消音構造体
【課題】吸音材内貼りダクト、セル型やスプリッター型は、低減ニーズの大きい500〜2KHzの帯域に対して、減音量を上げようとすると、ダクト長、内貼り吸音材の厚さ、開口部を狭くする必要があり多くの課題を抱えている。
【解決手段】音波発生源に対して円柱状に加工した吸音母材を多数独立して配列し、かつ、前記音波発生源より見て当該吸音母材にて隙間なく配列したものであり、具体的には、ポリエステル繊維、グラスウ−ル、軟質ウレタンフォ−ム等からなる複数の円柱状吸音母材を、音波発生源に対して複数列に配列した消音構造体。
【解決手段】音波発生源に対して円柱状に加工した吸音母材を多数独立して配列し、かつ、前記音波発生源より見て当該吸音母材にて隙間なく配列したものであり、具体的には、ポリエステル繊維、グラスウ−ル、軟質ウレタンフォ−ム等からなる複数の円柱状吸音母材を、音波発生源に対して複数列に配列した消音構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクトの開口部、産業機械、建設機械、大型車輌等、エンジン、タービン等冷却用の吸入ロ、排出口等の開口部、クーリングタワーの開口部等、各種開口部から放射される騒音の低減のための消音構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のような開口部の従来の消音構造体としては、グラスウール等多孔質材料を用いた内貼りダクト、スプリット型、セル型等が最も一般的であるが、それらの基本形は図1に示す吸音材内貼りダクトである。そしてその減音量(透過損失)TLは、TL=k・P/S・L〔dB〕で求めるのが一般的である。ただし、P:ダクトの周長(2(a+b))、S:ダクトの断面積(aXb)、L:ダクトの長さ、である。
【0003】
ここで、kは吸音率に関する係数であり、一般に良く使われているセービンの式は、k=1.05×α1.4 、α:ランダム入射吸音率(残響室法吸音率)で求められる。ただし、次のような制約が設けられている。
1)断面の小さいほうの辺の寸法が15〜45cmの間であること。
2)ダクト断面の辺長比は1/2〜1の間であること。
3)αの値が0.8を超える場合はα=0.8として計算すること。
【0004】
そして、上記の式が成り立つのは、周波数がf=c/D(c:音速、D:ダクト断面寸法の直径又は短辺の長さ)までで、それ以上の高周波数ではダクト軸付近にエネルギ−が集中(ビーム状)して伝搬するため、減音量は式の値より小さくなるのが普通である。
【0005】
以上のように、吸音ダクトは、短い辺が15〜45cm位を基本寸法としたものが多く、又、その減衰性能も用いる吸音材の吸音特性にも依存するので、例えば、1KHz付近の周波数の騒音を5〜10dB低減するためには、少なくともダクト長は50〜100cm程度となり、スペースが必要となる。しかるに、上述したように吸音材内貼りダクトは音の波長が断面の直径或いは短辺よりも小さくなる高音の領域では、音波がビ−ム状をなして進行するために減音量が低下することとなる。
【0006】
この欠陥を少しでも防ぐため、ダクト断面を吸音材で格子状に分割して細い直路の並列型としたセル型とか、平板状の吸音材で流路を平行に分割した図2(a)に示すようなスプリッター型の吸音ダクトがよく用いられる。しかし、これらも減音量は吸音材の吸音特性に支配されるので、一般に高音に対して有効であり、低音域の吸音率を上げるには、吸音材の厚さを増さねばならず、そのために流体抵抗を増す結果となる。
【0007】
図2(b)に、吸音材に岩綿板(密度100〜140kg/m3 )を用いたスプリッタ−型吸音ダクトの構造と減音特性を示すが、1KHzの帯域に対して減音量を10dB得ようとすると、吸音材の厚さを50mmのものでダクト長は1m以上、減音量5dBを得るにも50cm程度以上のダクト長が必要となる。このように従来の吸音ダクト型の消音構造は、最も適用対象の多い500〜2KHzの帯域の騒音に対しては、スペースが必要となり、コスト、重量等の問題と共に、性能を上げようとすると流れ抵抗が上がってしまうという二律背反の問題を抱えている。
【0008】
この流れ抵抗を改善するために、これまでに、図3に示すような翼形の形状にした吸音材を配列する方法もとられているが、これもある程度の長さが必要であり、形状の製作、形状保持等実用面の課題は多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の吸音材内貼りダクト或いはその応用としてのセル型やスプリッター型は、最も低減ニーズの大きい500〜2KHzの帯域に対して、減音量を上げようとすると、ダクト長、内貼り吸音材の厚さ、開口部を狭くする必要があり、その結果、流れ抵抗を増大させる結果となり、減音性能とスペース、重量、コスト等の実用面から多くの課題を抱えている。
【0010】
本発明は、吸音ダクトの持つ上述したような多くの課題を新しい概念を導入し、シンプルな構造で吸音性能を大幅に改善しようとしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨は、音波発生源に対して円柱状に加工した吸音母材を多数独立して配列し、かつ、前記音波発生源より見て当該吸音母材にて隙間なく配列したことを特徴とする消音構造体であり、具体的には、円柱状吸音母材は、複数個を音波発生源に対して複数列に配列したものであり、好ましくは、二列以上の千鳥配列とし、各列の吸音母材の重なりは、0〜50%である消音構造体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の消音構造体にあっては、500〜4KHzの幅広い帯域で減音効果がもたらされるもので、特に、メッシュとフィルムとの複合吸音体a又はbを更に採用した場合には400〜800Hzで特に減音効果が発揮される。又、本発明の消音構造体は、温度の低下が早く、換気性能の上でも有利な構造である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の消音構造体の好ましい形態について述べると、消音構造体に用いる吸音母材を円柱(円筒を含む)形状とし、それを音波発生源に向かって千鳥配置になるように二段以上に配列したことを特徴としている。配列の間隔、言い換えれば、吸音母材の重なりは、0〜50%の間であり流れ抵抗との兼ね合いで決めるものである。
【0014】
吸音母材は、通常20〜50kg/m3 で30〜80φの円柱状に形成され、長さは任意に調整される。かかる吸音母材を音波の発生源に向かって配列されるものであり、中実円柱状或いは内部をくり貫いた円筒状である。用いられる吸音母材としては、ポリエステル繊維、グラスウ−ル、軟質ウレタンフォ−ムである。
【0015】
かかる円柱状の吸音母材の表面には、基本的には例えばポリエステル繊維の不織布を巻き付けた消音構造体であり、更に好ましくは、これにメッシュ/フィルム/メッシュで構成される複層吸音材aを巻き付けた構造体、或いは、フィルム/メッシュ/フィルムで構成される複層吸音材bを巻き付けた構造体である。尚、後者にあっては、不織布の有無は問わない。
【0016】
本発明におけるメッシュは孔明構造体を含むものであって、鉄、ステンレス、アルミニュウム材料、樹脂等の高分子材料にて構成されており、網目、孔等が多数開口している構造体である。
【0017】
一方、フィルムは鉄箔、ステンレス箔、アルミニュウム箔等の金属材料、フツ素フィルム、テフロンフィルム等の高分子材料、新聞紙、和紙等の木質材料があり、比較的薄いフィルム状の膜状材料である。かかる膜状材料は複数枚積層することができることは言うまでもない。低音域での吸音率を出すためには、例えば20〜30ミクロン以下ではあるが特に限定するものではない。
【0018】
メッシュとフィルムとは、互いに密着したものであり、場合によっては両者が部分的に固定された構造である。そして、密着した面が音響的な励振を受けたとき摺動可能にした複合吸音体a又はbを構成する。かかる複合吸音体を構成する材料は、適切な材料、網目等の開口率、剛性、空気層等を選ぶことにより、要求された周波数帯域の吸音特性に適合した消音構造を実現できる。
【0019】
メッシュとフィルムとを部分的に固定した複合吸音体a又はbについて述べれば、音響的な励振を受けて複雑な固有振動数付近で振動する。このため、フィルムの中で熱エネルギーに変換されるだけでなく、メッシュとフィルムの間での摩擦により効率よく熱エネルギーに変換され、フィルム単一の場合に比べて、広帯域で飛躍的に吸音性能が改善されることとなったものである。
【実施例】
【0020】
(実施例)
以下、実施例をもって本発明を更に説明する。図4は本発明の消音構造体A(第1例)を示す断面図であり、図5は消音構造体B(第2例)の断面図である。図にあって、符号1は60φのポリエステル繊維(35kg/m3 )からなる円柱状の吸音母材である。2はこの表面に巻き付けたポリエステル繊維不織布である。消音構造体Bにあっては、不織布2の上に複層吸音材aを巻き付けたものであり、アルミメッシュ18/16 /アルミフィルム(箔)30μ/アルミメッシュ18/16 を一層巻き付けた。
【0021】
図6は配列方法を示すものであり、音源に対して消音構造体Aを直立させ、2列に配列したものである。この例では音源方向から見て必ず消音構造体Aが出会うように列間の消音構造体Aを10%づつ重なり合わせて配列したものである。図7はA−A線での断面図である。他の消音構造体も同様である。
【0022】
(テスト)
本発明の効果を確認するために、図8に示すようなボックス10の中にスピーカ−11を入れてピンクノイズを発生させ、消音構造体の効果を1/3・Oct−Band中心周波数に対する音圧レベルで比較した。12はマイクロフォンである。
【0023】
(テスト結果1)
この結果を図9に示すが、消音構造体を採用しない場合と比較して、本発明の消音構造体Aでは、1.25KHzを中心に500〜4KHzの幅広い帯域で減音していることが分かる。又、消音構造体Bでは吸音特性が低周波数側が向上しているために400〜800Hzの帯域の減音量が増加している。
【0024】
(テスト結果2)
同じ装置で図10に示すように32kg/m3 のグラスウール3(60mm厚×160mm)を40mm間隔で配置(スプリッタ型消音構造体C)してテストした結果、図11に示すように本発明よりかなり劣った結果となった。
【0025】
(テスト結果3)
上記の各テストにあって、ボックス10内の温度を70℃まで上げておき、時間経過による温度の低下の様子を図12に示す。この結果、従来のスプリッタ型の場合と本発明の場合を対比して示したが、本発明の方が温度の低下が早く、換気性能の上でも有利な構造となっていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は以上のような特殊な構成を有する消音構造体であって、ダクトの開口部、産業機械、建設機械、大型車輌等、エンジン、タービン等冷却用の吸入ロ、排出口等の開口部、クーリングタワーの開口部等、各種の開口部から放射される騒音に利用可能であり、その利用価値は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は吸音材内貼りダクトを示す斜視図である。
【図2】図2(a)はスプリッタ−型吸音ダクトの斜視図であり、図2(b)はスプリッタ−型吸音ダクトの減音性能を示すグラフである。
【図3】図3は翼型吸音財の断面図である。
【図4】図4は本発明の消音構造体Aを示す断面図である。
【図5】図5は本発明の消音構造体Bを示す断面図である。
【図6】図6は本発明の消音構造体の配列を示す図である。
【図7】図7は図6のA−A線での断面図である。
【図8】図8は音圧レベル測定装置の概念図である。
【図9】図9は音圧レベル測定結果を示すグラフである。
【図10】図10はスプリッタ型消音構造体の測定装置の概念図である。
【図11】図10による音圧レベル測定結果を示すグラフである。
【図12】図12は降温状態を示すグラフである。
【符号の説明】
【0028】
A、B‥本発明の消音構造体、
a、b‥複合吸音材、
1‥吸音母材、
2‥不織布、
3‥グラスウール(スプリッタ型消音構造体C)、
10‥ボックス、
11‥スピ−カ−、
12‥マイクロフォン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクトの開口部、産業機械、建設機械、大型車輌等、エンジン、タービン等冷却用の吸入ロ、排出口等の開口部、クーリングタワーの開口部等、各種開口部から放射される騒音の低減のための消音構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のような開口部の従来の消音構造体としては、グラスウール等多孔質材料を用いた内貼りダクト、スプリット型、セル型等が最も一般的であるが、それらの基本形は図1に示す吸音材内貼りダクトである。そしてその減音量(透過損失)TLは、TL=k・P/S・L〔dB〕で求めるのが一般的である。ただし、P:ダクトの周長(2(a+b))、S:ダクトの断面積(aXb)、L:ダクトの長さ、である。
【0003】
ここで、kは吸音率に関する係数であり、一般に良く使われているセービンの式は、k=1.05×α1.4 、α:ランダム入射吸音率(残響室法吸音率)で求められる。ただし、次のような制約が設けられている。
1)断面の小さいほうの辺の寸法が15〜45cmの間であること。
2)ダクト断面の辺長比は1/2〜1の間であること。
3)αの値が0.8を超える場合はα=0.8として計算すること。
【0004】
そして、上記の式が成り立つのは、周波数がf=c/D(c:音速、D:ダクト断面寸法の直径又は短辺の長さ)までで、それ以上の高周波数ではダクト軸付近にエネルギ−が集中(ビーム状)して伝搬するため、減音量は式の値より小さくなるのが普通である。
【0005】
以上のように、吸音ダクトは、短い辺が15〜45cm位を基本寸法としたものが多く、又、その減衰性能も用いる吸音材の吸音特性にも依存するので、例えば、1KHz付近の周波数の騒音を5〜10dB低減するためには、少なくともダクト長は50〜100cm程度となり、スペースが必要となる。しかるに、上述したように吸音材内貼りダクトは音の波長が断面の直径或いは短辺よりも小さくなる高音の領域では、音波がビ−ム状をなして進行するために減音量が低下することとなる。
【0006】
この欠陥を少しでも防ぐため、ダクト断面を吸音材で格子状に分割して細い直路の並列型としたセル型とか、平板状の吸音材で流路を平行に分割した図2(a)に示すようなスプリッター型の吸音ダクトがよく用いられる。しかし、これらも減音量は吸音材の吸音特性に支配されるので、一般に高音に対して有効であり、低音域の吸音率を上げるには、吸音材の厚さを増さねばならず、そのために流体抵抗を増す結果となる。
【0007】
図2(b)に、吸音材に岩綿板(密度100〜140kg/m3 )を用いたスプリッタ−型吸音ダクトの構造と減音特性を示すが、1KHzの帯域に対して減音量を10dB得ようとすると、吸音材の厚さを50mmのものでダクト長は1m以上、減音量5dBを得るにも50cm程度以上のダクト長が必要となる。このように従来の吸音ダクト型の消音構造は、最も適用対象の多い500〜2KHzの帯域の騒音に対しては、スペースが必要となり、コスト、重量等の問題と共に、性能を上げようとすると流れ抵抗が上がってしまうという二律背反の問題を抱えている。
【0008】
この流れ抵抗を改善するために、これまでに、図3に示すような翼形の形状にした吸音材を配列する方法もとられているが、これもある程度の長さが必要であり、形状の製作、形状保持等実用面の課題は多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の吸音材内貼りダクト或いはその応用としてのセル型やスプリッター型は、最も低減ニーズの大きい500〜2KHzの帯域に対して、減音量を上げようとすると、ダクト長、内貼り吸音材の厚さ、開口部を狭くする必要があり、その結果、流れ抵抗を増大させる結果となり、減音性能とスペース、重量、コスト等の実用面から多くの課題を抱えている。
【0010】
本発明は、吸音ダクトの持つ上述したような多くの課題を新しい概念を導入し、シンプルな構造で吸音性能を大幅に改善しようとしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨は、音波発生源に対して円柱状に加工した吸音母材を多数独立して配列し、かつ、前記音波発生源より見て当該吸音母材にて隙間なく配列したことを特徴とする消音構造体であり、具体的には、円柱状吸音母材は、複数個を音波発生源に対して複数列に配列したものであり、好ましくは、二列以上の千鳥配列とし、各列の吸音母材の重なりは、0〜50%である消音構造体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の消音構造体にあっては、500〜4KHzの幅広い帯域で減音効果がもたらされるもので、特に、メッシュとフィルムとの複合吸音体a又はbを更に採用した場合には400〜800Hzで特に減音効果が発揮される。又、本発明の消音構造体は、温度の低下が早く、換気性能の上でも有利な構造である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の消音構造体の好ましい形態について述べると、消音構造体に用いる吸音母材を円柱(円筒を含む)形状とし、それを音波発生源に向かって千鳥配置になるように二段以上に配列したことを特徴としている。配列の間隔、言い換えれば、吸音母材の重なりは、0〜50%の間であり流れ抵抗との兼ね合いで決めるものである。
【0014】
吸音母材は、通常20〜50kg/m3 で30〜80φの円柱状に形成され、長さは任意に調整される。かかる吸音母材を音波の発生源に向かって配列されるものであり、中実円柱状或いは内部をくり貫いた円筒状である。用いられる吸音母材としては、ポリエステル繊維、グラスウ−ル、軟質ウレタンフォ−ムである。
【0015】
かかる円柱状の吸音母材の表面には、基本的には例えばポリエステル繊維の不織布を巻き付けた消音構造体であり、更に好ましくは、これにメッシュ/フィルム/メッシュで構成される複層吸音材aを巻き付けた構造体、或いは、フィルム/メッシュ/フィルムで構成される複層吸音材bを巻き付けた構造体である。尚、後者にあっては、不織布の有無は問わない。
【0016】
本発明におけるメッシュは孔明構造体を含むものであって、鉄、ステンレス、アルミニュウム材料、樹脂等の高分子材料にて構成されており、網目、孔等が多数開口している構造体である。
【0017】
一方、フィルムは鉄箔、ステンレス箔、アルミニュウム箔等の金属材料、フツ素フィルム、テフロンフィルム等の高分子材料、新聞紙、和紙等の木質材料があり、比較的薄いフィルム状の膜状材料である。かかる膜状材料は複数枚積層することができることは言うまでもない。低音域での吸音率を出すためには、例えば20〜30ミクロン以下ではあるが特に限定するものではない。
【0018】
メッシュとフィルムとは、互いに密着したものであり、場合によっては両者が部分的に固定された構造である。そして、密着した面が音響的な励振を受けたとき摺動可能にした複合吸音体a又はbを構成する。かかる複合吸音体を構成する材料は、適切な材料、網目等の開口率、剛性、空気層等を選ぶことにより、要求された周波数帯域の吸音特性に適合した消音構造を実現できる。
【0019】
メッシュとフィルムとを部分的に固定した複合吸音体a又はbについて述べれば、音響的な励振を受けて複雑な固有振動数付近で振動する。このため、フィルムの中で熱エネルギーに変換されるだけでなく、メッシュとフィルムの間での摩擦により効率よく熱エネルギーに変換され、フィルム単一の場合に比べて、広帯域で飛躍的に吸音性能が改善されることとなったものである。
【実施例】
【0020】
(実施例)
以下、実施例をもって本発明を更に説明する。図4は本発明の消音構造体A(第1例)を示す断面図であり、図5は消音構造体B(第2例)の断面図である。図にあって、符号1は60φのポリエステル繊維(35kg/m3 )からなる円柱状の吸音母材である。2はこの表面に巻き付けたポリエステル繊維不織布である。消音構造体Bにあっては、不織布2の上に複層吸音材aを巻き付けたものであり、アルミメッシュ18/16 /アルミフィルム(箔)30μ/アルミメッシュ18/16 を一層巻き付けた。
【0021】
図6は配列方法を示すものであり、音源に対して消音構造体Aを直立させ、2列に配列したものである。この例では音源方向から見て必ず消音構造体Aが出会うように列間の消音構造体Aを10%づつ重なり合わせて配列したものである。図7はA−A線での断面図である。他の消音構造体も同様である。
【0022】
(テスト)
本発明の効果を確認するために、図8に示すようなボックス10の中にスピーカ−11を入れてピンクノイズを発生させ、消音構造体の効果を1/3・Oct−Band中心周波数に対する音圧レベルで比較した。12はマイクロフォンである。
【0023】
(テスト結果1)
この結果を図9に示すが、消音構造体を採用しない場合と比較して、本発明の消音構造体Aでは、1.25KHzを中心に500〜4KHzの幅広い帯域で減音していることが分かる。又、消音構造体Bでは吸音特性が低周波数側が向上しているために400〜800Hzの帯域の減音量が増加している。
【0024】
(テスト結果2)
同じ装置で図10に示すように32kg/m3 のグラスウール3(60mm厚×160mm)を40mm間隔で配置(スプリッタ型消音構造体C)してテストした結果、図11に示すように本発明よりかなり劣った結果となった。
【0025】
(テスト結果3)
上記の各テストにあって、ボックス10内の温度を70℃まで上げておき、時間経過による温度の低下の様子を図12に示す。この結果、従来のスプリッタ型の場合と本発明の場合を対比して示したが、本発明の方が温度の低下が早く、換気性能の上でも有利な構造となっていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は以上のような特殊な構成を有する消音構造体であって、ダクトの開口部、産業機械、建設機械、大型車輌等、エンジン、タービン等冷却用の吸入ロ、排出口等の開口部、クーリングタワーの開口部等、各種の開口部から放射される騒音に利用可能であり、その利用価値は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は吸音材内貼りダクトを示す斜視図である。
【図2】図2(a)はスプリッタ−型吸音ダクトの斜視図であり、図2(b)はスプリッタ−型吸音ダクトの減音性能を示すグラフである。
【図3】図3は翼型吸音財の断面図である。
【図4】図4は本発明の消音構造体Aを示す断面図である。
【図5】図5は本発明の消音構造体Bを示す断面図である。
【図6】図6は本発明の消音構造体の配列を示す図である。
【図7】図7は図6のA−A線での断面図である。
【図8】図8は音圧レベル測定装置の概念図である。
【図9】図9は音圧レベル測定結果を示すグラフである。
【図10】図10はスプリッタ型消音構造体の測定装置の概念図である。
【図11】図10による音圧レベル測定結果を示すグラフである。
【図12】図12は降温状態を示すグラフである。
【符号の説明】
【0028】
A、B‥本発明の消音構造体、
a、b‥複合吸音材、
1‥吸音母材、
2‥不織布、
3‥グラスウール(スプリッタ型消音構造体C)、
10‥ボックス、
11‥スピ−カ−、
12‥マイクロフォン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波発生源に対して円柱状に加工した吸音母材を多数独立して配列し、かつ、前記音波発生源より見て当該吸音母材にて隙間なく配列したことを特徴とする消音構造体。
【請求項2】
円柱状吸音母材は、複数個を音波発生源に対して複数列に配列した請求項1に記載の消音構造体。
【請求項3】
吸音母材の配列は、二列以上の千鳥配列とした請求項1又は2に記載の消音構造体。
【請求項4】
各列の吸音母材の重なりは、0〜50%である請求項1乃至3いずれか1に記載の消音構造体。
【請求項5】
円柱状吸音母材は、中実円柱状或いは内部をくり貫いた円筒状である請求項1乃至4いずれか1に記載の消音構造体。
【請求項6】
吸音母材が、ポリエステル繊維、グラスウ−ル、或いは軟質ウレタンフォ−ムである請求項1乃至5いずれか1に記載の消音構造体。
【請求項7】
円柱状の吸音母材の表面に、不織布を巻き付けた請求項1乃至6いずれか1に記載の消音構造体。
【請求項8】
円柱状の吸音母材の表面に不織布を巻き付け、更にメッシュ/フィルム/メッシュで構成される複層吸音材aを巻き付けた請求項1乃至7いずれか1に記載の消音構造体。
【請求項9】
円柱状の吸音母材の表面に、フィルム/メッシュ/フィルムで構成される複層吸音材bを巻き付けた請求項1乃至6いずれか1に記載の消音構造体。
【請求項10】
前記フィルムが、金属材料、高分子材料、木質材料である請求項8又は9に記載の消音構造体。
【請求項11】
前記メッシュが、金属材料、高分子材料である請求項8又は9に記載の消音構造体。
【請求項1】
音波発生源に対して円柱状に加工した吸音母材を多数独立して配列し、かつ、前記音波発生源より見て当該吸音母材にて隙間なく配列したことを特徴とする消音構造体。
【請求項2】
円柱状吸音母材は、複数個を音波発生源に対して複数列に配列した請求項1に記載の消音構造体。
【請求項3】
吸音母材の配列は、二列以上の千鳥配列とした請求項1又は2に記載の消音構造体。
【請求項4】
各列の吸音母材の重なりは、0〜50%である請求項1乃至3いずれか1に記載の消音構造体。
【請求項5】
円柱状吸音母材は、中実円柱状或いは内部をくり貫いた円筒状である請求項1乃至4いずれか1に記載の消音構造体。
【請求項6】
吸音母材が、ポリエステル繊維、グラスウ−ル、或いは軟質ウレタンフォ−ムである請求項1乃至5いずれか1に記載の消音構造体。
【請求項7】
円柱状の吸音母材の表面に、不織布を巻き付けた請求項1乃至6いずれか1に記載の消音構造体。
【請求項8】
円柱状の吸音母材の表面に不織布を巻き付け、更にメッシュ/フィルム/メッシュで構成される複層吸音材aを巻き付けた請求項1乃至7いずれか1に記載の消音構造体。
【請求項9】
円柱状の吸音母材の表面に、フィルム/メッシュ/フィルムで構成される複層吸音材bを巻き付けた請求項1乃至6いずれか1に記載の消音構造体。
【請求項10】
前記フィルムが、金属材料、高分子材料、木質材料である請求項8又は9に記載の消音構造体。
【請求項11】
前記メッシュが、金属材料、高分子材料である請求項8又は9に記載の消音構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−102028(P2007−102028A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294036(P2005−294036)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(595122187)ブリヂストンケービージー株式会社 (36)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(595122187)ブリヂストンケービージー株式会社 (36)
【Fターム(参考)】
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