波長可変干渉フィルター、測色センサー、測色モジュール
【課題】基板同士を加圧して接合させた場合でも、基板間のミラーが損傷しない波長可変干渉フィルター、この波長可変干渉フィルターを備えた測色センサー、およびこの測色センサーを備えた測色モジュールを提供する。
【解決手段】エタロン5は、透光性を有する第一基板51と、第一基板51の一面側に対向するとともに、第一基板51に加圧接合される透光性の第二基板52と、第一基板51および第二基板52の互いに対向する面にそれぞれ設けられ、互いに対向配置される一対のミラー56,57と、一対のミラー56,57の間の寸法を可変する静電アクチュエーター54と、第二基板52の可動ミラー57の内周側に設けられるとともに、第一基板51に向かって突出する支持突出部524と、を具備した。
【解決手段】エタロン5は、透光性を有する第一基板51と、第一基板51の一面側に対向するとともに、第一基板51に加圧接合される透光性の第二基板52と、第一基板51および第二基板52の互いに対向する面にそれぞれ設けられ、互いに対向配置される一対のミラー56,57と、一対のミラー56,57の間の寸法を可変する静電アクチュエーター54と、第二基板52の可動ミラー57の内周側に設けられるとともに、第一基板51に向かって突出する支持突出部524と、を具備した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光から所望の目的波長の光を選択して射出する波長可変干渉フィルター、この波長可変干渉フィルターを備えた測色センサー、およびこの測色センサーを備えた測色モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の基板の互いに対向する面に、それぞれ高反射ミラーを対向配置する波長可変干渉フィルターが知られている。このような波長可変干渉フィルターでは、一対のミラー間で光を反射させ、特定波長の光のみを透過させて、その他の波長の光を干渉により打ち消し合わせることで、入射光から特定波長の光のみを透過させる。
また、このような波長可変干渉フィルターを製造する場合には、一対の基板の互いに対向する面にそれぞれ、前記ミラーを形成した後、基板に圧力を加えて接合する(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の波長可変干渉フィルターは、固定基板と可動基板とを接合した波長可変干渉フィルターである。この波長可変干渉フィルターの固定基板には、可動基板に対向する面に2つの筒状の凹部が形成されている。このうち、第1の凹部は、第2の凹部の中央部に形成されており、底面にミラーである固定反射膜が形成され、第2の凹部の底面には導電層が形成されている。また、可動基板は導電性を有し、略中央に配置される可動部と、可動部を変位可能の保持する支持部と、可動部に通電を行う通電部とを備えている。また、可動部は、第1の凹部に対向し、固定基板に対向する面には、ミラーである可動反射膜が形成される構成が採られている。
そして、この特許文献1に記載の波長可変干渉フィルターは、固定基板の加工工程、SOI(Silicon on Insulator)基板の加工工程、固定基板とSOI基板の接合工程、および可動基板の加工工程を実施することで製造されている。すなわち、固定基板の加工工程において、固定基板に第1および第2の凹部、固定反射膜、および導電層を形成し、SOI基板の加工工程において、SOI基板に可動反射膜を形成する。そして、接合工程において、これらの固定基板およびSOI基板を、陽極接合により接合し、可動基板の加工工程において、SOI基板を加工して可動基板を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−23606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1では、可動基板として導電性のシリコンを用い、ガラス基板である固定基板とSOI基板から形成される可動基板とを陽極接合により接合している。可動基板として、導電性のシリコンを用いる場合では、上述のような陽極結合により強固な接合が得られるが、この陽極接合を行うためには、固定基板および可動基板のうち、いずれか一方が導電性を有する素材で形成される必要があり、その選択肢が限られる。または、非導電性の基材上に導電性の被膜を形成することで陽極接合が可能となるが、この場合、別途導電性の被膜を形成する必要があり製造が煩雑になるという問題がある。
【0006】
これに対して、例えばガラス基材同士を接合する接合方法としては、常温活性化接合などの接合方法がある。この常温活性化接合では、固定基板および可動基板の接合面を精密研磨などにより活性化させ、活性化された面同士を重ね合わせ、加圧することで基板同士を接合する接合方法である。しかしながら、このような接合時に基板に圧力を加える方法では、加圧時に基板が撓み、互いに対向配置されたミラー面同士が接触して貼りついてしまう場合がある。この場合、一対のミラーを平行に維持できなくなったり、損傷してしまったりするという問題があり、所望波長のみを透過させる波長可変干渉フィルターとして機能しなくなる。
【0007】
本発明は、上述のような問題に鑑み、基板同士を加圧して接合させた場合でも、基板間のミラーが損傷しない波長可変干渉フィルター、この波長可変干渉フィルターを備えた測色センサー、およびこの測色センサーを備えた測色モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の波長可変干渉フィルターは、透光性を有する第一基板と、前記第一基板の一面側に対向するとともに、前記第一基板に加圧接合される透光性の第二基板と、前記第一基板および第二基板の互いに対向する面にそれぞれ設けられ、互いに対向配置される一対のミラーと、前記一対のミラーの間の寸法を可変する可変手段と、前記第一基板および第二基板のうち、少なくともいずれか一方の基板の前記ミラーの内周側に設けられるとともに、他方の基板に向かって突出する支持突出部と、を具備したことを特徴とする。
【0009】
この発明では、波長可変干渉フィルターは、一対にミラーのうち少なくともいずれか一方の内周側に支持突出部が設けられている。このため、波長可変干渉フィルターの製造時に、第一基板および第二基板が重ね合わされ、厚み方向に加圧された際、圧力により基板が撓み、一対のミラーが互いに近接する方向に移動するが、ミラー同士が接触する前に支持突出部がミラーに接触することで、ミラー同士が接触して貼り付くことがなく、ミラーの損傷、すなわち一対のミラーが平行でなくなったり、ミラーが損傷したりする不都合を防止できる。
また、波長可変干渉フィルターは、可変手段によりミラー間のギャップを調整することで、分光させる光を可変させることが可能であるが、この時、可変手段にミラー間ギャップを小さくしすぎた場合でも、支持突出部が設けられているため、ミラー同士の接触を防止することができ、通常使用時におけるミラー接触によるミラーの損傷や、一対のミラーの平行関係が維持できなくなる不都合を防止することができる。
【0010】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記ミラーを厚み方向から見る平面視において、前記支持突出部が占める面積は、ミラーの全面積に対して、1/100000から1/100に形成されることが好ましい。
【0011】
この発明では、ミラー平面視において、支持突出部が占める面積はミラー全面積に対して1/100000から1/100の割合となるように形成されている。
ここで、ミラー全面積に対する支持突出部の占める面積が1/100000よりも小さくなる場合、支持突出部の形成が困難となる。また、支持突出部が小さすぎる場合、ミラー同士の接触防止範囲が狭くなり、貼り付き防止として十分に機能しないおそれがある。すなわち、支持突出部の周囲の僅かな範囲のみで、ミラー同士の貼り付きを防止することができるが、その他の範囲でのミラー同士の貼り付きを防止することができず、より多くの支持突出部を設ける必要が生じる。
さらに、ミラー全面積に対する支持突出部の占める面積が1/100よりも大きくなる場合、支持突出部により波長可変干渉フィルターを透過する光の透過量が減少し、分光された光の透過率が悪化するという問題がある。
これに対して、上記のように、ミラー全面積に対する支持突出部の占める面積を1/100000から1/100に設定することで、支持突出部の製造が容易となるとともに、ミラー間の接触を広範囲で防止することができ、かつ、波長可変干渉フィルターにより分光された光の透過量の減少を抑えることができる。
【0012】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記第一基板および第二基板のうち、少なくともいずれか一方の基板の前記ミラーの外周側で、ミラー外周縁の少なくとも一部に沿って設けられるとともに、他方の基板に向かって突出する外周突出部を備えることが好ましい。
【0013】
ここで、外周突出部が設けられる位置としては、一対のミラーの双方に対して設けられるものであってもよく、いずれか一方に設けられるものであってもよい。また、外周突出部の形状は、ミラー外周縁の全周に亘ってリング状の外周突出部が設けられる構成であってもよく、ミラー外周縁の一部に円弧状の外周突出部が設けられる構成であってもよく、ミラー外周縁に沿って所定間隔を開けて複数の外周突出部が設けられる構成としてもよい。
この発明では、上記発明の支持突出部の他に、ミラー外周部に外周突出部が設けられる。支持突出部のみでミラーの貼り付きを防止する場合、例えば第一および第二基板を接合する際の圧力が大きく、各基板の厚み寸法が小さい場合などでは、支持突出部近傍でのミラーの貼り付きを防止することができるが、支持突出部からの距離が遠い位置のミラー外周部近傍では、基板の撓みなどによりミラー同士が接触するおそれがある。また、支持突出部をミラー内に複数設置することで、ミラー貼り付きを防止することも可能であるが、この場合、支持突出部により波長可変干渉フィルターにより分光されて透過する光の光量が減少してしまう。
これに対して、本発明のように、ミラー外周縁に沿って外周突出部を設けることで、上記のように、基板接合時の圧力が大きく、ミラーが大きく撓む場合であっても、支持突出部によりミラー内周側、特にミラー中心部分の貼り付きを防止することができ、外周突出部によりミラーの外周縁近傍の貼り付きを防止することができる。
【0014】
本発明の測色センサーは、上述した波長可変干渉フィルターと、前記波長可変干渉フィルターを透過した検査対象光を受光する受光手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
この発明では、上述した発明と同様に、波長可変干渉フィルターの製造における基板接合時に、支持突出部によりミラーの貼り付きが防止される。また、可変手段により、波長可変干渉フィルターのミラー間のギャップを小さくした場合においてもミラー同士が接触しない。このため、波長可変干渉フィルターにおけるミラー貼り付きに起因する透過率の悪化や分解能の低下が防止される。
このような波長可変干渉フィルターから射出される射出光を受光手段により受光することで、測色センサーは、検査対象光に含まれる所望波長の光成分の正確な光量を測定することができる。
【0016】
本発明の測色モジュールは、上述した測色センサーと、前記測色センサーの前記受光手段により受光された光に基づいて、測色処理を実施する測色処理部と、を具備したことを特徴とすることを特徴とする。
【0017】
この発明では、上述した発明と同様に、波長可変干渉フィルターの一対のミラー間の貼り付きが防止されるため、ミラー貼り付きによる波長可変干渉フィルターを透過する光の透過率や分解能の悪化がなく、測色センサーの受光手段において、検査対象光に含まれる所望波長光の光量を正確に検出することができる。したがって、処理手段においても、検査対象光に含まれる所望波長の光の正確な光量に基づいて、検査対象光の各色成分の強度を精度よく分析できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る一実施形態の測色モジュールの概略構成を示す図である。
【図2】前記実施形態の波長可変干渉フィルターを構成するエタロンの概略構成を示す平面図である。
【図3】図2においてエタロンをIII-III線で断面した際の断面図である。
【図4】前記実施形態の可動部の可動面近傍を拡大した拡大平面図である。
【図5】前記実施形態のエタロンの製造における第一基板の製造構成を示す図であり、(A)は、第一基板51にミラー固定面512A形成用のレジストを形成するレジスト形成工程の概略図、(B)は、ミラー固定面512Aを形成する第一溝形成工程の概略図、(C)は、電極固定面511Aを形成する第二溝形成工程の概略図、(D)は、AgC層を形成するAgC形成工程の概略図、(E)は、AgC除去工程を示す概略図である。
【図6】第二基板の製造工程の概略を示す図であり、(A)は、第二基板に支持突出部および外周突出部形成用のレジストを形成する第二レジスト形成工程の概略図、(B)は、支持突出部および外周突出部を形成する突出部形成工程の概略図、(C)は、AgC層を形成する第二AgC形成工程の概略図、(D)は、第二AgC除去工程を示す概略図である。
【図7】エタロンの製造工程を示す図であり、(A)は、接合工程を示す概略図、(B)は、接合工程において、加重が加えられた際の可動部近傍を示す概略図、(C)は、ダイヤフラム形成工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る一実施形態の測色モジュールについて、図面を参照して説明する。
〔1.測色モジュールの全体構成〕
図1は、本発明に係る第一実施形態の測色モジュールの概略構成を示す図である。
この測色モジュール1は、図1に示すように、被検査対象Aに光を射出する光源装置2と、本発明の測色センサー3と、測色モジュール1の全体動作を制御する制御装置4とを備えている。そして、この測色モジュール1は、光源装置2から射出される光を被検査対象Aにて反射させ、反射された検査対象光を測色センサーにて受光し、測色センサー3から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度、すなわち被検査対象Aの色を分析して測定するモジュールである。
【0020】
〔2.光源装置の構成〕
光源装置2は、光源21、複数のレンズ22(図1には1つのみ記載)を備え、被検査対象Aに対して白色光を射出する。また、複数のレンズ22には、コリメーターレンズが含まれており、光源装置2は、光源21から射出された白色光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから被検査対象Aに向かって射出する。
【0021】
〔3.測色センサーの構成〕
測色センサー3は、図1に示すように、本発明の波長可変干渉フィルターを構成するエタロン5と、エタロン5を透過する光を受光する受光手段としての受光素子31と、エタロン5で透過させる光の波長を可変する電圧制御手段6と、を備えている。また、測色センサー3は、エタロン5に対向する位置に、被検査対象Aで反射された反射光(検査対象光)を、内部に導光する図示しない入射光学レンズを備えている。そして、この測色センサー3は、エタロン5により、入射光学レンズから入射した検査対象光のうち、所定波長の光のみを分光し、分光した光を受光素子31にて受光する。
受光素子31は、複数の光電交換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、受光素子31は、制御装置4に接続されており、生成した電気信号を受光信号として制御装置4に出力する。
【0022】
(3−1.エタロンの構成)
図2は、本発明の波長可変干渉フィルターを構成するエタロン5の概略構成を示す平面図であり、図3は、エタロン5の概略構成を示す断面図である。なお、図1では、エタロン5に検査対象光が図中下側から入射しているが、図3では、検査対象光が図中上側から入射するものとする。
エタロン5は、図2に示すように、平面正方形状の板状の光学部材であり、一辺が例えば10mmに形成されている。このエタロン5は、図3に示すように、第一基板51、および第二基板52を備えている。これらの2枚の基板51,52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などにより形成されている。これらの中でも、各基板51,52の構成材料としては、例えばナトリウム(Na)やカリウム(K)などのアルカリ金属を含有したガラスが好ましく、このようなガラスにより各基板51,52を形成することで、後述するミラー56,57や、各電極の密着性や、基板同士の接合強度を向上させることが可能となる。そして、これらの2つの基板51,52は、外周部近傍に形成される接合面513,523が、例えば常温活性化接合など、加圧接合されることで、一体的に構成されている。
【0023】
また、第一基板51と、第二基板52との間には、本発明の一対のミラーを構成する固定ミラー56および可動ミラー57が設けられる。ここで、固定ミラー56は、第一基板51の第二基板52に対向する面に固定され、可動ミラー57は、第二基板52の第一基板51に対向する面に固定されている。また、これらの固定ミラー56および可動ミラー57は、ミラー間ギャップGを介して対向配置されている。
さらに、第一基板51と第二基板52との間には、固定ミラー56および可動ミラー57の間のミラー間ギャップGの寸法を調整するための静電アクチュエーター54が設けられている。
【0024】
(3−1−1.第一基板の構成)
第一基板51は、厚みが例えば500μmに形成されるガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。具体的には、図3に示すように、第一基板51には、エッチングにより電極形成溝511およびミラー固定部512が形成される。
電極形成溝511は、図2に示すようなエタロン5を厚み方向から見た平面視(以降、エタロン平面視と称す)において、平面中心点を中心とした円形に形成されている。ミラー固定部512は、前記平面視において、電極形成溝511の中心部から第二基板52側に突出して形成される。
【0025】
電極形成溝511は、ミラー固定部512の外周縁から、当該電極形成溝511の内周壁面までの間に、リング状の電極固定面511Aが形成され、この電極固定面511Aに第一変位用電極541が形成される。また、第一変位用電極541の外周縁の一部からは、図2に示すようなエタロン平面視において、エタロン5の右下方向および左上方向に向かって、第一変位用電極引出部541Aがそれぞれ延出して形成されている。さらに、これらの第一変位用電極引出部541Aの先端には、それぞれ第一変位用電極パッド541Bが形成され、これらの第一変位用電極パッド541Bが電圧制御手段6に接続される。
ここで、静電アクチュエーター54を駆動させる際には、電圧制御手段6により、一対の第一変位用電極パッド541Bのうちのいずれか一方にのみに電圧が印加される。そして、他方の第一変位用電極パッド541Bは、第一変位用電極541の電荷保持量を検出するための検出端子として用いられる。
【0026】
また、電極固定面511Aには、複数の接触防止ピン511Bが、第二基板52に向かって突出形成されている。具体的には、これらの接触防止ピン511Bは、エタロン平面視において、円筒状のミラー固定部512の径方向に伸び、互いに45度間隔となる複数の仮想放射線511C上に沿って、均等間隔で形成されている。
【0027】
ミラー固定部512は、上述したように、電極形成溝511と同軸上で、電極形成溝511よりも小さい径寸法となる円柱状に形成されている。なお、本実施形態では、図3に示すように、ミラー固定部512の第二基板52に対向するミラー固定面512Aが、電極固定面511Aよりも第二基板52に近接して形成される例を示すが、これに限らない。電極固定面511Aおよびミラー固定面512Aの高さ位置は、ミラー固定面512Aに固定される固定ミラー56、および第二基板52に形成される可動ミラー57の間のミラー間ギャップGの寸法、第一変位用電極541および第二基板52に形成される後述の第二変位用電極542の間の寸法、固定ミラー56や可動ミラー57の厚み寸法により適宜設定されるものであり、上記のような構成に限られない。例えばミラー56,57として、誘電体多層膜ミラーを用い、その厚み寸法が増大する場合、電極固定面511Aとミラー固定面512Aとが同一面に形成される構成や、電極固定面511Aの中心部に、円柱凹溝上のミラー固定溝が形成され、このミラー固定溝の底面にミラー固定面512Aが形成される構成などとしてもよい。
【0028】
また、ミラー固定部512のミラー固定面512Aは、エタロン5を透過させる波長域をも考慮して、溝深さが設計されることが好ましい。例えば、本実施形態では、固定ミラー56および可動ミラー57の間のミラー間ギャップGの初期値(第一変位用電極541および第二変位用電極542間に電圧が印加されていない状態のミラー間ギャップGの寸法)が450nmに設定され、第一変位用電極541および第二変位用電極542間に電圧を印加することにより、ミラー間ギャップGが例えば250nmになるまで可動ミラー57を変位させることが可能となっており、これにより、第一変位用電極541および第二変位用電極542間の電圧を可変することで、可視光全域の波長の光を選択的に分光させて透過させることが可能となる。この場合、固定ミラー56および可動ミラー57の膜厚およびミラー固定面512Aや電極固定面511Aの高さ寸法は、ミラー間ギャップGを250nm〜450nmの間で変位可能な値に設定されていればよい。
【0029】
そして、ミラー固定面512Aには、直径が約3mmの円形状に形成される固定ミラー56が固定されている。この固定ミラー56は、AgC単層により形成されるミラーであり、スパッタリングなどの手法によりミラー固定面512Aに形成される。
なお、本実施形態では、固定ミラー56として、エタロン5で分光可能な波長域として可視光全域をカバーできるAgC単層のミラーを用いる例を示すが、これに限定されず、例えば、エタロン5で分光可能な波長域が狭いが、AgC単層ミラーよりも、分光された光の透過率が大きく、透過率の半値幅も狭く分解能が良好な、例えばTiO2−SiO2系誘電体多層膜ミラーを用いる構成としてもよい。ただし、この場合、上述したように、第一基板51のミラー固定面512Aや電極固定面511Aの高さ位置を、固定ミラー56や可動ミラー57、分光させる光の波長選択域などにより、適宜設定する必要がある。
【0030】
さらに、第一基板51は、第二基板52に対向する上面とは反対側の下面において、固定ミラー56に対応する位置に図示略の反射防止膜(AR)が形成されている。この反射防止膜は、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成され、第一基板51の表面での可視光の反射率を低下させ、透過率を増大させる。
【0031】
(3−1−2.第二基板の構成)
第二基板52は、厚みが例えば200μmに形成されるガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。
具体的には、第二基板52には、図2に示すような平面視において、基板中心点を中心とした円形の可動部521と、可動部521と同軸であり可動部521を保持する連結保持部522と、を備えている。
【0032】
図4は、可動部521の可動面521Aを拡大した平面図である。
可動部521は、連結保持部522よりも厚み寸法が大きく形成され、例えば、本実施形態では、第二基板52の厚み寸法と同一寸法である200μmに形成されている。また、可動部521は、ミラー固定部512に平行な可動面521Aを備え、この可動面521Aに可動ミラー57が固定されている。ここで、この可動ミラー57と、上記した固定ミラー56とにより、本発明の一対のミラーが構成される。また、本実施形態では、可動ミラー57と固定ミラー56との間のミラー間ギャップGは、初期状態において、450nmに設定されている。
ここで、この可動ミラー57は、上述した固定ミラー56と同一の構成のミラーが用いられ、本実施形態では、AgC単層ミラーが用いられる。また、AgC単層ミラーの膜厚寸法は、例えば0.03μmに形成されている。
【0033】
また、可動面521Aには、エタロン平面視における可動面521Aの中心位置に、第一基板51側に突出する支持突出部524が設けられており、可動ミラー57は、この支持突出部524の外側に形成されている。この支持突出部524は、例えば、第二基板52と同様の素材であるガラスにより形成されている。また、この支持突出部524は、円柱状に形成され、断面円の径寸法が例えば30μmに形成される。また、支持突出部524は、可動面521Aから支持突出部524の突出先端までの突出寸法が例えば0.15μmに形成され、可動ミラー57のミラー面よりも第一基板51側に突出形成されている。このような支持突出部524は、断面径寸法が突出寸法よりも十分に大きく形成されているため、外部から力が加わった場合でも折れるなど破損することがない。
【0034】
そして、この支持突出部524は、可動部521が第一基板51側に移動された際に、可動ミラー57と、第一基板51に形成される固定ミラー56との接触による貼り付きを防止する。
より詳細に説明すると、エタロン5の製造では、第一基板51および第二基板52を、常温活性化接合などの接合方法により接合させる接合工程を実施する必要がある。この時、第一基板51および第二基板52には、接合面513,523に直交する方向に加重が印加され、その圧力により接合面513,523同士が接合する。ここで、エタロン5におけるミラー間ギャップGは、上述したように、例えば450nmに形成されるものであり、微小隙間空間となっている。このため、接合時の加重により可動部521が移動すると、固定ミラー56と可動ミラー57とが接触し、貼り付いてしまうおそれがあり、この場合、ミラー56,57が離れたとしても、互いの平行関係が崩れ、所望波長の光のみを分光させて透過させるエタロン5として機能しなくなる。これに対して、支持突出部524が設けられる構成では、可動部521をミラー間ギャップGの距離以上、第一基板51側に移動させるような圧力が加わった場合でも、ミラー56,57が接触する前に、支持突出部524の突出先端面が固定ミラー56に当接し、可動部521の移動を規制する。これにより、ミラー56,57同士が接触することがなく、貼り付きを防止することができる。
また、エタロン5は、静電アクチュエーター54に所定の電圧を印加することで、可動部521を基板厚み方向に沿って移動させてミラー間ギャップGを調整し、検査対象光から分光させる光を選択することが可能となる。この時、静電アクチュエーター54に印加する電圧が所定閾値以上となった場合、可動部521の移動量がミラー間ギャップGの初期値(例えば450nm)を超えてしまう。この場合でも、支持突出部524が設けられることで、固定ミラー56および可動ミラー57の接触による貼り付きを防止することができ、エタロン5の誤操作などによるエタロン5の破損を防止することも可能となる。
【0035】
なお、本実施形態では、支持突出部524の一例として、上記した寸法を例示するが、これに限定されない。すなわち、支持突出部524は、エタロン平面視において、ミラー全面積に対する断面積の占める割合が1/100000〜1/100程度に形成されていればよい。ここで、ミラー全面積に対する支持突出部524の断面積の割合が1/100000より小さくなる場合、可動面521A上に支持突出部524を形成することが困難となる。つまり、本実施の形態のように、第二基板52と同素材により形成される支持突出部524では、第二基板52をドライエッチングすることで、可動面521Aおよび支持突出部524を形成する。この時、支持突出部524の断面積が上述のように小さすぎる場合、より精密なエッチング精度が要求され、支持突出部524の製造が困難となる。
また、エタロン5の製造では、上記したように、第一基板51および第二基板52に加重を印加することで、これらの第一基板51および第二基板52を接合させ、支持突出部524により、可動部521の移動を規制してミラー56,57同士の接触を防止する。この時、支持突出部524の断面積がミラー全面積に対して1/100000より小さくなると、1つの支持突出部524でミラー全面の貼り付きを防止することが困難となる。例えば、ミラー中心部に支持突出部524が形成される場合、ミラー中心近傍の一部のみのミラー貼り付きを防止することが可能であるが、その範囲外のミラー貼り付きを防止することができない。
一方、支持突出部524の断面積が、ミラー全面積に対して1/100より大きくなる場合、エタロン5に入射する光が、この支持突出部524に阻害され、入射光の光量が減少してしまうという問題があり、入射光における所定波長の光成分の光量を正確に測定することが困難となる。
これに対して、上記のように、エタロン平面視において、ミラー全面積に対する断面積の占める割合が1/100000〜1/100となる支持突出部524では、ドライエッチングなどの各種製造方法により容易に形成することが可能であり、ミラー56,57の全面において、接触を防止することができ、かつ、エタロン5を透過する光の透過量の減少も抑えられる。
【0036】
また、可動面521Aには、エタロン平面視において略リング形状であり、可動面521Aから第一基板51側に突出する外周突出部525が形成されている。この外周突出部525は、図2〜図4に示すように、可動ミラー57の外周側で、可動ミラー57の外周縁に沿って形成される。また、外周突出部525は、エタロン平面視におけるリング幅寸法が例えば30μmに形成され、可動面521Aからの突出寸法が例えば0.15μmに形成され、可動ミラー57のミラー面よりも第一基板51側に突出して形成されている。
この外周突出部525は、可動ミラー57の内周側に設けられる支持突出部524と同様に、可動部521が第一基板51側に移動した際のミラー56,57同士の貼り付きを防止する。
【0037】
さらに、可動部521は、可動面521Aとは反対側の上面において、可動ミラー57に対応する位置に図示略の反射防止膜(AR)が形成されている。この反射防止膜は、第一基板51に形成される反射防止膜と同様の構成を有し、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成される。
【0038】
連結保持部522は、可動部521の周囲を囲うダイヤフラムであり、例えば厚み寸法が50μmに形成されている。この連結保持部522の第一基板51に対向する面には、第一変位用電極541と、約1μmの電磁ギャップを介して対向する、リング状の第二変位用電極542が形成されている。ここで、この第二変位用電極542および前述した第一変位用電極541により、本発明の可変手段である静電アクチュエーター54が構成される。
また、第二変位用電極542の外周縁の一部からは、一対の第二変位用電極引出部542Aが外周方向に向かって形成され、これらの第二変位用電極引出部542Aの先端には第二変位用電極パッド542Bが形成されている。より具体的には、第二変位用電極引出部542Aは、図2に示すように、エタロン平面視において、エタロン5の左下方向および右上方向に向かって延出し、第二基板52の平面中心に対して点対称に形成されている。
また、第二変位用電極パッド542Bも、第一変位用電極パッド541Bと同様に、電圧制御手段6に接続され、静電アクチュエーター54の駆動時には、一対の第二変位用電極パッド542Bのうちのいずれか一方にのみに電圧が印加される。そして、他方の第二変位用電極パッド542Bは、第二変位用電極542の電荷保持量を検出するための検出端子として用いられる。
【0039】
(3−2.電圧制御手段の構成)
電圧制御手段6は、上記エタロン5とともに、本発明の波長可変干渉フィルターを構成する。この電圧制御手段6は、制御装置4からの入力される制御信号に基づいて、静電アクチュエーター54の第一変位用電極541および第二変位用電極542に印加する電圧を制御する。
【0040】
〔4.制御装置の構成〕
制御装置4は、測色モジュール1の全体動作を制御する。
この制御装置4としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、制御装置4は、図1に示すように、光源制御部41、測色センサー制御部42、および測色処理部43などを備えて構成されている。
光源制御部41は、光源装置2に接続されている。そして、光源制御部41は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置2に所定の制御信号を出力し、光源装置2から所定の明るさの白色光を射出させる。
測色センサー制御部42は、測色センサー3に接続されている。そして、測色センサー制御部42は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー3にて受光させる光の波長を設定し、この波長の光の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー3に出力する。これにより、測色センサー3の電圧制御手段6は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長のみを透過させるよう、静電アクチュエーター54への印加電圧を設定する。
【0041】
〔5.エタロンの製造方法〕
次に、上記エタロン5の製造方法について、図面に基づいて説明する。
(5−1.第一基板の製造)
図5は、エタロン5の第一基板の製造工程を示す図であり、(A)は、第一基板51にミラー固定面512A形成用のレジストを形成するレジスト形成工程の概略図、(B)は、ミラー固定面512Aを形成する第一溝形成工程の概略図、(C)は、電極固定面511Aを形成する第二溝形成工程の概略図、(D)は、AgC層を形成するAgC形成工程の概略図、(E)は、AgC除去工程を示す概略図である。
【0042】
第一基板51を製造するためには、まず、図5(A)に示すように、第一基板51の製造素材であるガラス基板にレジスト61を形成し(レジスト形成工程)、図5(B)に示すように、ミラー固定面512Aを含む第一溝62を形成する(第一溝形成工程)。
具体的には、レジスト形成工程では、接合面513にレジスト61を形成する。そして、第一溝形成工程では、レジスト61が形成されない接合面513以外の部分を異方性エッチングし、ミラー固定面512Aを含む第一溝62を形成する。
【0043】
また、第一溝62の形成後、この第一溝62のミラー固定面512A、および接触防止ピン511Bの形成位置にレジスト61を形成し、さらに異方性エッチングを実施する(第二溝形成工程)。これにより、接触防止ピン511Bを有する電極形成溝511、およびミラー固定部512が形成される。
【0044】
この後、図5(D)に示すように、第一基板51のレジスト61を除去し、第二基板52に対向する面にAgC薄膜63を例えば厚み寸法が30nmとなるように形成する(AgC形成工程)。また、AgC形成工程では、形成されたAgC膜63上の、固定ミラー56の形成部分、および第一変位用電極541の形成部分にそれぞれレジスト61を形成する。
そして、レジスト61が設けられていない部分のAgC薄膜63を除去することで、図5(E)に示すように、固定ミラー56、および第一変位用電極541が形成される(AgC除去工程)。
以上により、第一基板51が形成される。
【0045】
(5−2.第二基板の製造)
次に、第二基板52の製造方法について説明する。
図6は、第二基板の製造工程の概略を示す図であり、(A)は、第二基板52に支持突出部524および外周突出部525形成用のレジストを形成する第二レジスト形成工程の概略図、(B)は、支持突出部524および外周突出部525を形成する突出部形成工程の概略図、(C)は、AgC層を形成する第二AgC形成工程の概略図、(D)は、第二AgC除去工程を示す概略図である。
【0046】
第二基板52の製造では、まず、図6(A)に示すように、第二基板52の製造素材であるガラス基板の接合面523の形成位置、支持突出部524の形成位置、外周突出部525の形成位置に、それぞれレジスト61を形成する(第二レジスト形成工程)。
この後、レジスト61が設けられていない部分を異方性エッチングすることで、図6(B)に示すように、可動面521A、支持突出部524、および外周突出部525を形成する。
【0047】
この後、図6(C)に示すように、第二基板52のレジスト61を除去し、第一基板51に対向する面にAgC薄膜63を例えば厚み寸法が30nmとなるように形成する(第二AgC形成工程)。また、この第二AgC形成工程では、形成されたAgC膜63上の、可動ミラー57の形成部分、および第二変位用電極542の形成部分にそれぞれレジスト61を形成する。
そして、レジスト61が設けられていない部分をエッチングすることで、図6(D)に示すように、AgC薄膜63を除去する(第二AgC除去工程)。これにより、第二基板52が形成される。
【0048】
(5−3.エタロンの製造)
次に、上述のように製造された第一基板51および第二基板52を用いたエタロン5の製造について説明する。
図7は、エタロン5の製造工程を示す図であり、(A)は、接合工程を示す概略図、(B)は、接合工程において、加重が加えられた際の可動部521近傍を示す概略図、(C)は、ダイヤフラム形成工程を示す概略図である。
【0049】
エタロン5の製造では、まず、図7(A)に示すように、第一基板51および第二基板52を接合する接合工程を実施する。
この接合工程では、例えば常温活性化接合を用いる。すなわち、接合工程では、各基板51,52を真空チャンバーに入れ、真空状態下で、イオンビームの照射やプラズマ処理を実施することで、接合面513,523を活性化させる。そして、活性化された接合面513、523同士を重ね合わせて、第一基板51および第二基板52の厚み方向に対して加重を印加することで、第一基板51および第二基板52を接合する。ここで、第一基板51および第二基板52に加重を印加する際、厚み寸法が小さい第二基板52が加重により撓み、可動部521が第一基板51側に変位する場合がある。上述したように、エタロン5におけるミラー間ギャップGは、初期値が例えば450nmに形成され、その距離が極めて小さいため、支持突出部524が形成されていない場合、撓み量が最大となるミラー中心部において、可動ミラー57と固定ミラー56とが近接し、接触してしまう場合がある。
これに対して、本実施形態では、第二基板52には、支持突出部524および外周突出部525が設けられているため、図7(B)に示すように、可動ミラー57が固定ミラー56に接触する前に支持突出部524が固定ミラー56に接触することで、ミラー中心部のミラー56,57同士の接触を防止でき、外周突出部525がミラー固定面512Aに接触することで、ミラー外周部でのミラー56,57同士の接触を防止できる。
この後、図7(C)に示すように、第二基板52に連結保持部522を形成するための溝をエッチングにより形成する(ダイヤフラム形成工程)。以上により、エタロン5が製造される。
【0050】
なお、接合工程の後にダイヤフラム形成工程を実施する製造方法を例示したが、これに限定されず、例えば第二基板52の製造時に、ダイヤフラム形成工程を実施してもよい。すなわち、支持突出部524が形成されない場合で、第二基板52の製造時にダイヤフラム形成工程を実施すると、接合工程において、可動部521が大きく撓んでしまい、ミラー56,57同士が僅かな加重により接触してしまうという問題がある。しかしながら、本実施形態のように、支持突出部524が形成される構成では、この支持突出部524によりミラー56,57同士の接触を確実に防止することができる。したがって、第二基板52の製造時に、ダイヤフラム形成工程を実施してもよい。
【0051】
〔6.第一実施形態の作用効果〕
上述したように、上記第一実施形態のエタロン5では、第二基板52は、可動面521Aに、可動ミラー57の内周側に第一基板51側に突出する支持突出部524を備えている。
このため、エタロン5の製造時の接合工程において、第一基板51および第二基板52に加重を印加して接合面513,523を接合する場合に、第二基板52の可動ミラー57の形成部分が加重により第一基板51側に撓んだとしても、支持突出部524が固定ミラー56に当接し、第二基板52の撓みを規制する。これにより、可動ミラー57が固定ミラー56に接触せず、ミラー56,57同士の貼り付きが防止され、エタロン5の製造効率を向上させることができる。
また、静電アクチュエーター54に電圧を印加して可動部521を第一基板51側に変位させる場合や、例えばエタロン5を測色センサー3に組み付ける場合に外部から加重が加わった場合において、可動部521が第一基板51側に大きく撓んだとしても、ミラー56,57同士の接触を防止でき、貼り付きが防止される。したがって、ミラー56,57同士の接触による破損やエタロン5の性能低下を防止することができる。
【0052】
また、エタロン平面視において、ミラー全面積に対する支持突出部524の断面積の割合が1/100000〜1/100に形成されている。
上述したように、ミラー全面積に対する支持突出部524の割合が1/100000より小さくなる場合では、支持突出部524の製造が困難となり、支持突出部524によりミラー56,57の接触を防止できる面積が小さくなる。また、ミラー全面積に対する支持突出部524の割合が1/100より大きくなる場合では、エタロン5の透過光の光量が減少してしまい、これに伴って、測色センサー3により受光される透過光の受光量、および測色モジュール1の測色精度も低下してしまう。これに対して、支持突出部524の断面積の割合が、上記のように1/100000〜1/100となるように形成することで、上記のような問題を回避できる。すなわち、製造時において、第二基板52のエッチングにより容易に支持突出部524を製造することができ、1つの支持突出部524により、ミラー全面の貼り付きを防止することができる。また、支持突出部524によるエタロン5の透過光減少を、測色処理に影響を与えない程度に抑えることができる。
【0053】
また、第二基板52は、可動ミラー57の外周側で、可動ミラー57の外周縁に沿って形成される外周突出部525を備えている。
このように、支持突出部524に加えて、外周突出部525を設けることでミラー56,57同士の接触をより確実に防止することができる。特に、本実施形態のようにミラー中心部に支持突出部524が設けられる場合、この支持突出部524は、第二基板52が撓んだ際に、撓み量が最も大きくなるミラー中心部近傍において、ミラー56,57同士の接触を防止することができる。一方、例えばエタロン5を測色センサーに設置する場合などにおいて、可動部521の外周部の一部に加重が加わった場合、可動ミラー57の外周縁近傍が最も大きく第一基板51側に撓むことも考えられる。このような場合でも、本実施形態では、外周突出部525がミラー固定面512Aに接触することで、ミラー56,57同士の接触を防止することができる。
また、外周突出部525は、可動ミラー57の外周側に形成されるため、エタロン5を透過する光の光量に影響を与えず、測色処理の精度低下がない。
【0054】
また、エタロン5は、電極固定面511Aから第二基板52側に突出する複数の接触防止ピン511Bを備えている。
このため、エタロン5の製造時の接合工程において、上述した支持突出部524、外周突出部525に加えて、これらの接触防止ピン511Bにより、第二基板52の撓みを防止でき、より確実にミラー56,57同士の接触による損傷を防止することができる。
【0055】
〔他の実施の形態〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0056】
例えば、上記実施形態において、第二基板52の可動面521Aに支持突出部524が形成される例を示したが、これに限定されず、例えば第一基板51のミラー固定面512Aに第二基板52側に突出する支持突出部を設ける構成としてもよい。さらには、可動面521Aおよびミラー固定面512Aの双方に支持突出部が設けられる構成としてもよい。
【0057】
また、外周突出部525も同様に、第一基板51のミラー固定面512Aに形成される構成としてもよく、ミラー固定面512Aおよび可動面521Aの双方に設けられる構成としてもよい。
【0058】
さらに、エタロン平面視において、ミラー全面積に対する支持突出部524が占める面積の割合を1/100000〜1/100にする例を示したが、これに限定されない。すなわち、上記実施形態のように、直径寸法が3mm程度に形成されるミラーでは、支持突出部524の面積比が上記のように設定されることが好ましいが、例えばミラー面積がより大きい構成では、支持突出部524の面積が1/10000よりも小さくなる場合でも製造上の問題がない場合もある。また、この場合、1つの支持突出部524によりミラー全面積の接触を防止できない場合もあるが、例えばミラー内周側に複数の支持突出部524を設ける構成とすることで、ミラー56,57の接触を防止することができる。また、上記のようにミラー面積が大きく、エタロン5を透過する光として十分な光量を得ることができる場合では、支持突出部524の面積をより大きく形成してもよい。
【0059】
そして、支持突出部524および外周突出部525は、第二基板52の製造素材であるガラス基板をエッチングすることにより形成される例を示したが、これに限定されない。
例えば、第二基板52の第一基板51に対向する面に、支持突出部524や外周突出部525を別途固定して形成する構成としてもよい。この場合、支持突出部524や外周突出部525を例えば不透明部材により形成することもできる。
【0060】
また、外周突出部525を可動ミラー57の外周縁に沿うリング状に形成する構成を例示したが、これに限定されず、例えば、可動ミラー57の外周縁に沿って、円弧状の複数の外周突出部を設ける構成などとしてもよい。また、可動ミラー57の外周縁に沿って、略均等間隔で円柱状の外周突出部が設けられる構成としてもよい。
【0061】
さらに、支持突出部524が可動ミラー57の中心に設けられる構成としたが、例えば、中心から所定寸法離れた位置に設けられる構成としてもよい。この場合、ミラー中心点から所定の径寸法の仮想円上に、均等間隔で支持突出部524が設けられる構成や、ミラー内周側の所定の第一方向および第一方向に交差する第二方向に沿って均等間隔で複数の支持突出部524の設けられる構成などとすることで、ミラー全面において、ミラー56,57の貼り付きを防止することが可能となる。
【0062】
また、上記実施形態において、第一基板51および第二基板52を接合する接合工程では、第一基板51の接合面513および第二基板52の接合面523をそれぞれ活性化し、活性化した接合面513,523同士を重ね合わせて加圧接合させる、いわゆる常温活性化接合を実施したが、これに限定されない。例えば、接合面513,523の間に接合層を形成し、この接合層を介して第一基板51および第二基板52を接合する構成などとしてもよい。この場合、各基板51,52を接合層を介して重ね合わせた状態で加重を印加することで、接合が実施する。このような接合方法においても、加重を印加した際に、支持突出部524が形成されていることで、第二基板52の可動ミラー57が、第一基板51の固定ミラー56に接触することがなく、ミラー56,57同士の貼り付きによる破損を防止することができる。
【0063】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【符号の説明】
【0064】
1…測色モジュール、3…測色センサー、4…制御装置、5…波長可変干渉フィルターを構成するエタロン、6…波長可変干渉フィルターを構成する電圧制御手段、31…受光手段である受光素子、43…測色処理部、51…第一基板、52…第二基板、54…可変手段である静電アクチュエーター、56…固定ミラー、57…可動ミラー、524…支持突出部、525…外周突出部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光から所望の目的波長の光を選択して射出する波長可変干渉フィルター、この波長可変干渉フィルターを備えた測色センサー、およびこの測色センサーを備えた測色モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の基板の互いに対向する面に、それぞれ高反射ミラーを対向配置する波長可変干渉フィルターが知られている。このような波長可変干渉フィルターでは、一対のミラー間で光を反射させ、特定波長の光のみを透過させて、その他の波長の光を干渉により打ち消し合わせることで、入射光から特定波長の光のみを透過させる。
また、このような波長可変干渉フィルターを製造する場合には、一対の基板の互いに対向する面にそれぞれ、前記ミラーを形成した後、基板に圧力を加えて接合する(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の波長可変干渉フィルターは、固定基板と可動基板とを接合した波長可変干渉フィルターである。この波長可変干渉フィルターの固定基板には、可動基板に対向する面に2つの筒状の凹部が形成されている。このうち、第1の凹部は、第2の凹部の中央部に形成されており、底面にミラーである固定反射膜が形成され、第2の凹部の底面には導電層が形成されている。また、可動基板は導電性を有し、略中央に配置される可動部と、可動部を変位可能の保持する支持部と、可動部に通電を行う通電部とを備えている。また、可動部は、第1の凹部に対向し、固定基板に対向する面には、ミラーである可動反射膜が形成される構成が採られている。
そして、この特許文献1に記載の波長可変干渉フィルターは、固定基板の加工工程、SOI(Silicon on Insulator)基板の加工工程、固定基板とSOI基板の接合工程、および可動基板の加工工程を実施することで製造されている。すなわち、固定基板の加工工程において、固定基板に第1および第2の凹部、固定反射膜、および導電層を形成し、SOI基板の加工工程において、SOI基板に可動反射膜を形成する。そして、接合工程において、これらの固定基板およびSOI基板を、陽極接合により接合し、可動基板の加工工程において、SOI基板を加工して可動基板を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−23606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1では、可動基板として導電性のシリコンを用い、ガラス基板である固定基板とSOI基板から形成される可動基板とを陽極接合により接合している。可動基板として、導電性のシリコンを用いる場合では、上述のような陽極結合により強固な接合が得られるが、この陽極接合を行うためには、固定基板および可動基板のうち、いずれか一方が導電性を有する素材で形成される必要があり、その選択肢が限られる。または、非導電性の基材上に導電性の被膜を形成することで陽極接合が可能となるが、この場合、別途導電性の被膜を形成する必要があり製造が煩雑になるという問題がある。
【0006】
これに対して、例えばガラス基材同士を接合する接合方法としては、常温活性化接合などの接合方法がある。この常温活性化接合では、固定基板および可動基板の接合面を精密研磨などにより活性化させ、活性化された面同士を重ね合わせ、加圧することで基板同士を接合する接合方法である。しかしながら、このような接合時に基板に圧力を加える方法では、加圧時に基板が撓み、互いに対向配置されたミラー面同士が接触して貼りついてしまう場合がある。この場合、一対のミラーを平行に維持できなくなったり、損傷してしまったりするという問題があり、所望波長のみを透過させる波長可変干渉フィルターとして機能しなくなる。
【0007】
本発明は、上述のような問題に鑑み、基板同士を加圧して接合させた場合でも、基板間のミラーが損傷しない波長可変干渉フィルター、この波長可変干渉フィルターを備えた測色センサー、およびこの測色センサーを備えた測色モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の波長可変干渉フィルターは、透光性を有する第一基板と、前記第一基板の一面側に対向するとともに、前記第一基板に加圧接合される透光性の第二基板と、前記第一基板および第二基板の互いに対向する面にそれぞれ設けられ、互いに対向配置される一対のミラーと、前記一対のミラーの間の寸法を可変する可変手段と、前記第一基板および第二基板のうち、少なくともいずれか一方の基板の前記ミラーの内周側に設けられるとともに、他方の基板に向かって突出する支持突出部と、を具備したことを特徴とする。
【0009】
この発明では、波長可変干渉フィルターは、一対にミラーのうち少なくともいずれか一方の内周側に支持突出部が設けられている。このため、波長可変干渉フィルターの製造時に、第一基板および第二基板が重ね合わされ、厚み方向に加圧された際、圧力により基板が撓み、一対のミラーが互いに近接する方向に移動するが、ミラー同士が接触する前に支持突出部がミラーに接触することで、ミラー同士が接触して貼り付くことがなく、ミラーの損傷、すなわち一対のミラーが平行でなくなったり、ミラーが損傷したりする不都合を防止できる。
また、波長可変干渉フィルターは、可変手段によりミラー間のギャップを調整することで、分光させる光を可変させることが可能であるが、この時、可変手段にミラー間ギャップを小さくしすぎた場合でも、支持突出部が設けられているため、ミラー同士の接触を防止することができ、通常使用時におけるミラー接触によるミラーの損傷や、一対のミラーの平行関係が維持できなくなる不都合を防止することができる。
【0010】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記ミラーを厚み方向から見る平面視において、前記支持突出部が占める面積は、ミラーの全面積に対して、1/100000から1/100に形成されることが好ましい。
【0011】
この発明では、ミラー平面視において、支持突出部が占める面積はミラー全面積に対して1/100000から1/100の割合となるように形成されている。
ここで、ミラー全面積に対する支持突出部の占める面積が1/100000よりも小さくなる場合、支持突出部の形成が困難となる。また、支持突出部が小さすぎる場合、ミラー同士の接触防止範囲が狭くなり、貼り付き防止として十分に機能しないおそれがある。すなわち、支持突出部の周囲の僅かな範囲のみで、ミラー同士の貼り付きを防止することができるが、その他の範囲でのミラー同士の貼り付きを防止することができず、より多くの支持突出部を設ける必要が生じる。
さらに、ミラー全面積に対する支持突出部の占める面積が1/100よりも大きくなる場合、支持突出部により波長可変干渉フィルターを透過する光の透過量が減少し、分光された光の透過率が悪化するという問題がある。
これに対して、上記のように、ミラー全面積に対する支持突出部の占める面積を1/100000から1/100に設定することで、支持突出部の製造が容易となるとともに、ミラー間の接触を広範囲で防止することができ、かつ、波長可変干渉フィルターにより分光された光の透過量の減少を抑えることができる。
【0012】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記第一基板および第二基板のうち、少なくともいずれか一方の基板の前記ミラーの外周側で、ミラー外周縁の少なくとも一部に沿って設けられるとともに、他方の基板に向かって突出する外周突出部を備えることが好ましい。
【0013】
ここで、外周突出部が設けられる位置としては、一対のミラーの双方に対して設けられるものであってもよく、いずれか一方に設けられるものであってもよい。また、外周突出部の形状は、ミラー外周縁の全周に亘ってリング状の外周突出部が設けられる構成であってもよく、ミラー外周縁の一部に円弧状の外周突出部が設けられる構成であってもよく、ミラー外周縁に沿って所定間隔を開けて複数の外周突出部が設けられる構成としてもよい。
この発明では、上記発明の支持突出部の他に、ミラー外周部に外周突出部が設けられる。支持突出部のみでミラーの貼り付きを防止する場合、例えば第一および第二基板を接合する際の圧力が大きく、各基板の厚み寸法が小さい場合などでは、支持突出部近傍でのミラーの貼り付きを防止することができるが、支持突出部からの距離が遠い位置のミラー外周部近傍では、基板の撓みなどによりミラー同士が接触するおそれがある。また、支持突出部をミラー内に複数設置することで、ミラー貼り付きを防止することも可能であるが、この場合、支持突出部により波長可変干渉フィルターにより分光されて透過する光の光量が減少してしまう。
これに対して、本発明のように、ミラー外周縁に沿って外周突出部を設けることで、上記のように、基板接合時の圧力が大きく、ミラーが大きく撓む場合であっても、支持突出部によりミラー内周側、特にミラー中心部分の貼り付きを防止することができ、外周突出部によりミラーの外周縁近傍の貼り付きを防止することができる。
【0014】
本発明の測色センサーは、上述した波長可変干渉フィルターと、前記波長可変干渉フィルターを透過した検査対象光を受光する受光手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
この発明では、上述した発明と同様に、波長可変干渉フィルターの製造における基板接合時に、支持突出部によりミラーの貼り付きが防止される。また、可変手段により、波長可変干渉フィルターのミラー間のギャップを小さくした場合においてもミラー同士が接触しない。このため、波長可変干渉フィルターにおけるミラー貼り付きに起因する透過率の悪化や分解能の低下が防止される。
このような波長可変干渉フィルターから射出される射出光を受光手段により受光することで、測色センサーは、検査対象光に含まれる所望波長の光成分の正確な光量を測定することができる。
【0016】
本発明の測色モジュールは、上述した測色センサーと、前記測色センサーの前記受光手段により受光された光に基づいて、測色処理を実施する測色処理部と、を具備したことを特徴とすることを特徴とする。
【0017】
この発明では、上述した発明と同様に、波長可変干渉フィルターの一対のミラー間の貼り付きが防止されるため、ミラー貼り付きによる波長可変干渉フィルターを透過する光の透過率や分解能の悪化がなく、測色センサーの受光手段において、検査対象光に含まれる所望波長光の光量を正確に検出することができる。したがって、処理手段においても、検査対象光に含まれる所望波長の光の正確な光量に基づいて、検査対象光の各色成分の強度を精度よく分析できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る一実施形態の測色モジュールの概略構成を示す図である。
【図2】前記実施形態の波長可変干渉フィルターを構成するエタロンの概略構成を示す平面図である。
【図3】図2においてエタロンをIII-III線で断面した際の断面図である。
【図4】前記実施形態の可動部の可動面近傍を拡大した拡大平面図である。
【図5】前記実施形態のエタロンの製造における第一基板の製造構成を示す図であり、(A)は、第一基板51にミラー固定面512A形成用のレジストを形成するレジスト形成工程の概略図、(B)は、ミラー固定面512Aを形成する第一溝形成工程の概略図、(C)は、電極固定面511Aを形成する第二溝形成工程の概略図、(D)は、AgC層を形成するAgC形成工程の概略図、(E)は、AgC除去工程を示す概略図である。
【図6】第二基板の製造工程の概略を示す図であり、(A)は、第二基板に支持突出部および外周突出部形成用のレジストを形成する第二レジスト形成工程の概略図、(B)は、支持突出部および外周突出部を形成する突出部形成工程の概略図、(C)は、AgC層を形成する第二AgC形成工程の概略図、(D)は、第二AgC除去工程を示す概略図である。
【図7】エタロンの製造工程を示す図であり、(A)は、接合工程を示す概略図、(B)は、接合工程において、加重が加えられた際の可動部近傍を示す概略図、(C)は、ダイヤフラム形成工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る一実施形態の測色モジュールについて、図面を参照して説明する。
〔1.測色モジュールの全体構成〕
図1は、本発明に係る第一実施形態の測色モジュールの概略構成を示す図である。
この測色モジュール1は、図1に示すように、被検査対象Aに光を射出する光源装置2と、本発明の測色センサー3と、測色モジュール1の全体動作を制御する制御装置4とを備えている。そして、この測色モジュール1は、光源装置2から射出される光を被検査対象Aにて反射させ、反射された検査対象光を測色センサーにて受光し、測色センサー3から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度、すなわち被検査対象Aの色を分析して測定するモジュールである。
【0020】
〔2.光源装置の構成〕
光源装置2は、光源21、複数のレンズ22(図1には1つのみ記載)を備え、被検査対象Aに対して白色光を射出する。また、複数のレンズ22には、コリメーターレンズが含まれており、光源装置2は、光源21から射出された白色光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから被検査対象Aに向かって射出する。
【0021】
〔3.測色センサーの構成〕
測色センサー3は、図1に示すように、本発明の波長可変干渉フィルターを構成するエタロン5と、エタロン5を透過する光を受光する受光手段としての受光素子31と、エタロン5で透過させる光の波長を可変する電圧制御手段6と、を備えている。また、測色センサー3は、エタロン5に対向する位置に、被検査対象Aで反射された反射光(検査対象光)を、内部に導光する図示しない入射光学レンズを備えている。そして、この測色センサー3は、エタロン5により、入射光学レンズから入射した検査対象光のうち、所定波長の光のみを分光し、分光した光を受光素子31にて受光する。
受光素子31は、複数の光電交換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、受光素子31は、制御装置4に接続されており、生成した電気信号を受光信号として制御装置4に出力する。
【0022】
(3−1.エタロンの構成)
図2は、本発明の波長可変干渉フィルターを構成するエタロン5の概略構成を示す平面図であり、図3は、エタロン5の概略構成を示す断面図である。なお、図1では、エタロン5に検査対象光が図中下側から入射しているが、図3では、検査対象光が図中上側から入射するものとする。
エタロン5は、図2に示すように、平面正方形状の板状の光学部材であり、一辺が例えば10mmに形成されている。このエタロン5は、図3に示すように、第一基板51、および第二基板52を備えている。これらの2枚の基板51,52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などにより形成されている。これらの中でも、各基板51,52の構成材料としては、例えばナトリウム(Na)やカリウム(K)などのアルカリ金属を含有したガラスが好ましく、このようなガラスにより各基板51,52を形成することで、後述するミラー56,57や、各電極の密着性や、基板同士の接合強度を向上させることが可能となる。そして、これらの2つの基板51,52は、外周部近傍に形成される接合面513,523が、例えば常温活性化接合など、加圧接合されることで、一体的に構成されている。
【0023】
また、第一基板51と、第二基板52との間には、本発明の一対のミラーを構成する固定ミラー56および可動ミラー57が設けられる。ここで、固定ミラー56は、第一基板51の第二基板52に対向する面に固定され、可動ミラー57は、第二基板52の第一基板51に対向する面に固定されている。また、これらの固定ミラー56および可動ミラー57は、ミラー間ギャップGを介して対向配置されている。
さらに、第一基板51と第二基板52との間には、固定ミラー56および可動ミラー57の間のミラー間ギャップGの寸法を調整するための静電アクチュエーター54が設けられている。
【0024】
(3−1−1.第一基板の構成)
第一基板51は、厚みが例えば500μmに形成されるガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。具体的には、図3に示すように、第一基板51には、エッチングにより電極形成溝511およびミラー固定部512が形成される。
電極形成溝511は、図2に示すようなエタロン5を厚み方向から見た平面視(以降、エタロン平面視と称す)において、平面中心点を中心とした円形に形成されている。ミラー固定部512は、前記平面視において、電極形成溝511の中心部から第二基板52側に突出して形成される。
【0025】
電極形成溝511は、ミラー固定部512の外周縁から、当該電極形成溝511の内周壁面までの間に、リング状の電極固定面511Aが形成され、この電極固定面511Aに第一変位用電極541が形成される。また、第一変位用電極541の外周縁の一部からは、図2に示すようなエタロン平面視において、エタロン5の右下方向および左上方向に向かって、第一変位用電極引出部541Aがそれぞれ延出して形成されている。さらに、これらの第一変位用電極引出部541Aの先端には、それぞれ第一変位用電極パッド541Bが形成され、これらの第一変位用電極パッド541Bが電圧制御手段6に接続される。
ここで、静電アクチュエーター54を駆動させる際には、電圧制御手段6により、一対の第一変位用電極パッド541Bのうちのいずれか一方にのみに電圧が印加される。そして、他方の第一変位用電極パッド541Bは、第一変位用電極541の電荷保持量を検出するための検出端子として用いられる。
【0026】
また、電極固定面511Aには、複数の接触防止ピン511Bが、第二基板52に向かって突出形成されている。具体的には、これらの接触防止ピン511Bは、エタロン平面視において、円筒状のミラー固定部512の径方向に伸び、互いに45度間隔となる複数の仮想放射線511C上に沿って、均等間隔で形成されている。
【0027】
ミラー固定部512は、上述したように、電極形成溝511と同軸上で、電極形成溝511よりも小さい径寸法となる円柱状に形成されている。なお、本実施形態では、図3に示すように、ミラー固定部512の第二基板52に対向するミラー固定面512Aが、電極固定面511Aよりも第二基板52に近接して形成される例を示すが、これに限らない。電極固定面511Aおよびミラー固定面512Aの高さ位置は、ミラー固定面512Aに固定される固定ミラー56、および第二基板52に形成される可動ミラー57の間のミラー間ギャップGの寸法、第一変位用電極541および第二基板52に形成される後述の第二変位用電極542の間の寸法、固定ミラー56や可動ミラー57の厚み寸法により適宜設定されるものであり、上記のような構成に限られない。例えばミラー56,57として、誘電体多層膜ミラーを用い、その厚み寸法が増大する場合、電極固定面511Aとミラー固定面512Aとが同一面に形成される構成や、電極固定面511Aの中心部に、円柱凹溝上のミラー固定溝が形成され、このミラー固定溝の底面にミラー固定面512Aが形成される構成などとしてもよい。
【0028】
また、ミラー固定部512のミラー固定面512Aは、エタロン5を透過させる波長域をも考慮して、溝深さが設計されることが好ましい。例えば、本実施形態では、固定ミラー56および可動ミラー57の間のミラー間ギャップGの初期値(第一変位用電極541および第二変位用電極542間に電圧が印加されていない状態のミラー間ギャップGの寸法)が450nmに設定され、第一変位用電極541および第二変位用電極542間に電圧を印加することにより、ミラー間ギャップGが例えば250nmになるまで可動ミラー57を変位させることが可能となっており、これにより、第一変位用電極541および第二変位用電極542間の電圧を可変することで、可視光全域の波長の光を選択的に分光させて透過させることが可能となる。この場合、固定ミラー56および可動ミラー57の膜厚およびミラー固定面512Aや電極固定面511Aの高さ寸法は、ミラー間ギャップGを250nm〜450nmの間で変位可能な値に設定されていればよい。
【0029】
そして、ミラー固定面512Aには、直径が約3mmの円形状に形成される固定ミラー56が固定されている。この固定ミラー56は、AgC単層により形成されるミラーであり、スパッタリングなどの手法によりミラー固定面512Aに形成される。
なお、本実施形態では、固定ミラー56として、エタロン5で分光可能な波長域として可視光全域をカバーできるAgC単層のミラーを用いる例を示すが、これに限定されず、例えば、エタロン5で分光可能な波長域が狭いが、AgC単層ミラーよりも、分光された光の透過率が大きく、透過率の半値幅も狭く分解能が良好な、例えばTiO2−SiO2系誘電体多層膜ミラーを用いる構成としてもよい。ただし、この場合、上述したように、第一基板51のミラー固定面512Aや電極固定面511Aの高さ位置を、固定ミラー56や可動ミラー57、分光させる光の波長選択域などにより、適宜設定する必要がある。
【0030】
さらに、第一基板51は、第二基板52に対向する上面とは反対側の下面において、固定ミラー56に対応する位置に図示略の反射防止膜(AR)が形成されている。この反射防止膜は、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成され、第一基板51の表面での可視光の反射率を低下させ、透過率を増大させる。
【0031】
(3−1−2.第二基板の構成)
第二基板52は、厚みが例えば200μmに形成されるガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。
具体的には、第二基板52には、図2に示すような平面視において、基板中心点を中心とした円形の可動部521と、可動部521と同軸であり可動部521を保持する連結保持部522と、を備えている。
【0032】
図4は、可動部521の可動面521Aを拡大した平面図である。
可動部521は、連結保持部522よりも厚み寸法が大きく形成され、例えば、本実施形態では、第二基板52の厚み寸法と同一寸法である200μmに形成されている。また、可動部521は、ミラー固定部512に平行な可動面521Aを備え、この可動面521Aに可動ミラー57が固定されている。ここで、この可動ミラー57と、上記した固定ミラー56とにより、本発明の一対のミラーが構成される。また、本実施形態では、可動ミラー57と固定ミラー56との間のミラー間ギャップGは、初期状態において、450nmに設定されている。
ここで、この可動ミラー57は、上述した固定ミラー56と同一の構成のミラーが用いられ、本実施形態では、AgC単層ミラーが用いられる。また、AgC単層ミラーの膜厚寸法は、例えば0.03μmに形成されている。
【0033】
また、可動面521Aには、エタロン平面視における可動面521Aの中心位置に、第一基板51側に突出する支持突出部524が設けられており、可動ミラー57は、この支持突出部524の外側に形成されている。この支持突出部524は、例えば、第二基板52と同様の素材であるガラスにより形成されている。また、この支持突出部524は、円柱状に形成され、断面円の径寸法が例えば30μmに形成される。また、支持突出部524は、可動面521Aから支持突出部524の突出先端までの突出寸法が例えば0.15μmに形成され、可動ミラー57のミラー面よりも第一基板51側に突出形成されている。このような支持突出部524は、断面径寸法が突出寸法よりも十分に大きく形成されているため、外部から力が加わった場合でも折れるなど破損することがない。
【0034】
そして、この支持突出部524は、可動部521が第一基板51側に移動された際に、可動ミラー57と、第一基板51に形成される固定ミラー56との接触による貼り付きを防止する。
より詳細に説明すると、エタロン5の製造では、第一基板51および第二基板52を、常温活性化接合などの接合方法により接合させる接合工程を実施する必要がある。この時、第一基板51および第二基板52には、接合面513,523に直交する方向に加重が印加され、その圧力により接合面513,523同士が接合する。ここで、エタロン5におけるミラー間ギャップGは、上述したように、例えば450nmに形成されるものであり、微小隙間空間となっている。このため、接合時の加重により可動部521が移動すると、固定ミラー56と可動ミラー57とが接触し、貼り付いてしまうおそれがあり、この場合、ミラー56,57が離れたとしても、互いの平行関係が崩れ、所望波長の光のみを分光させて透過させるエタロン5として機能しなくなる。これに対して、支持突出部524が設けられる構成では、可動部521をミラー間ギャップGの距離以上、第一基板51側に移動させるような圧力が加わった場合でも、ミラー56,57が接触する前に、支持突出部524の突出先端面が固定ミラー56に当接し、可動部521の移動を規制する。これにより、ミラー56,57同士が接触することがなく、貼り付きを防止することができる。
また、エタロン5は、静電アクチュエーター54に所定の電圧を印加することで、可動部521を基板厚み方向に沿って移動させてミラー間ギャップGを調整し、検査対象光から分光させる光を選択することが可能となる。この時、静電アクチュエーター54に印加する電圧が所定閾値以上となった場合、可動部521の移動量がミラー間ギャップGの初期値(例えば450nm)を超えてしまう。この場合でも、支持突出部524が設けられることで、固定ミラー56および可動ミラー57の接触による貼り付きを防止することができ、エタロン5の誤操作などによるエタロン5の破損を防止することも可能となる。
【0035】
なお、本実施形態では、支持突出部524の一例として、上記した寸法を例示するが、これに限定されない。すなわち、支持突出部524は、エタロン平面視において、ミラー全面積に対する断面積の占める割合が1/100000〜1/100程度に形成されていればよい。ここで、ミラー全面積に対する支持突出部524の断面積の割合が1/100000より小さくなる場合、可動面521A上に支持突出部524を形成することが困難となる。つまり、本実施の形態のように、第二基板52と同素材により形成される支持突出部524では、第二基板52をドライエッチングすることで、可動面521Aおよび支持突出部524を形成する。この時、支持突出部524の断面積が上述のように小さすぎる場合、より精密なエッチング精度が要求され、支持突出部524の製造が困難となる。
また、エタロン5の製造では、上記したように、第一基板51および第二基板52に加重を印加することで、これらの第一基板51および第二基板52を接合させ、支持突出部524により、可動部521の移動を規制してミラー56,57同士の接触を防止する。この時、支持突出部524の断面積がミラー全面積に対して1/100000より小さくなると、1つの支持突出部524でミラー全面の貼り付きを防止することが困難となる。例えば、ミラー中心部に支持突出部524が形成される場合、ミラー中心近傍の一部のみのミラー貼り付きを防止することが可能であるが、その範囲外のミラー貼り付きを防止することができない。
一方、支持突出部524の断面積が、ミラー全面積に対して1/100より大きくなる場合、エタロン5に入射する光が、この支持突出部524に阻害され、入射光の光量が減少してしまうという問題があり、入射光における所定波長の光成分の光量を正確に測定することが困難となる。
これに対して、上記のように、エタロン平面視において、ミラー全面積に対する断面積の占める割合が1/100000〜1/100となる支持突出部524では、ドライエッチングなどの各種製造方法により容易に形成することが可能であり、ミラー56,57の全面において、接触を防止することができ、かつ、エタロン5を透過する光の透過量の減少も抑えられる。
【0036】
また、可動面521Aには、エタロン平面視において略リング形状であり、可動面521Aから第一基板51側に突出する外周突出部525が形成されている。この外周突出部525は、図2〜図4に示すように、可動ミラー57の外周側で、可動ミラー57の外周縁に沿って形成される。また、外周突出部525は、エタロン平面視におけるリング幅寸法が例えば30μmに形成され、可動面521Aからの突出寸法が例えば0.15μmに形成され、可動ミラー57のミラー面よりも第一基板51側に突出して形成されている。
この外周突出部525は、可動ミラー57の内周側に設けられる支持突出部524と同様に、可動部521が第一基板51側に移動した際のミラー56,57同士の貼り付きを防止する。
【0037】
さらに、可動部521は、可動面521Aとは反対側の上面において、可動ミラー57に対応する位置に図示略の反射防止膜(AR)が形成されている。この反射防止膜は、第一基板51に形成される反射防止膜と同様の構成を有し、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成される。
【0038】
連結保持部522は、可動部521の周囲を囲うダイヤフラムであり、例えば厚み寸法が50μmに形成されている。この連結保持部522の第一基板51に対向する面には、第一変位用電極541と、約1μmの電磁ギャップを介して対向する、リング状の第二変位用電極542が形成されている。ここで、この第二変位用電極542および前述した第一変位用電極541により、本発明の可変手段である静電アクチュエーター54が構成される。
また、第二変位用電極542の外周縁の一部からは、一対の第二変位用電極引出部542Aが外周方向に向かって形成され、これらの第二変位用電極引出部542Aの先端には第二変位用電極パッド542Bが形成されている。より具体的には、第二変位用電極引出部542Aは、図2に示すように、エタロン平面視において、エタロン5の左下方向および右上方向に向かって延出し、第二基板52の平面中心に対して点対称に形成されている。
また、第二変位用電極パッド542Bも、第一変位用電極パッド541Bと同様に、電圧制御手段6に接続され、静電アクチュエーター54の駆動時には、一対の第二変位用電極パッド542Bのうちのいずれか一方にのみに電圧が印加される。そして、他方の第二変位用電極パッド542Bは、第二変位用電極542の電荷保持量を検出するための検出端子として用いられる。
【0039】
(3−2.電圧制御手段の構成)
電圧制御手段6は、上記エタロン5とともに、本発明の波長可変干渉フィルターを構成する。この電圧制御手段6は、制御装置4からの入力される制御信号に基づいて、静電アクチュエーター54の第一変位用電極541および第二変位用電極542に印加する電圧を制御する。
【0040】
〔4.制御装置の構成〕
制御装置4は、測色モジュール1の全体動作を制御する。
この制御装置4としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、制御装置4は、図1に示すように、光源制御部41、測色センサー制御部42、および測色処理部43などを備えて構成されている。
光源制御部41は、光源装置2に接続されている。そして、光源制御部41は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置2に所定の制御信号を出力し、光源装置2から所定の明るさの白色光を射出させる。
測色センサー制御部42は、測色センサー3に接続されている。そして、測色センサー制御部42は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー3にて受光させる光の波長を設定し、この波長の光の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー3に出力する。これにより、測色センサー3の電圧制御手段6は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長のみを透過させるよう、静電アクチュエーター54への印加電圧を設定する。
【0041】
〔5.エタロンの製造方法〕
次に、上記エタロン5の製造方法について、図面に基づいて説明する。
(5−1.第一基板の製造)
図5は、エタロン5の第一基板の製造工程を示す図であり、(A)は、第一基板51にミラー固定面512A形成用のレジストを形成するレジスト形成工程の概略図、(B)は、ミラー固定面512Aを形成する第一溝形成工程の概略図、(C)は、電極固定面511Aを形成する第二溝形成工程の概略図、(D)は、AgC層を形成するAgC形成工程の概略図、(E)は、AgC除去工程を示す概略図である。
【0042】
第一基板51を製造するためには、まず、図5(A)に示すように、第一基板51の製造素材であるガラス基板にレジスト61を形成し(レジスト形成工程)、図5(B)に示すように、ミラー固定面512Aを含む第一溝62を形成する(第一溝形成工程)。
具体的には、レジスト形成工程では、接合面513にレジスト61を形成する。そして、第一溝形成工程では、レジスト61が形成されない接合面513以外の部分を異方性エッチングし、ミラー固定面512Aを含む第一溝62を形成する。
【0043】
また、第一溝62の形成後、この第一溝62のミラー固定面512A、および接触防止ピン511Bの形成位置にレジスト61を形成し、さらに異方性エッチングを実施する(第二溝形成工程)。これにより、接触防止ピン511Bを有する電極形成溝511、およびミラー固定部512が形成される。
【0044】
この後、図5(D)に示すように、第一基板51のレジスト61を除去し、第二基板52に対向する面にAgC薄膜63を例えば厚み寸法が30nmとなるように形成する(AgC形成工程)。また、AgC形成工程では、形成されたAgC膜63上の、固定ミラー56の形成部分、および第一変位用電極541の形成部分にそれぞれレジスト61を形成する。
そして、レジスト61が設けられていない部分のAgC薄膜63を除去することで、図5(E)に示すように、固定ミラー56、および第一変位用電極541が形成される(AgC除去工程)。
以上により、第一基板51が形成される。
【0045】
(5−2.第二基板の製造)
次に、第二基板52の製造方法について説明する。
図6は、第二基板の製造工程の概略を示す図であり、(A)は、第二基板52に支持突出部524および外周突出部525形成用のレジストを形成する第二レジスト形成工程の概略図、(B)は、支持突出部524および外周突出部525を形成する突出部形成工程の概略図、(C)は、AgC層を形成する第二AgC形成工程の概略図、(D)は、第二AgC除去工程を示す概略図である。
【0046】
第二基板52の製造では、まず、図6(A)に示すように、第二基板52の製造素材であるガラス基板の接合面523の形成位置、支持突出部524の形成位置、外周突出部525の形成位置に、それぞれレジスト61を形成する(第二レジスト形成工程)。
この後、レジスト61が設けられていない部分を異方性エッチングすることで、図6(B)に示すように、可動面521A、支持突出部524、および外周突出部525を形成する。
【0047】
この後、図6(C)に示すように、第二基板52のレジスト61を除去し、第一基板51に対向する面にAgC薄膜63を例えば厚み寸法が30nmとなるように形成する(第二AgC形成工程)。また、この第二AgC形成工程では、形成されたAgC膜63上の、可動ミラー57の形成部分、および第二変位用電極542の形成部分にそれぞれレジスト61を形成する。
そして、レジスト61が設けられていない部分をエッチングすることで、図6(D)に示すように、AgC薄膜63を除去する(第二AgC除去工程)。これにより、第二基板52が形成される。
【0048】
(5−3.エタロンの製造)
次に、上述のように製造された第一基板51および第二基板52を用いたエタロン5の製造について説明する。
図7は、エタロン5の製造工程を示す図であり、(A)は、接合工程を示す概略図、(B)は、接合工程において、加重が加えられた際の可動部521近傍を示す概略図、(C)は、ダイヤフラム形成工程を示す概略図である。
【0049】
エタロン5の製造では、まず、図7(A)に示すように、第一基板51および第二基板52を接合する接合工程を実施する。
この接合工程では、例えば常温活性化接合を用いる。すなわち、接合工程では、各基板51,52を真空チャンバーに入れ、真空状態下で、イオンビームの照射やプラズマ処理を実施することで、接合面513,523を活性化させる。そして、活性化された接合面513、523同士を重ね合わせて、第一基板51および第二基板52の厚み方向に対して加重を印加することで、第一基板51および第二基板52を接合する。ここで、第一基板51および第二基板52に加重を印加する際、厚み寸法が小さい第二基板52が加重により撓み、可動部521が第一基板51側に変位する場合がある。上述したように、エタロン5におけるミラー間ギャップGは、初期値が例えば450nmに形成され、その距離が極めて小さいため、支持突出部524が形成されていない場合、撓み量が最大となるミラー中心部において、可動ミラー57と固定ミラー56とが近接し、接触してしまう場合がある。
これに対して、本実施形態では、第二基板52には、支持突出部524および外周突出部525が設けられているため、図7(B)に示すように、可動ミラー57が固定ミラー56に接触する前に支持突出部524が固定ミラー56に接触することで、ミラー中心部のミラー56,57同士の接触を防止でき、外周突出部525がミラー固定面512Aに接触することで、ミラー外周部でのミラー56,57同士の接触を防止できる。
この後、図7(C)に示すように、第二基板52に連結保持部522を形成するための溝をエッチングにより形成する(ダイヤフラム形成工程)。以上により、エタロン5が製造される。
【0050】
なお、接合工程の後にダイヤフラム形成工程を実施する製造方法を例示したが、これに限定されず、例えば第二基板52の製造時に、ダイヤフラム形成工程を実施してもよい。すなわち、支持突出部524が形成されない場合で、第二基板52の製造時にダイヤフラム形成工程を実施すると、接合工程において、可動部521が大きく撓んでしまい、ミラー56,57同士が僅かな加重により接触してしまうという問題がある。しかしながら、本実施形態のように、支持突出部524が形成される構成では、この支持突出部524によりミラー56,57同士の接触を確実に防止することができる。したがって、第二基板52の製造時に、ダイヤフラム形成工程を実施してもよい。
【0051】
〔6.第一実施形態の作用効果〕
上述したように、上記第一実施形態のエタロン5では、第二基板52は、可動面521Aに、可動ミラー57の内周側に第一基板51側に突出する支持突出部524を備えている。
このため、エタロン5の製造時の接合工程において、第一基板51および第二基板52に加重を印加して接合面513,523を接合する場合に、第二基板52の可動ミラー57の形成部分が加重により第一基板51側に撓んだとしても、支持突出部524が固定ミラー56に当接し、第二基板52の撓みを規制する。これにより、可動ミラー57が固定ミラー56に接触せず、ミラー56,57同士の貼り付きが防止され、エタロン5の製造効率を向上させることができる。
また、静電アクチュエーター54に電圧を印加して可動部521を第一基板51側に変位させる場合や、例えばエタロン5を測色センサー3に組み付ける場合に外部から加重が加わった場合において、可動部521が第一基板51側に大きく撓んだとしても、ミラー56,57同士の接触を防止でき、貼り付きが防止される。したがって、ミラー56,57同士の接触による破損やエタロン5の性能低下を防止することができる。
【0052】
また、エタロン平面視において、ミラー全面積に対する支持突出部524の断面積の割合が1/100000〜1/100に形成されている。
上述したように、ミラー全面積に対する支持突出部524の割合が1/100000より小さくなる場合では、支持突出部524の製造が困難となり、支持突出部524によりミラー56,57の接触を防止できる面積が小さくなる。また、ミラー全面積に対する支持突出部524の割合が1/100より大きくなる場合では、エタロン5の透過光の光量が減少してしまい、これに伴って、測色センサー3により受光される透過光の受光量、および測色モジュール1の測色精度も低下してしまう。これに対して、支持突出部524の断面積の割合が、上記のように1/100000〜1/100となるように形成することで、上記のような問題を回避できる。すなわち、製造時において、第二基板52のエッチングにより容易に支持突出部524を製造することができ、1つの支持突出部524により、ミラー全面の貼り付きを防止することができる。また、支持突出部524によるエタロン5の透過光減少を、測色処理に影響を与えない程度に抑えることができる。
【0053】
また、第二基板52は、可動ミラー57の外周側で、可動ミラー57の外周縁に沿って形成される外周突出部525を備えている。
このように、支持突出部524に加えて、外周突出部525を設けることでミラー56,57同士の接触をより確実に防止することができる。特に、本実施形態のようにミラー中心部に支持突出部524が設けられる場合、この支持突出部524は、第二基板52が撓んだ際に、撓み量が最も大きくなるミラー中心部近傍において、ミラー56,57同士の接触を防止することができる。一方、例えばエタロン5を測色センサーに設置する場合などにおいて、可動部521の外周部の一部に加重が加わった場合、可動ミラー57の外周縁近傍が最も大きく第一基板51側に撓むことも考えられる。このような場合でも、本実施形態では、外周突出部525がミラー固定面512Aに接触することで、ミラー56,57同士の接触を防止することができる。
また、外周突出部525は、可動ミラー57の外周側に形成されるため、エタロン5を透過する光の光量に影響を与えず、測色処理の精度低下がない。
【0054】
また、エタロン5は、電極固定面511Aから第二基板52側に突出する複数の接触防止ピン511Bを備えている。
このため、エタロン5の製造時の接合工程において、上述した支持突出部524、外周突出部525に加えて、これらの接触防止ピン511Bにより、第二基板52の撓みを防止でき、より確実にミラー56,57同士の接触による損傷を防止することができる。
【0055】
〔他の実施の形態〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0056】
例えば、上記実施形態において、第二基板52の可動面521Aに支持突出部524が形成される例を示したが、これに限定されず、例えば第一基板51のミラー固定面512Aに第二基板52側に突出する支持突出部を設ける構成としてもよい。さらには、可動面521Aおよびミラー固定面512Aの双方に支持突出部が設けられる構成としてもよい。
【0057】
また、外周突出部525も同様に、第一基板51のミラー固定面512Aに形成される構成としてもよく、ミラー固定面512Aおよび可動面521Aの双方に設けられる構成としてもよい。
【0058】
さらに、エタロン平面視において、ミラー全面積に対する支持突出部524が占める面積の割合を1/100000〜1/100にする例を示したが、これに限定されない。すなわち、上記実施形態のように、直径寸法が3mm程度に形成されるミラーでは、支持突出部524の面積比が上記のように設定されることが好ましいが、例えばミラー面積がより大きい構成では、支持突出部524の面積が1/10000よりも小さくなる場合でも製造上の問題がない場合もある。また、この場合、1つの支持突出部524によりミラー全面積の接触を防止できない場合もあるが、例えばミラー内周側に複数の支持突出部524を設ける構成とすることで、ミラー56,57の接触を防止することができる。また、上記のようにミラー面積が大きく、エタロン5を透過する光として十分な光量を得ることができる場合では、支持突出部524の面積をより大きく形成してもよい。
【0059】
そして、支持突出部524および外周突出部525は、第二基板52の製造素材であるガラス基板をエッチングすることにより形成される例を示したが、これに限定されない。
例えば、第二基板52の第一基板51に対向する面に、支持突出部524や外周突出部525を別途固定して形成する構成としてもよい。この場合、支持突出部524や外周突出部525を例えば不透明部材により形成することもできる。
【0060】
また、外周突出部525を可動ミラー57の外周縁に沿うリング状に形成する構成を例示したが、これに限定されず、例えば、可動ミラー57の外周縁に沿って、円弧状の複数の外周突出部を設ける構成などとしてもよい。また、可動ミラー57の外周縁に沿って、略均等間隔で円柱状の外周突出部が設けられる構成としてもよい。
【0061】
さらに、支持突出部524が可動ミラー57の中心に設けられる構成としたが、例えば、中心から所定寸法離れた位置に設けられる構成としてもよい。この場合、ミラー中心点から所定の径寸法の仮想円上に、均等間隔で支持突出部524が設けられる構成や、ミラー内周側の所定の第一方向および第一方向に交差する第二方向に沿って均等間隔で複数の支持突出部524の設けられる構成などとすることで、ミラー全面において、ミラー56,57の貼り付きを防止することが可能となる。
【0062】
また、上記実施形態において、第一基板51および第二基板52を接合する接合工程では、第一基板51の接合面513および第二基板52の接合面523をそれぞれ活性化し、活性化した接合面513,523同士を重ね合わせて加圧接合させる、いわゆる常温活性化接合を実施したが、これに限定されない。例えば、接合面513,523の間に接合層を形成し、この接合層を介して第一基板51および第二基板52を接合する構成などとしてもよい。この場合、各基板51,52を接合層を介して重ね合わせた状態で加重を印加することで、接合が実施する。このような接合方法においても、加重を印加した際に、支持突出部524が形成されていることで、第二基板52の可動ミラー57が、第一基板51の固定ミラー56に接触することがなく、ミラー56,57同士の貼り付きによる破損を防止することができる。
【0063】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【符号の説明】
【0064】
1…測色モジュール、3…測色センサー、4…制御装置、5…波長可変干渉フィルターを構成するエタロン、6…波長可変干渉フィルターを構成する電圧制御手段、31…受光手段である受光素子、43…測色処理部、51…第一基板、52…第二基板、54…可変手段である静電アクチュエーター、56…固定ミラー、57…可動ミラー、524…支持突出部、525…外周突出部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する第一基板と、
前記第一基板の一面側に対向して接合される透光性の第二基板と、
前記第一基板および第二基板の互いに対向する面にそれぞれ設けられ、互いに対向配置される一対のミラーと、
前記一対のミラーの間の寸法を可変する可変手段と、
前記第一基板および第二基板のうち、少なくともいずれか一方の基板の前記ミラーの内周側に設けられるとともに、他方の基板に向かって突出する支持突出部と、
を具備したことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項2】
請求項1に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記ミラーを厚み方向から見る平面視において、前記支持突出部が占める面積は、ミラーの全面積に対して、1/100000から1/100に形成される
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第一基板および第二基板のうち、少なくともいずれか一方の基板の前記ミラーの外周側で、ミラー外周縁の少なくとも一部に沿って設けられるとともに、他方の基板に向かって突出する外周突出部を備えた
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の波長可変干渉フィルターと、
前記波長可変干渉フィルターを透過した検査対象光を受光する受光手段と、
を備えることを特徴とする測色センサー。
【請求項5】
請求項4に記載の測色センサーと、
前記測色センサーの前記受光手段により受光された光に基づいて、測色処理を実施する測色処理部と、
を具備したことを特徴とする測色モジュール。
【請求項1】
透光性を有する第一基板と、
前記第一基板の一面側に対向して接合される透光性の第二基板と、
前記第一基板および第二基板の互いに対向する面にそれぞれ設けられ、互いに対向配置される一対のミラーと、
前記一対のミラーの間の寸法を可変する可変手段と、
前記第一基板および第二基板のうち、少なくともいずれか一方の基板の前記ミラーの内周側に設けられるとともに、他方の基板に向かって突出する支持突出部と、
を具備したことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項2】
請求項1に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記ミラーを厚み方向から見る平面視において、前記支持突出部が占める面積は、ミラーの全面積に対して、1/100000から1/100に形成される
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第一基板および第二基板のうち、少なくともいずれか一方の基板の前記ミラーの外周側で、ミラー外周縁の少なくとも一部に沿って設けられるとともに、他方の基板に向かって突出する外周突出部を備えた
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の波長可変干渉フィルターと、
前記波長可変干渉フィルターを透過した検査対象光を受光する受光手段と、
を備えることを特徴とする測色センサー。
【請求項5】
請求項4に記載の測色センサーと、
前記測色センサーの前記受光手段により受光された光に基づいて、測色処理を実施する測色処理部と、
を具備したことを特徴とする測色モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2011−81055(P2011−81055A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231219(P2009−231219)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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