説明

洗浄装置、これを用いた洗浄システム、及び被洗浄基板の洗浄方法

【課題】チャンバ内の雰囲気を安定させて従来のトラブルの発生を防止することができる洗浄装置を提供する。
【解決手段】本発明の洗浄装置は、半導体基板、液晶ガラス基板、磁気ディスク等の被洗浄基板2を容器3内にて洗浄するものであって、空気や不活性ガス等を容器3内に供給する手段5、21、31と、容器3内から空気や不活性ガスを排出する手段とを備え、空気や不活性ガス等を排出する手段は、容器3の圧力を制御する圧力制御手段7Bを有している。圧力制御手段7Bは、圧力計7Cの検出値によりその開度を制御する制御弁7Aを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体基板、液晶ガラス基板、磁気ディスク等の被洗浄基板(精密基板)を洗浄するための洗浄装置、この洗浄装置を用いた洗浄システム、及び被洗浄基板の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶ディスプレイ、磁気ディスク等の精密基板の製造において、精密基板の汚染を防止することは、歩留向上やデバイスの信頼性向上のために不可欠である。したがって、従来から製造過程において上記精密基板が汚染されることを防止するため、製造工程、製造装置、製造環境の改良が行なわれてきた。また、汚染防止技術が改良されても、実際には汚染を完全に防止することは不可能であるため、汚染を除去するための洗浄技術が種々提案されている。
洗浄技術としては、近年の半導体ウェハの大口径化及び清浄度の高いウェハを得るため、また洗浄液の節約、洗浄装置の省占有面積を実現するため、枚葉式の精密基板洗浄装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、1つの洗浄装置において、複数の処理液を用いて半導体ウェハ等を洗浄し、その後これらの処理液を回収する際、同一の装置構成による連続した構成で使用済の各処理液が混合することを確実に防止することができる基板処理装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2に開示の基板処理装置では、各処理液をノズル等から供給する場合、半導体ウェハを載置している基板チャック部を回転させつつ、各処理液の種類に応じたフェンスを昇降機構で駆動して、対応する回収槽のみの入口を開放状態にして、対応する処理液を半導体ウェハ表面に供給している。
このような基板処理装置では、上述の洗浄工程中、例えば、ファンフィルタユニット等により風量を一定に保たれた清浄空気を装置のチャンバ内に供給し、ダンパ等を介して外部に排気している。
【特許文献1】特開2001−176831号公報
【特許文献2】特開2004−31400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献2に開示される基板処理装置等では、通常、装置の排気側はオート又は手動のダンパを介して工場排気に直接接続されている。よって、ファンフィルタユニットにより清浄空気の風量を一定に制御していたとしても、工場排気の使用量により、チャンバからの排気量が変動し、チャンバ内の圧力が変動を起こしてしまう。上述のような処理液による洗浄中にこのようなチャンバの圧力変動が発生する場合には、気流の乱れによる処理液の供給の不均一、液はね、歩留まりの低下等のトラブルが発生してしまうという問題があった。
また、ダンパをオートにすると基板処理装置の製造コストを増加させるため、手動のダンパを使用する場合も多い。このような場合には、上記トラブルの発生が顕著になってしまう。
ところで、特許文献2に開示される基板処理装置に半導体ウェハを搬送する際には、従来からアームを備えるロボットが利用されているが、半導体ウェハの裏面を洗浄する場合には、半導体ウェハを反転させる機構が必要となる。この場合、半導体ウェハを反転させる機構を別途設置してもよいが、洗浄処理のスループットを低下させる原因となってしまう。
また、このような基板処理装置を複数用いてシステム化する場合、このシステムによる半導体ウェハの洗浄処理量に応じて、基板処理装置を追加したいというニーズもある。
【0004】
本発明は、このような課題を解決するものであり、洗浄装置のチャンバに供給するガスの流量とチャンバの圧力とを制御することにより、チャンバ内の雰囲気を安定させて上述のようなトラブルの発生を防止することができる洗浄装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記洗浄装置を用いて、半導体ウェハ等の裏面を洗浄するに際し、そのスループットを低減することなく、半導体ウェハ等を洗浄することができる洗浄システムを提供することを目的とする。
さらに、本発明は、洗浄処理の量に応じて、上記洗浄装置を追加等することができる、いわゆるプラグイン方式の洗浄システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明の洗浄装置は、半導体基板、液晶ガラス基板、磁気ディスク等の被洗浄基板を容器内にて洗浄する洗浄装置であって、空気や不活性ガス等を前記容器内に供給する手段と、前記容器内から前記空気や不活性ガス等を排出する手段とを備え、前記空気や不活性ガス等を排出する手段は、前記容器の圧力を制御する圧力制御手段を有することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の洗浄装置において、前記圧力制御手段は圧力計を備え、前記排気手段は、前記圧力計の検出値によりその開度を制御する制御弁を含むことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の洗浄装置において、前記容器内から排出される空気や不活性ガス等の流量を検出する手段を更に備えることを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の洗浄装置において、前記空気や不活性ガス等を前記容器内に供給する手段は、フィルタを介して前記容器内に前記空気や不活性ガス等を導入することを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の洗浄装置において、前記空気や不活性ガス等を前記容器内に供給する手段は、吹出口に複数の孔が設けられていることを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の洗浄装置において、前記被洗浄基板を水平状態で保持するとともに回転させる回転保持機構を有し、前記回転保持機構に前記空気や不活性ガス等を供給する手段を備えたことを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項6に記載の洗浄装置において、前記回転保持機構は、前記容器内に配置された前記被洗浄基板を保持するテーブルと、前記テーブルを回転させる回転軸と、前記回転軸を保持する流体軸受けとを有し、前記容器内の圧力を前記流体軸受けの圧力より大きくし、前記流体軸受けの圧力を大気圧より大きくしたことを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の洗浄装置において、前記被洗浄基板を水平状態で保持するとともに回転させる回転保持機構を有し、前記回転保持機構は前記被洗浄基板を保持するテーブルを有し、前記被洗浄基板と前記テーブルとの間に不活性ガスを供給する手段を有し、前記不活性ガス供給手段から供給された前記不活性ガスを前記被洗浄基板の外周から排出することを特徴とする。
請求項9記載の本発明は、請求項8に記載の洗浄装置において、前記被洗浄基板の外周より小さい内径を有するリング状突起を前記テーブルに設けたことを特徴とする。
請求項10記載の本発明は、請求項8又は請求項9に記載の洗浄装置において、前記不活性ガス供給手段は、複数の孔が設けられた吐出孔を有することを特徴とする。
請求項11記載の本発明は、請求項1から請求項10のいずれかに記載の洗浄装置において、前記被洗浄基板の被洗浄面に向けて洗浄液を噴射する洗浄液噴射機構と、前記洗浄液噴射機構から噴射された洗浄液の洗浄廃液を酸系、アルカリ系、有機系、及び一般排水系の所望の排水系に分別排水する排水機構とを更に備えることを特徴とする。
請求項12記載の本発明は、請求項11に記載の洗浄装置において、前記排水機構は、同心円状に配された複数のカップ状誘導壁を有し、複数の前記カップ状誘導壁間の間隙により排水流路及びガス流路を形成し、前記ガス流路は複数の前記カップ状誘導壁間に形成された流路断面が大きい第1の通路とその下流側に連結する流路断面が小さい第2の通路とを有し、前記第2の通路を通過するガス流速が最大になるように流路断面を設計したことを特徴とする。
請求項13記載の本発明は、請求項11又は請求項12に記載の洗浄装置において、前記排水機構は、前記複数のカップ状誘導壁の各々を個別に上下動させる駆動手段を有し、前記駆動手段によって同じタイミングで複数の前記カップ状誘導壁を動作可能とすることを特徴とする。
請求項14記載の本発明は、請求項11から請求項13のいずれかに記載の洗浄装置において、隣接する前記カップ状誘導壁間の間隙により形成される排水通路が複数設けられ、前記駆動手段は、解放する前記排水通路以外の前記排水通路を閉塞したままで前記カップ状誘導壁を動作させることを特徴とする。
請求項15記載の本発明の洗浄システムは、請求項1から請求項14のいずれかに記載の洗浄装置を用いた洗浄システムであって、前記被洗浄基板を載置する載置部と、前記載置部から前記洗浄装置まで前記被洗浄基板を搬送する搬送手段と、を備えることを特徴とする。
請求項16記載の本発明は、請求項15に記載の洗浄システムにおいて、前記搬送手段は、前記載置部から前記洗浄装置まで前記被洗浄基板を搬送する際に、前記被洗浄基板を保持する保持手段を有し、前記保持手段は、保持した前記被洗浄基板を反転する反転機構を有することを特徴とする。
請求項17記載の本発明は、請求項15に記載の洗浄システムにおいて、前記載置部と前記洗浄装置の間に、前記被洗浄基板を反転する反転機を更に備えることを特徴とする。
請求項18記載の本発明は、請求項15から請求項17のいずれかに記載の洗浄システムにおいて、前記載置部と、複数の前記洗浄装置と、前記搬送手段とをそれぞれ設置するためのフレームを備え、必要に応じて所定数の前記洗浄装置を該フレームに設置可能であることを特徴とする。
請求項19記載の本発明の被洗浄基板の洗浄方法は、半導体基板、液晶ガラス基板、磁気ディスク等の被洗浄基板を容器内にて洗浄する洗浄方法であって、前記容器内に供給する空気、不活性ガス等の流量を調整しつつ、前記容器の圧力を制御して、前記被洗浄基板を洗浄することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の洗浄装置及び被洗浄基板の洗浄方法によれば、洗浄装置の容器(チャンバ)内に供給するガスの流量を制御するとともに、この容器の圧力を制御しつつ、被洗浄基板を洗浄することができるので、工場排気に由来するプロセス揺らぎを生じることがなく、容器内の気流の乱れ、処理液の液はね、歩留まりの低下等のトラブルを効果的に防止することができる。
また、このような洗浄装置を利用する洗浄システムによれば、被洗浄基板を反転するための反転機構(反転機能)を保持手段にあるいは別途の反転機として有することにより、被洗浄基板の裏面を洗浄することができる。さらに、被洗浄基板を載置部から洗浄装置に搬送する際に、保持手段の反転機構を駆動することにより、洗浄システムのスループットを低減することなく、被洗浄基板の裏面を洗浄することができる。
また、本発明の洗浄システムによれば、洗浄システムのフレームの構成により、必要に応じて、洗浄装置を追加することができるので、自由なシステム設計をすることができるとともに、洗浄システムを設置した後においても、被洗浄基板の洗浄量に臨機応変に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の第1の実施の形態による洗浄装置は、空気や不活性ガス等を容器内に供給する手段と、容器内から空気や不活性ガスを排出する手段とを備え、空気や不活性ガス等を排出する手段は、容器の圧力を制御する圧力制御手段を有するものである。本実施の形態によれば、洗浄中、容器の圧力を一定とすることができるので、工場排気に由来するプロセス揺らぎを生じることがなく、容器内の気流の乱れ、処理液の液はね、歩留まりの低下等のトラブルを効果的に防止することができる。
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による洗浄装置において、圧力制御手段は圧力計を備え、排気手段は、圧力計の検出値によりその開度を制御する制御弁を含むものである。本実施の形態によれば、圧力計と制御弁とを利用することにより、工場排気に由来するプロセス揺らぎを効果的に防止することができる。
本発明の第3の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態による洗浄装置において、容器内から排出される空気や不活性ガスの流量を検出する手段を更に備えるものである。本実施の形態によれば、容器の圧力と容器から排気されるガス流量の両方を検出することができるので、例えば、ガス流量の変動に応じてガス供給手段のガス供給量を制御することにより、工場排気に由来するプロセス揺らぎを更に効果的に防止することができる。
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3のいずれかの実施の形態による洗浄装置において、空気や不活性ガス等を容器内に供給する手段は、フィルタを介して前記容器内に前記空気や不活性ガス等を導入するものである。本実施形態によれば、例えば、容器の圧力やガスの排気量に応じて、ファンの回転数や供給電力を制御することもできる。
本発明の第5の実施の形態は、第1から第4のいずれかの実施の形態による洗浄装置において、空気や不活性ガス等を容器内に供給する手段は、吹出口に複数の孔が設けられているものである。本実施の形態によれば、所定条件下で孔を通過したガスの流速は概ね音速となり、所定の範囲で流量を制御することができるので、ガス供給量を制御することができる。
本発明の第6の実施の形態は、第1から第5のいずれかの実施の形態による洗浄装置において、被洗浄基板を水平状態で保持するとともに回転させる回転保持機構を有し、回転保持機構に空気や不活性ガスを供給する手段を備えたものである。本実施の形態によれば、回転保持機構近傍のガス滞留を減少させるとともに、回転保持機構の雰囲気を制御することができる。また、洗浄処理中に薬液が裏面に回り込むのを防止することができる。
本発明の第7の実施の形態は、第6の実施の形態による洗浄装置において、回転保持機構は、容器内に配置された被洗浄基板を保持するテーブルと、テーブルを回転させる回転軸と、回転軸を保持する流体軸受けとを有し、容器内の圧力を流体軸受けの圧力より大きくし、流体軸受けの圧力を大気圧より大きくしたものである。本実施の形態によれば、流体軸受けを高真空に対応した無発塵とすることができるとともに、流体軸受けからのパーティクルや外気混入を防止した流体軸受け封止を実現することができる。
本発明の第8の実施の形態は、第1から第7のいずれかの実施の形態による洗浄装置において、被洗浄基板を水平状態で保持するとともに回転させる回転保持機構を有し、回転保持機構は被洗浄基板を保持するテーブルを有し、被洗浄基板テーブルとの間に不活性ガスを供給する手段を有し、不活性ガス供給手段から供給された不活性ガスを被洗浄基板の外周から排出するものである。本実施の形態によれば、供給ガスが被洗浄基板の外周から排出されるので、被洗浄基板の裏面への洗浄液の回り込みを防止することができる。
本発明の第9の実施の形態は、第8の実施の形態による洗浄装置において、被洗浄基板の外周より小さい内径を有するリング状突起をテーブルに設けたものである。本実施の形態によれば、リング状突起を設置することで、被洗浄基板の裏面への洗浄液の回り込み位置を、被洗浄基板の回転数と被洗浄基板とテーブルとの間に供給する不活性ガスの流量によって制御でき、被洗浄基板裏面の均一な洗浄、あるいは、被洗浄基板裏面の再汚染防止を制御できる。
本発明の第10の実施の形態は、第8又は第9の実施の形態による洗浄装置において、不活性ガス供給手段は、複数の孔が設けられた吐出孔を有するものである。本実施の形態によれば、被洗浄基板の洗浄中に万一被洗浄基板が破損しても、洗浄液が不活性ガスの吐出孔内に侵入することを防止することができる。
本発明の第11の実施の形態は、第1から第10のいずれかの実施の形態による洗浄装置において、被洗浄基板の被洗浄面に向けて洗浄液を噴射する洗浄液噴射機構と、洗浄液噴射機構から噴射された洗浄液の洗浄廃液を酸系、アルカリ系、有機系、及び一般排水系の所望の排水系に分別排水する排水機構とを更に備えるものである。本実施の形態によれば、被洗浄基板の被洗浄面の雰囲気を均一にすることができる。
本発明の第12の実施の形態は、第11の実施の形態による洗浄装置において、排水機構は、同心円状に配された複数のカップ状誘導壁を有し、複数のカップ状誘導壁間の間隙により排水流路及びガス流路を形成し、ガス流路は複数のカップ状誘導壁間に形成された流路断面が大きい第1の通路とその下流側に連結する流路断面が小さい第2の通路とを有し、第2の通路を通過するガス流速が最大になるように流路断面を設計したものである。本実施の形態によれば、排水流路内に下流から大気あるいは排気ガスが逆流することを防止することができる。
本発明の第13の実施の形態は、第12の実施の形態による洗浄装置において、排水機構は、複数のカップ状誘導壁の各々を個別に上下動させる駆動手段を有し、駆動手段によって同じタイミングで複数のカップ状誘導壁を動作可能としたものである。本実施の形態によれば、洗浄装置の構成を簡単にし、かつ、簡単な操作で複数の洗浄液を所望の廃液通路に分別廃液することができる。
本発明の第14の実施の形態は、第13の実施の形態による洗浄装置において、隣接するカップ状誘導壁間の間隙により形成される排水通路が複数設けられ、駆動手段は、解放する排水通路以外の排水通路を閉塞したままでカップ状誘導壁を動作させるものである。本実施の形態によれば、簡単な構造及び操作で複数の洗浄液の各々に対応した廃液通路を形成することができる。
本発明の第15の実施の形態による洗浄システムは、被洗浄基板を載置する載置部と、載置部から洗浄装置まで被洗浄基板を搬送する搬送手段とを備えたものである。本実施の形態によれば、被洗浄基板の載置部及び搬送手段を設けることにより、上述の効果を奏する洗浄装置を用いた洗浄システムを構築することができる。
本発明の第16の実施の形態は、第15の実施の形態による洗浄システムにおいて、保持手段は、保持した被洗浄基板を反転する反転機構を有するものである。本実施の形態によれば、被洗浄基板を反転することができるので、被洗浄基板の裏面を洗浄可能な洗浄システムを提供することができる。
本発明の第17の実施の形態は、第15の実施の形態による洗浄システムにおいて、載置部と洗浄装置の間に、被洗浄基板を反転する反転機を更に備えるものである。本実施の形態によれば、保持手段が反転機構を有さないとしても、別途反転機を設けることにより、被洗浄基板の裏面を洗浄することができる。
本発明の第18の実施の形態は、第15から第17のいずれかの実施の形態による洗浄システムにおいて、載置部と、複数の洗浄装置と、搬送手段とをそれぞれ設置するためのフレームを備え、必要に応じて所定数の洗浄装置を該フレームに設置可能とするものである。本実施の形態によれば、洗浄システムのフレームの構成により、必要に応じて、洗浄装置を追加することができるので、自由なシステム設計をすることができるとともに、洗浄システムを設置した後においても、被洗浄基板の洗浄量に臨機応変に対応することができる。
本発明の第19の実施の形態による被洗浄基板の洗浄方法は、容器内に供給する空気、不活性ガス等のガスの流量を調整しつつ、容器の圧力を制御して、被洗浄基板を洗浄するものである。本実施の形態によれば、洗浄中、容器の圧力を一定とすることができるので、工場排気に由来するプロセス揺らぎを生じることがなく、容器内の気流の乱れ、処理液の液はね、歩留まりの低下等のトラブルを効果的に防止することができる。
【実施例1】
【0008】
以下、本発明の洗浄システムの一実施例について図面に基づいて説明する。
図1は本実施例による洗浄システムの概念構成を示す上面図、図2は図1のII−II方向から見た側面図、図3は図1のIII−III方向から見た要部構成を示す部分側面図、図4は本実施例に用いる搬送ロボットの要部側面図、図5は同搬送ロボットの要部上面図である。
図1に示すように、本実施例の洗浄システムは、第1のロボットエリアAと第2のロボットエリアBとを有し、第1のロボットエリアAと第2のロボットエリアBとの間には、ウェハ受渡エリアCを設けている。ここで第1のロボットエリアAにおける搬送ロボット40の移動方向をX軸方向とすると、第2のロボットエリアBにおける払い出しロボット50の移動方向をY軸方向とする。なお、X軸とY軸とは、水平面において90度の角度を持った2方向を示している。
第1のロボットエリアAの側部には、移動方向に沿って複数の洗浄モジュールエリアDを配置する。図1では、洗浄モジュールエリアDを、第1のロボットエリアAの両側部にそれぞれ2箇所設けた場合を示している。
第2のロボットエリアBの側部には、移動方向に沿って、それぞれが被洗浄基板カセット61を載置する複数の載置部60を配置する。図1では、載置部60を4つ設けた場合を示しているが、洗浄前の被洗浄基板2を収納する被洗浄基板カセット61と、洗浄後の被洗浄基板2を収納する被洗浄基板カセット61とを載置するために、少なくとも2つの載置部60を備える。
ウェハ受取エリアCには、バッファステージ70を備えている。バッファステージ70は、搬送ロボット40と払い出しロボット50との間で被洗浄基板2を受け渡すための載置台である。このバッファステージ70についても、洗浄前の被洗浄基板2を載置するためのバッファステージ70と、洗浄後の被洗浄基板2を載置するためのバッファステージ70を備えている。
【0009】
搬送ロボット40は、X軸方向に配置されたレール41に沿って移動し、払い出しロボット50は、Y軸方向に配置されたレール51に沿って移動する。また、搬送ロボット40及び払い出しロボット50は、垂直方向の高さ変更が可能であるとともに、それぞれ垂直軸に対して回転可能である。なお、搬送ロボット40と払い出しロボット50とにより搬送手段が構成される。搬送ロボット40は、バッファステージ70に載置された洗浄前の被洗浄基板2を洗浄モジュールエリアDに設置される洗浄装置(図示せず)に搬送し、洗浄モジュールエリアDに設置される洗浄装置(図示せず)から取り出した洗浄後の被洗浄基板2をバッファステージ70に載置する。また、払い出しロボット50は、被洗浄基板カセット61から取り出した洗浄前の被洗浄基板2をバッファステージ70に載置し、バッファステージ70に載置された洗浄後の被洗浄基板2を被洗浄基板カセット61に搬送する。
本実施例によれば、被洗浄基板2の搬送手段として、搬送ロボット40と払い出しロボット50とを設け、搬送ロボット40は洗浄モジュールエリアDに設置される洗浄装置(図示せず)に対する被洗浄基板2の出し入れを行い、払い出しロボット50は被洗浄基板カセット61に対する被洗浄基板2の出し入れを行う。よって、搬送に要する時間を短縮することができるとともに、洗浄モジュールエリアDと被洗浄基板カセット61の設置エリアとを分離することができるため、被洗浄基板2に対する洗浄ガスなどの影響を低減することができる。また、搬送ロボット40と払い出しロボット50との間での被洗浄基板2の受渡を、ウェハ受取エリアCに設けたバッファステージ70を介して行う。よって、搬送効率を高めることができるとともに、搬送ロボット40と払い出しロボット50との接触干渉を考慮する必要がなくなり、制御性を高めることができる。
【0010】
図2に示すように、ロボットエリアAの下部には、排気管A1を配置する配管スペースが設けられ、洗浄モジュールエリアDの下部には、ガス供給管D1、薬液供給管D2、廃液管D3を配置する配管スペースが設けられている。
洗浄モジュールエリアDの下部に設けられたガス供給管D1、薬液供給管D2、及び廃液管D3は、それぞれの接続口となるプラグを洗浄モジュールエリアD内に配置している。
本実施例のように、ロボットエリアAの下部に排気管A1を設けることで、ロボットエリアAの下部から排気を行う。このようにロボットエリアAから排気を行うことで、ロボットエリアAを負圧に保つことができ、洗浄装置に対するウェハの出し入れ時に洗浄装置内にガスが侵入することを防止することができる。また、洗浄モジュールエリアDの下部に、ガス供給管D1、薬液供給管D2、及び廃液管D3の接続口となるプラグを配置することで、洗浄装置の設置を容易に行うことができる。
【0011】
次に、図1及び図2を参照して、本実施例による洗浄システムの動作を説明する。
まず、払い出しロボット50により、所定の載置部60の被洗浄基板カセット61に載置されているまだ洗浄処理されていない被洗浄基板2をバッファステージ70に搬送する。この場合、必要に応じて、払い出しロボット50の反転機構により、被洗浄基板2を反転してもよい。次いで、搬送ロボット40により、バッファステージ70に配置された被洗浄基板2を所定の洗浄装置1に搬送する。この搬送中、被洗浄基板2を掴持しているロボットアーム、例えば、上部ロボットアーム41を延伸させ、下部ロボットアーム42と接触しないような状態において、被洗浄基板2を掴持している上部ロボットアーム41のロボットハンド411を上下に反転させる。次いで、所定の洗浄装置1のチャンバ3内に被洗浄基板2を挿入して、チャンバ3を密閉後、所定の洗浄処理を実施する。なお、この洗浄処理を実施している間、払い出しロボット50及び搬送ロボット40により、次の被洗浄基板2を別の洗浄装置1に搬送してもよい。
所定の洗浄処理が終わると、搬送ロボット40の下部ロボットアーム42により、洗浄装置1のチャンバ3から被洗浄基板2を取り出し、バッファステージ70にこの被洗浄基板2を搬送する。そして、バッファステージ70に洗浄後の被洗浄基板2を配置すると、払い出しロボット50により、洗浄後の被洗浄基板2が挿入されている被洗浄基板カセット61内にバッファステージ70から該当する被洗浄基板2を挿入し、一連の洗浄工程を終了する。
【0012】
次に、図3から図5を用いて搬送手段の構成について説明する。
搬送ロボット40と払い出しロボット50の構成は同じであるため、搬送ロボット40について以下に説明し、払い出しロボット50についての説明は省略する。
搬送ロボット40は、上部ロボットアーム41と、下部ロボットアーム42とを備えている。
上部ロボットアーム41は、被洗浄基板2を挟持するロボットハンド411を備えている。ロボットハンド411は、先端に突起(爪部)412を有し、水平方向に伸縮自在にスライドする。突起(爪部)413は、ロボットハンド411と、このロボットハンド411の伸縮動作を行わせるスライド機構部414との間に設けられ、ロボットハンド411とともにスライドしない構成となっている。すなわち、被洗浄基板2は、突起(爪部)412と突起(爪部)413によって挟持される。上部ロボットアーム41には、反転機構415が設けられている。スライド機構部414は、この反転機構415の回転軸に設けている。また、上部ロボットアーム41には、ロボットハンド411を水平面内で移動させるための第1のアーム416と第2のアーム417を備えている。第1のアーム416の一端に反転機構415を、第1のアーム416の他端に第2のアーム417の一端を、それぞれ回動自在に設けている。
下部ロボットアーム42は、被洗浄基板2を挟持するロボットハンド421を備えている。ロボットハンド421は、先端に突起(爪部)422を有し、水平方向に伸縮自在にスライドする。突起(爪部)423は、ロボットハンド421と、このロボットハンド421の伸縮動作を行わせるスライド機構部424との間に設けられ、ロボットハンド421とともにスライドしない構成となっている。すなわち、被洗浄基板2は、突起(爪部)422と突起(爪部)423によって挟持される。下部ロボットアーム42には、ロボットハンド421を水平面内で移動させるための第1のアーム426と第2のアーム427を備えている。第1のアーム426の一端にスライド機構部424を、第1のアーム426の他端に第2のアーム427の一端を、それぞれ回動自在に設けている。
なお、上記実施例では、上部ロボットアーム41に反転機構415を設けた場合で説明したが、下部ロボットアーム42にも設けてもよい。搬送ロボット40が反転機構415を有することにより、洗浄装置において被洗浄基板2の表面及び裏面を洗浄することができる。
また、搬送ロボット40の反転機構415は、本実施例では、バッファステージ70から洗浄装置に被洗浄基板2を搬送する途中、及び、被洗浄基板2の洗浄後に洗浄装置からバッファステージ70へ被洗浄基板2を搬送する途中に駆動するよう構成されている。これにより、被洗浄基板2の搬送中に被洗浄基板2を反転することができるので、洗浄システムのスループットを低減することなく、被洗浄基板2の両面を洗浄することができる。
【0013】
以下に上部ロボットアーム41の反転動作を説明する。
図5では、上部ロボットアーム41のロボットハンド411が回転(反転)する際に、下部ロボットアーム42のロボットハンド421に接触しないように、第1のアーム416と第2のアーム417を駆動してロボットハンド411をロボットハンド421から遠ざける。そして、この状態において、反転機構415を駆動して、上部ロボットアーム41のロボットハンド411を反転させる。その代わりに、図示しないが、上部ロボットアーム41を上方に移動させることにより、下部ロボットアーム42のロボットハンド421に接触しないようにして、上部ロボットアーム41のロボットハンド411を反転機構415により反転させてもよい。
なお、4つの載置部60及び2つのバッファステージ70は、被洗浄基板2の洗浄処理を実施しているか否かにより、すなわち、洗浄後の被洗浄基板2であるか洗浄前の被洗浄基板2であるかにより、いずれの載置部60の被洗浄基板カセット61内に挿入するか、また、いずれのバッファステージ70に配置するかを予め決められていてもよい。
また、同様に、払い出しロボット50及び搬送ロボット40は、それぞれ、上部ロボットアーム41と下部ロボットアーム42の一方を洗浄前の被洗浄基板2用とし、他方を洗浄後の被洗浄基板2用としてもよい。このような構成とすることにより、クロスコンタミネーションを効果的に防止することができる。
また、本実施例の洗浄システムでは、被洗浄基板2の搬送手段として、払い出しロボット50及び搬送ロボット40を利用する場合を示したが、本発明の搬送手段はこれに限らず、1つの搬送ロボットによって載置部60と洗浄装置1との間で被洗浄基板2を搬送してもよい。
【0014】
次に、本発明の洗浄システムに用いる洗浄装置について説明する。
図6は本実施例による洗浄装置の要部構成図である。
本実施例における洗浄装置1は、いわゆる酸系洗浄液、アルカリ系洗浄液、有機溶剤、これらに界面活性剤を添加した洗浄液、機能水と呼ばれる極少量ガスを超純水に溶解させた洗浄液やオゾン水、又は超純水を複数種類使用して複数段階の洗浄を行うものである。洗浄装置1は、洗浄モジュールエリアDに配置されている。
洗浄装置1は、被洗浄基板2を容器3内に配置して洗浄する。洗浄装置1は、外気から遮断して容器3内の雰囲気を測定する雰囲気成分計測器4と、雰囲気を制御するための雰囲気制御手段と、容器3内の圧力を計測する圧力計測器10とを有する。ここで雰囲気制御手段は、ガス供給手段5及びガス排気手段6、7によって構成され、容器3内の雰囲気を制御する。容器3内の雰囲気としては、圧力、温度、濃度など任意である。しかし、被洗浄基板の自然酸化膜形成には、酸化種である酸素と大気中に含まれる水分が相互作用を起こしていること、精密基板をクリーンルーム内雰囲気に暴露しないで容器3内で搬送する際に、充填する不活性ガスの制御には、酸素濃度、水分濃度の制御が重要な因子の一つとして挙げられること、及び、被洗浄基板の自然酸化膜形成の過程において、水分が存在する雰囲気においても酸化種である酸素濃度が低濃度であれば、被洗浄基板の自然酸化膜形成が抑制されることから、容器3内の雰囲気の制御は酸素濃度の制御が好適であり、雰囲気成分計測器4としては酸素濃度計が好適である。
なお、本実施例の洗浄装置1では、外気から遮断した、いわゆる密閉系のものを例示しているが、開放系のものであってもよい。この場合には、洗浄システムとして雰囲気制御手段を備えていれば、洗浄装置に雰囲気制御手段を備えていなくてもよい。なお、洗浄システムとして雰囲気制御手段を備えると共に、洗浄装置としても雰囲気制御手段を備えていることが好ましい。
【0015】
ガス供給手段5は、減圧弁5A、マスフローコントローラ5B、及びバルブ5Cで構成されており、容器3内に不活性ガスを供給する。ガス供給手段5は、単一ガスの供給手段であり、不活性ガスとしては窒素やアルゴンなどが好ましいが、被洗浄基板2の種類、洗浄目的に応じてガス種は任意に選択可能である。また、単一ガスではなく混合ガスとしてもよい。ガス供給手段5から供給されるガスは、シャワープレート15から容器3内に導入される。シャワープレート15は、被洗浄基板2の被洗浄面に対向した部位からガスを均一に供給するように、被洗浄基板2の被洗浄面と対向する位置に配置され、詳細には内径0.5mmの孔を100個有している。なお、シャワープレート15の大きさは、被洗浄基板2とほぼ一致していることが好ましいが、被洗浄基板2に対してガスの均一な供給を実現するためにその形状、内径、孔数を決定すればよく、上記の構成に限定されない。
なお、ガス供給手段5として、減圧弁5A、マスフローコントローラ5B、バルブ5Cによる一般的なガス流量制御系の組合せを説明したが、圧力制御による流量制御でも十分に対応可能である。ガス流量制御系を構築する部材については上記組合せに限定されるものではなく、また供給配管についてはガス滞留部を削減することが好ましい。ガス供給手段の構成例については後述する。
【0016】
ガス排気手段6は、バルブ6Aとバルブ6Aの下流に設けられた真空ポンプ6Bから構成されており、真空排気を行うガス排気系である。また、ガス排気手段7は、バルブ(制御弁)7Aと、圧力制御手段7Bから構成されており、工場排気に接続された一般排気を行うガス排気系である。そして、バルブ6Aとバルブ7Aにより排気系を切り換えることが可能となっている。ガス排気手段6及び7の排気配管は効率的なガス置換を行うため、ガス滞留部を削減することが好ましい。また、排気口は、流体の均一な流れを作り出すため、同心円に沿って配置することが好ましく、また真空排気と一般排気の排気口を分けて配置してもよい。なお、ガス排気手段7については後述する。
【0017】
容器3の下方ほぼ中央部から容器3内に筒状固定軸16が挿入されており、この筒状固定軸16に流体軸受け17を介して回転支持部材18が筒状固定軸16を中心にして回転自在に支持されている。この回転支持部材18の上端部には、被洗浄基板2を水平状態で保持するテーブル19が連結されており、下端部には、これを囲繞するように駆動モータ20が配置されている。駆動モータ20によって回転支持部材18を回転すれば、テーブル19を介して被洗浄基板2を回転できるようになっている。筒状固定軸16、流体軸受け17、回転支持部材18、テーブル19及び駆動モータ20は、本発明の回転保持手段(回転保持機構)に相当する。
この回転保持手段には不活性ガスを供給するガス供給手段21が連結されており、ガス供給手段21から供給される不活性ガスにより回転保持手段からの外気混入を防止する。ガス供給手段21は、ガス供給手段5と同様に、減圧弁21A、バルブ21B、マスフローコントローラ21Cを有する一般的なガス流量制御を行うための組合せで構成されるが、圧力制御による流量制御でも十分に対応可能である。またガス供給配管についてはガス滞留部を削減することが好ましい。また、図1では、ガス供給口は筒状固定軸16と流体軸受け17を封止、固定している2箇所に配置しているが、この部位についてもそれに限定されるものではない。
なお、回転保持手段におけるガス排気はガス排気手段6及び7と兼用している。これにより、容器3の加工工程数を削減して製作コストの削減を行っているが、この手法についてもそれに限定されるものではなく、ガス供給系統数に応じたガス供給手段21を配置し、回転保持手段に配置したガス供給手段21専用のガス排気手段を配置してもよい。また、基板を回転させる手段として、回転支持部材18を直接駆動モータ20によって回転させる構成としたが、それに限定されるものではなく、回転支持部材18にプーリーを連結し、これを被駆動側タイミングプーリーとして回転させるなどの基板を回転させることができる他の構成でもよい。
【0018】
ところで、本実施例のように装置外部に配置された回転機構は、一般的にベアリングのような流体軸受けを介して固定軸に回転支持部材が配置されており、パーティクルや外気混入を防ぐことは容易ではない。そこで、流体軸受け17として真空装置などで用いられる磁気シールユニットと呼ばれる磁性流体と強力マグネットの組合せにより、高真空に対応した無発塵の回転軸シール方式の流体軸受けを採用することで、パーティクルや外気混入を防止した回転軸の流体軸受け封止も可能である。
この場合、洗浄装置1の容器3内の圧力が大気圧より小さいと、大気成分が磁性流体中を拡散して洗浄装置1内に侵入するおそれがあり、これにより被洗浄基板の自然酸化膜形成が行われることがある。これを防止するためには、容器3内の圧力をV1、流体軸受け17の圧力をV2、大気圧をV3としたとき、V1>V2>V3となるように圧力を調整すればよい。あるいは、流体軸受け17の大気側の位置に予備室を設け、この予備室の圧力を洗浄装置1の室内圧力より小さい圧力とすればよい。
磁気シールユニットで使用される磁性材料は、一般的に耐食性に優れていない。そのため、回転軸の流体軸受け封止に磁気シールユニットを採用する場合には、酸やアルカリなどの洗浄液蒸気(ミスト)の存在する洗浄装置雰囲気から磁気シールユニットを保護するために、別途ガス供給手段とガス排気手段を具備させることが好ましい。
【0019】
容器3の下方には、酸系洗浄液、アルカリ系洗浄液、有機溶剤などの薬品洗浄液を別々に排水する排水口22A、22B、22C、22D及び機能水、オゾン水、超純水などの洗浄水を排水する排水口22Eが設けられている。そして、それぞれの排水口22A、22B、22C、22D、22Eへ所望の洗浄廃液を誘導させるために、同心円状に配された複数のカップ状誘導壁11A、11B、11C、11Dが配置されている。カップ状誘導壁11A、11B、11C、11Dは、カップ形状を伏せた状態で配置されており、中心部に形成した開口内にテーブル19が配置されている。各カップ状誘導壁11A、11B、11C、11Dの間に隙間を形成することにより排水通路12A、12B、12C、12D、12Eを形成する。なお、これらの排水通路12A、12B、12C、12D、12Eによってガス排気通路も形成される。図1においては、カップ状誘導壁11Aとカップ状誘導壁11Bとの間の排水通路12Bが解放され、その他の排水通路12A、12C、12D、12Eは閉塞された状態を示している。カップ状誘導壁11A、11B、11C、11Dは使用する洗浄液の種類に応じて少なくとも3段配置される。
【0020】
カップ状誘導壁11A、11B、11C、11Dの下部には、カップ状誘導壁11A、11B、11C、11Dを動作させるための駆動軸13A、13B、13C、13Dが設けられている。これらの駆動軸13A、13B、13C、13Dは、駆動手段14A、14B、14C、14Dによって駆動される。駆動手段14A、14B、14C、14Dによって駆動軸13A、13B、13C、13Dを動作させてカップ状誘導壁11A、11B、11C、11Dを動作すれば、いずれかの排水通路12A、12B、12C、12D、12Eが解放され、所望の洗浄廃液を所望の排水系に誘導できるようになっている。駆動手段14A、14B、14C、14Dは、例えば独立制御が可能な別々のモータや、メカシリンダを用いることができる。駆動手段14A、14B、14C、14Dとして別々のモータやメカシリンダを用いることで、例えば排水通路12Aの解放状態から排水通路12Cの解放状態への切り換え動作時に、排水通路12Bを解放することなく行うことができる。
排水口22A、22B、22C、22D、22Eと排水通路12A、12B、12C、12D、12Eは、本発明の排水機構に相当する。本実施例では、それぞれの排水系の区画に、廃液が排気系に混入しないように、排気口8A、8B、8C、8D、8Eを排水口22A、22B、22C、22D、22Eよりも高い位置に設けて、排水系からの外気混入を防止している。排気口8Aはガス排気手段7(通常排気)に連結され、排気口8B、8C、8D、8Eはガス排気手段6(真空排気)に連結され、バルブ6A、7Aで真空排気/通常排気の切り換えを可能にしている。なお、ガス排気手段6、7の代わりに排水系からの外気混入防止専用のガス排気手段を別に配置してもよい。
【0021】
洗浄液は、例えばカップ状誘導壁11A、11B間の隙間の排水通路12Bから排水口22Bに排水される。このときカップ状誘導壁11A、11B間の隙間を大きくすると排水しやすいが、この隙間が大きいと、大気や排気ガスがこの隙間を通って洗浄装置1の容器3内に逆流するおそれがある。そこで、本実施例においては、それぞれの排水通路12A、12B、12C、12D、12Eを、テーブル19から径方向に延びた流路断面が大きい上流側通路と、上流側通路から急激に下方に屈曲した流路断面が小さい下流側通路で構成している。なお、下流側通路は、例えばカップ状誘導壁11Aの垂直部と、カップ状誘導壁11Bの垂直部との間に形成される隙間に、リング状に形成されている。したがって、排水通路12A、12B、12C、12D、12Eによって形成される不活性ガス通路は下流側通路において絞られて、その流路断面は上流側通路の流路断面より小さくなる。
一般に、ガス流路においては、ガス流路の断面積が大きいとガス流速は小さく、断面積が小さいとガス流速は大きい。したがって、絞られた下流側通路におけるガス流速は、上流側通路におけるガス流速より大きい。このときの下流側通路に流れるガス流速を最大になるように流路断面の設計を行うことにより、排気を効率的に、かつ逆流することを防止することができる。
一般に、ガス流は流路断面積が一定のとき、速度が小さいと層流になり、速度が大きくなるにつれて中間流から乱流に変化する。乱流、層流の指標としてはレイノルズ数が知られている。そこで、上流側通路及び下流側通路のガス流速を中間流から層流になるように、かつ下流側通路のガス流速が最大になるように、流路断面を設計することが好ましい。
【0022】
前述したように、回転駆動における駆動部の封止手段は磁気シールユニット方式の流体軸受け17が有効であるが、駆動手段14A、14B、14C、14D及び駆動軸13A、13B、13C、13Dによる駆動機構では、ベローズ方式のように駆動部分をバネ状の薄板ジャバラ構造の管で周覆封止を行う封止手段が有効である。
なお、排水系においては、一般的に生活排水配管に用いられるU字配管のような排水トラップを配置することが好ましく、また万一外気が混入した際にも効率的に排気、排水が可能なように滞留部を削減することが好ましい。
また、排水口22A、22B、22C、22D、22Eと排気口8A、8B、8C、8D、8Eを兼用することもできるが、洗浄時に大量の洗浄液を使用した場合には、排水口22A、22B、22C、22D、22Eに洗浄液が滞留して洗浄装置1内の圧力が変動する恐れがあるため、洗浄装置1内の圧力を保持する機構を配置するなど対策を講じる必要がある。
なお、本実施例における排水系は、酸系洗浄液、アルカリ系洗浄液、有機溶剤などの薬品洗浄液の配水系と機能水、オゾン水、超純水などの洗浄水排水系の中から5系統の分別排水を示しているが、3系統、4系統、又は6系統以上とすることもできる。
【0023】
次に、洗浄液噴射手段について説明する。
容器3内には、洗浄液供給管32A、32B、32C、32Dが配置されている。洗浄液供給管32A、32B、32C、32Dは、回転支持部34に連結された洗浄液噴射アーム35の上部に固定され、被洗浄基板2の上方に位置するように上部ノズル36A、36B、36C、36Dに連結されている。回転支持部34の下方には、駆動モータ38が配置されており、駆動モータ38を駆動させることにより、回転支持部34を中心にして洗浄液噴射アーム35が被洗浄基板2の上部を円弧動作するようになっている。そして、洗浄液供給管32A、32B、32C、32Dから洗浄液を供給すれば、上部ノズル36A、36B、36C、36Dから、被洗浄基板2の被洗浄面に向けてそれぞれ所望の洗浄液を噴射できるようになっている。これら洗浄液供給管32A、32B、32C、32D、上部ノズル36A、36B、36C、36D、回転支持部34、洗浄液噴射アーム35及び駆動モータ38は、本発明の洗浄液噴射手段に相当する。この洗浄液噴射手段にガス供給手段31を連結させ、洗浄液噴射手段の回転支持部34近傍のガス滞留を減少させるとともに、効率的なガス置換及び清浄な洗浄液噴射機構の雰囲気を制御する。
ガス供給手段31は、ガス供給手段5と同様に、減圧弁31A、バルブ31B、マスフローコントローラ31Cを有する一般的なガス流量制御を行うための組合せで構成されるが、圧力制御による流量制御でも十分に対応可能である。またガス供給配管についてはガス滞留部を削減することが好ましい。また、ガス供給口も回転支持部34近傍の洗浄装置1側面に配置しているが、この部位についてもそれに限定されるものではない。
ガス供給手段31から供給されたガスの排気手段は、排気口8A、8B、8C、8D、8Eに連結されたガス排気手段6、7により行うが、この場合もガス排気手段6、7の代わりにガス供給手段31専用のガス排気手段を別に配置してもよい。
【0024】
本実施例における洗浄液供給については4系統の洗浄液供給系を示しているが、2系統や3系統でもよい。また、5系統以上に洗浄液供給系統が増えた場合においては、必要数に応じて洗浄液供給管を配置し、洗浄液噴射アーム35上部に供給配管を固定し、必要数に応じて上部ノズルを配置するだけでよい。また、液噴射系統を分ける必要がある場合には液噴射アームを増設可能であるため、洗浄液供給管数、液噴射アーム数、上部ノズル数は任意である。
なお、ガス供給手段5、ガス供給手段21及びガス供給手段31は別々に設ける代わりに一体構成として兼用し、必要ガス総流量を削減するとともに、容器3の加工工程数削減によりランニングコストの削減及び製作コストの削減を図ることができる。
また、効率的な洗浄装置雰囲気の制御を実現するため、洗浄装置1は、ガス供給口、ガス排気口、洗浄液供給口、排水口、雰囲気計測用窓、圧力計測用窓以外に外部と通じる口や窓は設けておらず、外部と遮断された密閉構造とすることが好ましい。したがって、洗浄装置上板、外壁、下板など洗浄装置外観を構築する部材はすべてOリングや樹脂パッキンやメタルCリングなど各種封止手段により封じられている。
洗浄装置の内部形状としては、効率的な洗浄装置雰囲気の制御を実現するため、ガス滞留部の削減された構造とすることが好ましく、また洗浄装置内圧力は極力外気混入を防ぐために外気より陽圧に維持することが好ましい。
また、洗浄液供給配管には滞留部を削減することが好ましく、また脱気やガス添加を行う部位については、洗浄装置内、もしくは洗浄装置直近に配置することが好ましい。
なお、洗浄液供給系を構築する配管やバルブには、通常、酸やアルカリ溶液に優れた耐性を示すテフロン系の樹脂材料が用いられる。このようなテフロン系樹脂材料は、ガス透過係数が大きいことが知られており、洗浄装置内の雰囲気制御を行っても、洗浄液供給システム内の樹脂配管や樹脂バルブに大気雰囲気(酸素)が透過により混入してしまい、洗浄液中の溶存酸素濃度が増大してしまい、被洗浄基板に自然酸化膜が形成されてしまう。従って、図示しないが、被洗浄基板の自然酸化膜形成を抑制するために雰囲気制御(低酸素濃度)を行う場合には、洗浄液を秤量及び/または供給を行う洗浄液供給システムについても、同様に雰囲気制御を行うことが好ましい。
【0025】
図7は、洗浄モジュールエリアDに配置される洗浄装置の概念構成図である。
洗浄装置1は、ガス供給手段としてのファンとフィルタとから構成されるファンフィルタユニット15Aと、被洗浄基板2を洗浄するためのチャンバ(容器)3と、このチャンバ3からガスを排気するための排気管8と、開度を調整可能な制御弁(調整弁)7Aと、チャンバ3の圧力を検出する圧力計7Cと、チャンバ3内から排出されるガスの流量を検出するガス流量計(ガス流量検出手段)7Dとを備えている。また、ガス排気手段7は、排気管8の途中に(すなわち、チャンバ3の排気側に)設けられ、圧力計7Cで検出されるチャンバ3の圧力が一定となるように、制御弁7Aの開度を調整(制御)する圧力制御手段7Bと、ガス流量計で検出されるチャンバ3から排気されるガス流量が一定となるように、ファンフィルタユニット15Aのファンの回転数や電圧等を制御するガス流量調整手段7Eとを備えている。
ファンフィルタユニット15Aは、清浄空気、不活性ガス(例えば、窒素)等のガスをチャンバ3内に供給するものであり、図示しないファンの回転数(例えば、インバータ)あるいは出力電圧等により、洗浄装置1のサイズ等の構成に応じて、例えば、3〜8m程度の範囲でガス供給量を制御可能なものである。そして、ガス流量検出手段7Dにおいて、排気されるガス流量の変動を検出した場合には、ガス流量調整手段7Eにより、所定の範囲内でファンの回転数等を制御されるものである。なお、本実施例では、ガス流量検出手段7D及びガス流量調整手段7Eが設けられていなくてもよい。
圧力制御手段7Bは、上述のように、例えば、圧力計7Cで検出されるチャンバ3の圧力が−100hPaとなるように、制御弁7Aの弁開度を制御(調整)するものである。また、ガス流量調整手段7Eは、ガス流量検出手段7Dにより検出された排気ガスの流量をモニタし、その流量に応じて、ファンフィルタユニット15Aのファンの回転数を制御するように構成される。
本発明の洗浄装置1は、このような構成を有することにより、洗浄中、容器の圧力とガス流量とを一定とすることができるので、工場排気に由来するプロセス揺らぎを生じることがなく、容器内の気流の乱れ、処理液の液はね、歩留まりの低下等のトラブルを効果的に防止することができる。
【実施例2】
【0026】
ここで図8及び図9に他の実施例による洗浄装置を示す。
図8は、他の実施例による洗浄装置の概念構成図、図9は、図8に示す装置に用いるシャワープレートを示す概略的な断面図である。なお、上記洗浄装置1の構成と異なる点を中心に説明するものとし、同様の構成要素については同一の符号を付すとともに、その説明を省略する。この洗浄装置1’は、ファンフィルタユニット15Aの代わりに、シャワープレート15Bを備えている。
シャワープレート15Bは、図9に示すように、チャンバ3にガスを吹き出す側の吹出プレートに設けられた複数の孔(コンダクタンス)153と、吹出口151から吹き出された不活性ガス等のガスの圧力を高めるための圧力室152とを有している。この圧力室152の圧力、すわなち、吹出プレートの上流側の圧力が、その下流側の圧力、すなわち、チャンバ3内の圧力の2倍以上となるような条件が成り立つと、流体(ガス)は概ね音速で流れることになり、ガスの流量は、所定の範囲において、圧力室152の圧力に比例する。したがって、孔153の数及び配置を適宜設計することにより、圧力室152の圧力を所定の範囲、例えば、200〜400kPaの範囲で制御することができ、これにより、チャンバ3に流入するガスの流量を所望の範囲、制御圧200kPa時の流量からその約2倍で制御(調整)することができる。
本実施例では、例えば、圧力室152の圧力を検出する圧力計を別途設け、圧力制御手段7Bの制御により、圧力室152の圧力を調整して、チャンバ3に供給するガスの流量を制御してもよい。
【0027】
上述の実施例においては、被洗浄基板2をテーブル19上に保持し、駆動モータ20により回転支持部材18を回転してテーブル19を介して被洗浄基板2を回転させる例について説明したが、被洗浄基板2をテーブル上に直接保持せずに、回転軸を中心に回転する支持体の上面にノズルを設け、このノズルにガスを供給して被洗浄基板2をベルヌイの定理により非接触で支持する構成でもよい。図10に同その構成を示す。
図10は本実施例における被洗浄基板支持部の断面側面図である。この被洗浄基板支持部では、中空円柱状のチャック93の中空部に、上下動可能な筒状のノズル部材94が配置されている。チャック93の上面の外周近辺には略垂直方向に突出した複数のツメ96が円形状に配列されて被洗浄基板2の周囲を支持する。また、複数のツメ96による円形の内側のチャック(テーブル)93上面にリング状突起97が配置されている。すなわち、リング状突起97の少なくとも内径は、被洗浄基板2の外周よりも小さい径である。リング状突起97の形状は任意であるが、被洗浄基板2の内側から外側に向かうにつれて徐々にリング状突起上面と被洗浄基板2の間隙が小さくなる形状であることが好ましい。チャック93は、上面に被洗浄基板2を載せた状態でモータ(図示省略)により回転する。
ノズル部材94は、中央にガス吐出孔95を有しており、ガス吐出孔95から窒素ガスなどの不活性ガス、清浄ガス等のガスを吐出させる(以下、「不活性ガス」で代表する)。ノズル部材94は、図示しない上下動駆動源によりチャック93の中空内を上下動可能に構成される。
【0028】
チャック93の上面に被洗浄基板2を載置し、ノズル部材94の上面をチャック93の上面より低い状態に保持して被洗浄基板2をチャック93の上面よりはなれた状態にし、上面に被洗浄基板2を載せた状態でチャック93を回転させる。この状態でガス吐出孔95から不活性ガス100を所定の流量で噴射すると、被洗浄基板2はチャック93の上面及びリング状突起97から浮き上がり、不活性ガス100は被洗浄基板2の裏面をガス吐出孔95から、ノズル部材94の上面と被洗浄基板2の間隙による通路101及びチャック93の上面と被洗浄基板2の間隙による通路102に沿って流れる。さらに、被洗浄基板2の周囲付近においては、リング状突起97の上面と被洗浄基板2との間隙による通路98を通って被洗浄基板2の周囲におけるリング状突起97の外方99から外部に流れる。
このとき、不活性ガス100は、ガス吐出孔95では流路断面が小さいので流速が大きく、その周囲のノズル部材94の上面と被洗浄基板2の間隙による通路101では流路断面が大きいので流速が減少し、チャック93の上面と被洗浄基板2の間隙による通路102では流路断面がやや小さくなるので流速はやや大きくなり、リング状突起97の上面と被洗浄基板2との間隙による通路98では、流路断面が非常に小さくなるので流速は非常に大きくなる。通路98を通ってリング状突起97の外側に達した不活性ガス100はリング状突起97の外方99から外方に拡散するので流速は小さくなる。したがって、ベルヌイの定理により被洗浄基板2の裏側の圧力分布は通路101、102で負圧になり、被洗浄基板2は通路101、102で下方に吸引され、回転しているチャック93の上面に沿って非接触で載置される。
不活性ガス100の流量は、被洗浄基板2がベルヌイの定理による負圧を生成することが可能な流量であり、被洗浄基板2の大きさや重量により異なるが、被洗浄基板2が直径200から300mm、厚さ0.7mmのシリコンウェハである場合は、50リットル/分程度が好ましい。
【0029】
この状態で被洗浄基板2の上方から洗浄液を流して被洗浄基板2を洗浄する。このとき、被洗浄基板2はチャック93の回転とともに回転しているので、洗浄液は被洗浄基板2の表面を外周方向に流れながら被洗浄基板2の表面を洗浄する。被洗浄基板2の周囲に達した洗浄液は、被洗浄基板2表面から外方に飛散するが、リング状突起97の外側における不活性ガス100の圧力が小さいので、一部は被洗浄基板2の裏面に回り込んで被洗浄基板2の裏面の周辺部を洗浄する。このときの回り込み位置は、不活性ガス100の流量、リング状突起97の位置、リング状突起97の上面と被洗浄基板2との間隙による通路98の流路断面の大きさ及び被洗浄基板2の回転数により変わる。したがって、これらを調整することにより洗浄液の回り込み位置を制御することができる。
【0030】
リング状突起97が無い場合では、回り込み位置が不均一であるため、裏面洗浄位置の形状が不均一になってしまう。しかし、本実施例のようにリング状突起97を設けると、その位置及びリング状突起97の高さや上面形状を調整することによる不活性ガス100の流速制御により回り込み位置が均一になり、裏面洗浄位置の形状を均一にすることができる。
なお、洗浄液を被洗浄基板2の裏面に回り込ませたくない場合には、リング状突起97の上面と被洗浄基板2との間隙による通路98を通る不活性ガス100の流速をさらに大きくして圧力を高くしたり、リング状突起97の配置位置を被洗浄基板2の周囲に近接した位置に設置したり、被洗浄基板2の回転数を大きくしたりする。
リング状突起97の配置位置の調整は、径の異なる複数種類のリング状突起97を用意し、それらを適宜選択使用することにより行うことができる。
なお、本実施例では、被洗浄基板2をベルヌイの定理によるチャック方式で説明したが、被洗浄基板2の背面中心部を吸着する方式であってもよい。このように被洗浄基板2を吸着する場合には、被洗浄基板2の中心から所定の半径位置に複数の不活性ガス吐出用のガス吐出孔を設ける。
また、被洗浄基板の外周位置から洗浄液を吐出し、かつ不活性ガス流量、リング状突起の位置、リング状突起上面と被洗浄基板の間隙による流路断面の大きさ、及び被洗浄基板の回転数を適正な状態にすることで、被洗浄基板の表面は洗浄液による洗浄が行え、かつ被洗浄基板の裏面は、洗浄液の回り込みにより均一に洗浄が行えるため、被洗浄基板の外周部のみの洗浄を行うことができる。
【実施例3】
【0031】
図10に示す実施例では、被洗浄基板2の上方から洗浄液を流して被洗浄基板2を洗浄しているので、洗浄中に万一被洗浄基板2が破損すると、洗浄液がノズル部材94のガス吐出孔95に侵入するおそれがある。本実施例は、この課題を解決するものであり、図11にその構成を示す。
図11は、他の実施例における被洗浄基板支持部の断面側面図である。図10と同一部分には同一符号を付している。なお、図11では、図10におけるチャック93とノズル部材94を一体構造とした例を示すが、図10のように両者を別体としてもよい。
被洗浄基板保持台(テーブル)111は、図6におけるチャック93とノズル部材94を一体構造として構成したもので、上面の外周近辺には複数のツメ96が円形状に配列されて被洗浄基板2の周囲を支持する。また、複数のツメ96による円形の内側にリング状突起97が配置されている。すなわち、リング状突起97の少なくとも内径は、被洗浄基板2の外周よりも小さい径である。
被洗浄基板保持台111の中央部には、図6のガス吐出孔95に相当するガス吐出部112が形成されている。ガス吐出部112は、不活性ガス供給源に連通したガス導入口113、ガス導入口113から導入された不活性ガスを一時的に滞留させるガス室114及び、ガス室114から被洗浄基板2の下方にガスを吐出させる1個あるいは複数個のガス吐出孔115より構成されている。ガス吐出孔115は、被洗浄基板2の洗浄中に万一被洗浄基板2が破損して洗浄液がガス吐出孔115に達しても、洗浄液がガス吐出孔115内に侵入しないように、上流側通路よりも吐出通路を小径とし、このガスの吐出通路径を1mm以下の細孔とすることが好ましい。このような細孔を高精度で単独に加工するのは困難であるので、図示のように2段の座グリ構造とすることが好ましい。
【0032】
ガス吐出孔115の吐出通路径がこのように細孔であると、ベルヌイの定理により被洗浄基板2を支持するために必要な不活性ガス流量を確保する場合、ガス吐出孔115を流れるガス流速が音速に近い流速となる。音速とは、周知のとおり流体が移動する速さの最大流速であり、流体は音速以上の速さにはなり得ない。即ち、音速に近い流速でガス吐出孔115から不活性ガスを吐出させることにより、洗浄中に万一被洗浄基板2が破損した場合においても、洗浄液のノズル部材94のガス吐出孔95への侵入を防止することが可能となる。
また、ベルヌイの定理により被洗浄基板2を支持し、かつ洗浄液の被洗浄基板2の裏面への回り込みを制御するために必要な不活性ガス流量を確保しにくい場合には、図8に示すように、ガス吐出孔115を必要に応じて複数個設けることにより、必要な不活性ガス流量を確保することができる。
なお、ツメ96を被洗浄基板2の円周に沿って同心円状になるように設計することは、被洗浄基板2の洗浄時に偏心による回転のゆらぎを発生させないためにも当然のことであるが、同時に被洗浄基板2中心に対向しない位置でかつ等角になるように、即ちツメ96の設置数は偶数ではなく奇数にすることが望ましい。これは被洗浄基板2を支持した時に被洗浄基板2のツメ96近傍にかかる応力を緩和させ、被洗浄基板2の破損を防止させる効果がある。
【0033】
以上説明したように、本発明の洗浄装置及び被洗浄基板の洗浄方法によれば、容器(チャンバ)の圧力を一定に調整しつつ、被洗浄基板の洗浄処理を行うことができるので、工場排気に由来するプロセス揺らぎを生じることがなく、容器内の気流の乱れ、処理液の液はね、歩留まりの低下等のトラブルを効果的に防止することができる。また、排気ガスの流量をモニタして、その変動に応じて、ファンフィルタユニットのファン回転数やシャワープレートの圧力室の圧力を制御することにより、このような効果を更に高めることができる。
また、本発明の洗浄システムによれば、被洗浄基板を搬送中に反転する反転機構を備えているので、洗浄システムのスループットを低減することなく、被洗浄基板の裏面を容易に洗浄することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、半導体基板、液晶ガラス基板、磁気ディスク等の被洗浄基板を洗浄するための洗浄装置及びこれを用いた洗浄システムに好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施例による洗浄システムの概念構成を示す上面図
【図2】図1のII−II方向から見た側面図
【図3】図1のIII−III方向から見た要部構成を示す部分側面図
【図4】本実施例に用いる搬送ロボットの要部側面図
【図5】同搬送ロボットの要部上面図
【図6】本実施例による洗浄装置の要部構成図
【図7】洗浄モジュールエリアDに配置される洗浄装置の概念構成図
【図8】他の実施例による洗浄装置の概念構成図
【図9】図8に示す装置に用いるシャワープレートを示す概略的な断面図
【図10】本実施例における被洗浄基板支持部の断面側面図
【図11】他の実施例における被洗浄基板支持部の断面側面図
【符号の説明】
【0036】
1 洗浄装置
2 被洗浄基板
3 容器(チャンバ)
4 雰囲気成分計測器
5 ガス供給手段
6 ガス排気手段
7A 制御弁
7B 圧力制御手段
7C 圧力計
7D ガス流量検出手段
7E ガス流量調整手段
11A、11B、11C、11D カップ状誘導壁
12A、12B、12C 排水通路
15A ファンフィルタユニット
15、15B シャワープレート
40 搬送ロボット
41 上部ロボットアーム
42 下部ロボットアーム
50 払い出しロボット
60 載置部
61 被洗浄基板カセット
70 バッファステージ
411 ボットハンド
415 反転機構
421 ロボットハンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板、液晶ガラス基板、磁気ディスク等の被洗浄基板を容器内にて洗浄する洗浄装置であって、
空気や不活性ガス等を前記容器内に供給する手段と、
前記容器内から前記空気や不活性ガス等を排出する手段とを備え、
前記空気や不活性ガス等を排出する手段は、前記容器の圧力を制御する圧力制御手段を有することを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記圧力制御手段は圧力計を備え、
前記排気手段は、前記圧力計の検出値によりその開度を制御する制御弁を含むことを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記容器内から排出される空気や不活性ガス等の流量を検出する手段を更に備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記空気や不活性ガス等を前記容器内に供給する手段は、フィルタを介して前記容器内に前記空気や不活性ガス等を導入することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記空気や不活性ガス等を前記容器内に供給する手段は、吹出口に複数の孔が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記被洗浄基板を水平状態で保持するとともに回転させる回転保持機構を有し、前記回転保持機構に前記空気や不活性ガス等を供給する手段を備えたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記回転保持機構は、前記容器内に配置された前記被洗浄基板を保持するテーブルと、前記テーブルを回転させる回転軸と、前記回転軸を保持する流体軸受けとを有し、前記容器内の圧力を前記流体軸受けの圧力より大きくし、前記流体軸受けの圧力を大気圧より大きくしたことを特徴とする請求項6に記載の洗浄装置。
【請求項8】
前記被洗浄基板を水平状態で保持するとともに回転させる回転保持機構を有し、前記回転保持機構は前記被洗浄基板を保持するテーブルを有し、前記被洗浄基板と前記テーブルとの間に不活性ガスを供給する手段を有し、前記不活性ガス供給手段から供給された前記不活性ガスを前記被洗浄基板の外周から排出することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項9】
前記被洗浄基板の外周より小さい内径を有するリング状突起を前記テーブルに設けたことを特徴とする請求項8に記載の洗浄装置。
【請求項10】
前記不活性ガス供給手段は、複数の孔が設けられた吐出孔を有することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の洗浄装置。
【請求項11】
前記被洗浄基板の被洗浄面に向けて洗浄液を噴射する洗浄液噴射機構と、前記洗浄液噴射機構から噴射された洗浄液の洗浄廃液を酸系、アルカリ系、有機系、及び一般排水系の所望の排水系に分別排水する排水機構とを更に備えることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項12】
前記排水機構は、同心円状に配された複数のカップ状誘導壁を有し、複数の前記カップ状誘導壁間の間隙により排水流路及びガス流路を形成し、前記ガス流路は複数の前記カップ状誘導壁間に形成された流路断面が大きい第1の通路とその下流側に連結する流路断面が小さい第2の通路とを有し、前記第2の通路を通過するガス流速が最大になるように流路断面を設計したことを特徴とする請求項11に記載の洗浄装置。
【請求項13】
前記排水機構は、前記複数のカップ状誘導壁の各々を個別に上下動させる駆動手段を有し、前記駆動手段によって同じタイミングで複数の前記カップ状誘導壁を動作可能とすることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の洗浄装置。
【請求項14】
隣接する前記カップ状誘導壁間の間隙により形成される排水通路が複数設けられ、前記駆動手段は、解放する前記排水通路以外の前記排水通路を閉塞したままで前記カップ状誘導壁を動作させることを特徴とする請求項11から請求項13のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれかに記載の洗浄装置を用いた洗浄システムであって、
前記被洗浄基板を載置する載置部と、
前記載置部から前記洗浄装置まで前記被洗浄基板を搬送する搬送手段と、
を備えることを特徴とする洗浄システム。
【請求項16】
前記搬送手段は、前記載置部から前記洗浄装置まで前記被洗浄基板を搬送する際に、前記被洗浄基板を保持する保持手段を有し、前記保持手段は、保持した前記被洗浄基板を反転する反転機構を有することを特徴とする請求項15に記載の洗浄システム。
【請求項17】
前記載置部と前記洗浄装置の間に、前記被洗浄基板を反転する反転機を更に備えることを特徴とする請求項15に記載の洗浄システム。
【請求項18】
前記載置部と、複数の前記洗浄装置と、前記搬送手段とをそれぞれ設置するためのフレームを備え、必要に応じて所定数の前記洗浄装置を該フレームに設置可能であることを特徴とする請求項15から請求項17のいずれかに記載の洗浄システム。
【請求項19】
半導体基板、液晶ガラス基板、磁気ディスク等の被洗浄基板を容器内にて洗浄する洗浄方法であって、
前記容器内に供給する空気、不活性ガス等の流量を調整しつつ、前記容器の圧力を制御して、前記被洗浄基板を洗浄することを特徴とする被洗浄基板の洗浄方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図1】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−108790(P2008−108790A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−287878(P2006−287878)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(301059499)リアライズ・アドバンストテクノロジ株式会社 (13)
【Fターム(参考)】