説明

流路が均一な暖房用パネルの製造方法

【課題】自体の内部流路を有する暖房用パネルの製造方法を提供する。
【解決手段】自体の内部流路を有するプレート式暖房パネルの上下部プレートに対してそれぞれ金型を作製してから射出成形を用いて射出半製品を作製した後上下部二つの射出半製品を融着により全面接合することによって、暖房パネル全体の流路形状が一定であり流体の停滞部分のない暖房パネルを製造する方法を提供する、
射出により均一な流路形状を製造できるため、暖房パネルの全面に詰まり現象がなく均一な流体流れ性を確保することができ、また射出により均一な厚さの上下部プレートを製造することができるため、暖房パネルの精密成形が可能なことから一定した寸法管理及び品質生産が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自体の内部流路を有する暖房用パネルの製造方法に係り、さらに詳しくはプレート式暖房パネルの内部に形成された内部流路を均一に形成することによって暖房性能と流体流れ性を改善した暖房パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、一戸建て、マンションなどのような住居用建築物に適用される暖房システムは湿式工法であって、コンクリート床にパイプを埋設し、このパイプに温水のような暖房流体を供給して床を加熱する構造が通常に使用されてきた。しかし、前記湿式暖房システムは熱効率が低くて熱損失が大きく、コンクリートの養生に長時間かかって工期が延び、追ってパイプの漏水時にモルタル層を破壊すべきなので暖房システムの補修が難しくなるのみならず、その補修に高費用が要求される。
【0003】
前記湿式暖房システムの問題点を解決するため、コンクリート、合成樹脂、黄土のような材質のパネルに温水パイプを内蔵したり、温水パイプを挿入するための凹溝または固定部材を備えた乾式暖房パネルが開発された。前記乾式暖房パネルは組立式暖房システムであって、予め作製された乾式パネルを現場で簡単に組み立てて施工するので、工期が短縮されメンテナンスが改善された長所がある。しかし、温水パイプが設置された箇所に輻射熱が集中する温度偏差が発生して暖房効率面において非効率的であり、金属または合成樹脂素材の配管自体が高価であり、配管による熱損失が発生し、また配管表面に結露現象が発生してパネルが湿潤化する問題点があった。
【0004】
前記温水パイプ型乾式暖房パネルの問題点を解決するため、アメリカ特許第5、080、166号及び韓国公開特許第2002-95733号に開示されているように、暖房流体が流れる自体の内部流路を有するプレート式暖房パネルが開発された。このような内部流路型暖房パネルはパイプ型暖房パネルと比較して暖房流体が局部的ではなくパネル全体に分布して流れるため暖房効率が極めて高く、それによって燃料費を節減することができ、パイプを必要としないため複雑な配管作業が要らなくて配管費用が節減され、配管による熱損失及び結露現象がなく、またパネルの軽量化が可能であり施工とメンテナンスに有利な長所がある。
【0005】
従来は前述した自体の内部流路を有するプレート式暖房パネルを中空成形によって製造した。中空成形(Blow Molding)は吹込成形とも呼ばれ、分割金型内に加熱溶融した熱可塑性プラスチック成形材料を挿入して加熱軟化させた後、その内部に空気を吹き込んで中空製品を成形する方法であって、具体的に中空成形の基本工程は大きく3段階、すなわちi)プラスチック原料からチューブ状に予備成形したパリソン(Parison)またはプリフォーム(Preform)を作り、ii)これをキャビティ(Cavity)内に位置させてからパリソンの内部に空気を吹き込んでプラスチックの内部容積を膨張させて膨らませ、iii)膨張された樹脂が閉った金型壁面に当たると冷却固化させた後金型を開放して最終成型品を得る工程よりなる。
【0006】
しかし、このような中共成形方法を用いて自体の内部流路を有するプレート式暖房パネルを製造する時は、中空成形の特性上パリソン全面から吹き込まれる高温空気(Hot Air)の圧力が均一でないため、最終成形された暖房パネルにおいて左右上下の流路面積が相違になり、空気の圧力が及ばないか、または樹脂の流れ性が高くなると一部流路に詰まり現象が発生することによって暖房パネル内部の流体流れが円滑でなくなり、また暖房パネルの上下部プレートに厚さ偏差が発生する。
【0007】
このように暖房パネル内部の流体流れが均一でないか暖房パネルの上下部プレートの厚さ偏差が発生する場合、床の暖房性能が低下する。すなわち床の温度偏差が発生する場合があり、室内暖房時一定温度まで至るのにかかる時間が延び、暖房パネル内部の流体が抵抗を受けて流体の流れ速度が低下する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前述した問題点を解決するために案出されたもので、その目的は厚さ偏差がなく流路が一定かつ均一なので円滑な流体流れ性と暖房性能を確保できる暖房パネルの製造方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、本発明は暖房流体が流れる内部流路を有するように向かい合って一体に成形された上下部プレートと、一つのプレートからもう一つのプレートに向って上下対称に延びて上下部プレートを連結する多数の接合部材と、該多数の接合部材によりプレート自体の内部に形成された内部流路と、暖房流体の供給と排出が行われる2個の流体連結部を備える暖房パネルを製造するにおいて、前記上下部プレートの形状に適する金型をそれぞれ作製する段階と、前記金型を用いてプラスチック原料を射出成形することによって上下部プレートそれぞれの射出半製品を製造する段階と、前記上下部プレートそれぞれの射出半製品を振動融着工法により全面接合する段階とを含む暖房パネルの製造方法を提供する。
【0010】
前記振動融着は上下部接合部材の融着時溶融される樹脂が内部流路に漏れ出て長期間使用する場合樹脂片が積載され流路が詰まる現象が発生しないように、融着長さ0.3mm以上、融着圧力800kg/cm以上、融着時間10秒以上、振動50Hz以上の条件下で、望ましくは融着長さ0.3ないし1.0mm、融着圧力800kg/cm以上、融着時間10ないし30秒、振動50ないし150Hzの条件下で行うのが望ましい。
【0011】
また、本発明は暖房流体が流れる内部流路を有するように向かい合って一体に成形された上下部プレートと、一つのプレートからもう一つのプレートに向って上下対称に延びて上下部プレートを連結する多数の接合部材と、前記多数の接合部材によりプレート自体の内部に形成された内部流路と、暖房流体の供給と排出が行われる二つの流体連結部を備える暖房パネルにおいて、前記内部流路のサイズ及び間隔が均一であり、前記接合部材の接合強度が少くとも100kgf/cm以上であることを特徴とする暖房パネルを提供する。
【0012】
本発明は自体の内部流路を有するプレート式暖房パネルを従来に中空成形を用いて製造したこととは違って、射出成形方法を用いて製造したことを特徴とする。
【0013】
射出成形とは、プラスチックに熱を加えて可塑化させた溶融樹脂を油圧で金型に噴射して製品を作り出すことを指す。射出成形は生産性が高く、大体積の製品成形が可能であり、自動化が可能であり、製品の別の仕上げ作業が不要であり、自由自在な形状を作ることができ、成型品に他の材料をインサートして加工することができ、樹脂に補強材(ガラス繊維、炭素など)を混合することができ、特に高精度を要する製品の品質を向上させられる長所を持っている。
【発明の効果】
【0014】
本発明はこのような射出成形を用いて内部流路を有するプレート式暖房パネルを製造することによって、製造された暖房パネルの厚さ偏差がなく流路が一定かつ均一なので円滑な流体流れ性と暖房性能を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付した図面に基づき本発明の望ましい実施例をさらに詳しく説明する。
図1は本発明の一実施例によるプレート式暖房パネルの斜視図であり、図2は拡大切開斜視図であって、前記暖房パネル2は暖房流体が流れる内部流路12を有するように向かい合う上下部プレート4、6が一体に成形されたパネルであって、作製と成形が容易に行われるように熱可塑性プラスチック素材で作製され、暖房流体がさらに広い面積で建築物の床(壁や天井にも適用可能)と接するように前記床に対して最大限の面積を有する平坦なプレート状よりなる。
【0016】
前記暖房パネル2は図面に示したように、実質的に一対の長辺と短辺を有する長方形構造であるが、暖房システムの施工時暖房パネル2のさらに容易な連続配列を考慮して六角形、八角形など多角形構造も可能である。
【0017】
前記暖房パネル2のいずれか一つの対角方向に対向する2箇所の角部には暖房流体の供給と排出が行われる二つの流体連結部8がそれぞれ暖房パネル2と一体に形成されている。前記流体連結部8は別の接続部材を使って他の暖房パネルの流体連結部と連結される。
【0018】
前記暖房パネル2間の締結は別の締結部材を使用して、暖房パネル2の各辺に形成されたパネル連結部10を互いに連結することによってなされる。
【0019】
図3は図1のA−A線断面図であって、上下部プレート4、6は多数の接合部材4a、6aと内部流路12により定義される。前記接合部材4a、6aはそれぞれ上部プレート4から下部プレート6に向かって、それから逆に下部プレート6から上部プレート4に向かって上下対称に延びて上下部プレートを連結する。
【0020】
前記接合部材4a、6aは上下部プレート4、6を連結及び支持しつつ外力による上下部プレート4、6の変形を防止するだけではなく、暖房流体が流れうる内部流路12を提供しつつ同時に暖房流体が暖房パネル2の特定部分で集中したり停滞せず、全体として均一に分布するように暖房流体の流れに抵抗を与える役割を果たす。
【0021】
前記接合部材4a、6aは図面に示されたように、望ましくは横断面が円形であるが、四角形、六角形など多角形構造も可能である。前記接合部材4a、6aは所定の直径と間隔をもって一定したパターンで配置されており、上下部プレート4、6から延びて中央に向かって直径が狭まる円筒形の陥没した陰刻構造を取っている。
【0022】
本発明の暖房パネル2は上下部プレート4、6が一体に成形されたものなので、便宜上横断面の中央軸を基準として上下部プレート4、6及び上下部接合部材4a、6aに区分する。また、接合部材4a、6aは上下部プレート4、6から延びたものなので、本発明で接合部材4a、6aの境界は上下部プレート4、6から延び始まる部分dから上下部プレート4、6が接合された部分bまでに定義する。
【0023】
本発明の一実施例により内部流路12の上下部形状を円形ないし楕円形化するため、上下部プレート4、6から延び始める部分(d)を曲面化することができ、接合部材4a、6aの平坦な底面部(b)のうち円形の縁部(a)が内部にさらに延びた溝構造を取るように成形することができ、また暖房パネル2の4箇所の縁部に形成された突出形のパネル連結部10にも内部流路12と隣接した面が内部に延びた直線形の溝(c)を形成するように成形することができる。このように内部流路12の断面形状を円形ないし楕円形化すれば、高圧の中央暖房に対する暖房パネル2の耐圧性能を画期的に改善することができる。
【0024】
図4は本発明に係る暖房パネル2の概略的な製造工程図であって、前記製造工程は金型作製段階、射出成形段階及び融着段階で構成されており、具体的に説明すれば次の通りである。
【0025】
まず、上下部プレート4、6の形状に適する上金型、下金型14、16をそれぞれ作製する。その後作製された上金型、下金型14、16に対して射出成形機18を用いてプラスチック原料を射出成形することによって上下部プレート4、6それぞれの射出半製品を製造する。その後、製造された上下部プレート4、6それぞれの射出半製品を融着機20を用いて全面接合することによって、最終的に本発明に係る暖房パネル2を完成する。
【0026】
前記射出成形段階では射出成形機18を用いてプラスチック樹脂が完全に溶融される200℃以上の温度で100kgf/cm以上の成形圧力で50秒間冷却水が流れる金型14、16内で冷却させて上下部プレート4、6をそれぞれ製造し、追って24時間以上十分に空冷して樹脂の結晶化が完了されてから融着させる。
【0027】
前記融着段階において融着法は上下部接合部材4a、6aの融着時溶融される樹脂が内部流路12に漏れ出て長期間使用する場合樹脂片が積もって流路が詰まる現象が発生しないように振動融着工法を適用する。
【0028】
振動融着工法は接合面に一定圧力を与えると同時に、二つの接合面を一定以上の振動数で摩擦させて発生した熱で接合させる工法であって、200mm以上の大型プラスチック素材を短時間に接合させられて、本発明に係る暖房パネルの製造に最適である。
【0029】
熱融着工法は融着時接合部の樹脂が押し出されて作業環境が劣悪なため、最近は他の融着工法に転換される傾向であり、超音波融着の場合極めて製造コストがアップして経済性に乏しく、その他高周波融着及び回転融着方案は本発明に係る暖房パネルのような角形の単位体融着には不向きである。
【0030】
前記融着段階において融着機20を用いて融着長さは0.3mmないし1.0mmを適用し、圧力は800kg/cm以上、時間は10秒ないし30秒、振動は約100Hzを適用して接合強度に優れ流路が均一な暖房パネル2を製造することができる。
【0031】
前記融着長さが0.3mm未満または融着時間が10秒未満の場合、接合部材間の接合強度が劣化する場合がありうるので暖房パネルの耐圧性能を低下させ、圧力と振動数は相関関係があるが、暖房パネルの場合圧力が800kg/cm以上、振動数は100Hz条件の場合、良好な生産性を確保することができる。
【0032】
本発明に係る射出成形により製造される暖房パネルは、図5に示したように均一な内部流路を有する一方、従来の中空成形で製造される暖房パネルは図6に示したように内部流路が不均一に形成されていることが確認できる。
【0033】
表1は図5に示された本発明の暖房パネル(実施例)及び図6に示された従来の暖房パネル(比較例)に対して接合部材の接合強度を比較したもので、本発明の暖房パネルの接合強度が従来のパネルより2倍ほど優れた。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明により自体の内部流路を有するプレート式暖房パネルを製造すれば、射出により均一な流路形状を製造できるため暖房パネルの全面に詰まり現象が発生せず、均一な流体流れ性を確保することができ、また射出により均一な厚さの上下部プレートを製造することができるため、暖房パネルの精密成形が可能なので一定した寸法及び品質生産が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施例による内部流路を有するプレート式暖房パネルの斜視図。
【図2】図1の拡大切開斜視図。
【図3】図1のA-A線断面図。
【図4】本発明に係る暖房パネルの概略的な製造工程図。
【図5】本発明に係る均一な内部流路を有する暖房パネルの断面写真。
【図6】従来の不均一な内部流路を有する暖房パネルの断面写真。
【符号の説明】
【0036】
2 暖房パネル
4 上部プレート
4a 上部接合部材
6 下部プレート
6a 下部接合部材
8 流体連結部
10 パネル連結部
12 内部流路
14 上金型
16 下金型
18 射出成形機
20 融着機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
暖房流体が流れる内部流路を有するように向かい合って一体に成形された上下部プレートと、一つのプレートからもう一つのプレートに向かって上下対称に延びて上下部プレートを連結する多数の接合部材と、該多数の接合部材によりプレート自体の内部に形成された内部流路と、暖房流体の供給と排出が行われる二つの流体連結部とを備える暖房パネルにおいて、
前記内部流路のサイズ及び間隔が均一であり、前記接合部材の接合強度が100kgf/cm以上であることを特徴とする暖房パネル。
【請求項2】
暖房流体が流れる内部流路を有するように向かい合って一体に成形された上下部プレートと、一つのプレートからもう一つのプレートに向かって上下対称に延びて上下部プレートを連結する多数の接合部材と、該多数の接合部材によりプレート自体の内部に形成された内部流路と、暖房流体の供給と排出が行われる二つの流体連結部とを備える暖房パネルを製造するにあたって、
前記上下部プレートの形状に適する金型をそれぞれ作製する段階と、
前記金型を用いてプラスチック原料を射出成形することによって上下部プレートそれぞれの射出半製品を製造する段階と、
前記上下部プレートそれぞれの射出半製品を振動融着工法により全面接合する段階とを含む暖房パネルの製造方法。
【請求項3】
前記振動融着は融着長さ0.3mm以上、融着圧力800kg/cm以上、融着時間10秒以上、振動50Hz以上の条件下で行うことを特徴とする請求項2に記載の暖房パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−508522(P2007−508522A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535285(P2006−535285)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【国際出願番号】PCT/KR2005/002941
【国際公開番号】WO2006/028343
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(502202007)エルジー・ケム・リミテッド (224)
【Fターム(参考)】