及びオフ)をワイヤレスで制御することにより、手持ち式送信機が、必要に応じてデバイスに電力を供給するために、デバイスと通信する信号を送信するようにプログラミングされ得る。例えば、より少ない薬が必要とされている時、より少ない電力が伝えられ、より少ない薬が噴出される。また、外部電源式投薬器には、埋め込まれた物が非常に多くのを薬を噴出することを制限する何らかの閾値遮断装置も存在することができる。無線電力は、埋め込まれた物に組み込まれたコイル及び外部送信機の使用を通じて、誘導的に与えられ得る。
【0082】
別の実施形態において、デバイス200は、デバイス200の動作を制御するための集積回路を含む。本明細書で説明された薬物送達デバイスの実施形態に適合する集積回路の例は、以下に限定されないが、単一チップの特定用途向け集積回路(ASIC)、及び埋込み可能な医学的用途に更に一般的になっている特定用途向け標準品(ASSP)を含む。いくつかの実施形態において、係る集積回路は、例えばバッテリー寿命を延ばすためにできる限り少ない電力を消費し、従って、侵襲的な交換手順間の時間が長くなる。更に、デバイス200は、投薬量および放出を制御するためのマイクロエレクトロニクス、フィードバック制御のためのセンサ、所定位置にデバイスを保持するための固定構造体、空になった場合にリザーバがひとりでにつぶれることを避けるための支持体、フィルタリング構造体、より正確な流量制御用の追加のバルブ、薬の送達時に圧力の悪影響を取り除くための流量調整器、及びプログラム可能なテレメトリのインターフェースを含むことができる。
【0083】
一実施形態において、図1A及び図1Bに示されるように、薬物送達デバイス5は、3つの個別的な構造的層10、20、50を含む。層10、20、50のうち1つ、2つ又は3つの全ては、PDMS又はパリレンのような生体適合性ポリマーから作成され得る。一実施形態において、構造的層10、20、50の少なくとも1つは、リソグラフィープロセス(例えば、ソフトリソグラフィー)を用いて形成される。図12のA〜Kは、例示的なリソグラフィープロセスを概略的に示す。図12のAに示されるように、基板(例えば、シリコンウェハー)が準備される。次いで、図12のBに示されるように、フォトレジスト層が基板上に形成され得る(例えば、基板上に感光性液体をスピンコーティングすることにより)。適切なフォトレジストは、当業者にはよく知られており、以下に限定されないが、ジアゾナフトキノン、フェノールホルムアルデヒド樹脂、及びSU−8として知られているポリマーのような様々なエポキシベースのポリマーを含む。図12のCに示されるように、次いで、フォトレジスト層が、基板の第1の部分を覆い、基板の第2の部分を覆わないようにパターン形成され得る。例えば、紫外線光が、フォトレジストのコーティングされた基板上にマスクを介して照射されることができ、それによりマスクのパターンがフォトレジスト層に転写される。次いで、よく知られたフォトレジスト現像技術によるウェハーの処理を用いて、紫外線光に曝露されていないフォトレジスト層の部分が除去され得る。リソグラフィー技術の当業者は、本明細書で説明された実施形態に従って、パターニングされたフォトレジスト層を形成するための適切な材料およびプロセス工程を選択することができる。
【0084】
図12のDに示されるように、パターニングされたフォトレジスト層により覆われていない基板の部分は、エッチングされることができ(例えば、深堀り反応性イオンエッチングにより)、それによりフォトレジスト層により保護されたシリコンウェハーの部分がそのまま残る。図12のEに示されるように、次いで、パターニングされたフォトレジスト層が除去される。例えば、アセトンのような溶剤で洗浄後に、フォトレジスト層が除去され、ウェハー全体が、任意の残留するフォトレジストを除去するために、酸素プラズマの使用を通じて清浄化され得る。図12のFに示されるように、シリコンウェハーからPDMS層の取り外しを容易にするために、離型層(例えば、パリレン、広く使用されているp−キシレンのポリマー)が基板上に形成され得る。他の実施形態において、離型層として他の材料が使用され得る。図12のGに示されるように、構造的層(例えば、PDMSシリコーン)が離型層上に形成され得る。例えば、PDMSは、シリコンウェハー上に注がれることができ、室温に置かれることにより又は加熱(例えば、75℃まで45分間)することによって促進されて、硬化することが可能である。図12のHに示されるように、次いで、構造的層が、基板から取り外されることができ、それにより図12のIに示された構造的層が提供される。特定の実施形態において、型成形されたPDMS層は、構造的層の複数の複製を含み、構造的層の各複製は、互いから分離される。図12のJに示されるように、余分な材料が構造的層から取り除かれることができ、それにより図12のKに示された構造的層が提供され、それは他の構造的層との組み立てのために準備が整っている。
【0085】
特定の実施形態において、個々の構造的層は、約1分間(しかし、時間は重要でない)酸素プラズマで1つ又は複数の構造的層の表面を処理することにより、互いに組み立てられて接合され得る。酸素プラズマは、PDMSの表面を疎水性から親水性に変化させる。
【0086】
特定の実施形態において、図1Aを再び参照すると、底部層50及び中間層20は、接合されるべき面がプラズマに面する状態で、プラズマチャンバ内に配置される。ひとたび表面が処理されれば、2つの部品20、50は、極性液体(例えば、エタノール、水など)を用いて位置合わせされ得る。当該液体は、2つの層を位置合わせするためにより多くの時間を提供する活性親水性表面を維持する。また、それは、当該表面を滑らかにする(そうでなければ、粘着性である)ので、2つの部品20、50の位置合わせの操作をより容易にする。次いで、2つの層のアセンブリは、上部層10と共にチャンバ内へ戻されて配置され、処理と位置合わせの手順が繰り返され得る。次いで、全体のアセンブリがベーキングされて(例えば、100℃で45分間)、接合が強化され得る。特に、接合されたシリコーンは、電子顕微鏡の走査および光学的観察により均質のように見えた。加圧されたNによる試験は、接合されたシリコーンのアセンブリが少なくとも172kPa(25psi)の圧力に耐えることを示した。
【0087】
図1A及び図1Bを参照すると、特定の実施形態において、オリフィス40は、カニューレ110の上部表面を後に形成するシリコーンゴムのシートへ小径のコアリング針を挿入することにより作成される。また、他の方法を用いて、この機構を生じさせることもできる。当該コアリング針は、オリフィス40を形成するために材料を除去する。弁座80は、カニューレ110の底面から突出し、カニューレ110の上面に接触するように流路72の高さだけ延在する支柱とすることができる。組み立て中、オリフィス40は、バルブ120を形成するために弁座80の上に中心に位置決めされて、その上に載置される。この構成において、バルブ120は、ノーマルクローズ(通常閉)であると考えられ、流体は通過しない。特定の値(即ち、クラッキング圧)を超える、カニューレ110内の流体圧力は、バルブ120を開き、図4Aに示されたように、流体が弁座80と可動構成要素122との間の間隙を通って薬物送達デバイス5を出ることが可能になる。
【0088】
図13のA〜Mは、図6に示された薬物送達デバイス200のような、電気分解式ポンプ作用を含む薬物送達デバイスを形成するための1つの例示的なプロセスを概略的に示すが、薬物送達デバイスを形成する際に他のプロセスも使用され得る。
【0089】
図13のAに示されるように、はだかのシリコン基板が準備され、図13のBに示されるように、誘電体層(例えば、約400nm(4000Å)の厚さの熱二酸化ケイ素層)がシリコン基板上に成長され得る。この酸化ケイ素層は、基板と電気分解用電極を電気的に絶縁する。
【0090】
次いで、図13のCに示されるように、電気分解用電極(例えば、それぞれTi/Ptから作成され、20nm(200Å)と200nm(2000Å)の厚み)が、誘電体層の上に形成され得る(例えば、堆積されてリソグラフィーでパターン形成される)。誘電体層は、パターン形成され、XeFで簡単にエッチングされて、誘電体層の一部を除去し、それにより基板の一部が露出される。また、このプロセスは、図13のDに示されるように、露出されたシリコン表面を粗面化することもできる。図13のEに示されるように、第1の犠牲フォトレジスト層(例えば、5μmの厚さ)が基板上に回転塗布されてパターン形成され得る。第1の犠牲フォトレジスト層は、製造プロセスの最後において、支持するシリコン基板からのカニューレの取り外しを容易にする。次いで、図13のFに示されるように、第1の構造的層(例えば、7.5μmの厚さのパリレン層)が、第1の犠牲層上に堆積されてパターン形成され得る。第1の構造的層は、薬物送達のカニューレの底部壁になる。図13のGに示されるように、第2の犠牲層(例えば、25μmの厚さのフォトレジスト層、回転塗布されてパターン形成される)が第1の構造的層の上に形成され得る。次いで、図13のHに示されるように、第2の構造的層(例えば、7.5μmの厚さのパリレン層)が、第2の犠牲層上に堆積され得る。第2の構造的層は、カニューレの上部壁と側壁になる。次いで、第1及び第2の構造的層は、図13のI及びJに示されるように、パターン形成され得る。例えば、図13のIに示されるように、不要のパリレンを除去するためのCr/Auエッチングマスク層(それぞれ、20nm(200Å)と200nm(2000Å)の厚み)が、基板上に堆積されてパターン形成され得る。図13のJに概略的に示されるように、パリレンは、Cr/Auマスキング層の使用を通じて、酸素プラズマでパターン形成され得る。図13のKに示されるように、第3の構造的層(例えば、SU−8のフォトレジスト層の70μmの厚さ)が、基板上に回転塗布されてパターン形成され得る。SU−8の層は、カニューレを支持し、薬のリザーバが基層に取り付けられる際にカニューレの崩壊を防止する。次いで、図13のLに示されるように、犠牲フォトレジスト層が、アセトンで溶解されることにより除去される。次いで、図13のMに示されるように、カニューレは、粗面化シリコン基板の表面から剥離されて、自立型のカニューレを形成するために、カニューレの直下のシリコン基板が折り取られる。
【0091】
一実施形態において、薬物送達デバイス5、90、200は、デバイス5、90、200の本体を患者の目の上部に取り付けて、カニューレ110、310を前眼部または後眼部に挿入することにより埋め込まれる。デバイス5、90、200は、縫合またはアイタック(eye tack:目の鋲留め)のような現在の眼科技術の使用を通じて目に固定され得る。一実施形態において、デバイス200を使用する方法は、第1と第2の電極320、330間に第1の電圧を印加して、当該電極と電気連絡する物質340からガスを生成することを含む。当該ガスにより、リザーバ300からカニューレ310を通ってデバイス200の排出口315へ液体が強制的に流れる。また、特定の実施形態において、方法は、第1の電極320と第2の電極330との間に第2の電圧を印加して、ガスから物質340を生じさせることも含む。このように、デバイス200は、物質340がガスから再生される可逆的態様で使用され、それによりデバイス200を物質340で再充填する必要がなくなる。特定の実施形態において、物質340は、水を含み、ガスは水素ガスと酸素ガスを含む。特定の実施形態において、第1の電圧と第2の電圧は、符号が逆である。
【0092】

患者の前眼部および後眼部の双方における組織に標的送達を可能にするフレキシブルなパリレンの経強膜的なカニューレを有するデバイスが以下で説明される。この電気化学的に駆動される薬物送達デバイスは、眼の薬物治療に適した流量(即ち、pL/分〜μL/分)を提供することの動作確認が行われた。連続的薬物送達モード及びボーラス薬物送達モードが、250nLの目標容積の正確な送達を達成するように実施された。カプセル化パッケージング技術が緊急手術の研究のためにに開発され、豚の目において予備の生体外薬物送達実験が実施された。
【0093】
水の電気分解は、液体からガスへの相変態という結果になり、この例のデバイスにおいて薬物送達を駆動するために使用される作動を提供する。電気分解の正味の結果は、反応に使用される水よりも約千倍大きい体積膨張に寄与する酸素ガスと水素ガスの生成である。このガスの発生プロセスは、与圧環境(例えば、200MPa)でさえも進行する。
【0094】
ガスの生成、ひいてはポンプ作用(ポンピング)を促進するために、電流制御は、それがポンプ速度と容量に直接相関することに起因して有用である。電流が反応を促進するために使用される場合、大気圧における理論的なポンプ速度(m/S単位でのqtheoritical)は以下により与えられる。即ち、
theoritical=0.75(I/F)V
ここで、Iはアンペア単位の電流であり、Fはファラデー定数であり、Vは25℃で大気圧のモルガス量である。理論的な生成ガス容量または投与ガス容量(m単位でのVtheoretical)は以下により求められ得る。即ち、
theoretical=qtheoritical
ここで、tは、電流が印加されている持続時間(秒の単位)である。ポンプとしての電気分解アクチュエータの効率(η)は、以下のように定義され得る。即ち、
η=Vexperimental/Vtheoritical
ここで、Vexperimentalは、生成された水素ガスと酸素ガスの実際の体積である。電気化学システムにおける効率は、多数のパラメータにより影響を受け、当該パラメータには、電極のパラメータ(例えば、材料、表面積、幾何学的形状、及び表面状態)、物質移動のパラメータ(例えば、輸送モード、表面濃度、及び吸着)、外部パラメータ(例えば、温度、圧力、及び時間)、溶液のパラメータ(例えば、電気活性種のバルク濃度、他の種および溶媒の濃度)、及び電気パラメータ(例えば、電位、電流、及び電気量)が含まれる。
【0095】
電気分解式ポンプは、電解液に入れられた2つの互いに噛み合った白金電極を含む。この電極の幾何学的形状は、溶液を通る電流経路を低減することによりポンピング効率を改善し、それは発熱を低くするのに役立つ。生成されたガスによる結果として得られた内圧は、封止されたリザーバ内で増大し、それにより薬が、カニューレを介して患者の目へ送達される。電気分解は、可逆的プロセスであり、印加された信号が止められた場合に中止し、それにより水素と酸素の水への段階的再結合が可能になる。
【0096】
送り出される薬は、ポンプに接続された小さいポートを介してフレキシブルな経強膜的なカニューレに入るが、生成されたガスはリザーバの内部に閉じ込められた状態のままである。パリレンは、その機械的強度、生体適合性、及び一体化の容易性に関してカニューレの材料として選択された。それは、埋め込まれるもの(インプラント)の構成に適したUSP Class VIの材料であり、MEMS材料として定着している。ポンプ/カニューレの部分は、シリコンの微細加工を用いて製造され、リザーバ部分は、マスター鋳型に対するシリコーンゴムの鋳造により製造された。
【0097】
より具体的には、ポンプ及びカニューレのチップの製造プロセスは、熱酸化シリコン基板(500nm(5000Å))から始まる。3krpmでLOR 3B(マサチューセッツ州ニュートンのMicroChem Corp.)が、次いで、3krpmでAZ 1518(ニュージャージー州ブランチバーグのAZ エレクトロニック マテリアルズ社)が回転塗布された。互いに噛み合った電極を画定するために、Ti−Pt(20/200nm(200/2000Å))が電子ビーム蒸着され、ST−22フォトレジスト剥離液(コネティカット州ダンベリーのATMI社)内でのリフトオフによってパターン形成された。カニューレの実装面積を画定するために、第2のリソグラフィ工程が実施された(3krpmでAZ 1518)。酸化物層は、下のSiを露出させるために、緩衝HF酸を使用してエッチングされた。フォトレジストは剥ぎ取られ、次いで、露出されたSiは、2サイクルのXeFエッチングによって粗面化された。基板からのカニューレの解放を容易にするために、第1の犠牲フォトレジスト層(2.75krpmで回転塗布され、5μm(ミクロン)の厚さの層を生じるようにハードベークされたAZ 4620)が施された。カニューレの底部を形成する第1のパリレンC層(7.5μm(ミクロン))が堆積され、次いで、厚さ200nm(2000Å)のCrエッチングマスクが熱蒸着された。リソグラフィ(500rpmでAZ 4620)に続いて、Crは、Cr−7(カリフォルニア州フリーモントのCyanteck社)の中でエッチングされ、フォトレジストが剥ぎ取られた。次いで、パリレン層は、酸素プラズマの中でパターン形成され、Crエッチングマスクは、Cr−7を用いて除去された。流路の高さを画定するために、第2のフォトレジスト犠牲層が堆積された(AZ 4620が450rpmで回転塗布され、25μm(ミクロン)の厚さの層を生じるようにハードベークされた)。カニューレを完成させるために、7.5μm(ミクロン)の第2のパリレン層が堆積された。パリレン/フォトレジスト/パリレンのサンドイッチ構造からカニューレを画定するために、エッチングマスクとしてTi/Au(20/200nm(200/2000Å))が堆積された。エッチングマスクは、パターン形成され(AZ 4620が425rpmで回転塗布された)、先ずAuエッチャントTFA(マサチューセッツ州ダンバーズのTransene Company, Inc.)で、次いで10%HFでエッチングされた。最後に、サンドイッチ構造は、酸素プラズマの中でエッチングされ、マスキング層が剥ぎ取られた(AuエッチングTFA及び10%HF)。エッチングに続いて、ウェハー全体が、5%HFへの浸漬および酸素プラズマへの曝露によって洗浄された。SU−8 2200(マサチューセッツ州ニュートンのMicroChem Corp.)が2200rpmで回転塗布され、その結果、ポストベーク後に厚さ70μm(ミクロン)の層が得られた。犠牲フォトレジストは、40℃のアセトン溶液に1日溶解させることによって除去された。個々のカニューレは、それらを基板から手で優しく持ち上げることによって解放された。最後に、個々のダイが分離され、各カニューレの下に残留するシリコンがスクライビング及び折り取りによって除去された。
【0098】
電気分解アクチュエータ及びカニューレを含むポンプチップは、薬リザーバおよび電気配線と結合された。電気配線は、OHMEX−AG導電性エポキシ樹脂(マサチューセッツ州ダンバーズのTransene Company, Inc.)を使用して電極接触パッドにボンディングされた。エポキシ樹脂は、真空下で、150℃で15時間にわたって硬化された。次いで、ポンプチップ及びリザーバは、上述されたように、シリコーンソフトリソグラフィに基づくカプセル化技術を用いて組み立てられた。
【0099】
眼球の湾曲した輪郭にぴたりと嵌るようにパッケージを成形するために、直径17.5mmのステンレス鋼球に対してシリコーンのスペーサ(ミシガン州ミッドランドのDowCorning社のSylgard 184)が型取りされた。この部分的に硬化したシリコーンの層(塩基対硬化剤の比が10:1)は、65℃で、20分間にわたって硬化された。当該球は除去され、結果として得られた凹みはワックスで満たされた。シリコーンのリザーバは、従来の機械加工されたアクリル製の型に対して型取りされ、65℃で20分間にわたって部分的に硬化されることにより準備された。この型は、内のり寸法が6mm×6mm×1.5mmのリザーバを作成する。シリコーンのリザーバは、チップおよびスペーサに対して位置合わせされ、次いで、パリレンのカニューレは、脱イオン水の中に浸漬された。脱イオン水は、カプセル化工程中にシリコーンゴムによるコーティングを防止するマスクとして機能し、これにより、シリコーンゴムの疎水性が利用される。積層体は、シリコーンのプレポリマの中に浸漬され、室温で24時間にわたって硬化された。組み立てプロセスを完了させるために、無関係のシリコーン材料がデバイスから除去された。
【0100】
電気分解式ポンプの性能を調査するために、連続的送達、ボーラス送達、ポンプ効率、ガス再結合、および背圧を調べる実験が行われた。これらの試験のために、レーザ加工(コロラド州ゴールデンのEpilog社のMini/Helix 8000)によってアクリル製の特注の試験装置が作成された。この実験設備は、試験固定具の出力ポートに取り付けられた較正されたマイクロピペット(Becton, Dickinson and CompanyのAccu-Fill 90)から流量データを収集するためのコンピュータ制御式CCDカメラ(カナダ、オンタリオ州オタワのPixeLINK社のPL−A662)を含む。試験は、電解質として脱イオン水を使用して実施された。電気分解は、連続的送達の動作のために、定電流条件(50μAから1.25mA)の下で開始された。効率と、水素および酸素から水への再結合との間の関係が調査された。
【0101】
また、ボーラス送達も試験された。1秒、2秒、および3秒にわたり、一定の電流パルス(0.5mA、1.0mA、及び1.5mA)が印加された。平均投与量を得るために、反復試行が実施された(n=4)。通常のIOPは、5〜22mmHgの範囲にわたる(15.5±2.6mmHg(平均±標準偏差))。この範囲の外側の値は、緑内障の特徴である異常なIOP(>22mmHg)に対応する。従って、これは、ポンプ性能を、これらの生理的に適切な条件の下で特徴付けるのに有用である。実験設備は、マイクロピペットの出口に取り付けられた水柱を含むように変更された。水柱の高さを調節することによって、薬物送達デバイスに対して背圧が印加された。正常なIOP(20mmHg)及び異常なIOP(0mmHg及び70mmHg)に対応する背圧に関してデータが収集された。
【0102】
薬物送達デバイスの試作品が、除核された豚の目に埋め込まれた。デバイスの生体内動作確認の準備には、除核された豚の目内における予備の生体外手術モデリングが有用である。詰まり及び電気接続の整合性をチェックするために、手術実験に先立って、各手術装置の動作が試験された。薬リザーバは、染色された脱イオン水で満たされ、次いで、手で押圧された。これは、リザーバから流体を放出するのに十分な圧力を生成する。外部電源に接続して、電気分解式ポンプ作用によってリザーバから流体を押し出すことにより、電気分解式ポンプの動作を確認するために、第2の試験が行われた。手術調査のために、除核された豚の目が準備され、(角膜と強膜との間において)輪部切開がなされた。カニューレは、切開を通じて前房に埋め込まれた。除核された豚の目は、点滴ラインの使用によって、15mmHgに加圧された。1分間にわたって定電流(0.5mA)が印加された。デバイスは、実験後に外科的に取り除かれた。
【0103】
電気分解式ポンプは、5μAから1.25mAの駆動電流を使用して、pL/分からμL/分の範囲の流量で動作された(図14のA及び図14のB)。最高流量は1.25mAに対する7μL/分で、最低流速は5μAで438pL/分であった。双方のデータセットは、試験中における流体の蒸発を補償するように補正される。目の薬物送達には、約2μL/分未満の流量が好ましい。これは、目の中で自然に発生する流量と一致する。即ち、目の毛様体は、大人で、2.4±0.6μL/分の房水を生成する。電流が減少するにつれ、24〜49%の範囲にわたるポンピング効率が減少したことも観察された(図14のC)。電気分解駆動式のポンピングの効率は、競合する、水素ガスと酸素ガスとからの水への再結合によって影響を受ける。この効果は、再結合反応に触媒作用を及ぼす働きをする白金の電気分解用電極への曝露によって、更に高められる。図14のDには、印加電流がオフにされた後の再結合の効果を示す典型的な累積量曲線が示される。測定された再結合速度は、62nL/分であった。
【0104】
また、ボーラス送達モードも評価された(図15)。所望の投薬計画が1投与あたり250nLである場合、この量は、印加電流の大きさによって決定される短い持続時間にわたってポンプを駆動することによって得られることができる。例えば、1.0mAの駆動電流は、250nLを2.36秒で投与する。1.5mAの電流の場合、パルス時間は1.75秒に設定され得る。目の正常動作の下では、薬物送達デバイスは、目のIOPに相当する背圧を受ける。卓上実験によると、ポンプが、正常および異常なIOP相当の背圧の範囲にわたり、十分な薬物流量を供給することができたことが示された(図16)。流量は、試験された背圧範囲にわたり、正常なIOPと比べて30%変化した。
【0105】
初期の手術結果は、除核された豚の目において、有望な結果を示した。手術実験後のデバイスの取り外しに続く角膜の手術後実験は、虹彩の上方、カニューレの先端の位置の近くにおいて、小さな青い点の存在を明らかにした。この青い点は、目の中に染料が送達されたことを示している。
【0106】
本明細書で説明されたいくつかの薬物送達デバイスに関する更なる詳細は、「MEMS Device and Method for Delivery of Therapeutic Agents」と題する米国特許出願第11/686,310号で見出され、その開示は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0107】
本発明の特定の実施形態が説明された。当業者には明らかなように、本明細書で開示された概念を組み込む他の実施形態が、本発明の思想および範囲から逸脱せずに使用され得る。従って、説明された実施形態は、あらゆる点で単なる例示と考えられるべきであり、制限しないと考えられるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイスであって、
第1の治療薬を含む、又は本質的に第1の治療薬からなる第1の液体を収容するための第1のリザーバと、
前記第1の治療薬とは異なる第2の治療薬を含む、又は本質的に前記第2の治療薬からなる第2の液体を収容するための第2のリザーバと、
前記第1及び第2のリザーバと流体連絡し、前記第1及び第2の液体を患者に別々に送達するための少なくとも1つのカニューレとを含む、薬物送達デバイス。
【請求項2】
前記第1のリザーバが前記第1の液体を含み、前記第2のリザーバが前記第2の液体を含む、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項3】
前記第1及び第2の治療薬のそれぞれが、緑内障または高眼圧症の少なくとも1つを治療する、請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項4】
前記第1及び第2の治療薬のそれぞれが、アセタゾールアミド、ベタキソロール、ビマトプロスト、ブリモニジン、ブリンゾラミド、カルビドパ、カルテオロール、ドルゾラミド、エピネフリン、ラタノプロスト、レボドパ、レボブノロール、レボベタキソロール、ロラタジン、メチプラノロール、ピロカルピン、偽エフェドリン、チモロール、トラボプロスト、及びイソプロピルウノプロストンからなるグループから選択される、請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項5】
前記第1及び第2の治療薬のそれぞれが、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症に関連した黄斑浮腫、又は網膜血管閉塞症に関連した黄斑浮腫の少なくとも1つを治療する、請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項6】
前記第1及び第2の治療薬のそれぞれが、ラニビズマブ、ペガプタニブ、ベルテポルフィン、ベバシズマブ、ステロイド、網膜においてβアミロイド沈着を防止する薬、目における補体Hの活性化をブロックするための抗ヒト補体活性化遮断薬、及びsiRNA分子からなるグループから選択される、請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項7】
前記第1及び第2の治療薬のそれぞれが、サイトメガロウイルス性網膜炎を治療する、請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項8】
前記第1及び第2の治療薬のそれぞれが、バルガンシクロビル、ビトラベン、及びシドフォビルからなるグループから選択される、請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項9】
前記第1及び第2の治療薬のそれぞれが、かゆみ及びアレルギー性結膜炎を治療する、請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項10】
前記第1及び第2の治療薬のそれぞれが、エタボン酸ロテプレドノール、ナファゾリン、マレイン酸フェニラミン、ペミロラスト、及びフマル酸ケトチフェンからなるグループから選択される、請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項11】
前記第1及び第2の治療薬のそれぞれが、再発悪性神経膠腫、又は悪性脳腫瘍の少なくとも1つを治療する、請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項12】
前記第1及び第2の治療薬のそれぞれが、ベバシズマブ、イリノテカン、及びステロイドからなるグループから選択される、請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項13】
前記第1及び第2の治療薬のそれぞれが、炎症反応を抑制する、請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項14】
前記第1の治療薬がステロイドであり、前記第2の治療薬が、非ステロイド性薬物、及び抗癌剤からなるグループから選択される、請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項15】
前記第1及び第2の治療薬のそれぞれが、網膜疾患、緑内障、又は脳障害の少なくとも1つに神経防護作用を提供する、請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項16】
前記第1及び第2の治療薬のそれぞれが、脳由来成長因子、毛様体神経栄養因子、塩基性線維芽細胞成長因子、神経成長因子、及び腫瘍壊死成長因子阻害薬からなるグループから選択される、請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項17】
前記第1及び第2の治療薬が、緑内障、高眼圧症、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症に関連した黄斑浮腫、網膜血管閉塞症に関連した黄斑浮腫、涙液の産生量低下、サイトメガロウイルス性網膜炎、細菌性結膜炎、かゆみ及びアレルギー性結膜炎、術後の目の炎症、単純ヘルペスウィルスによる角膜炎、白内障摘出後の術後の炎症、角膜潰瘍、及びシェーグレン症候群からなるグループから選択された2つの異なる病気を治療する、請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項18】
前記第1及び第2の治療薬が、再発悪性神経膠腫、悪性脳腫瘍、アルツハイマー病、脳浮腫、及び炎症反応からなるグループから選択された2つの異なる病気を治療する、請求項2に記載の薬物送達デバイス。
【請求項19】
少なくとも1つのカニューレが、前記第1のリザーバと流体連絡する第1のカニューレ、及び前記第2のリザーバと流体連絡する第2の別個のカニューレを含む、請求項1に記載の薬物送達デバイス。
【請求項20】
薬物送達デバイスであって、
第1の治療薬を含む、又は本質的に第1の治療薬からなる第1の液体を収容するための第1のリザーバと、
前記第1の治療薬とは異なる第2の治療薬を含む、又は本質的に前記第2の治療薬からなる第2の液体を収容するための第2のリザーバと、
薬物送達の投薬計画を格納するためのメモリと、
前記格納された薬物送達の投薬計画の実行に基づいて、少なくとも1つのカニューレを介して前記第1及び第2の液体を患者に送達することを制御するためのマイクロプロセッサとを含む、薬物送達デバイス。
【請求項21】
前記患者からのフィードバックを受け取るためのセンサを更に含む、請求項20に記載の薬物送達デバイス。
【請求項22】
前記マイクロプロセッサが、前記フィードバックに基づいて前記薬物送達の投薬計画を変更する、請求項21に記載の薬物送達デバイス。
【請求項23】
前記フィードバックが、前記患者の測定された眼圧、前記患者の姿勢、前記患者により行われている活動、又は患者の組織に存在する前記第1又は第2の治療薬の測定された残留量の少なくとも1つを含む、請求項21に記載の薬物送達デバイス。
【請求項24】
前記薬物送達の投薬計画の実行が、1日の時間、患者特有の因子、及び前記第1及び第2の治療薬のアイデンティティからなるグループから選択された少なくとも1つの変数により、影響される、請求項20に記載の薬物送達デバイス。
【請求項25】
前記薬物送達の投薬計画を再プログラミングする命令をワイヤレスで受信するための受信機を更に含む、請求項20に記載の薬物送達デバイス。
【請求項26】
薬物送達デバイスであって、
アセタゾールアミド、ベタキソロール、ベバシズマブ、ビマトプロスト、ブリモニジン、ブリンゾラミド、カルビドパ、カルテオロール、シドフォビル、シクロスポリン、ドルゾラミド、エピネフリン、成長因子、イリノテカン、ケトロラクトロメタミン、フマル酸ケトチフェン、ラタノプロスト、レボベタキソロール、レボブノロール、レボドパ、レボフロキサシン、ロラタジン、エタボン酸ロテプレドノール、メチプラノロール、ナファゾリン、オフロキサシン、ペガプタニブ、ペミロラスト、マレイン酸フェニラミン、ピロカルピン、偽エフェドリン、ラニビズマブ、ステロイド、チモロール、トラボプロスト、トリフルリジン、腫瘍壊死因子遮断薬、イソプロピルウノプロストン、バルガンシクロビル、ベルテポルフィン、ビトラベン、網膜においてβアミロイド沈着を防止する薬、脳においてβアミロイド沈着を防止する薬、目における補体Hの活性化をブロックするための抗ヒト補体活性化遮断薬、及びsiRNA分子からなるグループから選択された治療薬を含む液体を収容するリザーバと、
前記リザーバと流体連絡し、前記治療薬を患者へ送達するための排出口を有するカニューレとを含む、薬物送達デバイス。
【請求項27】
眼疾患を治療するための方法であって、
a)薬物送達デバイスを準備し、その薬物送達デバイスが、
i)第1のリザーバと、
ii)第2のリザーバと、
iii)前記第1及び第2のリザーバと流体連絡し、排出口を有する少なくとも1つのカニューレとを含み、
b)前記少なくとも1つのカニューレの排出口が患者の目の結膜の内部に入るように、前記結膜上に前記薬物送達デバイスを取り付け、
c)第1の治療薬を含む、又は本質的に第1の治療薬からなる第1の液体で前記第1のリザーバを満たし、
d)前記第1の治療薬とは異なる第2の治療薬を含む、又は本質的に前記第2の治療薬からなる第2の液体で前記第2のリザーバを満たし、
e)前記少なくとも1つのカニューレの排出口を介して、前記第1及び第2の治療薬を前記患者に別々に送達することを含む、方法。
【請求項28】
前記第1及び第2の治療薬のそれぞれが、緑内障または高眼圧症の少なくとも1つを治療する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第1及び第2の治療薬のそれぞれが、アセタゾールアミド、ベタキソロール、ビマトプロスト、ブリモニジン、ブリンゾラミド、カルビドパ、カルテオロール、ドルゾラミド、エピネフリン、ラタノプロスト、レボドパ、レボブノロール、レボベタキソロール、ロラタジン、メチプラノロール、ピロカルピン、偽エフェドリン、チモロール、トラボプロスト、及びイソプロピルウノプロストンからなるグループから選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記第1及び第2の治療薬のそれぞれが、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症に関連した黄斑浮腫、又は網膜血管閉塞症に関連した黄斑浮腫の少なくとも1つを治療する、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記第1及び第2の治療薬のそれぞれが、ラニビズマブ、ペガプタニブ、ベルテポルフィン、ベバシズマブ、ステロイド、網膜においてβアミロイド沈着を防止する薬、目における補体Hの活性化をブロックするための抗ヒト補体活性化遮断薬、及びsiRNA分子からなるグループから選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記第1及び第2の治療薬のそれぞれが、サイトメガロウイルス性網膜炎を治療する、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記第1及び第2の治療薬のそれぞれが、バルガンシクロビル、ビトラベン、及びシドフォビルからなるグループから選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記第1及び第2の治療薬のそれぞれが、かゆみ及びアレルギー性結膜炎を治療する、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記第1及び第2の治療薬のそれぞれが、エタボン酸ロテプレドノール、ナファゾリン、マレイン酸フェニラミン、ペミロラスト、及びフマル酸ケトチフェンからなるグループから選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
前記第1及び第2の治療薬が、緑内障、高眼圧症、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症に関連した黄斑浮腫、網膜血管閉塞症に関連した黄斑浮腫、涙液の産生量低下、サイトメガロウイルス性網膜炎、細菌性結膜炎、かゆみ及びアレルギー性結膜炎、術後の目の炎症、単純ヘルペスウィルスによる角膜炎、白内障摘出後の術後の炎症、角膜潰瘍、及びシェーグレン症候群からなるグループから選択された2つの異なる病気を治療する、請求項27に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1つのカニューレが、前記第1のリザーバと流体連絡する第1のカニューレ、及び前記第2のリザーバと流体連絡する第2の別個のカニューレを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項38】
眼疾患を治療するための方法であって、
患者の目に薬物送達デバイスを埋め込み、
アセタゾールアミド、ベタキソロール、ベバシズマブ、ビマトプロスト、ブリモニジン、ブリンゾラミド、カルビドパ、カルテオロール、シドフォビル、シクロスポリン、ドルゾラミド、エピネフリン、ケトロラクトロメタミン、フマル酸ケトチフェン、ラタノプロスト、レボベタキソロール、レボブノロール、レボドパ、レボフロキサシン、ロラタジン、エタボン酸ロテプレドノール、メチプラノロール、ナファゾリン、オフロキサシン、ペガプタニブ、ペミロラスト、マレイン酸フェニラミン、ピロカルピン、偽エフェドリン、ラニビズマブ、ステロイド、チモロール、トラボプロスト、トリフルリジン、イソプロピルウノプロストン、バルガンシクロビル、ベルテポルフィン、ビトラベン、網膜においてβアミロイド沈着を防止する薬、目における補体Hの活性化をブロックするための抗ヒト補体活性化遮断薬、及びsiRNA分子からなるグループから選択された治療薬を含む液体で前記薬物送達デバイスを満たすことを含む、方法。
【請求項39】
眼疾患を治療するための方法であって、
患者の腫瘍の近くに薬物送達デバイスを埋め込み、
i)ベバシズマブとCPT−11、ii)ラニビズマブとCPT−11、iii)レトロゾールとタモキシフェン、iv)ドキソルビシンとドセタキセル、v)ベバシズマブと任意の化学療法薬、vi)ゲムシタビンとCP−870,893、vii)PF−3512676と細胞毒性を有する化学療法薬、viii)ベバシズマブとパクリタキセル、ix)ドセタキセルとスニチニブ、x)ベバシズマブとスニチニブ、xi)ラパチニブとレトロゾール、xii)イクサベピロンとカペシタビン、及びxiii)タンパク質に結合したパクリタキセルとタキサンからなるグループから選択された薬の組み合わせで前記薬物送達デバイスを満たすことを含む、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2011−507631(P2011−507631A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539873(P2010−539873)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/087690
【国際公開番号】WO2009/086112
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(509221582)ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア (3)
【Fターム(参考)】