説明

洗浄剤及びそれを用いた半導体デバイスの洗浄方法

【課題】特に表面に銅配線が施された半導体デバイスの表面に存在する有機物汚染やパーティクル汚染を銅配線の腐蝕を引き起こすことなく効果的に除去しうる洗浄剤及びそれを用いた洗浄方法を提供する。
【解決手段】半導体デバイス製造工程において、表面に銅配線を有する半導体デバイスの化学的機械的研磨工程の後に用いられる洗浄剤であって、下記一般式(I)〜一般式(IV)から選ばれる少なくとも1種のアミノポリカルボン酸を含有することを特徴とする洗浄剤、及びこれを用いた洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの製造工程における化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing:以後「CMP」と呼ぶ)による平坦化工程後の半導体デバイスの洗浄に使用される洗浄剤及びそれを用いた半導体デバイスの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロプロセッサー、メモリー、CCDなどの半導体デバイスや、TFT液晶などのフラットパネルディスプレイデバイスの製造工程では、シリコンや酸化シリコン(SiO)、ガラス等の基板表面に10〜100nm程度の微細な寸法でパターン形成や薄膜形成を行っており、製造の各工程において該基板表面の微量な汚染を低減することが極めて重要な課題となっている。基板表面の汚染の中でも特にパーティクル汚染、有機物汚染及び金属汚染はデバイスの電気的特性や歩留まりを低下させるため、次工程に持ち込む前に極力低減する必要がある。このような汚染の除去には、洗浄液による基板表面の洗浄が一般的に行われている。この洗浄には、高清浄な表面を、副作用なしで、短時間で再現性よく、低コストで洗浄することが求められる。そして、この要求レベルは、近年のデバイスの高集積化、低価格化と共に益々厳しくなっている。
【0003】
半導体集積回路(以下LSIと記す)で代表される半導体デバイスの製造においては、基板上に絶縁膜や金属膜等の層を多層積層した多層積層構造が形成される。近年、デバイスの高速化・高集積化のために、配線として抵抗値の低い新金属材料(Cu等)、層間絶縁膜として低誘電率(Low−k)材料、即ち、比誘電率が3.5〜2.0程度の低誘電率層間膜(例えば、有機ポリマー系、メチル基含有シリカ系、H−Si含有シリカ系、SiOF系、ポーラスシリカ系、ポーラス有機系等)等を含む層間絶縁膜(ILD膜)や配線に用いられる銅などの金属膜を堆積後、生じた凹凸をCMPによって平坦化処理を行い、平坦となった面の上に新たな配線を積み重ねて行く工程が一般に行われる。工程間の洗浄には、従来は、酸性若しくはアルカリ性溶液と過酸化水素とを混合したRCA洗浄が用いられてきたが、これらの洗浄剤によれば、絶縁膜上に付着した除去すべき不動態としての酸化銅のみならず、配線の金属銅をも溶解してしまい、配線の腐蝕や断線を引き起こす懸念があり好ましくない。また、低誘電率絶縁膜の多くは表面が疎水性のため、洗浄液をはじいてしまうので洗浄が困難である。さらにCMP工程後の洗浄においては、CMPに使用するスラリー(研磨粒子)が配線や低誘電率絶縁膜の表面に残存し、汚染するという問題があった。
【0004】
研磨工程後に半導体デバイス表面に付着、残存したパーティクルの除去には、半導体表面とパーティクルとが静電的に反発し合うアルカリ性の洗浄剤が一般に有効であるとされており、例えば、特定の界面活性剤とアルカリ又は有機酸を含む洗浄剤が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、銅配線を施した半導体デバイス表面の腐蝕や酸化の防止には、カルボキシル基を複数有する成分を用いることが有効であるとされており、例えば、カルボキシル基を1以上有する有機酸、有機アルカリ、及び、界面活性剤を添加した洗浄剤(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
しかし、これらの洗浄剤においては、基板表面に付着した被研磨体に起因する金属や基板材料、さらには有機物残渣や砥粒微粒子などを、効率よく除去するといった観点からなお改良の余地があった。
特に、疎水性の低誘電率絶縁膜や、銅配線を施した半導体デバイス表面を、銅配線の腐蝕や酸化を抑制しつつ、かつ、表面の不純物を効果的に除去しうる洗浄剤が求められているのが現状である。
【特許文献1】特開2003−289060号公報
【特許文献2】特開2005−260213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題点を考慮してなされた本発明の目的は、半導体デバイス製造工程における平坦化研磨工程後の洗浄工程に用いられる洗浄剤であって、半導体デバイス表面、特に、表面に銅配線が施された半導体デバイスの表面に存在する有機物汚染やパーティクル汚染を、銅配線の腐蝕を引き起こすことなく効果的に除去しうる洗浄剤及びそれを用いた半導体デバイスの洗浄方法洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記のCMP工程後に用いられる洗浄剤に係る問題点について鋭意検討した結果、有機酸とアミノポリカルボン酸を洗浄剤成分として用いることにより、問題を解決できることを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の通りである。
【0007】
<1>半導体デバイス製造工程において、表面に銅配線を有する半導体デバイスの化学的機械的研磨工程の後に用いられる洗浄剤であって、下記一般式(I)〜一般式(IV)で表されるアミノポリカルボン酸から選ばれる少なくとも1種を含有する洗浄剤である。
【0008】
【化1】

【0009】
【化2】

【0010】
【化3】

【0011】
【化4】

【0012】
(上記一般式(I)〜一般式(IV)中、Rは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、ヘテロ環基、及びカルバモイル基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基を有するアルキル基を表す。R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、置換または無置換のアルキル基を表す。Lは置換基を有していても良い二価の連結基を表す。)
【0013】
<2>前記一般式(I)中、Rはカルボキシメチル基、またはカルボキシエチル基であることを特徴とする上記<1>に記載の洗浄剤である。
【0014】
<3>前記一般式(II)中、Lは、メチレン基またはエチレン基であることを特徴とする上記<1>または<2>に記載の洗浄剤である。
<4>前記一般式(III)中、Rは、水素原子であることを特徴とする上記<1>〜<3>の何れか1つに記載の洗浄剤である。
<5>前記一般式(IV)中、R及びRは、カルボキシメチル基であることを特徴とする上記<1>〜<4>の何れか1つに記載の洗浄剤である。
【0015】
<6>前記一般式(I)〜一般式(IV)で表されるアミノポリカルボン酸が、α−アラニン−N、N’−ジ酢酸、β−アラニン−N、N’−ジ酢酸、グルタミン酸−N、N’−ジ酢酸、イミノジコハク酸、アスパラギン酸−N、N’−ジ酢酸、S、S−エチレンジアミン−N、N’−ジコハク酸から構成される群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、上記<1>〜<5>の何れか1つに記載の洗浄剤である。
<7>前記アミノポリカルボン酸が、α−アラニン−N、N’−ジ酢酸、グルタミン酸−N、N’−ジ酢酸、アスパラギン酸−N、N’−ジ酢酸から構成される群より選ばれることを特徴とする<6>に記載の洗浄剤である。
【0016】
<8>有機酸を含むことを特徴とする上記<1>〜上記<7>の何れか1つに記載の洗浄剤である。
<9>前記有機酸が前記一般式(I)〜一般式(IV)で表されるアミノポリカルボン酸とは異なるポリカルボン酸であることを特徴とする上記<8>に記載の洗浄剤である。
<10>前記有機酸が、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、及びこれらの塩から構成される群より選ばれる1種以上であることを特徴とする上記<9>に記載の洗浄剤である。
【0017】
<11>上記<1>〜上記<10>のいずれか1つに記載の洗浄剤を使用することを特徴とする表面に銅配線の施された半導体デバイスの洗浄方法である。
【0018】
なお、本発明の洗浄剤が適用される被洗浄物である半導体デバイスは、半導体デバイス製造工程における化学的機械的研磨工程に付された基板であり、基材表面に金属配線が形成された単層基板、その表面に層間絶縁膜などを介して配線が形成されてなる多層配線基板のいずれでもよいが、本発明は、特に金属配線や低誘電率(Low−k)絶縁膜などを表面の一部あるいは全面に有する半導体デバイス用基板の洗浄に有用である。
【0019】
本発明の作用は明確ではないが以下のように推定される。
即ち、CMP後洗浄液への添加剤として、アミノポリカルボン酸を用いれば、疎水性の低誘電率絶縁膜や、銅配線を施した半導体デバイス表面を、銅配線の腐蝕や酸化を抑制しつつ、キレート効果による洗浄効果向上が期待される。しかしながらアミノポリカルボン酸の溶解性、特に酸性水溶液への溶解性は低くいため、期待されたこれらの洗浄効果は充分には得られにくい。また、実際の半導体製造の現場では、洗浄液の濃縮液を購入し、純水にて希釈して使用するため、販売形態の洗浄液には実際に適用する濃度よりも高濃度での化合物の溶解性が要求される。本発明ではアミノポリカルボン酸として、特定構造のアミノポリカルボン酸を用いる事により、希釈後の洗浄液濃度においても、銅配線の腐蝕を引き起こすことなく、半導体デバイスの表面に存在する有機物汚染やパーティクル汚染を効果的に除去しうる効果を達成しうるものと推定している。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、半導体デバイス製造工程における平坦化研磨工程後の洗浄工程に用いられる洗浄剤であって、半導体デバイス表面、特に、表面に銅配線が施された半導体デバイスの表面に存在する有機物汚染、パーティクル汚染を、銅配線の腐蝕を引き起こすことなく効果的に除去することができ、基板表面を高清浄化しうる洗浄剤及びそれを用いた洗浄方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の具体的態様について説明する。
本発明の洗浄剤は、下記一般式(I)〜一般式(IV)で表されるアミノポリカルボン酸から選ばれる少なくとも1種(以下、「特定アミノポリカルボン酸」と称する)を含有することを特徴とし、半導体デバイス製造工程における化学的機械的研磨工程の後に、半導体デバイス、特に表面に銅配線が施されたデバイス表面を洗浄するのに好適に使用される。
以下、本発明の洗浄剤に含まれる各成分について順次説明する。
【0022】
<特定アミノポリカルボン酸>
本発明の洗浄剤は、下記一般式(I)〜一般式(IV)で表されるアミノポリカルボン酸から選ばれる少なくとも1種の特定アミノポリカルボン酸を含有する。本発明の洗浄剤においては、特定ポリアミノカルボン酸を含有することにより、半導体デバイスの表面に存在する有機物残渣を、銅配線の腐蝕を引き起こすことなく且つ効果的に除去することができ、基板表面を高清浄化しうる。
【0023】
【化5】

【0024】
【化6】

【0025】
【化7】

【0026】
【化8】

【0027】
上記一般式(I)〜一般式(IV)中、Rは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、ヘテロ環基、及びカルバモイル基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基を有するアルキル基を表す。R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、置換または無置換のアルキル基を表す。Lは置換基を有していても良い二価の連結基を表す。
【0028】
上記一般式(I)中、Rで表されるアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。このRで表されるアルキル基としては、好ましくは、カルボキシル基及びヒドロキシル基の何れか一方または双方を有する炭素数1〜5のアルキル基であり、より好ましくはカルボキシル基を有する炭素数2〜4のアルキル基である。中でも、このRとしては、キレート力が強いことから、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基が好ましい。
【0029】
上記一般式(II)中、Lで表される置換基を有していても良い二価の連結基としては、炭素数1〜5の連結基が好ましく、より好ましくは、炭素数1〜2の連結基が好ましい。この連結基が有する置換基としては、例えば、置換または無置換のアルキル基、ヒドロキシル基が挙げられる。このアルキル基の置換基としては特に限定されないが、好ましくはカルボキシル基、ヒドロキシル基、カルバモイル基、アミノ基またはヘテロ環基である。該アルキル基のより好ましい置換基としては、カルボキシル基及びヒドロキシル基の何れか一方または双方である。
【0030】
このLで表される連結基としては、例えば、−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CH(CH)−、−CHCH(OH)−、−CH(CHCOH)−、−CH(CHOH)−、−CH(CHCHOH)−、−CH(CHCHCOH)−、−CH(CH(OH)(COH))−が挙げられる。
【0031】
Lで表される連結基としては、これらの中でも、特に無置換のアルキレン基、またはカルボキシルアルキル基で置換されたアルキレン基が好ましく、キレート力が強いことから、該アルキレン基がメチレン基またはエチレン基であることが特に好ましい。
【0032】
上記一般式(III)中、Rは、水素原子、置換または無置換のアルキル基を表している。このRが表す置換のアルキル基としては、カルボキシル基またはヒドロキシル基を有する炭素数1〜3のアルキル基が挙げられる。
また、このRが表す無置換のアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。具体的には、Rが表す無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基が挙げられる。
【0033】
上述のように、Rは、水素原子、置換または無置換のアルキル基を表しているが、好ましくは、無置換のアルキル基または水素原子であり、生分解性の観点から、水素原子であることがより好ましい。
【0034】
上記一般式(IV)中、R及びRは、各々独立に水素原子、置換または無置換のアルキル基を表している。
及びRが表す置換のアルキル基としては、カルボキシル基及びヒドロキシル基の何れか一方または双方を有する炭素数1〜3のアルキル基が挙げられる。中でも、R及びRとしては、カルボキシル基を有するアルキル基が好ましく、キレート力が強いことから、R及びRとしては、カルボキシメチル基であることがより好ましい。
【0035】
及びRが表す無置換のアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。R及びRが表す無置換の炭素数1〜5のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基が挙げられる。
【0036】
なお、R及びRとしては、上述のように、各々独立に水素原子、置換または無置換のアルキル基を表しているが、中でも、置換アルキル基または水素原子であることが好ましく、置換アルキル基であることが特に好ましい。
なお、R及びRが置換のアルキル基である場合には、これらのR及びRを表すアルキル基の置換基は、同じであっても良いし異なっていても良いが、キレート力の観点から、同じ置換基であることが好ましい。
【0037】
上記一般式(I)〜一般式(IV)で表される特定アミノポリカルボン酸は、光学活性な炭素原子を含んだ構成であってもよい。特定アミノポリカルボン酸が、光学活性な炭素原子を含む場合には、その絶対配置は左手体(以下、「S体」と称する)であることが好ましい。詳細には、上記一般式(I)〜一般式(IV)の何れかで表される特定アミノポリカルボン酸において、無置換のアルキル基が置換されている炭素原子の絶対配置は、S体、R体、ラセミ体のいずれであってもよいが、置換基を有するアルキル基が置換されている炭素原子の絶対配置は、S体であることが好ましい。これは、生分解性が良好であるためである。
【0038】
上記一般式(I)〜一般式(IV)で表される特定アミノポリカルボン酸は、酸(H体)であってもその塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩)であってもよいが、酸であることが好ましい。
【0039】
以下に、上記一般式(I)で表される化合物の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
【化9】

【0041】
これらの中でも、上記(I−1)、(I−4)、及び(I−5)が好ましく、キレート力の観点から上記(I−4)が特に好ましい。
【0042】
また、以下に、上記一般式(II)で表される化合物の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
【化10】

【0044】
これらの中でも、キレート力の観点から上記(II−3)が特に好ましい。
【0045】
また、以下に、上記一般式(III)で表される化合物の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
【化11】

【0047】
これらの中でも、キレート力の観点からIII−1が特に好ましい。
【0048】
また、以下に、上記一般式(IV)で表される化合物の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
【化12】

【0050】
これらの中でも、キレート力の観点からIV−2が特に好ましい。
【0051】
本発明における洗浄剤には、これらの上記一般式(I)〜一般式(IV)で表される特定アミノポリカルボン酸は、1種類のみ含まれていても良いし、2種以上含まれていても良い。
【0052】
本発明の洗浄剤における特定アミノポリカルボン酸の総含有量は、化合物の溶解度にもよるが、洗浄液1L中0.001質量%〜30質量%であることが好ましく、0.03質量%〜10質量%であることがより好ましく、0.1質量%〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0053】
ここで、本発明の洗浄剤は水溶液である。即ち、上記一般式(I)〜一般式(IV)で表される特定アミノポリカルボン酸の内の少なくとも1種を含むことを要し、さらに、併用されるその他の成分が水系の溶媒中に溶解してなるものが好ましい。溶媒として使用される水としては、効果の観点から、それ自体、不純物を含まないか、その含有量を極力低減させた脱イオン水や超純水を用いることが好ましい。また、同様の観点から、水の電気分解によって得られる電解イオン水や、水に水素ガスを溶存させた水素水などを使用することもできる。
【0054】
<有機酸>
本発明の洗浄剤には、本発明の効果を損なわない範囲において、必須成分である特定アミノポリカルボン酸、及び溶媒としての水に加えて、有機酸を含有することが好ましい。
なお、本発明における有機酸とは、水中で酸性(pH<7)を示す有機化合物であって、カルボキシル基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシル基、メルカプト基等の酸性の官能基を分子内に少なくとも1つ有する有機化合物を指す。なお、本発明における有機酸は、上記説明した特定アミノポリカルボン酸とは異なる構造である。
【0055】
有機酸としては、以下の群から選ばれたものが適している。
ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−メチル酪酸、n−ヘキサン酸、3,3−ジメチル酪酸、2−エチル酪酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸など、さらには、これらのアンモニウム塩やアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0056】
有機酸としては、上記の群のなかでも、分子内に少なくとも2つのカルボキシル基を含む化合物が好ましい。分子内に少なくとも2つのカルボキシル基を含む化合物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸等のジカルボン酸類、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸などのオキシポリカルボン酸類、及びそれらの塩などが挙げられる。
これらの中でも、素材の安全性、コスト、洗浄性能の観点からは、クエン酸、マロン酸、マレイン酸、及び蓚酸が好ましく、クエン酸、及びマレイン酸がより好ましい。
【0057】
本発明の洗浄剤において、有機酸は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で併用してもよい。本発明の洗浄剤における有機酸の含有量は、化合物の溶解度にもよるが、洗浄液1L中0.001質量%〜30質量%が好ましく、0.01質量%〜10質量%がより好ましく、0.1質量%〜3質量%がさらに好ましい。
【0058】
<その他の成分>
本発明の洗浄剤には、本発明の効果を損なわない範囲において、必須成分である特定アミノポリカルボン酸、及び溶媒としての水に加えて、目的に応じて種々の化合物を任意成分として併用することができる。以下、任意成分である添加剤について述べる。
なお、添加剤としては、界面活性剤、キレート剤などが挙げられる。
【0059】
(界面活性剤)
本発明の洗浄剤には、界面活性剤を含有することができる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩が挙げられ、カルボン酸塩として、石鹸、N−アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド;スルホン酸塩として、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩;硫酸エステル塩として、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩;リン酸エステル塩として、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテルリン酸塩を挙げることができる。
【0060】
また、本発明における好ましいアニオン性界面活性剤としては、分子中に芳香族環構造を少なくとも1つ有するものが挙げられ、芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、フェナントレン環、クリセン環、ピレン環等が挙げられる。
【0061】
本発明に好適に用いうるアニオン性界面活性剤の例としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、アルキルナフタレンスルホン酸及びその塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸及びその塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸及びその塩、フェノールスルホン酸ホルマリン縮合物およびその塩、アリールフェノールスルホン酸ホルマリン縮合物およびその塩、等が挙げられる。
上記に列挙したアニオン性界面活性剤において、芳香族環に導入されるアルキル基としては、直鎖型及び分岐型のいずれであってもよく、炭素数2〜30(好ましくは、炭素数3〜22)のアルキル基が好ましく、例えば、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。該アルキル基は直鎖型及び分岐型のいずれであってもよい。
また、これらのアニオン性界面活性剤が塩構造を採る場合、該塩構造としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、テトラメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
これらアニオン性界面活性剤のより具体的な例としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸、ジフェニルエーテルジスルフォン酸、プロピルナフタレンスルフォン酸、プロピルナフタレンスルフォン酸、トリイソプロピルナフタレンスルフォン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム、ドデシルジフェニルエーテルスルホン酸アンモニウムが挙げられる。
【0062】
本発明に用いうるアニオン性界面活性剤の他の例としては、分子内に芳香環構造に加えて、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、フルオロアルキル基、アセチレン基、水酸基などの置換基をさらに有する界面活性剤が挙げられ、そのより具体的な例としては、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルフォスフェート、フェノールスルホン酸ホルマリン縮合物等が挙げられる。
【0063】
上記したアニオン性界面活性剤の中でも、ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルフォスフェートがより好ましい。
【0064】
アニオン性界面活性剤としては市販品を用いてもよく、例えば、ペレックスNBL(アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、花王(株)製)、ネオペレックスGS(ドデシルベンゼンスルホン酸、花王(株)製)、ネオペレックスGS‐15(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、花王(株)製)、ペレックスSS-L(アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム、花王(株)製)、デモールNL(β‐ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、花王(株)製)等を好適に用いることができる。
これらアニオン性界面活性剤は、本発明の洗浄剤に1種を単独で使用してもよいし、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0065】
本発明に使用しうる界面活性剤の他の好ましい例としてノニオン系界面活性剤が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型が挙げられ、エーテル型として、ポリオキシエチレンアルキルおよびアルキルフェニルエーテル、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが挙げられ、エーテルエステル型として、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、エステル型として、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステル、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、ショ糖エステル、含窒素型として、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミド等が例示される。
その他に、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などが挙げられる。
【0066】
複数種の界面活性剤を含有する場合、2種以上のアニオン性界面活性剤を用いてもよく、また、アニオン性界面活性剤とノニオン系界面活性剤を組み合わせて用いることもできる。
本発明の洗浄剤における界面活性剤の含有量は、総量として、洗浄剤の1L中、0.001g〜10gとすることが好ましく、0.01g〜1gとすることがより好ましく0.02g〜0.5gとすることが特に好ましい。
【0067】
(キレート剤)
本発明の洗浄剤は、混入する多価金属イオンなどの影響を低減させるために、必要に応じてキレート剤を含有してもよい。キレート剤としては、カルシウムやマグネシウムの沈澱防止剤である汎用の硬水軟化剤やその類縁化合物を用いることができ、必要に応じてこれらを2種以上併用しても良い。キレート剤の添加量は混入する多価金属イオンなどの金属イオンを封鎖するのに充分な量であればよく、一般的には、洗浄剤中に、5ppm〜10000ppm程度である。
【0068】
キレート剤としては、例えば、アミノカルボン酸類又はアミノカルボン酸塩、アミノポリカルボン酸類又はアミノポリカルボン酸塩が挙げられ、アミノカルボン酸類としてはグリシン、アミノポリカルボン酸塩として、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等を挙げることができ、さらには、これらのアンモニウム塩やアルカリ金属塩等を挙げることが出来る。
【0069】
〔pH〕
本発明の洗浄剤のpHには、特に制限はなく、pH0.5〜12程度の範囲において、洗浄対称となるデバイスの特性、除去しようとする不純物の種類などにより、適宜選択して調整することができる。
pH値は、洗浄剤を調整した際に好ましい範囲であればそのまま使用してもよく、洗浄液調製後に目的とするpHに制御する必要がある場合には、有機酸や有機アルカリ剤などを添加することにより容易に調整することができる。なお、洗浄剤のpH調製には、一般的なpH調整剤、例えば、酸では硝酸、硫酸などの無機酸、アルカリでは水酸化カリウム、アンモニアなどを使用することも可能であるが、銅配線や基材表面への影響を考慮すれば、上記の如き一般的なpH調整剤は使用せず、有機酸や有機アルカリ剤、具体的には、例えば、蓚酸、水酸化テトラメチルアンモニウムなどによりpHを調整することが好ましい。
【0070】
本発明の洗浄剤は、表面に金属又は金属化合物層、或いは、これらで形成された配線を有する半導体デバイス用基板の洗浄に好適に使用される。本発明の洗浄剤は、銅配線に対して腐蝕や酸化を生じさせる懸念がないことから、銅配線を表面に有する半導体デバイス用基板の洗浄に特に好適に使用することができる。
【0071】
以下、本発明の半導体デバイスの洗浄方法について説明する。
<洗浄方法>
本発明の半導体デバイスの洗浄方法は、前記本発明の洗浄剤を用いることを特徴とするものであり、半導体デバイス製造における化学的機械的研磨工程(CMP工程)に引き続いて実施されるものである。
【0072】
通常、CMP工程は、研磨液を研磨定盤上の研磨パッドに供給し、被研磨体である半導体デバイス用基板などの被研磨面と接触させて被研磨面と研磨パッドを相対運動させて研磨する工程であり、その後、実施される洗浄工程では、研磨を終了した半導体デバイス用基板を、スピンナーに配置し、洗浄剤を被研磨面及びその裏面に対し流量100〜2000ml/min.の条件で基板表面に供給し、室温にて10〜60秒間にわたり、ブラシスクラブする洗浄方法をとることが一般的である。
洗浄は、市販の洗浄槽を用いて行うこともでき、例えば、MAT社製ウェハ洗浄機(商品名:ZAB8W2M)を使用し、該装置に内蔵しているスクラブ部でPVA製ロールブラシを接触するスクラブ洗浄をすることにより行うこともできる。
【0073】
被研磨体である半導体デバイス用基板に用いられる金属としては、主としてW又はCuが挙げられる。近年、配線抵抗の低い銅を用いたLSIが開発されるようになった。
高密度化を目指す配線の微細化に伴って、銅配線の導電性や電子マイギュレート耐性などの向上が必要となり、これらの高精細で高純度の材料を汚染させることなく高生産性を発揮し得る技術が求められている。
表面にCuを有する基板、さらには、層間絶縁膜として低誘電率絶縁膜を有し、その表面に銅配線を有する基板の洗浄を行う工程としては、特に、Cu膜に対してCMPを行った後の洗浄工程、配線上の層間絶縁膜にドライエッチングによりホールを開けた後の洗浄工程が挙げられるが、これらの洗浄工程においては、表面に存在する不純物金属やパーティクル等を効率的に除去することが配線の純度、精度を保持するため特に重要であり、そのような観点から、これらの洗浄工程において本発明の洗浄剤が好適に使用される。また、既述のごとく、本発明の洗浄剤は、銅配線に対して腐蝕や酸化を生じさせることがないことから、かかる観点からも本発明の洗浄剤が好適に使用される。
また、銅配線表面に吸着した不動態膜形成剤の残渣を効率よく除去するという目的にも本発明の洗浄剤が好適に使用される。
【0074】
なお、洗浄工程における不純物除去効果を確認するため、ウェハ上の異物を検出する必要があるが、本発明においては、異物を検出する装置として、Applied Materials technology社製の欠陥検査装置ComPLUS3およびApplied Materials technology社製Review SEM観察装置、SEM vision G3が好適に用いられる。
【0075】
本発明の洗浄方法によれば、CMP工程を完了した半導体デバイス用基板の表面における不純物金属、基板材料、層間絶縁膜の研磨屑を含む不純物無機材料、不動態膜形成剤の残渣を含む有機材料、砥粒などのパーティクル等を効率よく除去することができ、特に、高精度の配線を要求されるデバイスや、単層基板の平坦化後、新たに層間絶縁膜、及び、配線を形成する多層配線基板などを平坦化する際に、各工程においてそれぞれの不純物を効率よく除去することが必要なデバイスの洗浄に好適である。さらに、半導体デバイス用基板が銅配線を有する場合においても、銅配線に腐蝕や酸化を生じさせることがない。
以下、実施例により本発明を説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0076】
以下、実施例により本発明を説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0077】
<研磨液の調製>
・コロイダルシリカ(砥粒:平均粒子径30nm) 5g/L
・ベンゾトリアゾール(BTA) 1g/L
・グリシン 10g/L
純水を加えて全量1000mLとし、硝酸及びアンモニアを用いてpHを4.5に調整した。
研磨液には、研磨直前に30%過酸化水素(酸化剤)15g/Lを加えた。
【0078】
<Cuウェハの研磨>
研磨速度評価
8inch Wf研磨
研磨装置としてラップマスター社製装置「LGP−612」を使用し、下記の条件で、スラリーを供給しながら各ウェハに設けられた膜を研磨した。
基盤:8inch SEMATECH854銅配線パターン付きシリコンウェハ
テ−ブル回転数:64rpm
ヘッド回転数:65rpm
(加工線速度=1.0m/s)
研磨圧力:140hPa
研磨パッド:ローム アンド ハース社製
品番IC−1400(K−grv)+(A21)
スラリー供給速度:200ml/分
【0079】
<洗浄液の調製>
[実施例1]
・クエン酸〔有機酸〕 50.00g/L
・前記具体例(I−1)で表される特定アミノポリカルボン酸 50.00g/L
上記成分を混合して洗浄液の濃縮液を調製し、これをさらに純水で希釈して実施例1の洗浄液を得た。希釈倍率は、質量比で、洗浄液:純水=1:40とした。
【0080】
[実施例2〜22、比較例1〜6]
<洗浄液の調整>
実施例1の洗浄液の調製において、有機酸、特定アミノポリカルボン酸及び有機アルカリ剤を下記表1及び表2の組成で混合し、下記表1及び表2の希釈倍率で希釈した他は、実施例1と同様にして、実施例2〜22、及び比較例1〜6の洗浄液を調整した。
なお、表1、表2中、テトラゾールは、1H−テトラゾールであり、TMAHは水酸化テトラメチルアンモニウムである。
【0081】
<洗浄試験>
上記の処方により調整された実施例1〜実施例22、及び比較例1〜比較例6の洗浄剤を使用して、前記研磨液を用いて前記条件で研磨した銅膜付きシリコン基板を洗浄することにより洗浄試験を行った。洗浄された基板を目視で確認したところ、実施例1〜22の洗浄剤を用いた場合は、いずれの基板にも腐食が見られなかった。
洗浄は、MAT社製ウェハ洗浄装置、ZAB8W2Mに内蔵しているスクラブ部でPVA製ロールブラシを接触するスクラブ洗浄をすることにより行った。洗浄液は、研磨基板上側に400ml/min、下側に400ml/minで25秒間流し、その後、純水(脱イオン水)を研磨基板上側に650ml/min、下側に500ml/minで35秒間流し、更に、上記装置に内蔵しているスピンドライ装置で30秒処理した。
【0082】
<有機物残渣除去性能評価>
前記実施例1〜22及び比較例1〜6の各洗浄剤にて洗浄乾燥したCuウェハの表面に残る有機残渣の除去性能評価を行った。これら表面の状態の確認はApplied Materials technology社製の欠陥検査装置ComPLUS3を用い測定を行い、検出された欠陥からランダムに100個抽出し、Applied Materials technology社製Review SEM観察装置、SEM vision G3を用いてイメージ所得を行い、欠陥種類ごとに分類を行い、それぞれの欠陥種類の割合を求め、それぞれの欠陥種類についてウェハ上の個数を計算した。以下の基準で評価し、結果を下記表1及び下記表2に示す。
【0083】
−評価基準−
○:1cmあたりのウェハ上の有機物残渣数が、0個以上0.1個未満
△:1cmあたりのウェハ上の有機物残渣数が、0.1個以上1個未満
×:1cmあたりのウェハ上の有機物残渣数が、1個以上
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
前記表1中、「希釈倍率」欄における洗浄液と純水との比は、質量基準である。また、「特定アミノポリカルボン酸(I−1)」とは、前記の特定アミノポリカルボン酸の具体例(I−1)〜(I−6)、(II−1)〜(II−5)(III−1)〜(III−2)、(IV−1)〜(IV−2)の中の、具体例(I−1)を表す。他の具体例についても同様である。
【0087】
表1及び表2からわかるように、CMP工程後に、実施例1〜実施例22の洗浄剤を用いて洗浄した場合には、表面に付着した有機物残渣を効果的に洗浄、除去することができることがわかる。
他方、特定アミノポリカルボン酸を含まない比較例1〜比較例6の洗浄剤を用いた場合には、実施例1〜22の洗浄剤を用いた場合に比べ、有機物残渣の除去性に劣ることがわかった。また、比較例1〜6の洗浄剤は、有機物残渣の除去性に劣ると共に、腐蝕も見られた。
さらに、有機酸を含まず、特定アミノポリカルボン酸のみを含む実施例16、17については、同等の性能を得るコストが高く、有機酸を更に含んだ構成であるほうが、低コストで高い性能が得られた。
このように、実施例1〜22の洗浄剤は、Cuウェハに施された銅配線の腐蝕抑制を維持しつつ、且つ有機物残渣の除去性に優れ、洗浄性に優れるものであることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイス製造工程において、表面に銅配線を有する半導体デバイスの化学的機械的研磨工程の後に用いられる洗浄剤であって、
下記一般式(I)〜一般式(IV)で表されるアミノポリカルボン酸から選ばれる少なくとも1種を含有する洗浄剤。
【化1】


【化2】


【化3】


【化4】


(上記一般式(I)〜一般式(IV)中、Rは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、ヘテロ環基、及びカルバモイル基からなる群より選択される少なくとも1つの置換基を有するアルキル基を表す。R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、置換または無置換のアルキル基を表す。Lは置換基を有していても良い二価の連結基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(I)中、Rはカルボキシメチル基、またはカルボキシエチル基であることを特徴とする請求項1に記載の洗浄剤。
【請求項3】
前記一般式(II)中、Lは、メチレン基またはエチレン基であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の洗浄剤。
【請求項4】
前記一般式(III)中、Rは、水素原子であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の洗浄剤。
【請求項5】
前記一般式(IV)中、R及びRは、カルボキシメチル基であることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の洗浄剤。
【請求項6】
前記一般式(I)〜一般式(IV)で表されるアミノポリカルボン酸が、α−アラニン−N、N’−ジ酢酸、β−アラニン−N、N’−ジ酢酸、グルタミン酸−N、N’−ジ酢酸、イミノジコハク酸、アスパラギン酸−N、N’−ジ酢酸、S、S−エチレンジアミン−N、N’−ジコハク酸から構成される群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の洗浄剤。
【請求項7】
前記一般式(I)〜一般式(IV)で表されるアミノポリカルボン酸が、α−アラニン−N、N’−ジ酢酸、グルタミン酸−N、N’−ジ酢酸、アスパラギン酸−N、N’−ジ酢酸から構成される群より選ばれることを特徴とする請求項6に記載の洗浄剤。
【請求項8】
有機酸を含むことを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の洗浄剤。
【請求項9】
前記有機酸が前記一般式(I)〜一般式(IV)で表されるアミノポリカルボン酸とは異なるポリカルボン酸であることを特徴とする請求項8に記載の洗浄剤。
【請求項10】
前記有機酸が、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、及びこれらの塩から構成される群より選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項9に記載の洗浄剤。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の洗浄剤を使用することを特徴とする表面に銅配線の施された半導体デバイスの洗浄方法。


【公開番号】特開2009−218473(P2009−218473A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62342(P2008−62342)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】