説明

洗浄装置

【課題】ウエハを保持した環状のフレームがスピンナーテーブルの所定位置に確実に固定されたことを確認することができる洗浄装置を提供する。
【解決手段】スピンナーテーブル31上へのフレーム保持機構32は環状のフレームの下面を保持する保持面を有する下面支持部材321と、下面支持部材に中間部が支持軸323によって揺動可能に軸支され支持軸の上側に環状のフレームの上面を押圧する爪部322bが設けられているとともに支持軸の下側に錘部322cを備えた振り子部材322とを具備している。下面支持部材321にはスピンナーテーブルの回転が停止されている状態において爪部より内側にあって保持面より上方に突出し環状のフレームの外周縁を規制する規制部321eが設けられている。フレームのスピンナーテーブル上への設定がズレていると、フレームが規制部に乗り上げ真空吸着力が低下するので、ズレが検出可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物を洗浄するための洗浄装置、更に詳しくは被加工物を回転しつつ洗浄水を供給して被加工物を洗浄する洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に形成されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の矩形領域が区画され、この区画された矩形領域にIC、LSI等のデバイスが形成される。このように形成された半導体ウエーハをストリートに沿って切断することにより個々のデバイスを製造している。
【0003】
上述した半導体ウエーハのストリートに沿った切断は、通常、ダイサーと呼ばれている切削装置によって行われている。切削装置によって個々のデバイスに分割された半導体ウエーハの表面は切削屑が浮遊して汚染されるため、切削作業を実施した後に半導体ウエーハは洗浄装置によって洗浄される。なお、切削装置によって半導体ウエーハのストリートに沿って切削する際には、切削された半導体ウエーハがバラバラにならないように半導体ウエーハを環状のフレームに装着された粘着テープに貼着した状態で実施する。
【0004】
上記洗浄装置はスピンナーテーブルを備え、このスピンナーテーブルに切削加工後の半導体ウエーハを粘着テープを介して吸引保持し、半導体ウエーハに洗浄水を供給しつつスピンナーテーブルを高速回転して切削加工後の半導体ウエーハをスピンナー洗浄する。このとき、半導体ウエーハが貼着された粘着テープが装着されている環状のフレームは、スピンナーテーブルの外周に装着された複数のフレーム保持機構によって固定される。
【0005】
半導体ウエーハが貼着された粘着テープが装着されている環状のフレームを保持するための複数のフレーム保持機構は、環状のフレームの下面を保持する下面支持部材と、該下面支持部材に中間部が支持軸によって揺動可能に軸支され上端部に環状のフレームの上面を押圧する爪部が設けられているとともに下端部に錘部を備えた振り子部材とからなり、スピンナーテーブルの回転によって振り子部材に作用する遠心力により錘部が支持軸を中心として外方に揺動することにより、振り子部材の上端部に設けられた爪部を環状のフレームの上面を押圧するように構成されている。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2006−128359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
而して、半導体ウエーハを粘着テープを介して保持した環状のフレームがスピンナーテーブルに装着された下面支持部材にズレた状態で載置され、一部が振り子部材の爪部に載置されると、フレーム保持機構によって環状のフレームを固定することができず、スピンナーテーブルの回転によって生ずる遠心力により半導体ウエーハを粘着テープを介して保持した状態で環状のフレームがスピンナーテーブルから離脱するという問題がある。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、被加工物を粘着テープを介して保持した環状のフレームがスピンナーテーブルに装着されたフレーム保持機構の所定位置に確実に固定されることを確認することができる洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、環状のフレームに装着された粘着テープに貼着された被加工物を吸引保持する吸引保持部を備えたスピンナーテーブルと、該スピンナーテーブルの外周に互いに所定の間隔を置いて装着され該環状のフレームを保持する複数のフレーム保持機構と、該スピンナーテーブルに保持された被加工物に洗浄水を供給する洗浄水供給手段と、該ピンナーテーブルの該吸引保持部に負圧を作用せしめる吸引手段と、を具備する洗浄装置において、
該フレーム保持機構は、該環状のフレームの下面を保持する保持面を有する下面支持部材と、該下面支持部材に中間部が支持軸によって揺動可能に軸支され該支持軸の上側に該環状のフレームの上面を押圧する爪部が設けられているとともに該支持軸の下側に錘部を備えた振り子部材とを具備しており、
該下面支持部材には、該スピンナーテーブルの回転が停止されている状態において該爪部より内側に該保持面より上方に突出し該環状のフレームの外周縁を規制する規制部が設けられている、
ことを特徴とする洗浄装置が提供される。
【0009】
上記吸引手段の吸引源とスピンナーテーブルの吸引保持部とを連通する配管に配設された圧力センサーと、該圧力センサーによって検出された圧力が所定値以上の場合にはエラーメッセージを表示手段に出力する制御手段を具備していることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明による洗浄装置を構成するスピンナーテーブルの外周に装着され環状のフレームを保持する複数のフレーム保持機構は、環状のフレームの下面を保持する保持面を有する下面支持部材と、下面支持部材に中間部が支持軸によって揺動可能に軸支され支持軸の上側に環状のフレームの上面を押圧する爪部が設けられているとともに支持軸の下側に錘部を備えた振り子部材とを具備しており、下面支持部材にはスピンナーテーブルの回転が停止されている状態において爪部より内側に保持面より上方に突出し環状のフレームの外周縁を規制する規制部が設けられているので、粘着テープを介して被加工物を支持する環状のフレームを下面支持部材の保持面に載置する際に、環状のフレームの外周縁が規制部に沿って案内されるため、環状のフレームを下面支持部材の適正位置に位置付けることができる。
また、粘着テープを介して被加工物を支持する環状のフレームを下面支持部材の保持面に載置する際に、誤って位置ズレすると環状のフレームの一部が規制部の上端に位置付けられ、環状のフレームの一部が浮き上がった状態になるので、オペレータはこれに気づいて環状のフレームを正規の位置に載置し直すことができる。
更に、本発明によれば、上記吸引手段の吸引源とスピンナーテーブルの吸引保持部とを連通する配管に配設された圧力センサーと、該圧力センサーによって検出された圧力が所定値以上の場合にはエラーメッセージを表示手段に出力する制御手段を具備しているので、粘着テープを介して被加工物を支持する環状のフレームを下面支持部材の保持面に載置する際に、誤って位置ズレして環状のフレームの一部が規制部の上端に位置付けられ、環状のフレームの一部が浮き上がった状態になると、上記吸引手段の吸引源とスピンナーテーブルの吸引保持部とを連通する配管内の圧力が低下しないため、エラーメッセージを表示するので、オペレータはこれに気づいて環状のフレームを正規の位置に載置し直すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に従って構成された洗浄装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1には、本発明に従って構成された洗浄装置の斜視図が示されている。
図示の実施形態における洗浄装置2は、スピンナーテーブル機構3と、該スピンナーテーブル機構3を包囲して配設された洗浄水受け手段4を具備している。スピンナーテーブル機構3は、スピンナーテーブル31と、該スピンナーテーブル31を回転駆動する電動モータ33と、該電動モータ33を上下方向に移動可能に支持する支持機構34を具備している。スピンナーテーブル31は、図2に示すようにテーブル本体311と、該テーブル本体311の上面に装着された吸引保持部としての吸着チャック312とからなっている。テーブル本体311は、ステンレス鋼等の金属材によって円盤状に形成されており、図3に示すように上面に円形の嵌合凹部311aが設けられている。この嵌合凹部311aには底面の外周部に吸着チャック312が載置される環状の載置棚311bが設けられている。なお、嵌合凹部311aは後述する吸引手段に連通される。吸着チャック312はポーラスなセらミックス材によって円盤状に形成されており、テーブル本体311の嵌合凹部311aに嵌合し載置棚311bに載置される。従って、後述する吸引手段が作動すると、嵌合凹部311aに負圧が作用し、吸着チャック312の上面である吸引保持部に負圧が作用せしめられる。なお、上記スピンナーテーブル31を構成するテーブル本体311の外周部には、周方向の4箇所に後述する環状のフレームを保持するためのフレーム保持機構を装着するための段部311cが互いに等間隔に形成されている。
【0013】
上述したスピンナーテーブル31を構成するテーブル本体311の外周部に設けられた4箇所の段部311cには、後述する環状のフレームを保持するためのフレーム保持機構32が配設される。フレーム保持機構32は、後述する環状のフレームの下面を保持する保持面321aを有する下面支持部材321と、該下面支持部材321に中間部が揺動可能に軸支された振り子部材322とを具備している。下面支持部材321は適宜の金属材によって形成されており、その基部がスピンナーテーブル31を構成するテーブル本体311の外周部に設けられた4箇所の段部311cにそれぞれ取り付けボルト320によって取り付けられ(図2参照)、スピンナーテーブル31の径方向外方に突出して配設されている。このようにしてスピンナーテーブル31に取り付けられた下面支持部材321は、上面である保持面321aがスピンナーテーブル31の上面と同一高さに位置付けられる。下面支持部材321の先端部は二股状の切り欠き部321bが形成されており、互いに対向して下方に突出する一対の支持部321c、321cが設けられている。この一対の支持部321c、321cにはそれぞれ同一軸上に支持穴321d、321dが形成されている。また、下面支持部材321の二股状に形成された先端部には、保持面321aより上方に突出する一対の規制部321e、321eが設けられている。この一対の規制部321e、321eの高さは10mm程度でよい。
【0014】
次に、振り子部材322について説明する。
振り子部材322は、上記下面支持部材321の先端部に形成された二股状の切り欠き部321bの幅より僅かに小さい幅を有し、その中間部には被支持部322aが設けられており、被支持部322aには被支持穴(図示せず)が形成されている。この被支持部を上記下面支持部材321の先端部に形成された二股状の切り欠き部321bに位置付け、下面支持部材321の一対の支持部321c、321cに形成された支持穴321d、321dと振り子部材322の被支持部322aに形成された被支持穴に支持軸323を挿入することにより、被支持部322aは下面支持部材321に支持軸323を中心として揺動可能に支持される。振り子部材322における支持軸323の上側には、下面支持部材の保持面321a上に載置された後述する環状のフレームの上面を押圧する爪部322bが設けられている。また、振り子部材322における支持軸323の下側には、上記爪部322bより重量が重い錘部322cが設けられている。このように形成された振り子部材322は、図3に示すようにスピンナーテーブル31の回転が停止している状態において爪部322bが一対の規制部321e、321eより外側に位置するように支持軸323によって揺動可能に支持され配設されている。従って、一対の規制部321e、321eは、スピンナーテーブル31の回転が停止している状態においては爪部322bより内側に位置することになる。また、爪部322bは、スピンナーテーブル31の回転が停止されている状態においては下面支持部材321に設けられた一対の規制部321e、321eの上端より下側に位置するように構成されている。従って、一対の規制部321e、321eの上端は、スピンナーテーブル31の回転が停止している状態においては爪部322bより上側に位置することになる。
【0015】
図3を参照して説明を続けると、図示の実施形態における洗浄装置2は、上記スピンナーテーブル31を構成するテーブル本体311の嵌合凹部311aに負圧を作用せしめる吸引手段5を具備している。吸引手段5は、吸引源51と、該吸引源51とテーブル本体311の嵌合凹部311aとを連通する配管52と、該配管52に配設された電磁制御弁53とからなっている。電磁制御弁53は、除勢(OFF)されている状態では吸引源51と嵌合凹部311aとの連通を遮断するとともに嵌合凹部311aを大気に開放しており、附勢(ON)されると吸引源51と嵌合凹部311aと連通するように構成されている。従って、電磁制御弁53が附勢(ON)されると、吸引源51から配管52を介してテーブル本体311の嵌合凹部311aに負圧を作用せしめられる。
【0016】
上記吸引手段5を構成する配管52には圧力センサー6が配設されており、この圧力センサー6は検出信号を制御手段7に出力する。制御手段7は、圧力センサー6によって検出された圧力が所定値(例えば0.02MPa)より低い場合には表示手段70に正常メッセージを出力し、圧力センサー6によって検出された圧力が所定値(例えば0.02MPa)以上の場合にはエラーメッセージを表示手段70に出力する。
【0017】
図1と図4および図5を参照して説明を続けると、電動モータ33は、その駆動軸331の上端に上記スピンナーテーブル31を連結する。上記支持機構34は、複数本(図示の実施形態においては3本)の支持脚341と、該支持脚341をそれぞれ連結し電動モータ33に取り付けられた複数本(図示の実施形態においては3本)のエアシリンダ342とからなっている。このように構成された支持機構34は、エアシリンダ342を作動することにより、電動モータ33およびスピンナーテーブル31を図4に示す上方位置である被加工物搬入・搬出位置と、図5に示す下方位置である作業位置に位置付ける。
【0018】
上記洗浄水受け手段4は、洗浄水受け容器41と、該洗浄水受け容器41を支持する3本(図1には2本が示されている)の支持脚42と、上記電動モータ33の駆動軸331に装着されたカバー部材332とを具備している。洗浄水受け容器41は、図4および図5に示すように円筒状の外側壁411と底壁412と内側壁413とからなっている。底壁412の中央部には上記電動モータ33の駆動軸331が挿通する穴412aが設けられており、この穴412aの周縁から上方に突出する内側壁413が形成されている。また、図1に示すように底壁412には排液口412bが設けられており、この排液口412bにドレンホース414が接続されている。上記カバー部材332は、円盤状に形成されており、その外周縁から下方に突出するカバー部332aを備えておる。このように構成されたカバー部材332は、電動モータ33およびスピンナーテーブル31が図5に示す作業位置に位置付けられると、カバー部332aが上記洗浄水受け容器41を構成する内側壁413の外側に隙間をもって重合するように位置付けられる。
【0019】
図示の洗浄装置2は、上記スピンナーテーブル31に保持された加工後の被加工物であるウエーハを洗浄するための洗浄水供給手段8を具備している。洗浄水供給手段8は、スピンナーテーブル31に保持された加工後のウエーハに向けて洗浄水を噴出する洗浄水ノズル81と、該洗浄水ノズル81を揺動せしめる正転・逆転可能な電動モータ82を備えており、該洗浄水ノズル81が図示しない洗浄水供給源に接続されている。洗浄水ノズル81は、水平に延び先端部が下方に屈曲されたノズル部811と、該ノズル部811の基端から下方に延びる支持部812とからなっており、支持部812が上記洗浄水受け容器41を構成する底壁412に設けられた図示しない挿通穴を挿通して配設され図示しない洗浄水供給源に接続されている。なお、洗浄水ノズル81の支持部812が挿通する図示しない挿通穴の周縁には、支持部812との間をシールするシール部材(図示せず)が装着されている。
【0020】
また、図示の洗浄装置2は、図1に示すようにスピンナーテーブル31に保持された洗浄後のウエーハの表面にエアーを吹き付けるエアー供給手段9を具備している。エアー供給手段9は、スピンナーテーブル31に保持されたウエーハに向けてエアーを噴出するエアーノズル91と、該エアーノズル91を揺動せしめる正転・逆転可能な電動モータ(図示せず)を備えており、該エアーノズル91が図示しないエアー供給源に接続されている。エアーノズル91は、水平に延び先端部が下方に屈曲されたノズル部911と、該ノズル部911の基端から下方に延びる支持部912とからなっており、支持部912が上記洗浄水受け容器41を構成する底壁412に設けられた図示しない挿通穴を挿通して配設され図示しないエアー供給源に接続されている。なお、エアーノズル91の支持部912が挿通する図示しない挿通穴の周縁には、支持部912との間をシールするシール部材(図示せず)が装着されている。
【0021】
図示の実施形態における洗浄装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
図6には、切削加工された被加工物としての半導体ウエーハ10が示されている。この半導体ウエーハ10は、表面に格子状に配列された複数のストリート101によって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイス102が形成されており、環状のフレームFに装着された粘着テープTの表面に貼着されている。このように環状のフレームFに装着された粘着テープTの表面に貼着された半導体ウエーハ10は、切削装置によってストリート101に沿って切削され、個々のデバイス102に分割されている。
【0022】
図6に示す半導体ウエーハ10を上述した洗浄装置2を用いて洗浄する洗浄作業について、主に図7を参照して説明する。
上述したように環状のフレームFに装着された粘着テープTの表面に貼着され個々のデバイス102に分割された半導体ウエーハ10は、手動又は搬送装置によって図7に示すようにスピンナーテーブル31上に粘着テープTを介して載置される。このとき、スピンナーテーブル31は図4に示す被加工物搬入・搬出位置に位置付けられている。また、半導体ウエーハ10を粘着テープTを介して支持している環状のフレームFは、フレーム保持機構32を構成する下面支持部材321の保持面321aに載置される(ウエーハ載置工程)。このとき、環状のフレームFの外周縁が一対の規制部321e、321eの内面に沿って案内される。このようにして、半導体ウエーハ10をスピンナーテーブル31上に粘着テープTを介して載置するとともに環状のフレームFをフレーム保持機構32を構成する下面支持部材321の保持面321aに載置したならば、上記図3に示す吸引手段5を作動して電磁制御弁53を附勢(ON)する。この結果、吸引源51から配管52を介してテーブル本体311の嵌合凹部311aに負圧を作用せしめられる。従って、嵌合凹部311aに嵌合されたポーラスなセラミックス材によって形成されている吸着チャック312の表面に負圧が作用するため、半導体ウエーハ10は粘着テープTを介してスピンナーテーブル31の吸着チャック312上に吸引保持される。このとき、上記制御手段7は圧力センサー6によって検出された圧力が所定値(例えば0.02MPa)より低い場合には表示手段70に正常メッセージを出力するので、オペレータは半導体ウエーハ10が粘着テープTを介してスピンナーテーブル31の吸着チャック312上に正常に吸引保持されたことを確認することができる。
【0023】
上述したように半導体ウエーハ10を粘着テープTを介してスピンナーテーブル31の吸着チャック312上に吸引保持したならば、洗浄装置2のスピンナーテーブル31上に保持された切削加工後の半導体ウエーハ10を洗浄する洗浄工程を実施する。即ち、スピンナーテーブル31を図5に示す作業位置に位置付けるとともに、スピンナーテーブル31を例えば300rpmの回転速度で回転せしめる。スピンナーテーブル31が回転すると、図7において2点鎖線で示すようにスピンナーテーブル31に取り付けられたフレーム保持機構32を構成する振り子部材322に遠心力が作用し、錘部322cが支持軸323を中心として外方に揺動する。従って、振り子部材322の上部に設けられた爪部322bが支持軸323を中心として内方に揺動するため、爪部322bはフレーム保持機構32を構成する下面支持部材321の保持面321aに載置されている環状のフレームFの上面を押圧し下面支持部材321との間に挟持して固定する。
【0024】
上述したようにスピンナーテーブル31が回転している状態で、洗浄水供給手段8の図示しない電動モータを駆動して洗浄水供給ノズル81のノズル部811の噴出口をスピンナーテーブル31上に保持された半導体ウエーハ10の中心部上方に位置付け、ノズル部811の噴出口から純水とエアーとからなる洗浄水を噴出する。即ち、ノズル部811は所謂2流体ノズルで構成され0.2MPa程度の純水が供給されるとともに、0.3〜0.5MPa程度のエアーが供給され、純水がエアーの圧力で噴出して半導体ウエーハ10の表面を洗浄する。このとき、図示しない電動モータが駆動して洗浄水供給ノズル81のノズル部811の噴出口から噴出された洗浄水がスピンナーテーブル31に保持された半導体ウエーハ10の中心に当たる位置から外周部に当たる位置までの所要角度範囲で揺動せしめられる。この結果、切削加工において半導体ウエーハ10の表面に付着した切削屑が除去される。(洗浄工程)
【0025】
上述した洗浄工程が終了したら、乾燥工程を実行する。即ち、洗浄水供給ノズル81を待機位置に位置付けるとともに、エアー供給手段9のエアーノズル91を構成するノズル部911の噴出口をスピンナーテーブル31上に保持された半導体ウエーハ10の中心部上方に位置付ける。そして、スピンナーテーブル31を例えば2000rpmの回転速度で回転しつつノズル部911の噴出口からエアーを15秒程度噴出する。このとき、エアーノズル91をノズル部911の噴出口から噴出されたエアーがスピンナーテーブル31に保持された半導体ウエーハ10の中心に当たる位置から外周部に当たる位置までの所要角度範囲で揺動せしめられる。この結果、半導体ウエーハ10の表面が乾燥される。
【0026】
上述したようにして、洗浄工程および乾燥工程を実施したならば、スピンナーテーブル31の回転を停止するとともに、エアー供給手段9のエアーノズル91を待機位置に位置付ける。そして、スピンナーテーブル91を図4に示す被加工物搬入・搬出位置に位置付けるとともに、上記図3に示す吸引手段5の作動を停止して電磁制御弁53を除勢(OFF)し、吸引源51と嵌合凹部311aとの連通を遮断するとともに嵌合凹部311aを大気に開放して、スピンナーテーブル31に保持されている半導体ウエーハ10の吸引保持を解除する。なお、上述したようにスピンナーテーブル31の回転は停止されているので、スピンナーテーブル31に取り付けられたフレーム保持機構32を構成する振り子部材322には遠心力が作用しないため、図7において実線で示すように錘部322cが支持軸323を中心として内方に揺動する。この結果、図7において実線で示すように振り子部材322の上部に設けられた爪部322bが支持軸323を中心として外方に揺動するため、爪部322bはフレーム保持機構32を構成する下面支持部材321の保持面321aに載置されている環状のフレームFの上面への押圧を解除する。従って、環状のフレームFに装着された粘着テープTの表面に貼着され個々のデバイス102に分割された半導体ウエーハ10をスピンナーテーブル31から取り出すことができる。
【0027】
なお、上述したウエーハ載置工程において半導体ウエーハ10をスピンナーテーブル31上に粘着テープTを介して載置するとともに環状のフレームFをフレーム保持機構32を構成する下面支持部材321の保持面321aに載置する際に、図8で示すように位置ズレして環状のフレームFの一部が一対の規制部321e、321eの上端に位置付けられることがある。このように環状のフレームFの一部が一対の規制部321e、321eの上端に位置付けられると、環状のフレームFの一部が10mm程度浮き上がっているので、オペレータはこれに気づいて環状のフレームFを正規の位置に載置し直す。環状のフレームFの一部が一対の規制部321e、321eの上端に位置付けられたことをペレータが気づかずに上記図3に示す吸引手段5を作動して電磁制御弁53を附勢(ON)して吸引源51とスピンナーテーブル31を構成するテーブル本体311の嵌合凹部311aを連通すると、環状のフレームFに装着された粘着テープTとスピンナーテーブル31の吸着チャック312との間に隙間が生ずるので、負圧が洩れる。従って、吸引手段5を作動したに拘わらず、吸引源51とテーブル本体311の嵌合凹部311aとを連通する配管52内の圧力が低下しない。そこで、上記制御手段7は、圧力センサー6によって検出された圧力が所定値(例えば0.02MPa)以上になるので、半導体ウエーハ10が粘着テープTを介してスピンナーテーブル31の吸着チャック312上に正常に吸引保持されていないと判断し、表示手段70にエラーメッセージを出力する。従って、オペレータは半導体ウエーハ10が粘着テープTを介してスピンナーテーブル31の吸着チャック312上に正常に吸引保持されていないことを確認することができ、上述したように環状のフレームFを正規の位置に載置し直す。このようにして、環状のフレームFを正規の位置に載置し直したならば、上述したように洗浄工程および乾燥工程を実施する。
【0028】
以上、本発明を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で種々の変形は可能である。例えば、図示の実施形態においては、単独に使用する洗浄装置の例を示したが、上述した洗浄装置は切削装置に配設してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に従って構成された洗浄装置の要部斜視図。
【図2】図1に示す洗浄装置を構成するスピンナーテーブルおよびフレーム保持機構の斜視図。
【図3】図1に示す洗浄装置のスピンナーテーブルを破断して示す説明図。
【図4】図1に示す洗浄装置のスピンナーテーブルを被加工物搬入・搬出位置に位置付けた状態を示す説明図。
【図5】図1に示す洗浄手段のスピンナーテーブルを作業位置に位置付けた状態を示す説明図。
【図6】切削加工された被加工物としての半導体ウエーハが環状のフレームに装着された粘着テープの表面に貼着されている状態を示す斜視図。
【図7】洗浄装置を構成するスピンナーテーブル上に環状のフレームに装着された粘着テープの表面に貼着された被加工物が正常に載置された状態を示す説明図。
【図8】環状のフレームがフレーム保持機構を構成する規制部の上端に位置付けられた状態を示す要部拡大図。
【符号の説明】
【0030】
2:洗浄装置
3:スピンナーテーブル機構
31:スピンナーテーブル
32:フレーム保持機構
321:下面支持部材
322:振り子部材
33:電動モータ
4:洗浄水受け手段
41:洗浄水受け容器
5:吸引手段
6:圧力センサー
7:制御手段
70:表示手段
8:洗浄水供給手段
81:洗浄水ノズル
9:エアー供給手段
91:エアーノズル
10:半導体ウエーハ
F:環状のフレーム
T:粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のフレームに装着された粘着テープに貼着された被加工物を吸引保持する吸引保持部を備えたスピンナーテーブルと、該スピンナーテーブルの外周に互いに所定の間隔を置いて装着され該環状のフレームを保持する複数のフレーム保持機構と、該スピンナーテーブルに保持された被加工物に洗浄水を供給する洗浄水供給手段と、該ピンナーテーブルの該吸引保持部に負圧を作用せしめる吸引手段と、を具備する洗浄装置において、
該フレーム保持機構は、該環状のフレームの下面を保持する保持面を有する下面支持部材と、該下面支持部材に中間部が支持軸によって揺動可能に軸支され該支持軸の上側に該環状のフレームの上面を押圧する爪部が設けられているとともに該支持軸の下側に錘部を備えた振り子部材とを具備しており、
該下面支持部材には、該スピンナーテーブルの回転が停止されている状態において該爪部より内側に該保持面より上方に突出し該環状のフレームの外周縁を規制する規制部が設けられている、
ことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
該吸引手段の吸引源と該スピンナーテーブルの吸引保持部とを連通する配管に配設された圧力センサーと、該圧力センサーによって検出された圧力が所定値以上の場合にはエラーメッセージを表示手段に出力する制御手段を具備している、請求項1記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−98093(P2010−98093A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267204(P2008−267204)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】